JP2022066071A - 超音波プローブ及び超音波システム - Google Patents
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Abstract
【課題】超音波プローブの先端部に対する圧縮応力の印加に応じ、正確で精度よく送受信の遅延量を決定すること。【解決手段】実施形態に係る超音波プローブは、基材と、ヒンジ固定部と、複数の超音波振動子と、送受信部とを有する、基材は、曲げ剛性を有し、単調曲面状に凹む変形が可能である。ヒンジ固定部は、基材の相対する2端にそれぞれ設けられる。複数の超音波振動子は、圧電素子又は半導体で構成され、基材上にアレイ配置される。送受信部は、単調曲面状に変形後の基材上にアレイ配置された複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置に基づいて、各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う。【選択図】 図1
Description
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波プローブ及び超音波システムに関する。
医用分野では、超音波プローブの複数の超音波振動子を用いて発生させた超音波を利用して、被検体内部を画像化する超音波診断装置が使用されている。超音波診断装置は、超音波診断装置に接続された超音波プローブから被検体内に超音波を送信させ、反射波に基づくエコー信号を生成し、画像処理によって所望の超音波画像を得る。
超音波診断装置において、超音波プローブの各超音波振動子の幾何的位置と、対象焦点域との音路長に応じた遅延を与えることによってその送受信ビームフォーミングの制御を行っている。複数の超音波振動子が形成するアレイの配置形状が固定されないアレイ配置形状可変型の超音波プローブにおいて、各超音波振動子の幾何的位置は、アレイ配置形状の変更に応じて正確に測定されなければならない。
アレイ配置形状可変型の超音波プローブにおいて、各超音波振動子の幾何的位置を正確に測定するために、超音波振動子個々に対して位置センサを配置して、アレイ配置形状の変更後の各超音波振動子の幾何的位置を検出したり、又は、レーザー計測計によりアレイ配置形状の変更後の各超音波振動子の幾何的位置を計測したりする。そして、超音波診断装置は、その検出・計測結果に基づいて超音波振動子ごとの幾何的位置を求め、ビームフォーミングに用いる個々の超音波振動子の送受信信号の遅延量を決定している。
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、超音波プローブの先端部に対する圧縮応力の印加に応じ、正確で精度よく送受信の遅延量を決定することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
実施形態に係る超音波プローブは、基材と、ヒンジ固定部と、複数の超音波振動子と、送受信部とを有する、基材は、曲げ剛性を有し、単調曲面状に凹む変形が可能である。ヒンジ固定部は、基材の相対する2端にそれぞれ設けられる。複数の超音波振動子は、圧電素子又は半導体で構成され、基材上にアレイ配置される。送受信部は、単調曲面状に変形後の基材上にアレイ配置された複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置に基づいて、各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う。
以下、図面を参照しながら、超音波プローブ及び超音波システムの実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る超音波システムの構成例を示す概略図である。
図1は、実施形態に係る超音波システム1を示す。超音波システム1は、実施形態に係る超音波プローブ10と、超音波診断装置20と、入力インターフェース30と、ディスプレイ40とを備える。なお、超音波診断装置20に、超音波プローブ10と、入力インターフェース30と、ディスプレイ40とのうちの少なくとも1個を加えた装置を「超音波診断装置」と称する場合もある。以下の説明では、超音波診断装置20の外部に、超音波プローブ10と、入力インターフェース30と、ディスプレイ40との全てが備えられる場合について説明する。
超音波プローブ10は、前面部に、微小な圧電素子又は半導体で構成され、アレイ配置される複数の超音波振動子を備える。各超音波振動子は、スキャン対象を含む領域に対して超音波の送受波を行う。各超音波振動子は、電気音響変換素子であり、送信時には電気パルスを超音波パルスに変換し、また、受信時には反射波を電気信号(受信信号)に変換する機能を有する。超音波プローブ10は小型、軽量に構成されており、ケーブル(又は無線通信)を介して超音波診断装置20に接続される。
超音波プローブ10は、アレイ配列次元の違いにより、アジマス方向に1次元(1D)的に複数の超音波振動子が配列された1Dアレイプローブと、アジマス方向かつエレベーション方向に2次元(2D)的に複数の超音波振動子がアレイ配列された2Dアレイプローブとの種類に分けられる。なお、1Dアレイプローブは、エレベーション方向に少数の超音波振動子がアレイ配列されたプローブを含む。
ここで、3Dスキャン、つまり、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ10として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備えた2Dアレイプローブが利用される。又は、ボリュームスキャンが実行される場合、超音波プローブ10として、リニア型、コンベックス型、及びセクタ型等のスキャン方式を備え、エレベーション方向に機械的に揺動する機構を備えた1Dプローブが利用される。後者のプローブは、メカ4Dプローブとも呼ばれる。
なお、超音波プローブ10に備えられる複数の超音波振動子の配列関係については、図3以降の図面を用いて後述する。
超音波診断装置20は、送受信回路21と、Bモード処理回路22と、ドプラ処理回路23と、画像処理回路24と、画像生成回路25と、画像メモリ26と、ネットワークインターフェース27と、制御回路28と、メインメモリ29とを備える。回路21~25は、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)等によって構成されるものである。しかしながら、その場合に限定されるものではなく、回路21~25の機能の全部又は一部は、制御回路28がプログラムを実行することで実現されるものであってもよい。
送受信回路21は、送信回路と受信回路(図示省略)を有する。送受信回路21は、制御回路28による制御の下、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信回路21が超音波診断装置20に設けられる場合について説明するが、送受信回路21は、超音波プローブ10に設けられてもよいし、超音波診断装置20と超音波プローブ10との両方に設けられてもよい。なお、送受信回路21は、送受信部の一例である。
送信回路は、パルス発生回路と、送信遅延回路と、パルサ回路等を有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ10の超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な超音波振動子ごとの遅延時間を、パルス発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間(すなわち、送信支援時間)を変化させることで、超音波振動子から送信される超音波ビームの送信方向を任意に調整する。送信遅延時間は、図2~図6を用いて後述する複数の超音波振動子の相対的な位置関係、焦点深さ等に基づいて算出される。
受信回路は、アンプ回路、A/D(Analog to Digital)変換器、及び加算器等を有し、超音波振動子が受信したエコー信号を受け、このエコー信号に対して各種処理を行ってエコーデータを生成する。アンプ回路は、エコー信号をチャンネル毎に増幅してゲイン補正処理を行う。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間(すなわち、受信遅延時間)を与える。加算器は、A/D変換器によって処理されたエコー信号の加算処理を行ってエコーデータを生成する。加算器の加算処理により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。受信遅延時間は、図2~図6を用いて後述する複数の超音波振動子の相対的な位置関係、焦点深さ等に基づいて算出される。
Bモード処理回路22は、制御回路28による制御の下、受信回路からエコーデータを受信し、対数増幅、及び包絡線検波処理等を行って、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、Bモードデータと呼ばれる。なお、Bモード処理回路22は、Bモード処理部の一例である。
ドプラ処理回路23は、制御回路28による制御の下、受信回路からのエコーデータから速度情報を周波数解析し、平均速度、分散、パワー等の移動体の移動情報を多点について抽出したデータ(2次元又は3次元データ)を生成する。このデータは、一般に、ドプラデータと呼ばれる。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。なお、ドプラ処理回路23は、ドプラ処理部の一例である。
Bモード処理回路22によって生成されるBモードデータや、ドプラ処理回路23によって生成されるドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データである。一方で、後述する画像生成回路25によって生成されるデータは、スキャンコンバート処理後の表示画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
画像処理回路24は、制御回路28による制御の下、スキャンコンバージョン処理前の画像データである生データを取得する。なお、画像処理回路24は、画像処理部の一例である。
画像生成回路25は、一般的には、画像処理回路24によって生成された合成画像データを、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、スキャンコンバージョン処理後の画像データである表示画像データを生成する。具体的には、画像生成回路25は、超音波プローブ10による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示画像データを生成する。なお、画像生成回路25は、画像生成部の一例である。
画像メモリ26は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。画像メモリ26は、制御回路28の制御による制御の下、画像生成回路25によって生成された超音波画像データを、2次元データとしてのみならず、ボリュームデータとして記憶する。なお、画像メモリ26は、記憶部の一例である。
ネットワークインターフェース27は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。ネットワークインターフェース27は、この各種プロトコルに従って、超音波診断装置20と、外部装置(図示省略)とを接続する。この接続には、電子ネットワークを介した電気的な接続等を適用することができる。ここで、電子ネットワークとは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味し、無線/有線の病院基幹のLAN(Local Area Network)やインターネット網の他、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク及び衛星通信ネットワーク等を含む。また、ネットワークインターフェース27は、非接触無線通信用の種々のプロトコルを実装してもよい。この場合、超音波診断装置20は、例えば超音波プローブ10と、ネットワークを介さず直接にデータ送受信することができる。なお、ネットワークインターフェース27は、ネットワーク接続部の一例である。
制御回路28は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、及び、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等が挙げられる。
また、制御回路28は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メインメモリ29は回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメインメモリ29が複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。なお、制御回路28は、処理部の一例である。
メインメモリ29は、RAM(random access memory)、フラッシュメモリ(flash memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メインメモリ29は、USB(universal serial bus)メモリ及びDVD(digital video disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。メインメモリ29は、制御回路28において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータを記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ40への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース30によって行うことができるGUI(graphical user interface)を含めることもできる。なお、メインメモリ29は、記憶部の一例である。
入力インターフェース30は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して制御回路28に出力する。なお、入力インターフェース30は、入力部の一例である。
ディスプレイ40は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ40は、制御回路28の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ40は、表示部の一例である。
続いて、超音波プローブ10の構成について説明する。
図2は、超音波プローブ10の外観と、操作者による把持状態を示す図である。図2に示すように、超音波プローブ10の先端部は、操作者の握力によって把持可能である。
図3は、超音波プローブ10の先端部を模式的に示す縦断面図である。図3(A)は、圧縮応力印加前の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図であり、図3(B)は、圧縮応力印加後(印加中)の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図である。図3(B)は、図3(A)の基材Mに軸力が作用して座屈現象が起き、基材Mが単調曲面状に曲がっている状態を示す。なお、図3(A),(B)の横方向は、アレイ方向、つまり、アジマス方向を示す。
図3(A)に示すように、圧縮応力印加前の状態の超音波プローブ10は、基材Mと、ヒンジ固定部H1,H2と、複数(n個)の超音波振動子En(E1,E2,E3,…,En)と、筐体Cとを備える。
基材Mは、曲げ剛性を有し、単調曲面状に凹む変形が可能である。例えば、基材Mは、角形平板基材である。ヒンジ固定部H1,H2は、基材Mの相対する2端にそれぞれ設けられ、超音波プローブ10の筐体Cの内壁面に固定される。ヒンジ固定部H1,H2は、回転端止め構造を備えるものである。
超音波振動子Enは、圧電素子又は半導体で構成され、基材M上にアレイ配置される。例えば、超音波振動子Enは、基材M上に、等間隔にアレイ配置される。なお、超音波振動子Enは、基材M上に、不等間隔にアレイ配置されていてもよい。また、例えば、超音波振動子Enは、基材M上に、1次元アレイ配置、又は、2次元アレイ配置される。
筐体Cは、その内壁面において、ヒンジ固定部H1,H2を介して基材Mを支持する。また、筐体Cは、少なくともその先端側は、超音波プローブ10の内部側に変形可能な材料で構成される。
なお、超音波プローブ10は、音響レンズと、音響整合層と、背面材等をさらに備えることができるが、それらの図示は省略される。音響レンズは、超音波プローブ10のプローブヘッドに設けられ、所定の形状をもって形成される。音響整合層は、超音波振動子Enと音響レンズとの間に設けられ、超音波振動子Enと生体の中間的な音響インピーダンスを有する物質で構成される。音響整合層を設けることで、超音波振動子Enと生体との音響インピーダンス差が小さくなるため、超音波を生体に効率よく伝えることができる。背面材は、バッキング材とも呼ばれる。背面材は、超音波振動子Enの背面に設けられた、振動を抑制するための部材である。背面材を設けることで、超音波が放射される方向と逆方向への音を吸収して余分な振動を抑えることができ、超音波のパルス幅を短くすることができる。
図3(A)に示す超音波プローブ10に対し、操作者の握力により、筐体Cを介してヒンジ固定部H1,H2間(x軸方向)に圧縮応力Pが印加されることにより、筐体Cが凹ませられる。それに従い、基材Mが単調曲面状に変形される(図3(B)に図示)。なお、図3(B)に示す各超音波振動E1´,E2´,E3´,…,En´は、図3(A)に示す各超音波振動E1,E2,E3,…,Enとそれぞれ同一のものであり、各超音波振動E1,E2,E3,…,Enから位置がそれぞれ変化しているものである。
ここで、基材Mは、単調曲面状に変形されるものであるから、基材M上の各点の位置、つまり、基材Mに設けられる各超音波振動E1,E2,E3,…,Enの位置、つまり、相対的な位置関係を算出することができる。
送受信回路21は、単調曲面状に変形後の基材M上にアレイ配置された超音波振動子Enの各超音波振動子の位置(すなわち、各超音波振動子の、他の超音波振動子の位置)に基づいて、各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う。例えば、送受信回路21は、基材Mが単調曲面状に変形された状態(又は、ヒンジ固定部H1,H2間に圧縮応力が印加された状態)を認識すると、単調曲面状に変形後における超音波振動子Enの各超音波振動子の位置を、基材Mの剛性特性値と単調曲面状に変形後におけるヒンジ固定部H1,H2間の距離との関数として算出するものとする。
例えば、超音波プローブ10が基材Mの変形(又は、圧縮応力の印加)を検出するセンサ(図示省略)を設けることで、送受信回路21は、基材Mが単調曲面状に変形された状態を認識することができる。又は、圧縮応力を印加する操作者による手動操作により、送受信回路21は、基材Mが単調曲面状に変形された状態を認識することができる。これにより、送受信回路21は、リアルタイムで、単調曲面状に変形後における超音波振動子Enの各超音波振動子の位置を算出する。
具体的には、曲げ剛性EIの一様断面の基材Mが、両側からヒンジ固定部H1,H2間に圧縮応力Pを受ける場合、x軸上のあるx座標におけるy軸方向の変位(y座標)は、次の式(1)に従う。なお、x軸上のあるx座標におけるy軸方向の変位(y座標)は、x軸上のx座標にある超音波振動子の、y軸方向の変位(y座標)とみなすことができる。ここで、「E・I」は、曲げ剛性を意味する。
ここで、ヒンジ固定部H1において、「xが0の時、yは0である」という既知の条件を上記式(4)に導入する。この場合、上記式(4)の右辺第一項は、「sin 0=0」となるので、「0」になる一方で、第二項は、「cos 0=1」なので、「B」になる。そして、左辺は「0」なので、「B」は、「0」でなければならない。そのため、上記式(4)は、次の式(5)のようになる。
一方で、ヒンジ固定部H2において、「xがLxの時、yは0である」という既知の条件を上記式(4)に導入する(「Aが0である」という条件を除く)。そのため、求める解は、次の式(6)のようになる。ここで、「Lx」は、単調曲面状に変形後におけるヒンジ固定部H1,H2間の距離である。
上記式(8)により、変形前における第1の超音波振動子E1の位置[x1,0]から、変形後の位置[x1,y1]=[x1,A sin (πx1/Lx)]が得られ、…、変形前における第nの超音波振動子Enの位置[xn,0]から、変形後の位置[xn,yn]=[xn,A sin (πxn/Lx)]が得られる。このように、送受信回路21は、基材Mが単調曲面状に変形された状態を認識すると、単調曲面状に変形後における超音波振動子Enの各超音波振動子の位置、すなわち、x座標及びy座標を算出することができる。
なお、単調曲面状に変形後におけるヒンジ固定部H1,H2間の距離Lxは、固定値とされていればよい。つまり、超音波プローブ10は、筐体Cへの圧縮応力の印加による凹みを制御するような内部機構(図示省略)を設ける。そして、操作者は、筐体Cに圧縮応力の印加することで、筐体Cを最大限まで凹ませることで、ヒンジ固定部H1,H2間の距離Lxを固定値とすることができる。なお、圧縮応力の印加による筐体Cの凹みの制御は、1段階に限定されるものではなく、多段階で行われてもよい。
また、超音波プローブ10に複数の超音波振動子が1次元配列される場合の、変形後における各超音波振動子の位置の算出について説明したが、その場合に限定されるものではない。超音波プローブ10に複数の超音波振動子が2次元配列される場合の、変形後における各超音波振動子の位置を算出してもよい。その場合、z軸方向(図3の紙面の奥行方向)のz座標は、変形前後で変化しないものとすることができる。
以上のように、超音波プローブ10又は超音波システム1によれば、超音波プローブ10の先端部に対する一定の圧縮応力の印加による、超音波振動子Enそれぞれの変化後の位置をリアルタイムで算出することで、正確で精度よく送受信の遅延量をリアルタイムで決定することができる。
(第1変形例)
実施形態に係る超音波プローブ10又は超音波システム1では、変形後における超音波振動子Enそれぞれの位置をリアルタイムで算出するものである。一方で、第1変形例では、変形後における超音波振動子Enそれぞれの変化後の位置を予め実測し、実測結果をテーブルとして保持するものである。変形に応じたy座標の変位は基材Mの材料ごとに多少異なるので、基材Mの材料ごとに予め設定されたテーブルを利用することで、そのばらつきを抑えることができる。
実施形態に係る超音波プローブ10又は超音波システム1では、変形後における超音波振動子Enそれぞれの位置をリアルタイムで算出するものである。一方で、第1変形例では、変形後における超音波振動子Enそれぞれの変化後の位置を予め実測し、実測結果をテーブルとして保持するものである。変形に応じたy座標の変位は基材Mの材料ごとに多少異なるので、基材Mの材料ごとに予め設定されたテーブルを利用することで、そのばらつきを抑えることができる。
第1変形例において、図1に示すメインメモリ29は、変形後における超音波振動子Enそれぞれの位置を、基材Mの材料ごとにテーブルとして保持する。
図4は、超音波プローブ10において、単調曲面状に変形後における超音波振動子Enそれぞれの位置をテーブルとして示す図である。
図4に示すように、メインメモリ29は、単調曲面状に変形後における超音波振動子Enの各超音波振動子の位置をテーブルとして記憶する。送受信回路21は、基材Mが単調曲面状に変形された状態を認識すると、メインメモリ29に記憶された各超音波振動子の位置に基づいて、各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う。
なお、上述したが、送受信回路21が超音波プローブ10に設けられる場合もある。その場合、当該テーブルを記憶するメインメモリ29は超音波プローブ10に設けられるものとする。
以上のように、超音波プローブ10又は超音波システム1の第1変形例によれば、上述の効果に加え、基材Mの特性に応じた超音波振動子の位置変化に基づいて、正確に精度よく遅延時間を算出することができる。
(第2変形例)
上述では、操作者が手動で超音波プローブ10の筐体Cに圧縮応力を印加して基材Mを変形させる場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、超音波プローブ10は、超音波プローブ10の筐体Cに対して内側に圧縮応力を印加するための駆動部(モータ等)を備え、圧縮応力P(又は、距離Lx)を制御してもよい。
上述では、操作者が手動で超音波プローブ10の筐体Cに圧縮応力を印加して基材Mを変形させる場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、超音波プローブ10は、超音波プローブ10の筐体Cに対して内側に圧縮応力を印加するための駆動部(モータ等)を備え、圧縮応力P(又は、距離Lx)を制御してもよい。
図5は、超音波プローブ10の先端部を模式的に示す縦断面図である。図5(A)は、圧縮応力印加前の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図であり、図5(B)は、圧縮応力印加後(印加中)の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図である。図5(B)は、図5(A)の基材Mに軸力が作用して座屈現象が起き、基材Mが単調曲面状に曲がっている状態を示す。図5(A),(B)の横方向は、アレイ方向、つまり、アジマス方向を示す。
図5(A)は、図3(A)と同等で、圧縮応力印加前の超音波プローブ10の先端部を示す。さらに、超音波プローブ10は、基材Mに対して圧縮応力を印加するための駆動部(モータ等)Uを備える。例えば、超音波ビームの焦点深さFyごとに適切な圧縮応力P(又は、距離Lx)を予め設定する。
図5(B)に示すように、送受信回路21は、検査対象の深さ、つまり、焦点深さFyに応じた圧縮応力Pを取得し、その圧縮応力Pが基材Mに印加されるように駆動部Uを制御する。そして、送受信回路21は、各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御(すなわち、各超音波素子の遅延時間τn(t)の設定制御)を、焦点深さFyの関数として制御する。
なお、上述したが、送受信回路21が超音波プローブ10に設けられる場合もある。
以上のように、超音波プローブ10又は超音波システム1の第2変形例によれば、上述の効果に加え、検査対象の深さに応じて基材Mを駆動部Uにより適切に変形させることができる。
(第3変形例)
上述では、基材Mの凹面側(又は、超音波送受信の正面側)に超音波振動子Enがアレイ配列される場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、基材Mの凸面側(又は、超音波送受信の背面側)に超音波振動子Enがアレイ配列されてもよい。
上述では、基材Mの凹面側(又は、超音波送受信の正面側)に超音波振動子Enがアレイ配列される場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。例えば、基材Mの凸面側(又は、超音波送受信の背面側)に超音波振動子Enがアレイ配列されてもよい。
図6は、超音波プローブ10の先端部を模式的に示す縦断面図である。図6(A)は、圧縮応力印加前の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図であり、図6(B)は、圧縮応力印加後(印加中)の超音波プローブ10の先端部を示す縦断面図である。図6(B)は、図6(A)の基材Mに軸力が作用して座屈現象が起き、基材Mが単調曲面状に曲がっている状態を示す。なお、図6(A),(B)の横方向は、アレイ方向、つまり、アジマス方向を示す。
図6に示す超音波振動子Enがアレイ配列であっても、図3及び図5と同じような効果が得られることは言うまでもない。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、超音波プローブ10の先端部に対する圧縮応力Pの印加(距離Lx)に応じ、正確で精度よく送受信の遅延量を決定することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 超音波システム
10 超音波プローブ
20 超音波診断装置
21 送受信回路
29 メインメモリ
M 基材
H1,H2 ヒンジ固定部
En 複数の超音波振動子
U 駆動部
10 超音波プローブ
20 超音波診断装置
21 送受信回路
29 メインメモリ
M 基材
H1,H2 ヒンジ固定部
En 複数の超音波振動子
U 駆動部
Claims (8)
- 曲げ剛性を有し、単調曲面状に凹む変形が可能な基材と、
前記基材の相対する2端にそれぞれ設けられるヒンジ固定部と、
圧電素子又は半導体で構成され、前記基材上にアレイ配置される複数の超音波振動子と、
前記単調曲面状に変形後の前記基材上にアレイ配置された前記複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置に基づいて、前記各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う送受信部と、
を有する超音波プローブ。 - 前記送受信部は、前記単調曲面状に変形後における前記複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置を、前記基材の剛性特性値と前記単調曲面状に変形後における前記ヒンジ固定部間の距離との関数として算出する、
請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記単調曲面状に変形後における前記複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置を記憶する記憶部、をさらに有し、
前記送受信部は、前記記憶部に記憶された前記各超音波振動子の位置に基づいて、前記各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う、
請求項1に記載の超音波プローブ。 - 前記基材に対して圧縮応力を印加するための駆動部をさらに有し、
前記送受信部は、焦点深さに応じた圧縮応力となるように前記駆動部を制御し、前記各超音波振動子の前記送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を、前記焦点深さの関数として制御する、
請求項1又は2に記載の超音波プローブ。 - 前記複数の超音波振動子は、前記基材上に、等間隔にアレイ配置される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波プローブ。 - 前記複数の超音波振動子は、前記基材上に、1次元アレイ配置、又は、2次元アレイ配置される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波プローブ。 - 前記基材は、角形平板基材である、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波プローブ。 - 超音波プローブと超音波診断装置とを備える超音波システムであって、
前記超音波プローブは、
曲げ剛性を有し、単調曲面状に凹む変形が可能な基材と、
前記基材の相対する2端にそれぞれ設けられるヒンジ固定部と、
圧電素子又は半導体で構成され、前記基材上にアレイ配置される複数の超音波振動子と、
を有し、
前記超音波診断装置は、
前記単調曲面状に変形後の前記基材上にアレイ配置された前記複数の超音波振動子の各超音波振動子の位置に基づいて、前記各超音波振動子の送受信ビームフォーミングに係る遅延制御を行う送受信部、
を有する超音波システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020174982A JP2022066071A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 超音波プローブ及び超音波システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2020174982A JP2022066071A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 超音波プローブ及び超音波システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022066071A true JP2022066071A (ja) | 2022-04-28 |
Family
ID=81387823
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020174982A Pending JP2022066071A (ja) | 2020-10-16 | 2020-10-16 | 超音波プローブ及び超音波システム |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2022066071A (ja) |
-
2020
- 2020-10-16 JP JP2020174982A patent/JP2022066071A/ja active Pending
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