JP2022064207A - 衝撃吸収部材及び車両 - Google Patents

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貴之 杉山
Takayuki Sugiyama
翼 田村
Tsubasa Tamura
悟史 柴田
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Abstract

【課題】樹脂材料を形成材料として軽量化が図られ、かつ、衝撃エネルギー吸収性能がより高められた衝撃吸収部材、及びこれが取り付けられた車両を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーを含有する射出成形部530を含む、衝撃吸収部材500であって、射出成形部530は、筒状の胴体部514と、胴体部514から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部512と、を有する本体部510を備えており、かつ、本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上である、衝撃吸収部材500を採用する。【選択図】図2

Description

本発明は、衝撃吸収部材及び車両に関する。
自動車等の車両における構造部材においては、省燃費化を図るための軽量化と、衝突安全性の向上とが求められる。
例えば、車両の前方や後方には、車両衝突時の衝撃を吸収することで車両室内の変形を抑えて乗員を保護するため、衝撃吸収用の構造部材(以下「衝撃吸収部材」という。)としてクラッシュボックスが取り付けられている。このクラッシュボックスは、車両の前後に延びるフロントサイドメンバー(フレーム)と、バンパービームとの間に設けられており、衝突に伴って車両に前後方向の圧縮力が作用すると、クラッシュボックスが前後方向に圧潰して、衝撃エネルギーを吸収するものである。
従来、衝撃吸収部材は、金属材料から製造されていた。しかし、上記のように、近年では、省燃費等を目的として車両の軽量化が望まれており、衝撃吸収部材においても、軽量で、かつ、優れた衝撃エネルギー吸収性能を実現するための技術開発が行われている。
これに対し、樹脂材料を形成材料とする衝撃吸収部材の開発が検討されている。
例えば、樹脂材料を射出成形することによりウェルドラインが形成された閉断面構造の本体部を備えるエネルギー吸収体が提案されている(特許文献1参照)。ここでの樹脂材料には、繊維強化熱可塑性樹脂が用いられている。
また、車両部材に固定するための固定部と、衝突方向に向かって凸状に湾曲して膨出する先端部と、該先端部及び前記固定部を接続する筒状の胴体部とを有し、前記胴体部は、前記先端部側から前記固定部側に向かう方向に沿って拡径されており、かつ、内部に、少なくとも前記胴体部を補強するためのリブが設けられている車両用衝撃エネルギー吸収構造体が提案されている(特許文献2参照)。ここでの樹脂材料には、熱可塑性樹脂が用いられている。
前記の車両用衝撃エネルギー吸収構造体によれば、先端部の特定の構造により、先端部におけるどの角度からの衝突時にも、略同じ衝撃エネルギー吸収性能を発揮する(略同じ荷重―変位特性を発現する)ことが可能になる、とされている。
特開2016-169858号公報 特許第6679970号公報
衝撃吸収部材として、例えばクラッシュボックスにおいては、車両の前後方向に加えられた衝撃荷重により、圧縮破壊が連続的に生じることで、衝撃エネルギーを効率的に吸収することが可能となる。
この車両に取り付けられるクラッシュボックスには、衝突時、大きな衝撃エネルギーが短時間に加えられる。
しかしながら、特許文献1に記載のエネルギー吸収体のように、クラッシュボックスに適用する衝撃吸収部材にウェルドラインが存在している場合、ウェルドラインの部位は強度が不足するため、衝突の際、衝撃エネルギー吸収量が低くなる問題がある。
また、衝突時、乗員が受ける衝撃荷重が大きすぎると、人に傷害を発生させるおそれがある。このため、クラッシュボックスにおいては、衝突の際に加えられる衝撃荷重を、或る荷重以下に抑えつつ、衝撃エネルギー吸収量を確保することが求められる。
しかしながら、特許文献2に記載の車両用衝撃エネルギー吸収構造体では、変位に伴って反力(衝撃荷重)が右肩上がりで大きく変動するものであり、衝撃エネルギー吸収効率が悪い。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、樹脂材料を形成材料として軽量化が図られ、かつ、衝撃エネルギー吸収性能がより高められた衝撃吸収部材、及びこれが取り付けられた車両を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を包含する。
[1]熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーを含有する射出成形部を含む、衝撃吸収部材であって、前記射出成形部は、筒状の胴体部と、この胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部と、を有する本体部を備えており、かつ、前記本体部に含まれる前記繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上であることを特徴とする、衝撃吸収部材。
[2]さらに、前記本体部の内側面及び外側面の少なくとも一方に、補強用のリブが設けられている、[1]に記載の衝撃吸収部材。
[3]前記繊維状フィラーが、ガラス繊維である、[1]又は[2]に記載の衝撃吸収部材。
[4]前記熱可塑性樹脂が、液晶ポリエステルである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材が、車両の前部、後部及び側部のうちの少なくとも一に取り付けられたことを特徴とする、車両。
本発明によれば、樹脂材料を形成材料として軽量化が図られ、かつ、衝撃エネルギー吸収性能がより高められた衝撃吸収部材を提供することができる。かかる本発明によれば、特に、衝撃エネルギー吸収効率の向上が図られる。
また、本発明の衝撃吸収部材の採用により、省燃費化と、衝突安全性の向上と、がいずれも図られた車両を提供することができる。
本実施形態の衝撃吸収部材が、クラッシュボックスとして車両に取り付けられた状態の一例を示す模式図である。 衝撃吸収部材の一実施形態を示す斜視図である。 図2に示す衝撃吸収部材500の側面の影を映し出した投影図である。 本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の測定方法を説明する図である。図4(A)は、衝撃吸収部材500の側面図であり、図4(B)は、衝撃吸収部材500の平面図(上面図)である。 衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を模式的に示した、荷重-変位線図である。 本体部における先端部の投影像についての他の実施形態を示す図である。 第1のペレットの製造装置の一例を示す模式図である。 図8(A)は、比較例2の衝撃吸収部材80の側面図であり、図8(B)は、比較例2の衝撃吸収部材80の平面図(上面図)である。 図9(A)は、比較例4の衝撃吸収部材90の側面図であり、図9(B)は、比較例4の衝撃吸収部材90の平面図(上面図)である。 落錘衝撃試験の装置を示す図である。 実施例1の衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。 比較例1の衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。 先端部512が、半球体に近い形状である衝撃吸収部材500のモデルを示す斜視図である。 図13Aに示した衝撃吸収部材500の側面の影を映し出した投影図である。 先端部612が、円錐に近い形状である衝撃吸収部材600のモデルを示す斜視図である。 図14Aに示した衝撃吸収部材600の側面の影を映し出した投影図である。 先端部712が、円柱に近い形状である衝撃吸収部材700のモデルを示す斜視図である。 図15Aに示した衝撃吸収部材700の側面の影を映し出した投影図である。 試験例1のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。 試験例2のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。 試験例3のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。
(衝撃吸収部材)
本発明の一態様に係る衝撃吸収部材は、樹脂製の本体部に特徴があり、本体部以外の構成については、公知の種々の衝撃吸収部材が含むものを適用できる。
本実施形態の衝撃吸収部材は、熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーを含有する射出成形部を含む構造部材である。本実施形態の衝撃吸収部材における射出成形部は、筒状の胴体部と、この胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部と、を有する本体部を備える。加えて、本実施形態の衝撃吸収部材は、前記本体部に含まれる前記繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上である。
図1は、本実施形態の衝撃吸収部材が、クラッシュボックスとして車両に取り付けられた状態の一例を示す模式図である。
図1において、本実施形態の衝撃吸収部材200は、車両の前後に延びるフロントサイドメンバー400(フレーム)と、バンパービーム300との間に、衝突方向に向かって先端部が位置するように設けられている。
衝撃吸収部材200が取り付けられた車両においては、衝突に伴って車両に前後方向の圧縮力が作用すると、衝撃吸収部材200が前後方向に圧潰して衝撃エネルギーを吸収する。
本実施形態の衝撃吸収部材200としては、以下に説明する第1実施形態、及びその他実施形態が挙げられる。
以下、図を参照しながら、各実施形態の衝撃吸収部材について順に説明する。尚、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
<第1実施形態>
第1実施形態の衝撃吸収部材は、熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーを含有する射出成形部を含む。前記射出成形部は、筒状の胴体部と、この胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部と、を有する本体部を備えており、かつ、前記本体部に含まれる前記繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上である。さらに、前記本体部の内側面には、補強用のリブが設けられている。
図2は、衝撃吸収部材の一実施形態を示す斜視図である。
図2に示す衝撃吸収部材500は、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとを含有する射出成形部530を含む。射出成形部530は、本体部510と、これと一体成形されているフランジ部520とを備える。
本体部510は、中空形状であり、筒状の胴体部514と、この胴体部514から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部512と、を有する。先端部512と胴体部514とは一体成形されている。
本体部510における先端方向と反対方向の端面522は開口しており、その開口縁524全体に沿ってフランジ部520が形成されている。
さらに、中空の本体部510の内側面には、胴体部514から先端部512にまで凸条に延びる複数のリブ540が設けられている。
本体部510の厚さは、例えば1~4mmである。フランジ部520の厚さは、例えば2~6mmである。リブ540の厚さは、例えば1~4mmである。
図2において、本体部510は、上面視で略円形状である。
本体部510における先端部512は、先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ。
「先端方向へ凸状に湾曲した端面」とは、先端方向へ凸状に膨出しており、一定の曲率を有する面を意味する。例えば、球体又は楕円体(長球、扁球)の表面などが挙げられる。
図2に示す先端部512は、半球体に近い形状である。
図3は、図2に示す衝撃吸収部材500の側面の影を映し出した投影図である。
図3中、hは、フランジ部520上面から先端部512の先端までの距離、すなわち、本体部510の高さを表す。lは、胴体部514の端面522の開口部直径を表す。jは、フランジ部520下面の略円形の最大外径を表す。尚、フランジ部520の下面の形状が多角形の場合は、その多角形に外接する円の直径を最大外径とする。
本実施形態の衝撃吸収部材500において、mは、先端部512の長さを表し、本体部510の高さhの4分の1とする。すなわち、m=h×1/4である。
nは、先端部512と胴体部514との仮想の界面の最大径を表す。
図3に示す先端部512の投影像は、略半円形状である。
後述のように、本実施形態の本体部510において、先端部512の形状は、先端部512の投影面積が、1/2×mnより大きく、mnより小さい範囲となるような湾曲形状であることが好ましい。
先端部512の投影面積が、前記の好ましい範囲であると、衝撃エネルギー吸収効率をより高められやすくなる。
本体部510における胴体部514は、先端部512から端面522(開口部)へ向かって緩やかに拡径している。
図2に示す胴体部514は、円錐台に近い形状である。
本実施形態の本体部510において、胴体部514の端面の開口部直径lと、先端部512と胴体部514との仮想の界面の最大径nとの比率(l/n)は、1を超えて2未満であることが好ましく、1.1以上1.9以下であることがより好ましく、1.5以上1.9以下がさらに好ましい。
胴体部514をこのような錐台の形状に成形することにより、先端部512からの荷重の伝達が容易となり、構造部材全体として衝撃エネルギー吸収が可能になる。
本実施形態の衝撃吸収部材500においては、本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上である。
図4は、本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の測定方法を説明する図である。図4(A)は、衝撃吸収部材500の側面図であり、図4(B)は、衝撃吸収部材500の平面図(上面図)である。
本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の測定方法は、以下の手順で求める。
[本体部に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の測定]
手順(1):本体部510における胴体部514の端面522の重心522xを通り、この端面522に垂直な中心軸aに対して垂直な面bを、端面522の重心522xから先端部512方向へ15mm移動した位置に設定する。この面bと端面522との間に存在する胴体部514領域から、15mm×15mmの試験片1を切り出す。
手順(2):中心軸aに対して垂直な面cを、先端部512の端面と接する位置に設定する。この面cから端面522方向へ15mm移動した位置に、中心軸aに対して垂直な面dを設定する。面cと面dとの間に存在する先端部512領域から、15mm×15mmの試験片2を切り出す。
手順(3):試験片1及び試験片2のそれぞれを、マッフル炉で加熱して、樹脂分を除去する。
例えば、繊維状フィラーが炭素繊維である場合、加熱条件は500℃、3時間とする。
繊維状フィラーがガラス繊維である場合、加熱条件は600℃、4時間とする。
手順(4):手順(3)で試験片から樹脂分を除去したものを、界面活性剤(Micro90 INTERNATIONAL PRODUCTS CORPORATION社製)0.05体積%入り水溶液に分散させて、分散液を調製する。
手順(5):分散液から100mLを取り出し、純水で5~20倍に希釈する。希釈後の分散液から一部を取り出して、マイクロスコープ(VH-ZST(株式会社キーエンス製)倍率10~20倍)にて繊維状フィラーを観察し、画像を1サンプルにつき、撮影領域が重ならないように10枚を撮影する。
ただし、繊維状フィラーが炭素繊維である場合、希釈後の分散液から50mLを取り出し、φ90mmの桐山ロート用ろ紙(No.5C)を用いて減圧濾過を行い、ろ紙に分散した炭素繊維の画像を撮影する。
繊維状フィラーがガラス繊維である場合、希釈後の分散液から50mLを取り出し、シャーレに分散させ、続いて、シャーレの中に分散したガラス繊維の画像を撮影する。
手順(6):撮影した画像1枚中に存在する全ての繊維の長さを、マイクロスコープの計測ツールで測定する。
尚、屈曲した繊維は、多点間計測により測定する。繊維の測定本数合計が500本を超えるまで、撮影した10枚の画像で順次同様の操作を行い、繊維長を測定する。撮影した10枚の画像中の繊維本数合計が500本を超えない場合、手順(5)に戻り、純水での希釈倍率を適宜調整した上で、画像を再撮影して繊維長を再測定する。
手順(7):手順(6)で測定した繊維状フィラーの繊維長から、本体部に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長lm=(Σli×ni)/(Σli×ni)を求める(Σni>500)。
li:繊維状フィラーの繊維長
ni:繊維長liの繊維状フィラーの本数
本実施形態の衝撃吸収部材500において、本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長は、1.0mm以上であり、この繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の値は大きいほど好ましく、2.0mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましい。
本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、前記範囲の下限値以上であれば、荷重-変位線において、変位に伴う荷重の変動(振れ幅)が小さく抑えられて、衝撃エネルギー吸収効率の向上が図られる。さらに、衝突により破壊した際に、破片の飛び散りがより抑えられる。
一方、本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長の上限は、例えば20.0mm以下であり、15.0mm以下であってもよいし、12.0mm以下であってもよいし、9.0mm以下であってもよい。
本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長は、例えば、1.0mm以上20.0mm以下が好ましく、2.0mm以上15.0mm以下がより好ましく、2.5mm以上12.0mm以下がさらに好ましく、3.0mm以上9.0mm以下が特に好ましい。
本体部510に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長は、例えば、樹脂材料の種類、射出成形の温度条件などを適宜選択することにより制御できる。
繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長を制御する好ましい方法としては、後述の[ペレット混合物を得る工程]で得られるペレット混合物を用い、射出成形の温度条件を適宜調整する方法が挙げられる。
本実施形態の衝撃吸収部材500においては、本体部510の内側面に、胴体部514及び先端部512を補強するためのリブ540が設けられている。
本実施形態では、リブ540は、板状であり、端面522(開口部)側から見たとき、重心522xを中心に45°の等間隔で八方へ放射状に延設されている。また、板状のリブ540は、中心軸aで交差し、胴体部514から先端部512にまで延びている。
衝撃吸収部材500は、例えば、公知の射出成形機を用いて、樹脂材料を溶融させ、溶融した樹脂材料を、先端部が凸状に湾曲した端面を成形する所定の金型内に射出することにより製造することができる。
公知の射出成形機としては、例えば、株式会社ソディック製のTR450EH3、日精樹脂工業社製の油圧式横型成形機PS40E5ASE型などが挙げられる。
樹脂材料には、例えば、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとを含有する樹脂組成物が用いられる。この樹脂組成物の形態としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーと必要に応じてその他成分との粉末状混合物、ペレット(樹脂ペレット、ニートペレット)等が挙げられる。樹脂材料の詳細については後述する。
射出成形の温度条件は、熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜決定され、射出成形機のシリンダー温度を、用いる熱可塑性樹脂の流動開始温度より10~80℃高い温度に設定することが好ましい。
例えば、前記ペレットの溶融混練温度(可塑化部)は、260~340℃が好ましく、280~330℃がより好ましく、290~320℃がさらに好ましい。計量部又はプランジャー部は、280~400℃が好ましく、290~380℃がより好ましく、300~370℃がさらに好ましい。
金型の温度は、熱可塑性樹脂の冷却速度と生産性の点から、室温(例えば23℃)から180℃の範囲に設定することが好ましい。
その他射出条件として、背圧、射出速度、保圧、保圧時間、スクリュー回転数などを適宜調節すればよい。
第1実施形態において、ゲート方式は、特に限定されないが、射出成形部530での長繊維化の観点から、ダイレクトゲートを採用することが好ましい。ダイレクトゲートを採用することにより、繊維の破断を抑制して射出成形部530を成形することができ、衝撃エネルギー吸収性能がより高められやすくなる。
また、第1実施形態において、ゲート位置は、繊維長のバラツキ低減、及び射出成形部530での長繊維化の観点から、先端部512の先端付近とすることが好ましい。また、ゲート位置を先端部512の先端付近とすることにより、射出成形部530におけるウェルドライン発生を抑制する効果も期待できる。
本実施形態の衝撃吸収部材500について、その寸法は、特に限定されず、取り付け対象(例えば車両の種類、大きさ等)や、要求される衝撃エネルギー吸収性能などに応じて適宜設定することができる。
例えば、1個当たりの衝撃吸収部材500の寸法は以下のとおりである。
高さ(フランジ部520上面から先端部512の先端までの距離h):50~300mm
底面最大寸法(フランジ部520下面の略円形の最大外径j):40~200mm
胴体部514の端面522の開口部直径l:20~170mm
本体部510(先端部512+胴体部514)の内容積:30~400cm
以上説明した第1実施形態の衝撃吸収部材は、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとを含有する樹脂製の本体部を備えている。このため、金属材料から製造されていた従来の衝撃吸収部材に比べて、第1実施形態の衝撃吸収部材によれば、軽量化がされて省燃費化が図られる。
ところで、車両同士の衝突時、乗員が受ける衝撃荷重が大きすぎると、人に傷害を発生させるおそれがある。このため、クラッシュボックスにおいては、衝突の際に加えられる衝撃荷重を或る荷重以下に抑えつつ、衝撃エネルギー吸収量を確保することが求められる。
図5は、後述する、衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を模式的に示した、荷重-変位線図である。
縦軸は、試験体である衝撃吸収部材に加わる荷重[kN]を表している。横軸は、試験体上面(試験体上面と接触する錘体下面)の変位[mm]を表している。試験体上面の初期位置を0mmとする。
曲線P(X)は、理想的な荷重-変位線図を示している。
曲線M(X)は、従来の衝撃吸収部材を適用した場合の荷重-変位線図を示している。
MAXは、最大荷重(kN)を表している。
図5において、或る許容し得る最大荷重値を設定した場合、曲線P(X)のように、変位に伴う、この許容し得る最大荷重値からの荷重の変動が小さいほど、衝撃エネルギー吸収量が多く、衝撃エネルギー吸収効率が高くなる。
衝撃エネルギー吸収効率は、下式で求められる。
実際の衝撃エネルギー吸収量は、荷重-変位線を積分(変位の所定範囲における荷重-変位線で囲まれる面積を算出)することにより求められる。
最大荷重は、変位の所定範囲における荷重の最大値である。
有効変位は、所定範囲における変位の最大値である。
Figure 2022064207000002
しかしながら、従来の衝撃吸収部材を適用した場合、曲線M(X)のように、初期ピークの荷重が高く現れたり、変位に伴って荷重が大きく変動したりして、衝撃エネルギー吸収効率が悪かった。
第1実施形態の衝撃吸収部材においては、胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部を有する本体部を備える。加えて、本体部に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長を、1.0mm以上としている。このため、第1実施形態の衝撃吸収部材を用いた場合、荷重-変位線は、図5における曲線P(X)のような挙動を示すようになる。すなわち、第1実施形態の衝撃吸収部材によれば、衝撃エネルギー吸収効率の向上が図られる。
特に、第1実施形態の衝撃吸収部材では、本体部に含まれる繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長を、1.0mm以上としていることで、変位に伴う荷重の変動(振れ)が抑えられる。
かかる効果が得られる理由は、本体部に含まれる繊維状フィラーが長いほど、繊維のブリッジ効果が働くことで、衝撃破壊時のクラック発生や、部材欠落が少なくなり、荷重が安定しているため、と考えられる。
また、第1実施形態の衝撃吸収部材では、先端部を、凸状に湾曲した端面としていることで、荷重-変位線の挙動において初期ピークの発現を抑えやすくできる、又は変位の初期範囲における荷重の増加割合、すなわち衝撃エネルギー吸収効率を高められる。
第1実施形態の衝撃吸収部材によれば、上式で求められる衝撃エネルギー吸収効率を、好ましくは65%以上とすることができ、より好ましくは70%以上とすることができ、さらに好ましくは75%以上とすることができる。
一方、上式で求められる衝撃エネルギー吸収効率の上限は、高いほど好ましいが、例えば95%以下である。
第1実施形態の衝撃吸収部材による、上式で求められる衝撃エネルギー吸収効率は、例えば、好ましくは65%以上95%以下であり、より好ましくは70%以上95%以下であり、さらに好ましくは75%以上95%以下である。
また、第1実施形態の衝撃吸収部材を用いた場合の、荷重-変位線における最大荷重(LMAX)は、例えば、10kN以上であり、好ましくは10~300kNの範囲である。
上述した第1実施形態の衝撃吸収部材について、図2に示す衝撃吸収部材500では、本体部510が上面視で略円形状であったが、これに限定されず、本体部は上面視で略楕円形状であってもよい。
また、第1実施形態の衝撃吸収部材について、先端部の投影像を、図3に示したがこれに限定されず、先端部の投影像は、図6(A)~(C)に示すような長軸の長さと短軸の長さとが異なる楕円形状であってもよいし、その他放物曲線のような形状であってもよい。
また、先端部512の形状が、半扁楕円体(半扁球)に近い形状であるものでもよいし、半長楕円体(半長球)に近い形状であるものでもよい。
図2に示す衝撃吸収部材500では、先端部512の長さを、本体部510の高さhの4分の1としていたが、これに限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。
また、図2に示す衝撃吸収部材500では、先端部512から端面522(開口部)へ向かって緩やかに拡径していたが、これに限定されず、先端部512から端面522へ向かって胴体部514の太さ(内径)に変化がなくてもよい。衝撃エネルギー吸収性能が高められやすい点から、先端部512から端面522(開口部)へ向かって緩やかに拡径していた方が好ましい。
また、第1実施形態の衝撃吸収部材においては、衝撃吸収部材500におけるフランジ部520に、他の構造部材に取り付けるための加工が施されていてもよい。例えば、フランジ部520には、他の構造部材にボルトで取り付けるための、1つ以上の貫通孔が一定の間隔で設けられていてもよい。
また、第1実施形態の衝撃吸収部材においては、衝撃吸収部材500における先端部512側面の近傍にも、他の構造部材に取り付けるための加工が施されていてもよい。
<その他実施形態>
以上のように、本実施形態の衝撃吸収部材について、第1実施形態を例示して説明したが、本発明の一態様に係る衝撃吸収部材は、これに限定されず、例えば、中空の本体部510の外側面に、胴体部514から先端部512にまで凸条に延びる複数のリブが設けられているものでもよいし;中空の本体部510の内側面及び外側面の両方に、胴体部514から先端部512にまで凸条に延びる複数のリブが設けられていているものでもよい。
このように複数のリブが設けられている衝撃吸収部材は、衝撃エネルギー吸収性能がより高められる。さらに、衝突により破壊した際に、破片の飛び散りがより抑えられる。
また、衝撃吸収部材500において、板状のリブ540は、端面522(開口部)側から見たとき、重心522xを中心に45°の等間隔で八方へ放射状に延設されているものとしたが、これに限定されず、例えば、重心522xを中心に90°の等間隔で四方へ十字状に延設されているものとしてもよい。
また、衝撃吸収部材500において、板状のリブ540は、中心軸aで交差し、胴体部514から先端部512にまで延びているものとしたが、これに限定されず、例えば、本体部510の外側面に、胴体部514から先端部512の方向へ螺旋状に延びる突起としてもよい。
また、本発明の一態様に係る衝撃吸収部材は、上述の実施形態における1個単位の射出成形部(本体部及びフランジ部)を含む構造部材の他、例えば、複数の射出成形部(本体部及びフランジ部)が連結した構造部材であってもよい。
このように、複数の射出成形部が連結した構造部材とすることで、衝撃エネルギー吸収性能がより高められて衝突安全性の向上が図られる。また、車両側面やバンパービーム前方及び内部に効率的に設置することができ、車両の衝突安全の向上が図られる。
<樹脂材料>
本実施形態の衝撃吸収部材における射出成形部は、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとを含有する。
本実施形態における射出成形部において、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの比率(質量比)は、熱可塑性樹脂40~70質量部であり、繊維状フィラー30~60質量部であることが好ましく、より好ましくは熱可塑性樹脂が45~70質量部、繊維状フィラーが30~55質量部であり、さらに好ましくは熱可塑性樹脂が45~65質量部、繊維状フィラーが35~55質量部である。
繊維状フィラーの比率が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、繊維状フィラーによる射出成形部の強度向上の効果が得られる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、熱可塑性樹脂中で繊維状フィラーが分散されやすく、また、射出成形中に繊維同士の衝突による繊維破断が起こりにくい。
本実施形態における射出成形部中の、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの合計の含有量は、射出成形部の総量(100質量%)に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
≪熱可塑性樹脂≫
本実施形態における熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
これらの中でも、耐衝撃性及び寸法精度等が高いことから、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステルを用いることが好ましく、エネルギー吸収効率をより高められやすいことから、液晶ポリエステルを用いることが特に好ましい。
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6(PA6)、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン610、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ナイロン4T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)等が挙げられる。
液晶ポリエステルについて:
本実施形態において、液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであり、400℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
尚、本実施形態における射出成形部が含有する好適な液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。
ここでの液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
かかる液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの;複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの;芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの;およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部または全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、およびカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
かかる液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
(1)-O-Ar-CO-
(2)-CO-Ar-CO-
(3)-X-Ar-Y-
(Arは、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または下記式(4)で表される基を表す。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(-NH-)を表す。Ar、ArまたはArで表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)-Ar-Z-Ar
(ArおよびArは、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。)
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基およびn-デシル基が挙げられ、その炭素数は、1~10が好ましい。前記アリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基および2-ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6~20が好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、ArまたはArで表される前記基毎に、それぞれ独立に、2個以下が好ましく、1個以下がより好ましい。
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基および2-エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1~10が好ましい。
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(p-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、およびArが2,6-ナフチレン基であるもの(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
尚、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、およびArがジフェニルエ-テル-4,4’-ジイル基であるもの(ジフェニルエ-テル-4,4’-ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p-アミノフェノールまたはp-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、およびArが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニルまたは4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、30モル%以上が好ましく、30モル%以上80モル%以下がより好ましく、40モル%以上70モル%以下がさらに好ましく、45モル%以上65モル%以下が特に好ましい。
繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、35モル%以下が好ましく、10モル%以上35モル%以下がより好ましく、15モル%以上30モル%以下がさらに好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下が特に好ましい。
繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、35モル%以下が好ましく、10モル%以上35モル%以下がより好ましく、15モル%以上30モル%以下がさらに好ましく、17.5モル%以上27.5モル%以下が特に好ましい。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、0.9/1~1/0.9が好ましく、0.95/1~1/0.95がより好ましく、0.98/1~1/0.98がさらに好ましい。
尚、本実施形態における射出成形部が含有する好適な液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)~(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、10モル%以下が好ましく、5モル%以下がより好ましい。
かかる液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いため、好ましく、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
かかる液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(以下「プレポリマー」ということがある。)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。
溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよい。この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属化合物や、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾールなどの含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
本実施形態における射出成形部が含有する好適な液晶ポリエステルの流動開始温度は、260℃以上が好ましく、260℃以上400℃以下がより好ましく、260℃以上380℃以下がさらに好ましい。
かかる液晶ポリエステルの流動開始温度が高いほど、液晶ポリエステルの耐熱性並びに強度が向上する傾向がある。一方で、液晶ポリエステルの流動開始温度が400℃を超えると、液晶ポリエステルの溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向がある。そのため、液晶ポリエステルの成形に必要な温度が高くなる傾向がある。
本明細書において、液晶ポリエステルの流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、液晶ポリエステルの分子量の目安となる温度である(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
流動開始温度は、毛細管レオメーターを用いて、液晶ポリエステルを9.8MPa(100kg/cm)の荷重下4℃/分の速度で昇温しながら溶融させ、内径1mmおよび長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度である。
本実施形態で、液晶ポリエステルは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
二種以上の液晶ポリエステルを組み合わせて用いる場合、後述のように、流動開始温度の異なるものを併用することが好ましい。
本実施形態における射出成形部が含有する熱可塑性樹脂のうち、液晶ポリエステルの割合は、熱可塑性樹脂の総量(100質量%)に対して、10質量%以上であり、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
本実施形態における射出成形部中の、液晶ポリエステルの含有量は、射出成形部の総量(100質量%)に対して、40~70質量%が好ましく、45~65質量%がより好ましく、45~60質量%がさらに好ましい。
≪繊維状フィラー≫
本実施形態における射出成形部が含有する繊維状フィラーは、繊維状の無機充填材であってもよいし、繊維状の有機充填材であってもよい。
繊維状の無機充填材としては、ガラス繊維;PAN系、ピッチ系、レーヨン系、フェノール系、リグニン系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;鉄、金、銅、アルミニウム、黄銅、ステンレス等の金属繊維;炭化ケイ素繊維、ボロン繊維が挙げられる。また、繊維状の無機充填材としては、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状の有機充填材としては、ポリエステル繊維、パラ又はメタアラミド繊維、PBO繊維が挙げられる。
成形加工時の装置に与える磨耗負荷や入手性を考慮すると、繊維状フィラーとしては、PAN系若しくはピッチ系等の炭素繊維及びガラス繊維からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。また、導電性を付与する目的で、ニッケル、銅、イッテルビウム等の金属を被覆した繊維状フィラーを用いてもよい。
炭素繊維は、その引張強度が好ましくは2000MPa以上であり、より好ましくは3000MPa以上であり、さらに好ましくは4000MPa以上である。また、炭素繊維は、その引張伸度が、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.8%以上である。繊維状フィラーとして、高引張強度、高伸度な炭素繊維を使用することで、成形体作製までの加工プロセス中の繊維折損が抑制され、繊維を長く残せることで、発明の効果が得られやすくなる。
中でも、PAN系炭素繊維は、引張強度、引張弾性率、引張伸度のバランスが良く、残存繊維長を長く残すことが可能である点から好ましく用いることができる。
PAN系炭素繊維としては、例えば、東レ株式会社製「トレカ(登録商標)」、三菱ケミカル株式会社製「パイロフィル(登録商標)」、帝人株式会社製「テナックス(登録商標)」等が挙げられる。
ピッチ系炭素繊維としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「ダイアリード(登録商標)」、日本グラファイトファイバー株式会社「GRANOC(登録商標)」、大阪ガスケミカル株式会社製「ドナカーボ(登録商標)」、クレハ株式会社製「クレカ(登録商標)」等が挙げられる。
ガラス繊維としては、Eガラス(すなわち、無アルカリガラス)、Sガラス又はTガラス(すなわち、高強度、高弾性ガラス)、Cガラス(すなわち、耐酸用途向けガラス)、Dガラス(すなわち、低誘電率ガラス)、ECRガラス(すなわち、B、Fを含まないEガラス代替ガラス)、ARガラス(すなわち、耐アルカリ用途向けガラス)などの、FRP強化材用のガラス繊維が挙げられる。
本実施形態の射出成形部においては、衝突荷重に対する強度付与、弾性率のバランス及び入手しやすさの観点から、繊維状フィラーとしてガラス繊維を用いることが好ましく、その中でも、Eガラスを用いることが特に好ましい。
≪その他成分≫
本実施形態における射出成形部は、上述の熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーの他、必要に応じて、その他充填材、添加剤等を1種以上含有してもよい。
その他充填材としては、板状充填材、球状充填材その他の粒状充填材であってもよい。その他充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
板状無機充填材としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム、炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
粒状無機充填材としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭酸カルシウムが挙げられる。
添加剤としては、計量安定化剤、難燃剤、導電性付与材剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、粘度調整剤、界面活性剤が挙げられる。
樹脂組成物について:
本実施形態において、樹脂材料には、例えば、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとを含有する樹脂組成物が用いられる。この樹脂組成物の形態としては、特に限定されず、熱可塑性樹脂と繊維状フィラーと必要に応じてその他成分との粉末状混合物、ペレット(樹脂ペレット、ニートペレット)等が挙げられる。
ここでの樹脂ペレットとは、熱可塑性樹脂が繊維状フィラーに含浸した樹脂構造体からなるペレットをいう。
ニートペレットとは、繊維状フィラーを含まず、熱可塑性樹脂を加工した樹脂構造体からなるペレットをいう。
本実施形態の衝撃吸収部材を製造する際、樹脂材料としては、繊維長バラツキの制御性、及び射出成形部での長繊維化の観点から、ペレット(樹脂ペレット、ニートペレット)を用いることが好ましい。
例えば、ペレットには、以下に示す[ペレット混合物を得る工程]で得られるペレット混合物を用いること、又は樹脂ペレット(第1のペレット)を単独で用いることが好ましく、これらの中でも、前記ペレット混合物を用いることが特に好ましい。
[ペレット混合物を得る工程]
本実施形態における、ペレット混合物を得る工程では、第1のペレットと、第2のペレットとを混合して、ペレット混合物を得る。
第1のペレットは、第1の熱可塑性樹脂が前記繊維状フィラーに含浸した樹脂構造体からなる樹脂ペレットである。
第1のペレットは、例えば、樹脂構造体を得る工程と、ペレットを得る工程と、を有する製造方法により製造できる。第1のペレットは、具体的には、第1の熱可塑性樹脂と、必要に応じてその他成分とを溶融混練して得られる溶融物を、繊維状フィラーに含浸させて樹脂構造体を調製し、これをペレット化することにより、繊維状フィラーが第1の熱可塑性樹脂で固められた状態のペレットとして得られる。
図7は、第1のペレットの製造装置の一実施形態を示している。
図7に示す本実施形態では、複数本の繊維状フィラーが収束剤にて収束された繊維束11をロール状に巻き取った繊維ロービング10を用いて、第1の熱可塑性樹脂組成物からなるペレット15を得る場合を説明する。
図7に示すように、製造装置100は、予備加熱部121と、含浸部123と、冷却部125と、引取部127と、切断部129と、搬送ロール101~109とを備える。図7に示す製造装置100では、含浸部123に押出機120が接続されている。
図7では、繊維ロービング10から繊維束11が連続的に繰り出される様子を示している。本実施形態では、繊維ロービング10から繰り出される繊維束11を搬送ロール101~109によって長手方向に搬送しながら、第1の熱可塑性樹脂組成物からなるペレット15を作製する。
本実施形態の第1のペレットの製造に用いられる繊維ロービング10の繊度は、特に限定されないが、200g/1000m以上が好ましく、500g/1000m以上がより好ましく、800g/1000m以上がさらに好ましい。繊維ロービング10の繊度が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、第1のペレットの製造方法において、繊維ロービング10を取り扱いやすい。
また、繊維ロービング10の繊度は、3750g/1000m以下が好ましく、3200g/1000m以下がより好ましく、2500g/1000m以下がさらに好ましい。繊維ロービング10の繊度が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、第1の熱可塑性樹脂中で繊維が分散されやすい。また、第1のペレットの製造時に繊維を取り扱いやすい。
すなわち、繊維ロービング10の繊度は、200g/1000m以上、3750g/1000m以下が好ましく、800g/1000m以上、2500g/1000m以下がより好ましい。
繊維ロービング10の数平均繊維径は、特に限定されないが、1~40μmであることが好ましく、3~35μmであることがより好ましい。
繊維状フィラーが炭素繊維の場合、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましく、4~9μmであることがさらに好ましい。
繊維状フィラーがガラス繊維の場合、5~35μmであることが好ましく、10~25μmであることがより好ましく、10~20μmであることがさらに好ましい。
繊維ロービング10の数平均繊維径は、繊維状フィラーを走査型電子顕微鏡(1000倍)にて観察し、無作為に選んだ500本の繊維状フィラーについて繊維径を計測した値の数平均値を採用する。
繊維ロービング10の数平均繊維径が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、第1のペレット中で繊維状フィラーが分散されやすい。また、第1のペレットの製造時に繊維状フィラーを取り扱いやすい。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、繊維状フィラーによる成形体の強化が効率良く行われる。そのため、本実施形態における射出成形部に、優れた衝撃強度を付与できる。
本実施形態で、繊維状フィラーは、収束剤(サイジング剤)で処理されたものが用いられている。適度にサイジング処理された繊維状フィラーの方が、ペレット生産時の生産性や品質安定性に優れ、射出成形部での物性ばらつきを小さくできる。
収束剤(サイジング剤)は、特に限定されないが、例えば、ナイロン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、エポキシ系ポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、又はこれらの混合系ポリマー若しくはこれらの各変性ポリマーが挙げられる。またアミノシランやエポキシシラン等のいわゆるシランカップリング剤、チタンカップリング剤等公知のカップリング剤を使用することもできる。
本実施形態の第1のペレットに用いられる繊維状フィラーは、単繊維が必ずしも一方向に配列している必要はないが、成形材料を製造する過程での生産性の観点から、単繊維が一方に配列し繊維束が繊維の長さ方向に亘り連続した状態であることが好ましい。
繊維状フィラーがガラス繊維の場合、経済性と含浸性向上の観点から、繊維ロービング10の単糸数は、1000本以上10000以下が好ましく、1000本以上8000本以下がより好ましく、1500本以上6000本以下がさらに好ましい。
また、繊維状フィラーが炭素繊維の場合、同様の観点から、繊維ロービング10の単糸数は、10000本以上100000本以下が好ましく、10000本以上50000本以下がより好ましく、10000本以上30000本以下がさらに好ましい。
予備加熱部121では、繊維ロービング10から繰り出される繊維束11を加熱して乾燥させる。その際の加熱温度は、特に限定されないが、例えば50~250℃である。
また、予備加熱部121での加熱時間は、特に限定されないが、例えば3~30秒間である。
含浸部123では、繊維束11以外の成形材料M(第1の熱可塑性樹脂、必要に応じて配合されるその他成分)を、繊維束11に含浸させる。
第1の熱可塑性樹脂は、後述のように、第2の熱可塑性樹脂の種類、溶融粘度、流動開始温度等を考慮して、適宜選択することが好ましい。例えば、第1の熱可塑性樹脂としては、液晶ポリエステルが好適に挙げられる。
第1の熱可塑性樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
成形材料Mを供給口123aから投入し、含浸部123内で加熱して得られる溶融物を、繊維束11に含浸させてもよいし、押出機120にて溶融混練した成形材料Mを供給口123aから投入して、繊維束11に含浸させてもよい。
そして、図7に示す実施形態では、繊維束11に前記溶融物が含浸及び被覆した樹脂構造体13が得られる。
含浸部123での加熱温度は、第1の熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜決定され、用いる第1の熱可塑性樹脂の流動開始温度より10~80℃高い温度に設定することが好ましく、例えば300~400℃である。
含浸部123においては、成形体に要求される特性等に応じて、第1の熱可塑性樹脂100質量部を、好ましくは繊維状フィラー(繊維束11)90~250質量部、より好ましくは繊維状フィラー100~240質量部、さらに好ましくは繊維状フィラー150~220質量部に含浸させる。繊維状フィラーの配合量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば、繊維による射出成形部の強化が効率良く行われる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、繊維束の開繊及び第1の熱可塑性樹脂の繊維束への含浸が容易になる。
含浸部123の出口におけるダイヘッドのノズル径を、繊維束11の径に対して変化させることにより、樹脂構造体13における第1の熱可塑性樹脂と繊維状フィラーとの配合比を調整することができる。
冷却部125では、含浸部123で加熱された状態の樹脂構造体13(繊維束に前記溶融物が含浸及び被覆した樹脂構造体13)を、例えば50~150℃に冷却する。冷却時間は、特に限定されないが、例えば3~30秒である。
引取部127では、冷却部125で冷却された樹脂構造体13を連続的に引き取り、次の切断部129へ繰り出していく。
切断部129では、冷却後の樹脂構造体13を所望の長さに切断し、ペレット15を作製する。切断部129は、例えば回転刃などを備える。
樹脂構造体を得る工程:
繊維ロービング10から複数本の単繊維が収束剤にて収束された繊維束11を連続的に繰り出しながら、まず、予備加熱部121で、繊維束11を加熱して乾燥させる。
次に、含浸部123に、乾燥後の繊維束11を供給しつつ、押出機120により溶融混練した成形材料Mを供給口123aから投入して、繊維束11に、溶融状態の成形材料Mを含浸させる。これにより、繊維束に前記溶融物が含浸及び被覆した樹脂構造体13が得られる。この後、含浸部123で加熱された状態の樹脂構造体13を冷却部125で冷却する。
ここで得られる樹脂構造体13においては、繊維が樹脂構造体13の長手方向に略平行に配列している。
「繊維が樹脂構造体の長手方向に略平行に配列する」とは、繊維の長手方向と樹脂構造体の長手方向とのなす角度が、略0°であり、具体的には、繊維及び樹脂構造体のそれぞれの長手方向のなす角度が-5°~5°である状態を示す。
ペレットを得る工程:
次に、冷却後の樹脂構造体13を、引取部127でストランド状に引き取り、切断部129へ繰り出していく。
次に、切断部129で、ストランド状の樹脂構造体13を、その長手方向に所定の長さで切断し、ペレット15を得る。
ここでいうペレット15についての所定の長さとは、ペレット15を材料とする成形体の要求性能に応じて設定されるペレット15の長さのことである。本実施形態の製造方法で得られる第1のペレットにおいては、ペレット15の長さと、ペレット15中に配列している繊維の長さと、が実質的に同じ長さとなる。
「ペレットの長さと繊維の長さとが実質的に同じ長さになる」とは、ペレット中に配列している繊維の、長さ加重平均繊維長が、ペレットの長手方向の長さの95~105%であることを示す。
上述のようにして、第1の熱可塑性樹脂が繊維状フィラーに含浸した第1のペレット(ペレット15)が製造される。
このペレット15は、繊維状フィラーが第1の熱可塑性樹脂で固められたものであって、当該繊維状フィラーは、当該ペレットの長手方向に略平行に配列している。また、ペレット15中に配列している繊維状フィラーの長さは、当該ペレットの長さと実質的に同じ長さである。本実施形態で製造されるペレット15の長さは、ペレット15を材料とする成形体の要求性能等によるが、例えば3~50mmである。
このように、繊維状フィラーが当該ペレットの長手方向に略平行に配列し、かつ、繊維状フィラーの長さがペレットの長さと実質的に同じ長さとされていることにより、射出成形部とした際、当該射出成形部中の残存繊維状フィラーの長繊維化が可能となり、成形体の耐熱性向上及び異方性緩和に効果がある。
ペレット中における繊維状フィラーの配列方向については、ペレットを長手方向に切断した断面をマイクロスコープにて観察することで確認できる。
また、本実施形態において、ペレット中の繊維状フィラーの繊維長、長さ加重平均繊維長は、以下の手順で測定する。
手順(1):ペレット2gをマッフル炉で加熱して、樹脂分(第1の熱可塑性樹脂)を除去する。
例えば、繊維状フィラーが炭素繊維である場合、加熱条件は500℃、3時間とする。
繊維状フィラーがガラス繊維である場合、加熱条件は600℃、4時間とする。
手順(2):ペレットから樹脂分を除去したものを、界面活性剤(Micro90、INTERNATIONAL PRODUCTS CORPORATION社製)0.05体積%入り水溶液1000mLに分散させて、分散液を調製する。
手順(3):分散液から100mLを取り出し、純水で5~20倍に希釈する。希釈後の分散液から一部を取り出して、マイクロスコープ(VH-Z25、株式会社キーエンス製、倍率10~20倍)にて繊維状フィラーを観察し、画像を1サンプルにつき、撮影領域が重ならないように10枚撮影する。
ただし、繊維状フィラーが炭素繊維である場合、希釈後の分散液から50mLを取り出し、φ90mmの桐山ロート用ろ紙(No.5C)を用いて減圧濾過を行い、ろ紙に分散した炭素繊維の画像を撮影する。
繊維状フィラーがガラス繊維である場合、希釈後の分散液から50mLを取り出し、シャーレに分散させ、続いて、シャーレの中に分散したガラス繊維の画像を撮影する。
手順(4):撮影した画像1枚中に存在する全ての繊維の長さを、マイクロスコープの計測ツールで測定する。尚、屈曲した繊維は、多点間計測により測定し、画像の縁に接している繊維は測定しないこととする。繊維の測定本数合計が500本を超えるまで、撮影した10枚の画像で順次同様の操作を行い、繊維長を測定する。撮影した10枚の画像中の繊維本数合計が500本を超えない場合、手順(3)に戻り、純水での希釈倍率を適宜調整した上で、画像を再撮影して繊維長を再測定する。
手順(5):手順(4)で測定した繊維状フィラーの繊維長から、長さ加重平均繊維長lm=(Σli×ni)/(Σli×ni)を求める(Σni>500)。
li:繊維状フィラーの繊維長
ni:繊維長liの繊維状フィラーの本数
第2のペレットは、前記繊維状フィラーを含まず、前記第1の熱可塑性樹脂に比べて流動開始温度が低い第2の熱可塑性樹脂を含む樹脂構造体からなる。
第2のペレットは、例えば、第2の熱可塑性樹脂と、必要に応じてその他成分とを配合した混合物を、溶融押出成形法、又は溶融圧縮成形法によりペレット化することにより得られる。
本実施形態において、第2の熱可塑性樹脂には、前記第1の熱可塑性樹脂に比べて流動開始温度が低いものが用いられる。
好ましくは、前記第2の熱可塑性樹脂と、前記第1の熱可塑性樹脂との流動開始温度の差が、5℃以上であり、5~40℃がより好ましい。又は、好ましくは、前記第2の熱可塑性樹脂と、前記第1のペレットとの流動開始温度の差が、5℃以上であり、5~40℃がより好ましい。
このような第2の熱可塑性樹脂を、第1の熱可塑性樹脂に対して選択することで、射出成形部中で繊維状フィラーが繊維束として適度に分散し、また、射出成形中に繊維束として存在していることで、繊維破断が抑制され、成形品中の繊維状フィラーが長く残るために、衝突荷重に対する強度が発現しやすくなる。
第2の熱可塑性樹脂は、後述するペレット混合物の溶融混練温度(可塑化部)での溶融粘度が5~500Pa・s(測定条件:ノズルの孔径0.5mm、せん断速度1000s-1)であるものが好ましい。
例えば、第2の熱可塑性樹脂としては、液晶ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、液晶ポリエステルを用いることが好ましい。
第2の熱可塑性樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態においては、樹脂材料としてペレット混合物を用いる場合、耐衝撃性やエネルギー吸収効率の点から、第1の熱可塑性樹脂及び第2の熱可塑性樹脂には、いずれも、液晶ポリエステルを用いることが好ましい。
上述した第1のペレットと第2のペレットとを混合して、ペレット混合物を得る。
第1のペレットと第2のペレットとの混合比率(質量比)は、射出成形部とした際に、好ましくは熱可塑性樹脂40~70質量部と、繊維状フィラー30~60質量部となるように、第1のペレットと第2のペレットとを混合すればよい。
例えば、両者の混合比率(質量比)は、第1のペレット50~90質量部、第2のペレット10~50質量部が好ましく、第1のペレット55~85質量部、第2のペレット15~45質量部がより好ましく、第1のペレット55~80質量部、第2のペレット20~45質量部がさらに好ましい。
第1のペレットと第2のペレットとは、例えば、それぞれ別個に成形機内へ投入し、成形機内で両者を混合してもよいし、又は予め両者を混合した混合物を調製してもよい。あるいは、第1のペレットと第2のペレットとは、第1のペレット表面に第2のペレットを被覆したものとして用いてもよい。
得られたペレット混合物を用いて衝撃吸収部材を成形する場合、例えば、前記ペレットの溶融混練温度(可塑化部)は、前記第2の熱可塑性樹脂の流動開始温度を超え、前記第1の熱可塑性樹脂又は前記第1のペレットの流動開始温度以下であることが好ましい。
具体的には、当該溶融混練温度(可塑化部)は、260~340℃が好ましく、280~330℃がより好ましく、290~320℃がさらに好ましい。計量部又はプランジャー部は、280~400℃が好ましく、290~380℃がより好ましく、300~370℃がさらに好ましい。このように制御することにより、射出成形部での長繊維化が図られやすくなる。
(車両)
本発明の一態様に係る車両は、上述した本発明の一態様に係る衝撃吸収部材が、車両の前部、後部及び側部のうちの少なくとも一に取り付けられたものである。
車両としては、自転車、自動二輪車、自動四輪車、電車等が挙げられる。
例えば図1に示したような構造部材、すなわち、衝撃吸収部材200がフロントサイドメンバー400(フレーム)とバンパービーム300との間に設けられた構造部材が、自動四輪車の前部に取り付けられる。
本実施形態の車両によれば、上述の実施形態の衝撃吸収部材が採用されているため、軽量化がされて省燃費化と、衝撃エネルギー吸収性能がより高められて衝突安全性の向上とが図られる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<樹脂材料の調製>
樹脂材料として、液晶ポリエステルを加工したニートペレット(1)及びニートペレット(2)をそれぞれ製造して用いた。
また、液晶ポリエステルがガラス繊維に含浸した樹脂ペレット1及び樹脂ペレット2をそれぞれ製造して用いた。
また、ポリアミドがガラス繊維に含浸した樹脂ペレット(PA6/長繊維GF50)を用いた。
また、ポリプロピレンがガラス繊維に含浸した樹脂ペレット(PP/長繊維GF40)及び樹脂ペレット(PP/短繊維GF40)をそれぞれ用いた。
≪ニートペレット(1)の製造≫
ニートペレット(1)(LCP1)を以下のようにして製造した。
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸(994.5g、7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(446.9g、2.4モル)、テレフタル酸(299.0g、1.8モル)、イソフタル酸(99.7g、0.6モル)及び無水酢酸(1347.6g、13.2モル)と、1-メチルイミダゾール0.9gとを入れ、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。その後、窒素ガス気流下で室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃を保持して1時間還流させた。次いで、1-メチルイミダゾール(0.9g)を加え、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として内容物を取り出し、これを室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1~1mmに粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。
ここで得られた液晶ポリエステルは、全繰り返し単位の合計量に対して、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)を60モル%、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(2)を15モル%、Arが1,3-フェニレン基である繰返し単位(2)を5モル%、及びArが4,4’-ビフェニリレン基である繰返し単位(3)を20モル%有し、その流動開始温度は327℃であった。
得られた粉末状の液晶ポリエステルを二軸押出機(PMT47、IKG社製)にてシリンダー温度320℃で造粒して、LCP1を製造した。得られたLCP1の流動開始温度は316℃であった。
≪ニートペレット(2)の製造≫
ニートペレット(2)(LCP2)を以下のようにして製造した。
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸(994.5g、7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(446.9g、2.4モル)、テレフタル酸(239.2g、1.44モル)、イソフタル酸(159.5g、0.96モル)及び無水酢酸(1347.6g、13.2モル)を仕込み、1-メチルイミダゾール(0.9g)を添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。その後、窒素ガス気流下で室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃を保持して1時間還流させた。次いで、1-メチルイミダゾール0.9gを加え、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として内容物を取り出し、これを室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1~1mmに粉砕後、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持することで、固相重合を行った。固相重合後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。
ここで得られた液晶ポリエステルは、全繰り返し単位の合計量に対して、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(1)を60モル%、Arが1,4-フェニレン基である繰返し単位(2)を12モル%、Arが1,3-フェニレン基である繰返し単位(2)を8モル%、及びArが4,4’-ビフェニリレン基である繰返し単位(3)を20モル%有し、その流動開始温度は291℃であった。
得られた粉末状の液晶ポリエステルを二軸押出機(PMT47、IKG社製)にてシリンダー温度290℃で造粒して、LCP2を製造した。得られたLCP2の流動開始温度は284℃であった。
≪樹脂ペレット1の製造≫
液晶ポリエステルがガラス繊維に含浸した樹脂ペレット1については、図7に示す形態と同様の製造装置を用い、以下のようにして製造した。
押出機120にはGTS-40型押出機(株式会社プラスチック工学研究所製)を用いた。ベルト式引取機にはEBD-1500A(アイメックス株式会社製)を用いた。繊維状フィラーとして、下記のガラス繊維を用いた。
[ガラス繊維]
GF1:ガラス繊維ロービング(Eガラス、繊維径17μm、繊度1150g/1000m、日東紡績株式会社製)
ニートペレットとして、上述したLCP1及びLCP2を用いた。
LCP1及びLCP2の合計100質量部(LCP1が85質量部、LCP2が15質量部)に対して、GF1が196質量部となる樹脂ペレット1を得た。具体的には以下のようにして製造した。
樹脂構造体を得る工程:
上記ベルト式引取機(引取部127)を作動させることにより、ガラス繊維ロービング10(GF1)からガラス繊維束11を引取速度10m/分で連続的に繰り出しながら、まず、予備加熱部121で、ガラス繊維束11を60℃に加熱して乾燥させた。
次に、押出機120の先端に取り付けたダイ(含浸部123)に、乾燥後のガラス繊維束11を供給しつつ、押出機120から溶融状態のLCP1及びLCP2を供給口123aから投入した。ダイ(含浸部123)内で、LCP1及びLCP2を、380℃で溶融し、ガラス繊維束11に含浸させて、ダイ(含浸部123)出口にてノズル径1.1mmのダイヘッドにてストランド径を調整することで、LCP1及びLCP2の合計100質量部(LCP1が85質量部、LCP2が15質量部)に対して、ガラス繊維が196質量部となる樹脂構造体13を得た。
ここで得られた樹脂構造体13においては、ガラス繊維が第1の液晶ポリエステル層の長手方向に略平行に配列していた。
この後、ダイ(含浸部123)内で加熱された状態の樹脂構造体13を、冷却部125で150℃以下に冷却した。
ペレットを得る工程:
次に、冷却後の樹脂構造体13を、前記ベルト式引取機(引取部127)でストランド状に引き取り、ペレタイザー(切断部129)へ繰り出し、その長手方向に所定の長さ(12mm)で切断して、円柱形状の樹脂ペレット1(ペレット15)を得た。
≪樹脂ペレット2の製造≫
繊維状フィラーとして、下記のガラス繊維を用いた。
[ガラス繊維]
GF2:ガラス繊維ロービング(Eガラス、繊維径10μm、繊度1255g/1000m、日本電気硝子株式会社製)
GF1の代わりにGF2を用いた以外は、上記≪樹脂ペレット1の製造≫と同様にして製造し、LCP1及びLCP2の合計100質量部(LCP1が85質量部、LCP2が15質量部)に対して、GF2が229質量部となる円柱形状(長さ12mm)の樹脂ペレット2を得た。
≪樹脂ペレット(PA6/長繊維GF50)≫
ポリアミドがガラス繊維に含浸した樹脂ペレットとして、下記のPA6/長繊維GF50を用いた。
PA6/長繊維GF50:ナイロン6がガラス繊維に含浸した円柱形状(長さ9.0mm)の樹脂ペレット、樹脂ペレットに占めるガラス繊維の割合50質量%;商品名「プラストロンPA6-GF50-01(L9)」、ダイセルミライズ株式会社製
≪樹脂ペレット(PP/長繊維GF40)≫
ポリプロピレンがガラス繊維に含浸した樹脂ペレットとして、下記のPP/長繊維GF40を用いた。
PP/長繊維GF40:ポリプロピレンがガラス繊維に含浸した円柱形状(長さ8.0mm)の樹脂ペレット、樹脂ペレットに占めるガラス繊維の割合40質量%;商品名「スミストラン PG4003-3」、住友化学株式会社製
≪樹脂ペレット(PP/短繊維GF40)≫
ポリプロピレンがガラス繊維に含浸した樹脂ペレットとして、下記のPP/短繊維GF40を用いた。
PP/短繊維GF40:ポリプロピレンがガラス繊維に含浸した円柱形状(長さ3.0mm)の樹脂ペレット、樹脂ペレットに占めるガラス繊維の割合40質量%;商品名「Thermofil HP F811X99」、Sumika Polymer Compounds Europe社製
<衝撃吸収部材の製造>
表1~2に示す樹脂材料を溶融混合し、これを射出成形する工程により、各例の衝撃吸収部材をそれぞれ製造した。
(実施例1)
ペレット混合物を得る工程:
上記で製造した樹脂ペレット1とニートペレット(2)(LCP2)とを、表1に記載の割合で混合して混合物を得た。次いで、得られた混合物100質量部に対し、計量安定化剤としてCS-7(ベヘン酸カルシウム、日東化成工業株式会社製)0.06質量部を添加し、均一に混合して、ペレット混合物からなる樹脂組成物1を得た。
樹脂組成物を射出成形する工程:
前記樹脂組成物1を、射出成形機TR450EH3(株式会社ソディック製)のホッパーへ投入した。
可塑化部の温度300℃、プランジャー部の温度360℃の成形温度条件で溶融混練し、下記その他射出条件で、所定の金型内へ射出することにより、上述した図2~4に示す形態と同じ形態の射出成形部(本体部の厚さ2mm)を成形して、先端部が胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ、半球体に近い形状の衝撃吸収部材を製造した。
その他射出条件:背圧1MPa、射出速度200mm/秒、金型温度100℃、保圧100MPa、保圧時間5秒間
ゲート方式としてダイレクトゲートを採用した。ゲート位置を、射出成形部の本体部における先端部の先端に設定した。
(実施例2)
ペレット混合物を得る工程:
上記で製造した樹脂ペレット2とLCP2とを、表1に記載の割合で混合して混合物を得た。次いで、得られた混合物100質量部に対し、計量安定化剤としてCS-7(ベヘン酸カルシウム、日東化成工業株式会社製)0.06質量部を添加し、均一に混合して、ペレット混合物からなる樹脂組成物2を得た。
樹脂組成物を射出成形する工程:
表1に記載のように、樹脂組成物1に代えて前記樹脂組成物2を用い、可塑化部の温度300℃を320℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を340℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、先端部が半球体に近い形状の衝撃吸収部材を製造した。
(実施例3)
表1に記載のように、樹脂組成物1に代えてPA6/長繊維GF50を用い、可塑化部の温度300℃を270℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を270℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、先端部が半球体に近い形状の衝撃吸収部材を製造した。
(実施例4)
表1に記載のように、樹脂組成物1に代えてPP/長繊維GF40を用い、可塑化部の温度300℃を250℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を250℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、先端部が半球体に近い形状の衝撃吸収部材を製造した。
(比較例1)
表1に記載のように、樹脂組成物1に代えてPP/短繊維GF40を用い、可塑化部の温度300℃を250℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を250℃へ変更した以外は、実施例1と同様にして、先端部が半球体に近い形状の衝撃吸収部材を製造した。
(比較例2)
樹脂組成物を射出成形する工程:
表2に記載のように、前記樹脂組成物1を、射出成形機TR450EH3(株式会社ソディック製)のホッパーへ投入した。
可塑化部の温度300℃、プランジャー部の温度360℃の成形温度条件で溶融混練し、下記その他射出条件で、所定の金型内へ射出することにより射出成形部(本体部の厚さ3mm)を成形して、図8に示すような本体部が円柱形状の衝撃吸収部材を製造した。
図8(A)は、比較例2の衝撃吸収部材80の側面図であり、図8(B)は、比較例2の衝撃吸収部材80の平面図(上面図)である。
衝撃吸収部材80は、液晶ポリエステルとガラス繊維とを含有する射出成形部83を含む。射出成形部83は、本体部81と、これと一体成形されているフランジ部82とを備える。本体部81は、中空形状であり、上面が塞がれ下面が開口した筒状に形成されている。また、本体部81は、上面視で略円形状であって、上面から下面へ向かって緩やかに太くなっており、下面の開口縁全体に沿ってフランジ部82が形成されている。
その他射出条件:背圧1MPa、射出速度200mm/秒、金型温度100℃、保圧100MPa、保圧時間5秒間
ゲート方式としてダイレクトゲートを採用した。ゲート位置を、射出成形部の本体部における一方(上面部側)の端面重心、すなわち上面重心に設定した。
(比較例3)
表2に記載のように、樹脂組成物1に代えてPA6/長繊維GF50を用い、可塑化部の温度300℃を270℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を270℃へ変更した以外は、比較例2と同様にして、本体部が円柱形状の衝撃吸収部材を製造した。
(比較例4)
樹脂組成物を射出成形する工程:
表2に記載のように、前記樹脂組成物1を、射出成形機TR450EH3(株式会社ソディック製)のホッパーへ投入した。
可塑化部の温度300℃、プランジャー部の温度360℃の成形温度条件で溶融混練し、下記その他射出条件で、所定の金型内へ射出することにより射出成形部(本体部の厚さ3mm)を成形して、図9に示すような本体部が略正六角柱形状の衝撃吸収部材を製造した。
図9(A)は、比較例4の衝撃吸収部材90の側面図であり、図9(B)は、比較例4の衝撃吸収部材90の平面図(上面図)である。
衝撃吸収部材90は、液晶ポリエステルとガラス繊維とを含有する射出成形部93を含む。射出成形部93は、本体部91と、これと一体成形されているフランジ部92とを備える。本体部91は、中空形状であり、上面が塞がれ下面が開口した筒状に形成されている。また、本体部91は、上面視で略六角形状であって、上面から下面へ向かって緩やかに太くなっており、下面の開口縁全体に沿ってフランジ部92が形成されている。
その他射出条件:背圧1MPa、射出速度200mm/秒、金型温度100℃、保圧100MPa、保圧時間5秒間
ゲート方式としてダイレクトゲートを採用した。ゲート位置を、射出成形部の本体部における一方(上面部側)の端面重心、すなわち上面重心に設定した。
(比較例5)
表2に記載のように、樹脂組成物1に代えてPA6/長繊維GF50を用い、可塑化部の温度300℃を270℃へ変更し、プランジャー部の温度360℃を270℃へ変更した以外は、比較例4と同様にして、本体部が略正六角柱形状の衝撃吸収部材を製造した。
(参考例)
全体が中空の直方体形状であるアルミ製の衝撃吸収部材を用意した。
上記で製造した各例の衝撃吸収部材について、その寸法、質量、及び射出成形部の内容積を以下に示した。
実施例1~4、比較例1の衝撃吸収部材
高さ(フランジ部上面から先端部の先端までの距離(h)):100mm
底面最大寸法(フランジ部下面の略円形の最大外径(j)):130mm
胴体部の端面の開口部直径(l):90mm
先端部と胴体部との仮想の界面の最大径(n):50mm
先端部の長さ(m):25mm
衝撃吸収部材の質量:203g(実施例1)
衝撃吸収部材の質量:204g(実施例2)
衝撃吸収部材の質量:172g(実施例3)
衝撃吸収部材の質量:128g(実施例4)
衝撃吸収部材の質量:128g(比較例1)
本体部(先端部+胴体部)の内容積:117cm
比較例2~3の衝撃吸収部材
高さ(フランジ部上面から本体部上面までの距離(h’)):100mm
底面最大寸法(フランジ部下面の六角形の最大外径(j’)):130mm
上面最大寸法(本体部上面の円形の最大径(n’)):80mm
衝撃吸収部材の質量:185g(比較例2)
衝撃吸収部材の質量:153g(比較例3)
本体部の内容積:104cm
比較例4~5の衝撃吸収部材
高さ(フランジ部上面から本体部上面までの距離(h”)):100mm
底面最大寸法(フランジ部下面の六角形の最大外径(j”)):130mm
上面最大寸法(本体部上面の六角形に外接する円の直径(n”)):80mm
衝撃吸収部材の質量:178g(比較例4)
衝撃吸収部材の質量:149g(比較例5)
本体部の内容積:101cm
参考例の衝撃吸収部材について、その寸法、質量等を以下に示した。
形状:中空直方体
縦×横×高さ:100mm×60mm×200mm
厚さ:2mm
中空部分の中央に厚さ2mmの十字リブ有り
衝撃吸収部材の質量:1220g(参考例)
[本体部に含まれるガラス繊維の長さ加重平均繊維長の測定]
本実施例において、衝撃吸収部材を構成する本体部に含まれるガラス繊維の長さ加重平均繊維長を、以下の手順で測定した。その結果を表1~2に示した。
手順(1):本体部における胴体部の端面(底面部)の重心を通り、この端面に垂直な中心軸aに対して垂直な面bを、端面の重心から先端部方向へ15mm移動した位置に設定した。この面bと端面との間に存在する胴体部領域から、実施例1~4及び比較例1の各衝撃吸収部材については15mm×15mm×2mmの試験片1を、比較例2~5の各衝撃吸収部材については15mm×15mm×3mmの試験片1をそれぞれ切り出した。
手順(2):中心軸aに対して垂直な面cを、先端部の端面と接する位置に設定した。この面cから端面方向へ15mm移動した位置に、面dを設定した。面cと面dとの間に存在する先端部領域から、実施例1~4及び比較例1の各衝撃吸収部材については15mm×15mm×2mmの試験片2を、比較例2~5の各衝撃吸収部材については15mm×15mm×3mmの試験片2をそれぞれ切り出した。
手順(3):試験片1及び試験片2のそれぞれを、マッフル炉で600℃、4時間加熱して、樹脂分を除去した。
手順(4):手順(3)で、切り出した試験片から樹脂分を除去したもの(ガラス繊維のみ)を、界面活性剤(Micro90 INTERNATIONAL PRODUCTS CORPORATION社製)0.05体積%入り水溶液2000mLに分散させて、分散液を調製した。
手順(5):分散液から100mLを取り出し、純水で15倍に希釈した。希釈後の分散液から50mLを取り出してシャーレに分散させ、続いて、シャーレの中に分散したガラス繊維を、マイクロスコープ(VH-ZST(株式会社キーエンス製)倍率20倍)にて観察し、画像を1サンプルにつき、撮影領域が重ならないように10枚撮影した。
手順(6):撮影した画像1枚中に存在する全ての繊維の長さを、マイクロスコープの計測ツールで測定した。
尚、屈曲した繊維は、多点間計測により測定した。繊維の測定本数合計が500本を超えるまで、撮影した10枚の画像で順次同様の操作を行い、繊維長を測定した。
手順(7):手順(6)で測定したガラス繊維の繊維長から、本体部に含まれるガラス繊維の長さ加重平均繊維長lm=(Σli×ni)/(Σli×ni)を求めた(Σni>500)。
li:ガラス繊維の繊維長
ni:繊維長liのガラス繊維の本数
<評価(1)>
各例の衝撃吸収部材に対して、以下に示す落錘衝撃試験を行い、エネルギー吸収効率を求めた。この結果を表1、2に示した。
≪落錘衝撃試験≫
図10は、落錘衝撃試験の装置を示す図である。
図10に示すように、装置900は、試験台910と、試験台910を下方で支持する荷重計920と、荷重計920の左右両側に離間配置された変位計930a、930bと、試験台910の上方から落下する錘体940と、落下する錘体940を止める錘体ストッパー950とを備える。
図10では、試験台910上に、試験体990が設置されている。落下した錘体940が試験体990上面に接している。
落錘衝撃試験の方法:
各例の衝撃吸収部材を、それぞれ試験体990とした。
図10に示す装置900を用いて、荷重計920上の試験体990に対し、錘体940を自由落下させて衝撃を与えた。そして、その際に試験体990に加わる荷重[kN]、及び試験体990上面の変位[mm]を計測した。
落錘衝撃試験の条件:
設定衝突速度30km/h
有効変位75mm(錘体初期位置から錘体ストッパーまでの距離)
錘体重量300kg
落下高さ3.540m
使用機器:
荷重計920には、型式「CLP-1MNS(容量:1MN)」、機器メーカ「TOKYO SOKKI KENKYUJO CO.LTD」を用いた。
変位計930a、930bには、型式「LK-G505(北側:No.1271178、南側:No.1261015)」、機器メーカ「KEYENCE CORPORATION」を用いた。
収録装置には、型式「DIS-5200A」、機器メーカ「KYOWA ELECTRONIC INSTRUMENTS CO.LTD」を用いた。
収録装置のサンプリング周波数は50kHz、アナログフィルタは10kHzとした。荷重計920及び変位計930a、930bのアナログフィルタは10kHzとした。
[エネルギー吸収効率の測定]
図11は、実施例1の衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。図12は、比較例1の衝撃吸収部材に対する落錘衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。
縦軸は、試験体990に加わる荷重[kN]を表している。
横軸は、試験体990上面(試験体990上面と接触する錘体940下面)の変位[mm]を表している。試験体990上面の初期位置を0mmとした。有効変位を75mmとした。
図11に示すグラフの結果を基にし、実施例1の衝撃吸収部材について、変位0~75mmにおける衝撃エネルギー吸収効率(%)を測定した。
図12に示すグラフの結果を基にし、比較例1の衝撃吸収部材について、変位0~75mmにおける衝撃エネルギー吸収効率(%)を測定した。
衝撃エネルギー吸収効率(%)は、下式より求めた。有効変位を75mmとした。
実際の衝撃エネルギー吸収量は、荷重-変位線を積分(変位0~75mmにおける荷重-変位線で囲まれる面積を算出)することにより求めた。
Figure 2022064207000003
実施例2~4及び比較例2~5並びに参考例の各衝撃吸収部材についても、実施例1及び比較例1と同様にして、変位0~75mmにおける衝撃エネルギー吸収効率(%)を測定した。この結果を表1、2に示した。
Figure 2022064207000004
表1に示す結果から、実施例1~4と比較例1との対比より、半球体に近い形状の先端部を有する衝撃吸収部材であって、本体部に含まれるガラス繊維の長さ加重平均繊維長が1.0mm以上である実施例1~4の衝撃吸収部材は、長さ加重平均繊維長が1.0mm未満である比較例1の衝撃吸収部材に比べて、エネルギー吸収効率が高いことが確認できる。
図11及び図12から、実施例1の衝撃吸収部材を用いた場合の荷重-変位線は、比較例1の衝撃吸収部材を用いた場合の荷重-変位線に比べて、変位に伴う荷重の変動(振れ幅)が小さいことが確認できる。
この相違する結果は、主に、衝撃吸収部材の本体部に含まれるガラス繊維の長さ加重平均繊維長が寄与し、実施例1における当該長さ加重平均繊維長(4.91mm)が、比較例1における当該長さ加重平均繊維長(0.44mm)よりも大きいため、と考えられる。
Figure 2022064207000005
表1、2に示す結果から、樹脂材料が共通し、先端部の形状が相違する実施例1と比較例2、4との対比より、半球体に近い形状の先端部を有する実施例1の衝撃吸収部材は、円柱形状の先端部を有する比較例2、及び略正六角柱形状の先端部を有する比較例4の衝撃吸収部材に比べて、エネルギー吸収効率が高められていることが確認できる。
表1、2に示す結果から、樹脂材料が共通し、先端部の形状が相違する実施例3と比較例3、5との対比より、半球体に近い形状の先端部を有する実施例3の衝撃吸収部材は、円柱形状の先端部を有する比較例3、及び略正六角柱形状の先端部を有する比較例5の衝撃吸収部材に比べて、エネルギー吸収効率が高められていることが確認できる。
表1、2に示す結果から、本発明を適用した樹脂製である実施例1~4の衝撃吸収部材は、アルミ製である参考例の衝撃吸収部材に比べて、エネルギー吸収効率が高いことが確認できる。
すなわち、本発明によれば、樹脂材料を形成材料として軽量化が図られ、かつ、衝撃エネルギー吸収性能がより高められた衝撃吸収部材を提供することができる。
<評価(2)>
射出成形部の本体部における先端部形状が、衝撃吸収部材の衝撃エネルギー吸収効率に与える影響について、CAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアを利用したシミュレーションにて評価を行った。
CAEソフトウェアとしては、非線形動的構造解析ソフトウェアであるLS-DYNA(LSTC社製)を用いた。
シミュレーションモデルとして、図13A、図14A及び図15Aに示す試験例1、2及び3のモデルを用いた。試験例1、2及び3のモデルは、互いに、先端部の形状のみが異なる。
図13B、図14B及び図15B中、hは、フランジ部上面から先端部の先端までの距離、すなわち、本体部の高さを表す。mは、先端部の長さを表し、本体部の高さhの4分の1とする。すなわち、m=h×1/4である。nは、先端部と胴体部との仮想の界面の最大径を表す。
(試験例1のモデル)
図13Aは、図2に示した形態と同一の形態であり、先端部512が、半球体に近い形状である衝撃吸収部材500のモデルを示す斜視図である。試験例1のモデルには、本体部510の内側面に、胴体部514から先端部512にまで凸条に延びる複数のリブ540が設けられている。
図13Bは、図13Aに示した衝撃吸収部材500の側面の影を映し出した投影図である。先端部512の投影面積は「π/4×mn」である。
(試験例2のモデル)
図14Aは、先端部以外は図13Aに示したモデルの形態と同一であり、先端部612が、円錐に近い形状である衝撃吸収部材600のモデルを示す斜視図である。試験例2のモデルには、本体部610の内側面に、胴体部614から先端部612にまで凸条に延びる複数のリブ640が設けられている。
図14Bは、図14Aに示した衝撃吸収部材600の側面の影を映し出した投影図である。先端部612の投影面積は「1/2×mn」である。
(試験例3のモデル)
図15Aは、先端部以外は図13Aに示したモデルの形態と同一であり、先端部712が、円柱に近い形状である衝撃吸収部材700のモデルを示す斜視図である。試験例3のモデルには、本体部710の内側面に、胴体部714から先端部712にまで凸条に延びる複数のリブ740が設けられている。
図15Bは、図15Aに示した衝撃吸収部材700の側面の影を映し出した投影図である。先端部712の投影面積は「mn」である。
≪シミュレーションによる衝撃試験≫
試験例1、2及び3のモデルに対し、CAEソフトウェアを利用したシミュレーションによる衝撃試験を、以下のようにして行った。
衝撃吸収部材のモデルを定盤上に設置し、重量300kgのインパクタを8.33m/sの速度でモデルに衝突させるシミュレーションを実施した。
衝撃吸収部材を潰した際の反力の推移を計算することにより、インパクタの変位量(単位:mm)と荷重(単位:N)との関係を得た。
計算において、インパクタの変位量の範囲は0~20mmとした。インパクタが衝撃吸収部材に衝突した瞬間の変位を0mmとした。
シミュレーションには、樹脂材料として下記のPP/短繊維GF40を用いた。
PP/短繊維GF40:ポリプロピレンとガラス繊維とからなる材料、この材料に占めるガラス繊維の割合40質量%、弾性率8GPa、強度90MPa
得られたインパクタの変位量と荷重との関係(荷重-変位線)を、図16~18に示した。
図16は、試験例1のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。
図17は、試験例2のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。
図18は、試験例3のモデルに対する、シミュレーションによる衝撃試験の結果を示す、荷重-変位線図である。
図16~18に示した荷重-変位線図から、各試験例のモデルについて、インパクタの変位量0~2mmの最大荷重をFiとして求めた。また、インパクタの変位量18~20mmの最大荷重をFtとして求めた。これらの結果を表3に示した。
Figure 2022064207000006
図16~18及び表3に示す結果から、試験例2のモデルを用いた場合には、Fi、Ftの値が小さく、衝撃エネルギー吸収量自体が少ないことが確認された。
試験例3のモデルを用いた場合には、Ftに比べてFiの値が高くなり、衝撃吸収部材全体としての衝撃エネルギー吸収効率が低くなることが確認された。
試験例1のモデルを用いた場合には、Fiの値が小さすぎずFtに比べて低く、Ftはある程度の高い値を示し、かつ、変位に伴う荷重の変動が抑えられていることが確認された。
以上より、衝撃吸収部材における、先端部の投影面積の好ましい範囲は、1/2×mnより大きく、mnより小さい範囲であること、が分かる。
100 製造装置、101~109 搬送ロール、120 押出機、121 予備加熱部、123 含浸部、125 冷却部、127 引取部、129 切断部、200 衝撃吸収部材、300 バンパービーム、400 フロントサイドメンバー、500 衝撃吸収部材、510 本体部、512 先端部、514 胴体部、520 フランジ部、530 射出成形部、900 装置、910 試験台、920 荷重計、930a 変位計、930b変位計、940 錘体、950 錘体ストッパー、990 試験体

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂及び繊維状フィラーを含有する射出成形部を含む、衝撃吸収部材であって、
    前記射出成形部は、筒状の胴体部と、この胴体部から延在して先端方向へ凸状に湾曲した端面を持つ先端部と、を有する本体部を備えており、かつ、
    前記本体部に含まれる前記繊維状フィラーの長さ加重平均繊維長が、1.0mm以上である、衝撃吸収部材。
  2. さらに、前記本体部の内側面及び外側面の少なくとも一方に、補強用のリブが設けられている、請求項1に記載の衝撃吸収部材。
  3. 前記繊維状フィラーが、ガラス繊維である、請求項1又は2に記載の衝撃吸収部材。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、液晶ポリエステルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の衝撃吸収部材が、車両の前部、後部及び側部のうちの少なくとも一に取り付けられた、車両。
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