JP2022076218A - Ldモジュールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、LDモジュールの製造方法に関する。
特許文献1には、LD(レーザダイオード)素子が発するレーザ光の波長をモニタしながら、狭帯域化素子(透過型グレーティング素子)の位置を調整する方法が開示されている。狭帯域化素子は、LD素子に対して適切な位置に調整されることで、レーザ光の品質を安定させることができる。LD素子および狭帯域化素子は、互いの位置関係が固定されて、LDモジュールを構成する。
上記のようなLDモジュールの製造の際には、狭帯域化素子をLD素子に対して位置決めする際の容易性が求められる。
本発明はこのような事情を考慮してなされ、狭帯域化素子をLD素子に対して位置決めする際の容易性を高めたLDモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るLDモジュールの製造方法は、LD素子および所定の波長帯の光を反射するように構成された狭帯域化素子を備えるLDモジュールの製造方法であって、前記LD素子に所定の駆動電流を供給して単独出力光を出射させ、前記単独出力光が、前記LD素子と前記狭帯域化素子との間で共振するとともに、前記狭帯域化素子によって狭帯域化された状態で出力された狭帯域化光のパワーをモニタし、前記狭帯域化光のパワーが最大となるように前記狭帯域化素子を位置決めする工程を有し、前記駆動電流の値は、前記LD素子が前記単独出力光を出射可能となる閾値電流値よりも大きく、前記単独出力光と前記狭帯域化光とでパワーが等しくなる交点電流値より小さい。
上記態様によれば、狭帯域化光のパワーが最大となる位置が、狭帯域化素子の理想的な位置として定まるため、狭帯域化素子を容易に位置決めすることが可能となる。
ここで、前記駆動電流は、前記狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、前記単独出力光のパワーが95%以下となる値であってもよい。
また、前記駆動電流は、前記狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、前記単独出力光のパワーが80%以下となる値であってもよい。
また、前記LDモジュールは、前記LD素子と前記狭帯域化素子との間に配置され、前記単独出力光を平行光とするコリメートレンズを備えてもよい。
本発明の上記態様によれば、狭帯域化素子をLD素子に対して位置決めする際の容易性を高めたLDモジュールの製造方法を提供することができる。
以下、本実施形態のLDモジュールの製造方法について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、LDモジュール1は、LD素子2と、コリメートレンズ3と、狭帯域化素子4と、を備えている。LDモジュール1の製造時には、LDモジュール1に加えて、センサ5および表示器6を含む調心装置10が構成される。調心装置10は、狭帯域化素子4をLD素子2に対して最適な位置に位置決めするために用いられる。LDモジュール1は、例えば、ファイバレーザ装置の励起光源として用いられる。なお、LDモジュール1の用途はファイバレーザ装置に限定されない。
図1に示すように、LDモジュール1は、LD素子2と、コリメートレンズ3と、狭帯域化素子4と、を備えている。LDモジュール1の製造時には、LDモジュール1に加えて、センサ5および表示器6を含む調心装置10が構成される。調心装置10は、狭帯域化素子4をLD素子2に対して最適な位置に位置決めするために用いられる。LDモジュール1は、例えば、ファイバレーザ装置の励起光源として用いられる。なお、LDモジュール1の用途はファイバレーザ装置に限定されない。
LD素子2は、レーザ光を出射する出射端面2aと、出射端面2aとは反対側の反射端面2bと、を有している。LD素子2は、例えば半導体レーザ素子である。LD素子2には、不図示の電源が電気的に接続される。LD素子2は、電源から駆動電流を供給されることで、駆動電流の大きさに応じたレーザ光(後述の単独出力光L1)を出射端面2aから出射するように構成されている。
コリメートレンズ3は、LD素子2から出射されたレーザ光の進行方向を平行にするように構成されている。
コリメートレンズ3は、LD素子2から出射されたレーザ光の進行方向を平行にするように構成されている。
狭帯域化素子4は、反射面4aを有している。狭帯域化素子4は、所定の波長帯の光を反射面4aにおいて反射し、それ以外の波長帯の光を通過させるように構成されている。反射面4aは、コリメートレンズ3側(LD素子2側)を向いている。狭帯域化素子4としては、ボリュームブラッググレーティング(VBG: Volume Bragg Grating)、ボリュームホログラフィックグレーティング(VHG: Volume Holographic Grating)、ファイバブラッググレーティング(FBG: Fiber Bragg Grating)等を用いることができる。
LDモジュール1は、狭帯域化素子4の反射面4aとLD素子2の反射端面2bとの間で外部共振器を構成する。このような外部共振器は、例えば外部共振器レーザに用いられる。狭帯域化素子4を用いることで、外部共振器レーザが出力するレーザ光の波長スペクトルの半値幅を、例えば0.2~0.5nmに狭帯域化することができる。
レーザ光を有効に狭帯域化するためには、狭帯域化素子4をLD素子2に対して高精度に位置決めすることが求められる。本願発明者らが鋭意検討した結果、狭帯域化素子4を高精度に位置決めするために、LD素子2に供給する駆動電流を適切に設定することが有効であると判った。以下、より詳しく説明する。
なお、以下の説明では、LD素子2が単独で出力したレーザ光を特に「単独出力光L1」という。また、単独出力光L1が、LD素子2および狭帯域化素子4により構成される外部共振器により共振され、狭帯域化素子4によって狭帯域化されてLDモジュール1から出射されたレーザ光を特に「狭帯域化光L2」という。
なお、以下の説明では、LD素子2が単独で出力したレーザ光を特に「単独出力光L1」という。また、単独出力光L1が、LD素子2および狭帯域化素子4により構成される外部共振器により共振され、狭帯域化素子4によって狭帯域化されてLDモジュール1から出射されたレーザ光を特に「狭帯域化光L2」という。
図2に、試験例1-1~1-4の出力特性を示す。図2の横軸はLD素子2に供給する駆動電流であり、図2の縦軸はレーザ光のパワーである。試験例1-1のデータは、狭帯域化素子4を設けずに、LD素子2から出射されるレーザ光(すなわち単独出力光L1)のパワーをそのまま測定した結果である。試験例1-2のデータは、狭帯域化素子4としてのVBGおよびLD素子2によって、結合効率が60%の外部共振器を構成し、VBGから出射されるレーザ光(すなわち狭帯域化光L2)のパワーを測定した結果である。「結合効率」とは、レーザ光がVBGの光軸と結合する割合を示している。試験例1-3、1-4のデータも、結合効率がそれぞれ70%、80%であること以外は、試験例1-2と同様である。なお、結合効率は、LD素子2とVBGとの位置合わせ精度によって変化する。
図2に示すように、試験例1-1~1-4のいずれのデータについても、駆動電流がゼロ付近では、パワーがゼロとなっている。これは、駆動電流が小さすぎるとレーザ発振しないためである。駆動電流を徐々に上昇させていくと、ある電流値においてレーザ発振が開始されてパワーがゼロより大きくなる。このときの駆動電流の値を、「閾値電流値」という。試験例1-1の閾値電流値は1.45[A]である。これに対して、試験例1-2~1-4の閾値電流値は、0.97~1.01[A]である。このように、狭帯域化素子4を用いることで、閾値電流値が小さくなる。
閾値電流値付近の、駆動電流が小さい領域では、LD素子2を単独で駆動させている試験例1-1よりも、狭帯域化素子4を用いた試験例1-2~1-4の方が、パワーが大きくなる。一方、試験例1-2~1-4では、試験例1-1よりもスロープ効率が小さい。スロープ効率とは、駆動電流を上げたときにレーザ光のパワーが上がる割合(すなわち、図2の閾値電流値以上の領域における各グラフの傾き)である。試験例1-2~1-4は、試験例1-1よりも閾値電流値およびスロープ効率が小さいため、試験例1-1のグラフとある点において交わる。このように、狭帯域化素子4を用いた場合(試験例1-2~1-4)と用いていない場合(試験例1-1)とで、レーザ光のパワーが同等になるときの駆動電流の値を、本明細書では交点電流値Cという。例えば図2に示すように、試験例1-4の場合の交点電流値Cは、約6.66[A]である。図2での表示は省略するが、試験例1-2の交点電流値Cは8.60[A]であり、試験例1-3の交点電流値は7.38[A]である。
ここで、駆動電流の大きさをDとし、LD素子2を単独で駆動させたときのレーザ光のパワーをP1とし、LD素子2および狭帯域化素子4により構成された外部共振器を駆動させたときのレーザ光のパワーをP2とすると、以下の条件式(i)、(ii)が成り立つ。
D≦Cのとき、P1≦P2 …(i)
D>Cのとき、P1>P2 …(ii)
条件式(i)、(ii)は、LD素子2と狭帯域化素子4との結合効率の大きさや、狭帯域化素子4の種類に関わらず成立する。
D≦Cのとき、P1≦P2 …(i)
D>Cのとき、P1>P2 …(ii)
条件式(i)、(ii)は、LD素子2と狭帯域化素子4との結合効率の大きさや、狭帯域化素子4の種類に関わらず成立する。
以上の関係を考慮すると、LD素子2を単独で駆動した場合の閾値電流値よりも大きく、かつ、交点電流値Cよりも十分に小さい閾値電流値付近の値の駆動電流DをLD素子2に供給し、LDモジュール1が出射するレーザ光のパワーが最大となるように狭帯域化素子4の位置を調整するとよい。このような調整方法により、狭帯域化素子4のLD素子2に対する位置をより容易かつ正確に調整することが可能となる。そして、狭帯域化素子4の位置を正確に調整することで、LD素子2と狭帯域化素子4との間においてより広い波長範囲でレーザ光を共振させ、レーザ光の出力を高効率化および安定化させることができる。
以下では、LD素子2および狭帯域化素子4を用いて外部共振器を構成した場合の閾値電流値およびスロープ効率について、定量的に説明する。
狭帯域化素子4を用いず、LD素子2を単独で駆動した場合の閾値電流値をIthとする。LD素子2の出射端面2aにおける反射率をRf、反対側の反射端面2bにおける反射率をRb、狭帯域化素子4の反射面4aにおける反射率をRvとする。レーザ光が狭帯域化素子4の光軸と結合する割合(先述の結合効率)をηとする。狭帯域化素子4を用いた外部共振器の、狭帯域化素子4における実効的な反射率をReffとする。このとき、下記数式(1)が成り立つ。
狭帯域化素子4を用いず、LD素子2を単独で駆動した場合の閾値電流値をIthとする。LD素子2の出射端面2aにおける反射率をRf、反対側の反射端面2bにおける反射率をRb、狭帯域化素子4の反射面4aにおける反射率をRvとする。レーザ光が狭帯域化素子4の光軸と結合する割合(先述の結合効率)をηとする。狭帯域化素子4を用いた外部共振器の、狭帯域化素子4における実効的な反射率をReffとする。このとき、下記数式(1)が成り立つ。
数式(1)より、狭帯域化素子4の反射率Rvが大きくなるほど、Reffも大きくなる。
LD素子2を単独で駆動した際のミラーロス(LD素子2の端面における反射による光損失)をαmと表す。LD素子2および狭帯域化素子4により外部共振器を構成した場合のミラーロス(外部共振器の端面における反射による光損失)をαm,effと表す。LD素子2の共振器長をLcav_chipと表す。αmおよびαm,effは、下記数式(2)、(3)により表される。
LD素子2を単独で駆動した際のミラーロス(LD素子2の端面における反射による光損失)をαmと表す。LD素子2および狭帯域化素子4により外部共振器を構成した場合のミラーロス(外部共振器の端面における反射による光損失)をαm,effと表す。LD素子2の共振器長をLcav_chipと表す。αmおよびαm,effは、下記数式(2)、(3)により表される。
数式(2)、(3)より、RfおよびReffが大きいほど、ミラーロス(αmおよびαm,eff)が小さくなる。ミラーロスが小さいほど、共振器端面における反射により生じる光損失が小さくなり、レーザ発振に必要な閾値電流値も小さくなる。つまり、外部共振によるレーザ駆動の閾値電流値は、LD素子2の単独駆動に比べて、小さくなる。
次に、スロープ効率について考える。LD素子2を単独で駆動させた場合のスロープ効率をSlとし、LD素子2および狭帯域化素子4により外部共振器を構成した場合のスロープ効率をSvとする。Svは、低下因子Fにより、Slよりも小さくなる。すなわち、Sv=F×Slとなる。低下因子F(Lowering Factor)は、以下の数式(4)により表される。
数式(4)において、αiは、LD素子2の内部ロスを表す。低下因子Fは1未満の値となるため、Sv<Slとなる。また、低下因子FはReffが大きいほど小さい値となるから、狭帯域化素子4の反射面4aにおける反射率Rvが大きいほど、スロープ効率は低下する。
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
発光幅180μm、共振器長Lcav_chip:4mm、出射端面2aにおける反射率Rf:1.1%、反射端面2bにおける反射率Rb:98%のLD素子2を用いた。コリメートレンズ3として、ファスト軸コリメートレンズ(FAC)を用いた。まず、LD素子2を単独で駆動した際の出力特性を調べるため、狭帯域化素子4を配置せずに、コリメートレンズ3を通ったレーザ光をセンサ5および表示器6によってモニタした。センサ5として、汎用型サーマルセンサを用いた。表示器6として、汎用型レーザパワーメータを用いた。LD素子2から出射された単独出力光L1はコリメートレンズ3を通り、センサ5に入射する。表示器6はセンサ5に接続されており、センサ5が検出したレーザ光のパワーを表示する。結果を図3に示す。図3に示すように、LD素子2の単独駆動時の閾値電流値は1.21[A]であった。
発光幅180μm、共振器長Lcav_chip:4mm、出射端面2aにおける反射率Rf:1.1%、反射端面2bにおける反射率Rb:98%のLD素子2を用いた。コリメートレンズ3として、ファスト軸コリメートレンズ(FAC)を用いた。まず、LD素子2を単独で駆動した際の出力特性を調べるため、狭帯域化素子4を配置せずに、コリメートレンズ3を通ったレーザ光をセンサ5および表示器6によってモニタした。センサ5として、汎用型サーマルセンサを用いた。表示器6として、汎用型レーザパワーメータを用いた。LD素子2から出射された単独出力光L1はコリメートレンズ3を通り、センサ5に入射する。表示器6はセンサ5に接続されており、センサ5が検出したレーザ光のパワーを表示する。結果を図3に示す。図3に示すように、LD素子2の単独駆動時の閾値電流値は1.21[A]であった。
次に、狭帯域化素子4をLD素子2に対して位置決めする工程(位置決め工程)を行った。狭帯域化素子4として、波長976nmにおける反射面4aの反射率Rv:10%のVBGを用いた。このような狭帯域化素子4を有するLDモジュール1を用いて、外部共振器レーザを作製した。また、外部共振器レーザから出射されるレーザ光をモニタしながら狭帯域化素子4の位置調整を行うため、センサ5および表示器6を用いて、調心装置10を構成した(図1参照)。
調心装置10は、図4(a)に示すような保持部7を有している。保持部7は、狭帯域化素子4を保持している。本実施例では、保持部7として、狭帯域化素子4を吸着するコレットを用いた。ここで、LD素子2に対する狭帯域化素子4の姿勢および位置は、図4(b)に示すように、(X、Y、Z、θx、θy、θz)の6つのパラメータにより定義される。
Zは、LD素子2の光軸に沿う方向(Z軸方向)における狭帯域化素子4の位置(座標)である。Xは、Z軸に直交する任意の一方向(X軸方向)における位置である。Yは、Z軸およびX軸の双方に直交する方向(Y軸方向)における位置である。θxは、X軸回りの狭帯域化素子4の角度(姿勢)である。θyは、Y軸回りの狭帯域化素子4の角度である。θzは、Z軸回りの狭帯域化素子4の角度である。
パラメータθzは、LDモジュール1の外部共振の特性に与える影響は小さい。一方、残りの5つのパラメータ(X、Y、Z、θx、θy)は、LDモジュール1の外部共振の特性に大きく影響する。そこで、表示器6に表示される狭帯域化光L2のパワーが最大となるように、保持部7を用いて狭帯域化素子4を平行移動または回転移動させて、上記5つのパラメータの最適値を求めた。例えばパラメータXの場合は、保持部7を用いて狭帯域化素子4をX軸方向に平行移動させて、狭帯域化光L2のパワーが最大となる位置を、パラメータXの最適値とする。同様に、パラメータθxの場合は、保持部7を用いて狭帯域化素子4をX軸回りに回転させて、狭帯域化光L2のパワーが最大となる角度を、パラメータθxの最適値とする。各パラメータの最適値を求める際のLD素子2の駆動電流は、LD素子2の単独駆動時の閾値電流値(1.21[A])よりも大きい2[A]とした。
狭帯域化素子4の位置および姿勢を、各パラメータが上記のように求められた最適値となるように固定し、狭帯域化素子4の位置調整を完了した。その後、LD素子2が出射するレーザ光(単独出力光L1)のピーク波長を、駆動電流の値またはLD素子2の温度(冷却条件)を変えることで調整して、狭帯域化素子4によって狭帯域化される波長範囲(以下、波長ロック範囲という)を調べた。実施例1においては、波長ロック範囲は狭帯域化素子4の反射波長に対して-8.6nm~13.6nmの合計22.2nmの範囲となった。
(比較例)
図5に示すような調心装置100を構成した。調心装置100は、散乱光モニタ101、ケーブル102、およびスペクトラムアナライザ103を有している。散乱光モニタ101は、センサ5の測定面で反射した一部の散乱光を受光する。ケーブル102は、シングルモード光ファイバを含んでおり、散乱光モニタ101で受光された散乱光をスペクトラムアナライザ103に入力する。スペクトラムアナライザ103は、入力された散乱光の波長スペクトルを解析する。狭帯域化素子4によってレーザ光が狭帯域化されると、狭帯域化素子4の反射波長帯と一致したピークが波長スペクトルに現れる。逆に言うと、スペクトラムアナライザ103によって解析された波長スペクトルに、狭帯域化素子4の反射波長帯と一致したピークが表れるか否かにより、レーザ光が狭帯域化素子4によって狭帯域化されたか否かを確認できる。
図5に示すような調心装置100を構成した。調心装置100は、散乱光モニタ101、ケーブル102、およびスペクトラムアナライザ103を有している。散乱光モニタ101は、センサ5の測定面で反射した一部の散乱光を受光する。ケーブル102は、シングルモード光ファイバを含んでおり、散乱光モニタ101で受光された散乱光をスペクトラムアナライザ103に入力する。スペクトラムアナライザ103は、入力された散乱光の波長スペクトルを解析する。狭帯域化素子4によってレーザ光が狭帯域化されると、狭帯域化素子4の反射波長帯と一致したピークが波長スペクトルに現れる。逆に言うと、スペクトラムアナライザ103によって解析された波長スペクトルに、狭帯域化素子4の反射波長帯と一致したピークが表れるか否かにより、レーザ光が狭帯域化素子4によって狭帯域化されたか否かを確認できる。
図6に、狭帯域化素子4が無い状態におけるレーザ光(すなわち単独出力光L1)の波長スペクトルをす。図7に、狭帯域化素子4を配置した状態におけるレーザ光(すなわち狭帯域化光L2)の波長スペクトルを示す。単独出力光L1の波長スペクトル(図6)と比較して、狭帯域化光L2の波長スペクトル(図7)では、ピーク波長帯が狭くなっていること(すなわち狭帯域化されていること)が判る。
比較例では、駆動電流を8[A]とし、スペクトラムアナライザ103を用いて波長スペクトルを観察しながら各パラメータ(X、Y、Z、θx、θy)を変化させた。そして、レーザ光の波長スペクトルが狭帯域化素子4によって狭帯域化される各パラメータの範囲を調べ、当該範囲の中央値を最適な値として採用した。例えばパラメータXについては、保持部7を用いて狭帯域化素子4をX軸方向に移動させ、レーザ光の波長スペクトルが狭帯域化される最大のX座標(Xmax)および最小のX座標(Xmin)を調べる。そして、XmaxとXminとの間の中央値を、パラメータXの最適値とする。この手順を5つのパラメータ(X、Y、Z、θx、θy)のそれぞれについて行うことで、各パラメータの最適値を求めた。
各パラメータ(X、Y、Z、θx、θy)が、上記の手順で求められた最適値になるように狭帯域化素子4を固定し、位置調整を完了した。この状態で、実施例と同様に波長ロック範囲を調べると、波長ロック範囲は狭帯域化素子4の反射波長に対して-7.0nm~11.0nmの合計18nmとなった。
上記の通り、比較例の波長ロック範囲(合計18nm)に対して、実施例の波長ロック範囲(合計22.2nm)は広くなった。これは、実施例のほうが比較例よりも狭帯域化素子4の位置調整が正確であったことを意味する。
(実施例2)
LD素子2に供給する駆動電流の値を1~8[A]の範囲で変化させ、狭帯域化素子4の位置(パラメータθx)を調整する際のパワー変動を測定した。本実施例では、単独駆動時の閾値電流値Ith:1.2[A]、駆動電流Dを18[A]とした際のピーク波長:980nm、出射端面2aにおける反射率Rf:1.1%、のLD素子2を用いた。また、狭帯域化素子4として、波長976nmにおける反射面4aの反射率Rv:10%のVBGを用いた。駆動電流が1~4[A]の結果を図8に示し、駆動電流が5~8[A]の結果を図9に示す。
LD素子2に供給する駆動電流の値を1~8[A]の範囲で変化させ、狭帯域化素子4の位置(パラメータθx)を調整する際のパワー変動を測定した。本実施例では、単独駆動時の閾値電流値Ith:1.2[A]、駆動電流Dを18[A]とした際のピーク波長:980nm、出射端面2aにおける反射率Rf:1.1%、のLD素子2を用いた。また、狭帯域化素子4として、波長976nmにおける反射面4aの反射率Rv:10%のVBGを用いた。駆動電流が1~4[A]の結果を図8に示し、駆動電流が5~8[A]の結果を図9に示す。
図8、図9の横軸はθxの値である。図8、図9の縦軸は、θxを変化させた際に最大となるレーザ光のパワーを100%としたときの、各θxの値に対するパワー比率である。
図8では、θx=-0.06°ときに、レーザ光のパワーが最大となっている。一方、図9では、θx=-0.12°およびθx=-0.01°のときに、レーザ光のパワーが最大となっている。
図8では、θx=-0.06°ときに、レーザ光のパワーが最大となっている。一方、図9では、θx=-0.12°およびθx=-0.01°のときに、レーザ光のパワーが最大となっている。
ここで、図8、図9における「非波長ロック範囲」とは、レーザ光の発振波長が狭帯域化素子4によってロックされていない範囲である。非波長ロック範囲では、LD素子2が出射した単独出力光L1のパワーがほぼそのまま測定される。狭帯域化素子4の位置が非波長ロック範囲にある場合、狭帯域化素子4が最適な位置から大きく離れている。図9に示すように、駆動電流が5~8[A]の場合には、非波長ロック範囲においてレーザ光のパワーが最大となっている。このため、レーザ光のパワーだけをモニタして狭帯域化素子4の位置を調整しても、狭帯域化素子4を最適な位置に配置することができない。一方、図8に示すように、駆動電流が1~4[A]の場合には、レーザ光のパワーだけをモニタし、パワーが最大となる位置(図8ではθx=-0.06°)を求めれば、狭帯域化素子4を最適な位置に配置することができる。
図8、図9のグラフの相違について、より詳しく説明する。駆動電流が5~8[A]において、非波長ロック範囲におけるパワーが波長ロック範囲におけるパワーよりも大きくなった原因は、先述の条件式(ii)により説明できる。つまり、駆動電流Dの値が、交点電流値Cよりも大きいため、狭帯域化素子4により狭帯域化されたレーザ光(狭帯域化光L2)のパワーを、LD素子2の単独出力光L1のパワーが上回ってしまったためである。これに対して、駆動電流が1~4[A]の場合には、駆動電流Dの値が交点電流値Cより小さいことで、狭帯域化光L2のパワーのほうが、単独出力光L1のパワーより大きくなった。以上のことから、狭帯域化素子4の位置を調整する際の駆動電流Dを、交点電流値Cより小さくすることの優位性が確認された。
特に、駆動電流を1~3[A]とした場合には、非波長ロック範囲におけるパワー(すなわち単独出力光L1のパワー)を、狭帯域化光L2のパワーの最大値(すなわち、狭帯域化素子4が最適な位置にあるときの狭帯域化光L2のパワー)が大きく上回る。具体的には、駆動電流Dが3[A]の場合には、狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、単独出力光L1のパワーが95%以下となる。また、駆動電流Dが2[A]の場合には、狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、単独出力光L1のパワーが80%以下となる。このように、単独出力光L1のパワーと狭帯域化光L2のパワーの最大値との差が大きいほど、狭帯域化素子4が最適な位置から微小にずれたときのパワーの減少量が大きい。したがって、LDモジュール1から出射されるレーザ光のパワーをモニタすることで、より容易かつ正確に狭帯域化素子4の最適な位置を求めることが可能である。
なお、駆動電流が1[A]の場合には、LD素子2の単独駆動時の閾値電流値Ith:1.5[A]よりも駆動電流の値が小さいが、狭帯域化素子4およびLD素子2により外部共振器を構成することで閾値電流値が下がるため、駆動電流がIthより小さくてもレーザ発振する。しかしながら、外部共振器を構成した場合の閾値電流値は、Ithや狭帯域化素子4の反射率に左右されるため、その値を正確に予測することが難しい。この理由により、駆動電流をIth以下の値に設定して狭帯域化素子4の位置決め工程を行うことは好ましくない。
以上を総合すると、好ましいLDモジュール1の製造方法は、LD素子2に所定の駆動電流Dを供給して単独出力光L1を出射させ、単独出力光L1がLD素子2と狭帯域化素子4との間で共振するとともに、狭帯域化素子4によって狭帯域化された状態で出力された狭帯域化光L2のパワーをモニタし、狭帯域化光L2のパワーが最大となるように狭帯域化素子4を位置決めする工程を有する。そして、駆動電流Dの値は、LD素子2が単独出力光L1を出射可能となる閾値電流値Ithの値よりも大きく、単独出力光L1と狭帯域化光L2とでパワーが等しくなる交点電流値Cより小さい。このような製造方法によれば、狭帯域化光L2のパワーが最大となる位置が、狭帯域化素子4の理想的な位置として定まるため、狭帯域化素子4を容易に位置決めすることが可能となる。
また、駆動電流は、狭帯域化光L2のパワーの最大値を100%としたとき、単独出力光L1のパワーが95%以下となる値であることが好ましい。この場合、狭帯域化素子4が理想的な位置からずれたときの狭帯域化光L2のパワーの減少量が大きくなり、より容易に狭帯域化素子4を理想的な位置に位置決めしやすくなる。
また、駆動電流は、狭帯域化光L2のパワーの最大値を100%としたとき、単独出力光L1のパワーが80%以下となる値であることがより好ましい。この場合、狭帯域化素子4が理想的な位置からずれたときの狭帯域化光L2のパワーの減少量がさらに大きくなり、さらに容易に狭帯域化素子4を理想的な位置に位置決めしやすくなる。
また、LDモジュール1は、LD素子2と狭帯域化素子4との間に配置され、単独出力光L1を平行光とするコリメートレンズ3を備えてもよい。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態および実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施例では狭帯域化素子4としてVBGを用いたが、VBG以外の狭帯域化素子4(例えばVHG、FBG)を用いても、同様の効果が得られる。
また、前記実施形態において説明したLDモジュール1の製造方法を、LDモジュール1を励起光源とするファイバレーザ装置に応用してもよい。この場合、ファイバレーザ装置の製造方法は、前記実施形態で説明したように狭帯域化素子4をLD素子2に対して位置決めしてLDモジュール1を構成する工程と、LDモジュール1と増幅用光ファイバとを光学的に接続する工程と、を少なくとも有する。
また、前記実施形態において説明したLDモジュール1の製造方法を、LDモジュール1を励起光源とするファイバレーザ装置に応用してもよい。この場合、ファイバレーザ装置の製造方法は、前記実施形態で説明したように狭帯域化素子4をLD素子2に対して位置決めしてLDモジュール1を構成する工程と、LDモジュール1と増幅用光ファイバとを光学的に接続する工程と、を少なくとも有する。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
1…LDモジュール 2…LD素子 3…コリメートレンズ 4…狭帯域化素子 C…交点電流値 D…駆動電流 L1…単独出力光 L2…狭帯域化光
Claims (4)
- LD素子および所定の波長帯の光を反射するように構成された狭帯域化素子を備えるLDモジュールの製造方法であって、
前記LD素子に所定の駆動電流を供給して単独出力光を出射させ、前記単独出力光が、前記LD素子と前記狭帯域化素子との間で共振するとともに、前記狭帯域化素子によって狭帯域化された状態で出力された狭帯域化光のパワーをモニタし、前記狭帯域化光のパワーが最大となるように前記狭帯域化素子を位置決めする工程を有し、
前記駆動電流の値は、前記LD素子が前記単独出力光を出射可能となる閾値電流値よりも大きく、前記単独出力光と前記狭帯域化光とでパワーが等しくなる交点電流値より小さい、LDモジュールの製造方法。 - 前記駆動電流は、前記狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、前記単独出力光のパワーが95%以下となる値である、請求項1に記載のLDモジュールの製造方法。
- 前記駆動電流は、前記狭帯域化光のパワーの最大値を100%としたとき、前記単独出力光のパワーが80%以下となる値である、請求項1または2に記載のLDモジュールの製造方法。
- 前記LDモジュールは、前記LD素子と前記狭帯域化素子との間に配置され、前記単独出力光を平行光とするコリメートレンズを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のLDモジュールの製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2020186533A JP7495868B2 (ja) | 2020-11-09 | Ldモジュールの製造方法 |
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