JP2022064551A - 排ガス浄化用触媒システム - Google Patents

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【課題】排ガス浄化用触媒システム及び排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する方法を提供する。【解決手段】希薄燃焼内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する排ガス浄化用触媒システムであって、排ガス流れの上流側から順番に、還元剤としての尿素水溶液を排ガス中に供給する供給部と、ハニカム構造体を触媒化した少なくとも一つのハニカム触媒を配置し、ハニカム触媒は先に排ガスに接触する第1の触媒領域と、その後に排ガスに接触する第2の触媒領域を有し、第1の触媒領域が、鉄を含有するBEA型ゼオライトと、このBEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトを含み、第2の触媒領域が、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する排ガス浄化用触媒システムおよびこれを利用した排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する方法に関する。
自動車を中心とした内燃機関から排出される排ガス中の有害成分の浄化には排ガス浄化触媒が広く実用化されている。近年、環境問題に対する市場の意識の向上に伴い、大気中に放出される排ガス中の有害成分の排出量について各国の行政機関により様々な規制がされており、その規制も年を追うごとに厳しさを増している。このような排ガス中の有害成分の排出規制を満足すべく、様々な排ガス浄化触媒が実用化されているのは前述のとおりであるが、新たな排ガス浄化技術も盛んに提案されている。
排ガス中の有害成分の一つとして窒素酸化物(NOx)が知られている。このようなNOxを浄化するための触媒としては選択還元触媒が知られている。選択還元触媒はSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒ともいわれる。SCR触媒は既に実用化されており、ディーゼル自動車排ガスにおけるNOx浄化技術として広く普及している。普及しているSCR触媒はゼオライトを主要な触媒成分とする触媒組成物からなるもので、このような触媒成分をハニカム構造体に被覆したハニカム触媒の形で実施されている。
SCR触媒はNOxを含む排ガスの流れ中に配置され、SCR触媒上流側から尿素水をはじめとするアンモニア系還元剤を排ガス中に供給し、このアンモニア系還元剤と排ガスとをSCR触媒中で接触させる。ここで、SCR触媒では以下のような反応が促進し、排ガス中のNOxが窒素(N)と水とに分解される。
4NO+4NH+O->4N+6H
2NO+4NH+O->3N+6H
NO+NO+2NH->2N+3H
このようなSCR触媒はその優れた浄化能力から広く実施されているが、前述のとおり近年の有害物質の排出規制は厳しさを増しており、市場からは更にNOxの浄化能力の優れたSCR触媒の登場が求められている。
排ガス中に含まれるNOxは多様な窒素酸化物の総称である。このようなNOx成分のうち、近年、有害成分として亜酸化窒素(NO)の存在が注目を集めており、近い将来その排出量についても規制されるものと考えられている。
Oは他のNOx成分同様、光化学スモッグや酸性雨などを引き起こす大気汚染原因物質である。また、オゾン層の破壊原因であり、炭酸ガスの310倍にも昇り、大気中での寿命は114年に及ぶ安定な温室効果ガスとしても知られている(特許文献6)。
Oについても多様な触媒技術による浄化が提案されており、この場合も他のNOx成分同様、SCR触媒を使用した浄化システムは有望な触媒技術であり、特許文献1~4が知られている。特許文献1~4記載のSCR触媒システムの基本的な構成要素は、SCR触媒システムを2つの領域に分けて設計するもので、排ガスの流れに対して上流側領域に鉄を含む*BEA型ゼオライトの様に大細孔径なゼオライトを含む触媒を配置し、下流側領域に銅を含むCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトの様な小細孔径なゼオライトを含む触媒を配置するものである。これにより、優れたNO浄化が発揮される事が報告されている。以下、特許文献1~4記載のSCR触媒システムを引用した説明においては、大細孔径なゼオライトは*BEA型ゼオライトと、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトの様な小細孔径なゼオライトについては小細孔径ゼオライトとのみ記す場合がある。
これらの出願の中で使用される*BEA型ゼオライト、小細孔径ゼオライトはそれぞれ鉄原子、銅原子を含有している。これら鉄元素、銅元素は各ゼオライトにおける活性点ともなるもので、従来のSCR触媒に使用されるゼオライトと同様である。
ゼオライトは規則的な骨格構造を有し、この骨格構造に由来したミクロな細孔を有する多孔質な結晶性アルミノシリケートである。ゼオライトにおける骨格構造は、TOユニットと言われる(SiIV)ユニットと(AlIII)ユニットの連結構造からなる。これらTOユニットは四面体配構造を持ち、(SiIV)ユニットと(AlIII)ユニットはそれぞれ4つの頂点酸素を共有して連結構造を構成し、この連結構造が組み合わされて各ゼオライト固有の骨格構造を形成する。
ここで、(AlIII)ユニットは3価のアルミニウムを含む四面体配位構造を形成していることからTOユニットとしては正電荷が一つ不足した状態になる。この様にアルミニウム原子由来で不足した骨格構造中の正電荷は電気的中性を保つために他のカチオンで補われる。このような正電荷の不足部位はカチオンサイトと言われる。カチオンサイトは任意のカチオンをイオン交換で取り込む事ができ、金属イオンでイオン交換された場合、イオン交換担持させた金属カチオンは、触媒反応においてはそのイオンや錯体に固有な反応の活性種になる。このような金属カチオンとして鉄元素や銅元素は共にSCR触媒における活性種として広く知られている。
[*BEA型ゼオライト、小細孔径ゼオライトが低SARである理由]
SCR触媒におけるゼオライトでは、このような鉄元素や銅元素がイオン交換により担持されることで活性が向上する事は前述のとおりである。そのため、ゼオライトにおける触媒反応のことだけを考えればカチオンサイトは多い事が望ましい。ゼオライトにおけるカチオンサイトはゼオライト骨格構造中の(AlIII)ユニットに由来したものであることも前述のとおりであり、ゼオライトにおいては(AlIIIO4)ユニットの含有量は鉄元素や銅元素を高活性な状態で担持できる量ともいえる。ゼオライト骨格構造中の(AlIIIO4)ユニットの量は、同様にゼオライト骨格構造を構成する(SiIV)ユニットとの比率として表される。この比率は酸化物換算のケイ素/アルミウムの比率として表され、SAR(Silica Alumina Ratio)として当業者間で周知されている。
特許文献1~4では鉄元素、銅元素をイオン交換でそれぞれ*BEA型ゼオライト、小細孔径ゼオライトに担持させ高活性なSCR触媒としている。そのため、鉄元素、銅元素がイオン交換で担持できるカチオンサイトの量、すなわち(AlIII)ユニットの量が多いゼオライト、すなわちSARは比較的小さなゼオライトが使用されている。
この様に、高活性な触媒を得るうえでは低SARなゼオライトを使用する必要があるが、低SARなゼオライトは高活性が期待できる一方で、水熱条件下では耐久性に劣る傾向にある。これは、ゼオライト骨格構造から(AlIII)ユニットを構成するアルミニウムが脱離することでゼオライトの骨格構造が破壊されてしまうためであり、ゼオライトに関係する当業者の間では脱アルミネーションとして知られている。自動車排ガスの様に化石燃料を使用した排ガス中には燃焼熱と共に炭化水素由来の水が含まれ、低SARなゼオライトにとっては過酷な環境であるといえる。
このような脱アルミネーションを防ぐためにはSARが大きな、(AlIII)ユニットの含有量が少ないゼオライトを採用する事も考えられるが、このような高SARなゼオライトでは前記のようなカチオンサイトの量も少なくなり、触媒として高活性を期待する事が難しくなる。前述の特許文献1~4に記載のSCR触媒システムでも、開示されているSARは300以下である。
[*BEA型ゼオライトのHC被毒可能性]
現在、ゼオライトには200種類を超える骨格構造の存在が知られている。これらの骨格構造は国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)によってそれぞれアルファベット3文字のコードが付与されている。特許文献1~4のSCR触媒システムに使用されているゼオライトは、排ガスの流れに対して上流側領域に鉄を含む*BEA型ゼオライトが使用され、その下流側領域には小細孔径ゼオライトが使用されている。
*BEA型ゼオライトは骨格構造に、構成する酸素の数でカウントされる酸素12員環の最大細孔を有し、本発明における小細孔径ゼオライトは同様のカウントで酸素8員環の最大細孔を有している。このような細孔に分子を吸着する事ができるのがゼオライトであるが、細孔サイズが大きなゼオライトではより大きなサイズの分子を吸着することができる。
国際ゼオライト学会(IZA:International Zeolite Association)のホームページによれば、*BEA型ゼオライトの12員環は最大で0.77nm(7.7オングストローム)であり、小細孔径ゼオライトであるCHA型ゼオライトにおける最大細孔サイズ0.38nm(3.8オングストローム)と比べて遥かに大きい。そのため、*BEA型ゼオライトには多様な分子が吸着可能であるといえる。
化石燃料を燃焼することで稼働する内燃機関から排出される排気ガス中には、化石燃料由来の多様な炭化水素(HC)が含まれている。非特許文献3によれば排ガス中からのサンプリングで鎖長が4~10程度の炭化水素43種が報告されている。特許文献1~4のSCR触媒システムに使用されている*BEA型ゼオライトは、排ガスの流れに対して上流側領域に配置されていることから、下流側領域に配置されている小細孔径ゼオライトよりも多様な炭化水素に接触する機会が多い状態である。
自動車等に搭載されるエンジンから排出されるHCの量は、エンジンの稼働状態によりその排出量が変わり、HC排出量が多い稼働状態の一例としては、冷間始動時の様に燃焼時のシリンダー内温度が低い状態が挙げられる。そして、このような状態では排出される排ガスの温度も低い。
特許文献1~4の上流側領域に配置される*BEA型ゼオライトでは、排ガスの温度が低い状態、すなわち触媒温度が低い状態で多量のHCに晒される事になる。吸着挙動については一般的に温度が低い程物質を吸着し易い状態である。一方で、触媒としての活性については、温度が低い事は活性に不利な条件でもある。このような状態の*BEA型ゼオライトでは細孔が多量のHCを吸着してしまうことで、NO等のNOx成分のSCR反応に利用され難くなってしまう(特許文献5)。この様に吸着したHCは*BEA型ゼオライトの細孔内から直ぐに脱離すればあらためてNOx成分の反応場として作用することが可能であるが、冷間始動時のような低い温度環境下では迅速なHC脱離は困難である。また、吸着したHCは触媒の温度が上がる事で脱離と共に燃焼して細孔を再生する事ができるが、HCの燃焼時には水素由来の水が発生する。この水と燃焼熱との組合せは水熱条件であり、低SARなゼオライトにおいては脱アルミネーションによる劣化が生じてしまう。このような水熱条件下における脱アルミネーションによる劣化を防ぐためにはSARが大きな*BEA型ゼオライトを使用すれば良いが、前述のとおり高SARなゼオライトは活性に劣るものでSCR触媒としての機能が低い触媒になってしまう。このようなHCによる触媒としての活性の低下はHC被毒とも言われる。
特許第5836966号公報 特許第6266677号公報 特許第6600046号公報 特許第6755236号公報 特許第6324446号公報 特表2018-528847号公報
ゼオライトの科学と応用 講談社サイエンティフィック 89-90頁 第7刷 1998/6/20 ゼオライトの科学と工学 講談社サイエンティフィック 102-103頁 110-111頁 第1刷 2000/7/10 自動車排出ガス中の揮発性有機化合物(VOC)の排出実態 東京都環境科学研究所年報 2004 49-56頁
希薄燃焼内燃機関から大気中に排出される排ガス中の窒素酸化物特に亜酸化窒素(NO)の低減をする目的で使用され、先に排ガスに接触する鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む触媒領域と、後に排ガスに接触する銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む触媒領域を有するSCR触媒システムでは、先に排ガスに接触する鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む触媒領域が、排ガス中に含まれるHC成分によって被毒してしまうことでSCR触媒システムとしての活性を低下させてしまうという問題があった。
本発明は、先に排ガスに接触する鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む触媒領域に、この*BEA型ゼオライトよりもSARが大きなゼオライトを含有させることにより、上記問題点を解決することを見出し、完成されたものである。
すなわち本発明は、希薄燃焼内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する排ガス浄化用触媒システムであって、
希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスの流れの上流側から順番に、
還元剤としての尿素水溶液を排ガス中に供給する供給部と、
ハニカム構造体を触媒化した少なくとも一つのハニカム触媒を配置し、
前記ハニカム触媒は
先に排ガスに接触する第1の触媒領域と、その後に排ガスに接触する第2の触媒領域を有し、
第1の触媒領域が、鉄を含有する*BEA型ゼオライトと、この*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトを含むものであり、
第2の触媒領域が、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上を含むものである、
ことを特徴とする排ガス浄化用触媒システムである。
また、本発明は、希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスを上記排ガス浄化用触媒システムに通過させることを特徴とする排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する方法である。
本発明の排ガス浄化用触媒システムによれば、先に排ガスに接触する第1の触媒領域に、鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含ませるだけでなく、この*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライト(以下、「高SARなゼオライト」ということもある)を含ませるものである。これにより、排ガス中に含まれるHC成分はこの高SARゼオライトに吸着され、鉄を含有する*BEA型ゼオライト(以下、「Fe-*BEA」ということもある)にHC成分が吸着してしまうことを抑制して被毒を防ぐことができる。
また、この様に高SARゼオライトに吸着したHC成分は、排ガスの熱により触媒の温度が上昇するに従い脱離するもので、脱離したHC成分は温度が上昇して活性の向上したSCR触媒システムもしくはSCR触媒システムとして組み合わせて配置された他の触媒によって浄化され、そのまま大気中に放出されることも防ぐことができる。
この様に脱離したHC成分によって、Fe-*BEAはあらためてHC成分に晒されることになるが、HC成分が脱離する状態は既に触媒としての温度が上昇しているため、Fe-*BEAは高SARなゼオライトから脱離したHC成分を吸着し難くなっている。
脱離したHC成分は昇温したFe-*BEAや銅を含有する小細孔径ゼオライト(以下、「Cu-小細孔径」ということがある)でも酸化される場合があるが、温度の高い状態ではHC成分がFe-*BEAやCu-小細孔径の骨格構造内部にまで吸着され難くなっているため、HC成分の酸化は主にFe-*BEAやCu-小細孔径結晶、あるいは凝集粒子の表面によって促進され、HC成分の酸化作り出される水熱条件はFe-*BEAやCu-小細孔径の骨格構造内部に影響し難くなり、比較的低SARなFe-*BEAやCu-小細孔径においても、脱アルミネーションによる骨格構造の破壊が起こり難い。
また、後述するccSCRレイアウトの様に、排ガスの流れの最も上流に本発明の排ガス浄化用触媒システム(以下、「SCR触媒システム」ということもある)を配置し、その下流に酸化触媒(DOC)と触媒化した煤成分燃焼フィルター(CSF)を配置した触媒システムでは、下流に配置されたDOCやCSFがHC成分の酸化を促進し、高SARなゼオライトから脱離したHC成分の大気中への放出がより効果的に抑制することができる。
このようなHC成分の吸着脱離による*BEA型ゼオライトのHC被毒抑制や大気中へのHC成分の放出抑制作用は、エンジンの冷間始動時、すなわち、ゼオライトにおいてHC成分の吸着し易い状態である排ガスの温度が低い状況で特に効果的である。
本発明のSCR触媒システムの第1の例で、高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域と、銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む第2の触媒領域がタンデムに配置されたSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第2の例で、高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域と、銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む第2の触媒領域が、一つのハニカム構造体中でそれぞれのゾーンに被覆されたSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第3の例で、高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域と、銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む第2の触媒領域が、一つのハニカム構造体中のセル壁表面で、排ガスと直接接触する表層と、表層の下に被覆される下層とに塗り分けられ多層化したSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第4の例で、一つのハニカム構造体の上流側には高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域が形成され、そこでは鉄を含有する*BEA型ゼオライトの上に高SARなゼオライトが積層され、下流側には銅を含有するCHA型ゼオライトを含む第2の触媒領域がゾーンに被覆されている多層化とゾーン被覆を組み合わせたSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第5の例で、高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域と、銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む第2の触媒領域が、フィルター構造を有するウォールフロー型ハニカム構造体における排ガス流入側であるセルの表面と、排ガス流出側であるセルの裏面とにそれぞれ被覆されフィルター化したSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第6の例で、第1から第5の例のSCR触媒システムが、DOCとCSFの下流に配置されたSCR触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムの第7の例で、エンジンから排出される排ガスの最も上流に第1から第4の例のSCR触媒システムが配置され、その下流にDOCとCSFが配置された排ガス浄化用触媒システムを表した模式図である。 本発明のSCR触媒システムによって*BEA型ゼオライトにおけるHC被毒が抑制されていることを表す模式図である。 従来の[Fe-*BEA/Cu-小細孔径]SCR触媒システムにおけるHC被毒と水熱劣化の様子を表す模式図である。
[基本レイアウト:(Fe-BEA+Cu-小細孔径)/SCR]
本発明の排ガス浄化用触媒システム(SCR触媒システム)は、ディーゼル自動車に搭載されるディーゼルエンジンに代表される希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスの流れの上流側から順番に、還元剤としての尿素水溶液を排ガス中に供給する供給部と、ハニカム構造体を触媒化した少なくとも一つのハニカム触媒を配置したもので、このハニカム触媒において先に排ガスに接触する第1の触媒領域と、その後に排ガスに接触する第2の触媒領域を有し、第1の触媒領域が、鉄を含有する*BEA型ゼオライトと、この*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトを含むものであり、第2の触媒領域が、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上を含むものである。このようなSCR触媒システムは優れたNO排出抑制能力を有する。
[高SARなゼオライト]
本発明のSCR触媒システムに使用される*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライト(高SARなゼオライト)は、SCR性能に優れるとされる*BEA型ゼオライトのSARが5~50であることから、それよりも高いものであれば特に限定されない。そしてSARが500以上であることで、高SARなゼオライトは、高い疎水性を発揮し、揮発性有機成分の吸着能力を有することは非特許文献2に記載のとおりである。
本発明のSCR触媒システムに使用する高SARなゼオライトは特に限定されるものでは無く、市場から入手可能な高SARなゼオライトの中から適宜選択するか、アルミニウム源を少なくして合成されたゼオライトを使用するか、本発明のSCR触媒システムに使用する前に脱アルミニウム処理を施したゼオライトを使用しても良い。脱アルミニウムの手法は特に限定されないが、水熱処理、HClやSiCl等のハロゲン含有ガス処理などの気相処理方式、鉱酸等の酸水溶液や各種金属塩水溶液による処理、キレート化剤や錯化剤を用いる方法などの湿式処理方式あるいはこれらを組み合わせた方法などさまざまな方法などが挙げられる。なお、このような脱アルミニウムの手法は骨格構造を壊してしまう恐れもあるため、ゼオライトのタイプや採用する処理方法に応じて温度、操作時間、酸の種類や強度を適宜調整する必要がある。
このような高SARなゼオライトのSARは上流側領域に含まれるFe-*BEA型ゼオライトのSARよりも相対的に大きなものであれば、排ガス中のHC成分は平衡的に高SARなゼオライトに吸着されるものであるが、具体的には50を超えるものであることが好ましく、100を超える事がより好ましく、500を超える事が更に好ましい。また、本発明のSCR触媒システムに使用されるゼオライトの種類は触媒としての使用環境下で安定に存在するものであれば特に限定されるものでは無いが、このようなゼオライトとしてはMFI型ゼオライト、MEL型ゼオライト、FAU型ゼオライト、MOR型ゼオライト、*BEA型ゼオライト等が挙げられ、MFI型ゼオライト、MEL型ゼオライトは耐熱性に優れるものであることから特に好ましい。また、極めて高いSARを有するMFI型ゼオライト、MEL型ゼオライトは、それぞれシリカライト-1、シリカライト-2として知られており、そのSARは900を超えて疎水性(親油性)が極めて高く、アルミニウム元素も少ないことから水熱耐久性にも優れ、本発明のSCR触媒システムに使用する高SARなゼオライトとして最も好ましい。
高SARなゼオライトにはSARの他にも多様な仕様が報告されており、粒子の形状についても多様性に富んでいる。本発明のSCR触媒システムに使用される高SARなゼオライトの形状は特に限定されるものでは無く、球状、矩形、針状、繊維状、柱状などが挙げられ、*BEA型ゼオライト、小細孔径ゼオライトであるCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライトにおいても同様である。これらの粒子は一次粒子であっても良く、二次粒子であっても良い。このような粒径のうち、針状、繊維状、柱状の比較的大きなアスペクト比を持つ粒形であれば、触媒層におけるガス拡散性やガス透過性が向上し、触媒反応の促進が期待できる。なお、本発明に使用されるゼオライトの粒形は複数の形状のゼオライトを組み合わせて使用しても良い事は言うまでもない。なお、上流側領域における高SARなゼオライトの使用量は特に限定されるものでは無いが、上流側領域におけるSCR活性を低下させてしまうような量であることは好ましくは無く、触媒組成量に対して半分以下の量であることが好ましい。
[高SARではないゼオライト(鉄を含有する*BEA型ゼオライト)]
本発明のSCR触媒システムにおいて、先に排ガスに接触する(上流側にある)第1の触媒領域には鉄を含有する*BEA型ゼオライトが使用される。なお、鉄を含有する*BEA型ゼオライトは、常法に従って、*BEA型ゼオライトに鉄元素がイオン交換等で担持等されたものである。*BEA型ゼオライトに担持する鉄元素の量は特に限定されるものではないが、*BEA型ゼオライトに対する酸化鉄(Fe)換算で0.5~3wt%である事が好ましく、1~2wt%であることが好ましい。このような鉄元素の量は誘導結合プラズマ法(ICP法:Inductively Coupled Plasma)等の公知の手法によって特定可能である。このゼオライトには優れたSCR性能が要求される。そのため、SARに関しては比較的小さなものが好ましく、10~50であることがより好ましく、10から30であることがより好ましい。また、ゼオライトの粒子の形状は特に限定されるものではなく、例えば、球状、矩形、針状、繊維状、柱状などが挙げられ凸型であっても良い。更に、ゼオライトの粒子も一次粒子であっても良く、二次粒子であっても良い。また、針状、繊維状、柱状の比較的大きなアスペクト比を持つ粒形であれば、触媒層におけるガス拡散性やガス透過性が向上し、触媒反応の促進が期待できる。また、本発明のSCR触媒システムに使用されるゼオライトの粒形は複数の形状のゼオライトを組み合わせて使用しても良い。なお、このような触媒層にはゼオライト以外の成分を含んでも良いことは言うまでもないが、上流側領域にそれぞれ必須成分とするゼオライトの量は、高SARなゼオライトを除き、触媒組成重量あたり半分以上を各ゼオライトが占めるもので有る事が好ましい。
[高SARではないゼオライト(銅を含有する小細孔径ゼオライト)]
本発明のSCR触媒システムにおいて、その後に排ガスに接触する(下流側にある)第2の触媒領域にはゼオライトであるCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上が使用される。なお、銅を含有する小細孔径ゼオライトは、常法に従って、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライト等の小細孔径ゼオライトに銅元素がイオン交換等で担持等されたものである。このような小細孔径ゼオライトの細孔サイズは0.32~0.38nm(3.2~3.8オングストローム)として知られている。また、担持される銅の量は特に限定されるものでは無いが、小細孔径ゼオライト中の酸化物(CuO)換算で0.5~10wt%である事が好ましく、1~5wt%であることがより好ましい。小細孔径ゼオライト中の銅の量もICP法等の公知の手法によって特定可能である。これらのゼオライトにはいずれも優れたSCR性能が要求される。そのため、SARに関しては比較的小さなものが好ましく、10~50であることがより好ましく、10から30であることがより好ましい。第2の触媒領域に使用される銅を含有するゼオライトについても粒子の形状は特に限定されるものでは無く、前述の*BEA型ゼオライトと同様、球状、矩形、針状、繊維状、柱状などが挙げられ凸型であっても良い。また、これらのゼオライトの粒子も一次粒子であっても良く、二次粒子であっても良い。また、針状、繊維状、柱状の比較的大きなアスペクト比を持つ粒形であれば、触媒層におけるガス拡散性やガス透過性が向上し、触媒反応の促進が期待できる。また、本発明のSCR触媒システムに使用されるゼオライトの粒形は複数の形状のゼオライトを組み合わせて使用しても良い事は*BEA型ゼオライトと同様である。なお、このような触媒層にはゼオライト以外の成分を含んでも良いことは言うまでもないが、下流側領域にそれぞれ必須成分とするゼオライトの量は、高SARなゼオライトを除き、触媒組成重量あたり半分以上を各ゼオライトが占めるもので有る事が好ましい。
[ゼオライト以外の触媒成分]
本発明のSCR触媒システムに使用されるハニカム触媒(以下、「SCR触媒」ということもある)には、前記のゼオライト以外の触媒成分を含んでいても良い。このようなゼオライト以外の成分としては、広く公知の排ガス浄化用触媒成分の中から選択する事ができ、例えば、チタニア、ジルコニア、タングステン、バナジウム、セリア、アルミナ、シリカ等の無機酸化物並びにこれらの複合酸化物の他、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分の一種以上を含んでいても良い。また、本発明のSCR触媒の必須成分に挙げるゼオライトとは異なるゼオライトを含んでいても良い。白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属成分を含む場合、触媒は酸化活性も有することから煤成分の燃焼にも効果が期待され、本発明のSCR触媒システムを構成するハニカム触媒を図5に表される第5の例の様にフィルター化されたウォールフローハニカム構造体を使用したフィルター化SCR触媒用の触媒組成物として有効である。
[ディーゼル自動車用途]
本発明のSCR触媒システムは希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスであればその用途は特に限定されるものでは無い。このような希薄燃焼機関としてはディーゼルエンジンが知られており、そのNOx排出量の多さからも本発明のSCR触媒の効果は特に得られ易い。
[希薄燃焼ガソリン自動車]
一方で、市場に普及している内燃機関にはガソリン自動車に搭載されている火花点火型ガソリンエンジンの存在も知られている。ガソリン自動車に搭載されているエンジンは、ディーゼルエンジンに比べて、燃焼時の空気質量を燃料質量で割った割合(空燃比という事もある)が小さく、従来は、三元触媒を使用して排ガス中の未燃HC成分を還元成分として利用し、NOxの排出規制値を下回ることが出来てきた。しかし、近年の燃費向上に対する市場の要求は強く、ガソリンエンジンでも空燃比を大きくして稼働させたり(リーンバーンともいう)、一時的に燃料の供給を止めるたり(フューエルカットともいう)する燃焼制御がある。そのような制御が増えるとガソリン自動車でも従来の三元触媒のみでNOxの排出規制を下回る事が困難になる。本発明のSCR触媒システムはこのような希薄燃焼ガソリンエンジンの排ガスの浄化にも利用可能である。
[図面で例示したSCR触媒システム例の説明]
本発明のSCR触媒システムでは先に排ガスに接触する(上流側にある)第1の触媒領域に*BEA型ゼオライトと、上記した高SARなゼオライトが使用されるものであり、その後に排ガスに接触する(下流側にある)第2の触媒領域には上記した銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上が使用されるものであるが、第1の触媒領域と第2の触媒領域の配置は本発明の趣旨を逸脱しない限り多様な仕様を選択することが可能である。以下、本発明のSCR触媒システムの配置例について図面を踏まえ説明するが、本発明が図面の例示に限定されるもので無いことは言うまでもない。
[図1:第1の例]
第1の例は排ガスの流れに対して上流側に第1の触媒領域としてFe-*BEA型ゼオライトと高SARなゼオライトを含むハニカム触媒を、下流側に第2の触媒領域として銅を含有する小細孔径ゼオライトを含むハニカム触媒をそれぞれ配置したものである。
上流側の第1の触媒領域のハニカム触媒と下流側の第2の触媒領域のハニカム触媒は離間して配置されているが、それぞれの触媒の間には他の触媒は配置されていない事が好ましい。本発明のSCR触媒システムは上流側の第1の触媒領域のSCR触媒と下流側の第2の触媒領域のSCR触媒がその相互作用でNOの排出を抑制するものであることから、他の作用を有する、例えば酸化触媒(DOC)のような触媒を間に挟んで使用する事は好ましくない。第1の例における各ハニカム触媒は、それぞれの触媒組成物をスラリー化し、ウオッシュコート法を持って製造する事ができる。以下、特にことわりの無い限り、本発明に使用されるハニカム触媒はウオッシュコート法を持って製造する事ができる。ウオッシュコート法をもって被覆した後は、適宜乾燥焼成を施す。以下、ウオッシューコート法をもって製造した例については同様の操作を行っている。
ここで、上流側の第1の触媒領域にシリカライト-1のような疎水性な高SARなゼオライトが含まれることで排ガス中のHC成分が吸着し、Fe-*BEA型ゼオライトにおけるHC被毒が抑制される。一方で、高SARなゼオライトに吸着されたHC成分は上流側の第1の触媒領域の触媒が排ガスの熱で加熱されるに従い高SARなゼオライトから脱離する。脱離したHC成分は昇温したSCR触媒システムによって酸化されるか、後段に酸化機能を有する触媒、例えばSCR触媒で利用されなかったアンモニア成分を酸化除去するためのNHスリップDOC等によって水とCOとして大気中に排出される。
ゼオライトにおけるHC成分の吸着は比較的低温な状態で促進されるものであるが、排ガス環境下における低温な状態はエンジンの冷間始動の様に排ガス中に多量のHC成分を含むことから、第一の実施形態に限らず、本発明のSCR触媒システムは自動車の実際の使用状態とも整合が良く極めて有効に機能する。
[図2:第2の例]
図2に表した第2の例は、一つのハニカム構造体において上流側の第1の触媒領域と下流側の第2の触媒領域に、それぞれに使用されるゼオライトを含む触媒組成物により塗り分けたものである。このような触媒組成物の塗り分はゾーンコートと言われる事がある。ゾーンコートなハニカム触媒を得る手法は特に限定されるものでは無いが、ハニカム構造体におけるセルの開口端面側からそれぞれ所定の長さに、スラリー化した上流側領域の組成物と下流側領域の組成物とをウオッシュコート法を用いて被覆する事で実現する事ができる。第2の例によれば、一つのハニカム構造体で本発明のSCR触媒システムを構成する事が可能になることから比較的廉価に本発明のSCR触媒システムを構成するSCR触媒を製造することができる。この場合も前記第1の例と同様、本発明のSCR触媒システムは自動車の使用状態において極めて有効に機能する。
[図3:第3の例]
図3に表した第3の例は、ハニカム構造体を構成するセルの壁の表面に下流側の第2の触媒領域となる触媒組成物を被覆し、その上から上流側の第1の触媒領域となる触媒組成物を被覆した例である。下流側の第2の触媒領域、上流側の第1の触媒領域共にウオッシュコート法をもって触媒組成物が被覆される。この様に多層化することで、排ガスは還元成分である尿素、もしくは尿素が分解されたアンモニアと共に上層である上流側の第1の触媒領域に接触し、続いて上層を通過した排ガスは下層の下流側の第2の触媒領域に接触する。下層に接触した排ガスは再度上層を通過してハニカム触媒の下流に排出される。排ガスは下層に接触した後で再度上層を通過する事になるが、上層から下層に至る間に本発明の作用である上層におけるHC被毒が抑制され、下層からはHC成分が供給される事が無いことから、この時は上層おいてHC被毒される恐れは無い。そして、この場合も前記の実施形態の例と同様、本発明のSCR触媒システムは自動車の使用状態において有効に機能する。
[図4:第4の例]
図4に表した第4の例は、一つのハニカム構造体の上流側には高SARなゼオライトと鉄を含有する*BEA型ゼオライトを含む第1の触媒領域が形成され、そこでは鉄を含有する*BEA型ゼオライトの上に高SARなゼオライトが積層され、下流側には銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む第2の触媒領域がゾーンに被覆されている多層化とゾーン被覆を組み合わせた例である。このような触媒もウオッシュコート法によりゾーンコートすることで得る事ができる。
この例ではSCR触媒は上流側の第1の触媒領域の表層(高SARなゼオライト)、上流側の第1の触媒領域の下層(鉄を含有する*BEA型ゼオライト)、下流側の第2の触媒領域(銅を含有する小細孔径ゼオライト)の3領域から形成されている事になるが、ここで上流側の第1の触媒領域の表層はHC吸着成分である高SARなゼオライトが高濃度で存在し、このような触媒層がSCR触媒システムにおいて最も早く排ガスに接触することでHCを高効率に吸着でき、下層のFe-*BEAの被毒を効果的に抑制する事が可能になる。
[図5:第5の例]
図5に表した第5の例は、通気性のセル壁からなるセルの端面を互い違いに目封じしてフィルター機能を有するウォールフロー型ハニカム構造体のセル壁において、排ガスの入口側表面に高SARなゼオライトとFe-*BEA型ゼオライトを含む触媒組成物を被覆して第1の触媒領域を形成し、通気可能なセル壁の裏側、すなわち下流側には銅を含有する小細孔径ゼオライトを含む触媒組成物を被覆して第2の触媒領域が形成されている例である。このようなフィルター化ハニカム触媒も、それぞれのセルの開口端面からスラリー化した触媒組成物をウオッシュコート法で被覆することで得ることができる。
この例での入口側の第1の触媒領域における作用は第3の例の上流側の第1の触媒領域と同じである。そして入口側の第1の触媒領域を通過した排ガスは多孔質で通気可能なセル壁を通過して出口側セル壁の表面に被覆された出口側の第2の触媒領域に接触することで、NO含有量の少ない排ガスとして本発明のSCR触媒システムの下流に排出される。第5の例では入口側の第1の触媒領域には若干の白金やパラジウムを含ませるか、入口側の第1の触媒領域の上に白金やパラジウムを含む触媒層を被覆することで煤成分の燃焼を促進する事ができる。
[図6:第6の例]
図6は本発明のSCR触媒システムを他の機能を有するハニカム触媒と組み合わせて使用する場合の例である。模式図には表していないが、SCR触媒の後方にはSCR反応で消費し切れなかったアンモニア成分を酸化する為の酸化触媒(NHスリップDOC)を配置する場合もある。
第6の例における触媒の配置とその作用は特表2002-502927号公報に詳しいが、第6の例で排ガスは先ず酸化触媒であるDOCに接触する。DOCを構成する触媒層には白金やパラジウムが含まれ、排ガス中のHC成分、CO、またNOをNOに酸化する。NOは酸化性能に優れ(特許第3012249号参照)、下流に配置された白金やパラジウムで触媒化されたフィルター(CSF:Catalyzed Soot Filter)で補足した煤成分を比較的低い温度から燃焼除去する。ここで、煤成分の燃焼除去が迅速行われないと煤成分を溜めたCSFが原因で圧力損失を生じている時間が長くなり、自動車においては燃費の悪化を招く。そのため、第6の例の触媒配置を採用するシステムでは、CSFの前方で煤成分の燃焼を促進する目的で燃料が噴霧される。この燃料はいうまでも無くHC成分そのものである。噴射された燃料が煤成分の燃焼で完全に消費される事は難しく、燃焼し切れなかった燃料成分、また不完全燃焼した燃料成分はCSFの下流に排出されてSCR触媒をHC被毒してしまう。
しかし、本発明のSCR触媒システムであればこのようなHC被毒が懸念される状況であっても高SARなゼオライトによるHC成分の吸着作用により、SCR触媒システムにおける上流側領域のFe-*BEAの被毒を抑制することができ、SCR触媒システム前方で供給される尿素水溶液を還元剤としたSCR反応によってNO排出を抑制したNOxの浄化が可能になる。この第6の例の触媒レイアウトや燃料噴射制御、尿素水供給制御は、トラックやバス等の多くの大型ディーゼル自動車の排ガスの浄化に採用されており、本発明のSCR触媒システムは現在主流となっている排ガス浄化触媒システムを採用することで、今後のNO排出規制にも対応した排ガス浄化システムを得る事ができる。なお、第6の例に使用されるSCR触媒システムは特定の仕様に限られるものでは無く、本発明の趣旨からなるSCR触媒システムであれば広く適用可能である事は言うまでもない。
[図7:第7の例]
図7に表した第7の例は、近年、当業者により注目されている触媒システムであり、SCR触媒をエンジン直下に配置するものである。これはエンジンの冷間始動の様にシステム全体が冷え切った状態から少しでも早くSCR触媒を加熱し、NOxの浄化を促進しようとするものである。
しかしこの場合、特に冷間始動時には不完全燃焼した燃料が直接SCR触媒に接触する事になり、SCR触媒におけるHC被毒が懸念される状態であるといえる。このような状態であっても本発明のSCR触媒システムであればHC成分によるFe-*BEAの被毒を抑制する事が可能であり、将来普及が期待される排ガス浄化触媒システムにおいても低温時から安定してNO排出を抑制したNOxの浄化が可能になる。
[図8:浄化イメージの模式図]
図8では本発明のSCR触媒システムの作用を模式的に表している。図8において[低温]と記しているイメージは冷間始動時の様に触媒の温度が低い状態を表している。この[低温]時には、上流側領域に含まれる高SARなゼオライトがHC成分を吸着し、Fe-*BEA型ゼオライトにおけるHC被毒を抑制している。HC被毒を免れたFe-*BEA型ゼオライトではNHが充分に吸着する事が可能であり、高いNOx浄化性能が発揮され、下流側領域のCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライト等の銅を含有する小細孔径ゼオライトとの相互作用によりNOの排出も効果的に抑制される。
[低温]時の模式図の下に[高温]と記した模式図は排ガスによって触媒が暖められた状態を表している。この状態で高SARなゼオライトからはHC成分が脱離し、高温環境下であることで脱離したHC成分は希薄燃焼機関から排出された酸素の多い排ガス中で反応して水とCOに分解されるか、SCR触媒の後段に配置した酸化機能を有する触媒は配置されていればそこで酸化されることで水とCOに分解されて排出される。なお。[低温][高温]いずれの模式図においてもアンモニアによるNOxの浄化については模式化を省略しているが、ゼオライトに吸着したアンモニア成分とNOxがSCR反応によって浄化されていることは言うまでもない。下記の図9についても同様である。
[図9:従来のシステムの模式図]
図9では、本発明のSCR触媒システムの様に高SARなゼオライトを含まない従来のシステムにおける反応と水の影響を模式的に表している。ここで、[低温]時にはHC成分がFe-*BEA型ゼオライトに吸着し、Fe-*BEA型ゼオライトを被毒している。このようにHC被毒したFe-*BEA型ゼオライトではNHの吸着が出来なくなり、NOxの還元能力が低下し、下流側領域のCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライト等の銅を含有する小細孔径ゼオライトとの相互作用も期待できなくなる。
また、[高温]時になるとFe-*BEA型ゼオライトに吸着したHC成分の少なくとも一部が酸化される様になるが、ここで発生する水がFe-*BEA型ゼオライトにおける水熱条件を作り出し、低SARなFe-*BEA型ゼオライトにあっては脱アルミネーション(図示せず)が発生し、ゼオライトの骨格構造そのものを破壊してFe-*BEA型ゼオライトにおけるSCR機能を低下させてしまう。また、仮に脱アルミネーションでFe-*BEA型ゼオライトの骨格構造そのものは破壊されない場合でも、脱アルミネーションによりFe-*BEA型ゼオライトにおけるSARが低下し、上流側領域を構成するFe-*BEA型ゼオライトにおけるSCR活性を低下させてしまう。
この様に骨格構造が破壊されたり、SARが低下したFe-*BEA型ゼオライトでは下流側領域のCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライト、AFT型ゼオライト等の銅を含有するゼオライトとの相互作用も期待できなくなる。また、このような由来によりSCR活性が低下したFe-*BEA型ゼオライトでは尿素由来で供給されたNHをSCR触媒システムで充分に消費することも困難になる。SCR触媒システムで消費されなかったNHは、SCR触媒システム下流に排出される。SCR触媒システム下流に排出されたNHは、それを酸化するだけの充分な容量をもつNHを酸化する触媒が存在しない限り大気中に排出され新たな環境汚染の原因になってしまう。
本発明の排ガス浄化用触媒システムは、希薄燃焼内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化することができるので、希薄燃焼内燃機関を有する各種自動車の環境対策に利用できる。

Claims (6)

  1. 希薄燃焼内燃機関から排出される排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する排ガス浄化用触媒システムであって、
    希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスの流れの上流側から順番に、
    還元剤としての尿素水溶液を排ガス中に供給する供給部と、
    ハニカム構造体を触媒化した少なくとも一つのハニカム触媒を配置し、
    前記ハニカム触媒は
    先に排ガスに接触する第1の触媒領域と、その後に排ガスに接触する第2の触媒領域を有し、
    第1の触媒領域が、鉄を含有する*BEA型ゼオライトと、この*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトを含むものであり、
    第2の触媒領域が、CHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上を含むものである、
    ことを特徴とする排ガス浄化用触媒システム。
  2. 第1の触媒領域に含まれる鉄を含有する*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトが、MFI型ゼオライト、MEL型ゼオライト、FAU型ゼオライト、MOR型ゼオライトおよび*BEA型ゼオライトからなる群から選ばれるゼオライトの1種または2種以上である請求項1記載の排ガス浄化用触媒システム。
  3. 第1の触媒領域に含まれる鉄を含有する*BEA型ゼオライトと、第2の触媒領域に含まれるCHA型ゼオライト、AEI型ゼオライト、AFX型ゼオライトおよびAFT型ゼオライトからなる群から選ばれる銅を含有する小細孔径ゼオライトの1種または2種以上の酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が10~50であり、
    第1の触媒領域に含まれる鉄を含有する*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトの酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が50を超えるものである請求項1または2記載の排ガス浄化用触媒システム。
  4. 第1の触媒領域に含まれる鉄を含有する*BEA型ゼオライトよりも酸化物換算のケイ素/アルミニウムのモル比が大きなゼオライトの形状が柱形である請求項1~3の何れか1に記載の排ガス浄化用触媒システム。
  5. 希薄燃焼内燃機関から排出される排ガスを請求項1~4の何れか1に記載の排ガス浄化用触媒システムに通過させることを特徴とする排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する方法。
  6. 希薄燃焼内燃機関が、ディーゼルエンジンである請求項5記載の排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元浄化する方法。
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WO2024029289A1 (ja) * 2022-08-04 2024-02-08 エヌ・イーケムキャット株式会社 排ガス処理用の選択的触媒還元システム、及びこれを用いた希薄燃焼エンジン用排ガス浄化装置

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