JP2022079803A - 積層造形装置の較正方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より正確にレーザ座標系の較正を行える積層造形装置の較正方法を提供する。【解決手段】造形領域に較正板を設置する較正板設置工程と、チャンバに不活性ガスを充満させる不活性ガス供給工程と、較正板にレーザ光を照射して仮測定点を形成する仮測定点形成工程と、仮測定点の位置を特定する仮測定点特定工程と、仮測定点の変位量が所定の閾値以下となったとき較正板がチャンバ内の環境に順応したと判定する順応判定工程と、較正板の目標位置に対してレーザ光により本番測定点を形成する本番測定点形成工程と、本番測定点の位置を特定する本番測定点特定工程と、本番測定点特定工程で特定された本番測定点の照射位置に基づいてレーザ座標系の各地点におけるずれ量を特定した補正データを生成する補正工程と、を備える積層造形装置の較正方法が提供される。【選択図】図4

Description

本発明は、積層造形装置の較正方法に関する。
三次元造形物の積層造形法としては種々の方式が知られている。例えば、粉末床溶融結合を実施する積層造形装置は、所定の造形領域に材料層を形成する材料層形成工程と、レーザ光を材料層の所定の照射領域に照射して固化層を形成する固化工程とを繰り返して、所定数の固化層を積層して所望の三次元造形物を形成する。材料や固化層の変質を防止するため、造形中、造形領域を覆うチャンバ内は所定濃度の不活性ガスで満たされる。
レーザ光の目標位置と実際の照射位置との間には、不可避のずれが生じうる。そのため、特許文献1に開示されるように、所望の三次元造形物を造形する前にずれ量を測定して、照射位置を補正することが望ましい。例えば、レーザ座標系の較正を行う積層造形装置は、造形領域に配置した較正板に対してレーザ光を照射して照射痕を形成し、照射痕の実際の位置を測定して照射痕の目標位置と実際の位置とのずれ量を算出し、ずれ量に基づき補正を行う。
特許第2979431号公報
より正確にレーザ座標系の較正を行う上では、較正時、チャンバ内の環境を造形時の環境に近づけることが望ましい。具体的に、レーザ座標系の較正を行っているときのチャンバは、不活性ガス雰囲気が充満されていることが望ましい。
不活性ガスが充満されたチャンバ内の環境は、積層造形装置外と温度や湿度において異なっている。特に、チャンバに供給される不活性ガスは水分が除去されているため、通常チャンバ内は積層造形装置外と比べて乾燥する。そのため、較正板はチャンバ内に設置されてから温度や湿度等の変化の影響を受け、体積変化を起こす可能性がある。照射痕の形成後に較正板の体積変化が起こると照射痕の位置がずれるため、正確な照射位置の検出を行うことができない。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、較正板がチャンバ内の環境に順応したことを確かめてから照射痕である本番測定点を形成することで、より正確にレーザ座標系の較正を行える、積層造形装置の較正方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、所定濃度の不活性ガスが充満したチャンバで覆われた所望の三次元造形物を形成する領域である造形領域に材料層を形成する材料層形成工程と、レーザ光を材料層の所定の照射領域に照射して固化層を形成する固化工程とを繰り返して造形を行う積層造形装置の較正方法であって、造形領域に較正板を設置する較正板設置工程と、チャンバに不活性ガスを充満させる不活性ガス供給工程と、較正板にレーザ光を照射して仮測定点を形成する仮測定点形成工程と、仮測定点の位置を特定する仮測定点特定工程と、少なくとも2回の仮測定点特定工程後、仮測定点の変位量が所定の閾値以下となったとき、較正板がチャンバ内の環境に順応したと判定する順応判定工程と、較正板がチャンバ内の環境に順当したと判定された後、較正板の目標位置に対して、レーザ光により本番測定点を形成する本番測定点形成工程と、本番測定点の位置を特定する本番測定点特定工程と、本番測定点特定工程で特定された本番測定点の照射位置に基づいて、レーザ座標系の各地点におけるずれ量を特定した補正データを生成する補正工程と、を備える積層造形装置の較正方法が提供される。
本発明に係る積層造形装置の較正方法においては、較正板に照射痕である仮測定点を形成して仮測定点の位置を測定し、仮測定点の位置の変位量から較正板がチャンバ内の環境に順応したかどうかを判定する。その後に補正データの生成のための照射痕である本番測定点が形成されるので、チャンバ内の環境に順応した較正板に対し本番測定点を形成することができる。このようにして、高精度のレーザ座標系の較正を行うことができ、ひいては適切に較正が行われた積層造形装置により、高精度の三次元造形物を造形することができる。
本実施形態の積層造形装置の概略構成図である。 照射装置の概略構成図である。 制御装置のブロック図である。 積層造形装置のレーザ座標系の較正方法を示すフローチャートである。 較正板の分解図である。 仮測定点および本番測定点の配置の一例を示す。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
図1に示されるように、本実施形態の積層造形装置1は、チャンバ11と、材料層形成装置3と、照射装置4と、切削装置5と、撮像装置6と、を備える。
チャンバ11は、実質的に密閉されるように構成され、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域Rを覆う。造形中、チャンバ11内は、所定濃度の不活性ガスが充満される。また、固化層85の形成時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスは、チャンバ11内から排出される。望ましくは、チャンバ11から排出された不活性ガスは、ヒュームが除去された上でチャンバ11内に返送される。本実施の積層造形装置1は、不活性ガスの給排機構として、不活性ガス供給装置21と、ヒュームコレクタ23と、を備える。
不活性ガス供給装置21は、チャンバ11に所定濃度の不活性ガスを供給する。不活性ガス供給装置21は、例えば、空気から不活性ガスを生成する不活性ガス生成装置、または不活性ガスが貯留されるガスボンベである。本実施形態においては、不活性ガス供給装置21は、例えば、PSA式窒素生成装置または膜分離式窒素生成装置である。
本発明において、不活性ガスとは、材料層83や固化層85と実質的に反応しないガスをいい、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から材料の種類に応じて適当なものが選択される。また、高純度の不活性ガスを供給する上で、不活性ガス供給装置21から供給される不活性ガスは、十分乾燥していることが望ましい。具体的に、不活性ガス供給装置21が不活性ガス生成装置であるとき、不活性ガスの材料となる空気を乾燥させるドライヤを有していることが望ましい。また、不活性ガス供給装置21がガスボンベであるとき、十分乾燥された不活性ガスが充填されることが望ましい。
ヒュームコレクタ23は、チャンバ11から排出された不活性ガスからヒュームを除去した上で、チャンバ11内に返送する。ヒュームコレクタ23は、例えば、電気集塵機またはフィルタである。
なお、不活性ガス供給装置21またはヒュームコレクタ23と接続される不活性ガスの供給口および排出口は、チャンバ11の壁面やチャンバ11内の装置等に適宜設けられる。任意の数の供給口および排出口が、任意の位置に設けられればよい。
材料層形成装置3はチャンバ11内に設けられ、所定厚みの材料層83を形成する。材料層形成装置3は、造形領域Rを有するベース台31と、ベース台31上に配置されるリコータヘッド33と、を含む。リコータヘッド33は、任意のアクチュエータを有するリコータヘッド駆動装置35により水平方向に移動可能に構成される。造形領域Rには、造形テーブル37が配置される。造形テーブル37は、任意のアクチュエータを有する造形テーブル駆動装置39により鉛直方向に移動可能に構成される。造形時には、造形テーブル37上にベースプレート81が配置されてもよく、ベースプレート81上に1層目の材料層83が形成される。
リコータヘッド33は、材料収容部と、材料供給口と、材料排出口と、を含む。材料収容部は、材料を貯留する。本実施形態においては、材料は、例えば金属の粉体である。材料供給口は、材料収容部の上面に設けられ、不図示の材料供給装置から材料収容部に供給される材料の受口となる。材料排出口は、材料収容部の底面に設けられ、材料収容部内の材料を排出する。材料排出口は、リコータヘッド33の移動方向に直交する水平方向に延びるスリット形状を有する。リコータヘッド33の側面には、材料を均して材料層83を形成するブレードが設けられる。リコータヘッド33は、材料収容部内に収容した材料を材料排出口から排出しながら造形領域R上を水平方向に往復移動する。このとき、ブレードは排出された材料を平坦化して材料層83を形成する。
照射装置4は、チャンバ11の上方に設けられる。照射装置4は、造形領域R上に形成される材料層83の所定の照射領域にレーザ光Lを照射して、照射位置の材料層83を溶融または焼結させ、固化層85を形成する。照射領域は、造形領域R内に存在し、所定の分割層における三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。図2に示されるように、照射装置4は、レーザ光源41と、コリメータ43と、フォーカス制御ユニット45と、走査装置47と、を含む。
レーザ光源41はレーザ光Lを生成する。ここで、レーザ光Lは、材料層83を焼結または溶融可能なものであればその種類は限定されず、例えば、ファイバレーザ、COレーザ、YAGレーザ、グリーンレーザまたは青色レーザである。コリメータ43は、レーザ光源41より出力されたレーザ光Lを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット45は、焦点調節レンズ451と、焦点調節レンズ451を前後に移動させるレンズアクチュエータ453とを有し、レーザ光源41より出力されたレーザ光Lを所望のスポット径に調整する。走査装置47は、例えば、ガルバノスキャナである。走査装置47は、X軸ガルバノミラー471と、X軸ガルバノミラー471を回転させるX軸ミラーアクチュエータ473と、Y軸ガルバノミラー475と、Y軸ガルバノミラー475を回転させるY軸ミラーアクチュエータ477と、を有する。X軸ガルバノミラー471およびY軸ガルバノミラー475は回転角度が制御され、レーザ光源41より出力されたレーザ光Lを2次元走査する。
X軸ガルバノミラー471およびY軸ガルバノミラー475を通過したレーザ光Lは、チャンバ11の上面に設けられたウインドウ13を透過して、造形領域Rに形成された材料層83に照射される。ウインドウ13は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光LがファイバレーザまたはYAGレーザの場合、ウインドウ13は石英ガラスで構成可能である。
チャンバ11の上面には、ウインドウ13を覆うように汚染防止装置15が設けられる。汚染防止装置15は、円筒状の筐体と、筐体内に配置された円筒状の拡散部材を含む。筐体と拡散部材の間に不活性ガス供給空間が設けられる。また、拡散部材の内側の筐体の底面には、開口部が設けられる。拡散部材には多数の細孔が設けられており、不活性ガス供給空間に供給された清浄な不活性ガスは細孔を通じて清浄室に充満される。そして、清浄室に充満された清浄な不活性ガスは、開口部を通じて汚染防止装置15の下方に向かって噴出される。このようにして、ウインドウ13に、ヒュームが付着することが防止される。
切削装置5は、固化層85の表面や不要部分に対して切削を行う。切削装置5は、加工ヘッド51と、加工ヘッド駆動装置53と、スピンドル55と、スピンドルモータ57と、切削工具59と、を含む。加工ヘッド駆動装置53は、加工ヘッド51をチャンバ11内の所望の位置に移動させる任意のアクチュエータを有するものであればよい。例えば、加工ヘッド駆動装置53は、加工ヘッド51を所定の水平方向であるX軸方向に移動させるX軸駆動装置と、加工ヘッド51をX軸に直交する水平方向であるY軸方向に移動させるY軸駆動装置と、加工ヘッド51を所定の鉛直方向であるZ軸方向に移動させるZ軸駆動装置と、を有する。
スピンドル55は、加工ヘッド51に設けられる。スピンドル55は、エンドミル等の切削工具59を把持し、スピンドルモータ57によって回転することができるように構成されている。スピンドル55により回転された切削工具59により、固化層85の表面や不要部分に対して切削加工が行われる。
なお、積層造形装置1は切削装置を備えていなくてもよいし、切削装置は他の構成でもよい。例えば、切削装置は、バイト等の切削工具を把持するとともに切削工具を鉛直方向の回転軸に沿って回動させる旋回機構が設けられた加工ヘッドと、加工ヘッドを水平駆動するための加工ヘッド駆動装置を含んでいてもよい。加工ヘッド駆動装置は、例えば、一対の第1水平移動機構と、一対の第1水平移動機構に設けられているガントリと、ガントリに取り付けられており加工ヘッドが固定された第2水平移動機構と、を有する。
撮像装置6は、後述するレーザ座標系の較正に際して、仮測定点63および本番測定点65を撮像して、仮測定点63および本番測定点65の位置情報を取得する。仮測定点63および本番測定点65は、レーザ光Lの照射により較正板61に形成された、撮像装置6により認識可能な刻印であり、以下、仮測定点63および本番測定点65を含んで照射痕という。撮像装置6は、照射痕を撮像可能な任意の撮像素子を有しているものであればよく、本実施形態ではCCDカメラである。
本実施形態では、撮像装置6はチャンバ11内の所望の位置に移動可能に構成される。より具体的には、撮像装置6は加工ヘッド51に設けられ、加工ヘッド駆動装置53によりチャンバ11内の所望の位置に移動可能に構成される。但し、撮像装置6を移動させる駆動装置が別途設けられてもよい。また、撮像装置6によって撮像可能な領域が全ての照射痕を含むのであれば、撮像装置6はチャンバ11内の所定の位置に固定されてもよい。
ここで、積層造形装置1の制御装置7を説明する。図3に示されるように、本実施形態の制御装置7は、主制御装置71と、照射制御装置73と、撮像制御装置75と、ドライバ771,772,773,774,775,776,777と、を含む。主制御装置71、照射制御装置73および撮像制御装置75は、それぞれ、ハードウェアとソフトウェアを任意に組み合わせて構成されてよく、例えば、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置、出入力インターフェースを有している。また、本実施形態では、主制御装置71、照射制御装置73および撮像制御装置75はそれぞれ別体に構成されているが、主制御装置71、照射制御装置73および撮像制御装置75のうち少なくとも2つ以上が一体として構成されてもよい。
主制御装置71は、不図示のCAM装置が作成したプロジェクトファイルにしたがって、ドライバ771,772,773,774を介して、リコータヘッド33、造形テーブル37、加工ヘッド51およびスピンドル55を制御する。また、主制御装置71は、プロジェクトファイルのうち、レーザ光Lの照射位置等の指令を含む造形プログラムを照射制御装置73に送る。
さらに主制御装置71は、レーザ座標系の較正にあたり、加工ヘッド51を駆動させて撮像装置6を照射痕が撮像可能な位置に移動させるとともに、照射制御装置73に照射痕の形成に係るレーザ光Lの照射指令を送り、撮像制御装置75に照射痕の撮像指令を送る。また、撮像制御装置75から取得した仮測定点63の実際の照射位置の座標データに基づき、較正板61がチャンバ11内の環境に順応したかどうかを判定する。なお、主制御装置71に係る上述の制御は、照射制御装置73または撮像制御装置75によって行われてもよい。
照射制御装置73は、主制御装置71から送られた造形プログラムと、レーザ座標系の補正データに基づき、照射装置4を制御する。具体的に、照射制御装置73は、ドライバ775,776を介して、X軸ガルバノミラー471およびY軸ガルバノミラー475の回転角度を制御し、レーザ光Lの照射位置を制御する。また、照射制御装置73は、ドライバ777を介して、焦点調節レンズ451の位置を制御し、焦点位置を調節する。また、照射制御装置73は、レーザ光源41を制御して、レーザ光Lの強度の調節やオン/オフの切り替えを行う。
さらに照射制御装置73は、レーザ座標系の較正にあたり、主制御装置71から送られた照射指令に基づき、照射装置4を制御し、較正板61の所望の位置に照射痕を形成する。また、照射制御装置73は、本番測定点65の目標位置の座標データと、撮像制御装置75から取得した本番測定点65の実際の照射位置の座標データとを比較し、レーザ座標系の各地点におけるずれ量を特定した補正データを生成する。なお、照射制御装置73に係る上述の制御は、主制御装置71または撮像制御装置75によって行われてもよい。
撮像制御装置75は、レーザ座標系の較正にあたり、主制御装置71から送られた撮像指令に基づき、照射痕である仮測定点63および本番測定点65を撮像して、仮測定点63および本番測定点65の位置情報を取得する。撮像制御装置75は、取得した位置情報を解析し、座標データとして数値化して主制御装置71および照射制御装置73へ送る。なお、撮像制御装置75に係る上述の制御は、主制御装置71または照射制御装置73によって行われてもよい。
以上に説明した積層造形装置1により所望の三次元造形物を形成するにあたり、事前にレーザ座標系の較正が行われる。レーザ座標系の較正は、機械調整後や造形開始前等、任意のタイミングで行われればよい。好ましくは、レーザ座標系の較正は、造形開始時に毎回実施される。図4に示すように、本実施形態の積層造形装置1の較正方法は、静電吸着工程(S11)と、較正板設置工程(S12)と、不活性ガス供給工程(S13)と、仮測定点形成工程(S14)と、仮測定点特定工程(S15)と、順応判定工程(S16)と、本番測定点形成工程(S17)と、本番測定点特定工程(S18)と、補正工程(S19)と、を備える。
較正を行うにあたり、照射痕を形成するための較正板61を用意する。較正板61としては、照射痕を形成できるものであれば任意のものが使用可能であるが、表面が平坦であり、温度や湿度等の影響を比較的受けにくいものが望ましい。較正板61は、照射ターゲット611と、照射ターゲット611が取り付けられる基板613と、を含んで構成されてもよい。照射ターゲット611は、レーザ光Lの照射により照射痕を形成可能なシート状の部材であり、例えば黒紙や感熱紙である。基板613は、平坦な板状部材である平板613aを有している。平板613aは所望の平面度を有するものであればよいが、静電吸着工程を実施する場合は、平板613aは誘電体であることが望ましく、例えば平板613aはガラス板である。また、静電吸着工程を実施する場合は、より好適に静電吸着を行うため、平板613aの上面、すなわち照射ターゲット611が吸着される側の面に、誘電体シート613bを貼り付けておくことが望ましい。誘電体シート613bは、誘電体からなるシート状の部材である。より具体的には、本実施形態においては、静電吸着シートのラベル層が誘電体シート613bとして使用される。静電吸着シートとは、樹脂フィルム層を含むラベル層と、ラベル層が静電吸着された支持体層とを積層してなる積層体であり、例えば、株式会社ユポ・コーポレーション製のユポ静電吸着(登録商標)である。本実施形態においては、図5に示されるように、平板613aおよび誘電体シート613bとからなる基板613に対し、照射ターゲット611が静電吸着されて較正板61が構成される。
本実施形態においては、較正板61を得るにあたり、静電吸着工程が実施される。まず、基板613に対してコロナ帯電ガンや摩擦帯電ガン等の帯電装置により電荷を与え、基板613を帯電させる。そして基板613に照射ターゲット611を載置することで、照射ターゲット611が基板613に静電吸着される。環境変化による体積の変化量は、通常、照射ターゲット611と基板613とで異なる。本実施形態では、照射ターゲット611は基板613に静電吸着されているので、ある程度水平方向に移動可能である。そのため、照射ターゲット611は、照射ターゲット611または基板613の体積変化に応じて変位するので、環境変化があっても照射ターゲット611は皺になりにくい。こうして、より高精度に照射痕の形成を行うことができる。
次に、較正板設置工程が行われる。チャンバ11内の造形領域R、すなわち造形テーブル37の上に較正板61を設置する。好ましくは、較正板61の上面位置が、後の積層造形時における材料層83の上面位置と一致するよう、造形テーブル37の位置が調整される。
較正板61の設置後、不活性ガス供給工程が行われる。不活性ガス供給装置21がチャンバ11に不活性ガスを供給し、チャンバ11に不活性ガスが充満される。チャンバ11に供給される不活性ガスの種類および濃度は、後の積層造形時と同一であることが望ましい。不活性ガス供給工程は、少なくとも本番測定点特定工程まで継続して行われることが好ましい。チャンバ11内の湿度は、積層造形装置外の湿度が約60%のとき、例えば約8%である。チャンバ11内の温度は、積層造形装置外の湿度が約24.5℃のとき、例えば約25.0℃である。このように、チャンバ11内と積層造形装置外とでは、特に湿度において違いが大きい。
そして、仮測定点形成工程が行われる。照射装置4により、較正板61の照射ターゲット611にレーザ光Lが照射され、仮測定点63が形成される。このとき、レーザ光Lが較正板61を貫通して造形テーブル37を損傷させないよう、レーザ光Lの強度は十分に低く設定される。また、仮測定点63の目標位置は、本番測定点65の形成および撮像に影響しない範囲で任意の位置に設定される。本実施形態では、図6に示されるように、4つの仮測定点63が照射ターゲット611の左上、右上、右下、左下にそれぞれ配置される。なお、仮測定点63の数は特に限定されない。また、仮測定点63の形状は、例えば、円形であってもよいし、2本の線分からなる十字形状であってもよい。
仮測定点63の形成後、仮測定点特定工程が行われる。撮像装置6が仮測定点63の直上に移動され、仮測定点63を撮像して画像データを得る。撮像制御装置75が画像データを解析して、仮測定点63の実際の照射位置を特定する。例えば、仮測定点63の形状が円形であるとき、撮像制御装置75は円の重心位置を算出して、当該位置を仮測定点63の座標とする。例えば、仮測定点63の形状が十字形状であるとき、撮像制御装置75は仮測定点63を構成する線分の交点位置を算出して、当該位置を仮測定点63の座標とする。その後、同様の手順により再度仮測定点特定工程が行われる。
仮測定点特定工程を行った後、次の仮測定特定工程を実施する前に、較正板61の順応を待つため所定時間待機がなされてもよい。待機時間は任意の長さであってよいが、例えば、本番測定点形成工程を開始してから本番測定点特定工程を終了するまでの時間と略同じ、またはそれ以上の値が待機時間として設定されることが好ましい。このような待機時間を設けた後に順応判定工程を行うことで、本番測定点形成工程および本番測定点特定工程の実施に必要な分の時間が経過しても、許容できない範囲の変位が起こらない程度に較正板61が順応していることがより好適に判定できる。
2回の仮測定点特定工程を終えた後、順応判定工程が行われる。主制御装置71は、最新の仮測定点63の実際の照射位置の座標と、1つ前の仮測定点63の実際の照射位置の座標とを比較し、仮測定点63の変位量、すなわち2つの座標の差の絶対値が所定の閾値以下であるかどうかを判定する。仮測定点63の変位量が所定の閾値を超えているとき、較正板61がまだチャンバ11内の環境に順応できていないと判定される。このときは、再度所定時間経過後に、仮測定点特定工程と順応判定工程を行う。仮測定点63の変位量が所定の閾値以下であるとき、較正板61がチャンバ11内の環境に十分順応したと判定される。
較正板61の順応後、本番測定点形成工程が行われる。仮測定点形成工程と同様にして、照射装置4により、較正板61の照射ターゲット611にレーザ光Lが照射され、本番測定点65が形成される。このとき、レーザ光Lが較正板61を貫通して造形テーブル37を損傷させないよう、レーザ光Lの強度は十分に低く設定される。また、本番測定点65の数は特に限定されないが、本番測定点65の目標位置は、造形領域Rの全域に分布することが望ましい。図6では視認性を考慮して計25個の本番測定点65を表示したが、本実施形態では、縦方向に11個、横方向に11個ずつ、計121個の本番測定点65が、照射ターゲット611に格子状に配置される。また、本番測定点65の形状は、例えば、円形であってもよいし、2本の線分からなる十字形状であってもよい。本番測定点65の形状が円形であるとき、本番測定点65の目標位置は円の重心である。本番測定点65の形状が十字形状であるとき、本番測定点65の目標位置は線分の交点位置である。
本番測定点65の形成後、本番測定点特定工程が行われる。撮像装置6が本番測定点65の直上に移動され、本番測定点65を撮像して画像データを得る。撮像制御装置75が画像データを解析して、本番測定点65の実際の照射位置を特定する。例えば、本番測定点65の形状が円形であるとき、撮像制御装置75は円の重心位置を算出して、当該位置を本番測定点65の座標とする。例えば、本番測定点65の形状が十字形状であるとき、撮像制御装置75は本番測定点65を構成する線分の交点位置を算出して、当該位置を本番測定点65の座標とする。
本番測定点65の実際の照射位置の座標を取得後、補正工程が行われる。照射制御装置73は、本番測定点65の目標位置の座標と、本番測定点65の実際の照射位置の座標とを比較し、目標位置と実際の照射位置とのずれ量を求める。また、照射制御装置73は、本番測定点65のずれ量に基づき、本番測定点65を形成した座標以外におけるずれ量も推定して求める。このようにして、照射制御装置73は、レーザ座標系の各地点におけるずれ量を特定した補正データを生成する。この補正データは、後の積層造形において利用される。
本実施形態の較正方法においては、仮測定点63の変位量に基づき較正板61がチャンバ11内の環境に順応していることを確認してから、本番測定点65を形成および撮像する。そのため、較正中に本番測定点65の変位が起こりにくくなり、より高精度のレーザ座標系の補正データを得ることができる。
以上のように較正された積層造形装置1によって、所望の三次元造形物を得るための積層造形が実施される。本実施形態の三次元造形物の製造方法は、ベースプレート設置工程と、不活性ガス供給工程と、材料層形成工程と、固化工程と、切削工程と、を備える。
まず、造形テーブル37にベースプレート81を設置するベースプレート設置工程と、チャンバ11に所定濃度の不活性ガスを充満させる不活性ガス供給工程とが行われる。
続いて、造形領域Rに材料層83を形成する材料層形成工程が行われる。造形テーブル37が所定厚みの材料層83が形成できる適切な高さに調整され、リコータヘッド33が造形領域R上を水平方向に移動する。リコータヘッド33から撒布された材料はブレードによって均され、材料層83が形成される。
そして、照射装置4によりレーザ光Lを材料層83の所定の照射領域に照射し固化層85を形成する固化工程が行われる。このとき、造形プログラムに規定されるレーザ光の照射位置の指令は、レーザ座標系の補正データにより補正される。
以上のような材料層形成工程と固化工程とが繰り返されて、複数の固化層85が積層されて所望の三次元造形物が製造される。
なお、所定数の固化層85が形成される毎に、固化層85の表面に対して切削を行う切削工程が実施されてもよい。切削工程を実施することで、より高精度の三次元造形物が得られる。
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
例えば、本実施形態においては、平板613aと誘電体シート613bとからなる基板613を帯電させて照射ターゲット611を静電吸着したが、照射ターゲット611は他の方法で水平方向に移動可能に基板613に保持されてもよい。例えば、基板として静電チャックや真空チャックを使用し、静電吸着または真空吸着により照射ターゲット611を基板613に保持してもよい。
1 積層造形装置
11 チャンバ
61 較正板
63 仮測定点
65 本番測定点
83 材料層
85 固化層
611 照射ターゲット
613 基板
613a 平板
613b 誘電体シート
L レーザ光
R 造形領域

Claims (4)

  1. 所定濃度の不活性ガスが充満したチャンバで覆われた所望の三次元造形物を形成する領域である造形領域に材料層を形成する材料層形成工程と、レーザ光を前記材料層の所定の照射領域に照射して固化層を形成する固化工程とを繰り返して造形を行う積層造形装置の較正方法であって、
    前記造形領域に較正板を設置する較正板設置工程と、
    前記チャンバに前記不活性ガスを充満させる不活性ガス供給工程と、
    前記較正板に前記レーザ光を照射して仮測定点を形成する仮測定点形成工程と、
    前記仮測定点の位置を特定する仮測定点特定工程と、
    少なくとも2回の仮測定点特定工程後、前記仮測定点の変位量が所定の閾値以下となったとき、前記較正板が前記チャンバ内の環境に順応したと判定する順応判定工程と、
    前記較正板が前記チャンバ内の環境に順当したと判定された後、前記較正板の目標位置に対して、前記レーザ光により本番測定点を形成する本番測定点形成工程と、
    前記本番測定点の位置を特定する本番測定点特定工程と、
    前記本番測定点特定工程で特定された前記本番測定点の照射位置に基づいて、レーザ座標系の各地点におけるずれ量を特定した補正データを生成する補正工程と、を備える積層造形装置の較正方法。
  2. 前記較正板は、前記レーザ光の照射により前記仮測定点および前記本番測定点を形成可能な照射ターゲットと、前記照射ターゲットが取り付けられる基板と、を含む、請求項1に記載の積層造形装置の較正方法。
  3. 前記較正板設置工程前に、前記基板を帯電させ、帯電した前記基板に前記照射ターゲットを静電吸着させて前記較正板を得る静電吸着工程をさらに備える、請求項2に記載の積層造形装置の較正方法。
  4. 前記基板は、平板と、前記平板の上面に設けられた誘電体である誘電体シートと、を有する、請求項3に記載の積層造形装置の較正方法。
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