図1は実施例における画像形成装置の構成を示す概略側断面図である。
図1において、画像形成装置1は、例えばカラープリンタであり、配置(配列順序)を変更することが可能であり現像剤像としてのトナー画像を形成する複数の画像形成ユニットを備えたものである。
画像形成装置1は、5色(Y:イエロー色、M:マゼンタ色、C:シアン色、K:ブラック色、W:ホワイト色)の現像剤としてのトナーに対応した5つの独立した画像形成ユニット2(2Y、2M、2C、2K、2W)が配設されている。
画像形成部としての画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wは、それぞれイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK、ホワイトWの各色に対応したトナー画像を形成するものである。
画像形成ユニット(2Y、2M、2C、2K、2W)は、感光ドラム3(3Y、3M、3C、3K、3W)、帯電ローラ4(4Y、4M、4C、4K、4W)、現像ローラ5(5Y、5M、5C、5K、5W)、現像ブレード6(6Y、6M、6C、6K、6W)、供給ローラ7(7Y、7M、7C、7K、7W)、クリーニングブレード9(9Y、9M、9C、9K、9W)、およびトナーカートリッジ10(10Y、10M、10C、10K、10W)を含むように構成されている。
なお、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wは、同じ構成であるため、以下、画像形成ユニット2Yを代表として説明する。
画像形成ユニット2Yは、感光ドラム3Yと、帯電ローラ4Yと、現像ローラ5Yと、現像ブレード6Yと、供給ローラ7Yと、クリーニングブレード9Yと、トナーカートリッジ10Yとを有している。
感光ドラム3Yは、像担持体であり、回転可能に支持されているものである。
帯電ローラ4Yは、所定の電圧を印加することにより、接触した感光ドラム3Yの表面を一様に帯電させるものである。この帯電ローラ4Yにより帯電した感光ドラム3Yには、画像形成装置1側に配置されたLED(Light Emitting Diode)ヘッド8Yにより静電潜像が形成される。LEDヘッド8Yは、複数の発光素子(LED)が主走査方向に配置され、ホストコンピュータから入力される画像データに基づく光を感光ドラム3Yに照射し、感光ドラム3Yに静電潜像を形成する。
現像ローラ5Yは、感光ドラム3Yに形成された静電潜像にトナーを付着させて現像剤像としてのトナー画像を形成するものである。
現像ブレード6Yは、現像ローラ5Y上に供給されるトナーの厚さを規制し、薄層を形成するものである。
供給ローラ7Yは、現像ローラ5Yと接触して配置され、トナーを現像ローラ5Yに供給するものである。
クリーニングブレード9Yは、感光ドラム3Y上に残留したカブリトナーや転写残トナー、上流の画像形成ユニット2からの逆転写トナーを掻き取って処理するものである。
トナーカートリッジ10Yは、トナーを貯蔵するものである。
画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wの各感光ドラム3(3Y、3M、3C、3K、3W)の下方には、中間転写ベルト12を挟んで1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wが中間転写ベルト12の搬送方向に配列されている。
複数の転写部材としての1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wは、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wに対応して配置され、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wで形成されたそれぞれのトナー画像を中間転写ベルト12に転写するものであり、感光ドラム3Y、3M、3C、3K、3Wに中間転写ベルト12を押し付け、1次転写ニップ部を形成する。
本実施例では、中間転写ベルト12の搬送方向における上流から1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wの順で配置されている。
転写体としての中間転写ベルト12は、それぞれの画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wが形成したトナー画像が転写されるものである。この中間転写ベルト12は、駆動ローラ15と、従動ローラ16と、2次転写対向ローラ17とにより、所定のテンションで張架される。駆動ローラ15は、ベルトモータにより回転し、中間転写ベルト12を図中矢印Aが示す搬送方向に搬送する。従動ローラ16は、中間転写ベルト12に従動して回転する。
中間転写ベルト12の下方には、記録媒体を収容する用紙収容カセット18と、用紙収容カセット18に収容されている記録媒体を送り出すホッピングローラ19と、中間転写ベルト12を2次転写対向ローラ17に押し当てて2次転写ニップ部を形成する2次転写ローラ26と、記録媒体を2次転写ニップ部へ送り出すレジストローラ対21と、記録媒体を2次転写ローラ26へと案内するガイド22とを備えている。
2次転写部としての2次転写ローラ26は、電圧供給手段から供給された電圧により中間転写ベルト12に転写されたトナー画像を記録媒体に転写するものである。2次転写ローラ26は、中間転写ベルト12を挟んで2次転写対向ローラ17に対向して配設されている。この2次転写ローラ26は、中間転写ベルト12に従動して回転する。中間転写ベルト12は、2次転写ローラ26により2次転写対向ローラ17に押し当てられて2次転写ニップ部を形成している。2次転写ローラ26で中間転写ベルト12のトナー画像が記録媒体に転写され、その記録媒体は、中間転写ベルト12から分離され、定着機構27へ搬送される。
定着機構27は、記録媒体に転写されたトナーを加熱、溶融し、記録媒体上にトナー画像を定着させるものであり、ヒートローラ28と、そのヒートローラ28を加圧する加圧ローラ29等を含んで構成される。ヒートローラ28は、ヒートモータにより駆動され、加圧ローラ29は、ヒートローラ28に従動して回転する。また、ヒートローラ28は、ハロゲンランプ等のヒータを内蔵しており、記録媒体上のトナーを加熱、溶融し、記録媒体上にトナー画像を定着させる。
記録媒体の搬送方向における定着機構27の下流側には、記録媒体を画像形成装置1の筐体上部のスタッカ31へと搬送するガイド32が設けられ、トナー画像が定着された記録媒体はスタッカ31に排出される。
中間転写ベルト12の搬送方向における2次転写ニップ部の下流側には、2次転写ニップ部において記録媒体に転写されず、中間転写ベルト12上に残留する2次転写残トナーや、2次転写ローラ26に付着したトナーがクリーニング電圧を印加することで、中間転写ベルト12に戻されたトナーを除去するクリーニングブレード33が中間転写ベルト12を介してクリーニングブレード対向ローラ34に対向して配設されている。クリーニングブレード33は、可撓性のゴム材またはプラスチック材からなり、中間転写ベルト12上に残留する2次転写残トナー等を廃トナータンク35に掻き落とす。
環境センサ36は、画像形成装置1の周辺温度および湿度を測定するために設置された温湿度センサである。
ここで、本実施例の画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wは、配置を入れ替えることが可能になっており、また未使用の画像形成ユニット2を中間転写ベルト12から離間させて使用しないことができる構成となっている。
また、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wには、RFタグがそれぞれ設置されており、画像形成装置1にはRFタグを読み取るリーダが設置されているため、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wの設置位置を制御部(図2に示す機構制御部52)により判定することができるようになっている。
図1では、中間転写ベルト12の搬送方向Aに対して上流側からイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックK、ホワイトWの順序で画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wが設置されているが、例えば、上流側からイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの順序で画像形成ユニット2Y、2M、2C、2Kを設置する等、画像形成ユニットの設置順序を変更して印刷を行うことも可能である。
図2は実施例における画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
図2において、画像形成装置1は、高圧制御部40と、帯電電圧発生部41と、供給電圧発生部42と、現像電圧発生部43と、1次転写電圧発生部44と、2次転写電圧発生部45と、コマンド/画像処理部51と、機構制御部52と、RAM53と、LEDヘッド駆動部54と、メモリ60とを有している。
コマンド/画像処理部51は、上位装置としてのホストコンピュータからの指示であるコマンドおよび画像データを受信し、受信した画像データを処理してビットマップデータへの展開を行い、RAM(Random Access Memory)53に書き込むものである。
LEDヘッド駆動部54は、RAM53に書き込まれたデータに基づいてLEDヘッド8Y、8M、8C、8K、8Wを駆動するものである。
制御部としての機構制御部52は、画像形成装置1のエンジン部の各部の制御を行うものであり、コマンド/画像処理部51からの指令に従い、ベルトモータ55、ホッピングモータ57、レジストモータ58、ドラムモータ56Y、56M、56C、56K、56W、およびヒータモータ59の駆動を制御し、駆動ローラ15、ホッピングローラ19、レジストローラ対21、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2W、およびヒートローラ28を動作させるものである。
また、機構制御部52は、高圧制御部40を制御し、1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wに印加する転写電圧としての1次転写電圧を制御する。
さらに、機構制御部52は、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wに配設されているRFタグを読取るリーダを所定のタイミングで確認し、画像形成ユニット2が配置された順序を判別する。
高圧制御部40は、機構制御部52の指示に従い、帯電電圧発生部41、供給電圧発生部42、現像電圧発生部43、1次転写電圧発生部44、および2次転写電圧発生部45の制御を行うものである。
帯電電圧発生部41は、高圧制御部40の指示に従い、帯電ローラ4Y、4M、4C、4K、4Wへの帯電電圧の生成と停止を行うものである。
供給電圧発生部42は、高圧制御部40の指示に従い、供給ローラ7Y、7M、7C、7K、7Wへの供給電圧の生成と停止を行うものである。
現像電圧発生部43は、高圧制御部40の指示に従い、現像ローラ5Y、5M、5C、5K、5Wへの現像電圧の生成と停止を行うものである。
電圧供給手段としての1次転写電圧発生部44は、高圧制御部40の指示に従い、1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wへの1次転写電圧の生成と停止を行うものである。
2次転写電圧発生部45は、2次転写ローラ26に電圧を供給するものである。
記憶部としてのメモリ60は、不揮発性のメモリであり、1次転写電圧発生部44で生成する1次転写電圧の設定値(例えば、図4、図7、図8、および図9に示す1次転写電圧設定テーブル)や、帯電電圧発生部41、供給電圧発生部42、現像電圧発生部43、および2次転写電圧発生部45で生成する各電圧の設定値を記憶するものである。
検出部としての環境センサ36は、画像形成装置1の周辺温度および湿度を測定(検出)する温湿度センサである。
本実施例の機構制御部52は、中間転写ベルト12の搬送方向において、最上流に配置された第1の転写部材としての1次転写ローラ11Yの1次転写電圧の絶対値を最も高く制御し、1次転写ローラ11Yの直下流に配置された第2の転写部材としての1次転写ローラ11Mの転写電圧の絶対値を最も低く制御し、更に、1次転写ローラ11Mの下流に配置された1次転写ローラ11C、11K、11Wの1次転写電圧の絶対値を下流になるほど高くなるように制御する。
上述した構成の作用について説明する。
画像形成装置が行う画像形成処理を図3の実施例における画像形成処理の流れを示すフローチャートの図中Sで表すステップに従って図1および図2を参照しながら説明する。
S1:画像形成装置1のコマンド/画像処理部51は、ホストコンピュータから送信される印刷データ(画像データ)を受信する。コマンド/画像処理部51は、受信した印刷データ(画像データ)を展開処理してビットマップデータを生成し、RAM53に記憶させる。
S2:コマンド/画像処理部51がビットマップデータの生成が完了すると、機構制御部52は、メモリ60に記憶されている1次転写電圧設定テーブルから、1次転写ローラ11Y、11M、11C、11K、11Wに印加する1次転写電圧の設定値(絶対値)を読み出す(設定テーブル呼び出し)。
メモリ60に記憶されている1次転写電圧設定テーブルには、図4に示す1次転写電圧値の絶対値(以下、「1次転写電圧値の絶対値」を「1次転写電圧値」という。)が設定されており、中間転写ベルト12の図1中の矢印Aが示す搬送方向に対して上流から、イエロー(Y)の1次転写電圧値は1600V、マゼンタ(M)の1次転写電圧値は1000V、シアン(C)の1次転写電圧値は1050V、ブラック(K)の1次転写電圧値は1100V、ホワイト(W)の1次転写電圧値は1200Vとなっている。
本実施例における1次転写電圧値は、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流に配置されたイエロー(Y)の1次転写ローラ11Yが最も1次転写電圧(絶対値)が高く、上流から2番目のマゼンタ(M)の1次転写ローラ11Mが最も1次転写電圧(絶対値)が低く設定されている。また、それ以降下流になるにつれてシアン(C)の1次転写ローラ11C、ブラック(K)の1次転写ローラ11K、ホワイト(W)の1次転写ローラ11Wの順で1次転写電圧(絶対値)が高くなっていることが特徴である。
ここで、本実施例の図4に示す1次転写電圧値で印刷を行った場合のイエロートナーの濃度と、本実施例の1次転写電圧値を適用していない比較例の1次転写電圧値(図10に示すように、中間転写ベルト12の搬送方向において上流から下流になるほど1次転写電圧値を高く設定した1次転写電圧値)で印刷を行った場合のイエロートナーの濃度とを比較した実験結果を、図5を用いて説明する。
なお、図4に示す本実施例の1次転写電圧値と、図10に示す比較例の1次転写電圧値との違いは、イエロー(Y)の1次転写電圧値が、図10に示す比較例では950Vであるのに対して図4に示す本実施例では1600Vと、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流のイエロー(Y)の1次転写電圧を下流の色に比べて最も高く設定している点である。
図5は、イエロー(Y)以外の1次転写電圧を図4に示す1次転写電圧値(図10も同じ1次転写電圧値)に設定し、イエロー(Y)の1次転写電圧(横軸)のみを変化させたときのイエロートナーの濃度変化を表している。なお、濃度(縦軸)は光学濃度(OD値)で表している。
図5に示すように、比較例の図10に示す1次転写電圧である950Vの時のイエロートナーの濃度は1.54(OD値)であるのに対し、本実施例の図5に示す1次転写電圧である1600Vの時のイエロートナーの濃度は1.63(OD値)になっており、濃度が0.9(OD値)高くなっていることがわかる。
このようにイエロー(Y)の1次転写電圧を高くすることでイエロートナーの濃度が高くなる理由は、イエロー(Y)のトナー画像が下流の1次転写部を通過するときに下流の感光ドラム3M、3C、3K、3Wにイエロートナーが転移してしまう現象(以下、「逆転写」という。)によるトナーの逆転写量が、イエロー(Y)の1次転写電圧が低い時より少なくなり、最終的に中間転写ベルト12上に形成されるトナーの量が多くなるためである。
その理由は、イエロー(Y)の1次転写電圧を高くすることで、1次転写部を通過直後の空隙間での放電により、1次転写後のイエロートナーの平均帯電量が高くなる。逆転写は通常の転写と逆方向にトナーが転移する現象であり、低帯電のトナーや逆帯電したトナーが逆転写しやすいため、1次転写電圧を高くすることでトナーの逆転写量を低減させることができるためである。
したがって、最終的に中間転写ベルト12上に形成されるイエロー(Y)のトナーの量を多くすることができ、イエロートナーの濃度を高くすることができる。
このように、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流の1次転写電圧値を高く設定することで、最上流色で形成されたトナー画像が逆転写されることによる濃度低下を少なくすることができる。
また、イエロー(Y)以外の1次転写電圧を高くすることで、イエロー(Y)以外の色も濃度低下を少なくすることができるが、1次転写電圧を高くすると、上流で形成されたトナーの逆転写量は増加してしまう。
そのため、最上流以外の色の1次転写電圧を高く設定すると、1次転写電圧を高くした色のトナーの逆転写は低減されるが、それより上流で形成された色のトナーの逆転写は増加してしまうため、全色の逆転写量を合計すると逆転写量が多くなってしまう。
例として、図5に示すイエロー(Y)のみ1次転写電圧を変化させたときのイエロートナー濃度に対して、図6に、イエロー(Y)とマゼンタ(M)の1次転写電圧を変化させたときのイエロートナーの濃度変化を示す。このとき、イエロー(Y)とマゼンタ(M)以外の1次転写電圧は図5に示す場合と同様としている。
イエロー(Y)とマゼンタ(M)の1次転写電圧を高くした図6に示す場合において、1次転写電圧1600Vにおけるイエロートナーの濃度は、イエロー(Y)のみ1次転写電圧を高くした図5に示す場合における1次転写電圧1600Vの濃度(1.63(OD値))に比べて低くなっており、イエロー(Y)の1次転写電圧を高くすることによる逆転写の改善効果が少なくなってしまっていることがわかる。
即ち、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流の1次転写電圧値を高く設定することが、全体の逆転写量を考えたときに、逆転写量の低減に効果的である。
ここで、メモリ60に記憶されている1次転写電圧設定テーブルは、図7に示すように、画像形成装置1に設置された環境センサ56で検出する温度および湿度、また画像形成装置1の印刷速度によって、1次転写電圧を変更する構成としても良い。なお、印刷速度は、1分間当たり印刷を行う記録媒体(例えば、A4記録媒体)の枚数(ppm:枚/分)で表される。
例えば、図7に示す1次転写電圧設定テーブルでは、「温度10℃以上かつ湿度20%以上」のとき、および「温度10℃未満あるいは湿度20%未満」かつ「印刷速度30ppm未満」のとき、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流のイエロー(Y)の1次転写電圧が最も高く、最上流から2番目のマゼンタ(M)が最も低く、最上流から3番目以降のシアン(C)、ブラック(K)、ホワイト(W)は、下流に行くにつれて1次転写電圧が高くなるように設定されている。
このように本実施例では、環境センサ56で検出した温度および湿度が所定の温度および湿度よりも高い(例えば、温度10℃以上かつ湿度20%以上)場合、機構制御部52は、第1の転写部材としての1次転写ローラ11Yの転写電圧を第2の転写部材としての1次転写ローラ11Mの転写電圧よりも高くし、更に、中間転写ベルト12の搬送方向において、1次転写ローラ11Mの下流に配置された1次転写ローラの転写電圧を下流になるほど高くなるように制御する。
また、印刷速度が所定の速度より低速(印刷速度30ppm未満)の場合、機構制御部52は、第1の転写部材としての1次転写ローラ11Yの転写電圧を第2の転写部材としての1次転写ローラ11Mの転写電圧よりも高くし、更に、中間転写ベルト12の搬送方向において、1次転写ローラ11Mの下流に配置された1次転写ローラの転写電圧を下流になるほど高くなるように制御する。
一方で、「温度10℃未満あるいは湿度20%未満」かつ「印刷速度30ppm以上」のとき、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流のイエロー(Y)の1次転写電圧は、下流の色の1次転写電圧と比べて高い電圧には設定していない。
逆転写は、高温多湿環境および印刷速度が遅い場合に逆転写量が多くなり、低温低湿環境や印刷速度が速い場合は逆転写が少なくなる傾向があるため、図7に示す1次転写電圧設定テーブルのように、温度・湿度および印刷速度によって、中間転写ベルト12の搬送方向における最上流のイエロー(Y)の1次転写電圧を最も高くする1次転写電圧設定を行うか否かを変更しても良い。
ここまで、中間転写ベルト12の搬送方向において上流からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ホワイト(W)の順番で5つの画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wを配置した画像形成装置1で説明したが、画像形成ユニットの色順(配置順序)や使用される数量はこれに限定されるものではなく、色順(配置順序)や画像形成ユニットの数量が異なる画像形成装置1や、色順(配置順序)や画像形成ユニットの数量の変更が可能な画像形成装置1としても良い。
例えば、中間転写ベルト12の搬送方向において上流からホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順番で画像形成ユニット2W、2Y、2M、2C、2Kが配置されている場合、メモリ60に記憶される1次転写電圧設定テーブルを、図8に示すように、最上流のホワイト(W)の1次転写電圧が最も高く、上流から2番目のイエロー(Y)が最も低く、上流から3番目以降のマゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)は、下流に行くにつれて1次転写電圧が高くなるように設定する。
また、中間転写ベルト12の搬送方向において上流からイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順番で、4つの画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、を配置する場合、メモリ60に記憶される1次転写電圧設定テーブルを、図9に示すように、最上流のイエロー(Y)の1次転写電圧が最も高く、上流から2番目のマゼンタ(M)が最も低く、上流から3番目以降のシアン(C)、ブラック(K)は、下流に行くにつれて1次転写電圧が高くなるように設定する。
ここで、下流に行くにつれて1次転写電圧が高くなるように設定するのは、下流に配置された画像形成ユニットほど中間転写ベルト12に転写するトナー量が多くなるように設定されているからである。
なお、帯電電圧発生部41、供給電圧発生部42、現像電圧発生部43、2次転写電圧発生部45で生成する各電圧の設定値についてもメモリ60から読み出し、以降の印刷動作内でその電圧が出力される。
S3:画像形成装置1は印刷動作を開始する。
まず、機構制御部52は、ベルトモータ55およびドラムモータ56Y、56M、56C、56K、56Wを制御し、駆動ローラ15および画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wを駆動させて転写ベルト12を図1に示す矢印Aが示す方向へ搬送させる。
S4:転写ベルト12の搬送を開始した機構制御部52は、高圧制御部40を制御し、帯電電圧発生部41、供給電圧発生部42、および現像電圧発生部43を駆動し、帯電ローラ4K、4Y、4M、4C、4W、供給ローラ7K、7Y、7M、7C、7W、および現像ローラ5K、5Y、5M、5C、5Wにそれぞれ所定の電圧を供給し、トナー画像を現像する動作を行う。
次に、画像形成ユニット2で行われるトナー画像形成動作を説明する。なお、トナー画像形成動作は、画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wの各色の画像形成ユニットで同じ動作であるため、画像形成ユニット2Yで行われるトナー画像形成動作を説明する。
まず、機構制御部52は、高圧制御部40を制御して帯電電圧発生部41を駆動し、帯電ローラ4Yに-1000Vの電圧を印加し、感光ドラム3Yの表面を-600Vに帯電させる。感光ドラム3Yを帯電させた後、機構制御部52は、生成したビットマップデータに基づいてLEDヘッド駆動部54を制御し、LEDヘッド8Yを発光させ、感光ドラム3を露光して-50Vに除電し、感光ドラム3Yの表面に静電潜像を形成する。感光ドラム3Yに形成された静電潜像は、感光ドラム3Yの回転に伴い、現像ローラ5Yとの接触部に到達する。
また、機構制御部52は、高圧制御部40を制御して供給電圧発生部42および現像電圧発生部43を駆動し、現像ローラ5Yに-200Vの電圧を印加し、供給ローラ7Yに-250Vの電圧を印加する。これにより、トナーカートリッジ10Yから供給されたトナーは、現像ローラ5Yおよび供給ローラ7Yによりマイナス極性に摩擦帯電される。マイナス極性に摩擦帯電されたトナーは、現像ローラ5Yと供給ローラ7Yとの電位差によって現像ローラ5Y上に付着する。現像ローラ5Y上に付着したトナーは、現像ブレード6Yによって均一な厚さにならされてトナー層を形成する。現像ローラ5Y上に形成されたトナー層は、現像ローラ5Yの回転によって感光ドラム3Yとの接触部に運ばれる。
現像ローラ5Yと感光ドラム3Yとの間において、感光ドラム3Yの表面が-50Vに除電された露光部では、感光ドラム3Yから現像ローラ5Y方向の電界が形成される。したがって、感光ドラム3Yの表面には、現像ローラ5Y上のマイナス極性に帯電したトナーが露光部に付着し、トナー画像が形成される。
S5:機構制御部52は、1次転写を行う。これにより、感光ドラム3Yの表面に形成されたイエローのトナー画像は、感光ドラム3Yの回転に伴い1次転写ローラ11Yと中間転写ベルト12で形成された1次転写ニップ部へと搬送され、1次転写が行われる
このとき、機構制御部52は、高圧制御部40を制御して1次転写電圧発生部44を駆動し、1次転写ローラ11Yに1次転写電圧を印加する。
1次転写電圧発生部44は、上述した図4に示す1次転写電圧設定テーブルに基づいて1次転写電圧の設定値を設定し、1次転写ローラ11Yの1次転写電圧を生成する。
1次転写ローラ11Yへ印加された1次転写電圧により生成された電界により、イエロー(Y)のトナー画像は中間転写ベルト12に転移する。その後、イエロー(Y)のトナー画像は中間転写ベルト12の回転に伴いマゼンタ(M)の1次転写ニップ部に到達する。
このとき、1次転写電圧発生部44は、高圧制御部40の指示に従い、上述した図4に示す1次転写電圧設定テーブルに基づいて1次転写電圧の設定値を設定し、1次転写ローラ11Mの1次転写電圧を生成する。
1次転写ローラ11Mに印加された1次転写電圧により生成された電界により、イエロー(Y)のトナー画像の一部が感光ドラム3Mに逆転写し、画像形成ユニット2Mで形成されたマゼンタ(M)のトナー画像は中間転写ベルト12に転写される。
以降、シアン(C)、ブラック(K)、ホワイト(W)の1次転写部をトナー画像が通過する際も同様に1次転写電圧が1次転写ローラに印加されることで、カラーのトナー画像が、図1中矢印Aが示す方向に搬送される中間転写ベルト12上に形成される。
S6:機構制御部52は、1次転写動作によって中間転写ベルト12上に生成されたカラーのトナー画像が2次転写部に到達するタイミングに合わせてホッピングモータ57およびレジストモータ58を制御し、記録媒体の給紙を行う。
用紙収容カセット18に収容されている記録媒体は、ホッピングローラ19の回転によって送り出され、レジストローラ対21の回転によってガイド22を通って2次転写部へ搬送される。
S7:機構制御部52は、記録媒体が2次転写ニップ部に到達すると同時に、高圧制御部40を制御して2次転写電圧発生部45を駆動し、2次転写電圧を2次転写ローラ26に印加し、記録媒体に中間転写ベルト12に形成されたトナー画像を転写する。トナー画像が転写された記録媒体は、定着装置27に送られる。
S8:記録媒体が定着装置27に到達すると、機構制御部52は、定着可能温度になるように温度制御したヒートローラ28と加圧ローラ29とにより、記録媒体を加熱および加圧しながら搬送し、トナー画像を記録媒体に定着させる。
トナー画像が定着された記録媒体は搬送ガイド32で案内され、スタッカ31に排出されて画像形成処理が完了する。
このように、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流であるイエロー(Y)の1次転写電圧を最も高くし、最上流から2番目のマゼンタ(M)が最も低く、以降下流になるにつれて1次転写電圧が高くなるようにしたことにより、最上流のイエロー(Y)のトナー画像が下流の1次転写部を通過する際に起きる逆転写量を減らすことができるため、イエロー(Y)トナーの濃度の低下やトナー消費量の増加を防ぐことができる。
したがって、中間転写ベルト12の搬送方向において最上流に設置された画像形成ユニットのトナー画像の濃度低下を抑制することができる。
また、最上流に設置された画像形成ユニットのトナー消費量の増加を抑制することができる。
特に、色重ねが少ないブラック(K)でなく、色重ねが多いイエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)のカラーを形成する色が最上流の場合(即ち、第1の転写部材としての最上流の1次転写ローラに対応する画像形成ユニットが、イエロー、マゼンタ、およびシアンのうちいずれかの色の現像剤像を形成する場合)、印刷結果の色味への影響が大きく、逆転写量が多い場合に印刷品位の低下を招くことが多かったが、最上流に設置された画像形成ユニットのトナー画像の濃度低下を抑制し、印刷品位の向上を図ることができる。
さらに、自動濃度調整機能等によって最上流の色のトナー量を多くして、逆転写による濃度低下を補おうとすると、最上流のトナーの消費量が他に比べて多くなってしまうことを抑制することができる。
なお、本実施例では、5つの画像形成ユニット2Y、2M、2C、2K、2Wについて説明したが、少なくとも3つ以上の画像形成ユニットがあれば良く、また、画像形成ユニットの配列順番や個数、現像剤としてのトナーの色や顔料等を限定するものではない。
また、本実施例では、画像形成装置1を、転写体としての中間転写ベルトを用いた中間転写方式の画像形成装置として説明したが、複数の画像形成ユニットを使用していれば転写体としての記録媒体に直接トナー画像を転写する直接転写方式の画像形成装置であっても良い。
さらに、本実施例では、1次転写において転写電圧を制御する画像形成装置に適用した例を説明したが、転写電流を制御する装置において、電流値の大小関係を本実施例の転写電圧の大小関係と同様に設定するようにしても良い。
以上説明したように、本実施例では、逆転写による現像剤像の濃度低下を抑制することができるという効果が得られる。
また、最上流に設置された画像形成ユニットのトナー消費量の増加を抑制することができるという効果が得られる。
なお、本実施例では、画像形成装置をプリンタとして説明したが、それに限られるものでなく、複写機、ファクシミリ装置、複合機(MFP)等としても良い。