JP2022074726A - 抗菌剤組成物及びその製造方法、並びに抗菌フィルター及び抗菌シート - Google Patents
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Abstract
【課題】抗菌性能と経済性に優れた抗菌剤組成物及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の抗菌剤組成物は、次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトを含有する。本発明の抗菌剤組成物の製造方法は、酸化マグネシウムと塩化アルミニウムを原料とし、原料中の結晶水を除いた固形分の質量の和を1としたときに、水の質量と原料中の結晶水の質量の和が1以下になるように調整した水を加えて混合した後に、養生することにより塩素含有ハイドロタルサイトを製造する工程と、製造された塩素含有ハイドロタルサイトに次亜塩素酸イオンまたは亜塩素酸イオンを担持させる工程を備えた。【選択図】図1
Description
本発明は、新規の抗菌剤組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた抗菌機能を有する製品に関する。
2019年末に中国武漢市から発生した新型コロナウィルス(COVID-19)は、数ヶ月で世界中に感染拡大を生じて、大きな被害をもたらしている。米国ジョンズ・ホプキンス大の集計では、2020年10月30日現在、世界の感染者数は4492万人となっている。1日あたりの新規感染者数が多いのは、米国7万7000人、インド4万7000人、フランス4万人となっており、全世界のこれまでの死者数は118万人にも及ぶ。また、新型コロナウィルスによる感染は、健康被害のみならず、世界経済に大きな打撃を及ぼしている。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、我が国では、マスク、抗菌剤スプレー、除菌ペーパー製品など、衛生製品の需要が大きく高まってきており、一時期はこれらの製品が品不足になり、入手困難となった。また、この状況は、アメリカ、イギリスなど、海外の主要国でも同様である。パンデミックによる、衛生製品の急激な需要増加に対応するために、効果に優れて、経済性の高い抗菌剤製品の開発が望まれている。
近年、抗菌剤の分野では、有機系の抗菌剤より安全性が高く、永続性に優れた金属イオンを担持させた無機系抗菌剤が主体となっている。金属イオンの中では、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオンの殺菌性、抗菌性が強いことが古くから知られている。中でも、銀イオンの殺菌性、抗菌性が、最も優れている。このため、現状では、ゼオライト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウムなどの多孔質体に銀イオンを担持させ、抗菌剤として使用する製品が主体となっている。
一方、新型コロナウィルス感染予防用の消毒剤、殺菌剤として、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液、次亜塩素水等が使用されている。次亜塩素酸ナトリウムは、分解の際に強力な酸化作用を示す発生期の酸素を放出し、強い殺菌力を示す。
NaClO → NaCl + O
市販の次亜塩素酸ナトリウムNaClO溶液は、有効塩素濃度を、5%、6%、10%、12%にしたものである。
NaClO → NaCl + O
市販の次亜塩素酸ナトリウムNaClO溶液は、有効塩素濃度を、5%、6%、10%、12%にしたものである。
同種の消毒剤として次亜塩素水がある。次亜塩素水は、塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。現在、市販されている次亜塩素水は、次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度とは比較ができない、有効塩素量60mg/kg以下の極めて濃度が薄いものである。
次亜塩素酸ナトリウムは、水道水の殺菌剤としても、日常的に使用されている安価で有用な薬剤である。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムは、常温で不安定な性質をもち、密閉容器中に保管しても、例えば、有効塩素濃度12%の溶液は、温度30℃で2ヶ月保管した場合には有効塩素濃度が60%まで減少する。また、環境中では比較的短時間に揮発して、残留しない特徴をもっている。
さらに、次亜塩素酸ナトリウムは、環境中では分解して、塩素ガスが発生するため、密閉空間で使用するためには、塩素ガス中毒が発生しないよう、濃度の調整を行う必要がある。
次亜塩素酸を含む化合物として、次亜塩素酸のカルシウム塩Ca(ClO)2に、塩化カルシウムCaCl2と水酸化カルシウムCa(OH)2を不純物として含有するさらし粉がある。さらし粉には濃度の異なる三種の製品があり、有効塩素濃度の30~35%の普通さらし粉、60~70%の高度さらし粉、10%の液状品がある。さらし粉は密閉すると長期保管が可能である。しかしながら、日光、熱、水により、分解しやすく、強塩基性の性質をもつ。また、アンモニア塩、一部の有機物質、金属塩と激しく反応し、発火する性質を有する危険物質であり、取り扱いには注意を要する。
亜塩素酸ナトリウムNaClO2は、次亜塩素酸ナトリウムより、酸化力は弱く、刺激臭が少ない、金属腐食が少ないなどの特徴をもつ。亜塩素酸ナトリウムは、漂白剤、殺菌用の食品添加物として、古くから使用されている。亜塩素酸ナトリウムは常温では安定であるが、環境中では日光、熱、水により、分解しやすく、また、酸化力が強いため取り扱いには注意を要する。
このように、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉、亜塩素酸ナトリウムは、安価で有用な抗菌剤、殺菌剤であるが、取り扱い、長期保管が困難であり、また、環境中では比較的短時間に揮発、分解するため、抗菌・殺菌効果を永続させることは困難であるという問題点があった。
ハイドロタルサイトは、構造式[Mg2+
1-xAl3+
x(OH)2]x+[(An-)x/n・mH2O)x-、ここで、An-:n価のアニオン、0.20≦x≦0.33、0≦m<1で表される無機陰イオン交換体である。
ハイドロタルサイトは、産業分野では、塩化ビニールやポリオレフィンの安定剤、プラスティックの難燃剤として、主に使用されている。また、人体にも無害であるため、胃酸による粘膜を保護するための制酸剤として胃腸薬に利用されている。また、ハイドロタルサイトの陰イオン交換機能を利用して、水処理、汚染土壌処理用の吸着剤としても使用されている。
これまでに、ハイドロタルサイトを利用した抗菌剤が開発されている。それは、ハイドロタルサイトのマグネシウムイオンの一部を、亜鉛、亜鉛などの2価の金属イオンに置換したものである。またハイドロタルサイトに銀のアニオン化合物を担持させて、抗菌剤として使用する方法についても提案されている。
以上に述べたように、近年、抗菌剤の分野では、永続性に優れた金属イオンを担持させた無機系抗菌剤が主体となっている。ゼオライト、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウムなどの多孔質体に銀イオンを担持させた、抗菌剤が多く使われている。しかしながら、これらの抗菌剤は高価であり、また金属イオンが担持されているため、金属イオンの放出により抗菌性を効果的に発現することが難しいという問題点があった。
また、次亜塩素酸ナトリウム、さらし粉、亜塩素酸ナトリウムは安価で、優れた効果をもつ消毒剤、抗菌・殺菌剤であるが、環境中では不安定であり、保管の困難さ、効果の永続性に課題があった。
特許文献1には、ゼオライトの陽イオン交換容量の40%以上を、抗菌性を有する金属イオンで交換した抗菌性組成物および、製造方法について記載されている。この文献では、ゼオライトとしてはA型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトなどを使用しており、また、陽イオン交換容量の40%以上を銀イオンに交換しなければ抗菌性が確認できないとの記載がある。銀を用いているため優れた効果をもつが、抗菌剤としては高価となってしまうという課題がある。
特許文献2には、多孔質なアルミナを母体として、表面にアルミノケイ酸塩の皮膜を生成し、これに銀イオンを担持させた抗菌剤について記載されている。この文献では金属イオンとして、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛などを用いている。この技術では、特許文献1の抗菌剤では、金属イオンの放出速度が遅く、十分な抗菌性能を発揮するのに多量の抗菌剤を要する課題を改良するため、多孔質なアルミナの表面にアルミノケイ酸塩の皮膜を生成し、これに金属イオンを担持させる方法を提案している。この方法では、担持できる金属イオン量が少ないため効果の永続性、また、経済性の課題がある。
特許文献3には、銀担持ゼオライトと、銀溶出向上剤である硫酸ナトリウムを組み合わせた抗菌剤組成物について記載されている。原理的にはナトリウムイオンとイオン交換により、銀イオンの放出が促進されるものであるが、硫酸ナトリウムを混合すると銀担持ゼオライトが少量でも一定の抗菌効果が得られ、製剤色が黒色に変化しない有利な特徴がある。
特許文献4には、ハイドロタルサイトにアニオン性銀イオンを含有した抗菌剤について記載されている。当該文献によれば、この技術は水溶液中での銀イオンの溶出が少なく安全性に優れ、かつ抗菌性、耐熱性、白色度に優れる特徴をもっている。また、ハイドロタルサイト類化合物の層構造の一部に銅及び/又は亜鉛を含有する抗菌剤についても記載されている。本技術は金属イオンによる抗菌性を用いたハイドロタルサイト抗菌剤に関するもので、経済性に課題がある。
特許文献5には、ハイドロタルサイトの構造の一部を、亜鉛などの2価金属に置き換えたマグネシウム-亜鉛ハイドロタルサイト類化合物に、銀の錯体など、陰イオン金属錯体を担持させた抗菌剤について記載されている。金属イオンによる抗菌性を用いたハイドロタルサイト抗菌剤の応用技術である。しかし、金属イオンは層構造体を構成しているため溶出せず、大きな効果は期待することは難しいと思われる。
この文献には、過塩素酸イオンを担持したハイドロタルサイトについて記載されている。従来から、含ハロゲン樹脂の加工時の熱安定性と、低温劣化防止効果を有するため、過塩素酸イオンを担持させたハイドロタルサイトが、樹脂用添加剤として使用されている。過塩素酸は塩素酸の中では安定度が高く、酸化力が小さいため抗菌性が低い物質である。過塩素酸化合物は、消防法において、その塩類は危険物第1類に分類されている。過塩素酸は人体への影響も大きく、一般的に使用する製品に使用する化学物質としては適さない。
特許文献6には、希釈した次亜塩素酸水溶液を濃度200~300ppmに希釈した水溶液をカルボキシビニールモノマー、モンモリトナイト、バーミキュライトなどの多孔質体に含有させ、これを消臭抗菌シートに含有させたものについて記載されている。しかし、含有する次亜塩素酸濃度が低いため、抗菌効果、効果の永続性が低いものと考えられる。
このように、これまでに種々の抗菌剤に関する技術改良と研究が行われてきた。しかしながら、これらの抗菌剤は高価であり、また金属イオンが吸着担持されているため、金属イオンの放出による抗菌性を効果的に発現させることが難しいという問題点があった。
本発明が解決しようとする課題は、抗菌性能と経済性に優れた抗菌剤組成物及びその製造方法を提供することである。さらには、製造時、廃棄後の環境負荷の小さい抗菌剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンを担持したハイドロタルサイトが、環境中においても比較的長期間安定性を保ち、抗菌性を保持することを見出した。また、抗菌成分である次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンの放出速度を調整する方法を見出し、本発明に至った。
本発明の抗菌剤組成物は、抗菌成分である次亜塩素酸、亜塩酸イオンをハイドロタルサイトに担持させることで製造することができる。次亜塩素酸イオン、亜塩酸イオンを担持させる方法としては、塩素含有ハイドロタルサイトまたは硝酸含有ハイドロタルサイトを、次亜塩素酸イオン、亜塩酸イオンを含む水溶液中で接触させて、イオン交換することにより製造することができる。また、炭酸含有ハイドロタルサイト等を焼成したマグネシウム-アルミニウム酸化物を次亜塩素酸イオン、亜塩酸イオンを含む水溶液中に加えて、所定時間接触させることで、これらのイオンを担持したハイドロタルサイトを得ることができる。
硝酸含有ハイドロタルサイトの製造では、大量の硝酸イオンの廃液が発生し、この水処理を行う必要がある。また、酸化物から本発明の抗菌剤組成物を製造するためのマグネシウム-アルミニウム酸化物を得るためには、ハイドロタルサイトをおよそ500℃で焼成する必要がある。このため、最も経済性が高く環境負荷が小さい、本発明の抗菌剤組成物の製造方法は、塩素含有ハイドロタルサイトからイオン交換により、次亜塩素酸、亜塩酸イオンを担持したハイドロタルサイト得る方法となる。
本発明の抗菌剤組成物は、次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトを含有することを特徴とする。
また、炭酸化合物または硫酸化合物を含有することを特徴とする。
また、前記ハイドロタルサイトが、塩素含有ハイドロタルサイトをイオン交換して得られたものであることを特徴とする。
本発明の抗菌剤組成物の製造方法は、次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトを含有する抗菌剤組成物の製造方法であって、酸化マグネシウムと塩化アルミニウムを原料とし、原料中の結晶水を除いた固形分の質量の和を1としたときに、水の質量と原料中の結晶水の質量の和が1以下になるように調整した水を加えて混合した後に、養生することにより塩素含有ハイドロタルサイトを製造する工程と、製造された塩素含有ハイドロタルサイトに次亜塩素酸イオンまたは亜塩素酸イオンを担持させる工程を備えたことを特徴とする。
本発明の抗菌フィルター製品は、本発明の抗菌剤組成物を含有することを特徴とする。
本発明の抗菌シート製品は、本発明の抗菌剤組成物を含有することを特徴とする。
本発明により、抗菌性能と経済性に優れた抗菌剤組成物を得ることができる。本発明の抗菌剤組成物は、紙、布、樹脂などに混合が可能であり、抗菌性をもつ紙製品、フィルター製品などとして好適に使用することができる。また、長期保管が必要な食品等の、抗菌添加剤等として使用することが可能である。
本発明の抗菌剤組成物は、次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトに炭酸化合物、硫酸化合物を組み合わせて使用することで、抗菌成分である次亜塩素酸イオン、亜塩素歳イオンの放出速度を調整することができ、優れた効果の抗菌剤を得ることができる。さらに、本発明の製造方法により、性能と経済性に優れた抗菌剤を効率よく製造することができる。
ハイドロタルサイトは、構造式「Mg2+
1-xAl3+
x(OH)2]x+[(An-)x/n・mH2O)x-、ここで、An-:n価のアニオン、0.20≦x≦0.33、0≦m<1で表される無機陰イオン交換体である。
ハイドロタルサイトの合成条件は、マグネシウムとアルミニウムのモル比を2:1~5:1の範囲とするのが一般的であり、この合成条件を採用することで、製造時に高い収率でハイドロタルサイトを得ることができる。ハイドロタルサイトは水酸化物であり、マグネシウムイオンとアルミニウムイオンの混合塩水溶液とアルカリ溶液を混合すると直ちに沈殿物としてハイドロタルサイトが生成する。ハイドロタルサイトの合成方法としては、通常この性質を利用してマグネシウムイオン、アルミニウムイオンを溶かした水溶液を中和して合成する方法が採られている。
本発明の抗菌剤組成物に使用されるハイドロタルサイトとしては、上記の湿式合成で製造された、塩素含有ハイドロタルサイト、硝酸含有ハイドロタルサイト、炭酸含有ハイドロタルサイトを好適に用いることができる。
また、ハイドロタルサイトの製造方法として、本発明者らが開発した、乾式製造方法がある。この方法は酸化マグネシウム、塩化アルミニウム6水塩および固液比(質量比)1:1以下に調整した水を加えて混合した後に養生することを特徴とする。ここで固液比(質量比)は原料中の結晶水を除いた固形分の質量の和と、添加した水の質量及び原料中の結晶水の質量の和の比で定義している。得られたハイドロタルサイトは平均結晶子サイズが20nm以下の微細なハイドロタルサイトを含有しており表面積が大きいため、陰イオン物質の優れた担持性能を有する。
本発明の抗菌剤組成物に使用され、上記の乾式製造方法により得られるハイドロタルサイトの原料としては、酸化マグネシウム、塩化アルミニウム6水塩を使用し、マグネシウムとアルミニウムのモル比が2:1~5:1の範囲になるように調整を行うことが好ましい。
この乾式製造方法では、混合する水量を固液比(質量比)1:1以下に設定するため、マグネシウム、アルミニウムを溶解した水溶液中で合成する一般的なハイドロタルサイトの合成法とは異なり、固形分が十~数十倍レベルで多い特徴がある。このような特徴により、このハイドロタルサイトの製造方法は、養生後の混合物が粉体状となる点において、従来の液相でハイドロサイトを合成する方法とは大きく異なっている。この製造方法を採用することで、公知の粉体用ミキサー等の混合装置、混合造粒装置等を用いた簡易な方法により経済的に性能が優れたハイドロタルサイトを製造することができる。
この製造方法により得られたハイドロタルサイトを用いて、本発明の抗菌剤組成物に用いられる次亜塩素酸、亜塩素酸を担持したハイドロタルサイトを製造することができる。この製造方法によるハイドロタルサイトを用いる利点として、造粒工程を行わずに顆粒状抗菌剤が得られること、イオン交換時の固液分離が容易でありフォルタープレス等の脱水装置を要しないこと、などが挙げられる。また、経済性の面でも大きな利点がある。
また、この製造方法では、結晶子サイズが20nm以下の、微細なハイドロタルサイトを製造することができ、抗菌性イオンの放出速度にすぐれた抗菌剤製品を得ることが可能となる特徴がある。
炭酸含有ハイドロタイサイトを500℃で仮焼すると、マグネシウム-アルミニウム酸化物(Mg-Al酸化物)が生成する。このMg-Al酸化物は、水溶液中で種々のアニオンをインターカレートして元の構造を再生する機能を持つことが知られている。従来から、この性質を利用して、炭酸含有ハイドロタルサイトを、塩素など、別種の陰イオンを担持させたハイドロタルサイトに変換することが行われている。
本発明の抗菌剤組成物に用いられるハイドロタルサイトは、市販の炭酸含有ハイドロタルサイトを用いて、これを焼成し、マグネシウム-アルミニウム酸化物(Mg-Al酸化物)に変えた後に、一定時間、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンを含有する水溶液に接触させれば、製造することができる。
本発明の抗菌剤組成物は、次亜塩素酸、亜塩素酸のいずれかを抗菌成分として使用する。塩素酸を含む化合物としては、このほかにも塩素酸塩、過塩素酸塩が挙げられるが、これらは安定性が高く酸化力が低い物質であり、抗菌性能が低いため、本発明の抗菌剤組成物の抗菌成分としては適さない。
次亜塩素酸、亜塩素酸の抗菌性能、殺菌性能については、従来からよく知られている。従って、これらのイオンを長期間維持し、放出ができる機能をもつ抗菌剤を調製することができれば、その抗菌性能が高いことは自明である。
次亜塩素酸塩として、次亜塩素酸ナトリウムNaClO、さらし粉Ca(ClO)2が製造されており、亜塩素塩としては、亜塩素酸ナトリウムNaClO2が製造されている。
次亜塩素酸ナトリウムは、食品製造の分野で食品添加物殺菌料として活用されている。大量調理施設衛生管理マニュアルにおいても「加熱せずに供する野菜の殺菌」や「調理機器の殺菌」での使用が記述されている。次亜塩素酸ナトリウムは、酸としての安定性が低く、分解して酸素を生成し高い酸化力、抗菌性を有する。
NaClO → NaCl + O
NaClO → NaCl + O
亜塩素酸ナトリウムは、漂白、殺菌を目的とした添加物で、我が国では、昭和38年に添加物に指定されている。亜塩素酸は、抗殺菌効果が次亜塩素酸より弱いものの、次亜塩素酸より安定性が高いため、長時間の抗殺菌効果を期待することができる。
NaClO2 → NaClO + O → NaCl +O2
NaClO2 → NaClO + O → NaCl +O2
なお、従来から、樹脂用安定剤として過塩素酸イオンを担持したハイドロタルサイトが使用されている。過塩素酸(HClO4)は酸としての安定性が高いが、酸化力は小さく抗菌性は低い。
本発明の抗菌剤組成物では、抗菌成分として次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンを使用するが、この利点は使用後、加熱、焼却することにより、これらの成分が熱分解し、焼却灰中に残存しないことである。これに比べて、金属イオンにより抗菌性を得る技術では、廃棄物の焼却灰に重金属イオンが濃縮し、また、抗菌成分の製造時の排水にも重金属が含有されるため、環境負荷が大きくなる。
また、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウムは、消臭剤、防カビ剤、防虫剤などとしても利用されている。これらの成分を高濃度で担持させたハイドロタルサイトは、比較的長期間この成分を保持するため、消臭剤、防カビ剤、防虫剤などとしても利用することが可能となる。
本発明の抗菌剤組成物に用いられるハイドロタルサイトは、次塩素酸塩または亜塩素酸塩を溶解させた水溶液に、塩素含有ハイドロタルサイトまたは硝酸含有ハイドロタルサイトを投入し、所定の時間攪拌を加えたり、振とうを加えることにより、イオン交換により次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンを担持させることで得ることができる。
イオン交換の効率を上げ、ほぼ完全なイオン交換を行う場合には、ハイドロタルサイトのイオン交換容量の3倍当量の次亜塩素酸イオンまたは亜塩素酸イオンを含む水溶液中に、塩素含有ハイドロタルサイトまたは硝酸含有ハイドロタルサイトを投入して数時間程度、攪拌、振とうを行えばよい。この時、水溶液の温度を60~80℃程度とすることで、イオン交換効率を向上させることができる。
例えば、次亜塩素酸イオン交換を行う乾燥した塩素含有ハイドロタルサイトは、マグネシウムとアルミニウムのモル比を3:1として、下記の化学式で表される。
Mg0.75Al0.25(OH)2Cl0.25・0.43H2O 式量:75.6
Mg0.75Al0.25(OH)2Cl0.25・0.43H2O 式量:75.6
この塩素イオンを全て次亜塩素酸イオンに交換すれば、交換後に含まれる次亜塩素酸イオンの含有は約16重量%、有効塩素量約11%となり、高い濃度で抗菌成分を含有させることができる。また、必要に応じてイオン交換条件を変更して、ハイドロタルサイトに担持させる次亜塩素酸イオンの量、亜塩素イオン量を調整することも可能である。
本発明の抗菌剤組成物は、ハイドロタルサイトに炭酸化合物、硫酸化合物を混合し、組み合わせて使用することで、抗菌成分である次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンの放出を促進することができる。これは、ハイドロタルサイトが炭酸イオン、硫酸イオンに対して、安定なイオン交換性能を有しているため、これらのイオンがハイドロタルサイトの層間に担持された次亜塩素酸イオン、亜塩素イオンとイオン交換し、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンが放出されるためである。
本発明の抗菌剤組成物に用いることのできる炭酸化合物としては、炭酸ナトリウムの無水物、水和物、炭酸カリウムの無水物、水和物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの、水への溶解度が高い炭酸塩化合物、炭酸水素塩化合物のほか、炭酸ガスなどが挙げられる。
本発明の抗菌剤組成物に用いられるハイドロタルサイトを容器に充填し、炭酸ガスを注入すれば、次亜塩素酸イオン、亜塩素イオンを放出する装置を製造することができる。放出量は炭酸ガス注入量により制御することが可能である。
本発明の抗菌剤組成物に用いることのできる硫酸化合物としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなど、水への溶解度が高い硫酸塩化合物が挙げられる。
本発明の抗菌剤組成物の製造過程において、乾燥過程では、できるだけ高温とならない方法を用いて乾燥を行うことが好ましい。それは、温度の上昇により、次亜塩素酸、亜塩素酸の分解が促進されるためである。
本発明の抗菌剤組成物の製造過程において、加熱して乾燥を行う時には材料の温度をモニターしながら、短時間で行う方法が好ましい。また、冷風乾燥、真空乾燥、真空凍結乾燥技術などの公知の低温乾燥方法を用いることができる。
以上のとおり、本発明によれば、経済性に優れ、効果の高い抗菌剤組成物を得ることができる。母材のハイドロタルサイトは人体に安全な物質である。本発明の抗菌剤組成物は、環境中でも比較的長期間効果を維持し、また、密閉すれば常温でも長期間保存できる。さらに、金属イオンを含まない抗菌剤組成物であるため、製造時、廃棄後の環境負荷が高い特徴をもっている。本発明の抗菌剤組成物に用いられるハイドロタルサイトは、炭酸化合物、硫酸化合物と組み合わせて使用することで、抗菌成分である次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオンの放出速度を調整し、抗菌効果を向上させることができる。
以下の実施例に基いて本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
下記の方法により、粒状の塩素含有ハイドロタルサイトを試作した。
(1)酸化マグネシウムと塩化アルミニウム6水塩の粉末原料合計200gを卓上ホバ―ト型ミキサーに投入した。先に塩化アルミニウム6水塩をミキサーに投入して解砕し、次に酸化マグネシウムを加えて3分間混合した後、イオン交換水を所定量加えて、さらに2分間混合を行なった。ここでは、原料をマグネシウムとアルミニウムのモル比Mg/Al=2.0となるように配合調整し、固液比1.0:0.65の条件でイオン交換水を添加した。
(2)混合物を密閉容器に入れ、温度80度で1時間加温した。
(3)次に混合物を、容量1Lのイオン交換水中に入れ、そのまま15時間水中で養生を行った。
(4)養生後の混合物を軽く粉砕しながら、容量2Lのイオン交換水で洗浄し、水中でふるい分級を行い、粒径0.5~2.0mmの塩素含有ハイドロタルサイト粒状体を得た。
(5)このハイドロタルサイトの一部を採取して電気炉により120℃で1時間乾燥を行なった。乾燥品の密度を測定したところ、0.60g/mlであった。
この粒状塩素含有ハイドロタルサイトの含水量を、熱重量分析により調べたところ、250℃までの重量減少は11.6%であったため、合成したハイドロタルサイトの化学式は、Mg0.67Al0.33(OH)2Cl0.33・0.53H2Oで表すことができる。これより、合成した100mlのハイドロタルサイトは0.75molに相当する。
ここで、酸化マグネシウムとしては、中国産、純度95%、粒径-325メッシュ、塩化アルミニウム6水塩としては、日本軽金属(株)製、純度97%以上を使用した、
実施例1で得た塩素含有ハイドロタルサイトを高度さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)を溶解させた水溶液に加えて、ハイドロタルサイトに担持されている塩素イオンと次亜塩素酸イオンの交換を行った。
(1)容量1000mlの樹脂製容器に、500mlのイオン交換水を分取し、これに実施例1で得たハイドロタルサイト100mlおよび、次亜塩素酸カルシウム0.38molを含む高度さらし粉を加えて、2時間振とうを行った。
(2)樹脂製容器の内容物を沈降分離し、ハイドロタルサイト回収した。
(3)処理後のハイドロタルサイトを電気炉により120℃で1時間乾燥を行なった。
ここで、高度さらし粉としては、関東化学(株)製試薬(有効塩素:70%)を使用した。このイオン交換操作では、実施例1で試作した粒状のハイドロタルサイトを使用したため、固液分離が極めて容易であった。
実施例1で得た粒状塩素含有ハイドロタルサイト、炭酸ナトリウム試薬をイオン交換水に加えて振とうし、ハイドロタルサイトに担持されている塩素イオンと炭酸イオンの交換を行った。
(1)容量200mlの樹脂製容器に、100mlのイオン交換水を分取し、これに実施例1で得たハイドロタルサイト10mlおよび、0.038molの炭酸ナトリウム試薬を加えて、2時間振とうを行った。
(2)樹脂製容器の内容物を沈降分離し、ハイドロタルサイトを回収した。
(3)処理後のハイドロタルサイトを電気炉で120℃、5時間の乾燥を行った。
ここで、炭酸ナトリウムとしては、関東化学(株)製試薬(純度99.8%)を使用した。
実施例3で得た炭酸含有ハイドロタルサイトを焼成して、酸化物に変化させた後に、次亜塩素酸イオンを担持させた。
(1)実施例3で得た炭酸含有ハイドロタルサイト20gをアルミナ製るつぼにいれて、120℃で1時間乾燥した。
(2)続いて温度500℃で1時間焼成を行った。
(3)容量200mlの樹脂製容器に、100mlのイオン交換水を分取し、これに焼成後のハイドロタルサイト10mlおよび、次亜塩素酸カルシウム0.038molを含む高度さらし粉を加えて、2時間振とうを行った。
(4)樹脂製容器の内容物を沈降分離し、処理後のハイドロタルサイトを回収した。
(5)処理後のハイドロタルサイトを室内に静置して、風乾を行った
実施例1で得た粒状塩素含有ハイドロタルサイト、亜塩素酸ナトリウム試薬をイオン交換水に加えて振とうし、ハイドロタルサイトに担持されている塩素イオンと亜塩素酸イオンの交換を行った。
(1)容量200mlの樹脂製容器に、100mlのイオン交換水を分取し、これに実施例1で得たハイドロタルサイト10mlおよび亜塩素酸ナトリウム試薬0.075molを加えて、2時間振とうを行った。
(2)樹脂製容器の内容物を沈降分離し、ハイドロタルサイトを回収した。
(3)処理後のハイドロタルサイトを室内に静置して、風乾を行った。
ここで、亜塩素酸ナトリウムとしては、関東化学(株)製試薬(純度72%以上)を使用した。
(株)リガク製MINIFLEXを用いて、実施例1~実施例5で得た試作ハイドロタルサイトのX線回折による分析を行った。このX線回折図を図1~図3に示した。
図1、2において、実施例1の塩素含有ハイドロタルサイト、実施例2の次亜塩素酸含有ハイドロタルサイト、実施例3の炭酸含有ハイドロタルサイト、実施例5の亜塩素酸含有ハイドロタルサイトは、異なるX線回折パターンを示している。
実施例1で試作した粒状ハイドロタルサイトは、典型的なハイドロタルサイトのX線回折のピークを示しており、他の結晶ピークは見当たらない。また、X線回折図はブロードな傾向を示し、結晶子のサイズは、Scherrerの式より8nm程度と微細なハイドロタルサイトであった。この製造方法で得られるハイドロタルサイトは、結晶子サイズが小さいため、反応速度に優れており、抗菌性イオンの放出速度に優れた製品を得ることが可能である。
図1は各陰イオンを担持したハイドロタルサイトの2θ=0~70°におけるX線回折図を示したものである。ハイドロタルサイトの層状構造の特徴である (003)面、(006)面、(009)面に由来する3本の回折ピークが確認できた。
図2、表1に示すように、塩素含有ハイドロタルサイト、次亜塩素酸含有ハイドロタルサイト、炭酸含有ハイドロタルサイト、亜塩素酸含有ハイドロタルサイトでは、面間隔d=7.6~8.0Åの範囲で変化し、X線回折図(003)面の回折ピーク位置に相違が見られる。
また、図3に示すように、実施例2、実施例4の異なる手順で試作したハイドロタルサイトのX線回折パターンはほぼ同一となり、異なる手順で調製されても、同一の次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトが調製されていることが分かる。
従来技術では、実施例5の手順、すなわち炭酸含有ハイドロタルサイトを500℃程度で焼成して複酸化物に変化させた後に、ハロゲン化合物を含む水溶液中に加える手順によって、ハロゲン化合物を担持させたハイドロタルサイトに加工する方法が採られていた。
本実施例の方法によれば、塩素含有ハイドロタルサイトから、イオン交換によって、次亜塩素酸含有ハイドロタルサイト、亜塩素酸含有ハイドロタルサイトに加工するため、焼成工程を省くことができ、経済的、省エネルギーの条件で、次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトを製造することが可能である。
下記の方法により、粒状の塩素含有ハイドロタルサイトを試作し、次亜塩素酸イオンを担持させた。
(1)酸化マグネシウムと塩化アルミニウム6水塩の粉末原料合計300gを卓上ホバ―ト型ミキサーに投入した。先に塩化アルミニウム6水塩をミキサーに投入して解砕し、次に酸化マグネシウムを加えて3分間混合した後、イオン交換水を所定量加えて、さらに2分間混合を行なった。ここでは、原料をマグネシウムとアルミニウムのモル比Mg/Al=3.0となるように配合調整し、固液比1.0:0.67の条件でイオン交換水を添加した。
(2)混合物を密閉容器に入れ、インキュベータ内で1時間加温した。
(3)次に混合物を、容量500mlのイオン交換水中に入れ、そのまま15時間水中で養生を行った。
(4)養生後の混合物を軽く粉砕しながら、容量1Lのイオン交換水で洗浄し、水中でふるいによる分級を行い、粒径0.5~2.0mmの塩素含有ハイドロタルサイトを得た。
(5)このハイドロタルサイトの一部を採取して電気炉を用いて120℃で3時間乾燥を行なった。乾燥品の密度を測定したところ、0.64g/mlであった。
(6)この粒状塩素含有ハイドロタルサイトの含水量を、熱重量分析により調べたところ、250℃までの重量減少は、10.3%であったため、合成したハイドロタルサイトの化学式はMg0.75Al0.25(OH)2Cl0.25・0.43H2Oで表すことができる。これより、合成した100mlのハイドロタルサイトは0.85molに相当する。
(7)容量1000mlの樹脂製容器に、500mlのイオン交換水を分取し、これに上記のハイドロタルサイト100ml、次亜塩素酸カルシウム0.21molを含む高度さらし粉試薬を加えて振とうし、さらに2時間振とうしてイオン交換を行った。
(8)樹脂製容器の内容物を沈降分離し、ハイドロタルサイトを回収した。
(9)処理後のハイドロタルサイトを室内に静置して、風乾を行った。
(10)静置開始後1日目、60日目にサンプルを採取した。
(11)静置期間の異なる2種の次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトのX線回折による分析を行った。このX線回折図を図4に示した。
ここで、酸化マグネシウム、塩化アルミニウム6水塩、高度さらし粉試薬は、実施例1、実施例2と同様のものを使用した。
X線回折図によれば、環境中で静置した期間の異なる次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトの回折図は変化がない。すなわち、室内で2ヶ月間放置した次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトは、層間の次亜酸素酸イオンを変わらず保持している。
(1)実施例2で試作した次亜塩素酸含有ハイドロタルサイト(粒径1~2mm)2gと、炭酸ナトリウム2gを均質に混合した。
(2)混合物を皿に乗せ、室内で3日間放置した。
(3)1mmのふるいにかけて、混合物からハイドロタルサイトのみ回収し、イオン交換水を用いて流水で洗浄を行なった。
(4)室温で風乾したのち、回収したハイドロタルサイトのX線回折を行なった。
X線回折を行った結果、次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトと炭酸ナトリウムを混合して3日間静置したハイドロタルサイトは炭酸含有ハイドロタルサイトに変化していた。ハイドロタルサイトには、選択性が高い炭酸イオンが担持され、次亜塩素酸イオンはハイドロタルサイトから放出された。
次亜塩素酸含有ハイドロタルサイトに炭酸化合物を混合することで、次亜塩素酸イオンの放出速度を早くすることが可能である。
キッチンシンクには真菌類が多数付着している。下記の方法により、キッチンのシンク表面付着菌を採取して、抗菌剤を設置した培地に移して培養することにより、試作した抗菌剤の抗菌性を調べた。
(1)試作した各抗菌剤を乳鉢により粒径10μm以下まで粉砕した。
(2)キッチンシンク表面付着菌を綿棒により拭き取り採取した。表面付着菌の採取では、一試験あたり、シンク表面10cm×10cmの範囲を綿棒で拭き取り、これをイオン交換水1mlに浸して攪拌し、付着した菌を水溶液に移動させた。
(3)コンパクト培地表面に、粉砕した抗菌剤0.5gを直径約30mmとなるよう設置した。
(4)次に、キッチンシンク表面から採取した菌を含むイオン交換水1mlをスポイドによりコンパクト培地表面に滴下して接種した。
(5)前記のコンパクト培地をインキュベータにより、温度35℃で48時間培養を行った。
(6)培養後の培地を観察して、試作した抗菌剤サンプルの抗菌性の確認を行った。
ここで、培地としては、日水製薬(株)製のコンパクトドライTCを試験に使用した。
コンパクト培地を用いた抗菌性確認試験結果を以下の表に示す。抗菌性の有無は、試作した抗菌剤周辺に菌が繁殖していないゾーン、ハローの発生の有無により判定した。また、抗菌性の相対的強さは、コンパクト培地上の真菌の繁殖状況、ハローの大きさにより判定した。
以上により、本実施例のハイドロタルサイトの抗菌性の有無が確認された。また、サンプル5~8の炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムと混合した抗菌剤については、次亜塩素酸を担持したハイドロタルサイトの含有量が少ないのにもかかわらず、強い抗菌性が観察された。これは、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムとの、陰イオン交換により、抗菌成分である次亜塩素酸イオンの放出量が増加するためである。
室内で2ヶ月保管した次亜塩素酸イオンを担持したハイドロタルサイトについても、抗菌性の保有が確認されており、本発明の抗菌剤組成物は環境中でも長期間効果が保持されることが確認された。亜塩素酸イオンは、次亜塩素酸イオンより、分解しにくい特性を有するため、亜塩素酸イオンを担持したハイドロタルサイトについても同様の効果を有するものと判断される。
Claims (6)
- 次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトを含有することを特徴とする抗菌剤組成物。
- 炭酸化合物または硫酸化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の抗菌剤組成物。
- 前記ハイドロタルサイトが、塩素含有ハイドロタルサイトをイオン交換して得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の抗菌剤組成物。
- 次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンのうち少なくとも一方を担持したハイドロタルサイトを含有する抗菌剤組成物の製造方法であって、
酸化マグネシウムと塩化アルミニウムを原料とし、原料中の結晶水を除いた固形分の質量の和を1としたときに、水の質量と原料中の結晶水の質量の和が1以下になるように調整した水を加えて混合した後に、養生することにより塩素含有ハイドロタルサイトを製造する工程と、製造された塩素含有ハイドロタルサイトに次亜塩素酸イオンまたは亜塩素酸イオンを担持させる工程を備えたことを特徴とする抗菌剤組成物の製造方法。 - 請求項1~3のいずれか記載の抗菌剤組成物を含有することを特徴とする抗菌フィルター製品。
- 請求項1~3のいずれか記載の抗菌剤組成物を含有することを特徴とする抗菌シート製品。
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