JP2022063237A - 反応熱の除熱に吸熱反応を用いるメタン化反応装置および吸熱材の再生処理プロセス - Google Patents

反応熱の除熱に吸熱反応を用いるメタン化反応装置および吸熱材の再生処理プロセス Download PDF

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【課題】炭酸ガスと水素からメタンを合成する装置において、メタンへの転化率を高めるには反応熱を除熱し、更に反応の進行と共に反応温度を下げる事が有効であり、この事が可能な装置が望まれていた。【解決手段】本発明では、メタン化反応が進行する温度域で、化学蓄熱剤である水酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムの粉体を多段流動層の流動媒体の一部として用いてメタン化反応時に発生する熱を吸収し蓄熱させ、この時、炭酸マグネシウムから発生する炭酸ガスをメタン化反応の原料ガスとする事が可能であり、更に、吸熱によって生成する酸化マグネシウムを抜出して外部の再生処理設備で再生させる際に、蓄熱している熱を回収し、この再生した粉体を装置の内温より低い温度で多段流動層の最上段に再び投入して利用する事で、反応ガスが装置内を上昇する過程で、反応の進行と共に反応温度を低下させ、生成するメタンへの転化率を高める事を可能とした。【選択図】図9

Description

近年、地球温暖化ガスである炭酸ガスの大気中濃度を増やさない、あるいは低減させるべく、炭酸ガスの分離回収技術であるCCS、およびその利用までを含めるCCUS(Carbon Capture Utilization & Separation)技術の開発が進められている。
一方、再生可能エネルギーの利用促進においては、太陽光発電あるいは風力発電等の変動する電力を、需要に合わせて安定したエネルギー供給源とする為、この電力を用いる電気分解にて水素(グリーン水素)を製造し、これを貯蔵して利用する水素変換プロセスの開発実証も進められている。
更に、上記CCS技術により補足した炭酸ガスと、この再生可能エネルギーから得られた水素を、より安全で且つ現在のインフラストラクチュアにも適合して利用しやすいメタンに変換するメタネーションプロセスの開発も進められている。
本発明は、この炭酸ガスを捕捉するCCS技術と水素からメタンに変換するプロセスを融合させるCCUS技術に関するものである。
現在、大気中あるいは煙道排ガスからの炭酸ガスを吸収し、分離回収する技術の主流はアミン系吸収液を用いる吸収法である。用いるアミン吸収液の種類は複数あるが、いずれも、煙道排ガス中の炭酸ガスを常温から50℃の範囲で吸収させ、これを100℃~150℃に加熱して脱炭酸させて炭酸ガスを回収する方法である。また、非特許文献3にある様にアミンを固体粒子に含侵させて用いる方法もある。
一方、水素と炭酸ガスからメタンを合成する方法は、非特許文献1によれば、およそ120年前に、サバティエによってNi系触媒存在下で進行する事が発見されたが、今日までメタンを製造する方法として実用化されていなかった。その主な理由は、この反応は温度がおよそ600℃以下で起き、しかも大きな発熱を伴う平衡反応である事、即ち、この発熱により、触媒表面温度および反応ガスの温度が上昇し易く、また、反応ガスの温度が上がるとメタン化反応とは逆方向のメタン分解(水蒸気改質反応)が優勢となり、その結果、転化率および収率が低下する。この事により、この反応により得られる生成メタンガス中には、爆発性の高い未反応の水素ガス濃度が高くなり、安全で利用しやすいメタンを得る事は難しかった事による。
今日の主な工業的利用は、非特許文献2にある様にアンモニア合成時に、ガス中に僅かに含まれる反応阻害物質である炭酸ガスを除去する目的で、水素を用いてメタンに変換して除去する方法などに留まる。
この場合、微量の炭酸ガスのメタン化反応熱は周囲の大量のガスで希釈されるので、発熱の影響は無視できるほど小さくなり、障害にはなっていない。しかし、この様な希釈ガスが存在せず100%近い高濃度の炭酸ガスと水素の反応では、発熱の影響が大きく、反応場である触媒表面の除熱が不十分となると、上記した如く、温度上昇によりメタンへの転化率が低下する事に加えて、触媒自身が熱により劣化する。更にこの発熱に対する除熱は容易でない事から高濃度の炭酸ガスと水素からメタンを製造するプロセスが、今日まで実用化されて来なかった要因の一つである。
しかし、近年、温暖化対策の必要性が高まる中、非特許文献6によれば低温下で活性が高い触媒も開発されて来ており、また、特許文献1および非特許文献4-5によれば反応熱の除熱対策あるいは反応量の制御に工夫を施した反応装置の開発ならびにその実証試験が進められている。
また、特許文献1ではアミン系吸収法によって煙道排ガス中の炭酸ガスを回収して得られる炭酸ガスを、このメタン化法の原料である炭酸ガスとして用いる事で、即ち、燃焼排ガス中の炭酸ガスを用いて、グリーン水素をメタンに変換するプロセスの検討およびその開発が進められている。
特願2016-524796(PCT/EP2014/064625)および特願2020-63206は、上記したアミン系吸収法等の方法により、煙道ガスから吸収した炭酸ガスと水素を用いてメタン化反応にて、メタンを製造し、メタン化反応装置内から除熱によって得られた熱をボイラー燃焼用空気の予熱等に用いる方法である。 特願2020-71387はとくに流動化が困難とされている微粉に水平揺動運動を与える事で、偏流発生を防止し、気固の均一接触を可能とする揺動機構を備える移動層および多段流動層を提案している。
Paul Sabatierは1913年"Catalysis in Organic Chemistry" にて、Ni触媒の存在下で、炭酸ガスと水素が反応してメタンを生成する事を発表した。 栗山 常吉:化学と教育 66(11)、P529(2018)にはアンモニアの工業的製法にて、微量の炭酸ガス除去にメタン化反応が用いられている事が記されている。 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101330.html によれば、2020年7月13日には、NEDOは川崎重工業株式会社、公益財団法人地球環境産業技術研究機構と共同して、アミンを含侵させた粒子を用いて、「固体吸収法を用いた炭酸ガス分離回収技術」を導入し、同じくメタン製造プロセスの開発を進め、炭酸ガス分離回収技術のコストダウンを図っている。 Stefan Ronsch、等による「Review on methanation -From fundamentals to current projects」 Pages 276-296. Fuel 2016、166、には、メタネーションプロセス技術のレビューとそれぞれの課題等が纏められている。 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101217.html によれば、2019年10月16日のニュースリリースにおいて国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国際石油開発帝石株式会社、日立造船株式会社が共同で、「炭酸ガスを有効利用するメタン合成試験設備」を完成し、本格稼働に向けて試運転開始したとある。 阿部ら:富山大学研究推進機構水素同位体科学研究センター研究報告 36、39-44、(2016) には、TiO2粒子にナノメートルサイズのRu金属触媒を担持したものは、150℃あるいは200℃という低温で活性を有するが報告されている。 浜野 健也:窯業協会誌、71、P61、(1963)には水酸化マグネシウムの脱水反応は約290℃までに約2%脱水し、330℃を超えると急激に脱水が始まり、430℃までに完了するとある。 沢田 豊、他:日本化学会誌、p57-64、(1979)には塩基性炭酸マグネシウムの熱分解過程の測定結果が報告されている。 前田 四郎、山川 紀夫:化学工学 31(6)、P538 (1967)は流動層の伝熱係数は大きいことが記されている。 小林 敬幸:「排熱を化学的に蓄える技術の実例と諸課題」:自動車技術会 No.14-14 シンポジウム、2015 年 2 月 13 日。http://www.energy.gr.jp/wp-content/uploads/2018/02/ChHeatStorage.pdf の図5には各種化学蓄熱剤とその動作温度が示されている。その中で300~500℃の範囲で動作する化学蓄熱剤として、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが示されている。
アミン系吸収液を用いる炭酸ガス吸収法の吸収温度は、アミンの種類により異なるが、およそ20℃から60℃くらいとされており、通常の煙道ガス排気温度(約140℃)に比べると低いので、煙道ガス中の炭酸ガスを吸収させるには、一旦、その温度を下げる必要がある。
煙道ガス温度が下がることは、大気汚染防止法における「有効煙突高」を低下させることになるので、この「有効煙突高」を維持するには、炭酸ガス吸収後の煙道ガス温度を、再び140℃前後まで昇温させる、もしくは、排気ブロワーを強化し、排気ガスの風速を上げるなどの対策が必要と考えられる。また、アミン系吸収液は煙道ガス中から脱硫プロセスを経た後の微量のSOxと反応して、徐々に劣化する事が知られており、定期的な吸収液の精製と補充が必要とされている。
そこで、煙道ガスの温度を下げることなく、しかも、吸収液の劣化が無い、新たな炭酸ガスを吸収し、固定化できる方法が望まれている。
一方、炭酸ガスと水素からメタンを合成するメタン化反応は反応式1で表されるが、既に述べた如く、この反応は平衡反応であり、しかも発熱反応である。
ここで、メタン化反応のGibbsの自由エネルギー変化ΔGの値は、反応に関与する各成分のGibbsの自由エネルギーGの値を用いて数式1により与えられる。数式1の値が負である時、反応は進行し、正である時、反応は逆方向に進行する事を意味する。そこで、反応式1について、0~1000℃のΔGを計算し、その結果を図1に示した。ここで、多くの化合物について各温度におけるΔGおよびエンタルピー変化ΔHの値は、化学便覧など各種熱力学データベースから引用できるが、ここではこのようなデータベースを内蔵しているASPEN Plusというプロセスシミュレーターを用いて計算させた。図1から、メタン化反応のΔGの値は約580℃付近でゼロであり、これ以下の温度域では負であるので、メタン化反応は進行するが、580℃以上では、逆にΔGの値は正に転じ、逆反応であるメタンの水蒸気改質反応が優勢となることが分かる。
また、各成分のエンタルピーを計算すると反応式1でメタンが生成する反応は、発熱反応であるが、逆反応である水蒸気改質反応は、吸熱反応である。
一般に、吸熱反応の反応量は与える熱量によって支配されるので、反応速度の制御は容易であるが、発熱反応でしかもアレニウス型の場合には、発熱速度に対して除熱速度が不足すると反応温度が上昇し、更に、反応温度が上昇すると反応速度も上昇するので、暴走に至る危険性がある。
しかし、このメタン化反応の場合、温度が上昇すると、逆反応が優勢となるので、暴走には至らないが、反応収率が低下する結果となる。従って、十分な除熱能力を持って、反応温度の上昇を抑える事が重要である。
Figure 2022063237000002
Figure 2022063237000003
また、この反応は触媒表面上で起こるので、反応による発熱で触媒の温度が上がり易く、触媒からの除熱が速やかに行われない場合には、既に述べた如く、触媒温度が上昇し、その結果、転化率が低下するのみならず、触媒寿命の短命化につながる。
従って、このメタン化反応の解決すべき課題は、触媒を含む反応場からの速やかな反応熱の除熱である。
次に、このメタン化反応が進行する温度範囲を580℃以下として検討を進めると、反応式2の水酸化マグネシウムの脱水反応は吸熱反応であるが、図1では約270℃以上の温度域でΔGの値は負となっているので、この脱水反応は進行する事を意味している。実際、非特許文献7の「水酸化マグネシウムの脱水反応は300℃以上で起きる」との報告とほぼ一致している。
次に、反応式3の炭酸マグネシウムの脱炭酸反応は同じく、図1からは約410℃以上でΔGの値は負となっているので進行することが分かる。実際、非特許文献8によると、脱炭酸反応は、雰囲気の炭酸ガス濃度に依存するが、炭酸ガス分圧が5mol%以下では400℃以上で、全てが脱炭酸するとの報告と一致している。
これらの脱水および脱炭酸反応からは共に酸化マグネシウムが生成するが、図1中の水酸化マグネシウムの脱水反応の計算線は、約270℃以下では正の領域となっており、この逆反応(水和反応)が進行することを意味している。即ち、反応式4の如く、水と反応して水酸化マグネシウムに戻る。更に反応式5の水酸化マグネシウムの炭酸化反応は図1の計算線は広い温度範囲で負の領域であり、600℃以下の温度域でも進行することが分かる。従って、煙道ガス温度の140℃でも反応すると予想される。
Figure 2022063237000004
Figure 2022063237000005
Figure 2022063237000006
Figure 2022063237000007
さて、任意の温度Tにおける反応の平衡定数Kは数式2によりΔGから求める事ができる。ここでRは気体定数である。更に、反応式1からこの平衡定数Kと各成分の濃度の関係は数式3で与えられる。任意の温度TにおけるΔGの値から、数式2によってKの値を求め、更にKの値から数式3によって任意の温度における各成分の平衡組成が計算できる。数式3による平衡組成は、試行錯誤法によって求める。各温度におけるメタン化反応は、この平衡組成に近づくように進行することになる。
図2はこうして求めた炭酸ガスの平衡転化率の温度による変化を示したグラフである。図中、実線は、反応ガスが、水蒸気で希釈されていないケースであり、破線は、この反応ガスに1molの水蒸気が追加された時の平衡転化率の変化を示している。これは後述するが、水酸化マグネシウムが反応熱を吸収して脱水して1molの水蒸気が発生する場合に相当している。
温度580℃付近で、炭酸ガスのメタンへの転化率は50%となり、350℃付近では、破線から平衡転化率を読み取ると、約87%となり、未反応炭酸ガスは13%程度まで減少することが分かる。
Figure 2022063237000008
Figure 2022063237000009
更に、図2からはメタンへの高い転化率を得るためには、より低い温度で反応を進行させる事が有効である事が分かる。即ち、この反応は、反応温度が下がるほど、反応の転化率が上がるので、反応装置出口における転化率を高めるには、反応の進行と共に反応温度を下げる事が有効である。
しかし、既に述べたが、この反応は、反応すると発熱するので、除熱能力が十分でないと、この反応熱により温度が上がり、逆に転化率は下がることになる。一方、反応速度論的には反応温度が下がると反応速度は低下するので、反応温度は高い方が好ましい。この事がこのメタン化反応のジレンマであり、対処すべき課題である。
そこで、反応初期には反応温度を高くして反応を進めるが、その後、徐々に反応温度を下げながら反応を進め、しかも、反応装置出口の温度が低い領域においては、反応速度を上げるために、触媒濃度を増やす、あるいは、より活性が高い触媒を用いる事により、温度が低い領域においても反応速度を下げることなく、メタンへの転化率を上げる事ができる反応装置が望まれている。
ここで、これまでの主な研究開発経過を概観すると、特許文献1および非特許文献4-5におけるメタン化反応は、Ni系触媒の存在下で、300~400℃の温度範囲で行われている。また、この除熱で得た熱を、プロセス内あるいはプロセス外で利用するプロセスが提案されている。
触媒に関しては、触媒をペレットあるいはハニカム状に成型し、これを反応管に充填し、この反応管内に反応ガスを通じ、反応管内の発熱は反応管外部からの冷却によって除熱する間接冷却方式が用いられている。
300~400℃で反応させる反応装置において、反応装置出口温度を350℃、或いは300℃とする時の平衡転化率は、それぞれ図2より、87%および92%程度である。
実際の転化率を平衡転化率に近づけるには、反応時間を十分に確保する必要があるが、このメタン化反応の装置内の転化率を仮に90%まで進行するとした時、原料ガス(1[kmol]の炭酸ガスと4[kmol]の水素)から、生成するガスの組成は0.90[kmol]のメタンと1.80[kmol]の水蒸気であり、未反応ガスの成分は0.10[kmol]の炭酸ガスと0.40[kmol]の水素ガスとなる。濃度に換算すると未反応水素ガスの濃度は12.5mol%となり、爆発性が高い水素をこのような高い濃度で含むメタンを一般に使用する燃料として使用するには危険であり好ましくない。
近年、非特許文献6によれば、転化率を更に高めるために、150~200℃でも活性を有するRu担持触媒が開発された。そこで、初めに300~400℃で反応させ、次に、この生成ガスを150℃まで冷却により降温させ、この触媒存在下で更に反応を進めれば、転化率を平衡転化率の0.98に近づけることが可能となる。
仮に転化率が0.98となる時、未反応水素の濃度は2.6mol%まで低減させられることになる。即ち、これにより生成メタンの危険度は大きく低減できる。
以上を纏めると、メタン化反応においてメタンへの転化率を上げる事は、生成ガス中の未反応水素ガス濃度を下げる事であり、反応収率のみならず、安全性の観点からも重要である。この事から、300~400℃で反応させた後に、更に150~300℃で反応させ平衡転化率を98%近くまで上昇させる反応装置の追加が必要となる。
以上、装置の具体的な構造に進む前に、あるべき装置の要素を整理する。その為に、メタン化反応を500℃から200℃まで、100℃毎に段階的に温度が低下する異なる複数の温度域の反応装置を連結して用いる場合を想定する。
即ち、1段目に従来の触媒を用いて400~500℃の温度域で反応を進め、次に2段目に入る前に、この反応ガスを冷却して、300℃~400℃域で反応を進める。更に3段目では、同様にこれを冷却して300~200℃域とするが、この温度では反応速度が大幅に低下するので、この温度域で活性が高いとされる非特許文献6のRu担持触媒等を用いて反応を進めるとの想定である。
このように反応の進行に伴って反応温度を下げる事、更に反応温度が低い領域では活性がより高い触媒を用いる事で、メタン化反応の速度を大幅に低下させる事なく、その転化率を高め、残存する未反応の水素ガス濃度を下げ、安全に使用可能なメタンを得る事ができる。
しかし。このプロセスでは反応装置を複数連結し、その間にガスの温度を下げるための冷却器も設ける必要があるので、プロセスとしては複雑になる。
1つのコンパクトな反応装置で、高い除熱性能を有し、しかも、反応の進行と共に反応場の温度を低下させることができる反応装置が望まれる。このような装置が実現するならば、このコンパクトな装置1基で、メタン化反応の最終転化率を高めて、未反応の水素ガス濃度を下げる事が可能となるはずである。
先に述べた3段構成の反応装置とする場合、各反応装置の間には、反応ガスの温度を下げるための冷却器が必要となり、複雑なプロセスとなるので、冷却器を必要としないコンパクトな装置が望まれる。
非特許文献9によれば流動層は伝熱性能に優れる装置である。本発明では、除熱の問題に対して、伝熱性能に優れる流動層を用いる事とし、その流動化ガスとしては、反応装置底部から供給する反応ガスを用いる事とした。
図3には無機粉体を流動媒体として用い、反応ガスを流動化ガスとして用いる1段構成の流動層であるメタン化反応装置の概念を示した。装置の構成は通常の流動層装置と同じである。即ち、流動層反応装置1の下部に分散板4があり、その上に流動媒体の粉体層2があり、分散板4を通過する反応ガス3によって、この粉体を流動化させる。触媒は、粒子あるいはハニカム状成型体として、この流動化する粉体中に配置するとの想定であるが、この図には示していない。除熱用伝熱管5は、同じくこの流動層の中に浸漬されており、冷却水あるいは熱媒オイル等6を流して流動層中の粉体を冷却する事で、流動層中で発生する反応熱を吸収して除去する。流動層の混合特性は完全混合槽であり、伝熱性能が高いので、層内の温度はほぼ均一となるので、この装置では、反応の進行と共に温度を低下させる事はできない。従って、この1段構成の流動層の場合には、反応温度を300~400℃とする場合には、先に述べた如く、得られるメタン中の残存水素が10%を超える高い濃度となる。
次に、この流動層の反応温度を200~300℃と下げる事で、転化率を高めてこの残存水素濃度を低減させる事が可能となるが、温度が低い事は反応速度も低くなる事を意味する。従って、反応率を高める為には用いる高活性の触媒を用いる、触媒量を増やす、あるいは反応装置内の反応ガスの滞留時間を長くする、即ち装置を大きくするなどの対策を講じる事になる。
以上の検討から、好ましい装置としては、反応装置出口におけるメタンへの転化率を向上させる為に、既に述べた如く、温度の異なる複数の流動層反応装置を連結して、例えば、反応ガスを初めに300~400℃の反応器に供給し、この反応器の出口ガスを次の150~300℃の反応装置に流す事で、転化率をより向上させられるものとなる。
そこで、本発明では、このような複数段の流動層反応装置を1つの反応装置として集約できる多段流動層を用いる事とした。その概念を以下に示す。
多段流動層の中に用いる流動媒体である粉体を外部に設けた粉体冷却器にて、この多段流動層の最上段の中の流動媒体の温度、もしくはそれより低い温度まで冷却して、この多段流動層反応装置の最上段へ連続的に投入して、多段流動層内部を流下させながら冷却させる過程で、粉体自身にはこの反応装置内の熱を吸収して昇温させ、この多段流動層の最下段からは熱を吸収して高温となった粉体を連続的に抜出して、上記した粉体冷却器によって冷却して、再び、この多段流動層の最上段に戻して循環させる事により、この多段流動層の中に、最下段の温度が最も高く、最上段の温度が最も低く、その間の各段の温度は下から上に順次低下する温度分布を形成させるものである。
この流動媒体を外部冷却して循環させ、内部に上記温度分布が形成される装置の概念および構成は、棚段式多段蒸留塔に類似している。この蒸留等では塔底部のリボイラーにより液を加熱して蒸発させ、塔頂部から出る蒸気は凝縮器で冷却して凝縮させ、この凝縮液の一部を塔内に還流する。この冷却された凝縮液を塔頂部に還流する事で、塔頂部の温度が低く、塔底部の温度が高い、階段状の温度分布を形成する。この冷却し凝縮させた液を還流させることは、本発明の多段流動層の外部冷却器で冷却された粉体を、装置内部を冷却させるために最上段に投入する働きと類似している。
図4は、この概念をより具体的に説明する為の2段構成の流動層の図である。反応装置上段の温度を下げるために、外部冷却器11で冷却され、反応装置上段の温度よりも低い温度となった粉体を、粉体輸送管13を通じて上段の流動層反応装置1連続的に投入する。即ち、冷却用伝熱管によって上段流動層の温度を下げるのではなく、冷却された低い温度の粉体を投入する事により、内温を下げるのである。この事より上段の流動層1の温度は、下段の流動層7の温度より低くなる。上段に投入した粉体は内部のガスの反応熱およびガスの降温顕熱を吸収して、昇温し、下段の流動層7に入る。
下段の流動層では、上段から流下する低い温度の粉体はこの領域内のガスの反応熱および顕熱を吸収して昇温する事で、流動層7の温度上昇を抑制する。
以上により、上段の流動層の温度は下段の流動層の温度より低くなり、一方、反応ガスは下段の高温側の流動層内で反応して、次に、下段より温度が低い上段に入り、温度が下げられる事で、平衡転化率が更に高くなり、しかも、低温で活性の高い触媒を用いる事で、更に反応を進め、最終的にメタンへの転化率を高め、残留水素濃度を下げる事が可能となる。
上段から連続的に粉体を投入するので、下段の流動層7の抜出部9からは、この投入モル量に相当する高温となった粉体を連続的に抜き出す必要がある。この抜き出した高温の粉体は、外部熱交換器11の中の移動層12の上部に投入して、内部で冷却された後、下部から抜き出され、再び粉体輸送管13を通じて、メタン化反応装置の上段の流動層1に投入される。反応ガス3、分散板4、除熱管5の構成は図3と同様である。
以上が多段流動層を用い、しかも、流動媒体を、外部の粉体冷却器との間で循環させることの意味と効果である。以上は本発明の概念を説明する為に単純化した2段構成の流動層であり、メタン化反応に適用する場合には、およそ600℃程度から150℃程度まで、その温度変化が大きいので、3段以上の多段流動層とするのが好ましい。
次に、このような温度分布を有する多段流動層について更に詳細な説明を進める。ここでは多段流動層の最上段の温度を140~200℃の範囲とし、最下段の温度を300~500℃の範囲とし、中間の各段では最下段から最上段の温度に順次低下する温度分布を有する多段流動層とし、その各段に触媒粒子もしくは触媒の成型体を配置し、この多段流動層の底部から流動化ガスとして反応原料である炭酸ガスと水素を供給する事により、各段の流動層内の粉体を流動化させ、更に流動層中の触媒と接触させて、メタンを合成するが、反応装置出口の最上段の140~200℃の温度域においては、反応温度が下がる事によってメタンへの平衡転化率が上がるので、従来の反応温度が300~500℃の単独のメタン化反応装置から得られるメタンよりも、未反応の残留水素濃度が低く、高濃度のメタンを得る事が可能となる。
この多段流動層において、棚段式の蒸留塔に類似して流下する粉体と上昇するガスとを直接向流接触させ、熱交換させることにより、温度が異なる複数段の流動層の間に、粉体加熱器あるいはガスの冷却装置を用いることなく、最上段の温度が最も低く、最下段の温度が最も高い多段流動層を実現させるものであり、装置が大幅に単純化される。この事は本発明の大きな特長の1つである。
また、一般に触媒を充填した発熱反応を行わせる充填層反応装置内では、ホットスポットが発生する可能性があるが、流動層では伝熱性能が高いため、均一な温度分布となるので、このホットスポット発生による触媒寿命短命化の懸念はなくなり、従って、従来の充填層方式の反応装置に比べて、触媒寿命の延命化も期待される。
次に、この多段流動層の流動媒体として用いる粉体は、安価で、且つ安定であり、しかも毒性および環境への負荷が無い安全な無機化合物が望ましく、即ち、砂、シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアなどがその候補となる。
ここで、この多段流動層の各段の熱負荷について、3段構成の多段流動層を例として説明する。
本発明の装置の概念の説明として、200~500℃まで、100℃ずつ温度が変化する3段の多段反応装置を想定する。反応ガスは最下段の反応装置底部から500℃で入り、400℃で次の上の段に入る。
図2の中に示した3本の縦の棒グラフは、この多段流動層内の400~500℃の温度域における平衡転化率、この転化率まで反応する相対的な反応量を示している。次にこのガスが300~400℃の温度域の流動層に入り、更に反応を進める時の転化率増加は相対的な反応量の増加分を示している。更に同様に200~300℃における反応量の増加を示したものである。400~500℃における反応量は転化率ゼロからの反応であり、即ち、この反応装置の底部側では発熱量が相対的に大きくなることが分かる。以降、図2中の平衡転化率の数値を読み取って、各段の発熱量を概算する。
図2の破線から450℃における平衡転化率は80%である。実際の到達反応率をこの平衡転化率の80%とすると、この段内の反応量は全反応の64%となり、即ち、この温度域では、メタン化反応の発熱量の64%が発生する事を示している。
これに対して、次の段の350℃における平衡転化率は図2より92%であり、同じく到達率を80%とするとメタンへの転化率は74%となる。450℃の64%から、この350℃の74%まで、反応が更に10%進行することになる。即ち、最下段の除熱必要量は、転化率ゼロからの反応であり、反応量が大きく、2段目のそれに対して6.4倍程大きい。従って、最下段の流動層内の除熱に関しては、大量の除熱が必要であり、伝熱管を多数設置するなど、伝熱面積を大きくし、除熱能力を強化する工夫を施す必要がある。
この問題に対して、本発明では、流動媒体として既に述べた無機粉体を用いるが、更にこの粉体中に300~600℃の範囲で吸熱して分解する物質の粉体を混入して用いる事で、この多段流動層反応装置の300℃以上の温度域において発生するメタン化反応の発熱量の一部もしくは全部を、これらの化合物の分解反応によって吸収させる事を考案した。
この300~600℃の範囲で吸熱して分解し、しかも、分解後に再生する事が可能な物質として、非特許文献10に示された化学蓄熱剤である300℃以上で反応式2によって吸熱して脱水する水酸化マグネシウム粉体、および反応式3によって400℃以上で吸熱して脱炭酸する炭酸マグネシウム粉体がある。これらを用いる事で、この多段流動層反応装置の300℃以上の温度域において発生するメタン化反応の発熱量の一部もしくは全部を、これらの化学蓄熱剤の吸熱反応によって吸収させ、この温度域における除熱能力を高める事とした。
即ち、この多段流動層の反応ガス入り口となる最下段では、発熱量が大きく、その除熱能力の強化が必要であるが、この温度域で吸熱反応が進行する吸熱剤を最上段から最下段へ流下する流動媒体に混入して用いる事で、この温度域における除熱負荷を大幅に軽減させるものである。
これらの化学蓄熱剤の吸熱反応、即ち、水酸化マグネシウムの脱水反応では酸化マグネシウムが生成する、また、炭酸マグネシウムの脱炭酸化反応でも、酸化マグネシウムが生成する。
この酸化マグネシウムは、反応式4に示した如く、水と水和反応させて再び水酸化マグネシウムとして再生する事が可能であり、更に、この水酸化マグネシウムは反応式5に示した如く、炭酸ガスと反応させる事で、再び炭酸マグネシウムとして再生させる事ができる。即ち、この酸化マグネシウムを、水酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムとして再生させ、繰返して循環利用する事が可能である。
尚、これら二つの再生処理反応はいずれも発熱反応であることから、メタン化反応装置内で吸収した反応熱をこの再生処理時に回収して利用する事を意味する。
ここで、この炭酸化反応を、工場の煙道ガス中の炭酸ガスを吸収させて行う場合には、この炭酸ガスを炭酸化マグネシウムとして固定化する事を意味し、更に、この炭酸マグネシウムをメタン化反応の原料ガスの炭酸ガスの供給源として用いる場合には、排ガス中の炭酸ガスからメタンを製造する事を意味し、これはCCUS技術である。
また、この時、用いる水素として、「グリーン水素」を用いる場合には、再生可能エネルギーと温暖化ガスから、我々が利用しやすい燃料であるメタンを合成する事、あるいは、グリーン水素を、温暖化ガスを用いて利用しやすいメタンに変換する事を意味している。
次にもう一つの特徴として、このメタン化反応に用いる装置が多段流動層である事から、各温度域に用いる触媒はそれぞれの温度域において最適な触媒を選定して用いる事が可能となる。
通常300~500℃で用いられる触媒の他に、低温で活性が高いとされる触媒が開発されているが、低温域の流動層には、この150~200℃の低温域においても活性が高いとされる低温用触媒を、高温域の流動層には従来のNi触媒等のメタン化反応用触媒を用い、その中間温度域においては、これらのいずれかを選択、もしくはこれらの触媒を混合して用いる事が可能である。
即ち、反応が進行すると共に温度が低下する多段流動層を用いる反応装置において、各温度域にそれぞれ最適な触媒を選択して用いる事により、反応温度が低くなり反応速度が低下する反応装置の出口側でも、反応速度を下げることなく、高い濃度のメタンを合成する事が可能となる。
この場合、これらの触媒が流動媒体と共に流動化して下の段へ移動する事がない様に、触媒粒子径を大きくする、もしくは触媒をハニカム状に成型するなどにより、それぞれの段の流動層に留まり、次の段へ移動する事が無いようにする必要がある。
次に、流動媒体に混入する化学蓄熱剤は粉体であるので、その反応速度を高めるには、比表面積が高い微粉を用いるのが好ましいが、この場合、一般に微粉の流動化は困難とされているので、微粉の流動化を可能とする手段を備える必要がある。
以上は、本発明の概念的説明であったが、以降、本発明の骨子である反応熱の除熱を化学蓄熱剤の吸熱反応によって吸収させ除熱するという構想の実現可能性を熱計算によって検証する。
表1は標準状態における各反応の発熱量および吸熱量を示している。また、各反応の反応進行開始温度を右端の列に示している。
初めに、この表の一番下の行には4[kmol]の水素を、そのまま燃焼させた時の熱量を示しており、その値は968[MJ/kmol]である。その上の行には、メタンを燃焼させた時の熱量を示しているが、803[MJ/kmol]である。両者の差は165[MJ/kmol]であり、水素直接燃焼熱の17%に相当する。
次に、その上の行には、この4[kmol]の水素を1[kmol]の炭酸ガスと反応させ1[kmol]のメタンとする時の熱量を示しており、165[MJ/kmol]であり、この値は水素を直接燃焼させる際の発熱量と、メタンを燃焼させる時の熱量の差に等しい。つまり、この差は4[kmol]の水素が保有しているエネルギーをメタンに変換する際に、反応熱として外部に放出する事を意味している。
この計算からは、エネルギーの量的観点からは水素をメタンにして利用するよりも、直接燃焼させた方が有利であることを示している。しかし、水素ガスは高圧で貯蔵する必要があり、また漏洩すると水素爆発の危険が高い物質であり、安全に用いるには厳重な安全装置を備える必要がある。
一方、メタンは家庭用ガスコンロ等で使われている燃料であるので、メタンに変換して用いる方が、既存のインフラストラクチァーを使って安全に使用できるので好ましい。しかし、メタンに変換する事で、そのエネルギー量は17%減るので、この17%の熱量を可能な限り回収して有効利用する方法が望まれる。
本発明では、300℃以上で吸熱する水酸化マグネシウムの脱水反応および炭酸マグネシウムの脱炭酸反応を利用する事で、このロスとなる17%の熱量を吸収し畜熱できる。この蓄熱した熱を、他のプロセスで有効に活用するならば、この17%のエネルギーはロスとならない。
始めに水酸化マグネシウムの脱水反応は約300℃以上で進行し、その吸熱量は81[MJ/kmol]であり、次に炭酸マグネシウムの脱炭酸反応の吸熱量は118[MJ/kmol]であり、その和は199[MJ/kmol]である。即ち、メタン化反応の発熱量165[MJ/kmol]に比べて大きいので、これら二つの反応量を調整する事によってメタン化反応の反応熱の全てを吸収して蓄熱できることが分かる。
以上の検討は標準状態におけるエンタルピーを用いて行っているが、実際には各反応温度におけるエンタルピー値を用いて計算すべきである。以下、各反応温度における反応と熱計算を進める。
Figure 2022063237000010
表2には300~400℃と400~500℃の二つの温度域におけるメタン化反応の反応量と発熱量、これに相当する吸熱反応の吸熱量を示している。以下、この二つの温度域で、メタン化反応による発熱量温全てをこれらの二つの吸熱反応で相殺できることを示す。
先ず、400~500℃の温度域の反応熱計算時の温度を中間値の450℃として熱計算する。450℃におけるメタン化反応の反応熱は25℃の標準状態より高く183[MJ/kmol]である。次に、450℃の平衡転化率は図2より、0.72であるので、この平衡転化率まで反応すると想定すると、その発熱量は132[MJ/kmol]となる。一方、450℃における1[kmol]の炭酸マグネシウムの脱炭酸反応熱は114[MJ/kmol]である。従って、1kmolのメタン化反応熱の内18[MJ/kmol]だけ過剰で吸収しきれない。
次に、300~400℃の温度域における熱計算を行う温度を、その中間値の350℃とする時、その平衡転化率は図2より0.90であるので、反応は転化率0.72から0.90まで進行する想定すると、転化率の増加分は0.18であり、この時の反応量は0.18[kmol]であり、また、350℃におけるメタン化反応の発熱量は180MJ/kmol]であるので、その発熱量は32[MJ/kmol]となる。これと400~500℃域における余剰熱18[MJ/kmol]と合せると50[MJ/kmol]除熱する必要がある。一方、350℃における1[kmol]の水酸化マグネシウムの脱水反応熱は76[MJ/kmol]であるので、この50[MJ/kmol]の熱量は0.66[kmol]の水酸化マグネシウムの脱水反応にて、吸収させることで、300℃以上におけるメタン化反応熱の全てを吸収し、発熱と相殺させ、即ち、除熱用伝熱管を用いる事なく温度上昇を防ぐことができる。
Figure 2022063237000011
上記は、18[MJ/kmol]の熱量を300~400℃温度域に持ち込む想定であるが、あるいは1.16[kmol]の炭酸マグネシウムの脱炭酸反応にて132[MJ]の全てを吸収し、次に、0.42[kmol]の水酸化マグネシウムの脱水反応により、32[MJ]の熱量を吸収する事で、1[kmol]のメタン生成反応による発熱量を全て吸収する事も可能であり、この場合には400~500℃域の熱量を300~400℃域に持ち込むことなく反応熱の全てを吸収する事になる。
この事はこれらの化学蓄熱剤をメタン化反応装置内で用いる事で、反応による発熱量が大きい300~500℃の高温部の除熱を伝熱管による除熱法を用いることなく吸収し、しかも酸化マグネシウムとして蓄熱できる事を意味している。
これら二つの吸熱反応により前者では1.66[kmol]、後者の例では1.58[kmol]の酸化マグネシウムが生成するが、この酸化マグネシウムは、既に述べた如く化学蓄熱剤であり、水和反応させる事で水酸化マグネシウムとして再生でき、更にこの水酸化マグネシウムを炭酸ガスと反応させる事で炭酸マグネシウムとして再生し利用できる。また、これらの再生反応は、共に発熱反応であるので、メタン化反応装置内で吸収した熱を、この再生時に回収して利用する事が可能である。
即ち、水素をメタンとして利用する事で、水素の持つエネルギーの17%が減り、83%まで低下する事となるが、このロスとなる熱量を蓄熱剤に吸収させて、再生時に利用する事で、この17%のエネルギーロスの一部もしくは全部をロスではなく有効利用できる事になる。
以上、本発明のメタン化反応装置の特長は、以下の通りである。
1.反応装置を従来の充填層ではなく、伝熱性能が高い流動層を用い、流動化ガスには反応ガスを用い、流動媒体には無機粉体を用いる。
2.外部冷却器で冷却した流動媒体を、多段流動層装置の塔頂部から投入して、装置内を流下させ、一方、内部の熱を吸収して高温となった流動媒体は、その底部から抜き出して、外部冷却器と多段流動層装置の両装置間を循環させる事で、塔内温度を下から上に順次下げる温度分布を有する多段流動層とすることで、装置内を上昇する反応ガスの温度を反応進行と共に順次下げ、反応装置出口におけるメタンへの転化率を上げる事を可能とする。
3.反応熱量が大きい300℃以上の温度域においては、化学蓄熱剤であり、300℃以上で脱水する水酸化マグネシウム、400℃以上で脱炭酸する炭酸マグネシウムを吸熱材として、流動媒体である無機粉体に混合して用いる事で、この温度域の除熱能力を大幅に強化できる。
4.これらの脱水、脱炭酸によって得られる酸化マグネシウムは、化学蓄熱剤であり、水和反応に次いで炭酸化反応を行わせる再生時にメタン化反応で吸収した熱を、発熱させ回収して利用できるので水素の持つエネルギーをメタンに変換する際に発生するエネルギーロスを最少化する事が可能となる。
ここで、表2の概算では、粉体は多段流動層内を流下する際に上昇するガスから反応熱を貰い受け、一方、ガスはこの多段流動層内を上昇する際に粉体との接触により反応熱を与えるが、これら粉体側の昇温顕熱とガス側の降温顕熱の熱交換を考慮していない。本発明の健全さを検証するには、反応熱の授受に加えて、これら粉体の昇温顕熱とガスの降温顕熱を加味した計算を行って検証する必要がある。
当然、この顕熱を含む計算には、反応に関与する成分のみならず、反応に関与しない吸熱剤の顕熱と反応に関与しないガス成分の顕熱も加味しなければならない。そこで、以下のA~Cの3ケースについて、各温度域における各成分の組成変化、その時の反応量と反応熱、流下する粉体の温度変化と昇温顕熱、上昇する反応ガスの温度変化と降温顕熱等を考慮する時に、目論見通りの発熱と吸熱のバランスが取り得るか、各成分の組成変化と各成分間の熱の授受を計算する事で検証した。
A.炭酸ガスをボンベ等から供給する場合、
B.炭酸ガスの供給源として煙道ガスを直接用いる場合、
C.炭酸ガスの供給源として炭酸マグネシウム粉体用いる場合
以下、これらの3つのケースの計算結果を示す。尚、この熱計算では、ガス側と化学蓄熱剤の反応速度の違いは考慮しておらず、また、装置からの放熱等の熱損失も考慮していない。
以下、熱計算結果を説明するが、表3~6では、右側は発熱サイドとなるガス側(炭酸ガス、水素、メタン、水蒸気)の組成変化と発熱量の値を示し、左側は、吸熱サイドとなる無機粉体(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムそして炭酸マグネシウム)の組成変化と、吸熱量の値を示している。この計算では、反応に関与しない粉体として、酸化マグネシウムを用いているが、この吸熱材は、先に述べた如く、砂、シリカ等でも良い。
表3は、もっとも単純である炭酸ガスをボンベあるいはタンク等から供給するケースについて、その組成変化を示している。
ここでは、300℃以上の温度域におけるメタン化反応の発熱を水酸化マグネシウムの脱水反応熱によって吸収させる事としている。即ち、炭酸マグネシウムは用いない。この計算では、反応装置は上段(140~300℃)と下段(300~400℃)の2段構成とし、表3の中の小さな表の中に各反応段内の反応後のガスと粉体の組成を示している。
この熱計算においては、反応熱と顕熱をそれぞれ別に計算する為に、反応装置下段は300~400℃の温度域であるが、反応熱の計算においては、その中央値の350℃のエンタルピー変化の値を用いており、この領域における昇温あるいは降温時の温度変化は100℃として、その300℃と400℃の各組成とエンタルピーの値より顕熱を求めている。
反応装置上段については140~300℃の温度域であるが、同様に反応熱を計算する際の代表温度は、ここでは200℃とし、この領域における昇温あるいは降温の温度変化は140~300℃であるので160℃としている。
メタン化反応に必要な、1[kmol]の炭酸ガスと4[kmol]の水素ガスは、表3中の右下にある反応装置の底部から反応装置内へ供給される。これら反応ガスを常温(25℃)で供給すると反応装置内温度が低下するので、供給前に、この反応装置から排出される400℃の高温粉体と熱交換する事で400℃まで予熱して、反応装置内に供給されるとしている。
以下は、この条件における計算結果である。粉体側について、吸熱材となる2.08[kmol]の水酸化マグネシウム粉体に、4.01[kmol]の酸化マグネシウム粉体を加えた140℃の混合粉体が反応装置上部から投入され、反応完了後の粉体は装置の底部から抜き出され、上記した如く、原料ガスを予熱後、再生プロセスに送られる。
反応装置上部から投入される粉体は、140~300℃の温度域では、脱水等の反応は起こらず、即ち、組成の変化は起こらず、ガスから昇温顕熱を吸収して昇温するのみである。
次に300~400℃の温度域では、ここで、投入される2.08[kmol]の水酸化マグネシウムの80%が脱水し、残る20%の0.416[kmol]の水酸化マグネシウムは反応しないと想定している。(これはあくまで試算上の想定であり、実験によって確認できた実際の脱水率を用いるのが望ましい。)従って、この0.416[kmol]の水酸化マグネシウムは投入された4.01[kmol]と脱水反応によって生成した1.66[kmol]を合せた5.674[kmol]の酸化マグネシウムと共に反応装置外へ排出される。この脱水反応で発生する水蒸気量は1.66[kmol]であり、この水蒸気は反応ガスと共に上昇する。
次にガス側について説明する。反応ガスは炭酸ガス1.0[kmol]と水素ガス4.0[kmol]が反応装置下段の300~400℃の温度域に400℃で入り、上段から流下する粉体と熱交換して300℃となって上段へ入る。この時、メタン化反応の平衡転化率は図2より0.89であるが、実際の流動層の滞留時間内では、反応の転化率は、平衡転化率まで達しないとして、この試算ではこの平衡転化率の85%まで反応すると想定した。その結果、反応後のガスの組成は、表3の右側の発熱サイド下段のメタン=0.77[kmol]、炭酸ガス=0.23[kmol]、水素O=1.54[kmol]、 水素=0.92[kmol]となる。
次に140~300℃の温度域では、メタンへの転化率は0.85から0.98まで上昇すると想定した。従って、反応装置出口のガス組成はメタン=0.98[kmol]、炭酸ガス=0.02[kmol]、水素O=3.62[kmol]、水素=0.08[kmol]となる。
この反応装置内で反応しない酸化マグネシウム粉体は、反応装置内を流下する際に反応ガスから昇温顕熱を吸収する吸熱剤として機能する。
ここで、この反応装置の塔頂部から供給される粉体の温度は再生処理後の粉体温度を想定して140℃としているが、これより低い場合、或いは高い場合には、投入する酸化マグネシウムの粉体量を減じる、あるいは増加させる事で調整すれば良い。
Figure 2022063237000012
次に表3の組成変化に基づいた各成分の温度変化とエンタルピー変化から求めた熱量の授受の試算結果を表4に示した。表4中の[ ]内の数値は熱量[MJ]を示す。以下、この反応装置内の熱の授受を反応装置下段から説明する。
水素ガスは、この反応装置底部から排出される400℃の6.09[kmol]の酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの混合粉体は直接、移動層などの向流接触方式にて、熱交換させることで、60[MJ]の熱を貰い受け、400℃まで予熱されて反応装置底部に供給される。一方、混合粉体は、この熱交換により、400℃から288℃まで降温した後、再生処理プロセスへ送られる。(実際には、加熱側の粉体と被加熱側のガスとの間に少なくとも数℃の温度差が必要であるが、概算であるので、ここではこの温度差をゼロとしている。)
反応装置下段に入った400℃の反応ガスは、メタンへの転化率77%まで反応して、発熱し144[MJ]熱を放出するが、この熱は反応装置上段から流下してくる約300℃の混合粉体に与えられ、更に自身の19[MJ]の降温顕熱を粉体に与える(粉体に吸熱される)事で、反応ガス自身の温度を300℃まで低下させながら、反応装置内を上昇し、反応装置上段底部の300℃領域に入る。
一方、反応装置上段から下段へ入ってくる300℃の混合粉体は、反応装置下段で、反応ガスが降温する際の顕熱37[MJ]とメタン化反応の反応熱を反応ガスとの熱交換によって吸収する。即ち、この時1.66[kmol]の水酸化マグネシウムが127[MJ]の熱を吸収して、脱水反応により酸化マグネシウムとなり、更に400℃まで昇温する。
以上を纏めると、反応装置の下段内では、反応ガスが粉体に与える熱量は表中右側に示されている如く、
[ガスが粉体に与える熱量]=発熱反応熱+ガスの降温顕熱=144+19=163[MJ]
であり、粉体がガスから受け取る熱量は、表4中左側に示されている如く、
[粉体がガスから受け取る熱量]=吸熱反応熱+ガスの昇温熱量=127+37=164[MJ]
であり、両者はほぼ等しくなり、(発熱量+降温顕熱)と(吸熱量+昇温顕熱)は互いに相殺する事で、この反応条件における反応装置下段内では、除熱用伝熱管を用いることなく、温度変化は起こさず、温度を一定に保つことができる事を示している。
Figure 2022063237000013
次に反応装置上段内の熱の授受について同様に説明する。
ここでも、装置内を流下する無機粉体と上昇する反応ガスは向流接触により熱を授受する。
反応装置下段から上段に入った300℃の反応ガスは、更に炭酸ガスは98%まで反応して31[MJ]の熱量を放出し、更に、流下してくる酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムの無機粉体に31[MJ]の熱を与えながら反応装置内を上昇し、140℃まで降温する。
一方、反応装置上部から投入される140℃の混合粉体はこの31[MJ]の反応熱と、反応ガスが300℃から140℃まで降温する際の31[MJ]の顕熱を合せて62[MJ]の熱量を受け取り、300℃まで昇温する。 即ち、
[ガスが粉体に与える熱量]=発熱反応熱+ガスの降温顕熱=31+31=62[MJ]
[粉体がガスから受け取る熱量]=ガスの昇温熱量=62[MJ]
と両社は等しくなり、ここでも、発熱量は吸熱量によって相殺され、この反応装置上段内では、温度変化は起きず、一定温度を保つことができる事を示している。
以上の計算では、流動層内部に挿入している除熱用伝熱管による除熱は含んでいない。
実際には化学蓄熱材による除熱のみに頼らず、プロセスの各種外乱に対して対応力を増やす為に除熱用伝熱管に依る除熱と併用して内部温度を調整するk事も可能である。尚、除熱量伝熱管を併用する場合には、この伝熱管による除熱量に相当する無機粉体の投入量を減らして調整すれば良い。
さて、表3および表4では、熱計算を単純化する為に反応装置内を上段と下段の2段構成として説明したが、これは、必ずしも2段構成に限定するものではなく、更に多い段構成でも良い。
次に、表5は炭酸ガスの供給源として煙道ガスを直接、反応装置内に供給させると想定した時の表3と表4と同様に組成変化および熱の授受の関係を示すものであるが、組成変化と熱の授受を1枚の表にまとめて示している。即ち、この表の各段の中の実線で示した小さな表中の数値は、各反応場における成分の組成を示しており、破線で示した小さな表中の数値は、表4と同様に反応熱と顕熱の熱量を示している。
Figure 2022063237000014
ここで、用いる煙道排ガスの温度は140℃としている。その組成は、表5の最下部に示しているが、炭酸ガス=1[kmol]、水蒸気=2.5[kmol]、窒素=5.0[kmol]、そして残留酸素=0.25[kmol]と想定した。
メタン化反応装置内に煙道ガス中の残留酸素を持ち込むことを避けるために、この残留酸素と化学量論的に等量の水素を用いて、予め燃焼させることで、水蒸気としている。この酸水素燃焼後のガス組成は、炭酸ガス=1[kmol]、水蒸気=3.0[kmol]、窒素=5.0[kmol]となる。
この時の、酸水素燃焼による燃焼熱は123[MJ]であり、この熱の内、74[MJ]の熱量は140℃の煙道ガスを400℃まで昇温する為に消費される。
また、メタン化反応に供する4[kmol]の水素は、この燃焼熱から44[MJ]の熱量を受け取り、同じく400℃まで昇温する。これらを差し引いて、残る余剰熱は5[MJ]となるが、この熱量は反応装置底部から煙道ガスと水素ガスによって反応装置下段に持ち込まれることになる。実際にはこの5[MJ]の熱量によって供給ガスの温度は400℃より数℃上がることを意味する。
ガス側について反応装置下段では、反応ガスは、反応してメタン=0.8[kmol]、炭酸ガス=0.2[kmol]、水蒸気=4.60[kmol]、水素=0.8[kmol]、窒素=5.0[kmol]となり、一方、粉体は、2.34[kmol]の水酸化マグネシウムの80%が脱水反応して、1.87[kmol]の水蒸気を放出し、酸化マグネシウムは8.38[kmol]と1.87[kmol]を加えて、10.25[kmol]となる。また、未反応の水酸化マグネシウムは0.468[kmol]である。
反応装置下段における熱の授受は、上記組成変化を基に、反応ガスの反応熱144[MJ]と、ガスの降温熱52[MJ]、そして反応ガスが持ち込む5[MJ]の熱量を加えて、即ち、総熱量は144+52+5=201[MJ]であり、この熱量が反応装置上段から流下してくる粉体に与えられる。
ここでは1.87[kmol]の水酸化マグネシウムが脱水する時の吸熱量は143[MJ]であり、混合粉体が300~400℃まで昇温するに必要な熱量が58[MJ]であり、その和は、143+58=201[MJ]であり、ここでも発熱量は吸熱量によって相殺される。以上を纏めると、反応装置下段においては、
[ガスが粉体に与える熱量]=(ガスの反応熱+ガスの降温顕熱+酸水素燃焼余剰熱)=144+52+5=201[MJ]、
[粉体がガスから受け取る熱量]=(混合粉体の昇温顕熱)=143+58=201[MJ]
となり、同じく発熱量は吸熱量によって相殺される。
反応装置上段についても同様に、それぞれの組成変化は、表中に示されており、個の組成変化に基づく熱の授受は、
[ガスが粉体に与える熱量]=(ガスの反応熱+ガスの降温顕熱)=31+67=98[MJ]、
[粉体がガスから受け取る熱量]=(混合粉体の昇温顕熱)=98[MJ]
となり、同じく発熱量は吸熱量によって相殺される。
以上、メタン化反応の原料である炭酸ガスの供給源として、煙道ガス中の残留酸素を予め除去した炭酸ガスを含む煙道ガスを水素ガスと共にメタン化反応の原料ガスとして用いてメタンを合成する事が熱計算上は可能であることを示している。
ここで、煙道ガスをアミン法にて炭酸ガスを吸収させる場合には直接供給する際には、アミン吸収液が、煙道ガス中の微量のSOx成分により、劣化する事があるが、本発明では、アミン系吸収液は用いないのでこの懸念は無いが、メタン化反応に用いる触媒が、煙道ガス中の微量のSOx成分により被毒する事が懸念に対しては、触媒よりも圧倒的に大量の脱硫剤でもある水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムがあるので、SOxはMgSO4となり、無害化されると考えられる。
最後のケースであるが、表6は、炭酸ガスの供給源として、炭酸マグネシウムの脱炭酸反応によって放出される炭酸ガスを用いる場合を想定して、同様に各段で発熱量と吸熱量が互いに相殺できる反応条件である事を、各無機粉体成分の組成変化と熱計算によって示したものである。
ここで、水酸化マグネシウムを水和して得られる炭酸マグネシウムは、実際には塩基性炭酸マグネシウムであるが、熱計算上はその化学組成は、水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムとの混合物とみなせるので、この試算においては、これらの混合物として取り扱っている。
表3~5との主な相違点は、この熱計算では反応装置内は上、中、下段の3段構成であり、この最下段の温度は、脱炭酸反応が進行する400~500℃の温度としている点である。
この場合、この400℃以上の高温を得るにはメタン化反応の熱量のみでは不足するので、ここではその不足する熱量は水素を空気で酸水素燃焼させ、その燃焼熱を利用して補い、500℃まで昇温させると想定している。即ち、25℃の空気(0.14[kmol]のO2、0.56[kmol]のN2)と0.28[kmol]の水素とを酸水素燃焼させ、その時の燃焼熱で500℃の高温を得る。勿論、原料ガス水素の温度を、他の予熱手段で、昇温する事ができる場合には、この酸水素燃焼は不要となる。
Figure 2022063237000015
この酸水素燃焼時の発熱量は69[MJ]、25℃の空気を500℃まで昇温させるに必要な熱量が13[MJ]、メタン化反応用の4[kmol]の水素を昇温させるに必要な熱量が56[MJ]であり、この燃焼熱により500℃となったガスが、反応装置底部の500℃領域に持ち込む際の余剰熱は55[MJ]である。ここでも、実際にはこの余剰熱によって、供給ガスの温度は500℃以上に上がる事を意味しているが、この酸水素燃焼を反応装置最下段内で行わせる事で、水素燃焼による発熱と同時に脱炭酸反応を行わせるので、過度な温度上昇を防ぐことができる。
次に、この400~500℃領域では、メタン化反応の平衡転化率は約70%であり、ここで実際のメタンへの反応率をその70%、即ち49%と想定すると発熱量は91[MJ]である。この時のガス組成は、表中に示した通りである。
更に、この反応ガスが500℃から400℃まで降温する際の熱量(降温顕熱)は19[MJ]であるので、反応装置下段内で、
[ガスが粉体へ与える熱量]=ガスが持込む熱量+反応熱+降温顕熱=55+91+19=165[MJ]となる。
一方、吸熱材となる混合粉体のそれぞれの投入量は、酸化マグネシウム=4.74[kmol]、水酸化マグネシウム=0.45[kmol]、炭酸マグネシウム=1.0[kmol]である。
この下段では、温度が中段の温度より高いので水酸化マグネシウムは全て脱水して酸化マグネシウムに変化するとしており、それぞれの量は、酸化マグネシウム=5.19、炭酸マグネシウム=1.0[kmol]である。この混合粉体が400~500℃まで昇温するに必要な熱量は51[MJ]であり、また、1[kmol]の炭酸マグネシウムが、全て脱炭酸するに必要な熱量は114[MJ]であり、
[粉体がガスから受け取る熱量]=吸熱反応熱+降温顕熱=114+51=165[MJ]
であり、ここでも、発熱量は吸熱量によって相殺される。(ここでも、勿論、炭酸マグネシウムの反応率を50%あるいは80%としても良い。例えば、この反応率を50%とする場合には、投入する炭酸マグネシウムの量を2倍とし、反応しない炭酸マグネシウムの顕熱量に、相当する酸化マグネシウムの量を減らして吸熱量を調整すれば良い)
尚、この400~500℃領域で、脱炭酸によって放出された炭酸ガスは、メタン化反応の原料ガスとなるので、水素と反応しながら、他のガスと共に反応装置内を上昇する。
次に、反応装置中段では、ガス側、粉体側の組成は、表中の数値のとおりであり、これを基に熱の授受については、
ガス側は、メタン化反応熱=54[MJ]、ガスの降温顕熱=17[MJ]であり、その和は71[MJ]である。
[ガスが粉体に与える熱量]=発熱反応熱+ガスの降温顕熱=54+17=71[MJ]
粉体側は、0.45[kmol]の水酸化マグネシウムの脱水反応熱=34[MJ]、粉体の昇温熱=37[MJ]であり、その和は、71[MJ]である。
[粉体がガスから受け取る熱量]=吸熱反応熱+粉体の昇温顕熱=34+37=71[MJ]
発熱量は吸熱量によって相殺される。ここでは、0.45[kmol]の水蒸気が放出され、反応ガスと共に、反応装置内を上昇する。
最後に、反応装置上段においても同様に、
メタン化反応熱31[MJ]、ガスの降温顕熱=27[MJ]であり、その和は、
[ガスが粉体に与える熱量]=発熱反応熱量+降温顕熱熱量=31+27=58[MJ]
であり、この値は、140℃の粉体が300℃まで昇温するに必要な熱量58[MJ]に等しい。
[粉体がガスから受け取る熱量]=粉体の昇温顕熱=58[MJ]
よって、この場合にも、反応装置内の各段内で発熱量は吸熱量によって相殺され、反応装置内の温度を安定させることができることを示している。
表6に示したケースでは、炭酸マグネシウム粉体をメタン化反応装置の流動媒体である無機粉体に混入して用いるが、この炭酸マグネシウムは、酸化マグネシウムを煙道ガス中の炭酸ガスと反応させる事により得られた炭酸マグネシウムを用いることで、煙道ガス中の炭酸ガスを、一旦、炭酸マグネシウムとして固定化した後に、これをメタン化反応装置内で脱炭酸させて得られる炭酸ガスを原料として用いてメタンを製造する事を意味している。即ち、CCUS技術である。
以上、表3~6にて、原料ガスである炭酸ガスの供給源が異なる3つのケースで、除熱用伝熱管による除熱を用いることなく、メタン化反応装置内の発熱量は化学吸熱材の組成と投入量を調整することで、完全に相殺する事ができる、即ち、除熱用伝熱管を用いることなく、多段流動層内の各段の流動層内の温度を一定に制御し得ることを示した。
勿論この3種以外のケースも想定し得るが、いずれの場合においても吸熱量の調整は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムの粉体のそれぞれの量と割合を調整する事で、除熱用伝熱管による除熱を用いることなく、この反応装置内の各温度域における温度を一定に保つことができる。
さて、以上の試算では粉体の反応速度とメタン化反応の速度および、それぞれの滞留時間(=反応時間)を考慮していないので、以下、これらを考慮して、各流動層の中で吸熱量と発熱量を一致させるにはどのように対処すべきかを示す。
一般にガスの反応速度は、代表的な例としてガスの燃焼速度は速い、逆に粉体の反応速度は固体の反応であるので、比表面積に依存するが、粒子が例えば木炭の様に塊状であれば、ガスの反応速度に比べてかなり遅い。実際、非特許文献7によれば、水酸化マグネシウム結晶粉体の脱水反応速度は、350℃付近では脱水率およそ90%まで約50分(=3000秒)であり、ガスの反応速度に比べてかなり遅い。
一方、流動層中の粉体とガスの滞留時間に関して、粉体とガスが熱量的に等量の反応を行う際の粉体の比容積に対して、ガスの比容積は大きいので、ガスの流速は粉体の流速に比べて非常に早くなり、即ち、粉体の滞留時間に比べてガスの滞留時間は非常に短くなる。
以上、粉体について、反応速度は遅いが、滞留時間は長い、一方、ガスについては、反応速度は速いが、滞留時間は短い。各段における吸熱量と発熱量は、粉体とガスのそれぞれの反応量に比例する、また、反応量は反応速度と滞留時間の積に比例するので、吸熱量と発熱量の対比は、これらの積(=反応量)の値を用いて議論しなければならない。
以下に、流動層内の粉体とガスの反応量を概算ではあるが、滞留時間の値を考慮して検討を進める。
数式4は多段流動層内の一つの流動層について、その流動層体積VFB、流動層断面積S、そして流動層高HFBの関係である。この流動層中に除熱用伝熱管のチューブと触媒があるので、それぞれの占有体積をVtube、 Vcatとすると、実際の流動媒体である粉体と流動化ガスが占有する体積Vfpgは、数式5となる。ここで、このVfpg中の空間率をεとする時、このVfpg中の粉体の占有体積Vfpは数式6の左側、流動化ガスの占有体積Vfgは数式6の右側で表される。
ここで流動層中の粉体が占有している体積であるVfpには、粉体が連続的にモル流量Qpで流入し、平均滞留時間τp滞留した後、同じくQpで出て行く。ここで、この流動層に流入する粉体には、反応に関与する物質と反応に関与しない物質がそれぞれモル流量にしてQrpとQip含まれているので、粉体のモル流量Qpは両者の和(数式7の左側)となり、一方、ガス側も同様に、反応するガスと、反応に関与しない成分が含まれており、それぞれのモル流量をQrgとQigとすると、流動層に流入するとガスのモル流量Qgはそれぞれの和となり、数式7の右側で表される。
ここで、反応に関与する粉体Qrpとしては、化学蓄熱剤としてマグネシウム系の化合物を用いる場合には、水酸化マグネシウムあるいは炭酸マグネシウムであり、反応に関与しない物質としてのQipはここでは、酸化マグネシウムと吸熱反応により生成した酸化マグネシウムである。
また反応に関与するガスQrgは、炭酸ガスと水素であり、反応に関与しないガスQigとは、投入ガス中に窒素が含まれる場合には窒素であり、また、反応生成物のメタンや水蒸気である。
数式8について、左側は粉体の反応式であり、右側はメタン化反応の反応式である。各反応式の下に各成分の量論係数を示している。ここでは脱水反応について示しているので、1[kmol]の脱水反応により発生する1[kmol]の水蒸気は、ガス側の反応後のモル流量に加算すべきであり、この水蒸気のモル流量を数式8ではカッコ内の(1)として示している。脱炭酸反応の場合には、発生する炭酸ガスはメタン化原料ガスとして消費されるので、この( )内の数字はゼロである。
Figure 2022063237000016
Figure 2022063237000017
Figure 2022063237000018
Figure 2022063237000019
Figure 2022063237000020
粉体とガスが、この流動層を通過するそれぞれの体積流量UpとUgは、このモル基準流量にそれぞれの比容積vp、vgを掛けて求められる。ここで、反応前後でモル比容積が変化する場合には反応前後の平均値を用いる事とし、それぞれの平均値をvp(av)、vg(av)としている。従って、粉体の体積流量はUp(av)は数式9の左側、とガスの体積流量Ug(av)は数式9の右側となる。これらを用いて、この流動層内を通過する時間、即ち滞留時間τpとτgは、流動層内の占有体積を体積流量で割って数式10となり、これらに数式6と9を代入して、数式11と数式12が得られる。以上で、粉体とガスの流動層内滞留時間の関係式が求められた。
ここで、粉体が反応するモル数に比べて、ガスのモル数は数式8から、反応前で5モル、反応後で3モルであるので、この概算では、その平均値として4モルとすると、粉体とガスのモル流量の比は数式13となるから、τpとτgの比は数式14となる。
Figure 2022063237000021
Figure 2022063237000022
Figure 2022063237000023
Figure 2022063237000024
Figure 2022063237000025
Figure 2022063237000026
ここで、無機粉体として酸化マグネシウムとガスとのモル基準比容積を用いて比較すると、酸化マグネシウムのモル基準比容積vpは、その真密度の値から約0.011[L/mol]である。水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムのモル比容積は、それぞれ0.025[L/mol],0.028[L/mol]である。これに対してガスのモル体積vgは400℃の理想気体とすると約50[L/mol]であるので、その比はおよそ4500~1800倍となる。従って、以下の概算では、この平均として数式13の如く3000倍を採用して検討を進める。
また、一般に流動性の良い粒子の空間率は約0.3程度であり、この時(1-ε)/εの値は数式16の左の如く約2.3となるので、これらの値を数式14に代入すると流動層内を通過する粉体とガスの平均滞留時間の比τpgは、数式17の如く、約28000となる。即ち、メタン化反応装置において、各流動層を通過する粉体の滞留時間に対してガスの滞留時間(=通過時間)は圧倒的に小さい事を意味している。
Figure 2022063237000027
Figure 2022063237000028
Figure 2022063237000029
350℃の流動層において、水酸化マグネシウム粉体の滞留時間が3000秒である時、この間に脱水率は約90%まで到達するが、この流動層を通過するガスの滞留時間は僅か約0.11秒である。この0.11秒の間にガスの反応が、ここに存在する水酸化マグネシウムの脱水反応の90%の吸熱量に相当する反応量(=発熱量)に達する場合には、吸熱量と発熱量は等しくなり、即ち、反応温度は、上昇も下降もせず、一定となることを示している。
しかし、ガスの反応速度は速いとはいえ、0.11秒では滞留時間が短すぎる懸念がある。そこで、両者が一致しない場合(ガスの滞留時間が短すぎる場合、あるいはガスの反応量(発熱量)吸熱反応量より多い場合)に、一致させるにはどのように対処できるかを以下に示す。
ガスの滞留時間が短く、ガス側の反応量が想定より少ない時には、発熱量が減少するが、一方、粉体の吸熱反応は熱を与えられない限り進まないので、結果的に、粉体の反応量はガスの反応量に等しくなる。
逆に、粉体の反応量に比べてガスの反応量が多くなると、発熱量に対して吸熱量が不足するので温度が上昇することになるが、図2より反応場の温度上昇は、平衡転化率の低下を招き、その低下する反応量に相当する逆反応(吸熱反応である水蒸気改質反応)が起き、結果的にガスの発熱量の超過による温度上昇は抑制されることになる。
以上を踏まえて、粉体の供給速度Qpとガスの供給速度Qgを一定とする時、各段の流動層内のガスの反応量はガスの反応速度と滞留時間τgの積で与えられ、しかも、反応速度はその流動層内の触媒の量と活性度により調整可能である。一方、ガスの滞留時間τg(=流動層の通過時間)は数式4~12によれば流動層高HFBおよび流動層の空間率εに比例する。
各流動層内で所望のガスの反応量を得るのに必要な滞留時間τgを与える流動層高をHgとし、同じく所望の粉体の反応量を得るのに必要な滞留時間τpを与える流動層の層高をHpとする時、
p>Hという条件(即ち、ガスの反応速度が極端に早い場合)である時には、先に述べた如く粉体の反応量はガスの反応量を超えることは無く、等しくなるので、流動層高は、必要な粉体の反応量を与える高さHpとすれば良い、即ち、HFB=Hpとする。
一方、Hp<Hという条件である時には、所望のガスの反応量を得るには、流動層高はHg必要であり、即ち、HFB=Hgとすれば良い。但し、この時、無機粉体の供給量Q(表3の例では、2.08[kmol]の水酸化マグネシウムと4.01[kmol]の酸化マグネシウム)とガスの供給量Qg(炭酸ガス1.0[kmol]と水素ガス4.0[kmol])は変えてはならない。粉体の吸熱量とガスの発熱量は、流動層中の粉体の存在量(ホールドアップ量)に依らず、これらQとQgによって規定されるからである。つまり、この時、HFBはHpより高くなるが、(粉体の滞留時間τpは必要時間より長くなるが、)粉体の吸熱量はガスの発熱量以上には増加しないので差し支えない。
この流動層高の調整は各段のダウンカマーの堰(図5の21)の高さの調整にて行えばよい。勿論、運転時の外乱に対しては、反応ガスの供給量を調整して熱量のバランスを取る事も有効である。
次に、HFBは所定のガスの反応量を得るために高くできるが、表3~6の例では、計算を単純化する為に各段の温度差を100℃としているが、実際の装置では、熱歪等を考慮すると、この温度差は小さい方が好ましい。そこで、例えば、100℃の温度差がある1段の流動層を4段に分割して、各段間の温度差を25℃とする事で、装置の熱歪を大幅に軽減されることになるので好ましい。また、段数を増やす事は、多段流動層の粉体の流れがよりプラグフローに近づくことになるので好ましい。以上の知見を装置の設計に反映させればよい。
ここで、粉体の反応速度は、その比表面積に依存する。従って、粒子径が大きいと反応速度が低下することになる。そこで、微粉を用いるもしくは、微粉を造粒した多孔質粒子を用いるのが好ましい。但し、微粉を用いる流動層は偏流を起こし易く、一般に微粉の流動化は困難とされているので、微粉の流動化を可能とし、粉体の均一処理を可能とする為に、特許文献2の揺動機構を用いる多段流動層とするのが好ましい。
この時、微粉を用いる流動層では均一な流動化によって流動層の層高が膨張し易く、この層膨張によって、層内の空間率が増加するので、ガスの滞留時間は増加するが、一方、粉体の占有体積は減少するので、粉体の滞留時間は短くなる方向であり、短くなり過ぎる事が無いよう注意が必要である。
次に粉体の反応に伴う性状変化に注意すべきである。反応が100%まで進行すると物質が全て変わることを意味する。即ち、粒子の真比重は変化し、その影響で粒径も変化するなどの粒子性状の変化が起こる。そこで、粉体の脱水反応と脱炭酸反応とこれらの再生を繰返して行う時、この性状変化が粉体のハンドリングなどの操作条件に影響する事が考えられる。この性情変化による粉体の流動特性への影響を抑えるために、粉体をシリカ等の反応しない物質でカプセル化する等の粉体加工処理が考えられるが、もっとも単純なのは、この様な加工処理を施さず反応率を50%、或いは30%までに留める事である。
表6の例では、炭酸マグネシウム1[kmol]の100%反応させる場合の試算であるが、これを50%とする場合には400~500℃域で除熱量は半分となり不足する。この場合、投入する粉体量を2倍の2[kmol]として、その中の反応量は1[kmol]である事を維持する必要がある。この時、140~500℃の間の炭酸マグネシウムのモル当たりの顕熱の値は酸化マグネシウムのモル顕熱の約2.3倍である。従って、投入する炭酸マグネシウムを1[kmol]増量することになるので、その顕熱に相当する酸化マグネシウム2.3[kmol]を投入量4.74[kmol]から減じて2.44[kmol]とすれば良い。
以上の試算は、あくまで机上計算であり、実際の反応装置内の温度は各種要因により変動する可能性がある。これらの変化に対処するためには、反応ガスの供給量の調整による発熱量を制御するのが、装置の条件反映への応答速度が速く好ましい。その他、除熱の一部を除熱用伝熱管にて行わせる目的で設置している場合には、この伝熱管による除熱量の調整も可能である。
以上、本発明の大きな特徴の一つは、流動層の流動媒体としてメタン化反応の除熱に300℃以上で吸熱する化学蓄熱剤の水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムの粉体、そして酸化マグネシウムあるいはその他の無機粉体を用いる事である。これらの粉体は水分や炭酸ガスと接触させない限り変化しないので、大気圧下で安定に長期間保存(蓄熱)できる。
従って、冷却後の、酸化マグネシウム粉体を炭酸ガス発生源である工場等に輸送して、サイロ等で保管しておけば、これらの工場等において熱を必要とするタイミングで、酸化マグネシウムの必要とする量を取出して、再生プロセスにて水和反応させ、更に炭酸化反応をさせる事で、蓄熱していた熱を再生時に回収して利用できる。
一般に工場等で排熱の利用率が上がらないのは、排熱が出る温度と量そしてタイミングが、これを利用するプロセスの温度、量、そしてタイミングとマッチしないことによる。しかし、工場の熱利用のピーク時にこれらの粉体を抜き出して再生処理を行い、この時発生する熱を回収して、例えばボイラー水の予熱あるいはボイラー燃焼用空気の予熱等に利用することで、工場の熱利用量の一部を補うことができる。
この事は、水素をメタンに変換する際に失う17%エネルギーをロスとせず、他の場所で、有効利用できる事を意味する。
本発明の多段流動層を用いるメタン化反応装置の特長を整理しておく、
A.反応装置内で発生する反応熱の除熱性能を向上させ、触媒表面温度上昇を抑制し、触媒の延命化に寄与する。
B.多段流動層内の温度を反応装置底部から、上部にかけて、階段状に下げる事、更に、用いる触媒はそれぞれの温度域において、それぞれ有効な触媒を選定して用いる事で、温度が低くなる反応装置出口においても、反応速度を低下させる事なく、メタンへの高い転化率を実現し、残留水素濃度を低減できる。
C.多段流動層の中で300℃以上の温度域における大きな発熱量に対して、メタン化反応装置に投入する無機粉体にこの温度域で分解して吸熱する水酸化マグネシウム粉体および炭酸マグネシウム粉体等の化学蓄熱剤を混合して用いる事で、これらの吸熱反応によりこの温度域の除熱能力を大幅に増大させる。
D.これらの水酸化マグネシウムの脱水反応および炭酸マグネシウムの脱炭酸反応から得られる酸化マグネシウムは再生して利用する事が可能であるが、この再生処理時の発熱を回収する事ができる。この回収熱の利用により、水素をメタンに変換する際のエネルギーロスを低減する事ができる。
E.酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムは化学蓄熱剤であり、水分と炭酸ガスを遮断している限りにおいては、大気圧下で安定に貯蔵、保管、輸送が可能である。そこで、炭酸ガス発生源である工場の煙道ガス中の炭酸ガスを酸化マグネシウムの再生処理時に煙道ガス中の炭酸ガスと反応させて炭酸マグネシウムとする事で、炭酸ガスを固定化すると共に、これをメタン反応装置に輸送して、水素と反応させてメタンを得ることができる。即ち、煙道ガス中の炭酸ガスを、炭酸マグネシウムを介する事でメタンに変換して利用する事ができる。
F.炭酸ガスを固定化した炭酸マグネシウムは、大気圧下で、容易に貯蔵し、輸送できることから、炭酸ガス発生源とメタン化反応装置の運転時間および処理能力が一致していなくても、また、炭酸ガス発生源である工場が小さく分散して存在している場合においても、これらの施設の煙道ガスから得られる炭酸マグネシウムをメタン化反応装置に輸送し、これらを集約して貯蔵した後、メタンに変換する事が可能となり、それぞれ互いに干渉しあうことなく、独立に効率的な運転が可能となる。
本プロセスの検討で関係する各種反応のGibbsの自由エネルギー変化ΔGと温度の関係 メタン化反応に関して、ΔGから計算される平衡定数Kから求められる炭酸ガスのメタンへの転化率と温度の関係、図中の棒グラフは多段化装置の各段内における転化率 除熱用伝熱管を設置した1段構成の流動層反応装置 粉体が外部の冷却器との間を循環する除熱用伝熱管を設置した2段構成の流動層反応装置 揺動機構ならびに除熱用伝熱管を備えた多段流動層反応装置の概念図 多段流動層内の1段の中のハニカム触媒、除熱用伝熱管、揺動多孔板の配置例 再生プロセスのブロックフロー、左は酸化マグネシウムの一部もしくは全部を水酸化マグネシウムとして再生するプロセス、右側は、更に水酸化マグネシウムの一部もしくは全部を炭酸マグネシウムとして再生するプロセス 酸化マグネシウムを水酸化マグネシウムに再生する際に、あるいは、水酸化マグネシウムを炭酸マグネシウムに再生する際に用いる揺動機構を備えた移動層装置 メタン化プロセスと化学蓄熱剤の再生処理プロセスの間を化学蓄熱剤が循環する時の化学蓄熱剤と熱の流れ 再生可能エネルギーから水素を製造する工場、これに隣接するメタン変換装置があり、ここに複数の工場の煙道排ガス中の炭酸ガスを固定化した炭酸マグネシウムを含む粉体を輸送し、メタン化反応に用いる炭酸ガスを提供する。また、このメタン化工場で生成した酸化マグネシウムを再生利用する為に、炭酸ガス発生源の工場へリサイクルする構想の概念図
以上、多段流動層を用いるメタン化反応装置の可能性とその特長について説明してきたが、以降は、この機能を実現する装置について説明する。
ここで流動媒体に加える化学蓄熱剤である水酸化マグネシウムの脱水反応および水和反応、炭酸マグネシウムの脱炭酸反応および炭酸化反応は、固体表面における反応であるので、その反応速度を高め、そしてガスの滞留時間を増加させるためには、比表面積が高い微粉を用いるのが好ましいが、一般に微粉の流動化は困難とされている。そこで、微粉の均一流動化を実現する工夫が必要である。
微粉を流動化させるには流動層全体を上下に振動させる振動流動層が用いられている。この方法は勿論このメタン化反応装置にも適用可能であるが、この方式による場合、振動エネルギーは装置の質量および振幅に比例するので、装置が大型化すると振動に要するエネルギーが大きくなる。
これに対し特許文献2の揺動機構を用いる多段流動層では、装置は動かさず内部の粉体のみを緩やかに揺すって動かす方式であり、運動させる質量は装置全体を振動させる振動流動層方式に比べてかなり少ない。
振動流動層の振動数は5~50Hzが良いとされるが、揺動機構の場合にはその値はおよそ0.01~1Hzと小さい。振動エネルギーは振動数の2乗に比例することから、この揺動運動に要するエネルギーは振動流動層の所要エネルギーに比べて圧倒的に小さいことが分かる。
以上、所要エネルギーの観点から、本発明のメタン化反応装置では、微粉の流動化を可能とし、粉体の均一処理を可能とする為に、揺動機構を備える多段流動層を用いるのが好ましい。
次に、多段流動層を用いるメタン化反応装置の概念を図5に示した。この図では、流動層を4段構成としているが、これは4段構成に限定するものではなく、4段以上でも良い。この図では、最上段に140℃の粉体を投入し、底部での温度は400℃、もしくは500℃であり、途中は、段階的に変化するとしている。
また、この図では粉体として微粉を用いる事を想定して、微粉の均一流動化を援けるための上記した揺動機構を用いる事とし、その為に揺動機構を駆動させるモーター16、回転運動を揺動板に伝達する駆動軸17、揺動多孔板18が示されている。
この揺動機構を用いる場合においては、層内の粉体の嵩密度を平均化する事に加えて、供給口15から分散板上に入ってくる粉体を分散板上全体に広げて平滑に均すために揺動多孔板18の揺動運動を利用する。
また、ここでは、大きな粒径の触媒19を用い、分散板上でこれを揺動板の運動により転動させる事をイメージしている。この図中の触媒粒子19は大粒径としているのは、流動化ガスによって粉体中で流動化することなく各段の流動層内に留まらせる為である。勿論、ハニカム状等の成型体を用いる場合には、触媒を転動させる必要は無い
図6はこのような場合の多段流動層の中の1段の流動層のみを取り出して、層内の触媒、除熱用伝熱管、揺動多孔板の配置イメージを示したものである。
粉体は上の段の流動層からダウンカマー20を通じて、下の段の流動層に入る。
ここではハニカム状触媒19が除熱用伝熱管5の下に固定されている。反応ガスは、このハニカム状触媒の中を通過する際に触媒表面で反応を進行させる。このハニカム状触媒の下の粉体層中に揺動多孔板18があり、水平に揺動運動することで、水平方向に粉体嵩密度を均して偏流の発生を防止し、ガスの粉体および触媒との均一接触を確実なものとする。
粉体はこの流動層内で所定の滞留時間経過後、ダウンカマーの堰21をオーバーフローしてダウンカマー20に入り、下の段の流動層に移動する。
無機粉体中の水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムはメタン化反応装置内において、反応熱を吸収して酸化マグネシウムとなるが、これらの再生処理は、この酸化マグネシウムを含む無機粉体を水蒸気と反応させ、酸化マグネシウムを水酸化マグネシウムとし、次いで、この水酸化マグネシウムを炭酸ガスと反応させ炭酸マグネシウムとする。
図7はこの酸化マグネシウムの再生プロセスのブロックフローである。左側が、冷却後、水和反応のみを行わせ水酸化マグネシウムとするブロックフローであり、右側は、こうして得られた水酸化マグネシウムの一部もしくは全部を炭酸化して炭酸マグネシウムとするブロックフローを示している。
メタン化反応設備28から排出された酸化マグネシウム粉体は、粉体冷却器11で冷却後、水和反応装置30にて水酸化マグネシウムとして、再びメタン化反応設備28に戻される。更に、この一部を炭酸マグネシウムとする場合には、炭酸化反応装置31で炭酸マグネシウムとする。
ここで、処理する粉体の再生割合は必ずしも100%である必要はない。表3~6の3ケースでは粉体中の水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムの割合は投入する無機粉体量に対しておよそ25~35%であり、残りは反応に関与しない無機粉体(酸化マグネシウムなど)である。即ち、酸化マグネシウムの再生はメタン化反応装置内の発熱量を相殺するに必要な量の水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムのみを再生すれば良い。
従って、このブロックフロー図では、粉体冷却器11から一部の酸化マグネシウムを、水和反応装置30から水酸化マグネシウム粉体の一部を抜いて、処理済みの粉体と混合して、メタン化反応装置28へ輸送する事としている。
図8は、化学蓄熱剤の再生処理反応装置として移動層を用いる場合の概念図である。
メタン化反応装置から排出された粉体は、一旦粉体冷却器で冷却されたのち、この再生反応装置の上部10から投入される。
無機粉体の再生処理は、粉体とガスとの効率的な向流接触が可能な移動層装置を用いて行わせるのが好ましいが、この再生処理を行う際に、移動層においては、微粉を用いる場合、あるいは微粉を用いなくても装置が大型化する場合には、偏流が発生しやすいので、この偏流の発生を抑止し均一な無機蓄熱剤の再生処理を可能とする為に、揺動機構を備える移動層を用いるのが好ましい。
図8では揺動多孔板18はこの移動層内の除熱用伝熱管5と高さ方向に交互に設置され、駆動用モーター16の回転運動が伝達軸17によって揺動多孔板に伝達され、揺動運動を発生させる事により、粉体層は水平方向に均され、偏流の発生を防止し、気体と粉体との均一接触を可能としている。
酸化マグネシウムの水和反応においては、反応ガスである水蒸気は湿潤蒸気が好ましいとされている事から、この湿潤蒸気として下部の散気管27から、プラグフローとなるように、この移動層内に分散して供給される。
再生処理後の粉体は、装置下部から抜き出され、輸送管13を通じて、貯槽を介して、炭酸化工程あるいはメタン化反応装置へ輸送される。
水酸化マグネシウムの炭酸化反応においては、同様に反応ガスである炭酸ガスあるいは煙道ガスは下部の散気管27から、均一となるようこの移動層内に分散して供給される。
最後に、メタン化反応装置から出てくる生成ガスは、未反応の炭酸ガスと水素、そして水蒸気を多く含んだ140℃のメタンである。これを貯蔵タンクに貯蔵する前に、図5のガス冷却器25にて冷却し、含有される水蒸気を凝縮させて、これを分離除去した後、生成ガスとする。
僅かに含まれる未反応炭酸ガスは、水酸化カルシウム水溶液にて吸収させ炭酸カルシウムとして除去する等の方法により除去して、約1%程度の水素を含むメタンを得ることができる。
本発明は、水素ガスと炭酸ガスを用いてメタンを合成する反応装置に関するものである。炭酸ガスは、温暖化ガスであり、その主な発生源は主に石炭、石油、天然ガス等の化石燃料を燃焼させるボイラーである。この燃料によるエネルギー量の全てを再生可能エネルギーから製造される水素にて、賄えるならばそれは好ましい。但し、水素は爆発性が高く、しかも、貯蔵するにはかなり高圧としなければならない。これを汎用の燃料として用いるのには大きなリスクがある。そこで、この水素をメタンに変換して用いるならば、その安全性および利用し易さは格段に向上する。そこで、効率の高いメタン化反応装置が望まれている。
また、メタン化は、上記した如く汎用燃料として優れているが、一方で、熱エネルギー量的にはメタンに変換する事で約17%低減する。
メタン化反応の際に発生する熱を除熱して放熱すれば、それは水素が保有する熱エネルギーの17%をロスする事になるが、除熱法として吸熱反応を利用する事で、この熱を蓄熱し、更にこの蓄熱した熱を有効に利用するならば、全ての熱エネルギーを有効利用し得る事となる。そこで、多段流動層内の反応熱の除熱法として、化学蓄熱剤である水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムを含む無機粉体を流動媒体として用いる事が好ましい。
また、この炭酸マグネシウムを脱炭酸させて放出される炭酸ガスをメタン化原料として利用する事で、この技術は炭酸ガスを固定化して、これをさらに有効利用するCCUS技術となる。
その具体的なイメージとして大規模な炭酸ガス発生源である発電プラント用ボイラー、セメント工業、鉄鋼業等のボイラーに、このCCUS技術にて煙道ガス中の炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして固定化し、これを水素製造設備に輸送して、この水素と炭酸マグネシウムにより、同設備内のメタン化反応装置にてメタンを合成し、このメタンを燃料として利用、あるいは他へ供給する事で、カーボンリサイクルを実現する事になる。
現在、炭酸ガスを補足するCCS技術としては、アミン系吸収液を用いる方法が主流であり、当然、この炭酸ガスも炭酸ガスも供給源として使用可能である。ただし、炭酸ガスはその貯蔵には加圧が必須である。
一方、炭酸マグネシウムは、大気圧下で安定に長期間保存でき、また、輸送も容易である点で有利と考えられる。
この粉体を貯槽に蓄え、しかも、この貯槽から取り出して輸送が容易である事で、上記した大規模な炭酸ガス発生源だけでなく、距離的に離れて、しかも分散して複数存在している小規模の炭酸ガス発生源に対しても、それぞれの工場で発生する炭酸ガスを、炭酸マグネシウムとして固定化し、これをメタン化反応装置まで輸送し貯蔵する事で、これらの小型分散炭酸ガス発生源の炭酸ガスもメタンに変換する事が可能となる。
この事は、必ずしも大型発電所のボイラー等に限定せず、分散立地している小規模工場からの排ガス中の炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして固定化後、メタン化反応装置のある施設に輸送して、これを集約してメタンに変換する事が可能となる事を意味している。
大規模な炭酸ガス発生源の炭酸ガスを処理する事が重要である事は間違いないが、最終的には分散立地している小規模な炭酸ガス発生源の炭酸ガスも処理しなければならない。本発明の方法は、このような場合に対しても有用である。
本発明による熱と物質の流れを図9に纏めた。水素の燃焼熱968[MJ/kmol]はメタン化反応装置28でメタンに変換する事で、その燃焼熱の165[MJ/kmol]は発熱により放出され、803[MJ/kmol]に減少する。この図では、メタン化反応装置の内温は底部が約500℃、上部が200℃としているが、その途中の流動層の温度は、階段状に変化している。この様にガスの反応の進行と共に反応温度を下げる事で、装置出口のメタンへの転化率は高くなる。
この反応により発熱する熱量を吸収する事によって、水酸化マグネシウムは脱水して酸化マグネシウムとなり、炭酸マグネシウムは脱炭酸して酸化マグネシウムとなる。即ち、ここで、生成する酸化マグネシウムは165[MJ/kmol]の発熱を吸収して蓄熱している。
次にこの酸化マグネシウム粉体を粉体輸送等の手段で化学蓄熱剤の循環ループ36にて再生処理設備34へ輸送する。ここで、酸化マグネシウムを再生する際にメタン化反応器内で吸収した反応熱165[MJ/kmol]を発熱するので、これを回収して利用する。この事はメタン化反応装置ないで発熱した熱を、熱の流れ37によって、再生処理設備に運び、ここで回収させて利用することを意味している。
この再生処理設備では酸化マグネシウムを再び水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムに再生して、これらを再び、循環ループ36によりメタン化反応器に輸送して再利用する。こうして、マグネシウム系の化学蓄熱剤は、メタン化反応装置28から再生処理設備34への熱の輸送媒体であると共に、再生処理設備34の炭酸ガスのメタン化反応装置28への輸送媒体となって両設備の間を循環する。ここで、粉体がメタン化反応器内および再生処理装置内で、凝集あるいは粉化する場合には、この循環ループ内に、粉体の処理を容易にするための解砕、或いは造粒処理を施す工程を追加すれば良い。
図10は、図9の熱と物質の流れの概念をメタン化反応設備と再生反応設備の間の流れとして示したものである。複数の工場34から炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして回収し固定化した粉体を、再エネから製造された水素を貯蔵しているメタン化反応設備28へ輸送し、ここで、この炭酸マグネシウムと水素製造設備35からの水素を用いてメタンを製造し、これをメタンガスのホルダー29に貯蔵する。
メタン化反応設備28から排出される酸化マグネシウム粉体は、粉体冷却器11で常温まで冷却後、サイロ等の貯槽32に貯蔵される。この酸化マグネシウム粉体は、炭酸ガス発生源の工場34へ返送され、これを水和させて水酸化マグネシウムとした後、工場の煙道ガスの炭酸ガスを吸収させる事で、炭酸マグネシウムとして再生される。一旦、貯槽33に貯えられた後、メタン化反応設備28に輸送される。即ち、離れて分散立地している工場の煙道ガス中の炭酸ガスを、炭酸マグネシウムとする工程を経る事で、集約してメタンに変換できる。一方、各工場34では、水素をメタンに変換する際に放出した熱エネルギーを炭酸マグネシウム再生時に発熱させて利用できる。
即ち、この構想によれば、水素からメタンに変換する際に失うエネルギー量を回収して他の工場等で利用できる。一方、各工場では、この熱量を貰う代わりに、炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして提供する事になる。また、メタン化反応設備と炭酸ガス発生源との間のエネルギーのやり取りは、蓄熱剤、貯槽、そして輸送を介する事で、熱の発生と需要の量とタイミングが異なっていても、双方が独立に運転できることもメリットである。
水酸化マグネシウムの炭酸化反応は図1の計算線から140℃付近でも十分に進行すると考えられる。
一方、アミン吸収液法では炭酸ガスを吸収させるために煙道ガスの温度を20~60℃まで冷却する必要があるが、本発明では、冷却する必要はないので、煙道ガス排出時の「有効煙突高さ」に影響しない事もメリットである。
今日、温暖化対策として炭酸ガス排出量の削減、再生可能エネルギーの利用促進が叫ばれている。
本発明によれば、表5に示したケースではボイラー等で燃料を燃焼させた後に排出される炭酸ガスを直接用いる、あるいは、表6に示したケースでは、炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして固定化して用いるが、いずれにおいても、炭酸ガスを再生可能エネルギーから得られたグリーン水素を用いて、燃料のメタンに変換して再利用する事が可能となる。
即ち、CCUS技術であり、完全なカーボンリサイクルを実現し、温暖化対策である炭酸ガス排出量の大幅削減、化石資源の使用量削減に貢献するものである。
1 流動層装置、もしくは移動層装置
2 流動層もしくは粉体移動層
3 ガス流
4 ガス分散板
5 冷却用伝熱管
6 冷媒(冷却水など)
7 下段流動層
8 反応ガス連結管
9 粉体抜出部
10 反応装置下部からの粉体輸送ライン
11 粉体冷却器
12 移動層
13 反応装置上部への粉体輸送(供給)ライン
14 多段流動層
15 多段流動層への粉体供給部
16 揺動機構駆動モーター
17 揺動機構駆動軸
18 揺動多孔板
19 触媒粒子、ハニカム状触媒
20 ダウンカマー
21 ダウンカマーへのオーバーフロー壁
22 ダウンカマー下部の仕切り板
23 原料ガス供給口
24 生成ガス出口
25 生成ガス冷却器
26 冷却後の生成ガス
27 散気管(ガススパージャー)
28 メタン化反応装置
29 生成メタンホルダー
30 水和反応装置
31 炭酸化反応装置
32 酸化マグネシウム貯槽
33 再生処理後の粉体貯槽
34 工場(水和反応設備+炭酸ガス発生源)
35 水素製造工場
36 化学蓄熱剤の循環ループ
37 吸熱された反応熱の流れ

Claims (10)

  1. 反応温度が下がるほど、反応の転化率が上がる反応においては、反応装置出口における転化率を高めるには、反応の進行と共に反応温度を下げる事が有効であるので、この反応装置に多段流動層を採用し、その中に用いる流動媒体である粉体を外部に設けた粉体冷却器にて、この多段流動層の最上段の中の流動媒体の温度、もしくはそれより低い温度まで冷却して、この多段流動層の最上段へ連続的に投入して、多段流動層内部を流下させながら冷却させる過程で、粉体自身にはこの反応装置内部の熱を吸収して昇温させ、この多段流動層の最下段からは熱を吸収して高温となった粉体を連続的に抜出して、これを前記粉体冷却器によって冷却して、再び、この多段流動層の最上段に戻して循環させる事により、この多段流動層の中に、最下段の温度が最も高く、最上段の温度が最も低く、その間の各段の温度は下から上に順次低下する温度分布を形成させる事を特徴とする多段流動層反応装置。
  2. 請求項1記載の上下方向に温度分布を形成する多段流動層反応装置において、最上段の温度を100℃~300℃、好ましくは140~200℃の範囲とし、最下段の温度を300~600℃、好ましくは400~500℃の範囲とし、中間の各段では最下段から最上段の温度に順次低下する温度分布を有する多段流動層の各段に触媒粒子もしくは触媒の成型体を配置し、この多段流動層の底部から流動化ガスとして反応原料である炭酸ガスと水素を供給する事により、各段の流動層内の粉体を流動化させ、更に流動層中の触媒と接触させてメタン化反応によりメタンを合成するが、反応装置出口の最上段の140~200℃の温度域においては、反応温度が下がる事によってメタンへの平衡転化率が上がるので、従来の反応温度が300~500℃のメタン化反応装置から得られるメタンよりも、未反応の残留水素濃度が低く、高濃度のメタンを合成する事を可能とする請求項1記載の多段流動層を用いる事を特徴とするメタン化反応装置。
  3. 請求項1記載の多段流動層を用いる前記メタン化反応装置において前記粉体冷却器との間で循環使用する流動媒体として、砂、シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシアなどの安価で、安定、かつ安全である無機化合物の粉体を用いるが、更にこの粉体中に約300~600℃の範囲で吸熱して分解する物質の粉体を混入して用いる事で、前記多段流動層反応装置の約300℃以上の温度域において発生する前記メタン化反応の発熱量の一部もしくは全部を、これらの化合物の分解反応によって吸収させる事で、発熱量が大きい約300~600℃の温度域における除熱能力を高める事を特徴とする請求項2記載のメタン化反応装置。
  4. 請求項3記載の約300~600℃の範囲で吸熱して分解し、しかも、分解後に再生する事が可能な物質として、化学蓄熱剤である約300℃以上で吸熱して分解(=脱水)する水酸化マグネシウム、および400℃以上で吸熱して分解(=脱炭酸)する炭酸マグネシウムを用いる事を特徴とする請求項3記載のメタン化反応装置。
  5. 前記メタン化反応に用いる触媒は、通常300~500℃の温度域で用いられる触媒の他に、150~200℃の低温域においても活性が高いとされる低温用触媒が開発されているが、低温域の流動層には、この低温用触媒を、高温域の流動層には従来のNi系触媒などのメタン化反応用触媒を用い、その中間温度域においては、これらのいずれかを選択、もしくはこれらの触媒を混合して用いる、即ち、請求項1記載の反応の進行と共に温度が低下する反応装置において、各温度域にそれぞれ最適な触媒の種類を選択して用いる事で、反応温度が低くなり反応速度が低下する反応装置の出口側でも、反応速度を下げることなく、高い濃度のメタンを合成する事を特徴とする請求項2記載のメタン化反応装置。
  6. 前記メタン化反応の原料である炭酸ガスの供給源として、炭酸ガスを含む煙道ガスを水素ガスと共に前記メタン化反応の原料ガスとして用いてメタンを合成する事を特徴とする請求項2記載のメタン化反応装置。
  7. 請求項4記載の炭酸マグネシウムを無機粉体に混入して流動媒体として用いる前記メタン化反応装置において、脱炭酸した後に排出される酸化マグネシウムを煙道ガス中の炭酸ガスと反応させて、炭酸マグネシウムとして再生させ、これを前記流動媒体に混入して用いて、前記メタン化反応装置の底部の400℃以上の高温域で前記メタン化反応熱を吸収させると共に脱炭酸させ、ここで発生する炭酸ガスを前記メタン化反応用の原料ガスとして用いる事で、煙道ガス中の炭酸ガスを炭酸マグネシウムとして固定化した後に、これを前記メタン化反応装置の原料ガスである炭酸ガスの供給源として用いてメタンを合成する事を特徴とする請求項2記載のメタン化反応装置。
  8. 流動媒体に混入させて用いる前記化学蓄熱剤である粉体の反応速度を高めるには、比表面積が高い微粉を用いるのが好ましいが、一般に微粉の流動化は困難とされているので、微粉の流動化を可能とし、粉体の均一処理を可能とする為に、揺動機構を備える請求項1記載の多段流動層を用いる事を特徴とする請求項2記載のメタン化反応装置。
  9. 請求項4記載の無機粉体中の水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムは前記メタン化反応装置内において、共に反応熱を吸収して酸化マグネシウムとなって排出されるが、この排出された無機粉体を水蒸気と反応させ、この酸化マグネシウムの一部もしくは全部を水酸化マグネシウムとし、次いで、こうして得られた水酸化マグネシウムの一部もしくは全部を更に炭酸ガスと反応させ炭酸マグネシウムとして前記メタン化反応装置内の発熱量を相殺するに必要な量の水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムを再生する事を特徴とする化学蓄熱剤の再生処理プロセス。
  10. 請求項3、4、および7記載のメタン化反応装置から排出される前記化学蓄熱剤である酸化マグネシウムを含む無機粉体を、再生処理装置を用いて再生するが、この再生反応は発熱反応であるので、この再生処理時に前記メタン化反応装置内で吸収した反応熱を発熱させて回収し、この熱を利用する事を特徴とする請求項9記載の化学蓄熱剤の再生処理プロセス。
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