JP2022087900A - 細胞シート製造用細胞培養器材、回収用支持体、及び細胞シート製造用キット - Google Patents

細胞シート製造用細胞培養器材、回収用支持体、及び細胞シート製造用キット Download PDF

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Abstract

【課題】培地の交換等の機械的刺激による細胞の剥離を防止する培養器材及び細胞シート製造用キットを提供する。【解決手段】細胞培養器材の培養面の内周全域に細胞の剥離を抑制する細胞剥離抑制領域を設け、その内側を刺激により細胞に対する接着性が変化する刺激応答性領域を配置する。また、所定の特徴を備えた細胞シートの回収に用いる回収用支持体により、細胞シートを容易に回収することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、再生医療、創薬研究等の分野において用いられるシート状の細胞を器材から剥離して回収する際に用いる回収用支持体と細胞培養器材、及びこれらを含む細胞シート製造用キットに関する。特に、培養中に細胞が剥がれやすい比較的面積の大きい培養器材での培養や、剥がれやすい性質を備えた細胞から細胞シートを製造する際に用いる細胞培養器材等に関する。具体的な細胞種としては、上皮細胞、間葉系幹細胞、筋芽細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、腎細胞、肝細胞からなる細胞シートの製造に用いるキット、細胞培養器材に関する。
正常な機能を有する組織から採取した細胞を培養し、患者に移植することによって、損傷した臓器や組織の自己再生能力を促し、組織修復と機能を回復させる再生医療は近年増々注目されてきている。再生医療は、患者の体外で培養した細胞や、培養した細胞から構築した組織を患者の体内に移植することによって、損傷した組織や臓器を再生し、失われた機能を回復させる医療である。細胞シートは再生医療に用いられるシート状に培養した細胞であり、患者に移植したり、組織を構築するのに用いられる。また、細胞シートは、臨床応用だけではなく医薬品の安全性評価や医薬品開発等の基礎研究においても重要な役割を担っている。
再生医療等製品を用いた治療方法として、上述のように細胞を培養してシート状にした細胞シートを移植する方法がある。接着細胞は培養器材上で培養すると、培養器材に付着するとともに細胞同士が接着し、コンフルエントになるとシート状の細胞集合体(細胞シート)となる。なお、「コンフルエント」とは、細胞が培養面を覆った状態のことである。例えば、上皮細胞シートは、広範囲熱傷、変形性関節症、食道癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の切除部位の食道狭窄抑制、角膜再生、間葉系幹細胞は認知症などの脳疾患、乳房再建、変形性関節症・外傷性軟骨欠損症、虚血性心疾患、筋芽細胞は虚血性心疾患等の細胞の再生が必要な部位に移植することによって治療を行う。治療目的によって、培養に用いる細胞も、細胞シートの大きさも様々なものを用意する必要がある。
再生医療において細胞を移植する際には、細胞をシート状のまま、細胞培養器材から剥離する必要がある。細胞培養器材から、細胞シートを剥離する方法としては、ディスパーゼ等のタンパク質分解酵素を用いて、培養器材の培養表面と細胞間の結合を弱める方法や、細胞接着力の変化する培養表面を備えた細胞培養器材を用いる方法がある。
タンパク質分解酵素を用いて回収すると、細胞と細胞培養器材の培養表面の結合だけではなく、細胞間の結合を弱めることから、細胞シートに損傷を与え移植後の生着性が著しく劣るという問題がある。この問題を回避するために、細胞膜に存在するタンパク質を破壊せずに細胞を回収する、細胞に対する接着力の変化する培養表面を備えた細胞培養器材を用いる方法が推奨されている。
細胞接着力が変化する培養表面を用い、細胞シートを回収する方法として、刺激応答性ポリマーを用いる方法がある。刺激の種類としては、温度、pH、イオン、光、電位、磁性等が挙げられるが、温度応答性ポリマーの使用による温度刺激が、刺激の付与が容易であり細胞に対する影響もないことから好適に用いることができる。特許文献1には、細胞培養器材を上限臨界溶解温度、下限臨界溶解温度を有するポリマーで被覆した培養器材が開示されている。温度応答性ポリマーによって、環境温度を変化させ培養器材表面の疎水性、親水性バランスをコントロールすることができる。
温度応答性ポリマーで被覆した培養器材は、細胞培養時の温度では器材表面のポリマーから水が脱離することでポリマー表面が収縮し表面が細胞を接着しやすくなる。一方、所定の温度以下では器材表面が親水性となり、細胞が接着していた足場が失われることにより、細胞が器材から剥離する。温度応答性ポリマーを利用する方法によれば、細胞、器材間の接着性は失われるものの、細胞同士の接着性は失われないことから、細胞をシート状のまま回収することができる。
再生医療等による治療は、上皮細胞、内皮細胞、及び幹細胞による治療であり、治療する領域によって必要となる細胞シートを準備する。治療によって、準備する細胞の種類や大きさも異なり、それに伴い培養時の細胞の扱いやすさも異なっている。例えば、食道癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の食道狭窄の抑止や、角膜や歯周組織等の再生に用いる場合には、さほど大きな面積の細胞シートを必要としない。一方で広範囲熱傷の処置等には面積の大きい細胞シートを必要とする。面積の大きい細胞シートは、面積の小さい細胞シートと比較して、製造過程で培養器材から剥がれやすい。また、筋芽細胞など非常に剥離しやすい性質を備えた細胞種がある。面積の大きい細胞シートを製造する場合、あるいは、細胞の種類によっては細胞が増殖しコンフルエントになるに従い、培養液を交換する際のピペッティング操作等による機械的刺激によって、細胞が培養器材の表面から剥がれやすくなる。
細胞シートとして回収する場合には、コンフルエントに到達させる状態まで細胞を培養するが、培地を吸引する際に細胞シートとして回収する細胞が剥がれてしまうと、移植にも問題をきたす。十分な注意を払って作業を行っているにもかかわらず、培養期間中の培地交換等において細胞が縁から剥がれてしまうと、細胞シートとして回収できず移植を行うことができない。また、細胞を広範囲熱症の処置等に用いる場合には、移植面積が大きいことから、なるべく培養面積の大きい培養器材を使用し、培養した細胞シートをすべて回収することが必要である。上述のように、培養面積が大きいと細胞が剥離しやすくなるため、培地交換等の際の細胞の剥離は大きな問題であった。
刺激応答性表面を備えた培養器材を用いる方法において、器材表面に刺激応答性表面と、刺激応答性を持たない表面を配置し、細胞の接着性を調節した細胞培養容器が開示されている(特許文献2、3)。特許文献2には、刺激付与後でも細胞シートを培養面上に安定的に保持しかつ細胞シートを容易に回収するための培養容器として、刺激応答性領域を取り囲むように細胞接着性を備えた細胞接着領域を有する細胞培養器材が開示されている。特許文献3には、細胞の足場(培養器材表面)と接着している側である裏面を容易に観察可能な細胞培養器材を提供するために、刺激応答性領域、細胞接着領域、及び細胞非接着領域を備え、刺激応答性領域の外周の少なくとも一部に細胞非接着領域との境界を備えた細胞培養器材が開示されている。
特開平05-192138号公報 特開2019-24350号公報 特開2012-105608号公報
しかしながら、特許文献2に記載されている容器は、刺激付与により刺激応答性領域から細胞が剥離した後に細胞が接着できる領域を確保することによって、細胞シートを培養表面に保持し、かつピペッティングあるいはピンセットで接着部位を剥離することによって、細胞を簡単に回収するための容器である。すなわち、特許文献2に記載の細胞培養容器は、刺激付与後、細胞シートの一部を培養器材表面に保持しつつ、ピペッティング等によって、容易に細胞シートを剥がせるように構成されている。したがって、培養期間中、すなわち刺激付与前の培地交換等の際の機械的な刺激によって、細胞が剥がれてしまうことを想定しておらず、細胞培養期間中に細胞が剥離し、細胞シートとして回収できなくなることを抑止することを目的としたものではない。
特許文献3に記載の培養器具は、刺激を付与することによって、一部領域の細胞をシート状に剥離させ、裏面を観察するためのものである。したがって、細胞表面を観察する側である細胞接着領域は強固に培養器材に接着したままであることを想定している。したがって、培養途中での機械的な刺激に対して細胞の剥離を考慮したものではない。
実施形態で示すように、培地交換等の作業における機械的な刺激に対して、細胞が剥がれにくい細胞剥離抑制領域を備え、細胞シートとして回収可能な培養器材を提供することを課題とする。さらに、本実施形態の培養器材を開発する際に、細胞剥離抑制領域を備えることによって、培養期間中に細胞が培養器材から剥離することを防止できるが、一方で細胞シートの回収が容易に行えないという問題も生じることが明らかとなった。これを解決するために細胞をシート状のまま剥離する際に使用する回収用支持体の素材を工夫した。本発明は、細胞シートの剥離を防止するとともに、細胞シートの回収も容易に行うことのできる細胞シート製造用キットを提供することを課題とする。
また、再生医療の基礎研究や、創薬研究に用いる際に、同一の条件で培養した細胞を種々の方法で解析することが求められていた。例えば、細胞シートを動物モデルに移植し、同一の条件で培養した細胞シートの遺伝子発現をPCR、あるいはウェスタンブロッティングによって解析したり、細胞の形態を顕微鏡で観察することが行われている。再生医療に用いる細胞は、通常細胞株ではなく、患者から得た皮膚や粘膜等の組織由来の細胞であることから、培養器材毎に細胞の性質が必ずしも同一にならない可能性がある。そのため、生じた変化が細胞のバリエーションによるものか、薬剤等での処理による変化であるかが疑問視される場合があった。本実施形態では、1つの培養器材から複数の培養シートを回収できる細胞シート製造用キット、培養器材を提供することを課題とする。同じ培養器材で培養した細胞を解析することにより、培養条件を全く同一にすることが可能となり、より精密に変化を解析することができる。
本発明は以下の細胞培養器材、細胞シート回収用支持体、及び細胞シート製造用キットを包含する。
(1)細胞培養面の周囲に細胞の剥離を抑制する細胞剥離抑制領域を設け、前記細胞剥離抑制領域の内側に外部刺激により細胞に対する接着性が変化する刺激応答性領域を配置することを特徴とする細胞培養器材。
(2)前記細胞培養器材の前記細胞培養表面は、3.5cm以上300cm以下である(1)記載の細胞培養器材。
(3)前記細胞剥離抑制領域は、1℃~50℃の温度範囲において細胞接着性表面である(1)又は(2)記載の細胞培養器材。
(4)前記細胞接着性表面が、外部刺激に応答することのない培養表面である(3)記載の細胞培養器材。
(5)前記外部刺激が、光、温度、pH、磁場である(1)~(4)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(6)前記刺激応答性領域は、温度による刺激に応答する温度応答性表面であり、0℃以上32℃以下の温度で細胞が剥離する表面であることを特徴とする(1)~(5)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(7)前記細胞剥離抑制領域及び刺激応答性領域は、同一平面上で区分することを特徴とする(1)~(6)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(8)前記細胞剥離抑制領域は、幅2mm以上10mm以下であることを特徴とする(1)~(7)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(9)前記細胞剥離抑制領域は、細胞培養面の周囲に加えて細胞培養面を分割するように設けられていることを特徴とする(1)~(8)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(10)前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域とが、目視によって区別可能に加工されていることを特徴とする(1)~(9)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(11)前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域は、光透過性を有することを特徴とする(1)~(10)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(12)前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域の刺激しない条件での細胞接着性は、細胞剥離抑制領域が刺激応答性領域に比べて強い細胞接着性を有することを特徴とする(1)~(11)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(13)上皮細胞、間葉系幹細胞、又は筋芽細胞の細胞シートを製造するためのものである(1)~(12)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(14)前記刺激応答性領域及び前記細胞剥離抑制領域は、前記細胞培養表面に温度応答性モノマーを被覆し、前記刺激応答性領域のみに電子線、γ線、又は紫外線を照射することにより刺激応答性層を形成させ製造する(1)~(13)いずれか1つ記載の細胞培養器材。
(15)(1)~(14)いずれか1つ記載の細胞培養器材と細胞シート回収に用いる回収用支持体を備えた細胞シート製造用キット。
(16)前記回収用支持体が、厚さ30μm以上300μm以下で、坪量10g/m以上150g/m以下であり、湿潤引張強度0.03kN/m以上1.0kN/m以下の紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムであることを特徴とする(15)記載の細胞シート製造用キット。
(17)前記回収用支持体が、前記刺激応答性領域に比べて直径又は縦横の長さが小さいことを特徴とする(15)又は(16)記載の細胞シート製造用キット。
(18)厚さ30μm以上300μm以下で、坪量10g/m以上150g/m以下であり、湿潤引張強度0.03kN/m以上1.0kN/m以下の紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムであることを特徴とする細胞シートの回収に用いる回収用支持体。
(19)(1)~(14)のいずれか1つに記載の細胞培養器材で細胞を培養して細胞シートを形成する工程と、(18)の回収用支持体で細胞シートを回収する工程を含む細胞シートの製造方法。
(20)(15)~(17)のいずれか1つに記載の細胞シート製造用キットを用い、細胞を培養して細胞シートを形成し、細胞シートを回収する工程を含む、細胞シートの製造方法。
(21)(1)~(14)のいずれか1つに記載の細胞培養器材を用いて製造した細胞シートによって、治療を行うことを特徴とする治療方法。
(22)(15)~(17)のいずれか1つ記載の細胞シート製造用キットを用いて製造した細胞シートによって、治療を行うことを特徴とする治療方法。
(23)前記治療の対象が広範囲熱傷、白斑、潰瘍、褥瘡、肺気漏、変形性関節症、食道狭窄、大腸小腸狭窄、子宮内膜症、骨粗鬆症、腎線維化、肝線維化、虚血性心疾患である(21)又は(22)記載の治療方法。
一実施形態の細胞培養器材の培養表面の刺激応答性領域と細胞剥離抑制領域の例を模式的に示す図。 他の実施形態の細胞培養器材の培養表面の刺激応答性領域と細胞剥離抑制領域の例を模式的に示す図。 細胞培養器材、回収用支持体を含む細胞培養製造用キットの例を示す図。(A)は培養器材の斜視図(左)、回収用支持体の平面図(右)を示す。(B)は蓋をとった培養器材の平面図、(C)は培養器材に回収用支持体を載置したところを示す。
以下に示す細胞培養器材は、細胞シート回収時まで、細胞が剥離することがなく、細胞シートを簡便に回収することができることから、再生医療等の治療に用いる細胞シートを効率よく製造することができる。また、再生医療の研究開発、あるいは創薬研究に適した細胞培養器材として好適に用いることができる。
細胞シート製造用キットに含まれる細胞培養器材は、どのような形状のものを用いてもよく、所望の細胞シートの大きさ、形状を考慮して適宜選択することができる。細胞培養器材は、一般的に細胞の培養に用いられているものであればどのような形状であってもよいが、例えば、シャーレ、フラスコ、マルチウェルプレート等、通常接着細胞を培養するための容器形状であることが好ましい。フラスコを用いる場合には、ピールオフタイプのフラスコ、あるいは上部が脱着可能であるフラスコであれば、フラスコ上部の取り外しが可能であることから、回収用支持体を使用した細胞シートの回収も容易に行うことができる。
以下に図面を示しながら、最初に細胞シート製造用キットの構成要素である細胞培養器材について説明するが、以下の実施形態に限定されるものではない。
[実施形態1]
本発明の細胞培養器材の一実施形態は、培養器材の内周に細胞剥離抑制領域1を備え、その内側に刺激応答性領域2を備えた細胞培養器材である。図1は細胞培養器材の培養表面を模式的に示した図である。刺激応答性領域2及び細胞剥離抑制領域1が隣接することから境界部分である接着/剥離境界3が存在する。図1に示す細胞培養器材の培養表面は、長方形、及び円形のものを例示しているが、正方形等どのような形状であってもよく、また、大きさも細胞シートを移植する場所によって、適宜最適な大きさを選定することができる。
細胞培養器材には、中央に刺激応答性領域2、その外縁に細胞剥離抑制領域1が配置されており、細胞剥離抑制領域1は刺激応答性領域2の全周にわたって設けられている。培地交換は、培養器材の縁に沿った部分から吸引し、培地を添加する。したがって、培養表面の外縁部の細胞接着性が高ければ、培地交換の際の機械的刺激によって、細胞の剥離が起こりにくい。また、培養器材の内周に沿って全域に細胞剥離抑制領域が設けられていることが重要である。細胞剥離抑制領域が全周にわたって設けられていることから、培地の吸引、添加をどの位置で行っても細胞の剥離を防ぐことができる。全周にわたって存在する細胞剥離抑制領域1によって、細胞がしっかりと培養器材表面に接着し、培地交換時の機械的刺激による剥離を回避できる。
細胞剥離抑制領域1は、刺激の有無に関わらず細胞の剥離を抑制する表面で構成されている領域である。細胞剥離抑制領域は細胞接着性に富むことが望ましいが、細胞接着性の程度としては培地の吸引、添加等の機械的刺激に対して細胞の接着性が保たれればよい。また、刺激応答性領域の細胞接着性よりも細胞に対する接着性が高いことが好ましい。
例えば、以下に示す実施形態で用いている培養器材は、マウス神経芽細胞腫細胞株Neuro2aを5×103細胞/cm~1×10細胞/cmで播種し、10% FBSまたはFCSを含むDMEM培地を用いて培養した場合、培養1時間後の細胞接着伸展率が刺激応答領域では培養表面の5~20%、細胞剥離抑制領域では60~75%と、細胞剥離抑制領域でより強い細胞接着伸展率を有するように加工されている。すなわち細胞剥離抑制領域では刺激応答性領域に刺激を付与していない状態であっても、3倍以上15倍以下の範囲で刺激応答性領域に対して強い細胞接着性を有している。しかし、細胞の接着性は細胞の種類、播種数、用いる培地等、培養条件によっても異なることが知られていることから、この数値にとらわれることなく、通常用いられる細胞接着性の指標によって判断し、細胞剥離抑制領域でより強い細胞接着性を有するようにすることができる。
細胞剥離抑制領域は、細胞接着性や増殖性を向上させた表面であればよい。したがって、培養器材として一般的に用いられているガラス、表面処理を行っているプラスチックで構成されていればよい。プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、表面処理としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、電子線照射処理、レーザー処理等、通常プラスチックの改質に使用される方法を用いることができる。
また、細胞の剥離をより積極的に防止するために、物理化学的に細胞の接着性を高める物質、例えば、親水化ポリスチレン、ポリリジン等の塩基性高分子、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミンプロピルトリメトキシシラン等の塩基性化合物やこれらを含む縮合物を表面に塗布してもよい。また、生物化学的特性により細胞の接着性を高める物質、例えば、フィブリン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、ヒドロネクチン、コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、RGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸)配列含有ペプチド、YIGSR(チロシン-イソロイシン-グリシン-セリン-アルギニン)配列含有ペプチド及びこれらの混合物を塗布してもよい。
刺激応答性領域2は、刺激により細胞の接着性が変化する領域であればよく、上限もしくは下限臨界溶解温度が0~80℃である温度応答性ポリマーを好ましく用いることができる。温度応答性ポリマーは、上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下の温度では周囲の水に対する親和性が高くなり、ポリマーが水を取り込んで膨張するために細胞非接着性を示し、上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上の温度では水がポリマーから脱離することから細胞接着性を示すものが好ましい。特に上限臨界溶解温度は通常細胞を培養する温度である37℃以上が好ましく、下限臨界溶解温度(T)は、通常細胞を培養する温度である37℃以下であることが好ましい。具体的には0℃以上32℃以下の温度範囲で培養器材表面が細胞非接着性を示すポリマーであることが好ましい。
このような温度応答性ポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、又はメタクリル系ポリマーが挙げられ、より具体的には、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ-N-n-プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ-N-n-プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ-N-エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ-N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ-N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、ポリ-N,N-ジエチルアクリルアミド(T=32℃)等が挙げられる。
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、γ線などの放射線や電子線、紫外線照射などによって重合し得るモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体等を単独、あるいは2種以上を混合して用いても良い。
上記重合性モノマーを細胞培養容器に被覆し、電子線や放射線を照射することにより、モノマーが重合しポリマー層となり刺激応答性領域が形成される。細胞剥離抑制領域の形成は、培養面積全面に刺激応答性領域を形成し、刺激応答性層を除去する方法と、細胞剥離抑制領域は電子線等を遮蔽することによって重合が生じないようにし、部分的に刺激応答性層を形成させない方法がある。ここでは、細胞剥離抑制領域を形成したい部分を遮蔽し、ポリマーが形成されないようにしている。刺激応答性領域を除去し、細胞剥離抑制領域を形成する場合には、ポリマーが形成された層の厚さを把握し完全に除去する必要があるだけではなく、除去したポリマーを培養表面から除くなとの管理が必要となる。細胞剥離抑制領域で電子線等を遮蔽する方法を用いれば、刺激応答性層を除去する必要がなく、非常にシンプルな工程により細胞剥離抑制領域と刺激応答性領域を形成することが可能である。
細胞剥離抑制領域1の幅は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。培地の吸引、添加による機械的刺激は、培養器材等の大きさには依存せず、培養器材の壁から一定の幅の領域に及ぶ。細胞剥離抑制領域は、幅が2mmよりも狭いと、十分な細胞接着力を得ることができず、細胞シートが剥離する可能性がある。したがって、細胞剥離抑制領域が狭いと、細胞の剥離を防止することができない。また、幅が広ければ安定した接着力を得ることができるが、回収できる細胞面積も減少してしまう。また、幅が広いと細胞が培養器材から剥離せず、培養器材上から回収することが難しい。したがって、十分に安定した接着力を確保するとともに、細胞シートの回収効率を検討した結果、細胞剥離抑制領域の幅は、2mm以上10mm以下、より好ましくは4mm以上8mm以下であることが好ましい。上述のように細胞剥離抑制領域の細胞接着力は、細胞培養温度で、刺激応答性領域に比べて強い細胞接着力があればよいが、細胞を剥離させる刺激の有無にかかわらず、同じ接着力を備えている必要がある。
上述のように、培養面積が広い細胞培養器材を使用した場合に、培地交換の際に剥離しやすい。実際にヒツジケラチノサイトの初代培養細胞を使用して、培養面積により剥離しやすさが異なるか検討した。刺激応答性領域のみの細胞培養器材、あるいは刺激応答性領域の周囲に5mmの幅で細胞剥離抑制領域を有する細胞培養器材を用いて検討を行った。いずれの培養容器を使用する場合も、面積に応じて細胞の播種数を調節し、4日目、7日目に培地交換、10日目に細胞シート回収というスケジュールで検討している。細胞培養開始後、7日目にはいずれの培養容器においてもセミコンフルエント、10日目にはコンフルエントの状態まで細胞は増殖している。いずれのプレートの材質もポリスチレンであり、温度応答性ポリマーを被覆し同一の温度応答性表面加工を行い、刺激応答性領域を形成している。
Figure 2022087900000002
表1に示すように、培養面積3.5cmであっても、細胞剥離抑制領域のない培養容器では細胞の剥離が12ウェル中3ウェルという高頻度で確認された。さらに、培養面積8.8cmよりも大きい場合には、7日目の培地交換中に細胞が剥離し、細胞シートとして回収することができなかった。細胞剥離抑制領域と刺激応答性領域を備えた細胞培養器材の場合には、8.8cmの培養容器であっても細胞を問題なく回収することができていることから、培養面積3.5cmでの確認は行っていないものの、問題なく細胞シートとして回収す

ることが可能である。また、ここでは培養面積84cmのプレートを用いて比較検討を行っているが、培養面積225cmであっても細胞シートを問題なく回収可能であることは確認している。
また、細胞剥離抑制領域と刺激応答性領域は同一平面上に配置する。細胞剥離抑制領域、刺激応答性領域に凹凸があると、細胞シートとして回収し臨床で細胞シートとして患部に適用する場合に密着しない部分が生じ、生着性が劣ると考えられるからである。
種々の細胞を培養することによって得られた細胞シートは、患部に移植して治療を行うことができる。例えば、表皮細胞シートは広範囲熱傷、白斑、潰瘍、褥瘡、軟骨シートは変形性関節症の治療に、間葉系幹細胞シートは認知症などの脳疾患、乳房再建、変形性関節症・外傷性軟骨欠損症、虚血性心疾患の治療に、線維芽細胞シートは肺気漏の治療に、口腔粘膜上皮細胞シートは、食道狭窄、大腸小腸狭窄、子宮内膜症の治療に、骨芽細胞シートは骨粗鬆症の治療に、腎細胞シートは腎線維化の、肝細胞シートは肝線維化の治療に、筋芽細胞、心筋細胞、平滑筋細胞シートは、虚血性心疾患の治療に用いることができる。なお、細胞シートとして用いることができる細胞は上記に限られることはなく、また、適用される疾患も細胞移植により改善が認められる疾患であればどのような疾患に用いてもよい。
細胞培養中に細胞が剥離するのを防ぐために、刺激応答性領域の周囲に所定の細胞接着性及び幅を備えた細胞剥離抑制領域を設けた培養器材は今までにない。移植のためには細胞をコンフルエントになるまで培養する必要があるが、細胞剥離抑制領域を設けたことにより、細胞培養期間中に細胞が剥離することなく培養することが可能となった。
[実施形態2]
次に、一つの培養表面を細分した培養器材について説明する。図2は培養表面が細分化された培養器材の培養表面を模式的に示している。ここでは、培養器材の培養表面を細胞剥離抑制領域11によって、四分割(図2左)、あるいは八分割(図2右)した例を示している。ここでは、長方形の培養器材を細分した例を示したが、正方形、円形等どのような形状の培養器材であっても同様に細胞剥離抑制領域11によって細分することができる。また、用途によっては等分に分割するのではなく、分割する区域に大小があっても構わない。この形態では、細胞剥離抑制領域11が刺激応答性領域12の外周に沿って、培養表面内部にも存在することになる。接着/剥離境界13は細胞剥離抑制領域11で細分化された各刺激応答性領域12の外周として存在することになる。
培養表面が細分化された培養器材の場合も、細胞剥離抑制領域11の幅は、2mm以上10mm以下、より好ましくは4mm以上8mm以下に設定することが好ましい。細分した区画を備えた培養器材を用いた場合には、上述のように区画毎に異なる解析を行うことが可能となるだけではなく、区画毎に細胞シートとして回収し、異なる患部に適用することも可能である。さらに、細胞剥離抑制領域が刺激応答性領域の外周だけではなく、内部にも存在することになるから、細胞の剥離をより強く抑制することが可能となる。
本実施形態の培養器材は表面が細胞剥離抑制領域により細分割されていることから、同一の培養条件で培養した細胞を異なる解析方法で解析することが可能となる。同一の培養器材で培養した細胞を用いることにより、より正確な解析結果を得ることができる。また、本実施形態によれば、一つの培養器材で培養した細胞シートを複数の患部に適用することも可能である。
[実施形態3]
次に、培養器材21と細胞シートを回収する回収用支持体22を含む細胞シート製造用キット23について説明する(図3(A))。培養した細胞をシート状のまま回収するためには、回収用支持体22を用いることが好ましい。回収用支持体22に細胞を付着させることにより、ピンセット等で容易に把持することができる。
細胞シートの回収は以下のようにして行う。細胞がコンフルエントに達した後、培地を吸引除去する。培地を吸引後、操作中の細胞の乾燥を防ぐため、少量の培地を添加する。培地の量は、5μl/cmから30μl/cm程度の量であればよい。次に細胞の上に回収用支持体22を載置する。回収用支持体22は刺激応答性領域より一回り小さい大きさとする。例えば、長方形や正方形形状の培養器材の場合には、刺激応答性領域の縦、横の長さのそれぞれ1mmから5mm程度短くすればよい。円形の場合には、直径が同じく1mmから5mm程度短いものを用意すればよい。
例えば、刺激応答性領域が温度応答性であり、下限臨界溶解温度が32℃の場合には、32℃以下の温度、好ましくは0℃~30℃で5~60分程度静置する。静置後、ピンセット等で回収用支持体を把持して持ち上げると、細胞はシート状のまま回収用支持体に付着し、細胞培養器材から剥がれてくる。なお、細胞剥離抑制領域に接着性の高い細胞の場合には、回収用支持体の周囲をピンセット等により剥離すればよい。回収用支持体に付着した細胞シートは、そのまま移植したい部位に載置すればよい。回収用支持体に付着している面と反対側の面、すなわち露出している面は、培養器材表面に接着していた面となる。すなわち足場と付着していた面であり、この面を移植を必要とする面と密着させることができる。
回収用支持体22は紙、セルロースフィルム、プラスチックフィルム等の公知の素材を用いることができる。細胞に対する接着性が良いことから、紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムを用いることが好ましい。ただし、培養液に浸しても破けないことや、細かい作業となることから柔軟性があり扱いやすい素材であることが好ましい。具体的な回収用支持体の素材は、厚さ30μm以上300μm以下で、坪量10g/m以上150g/m以下であり、湿潤引張強度0.03kN/m以上1.0kN/m以下の紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムであることが好ましい。この範囲の厚さ、秤量であれば、ピンセットで把持しやすく、細かい操作を行いやすい。また、この範囲の湿潤引張強度を有する素材であれば、培養液で濡れた場合でも破損の心配がない。
また、回収用支持体22はその大きさにもよるが刺激応答性領域と細胞剥離抑制領域が形成する接着/剥離境界24より1~2mm内側に載置するのが望ましい(図3(C))。細胞剥離抑制領域は刺激によって細胞が剥離しないことから、細胞が強固に器材表面と接着している場合には細胞シートの破れに繋がる怖れがあるからである。回収用支持体は、刺激応答性領域より一回り小さい大きさのものが用意されているが、回収用支持体を接着/剥離境界の内側に載置するのは非常に難しい。特に、培養表面が大きい場合には縦横ともに内側に載置するのは細かい手技となる。
図3(B)及び3(C)に示すように、細胞剥離抑制領域に該当する領域に目視によって確認可能な境界表示マーク25を設けることにより、接着/剥離境界24を識別することができる。刺激応答性領域と細胞剥離抑制領域の器材表面は光学的に変化のある表面ではないことから、接着/剥離境界がどこにあるかは分からない。しかし、境界表示マーク25により、回収用支持体22を載置すべき場所を視認することができることから、確実に回収用支持体を接着/剥離境界24の内側に載置することができる。
境界表示マーク25は、細胞剥離抑制領域、あるいは、接着/剥離境界に該当する箇所の培養器材表面あるいは底面にフロスト加工や、薄い彩色を施せば良い。光透過性の加工であれば、細胞の増殖や形態を顕微鏡下で観察する場合にも不具合を生じることはない。また、細胞の増殖等は、刺激応答性領域で確認可能であり、細胞剥離抑制領域に加工や彩色が施されていても培養を行ううえでは全く問題は生じない。加工する面は、加工が細胞接着に影響を及ぼさない加工であれば細胞が接着する面であっても、また、容器の外側であってもよい。
本実施形態の細胞シート製造用キットは、細胞の培養期間中に細胞が剥離することを抑止するとともに、細胞シートを回収する際には容易に回収することができる。培養器材と回収支持体を備えた細胞シート製造用キットは今までにない構成である。細胞シート製造用キットを用いることによって、製造した細胞シートをシート状のまま簡単に把持することができる。そのため、今まで細胞シートの扱いにはある程度訓練の必要があったが、初心者でも扱うことが可能となった。
1、11・・・細胞剥離抑制領域、2、12・・・刺激応答性領域、3、13、24・・・接着/剥離境界、21・・・培養器材、22・・・回収用支持体、23・・・細胞シート製造用キット、25・・・境界表示マーク

Claims (20)

  1. 細胞培養面の周囲に細胞の剥離を抑制する細胞剥離抑制領域を設け、
    前記細胞剥離抑制領域の内側に外部刺激により細胞に対する接着性が変化する刺激応答性領域を配置することを特徴とする細胞培養器材。
  2. 前記細胞培養器材の前記細胞培養表面は、
    3.5cm以上300cm以下である請求項1記載の細胞培養器材。
  3. 前記細胞剥離抑制領域は、
    1℃~50℃の温度範囲において細胞接着性表面である請求項1又は2記載の細胞培養器材。
  4. 前記細胞接着性表面が、外部刺激に応答することのない培養表面である請求項3記載の細胞培養器材。
  5. 前記外部刺激が、光、温度、pH、磁場である請求項1~4いずれか1項記載の細胞培養器材。
  6. 前記刺激応答性領域は、
    温度による刺激に応答する温度応答性表面であり、
    0℃以上32℃以下の温度で細胞が剥離する表面であることを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の細胞培養器材。
  7. 前記細胞剥離抑制領域及び刺激応答性領域は、
    同一平面上で区分することを特徴とする請求項1~6いずれか1項記載の細胞培養器材。
  8. 前記細胞剥離抑制領域は、
    幅2mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1~7いずれか1項記載の細胞培養器材。
  9. 前記細胞剥離抑制領域は、細胞培養面の周囲に加えて細胞培養面を分割するように設けられていることを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の細胞培養器材。
  10. 前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域とが、
    目視によって区別可能に加工されていることを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の細胞培養器材。
  11. 前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域は、
    光透過性を有することを特徴とする請求項1~10いずれか1項記載の細胞培養器材。
  12. 前記細胞剥離抑制領域と前記刺激応答性領域の刺激しない条件での細胞接着性は、
    細胞剥離抑制領域が刺激応答性領域に比べて強い細胞接着性を有することを特徴とする請求項1~11いずれか1項記載の細胞培養器材。
  13. 上皮細胞、間葉系幹細胞、又は筋芽細胞の細胞シートを製造するためのものである請求項1~12いずれか1項記載の細胞培養器材。
  14. 前記刺激応答性領域及び前記細胞剥離抑制領域は、
    前記細胞培養表面に温度応答性モノマーを被覆し、
    前記刺激応答性領域のみに電子線、γ線、又は紫外線を照射することにより刺激応答性層を形成させ製造する請求項1~13いずれか1項記載の細胞培養器材。
  15. 請求項1~14いずれか1項記載の細胞培養器材と
    細胞シート回収に用いる回収用支持体を備えた細胞シート製造用キット。
  16. 前記回収用支持体が、
    厚さ30μm以上300μm以下で、
    坪量10g/m以上150g/m以下であり、
    湿潤引張強度0.03kN/m以上1.0kN/m以下の紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項15記載の細胞シート製造用キット。
  17. 前記回収用支持体が、
    前記刺激応答性領域に比べて直径又は縦横の長さが小さいことを特徴とする請求項15又は16記載の細胞シート製造用キット。
  18. 厚さ30μm以上300μm以下で、
    坪量10g/m以上150g/m以下であり、
    湿潤引張強度0.03kN/m以上1.0kN/m以下の紙、セルロースフィルム、又はプラスチックフィルムであることを特徴とする細胞シートの回収に用いる回収用支持体。
  19. 請求項1~14のいずれか1項に記載の細胞培養器材で細胞を培養して細胞シートを形成する工程と、請求項18に記載の回収用支持体で細胞シートを回収する工程を含む細胞シートの製造方法。
  20. 請求項15~17のいずれか1項に記載の細胞シート製造用キットを用い、
    細胞を培養して細胞シートを形成し、
    細胞シートを回収する工程を含む、細胞シートの製造方法。
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