JP2022079443A - 粘着剤層および粘着シート - Google Patents

粘着剤層および粘着シート Download PDF

Info

Publication number
JP2022079443A
JP2022079443A JP2021185888A JP2021185888A JP2022079443A JP 2022079443 A JP2022079443 A JP 2022079443A JP 2021185888 A JP2021185888 A JP 2021185888A JP 2021185888 A JP2021185888 A JP 2021185888A JP 2022079443 A JP2022079443 A JP 2022079443A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pressure
sensitive adhesive
adhesive layer
derived
sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021185888A
Other languages
English (en)
Inventor
秀昭 鈴木
Hideaki Suzuki
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Publication of JP2022079443A publication Critical patent/JP2022079443A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Adhesive Tapes (AREA)
  • Polyesters Or Polycarbonates (AREA)
  • Polyurethanes Or Polyureas (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Abstract

【課題】薄膜であっても、各種被着体に対する粘着力が良好であり、かつ、経時での粘着力の変化が少ない粘着剤層を提供する。【解決手段】多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層であって、上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位のうち、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を60モル%以上含有する粘着剤層とする。【選択図】なし

Description

本発明は、粘着剤層に関し、特に、携帯用電子機器の筐体や部品の接合部において好適に使用される薄型の粘着剤層および粘着シートに関する。
粘着テープや粘着シートは、基材や部材を熱などのエネルギーを必要とせずに貼り合わせることが出来るために作業性に優れ、接着信頼性の高い接合手段として、OA機器や家電製品等の各産業分野において部品固定用途等に使用されている。これらOA機器は各種の高機能化と並行して、小型化や薄型化が図られており、パソコンやデジタルビデオカメラ、さらには、電子手帳、携帯電話、PHS、スマートフォン、ゲーム機器、電子書籍等の携帯電子端末においては特に小型化や薄型化の要請が高い。このような携帯電子端末等においては、主要構成部品の薄型化と共に、これらの固定に用いられる粘着テープにおいても薄型化が要求されている。
上記携帯電話等の携帯電子端末や薄膜表示体等の部材固定用、あるいは光ディスクの基板貼り合わせ用、偏光板の固定用等として好適な、粘着力および高温保持力に優れる透明薄膜の両面粘着テープとして、例えば、特許文献1には、芯材の両面に、アクリル酸ブチル単位を90質量%以上含み、重量平均分子量が70万以上のアクリル酸エステル系共重合体と、粘着性付与剤を特定量含む粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成すると共に、総厚さが30μm以下で、かつ両面の粘着剤層の厚さが、それぞれ2~10μmである両面粘着テープが提案されている。
また、例えば、特許文献2では、芳香族ジカルボン酸と側鎖に炭化水素を有するグリコールと3価以上の多価アルコールおよび/または3価以上の多価カルボン酸を必須成分とし、特定量の多価アルコールおよび/または多価カルボン酸を重縮合してなるポリエステル系樹脂を用いることにより、粘着物性および耐熱性に優れた粘着剤が得られ、指圧程度の圧力で充分な接着力を発揮し、優れた粘着性、機械的強度、特に優れた耐熱性を有する幅広い用途に展開可能なポリエステル系樹脂を含有してなる粘着剤が提案されている。
特開2007-169327号公報 特開2007-99879号公報
しかしながら、上記の特許文献1および2の開示技術では、薄膜での各種被着体への粘着力が充分ではなく、さらなる改良が求められるものである。また、特許文献1の開示技術のアクリル系の粘着剤は、一般的に弾性率が低く凝集力が低いために、薄膜の粘着層にした際には、剥離する際に糊残りがしやすく、さらなる改良の余地があるものであった。
また、弾性率が高く、凝集力が高い(剥離の際に糊が割れて糊残りがしにくい)粘着剤として、ポリエステル系粘着剤も検討されているが、上記特許文献2の開示技術のポリエステル系粘着剤では、薄膜での使用については、開示されていなかった。さらには、薄膜にした際には、粘着力が充分に発現しないものであり、さらなる改良が求められるものであった。
従来、アクリル系の粘着剤が広く使われてきたが、近年、ポリエステル系の粘着剤についても使用されることが増えている。ポリエステル系粘着剤はアクリル系粘着剤と比較して、耐熱性が高いために電子部材等での使用に優れ、また、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるエステル系フィルムとの相性も良いためにアクリル粘着剤では適用しにくいところに、ポリエステル系粘着剤が使用できることが多い。さらには、近年環境負荷への対応が叫ばれているが、廃棄処理を行う際には、ポリエステル系粘着剤は解重合することでオリゴマーやモノマーに戻すことが可能でありリサイクルを考える際にはアクリル系粘着剤を用いるよりも環境に優しいと言える。
そこで、本発明ではこのような背景下において、薄膜であっても、各種被着体に対する粘着力が良好であり、かつ、経時での粘着力の変化が少ない粘着剤層および粘着シートを提供する。なお、場合によっては、薄膜粘着層で接着させた際に、初期粘着力は低くても時間とともに粘着力が上がる薄膜粘着シートを提供する。
本発明者は、ポリエステル系粘着剤の粘着力が、粘着剤層の厚みへの依存が小さいことに着目し、粘着剤組成物を構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂を用い、ポリエステル系粘着剤とすることにより粘着力を維持したまま、粘着剤層を薄膜化できることを見出した。
粘着力の粘着剤層の厚みへの依存性が小さい理由は明らかではないが、ポリエステル系粘着剤は、弾性率が高く変形しにくいため、粘着剤バルクの変形のために要するエネルギーが小さくなり、粘着力に寄与しにくく、相対的に、界面同士の密着性が粘着力への寄与が高くなることが要因と考えられる。
また、ポリエステル系粘着剤で、薄膜で強粘着力を出す場合は、前記の通り界面の密着性が高いことが好ましい。密着性を上げるためには、極性を上げることが重要であり、エステル結合濃度を高くすることが有効と考えられる。一方で、薄膜でもなじむ必要があるので粘着剤の柔らかさも考慮する必要があり、粘着剤のガラス転移温度(Tg)が低いことが好ましい。これらを考慮して設計を行い、比較的炭素差が短い脂肪族ジカルボン酸を一定量導入することにより、より上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[14]の態様を有する。
[1] 多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層であって、
上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位のうち、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を60モル%以上含有する粘着剤層。
[2] 上記ポリオール成分(b)由来の構造部位が、エチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよびネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも一種由来の構造部位を含有する[1]記載の粘着剤層。
[3] 上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位が、アジピン酸由来の構造部位である[1]または[2]記載の粘着剤層。
[4] 上記ポリエステル系樹脂(i)のエステル結合濃度が、9~12.5ミリモル/gである[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤層。
[5] 上記ポリエステル系樹脂(i)のガラス転移温度が、-50~-10℃である[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤層。
[6] 上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)が架橋剤(ii)により架橋される[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤層。
[7] 上記架橋剤(ii)がイソシアネート系架橋剤(ii-1)である[6]記載の粘着剤層。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の粘着剤層と基材とを有する粘着シートであって、上記粘着剤層の一方の面に上記基材が積層され、他方の面が離型処理したシートである粘着シート。
[9] 上記基材がポリエステル系樹脂シートである[8]記載の粘着シート。
[10] [1]~[7]のいずれかに記載の粘着剤層と離型処理したシートとを有する粘着シートであって、上記粘着剤層の両面に上記離型処理したシートが積層される粘着シート。
[11] 被着体がポリイミドである、[8]または[9]記載の粘着シート。
[12] 電子部材の固定用である、[8]または[9]記載の粘着シート。
[13] 下記測定条件で測定した粘着力(N/25mm)をX、粘着剤層の厚み(μm)をYとしたとき、X/Y≧0.5である[8]~[12]のいずれかに記載の粘着シート。
[粘着力(N/25mm)の測定条件]
粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を粘着力とする。
[14] 多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i’)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層を有する粘着シートであって、
上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
下記測定条件で測定される経時粘着力が5N/25mm以上である粘着シート。
[経時粘着力(N/25mm)の測定条件]
粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、粘着剤層を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で24時間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を経時粘着力とする。
本発明の粘着剤層は、薄膜であっても、各種被着体に対する粘着力に優れる。また、本発明の粘着剤層は、初期と経時での粘着力の変化が少ない、すなわち、本発明の粘着剤層は、初期から充分な粘着力を発揮するものである。
従って、本発明の粘着剤層は、ポリイミド用の片面または両面粘着シート、光学部材用の貼り合せに用いる片面または両面粘着シートや、携帯電子機器の部材固定用、電子部材固定用の片面または両面粘着シート等に好適に用いられる。
以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、カルボン酸類等の「類」は、カルボン酸等の酸に加え、カルボン酸等の塩、カルボン酸等の無水物、カルボン酸等のハロゲン化物、カルボン酸等のエステル等のカルボン酸等の誘導体も含むものである。
本発明の一実施態様に係る粘着剤層は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層であって、
上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位のうち、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を60モル%以上含有することを特徴とする。
また、本発明の一実施態様に係る粘着シートは、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i’)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層を有する粘着シートであって、
上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
特定の測定条件で測定される経時粘着力が5N/25mm以上であることを特徴とする。
以下、本発明の粘着剤層を構成する粘着剤組成物に含まれる各成分について、順次説明する。
<ポリエステル系樹脂(i)、(i’)>
本発明で用いられるポリエステル系樹脂(i)は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位、およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有し、上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位のうち、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を60モル%以上、好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含有するものである。
なお、上限は、通常100モル%であり、好ましくは98モル%である。本発明の粘着剤層は、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を特定量含有するポリエステル系樹脂(i)を含有するため、薄膜であっても各種被着体に対する粘着力に優れ、かつ初期と経時での粘着力の変化が少ないものとすることができる。
また、本発明で用いられるポリエステル系樹脂(i’)は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位、およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有する。
[多価カルボン酸類(a)由来の構造部位]
上記ポリエステル系樹脂(i)においては、上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位として、炭素数8(カルボキシ基の炭素を含める)以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を多価カルボン酸類(a)全体の60モル%以上含有することを特徴とする。
(炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位)
上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位としては、例えば、マロン酸類、ジメチルマロン酸類、コハク酸類、グルタル酸類、アジピン酸類、ピメリン酸類、スベリン酸類、炭素数8以下のジグリコール酸類等の直鎖脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位、メチルコハク酸類、2,2-ジメチルグルタル酸類、1,3-ジメチルグルタル酸類、ジメチルアジピン酸類等の側鎖にアルキル基を持つ脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位、チオジプロピオン酸類等の硫黄含有ジカルボン酸類由来の構造部位、フマル酸類、マレイン酸類、イタコン酸類等の不飽和基含有脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位等が挙げられ、なかでも直鎖脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位が好ましい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて含有してもよい。なかでも、各種被着体に対する粘着力に優れ、初期と経時での粘着力の変化が少ない点で、アジピン酸類由来の構造部位が好ましい。
また、上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位が、アジピン酸由来の構造部位であることが、薄膜であっても各種被着体に対する粘着力に優れ、かつ初期と経時での粘着力の変化が少ない点で好ましい。
上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位の含有量は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位に対して、通常60モル%以上、好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上である。なお、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位の含有量の上限は、通常100モル%、好ましくは98モル%である。炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位の含有量が、上記数値以上であると、各種被着体に対する粘着力に優れ、初期と経時での粘着力の変化が少なくなる傾向がある。
(その他の多価カルボン酸由来の構造部位)
上記ポリエステル系樹脂(i)が有する多価カルボン酸類(a)由来の構造部位としては、上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位以外にも、炭素数9以上のジカルボン酸類、芳香族ジカルボン酸類、三価以上の多価カルボン酸類等のその他の多価カルボン酸類由来の構造部位を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上を併せて含有してもよい。
上記炭素数9以上のジカルボン酸類由来の構造部位としては、例えば、トリメチルアジピン酸類、ピメリン酸類、アゼライン酸類、チオジプロピオン酸類、炭素数9以上のジグリコール酸類、1,9-ノナンジカルボン酸類等の脂肪族ジカルボン酸類由来の構造部位;1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸類、1,3-シクロペンタンジカルボン酸類、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸類、2,5-ノルボルナンジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸類由来の構造部位が挙げられる。
上記芳香族ジカルボン酸類由来の構造単位としては、例えば、フタル酸類、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ベンジルマロン酸類、ジフェン酸類、4,4’-オキシジ安息香酸類、さらに1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類、2,7-ナフタレンジカルボン酸類等のナフタレンジカルボン酸類等の芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位等が挙げられる。
上記三価以上の多価カルボン酸類由来の構造部位としては、例えば、トリメリット酸類、ピロメリット酸類、アダマンタントリカルボン酸類、トリメシン酸類等由来の構造部位が挙げられる。
上記その他の多価カルボン酸類由来の構造部位のなかでも、ポリエステル系樹脂(i)の結晶性を下げる点から、芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位を含有することが好ましい。
上記非対称の芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位としては、例えば、フタル酸類、イソフタル酸類、1,8-ナフタレンジカルボン酸類、2,3-ナフタレンジカルボン酸類由来の構造部位が挙げられる。なかでも反応性の点でイソフタル酸類由来の構造部位が特に好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位、特には非対称の芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位の含有量は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位に対して、通常1~40モル%、好ましくは2~30モル%、特に好ましくは3~25モル%である。芳香族ジカルボン酸類由来の構造部位の含有量が多すぎると初期粘着力とタック性が低下する傾向がある。
また、前記ポリエステル系樹脂(i’)が有する多価カルボン酸類(a)由来の構造単位としては、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂(i)と同様の多価カルボン酸(a)由来の構造単位を有することが好ましい。
[ポリオール成分(b)由来の構造部位]
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)が有するポリオール成分(b)由来の構造部位としては、二価アルコール(b1)由来の構造部位、三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて含有してもよい。なかでも本発明においては、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)が、二価アルコール(b1)由来の構造部位、および三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位を含有することが好ましい。
(二価アルコール(b1)由来の構造部位)
上記二価アルコール(b1)由来の構造部位としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、オレイン酸や、エルカ酸等から誘導されるダイマージオール等の脂肪族ジオール由来の構造部位;
1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環族ジオール由来の構造部位;
4,4'-チオジフェノール、4,4'-メチレンジフェノール、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、o-,m-、およびp-ジヒドロキシベンゼン、2,5-ナフタレンジオール、p-キシレンジオール、およびそれらのエチレンオキサイド付加体やプロピレンオキサイド付加体等の芳香族ジオール等由来の構造部位が挙げられる。
さらに、ヒマシ油から誘導される脂肪酸エステルや、グリセロールモノステアレート等由来の構造部位が挙げられる。なかでも、脂肪族ジオール由来の構造部位が好ましい。
また、上記脂肪族ジオール由来の構造部位は、直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造部位、側鎖に炭化水素基を有する脂肪族ジオール由来の構造部位として区別することもできる。
かかる場合においては、直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造部位の含有量は、ポリオール成分(b)由来の構造部位に対して、1~100モル%、好ましくは10~80モル%、より好ましくは20~75モル%、特に好ましくは40~70モル%である。かかる含有割合が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の製造時の反応性が低下する傾向がある。なお、かかる含有割合が多すぎると、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)が結晶化し、粘着剤の初期粘着力が低下する傾向がある。
上記直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造部位としては、炭素数2~18の直鎖構造の脂肪族ジオール由来の構造部位が好ましく、エステル結合濃度を上げて極性を上げることにより薄膜粘着力を上げやすい点で、特に好ましくは、炭素数4以下の脂肪族ジオール由来の構造部位が好ましい。具体的にはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール由来の構造部位であり、殊に好ましくは、エチレングリコール由来の構造部位である。
また、側鎖に炭化水素基を有する脂肪族ジオール由来の構造部位の含有量は、ポリオール成分(b)由来の構造部位に対して、5~100モル%、好ましくは20~90モル%、より好ましくは25~80モル%、特に好ましくは28~60モル%である。かかる含有割合が少なすぎると、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)が結晶化し、粘着剤の初期粘着力が低下する傾向がある。なお、かかる含有割合が多すぎると、ポリエステル系樹脂(i)の製造時の反応性が低下する傾向がある。
側鎖に炭化水素基を有する脂肪族ジオール由来の構造部位としては、例えば、ジプロピレングリコール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、ダイマージオール等由来の構造部位が挙げられる。なかでも2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-メチル-1,3-プロパンジオール由来の構造部位が好ましい。
(三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位)
本発明においては、後述の架橋剤(ii)との反応点を形成し、凝集力を高める点からポリオール成分(b)由来の構造部位として、三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位を含有することが好ましい。
かかる三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位の含有量としては、ポリオール成分(b)由来の構造部位に対して、20モル%以下であることが好ましく、さらには0.1~10モル%であることが好ましく、特には0.5~5モル%が好ましい。かかる三価以上のポリオール(b2)の含有量が多すぎるとポリエステル系樹脂(i)、(i’)の製造が困難となる傾向がある。
三価以上のポリオール(b2)由来の構造部位としては、例えば、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール由来の構造部位が挙げられる。これらのなかでも比較的ゲルが発生しにくい点でトリメチロールプロパン由来の構造部位を含有することが特に好ましい。
本発明においては、各種被着体に対する粘着力および、初期と経時での粘着力の変化が少ない点から、ポリオール成分(b)由来の構造部位として、エチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、およびネオペンチルグリコールからなる群より選択される少なくとも一種由来の構造部位を含有することが好ましく、ポリオール成分(b)由来の構造部位として、エチレングリコールおよび/またはネオペンチルグリコール由来の構造部位を有することが特に好ましい。かかる構造部位を両方含有する場合には、エチレングリコール/ネオペンチルグリコール(モル比)が10/90~10/90、特には20/75~25/80、更には40/60~70/30が好ましい。
上記エチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、およびネオペンチルグリコールからなる群より選択される少なくとも一種由来の構造部位の含有量は、ポリオール成分(b)由来の構造単位に対して、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。なお、上限は、100モル%である。
本発明において、上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の各成分由来の構造部位の割合(組成割合)は、NMRを用いた公知の方法、例えば、共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)等により決定することができる。
本発明で用いるポリエステル系樹脂(i)、(i’)は、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位やポリオール成分(b)由来の構造部位以外に、分子内にカルボン酸と水酸基を併せ持つ化合物(例えば、乳酸等)由来の構造部位を、本発明の効果を損なわない範囲で有していてもよい。しかし、乳酸由来の構造部位は加水分解が起こりやすいので、含有しないことが好ましい。
[ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の製造]
本発明のポリエステル系樹脂(i)、(i’)は、上述した多価カルボン酸類(a)と上述したポリオール成分(b)を原料とし、触媒存在下、公知の方法により重縮合反応させることにより製造することができる。すなわち、上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)は、多価カルボン酸類(a)とポリオール成分(b)とを重縮合反応して得られるため、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有することとなる。
上記重縮合反応に際しては、まずエステル化反応、またはエステル交換反応が行われた後、重縮合反応が行われる。なお、高分子量にする必要がない場合には、エステル化反応、またはエステル交換反応のみで製造することもある。
上記多価カルボン酸類(a)とポリオール成分(b)の配合割合としては、多価カルボン酸類(a)1当量あたり、ポリオール成分(b)が1~2当量であることが好ましく、特に好ましくは1.1~1.7当量である。ポリオール成分(b)の配合割合が低すぎると、酸価が高くなり高分子量化が困難となる傾向があり、高すぎると収率が低下する傾向がある。
〔エステル化反応、またはエステル交換反応〕
エステル化反応、またはエステル交換反応においては、通常、触媒が用いられ、具体的には、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、二酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム系触媒等の触媒や、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、ジブチル錫オキサイド等の触媒を挙げることができ、これらの1種あるいは2種以上が用いられる。これらのなかでも、触媒活性の高さと得られる反応物の色相とのバランスから、三酸化アンチモン、テトラブチルチタネート、二酸化ゲルマニウム、酢酸亜鉛が好ましい。
上記触媒の配合量は、全共重合成分(重量基準)に対して1~10000ppmであることが好ましく、特に好ましくは10~5000ppm、さらに好ましくは20~3000ppmである。かかる配合量が少なすぎると、重合反応が充分に進行しにくい傾向があり、多すぎても反応時間短縮等の利点はなく副反応が起こりやすい傾向がある。
エステル化反応、またはエステル交換反応時の反応温度については、200~300℃が好ましく、特に好ましくは210~280℃、さらに好ましくは220~260℃である。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進みにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。また、反応時の圧力は通常、常圧である。
上記エステル化反応、またはエステル交換反応が行われた後に行われる重縮合反応の反応条件としては、上記のエステル化反応、またはエステル交換反応で用いるものと同様の触媒をさらに同程度の量を配合し、反応温度を好ましくは220~280℃、特に好ましくは230~270℃として、反応系を徐々に減圧して最終的には5hPa以下で反応させることが好ましい。かかる反応温度が低すぎると反応が充分に進行しにくい傾向があり、高すぎると分解等の副反応が起こりやすい傾向がある。
上記で得られたポリエステル系樹脂(i)、(i’)のエステル結合濃度は、9~12.5ミリモル/gであることが好ましく、より好ましくは9.2~11.5ミリモル/g、さらに好ましくは9.5~11.0ミリモル/gである。かかるエステル基濃度が小さすぎるとポリエステル系樹脂(i)、(i’)の極性が下がるために、初期の密着性や薄膜接着力に劣る傾向がある。
上記エステル結合濃度(ミリモル/g)とは、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)1g中のエステル結合のモル数のことであり、例えば、仕込み量からの計算値で求められる。かかる計算方法は、多価カルボン酸類(a)とポリオール成分(b)の仕込みモル数の少ない方のモル数を出来上がりの全体重量で割った値であり、計算式の例を以下に示す。
なお、多価カルボン酸類(a)とポリオール成分(b)の各仕込み量が同モル量の場合には、下記のどちらの計算式を用いてもよい。
また、モノマーとして、カルボン酸と水酸基を両方持ったものを使ったり、カプロラクトン等からポリエステルを作製する場合等は、適宜計算方法を変えることとなる。
<多価カルボン酸類(a)が少ない場合>
エステル結合濃度(ミリモル/g)=〔(A1/α1×m1+A2/α2×m2+A3/α3×m3・・・)/Z〕×1000
A:多価カルボン酸類(a)の仕込み量(g)
α:多価カルボン酸類(a)の分子量
m:多価カルボン酸類(a)の1分子あたりのカルボキシ基の数
Z:出来上がり重量(g)
<ポリオール成分(b)が少ない場合>
エステル基濃度(ミリモル/g)=〔(B1/β1×n1+B2/β2×n2+B3/β3×n3・・・)/Z〕×1000
B:ポリオール成分(b)の仕込み量(g)
β:ポリオール成分(b)の分子量
n:ポリオール成分(b)の1分子あたりの水酸基の数
Z:出来上がり重量(g)
また、上記ポリエステル樹脂(i)、(i’)のエステル結合濃度は、NMR等を用いた公知の方法、例えば、共鳴周波数400MHzの1H-NMR測定(プロトン型核磁気共鳴分光測定)、13C-NMR測定(カーボン型核磁気共鳴分光測定)によっても求めることができる。
上記エステル結合濃度を所定範囲に調整する方法としては、例えば、ポリオール成分(b)として炭素数4以下のポリオールを選択する方法や、多価カルボン酸類(a)として炭素数の8以下の直鎖カルボン酸類の含有量を増やしたり、さらに炭素数の少ないジカルボン酸を増やす方法、その両方を組み合わせる方法等が挙げられる。
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-70~-10℃であり、特に好ましくは-50~-15℃であり、さらに好ましくは-45~-20℃である。ガラス転移温度(Tg)が高すぎると、薄膜での粘着力が低下する傾向があり、低すぎると、耐熱性が低下したり、凝集力が低下したりする傾向がある。
上記ガラス転移温度を調整するには、例えば、芳香族骨格を導入したり、多価カルボン酸類(a)やポリオール成分(b)のアルキル鎖長を変えたりすることが挙げられる。
上記ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメント社製の示差走査熱量計DSC Q20を用いて測定されるものである。なお、測定温度範囲は-90~100℃であり、温度上昇速度は10℃/分である。
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の重量平均分子量は、好ましくは2000~500000、さらに好ましくは5000~200000、特に好ましくは50000~100000である。重量平均分子量が大きすぎると、ハンドリング性が低下するので、溶剤が大量に必要となり、環境負荷が大きくなる傾向があり、重量平均分子量が小さすぎると、粘着物性が低下する傾向がある。
上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限界分子量:2×106、理論段数:16000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm)を2本直列にして用いることにより測定されるものである。
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の酸価は、10mgKOH/g以下であることが加水分解を防ぎ、耐久性を上げる点で好ましく、さらに好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは2mgKOH/g以下、殊に好ましくは1mgKOH/g以下、最も好ましくは0.5mgKOH/g以下である。かかる酸価が大きすぎると耐久性が低下する傾向がある。
上記酸価を調整するには、例えば、エステル化反応、またはエステル交換反応時にポリオール成分(b)の比率を増やしたり、反応条件を調節したりすることが挙げられる。なお、酸価の下限値は通常0mgKOH/gである。
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の酸価は、JIS K0070に基づき中和滴定により求められるものである。
なお、本発明における酸価とは、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)におけるカルボキシ基の含有量を意味する。上記カルボキシ基には、カルボキシ基が塩基性化合物により中和された、カルボキシラートイオン状態のものも含まれる。
上記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の示差走査熱量計(DSC)で測定される結晶融解熱は、好ましくは10J/g以下であり、より好ましくは5J/g以下、さらに好ましくは2J/g以下、特に好ましくは結晶融解熱が出ないことである。かかる結晶融解熱が大きすぎると結晶性が出てしまい、樹脂溶液の保存安定性が劣ったり、粘着シートにした際の低温での安定性、薄膜での粘着力が劣る傾向にある。
上記結晶融解熱を所定範囲に調整する方法としては、例えば、側鎖にアルキル基を持つ多価カルボン酸類(a)や側鎖にアルキル基を持つポリオール成分(b)を適宜使用する方法や、共重合モノマー成分を3成分以上、好ましくは4成分以上使用する方法等が挙げられる。
上記結晶融解熱とは、結晶化した物質を加熱融解する際の消費エネルギーのことであり、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
本発明で用いる粘着剤組成物は、上記ポリエステル系樹脂(i)または(i’)の他に、架橋剤(ii)、加水分解抑制剤(iii)、ウレタン化触媒(iv)および酸化防止剤(v)を含有することが好ましい。
〔架橋剤(ii)〕
本発明で用いる粘着剤組成物は架橋剤(ii)を含有することが好ましく、架橋剤(ii)を含有させることにより、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)が架橋剤(ii)で架橋され凝集力に優れたものとなり、粘着剤としての性能を向上させることができる。
かかる架橋剤(ii)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤(ii-1)、ポリエポキシ系架橋剤等、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方と反応する官能基を有する架橋剤が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂(i)と反応しなくても、凝集力が上がるような、多官能アクリル系モノマーやウレタンアクリレート系オリゴマーを使用することもできる。これらのなかでも初期接着性と機械的強度、耐熱性をバランスよく両立できる点から、特にイソシアネート系架橋剤(ii-1)を用いることが好ましい。
かかるイソシアネート系架橋剤(ii-1)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、等のポリイソシアネートが挙げられ、また、上記ポリイソシアネートと、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体や、これらポリイソシアネート系化合物のビュレット体、イソシアヌレート体、等が挙げられる。なお、上記ポリイソシアネート系化合物は、フェノール、ラクタム等でイソシアネート部分がブロックされたものでも使用することができる。これらのイソシアネート系架橋剤(ii-1)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
かかるイソシアネート系架橋剤(ii-1)において、芳香族ポリイソシアネート系化合物が好ましく、さらには、3官能の芳香族イソシアネート系化合物を用いることが、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)との相溶性が良好な点で好ましい。
かかる架橋剤(ii)の含有量は、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の分子量と用途目的により適宜選択できるが、通常は、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)に含まれる水酸基およびカルボキシ基の少なくとも一方の1当量に対して、架橋剤(ii)に含まれる反応性基が、0.2~10当量となる割合で架橋剤(ii)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.5~5当量、さらに好ましくは0.8~4当量、殊には1.1~3当量である。かかる架橋剤(ii)に含まれる反応性基の当量数が小さすぎると凝集力が低下する傾向があり、大きすぎると柔軟性が低下する傾向がある。
また、かかる架橋剤(ii)の含有量は、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)100重量部に対して、0.01~10重量部が好ましく、特に好ましくは、0.1~8重量部、さらには、0.5~6重量部、殊には、1~4重量部であることが好ましい。かかる架橋剤の含有量が少ないと、凝集力が低下する傾向があり、含有量が多すぎると柔軟性が低下し、必要な粘着力が得られなくなる傾向がある。
また、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)と架橋剤(ii)との反応においては、これらの成分と反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類等の有機溶剤を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
<加水分解抑制剤(iii)>
上記加水分解抑制剤(iii)としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができ、例えば、前記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)のカルボン酸末端基と反応して結合する化合物があげられ、具体的には、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、等の官能基を有する化合物等が挙げられる。これらのなかでもカルボジイミド基含有化合物が、カルボキシル基末端基由来のプロトンの触媒活性を消失させる効果が高い点で好ましい。
本発明で用いる上記カルボジイミド基含有化合物としては、通常、カルボジイミド基(-N=C=N-)を分子内に1個以上有する公知のカルボジイミドを用いることができるが、より高温高湿下での耐久性を上げる点でカルボジイミド基を分子内に2個以上含有する化合物、すなわち多価カルボジイミド系化合物であることが好ましく、特にはカルボジイミド基を分子内に3個以上、さらには5個以上、殊には7個以上含有する化合物であることが好ましい。
なお、分子内に有するカルボジイミド基の数は通常50個以下であり、カルボジイミド基が多すぎると分子構造が大きくなりすぎるため相溶性が低下する傾向がある。
本発明で用いるカルボジイミド基含有化合物としては、耐加水分解性の観点から重量平均分子量が高いものを用いる方が好ましい。カルボジイミド基含有化合物の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。なお、重量平均分子量の上限は通常50000である。
また、カルボジイミド基含有化合物としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために数平均分子量は高いものを用いる方が好ましく、通常、300~10000、好ましくは1000~5000である。
カルボジイミド基含有化合物の分子量が小さすぎると、耐加水分解性が低下する傾向がある。なお、分子量が大きすぎると、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)との相溶性が低下する傾向がある。
上記カルボジイミド基含有化合物のカルボジイミド当量は、好ましくは50~10000であり、特に好ましくは100~1000であり、さらに好ましくは150~500である。なお、カルボジイミド当量とは、カルボジイミド基1個あたりの化学式量を示す。
また、カルボジイミド基含有化合物としては、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成するポリカルボジイミド系化合物を用いることも好ましい。
〔ポリカルボジイミド系化合物〕
ポリカルボジイミド系化合物は、有機ジイソシアネート化合物を縮合反応させることにより得ることができる。
上記有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネートと2,6-トリレンジイソシアネートとの混合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
ヘキサメチレンジイソシアネート等の非環式脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,5(2,6)-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等の環式脂肪族ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
なかでも、耐湿熱性に優れる粘着剤組成物とすることができる点で、芳香族ジイソシアネート化合物が好ましく、テトラメチルキシレンジイソシアネートがより好ましい。
上記有機ジイソシアネート化合物を公知のカルボジイミド化触媒を用い、常法にて脱炭酸縮合反応させることにより、ポリカルボジイミド系化合物を得ることができる。
上記ポリカルボジイミド系化合物は、高温高湿度条件下でもヘイズ変化が小さく、耐湿熱性に優れる粘着剤とすることができる点から芳香族ポリカルボジイミド化合物であることが好ましい。
さらに本発明で用いるポリカルボジイミド系化合物は、ポリカルボジイミド系化合物の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物由来の置換基で置換されたものが好ましい。
〔ポリカルボジイミド系化合物の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物由来の置換基で置換されたもの〕
次にポリカルボジイミド系化合物の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物由来の置換基で置換されたものについて説明する。
まずは、親水性有機化合物について説明する。
[親水性有機化合物]
上記親水性有機化合物とは、上記ポリカルボジイミド系化合物の末端のイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基を有し、上記置換基の他にさらに分子中にヘテロ原子を1個以上有する化合物である。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基としては、例えば、水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、カルボキシ基等が挙げられる。なかでも水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、イミノ基が好ましい。これらの置換基は、親水性有機化合物中に単独でもしくは2種以上含まれていてもよい。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基の数は、親水性有機化合物中に通常2個以下であり、好ましくは1個である。また、上記置換基は、親水性有機化合物の末端に有ることが好ましい。
上記イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する置換基を有し、上記置換基の他にさらに分子中にヘテロ原子を1個以上有する化合物としては、例えば、オキシアルキレン構造含有化合物、ヒドロキシポリエステル構造含有化合物、ヒドロキシアルキルスルホン酸構造含有化合物、ジアルキルアミノアルコール構造含有化合物、ヒドロキシカルボン酸アルキルエステル構造含有化合物、ジアルキルアミノアルキルアミン構造含有化合物等が挙げられる。なかでも、オキシアルキレン構造含有化合物が好ましい。
また、親水性有機化合物の末端は、アルコキシ基またはフェノキシ基で封鎖されていることが好ましい。
これらのなかでも、親水性有機化合物としては、アルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたオキシアルキレン構造含有化合物であることが、高温高湿度条件下でもヘイズ変化が小さい点で好ましい。
上記アルコキシ基またはフェノキシ基で末端封鎖されたオキシアルキレン構造含有化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物を挙げることができる。
1-O-(CH2-CHR2-O)m-H ・・・(1)
上記式(1)中、R1は炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基を示し、R2は水素原子またはメチル基を示し、mは4~100の整数である。
上記炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
また、親水性有機化合物の重量平均分子量は、200以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましい。また、重量平均分子量の上限は、通常5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリエステル樹脂との相溶性が低下し、さらに高温高湿度条件下のヘイズ変化が大きくなる傾向がある。なお、重量平均分子量が大きすぎると粘着力が低下する傾向がある。
前記ポリカルボジイミド系化合物の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物由来の置換基で置換されたものは、上記ポリカルボジイミド系化合物と、上記親水性有機化合物とを反応させることにより得ることができる。
上記ポリカルボジイミド系化合物と、親水性有機化合物との反応はポリカルボジイミド系化合物を通常50~200℃、好ましくは100~180℃に加熱した後、上記親水性有機化合物を添加し、さらに80~200℃で0.5~5時間反応を行う。
このようにして、ポリカルボジイミド系化合物の末端イソシアネート基の少なくとも1つが親水性有機化合物由来の置換基で置換されたものを得ることができる。
ポリカルボジイミド系化合物の市販品としては、例えば、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-09GB、V-02B、V-04K、V-04PF、V-07、BASF社製のElastostabH01等が挙げられ、なかでもカルボジライトV-09GBが好ましい。
前記エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジルエステル化合物やグリシジルエーテル化合物等が好ましい。
上記グリシジルエステル化合物としては、例えば、安息香酸グリシジルエステル、t-Bu-安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ペラルゴン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ベヘン酸グリシジルエステル、バーサティク酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレイン酸グリシジルエステル、ベヘノール酸グリシジルエステル、ステアロール酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等を挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
上記グリシジルエーテル化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエ-テル、o-フェニルグリシジルエ-テル、1,4-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ブタン、1,6-ビス(β,γ-エポキシプロポキシ)ヘキサン、1,4-ビス(β,γ-エポキシプポキシ)ベンゼン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-エトキシエタン、1-(β,γ-エポキシプロポキシ)-2-ベンジルオキシエタン、2,2-ビス-[р-(β,γ-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパンおよび2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパンや2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン等のビスフェノールとエピクロルヒドリンの反応で得られるビスグリシジルポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
前記オキサゾリン基含有化合物としては、ビスオキサゾリン化合物等が好ましい。具体的には、例えば、2,2'-ビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4,4'-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2'-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-p-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-m-フェニレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2'-テトラメチレンビス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2'-9,9'-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2'-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)等を例示することができ、これらの中では、2,2'-ビス(2-オキサゾリン)が、ポリエステルとの反応性の観点から最も好ましい。
さらに、上記で挙げたビスオキサゾリン化合物は本発明の目的を奏する限り、これらを単独でもしくは2種以上を併用することができる。
これら加水分解抑制剤(iii)としては、揮発性が低い方が好ましく、そのために分子量は高いものを用いる方が好ましい。
前記加水分解抑制剤(iii)の配合量は、前記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~5重量部、さらに好ましくは0.2~3重量部である。かかる配合量が、多すぎるとポリエステル系樹脂(i)、(i’)との相溶性不良により濁りが発生しやすい傾向があり、少なすぎると充分な耐久性が得られにくい傾向がある。
また、前記加水分解抑制剤(iii)の配合量は、前記ポリエステル系樹脂(i)、(i’)の酸価に応じて、配合量を最適化させることが好ましく、粘着剤組成物中のポリエステル系樹脂(i)の酸価の合計(α)と、粘着剤組成物中の加水分解抑制剤(iii)の官能基量の合計(β)のモル比((β)/(α))が、0.5≦(β)/(α)であることが好ましく、特に好ましくは1≦(β)/(α)≦1000、さらに好ましくは1.5≦(β)/(α)≦100である。
(α)に対する(β)の含有割合が高すぎと、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)との相溶性が低下したり、粘着力、凝集力、耐久性能が低下する傾向があり、(α)に対する(β)の含有割合が低くなると、耐湿熱性能が低下する傾向がある。
〔ウレタン化触媒(iv)〕
本発明で用いる粘着剤組成物には、反応速度の点からウレタン化触媒(iv)を含有することがより好ましい。
ウレタン化触媒(iv)としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記有機金属系化合物としては、例えば、ジルコニウム系化合物、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物等を挙げることができる。
上記ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
上記鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄等が挙げられる。
上記錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
上記チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等が挙げられる。
上記鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
上記コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルト等が挙げられる。
上記亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
また、前記3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7等が挙げられる。
これらウレタン化触媒(iv)のなかでも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、有機金属系化合物が好ましく、特にジルコニウム系化合物が好ましい。さらにウレタン化触媒(iv)は触媒作用抑制剤としてアセチルアセトンを併用することが好ましい。アセチルアセトンを含むことで、低温における触媒作用を抑制し、ポットライフを長くする点で好ましい。
上記ウレタン化触媒(iv)の含有量は、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)100重量部に対して0.0001~1重量部であることが好ましく、特には0.001~0.1重量部、さらには0.01~0.05重量部であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると架橋反応終了までのエージング時間が長くなる傾向があり、多すぎると粘着物性が低下する傾向がある。
〔酸化防止剤(v)〕
本発明で用いる粘着剤組成物には、樹脂の安定性を上げる点から酸化防止剤(v)を含有することがより好ましい。
上記酸化防止剤(v)としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤等が挙げられる。なかでもヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびリン酸系酸化防止剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、とりわけヒンダードフェノール系化合物からなる酸化防止剤が好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、フェノールの水酸基が結合した芳香族環上の炭素原子の隣接炭素原子の少なくとも一方に、ターシャリーブチル基等の立体障害の大きな基が結合したヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤(v)の含有量は、ポリエステル系樹脂(i)、(i’)100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.03~8重量部であり、さらに好ましくは0.05~5重量部である。かかる含有量が少なすぎると被着体への糊残りが発生しやすくなる傾向があり、多すぎると粘着物性が低下する傾向がある。
本発明で用いる粘着剤組成物においては、上記のポリエステル系樹脂(i)または(i’)、架橋剤(ii)、加水分解抑制剤(iii)、ウレタン化触媒(iv)、酸化防止剤(v)の他にも、本発明の効果を損なわない範囲(例えば、粘着剤組成物の10重量%以下)において、粘着付与樹脂、軟化剤、紫外線吸収剤、安定剤、耐電防止剤、等の添加剤やその他、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料等の粉体、粒子状等の添加剤を配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
上記粘着剤組成物は、例えば、上記ポリエステル系樹脂(i)または(i’)、および必要な任意成分等を準備し、ポリエステル系樹脂(i)の製造時に配合し分散させることにより、もしくはポリエステル系樹脂(i)または(i’)に配合しミキシングローラー等を用いて分散させることにより、得ることができる。この時、溶媒を用いて溶液として分散させてもよいし、無溶剤で分散させてもよい。なお、ポリエステル系樹脂が主成分であることが好ましい。主成分とは50重量%以上を占め、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。ポリエステル系樹脂の含有量が少ないと耐熱性に劣る傾向がある。
<粘着剤層>
本発明の粘着剤層は、上記粘着剤組成物が架橋(硬化)されてなるものである。上記粘着剤層は、粘着剤組成物を塗工、乾燥等させることにより、得ることができ、後記の粘着シートの製造方法において詳述する。
本発明の粘着剤層は、厚みが18μm以下、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは8μm以下、殊に好ましくは3μm以下である。なお、下限は通常0.1μmである。一般的に粘着剤層の厚みが厚いほど、粘着力は高くなる傾向があるが、本発明の粘着剤層は、粘着剤層の厚みが薄いにもかかわらず、各種被着体に対する粘着力に優れるものである。
なお、上記粘着剤層の厚みは、デジマチックインジケータ(ミツトヨ社製、ID-C112B)を用いて測定することにより得られる。また、後述する粘着シートの場合は、粘着シート全体の厚みの測定値から、粘着剤層以外の構成部材の厚みの測定値を差し引くことにより求められる。
上記粘着剤層のゲル分率については、耐久性と粘着力の点から10重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは15~80重量%、さらに好ましくは20~70重量%、殊には30~55重量%、最も好ましくは35~45重量%ある。ゲル分率が低すぎると凝集力が低下することにより耐久性が低下する傾向がある。なお、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下する懸念がある。
上記ゲル分率は、架橋度の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、粘着剤層を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前の粘着剤成分の重量に対する、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、上記粘着剤層を有するものである。
本発明の粘着シートの第1の態様は、上記粘着剤層と基材とを有し、上記粘着剤層の一方の面に上記基材が積層され、他方の面が離型処理したシートである。
また、本発明の粘着シートの第2の態様は、上記粘着剤層と離型処理したシートとを有し、上記粘着剤層の両面に上記離型処理したシートが積層されるものである。
すなわち、本発明の粘着シートは、支持基材の片面または両面に、粘着剤層を有する粘着シートであっても、また、基材を有しない基材レスタイプの基材レス両面粘着シートであってもよい。
なお、本発明において「シート」とは、「フィルム」や「テープ」をも含めた意味である。
上記第1の態様の粘着シートの製造方法としては、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、基材の一方の面に、上記粘着剤組成物を塗工、乾燥して、粘着剤層を形成し、その表面(基材に接する面の反対面)に離型処理したシートを貼合し、必要により養生することにより得られる。
あるいは、上記離型処理したシート上に、上記粘着剤組成物を塗工、乾燥して、粘着剤層を形成し、その表面(離型処理したシートに接する面の反対面)に基材を貼合し、必要により養生することにより得られる。
上記基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド;シクロオレフィンポリマー等からなる合成樹脂シート;アルミニウム、銅、鉄等の金属箔;上質紙、グラシン紙等の紙;ガラス繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系樹脂シートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
上記離型処理したシートとしては、例えば、上記基材に離型処理したものを使用することができる。なかでも、シリコーン系の離型シートを用いることが好ましい。
上記粘着剤組成物の塗工方法としては、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター等を用いればよい。
また、上記粘着剤組成物を塗工した後の乾燥条件としては、乾燥温度は60~140℃が好ましく、特に好ましくは80~120℃である。また、乾燥時間は0.5~30分間が好ましく、特に好ましくは1~5分間である。
上記養生処理の条件としては、温度は通常、室温(23℃)~70℃、時間は通常1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、好ましくは23℃で3~14日間、40℃で1~10日間等の条件で行なえばよい。
前記第2の態様の粘着シートの製造方法も、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、離型処理したシート上に、上記粘着剤組成物を塗工、乾燥して、粘着剤層を形成し、その表面(離型処理したシートに接する面の反対面)に上記離型したシートとは別の離型処理したシートを貼り合わせることにより第2の態様の粘着シートが得られる。なお、第2の態様で用いる離型処理したシートは、上記第1の態様で例示したものを用いることができる。また、塗工方法、乾燥条件、および養生処理の条件も上記第1の態様に準じて行えばよい。
得られた粘着シートや基材レス両面粘着シートは、使用時には、上記離型処理したシートを粘着剤層から剥離して粘着剤層と被着体を貼合する。
本発明の粘着シートは、下記測定条件で測定される粘着力が5N/25mm以上であることが好ましく、6N/25mm以上であることがより好ましく、7N/25mm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、通常100N/25mmである。
[粘着力(N/25mm)の測定条件]
粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を粘着力とする。
なお、上記SUS-BA板とは、SUS304を冷間圧延後、光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったもの、あるいは光沢を高めるためスキンパス圧延をしたものをいう。
また、本発明の粘着シートは、上記の測定条件で測定される粘着力(N/25mm)をX、粘着剤層の厚み(μm)をYとしたとき、X/Y≧0.5であることが好ましく、≧1.0であることがより好ましく、≧1.5であることが特に好ましい。
本発明の粘着シートは、下記測定条件で測定される経時粘着力が5N/25mm以上であることが好ましく、6N/25mm以上であることがより好ましく、7N/25mm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、通常100N/25mmである。
[経時粘着力(N/25mm)の測定条件]
粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、粘着剤層を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で24時間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を粘着力とする。
なお、上記SUS-BA板とは、SUS304を冷間圧延後、光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったもの、あるいは光沢を高めるためスキンパス圧延をしたものをいう。
また、本発明の粘着シートは、上記の測定条件で測定される経時粘着力(N/25mm)をZ、粘着剤層の厚み(μm)をYとしたとき、Z/Y≧1.0であることが好ましく、Z/Y≧2.0であることがより好ましく、Z/Y≧3.0であることが特に好ましい。
本発明の粘着シートは、種々の部材の貼り合わせに用いることができ、とりわけ、ポリイミド用の片面または両面粘着シート、光学部材用の貼り合せに用いる片面または両面粘着シートや、携帯電子機器の部材固定用、電子部材固定用の片面または両面粘着シート等に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるポリエステル系樹脂のエステル結合濃度、ガラス転移温度、重量平均分子量、酸価、結晶融解熱、粘着剤層のゲル分率の測定に関しては、前述の方法に従って測定した。
以下の方法により、ポリエステル系樹脂を製造した。
〔製造例1:ポリエステル系樹脂(i-1)の製造〕
温度計、撹拌機、精留塔、窒素導入管および真空装置の付いた反応缶に、多価カルボン酸類(a)として、アジピン酸46.2部、イソフタル酸13.1部、ポリオール成分(b)として、エチレングリコール13.1部およびネオペンチルグリコール26.8部、トリメチロールプロパン0.8部、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、内温250℃まで徐々に温度を上げ、4時間かけてエステル化反応を行った。その後、内温260℃まで上げ、触媒として、テトラブチルチタネート0.01部を仕込み、1.33hPaまで減圧し、3時間かけて重合反応を行い、ポリエステル系樹脂(i-1)を製造した。
得られたポリエステル系樹脂(i-1)の組成(モル比)は、アジピン酸/イソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール/トリメチロールプロパン=80/20/44.2/54.5/1.3であり、エステル結合濃度は10.0ミリモル/g、結晶融解熱は0J/g、重量平均分子量は78000、ガラス転移温度(Tg)は-30℃、酸価は0.1mgKOH/gであった。
製造例2~5および比較製造例1、2は、下記表1の樹脂組成とした以外は製造例1と同様にして作製した。
作製したポリエステル系樹脂(i-1)~(i-7)の樹脂組成および物性を下記表1に示す。
Figure 2022079443000001
〔比較製造例3:アクリル系樹脂(b-1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口および温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに 、アクリル酸5部、ブチルアクリレート65部、メチルアクリレート30部および酢酸エチル150部、アセトン45部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応を行った。反応後、酢酸エチル にて希釈してアクリル系樹脂(b-1)溶液(重量平均分子量(Mw)120万、Foxの式による計算ガラス転移温度-35℃、固形分25%、粘度5,000mPa・s(25℃))を得た。
つぎに、下記の各成分を用意した。
〔架橋剤(ii)〕
・イソシアネート系架橋剤(ii-1A):「コロネートL55E」(東ソー社製)
・イソシアネート系架橋剤(ii-2A):「コロネートHX」(東ソー社製)
〔加水分解抑制剤(iii)〕
・カルボジイミド系化合物(iii-1):末端が芳香族系モノイソシアネート由来の置換基で置換された芳香族ポリカルボジイミド系化合物、「カルボジライトV-09GB」(日清紡ケミカル社製)、重量平均分子量:6000
〔ウレタン化触媒(iv)〕
・ジルコニウム系化合物(iv-1):「オルガチックスZC-150」(マツモトファインケミカル社製)をアセチルアセトンで固形分濃度1%に希釈したもの
〔酸化防止剤(v)〕
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤(v-1):「IRGANOX1010」(BASF社製)
次に、上記で得られたポリエステル系樹脂(i-1)~(i-3)を用いて下記の通り粘着剤組成物を調製し、実施例および比較例の粘着シートを作製した。
[実施例1]
上記で得られたポリエステル系樹脂(i-1)を酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈し、その固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(ii-1A)1.5部(固形分)、カルボジイミド系化合物(iii-1)0.5部(固形分)、ジルコニウム系化合物(iv-1)0.02部(固形分)、ヒンダートフェノール系酸化防止剤(v-1)0.1部を配合し、撹拌、混合して粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を乾燥後の厚みが約5μmになるように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)に塗布した後、100℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、かかる粘着剤層に、離型処理されたPETシート(離型シート)を貼着してその表面を保護し、温度40℃の雰囲気下で10日間養生し、粘着シートを得た。
[実施例2~8、比較例1~4]
実施例1において、下記表2の通り配合した以外は同様に行い、粘着剤組成物を調製し、粘着シートを得た。
Figure 2022079443000002
[実施例9、10、比較例5]
実施例1において、下記表3の通り配合し、乾燥後の粘着剤層の厚みが10μmになるようにしたこと以外は同様に行い、粘着剤組成物を調製し、粘着シートを得た。
Figure 2022079443000003
[実施例11、12、比較例6、7]
実施例1において、下記表4の通り配合し、乾燥後の粘着剤層の厚みが2μmになるようにしたこと以外は同様に行い、粘着剤組成物を調製し、粘着シートを得た。
Figure 2022079443000004
得られた実施例および比較例の粘着シートを用いて以下の評価を行った。なお、粘着剤層の厚みによって、粘着力は変化するため、粘着剤層の厚みに応じて評価基準を設けて評価を行った。粘着剤層の厚みが5μmである実施例1~8、比較例1~4の結果を後記の表5に、また、粘着剤層の厚みが10μmである実施例9、10、比較例5の結果を後記の表6に、また、粘着剤層の厚みが2μmである実施例11、12、比較例6、7の結果を表7に示す。
<粘着力(剥離強度)(対SUS)>
被着体としてSUS-BA板を準備した。上記で得られた粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
なお、SUS-BA板とは、SUS304を冷間圧延後、光輝焼鈍(無酸化焼鈍)を行ったもの、あるいは光沢を高めるためスキンパス圧延をしたものをいう。
(粘着剤層の厚み5μmの評価基準)
〇・・・7N/25mm以上。
△・・・5N/25mm以上、10N/25mm未満。
×・・・5N/25mm未満。
(粘着剤層の厚み10μmの評価基準)
〇・・・12N/25mm以上。
×・・・12N/25mm未満。
(粘着剤層の厚み2μmの評価基準)
〇・・・5N/25mm以上。
×・・・5N/25mm未満。
<粘着力(剥離強度)(対PI)>
被着体としてポリイミド(PI)(東レデュポン社製、「カプトン」、厚み100μmのフィルム)をSUS-BA板に両面テープで貼り付けて、PI被着体を準備した。上記で得られた粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をPI被着体に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(粘着剤層の厚み5μmの評価基準)
〇・・・13N/25mm以上。
△・・・10N/25mm以上、13N/25mm未満。
×・・・10N/25mm未満。
(粘着剤層の厚み10μmの評価基準)
〇・・・15N/25mm以上。
×・・・15N/25mm未満。
(粘着剤層の厚み2μmの評価基準)
〇・・・5N/25mm以上。
×・・・5N/25mm未満。
<粘着力(剥離強度)(対PP)>
被着体としてポリプロピレン板(PP)(日本テストパネル社製、PP 2.0×70×150mm)を準備した。上記で得られた粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をポリプロピレン板(PP)板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定し、以下の基準で評価した。
(粘着剤層の厚み5μmの評価基準)
〇・・・5N/25mm以上。
△・・・1N/25mm以上、5N/25mm未満。
×・・・1N/25mm未満。
(粘着剤層の厚み10μmの評価基準)
〇・・・5N/25mm以上。
×・・・5N/25mm未満。
<経時粘着力(24時間後剥離強度)>
被着体としてSUS304-BA板を準備した。上記で得られた粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側をSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けした。そして、同雰囲気下で24時間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
また、実施例11、12、比較例6、7については以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇・・・5N/25mm以上。
×・・・5N/25mm未満。
<初期率>
上記で測定した「粘着力(剥離強度)(対SUS)」の値をA、「経時粘着力(24時間後剥離強度)」の値をBとしたときに、A/Bの割合を求めた。初期率が高い方が、初期から粘着力が発現しており、性能を有意義に出せている。
(評価基準)
〇・・・70%以上。
×・・・70%未満。
<保持力(凝集力)>
上記で得られた実施例1~8、比較例1~4の粘着シートをJIS Z-0237に準じ、SUS304を被着体とし、貼付面積25mm×25mmで貼り付けた後、80℃で20分間静置したものについて1kgの荷重をかけて、落下までの時間または24時間静置しても落下しなかったものについては24時間後の状態を目視し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・24時間静置後でも落下しなかった。
×・・・24時間静置中に落下した。
Figure 2022079443000005
Figure 2022079443000006
Figure 2022079443000007
上記の結果より、多価カルボン酸類(a)由来の構造部位として、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を特定量以上含有する実施例1~10の粘着剤層(粘着シート)は、厚みが薄くても各種被着体への粘着力に優れ、また、初期から粘着力が充分に発揮されるものであった。
一方、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を含まない比較例1~5の粘着剤層(粘着シート)は、実施例の粘着剤層と比べて、各種被着体への粘着力が劣るものであり、さらには、初期率が低く初期から粘着力が充分に発揮されないものであった。
実施例11、12の粘着剤層(粘着シート)は、2μmと非常に薄い粘着剤層であっても、各種被着体への粘着力に優れ、また、初期から粘着力が十分に発揮された。一方で、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を含まない比較例6の粘着剤層(粘着シート)は、実施例の粘着剤層と比べて、初期率が低く初期から粘着力が充分に発揮されないものであった。しかし、ポリエステル系の粘着剤層を用いたことにより、アクリル系の粘着剤層を用いた比較例7と比較すると、経時粘着力には優れることが確認された。この経時粘着力を用いたZ/Yの値は、アクリル系樹脂に比較して十分に高いものではあった。
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明の粘着剤は、薄膜であっても優れた効果を有するものであり、ポリイミド用の片面または両面粘着シート、光学部材用の貼り合せに用いる片面または両面粘着シートや、携帯電子機器の部材固定用、電子部材固定用の片面または両面粘着シート等に用いられる。

Claims (14)

  1. 多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層であって、
    上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
    上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位のうち、炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位を60モル%以上含有することを特徴とする粘着剤層。
  2. 上記ポリオール成分(b)由来の構造部位が、エチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよびネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも一種由来の構造部位を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤層。
  3. 上記炭素数8以下の脂肪族ジカルボン酸類(a1)由来の構造部位が、アジピン酸由来の構造部位であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤層。
  4. 上記ポリエステル系樹脂(i)のエステル結合濃度が、9.0~12.5ミリモル/gであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤層。
  5. 上記ポリエステル系樹脂(i)のガラス転移温度が、-50~-10℃であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着剤層。
  6. 上記多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i)が架橋剤(ii)により架橋されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着剤層。
  7. 上記架橋剤(ii)がイソシアネート系架橋剤(ii-1)であることを特徴とする請求項6記載の粘着剤層。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤層と基材とを有する粘着シートであって、上記粘着剤層の一方の面に上記基材が積層され、他方の面が離型処理したシートであることを特徴とする粘着シート。
  9. 上記基材がポリエステル系樹脂シートであることを特徴とする請求項8記載の粘着シート。
  10. 請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着剤層と離型処理したシートとを有する粘着シートであって、上記粘着剤層の両面に上記離型処理したシートが積層されることを特徴とする粘着シート。
  11. 被着体がポリイミドであることを特徴とする、請求項8または9記載の粘着シート。
  12. 電子部材の固定用であることを特徴とする、請求項8または9記載の粘着シート。
  13. 下記測定条件で測定した粘着力(N/25mm)をX、粘着剤層の厚み(μm)をYとしたとき、X/Y≧0.5であることを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の粘着シート。
    [粘着力X(N/25mm)の測定条件]
    粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤層側を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で30分間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を粘着力Xとする。
  14. 多価カルボン酸類(a)由来の構造部位およびポリオール成分(b)由来の構造部位を有するポリエステル系樹脂(i’)を含有する粘着剤組成物が架橋された粘着剤層を有する粘着シートであって、
    上記粘着剤層の厚みが18μm以下であり、
    下記測定条件で測定される経時粘着力が5N/25mm以上であることを特徴とする粘着シート。
    [経時粘着力(N/25mm)の測定条件]
    粘着シートを23℃、50%RHの環境下で25mm×200mmに裁断した後、粘着剤層を、被着体としてSUS-BA板に当接させ、2kgローラーを往復させ加圧貼付けする。そして、同雰囲気下で24時間静置した後に、オートグラフ(島津製作所社製、オートグラフAGS-H 500N)を用いて、剥離速度300mm/minで測定した180度剥離強度(N/25mm)を経時粘着力とする。
JP2021185888A 2020-11-16 2021-11-15 粘着剤層および粘着シート Pending JP2022079443A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020190333 2020-11-16
JP2020190333 2020-11-16

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022079443A true JP2022079443A (ja) 2022-05-26

Family

ID=81707626

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021185888A Pending JP2022079443A (ja) 2020-11-16 2021-11-15 粘着剤層および粘着シート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022079443A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6958671B2 (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、光学部材用粘着シート、光学部材用基材レス両面粘着シート、粘着剤層付き光学部材、光学積層体
JP2021165392A (ja) 粘接着剤層、粘接着シートおよび樹脂組成物
JP2018109150A (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、粘着シート及び粘着剤層付き光学部材
JP2013075972A (ja) ポリエステル−ポリカルボジイミド共重合体樹脂組成物
WO2020218174A1 (ja) 粘着剤および粘着シート
JP7173252B2 (ja) 粘着剤組成物、粘着剤及び粘着剤層
JP2021134354A (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤および粘着シート
JP7115649B2 (ja) 粘着テープ
WO2021162056A1 (ja) 粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP2022079443A (ja) 粘着剤層および粘着シート
JP2022153321A (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、粘着シート、及び粘着部材層付き光学部材
CN115087713B (zh) 粘合带
JP7439561B2 (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤及び粘着シート
JP7130947B2 (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、粘着シート及び粘着剤層付き光学部材
JP7371530B2 (ja) 粘着剤組成物、粘着剤および粘着シート
KR102460457B1 (ko) 폴리에스테르계 점착제 조성물, 폴리에스테르계 점착제, 점착 시트 및 점착제층 부착 광학 부재
JP2022007974A (ja) 粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP2022058132A (ja) ポリエステル系樹脂組成物、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP2022058131A (ja) ポリエステル系樹脂組成物、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP7363185B2 (ja) 粘着テープ
JP2022058084A (ja) 粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP2022069282A (ja) 粘着剤、光学部材またはウィンドウフィルム貼り合わせ用粘着剤、粘着シートおよび粘着シートの製造方法
JP2023000876A (ja) ポリエステル系樹脂組成物、粘着剤組成物、粘着剤、粘着シートおよび両面粘着シート
JP2021059716A (ja) ポリエステル系樹脂組成物、接着剤組成物、感圧接着剤組成物、感圧接着剤、感圧接着シートおよび感圧接着剤層付き光学部材
JP2022153322A (ja) ポリエステル系粘着剤組成物、ポリエステル系粘着剤、粘着シート、及び粘着部材層付き光学部材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20240613