JP2022063183A - 調速脱進機 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、機械式時計に用いる調速脱進機に関する。
(等時性)
機械式時計では、動力ぜんまいを収めた香箱の回転を、増速輪列を用いて高速化し、調速脱進機により一定の周期で輪列を回転させることにより計時を行う。調速機が往復回転する際、摺動面の摩擦や空気攪乱による粘性抵抗を受けるため、調速機単体では振動が減衰し、やがて停止してしまう。実際には、脱進の度に脱進機が調速機へエネルギーを随時補充しており、調速機は振幅を維持することができる。なお、本発明では、てんぷの振動周期のある時点における回転位置を「振り角」と称し、てんぷの最大の振り角(片振幅)を「振幅」と称して区別する。
機械式時計では、動力ぜんまいを収めた香箱の回転を、増速輪列を用いて高速化し、調速脱進機により一定の周期で輪列を回転させることにより計時を行う。調速機が往復回転する際、摺動面の摩擦や空気攪乱による粘性抵抗を受けるため、調速機単体では振動が減衰し、やがて停止してしまう。実際には、脱進の度に脱進機が調速機へエネルギーを随時補充しており、調速機は振幅を維持することができる。なお、本発明では、てんぷの振動周期のある時点における回転位置を「振り角」と称し、てんぷの最大の振り角(片振幅)を「振幅」と称して区別する。
調速機の振動継続に必要となる脱進機の停止解除工程および付勢工程において、力およびモーメントが発生する時点は、調速機の自由状態とは厳密には一致しない。そのため、調速機は自由振動を乱す外力を受ける。この場合に生じる歩度への影響を一般に「脱進機誤差」と称し、脱進機誤差はエアリーの法則から求められる。この脱進機誤差は、一般にてんぷの振幅の2乗に比例して小さくなることが知られている。なお、前記した調速機の自由状態とは、調速機のひげぜんまいが自由状態になる状態を示す。
また、調速機の回転軸に対する重心の偏りは「片重り」と称され、立姿勢における等時性に影響を及ぼす。これにより生じる歩度への影響を一般に「立等時性」と称し、その影響は振幅を変数とし、振幅が220°のときにゼロを通る第1種ベッセル関数で定義される。立等時性は、振幅が220°以下の領域においては、てんぷの振幅の変化に対する等時性への感度が高く、220°以上の領域では、てんぷの振幅が増すほど、振幅の変化に対する等時性への感度が格段に低下する特性を有する。そのため、動力ぜんまいの作動時間終盤において、てんぷの振幅を220°以上確保することが推奨される。
また、時計の平姿勢と立姿勢との等時性の差である「平立差」は、平姿勢と立姿勢とにおいててん真を軸支するほぞ部の摩擦に差が生じることが主な要因とされる。すなわち、平姿勢においては、ほぞ部を受け石がスラスト方向に軸支するため、てんぷの回転中心から摺動面までの距離が小さいのに対し、立姿勢においては、ほぞ部を穴石がラジアル方向に軸支するため、前記距離が平姿勢時よりも大きくなり、摩擦トルクが増す。そのため、立姿勢時の振幅が減少し、その差が等時性に影響する。つまり、初期の振幅を大きくすることができれば、終盤の振り角も大きくなり、平立差の低減が可能となる。
従って、脱進機誤差や立等時性や平立差を含む計時精度の向上には、てんぷの振幅を大きくすることが有効である。(下記非特許文献1参照)
(先行技術1)
しかしながら、クラブ・トゥースレバー脱進機(スイスレバー脱進機)、またはテデント脱進機といった従来の脱進機は、てんぷの振幅を大きく設定すると、てん真と一体で回転する振り石が、規制梃(アンクルやテデントレバー等)と干渉する、「振り当たり」と称する不具合を生じるため、てんぷの振幅を略340°以上に設定することができなかった。(例えば、下記特許文献1参照)
しかしながら、クラブ・トゥースレバー脱進機(スイスレバー脱進機)、またはテデント脱進機といった従来の脱進機は、てんぷの振幅を大きく設定すると、てん真と一体で回転する振り石が、規制梃(アンクルやテデントレバー等)と干渉する、「振り当たり」と称する不具合を生じるため、てんぷの振幅を略340°以上に設定することができなかった。(例えば、下記特許文献1参照)
(先行技術2)
また、別の先行技術として、アキレ・ブノワ(Achille Hubert Beno▲i▼t)が発明した「ブノワのトゥールビヨン(tourbillon de Beno▲i▼t)」が知られている。なお、ブノワのトゥールビヨンはキャリッジ(ケージ)を持たないためトゥールビヨンとは異なる態様となる。
また、別の先行技術として、アキレ・ブノワ(Achille Hubert Beno▲i▼t)が発明した「ブノワのトゥールビヨン(tourbillon de Beno▲i▼t)」が知られている。なお、ブノワのトゥールビヨンはキャリッジ(ケージ)を持たないためトゥールビヨンとは異なる態様となる。
ブノワのトゥールビヨンは、がんぎ車とてんぷとをひげぜんまいを介して弾接しており、がんぎ車が回転する際、がんぎ車の分割角だけ、てん真周りにひげぜんまいを介してトルクを伝達することで振動を維持することを図った点が従来の脱進機と大きく異なる。ブノワのトゥールビヨンは脱進作動時の摩擦抵抗や、エネルギー伝達のロスとなるがんぎ車の空転が無い利点がある。また、振り石を持たないため、振り当たり自体が存在せず、てんぷの振幅をヒゲゼンマイの弾性限界まで拡大することができる。ブノワのトゥールビヨンは、ひげぜんまいの交番トルクを受けて交番回転するがんぎ車を、アンクル状の規制梃を用いて規制し脱進作動を行う。なお、以下ブノワのトゥールビヨンの作動説明ではがんぎ車が動力ぜんまいを弛緩する際に回転する方向を正の回転方向と定義する。
まず、てんぷががんぎ車の正転方向とは逆向きに回転する際、がんぎ車はひげぜんまいから逆転方向のトルクを受け逆転する。がんぎ車が逆転すると、規制梃に備わる一方の爪ががんぎ車と係合してがんぎ車が係止される。がんぎ車が係止した後、てんぷは自由振動を始め、やがて第1の振幅で反転すると、がんぎ車を係止するひげぜんまいのトルクが低下する。やがて、ひげぜんまいのトルクががんぎ車の正転トルクよりも低下すると、がんぎ車は規制梃の爪から係脱して正転を始める。規制梃が薄いばねにより中立位置に戻されると、他方の爪が正転するがんぎ車を係止する。てんぷは再び自由振動に移行し、第2の振幅で反転すると、がんぎ車を係止するひげぜんまいのトルクが低下する。やがてひげぜんまいのトルクががんぎ車の正転トルクよりも大きくなると、がんぎ車は爪から係脱してひげぜんまいにより逆転する。こうして次の作動周期に移行する。
しかし、ブノワのトゥールビヨンは次の理由から、振動が継続せず、等時性も安定しない問題が知られている。(下記非特許文献2参照)
第1の問題は、振動が継続しない問題である。ブノワのトゥールビヨンは、がんぎ車の正転によりひげぜんまいを捩じっててんぷを付勢することを図るが、それが実現されない。なぜなら、がんぎ車は増速輪列のトルクを受け、停止状態から徐々に角速度を増すのに対して、てんぷは最大の角速度で、がんぎ車を即座に追い抜くためである。この場合、がんぎ車がひげぜんまいを介しててんぷを付勢するのではなく、逆にてんぷがひげぜんまいを介してがんぎ車を付勢する様態となる。これにより、ブノワのトゥールビヨンはてんぷにエネルギーを与えるのとは逆に、てんぷのエネルギーをがんぎ車に補充することになり、動力ぜんまいのトルクが十分大きいのにも関わらず、てんぷが停止してしまう。
第2の問題は、計時精度が安定しない問題である。ブノワのトゥールビヨンは、脱進作動においてがんぎ車が回動する角度がてんぷの回転方向により異なるため、外乱となるひげぜんまいのトルクがてんぷの自由振動に対して非対称に発生する。もしも脱進作動により自由振動に対して非対称な外力トルクが自由振動の中心近傍で生じる場合は、エアリーの定理に基づき、計時精度への影響が小さく抑えられる。しかしながら、ブノワのトゥールビヨンは、ひげぜんまいのトルクと、増速輪列のトルクとが釣り合う振り角で脱進するため、自由振動に対して非対称の外力トルクが調速機の自由状態から大きく離れた振り角で生じてしまう。これにより、脱進機誤差が小さくできない。しかも、脱進が作動するトルクが動力ぜんまいのトルクの影響を直接的に受ける。これにより、ブノワのトゥールビヨンは安定した計時精度が得られない。(非特許文献3参照)
(先行技術3)
このブノワのトゥールビヨンが抱える第1の問題を解決した調速脱進機として、ジグムント・リーフラー(Sigmund Riefler)が発明した「フリースプリング・インパルス脱進機」(下記特許文献3参照)が知られている。特許文献3の脱進機は、ブノワのトゥールビヨンと同じくひげぜんまいを介しててんぷに力を伝達する点は同じであるが、ひげぜんまいが規制梃と弾接されている点と、規制梃の揺動を用いてひげぜんまいを捩じりてんぷへトルクを伝達する際に、がんぎ車の分割角をてんぷの正転と逆転とでさらに二分し作動させることで、てんぷの往復回転のいずれの回転方向に対しても、ひげぜんまいを常に逆向きに捩じることができる点がブノワのトゥールビヨンに対する改良点となる。
このブノワのトゥールビヨンが抱える第1の問題を解決した調速脱進機として、ジグムント・リーフラー(Sigmund Riefler)が発明した「フリースプリング・インパルス脱進機」(下記特許文献3参照)が知られている。特許文献3の脱進機は、ブノワのトゥールビヨンと同じくひげぜんまいを介しててんぷに力を伝達する点は同じであるが、ひげぜんまいが規制梃と弾接されている点と、規制梃の揺動を用いてひげぜんまいを捩じりてんぷへトルクを伝達する際に、がんぎ車の分割角をてんぷの正転と逆転とでさらに二分し作動させることで、てんぷの往復回転のいずれの回転方向に対しても、ひげぜんまいを常に逆向きに捩じることができる点がブノワのトゥールビヨンに対する改良点となる。
特許文献3の脱進機は、規制梃がてんぷのいずれの回転方向でも逆向きにひげぜんまいを捩じることができるため、規制梃の揺動角だけ、ひげぜんまいを捩じって弾性エネルギーを確実に付与することができる。これにより、調速機にエネルギーを補充することができ、調速機の振動を継続することができる。
しかしながら、特許文献3の脱進機は、ひげぜんまいを捩じる作動に規制梃を用いる構造上、ひげぜんまいの捩じり角が規制梃の僅かな揺動角に制限されるため、ひげぜんまいに十分な捩じれ角を付与することができない問題があった。そのため、調速機に十分なエネルギーを補給することができず、所望する略340°以上の振幅を得ることができない問題があった。
さらに、特許文献3の脱進機は、停止解除の際に、がんぎ歯に押圧された規制梃の爪を、ひげぜんまいを用いて、摩擦摺動させ係脱するため、摩擦損失トルクを生じる。そのため、調速機の自由状態から大きく離れた振り角で外乱トルクが発生し、前記小振幅の問題と相まって、安定した計時精度が得られない問題があった。
(先行技術4)
さらに別の従来技術として、クラブ・トゥースレバー脱進機において、振り石をてん真から遠ざけることで、アンクル又との振り当たりを回避する調速脱進機が知られている。(下記特許文献4参照)
さらに別の従来技術として、クラブ・トゥースレバー脱進機において、振り石をてん真から遠ざけることで、アンクル又との振り当たりを回避する調速脱進機が知られている。(下記特許文献4参照)
特許文献4の脱進機は、てん真と、てん真から離間した軸との間を、往復回転移動可能な無限軌道で繋ぎ、前記無限軌道上に振り石を備える。これにより、てんぷの振幅が略340°以上に振れる時に、振り石がアンクル又と干渉しない位置に移動することで、振り当たりを回避することができる。
しかしながら、特許文献4の調速脱進機は、無限軌道自体、および無限軌道を誘導する複数の従動車がてんぷの運動にともない常時連動するため、無限軌道自体の内部摩擦、および従動車との噛み合い摩擦が常時発生する。そのため、調速機の自由振動を妨げてしまう問題があった。また、摩擦損失により調速機の品質係数(Q値)が低下してしまう問題があった。そのため多くのエネルギーを消耗、振幅を大きく維持するために多くのエネルギーを補給する必要がある問題があった。そのため動力ぜんまいの持続時間が短くなる問題があった。
小牧昭一郎著(2014) 「§2.9脱進機誤差」, 『機械式時計講座』, 東京大学出版会, p. 76,p. 102-110.
George Daniels(2011) "Tourbillon Carriages"(イギリス), WATCHMAKING, 2011edition, p. 300-302.
R. Daners(1986) "Un tourbillon d’apr▲e▼s A.-H. Beno▲i▼t"(スイス), Chronom▲e▼trophilia, No.21, p. 47-54.
発明が解決しようとする課題は、調速機の振幅が大きく、安定した計時精度が得られる調速脱進機を提供することである。
本発明は、調速脱進機に間欠伝動装置を備えることにより、略340°を超える大きな振幅と、規制梃および振り石を用いた脱進とを可能とすることを最も主要な特徴とする。
(1)本発明に係る調速脱進機は、一定の周期で往復回転するてんぷと、前記てんぷと同軸に結合されるてん真と、前記てん真と同軸に結合された間欠伝動装置の原動車と、前記原動車と係合する間欠伝動装置の従動車と、がんぎ車と係合し、前記がんぎ車の回転を規制する規制梃と、前記従動車と一体回動するとともに、前記規制梃と係合する振り石とを備える。
本発明に係る調速脱進機によれば、前記てんぷの所定の振り角において規制梃を揺動させて脱進させることができる。また、てんぷの振幅が略340°を超えた場合にも、間欠伝動装置が回動するため振り当たりが起こらない。また、従動車が1回転する範囲を超えない限り、理論上、ひげぜんまいの弾性限界までてんぷの振幅を上げることができる。従って、振り当たりが生じる従来の脱進機に比べて、振幅を格段に大きくすることができ、計時精度を向上することができる。
(2)また、本発明に係る調速脱進機は、一定の周期で往復回転するてんぷと、前記てんぷと同軸に結合されたてん真と、前記てん真と同軸に結合された間欠伝動装置の原動車と、前記てん真と同軸に配置され、地板と回転不能に固定されたがんぎ車と、前記てん真と同軸に軸支されたキャリアと、前記てん真と前記キャリアを弾接するひげぜんまいと、前記キャリア上に軸支され、前記がんぎ車と係合し、前記キャリアの回転を規制する規制梃と、前記キャリアに軸支され、前記原動車と係合する間欠伝動装置の従動車と、前記従動車と一体回動するとともに、規制梃と係合する振り石とを備える。
本発明に係る調速脱進機によれば、前記てんぷの所定の振り角において規制梃を揺動させて脱進させることができる。また、てんぷを略340°を超す大きな振幅で振動させつつ、調速脱進機全体をてんぷの回転方向に一定の周期で回転させることができるため、様々な立姿勢における立等時性を平均化することができる。さらに脱進毎に一定の角度だけひげぜんまいを捩ることができるため、定力装置としても機能し、調速機に与えるエネルギーを均一化することができる。ひいては、計時精度をより向上させることができる。
(3)また、本発明に係る調速脱進機は、脱進の際に前記キャリアが前記てんぷと逆方向に回転する角度が、前記キャリアが前記てんぷと同方向に回転する角度よりも大きく設定される場合がある。
この場合には、キャリアからてんぷへのエネルギー補充の効率を向上させることが可能となる。ひいては、てんぷの振幅を大きく維持することができ、計時精度を向上させることができる。
(4)また、本発明に係る調速脱進機は、前記キャリアが増速輪列から受けるトルクが、前記キャリアと反対方向に回転する前記てんぷの振り角の最大時において前記ひげぜんまいが生じるトルクよりも、大きく設定される場合がある。
この場合には、前記キャリアの回転方向と逆方向に前記てんぷが最大の振り角を取る状態において、前記キャリアが前記ひげぜんまいに生じるトルクによって巻き戻されることを防ぐことができるため、計時精度の悪化をきたす自由振動の阻害を抑制することができる。
(5)また、本発明に係る調速脱進機は、前記てんぷが前記キャリアと同方向に回転する場合に前記キャリアが回動する時点が、前記ひげぜんまいが自由状態となる時点の前に完了し、前記てんぷが前記キャリアと逆方向に回転する場合に前記キャリアが回動する時点が、前記ひげぜんまいが自由状態となる時点の後で開始するよう設定される場合がある。
この場合には、前記キャリアの回動中において、キャリアがひげぜんまいを弛緩させることにより調速機の保有エネルギーを減少させる区間をなくすことができるため、キャリアの回動によるてんぷへのエネルギー補充の効率を向上させることが可能となる。ひいては、てんぷの振幅を大きく維持することができる。
(6)また、本発明に係る調速脱進機は、前記間欠伝動装置がゼネバ機構である場合がある。
この場合には、加工が簡単で特別な曲線などがないため、一般の工作機械で高い精度を得られる。また、確動形であり、かつ間欠伝動の際の加速と減速の運動性が良好であるため、確実で滑らかな間欠作動が得られる。
(7)また、本発明に係る調速脱進機は、前記ゼネバ機構の前記原動車が単層で構成される場合がある。
この場合には、ピン歯車と、ロック歯車との二層で構成されるゼネバ機構の原動車を、単層にすることができ、間欠伝動装置を薄く構成することができる。
(8)また、本発明に係る調速脱進機は、前記振り石を、前記ゼネバ機構の前記従動車に備える場合がある。
この場合には、振り石を保持する振り座を設けることなく、従動車に振り座の機能を兼ねさせることができるため、間欠伝動装置を薄く構成することができる。
(9)また、本発明に係る調速脱進機は、前記振り石を、前記ゼネバ機構の前記従動車の歯部に備える場合がある。
この場合には、従動車の溝の位相に振り石を保持する場合に比べて、従動車の最外径を小さくすることができるため、間欠伝動装置を小型化することができる。
(10)また、本発明に係る調速脱進機は、ひげぜんまいの外端位置が、前記間欠伝動装置の係合位相に対して、前記てん真を中心に角度調整可能に取り付けられる場合がある。
この場合には、組み立て状態で調速機の自由状態を、脱進機の作動角度に対して調整することができ、歩度の調整を容易に行うことができる。
本発明によれば、調速機の振幅を大きく維持することができ、しかも所定の振り角で脱進させることができるため、安定した計時精度を持つ脱進機、ムーブメント、時計とすることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明に係る第1 実施形態について図面を参照して時系列で説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。
以下、本発明に係る第1 実施形態について図面を参照して時系列で説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れたものを時計の完成品と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、文字板のある側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、裏蓋を開けたときに対面する側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、本実施形態の時計1の完成品は、ケース10内に、ムーブメント11と、時刻を示す文字板14と、分針15bと、時針15cとを備えている。
図2に示すように、ムーブメント11は基板を構成する地板13を有している。なお、図2は、表側から見たムーブメント10の正面図である。地板13の表側には、動力ぜんまいを収めた香箱16aと、2番車16bと、3番車16cと、4番車16dと、がんぎ車7と、からなる増速輪列16が備えられ、さらに本発明に係る調速脱進機2が増速輪列16と係合しつつ地板13および図示しない輪列受によりに軸支される。なお、裏輪列、巻きおよび時合わせ装置など、調速脱進機以外の部品の図示を省略している。
図3に示すように、調速脱進機2は増速輪列16の回転を規制する脱進機5と、増速輪列16の回転速度を規制する調速機3と、脱進機5と、調速機3との間に介装され、脱進機5と調速機3とに係合する間欠伝動装置4とを備える。本発明に係る脱進機は、間欠伝動装置4と脱進機5とが協働して脱進作動を行うため、間欠伝動装置4と脱進機5とを含む部分を拡張脱進機45と称する。なお、本実施形態では、脱進機5にクラブ・トゥースレバー脱進機を用いる。また、図3は調速脱進機2を裏側から見た背面図である。
(ひげぜんまい)
図4は本実施形態の調速脱進機2の部分正面図であり、ひげ持17の図示を省略している。ひげぜんまい36は、内端をひげ玉34の内端点36aで、第1楔35を用いて係止されており、外端をひげ持37の外端点36bで、第2楔38を用いて係止されている。また、本実施形態は巻き上げひげぜんまいを用いた例を示し、内端点36aから曲げ始点36cまでの螺旋部に対し、曲げ始点36cから外端点36bまでをてん真32の軸方向にずれた円弧状に形成されている。なお、本発明では、てん真32の軸線において、地板13からみててんぷ31が位置する方向を上方と定義する。
図4は本実施形態の調速脱進機2の部分正面図であり、ひげ持17の図示を省略している。ひげぜんまい36は、内端をひげ玉34の内端点36aで、第1楔35を用いて係止されており、外端をひげ持37の外端点36bで、第2楔38を用いて係止されている。また、本実施形態は巻き上げひげぜんまいを用いた例を示し、内端点36aから曲げ始点36cまでの螺旋部に対し、曲げ始点36cから外端点36bまでをてん真32の軸方向にずれた円弧状に形成されている。なお、本発明では、てん真32の軸線において、地板13からみててんぷ31が位置する方向を上方と定義する。
図4において、てん真32の中心に対して、ひげぜんまい36の内端から外端へ辿る方向に、ひげぜんまい36の内端点36aと、外端点36bとがなす角を、「巻き込み角」と称し、符号αで示す。また、同様にひげぜんまい36の曲げ始点36cと、外端点36bとがなす角を「巻き上げ角」と称し、符号βで示す。
本実施形態では、てん真32のほぞ部に生じるラジアル方向の弾性力を最小化するため、ひげぜんまい36がてん真32を中心に偏心することなく拡縮するよう、外部の巻き上げ角βはフィリップスの条件に従い略245°に、また内部はグロスマンの条件に従う曲線に形成される。それ以外の螺旋部はアルキメデス曲線に沿う渦巻き状に形成される。
また、本実施形態では、ひげぜんまい36の巻き込み角αは略90°に設定されている。一般に巻き込み角αが0°あるいは180°であるときに、振幅が平等時性に及ぼす影響が最大となり、巻き込み角αが90°に近いほど、振幅の影響を抑制することができる。また、平等時性への影響は、振幅が大きいほど影響が大きくなる。これにより、本発明のように振幅が略340°を大きく超える場合は、巻き込み角αを90°にすることにより、振幅が平等時性に及ぼす影響を効果的に最小化することができる。なお、本実施形態では、巻き上げひげぜんまいを使用する例を示したが、平ひげぜんまいを用いても良く、その場合の巻き込み角αの扱いも前記と同様である。
図5は調速脱進機2のうち、脱進機5と間欠伝動装置4とを示した図であり、てんぷ31とひげ玉34の図示を省略している。脱進機5は、がんぎ車7と、規制梃であるアンクル54と、1対のどてピン58と、振り石52とから構成される。また、間欠伝動装置4は原動車41と従動車42と、から構成される。なお、本実施形態では間欠伝動装置4にゼネバ機構を採用する場合を例として示す。
がんぎ車7およびがんぎかな72はがんぎ車真71と一体に結合される。増速輪列16から伝達されるトルクは、がんぎかな72により、がんぎ歯73へと伝えられる。てん真32、従動車真43、アンクル真54a、がんぎ車真71における軸方向の両端には、先細りさせたほぞ部が形成されている。てん真32、従動車真43、アンクル真54a、がんぎ車真71はほぞ部を介して、地板13と図示しない輪列受(軸受)との間とで軸支される。アンクル54は一体に結合された入爪55と出爪56とを含み、アンクル54の揺動にともない、がんぎ歯73と交互に離合することで、がんぎ車7の回転を規制する。
(間欠伝動装置)
本実施形態では薄型化を図るため、間欠伝動装置4の原動車41が一般に用いられるピンホイールとロックホイールとから構成される方式に換えて、時計の動力ぜんまいの巻き止め装置に用いられるフィンガー・ピース型のゼネバ機構を採用した例を示す。原動車41はてん真32と同軸に結合されており、てん真32を中心に回動する。また、従動車42は従動車真43と同軸に結合されており、従動車真43を中心に回動する。
本実施形態では薄型化を図るため、間欠伝動装置4の原動車41が一般に用いられるピンホイールとロックホイールとから構成される方式に換えて、時計の動力ぜんまいの巻き止め装置に用いられるフィンガー・ピース型のゼネバ機構を採用した例を示す。原動車41はてん真32と同軸に結合されており、てん真32を中心に回動する。また、従動車42は従動車真43と同軸に結合されており、従動車真43を中心に回動する。
原動車41は凸状をなす指41aと、停止面41bと、2か所の凹部41cとを有する。また、本実施形態では、てんぷの振幅が660°である場合を例に示す。間欠伝動装置4の従動車42(ゼネバホイール)は、660°の振幅に対応できるよう、歯数が5歯に設定されている。従動車42は、歯数と同じ数の5箇所の溝42aと、歯数の倍の数の10箇所の衝撃面42bと、歯数と同じ数の5箇所の停止面42cとを有する。ただし、従動車42の歯数は5歯に限定されるものではなく、振幅に応じて歯数は適宜変更される。
従動車42は、原動車41の指41aが従動車42の衝撃面42bと係合するときに回動し、原動車41の停止面41bが従動車42の停止面42cと係合するときには回動せず停止する。従動車42には振り石52がアンクル又54eと係合するよう、従動車42から突出して結合される。また、振り石52は図5の例では従動車42の歯の中心に備えられている。これにより、振り石52は従動車42と一体で往復回動し、その途中でアンクル54の先端部にあるアンクル又54eの凹部を形成するアンクル箱54fの衝撃面541fおよび542fと離脱可能に係合する。なお、原動車41の指41aと、従動車42の溝42aとの隙間(箱先あがき)は極僅かな隙間量、例えば10ミクロン程に設定される。
本実施形態では、調速脱進機2をムーブメント11に収める際に、てん真32と、従動車真43と、アンクル真54aと、がんぎ車真71とが、ムーブメント11上に単一の直線上に配置している。これにより、てん真32とがんぎ車真71との距離を最も遠ざけることができ、てんぷ31が大径化した場合でも互いに干渉しにくい設計とすることができる。また、従動車42の歯数が奇数に設定され、しかも振り石52を従動車42の歯42dに備えるため、前記の直線配置において、振り石52とアンクル又54eとの係合と、原動車41の指41aと溝42aとの係合とを同時に生じさせることができる。
(振り石とアンクル箱)
図6および図8に示すように、小つば51bは従動車真43と同軸に結合される。小つば51bは、振り石52に対して径方向に対応する位置に、径方向の内側に曲面状に凹むつきがた51cが形成されている。つきがた51cは、アンクル箱54fの衝撃面541fおよび542fと振り石52とが係合しているときに、剣先54hが小つば51bと接触することを防止する逃げ部として機能する。また、小つば51bの外周面のうちつきがた51cを除く部分は、アンクル又54eの下方に備わる剣先54hが摺接可能とされており、外乱で生じる脱進機5の誤作動を防止する安全機能を有する。なお、図6は拡張脱進機45の右側の側面図であり、図8は間欠伝動装置4を示した正面図である。
図6および図8に示すように、小つば51bは従動車真43と同軸に結合される。小つば51bは、振り石52に対して径方向に対応する位置に、径方向の内側に曲面状に凹むつきがた51cが形成されている。つきがた51cは、アンクル箱54fの衝撃面541fおよび542fと振り石52とが係合しているときに、剣先54hが小つば51bと接触することを防止する逃げ部として機能する。また、小つば51bの外周面のうちつきがた51cを除く部分は、アンクル又54eの下方に備わる剣先54hが摺接可能とされており、外乱で生じる脱進機5の誤作動を防止する安全機能を有する。なお、図6は拡張脱進機45の右側の側面図であり、図8は間欠伝動装置4を示した正面図である。
(摺動部品の材質)
脱進の際に摺動する部位を含む、振り石52、入爪55、出爪56、原動車41、従動車42、および図示されない軸受(ラジアル軸受およびスラスト軸受)のうち、少なくとも一つ以上が、ルビー等の人工宝石か、潤滑材が含侵可能な多孔体である焼結金属体か、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)等を被膜処理した金属体か、から形成され、低摩擦性と、耐摩耗性とが付与される。これにより長期にわたり滑らかで、摩耗の少ない脱進作動が確保される。
脱進の際に摺動する部位を含む、振り石52、入爪55、出爪56、原動車41、従動車42、および図示されない軸受(ラジアル軸受およびスラスト軸受)のうち、少なくとも一つ以上が、ルビー等の人工宝石か、潤滑材が含侵可能な多孔体である焼結金属体か、DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)等を被膜処理した金属体か、から形成され、低摩擦性と、耐摩耗性とが付与される。これにより長期にわたり滑らかで、摩耗の少ない脱進作動が確保される。
(軸線と回転方向)
図7は調速機3の自由状態、すなわちひげぜんまい36の自由状態であり、拡張脱進機45を構成する部品のうち、原動車41、従動車42、およびアンクル54の基準(各要素の回転角が0°)にある状態を示す正面図である。基準状態では、原動車41の指41aが、従動車42の溝423aに正対し、また、振り石52がアンクル箱54fに正対する配置となる。
図7は調速機3の自由状態、すなわちひげぜんまい36の自由状態であり、拡張脱進機45を構成する部品のうち、原動車41、従動車42、およびアンクル54の基準(各要素の回転角が0°)にある状態を示す正面図である。基準状態では、原動車41の指41aが、従動車42の溝423aに正対し、また、振り石52がアンクル箱54fに正対する配置となる。
第1実施形態の脱進作動を説明するに当たり、回転軸と回転方向を図7に従い次の通り定義する。てんぷ31と一体回転する原動車41は、軸線O1を中心として互いに逆向きの第1回転方向M1および第2回転方向M2に往復回転する。また、従動車42は、軸線O2を中心として互いに逆向きの第3回転方向M3および第4回転方向M4に回動する。アンクル54は、軸線O3を中心として互いに逆向きの第5回転方向M5および第6回転方向M6に揺動する。がんぎ車7は、軸線O4を中心に、第7回転方向M7に回転するが、脱進の停止解除工程において極僅かに第8回転方向M8に逆転する。また、軸線O1から軸線O4までを含む平面を、正面図に投影して描かれる直線を直線CLと定義する。
また、間欠伝動装置4の各部に対応する符号を図8に、脱進機5の各部に対応する符号を図9に示す。なお、図8および図9は、図7に示す基準状態における詳細説明図である。基準状態では、原動車41の指41aが従動車42の溝423aに対して直線CL上に位置した状態で係合する。また、振り石52がアンクル箱54fに対して直線CL上に位置した状態で係合する。また、これら係合は従動車真43をまたいで互いに反対の位置に存在する。
(脱進作動の説明)
以下、第1実施形態における1周期分の脱進作動を図10から図25を用いて時系列で説明する。なお、図10から図25は拡張脱進機45を示す正面図である。
以下、第1実施形態における1周期分の脱進作動を図10から図25を用いて時系列で説明する。なお、図10から図25は拡張脱進機45を示す正面図である。
図10は第1実施形態における第1停止解除工程前の作動説明図であって、出爪56によりがんぎ車7の停止状態を解除する前の状態を示す。図10は、てんぷ31の回転角が、調速機3の自由状態に対して、-90°にある状態を示す。
拡張脱進機45は、以前の脱進作動により、振り石52が中心線CLに対してM4方向に36°回動した位置にある。また、アンクル54は中心線CLに対してM6方向に揺動しており、アンクル竿54dがどてピン58aにより押止されている。また、てんぷ31とM1方向に一体回動する原動車41の停止面41bが、従動車42の停止面423cと係合しているため、従動車42は回動を停止している状態である。
がんぎ車7はM7方向のトルクを受けるが、アンクル54にある出爪56の停止面56aが、がんぎ歯732の停止面732aを係止するため、がんぎ車7は停止の状態に規制される。また、互いに押圧する停止面は回転方向に対して直角ではなく、僅かに角度が付けられているため、アンクル54はがんぎ車7のトルクによりM6方向のトルクを受ける「引き」の作用が付与されてどてピン58aにより押止される。この引きの作用により、アンクル54に外乱が入力された場合でも、アンクル竿54dをどてピン58aから離すことなく押止した状態を維持することができる。
図11は第1停止解除工程を示す説明図である。図11は、てんぷ31が図10で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。原動車41の指41aは、従動車42の溝423aに収容されており、衝撃面424bと係合している。また、原動車41の凹部41c内に、停止面422cと、停止面423cとが、それぞれ対応して収容されるため、図10において係合していた原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面423cとの係合が解除される。これにより、従動車42はM3方向に回動する。
従動車42の回動にともない、振り石52はアンクル54の衝撃面541fと係合し、押圧する。これにより、アンクル54はM5方向へ揺動する。脱進機5は第1停止解除工程前まで出爪56とがんぎ歯732とが係合し、停止した状態であったが、アンクル54の揺動により、出爪56の停止面56aと、がんぎ歯732の停止面732aとの喰い込み量が減少し、出爪56のロッキングコーナー56bが、がんぎ歯732の歯の爪先732bを過ぎた時点でがんぎ車の停止が解除される。
なお、第1停止解除工程では、引きを与えるよう設定された出爪56とがんぎ歯732との係合が解かれる際、極僅かにM8方向にがんぎ車7を巻き戻す仕事を行う。これにより、調速機3は保有するエネルギーを極僅かに損失する。
図12は第1付勢工程を示す説明図である。図12は、てんぷ31が図11で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。第1停止解除工程後、脱進機5はがんぎ歯732の衝撃面732cが、出爪56の衝撃面56cと摺接しながら押圧する。これにより、がんぎ車7はM7方向に回転を開始する。
出爪56の衝撃面56cががんぎ歯732の衝撃面732cにより押圧されることで、アンクル54はM5方向に付勢され、揺動が加速される。これにより、アンクル箱54fの衝撃面541fを押圧していた振り石52が、衝撃面541fから係脱し、対向する衝撃面542fと係合してアンクル54から押勢される状態へ遷移する。これにより、従動車42はM3方向に付勢される。
従動車42の加速により、従動車42の衝撃面424bを押圧していた指41aが、衝撃面424bから係脱し、対向する衝撃面423bと係合して従動車42から押勢される状態へと遷移する。これにより、原動車41はM1方向に付勢される。これにより、動力ぜんまいからのトルクが増速輪列16、脱進機5、間欠伝動装置4を経て調速機3へ伝わり、調速機3は第1停止解除工程で損失する量よりも格段に大きいエネルギーを得ることができる。
図13は第1空転工程前を示す説明図である。図13は、てんぷ31が図12で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。第1付勢工程後、振り石52は従動車42の回動にともないアンクル箱54fから離脱する。従動車42がさらに回動すると、従動車42の停止面422cと原動車41の停止面41bとが係合するため、てんぷ31が回転を継続しても、従動車42は回動が停止される状態を維持する。なお、従動車42の停止面422cと、原動車41の停止面41bとの係合は、外力により互いに押圧する関係になく、係合面に介在する潤滑油を介して流体潤滑状態で離間されるため、調速機3の保有するエネルギーを大きく損なうことがない。
また、アンクル54はM5方向に揺動した後、アンクル竿54dがどてピン58bにより押止された状態となる。また、がんぎ歯735の停止面735aが入爪55の停止面55aを押圧するため、アンクル竿54dが引きの作用によりどてピン58bに押止された状態を維持する。
図14は第1空転工程後を示す説明図である。図14は、てんぷ31が図13で示した状態からM1方向に回転し、調速機3の自由状態に対して、M1方向へ360°以上回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の衝撃面422bと係合した後、従動車42をM3方向に1歯分だけ回動した状態にある。同時に、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、脱進機5に対して全く影響を及ぼさず、また、従動車42も脱進機5からも全く影響を及ぼされない。なお、本発明では脱進に対して全く影響しない従動車42の回動作動を「空転」と称する。
空転時、係合部位では摺動摩擦が生じるため、調速機3は保有するエネルギーを極僅かに損失する。この損失を本発明では「空転損失」と称する。この空転損失は、各付勢工程により得られるエネルギーに対しては十分小さいため、振幅を大きく減じる影響を及ぼさない。なお、この空転損失が等時性へ及ぼす影響については後述する。
第1空転工程後、てんぷ31は振り当たることなく回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面421cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図15は第1振幅を迎えた状態を示す説明図である。図15は、てんぷ31が図14で示した状態からM1方向に回転し、調速機3の自由状態に対してM1方向へ660°回転した状態を示す。てんぷ31は第1振幅で最大振り角を迎えた後、M1方向からM2方向へと反転する。なお、本実施形態では図15および、後述する図22の状態を、それぞれ第1振幅および第2振幅として示すが、振幅は660°に限らず、ひげぜんまい36の弾性が許す範囲まで、また、振り石52がアンクル又54cのくわがた541gあるいは542gと接触しない範囲まで拡大しても良い。また、振幅をさらに拡大する場合は、従動車42の歯数を適宜変更することで、さらに多くの空転回数に対応することができる。
図16は第2空転工程前を示す説明図である。図15は、てんぷ31が図15で示したM1方向の最大振り角の後、M2方向に回転方向を反転している状態を示す。また、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面421cとが係合しているため、従動車42の回動は停止した状態を維持している。てんぷ31がさらに回転すると、原動車41の指41aは、従動車42の溝422aに収容されつつ、衝撃面421bと係合する。
図17は第2空転工程後を示す説明図である。図17は、てんぷ31が図16で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の衝撃面421bと係合した後、従動車42をM4方向に1歯分だけ回動させる。当時に、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第2空転工程後、てんぷ31はM2方向へ回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面422cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図18は第2停止解除工程前を示す説明図である。図18は、てんぷ31が図17で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。原動車41の指41aは、従動車42の溝423aに収容されており、衝撃面423bと係合している。
従動車42の回動にともない、振り石52はアンクル54の衝撃面542fと係合し押圧する。これにより、アンクル54はM6方向へ揺動する。脱進機5は第2停止解除工程前まで入爪55とがんぎ歯735とが係合し、停止した状態であったが、アンクル54の揺動により、入爪55の停止面55aと、がんぎ歯735の停止面735aとの喰い込み量が減少し、入爪55のロッキングコーナー55bが、がんぎ歯735の歯の爪先735bを過ぎた時点でがんぎ車の停止が解除される。
なお、第2停止解除工程では、第1停止解除工程と同様に、引きを与えるよう設定された入爪55と、がんぎ歯735との係合が解かれる際に、極僅かにM8方向にがんぎ車7を巻き戻す仕事を行う。これにより、調速機3は保有するエネルギーを極僅かに損失する。
図19は第2付勢工程を示す説明図である。図19は、てんぷ31が図18で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。第2停止解除工程後、脱進機5はがんぎ歯735の衝撃面735cが入爪55の衝撃面55cと摺接しながら押圧する。これにより、がんぎ車7はM7方向に回転を開始する。
入爪55の衝撃面55cががんぎ歯735の衝撃面735cにより押圧されることで、アンクル54はM6方向に付勢され、揺動が加速される。これにより、アンクル箱54fの衝撃面542fを押圧していた振り石52が、衝撃面542fから係脱し、対向する衝撃面541fと係合してアンクル54から押勢される状態へ遷移する。これにより、従動車42はM4方向に付勢される。
従動車42の加速により、従動車42の衝撃面424bを押圧していた指41aが、衝撃面424bから係脱し、対向する衝撃面423bと係合して従動車42から押勢される状態へと遷移する。これにより、原動車41はM1方向に付勢される。これにより、動力ぜんまいからのトルクが増速輪列16、脱進機5、間欠伝動装置4を経て調速機3へ伝わり、調速機3は第2停止解除工程で損失した量よりも大きいエネルギーを得ることができる。
図20は第3空転工程前を示す説明図である。図20は、てんぷ31が図19で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。第2付勢工程後、てんぷ31は回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面423cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
また、アンクル54は、M5方向に揺動した後、アンクル竿54dがどてピン58aにより押止された状態となる。また、がんぎ歯733の停止面733aが出爪56の停止面56aを押圧するため、アンクル竿54dが引きの作用によりどてピン58aに押止された状態を維持する。
従動車42と一体回動する振り石52は、従動車42の回動にともないアンクル箱54fから離脱する。従動車42がさらに回動すると、従動車42の停止面423cが原動車41の停止面41bと係合し、停止状態を維持する。てんぷ31がさらに回転すると、原動車41の指41aは、従動車42の溝424aに収容されつつ、衝撃面425bと係合する。
図21は第3空転工程後を示す説明図である。図21は、てんぷ31が図20で示した状態からM2方向に回転し、調速機3の自由状態に対して、M2方向へ360°以上回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の衝撃面425bと係合した後、従動車42をM4方向に1歯分だけ回動した状態である。同時に、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第3空転工程後、てんぷ31は振り当たることなく回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面424cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図22は第2振幅を迎えた状態を示す説明図である。図22は、てんぷ31が図21で示した状態からM2方向に回転し、調速機3の自由状態に対してM2方向へ660°回転した状態を示す。てんぷ31の回転方向は最大振り角を迎えた後、M2方向からM1方向へと反転する。
図23は第4空転工程前を示す説明図である。図23は、てんぷ31が図22で示したM2方向の最大振り角の後、M1方向に回転方向を反転している状態を示す。また、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面424cとが係合しているため、従動車42の回動は停止した状態を維持している。てんぷ31がさらに回転すると、原動車41の指41aは、従動車42の溝424aに収容されつつ、衝撃面426bと係合する。
図24は第4空転工程後を示す説明図である。図24は、てんぷ31が図23で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の衝撃面426bと係合した後、従動車42をM3方向に1歯分だけ回動させる。同時に、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第4空転工程後、てんぷ31はM1方向へ回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面423cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図25は、1周期が終了する前を示す説明図である。図25は、てんぷ31が図24で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。
てんぷ31の回転にともない、原動車41の指41aは、再び従動車42の溝423aに収容され、衝撃面424bと係合して、次の周期における第1停止解除工程へ遷移する。本実施形態に示す調速脱進機2はこのように脱進作動を行う。
(振幅の影響)
一般に、調速脱進機の品質を示す指標に品質係数(Quality Factor、Q値)が存在する。品質係数は、外乱による計時精度への影響の度合いを示し、数値が大きいほど外乱の影響を受けにくく、優れた調速機であるといえる。クラブ・トゥースレバー脱進機を代表とする従来の脱進機の品質係数はおおよそ100から300程度とされる。
一般に、調速脱進機の品質を示す指標に品質係数(Quality Factor、Q値)が存在する。品質係数は、外乱による計時精度への影響の度合いを示し、数値が大きいほど外乱の影響を受けにくく、優れた調速機であるといえる。クラブ・トゥースレバー脱進機を代表とする従来の脱進機の品質係数はおおよそ100から300程度とされる。
なお、品質係数Qは下記の数式1で与えられる。
ここで、Eは調速器の保有エネルギーであり、ひげぜんまいの捩じりばね定数kと、調速機の振幅Aとで表すことができる。また、ΔEは調速機が損失するエネルギーを表す。なお、品質係数の単位は無次元である。
また、計時精度の品質を示す指標として計時誤差(日差)が知られている。計時誤差は時計の精度を短時間に測定し1日当たりの進み・遅れに換算した値であり、符号はδ、単位は秒/日である。計時誤差が進みの場合をプラス(+)、遅れの場合をマイナス(-)で表す。計時精度は、温度変化と姿勢変化の影響を除けば、主に外乱振動と脱進機作動とから影響される。
なお、計時誤差δの一般式はエアリーの定理に基づき、下記の数式2で与えられる。(非特許文献1参照)
ここで、kはひげぜんまいの捩じりばね定数、Tは調速器の周期、f(θ)は調速機に生じる外力トルク、θは調速機に生じる外力トルクf(θ)が発生する振り角を表す。なお、δの単位は秒/周期である。
前記、品質係数を表す数式1および計時誤差を表す数式2には、調速機の保有エネルギー(kA2/2)の項が含まれる。品質係数を向上させ、計時誤差δを減少するには、それらに2乗で影響する因子である、振幅Aを大きくすることが最も効果的である。従来の脱進機では、振り当たりの問題のため振幅を略340°以上に拡大することができなかったが、本発明による調速脱進機2によれば、振り当たりが生じないため、略340°を格段に超える振幅を得ることが可能となる。例えば、数式1および数式2に基づけば、振幅Aを2倍に拡大した場合には、品質係数が4倍に向上し、計時誤差δが1/4に減少する。
(空転の影響)
図26は本実施形態におけるてんぷ31、従動車42の回動角変化を、横軸を振動の位相角、縦軸をてんぷ31の振り角で表示した図である。実線91はてんぷ31の往復回転を、破線92は従動車42の回動を表している。横軸の0ラジアンから2πラジアンに相当する範囲が振動の1周期に相当する。
図26は本実施形態におけるてんぷ31、従動車42の回動角変化を、横軸を振動の位相角、縦軸をてんぷ31の振り角で表示した図である。実線91はてんぷ31の往復回転を、破線92は従動車42の回動を表している。横軸の0ラジアンから2πラジアンに相当する範囲が振動の1周期に相当する。
点91aは第1停止解除工程および第1付勢工程の時点を、点91bは第1空転工程の時点を、点91cは第1振幅の時点を、点91dは第2空転工程の時点を、点91eは第2停止解除工程および第2付勢工程の時点を、点91fは第3空転工程の時点を、点91gは第2振幅の時点を、点91hは第4空転工程の時点を、点91gは当該周期の終了時点を示している。
空転が起こる点91bと点91d、および点91fと点91hは、それぞれ調速機3の自由状態に相当する位相である0ラジアンおよびπラジアンに対して対称な位相に位置する。また点91bと点91d、および点91fと点91hの摩擦トルクは大きさが同じで作用の方向は互いに逆向きである。すなわち、空転時の摩擦トルクは調速機3の自由状態に対して常に対称かつ等量で発生する。また、この関係は、振幅をより大きくし、空転回数がより多く発生する場合においても同様である。これら空転時のトルクが歩度に及ぼす影響について次に説明する。
図27、および図28は、横軸をてんぷ31の回転角に、縦軸をてん真32に生じるトルク(実線94)と、トルクにより生じる計時誤差(破線95)の大きさを示す図である。図27の横軸はてんぷ31がM1方向に回転する場合を、図28はてんぷ31がM2方向に回転する場合を示す。実線94はてん真32に生じるトルクを、破線95はトルクにより生じる計時誤差の大きさを表す。なお、トルクの符号は、てんぷ31を付勢する場合を正とする。
ここで、計時誤差は、エアリーの定理に基づく数式2から、外力トルクが大きいほど、また調速機3の自由状態に対する振り角が大きいほど影響は大きくなる。また、計時誤差は、調速機3の自由状態の前で加速されるか、調速機3の自由状態の後で減速される場合は進みとなり、調速機3の自由状態より前で減速されるか、調速機3の自由状態より後で加速される場合は遅れとなる。これにより、図27、図28のいずれにおいても、第1象限と、第3象限で外力トルクが生じた場合は計時誤差が遅れとなり、第2象限と、第4象限で外力トルクが生じた場合は計時誤差が進みとなる。
図27、および図28において、線94aは脱進機を停止解除するときに生じるトルクを、線94bと線94cはがんぎ歯の踵がアンクル爪石の衝撃面を押勢する時に生じるトルクを、線94dはがんぎ歯の衝撃面がアンクル爪石のレットオフコーナーを押勢する時に生じるトルクを示しており、また線94eおよび線94fは間欠伝動装置4の空転時に生じるトルクを示している。破線95に示す計時誤差は、脱進機の作動に起因するため、他の計時誤差と区別して「脱進機誤差」と称される。
ここで、間欠伝動装置4の空転時の摩擦トルク94e、および94fは、その量が極僅かであっても、調速機3の自由状態に対して大きい振り角で生じるため、個々で見た場合には等時性への影響が大きい。しかし、前記の通り空転時の摩擦トルクは調速機3の自由状態に対して常に対称かつ等量で発生するため、第3象限で発生する遅れと、第4象限で発生する進みとが、互いに打ち消し合う関係となる。すなわち、間欠伝動装置4の空転による摩擦トルクが調速機3の自由状態に対して対称に生じる限り、計時誤差に対して全く影響を及ぼさない。
前記計時誤差の相殺を発生させるには、空転を調速機3の自由状態に対して対称の位相で生じる設定とする必要があるが、本実施形態に係る調速脱進機2では、ひげぜんまい36の外端がてん真32を中心に角度調節可能なひげ持受62に結合される構造を有するため、間欠伝動装置4と調速機3の自由状態との角度を適切に調整することができる。これにより、空転の都度に生じる計時誤差を精度よく相殺することができる。
また、脱進機5が生じるトルク94a、94b、94c、94dは、従来のクラブ・トゥースレバー脱進機と同様であるが、本実施形態に係る調速脱進機2はてんぷ31の振幅が略340°よりも格段に大きいため、式2に基づき脱進機誤差が振幅の増加率の2乗に反比例して減少する。これにより、従来のクラブ・トゥースレバー脱進機よりも計時精度を格段に向上することができる。
(効果)
したがって、本発明に係る第1実施形態に係る調速脱進機によれば、てんぷの振幅が略340°を超えても振り当たりを生じることなく、従来の脱進機よりも格段に大きい振幅を実現できる。これにより、品質係数(Q値)を格段に大きくすることができ、計時精度を格段に向上することができる。また、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。また、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
したがって、本発明に係る第1実施形態に係る調速脱進機によれば、てんぷの振幅が略340°を超えても振り当たりを生じることなく、従来の脱進機よりも格段に大きい振幅を実現できる。これにより、品質係数(Q値)を格段に大きくすることができ、計時精度を格段に向上することができる。また、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。また、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
また、計時精度が向上するため、振動数を下げるだけの余裕が生まれる。これにより、動力ぜんまいの弛緩速度を低下することができ、作動時間を長くすることが可能となる。
なお、本実施形態では、間欠伝動装置4にゼネバ機構を用いた事例を紹介したが、一般に知られる間欠伝動装置、例えば間欠歯車やカム装置を用いてもよい。
また、本実施形態では、てん真32と、従動車真43と、アンクル真54aと、がんぎ車真71とを、ムーブメントの上方から見て一直線上に配列する例を示したが、振り石52がアンクル又54eと係合するときに指41aが衝撃面42bと係合すれば一直線上に配列する必要はなく、ムーブメントの設計に応じて適宜配置を変えてもよい。
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図29を参照して説明する。本2実施形態は、脱進機5が第1実施形態におけるクラブ・トゥースレバー脱進機から、摩擦損失の少ないデテント脱進機(掛けがね脱進機、あるいはクロノメーター脱進機)に置き換えた態様となる。拡張脱進機45を除く構成は第1実施形態と同じである。以下の実施形態において説明しない構成、作用および効果は、第1実施形態と同様であるため省略する。
次に、本発明に係る第2実施形態について図29を参照して説明する。本2実施形態は、脱進機5が第1実施形態におけるクラブ・トゥースレバー脱進機から、摩擦損失の少ないデテント脱進機(掛けがね脱進機、あるいはクロノメーター脱進機)に置き換えた態様となる。拡張脱進機45を除く構成は第1実施形態と同じである。以下の実施形態において説明しない構成、作用および効果は、第1実施形態と同様であるため省略する。
図29は調速機3の自由状態、すなわちひげぜんまい36の自由状態であり、拡張脱進機45を構成する部品のうち、原動車41、従動車42、および規制梃としてのデテントアーム(掛けがね)59が基準(各要素の回転角が0°)にある状態を示す正面図である。
本実施形態では、脱進機5の構成部品である振り座51が、間欠伝動装置4の従動車42と同軸に結合されている。また、基準状態では、原動車41の指41aが従動車42の溝423aに係合し、また、振り石52がデテントアーム59に係合する。なお、従動車42にある溝423aは、従動車真43に対して振り石52の正反対に位置する溝に相当する。
本実施形態では、デテント脱進機を採用しているため、従動車42がM4方向に回動する場合のみ、振り石52がデテントアーム59をM6方向へ揺動させて、がんぎ車7がM7方向に1歯分だけ回転する。また、従動車42がM3方向に回動する場合には、振り石52がテデントアーム59に往なされるため、デテントアーム59は揺動せず、がんぎ車7は回転しない。なお、脱進作動が従動車42のM4方向でのみ行われる点を除き、拡張脱進機45の作動原理は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
(効果)
したがって、本発明に係る第2実施形態に係る調速脱進機によれば、従来のデテント脱進機において、てんぷの振り当たりを生じることなく、格段に大きい振幅を実現できる。これにより、高い品質係数が得られ、計時精度を格段に向上することができる。さらに、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。さらに、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
したがって、本発明に係る第2実施形態に係る調速脱進機によれば、従来のデテント脱進機において、てんぷの振り当たりを生じることなく、格段に大きい振幅を実現できる。これにより、高い品質係数が得られ、計時精度を格段に向上することができる。さらに、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。さらに、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
また、計時精度が向上するため、振動数を下げるだけの余裕が生まれる。これにより、動力ぜんまいの弛緩速度を低下することができ、作動時間を長くすることが可能となる。
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。第1実施形態では、調速脱進機2を構成する部品の回転軸が、地板13に軸支されていたが、第3実施形態では、調速脱進機2を、1つのキャリアアッセンブリ6に搭載し、一定の周期でキャリアアッセンブリ6を、キャリア真67を中心に間欠回転可能とした態様となる。また、第1実施形態および第2実施形態では、調速脱進機2が間欠伝動装置4を介して付勢されていたが、第3実施形態では、以下説明する通り、調速脱進機2がひげぜんまい36を介して付勢される態様とされている。また、本実施形態も、てんぷの振幅が660°である場合を例に示す。
次に、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。第1実施形態では、調速脱進機2を構成する部品の回転軸が、地板13に軸支されていたが、第3実施形態では、調速脱進機2を、1つのキャリアアッセンブリ6に搭載し、一定の周期でキャリアアッセンブリ6を、キャリア真67を中心に間欠回転可能とした態様となる。また、第1実施形態および第2実施形態では、調速脱進機2が間欠伝動装置4を介して付勢されていたが、第3実施形態では、以下説明する通り、調速脱進機2がひげぜんまい36を介して付勢される態様とされている。また、本実施形態も、てんぷの振幅が660°である場合を例に示す。
図30は、第3実施形態の調速脱進機2を搭載するムーブメント11を表側から見た斜視図である。なお、地板13に実装される増速輪列16、裏輪列、巻きおよび時合わせ装置等の、調速脱進機以外の部品の図示を省略している。地板13の表側には、調速脱進機2を備えている。調速脱進機2に備えるてん真32は、地板13に固定したてんぷ受17により軸支される。
図31は調速脱進機2のみを図示した斜視図であり、また図32は、調速脱進機2をサブアセンブリの階層で分解した状態の側面図である。調速脱進機2は、調速機3と、キャリアアッセンブリ6と、キャリア受8のサブアッセンブリから構成される。これにより、サブアッセンブリ単位での組み立て作業、調整作業を可能としている。
調速機3は、軸支されるてん真32と、てん真32と同軸に結合されるてんぷ31と、ひげ玉34と、ひげぜんまい36と、間欠伝動装置4の原動車41と、軸受19と軸受33とを有する。また、キャリアアッセンブリ6は、間欠伝動装置4と、脱進機5を作動可能に保持する。また、キャリア受8は地板13に固定され、がんぎ車7が同軸に固定される。
図32に示す軸線O1はてん真32とキャリア真67との共通の中心線であり、軸線O1上に、調速機3と、キャリアアッセンブリ6と、キャリア受8とが同軸に組み合わされる。また、ひげぜんまい36の外端に結合されたひげ持37が、キャリアアッセンブリ6に把持されたひげ持受62の先端部に結合された締結部62dの穴に遊挿され、止めねじ62eにより押止される。これにより、ひげぜんまい36は、調速機3とキャリアアッセンブリ6とを弾接し、キャリアアッセンブリ6が回転する時にひげぜんまい36を捩じることができる。
図33は調速脱進機2の平面図である。また、図33の切断線A-Aにおける断面図を図34に示す。てん真32には、てんぷ31と、ひげ玉34とが同軸に結合され、てん真32の両端には、軸受19と軸受33の各内輪が嵌装される。また、軸受19の外輪はてんぷ受17の構成部品であるアーム18に嵌装され、軸受33の外輪はキャリア真67の上方に設けられた軸箱部に嵌装される。また、軸受68aと軸受68bの各内輪がキャリア真67に嵌装され、軸受68aと軸受68bの各外輪がキャリア受8に嵌装される。すなわち、てん真32と、キャリア真67とはそれぞれ独立に回転可能に軸支される。また、キャリア61とキャリア真67、およびキャリア真67とキャリアかな69とはそれぞれ互いに圧篏結合されており、増速輪列16からのトルクおよび回転は、キャリアかな69、キャリア真67を経てキャリア61へと伝達される。
(キャリアアッセンブリ)
図34に示す軸線O2は従動車真43の中心線を、また軸線O3は、規制梃としてのアンクル54の揺動軸となるアンクル真54aの中心線を示し、軸線O1と軸線O2とは並行の関係となる。従動車42は、従動車真43に同軸に結合され、従動車真43に軸受64aと軸受64bの各内輪が嵌装される。また、軸受64aと軸受64bの各外輪が、キャリア61に圧篏された従動車軸箱63の両端に嵌装される。
図34に示す軸線O2は従動車真43の中心線を、また軸線O3は、規制梃としてのアンクル54の揺動軸となるアンクル真54aの中心線を示し、軸線O1と軸線O2とは並行の関係となる。従動車42は、従動車真43に同軸に結合され、従動車真43に軸受64aと軸受64bの各内輪が嵌装される。また、軸受64aと軸受64bの各外輪が、キャリア61に圧篏された従動車軸箱63の両端に嵌装される。
従動車真43の下方には、振り座51がキー44を用いて回転不能に嵌装され、振り座51は従動車真43を横貫する楔53aにより従動車真43に係止される。振り座51は軸方向に大つば51aと小つば51aとを備える。大つば51aには断面図34では図示されない振り石52が、大つば51aの下方へ突出する様に結合される。
また、アンクル54は圧篏されたカラー54cを介し、アンクル真54aに嵌装される。また、アンクル真54cには、軸受66aおよび軸受66bの内輪が嵌装される。また、軸受66aおよび軸受66bの外輪は、キャリア61に圧篏されたアンクル軸箱65に嵌装される。なお、アンクル54はアンクル真54aと相対的に角度がずれたとしても作動へ支障をきたさないため、キーを備えずにアンクル真54aを横貫する楔54cにより係止される。
図35および図36は、本実施形態の調速脱進機2をそれぞれ上側および下側から見た斜視図であり、てんぷ31、ひげぜんまい36と、キャリア受8の図示を省略している。アンクル54は、振り石52と係脱することで、軸線O4を中心に間欠揺動する。また、キャリアアッセンブリ6は増速輪列16からトルクを受けるが、アンクル54に備える入爪55と出爪56とが、アンクル54の揺動に伴い、がんぎ車7のがんぎ歯73と交互に離合することで、キャリアアッセンブリ6の回転を周期的に規制する。
小つば51bは、振り石52に対して径方向に対応した部分に、径方向の内側に曲面状に凹むつきがた51cが形成される。つきがた51cは、アンクル箱54fの衝撃面541fおよび542fと、振り石52とが係合する場合に、剣先54hが小つば51bと接触することを防止する逃げ部として機能する。また、小つば51bの外周面のうち、つきがた51cを除く部分は、アンクル又54eの下方に備わる剣先54hが摺接可能とされており、外乱により生じる脱進機5の誤作動を防止する安全装置として機能する。
アンクル竿54dには、どてピン58が圧篏されており、アンクル竿54dと一体で揺動する。どてピン58はキャリア61の下方に備える規制溝61cと係合しており、アンクル54の揺動範囲を規制する。なお、揺動範囲は、振り石52とアンクル箱54fとの係脱に必要最小限の隙間を確保する程度に設定される。また、どてピン58が規制溝61cにより押止される状態において、剣先54hと小つば51bとの隙間は、互い摺接しない程度の小さい量に設定される。
ひげ持受62は、把持部62bと、把持部62bから延設される腕部62cとを備える。把持部62bは切り欠き62aにより径方向に低剛性化され、弾性力によりキャリア真67を把持する。これにより、ひげ持受62は、軸線O1を中心に適宜角度の調整が可能となり、間欠伝動装置4と、調速機3の自由状態との角度の調整を可能とする。なお、把持部62bの摩擦力は、ひげぜんまい36に生じる最大トルクに対して十分大きく設定されるため、調速脱進機2の作動時には不動となる。
図37は、図38から図48に示す本実施形態の作動説明に用いる要素の斜視図である。図37を用いて、各要素の回転軸および回転方向を定義する。てんぷ31と一体回転する原動車41は、軸線O1を中心として互いに逆向きの第1回転方向M1および第2回転方向M2に往復回転する。また、従動車42は、軸線O2を中心として互いに逆向きの第3回転方向M3および第4回転方向M4に往復回動する。また、アンクル54は、軸線O3を中心として互いに逆向きの第5回転方向M5および第6回転方向M6に揺動する。また、軸線O5は締結部62dの中心線である。軸線O2と、軸線O3と、軸線O5との3軸線は、軸O1を中心にキャリア真67の回転に合わせて第7回転方向M7に回転するが、脱進の停止解除工程において極僅かに第8回転方向M8に逆転する。なお、本実施形態の基準(各要素の回転角が0°)の状態は、図37に示す様に、原動車41の指41aが、従動車42の溝423aに正対し、また、振り石52がアンクル箱54fに正対する状態と定義する。また、基準状態において、調速機3は自由状態に設定される。
(脱進作動の説明)
以下、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して時系列で説明する。なお、図38から図48は、図37で図示した部品構成を上方から見た正面図である。
以下、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して時系列で説明する。なお、図38から図48は、図37で図示した部品構成を上方から見た正面図である。
図38は第3実施形態における第1停止解除工程前を示す作動説明図であって、出爪56によりキャリアアッセンブリ6の停止状態を解除する前の状態を示す。図38は、てんぷ31の回転角が、調速機3の自由状態に対して、-90°にある状態を示す。
拡張脱進機45は、前の作動周期にあり、振り石52が中心線CLに対してM4方向に36°回動した位置にある。また、アンクル54は、中心線CLに対してM6方向に揺動しており、どてピン58aが規制溝61cにより押止されている。また、てんぷ31とM1方向に回転する原動車41の停止面41bは従動車42の停止面423cと係合しており、従動車42は回動を停止した状態にある。
キャリアアッセンブリ6は増速輪列16からM7方向のトルクを受けるが、アンクル54の出爪56が、がんぎ歯731の停止面731aにより係止されるため、キャリアアッセンブリ6は回転停止の状態に規制される。また、アンクル54の出爪56と、がんぎ歯731の停止面731aとが押圧する際、アンクル54はM6方向に「引き」の作用を生じる。この引きの作用により、アンクル54に外乱が入力された場合でも、どてピン58aが規制溝61cから離れることなく押止された状態を維持することができる。
図39は第1停止解除工程後を示す説明図である。図39は、てんぷ31が図38で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。原動車41の指41aは、従動車42の溝423aに収容されており、衝撃面424bと係合している。また、M1方向にてんぷ31と一体回動する原動車41の凹部41c内に、停止面422cと、停止面423cとが収容されるため、係合していた原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面423cとの係合が解除される。これにより、従動車42はM3方向に回動する。
従動車42の回動にともない、振り石52はアンクル54の衝撃面541fと係合し押圧する。これにより、アンクル54はM5方向へ揺動する。脱進機5は第1停止解除工程前まで出爪56とがんぎ歯731とが係合し停止の状態であったが、アンクル54の揺動により、出爪56ががんぎ歯731の停止面731aから係脱して、キャリアアッセンブリ6の停止が解除される。また、アンクル54の入爪55ががんぎ歯間に侵入し、がんぎ歯733との干渉量が付与される。さらにアンクル竿54dが揺動すると、どてピン58aが規制溝61cと係合して、再び押止された状態となる。
なお、第1停止解除工程では、引きを与えるよう設定された出爪56と、がんぎ歯731との係合が解かれる際に、極僅かにM8方向にキャリアアッセンブリ6を巻き戻す仕事を行う。これにより、調速機3は保有するエネルギーを極僅かに損失する。
図40は第1回動工程後を示す説明図である。図40は、てんぷ31が図39で示した状態からM1方向に回転した状態を示す。第1停止解除工程で出爪56とがんぎ歯731とが係脱した直後、キャリアアッセンブリ6はM7方向へ回転を開始する。
キャリアアッセンブリ6は増速輪列16のトルクを受け、入爪55とがんぎ歯733とが干渉することにより回転が停止するまでM7方向へ角加速運動を行う。また、締結部62dもキャリアアッセンブリ6と一体に回転する。他方、てんぷはM1方向にほぼ最高の角速度で回転しつつ、M7方向へ角加速しているキャリアアッセンブリ6を追い抜く様態となる。したがって、第1回動工程では、キャリアアッセンブリ6がひげぜんまい36に弾性エネルギーを付与する様にひげぜんまい36を捩じることができない。そのため、第1回動工程では、調速機3のエネルギー損失を最小化することが好ましい。そこで、第1回動工程におけるキャリアアッセンブリ6の回転角は、入爪55ががんぎ歯733と干渉量を持つための最小限の角度に設定される。第1回動工程後、締結部62dの回転が停止するとともに、ひげぜんまい36の外端位置が停止することで、調速機3は自由振動を開始する。
図41は第1空転工程後を示す説明図である。図41は、てんぷ31が図40で示した状態からM1方向に回転し、調速機3の自由状態に対して、M1方向へ450°回転した状態を示す。てんぷ31のM1方向の回転にともない、従動車42がM3方向に1歯分だけ空転する。なお、空転については第1実施形態と同様であり説明は省略する。第1空転工程の後、てんぷ31は振り当たることなく回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面421cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図42は第1振幅を迎えたときの説明図である。図42は、てんぷ31が図14で示した状態からM1方向に回転し、調速機3の自由状態に対してM1方向へ660°回転した状態を示す。てんぷ31の回転方向は第1の最大振り角を迎えた後、M1方向からM2方向へと反転する。なお、本実施形態では図42および図47(後述)の状態を、それぞれ第1振幅および第2振幅として例示するが、振幅は660°に限らず、ひげぜんまい36の弾性が許す範囲まで、また、振り石52がアンクル又54cのくわがた541gあるいは542gと接触しない範囲まで拡大しても良い。また、振幅をさらに拡大する場合は、従動車42の歯数を適宜変更することで、さらに多くの空転回数に対応することができる。
図43は第2空転工程後を示す説明図である。図43は、てんぷ31が図42で示した第1振幅の後、M2方向に1回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の溝421aと係合した後、従動車42をM4方向に1歯分だけ回動させる。それにより、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第2空転工程の後、てんぷ31はM2方向へ回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面422cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図44は第2停止解除工程後を示す説明図である。図44は、てんぷ31が図43で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。原動車41の指41aは、従動車42の溝423aに収容されており、衝撃面423bと係合している。また、てんぷ31とM2方向に一体回動する原動車41の凹部41c内に、停止面422cと、停止面423cとが収容されるため、係合していた原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面422cとの係合が解除される。これにより、従動車42はM4方向に回動する。
従動車42の回動にともない、振り石52はアンクル54の衝撃面542fと係合し押圧する。これにより、アンクル54はM6方向へ揺動する。脱進機5は第2停止解除工程前まで入爪55とがんぎ歯733とが係合し停止の状態であったが、アンクル54の揺動により、入爪55ががんぎ歯733から係脱し、キャリアアッセンブリ6の停止が解除される。また、アンクル54の出爪56ががんぎ歯間に侵入し、がんぎ歯732との干渉量が付与される。さらにアンクル竿54dが揺動すると、どてピン58aが規制溝61cと係合して、再び押止された状態となる。
なお、第2停止解除工程では、第1停止解除工程と同様に、引きを与えるよう設定された入爪55と、がんぎ歯733との係合が解かれる際に、極僅かにM8方向にキャリアアッセンブリ6を巻き戻す仕事を行う。これにより、調速機3は保有するエネルギーを極僅かに損失する。
図45は第2回動工程後を示す説明図である。図45は、てんぷ31が図44で示した状態からM2方向に回転した状態を示す。第2停止解除工程で入爪55とがんぎ歯733とが係脱した直後、キャリアアッセンブリ6はM7方向へ回転を開始する。
キャリアアッセンブリ6は増速輪列16のトルクを受け、出爪56とがんぎ歯732とが干渉することにより回転が停止するまでM7方向へ角加速運動を行う。また、締結部62dもキャリアアッセンブリ6と一体に回転する。他方、てんぷはM2方向にほぼ最高の角速度で回転しつつ、M7方向へ角加速しているキャリアアッセンブリ6から遠ざかる様態となる。したがって、第2回動工程では、キャリアアッセンブリ6がひげぜんまい36に弾性エネルギーを付与する様にひげぜんまい36を捩じることができる。すなわち、ひげぜんまい36を縮径するように弾性変形させることで調速機3の振動維持に必要な量の弾性エネルギーを補充することができる。そのため、第2回動工程におけるキャリアアッセンブリ6の回転角は、第1回動工程よりも大きく設定される。これにより、脱進作動の過程で生じる調速機3のエネルギー損失を補填することができる。第2回動工程後、締結部62dの回転が停止するとともに、ひげぜんまい36の外端位置が停止することで、調速機3は自由振動を開始する。
図46は第3空転工程後を示す説明図である。図46は、てんぷ31が図45で示した状態からM2方向に回転し、調速機3の自由状態に対して、M2方向へ360°以上回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の溝423aと係合した後、従動車42をM4方向に1歯分だけ回動させる。それにより、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第3空転工程の後、てんぷ31は振り当たることなく回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面424cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
図47は第2振幅を迎えた状態を示す説明図である。図47は、てんぷ31が図46で示した状態からM2方向に回転し、調速機3の自由状態に対してM2方向へ660°回転した状態を示す。てんぷ31の回転方向は最大振り角を迎えた後、M2方向からM1方向へと反転する。
第2振幅は、てんぷ31の回転方向M2が、キャリアアッセンブリ6の回転方向M7に対して反対の方向で、最大の振り角になる状態となるため、ひげぜんまい36がキャリアアッセンブリ6をM8方向に捩じるトルクも最大となる。
このとき、ひげぜんまい36のM8方向に生じるトルクが、キャリアアッセンブリ6のM7方向のトルクよりも大きい場合には、ひげぜんまい36がキャリアアッセンブリ6をM8方向に巻き戻して、調速機3の自由振動を乱すため計時精度が悪化してしまう。そこで、本実施形態ではキャリアアッセンブリ6の回転方向と逆方向にてんぷ31が最大振り角となる第2振幅の状態において、ひげぜんまい36に生じるM8方向のトルクよりもキャリアアッセンブリ6が増速輪列16から受けるM7方向のトルクの方が大きくなるように設定される。これにより、キャリアアッセンブリ6がひげぜんまい36により巻き戻されることなく自由振動を継続することが可能となる。
図48は第4空転工程後を示す説明図である。図48は、てんぷ31が図47で示した第2振幅の後、M1方向に1回転した状態を示す。
原動車41の指41aは、従動車42の溝423aと係合した後、従動車42をM4方向に1歯分だけ回動させる。それにより、振り石52も同じ角度だけ回動するが、振り石52はアンクル箱54と係合しないため、従動車42は空転する。このとき、調速機3は極僅かに空転損失を生じる。
第4空転工程の後、てんぷ31はM1方向へ回転を継続するが、原動車41の停止面41bと、従動車42の停止面423cとが係合するため、従動車42の回動は再び停止した状態を維持する。
てんぷ31の回転にともない、原動車41の指41aは、再び従動車42の溝422aと係合して、次の周期における第1停止解除工程へ遷移する。本発明に係る第3実施形態に示す調速脱進機2はこのように脱進作動する。
(回動の位相)
図49から図52は、横軸を時間、縦軸をてんぷ31の振り角にとり、第1回動工程および第2回動工程におけるてんぷ31およびキャリアアッセンブリ6の回転角を示すグラフである。図49は、第1回動工程においてエネルギーを損失する場合を、図50は第2回動工程においてエネルギーを損失する場合を示し、また、図51は第1回動工程においてエネルギーの損失を抑制した場合を、図52は、第2回動工程においてエネルギーの損失を抑制した場合を示す。各図において、てんぷ31の角度を実線96に、キャリアアッセンブリ6の角度を破線97に示す。また、てんぷ31がM1方向に回転する場合、およびキャリアアッセンブリ6がM7方向に回転する場合を正の回転角と定義する。また、説明の便宜上、各回動工程において回動前におけるキャリアアッセンブリ6の角度を都度0°と置いて説明する。
図49から図52は、横軸を時間、縦軸をてんぷ31の振り角にとり、第1回動工程および第2回動工程におけるてんぷ31およびキャリアアッセンブリ6の回転角を示すグラフである。図49は、第1回動工程においてエネルギーを損失する場合を、図50は第2回動工程においてエネルギーを損失する場合を示し、また、図51は第1回動工程においてエネルギーの損失を抑制した場合を、図52は、第2回動工程においてエネルギーの損失を抑制した場合を示す。各図において、てんぷ31の角度を実線96に、キャリアアッセンブリ6の角度を破線97に示す。また、てんぷ31がM1方向に回転する場合、およびキャリアアッセンブリ6がM7方向に回転する場合を正の回転角と定義する。また、説明の便宜上、各回動工程において回動前におけるキャリアアッセンブリ6の角度を都度0°と置いて説明する。
図49は第1回動工程を示し、t1は第1停止解除の時点を、t2は自由振動をするてんぷ31の振り角がゼロとなる時点を、t3はキャリアアッセンブリ6とてんぷ31との相対角度がゼロとなる時点を、t4は第1回動工程が完了する時点を示す。
矢印98aはてんぷ31に対するキャリアアッセンブリ6の角度と方向を示す。すなわち、てんぷ31は矢印98aの長さで現わされるひげぜんまい36の捩じれ角に、捩じりばね定数kを乗じた量のトルクを矢印98aの向きに受ける。また、時点t3では、線96上の点96cと、線97上の点97cとが一致し、ひげぜんまい36は自由状態となる。
キャリアアッセンブリ6は、第1停止解除の点97aから、第1回動完了の点97dまで、増速輪列16からのトルクを受けて角度Φ1まで角加速運動を行うが、t1からt3までの区間のみキャリアアッセンブリ6がてんぷ31に対して先行するため、ひげぜんまい36を付勢し、エネルギーを補給することができる。
他方、t3からt4の区間では、最大値の角速度で回転するてんぷ31が、角加速中のキャリアアッセンブリ6を追い抜き先行するため、一転してキャリアアッセンブリ6がひげぜんまい36を介しててんぷ31に引っ張られる様態となる。すなわち、第1回動工程におけるt3からt4の区間では、てんぷ31の保有エネルギーの一部がキャリアアッセンブリ6の加速に費やされ、エネルギーを損失してしまう。
そこで、第1回動工程ではてんぷ31の保有エネルギーの損失抑制を図り、エネルギーを損失する区間を最小化して、エネルギーを補給できる区間を最大化することが好ましい。そのため、図51に示すように、第1停止解除点t1をより早期に生じさせ、ひげぜんまい36が自由状態となる点96c、点97c(時点t3)よりも前に、キャリアアッセンブリ6の第1回動完了点97d(時点t4)を設けることが好ましい。これにより、てんぷ31の保有エネルギーを減じることなく、第1回動工程の全区間において調速機3にエネルギーを補充することが可能となる。
次に、図50は第2回動工程を示し、t5は第2停止解除の時点を、t6は自由振動をするてんぷ31の振り角がゼロとなる時点を、t7はキャリアアッセンブリ6とてんぷ31との相対角度がゼロとなる時点を、t8は第2回動工程が完了する時点を示す。
矢印98aはてんぷ31に対するキャリアアッセンブリ6の角度と方向を示す。すなわち、てんぷ31は矢印98bの長さで現わされるひげぜんまい36の捩じれ角に、捩じりばね定数kを乗じた大きさのトルクを矢印98bの向きに受ける。また、時点t6では、線96上の点96fと、線97上の点97fとが一致し、ひげぜんまい36は自由状態となる。
キャリアアッセンブリ6は、第2停止解除の点97eから、第2回動完了の点97hまで、増速輪列16からのトルクを受けて、角度Φ2まで角加速運動を行うが、t6からt8の区間ではてんぷ31がキャリアアッセンブリ6と逆方向に回転するため、キャリアアッセンブリ6とてんぷ31との相対角を容易に得ることができる。すなわち、ひげぜんまい36を効果的に捩じることができるため、調速機3の保有エネルギーを効果的に補充することが可能となる。
他方、t5からt6までの区間では、キャリアアッセンブリ6の回動角度だけ、ひげぜんまい36の捩じり角が弛緩してしまう。また、てんぷ31は保有するエネルギーの一部をキャリアアッセンブリ6に補充する様態となってしまう。すなわち、第2回動工程におけるt5からt6の区間では、てんぷ31の保有エネルギーの一部がキャリアアッセンブリ6の加速に費やされ、エネルギーを損失してしまう。
したがって、第2回動工程でもてんぷ31の保有エネルギーの損失抑制を図り、エネルギーを損失する区間を最小化し、エネルギーを補給できる区間を最大化することが好ましい。そのため、図52に示すように、停止解除の時点t1をより遅延させ、ひげぜんまい36が自由状態となる点96f、点97f(時点t6)よりも後に、キャリアアッセンブリ6の第2停止解除点97e(時点t5)を設けることが好ましい。これにより、てんぷ31の保有エネルギーを減じることなく、第2回動工程の全区間において調速機3にエネルギーを補充することが可能となる。
なお、第1回動工程および第2回動工程における停止解除の位相角調整は、がんぎ歯73と、入爪55および出爪56との掛かり代を調整することにより可能となるが、この調整方法に限らず、脱進機5の部品の形状を調整しても良い。
また、本実施形態に係る調速脱進機2では、ひげぜんまい36の外端が、てん真32を中心に角度の調節が可能なひげ持受62に保持されている。これにより、間欠伝動装置4と調速機3の自由状態との相対角度の調整が可能となり、間欠伝動装置4が空転工程の都度に生じる計時誤差を精度良く相殺することができる。
(効果)
したがって、本実施形態に係る調速脱進機によれば、てんぷの振幅が略340°を超えても振り当たりを生じることなく、従来の脱進機よりも格段に大きい振幅を実現できる。これにより、品質係数(Q値)を格段に大きくすることができ、計時精度を格段に向上することができる。また、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。また、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
したがって、本実施形態に係る調速脱進機によれば、てんぷの振幅が略340°を超えても振り当たりを生じることなく、従来の脱進機よりも格段に大きい振幅を実現できる。これにより、品質係数(Q値)を格段に大きくすることができ、計時精度を格段に向上することができる。また、振幅変化による計時誤差への影響が低い振り角領域で振動することができるため、平立差を向上することができる。また、振り当たりをなくすための機構に間欠伝動装置を用いるため、前記大きい振幅の実現を、少ないエネルギー損失で実現することができる。
また、エネルギーの大半を、てんぷ31がキャリアアッセンブリ6の回動方向と逆向きに回転する様態となる第2回動工程で補充するため、キャリアアッセンブリ6の回転速度がてんぷ31に対して遅くても、ひげぜんまい36が縮径する方向へ確実に捩じることができる。また、第2回動工程におけるキャリアの回動角が大きく設定されている。これらにより、調速機3へエネルギーを確実かつ十分に補充することができ、大きな振幅を維持することができる。
また、第1回動工程をひげぜんまい36の自由状態となる前に完了させ、第2回動工程をひげぜんまい36が自由状態となる後に開始するように設定した場合には、各停止解除工程における調速機3の保有エネルギーの損失を最小化できるため、脱進機5から調速機3へのエネルギーを補充する効率を最大化することができる。これにより、調速脱進機2の効率がさらに向上し、動力ぜんまいの作動時間を長期化することができる。
また、キャリアアッセンブリ6からてんぷ31へ補充するエネルギーの量はひげぜんまい36の捩じれ角に依存するため、キャリアアッセンブリ6の回動角Φ1およびΦ2により規定される。すなわち脱進機5とひげぜんまい36とが定力装置としての機能を有するため、てんぷ31の振り角を安定化することができる。
また、、本実施形態に係る調速脱進機によれば、調速脱進機2を備えるキャリアアッセンブリ6を、軸線O1を中心に一定の周期で回転させることができるため、様々な立姿勢における立等時性を平均化することができ、立等時性を向上することができる。
これらにより、計時精度が向上するため、振動数を低下する余裕が生まれる。これにより、香箱の弛緩速度を低下させることができ、動力ぜんまいの作動時間を長くすることが可能となる。
機械式ストップウォッチにも適用できる。
1…時計、10…ケース、11…ムーブメント、12…りゅうず、13…地板、14…文字板、15…針、16…増速輪列、17…てんぷ受、18…アーム、19…軸受、2…調速脱進機、3…調速機、31…てんぷ、32…てん真、33…軸受、34…ひげ玉、35…第1楔、36…ひげぜんまい、37…ひげ持、38…第2楔、4…間欠伝動装置、41…原動車、41a…指、41b…停止面、41c…凹部、42…従動車、42a…半径方向溝、42b…衝撃面、42c…停止面、43…従動車真、44…キー、45…拡張脱進機、5…脱進機、51…振り座、51a…大つば、51b…小つば、51c…つきがた、52…振り石、53a…第3楔、53b…第4楔、54…アンクル、54a…アンクル真、54b…アンクル体、54c…カラー、54d…アンクル竿、54e…アンクル又、54f…アンクル箱、54g…くわがた、54h…剣先、55…入爪、55a…停止面、55b…ロッキングコーナー、55c…衝撃面、55d…レットオフコーナー、56…出爪、56a…停止面、56b…ロッキングコーナー、56c…衝撃面、56d…レットオフコーナー、58…どてピン、59…デテントアーム、6…キャリアアッセンブリ、61…キャリア、61a…従動車真腕、61b…アンクル真腕、61c…規制溝、62…ひげ持受、62a…切り欠き、62b…把持部、62c…腕部、62d…締結部、62e…止めねじ、63…従動車軸箱、64a…軸受、64b…軸受、65…アンクル軸箱、66a…軸受、66b…軸受、67…キャリア真、67a…軸箱部、68a…軸受、68b…軸受、68c…スペーサー、69…キャリアかな、7…がんぎ車、71…がんぎ車真、72…かな、73…がんぎ歯、73a…停止面、73b…歯の爪先、73c…衝撃面、73d…歯の踵、8…キャリア受
Claims (12)
- 一定の周期で往復回転するてんぷと、
前記てんぷと同軸に結合されたてん真と、
前記てん真と同軸に結合された間欠伝動装置の原動車と、
前記原動車と係合する間欠伝動装置の従動車と、
がんぎ車と係合し、前記がんぎ車の回転を規制する規制梃と、
前記従動車と一体回動するとともに、前記規制梃と係合する振り石と、
を備えることを特徴とする調速脱進機。 - 一定の周期で往復回転するてんぷと、
前記てんぷと同軸に結合されたてん真と、
前記てん真と同軸に結合された間欠伝動装置の原動車と、
前記てん真と同軸に配置され、地板と回転不能に固定されたがんぎ車と、
前記てん真と同軸に軸支されたキャリアと、
前記てん真と前記キャリアとを弾接するひげぜんまいと、
前記キャリア上に軸支され、前記がんぎ車と係合し、前記キャリアの回転を規制する規制梃と、
前記キャリアに軸支され、前記原動車と係合する間欠伝動装置の従動車と、
前記従動車と一体回動するとともに、規制梃と係合する振り石と、
を備えることを特徴とする調速脱進機。 - 脱進の際に前記キャリアが前記てんぷと逆方向に回転する角度が、前記キャリアが前記てんぷと同方向に回転する角度よりも大きく設定されることを特徴とする請求項2に記載の調速脱進機。
- 前記キャリアが増速輪列から受けるトルクは、前記キャリアと反対方向に回転する前記てんぷの振り角の最大時において前記ひげぜんまいが生じるトルクよりも、大きく設定されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の調速脱進機。
- 前記てんぷが前記キャリアと同方向に回転する場合に前記キャリアが回動する時点が、前記ひげぜんまいが自由状態となる時点の前に完了し、前記てんぷが前記キャリアと逆方向に回転する場合に前記キャリアが回動する時点が、前記ひげぜんまいが自由状態となる時点の後で開始するよう設定されることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の調速脱進機。
- 前記間欠伝動装置は、ゼネバ機構であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調速脱進機。
- 前記ゼネバ機構の原動車は単層で構成されることを特徴とする請求項6に記載の調速脱進機。
- 前記振り石を、前記ゼネバ機構の前記従動車に備えることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の調速脱進機。
- 前記振り石を、前記ゼネバ機構の前記従動車の歯部に備えることを特徴とする請求項8に記載の調速脱進機。
- 前記ひげぜんまいの外端位置は、前記間欠伝動装置の係合位相に対して、前記てん真を中心に角度調整可能に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の調速脱進機。
- 請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の調速脱進機が搭載された時計ムーブメント。
- 請求項11に記載の時計ムーブメントが搭載された機械式時計。
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2020171597A JP2022063183A (ja) | 2020-10-11 | 2020-10-11 | 調速脱進機 |
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2021
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