以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(第1の実施の形態)
図1(a)は本発明の第1の実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図、図1(b)は図1(a)のトンネル研掃システムを構成する高所作業車のデッキ部上昇時の概念図である。なお、図1(a),(b)においては、説明を分かり易くするためにトンネル研掃装置の下部も透かして見せている。
本実施の形態のトンネル研掃システム(研掃システム)Sは、例えば、曲面状に形成されたトンネルの内壁面WSを研掃可能なシステムであり、自走可能な高所作業車(作業車両)Vと、高所作業車Vに搭載されたトンネル研掃装置(研掃装置)10とを備えている。
高所作業車Vは、トンネル研掃装置10を所定の場所に移動するとともに、トンネル研掃装置10の高さを所定の高さに設定することが可能な特殊車両であり、その荷台側には、パンタグラフ部(昇降機)Vpと、その上に設置されたデッキ部Vbとを備えている。パンタグラフ部Vpは、デッキ部Vbを昇降させるための昇降機構部であり、これによりデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置10を所定の高さに設定することでトンネル研掃装置10によるトンネルの研掃作業を行うことが可能になっている。
この図1の高所作業車Vにおいては、トンネル研掃装置10を搭載したときに低振動数の揺れがなく、たわみも15mm程度に抑えることができるので、トンネル研掃装置10の搭載車両として適用できる。また、図1の高所作業車Vの場合、トンネル研掃装置10を安定した状態で搭載でき、トンネル研掃装置10が搭載されたデッキ部Vb上を上昇させたまま走行移動することができるので、研掃作業を効率的に実施することができる。
このような高所作業車Vのデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置10は、トンネルの湾曲した内壁面WSに対して研削材(ブラスト)を吹き付けることで当該内壁面WSを研掃する研削材噴射型の研掃装置であり、架台18と、架台18に搭載された研掃装置本体BEとを備えている。この研掃装置本体BEは、例えば、昇降機構部(昇降手段)12と、その昇降機構部12に保持されたロッド15と、ロッド15の先端に着脱自在および揺動自在の状態で支持された研掃ヘッド17とを備えている。
まず、本実施の形態のトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17について図2~図4を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態であるトンネル研掃装置の正面図、図3は図2のトンネル研掃装置の側面図、図4は図2のトンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの主面の平面図である。
図2および図3に示すように、本実施の形態のトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17は、トンネルの内壁面WSを研掃するための手段であり、取付部17aと、アーム部17rと、ロータリアクチュエータ(揺動角設定手段)17ra(図3参照)と、エアシリンダ17p(図3参照)とを備えている。
研掃ヘッド17の取付部17aは、取付台17a-1と、回動板17a―2と、背面板17a-3とを備えている。取付台17a-1は、トンネルの内壁面WSに対向する主面(第1面)と、その裏側の裏面(第2面)とを有している。この取付台17a-1の主面には、図2~図4に示すように、研掃機(研掃部)17bと、キャスタ17cと、第1のリングブラシ17s-1と、第2のリングブラシ17s-2とが設置され、取付台17a-1の裏面側において取付台17a-1の長手方向の両端には、2枚の回動板17a-2が取付台17a-1と一体的に立設されている。
研掃機17bは、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削するために、その内壁面WSに研削材を吹き付ける研削材噴射部である。ここでは、図3および図4に示すように、研掃機17bが、例えば、2台設置されている。各研掃機17bには、図4に示すように、内側から外側に向かって、噴射口(噴射口部)17b-1と、吸引口(吸引口部)17b-2と、第1のリングブラシ17s-1とが同心円状に配置されている。
研掃機17bの噴射口17b-1は、上記した研削材を噴射するための開口部であり、平面視で、例えば、円形状に形成されている。噴射口17b-1の直径は、例えば、80mm程度である。噴射口17b-1の平面形状は円形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長円等、種々変更可能である。取付台17a-1の裏面において噴射口17b-1の後方には、図2および図3に示すように、研掃ヘッド17に研削材を供給する吐出ホース(研削材供給管)17b-3が機械的に接続されている。この吐出ホース17b-3を通じて送られた研削材は、噴射口17b-1(図4参照)から噴射されてトンネルの内壁面WSに吹き付けられるようになっている。
図4に示すように、研掃機17bの吸引口17b-2は、研掃処理によりトンネルの内壁面WSから剥がれた剥離片や吹き付け後の研削材を負圧吸引する開口部であり、例えば、噴射口17b-1の外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。取付台17a-1の裏面において吸引口17b-2の後方には、吸引口17b-2から吸引された剥離片や研削材を流す吸引ホース(吸引管)17b-4(図2参照)が機械的に接続されている。なお、図3では図面を見易くするため吸引ホース17b-4の図示を省略した。
このような2台の研掃機17bは、図2~図4に示すように、各々の研掃機17bの噴射口17b-1および吸引口17b-2を、トンネルの内壁面WSに対向させることが可能な状態で取付台17a-1に設置されている。また、2台の研掃機17bは、図4に示すように、研掃方向に沿って並んで配置されている。そして、図4の左側または右側から取付台17a-1の側面を見たときに、2台の研掃機17b,17bは、その各々の噴射口17b-1,17b-1同士が一部重なり(オーバーラップし)つつも、研掃機17b,17bの並設方向に対して交差(直交)する方向に互いにずれた状態で配置されている。この噴射口17b-1,17b-1の位置ずれにより、研削材の噴射幅が設定されている。本実施の形態では、2台の研掃機17b,17bの噴射口17b-1,17b-1のオーバーラップ寸法が、例えば、40mmとなっているので、トンネルの内壁面WSに対して研削材が120mm(=80mm×2-40mm)の幅で噴射されることになる。但し、これらの数値は例示に過ぎず、本発明がこれらの数値に拘束されるものではない。
なお、研掃機17bの設置台数は自由に設定でき、1台でも3台以上でもよい。また、研掃機17bを3台以上設ける場合、研掃機17bの並設方向に沿って研掃機17bを千鳥状に配置してもよいし、相互にずらして配置しなくてもよい。さらに、研掃機17bは、本実施の形態のような研削材噴射型ではなく、加圧された水流でトンネルの内壁面WSを研掃するウォータージェット型などでもよい。
また、図2~図4に示すように、キャスタ17cは、研掃作業に際して、取付台17a-1の主面とトンネルの内壁面WSとの間に一定の間隔を確保するとともに、研掃ヘッド17を内壁面WSに沿って移動させる部材であり、図4に示すように、例えば、トンネル内壁面WSに面した取付台17a-1の主面の四隅に配置されている。研掃作業時には、当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSと接することで取付台17a-1とトンネルの内壁面WSとが一定の間隔に保たれつつ、研掃ヘッド17の移動に伴って当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに沿って回転するようになっている。
キャスタ17cの車輪部は、例えば、ゴムまたはウレタンやナイロン等のようなプラスチックで構成されている。これにより、キャスタ17cが内壁面WSに接触したときに内壁面WSに損傷等を生じさせない上、キャスタ17cを軽量化できるので研掃ヘッド17を軽量化することができる。また、キャスタ17cは、取付台17a-1の主面内(すなわち、内壁面WSの研掃面内)において360°回転自在な構成になっている。これにより、研掃時に研掃ヘッド17の移動方向の自由度を向上させることができる。
さらに、それぞれのキャスタ17cには荷重計SL3(図12)が装着されており、研掃作業時にキャスタ17cに加わる荷重(つまり、トンネルの内壁面WSに圧接されたときの荷重)を計測することが可能になっており、限界値(例えば、10N(100kgf))を超えた過大な荷重が加わらないようになっている。なお、キャスタ17cの個数、取付位置または材料等は、上記したものに限定されるものではなく、種々変更可能である。
また、図4に示すように、第1のリングブラシ17s-1は、剥離片や研削材等のような飛散物が、取付台17a-1の主面内より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、各研掃機17bの外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。また、図2~図4に示すように、第2のリングブラシ17s-2は、上記飛散物が取付台17a-1の主面より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、図4に示すように、2台の研掃機17b,17bを取り囲むように平面視で、例えば、矩形枠状に形成されている。このように第2のリングブラシ17s-2を設けることで、上記飛散物が外部に漏れるのをより一層抑制または防止することができる。
このような第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2は、着脱自在の状態で取付台17a-1に取り付けられている。したがって、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2が劣化したら交換すればよいので、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2の寿命によって研掃ヘッド17の寿命が決められてしまうこともない。なお、図2および図3においては、研掃機17bを見易くするため、第1のリングブラシ17s-1の図示を省略し、第2のリングブラシ17s-2を断面で示した。
図2および図3に示すように、上記した背面板17a-3は、主に研掃機17bを固定する板材であり、取付台17a-1の裏面に対向する主面とその裏側の裏面とを有している。この背面板17a-3は、その主面を取付台17a-1の裏面に対向させた状態で取付台17a-1の長手方向両端の2枚の回動板17a-2間に設置されている。
また、上記したアーム部17rは、取付部17aを揺動自在の状態で支持する揺動部であり、ベース板17r-1を備えている。ベース板17r-1は、取付台17a-1の裏面に対向する主面と、その裏側のロッド15の先端面に対向する裏面とを有している。ベース板17r-1の主面においてベース板17r-1の長手方向の両端には、ベース板17r-1の主面に対して直交する方向に延びる2枚の第1の支持板17r-2が設けられ、ベース板17r-1の裏面においてベース板17r-1の長手方向の中央には、ベース板17r-1の裏面に対して直交する方向に延びる2枚の第2の支持板17r-3が設けられている。
このアーム部17rの2枚の第1の支持板17r-2は、ロッド15に対して斜め方向に延在し、その延在端部が上記した取付台17a-1の2枚の回動板17a-2と平面視で重なっている。このアーム部17rの第1の支持板(第1の揺動部)17r-2と、取付台17a-1の回動板(第1の揺動部)17a-2とは、それらを貫通するように設けられた締結部材(第1の揺動部)17x-1によって互いに回動自在の状態で接続されている。これにより、取付部17aは、第1の揺動方向PR1(図2参照)に揺動自在の状態でアーム部17rに取り付けられている。
なお、図3に示したロータリアクチュエータ17raは、取付部17aの第1の揺動方向PR1(図2参照)の揺動角度(上下方向の揺動角度)を制御するための機器であり、研掃ヘッド17の片側側面に設置されている。ロータリアクチュエータ17raは、研掃ヘッド17を最適な角度でトンネルの内壁面WSに押し付けるため研掃ヘッド17の角度調整を行うためのものである。そして、押し付け後はロータリアクチュエータ17raを開放することで、研掃ヘッド17は内壁面WSに沿って揺動しながら研掃を行う。
また、上記したようにアーム部17rの第1の支持板17r-2をロッド15の延在方向に対して斜め方向に延在させたことにより取付台17a-1がロッド15に対して斜め上方に取り付けられている。これにより、研掃作業時に曲面形状のトンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17の研掃面を大きな力で押し付けることができるようになっている。
一方、アーム部17rのベース板17r-1の裏面の2枚の第2の支持板17r-3の先端面は弧状に形成されている。この2枚の第2の支持板17r-3の間には、ロッド15の先端面に形成された1枚の凸部15-1が介在されている。この凸部15-1の先端面も弧状に形成されている。そして、ベース板17r-1の裏面の2枚の第2の支持板(第2の揺動部)17r-3と、ロッド15の凸部(第2の揺動部)15-1とは、それらを貫通するように設けられた締結部材(第2の揺動部)17x-2(図2参照)によって互いに回動自在の状態で接続されている。これにより、研掃ヘッド17(取付台17a-1およびアーム部17r)は、第1の揺動方向PR1(図2参照)に対して交差(直交)する第2の揺動方向PR2(図3参照)に揺動自在の状態でロッド15に取り付けられている。このベース板17r-1の第2の支持板17r-3とロッド15の凸部15-1とを締結する締結部材17x-2は、取り外しが可能になっており、この締結部材17x-2を取り外すことで研掃ヘッド17を取り外すことが可能になっている。
このように本実施の形態によれば、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSに追従して研掃ヘッド17を第1の揺動方向PR1(図2参照)およびこれに交差(直交)する第2の揺動方向PR2(図3参照)に揺動させることができるので、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSであっても良好に研掃することができる。
図3に示すように、上記したエアシリンダ17pは、研掃機17bを上下動可能な状態で支持する部材である。このエアシリンダ17pは、そのシリンダロッド17p-1の先端部を背面板17a-3の裏面側に固定させた状態で、支持フレーム17eの長手方向の中央に取り付けられている。これにより、エアシリンダ17pは、反力をとるように設置されている。
また、この支持フレーム17eの長手方向の両端部と取付台17a-1の裏面との間には、例えば、2本の伸縮ロッド17d,17dが設置されている。この2本の伸縮ロッド17d,17dにより、エアシリンダ17pから2台の研掃機17bに対して適切な圧力が加わるように調整され、2台の研掃機17bの主面内に対して均一な圧力が加わるように調整されている。
また、図4に示すように、2本の伸縮ロッド17d,17dは、取付台17a-1の裏面内においてエアシリンダ17pを中央にして互いに斜めになるように配置されている。このような配置にすることで2本の伸縮ロッド17d,17dでも2台の研掃機17bに対して充分な圧力を加えられるようにできる。すなわち、伸縮ロッド17d,17dを2本で済ませることができるので、研掃ヘッド17を軽量化することができる。
研掃作業時には、図3に示すように、エアシリンダ17pのシリンダロッド17p-1を伸長させると、取付台17a-1の主面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに適切な圧力で押し付けられるとともに、取付台17a-1の主面の第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が内壁面WSに適切な圧力で押し付けられるようになっている。
次に、トンネル研掃装置10のロッド15および昇降機構部12について図2、図3、図5および図6を参照して説明する。図5(a)は図2のトンネル研掃装置の研掃ヘッドの昇降機構部を説明するためのトンネル研掃装置の要部正面図、図5(b)は図5(a)のトンネル研掃装置の要部側面図、図6(a)は研掃ヘッドを最下部に設置した状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、図6(b)は研掃ヘッドを第1の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、図6(c)は研掃ヘッドを第2の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図である。なお、図5おおび図6では、説明を分かり易くするため昇降機構部12の内部を透かして見せているとともに、エアシリンダのシリンダを断面で示しハッチングを付した。また、図5および図6では、図面を見易くするため架台18(図2および図3参照)を省略した。また、図5(b)では図面を見易くするためロータリアクチュエータ17ra(図3参照)を省略した。
図2に示すように、昇降機構部12は、第1の昇降機構部(第1の昇降手段)12aと、その隣に並んで設置された第2の昇降機構部(第2の昇降手段)12bとを備えている。
図5に示すように、第1の昇降機構部12aは、中空状の保持フレーム12afと、その中空内に上下動自在の状態で設置されたエアシリンダ12acとを備えている。エアシリンダ12acは、エアコンプレッサCP(図12)を駆動源とし、当該エアコンプレッサCPから供給される圧縮空気によって研掃ヘッド17を上下動させるための昇降機器であり、シリンダロッド12arを上に向け、起立した状態で設置されている。シリンダロッド12arの先端は、上記したロッド15の取付板15fに機械的に接続されている。これにより、図6に示すように、エアシリンダ12acのシリンダロッド12arを上方に延ばすとロッド15および研掃ヘッド17が上昇し(図6(b)参照)、シリンダロッド12acを下方に縮めるとロッド15および研掃ヘッド17が下降する(図6(a)参照)ようになっている。なお、上記したロッド15の下部側は、保持フレーム12afの中空内に挿入された状態で設置されている。また、ロッド15の側面と、保持フレーム12afの中空内側面との間に、ロッド15の側面部を支持するローラ対(図示せず)を設けてもよい。これにより、ロッド15をローラ対により安定させた状態で上下動させることができる。
一方、図5に示すように、第2の昇降機構部12bは、中空状の保持フレーム12bfと、その中空内に設置されたボールネジ12bnと、保持フレーム12bfの外部に設置されたスクリュモータ12bmとを備えている。ボールネジ12bnは、エアシリンダ12ac自体を上下動させることで研掃ヘッド17を上下動させるための昇降機器であり、ネジ軸12bn1と、ナット12bn2とを備えている。
ネジ軸12bn1は、鉛直方向に沿って起立した状態で設置されている。ナット12bn2は、上下動自在の状態でネジ軸12bn1の外周に螺合されている。このネジ軸12bn1とナット12bn2との間には、図示しない、複数個のボールと、ボールを循環させる循環部品(デフレクタおよびリターンプレート等)とが介在されている。また、ナット12bn2は、支持部12bn3と一体的に接続されている。この支持部12bn3は、エアシリンダ12acを支持するようにエアシリンダ12acと機械的に接続されている。
スクリュモータ12bmは、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させるための駆動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。これにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができるので、トンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。このスクリュモータ12bmによってネジ軸12bn1を回転させると、その回転方向に応じてナット12bn2が上下に移動するようになっている。そして、ナット12bn2が上下動するとエアシリンダ12acも上下動するようになっている。これにより、図6に示すように、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させてナット12bn2を上昇させると、エアシリンダ12ac、ロッド15および研掃ヘッド17が上昇し(図6(c)参照)、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させてナット12bn2を下降させると、エアシリンダ12ac、ロッド15および研掃ヘッド17が下降する(図6(b)参照)ようになっている。
このように第1の昇降機構部12aおよび第2の昇降機構部12bによって研掃ヘッド17の高さ位置を調整することにより、研掃ヘッド17のキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けることができる。ここで、研掃ヘッド17のキャスタ17cをロッド15の上昇のみで内壁面WSに押し付ける場合には、上記した研掃ヘッド17のエアシリンダ17p(図3参照)を省略することができる。但し、ロッド15の上下動で研掃ヘッド17の大まかな高さを調節し、エアシリンダ17pで研掃ヘッド17のキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けるようにすれば、研掃ヘッド17の押圧精度を向上させることができるので、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17をより適切な圧力で押し付けることができる。
ここで、研掃ヘッド17を昇降させるのみの観点からは、第1の昇降機構部12aおよび第2の昇降機構部12bを、例えば、ボールネジ、チェーンを用いた昇降機器または油圧シリンダで構成してもよい。また、第1の昇降機構部12aとして、ロッド15自体を伸縮自在な構成とし、ロッド15全体ではなく、ロッド15の一部を上下動させる構成にしてもよい。さらに、第1の昇降機構部12aおよび第2の昇降機構部12bを、例えば、エアシリンダで構成してもよい。
ただし、第1の昇降機構部12aをエアシリンダ12acで構成し、第2の昇降機構部12bをボールネジ12bnで構成することにより、ある高さの研掃位置からそれより高い研掃位置に移動する際の研掃ヘッド17の移動(つまり、研掃ヘッド17の研掃高さの変更)を正確且つ速やかに行うことができる。
すなわち、研掃ヘッド17の高さを同一にした状態で研掃ヘッド17を走行方向に移動してトンネル内壁面を研掃する際に、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)を伸長させる。第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)のシリンダロッド12ar先端の研掃ヘッド17はトンネル内壁面WSに押圧されていることから、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)が伸長した分だけシリンダロッド12arが後退し、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が縮む。このとき、シリンダロッド12arが後退してシリンダ室の容積が減少した分のエアが図示しないリリーフ式減圧弁(またはリリーフ弁)から大気へ放出され、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が一定に保たれる。
そして、研掃ヘッド17が横行方向(つまり、トンネル内壁面WSから離間する方向)に移動して第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が低下しそうになると、エアコンプレッサCPからエア圧を一定に保つための圧縮空気が供給されて当該第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が上昇する。よって、第1の昇降機構部12aの先端に取り付けられた研掃ヘッド17は、トンネル内壁面WSに押圧されたままで(つまり、トンネル内壁面WSに対する押圧力が維持された状態で)、トンネル内壁面WSに沿って上昇して次の研掃高さに移動する。
これにより、トンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッド17の研掃高さを精度よく且つ速やかに変更することが可能になる。なお、この観点からは、例えば、第1の昇降機構部12aをボールネジで構成し、第2の昇降機構部12bをエアシリンダで構成してもよい。
なお、湾曲したトンネル内壁面WSのトンネル横断方向内側へと研掃ラインを移動させながら研掃する場合、ある研掃位置と次の研掃位置との高さの差は徐々に小さくなることから、横行時における研掃ヘッド17の上昇量は徐々に小さくなる。したがって、走行時においての第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)の伸長量も、それに合わせて徐々に小さくするようにする。具体的には、横行時における第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)のストローク長をストローク計で計測し、次の走行時における第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)の伸長量を、計測したストローク長の所定割合(例えば、ストローク長の3/8)とする。
次に、トンネル研掃装置10の架台18について図2、図3および図7~図11を参照して説明する。図7は図2のトンネル研掃装置の架台の平面図、図8(a)は図7の架台のベースフレームの平面図、図8(b)は図7の架台の回動フレームおよびスライドフレームの平面図、図9(a)は図7のI-I線の断面図、図9(b)は図7のII-II線の断面図、図10は図7の架台における回動フレームの回動時の平面図、図11は図7の架台におけるスライドフレームのスライド時の平面図である。
なお、図7、図8、図10および図11は平面図であるが、図面を見易くするためハッチングを付した。また、図7、図8、図10および図11において符号D1はトンネルの内壁面WSに交差する第1の水平方向を示し、符号D2はトンネルの内壁面WSに沿う第2の水平方向を示している。さらに、図9では図面を見易くするために簡略化して示すとともに、走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよびそれらの移動に関係する移動手段の図示を省略した。
図2および図3に示すように、トンネル研掃装置10に設けられた研掃装置本体BEを移動させるための架台18は、下方から順に、ベースフレーム18Aと、回動フレーム18Bと、スライドフレーム18Cと、走行フレーム18Dと、ベースプレート18Eとを備えている。
ベースフレーム18Aは、図8(a)に示すように、回動フレーム18B、スライドフレーム18Cおよび走行フレーム18Dを搭載するための基台の躯体であり、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。このベースフレーム18Aは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18A1と、一対の短枠部18A1の長手方向両端部に一対の短枠部18A1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18A2と、図7および図8(a)に示すように、一対の長枠部18A2の長手方向中央に一対の長枠部18A2間を橋渡すように設けられた梁枠部18A3と、一方の長枠部18A2の長手方向一端側の近傍に接合された支持部18A4とを一体的に備えている。図8(a)および図9(a)に示すように、ベースフレーム18Aの梁枠部18A3の長手方向中央(平面視でベースフレーム18Aの面内中央)には、回動軸受部18A5が設けられている。
このベースフレーム18A上には、図2および図3に示すように、回転支承体18Rを介して回動フレーム18Bが搭載されている。回動フレーム18Bは、回動手段の躯体(回動体)であり、図7および図8(b)に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。この回動フレーム18Bは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18B1と、一対の短枠部18B1の長手方向両端部に一対の短枠部18B1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18B2と、一対の長枠部18B2の長手方向中央に一対の長枠部18B2間を橋渡すように設けられた梁枠部18B3とを一体的に備えている。図7、図8(b)および図9(a)に示すように、回動フレーム18Bの梁枠部18B3の長手方向中央(平面視で回動フレーム18Bの面内中央)には、回動軸部18B4が設けられている。この回動軸部18B4は、図9(a)に示すように、ベースフレーム18Aの回動軸受部18A5に篏合されている。
回動フレーム18Bは、図9に示すように、定位置のときに平面視でベースフレーム18Aに一致した状態で重なるように配置されている。すなわち、回動フレーム18Bが定位置のときに、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1は、ベースフレーム18Aの一対の短枠部18A1上に、その各々の一対の短枠部18A1に平面視で重なるように配置されている。また、回動フレーム18Bが定位置のときに、回動フレーム18Bの一対の長枠部18B2は、ベースフレーム18Aの一対の長枠部18A2上に、その各々の一対の長枠部18A2に平面視で重なるように配置されている。
この回動フレーム18Bは、回動軸部18B4を中心にして回動フレーム18Bの搭載面内に沿って正逆両方向に回動自在の状態でベースフレーム18A上に搭載されている。本実施の形態においては、上記したようにベースフレーム18Aおよび回動フレーム18Bを枠体としたことにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、回動フレーム18Bを軽量化することができるとともに、回動フレーム18Bの回動時にベースフレーム18Aとの接触面積を低減することができるので、回動フレーム18Bをより一層滑らかに回動させることができる。なお、回動フレーム18Bを回動させると、回動フレーム18B上のスライドフレーム18C、走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体BEも一緒に回動するようになっている。
ここで、トンネルの内壁面WSを研掃するために、トンネル研掃装置10を搭載した高所作業車V(図1参照)をトンネルの内壁面WSに横付けしたときに高所作業車Vがトンネルの内壁面WSに対して若干斜めに配置されてしまう場合がある。この場合、トンネルの内壁面WSの研掃処理に際し、当該内壁面WSに対してトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面が斜めに傾いてしまうので、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17を適度に押し付けた状態で移動させることができなくなり、トンネルの内壁面WSに対して良好な研掃処理を施すことができなくなる場合がある。これに対して本実施の形態においては、回動フレーム18Bを回動させることにより、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17の研掃面が平行になるように設定することができる。このため、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17を適度に押し付けた状態で移動させることができるので、トンネルの内壁面WSの研掃処理を良好に実施することができる。
図7および図9に示すように、回動フレーム18Bの一方の短枠部18B1の内側近傍には、ジャッキ18Jが、そのロッド部18J1を回動フレーム18Bの一方の長枠部18B2に向けた状態で、ベースフレーム18Aの支持部18A4に固定されている。ジャッキ18Jは、回動フレーム18Bを回動させるための回動手段であり、例えば、電動式ジャッキで構成されている。ジャッキ18Jを電動式ジャッキで構成したことにより、ジャッキ18Jを油圧式ジャッキで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
ジャッキ18Jのロッド部18J1の先端部は、回動フレーム18Bの一方の長枠部18B2の内側に揺動自在の状態で接合されている。ジャッキ18Jのモータ部18J2を正逆方向に回動するとロッド部18J1が第1の水平方向D1に沿って伸縮するようになっており、このロッド部18J1の伸縮により回動フレーム18Bが回動するようになっている。なお、本実施の形態において、回動フレーム18Bの回動角度は、ベースフレーム18Aに一致した状態で重なった定位置を0°として、例えば±5°となっている。
例えば、図10に示すように、高所作業車V(図1参照)がトンネルの内壁面WSに対して若干右に傾斜して横付けされてしまった場合(トンネルの内壁面WSがトンネル研掃装置10に対して左に傾斜している場合)は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A1に示す方向に所定長さだけ延ばす。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jのロッド部18J1に押されて矢印A2に示す方向に所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bの長枠部18B2(研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに対してほぼ平行になったところで停止する。
一方、回動フレーム18Bを元の位置に戻す場合は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A3に示す方向に所定長さだけ縮める。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jに引かれて図10の矢印A4に示す方向に所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bは元の位置に戻る。また、高所作業車Vがトンネルの内壁面WSに対して若干左に傾斜して横付けされてしまった場合(トンネルの内壁面WSはトンネル研掃装置10に対して右に傾斜している場合)は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A3に示す方向にさらに所定長さだけ縮める。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jに引かれて図10の矢印A4に示す方向にさらに所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bの長枠部18B2(研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに対してほぼ平行になったところで停止する。
また、図7に示すように、回動フレーム18Bにおいて、トンネルの内壁面WSに対向する長枠部18B2の長手方向両端部近傍には、距離センサ(センサ)SL1,SL2が設置されている。この距離センサSL1,SL2は、回動フレーム18Bの回動量やスライドフレーム18Cおよびベースプレート18Eの移動量を算出するために、各距離センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの水平方向の距離を測定するのに使用される非接触型のセンサである。すなわち、トンネル研掃装置10は、各距離センサSL1,SL2の発光部からトンネルの内壁面WSにレーザ光LLを照射したときに、トンネルの内壁面WSから反射された反射光RLを距離センサSL1,SL2の受光部で受光することで得られた検出情報に基づいて、各距離センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離を算出することが可能になっている。そして、その算出結果に基づいてトンネル研掃装置10と内壁面WSとの平行度を算出し、さらにその算出結果に基づいて回動フレーム18Bの回動量を算出することが可能になっている。また、各距離センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離の算出結果に基づいて、スライドフレーム18Cおよびベースプレート18Eの移動量を算出することが可能になっている。
さらに、これらの距離センサSL1,SL2は、各距離センサSL1,SL2から垂直方向に内壁面WSまでの距離を計測する機能も有している。すなわち、水平方向への距離計測と同様に、垂直方向へもレーザ光LLを放射して、その反射光で得られた検出情報に基づいて各距離センサSL1,SL2から垂直方向の内壁面WSまでの距離を算出することが可能になっている。
なお、トンネル研掃装置10と内壁面WSとの平行度は、平面視でトンネルの内壁面WSに対するトンネル研掃装置10(具体的には、例えば、長枠部18B2)の傾き角度で表される。また、距離センサSL1,SL2の数は2個に限定されるものではなく、例えば、3個以上でもよい。また、距離センサSL1,SL2の設置箇所も上記箇所に限定されるものではなく種々変更可能である。
この回動フレーム18B上には、図2および図3に示すように、スライド用リニアガイド18LSを介してスライドフレーム18Cが搭載されている。スライドフレーム18Cは、移動手段の躯体であり、図7に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。このスライドフレーム18Cは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18C1と、一対の短枠部18C1の長手方向両端部に一対の短枠部18C1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18C2とを一体的に備えている。スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1は、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1に平面視で重なった状態で一対の短枠部18B1上に配置されている。
図2および図3に示すように、このスライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1と、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1との間には、上記したスライド用リニアガイド18LSが設置されている。このスライド用リニアガイド18LSは、ガイドレール18LS1と、その上に設けられた2個のブロック18LS2とを備えている。図2に示すように、ガイドレール18LS1は、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1上に第1の水平方向D1に沿って配置されている。図2および図3に示すように、ブロック18LS2は、ガイドレール18LS1に取り付けられている。ブロック18LS2の内部には、複数のボール(図示せず)が組み込まれており、この複数のボールの転がりにより、ブロック18LS2はガイドレール18LS1に沿って水平に移動することが可能になっている。図2に示すように、ガイドレール18LS1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LS2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S1が設置されている。
このスライド用リニアガイド18LSのブロック18LS2はスライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1と接合されている。これにより、スライドフレーム18Cは、第1の水平方向D1(すなわち、トンネルの内壁面WSに接近する方向および内壁面WSから離間する方向)に往復移動することが可能になっている。本実施の形態においては、上記したようにスライドフレーム18Cおよび回動フレーム18Bを枠体としたことにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、スライドフレーム18Cを軽量化することができるとともに、スライドフレーム18Cの移動時に回動フレーム18Bとの接触面積を低減することができるので、スライドフレーム18Cをより一層滑らかに移動させることができる。なお、スライドフレーム18Cを第1の水平方向D1に沿って往復移動させると、スライドフレーム18C上の走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体BEも一緒に第1の水平方向D1に沿って往復移動するようになっている。
ここで、本発明者が検討したトンネル研掃装置においては、スライドフレーム18Cが無いので、トンネルの内壁面WSの研掃処理に際して、研掃ヘッドをトンネルの内壁面WSに押し当てるために、トンネル研掃装置の架台に設けられた水平移動台の水平移動により研掃ヘッドをトンネルの内壁面WSの近くまで送り高所作業車V(図1参照)の荷台の幅方向一端側に配置している。このため、高所作業車V(図1参照)の荷台の面内に重量の偏りが生じ、トンネル研掃装置の設置上の安定性が損なわれる虞がある。これに対して、本実施の形態においては、トンネル研掃装置10のスライドフレーム18C自体を水平に移動させてトンネルの内壁面WSに近づけることができるので、高所作業車V(図1参照)の荷台の面内の重量の偏りを緩和することができ、トンネル研掃装置10の設置上の安定性を向上させることができる。
また、スライドフレーム18Cが無い場合、高所作業車V(図1参照)をトンネルの内壁面WSの近傍に横付けするときに、高所作業車Vの位置がトンネルの内壁面WSに近すぎても遠すぎても、その修正のために高所作業車V自体を移動させなければならず作業効率が下がるので、高所作業車Vの停車位置に高い精度が求められる場合がある。これに対して、本実施の形態においては、高所作業車Vの位置がトンネルの内壁面WSに近すぎたり遠すぎたりしたとしてもトンネル研掃装置10のスライドフレーム18Cのスライド(水平移動)により、作業効率を下げることなく、トンネル研掃装置10とトンネルの内壁面WSとの距離を調整することができるので、高所作業車Vの停車位置の精度を緩和することができる。
図7および図8(b)に示すように、スライドフレーム18Cの一方の短枠部18C1の外側において短枠部18C1の長手方向のトンネル中央側の端近傍には、正逆両方向に回動自在のモータ18MSが設置されている。モータ18MSは、スライドフレーム18Cを第1の水平方向D1に沿って往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MSを電動式モータで構成したことにより、モータ18MSを油圧モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
図8(b)に示すように、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の各々の内側においてトンネルの内壁面WS側の端部近傍の各々には、互いに対向するように一対の回動軸受部18BP1,18BP1が設けられている。この一対の回動軸受部18BP1,18BP1の間には、スライドフレーム18Cの長枠部18C2に沿うように延在する連結棒18CR1が中心軸を中心にして回動可能な状態で設置されている。この連結棒18CR1の長手方向両端近傍の各々には、一対の鎖歯車18CG1,18CG1が取り付けられている。
一方、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の内側においてトンネルの中央側の端部近傍の一方には、上記モータ18MSの回動軸部が配置されている。また、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の内側においてトンネルの中央側の端部近傍の他方(モータ18MSの回動軸部に対向する位置)には、回動軸受部18BP2が設けられている。このモータ18MSの回転軸部と回動軸受部18BP2との間には、スライドフレーム18Cの長枠部18C2に沿うように延在する連結棒18CR2が中心軸を中心にして回動可能な状態で設置されている。この連結棒18CR2の一端部はモータ18MSの回動軸部と接続されている。したがって、モータ18MSの回動軸部が回動するとそれに合わせて連結棒18CR2も回動するようになっている。この連結棒18CR2の長手方向の両端近傍の各々には、一対の鎖歯車18CG2,18CG2が取り付けられている。
そして、図8(b)および図9(b)に示すように、連結棒18CR1,18CR2の長手方向両端近傍の鎖歯車18CG1,18CG2の各々には、一対のチェーン18SCが無端状に架け渡されている。各チェーン18SCは、各チェーン18SCの一部に接合された連結体18SJを介してスライドフレーム18Cの短枠部18C1と接合されている。このため、モータ18MSを回動すると、チェーン18SCが回動し、チェーン18SCに接合された連結体18SJが第1の水平方向D1に沿って往復移動することにより、スライドフレーム18Cが第1の水平方向D1に沿って往復移動するようになっている。
例えば、図11に示すように、モータ18MSの回転軸部を矢印A5に示す方向に所定回動量だけ回動させると、チェーン18SCの連結体18SJがトンネルの内壁面WSに接近する方向に所定長さだけ移動するので、連結体18SJに接合されたスライドフレーム18C(すなわち、研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに接近する方向(矢印A6に示す方向)に所定長さだけ移動して停止する。
一方、モータ18MSの回転軸部を矢印A5とは反対の矢印A7に示す方向に所定回動量だけ回動させると、チェーン18SCの連結体18SJが所定長さだけトンネルの内壁面WSから離間する方向に移動するので、連結体18SJに接合されたスライドフレーム18C(すなわち、研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSから離間する方向(矢印8に示す方向)に所定長さだけに移動して停止する。なお、スライドフレーム18Cがトンネルの内壁面WSに向かって水平移動するときの移動量は、上記した距離センサSL1,SL2で測定された各距離センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離に基づいて設定される。
このスライドフレーム18C上には、図2および図3に示すように、走行用リニアガイド18LLを介して走行フレーム18Dが搭載されている。走行フレーム18Dは、移動手段の躯体(移動体)であり、図7に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。この走行フレーム18Dは、第1の水平方向D1に延びる一対の長枠部18D1と、一対の長枠部18D1の長手方向両端部に一対の長枠部18D1間を橋渡すように設けられた一対の短枠部18D2とを一体的に備えている。走行フレーム18Dの平面寸法は、上記したスライドフレーム18Cの平面寸法より小さい。走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2は、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2に平面視で重なった状態で一対の長枠部18C2上に配置されている。
図2および図3に示すように、この走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2と、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2との間には、上記した走行用リニアガイド18LLが設置されている。この走行用リニアガイド18LLは、上記したスライド用リニアガイド18LSと同様に、ガイドレール18LL1と、その上に設けられた2個のブロック18LL2とを備えている。ガイドレール18LL1は、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2上に第2の水平方向D2に沿って配置されている。ガイドレール18LL1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LL2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S2(図3参照)が設置されている。
この走行用リニアガイド18LLのブロック18LL2は走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2と接合されている。これにより、走行フレーム18Dは、第2の水平方向D2(すなわち、トンネルの内壁面WSに沿う方向)に沿って往復移動することが可能になっている。本実施の形態においては、上記したようにスライドフレーム18Cおよび走行フレーム18Dを枠体とすることにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、走行フレーム18Dを軽量化することができるとともに、走行フレーム18Dの往復走行時にスライドフレーム18Cとの接触面積を低減することができるので、走行フレーム18Dをより一層滑らかに移動させることができる。
また、図7に示すように、スライドフレーム18Cにおいてトンネルの内壁面WSに沿う長枠部18C2の長さを短枠部18C1の長さより長くしたことにより、走行フレーム18D(すなわち、研掃ヘッド17)の走行距離を長くすることができるので、トンネルの内壁面WSの研掃距離を長くすることができる。これにより、トンネル研掃装置10の研掃作業効率を向上させることができるので、研掃作業時間を短縮することができる。なお、走行フレーム18Dを第2の水平方向D2に往復走行させると、走行フレーム18D上のベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体BEも一緒に第2の水平方向D2に往復走行するようになっている。
この走行フレーム18Dの長手方向(第1の水平方向D1)の一端側には、正逆両方向に回動自在のモータ18MLが設置されている。このモータ18MLは、走行フレーム18Dを第2の水平方向D2に往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MLを電動式モータで構成したことにより、モータ18MLを油圧式モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
この走行フレーム18D上には、図2および図3に示すように、横行用リニアガイド18LWを介してベースプレート18Eが搭載されている。ベースプレート18Eは、図7に示すように、例えば、平面視で略正方形状のメタルプレートで構成されており、走行フレーム18Dの長手方向(第1の水平方向D1)に移動可能となった移動手段である。ベースプレート18Eの平面寸法は、走行フレーム18Dの平面寸法より小さい。ベースプレート18Eにおいて第2の水平方向D2の両端部は、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1に平面視で重なった状態で一対の長枠部18D1上に配置されている。
図2および図3に示すように、このベースプレート18Eと、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1との間には、上記した横行用リニアガイド18LWが設置されている。この横行用リニアガイド18LWは、上記した走行用リニアガイド18LLと同様に、ガイドレール18LW1と、その上に設けられた2個のブロック18LW2とを備えている。ガイドレール18LW1は、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1上に第1の水平方向D1に沿って配置されている。ガイドレール18LW1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LW2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S3(図2参照)が設置されている。
この横行用リニアガイド18LWのブロック18LW2はベースプレート18Eと接合されている。これにより、ベースプレート18Eは、第1の水平方向D1(すなわち、トンネルの内壁面WSに接近する方向および内壁面WSから離間する方向)に沿って往復移動自在の状態で走行フレーム18D上に設置されている。本実施の形態においては、ベースプレート18Eは略正方形状のメタルプレートで形成されているが、上記したようにベースプレート18Eはその平面寸法が走行フレーム18Dの平面寸法より小さいので、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、ベースプレート18Eを軽量化することができるとともに、ベースプレート18Eの往復横行時に走行フレーム18Dとの接触面積を低減することができるので、ベースプレート18Eをより一層滑らかに移動させることができる。なお、ベースプレート18Eを往復横行させると、ベースプレート18E上の上記研掃装置本体BEも一緒に往復横行するようになっている。
このベースプレート18Eの1つの角部の近傍には、正逆両方向に回動自在のモータ18MWが設置されている。このモータ18MWは、ベースプレート18Eを第1の水平方向D1に往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MWを電動式モータで構成したことにより、モータ18MWを油圧式モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
なお、以上説明した架台18および研掃装置本体BE等の動作は、図示しないコントローラを用いて、作業者により遠隔操作することができるようになっている。
次に、トンネル研掃装置10の動作を制御する制御部の構成例について図12を参照して説明する。図12は本実施の形態のトンネル研掃装置の制御部の要部回路ブロック図である。
制御部(制御手段)MCは、トンネル研掃装置10の動作を制御する制御手段であり、CPU(Central Processing Unit)20aと、ROM(Read Only Memory)20bと、RAM(Random Access Memory)20cと、移動制御回路20d-1,20d-2,20d-3と、回動制御回路20eと、検出回路20f-1,20f-2,20f-3と、研掃ヘッド角制御回路20mと、ロッド伸縮回路20nと、シリンダ昇降回路20pと、表示制御回路20gと、インターフェイス20hと、通信インターフェイス20iと、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)20jとを有している。そして、これらの各部は、バスライン20kを通じてCPU20aと電気的に接続されており、CPU20aの管理下において、インターフェイス20hや通信インターフェイス20iから送られた操作データ等に従って各部の動作が実行されるようになっている。
CPU20aは、表示制御回路20gおよびインターフェイス20hを通じて表示部DPおよび入力部IPに電気的に接続されているとともに、通信インターフェイス20iを通じて外部の無線通信部CCと無線で通信可能になっている。
ROM20bは、トンネル研掃装置10の動作を制御するためのソフトウェア(制御プログラム)が格納されている。RAM20cは、CPU20aが動作する上で必要な各種データを格納するとともに、入力部IPまたは外部の無線通信部CCから受信したデータを一時的に格納する。そして、CPU20aは、ROM20b内の制御プログラムに従って移動制御回路20d-1,20d-2,20d-3、回動制御回路20e、検出回路20f-1,20f-2,20f-3、研掃ヘッド角制御回路20m、ロッド伸縮回路20n、シリンダ昇降回路20p、表示制御回路20g、インターフェイス20hおよび通信インターフェイス20i等の各部の動作を制御する。
移動制御回路20d-1は、CPU20aからの指令に基づいてモータ18MLに制御信号を送信し、走行フレーム18Dの移動(第2の水平方向D2への移動)を制御する。また、移動制御回路20d-2は、CPU20aからの指令に基づいてモータ18MWに制御信号を送信し、ベースプレート18Eの移動(第1の水平方向D1への移動)を制御する。また、移動制御回路20d-3は、CPU20aからの指令に基づいてモータ18MSに制御信号を送信し、スライドフレーム18Cの移動(第1の水平方向D1への移動)を制御する。さらに、回動制御回路20eは、CPU20aからの指令に基づいて、ジャッキ18Jに制御信号を送信し、回動フレーム18Bの回動動作を制御する。
検出回路20f-1,20f-2は、CPU20aの制御下において、距離センサSL1,SL2の発光部から内壁面WSに向かってレーザ光LLを照射するとともに、距離センサSL1,SL2の受光部で受光され光信号から電気信号に変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU20aに送信する。そして、本実施の形態においてCPU20aは、検出回路20f-1,20f-2から送られたデジタル信号に基づいて、各距離センサSL1,SL2から内壁面WSまでの距離を算出し、その算出結果に基づいて回動フレーム18Bの回動量やスライドフレーム18Cおよびベースプレート18Eの移動量を算出する。また、検出回路20f-3は、研掃ヘッド17のキャスタ17cに設けられた荷重計SL3に計測されたアナログ信号をデジタル信号に変換してCPU20aに送信する。
研掃ヘッド角制御回路20mは、CPU20aからの指令に基づいてロータリアクチュエータ17raに制御信号を送信し、研掃ヘッド17の第1の揺動方向PR1に対する揺動角を制御する。
ロッド伸縮回路20nは、CPU20aからの指令に基づいてエアコンプレッサCPに制御信号を送信し、エアシリンダ12acによるシリンダロッド12arの伸縮量を制御する。
シリンダ昇降回路20pは、CPU20aからの指令に基づいてスクリュモータ12bmに制御信号を送信し、ボールねじ12bnを介してエアシリンダ12acの昇降を制御する。
EEPROM20jには、トンネル研掃装置10の各種の設定データや距離センサSL1,SL2からの検出データが記録されている。
以上の構成を有するトンネル研掃装置10と、当該トンネル研掃装置10が搭載された高所作業車Vとで構成されるトンネル研掃システムSは、図13に示すように、トンネルの内壁面WSの研掃においては、第1の後続車両システムFS1および第2の後続車両システムFS2が相互に縦列になって配置される。ここで、第1の後続車両システムFS1は、自走可能な運搬車両にエアコンプレッサやブラストタンクやホッパタンクなどが搭載されたシステムであり、第2の後続車両システムFS2は、自走可能な運搬車両に回収機や発電機などが搭載されたシステムである。
トンネル研掃システムSと第2の後続車両システムFS2との間には、発電機で発電した電力をトンネル研掃装置10に供給するための電源ラインL1が着脱可能に設けられている。また、トンネル研掃システムSと第1の後続車両システムFS1との間には、ブラストタンクから研掃装置本体BEに研削材を供給するための供給ラインL2が着脱可能に設けられている。さらに、トンネル研掃システムSと第1の後続車両システムFS1との間、および第1の後続車両システムFS1と第2の後続車両システムFS2との間には、トンネル内壁面WSの剥離片や研掃後の研削材を、ホッパタンクを経由して吸引して回収機に回収するための回収ラインL3が着脱可能に設けられている。
そして、車線(図示する場合には、センターラインCLから片側の1車線)を通行規制しておき、縦列配置されたトンネル研掃システムS、第1の後続車両システムFS1および第2の後続車両システムFS2をトンネルの延伸方向に移動させながら内壁面WSを研掃する走行動作をトンネルの全長にわたって行う。次に、これら3台の車両をトンネルの横断方向(本実施の形態では、トンネルの横断方向内側)に移動させ、同様にトンネルの全長にわたって研掃を行う。このような作業を繰り返し行い、通行規制エリアのトンネルの内壁面WSの研掃を行う。
次に、本実施の形態のトンネル研掃装置10によるトンネルの内壁面WSの研掃例について図1~図3、図14~図39を用いて説明する。ここで、図14は本実施の形態のトンネル研掃装置10による研掃開始から研掃終了までの流れを示すフローチャート、図15は本実施の形態のトンネル研掃装置10による研掃作業の流れを示すフローチャート、図17~図39は研掃作業の一連の流れを連続的に示す説明図である。なお、図17~図39において、(a)はトンネルの横断方向断面で示した説明図、(b)は(a)と直交する方向で示した説明図、(c)は平面視で示した説明図である。
まず、図14のフローチャートおよび図17~図21を用いて、研掃作業の開始までの流れについて説明する。
最初に、図17に示すように、高所作業車Vを研掃エリアに配置する(図14:ステップS01)。具体的には、図1(a)に示した高所作業車Vにトンネル研掃装置10を搭載した状態で高所作業車Vを研掃エリアまで移動してトンネルの内壁面WSに横付けし、トンネル研掃装置10を研掃エリアまで運ぶ。このとき、トンネル研掃装置10が搭載されたデッキ部Vbを下降状態とする。また、トンネル研掃装置10の研掃ヘッド17を最も低い位置に設定した状態とする(図6(a)参照)。これにより、本実施の形態においては、トンネル研掃装置10を研掃エリアまで安定した状態で運搬することができる。なお、図2に示すように、トンネル研掃装置10は、その研掃ヘッド17の研掃面(トンネルの内壁面WSに対向する面であって研掃機17b等が設置された取付台17a-1の主面)がトンネルの内壁面WSを向いている。また、上記した第1の水平方向D1はトンネルの内壁面WSに交差し、第2の水平方向D2はトンネルの延伸方向(走行方向)に沿っている。なお、ここでは研掃装置本体BEの研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して傾いている場合を例示している。
次に、高所作業車Vの荷台を展開し(図14:ステップS02)、各種の配線や配管を接続して電源を投入する(図14:ステップS03)。そして、電源投入後の動作は、高所作業車Vの荷台(作業床)の昇降を除いて、前述した制御部MCによる制御の下で実行される。
すなわち、電源を投入したならば、図18に示すように、研掃装置本体BEを原点復帰させて動作する原点位置を確認するとともに、装置の初期診断を行う(図14:ステップS04)。
次に、研掃装置本体BEの研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して平行になるように設定する。すなわち、距離センサSL1,SL2によって距離センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの各々の距離を計測し、高所作業車Vのトンネルの内壁面WSに対するずれ角度を算出する(図14:ステップS05)。そして、その各々の距離の測定値に基づいて高所作業車Vのずれ角度の補正が必要か(つまり、研掃装置本体BEの研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して傾いているか)を判断し(図14:ステップS06)、さらにそのずれ角度は補正可能か(つまり、回動角度が±5°である回動フレーム18Bの回動で補正可能か)を判断する(図14:ステップS07)。本実施の形態では、高所作業車Vのずれ角度の補正が必要であり、ずれ角度は補正可能であることから、図19に示すように、回動フレーム18Bを回動させてずれ角度を補正し、研掃装置本体BEの研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して平行になるようにする(図14:ステップS08)。
なお、ステップS06において補正が必要ないと判断した場合には、次のステップS10に移行する。また、ステップS07において補正が可能ではないと判断した場合には、あらためて高所作業車Vを据え直し(図14:ステップS09)、前述のステップS04に戻る。
次に、設計図面等を参照してトンネル形状を算出し(図14:ステップS10)、研掃位置Pを確認する(図14:ステップS11)。
そして、ステップS11での確認の結果、研掃装置本体BEを研掃開始位置へ設置可能か(つまり、高所作業車Vをそのままの位置にしておいて、架台18の調整だけで研掃装置本体BEを研掃開始位置へ設置することが可能か)を判断する(図14:ステップS12)。本実施の形態では、研掃装置本体BEを研掃開始位置へ設置可能であることから、続いて、研掃位置Pの天井高さを算出する(図14:ステップS13)。すなわち、距離センサSL1,SL2から真上にレーザ光LLを照射して距離センサSL1,SL2からトンネルの天井の内壁面WSまでの距離を計測し、天井までの高さを算出する。なお、ステップS12において研掃装置本体BEを研掃開始位置へ設置可能ではないと判断した場合には、前述したステップS09に移行して高所作業車Vを据え直し、ステップS04に戻る。
次に、算出した研掃位置Pの天井高さから、高所作業車Vの荷台(作業床)の上昇が必要か(つまり、荷台を上昇させなくても、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに当接させることが可能か)を判断する(図14:ステップS14)。本実施の形態では、高所作業車Vの荷台の上昇が必要であるから、図20に示すように、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を上昇させて研掃装置本体BEを所定の高さに設定する(図14:ステップS15)。なお、ステップS14において荷台の上昇が必要ないと判断した場合には、次のステップS16に移行する。
ステップS15において高所作業車Vの荷台を上昇したならば、研掃装置本体BEを研掃位置Pへセットする(図14:ステップS16)。すなわち、先ず、図21に示すように、研掃装置本体BEを研掃位置Pの直下まで移動させる。具体的には、距離センサSL1,SL2で得られた距離の情報に基づいて、スライドフレーム18Cをトンネルの内壁面WSに接近する方向にスライド(水平移動)して所定位置で止めるとともに、ベースプレート18Eをトンネルの内壁面WSに接近する方向に動かし、さらに必要であれば走行フレーム18Dをトンネルの内壁面WSに沿う方向に動かして、研掃装置本体BEを研掃位置Pの直下まで移動させる。
ステップS16において研掃装置本体BEを研掃位置Pへセットしたならば、トンネルの内壁面WSに対する研掃作業を実行する(図14:ステップS17)。すなわち、研掃ヘッド17の研掃機17bから研削材をトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に移動させ、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削することで当該内壁面WSを研掃する。なお、研掃作業における架台18や研掃装置本体BEなどの動作の詳細については後述する。
ステップS17における研掃作業を行ったならば、次の作業の確認をする(図14:ステップS18)。ここで、次の作業としては、高所作業車Vをトンネルの延伸方向へ移動して研掃を行う作業、高所作業車Vをトンネルの横断方向内側へ移動して研掃を行う作業、および研掃終了の3つである。
ステップS18において、次の作業が高所作業車Vをトンネルの延伸方向へ移動して研掃を行う作業である場合には、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を下昇させて研掃装置本体BEを当初の高さ(ステップS15で荷台を上昇させる前までの高さ)まで下ろし(図14:ステップS19)、続いて、研掃装置本体BEを原点(図18(c)に示す位置)に移動する(図14:ステップS20)。そして、高所作業車Vを前進(または後退)させ、トンネルの延伸方向へ次の作業位置まで移動する(図14:ステップS21)。その後、前述したステップS05へ移行し、以降の各ステップを順次実行する。
また、ステップS18において、次の作業が高所作業車Vをトンネルの延伸方向へ移動して研掃を行う作業である場合には、配管および配線を切断し、移動作業処理を行う(図14:ステップS22)。すなわち、トンネル研掃装置10および高所作業車Vで構成されるトンネル研掃システムSと、第1の後続車両システムFS1と、第2の後続車両システムFS2との間に設けられた電源ラインL1、供給ラインL2、回収ラインL3を取り外す。また、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を下昇させて研掃装置本体BEを当初の高さまで下ろし、研掃装置本体BEを運搬時位置(図17(c)に示す位置)に移動し、展開された高所作業車Vの荷台を格納する。そして、高所作業車Vをトンネルの横断方向内側へ次の作業位置まで移動する(図14:ステップS23)。その後、前述したステップS01へ移行し、以降の各ステップを順次実行する。
そして、ステップS18において、次の作業が研掃終了の場合には、配管および配線を切断し、作業終了処理を行う(図14:ステップS24)。すなわち、電源ラインL1、供給ラインL2および回収ラインL3を取り外し、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を下昇させて研掃装置本体BEを当初の高さまで下ろし、研掃装置本体BEを運搬時位置に移動し、展開された高所作業車Vの荷台を格納する。そして、工事規制エリアから退出する。
ここで、ステップS17におけるトンネルの内壁面WSに対する研掃作業について、図15のフローチャートを用いて説明する。
研掃作業の開始にあたっては、先ず、研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付ける(図15:ステップS17-01)。すなわち、トンネルの内壁面WSに対して最適な角度に調整しておいた研掃ヘッド17を昇降機構部12で上昇させ、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに押し付ける。このとき、研掃ヘッド17の研掃面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに押し付けられるが、上記したように研掃ヘッド17がトンネルの内壁面WSの曲面形状に追従して揺動することで、その研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して最適な状態で当接されて向き合うようになる。
ここで、ステップS17-01における研掃ヘッド17のトンネル内壁面WSに対する押付動作について、図16のフローチャートを用いて説明する。なお、この押付動作は、研掃ヘッド17の研掃面が最適な角度でトンネルの内壁面WSに押し付けられるように、研掃ヘッド17の揺動角を調整するためのものである。
研掃ヘッド17のトンネル内壁面WSへの押し付けにあたっては、先ず、内壁面WSの研掃位置における研掃ヘッド17の揺動角を算出する(図16:ステップS17-01a)。すなわち、本実施の形態では、設計上のトンネル形状(トンネルの内壁面WSの形状)と研掃ヘッド17の押付位置とから計算で求めており、研掃ヘッド17の研掃面中央での垂線がトンネル内壁面WSと交わった点におけるトンネルの接線の角度を用いている。但し、距離センサでトンネルの内壁面WSの研掃位置までの距離を測定して揺動角を算出するようにしてもよい。
ステップS17-01aにおいて研掃ヘッド17の揺動角を算出したならば、ロータリアクチュエータ17raを駆動して、研掃ヘッド17を算出した揺動角(詳しくは、研掃ヘッド17の取付部17aの第1の揺動方向PR1(図2参照)の揺動角)に設定し、当該揺動角に保持する(図16:ステップS17-01b)。
次に、研掃ヘッド17に取り付けられたキャスタ17cに装着された荷重計SL3を初期化し(図16:ステップS17-01c)、昇降機構部12により研掃ヘッド17を上昇させる(図16:ステップS17-01d)。すなわち、エアシリンダ12acのシリンダロッド12arを上方に延ばしてロッド15を伸長させ、研掃ヘッド17をトンネル内壁面WSの研掃位置に向かって上昇させる。
そして、研掃ヘッド17に取り付けられた4個のキャスタ17cの少なくとも1つがトンネルの内壁面WSに接触したならば(図16:ステップS17-01e)、ロータリアクチュエータ17raを開放して当該ロータリアクチュエータ17raによる研掃ヘッド17の保持を解除する(図16:ステップS17-01f)。なお、キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに接触したか否かは、キャスタ17cに装着された荷重計SL3により所定の荷重(第1の荷重:例えば5N以上)が計測されたか否かで判断する。つまり、第1の荷重が計測されたならば、当該第1の荷重はキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに接触したことによる荷重であると判断する。但し、キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに接触したことを検出するセンサを設けておき、当該センサにより接触の有無を判断するようにしてもよい。
さて、ステップS17-01fにおいて研掃ヘッド17の保持を解除したならば、昇降機構部12により研掃ヘッド17をさらに上昇させ(図16:ステップS17-01g)、全てのキャスタ17cが所定の荷重でトンネルの内壁面WSに当接したか否かを判断する(図16:ステップS17-01h)。
本実施の形態において、ステップS17-01hでは、荷重計SL3により所定の荷重(第2の荷重)が計測されたことによりキャスタ17cのトンネルの内壁面WSへの当接を判断しており、具体的には、次の2つの条件の何れかを満たした荷重(第2の荷重)のときに、全てのキャスタ17cが所定の荷重でトンネルの内壁面WSに当接したと判断している。すなわち、第1の条件は、何れか対角の2カ所のキャスタ17cの荷重の合計が所定値以上(例えば、200N以上)であるとの条件である。また、第2の条件は、何れか3カ所のキャスタ17cの荷重の合計が所定値以上(例えば、450N以上であるとの条件である。但し、全てのキャスタ17cに装着された荷重計SL3で検出された値が何れも所定値以上であるなど、これら以外の条件でキャスタ17cの当接を判断してもよい。
そして、ステップS17-01hにおいて、全てのキャスタ17cが所定の荷重でトンネルの内壁面WSに当接したと判断されたならば、後述する図15のステップS17-02に移行して、研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させて内壁面WSの研掃を実行する。
一方、ステップS17-01hにおいて、全てのキャスタ17cが所定の荷重でトンネルの内壁面WSに当接していないと判断されたならば、何れかのキャスタ17cの荷重が限界値(例えば、1kN)を超えたか否かを判断する(図16:ステップS17-01i)。
そして、超えていないと判断されたならば、ステップS17-01gに戻って研掃ヘッド17を上昇させる。また、超えていると判断されたならば、キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに対して片当たりの状態となっていると考えられるために、研掃ヘッド17を下降させるとともに、研掃ヘッドの揺動角を再計算し(図16:ステップS17-01j)、前述したステップS17-01bに戻って、研掃ヘッド17を算出した揺動角に設定して保持する。
このように、ステップS17-01hにおいて、全てのキャスタ17cが所定の荷重でトンネルの内壁面WSに当接したと判断することにより、結果として、研掃ヘッド17を適正な押圧力でトンネルの内壁面WSに押し付けることが可能になる。これにより、研掃ヘッド17をスムーズに走行させながら、適正な研掃を行うことができる。
さて、このようにして研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付けたならば、エアシリンダ17pにより2台の研掃機17bを押圧して、(図15:ステップS17-02)、研掃機17bから研削材を噴射する(図15:ステップS17-03)。
そして、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと動かし、研削材をトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させる(走行動作)(図15:ステップS17-04)。これにより、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削することで当該内壁面WSを研掃する。なお、走行動作時においては、トンネルの内壁面WSの研掃の際に剥離片や研削材が外部に漏れないように、研掃ヘッド17の吸引口17b-2から剥離片や研削材を吸引する。本実施の形態においては、上記したように研掃ヘッド17の第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が壁となり剥離片や研削材が外部に漏れないようになっている。
走行フレーム18Dをスライドフレーム18Cの他方端まで動かして1ラインの走行動作が終了したならば(図15:ステップS17-05)、走行したラインが予め設定された最終走行ライン(つまり、最終研掃ライン)かどうかを判断する(図15:ステップS17-06)。
ステップS17-06において最終走行ラインでなければ、スライドフレーム18Cをトンネルの横断方向内側へスライドさせることで研掃装置本体BEの研掃高さ(研掃ライン)を変更する横行動作が可能かどうかを判断する(図15:ステップS17-07)。また、ステップS17-06において最終走行ラインであれば、ステップS17の研掃作業を終了して(戻って)、前述したステップS18に移行する。
さて、ステップS17-07においてスライドフレーム18Cで横行動作が可能でなければ、研掃装置本体BEで横行量の確保が可能か(つまり、研掃装置本体BEを搭載したベースプレート18Eをトンネルの横断方向内側へと動かすことにより研掃装置本体BEの研掃高さ(研掃ライン)を変更する横行動作が可能か)を判断する(図15:ステップS17-08)。また、ステップS17-07においてスライドフレーム18Cで横行動作が可能であれば、後述するステップS17-09に移行する。
ステップS17-08においてベースプレート18Eで横行量の確保が可能であれば、あるいは、ステップS17-07においてスライドフレーム18Cで横行動作が可能であれば、研掃高さはロッド15の伸長範囲内か(つまり、昇降機構部12によってロッド15を伸長させれば研掃ヘッド17が研掃位置に届く範囲内か)を判断する(図15:ステップS17-09)。また、ステップS17-08においてベースプレート18Eで横行量の確保が可能でなければ、ステップS17の研掃作業を終了して(戻って)、前述したステップS18に移行する。
そして、ステップS17-09において研掃高さがロッド15の伸長範囲内であれば、研削材を噴射したままで研掃装置本体BEの横行動作を行い、併せて昇降機構部12によってロッド15を伸長させる(図15:ステップS17-10)。そして、前述したステップS17-04に移行し、次の1ラインについて研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ(走行動作)、トンネルの内壁面WSを研掃する。また、ステップS17-09において研掃高さがロッド15の伸長範囲内でなければ、研削材の噴射を停止し(図15:ステップS17-11)、研掃機17bのトンネルの内壁面WSに対する押し付けを解除する(図15:ステップS17-12)。そして、研掃装置本体BEの横行動作を行うとともに、昇降機構部12によってロッド15を収縮して(図15:ステップS17-13)、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を上昇させ(図15:ステップS17-14)、あらためて昇降機構部12によってロッド15を伸長して(図15:ステップS17-15)、前述したステップS17-01に移行する。
ここで、ステップS17におけるトンネルの内壁面WSに対する研掃作業における研掃装置本体の具体的な動きについて、図22~図39を用いて説明する。
前述の図21に示すように、研掃装置本体BEを研掃位置Pの直下まで移動させたならば、図22に示すように、研掃ヘッド17をトンネルの内壁面WSに押し付ける。つまり、図21において、トンネルの内壁面WSに対して最適な角度に調整しておいた研掃ヘッド17をロッド15を伸長させて上昇させ、さらにエアシリンダ17pにより2台の研掃機17bを押圧して、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに押し付ける。
次に、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと設定速度で動かし、図23に示すように、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
次に、図24に示すように、スライドフレーム18Cをトンネルの横断方向内側へスライドさせ、研掃装置本体BEをトンネル横断方向内側へ移動(横行)して研掃高さ(研掃ライン)を変更する。また、ロッド15を伸張させて、変更した研掃ラインのトンネル内壁面WSに研掃ヘッド17の研掃面を押し付ける。なお、このとき研削材は噴射したままである。
次に、図25に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端(図23に示す場合とは逆方向の一方端から他方端)へと設定速度で動かし、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
次に、図26に示すように、スライドフレーム18Cをトンネルの横断方向内側へスライドさせ、研削材を噴射したまま研掃装置本体BEをトンネル横断方向内側へ移動(横行)して研掃高さ(研掃ライン)を変更する。また、ロッド15を伸張させて、変更した研掃ラインのトンネル内壁面WSに研掃ヘッド17の研掃面を押し付ける。
次に、図27に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端(図23に示す場合と同一方向で、図25に示す場合とは逆方向の一方端から他方端)へと設定速度で動かし、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
このような走行フレーム18Dによる走行での研掃作業とスライドフレーム18Cによる横行での研掃ラインの変更とを繰り返しながらトンネルの内壁面WSの研掃を行う。そして、トンネルの内壁面WSの研掃高さが、昇降機構部12でロッド15を伸長させても研掃ヘッド17が届かない高さになったならば、図28に示すように、研削材の噴射を停止して研掃機17bのトンネルの内壁面WSに対する押し付けを解除し、ロッド15を収縮するとともに、ベースプレート18Eをトンネルの横断方向内側へと動かして研掃装置本体BEをスライドフレーム18Cのトンネルの内側端部へ移動する。そして、高所作業車Vのデッキ部Vbで荷台を上昇させる。
次に、図29に示すように、スライドフレーム18Cをトンネルの横断方向内側へと動かすとともに、ベースプレート18Eをトンネルの内壁面WSに接近する方向に動かし、研掃装置本体BEを研掃位置Pの直下まで移動させる。また、取付部17aの第1の揺動方向PR1の揺動角度(あおり角)を調整して、研掃ヘッド17の研掃面が最適な角度でトンネルの内壁面WSに押し付けられるようにする。
そして、図30に示すように、昇降機構部12でロッド15を伸長させ、エアシリンダ17pで研掃機17bを押圧して、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに押し付ける。
次に、図31に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと設定速度で動かし、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
次に、図32に示すように、スライドフレーム18Cをトンネルの横断方向内側へスライドさせ、研削材を噴射したまま研掃装置本体BEをトンネル横断方向内側へ移動(横行)して研掃高さ(研掃ライン)を変更する。また、ロッド15を伸張させて、変更した研掃ラインのトンネル内壁面WSに研掃ヘッド17の研掃面を押し付ける。
次に、図33に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと設定速度で動かし、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
このような走行フレーム18Dによる走行での研掃作業とスライドフレーム18Cによる横行での研掃ラインの変更とを繰り返しながらトンネルの内壁面WSの研掃を行う。そして、スライドフレーム18Cがトンネルの横断方向内側へのスライド限界まで移動したならば(つまり、スライドフレーム18Cがトンネルの横断方向内側へスライド移動できなくなったならば)、図34に示すように、ベースプレート18Eをトンネルの横断方向内側へと動かし、研削材を噴射したまま研掃装置本体BEをトンネル横断方向内側へ移動(横行)して研掃高さ(研掃ライン)を変更する。また、ロッド15を伸張させて、変更した研掃ラインのトンネル内壁面WSに研掃ヘッド17の研掃面を押し付ける。
そして、図35に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと設定速度で動かし、研掃機17bから研削材を噴射してトンネルの内壁面WSに吹き付けながら研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、トンネルの内壁面WSを研掃する。
次に、スライドフレーム18Cがトンネルの横断方向内側へのスライド限界まで移動していることから、図36に示すように、ベースプレート18Eをトンネルの横断方向内側へと動かし、研削材を噴射したまま研掃装置本体BEをトンネル横断方向内側へ移動(横行)して研掃高さ(研掃ライン)を変更する。また、ロッド15を伸張させて、変更した研掃ラインのトンネル内壁面WSに研掃ヘッド17の研掃面を押し付ける。
このような走行フレーム18Dによる走行での研掃作業とベースプレート18Eによる横行での研掃ラインの変更とを繰り返しながらトンネルの内壁面WSの研掃を行う。
そして、ベースプレート18Eがトンネル横断方向内側の長枠部18C2まで到達してトンネルの横断方向内側への移動限界になる位置まで研掃装置本体BEが移動(横行)したならば(図36参照)、図37に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に沿ってスライドフレーム18Cの一方端から他方端へと設定速度で動かして研掃装置本体BEをトンネルの延伸方向に走行させ、最後の研掃ラインについて研掃を行う。
このようにして一連の研掃作業を終了し、次の作業が高所作業車Vをトンネルの延伸方向へ移動して行う研掃作業の場合には、図38に示すように、高所作業車Vの荷台を下昇して研掃装置本体BEを搬入時の高さまで下げるとともに、研掃装置本体BEを原点(図18(c)に示す位置)に移動し、スライドフレーム18Cを回動フレーム18Bの基準位置に移動する。なお、高所作業車Vをトンネルの延伸方向へ移動して行う研掃作業であることから、回動フレーム18Bのトンネル内壁面WSに対する平行度は変化しないため、既にずれ角度を補正している回動フレーム18Bは回動しない。そして、高所作業車Vを前進(または後退)させ、トンネルの延伸方向へ次の作業位置まで移動し、研掃作業を再開する。
また、次の作業が高所作業車Vをトンネルの横断方向内側へ移動して行う研掃作業の場合には、配管および配線を切断する。そして、図39に示すように、高所作業車Vの荷台を下昇して研掃装置本体BEを搬入時の高さまで下げるとともに、研掃装置本体BEを運搬時位置(図17(c)に示す位置)に移動し、展開された高所作業車Vの荷台を格納する。また、スライドフレーム18Cを回動フレーム18Bの基準位置に移動し、回動フレーム18Bをベースフレーム18Aの基準位置に回動する。そして、高所作業車Vをトンネルの横断方向内側へ次の作業位置まで移動し、研掃作業を再開する。
なお、次の作業が研掃終了の場合には、高所作業車Vをトンネルの横断方向内側へ移動して行う研掃作業と同様の処理を行った後、工事規制エリアから退出する。
(第2の実施の形態)
図40は本実施の形態のトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
本実施の形態においては、高所作業車Vが第1の実施の形態とは異なり、それ以外の構成は同じである。本実施の形態の高所作業車Vは、その荷台側に設けられたブームVaと、ブームVaの先端に、起伏および旋回、さらに直線的に伸縮可能な状態で設けられたデッキ部Vbとを備えている。デッキ部Vb上には上記トンネル研掃装置10が搭載されている。トンネルの内壁面WSの研掃処理に際しては、ブームVaを動作させてトンネル研掃装置10を所定の高さ(上記した研掃高さ位置R1~R4(図6参照))に設定する。
本実施の形態の高所作業車Vにおいては、研掃ヘッド17の研掃角度(研掃ヘッド17の研掃面とトンネルの内壁面WSとの平行度を設定するための角度)をブームVaの動作により調整することができる。
また、トンネル研掃装置10の架台18(図4参照)の構成が、ベースプレート18Eを第1の水平方向D1に移動させることができるが、第2の水平方向D2に移動させることができない構成の場合であっても、ブームVaにより研掃ヘッド17を第2の水平方向D2に移動させることができる。これ以外の効果は前記実施の形態と同じである。
なお、高所作業車Vは、このような伸縮ブーム型ではなく、ブームが途中で屈折する屈折ブーム型でもよく、デッキ部Vbが垂直に昇降するリフタ型(マストブーム式・シザース式)でもよい。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
例えば、本実施の形態では、図16のフローチャートに示す研掃ヘッド17のトンネル内壁面WSに対する押付動作を制御部MCによる制御下で実行しているが、作業者の操作により手動で実行するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、距離センサSL1,SL2をトンネル研掃装置10に設置した場合について説明したが、距離センサSL1,SL2の設置位置はこれに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、距離センサSL1,SL2を高所作業車Vの一部等に設置してもよい。また、距離センサSL1,SL2を備える計測装置を用いて作業者がトンネル研掃装置10とトンネルの内壁面WSとの平面視での平行度(傾斜角度)を計測し、その計測結果を図12に示した無線通信部CCや入力部IPを通じて制御部MCのEEPROM20jに伝送(記録)するようにしてもよい。