JP2022064716A - ガラスペーパープリプレグ及びその製造方法 - Google Patents

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【課題】本発明は、従来に無い極めて実用的なガラスペーパープリプレグ及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグ30の上に積層して繊維強化プラスチックを成形するためのガラスペーパープリプレグであって、このガラスペーパープリプレグ1は、ガラスペーパー2に樹脂3を含浸したもので、この樹脂3の含有率は60wt%以上、且つ、樹脂フローは40%以上に設定されたものである。【選択図】図1

Description

本発明は、ガラスペーパープリプレグ及びその製造方法に関するものである。
繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)の表面塗装における繊維切断の機械的特性への影響について、圧力容器を用いて以下に説明する。
従来から、海水を淡水化する技術としての逆浸透膜法(RO:Reverse Osmosis)と、地下水を飲料化や医療用の無菌水化する技術としての限外ろ過膜法(UF:Ultrafiltration)がある。
両者とも膜に水圧をかけて水処理が行われ、逆浸透膜法では、運転圧力が2~8MPaの圧力容器が、限外ろ過膜法では、運転圧力が0.2MPa~0.9MPaの圧力容器が必要であり、いずれも、水処理運転中の水圧により圧力容器が破壊しないように、例えば、運転圧力が8MPaの圧力容器なら、運転圧力の6倍の安全率の48MPaでも破壊しない圧力容器が用いられることになる。
ところで、これらの圧力容器の素材としては、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂では耐圧性が不足する為、例えば、ガラス繊維やカーボン繊維とエポキシ樹脂を複合した繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastic)が用いられている。
このFRP製の圧力容器は、例えば水処理プラントの美観を良くする為、FRP成形後の製品(FRP成形品)の表面に水処理というイメージに合うよう白や水色などの淡い色にデザイン塗装し、このデザイン塗装の上に保護層としての透明なトップコート塗装したり、その他にも、FRP成形品のそのままの素上げの表面デザイン(繊維の交差模様)を活かすべく、FRP成形品の表面にデザイン塗装せず直に透明なトップコート塗装するなど、FRP成形品の表面に種々の加工を施しているが、このFRP成形品の表面加工を現状より簡易に行いたいという要求がある。特に、FRPの基材が、カーボン繊維の織布(カーボンクロス)の場合は、繊維の交差模様を活かすような透明なトップコート塗装を行うことが多い。
このFRP製の圧力容器は、筒状の形をしており、その製造には、繊維にエポキシ樹脂を含浸させ、このエポキシ樹脂を含浸させた繊維を交差させながら、芯金となるマンドレルに巻回し、加熱硬化させるフィラメントワインディング法と、予め織布にエポキシ樹脂を含浸させて半硬化状態のプリプレグを作っておき、このプリプレグを芯金となるマンドレルに寿司巻き状に巻回させ、加熱硬化させるシートワインディング法の2つの方法が用いられる。
フィラメントワインディング法は、マンドレルの長軸を0度方向とし、±40~60°のヘリカル(螺旋)方向の繊維束と±85~89°のフープ(輪回)方向の繊維束の2種の繊維配向とその層の厚さを適宜組み合わせることできるため、限外ろ過膜法における低圧の圧力容器から逆浸透膜法における高圧の圧力容器にまで幅広く用いられている。
一方、シートワインディング法は、マンドレルの長軸を0度方向とし、織布の幅方向の繊維が圧力容器の0°方向の繊維、織布の長さ方向の繊維が90°方向の繊維となり、このシートワインディング法によるFRP成形品は、織布の幅が圧力容器の長さ(例えば、1250mm)となる。このシートワインディング法では、織布が繊維基材となるため、圧力容器の長さ方向の0度、周方向の90度の繊維配向となる。尚、このシートワインディング法での圧力容器は、全長に渡って均等の厚さの筒状になり、両端開口部の蓋に当接する部分を土管状に厚くできないため、耐圧性の面から、高圧の逆浸透膜法の圧力容器には不向きとなり、低圧の限外ろ過膜法の圧力容器に使われている。
ところで、FRPの製造に用いられるエポキシ樹脂などの熱硬化性の樹脂31は、加熱硬化すると、そのFRP成形品Xの表面には、他材との接着や塗装に不向きな10~30μmの不活性層31’ができてしまう。この不活性層31’は後にデザイン加工(デザイン塗装やトップコート塗装)する際の障害となる為(塗料がFRP成形品Xの表面に良好に密着しない為)、硬化後の樹脂31の表面に他材を接着する場合は、その不活性層31’をサンディングやサンドブラストなどの表面切削加工により取り除くことが必要となる(図6,7参照)。
また、フィラメントワインディング法は、ヘリカル方向の繊維が重なった部分(例えば、+50°と-50°の繊維が重なった交点)で繊維が密になり、ある交点とその隣の交点の間の空隙部分では繊維が粗になる。一方、シートワインディング法は、織布のタテ糸とヨコ糸の交錯点で繊維が密になり、ある交錯点とその隣の交錯点の間の空隙部分では繊維が粗になる。よって、フィラメントワインディング法も、シートワインディング法も、繊維が重なった部分は、FRP成形品の表面が凸状になり、繊維の重なりと隣の繊維の重なりの間の空隙部分では、FRP成形品の表面が凹状になる。
特に、シートワインディング法は、例えばカーボンクロスプリプレグ30をマンドレルに寿司巻き状に巻回させて管状のFRP成形品Xを作っており、この寿司巻きの内層と外層は、マンドレルに隣接した熱ロールの加熱圧により半硬化したプリプレグから湧き上がった樹脂31により硬化させることで接着させているが、この熱ロールの加熱圧によって、プリプレグから湧き上がった樹脂31は、ドロドロの水あめ状で流れにくい為、繊維32が粗になる部分で凹状の窪みができやすい。カーボンクロスはタテ糸、ヨコ糸が規則正しく並んでいる為、シートワインディング法で成形されたFRP成形品Xの表面は、タテ糸とヨコ糸の目の開いた部分が規則正しく凹んでいる碁盤目状の凹部33ができてしまう。
この碁盤目状の凹凸の凹部33の深さは、FRP成形品Xの表面から50~60μmで、深い場合は70~80μm、シートワインディング法の成形条件(例えば、作業時間短縮のために高温で高速で回転させる場合)や、カーボンクロスプリプレグ30の樹脂31が流れにくい場合は80μm以上に達することがある。この凹部33ができたFRP成形品Xの表面は、前述した不活性層31’と同様、塗料が良好に密着しない為、この凹部33が無くなるまで、FRP成形品Xの表面をサンディング処理やサンドブラスト処理などの表面切削加工をする必要がある。
しかしながら、凹部33が80μmのように深い場合、良好な塗装下地を得るために、凹部33が無くなるまでFRP成形品Xの表面をサンディング処理やサンドブラスト処理などの表面切削加工をすると、表層に近いところにある繊維32を切断してしまい、FRP成形品Xの強度や弾性率を低下させてしまうことになる。FRP製の圧力容器においては、繊維32を切断するようなサンディング処理やブラスト処理などの表面切削加工をすると、水処理運転の最中に圧力容器にクラックが入るなどの不具合が発生し、そこから水漏れが起こり、圧力容器内の内圧力を維持できずに、造水効率が低下してしまい、場合によっては、圧力容器の破裂破壊が起こり、水処理設備による造水ができなくなってしまう。
しかし、このサンディング処理やサンドブラスト処理などの表面切削加工をFRP成形品Xの繊維32が切断しないレベルに留めると、FRP成形品Xの表面に凹部33が残ってしまう為、例えばデザイン塗装する為にはこの凹部33を無くさなければならない。
そこで、従来においては、このFRP成形品Xの表面にデザイン加工を施す前に、FRP成形品Xの表面を繊維32を切断しない範囲で、サンディング処理やサンドブラスト処理などの表面切削加工をして脱脂処理をした後(図7参照)、ポリエステル樹脂系のパテ剤34で凹部33を埋め、このパテ剤34で埋めた部位を再度表面切削加工することでFRP成形品Xの表面を平らにする不陸調整を行い(図8参照)、この不陸調整後のFRP成形品Xの表面にデザインを付与している。
ここで、具体的に従来から行われているFRP成形品X(幅1000mm、長さ1500mmのシリンドリカル(円柱体の曲面)状のカーボンクロスFRP:CFRP)における表面に対する下地作りからデザインの付与(デザイン塗装及びトップコート塗装)までの表面加工(従来例)について説明する。
まず、幅1000mm、長さ1500mmに矩形に切断したカーボンクロスプリプレグ30を用意する。
このカーボンクロスプリプレグ30は、3000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)のプリプレグで、カーボン繊維3000フィラメント、タテ糸32、ヨコ糸32ともに織り密度12.5本/25mm、目付け198~200g/mのカーボンクロスで130~150℃×1時間で加熱硬化する特性の樹脂31(エポキシ樹脂)からなるプリプレグである。
このカーボンクロスプリプレグ30を8枚積層して、シリンドリカル状の下型にセットして、上型を嵌合させ、温度150℃、圧力3MPaで加熱圧締し、60分間加熱、圧力印加を維持し、60分後に徐冷を開始し、加熱圧締から90分後に金型を開放してFRP成形品Xを得る。
このFRP成形品Xは、カーボンクロスを用いているため、前述したようにその表面には、繊維の交差模様に沿った規則正しい碁盤目状の凹部33が発生している(図6参照)。
そこで、このFRP成形品Xを成形後、その表面にデザインを付与(デザイン塗装及びトップコート塗装)する場合は、次のように工程が進んでいく。図9に従来例の塗装断面を示した。
先ず、FRP成形品Xの表面を繊維32が切れない深さで表面切削加工(サンディング処理、若しくは、サンドブラスト処理)して、その後、脱脂処理を行う(工程1、図7参照)。
次に、表面切削加工してもFRP成形品Xの表面に残った凹部33をパテ剤34(例えば、黒のポリエステル樹脂系のパテ剤)で埋める。このパテ剤34は、使用したパテ剤34の推奨の硬化条件(温度、時間)によって硬化させる。例えば、40~60℃の温風で3~6時間、若しくは、常温で1日かけて硬化させ、硬化後にFRP成形品Xの表面の凸部を例えば、#240サンドペーパーでサンディングし、デザイン塗装する面に極端な突起部のない概平面となるよう不陸調整を行う(工程2、図8参照)。尚、この工程2で、パテ剤34の硬化や塗料の乾燥、硬化をする場合、例えば、温度を80℃以上にすれば、乾燥、硬化時間は短くなるが、パテ剤34や塗料のマイクロクラックやFRP成形品Xの表面との剥離が起こるため、パテ剤34の硬化、塗料の乾燥、硬化は低い温度、例えば、60℃以下が望ましい。温度が低くする場合は、乾燥、硬化時間は長くなる。
次に、不陸調整後のFRP成形品Xの表面に、下塗り層41を形成するクリア塗料をスプレーガンで25~30μmの厚さに塗布し、例えば、40℃で塗料を半日~1日、乾燥、硬化させる(工程3)。
この下塗り層41は、不陸調整後のFRP成形品Xの表面の素地との接着性と該FRP成形品Xの表面のアルカリや酸に対する耐腐食性を得るための目的で、25~30μmの厚さで形成する。合わせて、後述する中塗り層42との接着性を得る。
次に、下塗り層41の表面に、中塗り層42を形成するクリア塗料をスプレーガンで40~45μmの厚さに塗布し、例えば、40℃で塗料を半日~1日、乾燥、硬化させる(工程4)。
この中塗り層42は、下塗り層41の平滑性保持と塗装全体の耐衝撃性を得るための目的で、40~45μmの厚さで形成する。合わせて、後述する上塗り層44との接着性を得る。尚、デザイン塗装(若しくはデザイン印刷)する場合は、この中塗り層42の上に施す。この中塗り層42はデザイン塗装やデザイン印刷のための平滑下地を形成する目的もある。
次に、デザイン塗装として、パール塗装する場合は、中塗り層42を形成した後の該中塗り層42の表面に15~20μmの厚さで形成する。このデザイン塗装の層(デザイン層43)も他の層と同様に、例えば、40℃で半日~1日、乾燥、硬化させる(工程5)。
尚、デザイン塗装の他にも、例えばブランド名やデザインをシルク印刷したり、ステッカーを貼着してデザインを付与する場合もある。
次に、デザイン層43の表面に、上塗り層44を形成するクリア塗料をスプレーガンで40~45μmの厚さに塗布し、例えば、40℃で塗料を半日~1日、乾燥、硬化させる(工程6)。
尚、この工程6として、図10に図示したようにデザイン層43を形成しない中塗り層42の表面に上塗り層44を形成する場合もあり、これは、FRP成形品Xのそのままの素上げの表面デザイン(繊維の交差模様)を活かすべく、FRP成形品Xの表面にデザイン塗装せず直に透明なトップコート塗装した場合である。
また、必要に応じて更に、上塗り層44の表面に、2層目の上塗り層(図示省略)を形成するクリア塗料をスプレーガンで40~45μmの厚さに塗布し、例えば、40℃で塗料を半日~1日、乾燥、硬化させる(工程7)。
この上塗り層44は、前述したトップコート塗装であり、光沢維持や美粧性、対キズ性、耐候性、耐汚染性を得るための目的で、40~90μmの厚さで形成される。
以上のように、上記の工程を経てFRP成形品Xの表面に塗装が施されており、この工程の多い表面塗装の工程を簡易にしたいという要求がある。
本発明は、前述した従来からの要求に鑑み、発明されたもので、FRP成形品の表面に不陸調整をせずに表面加工を施すことができるなど、従来に無い極めて実用的なガラスペーパープリプレグ及びその製造方法を提供する。
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグ30の上に積層して繊維強化プラスチックを成形するためのガラスペーパープリプレグであって、このガラスペーパープリプレグ1は、ガラスペーパー2に樹脂3を含浸したもので、この樹脂3の含有率は60wt%以上、且つ、次の式1から算出される樹脂フローは40%以上に設定されていることを特徴とするガラスペーパープリプレグに係るものである。
樹脂フロー(%)=プレスして流出した樹脂3の量(g)/プレス前のプリプレグの重量(g)・・・式1
また、請求項1記載のガラスペーパープリプレグにおいて、このガラスペーパープリプレグは、前記樹脂3が塗工機で連続塗工されたものであり、前記ガラスペーパー2の引張強さは、一方向に15N/15mm以上で、この一方向と直交する他方向に4N/15mm以上であることを特徴とするガラスペーパープリプレグに係るものである。
また、請求項1,2いずれか1項に記載のガラスペーパープリプレグにおいて、前記樹脂3として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を15:85~35:65の配合比(質量%比)で混合して成る樹脂3を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグに係るものである。
また、請求項3記載のガラスペーパープリプレグにおいて、前記熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を採用し、熱硬化性樹脂としてウレタンアクリレート樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグに係るものである。
また、ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグ30の上に積層して繊維強化プラスチックを成形するためのガラスペーパープリプレグの製造方法であって、巻回状態から引き出されるガラスペーパー2を、樹脂3を収納した樹脂含浸槽部12を通過させて樹脂3を含浸させ、続いて、この樹脂含浸槽部12を通過した樹脂含浸済みのガラスペーパー2を加熱部13を通過させて樹脂3を半硬化させ、樹脂3の含有率は60wt%以上、且つ、次の式1から算出される樹脂フローは40%以上に設定されたガラスペーパープリプレグ1とすることを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法に係るものである。
樹脂フロー(%)=プレスして流出した樹脂3の量(g)/プレス前のプリプレグの重量(g)・・・式1
また、請求項5記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記ガラスペーパー2の引張強さは、一方向に15N/15mm以上で、この一方向と直交する他方向に4N/15mm以上であることを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法に係るものである。
また、請求項5,6いずれか1項に記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記樹脂3として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を15:85~35:65の配合比(質量%比)で混合して成る樹脂3を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法に係るものである。
また、請求項7記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を採用し、熱硬化性樹脂としてウレタンアクリレート樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法に係るものである。
本発明は上述のように構成したから、FRP成形品の表面に不陸調整をせずに表面加工を施すことができるなど、従来に無い極めて実用的なガラスペーパープリプレグ及びその製造方法となる。
実施例1に係るガラスペーパープリプレグとカーボンクロスプリプレグを示す斜視図である。 実施例1に係るガラスペーパープリプレグの製造を説明する説明図である。 実施例1と比較例の性能を確認する測定結果を示す表である。 実施例1に係るFRP成形品Aの表面加工部位を説明する断面図である。 実施例2に係るFRP成形品Aの表面加工部位における光の屈折状況を説明する断面図である。 従来の製法で成形したFRP成形品Xを説明する断面図である。 従来の製法で成形したFRP成形品Xを説明する断面図である。 従来の製法で成形したFRP成形品Xを説明する断面図である。 従来の製法で成形したFRP成形品Xの表面加工部位を説明する断面図である。 従来の製法で成形したFRP成形品Xの表面加工部位における光の屈折状況を説明する断面図である。
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグ30の上に、本発明に係るガラスペーパープリプレグ1を一枚積層した状態で繊維強化プラスチック(FRP成形品A)を成形すると、このFRP成形品Aの表面には凹部の無い平らな面を有する層が形成される。
本発明で使用するガラスペーパー2に多くの樹脂3を含ませ、その樹脂3が成形時の加熱、加圧によって粘度が低下し、その樹脂3がFRP成形品Aの凹部を覆いつくす適度な樹脂フローがあり、樹脂3のフロー後、粘度が上昇し凹部を覆いつくした状態で硬化することで凹部のない平らな面を有する層となる。
ガラスペーパー2は、例えば一方向に15N/15mm以上で、この一方向と直交する他方向に4N/15mm以上に引張強さを有することで樹脂3の塗工工程においてガラスペーパー2が破断することなく連続的に塗工でき、また、このガラスペーパー2に樹脂3を含浸させてガラスペーパープリプレグを設けるにあたり、安定的に連続的に最適な樹脂含有率及び樹脂フローに設定される。
従って、本発明により得られるFRP成形品Aの表面に従来のような不陸調整をすることなく、このFRP成形品Aの表面に形成された平らな層に、例えばデザイン塗装し、このデザイン塗装面に保護層としての透明なトップコート塗装をすることができる。つまり、このFRP成形品Aを成形した際に該FRP成形品Aの表面に形成される層は、塗装や印刷などのデザインを施すに最適な下地となる。
また、このFRP成形品Aの表面に形成される層は、透き通った無色透明な層であり、これは、ガラスペーパー2は樹脂3を含浸することで透明となるからである。
即ち、この透明な層を介してFRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(繊維の交差模様)が見えることになる。
従って、この透明な層がそのまま保護層としての機能を発揮することになり、従来のように何層も重ね塗りして保護層を形成する必要は無い。
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
本実施例は、図1に図示したようにガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグ30の上に積層して繊維強化プラスチック(FRP成形品A/FRP製の圧力容器)を成形するためのガラスペーパープリプレグ1であって、図4に図示したようにこのFRP成形品Aは、カーボンクロスプリプレグ30で構成された層A1と、この層A1の上に設けられるガラスペーパープリプレグ1で構成された層A2(繊維配向の異方性のある不織布様態の繊維基材層)との2相(Phase)の層構造になっている。
この本実施例で使用するカーボンクロスプリプレグ30は、前述した従来と同様、3000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)のプリプレグで、カーボン繊維3000フィラメント、タテ糸32、ヨコ糸32ともに織り密度12.5本/25mm、目付け198~200g/mのカーボンクロスで130~150℃×1時間で加熱硬化する特性のエポキシ樹脂31からなるプリプレグである。
尚、本実施例は、FRP成形品AとしてFRP製の圧力容器を採用しているが、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
以下、本実施例に係るガラスシートプリプレグ1について説明する。
このガラスシートプリプレグ1は、ガラスペーパー2に樹脂3を塗工したものであり、本実施例ではプリプレグ塗工のためのタテ型塗工機を使用している。
このタテ型塗工機は、図2に図示したようにプリプレグ処理前の巻回状態のガラスペーパー2を送り出すガラスペーパー送出部10と、プリプレグ処理済みのガラスペーパープリプレグ1を巻き取るガラスペーパープリプレグ巻取部11との間に、ガラスペーパー2に樹脂3を含浸させる樹脂含浸槽部12と、この樹脂含浸槽部12を通過した樹脂含浸済みのガラスペーパー2を上下縦方向に通過させ該ガラスペーパー2に含浸された樹脂3を加熱して半硬化させる加熱部13(半硬化ゾーン)とを設けたものである。符号14はテンションローラーである。
本実施例では、このガラスペーパー送出部10に単位目付25g/m、幅1040mm、長さ100mのロール巻きのガラスペーパー2をセットし、続いて、ガラスペーパー2を樹脂含浸槽部12を通過させて樹脂3を含浸させ、続いて、この樹脂含浸槽部12を通過した樹脂含浸済みのガラスペーパー2を加熱部13を通過させて樹脂3を半硬化させてガラスペーパープリプレグ1とし、続いて、このガラスペーパープリプレグ1をガラスペーパープリプレグ巻取部11で巻き取って連続的にプリプレグ塗工することになる。
また、本実施例では、このガラスペーパー2として、引張強さは、長さ方向(タテ方向)に15N/15mm、幅方向(ヨコ方向)4N/15mmで、幅方向よりも長さ方向に強度が高い異方性を有するガラスペーパー2を採用している。
また、本実施例では、樹脂含浸槽部12に、特願2018-37390に開示される熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂と、熱硬化性樹脂としてウレタンアクリレート樹脂が15:85の配合比(質量%比)の樹脂3、若しくは、ウレタンアクリレート樹脂が100%の樹脂を収納する。尚、その他にも、前述したカーボンクロスプリプレグ30に用いられている樹脂31と同様な、130~150℃×1時間で硬化する特性のエポキシ樹脂、例えば、主剤としてエピビス系液状エポキシ、硬化剤としてジシアンジアミドからなるエポキシ樹脂でも良い。
また、ガラスペーパー2を樹脂3に含浸させる方法としては、本実施例のようなガラスペーパー2全体を樹脂含浸槽部12に浸す含浸方法(ディッピング法と言う)が良い。
即ち、プリプレグ塗工の方法にはディッピング法の他、加熱溶融した樹脂を繊維基材の片面側から、ロールやプレス板の押圧を利用して樹脂を押入し、プリプレグの次工程のプレス成形工程やオートクレーブ成形工程の温度と圧力を利用して繊維基材へフル含浸を進める含浸方法(ホットメルト法と言う)があるが、塗装下地ための不陸調整が不要という効果を奏するためには、プリプレグ塗工の段階で樹脂の含浸が十分に行われるディッピング法が好適である。
また、本実施例では、タテ型塗工機のプリプレグの加熱部13の加熱温度は150℃に設定しているが、得られるプリプレグが、所望の半硬化レベルになるように、加熱部13の長さや加熱能力および樹脂のゲルタイムに応じて、加熱部13の温度や塗工スピードを適宜定める。例えば、加熱部13の温度を150℃から180℃にするなどして、加熱部13内での滞留時間と樹脂3のゲルタイム、加熱部13通過後のプリプレグに含浸した樹脂3の半硬化状態をにらみながら塗工スピードを速めれば良い。尚、本実施例では、加熱部13の通り道がタテになるタテ型塗工機を説明しているが、プリプレグ塗工には加熱部13がヨコ型となるヨコ型塗工機を適用しても良い。
また、本発明者等は、プリプレグ塗工の際、ガラスペーパー2の引張強さが長さ方向(タテ方向)に15N/15mm以下、幅方向(ヨコ方向)4N/15mm以下のものを試したが、プリプレグ塗工の際のフォワードテンションやバックテンションにより、長さ方向や幅方向に引きちぎれてしまい、連続塗工ができなかった。
従って、このプリプレグ塗工(塗工機による樹脂3の連続塗工)に用いるガラスペーパー2の引張強さは、長さ方向(タテ方向)に15N/15mm以上、幅方向(ヨコ方向)4N/15mm以上(結果として異方性)であることが望ましい。また、この連続塗工においては、ガラスペーパー2の引張強さは、長さ方向(タテ方向)に15N/15mmで、幅方向(ヨコ方向)に15N/15mm(結果として等方性)でも良い。
ところで、ガラスペーパープリプレグ1は含浸塗工した樹脂3が半硬化状態となるが、この半硬化状態は、プリプレグの樹脂フローによって判定する。
具体的には、得られたプリプレグを定めたサイズ(例えば、200mm□)に切断し、これを定められた温度、圧力(例えば、温度150℃、圧力0.3MPaのように、その樹脂配合が硬化するような温度、圧力)のプレス成形機でプリプレグ全体をプレス成形し、成形後に流れた樹脂の量で半硬化度合いを判定する。この判定方法では、基材の繊維が複雑に絡み合っているガラスペーパー2は、樹脂とともに流れずにそこに留まることになる。
半硬化の度合いが硬化に近ければ樹脂は流れにくく、未硬化に近ければ樹脂は流れやすくなるので、樹脂の流れ出た広がり状態(樹脂フロー)で半硬化の状態を測ることができる。
この流れ出た樹脂の重量と流れ出る前のプリプレグの重量のパーセンテージで半硬化度合いを判定し、以下の式から求められるパーセンテージを樹脂フローと呼ぶ。
樹脂フローFL(%)=プレスして流出した樹脂の量:F(g)/プレス前のプリプレグの重量:W(g)・・・式1
プレスして流出した樹脂の量:F(g)=プレス前のプリプレグの重量W1(g)-プレスして樹脂が流出した後のFRP板の重量W2(g)・・・式2
式1に式2のFを代入して樹脂フローを求める。
本実施例では、タテ型塗工機のプリプレグ塗工条件(例えば、塗工スピード、樹脂3の粘度、加熱部13の温度設定など)を振って種々試作し、樹脂含有率80wt%、樹脂フロー50%のガラスペーパープリプレグ1を得、この樹脂含有率80wt%、樹脂フロー50%のガラスペーパープリプレグ1を幅1000mm、長さ1500mmの大きさで1枚を用意する。
一方、前述した樹脂含有率35wt%のカーボンクロスプリプレグ30(カーボン繊維3000フィラメント、タテ糸、ヨコ糸ともに織り密度12.5本/25mm、目付け198~200g/mのカーボンクロスと、130~150℃×1時間で硬化する特性のエポキシ樹脂からなるプリプレグ)を幅1000mm、長さ1500mmの大きさで8枚を用意する。
このカーボンクロスプリプレグ30を8枚積層し、その8枚のカーボンクロスプリプレグ30の上層にガラスペーパープリプレグ1を1枚積層し、この積層体を幅1000mm、長さ1500mmのシリンドリカル状の下型にセットして、上型を嵌合させ、温度150℃、圧力3MPaで加熱圧締し、60分間加熱、圧力印加を維持し、60分後に徐冷を開始し、加熱圧締から90分後に金型を開放してFRP成形品Aを設けた。
このFRP成形品Aは、碁盤目状の凹部の無い平滑な表面で、厚さが1.9~1.95mmのシリンドリカル状の成形品となった。
このFRP成形品Aの断面を顕微鏡観察したところ、カーボンクロスプリプレグ30で構成された層A1と、この層A1の上に設けられたガラスペーパープリプレグ1による層A2は一体化し良好に接着されており、このカーボンクロスプリプレグ30による層A1が1.72~1.8mm、ガラスペーパープリプレグ1による層A2が0.15~0.18mmであった。
次に、このシリンドリカル状のFRP成形品Aの表面(層A2の表面)をFRP特有の不活性層を除去する目的と次工程のデザインを付与する目的で40~60μmの深さまでサンドブラスト処理を行った。
尚、本実施例ではシリンドリカル状の成形表面であったため、サンドブラスト処理を行ったが、FRP成形品Aが平面状の場合や、シリンドリカル状の場合であっても追従するようなサンディングマシンがあれば、サンディング処理でも良い。
このサンドブラスト後のFRP成形品Aの表面には凹部が全く無いのは勿論、サンドブラスト処理後のFRP成形品Aの断面を顕微鏡観察したところ、表層のガラスペーパープリプレグ1の層A2は残っていて、カーボンクロスプリプレグ30の層A1のカーボン繊維を切断している部位はなかった。
従って、サンドブラスト処理後のFRP成形品Aの表面は不陸調整をすることなく、前述した工程3の下塗り層41若しくは工程5のデザイン層43を形成する工程が行えることになる。尚、この下塗り層41の付着性は、JIS K5600によるクロスカット法試験で10点となり、良好であった。
ここで、本実施例として、カーボンクロスプリプレグ30の8枚積層体の上層にガラスペーパープリプレグ1を1枚積層してプレス成形した平板の表層(ガラスペーパープリプレグ側の表層)をサンドブラスト処理した場合と、比較例として、カーボンクロスプリプレグ30の8枚積層体だけでプレス成形した平板の表層を凹部がなくなるまでサンドブラスト処理した場合について、この両者のサンドブラスト処理した面を上面にしてJIS K7074の試験方法により測定した曲げ強度、曲げ弾性率夫々の数値は図3に示す表の通りである。
比較例は、凹部がなくなるまでサンドブラストすると、曲げ強度で19.5%の強度低下、曲げ弾性率で8.3%の弾性率低下が認められた。
また、比較例は、表層のカーボン繊維が部分的に断裂しているところが目視でもわかる状況であったが、一方、本実施例は、40~60μmの深さまでサンドブラスト処理をしていても、表層のガラスペーパープリプレグ1の層A2は残っており、カーボン繊維を切断していないので、FRP成形品Aの強度、弾性率を低下させることはなかったと考えられる。
また、本実施例では、ガラスペーパープリプレグ1を1枚積層しているが、カーボンクロスプリプレグ30の保存寿命が近づいて該カーボンクロスプリプレグ30の樹脂フローがフレッシュな時より低下している場合は、ガラスペーパープリプレグ1を2枚積層しても良い。
具体的には、ガラスペーパー2が1枚(1層)の場合は、ガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率70wt%以上、且つ、樹脂フロー40%以上のものが望ましい。
本発明者等の実験では、樹脂含有率70wt%以下、且つ、樹脂フロー40%以下のガラスペーパープリプレグ1では、ガラスペーパー2が1枚の場合、そのFRP成形品Aの表面に部分的に、碁盤目状の凹部が発生することがあった。
更に、ガラスペーパー2が2枚(2層)の場合は、ガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率は70wt%以上までは必要なく、その樹脂含有率を60wt%以上とし、且つ、樹脂フロー40%以上のものを2枚積層することが良いことを確認している。
また、ガラスペーパー2が3枚(3層)以上の場合は、ガラスペーパー2が2枚(2層)の場合と同様にガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率は60wt%以上、且つ、樹脂フロー40%以上のものを3枚以上積層することが良い。
本願実施例では、カーボンクロスプリプレグ30は、3000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)のプリプレグを用いているが、例えば、カーボンクロスプリプレグ30に12000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)を用いると、3000フィラメントに比べてカーボン繊維が太くなり、織布のタテ糸とヨコ糸の交錯点で繊維が密になり、ある交錯点とその隣の交錯点の間の空隙部分では繊維が粗になる度合いが大きくなるので、サンドブラスト後のFRP成形品Aの表面の凹部がなく、表層のガラスペーパープリプレグ1の層A2を残し、カーボン繊維を切断しないためには、ガラスペーパー2を多数枚(多層)にすれば良い。
また、本実施例では、図4に図示したようにFRP成形品Aは、ガラスペーパープリプレグ1で構成された層A2を下地として、この表面に前述した工程5のデザイン塗装の層(デザイン層43)を形成し、更に、このデザイン層43の表面に前述した工程6の上塗り層44を形成している。尚、デザイン塗装の他にも、例えばブランド名やデザインをシルク印刷したり、ステッカーを貼着してデザインを付与しても良い。
従って、本実施例により成形されるFRP成形品Aは工程1~4が不要となる。
本実施例は上述のように構成したから、FRP成形品Aの表面に不陸調整せずに直にデザイン塗装やデザイン印刷を良好に施すことができるなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
実施例1では、上型、下型によるプレス成形の場合を説明したが、上型だけ、もしくは下型だけを使うオートクレーブ成形においても同様に不陸調整をせずに直にデザイン塗装やデザイン印刷を良好に施すことができるなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
実施例1では、カーボンクロスプリプレグ30により説明したが、ガラスクロスプリプレグ、または、ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグにおいても同様に不陸調整をせずに直にデザイン塗装やデザイン印刷を良好に施すことができるなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
本実施例は、図5に図示したようにガラスペーパープリプレグ1で構成された層A2にデザイン層及び上塗り層を形成せず、この層A2をFRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(繊維が交差模様)を透かして見えるトップコート層(保護層)とした場合であり、その他の構成は実施例1と同様である。
従来、FRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(繊維が交差したデザイン)を透明に透けて見えるようにする場合、前述したように成形工程の後、工程1から工程7(この場合工程5は行わない。)の過程を経て表面にトップコート層が完成する。
前述した工程では、上塗りだけを2層とする場合があるとしたが、下塗り及び中塗りも、乾燥、硬化時の硬化収縮によるマイクロクラックや下層との剥離を避けるために1層の塗膜の厚さを薄くして2回塗りすることもあるため、実際には塗装が仕上がるまでには多くの工程と工数が必要になる。
具体的には、例えば、上塗り層の厚さが80μmの場合、これを1回の塗装で済まそうとすると、表面と内部の乾燥状態のズレが生じ、表面は乾燥しているのに内部は未乾燥となり、乾燥途中で塗膜が表面側に引っ張られて亀裂やヒビ割れが起こることがある。
また、乾燥条件によっては、塗膜表面が梨地状になることがある。塗装の塗膜の亀裂やヒビ割れ、梨地表面は、塗膜の透明性を失うことになり、繊維の交差模様が綺麗に見えなくなってしまう。よって、この繊維の交差模様が見えるようにするクリア塗装は、1回を薄く塗装し、さらに、平滑性を向上させるために#1000ペーパーで磨きを加え、乾燥と塗布を複数回繰り返し行うことで厚塗りをしていくが、繊維の交差模様が見えるようにするクリア塗装は、塗料の乾燥時間まで含めると、かなりの日数や乾燥装置、塗装、乾燥条件の管理など、材料面でも工数面でもコスト高になってしまう。
従来、繊維の交差模様が塗装によって透けて見えるようにするためには、下塗り、中塗り、上塗りが全て透明である必要がある。また、例えば、塗料の乾燥がいき過ぎてしまい、下塗りと中塗りの間や中塗りと上塗りの間の界面に硬化被膜(界面被膜)が形成されると、図10に図示したようにその界面(例えば、上塗りと中塗りの界面)での複屈折や複反射が生じてしまい、繊維の交差模様がぼやけたり、二重像になったりすることがある。
特に、前述した上塗り層44の表層は、例えば、蛍光灯の反射が直線の管状の蛍光灯としてわかるレベルの平滑さが必要になる。この上塗り層44を形成する工程6・7では、蛍光灯の管状の反射がギザギザにならないよう、塗装の仕方、乾燥の仕方に注意が必要になる。
また、FRP成形品が断面コ字状のような塗装面が水平面と垂直面である場合、水平面は塗装の塗膜が厚くなりやすい傾向にあり、鉛直面は塗装の塗膜がダレやすい傾向になるため、塗装の水平面、鉛直面への配慮も必要になる。これがクリア塗装で形成するとなると、乾燥状態で塗装界面での複屈折や複反射もあり、乾燥部位と乾燥条件の一層の配慮が必要となる。
この点、本実施例によれば、繊維の交差模様が透明に透けて見える表面の層(ガラスペーパープリプレグによって得られた透明層)は、単一層のため、その界面(例えば、塗装のような上塗りと中塗りの界面)での複屈折や複反射は生ずることはなく、繊維の交差模様がぼやけたり、二重像になったりすることがない。
更に、この保護層は、金型の上型の鏡面で成形されるために、蛍光灯の反射が直線の管状の蛍光灯としてわかるレベルの平滑さが得られる。前述したクリア塗装を行う工程6・7のような、蛍光灯の管状の反射がギザギザにならないよう、塗装の仕方、乾燥の仕方への注意は不要になる。
また、FRP成形品が断面コ字状のような塗装面が水平面と垂直面である場合でも、金型による成形でガラスペーパープリプレグによる透明層が得られるので、塗装にあるような水平面は塗装の塗膜が厚くなったり、鉛直面は塗装の塗膜がダレやすくなったりすることへの配慮は不要になる(図5参照)。
この繊維の交差模様が透明に透けて見える表面の層(ガラスペーパープリプレグ1によって得られた透明の層A2を指し、これをトップコート層と呼ぶ)は、前述した工程1から工程7を全て省くことができる。
また、実施例2と従来例では、前述のとおり、工程にかかる日数とカーボンクロスのクロス目を透明に浮き立たせるための工程ごとの注意の払い方に大きな差がある。
即ち、実施例2では、FRP成形品Aの成形と同時に透明なトップコート層が得られる。FRPが金型で成形される際、トップコート層となるガラスペーパープリプレグの樹脂とカーボンクロスプリプレグの樹脂はどちらも熱硬化性樹脂で、加熱により、それぞれの樹脂が液状に流出して互いに相溶し硬化するため、カーボンクロスのFRP層とガラスペーパーのFRP層の界面の接着は良好なものになる。
加えて、樹脂フローの判定方法で説明した通り、基材の繊維が複雑に絡み合っているガラスペーパー2は、繊維が樹脂とともに流れずにそこに留まる特徴があるので、ガラスペーパー2のガラス繊維がカーボンクロスのカーボン繊維と接していることで、カーボン繊維はガラスペーパー2のガラス繊維によって押さえつけられており、カーボン繊維がカーボンクロスプリプレグの樹脂の流れによって流し出されないため、カーボンクロスのクロス目の目ズレは発生せず、タテ糸とヨコ糸がきれいに直交した状態が保たれる。
また、塗装で注意が必要な最表層は、本願実施例では金型の表面を転写することになるので、塗装の時のような、蛍光灯の管状の反射がギザギザにならないよう、塗装の仕方や乾燥の仕方、仕上げの仕方への注意は必要ない。また、本願実施では、トップコート層はガラスペーパーによるプリプレグの単一材料の単層となるので、クリア塗装で起こる複屈折や複反射は起こらない。
また、従来例は、FRP成形品Xの成形の後、繊細に塗膜厚さと乾燥、硬化に気を配りながら工程を進め、下地処理(不陸調整)、下塗り、中塗り、上塗りでようやく透明なトップコート層が得られる。本願実施例と従来例では、工程面(例えば、かかる日数)、品質管理面(例えば、塗膜の表面状態を良好にするための塗装作業や塗料の乾燥条件の管理)で大きな違いがある。
本実施例は、カーボンクロスプリプレグ1を用いたFRP成形品Aのカーボン繊維の交差模様で説明したが、ガラスクロスプリプレグによるFRP成形品でも同様に透明なトップコート層を付与することができ、ガラス繊維の交差模様を透明に浮き立たせることができる。
また、ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグよるFRP成形品でも同様に透明なトップコート層を付与することができ、繊維の一方向模様や交差模様を透明に浮き立たせることができる。
加えて、本願実施例のガラスペーパープリプレグ1による透明のトップコート層は樹脂と硬化剤の結合により硬化したもので、塗料のように含有している有機溶剤が乾燥されたものではないため、耐薬品性、耐スクラッチ性が優れた表層を得ることができる。
また、本実施例においても、実施例1と同様、ガラスペーパープリプレグ1を1枚積層しているが、カーボンクロスプリプレグ30の保存寿命が近づいて該カーボンクロスプリプレグ30の樹脂フローがフレッシュな時より低下している場合は、ガラスペーパープリプレグ1を2枚積層しても良い。
具体的には、ガラスペーパー2が1枚(1層)の場合は、ガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率70wt%以上、且つ、樹脂フロー40%以上のものが望ましい。
本発明者等の実験では、樹脂含有率70wt%以下、且つ、樹脂フロー40%以下のガラスペーパープリプレグ1では、ガラスペーパー2が1枚の場合、そのFRP成形品Aの表面に部分的に、碁盤目状の凹部が発生し、蛍光灯の管状の反射がギザギザになることがあった。
更に、ガラスペーパー2が2枚(2層)の場合は、ガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率60wt%以上、且つ、樹脂フロー40%以上のものを2枚積層することが良いことを確認している。
また、ガラスペーパー2が3枚(3層)以上の場合は、ガラスペーパー2が2枚(2層)の場合と同様にガラスペーパープリプレグ1の樹脂含有率は60wt%以上、且つ、樹脂フロー40%以上のものを3枚積層以上することが良い。これにより、蛍光灯の管状の反射がギザギザにならない平滑なトップコート層が得られる。
本願実施例では、カーボンクロスプリプレグ30は、3000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)のプリプレグを用いているが、例えば、カーボンクロスプリプレグ30に12000本のフィラメントのカーボン繊維からなるクロス(織布)を用いると、3000フィラメントに比べてカーボン繊維が太くなり、織布のタテ糸とヨコ糸の交錯点で繊維が密になり、ある交錯点とその隣の交錯点の間の空隙部分では繊維が粗になる度合いが大きくなるので、FRP成形品Aの表面に碁盤目状の凹部がなく、蛍光灯の管状の反射がギザギザにならない平滑なトップコート層を得るためには、ガラスペーパー2を多数枚(多層)にすれば良い。
本実施例は上述のように構成したから、FRP成形品Aを成形した際に形成される透明な層を介して該FRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(繊維の交差模様)が見え、その層が保護層としての機能を発揮することになり、従来のように何層も重ね塗りして保護層を形成する必要は無いなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
実施例2では実施例1と同様の構成としているため、上型、下型によるプレス成形の場合で説明したが、上型だけ、もしくは下型だけを使うオートクレーブ成形においても同様に、FRP成形品Aを成形した際に形成される透明な層を介して該FRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(繊維の交差模様)が見え、その層が保護層としての機能を発揮することになり、従来のように何層も重ね塗りして保護層を形成する必要は無いなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
実施例2では実施例1と同様の構成としているため、カーボンクロスプリプレグ30により説明したが、ガラスクロスプリプレグ、または、ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグにおいても同様に、FRP成形品Aを成形した際に形成される透明な層を介して該FRP成形品Aのそのままの素上げの表面デザイン(クロスプリプレグにおいては繊維の交差模様、一方向)が見え、その層が保護層としての機能を発揮することになり、従来のように何層も重ね塗りして保護層を形成する必要は無いなど、FRP成形品Aの表面加工を簡易に行えることになる。
1 ガラスペーパープリプレグ
2 ガラスペーパー
3 樹脂
12 樹脂含浸槽部
13 加熱部
30 カーボンクロスプリプレグ

Claims (8)

  1. ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグの上に積層して繊維強化プラスチックを成形するためのガラスペーパープリプレグであって、このガラスペーパープリプレグは、ガラスペーパーに樹脂を含浸したもので、この樹脂の含有率は60wt%以上、且つ、次の式1から算出される樹脂フローは40%以上に設定されていることを特徴とするガラスペーパープリプレグ。
    樹脂フロー(%)=プレスして流出した樹脂の量(g)/プレス前のプリプレグの重量(g)・・・式1
  2. 請求項1記載のガラスペーパープリプレグにおいて、このガラスペーパープリプレグは、前記樹脂が塗工機で連続塗工されたものであり、前記ガラスペーパーの引張強さは、一方向に15N/15mm以上で、この一方向と直交する他方向に4N/15mm以上であることを特徴とするガラスペーパープリプレグ。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載のガラスペーパープリプレグにおいて、前記樹脂として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を15:85~35:65の配合比(質量%比)で混合して成る樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグ。
  4. 請求項3記載のガラスペーパープリプレグにおいて、前記熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を採用し、熱硬化性樹脂としてウレタンアクリレート樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグ。
  5. ガラス一方向プリプレグ若しくはカーボン一方向プリプレグ、または、ガラスクロスプリプレグ若しくはカーボンクロスプリプレグの上に積層して繊維強化プラスチックを成形するためのガラスペーパープリプレグの製造方法であって、巻回状態から引き出されるガラスペーパーを、樹脂を収納した樹脂含浸槽部を通過させて樹脂を含浸させ、続いて、この樹脂含浸槽部を通過した樹脂含浸済みのガラスペーパーを加熱部を通過させて樹脂を半硬化させ、樹脂の含有率は60wt%以上、且つ、次の式1から算出される樹脂フローは40%以上に設定されたガラスペーパープリプレグとすることを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法。
    樹脂フロー(%)=プレスして流出した樹脂の量(g)/プレス前のプリプレグの重量(g)・・・式1
  6. 請求項5記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記ガラスペーパーの引張強さは、一方向に15N/15mm以上で、この一方向と直交する他方向に4N/15mm以上であることを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法。
  7. 請求項5,6いずれか1項に記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記樹脂として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を15:85~35:65の配合比(質量%比)で混合して成る樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法。
  8. 請求項7記載のガラスペーパープリプレグの製造方法において、前記熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を採用し、熱硬化性樹脂としてウレタンアクリレート樹脂を採用したことを特徴とするガラスペーパープリプレグの製造方法。
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