JP2022074471A - 軸受の試験方法 - Google Patents

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Tomoyuki Aida
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Eibun Hayama
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Abstract

【課題】リッジマークの発生しやすい状況下において軸受の耐電食性を試験することが可能な軸受の試験方法を提供する。【解決手段】軸受の試験方法は、軸受を外側部材と内側シャフトとの間に配置する軸受配置工程と、軸受配置工程後、軸受への潤滑油の導入、軸受へのラジアル荷重の付与、及び軸受への電流の印加を行いながら、内側シャフトを外側部材に対して回転させて転動体を転動させる試験工程とを有する。試験工程中における最小油膜厚さを、複数の転動体の表面と軌道面との合成表面粗さで除した値を油膜係数とする。試験工程においては、軌道面と複数の転動体との間の単位接触面積当たりの電流値である電流密度を500[mA/mm2]以上とするとともに、潤滑油の温度、内側シャフトの回転速度、及び軸受に付与するラジアル荷重を設定して油膜係数を2以上とする。【選択図】図6

Description

本発明は、軸受の試験方法に関する。
例えば特許文献1に開示されているように、軸受においては、軌道輪の軌道面にリッジマークと呼ばれる縞状の凹凸が電食に起因して発生することがあった。軌道面にリッジマークが発生すると、転動体が軌道面を安定して転動することができず、騒音、振動等の発生の原因となる。そのため、軌道面へのリッジマークの発生を防止するよう工夫した軸受の開発が進められている。
特開2010-209966号公報
しかしながら、従来においては、軌道面にリッジマークが発生しやすい状況を人為的に作りだすことは困難であったため、リッジマークを生じ難くすべく工夫した軸受の効果を検証することは困難であった。
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、リッジマークの発生しやすい状況下において軸受の耐電食性を試験することが可能な軸受の試験方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記の目的を達成するため、軌道輪と前記軌道輪の軌道面を転動する複数の転動体とを備える軸受の耐電食性を試験する軸受の試験方法であって、前記軸受を、回転軸線を中心として相対回転可能な外側部材と内側部材との間に配置する軸受配置工程と、前記軸受配置工程後、前記軸受への潤滑油の導入、前記軸受へのラジアル荷重の付与、及び前記軸受への電流の印加を行いながら、前記外側部材と前記内側部材とを相対回転させて前記転動体を転動させる試験工程と、を有し、前記試験工程中において前記軌道面と前記複数の転動体との間に導入される潤滑油の最小油膜厚さを、前記複数の転動体の表面と前記軌道面との合成表面粗さで除した値を油膜係数としたとき、前記試験工程においては、前記軌道面と前記複数の転動体との間の単位接触面積当たりの電流値である電流密度を500[mA/mm]以上とするとともに、前記潤滑油の温度、前記外側部材と前記内側部材との間の相対回転速度、及び前記軸受に付与するラジアル荷重を設定して前記油膜係数を2以上とする、軸受の試験方法を提供する。
本発明によれば、リッジマークの発生しやすい状況下において軸受の耐電食性を試験することが可能な軸受の試験方法を提供することが可能となる。
図1は、実施の形態における、試料軸受の断面図である。 図2は、実施の形態における、試料軸受が配された試験装置の全体構成を模式的に示す図である。 図3は、実施の形態における、境界潤滑状態にある軌道面と転動体との境界部の模式的な拡大断面図である。 図4は、実施の形態における、混合潤滑状態にある軌道面と転動体との境界部の模式的な拡大断面図である。 図5は、実施の形態における、流体潤滑状態にある軌道面と転動体との境界部の模式的な拡大断面図である。 図6は、実験例における、各試料軸受の油膜係数Λ及び電流密度と、電食発生の有無とを表した図である。 図7は、実験例における、Λ≒1の試料軸受10Aの試験後における外輪軌道面の状態を示す写真である。 図8は、実験例における、Λ≒2の試料軸受10Bの試験後における外輪軌道面の状態を示す写真である。 図9は、実験例における、Λ≒3の試料軸受10Cの試験後における外輪軌道面の状態を示す写真である。 図10は、実験例における、試料軸受10Aの試験後の外輪軌道面の断面図を模式的に示す図である。 図11は、実験例における、試料軸受10Bの試験後の外輪軌道面の断面図を模式的に示す図である。 図12は、実験例における、試料軸受10Cの試験後の外輪軌道面の断面図を模式的に示す図である。
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図12を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
(試料軸受10)
まず、図1を用いて、試料軸受10の構成につき説明する。図1は、試料軸受10の断面図である。試料軸受10は、後述の試験方法による耐電食性の試験の対象となる軸受である。
本形態の試料軸受10は、ラジアル玉軸受であり、具体的には径方向及び軸方向の双方の負荷を受けることができる深溝玉軸受である。なお、試料軸受10は、これに限定されず、電食に起因したリッジマークが生じ得る軸受であれば他の種類の軸受を採用することも可能である。試料軸受10は、軌道輪100としての外輪101及び内輪102と複数の転動体103と保持器104とを備える。外輪101は、円環状を呈しており、内周面に複数の転動体103を転動させる断面円弧状の外輪軌道面101aが全周に形成されている。内輪102は、円環状を呈しており、外輪101の内側に配されている。内輪102の外周面には、外輪軌道面101aと径方向に対向するとともに断面円弧状となる内輪軌道面102aが全周に形成されている。転動体103は、球状の玉である。複数の転動体103は、外輪軌道面101aと内輪軌道面102aとの間の環状の転動空間において、周方向に等間隔に配置されている。複数の転動体103の周方向の間隔は、保持器104によって維持されている。なお、後述の図2においては、保持器104の図示を省略している。試料軸受10としては、例えば電気自動車(EV:Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)等における電気モータ周辺に配されるような、周囲の磁束に起因した電食が発生し得る軸受を採用し得る。
(試験装置1)
次に、試料軸受10の耐電食性を試験する試験装置1について説明する。図2は、試料軸受10が配された試験装置1の全体構成を模式的に示す図である。
試験装置1は、外輪軌道面101a又は内輪軌道面102aにリッジマークRを伴う電食が発生しやすい状況を作るための装置である。当該試験装置1を用いることにより、試料軸受10における、リッジマークRを生じさせやすい電食に対する耐性を試験することが可能となる。なお、リッジマークRとは、後述の図8及び図9に示すごとく、軌道面100aに、凹部R1と凸部R2とが周方向に交互に形成されるような縞状の凹凸である。なお、外輪軌道面101a及び内輪軌道面102aを特に区別しない場合は、単に「軌道面100a」という。
試験装置1は、筐体2、外側部材3、内側部材4、回転駆動機構5、ラジアル荷重付与機構6、潤滑油供給機構7、及び振動値測定装置8を備える。筐体2は、内側部材4の一部、外側部材3、及び試料軸受10等を内側に収容する。外側部材3は、内周面に試料軸受10を嵌入する。内側部材4は、外周面に試料軸受10を嵌合するシャフトであり、外側部材3に対して回転可能に構成されている。以後、内側部材4を内側シャフト4といい、内側シャフト4の回転軸線が延在する方向を軸方向Xという。また、軸方向Xに直交する方向であって、試験装置1の使用状態において鉛直方向となる方向を上下方向Yという。図2においては、紙面上下方向が、試験装置1の使用状態における鉛直方向であり、紙面上側が鉛直方向上側、紙面下側が鉛直方向下側である。回転駆動機構5は、内側シャフト4を回転させる。ラジアル荷重付与機構6は、試料軸受10に対して径方向の荷重を付与する。潤滑油供給機構7は、試料軸受10の潤滑のための潤滑液を筐体2内に供給する。振動値測定装置8は、筐体2の振動値を検出する。
筐体2は、軸方向Xの両端部に開口を有する筒壁21と、筒壁21における後述の回転コネクタ12が配される側の開口を閉塞する第1蓋部22と、筒壁21における回転駆動機構5が配される側の開口を閉塞する第2蓋部23とを備える。
外側部材3は、筒壁21における第1蓋部22側の端部に、絶縁体11を介して内嵌されている。絶縁体11は、外側部材3と筐体2との間の導通を防止している。外側部材3は、環状に形成されており、その内周面が円筒状に形成されている。また、外側部材3は、導電性を有する。外側部材3の内周面に、試料軸受10の外輪101が嵌入される。
内側シャフト4は、外側部材3の内側に挿入されている。内側シャフト4は、筐体2の内側に収容された被収容部40と、第1蓋部22から後述の回転コネクタ12側に突出した第1突出部41と、第2蓋部23から回転駆動機構5側に突出した第2突出部42とを備える。被収容部40は、外側部材3の内側に挿入されており、被収容部40における第1突出部41側の端部の外周面が外側部材3と径方向に対向している。内側シャフト4の被収容部40と外側部材3との対向領域に試料軸受10が配される。被収容部40における試料軸受10が配される側と反対側の端部は、絶縁軸受13及び保持壁14を介して筐体2に保持されている。絶縁軸受13は、内輪131と外輪132との間の電気的絶縁性が確保されたラジアル軸受であり、本形態において絶縁軸受13は転動体133がセラミックボールによって構成されている。保持壁14は、環状を呈しており、筐体2の筒壁21における軸方向Xの第2蓋部23側の端部に内嵌されている。
第1突出部41は、第1蓋部22に設けられた第1貫通穴221から筐体2外に突出しており、第2突出部42は、第2蓋部23に設けられた第2貫通穴231から筐体2外に突出している。第1蓋部22と内側シャフト4との間、及び、第2蓋部23と内側シャフト4との間のそれぞれは、閉塞部材151によって塞がれている。閉塞部材15は、弾性変形可能に構成されており、これにより、後述するように、ラジアル荷重付与機構6からのラジアル荷重が内側シャフト4に付与されたときに内側シャフト4が径方向に変位できるようになっている。
第1突出部41には、回転コネクタ12が電気的に接続されている。回転コネクタ12は、第1突出部41に対して回転可能、かつ、筐体2に対して回転不能となるよう設けられている。回転コネクタ12は、回転体としての内側シャフト4との導通を図るための部材であり、例えばスリップリングを採用することができる。第2突出部42は、回転駆動機構5に接続されている。
回転駆動機構5は、内側シャフト4に回転力を付与し、外側部材3に対して内側シャフト4を回転させることによって外側部材3と内側シャフト4とを相対回転させる。回転駆動機構5は、モータ51と、モータ51の出力軸511に固定された駆動プーリ52と、駆動プーリ52の回転に連動して回転する従動プーリ53と、駆動プーリ52と従動プーリ53とにかけ渡され、モータ51の出力軸511とともに回転する駆動プーリ52の回転力を従属プーリに伝達するベルト54と、一端が従動プーリ53に固定され、他端が内側シャフト4と継手56により連結される連結回転軸55と、を備える。駆動プーリ52と従動プーリ53との直径比を適宜調整することにより、駆動プーリ52から従動プーリ53へ回転力を伝達する際の減速比を調整することができる。継手56は、内側シャフト4と連結回転軸55とを互いに回転力を伝達可能に連結している。継手56は、絶縁体を含み、内側シャフト4と連結回転軸55とを互いに導電不能に連結している。これによって、内側シャフト4に入力される後述の電気が回転駆動機構5へ伝達することを防止している。
ラジアル荷重付与機構6は、内側シャフト4の被収容部40の軸方向X中央部を軸支しており、当該中央部にラジアル荷重、すなわち径方向の荷重を付与する。ラジアル荷重付与機構6は、内側シャフト4へ付与する荷重を発生させる荷重生成部61と、内側シャフト4の被収容部40の軸方向X中央部に外嵌された絶縁軸受62と、内周面に絶縁軸受62が嵌入されるとともに荷重生成部61において発生した力を受ける荷重受け部63と、を備える。本形態において、荷重生成部61は、油圧アクチュエータである。なお、荷重生成部61としては、例えば、空気圧等の油圧以外の動力源を用いたアクチュエータ、又はコイルバネ等の弾性部材を用いることができる。絶縁軸受62は、内側シャフト4を軸支する絶縁軸受13と同様の構成を有する軸受である。荷重受け部63は、円筒状を呈しており、その内側に絶縁軸受62を介して内側シャフト4を軸支している。
潤滑油供給機構7は、筐体2内に潤滑油を供給する。潤滑油供給機構7は、図示しないポンプと、筐体2内に導入する潤滑油を循環させる循環経路71とを備える。循環経路71における筐体2内への吐出口711は、試料軸受10近傍に形成されている。潤滑油供給機構7は、吐出口711から所望の温度の潤滑油を筐体内に供給することができるよう構成されている。筐体2内に導入された潤滑油は、筐体2内における試料軸受10の第1蓋部22側の領域に一部が溜まり、他の一部が試料軸受10の複数の転動体103の間等を通って筒壁21の下端部に設けられた排出穴部211から排出され、図示しないポンプに戻される。図2においては、潤滑油供給機構7において筐体2内に導入される潤滑油の循環経路71を模式的に一点鎖線にて示している。
振動値測定装置8は、筒壁21の上面に固定されており、試験時における筐体2の振動値を測定する。振動値測定装置8は、測定した振動値に応じた電気信号を制御部19へ送信する。これにより、後述の制御部19は、試験装置1の振動値を取得する。
また、試験装置1は、電源部16、測定部17、固定抵抗18、及び制御部19を有する。電源部16は、例えば、正弦波交流電力を生成するファンクションジェネレータ、及びファンクションジェネレータの出力電流を増幅させるバイポーラ電源を備えるものとすることができる。電源部16の一方の電極は、回転コネクタ12を介して内側シャフト4に電気的に接続されており、他方の電極は、固定抵抗18を介して外側部材3に電気的に接続されている。電源部16は、内側シャフト4、試料軸受10、及び外側部材3を含む電流経路に高周波交流電圧を印加する。
測定部17は、試料軸受10に印加される電圧を測定するチャンネル1(CH1)と、固定抵抗18に印加される電圧を測定するチャンネル2(CH2)とを有する。チャンネル2において測定される、固定抵抗18に印加される電圧値は、試料軸受10を通過する電流値を算出するために用いられる。固定抵抗18は、抵抗値が例えば5Ωの抵抗である。
制御部19は、モータ51、荷重生成部61、及び電源部16を制御する。制御部19は、CPU(演算処理装置)及びCPU動作時の演算領域となるRAMを有する制御部19と、ROMを含む記憶部とを有している。制御部19は、CPUが記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、各機能を実現することができるよう構成されている。
制御部19は、内側シャフト4の回転速度が所望の速度となるようモータ51を制御している。また、制御部19は、内側シャフト4に付与されるラジアル荷重が所望の荷重となるよう荷重生成部61を制御している。さらに、制御部19は、測定部17から試料軸受10に印加される電圧値及び試料軸受10を通る電流値を取得する。そして、制御部19は、測定部17から取得した電圧値及び電流値に基づいて、試料軸受10に流す電流値が所望の値となるよう電源部16の出力を制御する。具体的には、制御部19は、軌道面100aと複数の転動体103との間の電流密度が500mA/mm以上となるよう、電源部16を制御している。電流密度とは、ヘルツの接触理論において確立している概念であり、軌道面100aと複数の転動体103との間の単位接触面積当たりの電流値を意味し、以下、単に「電流密度」ということもある。本形態において、電流密度は、外輪軌道面101aと複数の転動体103との接触部の電流密度である第1の電流密度と、内輪軌道面102aと複数の転動体103との接触部の電流密度である第2の電流密度とがある。第1の電流密度は、試料軸受10に流れる電流値を外輪軌道面101aと各転動体103との接触楕円面積の総和で除したものである。第2の電流密度は、試料軸受10に流れる電流値を内輪軌道面102aと各転動体103との接触楕円面積の総和で除したものである。そして、制御部19は、第1の電流密度及び第2の電流密度のいずれもが500mA/mm以上となるよう電源部16の出力を制御する。なお、図7において、1つの転動体10と軌道面100aとの楕円状の接触箇所の外形の一例を二点鎖線にて囲っている。また、後述するように流体潤滑状態においては軌道面100aと転動体103とは接触しないが、ヘルツの接触理論においては潤滑油を考慮しない状態において軸受における軌道面100aと各転動体103との接触楕円面積の総和が算出されるため、軌道面100aと各転動体103との接触面積の総和は0にはならない。外輪軌道面101aと各転動体103との接触楕円面積の総和、及び、内輪軌道面102aと各転動体103との接触楕円面積の総和のそれぞれは、試料軸受10の形状と荷重条件とに基づいて決まる。
また、制御部19は、潤滑油の種類に応じた潤滑油の温度、回転駆動機構5によって回転駆動される外側部材3と内側シャフト4との間の相対回転速度、及び荷重付与機構によって試料軸受10に付与されるラジアル荷重を制御することにより、油膜係数Λを2以上にする。油膜係数Λは、試料軸受10の軌道輪100と複数の転動体103との間に導入される潤滑油の最小油膜厚さをhmin、複数の転動体103の表面と軌道面100aとの合成表面粗さをσとしたとき、Λ=hmin/σ、にて表されるものである。油膜係数は、油膜パラメータと呼称されることもある。
本形態において、油膜係数Λを決定する最小油膜厚さhminは、弾性流体潤滑(EHL:ElastoHydrodynamic Lubrication)理論を用いて算出することができる。弾性流体潤滑理論によると、最小油膜厚さhminは、潤滑油の種類及び潤滑油の温度に基づいて決まる潤滑油の動粘度と、内側シャフト4の回転速度と、軌道輪100と複数の転動体103との間の面圧に依存する。それゆえ、最小油膜厚さhminは、潤滑油の温度、外側部材3と内側シャフト4との間の相対回転速度、及び試料軸受10に付与されるラジアル荷重に依存する。それゆえ、制御部19は、前述のごとく潤滑油の温度、回転駆動機構5によって回転駆動される外側部材3と内側シャフト4との間の相対回転速度、及び荷重付与機構によって試料軸受10に付与されるラジアル荷重を制御することによって、油膜係数Λを2以上とすることができる。
また、油膜係数Λを決定する合成表面粗さσは、複数の転動体103の表面の二乗平均平方根粗さ(R)及び軌道面100aの二乗平均平方根粗さ(R)の二乗和の平方根である。すなわち、複数の転動体103の表面の二乗平均平方根粗さをσ、軌道面100aの二乗平均平方根粗さをσとしたとき、σ=(σ +σ 1/2、が満たされる。
油膜係数Λが1以下となるとき、軌道面100aと転動体103との間の潤滑状態が境界潤滑状態となり、油膜係数Λが3以上となるとき、軌道面100aと転動体103との間の潤滑状態が流体潤滑状態となる。図3に境界潤滑状態にある軌道面100aと転動体103との境界部の模式的な拡大断面図、図4に混合潤滑状態にある軌道面100aと転動体103との境界部の模式的な拡大断面図、図5に流体潤滑状態にある軌道面100aと転動体103との境界部の模式的な拡大断面図を示している。なお、図3乃至図4において、軌道面100aと転動体103との接触部を破線で囲っている。
図3に示すごとく、例えば油膜係数Λが1となる境界潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103とが部分的に接触している。そのため、境界潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103との接触部において互いに通電するため、軌道面100aと転動体103との間に電食の原因となるスパークが発生し難いものと考えられる。なお、弾性流体潤滑理論を用いた最小油膜厚さhminの算出は、図3乃至図5に示すものとは異なり、接触部の互いの表面に凹凸がないと想定して算出される。そのため、軌道面100aと転動体103とが部分的に接触している場合であっても、弾性流体潤滑理論を用いて算出される最小油膜厚さhminは0とはならない。
図4に示すごとく、例えば油膜係数Λが2となる混合潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103とが部分的に接触しているものの、境界潤滑状態と比べて軌道面100aと転動体103との接触部分が少なくなる。そのため、混合潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103との接触部において互いに通電するものの、その量が少なく、軌道面100aと転動体103との間に導入された潤滑油の油膜OFを通るスパークSが発生すると考えられる。
図5に示すごとく、例えば油膜係数Λが3となる流体潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103とは直接接触せず、これらの間に油膜OFが形成される。そのため、流体潤滑状態においては、軌道面100aと転動体103との間が直接的に導通せず、軌道面100aと転動体103との間に油膜OFを介したスパークSが発生しやすいと考えられる。そして、油膜係数Λが大きくなるほど油膜が厚くなり、軌道輪100と転動体103との間に油膜を介したスパークSが発生しやすくなるものと考えられる。
(試験方法)
次に、試験装置1を用いて試料軸受10の耐電食性を試験する方法の一例について説明する。
本試験方法においては、まず、試料軸受10を外側部材3と内側シャフト4との間に配置する軸受配置工程を行う。軸受配置工程は、例えば、試料軸受10内に内側シャフト4を圧入し、これを筐体2の筒壁21内に挿入し、そして、筒壁21の試料軸受10に近い側の開口から絶縁体11及び外側部材3を、試料軸受10と筒壁21との間に嵌入させることにより行う。
軸受配置工程の後、試験工程を行う。試験工程は、試料軸受10への潤滑油の導入、試料軸受10へのラジアル荷重の付与、及び試料軸受10への電流の印加を行いながら、外側部材3に対して内側シャフト4を相対回転させて転動体103を転動させる工程である。
試験工程においては、潤滑油供給機構7によって、吐出口711から潤滑油を筐体2内に供給し、試験中の筐体2内に導入された潤滑油の温度が常に所望の設定温度となるようにする。また、試験工程においては、ラジアル荷重付与機構6を用いて内側シャフト4を上側に向かって引っ張り、内側シャフト4を介して軸受にラジアル荷重を付与する。そして、試験工程においては、回転駆動機構5を用いて内側シャフト4のみを外側部材3に対して回転させることにより外側部材3と内側シャフト4との相対回転を生じさせる。さらに、試験工程においては、電源部16を用いて内側シャフト4、試料軸受10、及び外側部材3を通る回路に高周波交流電圧を印加し、当該回路を構成する試料軸受10に交流電流を流す。
ここで、試験工程においては、電流密度を500[mA/mm]以上とするとともに、試験装置1の筐体2内に導入される潤滑油の温度[℃]、回転駆動機構5によって回転駆動される内側シャフト4の回転速度[r/min]、ラジアル荷重付与機構6によって試料軸受10に付与されるラジアル荷重[N]を設定して油膜係数Λを2以上とする。試験工程は、振動値測定装置8によって測定される筐体2の振動値が試験開始時における振動値の2倍以上の所定振動値を超えるまで、又は試験時間が所定時間を超えるまで行う。筐体2の振動値が試験開始時における筐体2の振動値の2倍以上の所定振動値を超えた場合、試料軸受10に電食が生じたものと判断して試験を終了し、試験時間が所定時間を超えた場合、表面を観察することによって電食発生の有無を確認する。試験工程中において試料軸受10の電食の進行度合いを直接的に観察することは困難であるが、振動値が試験開始時における振動値の2倍以上の所定振動値を超えたことを確認することにより、電食が進行したことを間接的に把握できる。以上説明した試験方法によって、外輪軌道面101a又は内輪軌道面102aに、リッジマークRを伴う電食が発生しやすい状況を作ることができる。なお、電流密度を500[mA/mm]以上、油膜係数Λを2以上とすることによってリッジマークRを伴う電食が発生しやすい状況を作ることができる理由については、次の実験例にて述べる。
(実験例)
次に、本試験装置1を用いて、油膜係数及び電流密度を種々変更して試験を行ったときの、リッジマークRを伴う電食発生の有無を評価した実験例につき説明する。
本例においては、試料軸受10として、電食対策が特になされていない一般的な軸受を用いた。具体的には、本実験例においては、内輪102の内径が33mm、外輪101の外径が70mm、幅が14mm、基本動定格荷重Cが19.5[kN]、基本静定格荷重Coが11.9[kN]となる試料軸受10を複数用意した。
そして、前述の試験装置1を用い、油膜係数Λ及び電流密度を種々変更しつつ、試料軸受10の外輪軌道面101a及び内輪軌道面102aに電食が生じたか否かを試験した。試験方法は、前述の(試験方法)の欄において述べた方法と同様である。ただし、前述の(試験方法)の欄において述べた方法においては、試験工程において、電流密度を500[mA/mm]以上、油膜係数Λを2以上としたが、本実験例においては電流密度が500[mA/mm]未満となる場合や、油膜係数Λが2未満となる場合についても試験を行った。なお、本実験例においては、外輪軌道面101aと複数の転動体103との間に流れる電流の電流密度、及び内輪軌道面102aと複数の転動体103との間に流れる電流の電流密度のそれぞれは、概ね一致した。また、本実験例においては、試験工程を、振動値測定装置8によって測定される筐体2の振動値が試験開始時における振動値の3倍以上の振動値を超えるまで、又は試験時間が263時間を超えるまで行った。本実験例においては、筐体2の振動値が試験開始時における筐体2の振動値の3倍の振動値を超えた場合、試料軸受10に電食が生じたものと判断して試験を終了し、試験時間が263時間を超えた場合、表面を観察することによって電食発生の有無を確認した。
本実験例において、潤滑油の種類は、トヨタ自動車株式会社製のATF-WSとした。また、試験工程中の筐体2内に導入する潤滑油の温度は80℃とし、筐体2内に導入する油量は500[ml/min]と共通させた。また、本実験例において、各試料軸受10にアキシャル荷重(すなわち軸方向Xの荷重)は付与せず、ラジアル荷重のみを付与した。そして、内側シャフト4の間の回転速度、試料軸受10に付与するラジアル荷重を調整することによって油膜係数Λを種々変更して試験を行った。
実験結果を図6乃至図12に示す。図6は、各試料軸受10の油膜係数Λ及び電流密度と、電食発生の有無とを表した図である。図6において、黒塗りプロットは、外輪軌道面101a又は内輪軌道面102aに電食が生じた試料軸受10の試験結果を示し、白抜きプロットは、外輪軌道面101a及び内輪軌道面102aの双方に電食が生じなかった試料軸受10の試験結果を示す。図7は、図6の試料軸受10A(Λ≒1)の試験後の外輪軌道面101aの状態を示す写真である。図8は、図6の試料軸受10B(Λ≒2)の試験後の外輪軌道面101aの状態を示す写真である。図9は、図6の試料軸受10C(Λ≒3)の試験後の外輪軌道面101aの状態を示す写真である。図10は、図6の試料軸受10Aの試験後の外輪軌道面101aの断面図を模式的に示す図である。図11は、図6の試料軸受10Bの試験後の外輪軌道面101aの断面図を模式的に示す図である。図12は、図6の試料軸受10Cの試験後の外輪軌道面101aの断面図を模式的に示す図である。
図6、図8、図9、図11、図12に示すごとく、油膜係数Λが2以上、かつ電流密度が500mA/mm以上の試料軸受10は、すべて、リッジマークRを伴う電食が生じていることが分かる。それゆえ、試験工程において、油膜係数Λを2以上、かつ電流密度を500mA/mm以上とすることによって、リッジマークRを伴う電食が生じやすい状況を作ることができる。
なお、本実験例では、図7に示すごとく、試料軸受10Aには、リッジマークを伴わない電食が生じ、それ以外の黒塗プロットの試料軸受10については、図8及び図9に示すごとくリッジマークRを伴う電食が生じた。また、電食が発生した試料軸受10は、試験後、外輪軌道面101aの上部に大きな電食が生じ、外輪軌道面101aの上部以外、及び内輪軌道面102aには電食はほぼ見られなかった。本実験例においてはラジアル荷重付与機構6によって内側シャフト4を上側に引っ張り、外輪軌道面101aにおける上部が最も負荷が集中する箇所である。さらに、本実験例においては、外輪101を静止輪、内輪102を回転輪としたことから、外輪軌道面101aの上端部には試験中恒常的に負荷がかかる一方、内輪軌道面102aに関しては、回転により負荷がかかる部位が変動する。それゆえ、本形態においては、外輪軌道面101aの上端部のみに、大きく電食が見られたものと考えらえる。
また、図8と図9との比較により、油膜係数Λは、その値が大きいほどリッジマークRが鮮明に表れたことが分かる。すなわち、油膜係数Λは、その値が大きいほどリッジマークRを伴う電食が生じやすく、例えば油膜係数Λは、3以上とすることが好ましく、3.5以上とすることが一層好ましい。また、油膜係数Λは、6以下とすることが好ましい。現状、軸受潤滑用として使用されている潤滑油を本試験用の潤滑油として採用した場合、油膜係数Λが6を超すことは現実的に想定し難い。特に、電気自動車、ハイブリッド自動車等における電気モータ周辺に配される軸受において、油膜係数Λが6を超えることは想定し難い。また、電流密度は、2500mA/mm以下とすることが好ましい。電気自動車、ハイブリッド自動車等における電気モータ周辺に配される軸受においては、2500mA/mm以下の電流密度の電流が流れるものと想定されるためである。
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、この実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。例えば、本形態において、試料軸受10は、軌道輪100として外輪101と内輪102とを備える例を示したが、外輪101又は内輪102がないものであってもよい。また、前記実施の形態における試験方法では、内側シャフト4のみを回転させたが、これとは反対に、外側部材3を内側シャフト4に対して回転させてもよい。
10…試料軸受
100…軌道輪
100a…軌道面
103…転動体
3…外側部材
4…内側シャフト(内側部材)

Claims (3)

  1. 軌道輪と前記軌道輪の軌道面を転動する複数の転動体とを備える軸受の耐電食性を試験する軸受の試験方法であって、
    前記軸受を、回転軸線を中心として相対回転可能な外側部材と内側部材との間に配置する軸受配置工程と、
    前記軸受配置工程後、前記軸受への潤滑油の導入、前記軸受へのラジアル荷重の付与、及び前記軸受への電流の印加を行いながら、前記外側部材と前記内側部材とを相対回転させて前記転動体を転動させる試験工程と、を有し、
    前記試験工程中において前記軌道面と前記複数の転動体との間に導入される潤滑油の最小油膜厚さを、前記複数の転動体の表面と前記軌道面との合成表面粗さで除した値を油膜係数としたとき、
    前記試験工程においては、前記軌道面と前記複数の転動体との間の単位接触面積当たりの電流値である電流密度を500[mA/mm]以上とするとともに、前記潤滑油の温度、前記外側部材と前記内側部材との間の相対回転速度、及び前記軸受に付与するラジアル荷重を設定して前記油膜係数を2以上とする、
    軸受の試験方法。
  2. 前記試験工程においては、前記油膜係数が6以下となるよう、前記潤滑油の温度、前記外側部材と前記内側部材との間の相対回転速度、及び前記軸受に付与するラジアル荷重を設定する、
    請求項1に記載の軸受の試験方法。
  3. 前記外側部材又は前記内側部材の振動値が、試験開始時における振動値の2倍以上の所定振動値を超える振動値となったとき、前記試験工程を終了する、
    請求項1又は2に記載の軸受の試験方法。
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