JP2022077485A - リング状ガスケット - Google Patents

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Abstract

【課題】高温部において使用されるリング状ガスケットにおいて、高温に長時間さらされて熱劣化した後のシール性にも優れたリング状ガスケットを提供する。【解決手段】複数層巻回されたマイカシートの層間に金属シート2を介在させてなる積重捲回体を圧縮成形して形成されたリング状ガスケット10であって、マイカシートは、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物であるリング状ガスケットを用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、エンジンの排気管系統のような高温環境になる排気管の接続部に使用されるリング状ガスケットに関する。
エンジンの排気管系統のような高温環境になる排気管の接続部に使用されるガスケットとして、マイカを用いたリング状ガスケットが知られている。マイカを用いたリング状ガスケットはエンジンの排気管系統のような700℃を超える高温の使用環境で用いても、膨張黒鉛を用いたリング状ガスケットのように酸化消耗による劣化を起こしにくいという長所がある。また、マイカは、高温下において、結晶内に含まれる結晶水が熱反応により脱水し、脱水時に発生するガスにより、マイカの粒層間が広がることにより、膨張する。そのために、マイカを用いたガスケットにおいては、膨張の作用による復元力により、シールされる隙間が密に充填されて高いシール性を発揮する。とくに、エンジンの排気管を接続するフランジ間に配された場合、熱,振動,衝撃等によりフランジ間に面開きが生じても圧縮されたマイカが復元して追従するために、常に接触圧を維持して高いシール性を維持する。
工業的に広く用いられているマイカとしては、モース硬度が2.5~3.0程度である、マグネシウムを含む軟質マイカ(KMg3(AlSi3)O10(OH)2、プロゴパイト、金雲母)や、モース硬度が2.8~3.2程度である、カリウムを含む硬質マイカ(KAl2(AlSi3)O10(OH)2、マスコバイト、白雲母)が知られている。この中でも、軟質マイカは、硬質マイカよりも耐熱性及び柔軟性に優れているために、高温環境になる排気管の接続部に使用されるリング状ガスケットの素材として好ましく用いられている。
マイカを用いたリング状ガスケットとしては、例えば、以下のような技術が知られている。下記特許文献1は、渦巻状に複数層巻回されたマイカシートと、マイカシートの各層間のうち、少なくとも一つの層間に介装され、径方向に屈曲するリング状の屈曲部を有する金属材とを備えたリング状ガスケットを開示する。
また、例えば、下記特許文献2は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)に用いられるガスケットとして、マイカを用いたガスケットを開示する。具体的には、硬質マイカの層を軟質マイカの層で挟んだサンドイッチ構造を有するガスケットを開示する。
また、同様に、下記特許文献3も、渦巻状に巻かれたシール材を有するガスケットであって、シール材が径方向において交互に積層された軟質マイカ層と硬質マイカ層を含むガスケットを開示する。そして、特許文献3は、径方向において交互に積層された軟質マイカ層と硬質マイカ層を含むガスケットによれば、シール性の高い軟質マイカと、復元性の高い硬質マイカとの両方を含み、特にそれぞれが交互に層を成している2層構造により高いシール性に加えて、高い復元性を兼ね備えることを開示する。
特開2019-100432号公報 特開2017-517837号公報 特開2020-079631号公報
軟質マイカ層と硬質マイカ層とを積層してリング状ガスケットを形成した場合、軟質マイカ層と硬質マイカ層はそれぞれが層状に圧縮された緻密な状態で存在する。軟質マイカと比較した硬質マイカの利点は、低温時におけるシール性が高く、また、熱反応温度が低いことにより、比較的低い温度で結晶水の放出による膨張を開始してシールされる隙間の形状に追従する。低温時におけるマイカの隙間への追従性のみを考慮すれば、硬質マイカ層のみを含むリング状ガスケットが好ましい。しかしながら、硬質マイカは耐熱性が低いために、700℃を超えるような高温になったときにはその一部が焼失し、シール性が低下するという問題があった。そのために、硬質マイカのみを用いたリング状ガスケットは、高温時におけるシール性が低かった。一方、硬質マイカと比較した軟質マイカは、低温時においては柔らかく弾性に乏しいためにシールされる隙間に対するシール性が低いが、高温になったときには耐熱性が高いために焼失しにくく、高温においては硬質マイカよりもシール性が高い。
特許文献3は、軟質マイカと硬質マイカとの両方を含み、それぞれが交互に層を成している2層構造により高いシール性に加えて、高い復元性を備えるリング状ガスケットを開示する。しかしながら、このような、径方向において交互に積層された軟質マイカ層と硬質マイカ層を含むガスケットにおいては、硬質マイカの有する利点が充分に発揮されていなかった。すなわち、軟質マイカ層と硬質マイカ層とを別々に積層してリング状ガスケットを形成した場合、硬質マイカの結晶内に含まれる結晶水が熱反応により脱水したときに発生するガスにより硬質マイカ層は膨張しようとするが、膨張しようとする硬質マイカ層は、固く形状を保とうとする軟質マイカ層に膨張を阻害されるために、フランジへの追従性が不充分になる。そのために、このようなガスケットは、高温に長時間さらされて熱劣化した後のシール性が未だ不充分であった。
本発明は、高温部において使用されるリング状ガスケットにおいて、高温に長時間さらされて熱劣化した後の復元性及びシール性に優れるリング状ガスケットを提供することを目的とする。
本発明の一局面は、複数層巻回されたマイカシートの層間に金属シートを介在させてなる積重捲回体を圧縮成形して形成されたリング状ガスケットであって、マイカシートは、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物であるリング状ガスケットである。このような構成によれば、高温に長時間さらされて熱劣化した後の復元性及びシール性が優れるリング状ガスケットが得られる。すなわち、軟質マイカと硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物である集成マイカをマイカシートとして用いてリング状ガスケットを製造した場合には、シール性を発揮するマイカ層が均質であるために、膨張に偏りが生じにくくなる。それにより、復元力が均質になり、高温に長時間さらされた後でも熱劣化が均質になり、熱劣化時に高いシール性を保持するリング状ガスケットが得られる。
また、マイカシートは、軟質マイカと焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物であることが、熱劣化した後のシール性が著しく高くなる点から好ましい。
また、マイカシートは、硬質マイカまたは焼成硬質マイカを合計30~70質量%含有することが、熱劣化した後のシール性にとくに優れる点から好ましい。
本発明によれば、高温部において使用されるリング状ガスケットにおいて、高温に長時間さらされて熱劣化した後の復元性及びシール性に優れるリング状ガスケットが得られる。
図1は、本発明の一実施形態であるリング状ガスケット10の模式図であり、(a)は平面模式図、(b)は正面模式図であり、(c)は、(a)のA-A'断面における断面拡大模式図である。 図2は、複数層巻回されたマイカシート1aの層間に金属シート2を介在させてなる捲回体5の平面模式図である。 図3は、リング状ガスケットの製造に用いられる圧縮成形金型による圧縮成形を説明する説明図である。 図4は排気管のフランジ部にリング状ガスケット10を組込んだ状態を示す部分断面模式図である。 図5は実施例における、シール試験の方法を説明するための説明図である。
以下、本発明のリング状ガスケットの一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるリング状ガスケット10の模式図であり、(a)は平面図、(b)は正面図であり、(c)は、(a)のA-A'断面における断面拡大図である。
リング状ガスケット10は、図1(a)に示すようにリング状の外形を有するガスケットであり、図1(c)に示すように、マイカシートを圧縮して形成されたマイカ層1の層間に金属シート2が一体化された積層構造を有する。そして、このようなリング状ガスケット10は、複数層巻回されたマイカシートの層間に金属シート2を介在させてなる捲回体を後述するようにリング状に圧縮成形することにより製造される。そして、マイカ層1を形成するためのマイカシートとして、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物である、集成マイカを用いる。なお、硬質マイカと焼成硬質マイカは何れかを含めばよく、両方を含んでもよい。
以下、このようなリング状ガスケット10をその製造方法を説明しながら、さらに詳しく説明する。
本実施形態のリング状ガスケット10の製造においては、はじめに、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物であるマイカシートを準備する。
本実施形態で用いられるマイカシートは、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物である。軟質マイカは柔軟性が高いため成形性に優れ、高温でも焼失しにくく、保形性にも優れるという特徴を有する。一方、硬質マイカは結晶水の内包量が多く、また、熱反応温度が低いために膨張性に優れるが高温で焼失しやすく耐熱性が低いという特徴を有する。また、焼成硬質マイカは、未焼成の硬質マイカを予め焼成させたものであり、通常、ある程度膨張した状態になる。焼成硬質マイカは、低温においてもある程度の高い反発力を備えることによりシール性に優れ、また、熱劣化後においてはさらに膨張することにより、復元量が向上して著しく優れたシール性を発揮する。
本実施形態のリング状ガスケットの製造においては、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカとを、水等の分散媒に分散させて攪拌混合して抄紙することにより得られる、混抄一体化物であるマイカシートを用いる。その結果、長時間高温にさらされて劣化するときに均質に劣化することにより、高い復元力と高いシール性を保持するリング状ガスケットが得られる。
軟質マイカは軟質マイカ原鉱を鱗片状に叩解することにより得られる。軟質マイカの原鉱は金雲母(プロゴパイト)とも称され、その組成はKMg3(AlSi3)O10(OH)2である。このような軟質マイカの粒度はとくに限定されないが、8~400メッシュ程度であることが混抄一体化性に優れる点から好ましい。このような軟質マイカの耐熱温度は800~1000℃程度であり、硬質マイカの耐熱温度よりも高い。
また、硬質マイカは硬質マイカ原鉱を鱗片状に叩解することにより得られる。硬質マイカの原鉱は白雲母(マスコバイト)とも称され、その組成は(KAl2(AlSi3)O10(OH)2である。なお硬質マイカの粒度もとくに限定されないが、8~400メッシュ程度であることが混抄一体化性に優れる点から好ましい。このような硬質マイカの耐熱温度は600~800℃程度である。
また、焼成硬質マイカは、未焼成の硬質マイカのフレークを、例えば800~1000℃程度の高温で少なくとも一部の結晶水が脱水する程度に焼成することにより得られる。なお焼成硬質マイカのフレークは、シルバーに輝く点で、硬質マイカとは区別される。このような焼成硬質マイカは、高温で熱処理されて少なくとも一部の結晶水が予め除去されており、さらに熱劣化しにくいために、得られるリング状ガスケットの耐熱性が向上する。そのために、焼成硬質マイカを含む混抄一体化物は、熱劣化した後のシール性が著しく高くなる点からとくに好ましい。
ここで、本発明においては、未焼成の軟質マイカと焼成軟質マイカとをまとめて、単に軟質マイカと称する。また、未焼成の硬質マイカを単に硬質マイカと称し、予め焼成処理された硬質マイカを焼成硬質マイカと称する。
このようなマイカシートは、上述したような、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと,必要に応じて用いられるバインダ等の添加剤を所定の配合比で含むマイカ分散液を調製し、通常の抄紙機等によりシートを抄造して集成マイカを形成することにより製造される。
マイカシートは、マイカの総量中、硬質マイカまたは焼成硬質マイカを合計30~70質量%、さらには40~60質量%含有することが好ましい。マイカシート中の硬質マイカまたは焼成硬質マイカの合計割合が高すぎる場合には、高温に長時間さらされたときのシール性が低下する傾向があり、低すぎる場合にはシール性が低下する傾向がある。
また、マイカシートの厚さは特に限定されないが、0.1~0.5mm程度であることが好ましい。マイカシートが厚すぎる場合には、マイカの含有割合の調整が難しかったり、巻き始めや巻き終わりに段差ができやすくなったりする傾向があり、薄すぎる場合には、生産性が低下する傾向がある。
また、マイカシートの密度も特に限定されないが、フランジに組付けたときの密度が2.0~2.8g/cm3、さらには2.3~2.6g/cm3であることが好ましい。
このようなマイカシートは、リング状ガスケットを製造するための積重捲回体を形成するために、帯状に切断されて準備される。
マイカ層の層間に一体化される金属シートは、マイカ層を支持して形状を保形するために用いられる。金属シートとしては、特に限定されないが、厚さ0.002~0.1mmmmのステンレス材、アルミニウム材、等が好ましく用いられる。これらの中では、厚さ0.05mm程度のステンレス箔が耐熱性及び弾性に優れる点からとくに好ましい。
マイカ層の層間に一体化される金属シートはマイカ層を充分に支持すればその量は限定されないが、マイカの総量に対して、5~30質量%、さらには、10~20質量%であることが好ましい。
リング状ガスケットは、複数層巻回されたマイカシートの層間に金属シートを介在させてなる捲回体をリング状に圧縮成形することにより形成される。そして、リング状ガスケットにおいては、シール性を担うマイカ層を露出させるために、マイカシートが外周及び内周に露出するように、金属シートはマイカシート同士の間に介層させるように配する。
次に、リング状ガスケットを製造するための圧縮成形について、詳しく説明する。
図2は、渦巻状に巻かれた帯状のマイカシート1aの層間に帯状の金属シート2を介在させた捲回体5の平面模式図である。図2においては、3重に重ねたマイカシート1aに帯状の金属シート2を重ね、巻回した捲回体5を示している。リング状ガスケットは、このような捲回体を軸方向に加圧する圧縮成形により製造される。
図3は、リング状ガスケットの製造に用いられる圧縮成形金型による圧縮成形を説明する説明図である。捲回体5は、図3に示すように、中央部に円柱状コア21を備えた有底環状金型20に装着される。
有底環状金型20は、キャビティに円筒壁面18と円筒底面19とを備え、その中央部に捲回体5を挿通するための円柱状コア21を備える。
はじめに、捲回体5を有底環状金型20のキャビティ22に収容する。その際、捲回体5の中央部に円柱状コア21を挿通して装着する。
次に、有底環状金型20のキャビティ22に収容された捲回体5を圧縮成形する。圧縮成形はキャビティ22の上方に位置せしめられた雄型23で捲回体5を圧縮することにより行われる。このように圧縮成形することにより、図1に示すようなリング状ガスケット10が製造される。
このようにして得られる本実施形態のリング状ガスケットは、700℃を超えるような高温になる排気管のフランジ部における接続部に使用されるガスケットとして好ましく用いられる。とくには、従来のマイカを用いたリング状ガスケットに比べて、フランジ内に配した後にフランジを締め付けるときに、低荷重で圧縮しても高いシール性を保持し、圧縮後の復元率にも優れるために、Vクランプで低荷重で締結されるターボチャージャーのハウジングの排気管に接続されるリング状ガスケットとして好ましく用いられる。
図4は、一例として、ターボチャージャーにエンジンからの排気を導入させるための、ターボチャージャーハウジングに接続された下流側排気管12にエンジンからの排気を送る上流側排気管11を接続したときのフランジ接続部付近の模式断面図である。
ターボチャージャーを備えるエンジンの排気管は、エンジンのシリンダヘッドに接続される図略の排気マニホールドを備え、排気マニホールドの排気口はターボチャージャーハウジングの排気管と接続される。図4においては、11が排気マニホールドに接続された上流側排気管であり、12がターボチャージャーハウジングに接続された下流側排気管である。また、10はリング状ガスケットであり、上流側排気管11にはフランジ11aが、下流側排気管12にはフランジ12aが接合されている。そして、フランジ11aにはリング状ガスケット10を収容するための環状の凹部11bが形成されており、凹部11bにリング状ガスケット10が嵌合されて収容されている。排気ガスは図中の矢印方向に流れている。
フランジ11a及びフランジ12aは対向するように配置されており、それらの周縁のV字状の周縁にVクランプ15のバンド15aが装着され、ネジ付きトラニオン15bのネジを占めることによって一対のフランジ11a及びフランジ12aを締結している。
凹部11bに収容されたリング状ガスケット10は、Vクランプ15により締結された一対のフランジ11a及びフランジ12aにより圧縮され、排気管の内部を通過するガスが漏れないようにシールしている。すなわち、リング状ガスケット10はフランジ11a及びフランジ12aにそれらの接続部からガスが漏れないように圧縮されて配置されている。そして、排気管が、熱,振動,衝撃等を受けた場合にフランジ11aとフランジ12aとの間に開きが生じた場合には、圧縮されているリング状ガスケット10のマイカ層1が復元して膨張することによって、シール性を維持する。
エンジンの排気管とターボチャージャーの排気管とのフランジの締結には、工数削減や省スペースを目的として、図4に示すように、Vクランプを用いることが多い。Vクランプでの締結は、一般的な排気管の締結に用いられるボルト締結よりも締め付け力が低くなる。具体的には、一例としては、例えば、ボルト3本で締結するボルト締結の締め付け力が20~40kN程度であるのに対して、Vクランプの締め付け力は2~15kN程度である。実施形態のリング状ガスケットを用いることにより、Vクランプを用いて低い締め付け力でフランジを締結してもリング状ガスケットが充分に圧縮されるために、使用の初期の温度が低い環境でも充分に高いシール性を維持する。
また、エンジンを運転後、上流側排気管11及び下流側排気管12に高温の排気ガスが通過するとき、排気ガスの通過により、Vクランプで締結されたフランジ部が700℃を超えるような高温になることがある。このとき、フランジ接続部付近においては、上流側排気管11,下流側排気管12,およびそれらに接続されたフランジ11a及びフランジ12aは熱膨張する。このとき、リング状ガスケット10に含まれるマイカ層1も熱膨張する。マイカ層は、軟質マイカ及び硬質マイカに含まれる結晶水が熱反応により脱水し、脱水時に発生するガスにより、マイカの粒層間が広がって膨張する。このとき、硬質マイカは600~800℃程度で膨張し、軟質マイカは800~1000℃程度で膨張する。
すなわち、硬質マイカ及び軟質マイカは異なる温度に達したときに膨張する。このとき、硬質マイカ及び軟質マイカは混抄一体化されているために、マイカ層全体における膨張は均質になり、密度のばらつきも小さい。そしてこのような膨張によってフランジ接続部は高温時において接続部をしっかりとシールする。一方、焼成硬質マイカは、低温においてもある程度の高い反発力を備えることによりシール性に優れ、また、熱劣化後においてはさらに膨張することにより、復元量が向上して著しく優れたシール性を発揮する。
そして、エンジンの停止によって、上流側排気管11及び下流側排気管12への高温の排気ガスの通過が停止される。そして、排気ガスの通過が停止されることにより、フランジ接続部付近の温度も低下する。このとき、高温によって熱膨張した、上流側排気管11,下流側排気管12,及びそれらに接続されたフランジ11a及びフランジ12aは放熱に伴い収縮し、フランジ11aとフランジ12aとの対向面がわずかに隙間が大きくなったりしやすくなる。このとき、フランジ11aとフランジ12aとの対向面の隙間を埋めるように、圧縮されていたマイカ層が圧縮力を解放する復元力によって膨らんで隙間を埋めるように、フランジ11aとフランジ12aとの位置関係の変化に追従する。また、マイカ層は、その復元力によって、フランジ間に隙間が形成された後もフランジ11aとフランジ12aとの密着性を維持するために、高いシール性を維持する。このとき、マイカ層は軟質マイカと硬質マイカとの混抄一体化されている混合物であるために、復元力によるふくらみも均質であり、密度も均質であるために、フランジ11a及びフランジ12aに対する接触面における面圧の分布も均質になりやすくなる。
はじめに、本実施例で用いたマイカシートについて以下にまとめて説明する。
[マイカシート]
・混抄マイカシートA
未焼成の軟質マイカと焼成硬質マイカとの混合割合を50/50(質量比)にしたスラリーを調整し、混抄することにより製造された、マイカ総量に対して焼成硬質マイカ50質量%を含む、軟質マイカと焼成硬質マイカとを混抄して一体化した厚さ0.15mm、幅16mmの帯状のマイカシート。なお、マイカ質量が約12gになるよう幅で調整した。
・混抄マイカシートB
未焼成の軟質マイカと未焼成の硬質マイカの混合割合を50/50(質量比)にしたスラリーを調整し、混抄することにより製造された、マイカ総量に対して未焼成の硬質マイカ50質量%を含む、未焼成の軟質マイカと未焼成の硬質マイカとを混抄して一体化した厚さ0.15mm、幅16mmの帯状のマイカシート。なお、マイカ質量が約12gになるよう幅で調整した。
・軟質マイカシート
未焼成の軟質マイカのスラリーを抄紙することにより製造された、厚さ0.15mm、幅16mmの帯状のマイカシート。
・硬質マイカシート
未焼成の硬質マイカのスラリーを抄紙することにより製造された、厚さ0.15mm、幅16mmの帯状のマイカシート。
次に、本実施例で用いた評価方法についてまとめて説明する。
(圧縮荷重)
万能試験機を用いて圧縮荷重を評価した。具体的には万能試験機の圧縮治具の定盤上にリング状ガスケットを平置きした。そして、プレート上の圧縮治具で6.5mmから4.5mmになるまで圧縮したときに要した荷重を測定した。また、圧縮を解放した後の高さを、ダイヤルゲージを用いて測定し、圧縮時の高さ4.5mmからの復元量を算出した。
(シール試験)
図5を参照してシール試験方法を説明する。図5(a)はシール試験装置50の正面模式図であり、図5(b)はその上面図である。シール試験50においては、図5(a)及び図5(b)に示すように、6本のM10ボルト・ナット53a~53fに平厚板51,52、4.5mmの高さのストッパー54a~54fを挿通させ、さらに、平厚板51と平厚板52との間にリング状ガスケット10を配置してシール試験装置50を組み立てた。そして、シール試験装置50のM10ボルト・ナット53a~53fをストッパーに当たるまで締付けることにより、リング状ガスケット10でその内部空間を密閉した。 そして、25℃において、平厚板51の中央に設けられた通気口から内部空間にコンプレッサ55で流量計56及び通気管57を通じて5~400kPaの範囲で圧力制御した圧縮空気を送り、内部空間からの1分間当りのエアーのリーク量(漏れ量)(ml/min)を流量計56で測定した。測定サンプルは、未処理の初期状態と、排気管を800℃で50時間加熱した後の熱処理後のものを用いた。
次に、本実施例で用いたリング状ガスケットの製造方法について説明する。
[リング状ガスケットの製造]
上述した帯状の各種マイカシートを所定の長さに切断した。そして、図2に示したような、切断された各種マイカシートと、ステンレス箔(厚さ0.05μm、幅12mm)とを、重ね合わせた。各種マイカシートの組み合わせを表1に示す。そして、図2に示すように重ね合わせた重合体を各種マイカシートが約10mm長くなるように渦巻状に捲回して、内周側及び外周側にマイカシートが露出した捲回体を作製した。
そして、図3に示すような円柱状コアを備える有底のリング状のキャビティを備えた有底環状金型20を準備した。そして、有底環状金型20のリング状のキャビティの円柱状コアに捲回体の中央部の空間に挿入し、キャビティ内に捲回体を配置した。そして、キャビティに一致する雄型23を用いてリング状ガスケットの厚さが約5.9mmになる圧力で捲回体を圧縮した。このような方法により、リング状ガスケットを製造した。
得られたリング状ガスケットは内径約109.5mm、外径約116.3mm、幅約3.4mm、厚さ約5.9mmのリング形状を有していた。そして、各リング状ガスケットを上記試験方法に従って、評価した。
実施例1は焼成硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートAを用いた例であり、実施例2は未焼成の硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートBを用いた例であり、比較例1は軟質マイカシートのみを用いた例であり、比較例2は未焼成の硬質マイカシートのみを用いた例であり、比較例3は軟質マイカシートと未焼成の硬質マイカシートとを積層した例であって、軟質マイカシートと未焼成の硬質マイカシートの質量比が56:44の例である。
結果を下記表1に示す。
Figure 2022077485000002
表1を参照すれば、焼成硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートAを用いた実施例1のリング状ガスケット、及び、未焼成の硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートBを用いた実施例2のリング状ガスケットは、何れも、熱劣化前及び熱劣化処理後の何れにおいても、復元量が大きく、また、熱劣化前及び熱劣化後の何れにおいても200KPa、400KPaのシール試験において空気の漏れ量が少なかった。また、焼成硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートAを用いた実施例1のリング状ガスケットは、未焼成の硬質マイカと軟質マイカとを混抄した混抄マイカシートBを用いた実施例2のリング状ガスケットに比べて、熱劣化前及び熱劣化処理後の何れの特性においても、著しく優れていた。
一方、軟質マイカシートのみを用いた比較例1のリング状ガスケットは熱劣化前及び熱劣化処理後の何れにおいても、復元量が小さく、また、熱劣化前及び熱劣化後の何れにおいても200KPa、400KPaのシール試験において空気の漏れ量が多かった。また、硬質マイカシートのみを用いた比較例2のリング状ガスケットは熱劣化前の復元量は大きかったものの、熱劣化処理後の復元量が小さく、熱劣化後の200KPa、400KPaのシール試験において空気の漏れ量が著しく多かった。また、硬質マイカシートと軟質マイカシートとを積層した比較例3のリング状ガスケットは熱劣化前及び熱劣化後の復元量及び200KPa、400KPaのシール試験における空気の漏れ量は、比較例1及び比較例2よりも改善は見られたものの、混抄マイカシートを用いた実施例よりも顕著に劣っていた。
1 マイカ層
1a マイカシート
2 金属シート
5 捲回体
10 リング状ガスケット
11 上流側排気管
11a フランジ
12 下流側排気管
12a フランジ
15 Vクランプ
15a バンド
15b トラニオン
18 円筒壁面
19 環状底面
20 有底環状金型
21 円柱状コア
22 キャビティ
23 雄型
50 シール試験治具
51 上平厚板
52 下平厚板
53a~53f M10ボルト・ナット
54a~54f ストッパー
55 コンプレッサ
56 流量計
57 通気管

Claims (3)

  1. 複数層巻回されたマイカシートの層間に金属シートを介在させてなる捲回体を圧縮成形して形成されたリング状ガスケットであって、
    前記マイカシートは、軟質マイカと、硬質マイカまたは焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物であることを特徴とするリング状ガスケット。
  2. 前記マイカシートは、前記軟質マイカと前記焼成硬質マイカと、を含む混抄一体化物である請求項1に記載のリング状ガスケット。
  3. 前記マイカシートは、前記硬質マイカまたは前記焼成硬質マイカを合計30~70質量%含有する請求項1または2に記載のリング状ガスケット。
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