JP2022083991A - 電磁鋼板の切断方法及びコアの作製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、カレントトランスや車載用の電流センサー等のコアに使用される電磁鋼板材の作製方法に関するものであり、より具体的には、電磁鋼板をファイバーレーザーにより切断する方法、磁気特性の劣化を最小限に抑え、かつ防錆効果を付与した電磁鋼板材を作製する方法、及び、切断された電磁鋼板材からコアを作製する方法に関するものである。
カレントトランス、電流センサーなどに使用されるコアは、電磁鋼板を切断して得られる帯状の電磁鋼板材を巻回、或いは、プレス抜き打ちされた電磁鋼板材を積層して作製される(以下では「巻回」と「積層」を纏めて「積層」と称する)。電磁鋼板材が積層されたコアアッセンブリには、焼鈍処理が施され、電磁鋼板材どうしを固着するためにワニス(含浸接着剤)を含浸させる。
帯状に電磁鋼板を切断するには、スリッター装置が用いられる。たとえば、特許文献1では、スリッター装置に配備された上下一対の回転刃により長尺の電磁鋼板を切断して帯状の電磁鋼板材を得る。
しかしながら、回転刃による切断では、曲線加工は困難であり、外縁形状が複雑な加工も困難である。また、回転刃の消耗が早い問題がある。さらに、切断時に電磁鋼板が回転刃に対して逃げてしまうことがあり、特に細幅帯状の電磁鋼板材を得ることは難しい。加えて、回転刃は数mm程度の厚さであるから切断時に材料歩留りの低下を招く。
また、回転刃による切断は、上下一対の回転刃をオフセットした状態で実施される。従って、電磁鋼板材20の切断面21には、図8及び後述する図10に示すように、切断刃による喰い切り部分にバリ22が生じ、切断後の幅がばらつく。その結果、図9に示すように電磁鋼板材20を複数積層したコアアッセンブリ23aでは、側面に±0.1mm程度の段差が生じる。
電磁鋼板をプレス打ち抜きして得られる電磁鋼板材の場合も、打ち抜かれた電磁鋼板材には、金型の喰い切り部分にバリが生じ、切断後の幅がばらつく。その結果、電磁鋼板材を積層したときに、コアアッセンブリの側面に上記と同様に段差が生じる。
コアアッセンブリの側面に段差が生じると、最終製品であるコアの寸法不良や性能不良等の原因となる。
ところで、電磁鋼板材を積層したコアアッセンブリ23aは、コア23を作製するために、焼鈍処理を施した後、電磁鋼板材どうしの剥離を防ぐためワニス25で固着する含浸処理を行なう。このとき、ワニス25がコア23の側面に残留すると、図10に示すように、ワニス溜り24として硬化する。ワニス溜り24は、直径0.3mm以上、高さ10分の数mmになることがあり、ワニス溜り24の発生したコア23は外観不良、寸法不良となる。
発明者らは、回転刃切断或いはプレス打抜きにより得られた電磁鋼板材を用いて作製されたコアには含浸材溜りが発生し易いことに気付いた。そして、鋭意研究の結果、含浸材溜りは、下記の原因で発生することを突き止めた。
その原因は、電磁鋼板材20の切断面の表面構造である。回転刃切断或いはプレス打抜きされた電磁鋼板材20の切断面21は、凹凸の少ない平坦な構造になる。凹凸の少ない平坦な切断面は濡れ性が高いから、図11に模式的に示すように、ワニス26が切断面21に付着し易い。そして、付着したワニス26がそのまま硬化することで、一部が図10に示すようなワニス溜り24となる。
なお、電磁鋼板材20に生じたバリ22によって生ずるコア側面の段差(積層ズレ)もワニス溜りの一因である。段差にはワニスが溜まり易いためである。
そこで、発明者らは、回転刃やプレス打抜きに代えてレーザーを使用した電磁鋼板の切断方法の採用を検討した。
たとえば、特許文献2では、亜鉛メッキ鋼板をレーザー切断する方法を開示している。レーザーとしてYAGレーザー、CO2レーザーが使用されている。これらレーザーは、2~20体積%の酸素、残部窒素のアシストガスを吹き付けつつ、鋼板に照射される。
しかしながら、YAGレーザー、CO2レーザーを電磁鋼板の切断に使用すると、切断時に切断面に過剰に熱が加わる。その結果、切断された端面からの深さ約1000μm程度まで約1500℃以上に加熱されてしまい、磁気特性を左右する電磁鋼板の結晶構造が熱により変化する。また、YAGレーザー、CO2レーザーはアシストガスに酸素を使用した場合、電磁鋼板材の切断面に黒錆が発生する。そして、これら表層の結晶構造変化と表面に発生する黒錆により低下した磁気特性は、電磁鋼板を焼鈍処理等しても回復することは困難である。従って、YAGレーザー、CO2レーザーで切断した電磁鋼板材は、磁気ヒステリシス曲線(B-Hカーブ)の幅に影響を受け難いモーター等のコアには使用可能であるが、カレントトランス、電流センサー等のB-Hカーブの微小磁化領域から飽和磁化全域にて軟磁気特性が求められる保磁力や残留磁束密度の影響を受ける製品のコアには使用できなかった。
本発明の目的は、電磁鋼板をファイバーレーザーにより切断する方法、磁気特性の劣化を最小限に抑え、かつ防錆効果を付与した電磁鋼板材を作製する方法、及び切断された電磁鋼板材からワニス溜りの発生を抑えたコアを作製する方法を提供することである。
本発明の電磁鋼板の切断方法は、
電磁鋼板に酸素濃度が50体積%以上のアシストガスを吹き付けながらファイバーレーザーを照射して切断して、切断面に防錆効果が付与された電磁鋼板材を得る。
電磁鋼板に酸素濃度が50体積%以上のアシストガスを吹き付けながらファイバーレーザーを照射して切断して、切断面に防錆効果が付与された電磁鋼板材を得る。
前記ファイバーレーザーは、
ファイバーコア径:1μm~25μm、
レーザー出力:300W~1000W、
切断速度:300mm/秒~500mm/秒、
で前記電磁鋼板に照射することができる。
ファイバーコア径:1μm~25μm、
レーザー出力:300W~1000W、
切断速度:300mm/秒~500mm/秒、
で前記電磁鋼板に照射することができる。
前記酸素濃度は、60体積%以上であり、残部窒素とすることができる。
本発明の電磁鋼板材の作製方法は、
上記電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材に焼鈍処理することで、磁気特性を復元する。
上記電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材に焼鈍処理することで、磁気特性を復元する。
前記焼鈍処理は、750℃~850℃、1時間以上の条件で実施することが望ましい。
また、本発明のコアの作製方法は、
上記電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材を巻回又は積層してコアアッセンブリを得るステップ、
前記コアアッセンブリに焼鈍処理を施して前記電磁鋼板材の磁気特性を復元するステップ、及び、
前記コアアッセンブリをワニスに浸漬するステップ、
を含んでいる。
上記電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材を巻回又は積層してコアアッセンブリを得るステップ、
前記コアアッセンブリに焼鈍処理を施して前記電磁鋼板材の磁気特性を復元するステップ、及び、
前記コアアッセンブリをワニスに浸漬するステップ、
を含んでいる。
前記焼鈍処理は、750℃~850℃、1時間以上の条件で実施することが望ましい。
前記ワニスは、アクリル系モノマーとエポキシ樹脂を含む材料とすることができる。
本発明の電磁鋼板の切断方法によれば、電磁鋼板に酸素濃度の高いアシストガスを吹き付けながらファイバーレーザーを照射し、電磁鋼板を切断して電磁鋼板材を得る。ファイバーレーザーは、狭い面積にエネルギーの集中が可能であるため、電磁鋼板の切断面は過剰な加熱を受けることなく切断できる。これにより、得られた電磁鋼板材は、切断面表層の結晶構造変化を最小限に抑え、磁気特性の劣化を最小限に抑えることができる。また、酸素濃度の高いアシストガスを採用したことで、切断面は高速に酸化して酸化膜が形成される。この酸化膜は、赤錆の発生を抑制する効果を有するから、切断して得られた電磁鋼板材は、防錆処理や防錆紙で包装等する必要はない。
ファイバーレーザーにより切断された電磁鋼板材は、切断面が均一に加工され、回転刃切断やプレス打抜きのように喰い切りによるバリ発生もない。従って、巻回又は積層したコアアッセンブリは切断面が揃い、側面の段差発生を抑えることができる。
巻回又は積層したコアアッセンブリには、焼鈍処理が施される。電磁鋼板の切断面では結晶構造の変化が発生する領域は極めて浅いため、焼鈍処理を施すことで、切断面表層の結晶構造の復元を図ることができ、磁気特性を復元できる。
磁気特性が復元されたコアアッセンブリは、ワニスに浸漬した後乾燥させる。コアアッセンブリは、電磁鋼板材の切断面が微細な凹凸を有することでロータス効果により濡れ性が低くなり、また、側面の段差発生が抑えられているから、ワニス溜りも低減できる。従って、得られたコアの外観不良、寸法不良も低減できる。
本発明により作製されたコアは、カレントトランス等の打抜きコア及び車載用の電流センサー等のコアとして好適に使用することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板の切断方法及びコアの作製方法について説明を行なう。
切断される電磁鋼板は、方向性電磁鋼板或いは無方向性電磁鋼板を採用できる。電磁鋼板の厚さは、0.2mm~0.5mmとすることが好適である。もちろん、電磁鋼板の厚さは、これに限定されるものではない。
本発明で電磁鋼板の切断に用いるファイバーレーザーは、ファイバーレーザー加工機から光ファイバーを通じてレーザーユニットに供給され、レーザーユニットのレーザーヘッドから照射されるレーザーである。レーザーユニットには、レーザーヘッドの周囲にアシストガスを吹き出すエアーノズルが内装されており、エアーノズルは、ファイバーレーザーで電磁鋼板を切断する間、ガスボンベから供給された高圧のアシストガスを切断位置に向けて吹き付ける。
ファイバーレーザーは、
ファイバーコア径:1μm~25μm、
レーザー出力:300W~1000W、
とすることができる。もちろん、上記値に限定されるものではない。
ファイバーコア径:1μm~25μm、
レーザー出力:300W~1000W、
とすることができる。もちろん、上記値に限定されるものではない。
たとえば、ファイバーレーザーは、スポット径が10μm~100μmとなるように電磁鋼板に照射できる。
アシストガスは、比較的高酸素濃度のものを用いる。たとえば、アシストガスは、酸素濃度が50体積%以上のものを採用することができ、望ましくは、酸素濃度が60体積%以上である。残部は実質的に窒素とすることができる。高酸素濃度のアシストガスを使用するのは、電磁鋼板の切断面を好適に酸化させるためである。アシストガスの流量は、30リットル/分以上100リットル/分以下とすることが好適である。もちろん、これら値に限定するものではない。
電磁鋼板の送り速度は、切断速度:300mm/秒~500mm/秒となるように調整することが好適である。なお、送り速度は、電磁鋼板の厚さや、ファイバーコア径、レーザー出力によって適宜調整可能である。
ファイバーレーザーを電磁鋼板に照射することで、電磁鋼板は切断され、電磁鋼板材が得られる。ファイバーレーザーで電磁鋼板を切断することにより、回転刃では達成できない曲線加工や外縁形状が複雑な加工も行なうことができる。また、プレス抜打ちでは電磁鋼板材の形状毎に金型が必要になるが、ファイバーレーザーは金型も不要である。
本発明では、ファイバーレーザーによる切断時に、電磁鋼板の切断位置に高酸素のアシストガスを吹き付けているから、切断面は酸素と結合して高速に酸化する。また、アシストガスの吹付けにより切断面に発生する溶融金属等のドロスは吹き飛ばされて浄化される。
得られた電磁鋼板材は、高酸素のアシストガスを吹き付けつつファイバーレーザーで切断しているから、上記のとおり切断面には酸化膜が形成される。この酸化膜は、磁気特性等に影響を与える赤錆の発生を抑制する効果を有する。たとえば、刃物切断やプレス抜き打ちした電磁鋼板材は、切断面に酸化膜は形成されず、赤錆が発生してしまうから、防錆紙で包装等しなければならない。しかしながら、本発明では、電磁鋼板材の切断面に酸化膜が形成されるため、防錆紙による包装等は不要である。
ファイバーレーザーで切断することにより、電磁鋼板の切断面は、瞬間的に高温(1500℃以上)となり、切断面表層の結晶構造が変化してしまう。しかしながら、ファイバーレーザーは、狭い面積にエネルギーの集中が可能であるため、結晶構造が変化する表層の深さは約10μm~50μmに限られる。YAGレーザーやCO2レーザーでは結晶構造が変化する表層の深さは約1000μm以上であるから、ファイバーレーザーでは、結晶が変化する表層深さは極めて浅い範囲に限定でき、磁気特性の劣化を最小限に抑えられることがわかる。ファイバーレーザーにより切断された電磁鋼板の切断面では結晶構造の変化が進行する深さが極めて浅いことから、発明者らは、切断の後に電磁鋼板材に焼鈍処理を施すことで、結晶構造の復元と、磁気特性の復元を行なうことができることを見いだした。なお、焼鈍処理は後述する。
図1は、上記切断方法により切断された電磁鋼板材10の切断面11の(a)写真及び(b)拡大写真である。図1を参照すると、ファイバーレーザーによる切断面11には、微細な凹凸が多数形成されていることがわかる。ファイバーレーザーによって電磁鋼板を切断することで電磁鋼板材の切断面には、高さ数十μm、直径数十μmのドーム状に近い微細な凹凸が数十μmピッチで形成される。一方、切断面にドロスの残存はない。ドロスの残存は、ファイバーレーザーの出力不足、切断速度が遅すぎる等の理由で発生する。また、切断面11は、図1(a)及び(b)を参照すると、光沢を帯びていることから、表面に無色の酸化膜(後述のとおり厚さ数μm)が形成されていることがわかる。
図2は、切断の後、焼鈍処理前の電磁鋼板材の切断面の金属組織を模式化した図である。図2(a)は、ファイバーレーザーで切断した電磁鋼板材の切断面、図2(c)は、回転刃により切断した電磁鋼板材の切断面である。
図2(a)を参照すると、電磁鋼板のファイバーレーザーによる切断面は、表層の極めて浅い領域(符号αで示す)がファイバーレーザーの熱により変成し、結晶構造が変化していることがわかる。一方、図2(c)に示すように、回転刃による切断面には、熱による変成や結晶構造変化は見られない。ファイバーレーザーによる切断面は、結晶構造の変化により、後述する図5(a)に実線で示すように回転刃切断の電磁鋼板材(点線で示す)に比べて、電磁鋼板材のB-Hカーブは、磁気特性が低下、すなわち、残留磁束密度が小さくなる。しかしながら、後述のとおり、この低下した磁気特性は、焼鈍処理により復元することができる。
図3は、ファイバーレーザーで同じ形状に切断した電磁鋼板材10を複数積層したコアアッセンブリ13aの断面図である。図に示すように、各電磁鋼板材10の切断面11は、円錐状に縮径するレーザー光によってやや斜めに傾斜しているが、積層された電磁鋼板材10の側面は揃っており、積層ズレがないことがわかる。なお、図3では、切断面11の傾斜を誇張して示しているが、実際の傾斜は約1°以下である。ファイバーレーザーで切断することで、電磁鋼板材10は、切断面11の形状のばらつき、及び、切断後の電磁鋼板材10の幅のばらつきを高精度(約±0.05mm以下)で制御できる。
切断された電磁鋼板材10は、図3に示すように積層されてコアアッセンブリ13aとした後、焼鈍処理が施される。焼鈍処理条件は、750℃~850℃、1時間以上の条件である。望ましくは、780℃~820℃、2時間以上の条件である。焼鈍雰囲気は、不活性ガス雰囲気とすることができる。
ファイバーレーザーにより切断された電磁鋼板材に焼鈍処理を施すことで、図2(a)に示した切断面の表層の結晶構造が変化している領域αは、図2(b)に示すように結晶構造が復元し、また、その深部では微細な結晶構造が焼鈍処理により肥大化していることがわかる。これにより、後述する図5(b)に示すように、残留磁束密度も大きくなり、磁気特性が復元できる。
図4(a)は、ファイバーレーザーにより切断された本発明のコアアッセンブリ13aの焼鈍処理後の側面写真である。(b)、(c)は比較のため回転刃切断した電磁鋼板材を積層したコアアッセンブリ23aに同様の焼鈍処理を施した側面写真である。コアアッセンブリ13a,23aに焼鈍処理を行なうと、切断方法の如何に拘わらず、コアアッセンブリの側面に厚さ数百nmの薄い酸化膜が形成される。しかしながら、図4(a)に示すように、ファイバーレーザーにより切断された本発明のコアアッセンブリ13aは、焼鈍処理を行なっても、薄い酸化膜が生成されることに起因するテンパーカラー(光の干渉色)は出現しない。一方、回転刃切断されたコアアッセンブリ23aには、図4(b)、(c)に示すようにテンパーカラーが出現する。
この理由は、ファイバーレーザーによる切断面11には、厚さ数μmの厚みの無色の酸化膜が初めから生成されることに起因する。この無色の酸化膜が先に生成されることで、焼鈍処理にてその上に厚さ数百nm程度の薄い酸化膜が生成されても、テンパーカラーは出現しない。一方、回転刃切断の電磁鋼板材20の切断面21には、切断によっては厚さ数μmの無色の酸化膜は生成されず、焼鈍処理によって切断面21に直接厚さ数百nm程度の薄い酸化膜が生成される結果、テンパーカラーが発生する。テンパーカラーが発生したコア23は、一般的に外観不良となる。
焼鈍処理の後、コアアッセンブリはワニスへの浸漬処理が行なわれる。ワニスは、含浸性を有する接着剤であって、たとえば、積層した電磁鋼板材の間に染み込みやすい、比較的粘度の低いアクリル系モノマーとエポキシ樹脂を含む液体である。
コアアッセンブリをワニスに浸漬することで、積層(巻回を含む)された電磁鋼板材間にワニスが侵入し、ワニスの硬化によって電磁鋼板材どうしを固着させることができ、コアが作製される。ワニスを電磁鋼板材間により含浸させやすくするために、コアアッセンブリは80℃~90℃程度に予熱しておき、常温、常圧の液状ワニスに浸漬することが望ましい。これにより、予熱された電磁鋼板材が冷却される過程で毛細管現象により電磁鋼板材間に効果的にワニスを侵入させることができる。ワニスに浸漬させた後は、エアーを吹き付けることで側面等に付着したワニスを滴下させ、約110℃~150℃程度の乾燥炉で2時間~3時間保持することでワニスを乾燥させることができる。図6を参照すると、作製されたコア13には、ワニス溜りが殆んどないことがわかる。一部、ワニス溜り14が観察されるが、切断面11で弾かれて丸まった水滴状の形態である。このワニス溜り14は直径0.05mm程度、高さも0.02mm程度と非常に低く、電磁鋼板の厚みの10分の1以下の為、外観や寸法は実用上問題ない。
本発明のコアにワニス溜りが形成され難い理由は、次のとおりである。ファイバーレーザーにより切断された電磁鋼板材10の切断面11には、上記のとおり、電磁鋼板材10の切断面に高さ数十μm、直径数十μmのドーム状に近い微細な凹凸が数十μmピッチの間隔で多数形成されている(図1参照)。そして、コアアッセンブリは、この切断面を有する電磁鋼板材を積層して形成される。切断面11に微細な凹凸が多数形成されていることでロータス効果により濡れ性が低くなるから、液状のワニスは切断面11に付着することができない。このため、図7に示すように、ワニスは、電磁鋼板材10,10間には符号15で示すとおり残留するが、切断面11に付着したワニスは切断面11から弾かれる。それ故、コア13の側面には図6のように、ワニス溜りが発生しない。その他の理由として、図3に示すように、電磁鋼板材10が高精度の寸法精度で切断されているから、これらを重ねたコアアッセンブリ13aの側面には段差が生じ難い。その結果、コア13の側面に溜まるワニスを減らすことができ、ワニス溜りの発生が低減できる。
本発明によれば、ファイバーレーザーを利用して電磁鋼板を切断することで、回転刃では達成できない曲線加工を実現でき、電磁鋼板の歩留りの向上を図ることもできる。高酸素のアシストガスを吹き付けながら電磁鋼板を切断することで、切断面には酸化膜が形成されて赤錆発生を防止できる。また、ファイバーレーザーにより切断された電磁鋼板材の切断面は、磁気特性の劣化を最小限に抑えることができ、焼鈍処理によりその磁気特性を復元できる。さらに、電磁鋼板材は切断面に微細な凹凸が多数形成されることで、ロータス効果により切断面にワニスが付着し難く、コアに発生するワニス溜りを低減できる。本発明のコアは、磁気特性にすぐれ、外観不良、寸法不良も少ないから、電源トランス、チョークコイル、リアクトル、カレントトランス、車載用の電流センサー等の各種コアに好適に使用できる。
なお、上記のとおり、本発明では、電磁鋼板材の切断面の赤錆発生を抑えることができるから、本発明の切断方法によって予め電磁鋼板材を切断してストックしておくことができる。そして、後日必要に応じて当該電磁鋼板材をコア等に使用して焼鈍処理、含浸処理を施すようにしてもよい。
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
なお、電磁鋼板を切断する際に、直線部分は刃物切断とし、曲線部分をファイバーレーザー切断とするなど、他の切断方法と組み合わせて電磁鋼板の切断を行なうこともできる。
<実施例1>
ファイバーレーザーと回転刃で電磁鋼板を切断し、焼鈍処理前後の切断面を観察すると共に、B-Hカーブを測定した。
ファイバーレーザーと回転刃で電磁鋼板を切断し、焼鈍処理前後の切断面を観察すると共に、B-Hカーブを測定した。
電磁鋼板は、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板であり、ファイバーコア径14μm、レーザー出力400W、切断速度500mm/秒、アシストガスの酸素濃度100体積%、流量30リットル/分の条件でファイバーレーザーにより切断を行なった(発明例)。また、比較のため、回転刃により同じ厚さの方向性電磁鋼板を切断した(比較例)。
発明例の切断面(レーザー切断)と、比較例の切断面(刃物切断)の焼鈍処理前の金属組織の模式図を図2(a)、図2(c)に夫々示す。図2(a)に示すように、発明例の切断面は、符号αで示す領域について、ファイバーレーザーの熱により変成しており、結晶構造が変化している。一方で、図2(c)に示すように、刃物切断面には変成や結晶構造変化は見られない。これら焼鈍処理前の電磁鋼板について、B-Hカーブを測定したところ、図5(a)に示すように、発明例(実線)は比較例(点線)に比べて飽和磁束密度が小さく、磁気特性が低下していることがわかった。また、両者の鉄損はそれぞれ2.90W/kg、3.00W/kgであり、結晶構造の平均粒径は100μmであった。
次に、発明例と比較例の電磁鋼板材に夫々800℃、2時間の焼鈍処理を施した。結果、発明例は図2(b)に示すように、図2(a)の領域αが消失していた。また、図2(b)と比較例の図2(d)に示すように、発明例、比較例共に結晶の平均粒径が150μm~200μmまで肥大化していた。両者の鉄損は、それぞれ2.37W/kgと2.17W/kgであり、焼鈍処理前に比べて改善していた。
また、焼鈍処理後の発明例と比較例のB-Hカーブを測定したところ、図5(b)に示すように、発明例(実線)は比較例(点線)とほぼ同じ飽和磁束密度であり、焼鈍処理によって比較例と同等の磁気特性まで復元できたことがわかる。
すなわち、発明例は、電磁鋼板に高酸素濃度のアシストガスを吹き付けながら、ファイバーレーザーを照射して切断を行ない、その後に焼鈍処理を行なうことで、回転刃で切断した場合と同等の磁気特性を具備できることがわかる。一方で、ファイバーレーザーは、直線のみならず曲線等の加工も容易であるから、巻回した状態で断面円形のコアを得ることもできる。また、レーザーユニットは、回転刃のように消耗することはないから、回転刃のちびり等に起因する切断不良を防ぐことができるので経験豊富な職人による刃先保全工数が削減できる。さらに、ファイバーレーザーは、回転刃切断時のように電磁鋼板が逃げてしまうこともないから歩留り向上も達成できる。
<実施例2>
ファイバーレーザーの照射条件、アシストガスの酸素濃度を変えて電磁鋼板を切断し、高温高湿雰囲気で赤錆発生の有無を観察した。
ファイバーレーザーの照射条件、アシストガスの酸素濃度を変えて電磁鋼板を切断し、高温高湿雰囲気で赤錆発生の有無を観察した。
電磁鋼板は、厚さ0.23mmの方向性電磁鋼板であり、ファイバーコア径14μm、レーザー出力400W、切断速度300mm/秒と500mm/秒、アシストガスの酸素濃度40体積%(参考例)、50体積%、70体積%、100体積%(何れも発明例)の8種類(何れも流量30リットル/分)の条件でファイバーレーザーにより切断を行なった。また、比較のため、回転刃により同じ厚さの方向性電磁鋼板を切断した(比較例)。切断後、すべての供試材に対し、夫々800℃、2時間の焼鈍処理を施した。
得られた各供試材は、温度85℃、湿度85%の高温高湿環境に置き、切断面に赤錆が観察されるまでの日数を測定した。結果を表1に示す。
表1を参照すると、酸素濃度が50体積%以上のアシストガス雰囲気下でファイバーレーザー切断した発明例は何れも切断面に3週間以上赤錆発生は確認されなかった。より詳細には、酸素濃度が70体積%以上のアシストガス雰囲気下で切断した発明例は、4週間赤錆発生は確認されなかった。一方、アシストガスの酸素濃度が40体積%の発明例と、刃物切断の比較例は1日で切断面に赤錆が発生していた。
上記より、酸素濃度が50体積%以上のアシストガス雰囲気下でファイバーレーザー切断を行なうことにより、電磁鋼板の切断面には酸化膜が形成され、形成された酸化膜により赤錆の発生が抑制されたことがわかる。これら発明例は、長期に亘り酸化雰囲気に放置されても赤錆は発生し難いから、防錆処理や防錆紙で包装等する必要はなく、特にフープ状態で保管する場合は大型となるので大変有効である。なお、確実に酸化膜の発生をさせるためには、酸素濃度60体積%以上のアシストガスを採用することが望ましい。
<実施例3>
ファイバーレーザーで全周を切断して作製したE型コアとプレス機による打ち抜きで作製した同形状のE型コアをそれぞれ積層させたコアを用いて、カレントトランスを作製し、焼鈍処理前後の出力電圧特性を測定した。
ファイバーレーザーで全周を切断して作製したE型コアとプレス機による打ち抜きで作製した同形状のE型コアをそれぞれ積層させたコアを用いて、カレントトランスを作製し、焼鈍処理前後の出力電圧特性を測定した。
電磁鋼板は、厚さ0.35mmの無方向性電磁鋼板であり、ファイバーコア径14μm、レーザー出力300W、切断速度300mm/秒、アシストガスの酸素濃度100体積%、流量30リットル/分の条件でファイバーレーザーによる切断でE型コアを作製した(レーザー切断コア)。また、比較のため、プレス機による打ち抜きで同じ厚さの無方向性電磁鋼板を切断し同形状のE型コアを作製した(比較例:打抜きコア)。
上記で作製したE型コアをそれぞれ積層した鉄心を用いて、巻数比1:3000のカレントトランスを作製し(表2中、焼鈍前)、出力電圧特性の測定を行なった。また、発明例と比較例のE型コアに夫々800℃、2時間の焼鈍処理を施した後、再度カレントトランスを作製し(表2中、焼鈍後)、出力電圧特性の測定を行なった。結果を表2に示す。
表2を参照すると、焼鈍処理を施す前の発明例は比較例に比べ3.2%特性が低下しているが、焼鈍処理を施した後は0.3%の低下に改善されている。焼鈍処理後の差であれば十分実用に足りる水準である。実運用として電磁鋼板材の加工のみにレーザー切断を用い、E型コアを打ち抜きで作製した場合は、レーザー切断による熱影響を受ける部位はE型コアの背の1面のみとなることから、さらに特性差は改善される。
10 電磁鋼板材
11 切断面
13 コア
13a コアアッセンブリ
14 ワニス溜り
15 ワニス
11 切断面
13 コア
13a コアアッセンブリ
14 ワニス溜り
15 ワニス
Claims (8)
- 電磁鋼板に酸素濃度が50体積%以上のアシストガスを吹き付けながらファイバーレーザーを照射して切断して、切断面に防錆効果が付与された電磁鋼板材を得る、
電磁鋼板の切断方法。 - 前記ファイバーレーザーは、
ファイバーコア径:1μm~25μm、
レーザー出力:300W~1000W、
切断速度:300mm/秒~500mm/秒、
で前記電磁鋼板に照射される、
請求項1に記載の電磁鋼板の切断方法。 - 前記酸素濃度は、60体積%以上であり、残部窒素である、
請求項1又は請求項2に記載の電磁鋼板の切断方法。 - 請求項1乃至請求項3の何れかの電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材に、焼鈍処理することで、磁気特性を復元する、
電磁鋼板材の作製方法。 - 前記焼鈍処理は、750℃~850℃、1時間以上の条件で実施される、
請求項4に記載の電磁鋼板材の作製方法。 - 請求項1乃至請求項3の何れかの電磁鋼板の切断方法によって切断された前記電磁鋼板材を巻回又は積層してコアアッセンブリを得るステップ、
前記コアアッセンブリに焼鈍処理を施して前記電磁鋼板材の磁気特性を復元するステップ、及び、
前記コアアッセンブリをワニスに浸漬するステップ、
を含んでいる、コアの作製方法。 - 前記焼鈍処理は、750℃~850℃、1時間以上の条件で実施される、
請求項6に記載のコアの作製方法。 - 前記ワニスは、アクリル系モノマーとエポキシ樹脂を含む材料である、
請求項6又は請求項7に記載のコアの作製方法。
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- 2021-11-15 JP JP2021185874A patent/JP2022083991A/ja active Pending
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