JP2022085749A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備える。前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備える。前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備える。前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備える。前記負極電極材料は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定される1H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を含む。前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下である。前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm2/Ah以上6700mm2/Ah以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、鉛蓄電池に関する。
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池には、負極板、正極板、セパレータ(またはマット)、および電解液などが含まれる。各極板は、集電体と、電極材料とを備える。
様々な機能を付与する観点から、鉛蓄電池の構成部材に添加剤が添加されることがある。
例えば、特許文献1は、重合度30以上3000以下のポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、またはそれらのエステルよりなる群の内のいずれかを含む高分子化合物、または該高分子化合物とコロイド状硫酸バリウム粒子のいずれかを電解液および/または電極活物質成形体中に含むことを特徴とする鉛蓄電池を提案している。
特許文献2は、防縮剤を含有するペースト式活物質が集電体に充填されてなる鉛蓄電池用負極板において、前記防縮剤として特定の化学式で示されるポリオキシパーフルオロエチレンフェニルアミンを用い、前記ポリオキシパーフルオロエチレンフェニルアミンは前記ペースト式活物質に対して0.005~3重量%含有されていることを特徴とする鉛蓄電池用負極板を提案している。
また、負極板の表面積を調節することも提案されている。
例えば、特許文献3は、正極板,負極板,電解液含浸材を兼ねたセパレータ,希硫酸電解液および合成樹脂製電槽からなり、フリーの電解液がほとんど存在しない程度に電解液量を制限した密閉形鉛蓄電池において、20時間率放電容量当たりの負極板の表面積を24~30cm/Ahとしたことを特徴とする密閉形鉛蓄電池を提案している。
特許文献4は、セルを構成する負極板の表面積を、25℃雰囲気における3時間率放電容量あたり45cm/Ah以上85cm/Ah以下とした制御弁式鉛蓄電池が提案されている。
特開2000-149981号公報 特開平9-147874号公報 特開平11-191409号公報 特開2009-140739号公報
近年、高いハイレート(HR)放電性能を有する鉛蓄電池の需要が高まっている。正極板および負極板の対向面積を増加させると、内部抵抗が低下して、HR放電性能を向上させることができる。一方で、各極板の厚みが小さくなるため、高温でフロート充電を行ったときに、正極集電体の腐食の課題が顕在化する。そのため、高温でフロート充電を含む充放電を行った場合の寿命性能(以下、高温フロート寿命性能と称することがある。)が早期に低下する。HR放電性能と高温フロート寿命性能とはトレードオフの関係にあり、両立が困難である。
本発明の第1側面は、鉛蓄電池であって、
前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
前記負極電極材料は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定されるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を含み、
前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池に関する。
本発明の第2側面は、鉛蓄電池であって、
前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
前記負極電極材料は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物を含み、
前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池に関する。
高いHR放電性能を確保しながら、優れた高温フロート寿命性能が得られる鉛蓄電池を提供できる。
本発明の一側面に係る鉛蓄電池のフタを外した状態を模式的に示す斜視図である。 図1の鉛蓄電池の正面図である。 図2Aの鉛蓄電池のIIB-IIB線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。
鉛蓄電池の用途の拡大に伴い、高いHR放電性能を有する鉛蓄電池への需要が高まっている。例えば、無停電電源装置(UPS)用途などの産業用据置電池の多くでは、従来、10時間率での放電がHR放電として想定されていた。ところが、近年は、15分率または5分率といった厳しい条件における高いHR放電性能への要求が増加している。
例えば、正極板の負極板に対する対向面積を増加させると、内部抵抗が低下して、HR放電性能を向上させることができる。正極板および負極板の枚数を増加させると、対向面積を容易に増加させることができる。しかし、各極板の枚数が増加すると、極板の厚みは小さくなるため、正極集電体の腐食の課題が顕在化し易い。正極集電体の腐食は、特に、高温でのフロート充電時に顕著になる。そのため、高温でのフロート充電を行った後に、HRで放電しときの寿命性能(高温フロート寿命性能)が低下する。従って、高いHR放電性能を確保しながら、優れた高温フロート寿命性能を得ることは困難である。
上記に鑑み、本発明の第1側面に係る鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備える。極板群は、負極板と、正極板と、負極板および正極板の間に介在するセパレータとを備える。負極板は、負極集電体および負極電極材料を備える。正極板は、正極集電体および正極電極材料を備える。負極電極材料は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定されるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を含む。正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下である。正極板の負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である。
なお、上記のH-NMRスペクトルにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下のケミカルシフトの範囲に現れるピークは、オキシC2-4アルキレンユニットに由来する。
本発明の第2側面に係る鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備える。極板群は、負極板と、正極板と、負極板および正極板の間に介在するセパレータとを備える。負極板は、負極集電体および負極電極材料を備える。正極板は、正極集電体および正極電極材料を備える。負極電極材料は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物を含む。正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下である。正極板の負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である。
以下、正極板の負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積を、単に正極板の負極板との「対向面積」と称することがある。
第1側面および第2側面のそれぞれに係る鉛蓄電池では、上記のポリマー化合物を含む負極電極材料を備える負極板と、Ca含有量が0.07質量%以下である正極集電体を備える正極板と、を組み合わせるとともに、正極板の負極板との対向面積を2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下に制御する。このような構成により、鉛蓄電池において、高いHR放電性能を確保しながら、優れた高温フロート寿命性能を得ることができる。
第1側面および第2側面のそれぞれに係る鉛蓄電池において、高いHR放電性能を確保しながら、優れた高温フロート寿命性能を確保することができるのは、次のような理由によると考えられる。
まず、正極板の負極板との対向面積を2450mm/Ah以上とすることで、高いHR放電性能が得られる。例えば、15分率または5分率といった厳しいHR条件でも、放電反応をスムーズに進行させることができる。正極板の負極板との対向面積が大きくなると、極板の厚みが小さくなるため、通常であれば、高温(例えば、60℃程度)でのフロート充電時に正極集電体の腐食が顕在化し易くなる傾向がある。しかし、正極集電体中のCa含有量を0.07質量%以下に制御することで、正極集電体の腐食をある程度低減することができる。正極集電体の耐食性は、正極集電体中のCa含有量を低減するほど向上する傾向がある。
負極電極材料に含まれるポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有することで線状構造を取り易いため、負極電極材料では、鉛の表面がポリマー化合物で薄く広く覆われることになる。鉛表面の広範囲な領域で、ポリマー化合物により鉛の表面が覆われることで、負極板における水素過電圧が上昇し、負極板の電位が卑な方向にシフトする。これに伴い、正極板の電位も卑な方向にシフトするため、正極集電体の腐食の速度が遅くなる。Ca含有量の制御により、正極集電体の腐食が軽減されている状態で、ポリマー化合物を負極電極材料に用いることで、ポリマー化合物による各極板の電位をシフトする効果がより効果的に発揮され、正極集電体の腐食を顕著に抑制することができる。これにより、高い高温フロート寿命性能が得られる。換言すると、正極集電体の厚みを、高いHR放電性能を確保できるほど小さくしても、高温フロート充電時の正極集電体の腐食を低減できることで、寿命性能を向上できる。このようなポリマー化合物による効果は、正極板の負極板との対向面積が6700mm/Ah以下である場合に有効に発揮される。また、Ca含有量が0.07質量%を超える場合または対向面積が6700mm/Ahを超える場合には、寿命性能に与える影響のうち、正極集電体の腐食の影響が非常に大きくなり、ポリマー化合物を負極電極材料に用いても、寿命性能の向上効果はほとんど得られないか、得られる場合でもごく僅かである。
また、負極電極材料に有機系添加剤が含まれる場合に、有機系添加剤が鉛の細孔内で偏在した状態となると、負極電極材料の細孔内におけるイオン(鉛イオン、硫酸イオンなど)の移動が妨げられ、HR放電性能が低下する。しかし、上記のポリマー化合物が負極電極材料中の鉛の表面を覆う被膜の厚みは薄く、ポリマー化合物の偏在が抑制される。ポリマー化合物の被膜による立体障害は小さいため、負極電極材料の細孔内におけるイオンの移動が妨げられることが低減される。よって、各極板の対向面積を制御することにより得られる高いHR放電性能を維持することができる。
高温フロート寿命性能の向上効果は、鉛の表面をポリマー化合物が覆うことにより発揮され、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量がごく僅かでも得られる。このことから、ポリマー化合物を負極電極材料中に含有させることで、鉛の近傍に存在させることができ、これにより、オキシC2-4アルキレンユニットの鉛に対する高い吸着作用が発揮されると考えられる。ポリマー化合物を鉛の近傍に存在させることが重要であるため、負極電極材料以外の鉛蓄電池の構成要素にポリマー化合物が含まれているか否かに拘わらず、負極電極材料がポリマー化合物を含有していることが重要である。
なお、高温でのフロート充電を行った後に、低レートで放電を行った場合には、正極板の負極板との対向面積が、2450mm/Ah以上である場合と2450mm/Ah未満である場合とで寿命性能にほとんど違いは見られず、いずれの場合にも優れた寿命性能が得られる。つまり、高温フロート充電後の放電レートが高い場合と低い場合とで、正極板の負極板との対向面積を変化させたときの寿命期間が示す挙動は全く相違する。低レートの放電条件の場合には、正極板の負極板との対向面積の違いによって、高温フロート試験後の寿命期間が低下するという課題は生じない。
正極板の負極板との対向面積は、6500mm/Ah以下であることが好ましい。この場合、ポリマー化合物による効果がさらに発揮され易くなり、高温フロート充電時の正極集電体の腐食がさらに低減されるため、より高い高温フロート寿命性能を得ることができる。
正極集電体がCaを含む場合、正極集電体の耐食性を向上させる観点から、正極集電体もしくは正極集電体を構成する鉛合金は、更にSnを含んでもよく、例えばPb-Ca-Sn合金で構成されていてもよい。正極集電体はSnを含み得るが、Ca含有量が0.07質量%以下である場合、Sn含有量は7質量%以下が望ましい。また、正極集電体中のCaの含有量は、0.01質量%以上であってもよい。これらの場合、Ca含有量とSn含有量とのバランスにより、高温フロート充電時の正極集電体の腐食がさらに低減され、より高い寿命性能が得られる。
正極集電体中のSn含有量は、0.01質量%以上であってもよい。この場合、正極集電体において、金属結晶粒の粒界にSnが析出し易くなり、粒界を起点とした腐食(いわゆる粒界腐食)が進行しにくくなるため、高温フロート寿命性能の向上効果が顕著になると考えられる。特に、正極集電体がCaを含む場合には、Sn含有量をこのような範囲とすることで、より高い寿命性能を確保することができる。
正極集電体中のCa含有量が、0.01質量%未満である場合、Sn含有量は1.5質量%以下が好ましい。負極電極材料にポリマー化合物を用いるとともに正極集電体のCa含有量を0.01質量%未満とすると、高温フロート電池寿命は更に大幅に向上する。正極集電体のCa含有量が0.01質量%未満になると、Sn含有量が1.5質量%以下と低くても、粒界腐食が進行しにくくなるため、電池寿命の向上効果が顕著になると考えられる。
本発明の一側面に係る鉛蓄電池では、ポリマー化合物は、末端基に結合した酸素原子と、酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基とを含んでもよい。H-NMRスペクトルにおいて、3.2ppm~3.8ppmのピークの積分値の、このピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH-基の水素原子のピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合は、85%以上であることが好ましい。このようなポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットを分子中に多く含む。そのため、ポリマー化合物が、鉛に吸着し易くなるとともに、さらに線状構造を取り易くなることで、鉛表面を薄く覆い易くなる。これにより、ポリマー化合物の偏在が抑制されるとともに、極板の電位を卑な方向にシフトする効果が高まると考えられる。よって、鉛蓄電池の高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
H-NMRスペクトルにおいて、3.2ppm~3.8ppmのケミカルシフトの範囲にピークを有するポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むことが好ましい。オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物を用いる場合、ポリマー化合物が鉛に対して、より吸着し易くなるとともに、ポリマー化合物が線状構造を取り易いことで鉛表面を薄く覆い易くなり、偏在が抑制されると考えられる。よって、鉛蓄電池の高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物、ヒドロキシ化合物のエーテル化物、およびヒドロキシ化合物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。ここで、ヒドロキシ化合物は、ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、およびポリオールのポリC2-4アルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも一種である。このようなポリマー化合物を用いる場合、鉛表面が薄く広く覆われ易く、偏在が抑制されると考えられる。よって、高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
ポリマー化合物は、オキシプロピレンユニット(-O-CH(-CH)-CH-)の繰り返し構造を含んでもよい。このようなポリマー化合物は、鉛に対する高い吸着性を有しながらも、鉛表面に厚く付着することが抑制され、これらのバランスに優れていると考えられる。また、ポリマー化合物がオキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含む場合、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含む場合と比べると、充電受入性が低くなる傾向がある。しかし、本発明の第1側面および第2側面の鉛蓄電池では、高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
ポリマー化合物は、1つ以上の疎水性基を有し、疎水性基の少なくとも1つは、炭素数が8以上の長鎖脂肪族炭化水素基であってもよい。このような疎水性基の作用により、鉛表面へのポリマー化合物の過度な被覆が抑制され、ポリマー化合物の偏在をより効果的に抑制できる。ポリマー化合物が、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含む場合も好ましい。高い親水性を有するオキシエチレンユニットの繰り返し構造を含むことにより、鉛に対して選択的に吸着させることができる。よって、疎水性基と親水性基とのバランスにより、鉛蓄電池の高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
このようにポリマー化合物は、鉛に対する高い吸着性を有しながらも、鉛表面を薄く覆うことができるため、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量が少量であっても、負極板の電位を卑な方向にシフトする効果が得られることから、負極板における高い充電受入性を確保し易い。加えて、正極板の電位も卑な方向にシフトし、高温フロート充電時の正極集電体の腐食を低減することができるため、高い寿命性能が得られる。充電受入性の低下抑制効果がさらに高まることで、より高い高温フロート寿命性能が得られ易い観点からは、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、5000ppm以下であることが好ましい。正極板の電位を卑な方向にシフトする効果がさらに高まることで、より高い高温フロート寿命性能が得られる観点からは、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、3ppm以上であることが好ましい。
なお、鉛蓄電池において、ポリマー化合物を負極電極材料中に含有させることができればよく、負極電極材料に含まれるポリマー化合物の由来は特に制限されない。ポリマー化合物は、鉛蓄電池を作製する際に、鉛蓄電池の構成要素(例えば、負極板、正極板、電解液、およびセパレータ)のいずれに含有させてもよい。ポリマー化合物は、1つの構成要素に含有させてもよく、2つ以上の構成要素(例えば、負極板および電解液)に含有させてもよい。
負極電極材料の理論電気量の、正極電極材料の理論電気量に対する比(=負極電極材料の理論電気量/正極の理論電気量)は、0.7以上1.3以下であることが好ましい。この場合、正極板と負極板とで活物質の利用率のバランスを取り易くなるとともに、初期の段階においてより高い放電容量を確保することができるため、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
鉛蓄電池は、制御弁式(密閉式)鉛蓄電池(VRLA型鉛蓄電池)および液式(ベント式)鉛蓄電池のいずれでもよい。本発明の第1側面および第2側面は、特に、制御弁式鉛蓄電池に適している。
本明細書中、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量、正極集電体中のCa含有量およびSn含有量、正極板の負極板との対向面積、ならびに各極板の理論電気量は、満充電状態の鉛蓄電池から取り出した負極板または正極板について求められる。
(用語の説明)
(電極材料)
負極電極材料および正極電極材料の各電極材料は、通常、集電体に保持されている。電極材料とは、極板から集電体を除いた部分である。極板には、マット、ペースティングペーパなどの部材が貼り付けられていることがある。このような部材(貼付部材とも称する)は極板と一体として使用されるため、極板に含まれる。極板が貼付部材(マット、ペースティングペーパなど)を含む場合には、電極材料は、極板から集電体および貼付部材を除いた部分である。
なお、正極板のうち、クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、複数の芯金を連結する集電部と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを備えている。クラッド式正極板では、正極電極材料は、極板からチューブ、芯金、集電部、および連座を除いた部分である。クラッド式正極板では、芯金と集電部とを合わせて正極集電体と称する場合がある。
(ポリマー化合物)
ポリマー化合物は、下記(i)および(ii)の少なくとも一方の条件を充足する。
条件(i)
ポリマー化合物は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定されるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有する。
条件(ii)
ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含む。
条件(i)において、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲のピークは、オキシC2-4アルキレンユニットに由来する。つまり、条件(ii)を充足するポリマー化合物は、条件(i)を充足するポリマー化合物でもある。条件(i)を充足するポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニット以外のモノマーユニットの繰り返し構造を含んでもよく、ある程度の分子量を有すればよい。上記(i)または(ii)を充足するポリマー化合物の数平均分子量(Mn)は、例えば、300以上であってもよい。
(オキシC2-4アルキレンユニット)
オキシC2-4アルキレンユニットは、-O-R-(RはC2-4アルキレン基を示す。)で表されるユニットである。
(数平均分子量)
本明細書中、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。Mnを求める際に使用する標準物質は、ポリエチレングリコールとする。
(正極板の負極板との対向面積)
正極板の負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積とは、鉛蓄電池に含まれる全ての正極板について、隣接する負極板と対向する部分の面積(mm)を合計し、鉛蓄電池の10時間率容量(Ah)で除することにより求められる値である。正極板の負極板対向する部分の面積は、正極板の正極電極材料が存在する部分および負極板の負極電極材料が存在する部分のそれぞれを、極板の厚み方向に投影した投影形状が重複する部分の面積である。正極板の負極板に対向する部分の面積は、負極板の正極板と対向する部分の面積と同じである。
(理論電気量比)
負極板の理論電気量の正極板の理論電気量に対する比(以下、理論電気量比と称することがある)は、負極板の理論電気量を正極板の理論電気量で除することにより求められる。負極板の理論電気量は、鉛蓄電池に含まれる全ての負極板の負極電極材料中に含まれる鉛の質量(g)に、Pb原子1g当たりの電気容量0.2587Ahを乗ずることにより求められる。正極板の理論電気量は、鉛蓄電池に含まれる全ての正極板の正極電極材料中に含まれる鉛の質量(g)に、0.2587Ahを乗ずることにより求められる。
(満充電状態)
液式の鉛蓄電池の満充電状態とは、JIS D 5301:2019の定義によって定められる。より具体的には、25℃±2℃の水槽中で、定格容量として記載の数値(単位をAhとする数値)の0.2倍の電流(A)で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧(V)または20℃に温度換算した電解液密度が3回連続して有効数字3桁で一定値を示すまで、鉛蓄電池を充電した状態を満充電状態とする。また、制御弁式の鉛蓄電池の場合、満充電状態とは、25℃±2℃の気槽中で、定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.2倍の電流(A)で、2.23V/セルの定電流定電圧充電を行い、定電圧充電時の充電電流が定格容量に記載の数値(単位をAhとする数値)の0.005倍の値(A)になった時点で充電を終了した状態である。
満充電状態の鉛蓄電池は、既化成の鉛蓄電池を満充電した鉛蓄電池をいう。鉛蓄電池の満充電は、化成後であれば、化成直後でもよく、化成から時間が経過した後に行ってもよい(例えば、化成後で、使用中(好ましくは使用初期)の鉛蓄電池を満充電してもよい)。使用初期の電池とは、使用開始後、それほど時間が経過しておらず、ほとんど劣化していない電池をいう。
(鉛蓄電池または鉛蓄電池の構成要素の上下方向)
本明細書中、鉛蓄電池または鉛蓄電池の構成要素(極板、電槽、セパレータなど)の上下方向は、鉛蓄電池が使用される状態において、鉛蓄電池の鉛直方向における上下方向を意味する。正極板および負極板の各極板は、外部端子と接続するための耳部を備えている。横置き型の制御弁式鉛蓄電池など、耳部が、極板の側部に側方に突出するように設けられることもあるが、多くの鉛蓄電池では、耳部は、通常、極板の上部に上方に突出するように設けられている。
以下、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[鉛蓄電池]
(負極板)
負極板は、通常、負極電極材料に加え、負極集電体を備える。
(負極集電体)
負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛シートまたは鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。負極集電体として格子状の集電体を用いると、負極電極材料を担持させ易いため好ましい。
負極集電体に用いる鉛合金は、Pb-Sb系合金、Pb-Ca系合金、Pb-Ca-Sn系合金のいずれであってもよい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。負極集電体は、表面層を備えていてもよい。負極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なってもよい。表面層は、負極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、負極集電体の耳部に形成されていてもよい。耳部の表面層は、SnまたはSn合金を含有してもよい。
(負極電極材料)
負極電極材料は、上記のポリマー化合物を含む。負極電極材料は、さらに、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(具体的には、鉛もしくは硫酸鉛)を含んでいる。負極電極材料は、有機防縮剤、炭素質材料および他の添加剤からなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。添加剤としては、硫酸バリウム、繊維(樹脂繊維など)などが挙げられる。しかし、添加剤は、これらに限定されない。なお、充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
(ポリマー化合物)
ポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有する。このようなポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットを有する。オキシC2-4アルキレンユニットとしては、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシトリメチレンユニット、オキシ2-メチル-1,3-プロピレンユニット、オキシ1,4-ブチレンユニット、オキシ1,3-ブチレンユニットなどが挙げられる。ポリマー化合物は、このようなオキシC2-4アルキレンユニットを一種有していてもよく、二種以上有していてもよい。
ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むことが好ましい。繰り返し構造は、一種のオキシC2-4アルキレンユニットを含んでもよく、二種以上のオキシC2-4アルキレンユニットを含んでもよい。ポリマー化合物には、一種の上記繰り返し構造が含まれていてもよく、二種以上の上記繰り返し構造が含まれていてもよい。
オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するポリマー化合物には、界面活性剤(より具体的には、ノニオン界面活性剤)に分類されるポリマー化合も包含される。
ポリマー化合物としては、例えば、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物(ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、ポリオールのポリC2-4アルキレンオキサイド付加物など)、これらのヒドロキシ化合物のエーテル化物またはエステル化物などが挙げられる。
共重合体としては、異なるオキシC2-4アルキレンユニットを含む共重合体などが挙げられる。共重合体は、ブロック共重合体であってもよい。
ポリオールは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオール、および複素環式ポリオールなどのいずれであってもよい。ポリマー化合物が鉛表面に薄く広がり易い観点からは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール(例えば、ポリヒドロキシシクロヘキサン、ポリヒドロキシノルボルナン)などが好ましく、中でも脂肪族ポリオールが好ましい。脂肪族ポリオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、トリオール以上のポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖または糖アルコール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、炭素数が5以上のアルキレングリコールなどが挙げられる。アルキレングリコールは、例えば、C5~14アルキレングリコールまたはC5-10アルキレングリコールであってもよい。糖または糖アルコールとしては、例えば、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトールが挙げられる。糖または糖アルコールは、鎖状構造および環状構造のいずれであってもよい。ポリオールのポリアルキレンオキサイド付加物においては、アルキレンオキサイドは、ポリマー化合物のオキシC2-4アルキレンユニットに相当し、少なくともC2-4アルキレンオキサイドを含む。ポリマー化合物が線状構造を取り易い観点からは、ポリオールはジオールであることが好ましい。
エーテル化物は、上記のオキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物の少なくとも一部の末端の-OH基(末端基の水素原子とこの水素原子に結合した酸素原子とで構成される-OH基)がエーテル化された-OR基を有する(式中、Rは有機基である。)。ポリマー化合物の末端のうち、一部の末端がエーテル化されていてもよく、全ての末端がエーテル化されていてもよい。例えば、線状のポリマー化合物の主鎖の一方の末端が-OH基で、他方の末端が-OR基であってもよい。
エステル化物は、上記オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物の少なくとも一部の末端の-OH基(末端基の水素原子とこの水素原子に結合した酸素原子とで構成される-OH基)がエステル化された-O-C(=O)-R基を有する(式中、Rは有機基である。)。ポリマー化合物の末端のうち、一部の末端がエステル化されていてもよく、全ての末端がエステル化されていてもよい。例えば、線状のポリマー化合物の主鎖の一方の末端が-OH基で、他方の末端が-O-C(=O)-R基であってもよい。
有機基RおよびRのそれぞれとしては、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、置換基(例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、および/またはカルボキシ基)を有してもよい。炭化水素基は、脂肪族、脂環族、および芳香族のいずれであってもよい。芳香族炭化水素基および脂環族炭化水素基は、置換基として、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基)を有してもよい。置換基としての脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、1~30であってもよく、1~20または1~10であってもよく、1~6または1~4であってもよい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数が24以下(例えば、6~24)の芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数は、20以下(例えば、6~20)であってもよく、14以下(例えば、6~14)または12以下(例えば、6~12)であってもよい。芳香族炭化水素基としては、アリール基、ビスアリール基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。ビスアリール基としては、例えば、ビスアレーンに対応する一価基が挙げられる。ビスアレーンとしては、例えば、ビフェニル、ビスアリールアルカン(例えば、ビスC6-10アリールC1-4アルカン(2,2-ビスフェニルプロパンなど))が挙げられる。
脂環族炭化水素基としては、例えば、炭素数が16以下の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂環族炭化水素基は、架橋環式炭化水素基であってもよい。脂環族炭化水素基の炭素数は、10以下または8以下であってもよい。脂環族炭化水素基の炭素数は、例えば、5以上であり、6以上であってもよい。
脂環族炭化水素基の炭素数は、5(または6)以上16以下、5(または6)以上10以下、あるいは5(または6)以上8以下であってもよい。
脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基など)、シクロアルケニル基(シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基など)が挙げられる。脂環族炭化水素基には、上記の芳香族炭化水素基の水素添加物も包含される。
鉛表面にポリマー化合物が薄く付着し易い観点からは、炭化水素基のうち、脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素炭素二重結合を2つ有するジエニル基、炭素炭素二重結合を3つ有するトリエニル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよい。
脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、30以下であり、26以下または22以下であってもよく、20以下または16以下であってもよく、14以下または10以下であってもよく、8以下または6以下であってもよい。炭素数の下限は、脂肪族炭化水素基の種類に応じて、アルキル基では1以上、アルケニル基およびアルキニル基では2以上、ジエニル基では3以上、トリエニル基では4以上である。鉛表面にポリマー化合物が薄く付着し易い観点からは中でもアルキル基およびアルケニル基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、i-ペンチル、s-ペンチル、3-ペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、i-デシル、ウンデシル、ラウリル(ドデシル)、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、イコシル、ヘンイコシル、ベヘニルが挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル、1-プロペニル、アリル、シス-9-ヘプタデセン-1-イル、パルミトレイル、オレイルが挙げられる。アルケニル基は、例えば、C2-30アルケニル基またはC2-26アルケニル基であってもよく、C2-22アルケニル基またはC2-20アルケニル基であってもよく、C10-20アルケニル基であってもよい。
ポリマー化合物のうち、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエーテル化物およびオキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも一種を用いると、高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能が得られ易いため、好ましい。また、このようなポリマー化合物のうち、オキシプロピレンユニットの繰り返し構造を有するポリマー化合物、またはオキシエチレンユニットの繰り返し構造を有するポリマー化合物などが好ましい。
ポリマー化合物は、1つ以上の疎水性基を有してもよい。疎水性基としては、上記の炭化水素基のうち、例えば、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基、長鎖脂肪族炭化水素基が挙げられる。長鎖脂肪族炭化水素基としては、上記の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基など)のうち、炭素数が8以上の脂肪族炭化水素基が挙げられ、12以上が好ましく、16以上の脂肪族炭化水素基がより好ましい。中でも、長鎖脂肪族炭化水素基を有するポリマー化合物は、鉛に対して過度な吸着を起こし難く、ポリマー化合物の偏在をより効果的に抑制できるため、高いHR放電性能を確保する上で有利である。ポリマー化合物は、疎水性基の少なくとも1つが、長鎖脂肪族炭化水素基であるポリマー化合物であってもよい。長鎖脂肪族炭化水素基の炭素数は、30以下、26以下、または22以下であってもよい。
長鎖脂肪族炭化水素基の炭素数は、8以上(または12以上)30以下、8以上(または12以上)26以下、8以上(または12以上)22以下、10以上30以下(または26以下)、あるいは10以上22以下であってもよい。
ポリマー化合物のうち、親水性基と疎水性基とを有するポリマー化合物はノニオン界面活性剤に相当する。オキシエチレンユニットの繰り返し構造は、高い親水性を示し、ノニオン界面活性剤における親水性基となり得る。そのため、上記の疎水性基を有するポリマー化合物は、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含むことが好ましい。このようなポリマー化合物は、疎水性と、オキシエチレンユニットの繰り返し構造による高い親水性とのバランスにより、鉛に対して選択的に吸着しながらも、鉛の表面を過度に覆うことを抑制でき、偏在が抑制されるため、高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。このようなポリマー化合物は、比較的低分子量(例えば、Mnが1000以下)であっても、鉛に対する高い吸着性を確保することができる。
上記のポリマー化合物のうち、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエーテル化物およびオキシエチレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物のエステル化物などは、ノニオン界面活性剤に相当する。
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体などでは、オキシエチレンユニットの繰り返し構造が親水性基に相当し、オキシプロピレンユニットの繰り返し構造が疎水性基に相当する。このような共重合体も、疎水性基を有するポリマー化合物に包含される。
疎水性基を有し、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物としては、ポリエチレングリコールのエーテル化物(アルキルエーテルなど)、ポリエチレングリコールのエステル化物(カルボン酸エステルなど)、上記ポリオールのポリエチレンオキサイド付加物のエーテル化物(アルキルエーテルなど)、上記ポリオール(トリオール以上のポリオールなど)のポリエチレンオキサイド付加物のエステル化物(カルボン酸エステルなど)などが挙げられる。このようなポリマー化合物の具体例としては、オレイン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルが挙げられる。しかし、ポリマー化合物は、これらに限定されない。中でも、ポリエチレングリコールのエステル化物、上記ポリオールのポリエチレンオキサイド付加物のエステル化物などを用いると、より高い充電受入性を確保できるとともに、極板の電位を卑な方向にシフトさせる効果が高まるため、高温フロート寿命性能をさらに向上することができる。
界面活性剤に分類されるポリマー化合物について、極板の電位を卑な方向にシフトする効果が高まり、より高い高温フロート寿命性能を確保し易い観点からは、ポリマー化合物のHLBは、4以上が好ましく、4.3以上がより好ましい。より高い充電受入性を確保して、より高い高温フロート寿命性能を確保し易い観点からは、ポリマー化合物のHLBは、18以下が好ましく、10以下または9以下がより好ましく、8.5以下がさらに好ましい。
ポリマー化合物のHLBは、4以上(または4.3以上)18以下、4以上(または4.3以上)10以下であってもよい。より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、ポリマー化合物のHLBは、4以上(または4.3以上)9以下、あるいは4以上(または4.3以上)8.5以下が好ましい。
なお、HLBは、Hydrophile Lipophile Balanceの略で、界面活性剤(主に、ノニオン界面活性剤)の疎水性と親水性とのバランスを表す数値である。
オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造が少なくともオキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含む場合も好ましい。この場合、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含む場合と比べると、充電受入性が低くなる傾向があるが、この場合であっても、高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保することができる。オキシプロピレンユニットを含むポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm~3.8ppmの範囲に、オキシプロピレンユニットの-CH<および-CH-に由来するピークを有する。これらの基における水素原子の原子核の周囲の電子密度が異なるため、ピークがスプリットした状態となる。このようなポリマー化合物は、H-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、例えば、3.2ppm以上3.42ppm以下の範囲と、3.42ppmを超え3.8ppm以下の範囲とのそれぞれにピークを有する。3.2ppm以上3.42ppm以下の範囲のピークは、-CH-に由来し、3.42ppmを超え3.8ppm以下の範囲のピークは、-CH<および-CH-に由来する。
少なくともオキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物としては、ポリプロピレングリコール、オキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含む共重合体、上記ポリオールのポリプロピレンオキサイド付加物、またはこれらのエーテル化物もしくはエステル化物などが挙げられる。共重合体としては、オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体(ただし、オキシアルキレンは、オキシプロピレン以外のC2-4アルキレン)などが挙げられる。オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体としては、オキシプロピレン-オキシエチレン共重合体、オキシプロピレン-オキシトリメチレン共重合体などが例示される。オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体は、ポリオキシプロピレン-ポリオキシアルキレン共重合体(例えば、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン共重合体)と称することがある。オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体は、ブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体)であってもよい。エーテル化物としては、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体のアルキルエーテル(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン共重合体のアルキルエーテルなど)などが挙げられる。エステル化物としては、カルボン酸のポリプロピレングリコールエステル、オキシプロピレン-オキシアルキレン共重合体のカルボン酸エステル(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン共重合体のカルボン酸エステルなど)などが挙げられる。
少なくともオキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン共重合体(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体など)、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるアルキルエーテル(メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテルなど)など)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるアルキルエーテル(ブチルエーテル、ヒドロキシヘキシルエーテルなど)など)、カルボン酸ポリプロピレングリコール(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるカルボン酸ポリプロピレングリコール(酢酸ポリプロピレングリコールなど)など)、トリオール以上のポリオールのポリプロピレンオキサイド付加物(グリセリンのポリプロピレンオキサイド付加物など)が挙げられる。しかし、ポリマー化合物は、これらに限定されない。
ポリマー化合物の鉛に対する吸着性が高まるとともに、ポリマー化合物が線状構造を取り易くなる観点から、ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットを多く含むことが好ましい。このようなポリマー化合物は、例えば、末端基に結合した酸素原子と、酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基とを含んでいる。ポリマー化合物のH-NMRスペクトルでは、3.2ppm~3.8ppmのピークの積分値の、このピークの積分値と、-CH-基の水素原子のピークの積分値と、-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合が大きくなる。この割合は、例えば、50%以上であり、80%以上であってもよい。高いHR放電性能を維持しながら、より高い高温フロート寿命性能を確保し易い観点からは、上記の割合は、85%以上が好ましく、90%以上であることがより好ましい。例えば、ポリマー化合物が末端に-OH基を有するとともに、この-OH基の酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基を有する場合、H-NMRスペクトルにおいて、-CH-基および-CH<基のそれぞれの水素原子のピークは、ケミカルシフトが3.8ppmを超え4.0ppm以下の範囲にある。
負極電極材料は、ポリマー化合物を一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
ポリマー化合物は、例えば、Mnが500万以下の化合物を含んでもよく、100万以下または10万以下の化合物を含んでもよく、20000以下または10000以下の化合物を含んでもよく、または5000以下の化合物を含んでもよい。充電受入性が高まることで、より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、ポリマー化合物は、Mnが4000以下の化合物を含むことが好ましく、3700以下または3500以下の化合物を含んでもよい。極板の電位を卑な方向にシフトさせる効果が高まることで、より高い高温フロート寿命性能が得られる観点からは、このような化合物のMnは、300以上または400以上であってもよく、500以上であってもよく、800以上または1000以上であってもよい。ポリマー化合物としては、Mnが異なる2種以上の化合物を用いてもよい。つまり、ポリマー化合物は、分子量の分布において、Mnのピークを複数有するポリマー化合物であってもよい。
上記の化合物のMnは、300以上500万以下(または100万以下)、400以上500万以下(または100万以下)、500以上500万以下(または100万以下)、800以上500万以下(または100万以下)、1000以上500万以下(または100万以下)、300以上10万以下(または20000以下)、400以上10万以下(または20000以下)、500以上10万以下(または20000以下)、800以上10万以下(または20000以下)、1000以上10万以下(または20000以下)、300以上10000以下(または5000以下)、400以上10000以下(または5000以下)、500以上10000以下(または5000以下)、800以上10000以下(または5000以下)、1000以上10000以下(または5000以下)、300以上4000以下(または3700以下)、400以上4000以下(または3700以下)、500以上4000以下(または3700以下)、800以上4000以下(または3700以下)、1000以上4000以下(または3700以下)、300以上(または400以上)3500以下、500以上(または800以上)3500以下、あるいは1000以上3500以下であってもよい。
負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、例えば、3ppm以上である。極板の電位を卑な方向にシフトする効果が高まることで、より高い高温フロート寿命性能が得られ易い観点からは、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、5ppm以上が好ましく、80ppm以上または100ppm以上であってもよい。負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、例えば、5000ppm以下であり、3000ppm以下であってもよい。より高い充電受入性が得られることで、より高い高温フロート寿命性能が得られ易い観点からは、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、2000ppm以下または1000ppm以下が好ましく、1000ppm未満であってもよく、700ppm以下または500ppm以下であってもよい。
負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、3ppm以上(または5ppm以上)5000ppm以下、3ppm以上(または5ppm以上)3000ppm以下、3ppm以上(または5ppm以上)2000ppm以下、3ppm以上(または5ppm以上)1000ppm以下、3ppm以上(または5ppm以上)1000ppm未満、3ppm以上(または5ppm以上)700ppm以下、3ppm以上(または5ppm以上)500ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)5000ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)3000ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)2000ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)1000ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)1000ppm未満、80ppm以上(または100ppm以上)700ppm以下、80ppm以上(または100ppm以上)500ppm以下であってもよい。
(有機防縮剤)
有機防縮剤とは、鉛蓄電池の充放電を繰り返したときに負極活物質である鉛の収縮を抑制する機能を有する化合物のうち、有機化合物である。有機防縮剤は、通常、リグニン化合物と合成有機防縮剤とに大別される。合成有機防縮剤は、リグニン化合物以外の有機防縮剤であるとも言える。負極電極材料に含まれる有機防縮剤としては、リグニン化合物および合成有機防縮剤などが挙げられる。負極電極材料は、有機防縮剤を、一種含んでもよく、二種以上含んでもよい。
リグニン化合物としては、リグニン、リグニン誘導体などが挙げられる。リグニン誘導体としては、リグニンスルホン酸またはその塩(アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)など)などが挙げられる。
合成有機防縮剤は、硫黄元素を含む有機高分子であり、一般に、分子内に複数の芳香環を含むとともに、硫黄含有基として硫黄元素を含んでいる。硫黄含有基の中では、安定形態であるスルホン酸基もしくはスルホニル基が好ましい。スルホン酸基は、酸型で存在してもよく、Na塩のように塩型で存在してもよい。
有機防縮剤として、少なくともリグニン化合物を用いてもよい。リグニン化合物を用いた場合、合成有機防縮剤を用いた場合に比較すると、充電受入性が低くなり易い。しかし、負極電極材料が特定のポリマー化合物を含むことで、有機防縮剤としてリグニン化合物を用いる場合でも、充電受入性の低下が抑制される。
有機防縮剤としては、少なくとも芳香族化合物のユニットを含む縮合物を用いる場合も好ましい。このような縮合物としては、例えば、芳香族化合物の、アルデヒド化合物(アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)およびその縮合物からなる群より選択される少なくとも一種など)による縮合物が挙げられる。有機防縮剤は、一種の芳香族化合物のユニットを含んでもよく、二種以上の芳香族化合物のユニットを含んでいてもよい。
なお、芳香族化合物のユニットとは、縮合物に組み込まれた芳香族化合物に由来するユニットを言う。
芳香族化合物が有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。芳香族化合物が複数の芳香環を有する場合には、複数の芳香環は直接結合または連結基(例えば、アルキレン基(アルキリデン基を含む)、スルホン基)などで連結していてもよい。このような構造としては、例えば、ビスアレーン構造(ビフェニル、ビスフェニルアルカン、ビスフェニルスルホンなど)が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、上記の芳香環と、ヒドロキシ基およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも一種とを有する化合物が挙げられる。ヒドロキシ基またはアミノ基は、芳香環に直接結合していてもよく、ヒドロキシ基またはアミノ基を有するアルキル鎖として結合していてもよい。なお、ヒドロキシ基には、ヒドロキシ基の塩(-OMe)も包含される。アミノ基には、アミノ基の塩(具体的には、アニオンとの塩)も包含される。Meとしては、アルカリ金属(Li、K、Naなど)、周期表第2族金属(Ca、Mgなど)などが挙げられる。
芳香族化合物としては、ビスアレーン化合物[ビスフェノール化合物、ヒドロキシビフェニル化合物、アミノ基を有するビスアレーン化合物(アミノ基を有するビスアリールアルカン化合物、アミノ基を有するビスアリールスルホン化合物、アミノ基を有するビフェニル化合物など)、ヒドロキシアレーン化合物(ヒドロキシナフタレン化合物、フェノール化合物など)、アミノアレーン化合物(アミノナフタレン化合物、アニリン化合物(アミノベンゼンスルホン酸、アルキルアミノベンゼンスルホン酸など)など)など]が好ましい。芳香族化合物は、さらに置換基を有していてもよい。有機防縮剤は、これらの化合物の残基を一種含んでもよく、複数種含んでもよい。ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが好ましい。
縮合物は、少なくとも硫黄含有基を有する芳香族化合物のユニットを含むことが好ましい。中でも、硫黄含有基を有するビスフェノール化合物のユニットを少なくとも含む縮合物を用いると、より高い充電受入性を確保する上で有利である。
硫黄含有基は、化合物に含まれる芳香環に直接結合していてもよく、例えば、硫黄含有基を有するアルキル鎖として芳香環に結合していてもよい。硫黄含有基としては、特に制限されず、例えば、スルホニル基、スルホン酸基またはその塩が挙げられる。
また、有機防縮剤として、例えば、上記のビスアレーン化合物のユニットおよび単環式の芳香族化合物(ヒドロキシアレーン化合物、および/またはアミノアレーン化合物など)のユニットからなる群より選択される少なくとも一種を含む縮合物を少なくとも用いてもよい。有機防縮剤は、ビスアレーン化合物のユニットと単環式芳香族化合物(中でも、ヒドロキシアレーン化合物)のユニットとを含む縮合物を少なくとも含んでもよい。このような縮合物としては、ビスアレーン化合物と単環式の芳香族化合物との、アルデヒド化合物による縮合物が挙げられる。ヒドロキシアレーン化合物としては、フェノールスルホン酸化合物(フェノールスルホン酸またはその置換体など)が好ましい。アミノアレーン化合物としては、アミノベンゼンスルホン酸、アルキルアミノベンゼンスルホン酸などが好ましい。単環式の芳香族化合物としては、ヒドロキシアレーン化合物が好ましい。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、例えば、0.005質量%以上であり、0.01質量%以上であってもよい。有機防縮剤の含有量がこのような範囲である場合、高いHR放電性能を確保することができる。有機防縮剤の含有量は、例えば、1.0質量%以下であり、0.5質量%以下であってもよく、0.2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中に含まれる有機防縮剤の含有量は、0.005質量%以上(または0.01質量%以上)1.0質量%以下、0.005質量%以上(または0.01質量%以上)0.5質量%以下、あるいは0.005質量%以上(または0.01質量%以上)0.2質量%以下であってもよい。
(炭素質材料)
負極電極材料に含まれる炭素質材料としては、カーボンブラック、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどが例示される。ファーネスブラックには、ケッチェンブラック(商品名)も含まれる。黒鉛は、黒鉛型の結晶構造を含む炭素質材料であればよく、人造黒鉛および天然黒鉛のいずれであってもよい。負極電極材料は、炭素質材料を一種含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、例えば、0.05質量%以上であり、0.10質量%以上であってもよい。炭素質材料の含有量は、例えば、5質量%以下であり、3質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の炭素質材料の含有量は、0.05質量%以上5質量%以下、0.05質量%以上3質量%以下、0.10質量%以上5質量%以下、または0.10質量%以上3質量%以下であってもよい。
(硫酸バリウム)
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、例えば、0.05質量%以上であり、0.10質量%以上であってもよい。負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、例えば、3質量%以下であり、2質量%以下であってもよい。
負極電極材料中の硫酸バリウムの含有量は、0.05質量%以上3質量%以下、0.05質量%以上2質量%以下、0.10質量%以上3質量%以下、または0.10質量%以上2質量%以下であってもよい。
(負極電極材料の構成成分の分析)
以下に、負極電極材料の構成成分の分析方法について説明する。測定または分析に先立ち、満充電状態の鉛蓄電池を解体して分析対象の負極板を入手する。入手した負極板を水洗し、負極板から硫酸分を除去する。水洗は、水洗した負極板表面にpH試験紙を押し当て、試験紙の色が変化しないことが確認されるまで行う。ただし、水洗を行う時間は、2時間以内とする。水洗した負極板は、減圧環境下、60±5℃で6時間程度乾燥する。乾燥後に負極板に貼付部材が含まれている場合には、剥離により貼付部材が除去される。次に、負極板から負極電極材料を分離することにより試料(以下、試料Aと称する)を入手する。試料Aは、必要に応じて粉砕され、分析に供される。
(1)ポリマー化合物の分析
(1-1)ポリマー化合物の定性分析
(a)オキシC2-4アルキレンユニットの分析
粉砕した試料Aを用いる。100.0±0.1gの試料Aに150.0±0.1mLのクロロホルムを加え、20±5℃で16時間撹拌し、ポリマー化合物を抽出する。その後、ろ過によって固形分を除く。抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液またはクロロホルム溶液を乾固することにより得られるポリマー化合物について、赤外分光スペクトル、紫外可視吸収スペクトル、NMRスペクトル、LC-MSおよび熱分解GC-MSから選択される少なくとも1つから情報を得ることで、ポリマー化合物を特定する。
抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液から、クロロホルムを減圧下で留去することによりクロロホルム可溶分を回収する。クロロホルム可溶分を重クロロホルムに溶解させて、下記の条件でH-NMRスペクトルを測定する。このH-NMRスペクトルから、ケミカルシフトが3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲のピークを確認する。また、この範囲のピークから、オキシC2-4アルキレンユニットの種類を特定する。
装置:日本電子(株)製、AL400型核磁気共鳴装置
観測周波数:395.88MHz
パルス幅:6.30μs
パルス繰り返し時間:74.1411秒
積算回数:32
測定温度:室温(20~35℃)
基準:7.24ppm
試料管直径:5mm
H-NMRスペクトルから、ケミカルシフトが3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲に存在するピークの積分値(V)を求める。また、ポリマー化合物の末端基に結合した酸素原子に対して結合した-CH-基および-CH<基の水素原子のそれぞれについて、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値の合計(V)を求める。そして、VおよびVから、VがVおよびVの合計に占める割合(=V/(V+V)×100(%))を求める。
なお、定性分析で、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値を求める際には、H-NMRスペクトルにおいて、該当するピークを挟むように有意なシグナルがない2点を決定し、この2点間を結ぶ直線をベースラインとして各積分値を算出する。例えば、ケミカルシフトが3.2ppm~3.8ppmの範囲に存在するピークについては、スペクトルにおける3.2ppmと3.8ppmとの2点間を結ぶ直線をベースラインとする。例えば、ケミカルシフトが3.8ppmを超え4.0ppm以下の範囲に存在するピークについては、スペクトルにおける3.8ppmと4.0ppmとの2点間を結ぶ直線をベースラインとする。
(b)エステル化物における疎水性基の分析
ポリマー化合物がヒドロキシ化合物のエステル化物である場合、上記(a)において、抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液を乾固することにより得られるポリマー化合物を、所定量採取し、水酸化カリウム水溶液を添加する。これにより、エステル化物がケン化され、脂肪酸カリウム塩とヒドロキシ化合物とが生成する。上記の水溶性カリウム水溶液は、ケン化が完了するまで添加される。得られる混合物に、メタノールおよび三フッ化ホウ素の溶液を加えて混合することにより、脂肪酸カリウム塩を脂肪酸メチルエステルに変換する。得られる混合物を、熱分解GC-MSにより下記の条件で分析することにより、エステル化物に含まれる疎水性基が同定される。
分析装置:(株)島津製作所製、高性能汎用ガスクロマトグラムGC-2014
カラム:DEGS(ジエチレングリコールコハク酸エステル) 2.1m
オーブン温度:180~120℃
注入口温度:240℃
検出器温度:240℃
キャリアガス:He(流量:50mL/分)
注入量:1μL~2μL
(c)エーテル化物における疎水性基の分析
ポリマー化合物がヒドロキシ化合物のエーテル化物である場合、上記(a)において、抽出により得られるポリマー化合物が溶解したクロロホルム溶液を乾固することにより得られるポリマー化合物を、所定量採取し、ヨウ化水素を添加する。これにより、ポリマー化合物のエーテル部分の有機基(上述のR)に対応するヨウ化物(RI)が生成するとともに、オキシC2-4アルキレンユニットに対応するジヨードC2-4アルカンが生成する。上記のヨウ化水素は、エーテル化物のヨウ化物およびジヨードC2-4アルカンへの変換が完了するのに十分な量を添加する。得られる混合物を、熱分解GC-MSにより上記(b)と同じ条件で分析することにより、エーテル化物に含まれる疎水性基が同定される。
(1-2)ポリマー化合物の定量分析
上記のクロロホルム可溶分の適量を、±0.0001gの精度で測定したm(g)のテトラクロロエタン(TCE)と共に重クロロホルムに溶解させて、H-NMRスペクトルを測定する。ケミカルシフトが3.2~3.8ppmの範囲に存在するピークの積分値(S)とTCEに由来するピークの積分値(S)を求め、以下の式から負極電極材料中のポリマー化合物の質量基準の含有量C(ppm)を求める。
=S/S×N/N×M/M×m/m×1000000
(式中、Mはケミカルシフトが3.2~3.8ppmの範囲にピークを示す構造の分子量(より具体的には、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造の分子量)であり、Nは繰り返し構造の主鎖の炭素原子に結合した水素原子の数である。Nr、はそれぞれ基準物質の分子に含まれる水素数、基準物質の分子量であり、m(g)は抽出に使用した負極電極材料の質量である。)
なお、本分析での基準物質はTCEであるため、N=2、M=168である。また、m=100である。
例えば、ポリマー化合物がポリプロピレングリコールの場合、Mは58であり、Nは3である。ポリマー化合物がポリエチレングリコールの場合、Mは44であり、Nは4である。共重合体の場合には、NおよびMは、それぞれ、各モノマー単位のN値およびM値を繰り返し構造に含まれる各モノマー単位のモル比率(モル%)を用いて平均化した値である。
なお、定量分析では、H-NMRスペクトルにおけるピークの積分値は、日本電子(株)製のデータ処理ソフト「ALICE」を用いて求める。
(1-3)ポリマー化合物のMn測定
上記のクロロホルム可溶分を用いて、ポリマー化合物のGPC測定を、下記の装置を用い、下記の条件で行う。別途、標準物質のMnと溶出時間のプロットから校正曲線(検量線)を作成する。この検量線およびポリマー化合物のGPC測定結果に基づき、ポリマー化合物のMnを算出する。ただし、エステル化物またはエーテル化物などは、クロロホルム可溶分中で分解した状態であり得る。
分析システム:20A system((株)島津製作所製)
カラム:GPC KF-805L(Shodex社製)2本を直列接続
カラム温度:30℃±1℃
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1mL/min.
濃度:0.20質量%
注入量:10μL
標準物質:ポリエチレングリコール(Mn=2,000,000、200,000、20,000、2,000、200)
検出器:示差屈折率検出器(Shodex社製、Shodex RI-201H)
(2)有機防縮剤の分析
(2-1)負極電極材料中の有機防縮剤の定性分析
粉砕した試料Aを1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、有機防縮剤を抽出する。次に、抽出物から、不溶成分を濾過で取り除き、得られた溶液を脱塩した後、濃縮し、乾燥する。脱塩は、脱塩カラムを用いて行うか、溶液をイオン交換膜に通すことにより行うか、もしくは、溶液を透析チューブに入れて蒸留水中に浸すことにより行なう。これを乾燥することにより有機防縮剤の粉末試料(以下、試料Bと称する)が得られる。
このようにして得た有機防縮剤の試料Bを用いて測定した赤外分光スペクトル、試料Bを蒸留水等で希釈し、紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトル、試料Bを重水等の所定の溶媒で溶解することにより得られる溶液のNMRスペクトル、または物質を構成している個々の化合物の情報を得ることができる熱分解GC-MSなどから得た情報を組み合わせて、有機防縮剤の種類を特定する。
(2-2)負極電極材料中における有機防縮剤の含有量の定量
上記(2-1)と同様に、有機防縮剤を含む分離物について不溶成分を濾過で取り除いた後の溶液を得る。得られた各溶液について、紫外可視吸収スペクトルを測定する。各有機防縮剤に特徴的なピークの強度と、予め作成した検量線とを用いて、負極電極材料中の各有機防縮剤の含有量を求める。
なお、有機防縮剤の含有量が未知の鉛蓄電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の有機防縮剤が使用できないことがある。この場合には、当該電池の負極から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機高分子を使用して検量線を作成することで、紫外可視吸収スペクトルを用いて有機防縮剤の含有量を測定する。
(3)炭素質材料と硫酸バリウムの定量
粉砕した試料A10gに対し、20質量%濃度の硝酸50mlを加え、約20分加熱し、鉛成分を鉛イオンとして溶解させる。得られる溶液を濾過して、炭素質材料、硫酸バリウム等の固形分を濾別する。
得られた固形分を水中に分散させて分散液とした後、篩いを用いて分散液から炭素質材料および硫酸バリウム以外の成分(例えば補強材)を除去する。次に、分散液に対し、予め質量を測定したメンブレンフィルタを用いて吸引ろ過を施し、濾別された試料とともにメンブレンフィルタを110℃±5℃の乾燥器で乾燥する。濾別された試料は、炭素質材料と硫酸バリウムとの混合試料である。乾燥後の混合試料(以下、試料Cと称する)とメンブレンフィルタとの合計質量からメンブレンフィルタの質量を差し引いて、試料Cの質量(M)を測定する。その後、試料Cをメンブレンフィルタとともに坩堝に入れ、1300℃以上で灼熱灰化させる。残った残渣は酸化バリウムである。酸化バリウムの質量を硫酸バリウムの質量に変換して硫酸バリウムの質量(M)を求める。質量Mから質量Mを差し引いて炭素質材料の質量を算出する。
(その他)
負極板は、負極集電体に負極ペーストを塗布または充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、例えば、鉛粉と、ポリマー化合物と、必要に応じて、有機防縮剤、炭素質材料、他の添加剤からなる群より選択される少なくとも一種とに、水および硫酸(または硫酸水溶液)を加えて混練することで作製する。熟成する際には、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
(正極板)
鉛蓄電池の正極板は、ペースト式、クラッド式などに分類できる。ペースト式およびクラッド式のいずれの正極板を用いてもよい。ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。クラッド式の正極板の構成は前述の通りである。
正極板に含まれる正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
正極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛シートまたは鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工または打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。正極集電体として格子状の集電体を用いると、正極電極材料を担持させ易いため好ましい。
正極集電体は、純鉛で形成してもよいが、鉛合金を用いる場合には、例えば、Pb-Ca系合金、Pb-Sn系合金、Pb-Ca-Sn系合金などを用いればよい。鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
正極集電体もしくは正極集電体を構成する鉛合金のCa含有量は、0.07質量%以下であり、0.06質量%以下であってもよく、0.01質量%未満であってもよい。Ca含有量がこのような範囲である場合、負極電極材料にポリマー化合物を用いることによる高温フロート充電時の正極集電体の腐食抑制効果が顕著に発揮される。Ca含有量は、例えば、0質量%以上であり、0.01質量%以上であってもよい。
Ca含有量は、0質量%以上(または0.01質量%以上)0.07質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)0.06質量%以下であってもよく、0質量%以上0.01質量%未満であってもよい。
正極集電体もしくは正極集電体を構成する鉛合金のSn含有量は、例えば、7質量%以下であり、6質量%以下または5質量%以下であってもよい。Sn含有量は、3質量%以下であることが好ましい。この場合、腐食速度の速いSnリッチなβ相の含有量を低減する効果が高まる。Sn含有量は、2質量%以下または1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下であってもよく、0.05質量%以下または0.01質量%未満であってもよい。これらの場合、腐食速度の速いSnリッチなβ相の含有量がさらに少なくなる(好ましくは、β相が存在しなくなる)ため、好ましい。Sn含有量は、例えば、0質量%以上であり、0.01質量%以上であってもよく、0.3質量%以上または0.5質量%以上であってもよい。正極集電体の腐食をさらに低減する観点からは、Sn含有量は、0.8質量%以上または1質量%以上が好ましい。
なお、正極集電体がCaを含む場合、Snを含ませることで、正極集電体を構成する合金の耐食性が向上する。例えば、正極集電体中のCa含有量が0.01質量%以上である場合には、正極集電体のSn含有量を、0.01質量%以上とすることが好ましい。例えば、鉛蓄電池が負極規制である場合、Ca含有量を0.01質量%以上0.06質量%以下として、Sn含有量を0.8質量%以上(または1質量%以上)3質量%以下とすると、より高い寿命性能が得られる。
また、正極集電体中のCa含有量が0.01質量%未満の場合には、正極集電体中のSn含有量が少ない方が、腐食速度を低減する効果が高まる観点から好ましい。この場合、Sn含有量は、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下または1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下または0.01質量%未満がさらに好ましい。Sn含有量は、例えば、0質量%以上である。
正極集電体中のSn含有量は、0質量%以上(または0.01質量%以上)7質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)6質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)5質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)3質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)2質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)1.5質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)1質量%以下、0質量%以上(または0.01質量%以上)0.05質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)7質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)6質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)5質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)3質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)2質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)1.5質量%以下、0.3質量%以上(または0.5質量%以上)1質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)7質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)6質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)5質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)3質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)2質量%以下、0.8質量%以上(または1質量%以上)1.5質量%以下、0.8質量%以上1質量%以下、あるいは0質量%以上0.01質量%未満であってもよい。
正極集電体は、表面層を備えていてもよい。正極集電体の表面層と内側の層とは組成が異なってもよい。表面層は、正極集電体の一部に形成されていてもよい。表面層は、正極集電体の格子部分のみ、耳部分のみ、または枠骨部分のみに形成されていてもよい。
正極板の負極板との対向面積は、2450mm/Ah以上である。充電受入性が向上することで、より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、正極板の負極板との対向面積を、3500mm/Ah以上または4000mm/Ah以上としてもよい。正極板の負極板との対向面積は、6700mm/Ah以下である。正極集電体の腐食抑制におけるポリマー化合物による効果がさらに発揮され易くなることで、より高い高温フロート寿命性能が得られる観点からは、正極板の負極板との対向面積は、6500mm/Ah以下が好ましく、6100mm/Ah以下がより好ましい。正極板の負極板との対向面積を、5000mm/Ah以下または4000mm/Ah以下としてもよい。
なお、負極電極材料がポリマー化合物を含まず、正極板の負極板との対向面積が2450mm/Ah未満である場合には、鉛蓄電池は負極規制であり、負極電極材料の劣化により寿命となる。負極電極材料がポリマー化合物を含まず、正極板の負極板との対向面積が2450mm/Ah以上である場合には、鉛蓄電池は正極規制であり、正極集電体の劣化により寿命となる。つまり、正極集電体の劣化が寿命性能に大きく影響する。それに対し、負極電極材料がポリマー化合物を含む場合には、正極板の負極板との対向面積が、5000mm/Ah以下(例えば、4000mm/Ah以下)の場合、鉛蓄電池は負極規制であり、5000mm/Ahより大きい場合(例えば、6100mm/Ah以上の場合)、鉛蓄電池は正極規制である。そのため、ポリマー化合物を負極電極材料に用いるとともに、正極板の負極板との対向面積を2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下とすることで、正極集電体の劣化が寿命性能に及ぼす影響を小さくすることができる。また、負極規制となる対向面積の値を高値側に広げることができる。よって、対向面積の高値側の寿命性能を向上することができる。
正極板の負極板との対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下(または6500mm/Ah以下)、3500mm/Ah以上6700mm/Ah以下(または6500mm/Ah以下)、4000mm/Ah以上6700mm/Ah以下(または6500mm/Ah以下)、2450mm/Ah以上(または3500mm/Ah以上)6100mm/Ah以下、4000mm/Ah以上6100mm/Ah以下、2450mm/Ah以上5000mm/Ah以下(または4000mm/Ah以下)、3500mm/Ah以上5000mm/Ah以下(または4000mm/Ah以下)、あるいは4000mm/Ah以上5000mm/Ah以下であってもよい。
正極板の負極板との対向面積は、例えば、極板群に含まれる各極板の数、各極板のサイズ(縦、横、および厚みの少なくとも1つ)、電極材料の充填量、電極材料のオーバーペースト量、集電体のデザイン(例えば、格子骨の太さ、格子数)、および電解液の比重の少なくともいずれか1つを調節することにより調節することができる。
負極板の理論電気量の正極板の理論電気量に対する比(理論電気量比)は、例えば、0.6以上である。正極板と負極板とで活物質の利用率のバランスを取り易くなることで、より高い高温フロート寿命性能が得られる観点からは、理論電気量比は、0.7以上が好ましい。初期の段階で高い放電容量を確保して、より高い高温フロート寿命性能が得られる観点から、理論電気量比は、1.3以下が好ましい。
理論電気量比は、例えば、各極板における電極材料の充填量により調節できる。
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、および硫酸を混練することで調製される。未化成のクラッド式正極板は、集電部で連結された芯金が挿入された多孔質なチューブに鉛粉またはスラリー状の鉛粉を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。その後、これらの未化成の正極板を化成することにより正極板が得られる。
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の正極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。
(正極集電体中のCaおよびSnの定量分析)
CaおよびSnの定量分析に先立って、鉛蓄電池から取り出した正極板から、正極電極材料を除去して、正極集電体を得、正極集電体の一部を採取して分析用の試料を準備する。より具体的には、正極板に振動を加えて正極電極材料を正極集電体から脱落させた後、セラミックナイフを用いて正極集電体の周囲に残存している正極電極材料を除去し、正極集電体の金属光沢を有する部分の一部を試料として採取する。採取した試料の質量を測定した後、酒石酸および希硝酸と混合することにより、水溶液を得る。水溶液に塩酸を加えて塩化鉛を沈殿させ、濾過し、濾液を採取する。この濾液を用いて、正極集電体中のCaおよびSnの含有量を以下の手順で求める。
正極集電体に含まれるCaおよびSnの定量は、JIS H2105:1955に記載の鉛分離誘導結合プラズマ発光分光法に準拠して分析される。より具体的には、上記の濾液中のCa濃度およびSn濃度を、ICP発光分光分析装置を用いて、検量線法により分析し、得られる濃度と採取した試料の質量とから、正極集電体中のCaおよびSnのそれぞれの含有量が求められる。ICP発光分光分析装置としては、(株)島津製作所製 ICPS-8000が用いられる。
(正極板の負極板との対向面積の測定)
正極板の負極板と対向する面について、正極板の正極電極材料が存在する部分および負極板の負極電極材料が存在する部分のそれぞれを極板の厚み方向に投影した投影形状が重複する部分の面積S(mm)を求める。極板群において、正極板の負極と対向する各面について、面積Sを求め、全ての対向面について面積Sを合計する。鉛蓄電池が複数の極板群を備える場合には、全ての極板群について、正極板の負極板と対向する面積Sの合計値を求める。また、別途、鉛蓄電池の10時間率容量(Ah)を測定する。そして、鉛蓄電池における面積Sの合計値(mm)を10時間率容量(Ah)で除することにより、正極板の負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積(mm/Ah)が求められる。
(各極板の理論電気量の測定)
鉛蓄電池に含まれる全ての正極板から正極電極材料を採取し、正極電極材料全体の質量(g)を測定する。この質量を0.86倍した値を、正極電極材料全体に含まれる鉛の量(g)とする。正極板の場合に準じて、鉛蓄電池に含まれる全ての負極板から負極電極材料を採取し、負極電極材料全体の質量(g)を測定する。この質量を0.99倍した値を、負極電極材料全体に含まれる鉛の量(g)とする。各電極材料全体に含まれる鉛の量に、Pb原子1g当たりの電気容量0.2587Ahを乗ずることにより、各極板の理論電気量が求められる。
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、セパレータを配置することができる。セパレータとしては、不織布、および微多孔膜から選択される少なくとも一種などが用いられる。
不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする。不織布は、例えば、不織布の60質量%以上が繊維で形成されている。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維(ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維など)など)、パルプ繊維などを用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。不織布は、繊維以外の成分(例えば、耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマー)などを含んでもよい。
一方、微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。微多孔膜は、耐酸性を有する材料で構成することが好ましく、ポリマー成分を主体とする微多孔膜が好ましい。ポリマー成分としては、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)が好ましい。造孔剤としては、ポリマー粉末およびオイルからなる群より選択される少なくとも一種などが挙げられる。
セパレータは、例えば、不織布のみで構成してもよく、微多孔膜のみで構成してもよい。また、セパレータは、必要に応じて、不織布と微多孔膜との積層物、異種または同種の素材を貼り合わせた物、または異種または同種の素材において凹凸をかみ合わせた物などであってもよい。
セパレータは、シート状であってもよく、袋状に形成されていてもよい。正極板と負極板との間に1枚のシート状のセパレータを挟むように配置してもよい。また、折り曲げた状態の1枚のシート状のセパレータで極板を挟むように配置してもよい。この場合、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ正極板と、折り曲げたシート状のセパレータで挟んだ負極板とを重ねてもよく、正極板および負極板の一方を折り曲げたシート状のセパレータで挟み、他方の極板と重ねてもよい。また、シート状のセパレータを蛇腹状に折り曲げ、正極板および負極板を、これらの間にセパレータが介在するように、蛇腹状のセパレータに挟み込んでもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータを用いる場合、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が水平方向と平行になるように)セパレータを配置してもよく、鉛直方向に沿うように(例えば、折り曲げ部が鉛直方向と平行になるように)セパレータを配置してもよい。蛇腹状に折り曲げられたセパレータでは、セパレータの両方の主面側に交互に凹部が形成されることになる。正極板および負極板の上部には通常耳部が形成されているため、折り曲げ部が鉛蓄電池の水平方向に沿うようにセパレータを配置する場合、セパレータの一方の主面側の凹部のみに正極板および負極板が配置される(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、二重のセパレータが介在した状態となる)。折り曲げ部が鉛蓄電池の鉛直方向に沿うようにセパレータを配置する場合、一方の主面側の凹部に正極板を収容し、他方の主面側の凹部に負極板を収容することができる(つまり、隣接する正極板と負極板との間には、セパレータが一重に介在した状態とすることができる。)。袋状のセパレータを用いる場合、袋状のセパレータが正極板を収容していてもよいし、負極板を収容してもよい。
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。
電解液には、上記のポリマー化合物が含まれていてもよい。
電解液は、必要に応じて、カチオン(例えば、金属カチオン)、および/またはアニオン(例えば、硫酸アニオン以外のアニオン(リン酸イオンなど))を含んでいてもよい。金属カチオンとしては、例えば、Naイオン、Liイオン、Mgイオン、およびAlイオンからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば、1.20以上であり、1.25以上であってもよい。電解液の20℃における比重は、1.35以下であり、1.32以下であることが好ましい。
電解液の20℃における比重は、1.20以上1.35以下、1.20以上1.32以下、1.25以上1.35以下、または1.25以上1.32以下であってもよい。
(その他)
鉛蓄電池は、電槽のセル室に極板群と電解液とを収容する工程を含む製造方法により得ることができる。鉛蓄電池の各セルは、各セル室に収容された極板群および電解液を備える。極板群は、セル室への収容に先立って、正極板、負極板、およびセパレータを、正極板と負極板との間にセパレータが介在するように積層することにより組み立てられる。正極板、負極板、電解液、およびセパレータは、それぞれ、極板群の組み立てに先立って、準備される。鉛蓄電池の製造方法は、極板群および電解液をセル室に収容する工程の後、必要に応じて、正極板および負極板の少なくとも一方を化成する工程を含んでもよい。
極板群における各極板は、1枚であってもよく、2枚以上であってもよい。極板群が2枚以上の負極板を備える場合、少なくとも1枚の負極板において、負極電極材料が上記のポリマー化合物を含むという条件(条件a)を充足していれば、このような負極板の枚数に応じて、極板の電位を卑な方向にシフトさせる効果が得られ、高温フロート充電時の正極集電体の腐食を低減する効果が得られる。正極集電体の腐食をさらに低減する観点からは、極板群に含まれる負極板の枚数の50%以上(より好ましくは80%以上または90%以上)が、条件aを充足する負極板であることが好ましい。極板群に含まれる負極板のうち、条件aを充足する負極板の比率は、100%以下である。極板群に含まれる負極板の全てが、条件aを充足してもよい。
極板群が2枚以上の正極板を備える場合、高温フロート充電時の正極集電体の腐食を低減することで、より高い寿命性能を確保する観点からは、極板群に含まれる正極板の枚数の50%以上(より好ましくは80%以上または90%以上)において、正極集電体中のCa含有量が0.07質量%以下であるという条件(条件b)を充足する正極板であることが好ましい。極板群に含まれる正極板のうち、条件bを充足する正極板の比率は、100%以下である。極板群に含まれる正極板の全てが、条件bを充足してもよい。
鉛蓄電池が、2つ以上のセルを有する場合には、少なくとも一部のセルの極板群が条件aを充足する負極板および条件bを充足する正極板を備えていればよい。より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、鉛蓄電池に含まれるセルの個数の50%以上(より好ましくは80%以上または90%以上)が、条件aを充足する負極板および条件bを充足する正極板を含む極板群を備えることが好ましい。鉛蓄電池に含まれるセルのうち、条件aを充足する負極板および条件bを充足する正極板を含む極板群を備えるセルの比率は、100%以下である。鉛蓄電池に含まれる極板群の全てが、条件aを充足する負極板および条件bを充足する正極板を備えることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の蓋を外した一例を模式的に示す斜視図である。図2Aは、図1の鉛蓄電池の正面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線における断面を矢印方向から見たときの概略断面図である。
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液(図示せず)とを収容する電槽10を具備する。極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2と正極板3との間に、シート状のセパレータ4が挟まれている状態を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。
複数の負極板2のそれぞれの上部には、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。複数の正極板3のそれぞれの上部にも、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。そして、負極板2の耳部同士は負極用ストラップ5aにより連結され一体化されている。同様に、正極板3の耳部同士も正極用ストラップ5bにより連結されて一体化されている。負極用ストラップ5aの上部には負極柱6aの下端部が固定され、正極用ストラップ5bの上部には正極柱6bの下端部が固定されている。
(評価)
高温フロート寿命性能は、高温でのフロート充電の後に、HR放電による容量試験を行ったときの電池寿命に基づいて評価される。より具体的には、下記の手順で高温フロート寿命性能が評価される。
供試電池には、定格電圧2V、定格容量(10時間率)が180Ahの制御弁式鉛蓄電池を用いる。60℃±3℃の環境下において、2.23V/セルの定電圧条件下でフロート充電を行い、1ヶ月毎に容量試験を25℃±2℃で行う。容量試験では、定格容量(Ah)として記載の数値の3.0倍の電流(A)で1.0V/セルに達するまで試供電池を放電し、このときの放電時間および放電容量を求める。放電後、5時間率(36A)で放電容量に対して80%充電する。次いで、20時間率(9A)で放電容量に対して40%充電する。放電時間が、10分未満となるまでの試験期間を寿命期間として、高温フロート寿命性能の指標とする。なお、求められる60℃における寿命期間に所定の指数を乗算することで、25℃における寿命年数に換算できる。目安は下記の通りである。
60℃での寿命期間12ヶ月以上:25℃での期待寿命11~12年
60℃での寿命期間16ヶ月以上:25℃での期待寿命15年以上
60℃での寿命期間22ヶ月以上:25℃での期待寿命20年以上
本発明の一側面に係る鉛蓄電池を以下にまとめて記載する。
(1)鉛蓄電池であって、
前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
前記負極電極材料は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定されるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を含み、
前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池。
(2)上記(1)において、前記ポリマー化合物は、末端基に結合した酸素原子と、前記酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基とを含み、
前記H-NMRスペクトルにおいて、前記ピークの積分値の、前記ピークの積分値と前記-CH-基の水素原子のピークの積分値と前記-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合は、85%以上であってもよい。
(3)上記(1)または(2)において、前記ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含んでもよい。
(4)鉛蓄電池であって、
前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
前記負極電極材料は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物を含み、
前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つにおいて、前記対向面積は、3500mm/Ah以上または4000mm/Ah以上であってもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つにおいて、前記対向面積は、6500mm/Ah以下、6100mm/Ah以下、5000mm/Ah以下、または4000mm/Ah以下であってもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つにおいて、前記負極板の理論電気量の、前記正極板の理論電気量に対する比は、0.6以上または0.7以上であってもよい。
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つにおいて、前記負極板の理論電気量の、前記正極板の理論電気量に対する比は、1.3以下であってもよい。
(9)上記(1)~(8)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のSnの含有量は、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.05質量%以下または0.01質量%未満であってもよい。
(10)上記(1)~(9)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のSn含有量は、0質量%以上、0.01質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上または1質量%以上であってもよい。
(11)上記(1)~(10)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のCa含有量は、0.07質量%以下、0.06質量%以下、または0.01質量%未満であってもよい。
(12)上記(1)~(11)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のCa含有量は、0質量%以上、または0.01質量%以上であってもよい。
(13)上記(1)~(8)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のCa含有量が0.01質量%以上(例えば、0.01質量%以上0.06質量%以下)である場合には、前記正極集電体のSn含有量は、0.01質量%以上(例えば、0.8質量%以上(または1質量%以上)3質量%以下)であってもよい。
(14)上記(1)~(8)のいずれか1つにおいて、前記正極集電体中のCa含有量が0.01質量%未満の場合、前記正極集電体中のSn含有量は、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.05質量%以下、または0.01質量%未満であってもよい。
(15)上記(14)において、前記正極集電体中のSn含有量は、0質量%以上であってもよい。
(16)上記(1)~(15)のいずれか1つにおいて、前記鉛蓄電池は、制御弁式であってもよい。
(17)上記(1)~(16)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、Mnが500万以下、100万以下、10万以下、20000以下、10000以下、5000以下、4000以下、3700以下、または3500以下の化合物を含んでもよい。
(18)上記(1)~(17)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、Mnが、300以上、400以上、500以上、800以上、または1000以上の化合物を含んでもよい。
(19)上記(1)~(18)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物、前記ヒドロキシ化合物のエーテル化物および前記ヒドロキシ化合物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも一種を含み、
前記ヒドロキシ化合物は、ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、およびポリオールのポリC2-4アルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
(20)上記(1)~(19)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、オキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含んでもよい。
(21)上記(20)において、前記ポリマー化合物は、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン共重合体(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体など)、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるアルキルエーテル(メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテルなど)など)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるアルキルエーテル(ブチルエーテル、ヒドロキシヘキシルエーテルなど)など)、カルボン酸ポリプロピレングリコール(上記Rが炭素数10以下(あるいは8以下または6以下)のアルキルであるカルボン酸ポリプロピレングリコール(酢酸ポリプロピレングリコールなど)など)、およびトリオール以上のポリオールのポリプロピレンオキサイド付加物(グリセリンのポリプロピレンオキサイド付加物など)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
(22)上記(1)~(19)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、1つ以上の疎水性基を有し、前記疎水性基の少なくとも1つは、炭素数が8以上の長鎖脂肪族炭化水素基であってもよい。
(23)上記(22)において、前記長鎖脂肪族炭化水素基の炭素数は、12以上または16以上であってもよい。
(24)上記(22)または(23)において、前記長鎖脂肪族炭化水素基の炭素数は、30以下、26以下または22以下であってもよい。
(25)上記(19)、および(22)~(24)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物は、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含んでもよい。
(26)上記(25)において、前記ポリマー化合物は、ポリエチレングリコールのエーテル化物(アルキルエーテルなど)、ポリエチレングリコールのエステル化物(カルボン酸エステルなど)、上記ポリオールのポリエチレンオキサイド付加物のエーテル化物(アルキルエーテルなど)、およびポリオール(トリオール以上のポリオールなど)のポリエチレンオキサイド付加物のエステル化物(カルボン酸エステルなど)からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
(27)上記(25)または(26)において、前記ポリマー化合物は、オレイン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、およびポリオキシエチレンセチルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
(28)上記(22)~(27)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物のHLBは、4以上、または4.3以上であってもよい。
(29)上記(22)~(28)のいずれか1つにおいて、前記ポリマー化合物のHLBは、18以下、10以下、9以下、または8.5以下であってもよい。
(30)上記(1)~(29)のいずれか1つにおいて、前記負極電極材料中の前記ポリマー化合物の含有量は、3ppm以上、5ppm以上、80ppm以上または100ppm以上であってもよい。
(31)上記(1)~(30)のいずれか1つにおいて、前記負極電極材料中の前記ポリマー化合物の含有量は、5000ppm以下、3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下、1000ppm未満、700ppm以下または500ppm以下であってもよい。
(32)上記(1)~(31)のいずれか1つにおいて、前記負極電極材料は、有機防縮剤を含んでもよい。
(33)上記(32)において、前記負極電極材料中の前記有機防縮剤の含有量は、0.005質量%以上、または0.01質量%以上であってもよい。
(34)上記(32)または(33)において、前記負極電極材料中の前記有機防縮剤の含有量は、1.0質量%以下、0.5質量%以下または0.2質量%以下であってもよい。
(35)上記(1)~(34)のいずれか1つにおいて、前記負極電極材料は、炭素質材料を含んでもよい。
(36)上記(35)において、前記負極電極材料中の前記炭素質材料の含有量は、0.05質量%以上、または0.10質量%以上であってもよい。
(37)上記(35)または(36)において、前記負極電極材料中の前記炭素質材料の含有量は、5質量%以下、または3質量%以下であってもよい。
(38)上記(1)~(37)のいずれか1つにおいて、前記負極電極材料は、さらに硫酸バリウムを含んでもよい。
(39)上記(38)において、前記負極電極材料中の前記硫酸バリウムの含有量は、0.05質量%以上、または0.10質量%以上であってもよい。
(40)上記(38)または(39)において、前記負極電極材料中の前記硫酸バリウムの含有量は、3質量%以下、または2質量%以下であってもよい。
(41)上記(1)~(40)のいずれか1つにおいて 満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.20以上または1.25以上であってもよい。
(42)上記(1)~(41)のいずれか1つにおいて、満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.35以下または1.32以下であってもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
《鉛蓄電池E1~E40およびC1~C19》
(1)鉛蓄電池の作製
(a)負極板の作製
原料の鉛粉と、表に示すポリマー化合物と、リグニンスルホン酸ナトリウムと、炭素質材料(カーボンブラック)と、硫酸バリウムとを、適量の硫酸水溶液と混合して、負極ペーストを得る。このとき、いずれも既述の手順で求められる、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量が表に示す値となるとともに、リグニンスルホン酸ナトリウムの含有量が0.1質量%、カーボンブラックの含有量が0.2質量%、硫酸バリウムの含有量が0.4質量%となるように各成分を混合する。負極ペーストを、Pb-Ca-Sn合金製の鋳造格子の網目部に充填し、熟成乾燥し、未化成の負極板を得る。
なお、ポリマー化合物がオキシエチレンユニットの繰り返し構造を有する場合、既述の手順で測定されるポリマー化合物のH-NMRスペクトルでは、3.2ppm以上3.8ppm以下のケミカルシフトの範囲にオキシエチレンユニットの-CH-に由来するピークが観察される。ポリマー化合物がオキシプロピレンユニットの繰り返し構造を有する場合、既述の手順で測定されるポリマー化合物のH-NMRスペクトルでは、3.2ppm以上3.42ppm以下のケミカルシフトの範囲にオキシプロピレンユニットの-CH-に由来するピークが観察され、3.42ppmを超え3.8ppm以下のケミカルシフトの範囲にオキシプロピレンユニットの-CH<および-CH-に由来するピークが観察される。また、H-NMRスペクトルにおいて、3.2ppm~3.8ppmのピークの積分値の、このピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH-基の水素原子のピークの積分値と、酸素原子に結合した-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合は、96~100%である。
(b)正極板の作製
原料の鉛粉を硫酸水溶液と混合して、正極ペーストを得る。正極ペーストを、正極集電体としてのPb製またはPb合金製の鋳造格子の網目部に充填し、熟成乾燥し、未化成の正極板を得る。Pb合金としては、Pb-Sn系合金またはPb-Ca-Sn系合金が用いられる。既述の手順で求められる正極集電体のCa含有量およびSn含有量は表に示す値とする。なお、表5の試験電池では、理論電気量比が表に示す値となるように、負極電極材料および正極電極材料の集電体への充填量を調節する。
(c)試験電池の作製
定格電圧2V、定格容量(10時間率)180Ahの制御弁式鉛蓄電池を作製する。正極板と負極板とを、これらの間にガラス繊維製不織布セパレータを介在させて積層し、極板群を形成する。既述の手順で求められる各極板の対向面積が表に示す値となるように、試験電池の極板群に含まれる正極板および負極板の数および厚みを調節する。極板群をポリプロピレン製の電槽に電解液(硫酸水溶液)とともに収容して、電槽内で化成を施し、制御弁式の鉛蓄電池を作製する。満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、1.28である。
(2)評価
上記試験電池を用いて、既述の手順でHR放電による容量試験を行い、初期の放電時間(min)を測定する。
また、上記試験電池を用いて、既述の手順で、HR放電による容量試験により、高温フロート寿命性能(寿命期間(月))を評価する。
評価結果を表1~表5に示す。表中、E1~E40は実施例であり、C1~C19は、比較例である。表4には、ポリマー化合物のMnも合わせて示す。ポリプロピレングリコールのMnは、既述の手順で求められるMnである。エステル化物またはエーテル化物のMnは、負極電極材料の調製に使用されるエーテル化物またはエステル化物のMnである。
Figure 2022085749000002
表1に示されるように、各極板の対向面積が2450mm/Ah未満では、負極電極材料がポリマー化合物を含む場合と含まない場合とで、HR放電での容量試験による高温フロート寿命性能に差異は見られない(C1およびC2とC7およびC8との比較)。それに対し、2450mm/Ah以上の範囲では、負極電極材料がポリマー化合物を含むことで、ポリマー化合物を含まない場合に比べて、HR放電での容量試験による高温フロート寿命性能が大きく向上する(C3~C6とE1~E4との比較)。また、2450mm/Ah以上の範囲では、初期の放電時間も長く、高いHR放電性能が得られる。
高温フロート寿命性能の評価で寿命に達した試験電池の寿命原因を確認すると、負極電極材料がポリマー化合物を含まない場合には、正極板の負極板との対向面積が2050mm/Ah以下では負極電極材料の劣化により寿命となる負極規制であり、2450mm/Ah以上では正極集電体の腐食により寿命となる正極規制である。換言すると、負極電極材料がポリマー化合物を含まない場合には、正極板の負極板との対向面積が2450mm/Ah以上の広い範囲で正極集電体の腐食が寿命に大きく影響する。そのため、HRで放電を行ったときの高温フロート寿命性能が低下し易い。
負極電極材料がポリマー化合物を含む場合、正極板の負極板との対向面積が4000mm/Ah以下では、負極電極材料の劣化が寿命となる負極規制であり、6100mm/Ah以上では、正極集電体の腐食が寿命となる正極規制である。換言すると、ポリマー化合物により、対向面積の広い範囲で正極集電体の腐食速度が低減され、HRで放電を行っても、高い高温フロート寿命性能が得られる。
なお、鉛蓄電池C8およびE1のそれぞれを、既述の手順でフロート充電し、1ヶ月毎に容量試験を25℃±2℃で行う際に、温和な放電条件(低レートの放電条件)とした場合には、いずれの場合にも優れた寿命性能が得られる。より具体的には、容量試験の放電を、定格容量(Ah)として記載の数値の0.1倍の電流(A)で1.8V/セルに達するまで行う。放電時間が8時間未満となるまでの試験期間を寿命期間とする。この場合の鉛蓄電池C8の寿命期間は、16月であり、鉛蓄電池E1の寿命期間は、15月である。つまり、高温フロート充電後の放電レートが高い場合と低い場合とで、正極板の負極板との対向面積を変化させたときの寿命期間が示す挙動は全く相違する。低レートの放電条件の場合には、正極板の負極板との対向面積によって、高温フロート試験後の寿命期間が低下するという課題は生じない。
Figure 2022085749000003
表2に示されるように、正極集電体中のCa含有量が0.07質量%を超える場合には、負極電極材料がポリマー化合物を含む場合でも、HRで放電したときの高温フロート寿命性能の向上効果はごく僅かである(C12とC13との比較)。それに対し、正極集電体中のCa含有量が0.07質量%以下では、負極電極材料がポリマー化合物を含むことで、HRで放電したときの高温フロート寿命性能が顕著に向上する(C9~C11およびC5とE5~E7およびE3との比較)。
Figure 2022085749000004
表3に示されるように、正極集電体がCaを含む場合(好ましくはCa含有量が0.01質量%以上の場合)には、Sn含有量がある程度多い方がより高い高温フロート寿命性能が得られる傾向がある(E9と、E3、E6~E7およびE10~E17との比較)。より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、Sn含有量は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、Sn含有量が多いと、Snリッチ相であるβ相が形成され、腐食速度が速くなる傾向がある。そのため、正極集電体の腐食をさらに低減して、より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、Sn含有量は、3質量%以下がより好ましい。なお、E8およびE9では、粒界腐食が進行し易い傾向があり、高温フロート寿命性能が僅かに低くなったと考えられる。
高温フロート寿命性能の評価で寿命に達した試験電池の寿命の原因を確認すると、E5、E6、E11、E13、およびE7では、負極電極材料の劣化が原因である(負極規制)。そのため、これらの電池では、正極集電体の腐食が低減され、より高い高温フロート寿命性能が得られると考えられる。
Figure 2022085749000005
表4に示されるように、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物、ヒドロキシ化合物のエーテル化物などを用いる場合にも、HRで放電したときの高い高温フロート寿命性能を確保することができる。
より高い高温フロート寿命性能が得られ易い観点からは、負極電極材料中のポリマー化合物の含有量は、質量基準で、3ppm以上が好ましく、5ppm以上が好ましい。同様の観点から、ポリマー化合物の含有量は、質量基準で、3000ppm以下が好ましく、2000ppm以下がより好ましく、1000ppm以下または500ppm以下であってもよい。
より高い高温フロート寿命性能を確保する観点からは、ポリマー化合物のHLBは、4以上(または4.3以上)9以下、あるいは4以上(または4.3以上)8.5以下が好ましい。
Figure 2022085749000006
表5に示されるように、より高い高温フロート寿命性能を確保し易い観点からは、負極板の正極板に対する理論電気量比は、0.7以上が好ましく、1.3以下が好ましい。
本発明の第1側面および第2側面に係る鉛蓄電池のそれぞれは、例えば、制御弁式鉛蓄電池に適用可能である。具体的には、鉛蓄電池は、据置型の産業用蓄電装置(UPS用途など)、車両の始動用電源もしくは補機用電源などに利用できる。なお、これらの用途は単なる例示であり、これらの用途に限定されない。
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5a:負極用ストラップ
5b:正極用ストラップ
6a:負極柱
6b:正極柱
10:電槽
11:極板群

Claims (17)

  1. 鉛蓄電池であって、
    前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
    前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
    前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
    前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
    前記負極電極材料は、重クロロホルムを溶媒として用いて測定されるH-NMRスペクトルのケミカルシフトにおいて、3.2ppm以上3.8ppm以下の範囲にピークを有するポリマー化合物を含み、
    前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
    前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池。
  2. 前記ポリマー化合物は、末端基に結合した酸素原子と、前記酸素原子に結合した-CH-基および/または-CH<基とを含み、
    前記H-NMRスペクトルにおいて、前記ピークの積分値の、前記ピークの積分値と前記-CH-基の水素原子のピークの積分値と前記-CH<基の水素原子のピークの積分値との合計に占める割合は、85%以上である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記ポリマー化合物は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含む、請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
  4. 鉛蓄電池であって、
    前記鉛蓄電池は、極板群および電解液を備える少なくとも1つのセルを備え、
    前記極板群は、負極板と、正極板と、前記負極板および前記正極板の間に介在するセパレータとを備え、
    前記負極板は、負極集電体および負極電極材料を備え、
    前記正極板は、正極集電体および正極電極材料を備え、
    前記負極電極材料は、オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を含むポリマー化合物を含み、
    前記正極集電体中のCaの含有量は、0.07質量%以下であり、
    前記正極板の前記負極板との10時間率容量1Ahあたりの対向面積は、2450mm/Ah以上6700mm/Ah以下である、鉛蓄電池。
  5. 前記対向面積は、6500mm/Ah以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  6. 前記正極集電体中のSnの含有量は、7質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  7. 前記正極集電体中のCaの含有量は、0.01質量%以上である、請求項6に記載の鉛蓄電池。
  8. 前記正極集電体中のSnの含有量は、0.01質量%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  9. 前記正極集電体中のCaの含有量は、0.01質量%未満であり、
    前記正極集電体中のSnの含有量は、2質量%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  10. 前記負極電極材料中の前記ポリマー化合物の含有量は、3ppm以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  11. 前記負極電極材料中の前記ポリマー化合物の含有量は、5000ppm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  12. 前記ポリマー化合物は、前記オキシC2-4アルキレンユニットの繰り返し構造を有するヒドロキシ化合物、前記ヒドロキシ化合物のエーテル化物および前記ヒドロキシ化合物のエステル化物からなる群より選択される少なくとも一種を含み、
    前記ヒドロキシ化合物は、ポリC2-4アルキレングリコール、オキシC2-4アルキレンの繰り返し構造を含む共重合体、およびポリオールのポリC2-4アルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~11のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  13. 前記ポリマー化合物は、オキシプロピレンユニットの繰り返し構造を含む、請求項12に記載の鉛蓄電池。
  14. 前記ポリマー化合物は、1つ以上の疎水性基を有し、
    前記疎水性基の少なくとも1つは、炭素数が8以上の長鎖脂肪族炭化水素基である、請求項12に記載の鉛蓄電池。
  15. 前記ポリマー化合物は、オキシエチレンユニットの繰り返し構造を含む、請求項12または14に記載の鉛蓄電池。
  16. 前記負極板の理論電気量の、前記正極板の理論電気量に対する比は、0.7以上1.3以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
  17. 制御弁式である、請求項1~16のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
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