JP2022062421A - カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できる、カルボン酸エステルの製造方法を提供する。【解決手段】カルボン酸エステルの製造方法であって、反応器内にアルデヒドとアルコールを含む原料組成物を連続供給し、カルボン酸エステル製造用触媒と分子状酸素の存在下、前記アルデヒドと前記アルコールを反応させる反応工程を含み、連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦Wとする、カルボン酸エステルの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、カルボン酸エステルの製造方法に関する。
近年、メタクロレイン(Macr)とメタノール(MeOH)と分子状酸素とを酸化エステル化反応させて、一挙にメタクリル酸メチル(MMA)を製造する方法について鋭意研究がなされている。酸化エステル化反応ではメタクリル酸(MAA)が副生することが知られている。一般に、酸化エステル化反応においては、このような反応副生物を除去して高純度のメタクリル酸メチルを得るべく、下流の工程で精製が行われる。
酸化エステル化において、水は、MAAの原因となり、MMAの収率を低下させる要因として認識されており、反応系から水を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開昭58-198442号公報
酸化エステル化においては、上述したMAA以外にも、メタクロレイン-アセタール(Macr-Ac)が反応副生物として生成する。Macr-Acは、目的生成物であるMMAと沸点が近いことから、多く生成すると精製が困難となる。ここで、特許文献1によれば、MacrからMMAが生成する反応で水が生成するため、反応系から水を除去することにより、Macr転化率及びMMA選択率が高くなると共にMAA選択率が低くなるとされている。しかしながら、当該従来技術においては、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制することは困難である。
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できる、カルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが検討したところ、後段反応において連続供給される原料組成物中の水含有量を所定の濃度以上かつ所定濃度以下とすることで、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できることが見出された。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
カルボン酸エステルの製造方法であって、
反応器内にアルデヒドとアルコールを含む原料組成物を連続供給し、カルボン酸エステル製造用触媒と分子状酸素の存在下、前記アルデヒドと前記アルコールを反応させる反応工程を含み、
連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦Wとする、カルボン酸エステルの製造方法。
[2]
前記水含有量W(質量%)を0.5≦W≦5とする、[1]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[3]
前記カルボン酸エステル製造用触媒は、
ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀、銅、及び鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む触媒粒子と、
細孔を有し、前記細孔内に前記触媒粒子を担持する担体と、を含み、
前記カルボン酸エステル製造用触媒の細孔モード径Dが1nm以上15nm以下であり、
前記細孔モード径Dと前記水含有量Wが、以下の条件(1)又は(2)を満たす、[1]又は[2]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
1≦D≦5かつ0.5≦W≦5 (1)
5<D≦15かつ0.08D+0.1≦W≦-0.37D+6.85 (2)
[4]
前記触媒粒子が、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトと、X(Xはニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す)と、を含む複合粒子である、[3]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[5]
前記複合粒子におけるニッケル又はコバルトとXの組成比は、Ni/X原子比又はCo/X原子比として、0.1~10である、[4]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[6]
前記複合粒子が、酸化状態のニッケルと、金と、を含む、[4]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[7]
前記触媒粒子は、平均粒子径が2~10nmである、[3]~[6]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[8]
前記担体は、シリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体である、[3]~[7]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[9]
前記触媒粒子が局在した担持層が、前記カルボン酸エステル製造用触媒の表面から前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の40%までの領域に存在する、[3]~[8]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[10]
前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径が200μm以下であり、前記触媒粒子が局在した担持層が、前記カルボン酸エステル製造用触媒の表面から前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の30%までの領域に存在する、[3]~[9]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[11]
前記触媒粒子が局在した担持層の外側に、実質的に触媒粒子を含まない外部層を有し、外部層は0.01~15μmの厚みで形成されている、[3]~[10]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[12]
前記触媒粒子がXからなる核を有し、前記核が酸化状態のニッケル及び/又はコバルトで被覆されている、[3]~[11]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[13]
前記アルデヒドは、アクロレイン及び/又はメタクロレインである、[1]~[12]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[14]
前記アルデヒドは、アクロレイン及び/又はメタクロレインであり、前記アルコールは、メタノールである、[1]~[13]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[15]
前記反応工程は、液相で行われる、[1]~[14]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
[16]
前記反応工程は、反応系のpHが6以上9以下となるように塩基性物質を添加しながら、行われる、[1]~[15]のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
本発明によれば、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できる、カルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」ともいう。)は、反応器内にアルデヒドとアルコールを含む原料組成物を連続供給し、カルボン酸エステル製造用触媒と分子状酸素の存在下、前記アルデヒドと前記アルコールを反応させる反応工程を含み、連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦Wとする。このように構成されているため、本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法によれば、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できる。
なお、本実施形態の製造方法は、連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦W≦5とすることが好ましい。このように構成されることで、本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法によれば、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方を抑制できる。
(アルデヒド)
本実施形態の製造方法において、原料として用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、グリオキサール等のC1-C10脂肪族飽和アルデヒド;アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド等のC3-C10脂肪族α・β-不飽和アルデヒド;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、ベンジルアルデヒド、フタルアルデヒド等のC6-C20芳香族アルデヒド;並びにこれらアルデヒドの誘導体が挙げられる。これらのアルデヒドは単独若しくは任意の2種以上の混合物として用いることができる。本実施形態においては、アルデヒドが、アクロレイン、メタクロレイン又はこれらの混合物から選ばれることが好ましい。
(アルコール)
本実施形態の製造方法において、原料として用いるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール等のC1-C10脂肪族飽和アルコール;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のC5-C10脂環族アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のC2-C10ジオール;アリルアルコール、メタリルアルコール等のC3-C10脂肪族不飽和アルコール;ベンジルアルコール等のC6-C20芳香族アルコール;3-アルキル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等のヒドロキシオキセタン類が挙げられる。これらのアルコールは単独若しくは任意の2種以上の混合物として用いることができる。本実施形態においては、アルデヒドは、アクロレイン及び/又はメタクロレインであり、アルコールがメタノールであることが好ましい。
(アルデヒドとアルコールとの量比)
アルデヒドとアルコールとの量比としては、特に限定されず、例えば、アルデヒド/アルコールのモル比で10~1/1,000のような広い範囲で実施できるが、一般的にはモル比で1/2~1/50の範囲で実施される。
(カルボン酸エステル製造用触媒の使用量)
カルボン酸エステル製造用触媒の使用量は、反応原料の種類、触媒の組成や調製法、反応条件、反応形式等によって大幅に変更することができ、特に限定されないが、触媒をスラリー状態で反応させる場合は、スラリー中の固形分濃度として、好ましくは1~50質量/容量%、より好ましくは3~30質量/容量%、さらに好ましくは10~25質量/容量%の範囲内に収まるよう使用する。なお、カルボン酸エステル製造用触媒の詳細については後述する。
(原料組成物中の水含有量W)
本実施形態においては、連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦Wとすることにより、メタクロレイン-アセタールの副生を抑制できる。その理由は定かではないが、以下のように推論される。
すなわち、Macr-Acは、酸存在下において、原料Macrが、原料MeOH2分子によってアセタール化されることで、安定なMacr-Acが生成する。なお、MeOHによるアセタール化は、カルボン酸エステル製造用触媒が存在しなくても進む反応である。系中に水が存在しないと安定なMacr-Acが生成される傾向にあると考えられる。この理由は定かではないが、MacrとMeOH、Macr-Acの平衡が関係している可能性がある。
以上、本実施形態の製造方法において、連続供給される前記原料組成物中の水含有量Wは、Macr-Acの副生を抑制する観点から、0.5質量%以上であり、好ましくは0.7質量%以上であり、より好ましくは0.9質量%以上である。
以上、本実施形態の製造方法において、連続供給される前記原料組成物中の水含有量Wは、MAAの副生を抑制する観点から、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4.7質量%以下であり、さらに好ましくは4.5質量%以下である。
水含有量Wの値は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
水含有量Wを調整する方法としては特に限定されないが、例えば、原料組成物に水を添加すること、必要に応じて脱水すること等により、Wを上記範囲に調整することができる。
(反応様式)
カルボン酸エステルの製造においては、気相反応、液相反応、潅液反応等の任意の方法で、回分式又は連続式のいずれによっても実施できるが、上記反応工程は、液相で行われることが好ましい。
反応は、無溶媒でも実施できるが、反応成分に対して不活性な溶媒、例えば、ヘキサン、デカン、ベンゼン、ジオキサン等を用いて実施することができる。
反応形式も固定床式、流動床式、攪拌槽式等の従来公知の形式によることができる。例えば、液相で実施する際には、気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器等の任意の反応器形式によることができる。
(分子状酸素)
カルボン酸エステルの製造に使用する酸素は、分子状酸素、即ち、酸素ガス自体又は酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば、窒素、炭酸ガス等で希釈した混合ガスの形とすることができ、酸素原料としては、操作性、経済性等の観点から、空気が好ましく用いられる。
酸素分圧は、アルデヒド種、アルコール種等の反応原料、反応条件若しくは反応器形式等により変化するが、実用的には、反応器出口の酸素分圧は爆発範囲の下限以下の濃度となる範囲であり、例えば、20~80kPaに管理することが好ましい。反応圧力は、減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実施することができるが、通常は0.05~2MPaの範囲の圧力で実施される。また、反応器流出ガスの酸素濃度が爆発限界を超えないように全圧を設定(例えば、酸素濃度8%)することが安全性の観点から好ましい。
(塩基性物質)
本実施形態において、反応工程は、反応系のpHが6以上9以下(より好ましくは6以上8以下、さらに好ましくは6.5以上7.5以下)となるように塩基性物質を添加しながら行われることが好ましい。塩基性物質としては、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の化合物(例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩)が挙げられる。これらのアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の化合物は、単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(反応温度及び反応時間)
カルボン酸エステルを製造する際の反応温度は、200℃以上の高温でも実施できるが、好ましくは30~200℃であり、より好ましくは40~150℃、さらに好ましくは60~120℃である。反応時間は、特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるので一義的には決められないが、通常1~20時間である。
(カルボン酸エステル製造用触媒)
本実施形態の製造方法において用いられるカルボン酸エステル製造用触媒は、カルボン酸エステルを製造するための反応を触媒するものであれば特に限定されないが、通常、触媒粒子と、細孔を有し、前記細孔内に前記触媒粒子を担持する担体と、を含むカルボン酸エステル製造用触媒が好ましく用いられる。
(カルボン酸エステル製造用触媒における細孔モード径DとWの関係)
本実施形態において、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方をより顕著に抑制する観点から、カルボン酸エステル製造用触媒は、ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀、銅、及び鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む触媒粒子と、細孔を有し、前記細孔内に前記触媒粒子を担持する担体と、を含むものであり、前記カルボン酸エステル製造用触媒の細孔モード径Dが1nm以上15nm以下であることが好ましい。
なお、カルボン酸エステル製造用触媒における細孔モード径Dが5nmを超えると、触媒の活性は低くなる傾向にあり、このようなカルボン酸エステル製造用触媒を用いる際は本来触媒される反応とは無関係の反応であるアセタール化が進みやすい傾向にある。そのため、細孔モード径Dが大きいカルボン酸エステル製造用触媒を用いる際は、細孔モード径Dが小さく触媒活性が高いカルボン酸エステル製造用触媒を使用する際と比較して、多く水を添加するなどして、原料組成物中の水の含有量を多くすることで、積極的にアルデヒド側に平衡を偏らせておくことが好ましいといえる。すなわち、細孔モード径Dの値に応じて連続供給される前記原料組成物中の水含有量Wを調整することが好ましい。より具体的には、前記細孔モード径Dと前記水含有量Wが、以下の条件(1)又は(2)を満たすことが好ましい。
1≦D≦5かつ0.5≦W≦5 (1)
5<D≦15かつ0.08D+0.1≦W≦-0.37D+6.85 (2)
条件(1)又は(2)を満たす場合、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方がより顕著に抑制される。
条件(1)又は(2)を満たすことで、結果としてMacr-Ac選択率、MAA選択率、Macr転化率及びMMA選択率を含む反応成績がより向上する傾向にある。
なお、上記の条件(2)を満たす場合に反応成績がより向上する傾向は、後述する実施例において得られた実験結果でも確認されている。
上述した細孔モード径Dは、カルボン酸エステル製造用触媒の窒素吸着法により得られる脱着等温線からBJH法を用いて計算される。カルボン酸エステル製造用触媒の細孔モード径は、主に、担体の細孔構造に由来するものである。細孔モード径Dは、反応基質の拡散過程を律速にしないよう細孔内拡散抵抗を大きくし過ぎず、反応活性を高く維持する観点から、1nm以上であることが好ましい。一方、細孔モード径Dは、触媒の割れ難さの観点から、15nm以下であることが好ましい。従って、カルボン酸エステル製造用触媒の細孔モード径Dは、好ましくは2nm以上15nm以下であり、より好ましくは2nm以上7nm以下であり、さらに好ましくは3nm以上7nm以下である。
細孔モード径Dの値は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
細孔モード径Dを調整する方法としては特に限定されないが、例えば、後述する好ましいカルボン酸エステル製造用触媒の製造方法を採用すること等により細孔モード径Dを上記範囲に調整することができる。
本実施形態において、触媒粒子は、ニッケル、コバルト、パラジウム、鉛、白金、ルテニウム、金、銀、銅及び鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。本実施形態における触媒粒子は、ニッケル、コバルト、パラジウム、鉛及び金からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、より好ましくは、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトと、X(Xはニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す)と、を含む複合粒子であることが好ましい。
本実施形態において、カルボン酸エステル製造用触媒は、触媒粒子が局在した担持層を有することが好ましい。用語「触媒粒子が局在した担持層」とは、担体中で、触媒粒子が集中して担持されている領域をいう。本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒中、触媒粒子は、担体中にランダムに担持されるのではなく、一定の領域に選択的に担持されることが好ましく、この領域を「触媒粒子が局在した担持層」と称する。カルボン酸エステル製造用触媒において、他の部分と比較して一定の領域に触媒粒子が集中していれば、その領域が「触媒粒子が局在した担持層」であるので、どの領域が「触媒粒子が局在した担持層」であるかは、後述のX線マイクロプローブ分析法や、高分解能の走査型電子顕微鏡の二次電子反射像によって把握することができる。触媒粒子が局在した担持層は、カルボン酸エステル製造用触媒の表面からカルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の40%までの領域に存在することが好ましい。触媒粒子が局在した担持層が、上記領域に存在すると、担体内部における反応物質の拡散速度の影響が少なくなり、反応活性が向上する傾向にある。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒は、実質的な厚さ又は粒子径がμmからcmのオーダーの様々の大きさ、及び種々の形状を有することができる。カルボン酸エステル製造用触媒の形状の具体例としては、以下に限定されないが、球状、楕円状、円柱状、錠剤状、中空円柱状、板状、棒状、シート状、ハニカム状等の様々な形状が挙げられる。かかる形状は反応形式によって適宜変えることができ、以下に限定されないが、例えば、固定床反応では圧力損失の少ない中空円柱状、ハニカム状の形状が選択され、液相スラリー懸濁条件では、一般的に球状の形状が選択される。
ここでいう、用語「相当直径」とは、球状粒子の直径、又は不規則な形の粒子の場合には、その粒子と等体積の球若しくはその粒子の表面積と同じ表面積を持つ球の直径を表す。相当直径の測定方法は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置を用いて平均粒子径(体積基準)を測定し、それを相当直径とする、又は走査型電子顕微鏡装置(SEM)により測定された数平均粒子径を相当直径として表すことができる。
触媒粒子が局在した担持層の厚みは、担体の厚み、粒子径、反応の種類、及び反応形式によって最適な範囲が選ばれる。なお通常、「カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径」は、「担体の相当直径」と同じであるから、担体の相当直径によって「カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径」を決定することができる。
例えば、カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径が200μm超(例えば、数mm又はそれ以上)の大きな担体を用いる場合、一般的に、比較的反応速度が遅い液相での反応、又は気相での反応に用いられる。従って、活性成分である触媒粒子をカルボン酸エステル製造用触媒の表面からカルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の40%までの領域、かつカルボン酸エステル製造用触媒の外表面から80μmまでの領域に担持し、カルボン酸エステル製造用触媒の内部には触媒粒子を担持しない層を設けることにより、反応物質の拡散速度の影響をより受けにくいカルボン酸エステル製造用触媒が得られる傾向にある。その結果、触媒粒子を有効に利用できることになる。
一方、カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径が200μm以下である場合、触媒粒子をカルボン酸エステル製造用触媒の表面からカルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の30%までの領域に担持させることが好ましい。特に、液相反応で用いる場合には、反応速度と担体内部における反応物質の細孔内拡散速度の影響が生じるため、従来は反応にあわせて担体の粒子径を小さくする設計がされていた。本実施形態においては、触媒粒子が局在した担持層を薄くすることにより、担体の粒子径を小さくすることなく高い活性のカルボン酸エステル製造用触媒を得ることができる。この場合、沈降による触媒の分離が容易になり、小容量の分離器を用いて分離が可能になるという利点もある。一方、カルボン酸エステル製造用触媒中の触媒粒子が担持されていない部分の体積が大きくなりすぎると、反応器当たりの反応に不必要な体積が大きくなり無駄が生じる場合もある。従って、反応の形態に合わせて担体粒子径を設定し、必要な触媒粒子が局在した担持層の厚み、触媒粒子が担持されていない層の厚みを設定することが好ましい。
カルボン酸エステル製造用触媒は、触媒粒子が局在した担持層の外側に、実質的に触媒粒子を含まない外部層を有してもよい。外部層は、担体の外表面から0.01~15μmの厚みで形成されていることが好ましい。この範囲で外部層を設けることにより、流動層、気泡塔、攪拌型反応器等、カルボン酸エステル製造用触媒の摩擦が懸念される反応器を用いる反応や、被毒物質の蓄積が起こる反応において、触媒毒に強く、磨耗による触媒粒子の脱落を抑制した触媒として利用することができる。また、外部層を極めて薄く制御できることから、活性の大幅な低下を抑制することができる。
実質的に触媒粒子を含まない外部層の厚さは、反応特性、担体物性、触媒粒子の担持量等によって最適な範囲が選ばれ、好ましくは0.01~15μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.2~5μmである。外部層(触媒粒子未担持層)の厚さが15μmを超えると、該触媒粒子を触媒として用いる際に触媒の寿命の向上効果は変わらないが、触媒活性の低下を招くことがある。外部層の厚さが0.01μm未満であると、磨耗による触媒粒子の脱落が起こり易くなる傾向にある。
本実施形態において、用語「実質的に触媒粒子を含まない」とは、後述のX線マイクロプローブ分析法や、高分解能の走査型電子顕微鏡の二次電子反射像において、相対強度10%以上の酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとX(Xはニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す)の分布を示すピークが実質的に存在しないことを意味する。
本実施形態において、複合粒子は、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトを含む。
酸化状態のニッケルとしては、好ましくはニッケルと酸素とが結合して生成するニッケル酸化物(例えば、Ni2O,NiO,NiO2,Ni34,Ni23)、或いはニッケルとX及び/又は1種以上の他の金属元素と酸素とが結合して生成するニッケルの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等のニッケルが含まれる複合酸化物である。
また、酸化状態のコバルトとしては、好ましくはコバルトと酸素とが結合して生成するコバルト酸化物(例えば、CoO,Co23,Co34)、或いはコバルトとX及び/又は1種以上の他の金属元素と酸素とが結合して生成するコバルトの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等のコバルトが含まれる複合酸化物である。
ここでいう、用語「ニッケル酸化物」とは、ニッケルと酸素が含まれる化合物を表す。ニッケル酸化物とは、前記に例示したNi2O,NiO,NiO2,Ni34,Ni23又はこれらの水和物、OOH基を含むニッケルのヒドロペルオキシド若しくはO2基を含むニッケルの過酸化物又はこれらの混合物等を包含する。
また、ここでいう、用語「複合酸化物」とは、2種以上の金属を含む酸化物を表す。「複合酸化物」とは、金属酸化物2種以上が化合物を形成した酸化物であり、構造の単位としてオキソ酸のイオンが存在しない複酸化物(例えば、ニッケルのペロブスカイト型酸化物やスピネル型酸化物)を包含するが、複酸化物より広い概念であり、2種以上の金属が複合した酸化物を全て包含する。2種以上の金属酸化物が固溶体を形成した酸化物も複合酸化物の範疇である。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒において、上述のようにニッケル酸化物及び/又はコバルト酸化物とXの複合化を行う場合、酸化エステル化活性を有するニッケル酸化物及び/又はコバルト酸化物の本来の触媒能が引き出され、各単一成分からなる触媒では実現しなかったような著しく高い触媒性能が現れる傾向にある。これはニッケル酸化物及び/又はコバルト酸化物とXとを複合化させることで発現する特異な効果であって、両金属成分間における二元機能効果或いは新たな活性種の生成等により、各単一成分とは全く異なった新しい触媒作用が生み出されたためと考えられる。さらに、酸化状態のニッケル及び/又は酸化状態のコバルトとXを担体に高分散状態で担持させた場合は、特に、従来の触媒では得られない画期的な触媒性能を実現できる傾向にある。
例えば、Xとして金を選択し、担体に酸化ニッケルと金を高分散担持すると、著しく高い触媒性能が現れる傾向にある。このようなカルボン酸エステル製造用触媒は、酸化ニッケル或いは金をそれぞれ単体で担体に担持した触媒に比べ、カルボン酸エステルの選択性が高く、Ni/Au組成比が特定の範囲にある場合は大きく活性が向上する傾向にある。金属原子当たりの触媒活性については、各単一成分からなる粒子担持物に比べて高い活性を示し、その複合化による触媒機能の発現は、ニッケルと金の担持組成に強く依存する。これは、反応に最適なニッケルの酸化状態の形成に最適な比率が存在するためと推定される。このように、酸化ニッケルと金の二成分が担体に分散されて担持されていることによって、各単一成分の単なる相加算からでは予想できない際立った複合効果が発現される傾向にある。
上記のようにXとして金を選択した上記カルボン酸エステル製造用触媒は、担体に酸化状態のニッケルと金とが高分散担持されており、両成分がナノサイズで複合化される傾向にある。このようなカルボン酸エステル製造用触媒を透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)で観察すると、典型的には、2~3nmのほぼ球状のナノ粒子が担体上に均一に分散担持された構造が観測される。
また、エネルギー分散型X線分光(EDS)によるナノ粒子の元素分析に供する場合、典型的には、いずれの粒子にもニッケルと金が共存しており、金ナノ粒子の表面にニッケルが被覆した形態であることが観察され、ニッケルと金が含まれるナノ粒子以外にも担体上にニッケル成分が単体で担持されていることも観察される。
さらに、X線光電子分光法(XPS)及び粉末X線回折(粉末XRD)に供することにより金属の存在状態を確認することができ、典型的には、金は結晶性の金属として存在する一方、ニッケルは2価の価数を有する非晶質状の酸化物として存在していることが観測される。
さらにまた、電子の励起状態の変化を観測できる紫外可視分光法(UV-Vis)に供すれば、典型的には、単一金属種の金ナノ粒子では観測された金ナノ粒子由来の表面プラズモン吸収ピーク(約530nm)が酸化ニッケルと金との複合化により消失することが観測される。このような表面プラズモン吸収ピークの消失現象は、反応に効果が見られなかった酸化ニッケル以外の他の金属酸化物種(例えば、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅及び酸化亜鉛等の金属酸化物)と金との組み合わせからなる触媒では認められていない。この表面プラズモン吸収ピークの消失は、酸化状態のニッケルと金の接触界面を介した電子状態の混成が生じた結果、つまり2種類の金属化学種のハイブリット化によるものと考えられる。
なお、高酸化型のニッケル酸化物への変換は、触媒の色調変化と紫外可視分光法(UV-Vis)により確認できる。酸化ニッケルへの金の添加により、酸化ニッケルは灰緑色から茶褐色に変色し、UVスペクトルは可視光領域がほぼ全体にわたって吸収を示す。そのUVスペクトルの形状と触媒の色は、参照試料として測定した高酸化型の過酸化ニッケル(NiO2)と類似する。このように、酸化ニッケルは金の添加により、高酸化状態のニッケル酸化物に変換されていることが推察される。
以上の結果から、Xとして金を選択した場合の複合粒子の構造については、金粒子を核とし、その表面が高酸化状態のニッケル酸化物で被覆された形態であり、複合粒子の表面には金原子は存在しないと考えられる。
触媒粒子は、担体に高分散状態で担持されているのが好ましい。触媒粒子は、微粒子状或いは薄膜状で分散担持されているのがより好ましく、その平均粒子径は、好ましくは2~10nm、より好ましくは2~8nm、さらに好ましくは2~6nmである。
触媒粒子の平均粒子径が上記範囲内であると、ニッケル及び/又はコバルトとXとからなる特定の活性種構造が形成され、反応活性が向上する傾向にある。ここで、本実施形態における平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された数平均粒子径を意味する。具体的には、透過型電子顕微鏡で観察される画像において、黒いコントラストの部分が触媒粒子であり、各粒子の直径を全て測定してその数平均を算出することができる。
複合粒子中のニッケル又はコバルトとXの組成は、Ni/X原子比又はCo/X原子比として、0.1~10の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2~8.0、さらに好ましくは0.3~6.0の範囲である。Ni/X原子比又はCo/X原子比が上記範囲内であると、ニッケル及び/又はコバルトとXとからなる特定の活性種構造、及び反応に最適なニッケル及び/又はコバルトの酸化状態を形成し、その結果、上記範囲外からなる場合よりも活性及び選択性が高くなる傾向にある。
複合粒子の形態については、特に限定されないが、好ましくは粒子中にニッケル及び/又はコバルトとXの両成分が共存し、相構造、例えば、化学種がランダムに結晶のサイトを占める固溶体構造、各化学種が同心球状に分離したコアシェル構造、異方的に相分離した異方性相分離構造、粒子表面に両化学種が隣り合って存在するヘテロボンドフィリック構造のいずれかの構造を有する形態であることが好ましい。より好ましくはXからなる核を有し、その核の表面が酸化状態のニッケル及び/又はコバルトで被覆された形態であることが好ましい。複合粒子の形状については、両成分が含まれるものであれば特に限定されず、球状或いは半球状等のいずれの形状であってもよい。
複合粒子の形態を観察する解析手法としては、例えば、上述したように、透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡(TEM/STEM)が有効であり、TEM/STEMで観察されたナノ粒子像に電子線を照射することで、粒子中の元素分析や元素の分布像の描出が可能となる。本実施形態における複合粒子は、後述する実施例に示されるように、いずれの粒子中にもニッケル及び/又はコバルトとXが含まれ、Xの表面がニッケル及び/又はコバルトで被覆された形態を有していることが確認された。このような形態を有する場合、粒子中の組成分析点の位置によって、ニッケル及び/又はコバルトとXの原子比が異なり、粒子中央部よりも粒子エッジ部にニッケル及び/又はコバルトが多く検出される。従って、個々の粒子でも分析点の位置によってはニッケル又はコバルトとXの原子比に幅を持つことになり、その範囲は、上述したNi/X原子比又はCo/X原子比の範囲に含まれる。
Xとして、金、銀、銅を選択した場合には、紫外可視分光法(UV-Vis)がその構造を特定する上で有力な手段となる。金・銀・銅のナノ粒子単体では、可視~近赤外域の光電場と金属の表面自由電子がカップリングして、表面プラズモン吸収を示す。例えば、金粒子が担持された触媒に可視光を照射すると、約530nmの波長に金粒子由来のプラズモン共鳴に基づく吸収スペクトルが観測される。しかしながら、本実施形態におけるニッケル酸化物と金を担持したカルボン酸エステル製造用触媒では、その表面プラズモン吸収が消失することから、本実施形態における複合粒子の表面には金は存在しないと考えることができる。
ニッケルの固体形態としては、所定の活性が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくは、X線回折で回折ピークが観測されない非晶質状である。このような形態にすることで、酸化反応の触媒として用いる場合に、酸素との相互作用が高くなると推定され、さらには、酸化状態のニッケルとXの接合界面が増加することから、より優れた活性が得られる傾向にある。
本実施形態において、Xは、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Xは、好ましくは、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、金、銀から選択される少なくとも1種の元素であり、より好ましくはパラジウム及び金から選択される少なくとも1種の元素であり、さらに好ましくは金である。
Xの化学状態は、金属、酸化物、水酸化物、Xとニッケル、コバルト若しくは1種以上の他の金属元素を含む複合化合物、又はこれらの混合物のいずれでもよいが、好ましい化学状態としては金属若しくは酸化物、より好ましくは金属である。またXの固体形態としては、所定の活性が得られるものであれば特に限定されず、結晶質或いは非晶質のいずれの形態であってもよい。
ここでいう、用語「他の金属元素」とは、後述するような担体の構成元素、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXの他に、カルボン酸エステル製造用触媒中に含有させる第3成分元素若しくはアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属等の金属成分を指す。
本実施形態において、触媒の耐久性の観点から、複合粒子は、酸化状態のニッケルと、金と、を含むことが好ましい。また、複合粒子におけるニッケルと金の組成比は、Ni/Au原子比として、1.1以上10以下であることが好ましく、より好ましくは2以上9以下であり、さらに好ましくは3以上8以下である。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒は、上述したように酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXを担体に担持し、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXとから構成される複合粒子を形成させることによって優れた効果を発揮する。なお、本実施形態でいう、用語「複合粒子」とは、一つの粒子の中に異なる二元金属種を含む粒子をいう。これとは異なる二元金属種としては、ニッケル及び/又はコバルトとXの両成分が金属である二元金属粒子、ニッケル及び/又はコバルトとXの合金或いは金属間化合物を形成している金属粒子等が挙げられるが、これらは化学合成用の触媒とした場合に、本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒と比較して、目的生成物の選択性と触媒活性が低くなる傾向にある。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒は、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXとから構成される複合粒子とは別に、担体上に酸化状態のニッケル及び/又はコバルトを単独で含有することが好ましい。Xと複合化していない酸化状態のニッケル及び/又はコバルトが存在することにより、カルボン酸エステル製造用触媒の構造安定性がより高められ、長期反応による細孔径の増大とそれに伴う複合粒子の粒子成長が抑制される。この効果は、後述するように、担体としてシリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物を用いた場合に顕著となる傾向にある。
以下に、担体上に酸化状態のニッケル及び/又はコバルトを単独で存在させることにより、カルボン酸エステル製造用触媒の構造安定性が高められ、長期反応による細孔径の増大とそれに伴う複合粒子の粒子成長が抑制された作用について説明する。
後述するように、カルボン酸エステルの合成反応においては、反応系にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の化合物を添加して、反応系のpHを好ましくは6~9、より好ましくは中性条件(例えば、pH6.5~7.5)、すなわち、限りなくpH7付近に保持することによって、カルボン酸エステルの製造反応固有の副生物であるメタクリル酸又はアクリル酸に代表される酸性物質によるアセタール等の副生が抑制される傾向にある。
本発明者らの検討によれば、単一成分の金粒子をシリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体に担持した金粒子担持物を用いて、前記反応操作による長期反応を実施した場合、徐々にではあるが金粒子担持物の構造変化が起こる傾向にある。この現象は、前記反応操作により、担持物粒子が局所的に酸と塩基に繰り返し曝され、上記担体中のAlの一部が溶解、析出し、シリカ-アルミナ架橋構造の再配列が生じることによって、担持物粒子の細孔径が拡大することに起因すると考えられる。また、細孔径が拡大する変化に伴って、金粒子のシンタリングが起こり、表面積が低下することによって、触媒活性が低下する傾向にある。
一方、複合粒子及び単独の酸化状態のニッケル及び/又はコバルトを担体上に存在させることにより、上記反応操作による担持物粒子の構造安定性が高められ、細孔径の拡大と複合粒子の成長が抑制される傾向にある。その理由については、上述のごとく、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトが担体の構成元素と反応してニッケル及び/又はコバルトの酸化化合物若しくは固溶体等のニッケル及び/又はコバルトを含む複合酸化物が生成していることが要因であると考えられ、そのようなニッケル化合物がシリカ-アルミナ架橋構造の安定化に作用した結果、担持物粒子の構造変化が大きく改善されたと考えられる。このような担持物の構造安定化効果の発現は、担体に存在する酸化状態のニッケル及び/又はコバルトに起因すると本発明者らは推定している。そのため、複合粒子に含まれる酸化状態のニッケル及び/又はコバルトが担体に接触している場合には、もちろんこの効果は得られるし、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトが担体上に単独で存在している場合には、一層大きい安定化効果を得られると考えられる。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒の担体としては、本実施形態における触媒粒子を担持できるものであれば特に限定されず、従来の化学合成用に用いられる触媒担体を用いることができる。
担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア、シリカ-チタニア、ジルコニア、マグネシア、シリカ-マグネシア、シリカ-アルミナ-マグネシア、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ゼオライト、結晶性メタロシリケート等の各種担体が挙げられる。好ましくは、活性炭、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-アルミナ-マグネシア、チタニア、シリカ-チタニア、ジルコニア、より好ましくは、シリカ-アルミナ、シリカ-アルミナ-マグネシアである。
また、担体にアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)、アルカリ土類金属(Be,Mg,Ca,Sr,Ba)、及び希土類金属(La,Ce,Pr)から選ばれる単独若しくは複数種の金属成分が含まれていてもよい。担持する金属成分としては、例えば、硝酸塩や酢酸塩等の焼成等によって酸化物となるものが好ましい。
担体としては、シリカ及びアルミニウムを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体が好ましく用いられる。すなわち、担体がシリカ及びアルミナを含むことが好ましい。上記担体は、シリカに比べて高い耐水性を有し、アルミナに比べて耐酸性が高い。また、活性炭に比べて硬く機械的強度が高い等、従来の一般的に使用される担体に比して優れた物性を備え、しかも活性成分である酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXを安定に担持することができる。その結果、カルボン酸エステル製造用触媒がより長期間にわたり高い反応性を維持する傾向にある。
酸化状態のニッケル及び/又はコバルトと、Xとが特定の原子比を有し、アルミニウム含有シリカ系組成物を担体とするカルボン酸エステル製造用触媒は、化学合成用の触媒として用いる場合、触媒担体としての使用に適する高い表面積を有しつつも、機械的強度が高く物理的に安定で、しかも反応固有の液性に対する耐腐食性を満足する傾向にある。
以下、触媒寿命の大幅な改良を可能にした本実施形態におけるシリカ及びアルミナを含むアルミナ含有シリカ系組成物からなる担体の特性について説明する。担体の機械強度及び化学的安定性が大きく改善できた理由については、以下のように推定される。
アルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体は、シリカゲルの未架橋シリカ(Si-O)鎖にアルミニウム(Al)を加えることにより、Si-O-Al-O-Si結合が新たに形成され、Si-O鎖本来の酸性物質に対する安定性を失うことなく、Al架橋構造が形成されたことでSi-O結合が強化され、耐加水分解安定性(以下、単に「耐水性」ともいう)が格段に向上していると考えられる。また、Si-O-Al-O-Si架橋構造が形成されると、シリカゲル単独の場合に比べてSi-O未架橋鎖が減り、機械的強度も大きくなると考えられる。即ち、Si-O-Al-O-Si構造の形成量と、得られるシリカゲルの機械的強度及び耐水性の向上とが相関するものと推定される。
酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXを担体上に長期間安定に担持することが可能になった理由の1つは、上記担体は、上述した通り、機械的強度並びに化学的安定性が大きく改善され、従来の一般的に使用される担体に比して優れた物性を備えることにある。その結果、活性成分であるニッケル及び/又はコバルトとXが剥離し難く、長期にわたって安定に担持することが可能になると考えられる。
一般的に使用される担体、例えば、シリカ、又は、シリカ-チタニアでは、長期反応において、徐々にではあるがニッケル及び/又はコバルト成分が溶出する傾向にある。これに対し、上記担体を用いた場合には、長期にわたりニッケル及び/又はコバルト成分の溶出が抑制される傾向にある。特に、X線光電子分光法(XPS)、透過型電子顕微鏡(TEM/EDX)、二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)の結果より、シリカ、又は、シリカ-チタニア担体を用いた場合、溶出するニッケル及び/又はコバルト成分は、担体上に単独で存在する酸化ニッケル又は酸化コバルトであることが確認されている。酸化ニッケル又は酸化コバルトは酸に可溶な化合物であるため、カルボン酸エステル合成用の触媒として用いた場合、本反応固有の副生物であるメタクリル酸又はアクリル酸に代表される酸性物質によって溶出したものと推定される。
二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)によるニッケル及び/又はコバルトの化学状態の解析から、本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒中のニッケル及び/又はコバルトは、単一化合物である酸化ニッケル及び/又は酸化コバルトのみではなく、酸化ニッケル及び/又は酸化コバルトと担体の構成成分元素とが結合して生成するニッケル及び/又はコバルトの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等のニッケル及び/又はコバルトが含まれる複合酸化物が生成しているものと推定される。
二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)は、そのエネルギー分解能が極めて高く、得られるスペクトルのエネルギー位置(化学シフト)や形状から化学状態が分析できる。特に、3d遷移金属元素のKαスペクトルにおいては、価数や電子状態の変化によって化学シフトや形状に変化が現れ、化学状態を詳細に解析することができる。本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒において、典型的には、後述する実施例のとおり、NiKαスペクトルに変化が現れ、単一化合物である酸化ニッケルとは異なるニッケルの化学状態が確認される。
例えば、酸化ニッケルとアルミナから生成するアルミン酸ニッケルは、酸に不溶な化合物である。このようなニッケル化合物が担体上で生成した結果、ニッケル成分の溶出が大きく改善されたものと推定される。
本実施形態において、担体は、ケイ素と、アルミニウムと、鉄、コバルト、ニッケル及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種の第4周期元素と、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性元素と、を、前記ケイ素と前記アルミニウムと前記第4周期元素と前記塩基性元素との合計モル量に対して、それぞれ、42モル%以上90モル%以下、3モル%以上38モル%以下、0.5モル%以上20モル%以下及び2モル%以上38モル%以下の範囲で含有するシリカ系材料であることが好ましい。
ケイ素、アルミニウム、上記第4周期元素及び上記塩基性元素を含むシリカ系材料は、ケイ素とアルミニウムと第4周期元素と塩基性元素との合計モル量に対して、ケイ素を42~90モル%、アルミニウムを3~38モル%、第4周期元素を0.5~20モル%、塩基性元素を2~38モル%の範囲で含む場合、ケイ素、アルミニウム、第4周期元素、塩基性元素及び酸素原子が互いに特定の安定な結合構造を形成し、しかもその結合構造がシリカ系材料中で均一に分散した状態で形成され易い。上記観点から、本実施形態においては、ケイ素を70~90モル%、アルミニウムを5~30モル%、第4周期元素を0.75~15モル%、塩基性元素を2~30モル%含むことがより好ましく、ケイ素を75~90モル%、アルミニウムを5~15モル%、第4周期元素を1~10モル%、塩基性元素を2~15モル%の範囲で含むことがさらに好ましい。特に、第4周期元素の組成比を0.75モル%以上とし、各成分が材料全体に均一に分散した状態にすると、構造中に第4周期元素が存在しない部分が少なく、繰り返し酸及び/又は塩基に晒した場合でも耐性を示す(耐酸性及び塩基性が高い)シリカ系材料が得られる傾向にある。機械的強度が高く、比表面積が大きいシリカ系材料を得る観点から、第4周期元素は10モル%以下、塩基性元素は30モル%以下であることが好ましい。
ケイ素とアルミニウムの組成比は、シリカ系材料の耐酸性及び塩基性、耐水性の観点で好ましい範囲に設定している。アルミニウムに対するケイ素の組成比は、好ましくは(ケイ素/アルミニウム)=2~4である。(ケイ素/アルミニウム)が上記範囲より小さいと、耐酸性及び塩基性が低くなる傾向にある。(ケイ素/アルミニウム)が上記範囲より大きいと、耐水性が低くなる傾向にある。
塩基性金属成分のアルカリ金属としては、Li,Na,K,Rb,Csが、アルカリ土類金属としては、Be,Mg,Ca,Sr,Ba等が、希土類金属としては、La,Ce,Prが挙げられる。
例えば、上記第4周期元素としてニッケル、塩基性元素としてマグネシウムを選定し、ケイ素-アルミニウム-ニッケル-マグネシウムを含む複合酸化物からなるシリカ系材料について、二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)によってニッケルの化学状態を解析すると、本実施形態におけるシリカ系材料中のニッケルは、単一化合物である酸化ニッケルとしては存在しない。そのニッケルは、酸化ニッケルとアルミナ及び/又はマグネシアとが結合して生成するニッケルの酸化化合物若しくは固溶体又はこれらの混合物等の、ニッケルを含む複合酸化物として存在する。
前述したシリカ系材料において、ニッケルは、例えば、酸化ニッケルとアルミナとのスピネル化合物であるアルミン酸ニッケル(NiAl24)、あるいは、酸化ニッケルとマグネシアとの固溶体(NiO・MgO)として存在すると推定される。ニッケル以外の上記第4周期元素についても同様に、その酸化物がアルミナとのスピネル化合物又は塩基性金属酸化物との固溶体を形成することによって、シリカ・アルミナ架橋構造の安定化に作用し、化学的安定性が高くなったものと考えられる。
第4周期元素がニッケル、塩基性元素がマグネシウムである場合、ケイ素と、アルミニウムと、ニッケルと、マグネシウムとを含む複合酸化物からなるシリカ系材料は、耐酸性及び塩基性、機械的強度及び耐水性の観点で、ケイ素とアルミニウムとニッケルとマグネシウムとの合計モル量に対して、好ましくは、ケイ素を42~90モル%、アルミニウムを3~38モル%、ニッケルを0.5~20モル%、マグネシウムを2~38モル%の範囲で含む。より好ましくは、ケイ素を70~90モル%、アルミニウムを5~30モル%、ニッケルを0.75~15モル%、マグネシウムを2~30モル%、さらに好ましくは、ケイ素を75~90モル%、アルミニウムを5~15モル%、ニッケルを1~10モル%、マグネシウムを2~15モル%の範囲で含む。ケイ素、アルミニウム、ニッケル及びマグネシウムの元素組成が上記範囲内であると、ケイ素、アルミニウム、ニッケル及びマグネシウムが特定の安定な結合構造を形成し易い。特に、より好ましい組成比の場合、上述の安定な結合構造は、シリカ系材料中に均一に分散していると想定しても、シリカ系材料全体の安定化に寄与するのに十分な存在密度で形成されると期待される。その結果、シリカ系材料は、繰り返しの使用にも耐えうる良好な耐酸性、塩基性及び機械的強度を示す傾向にある。
前述したシリカ系材料中のSi、Al、第4周期元素及び塩基性元素の濃度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のICP発光分析装置(ICP-AES、MS)である「IRIS Intrepid II XDL型」(商品名)を用いて定量される。試料は下記のとおりに調製する。
まず、シリカ系材料をテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、そこに硝酸及びフッ化水素を加える。得られた溶液を、マイルストーンゼネラル社製のマイクロウェーブ分解装置である「ETHOS・TC型」(商品名)にて加熱分解後、ヒーター上で蒸発乾固する。次いで、析出した残留物に硝酸及び塩酸を加えて、上記マイクロウェーブ分解装置にて加圧分解し、得られた分解液を純水で一定容量としたものを試料とする。
上記ICP-AESにて内標準法で試料の定量を行い、同時に実施した操作ブランク値を差し引いてシリカ系材料中のSi、Al、第4周期元素及び塩基性元素の含有量並びに貴金属担持物中の金属元素の含有量を求め、組成比(モル基準)、担持量を算出する。
次に、前述したような構造ないし組成を有する担体の好ましい調製方法について説明する。
シリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体の調製方法としては、特に限定はされず、例えば、以下の(1)~(5)の方法により得られるアルミニウム含有シリカ組成物を、後述する条件で水熱合成を実施し、乾燥、焼成することにより調製することができる。
(1)市販のシリカ-アルミナ組成物を用いる。
(2)シリカゾルとアルミニウム化合物溶液とを反応させる。
(3)シリカゾルと、水に不溶なアルミニウム化合物とを反応させる。
(4)シリカゲルと、水溶性アルミニウム化合物の水溶液とを反応させる。
(5)シリカゲルと、アルミニウム化合物とを固相反応させる。
以下に、上記(2)~(5)の担体の調製方法について詳細に説明する。
上記(2)~(5)の方法においては、シリカ源として、シリカゾル又はシリカゲルを用いる。シリカゲルとしてはAlと反応する未架橋Si部位を有していればよく、Si-O鎖の長さについては特に制約はない。アルミニウム化合物は、アルミン酸ソーダ、塩化アルミニウム六水和物、過塩素酸アルミニウム六水和物、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、二酢酸アルミニウム等の水溶性化合物等が好ましいが、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等の水に不溶な化合物でもシリカゾル、シリカゲル中の未架橋Siと反応する化合物であれば用いることが可能である。
シリカゾルを出発原料とする(2)及び(3)の方法の場合には、シリカゾルとアルミニウム化合物を混合して、シリカゾルとアルミニウム化合物を含む混合物ゾルを得、20~100℃、1~48時間の多段階での水熱反応を行い、次いで乾燥してゲルを得、後述の温度・時間・雰囲気条件で焼成する、或いは上記混合物ゾルにアルカリ性水溶液を加えてシリカとアルミニウム化合物を共沈させ、後述の条件で水熱合成を実施し、乾燥後、焼成する。また、上記混合物ゾルのままスプレードライヤーを用いて微粉化したり、上記混合物ゾルを乾燥してゲルを造粒する等の工程によって所望の粒子径を有するアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体とすることも可能である。
特に(3)の方法の場合は、シリカゾルと、水に不溶なアルミニウム化合物を反応させるが、この時アルミニウム化合物を予め所定の粒径まで粉砕しておくか、又は、予備的に粗粉砕しておくこともできる。シリカゾルと、水に不溶なアルミニウム化合物を混合・反応させた後、後述の条件で水熱合成を実施し、乾燥後、焼成する。アルミニウム化合物の予備粉砕をせず、焼成後のシリカ-アルミナ化合物を所定の粒径まで粉砕してもよい。
シリカゲルを出発原料として用いる(4)の方法の場合は、シリカゲルに水溶性アルミニウム化合物の水溶液を反応させるもので、シリカゲルを予め所定の粒径まで粉砕しておくか、又は、予備的に粗粉砕しておいてもよい。シリカゲルと、水溶性アルミニウム化合物水溶液を後述の条件で水熱合成を実施し、乾燥し、さらに後述する条件で1~48時間焼成する。シリカゲルの予備粉砕をせず、焼成後のシリカ-アルミナ化合物を所定の粒径まで粉砕してもよい。
同じくシリカゲルを出発原料として用いる(5)の方法は、シリカゲルと、アルミニウム化合物を固相反応させて調製するものである。Alを未架橋Siと固相状態で反応させる。シリカゲル、アルミニウム化合物は予め所定の粒径まで粉砕しておいてもよく、また予備的に粗粉砕しておいてもよい。粉砕は各物質単独で行ってもよく、両者を混合して粉砕してもよい。焼成は後述する温度・時間・雰囲気条件で行う。シリカゲル、アルミニウム化合物の予備粉砕をせず、反応後に所望の粒径まで粉砕して使用することも可能である。
シリカ、アルミナ並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の少なくとも1種の塩基性金属の酸化物を含む担体の調製方法については、上記のシリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体の調製方法に従い、シリカ及びアルミニウム成分にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及び/又は希土類金属化合物を混合したスラリーを乾燥し、さらに後述する条件で焼成することにより調製することができる。
アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属の原料としては、アルミニウム原料と同様に一般に市販されている化合物を用いることができる。好ましくは水溶性の化合物であり、より好ましくは水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩である。
他の調製方法としては、アルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体に、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選ばれる塩基性金属成分を吸着させる方法を用いることができる。例えば、塩基性金属化合物を溶解した液中に担体を加えて乾燥処理を行う等の浸漬法を用いた方法や、細孔容量分の塩基性化合物を担体に染み込ませて乾燥処理を行う含浸法を用いる方法を適用できる。但し、後から塩基性金属成分を吸着させる方法は、担体に塩基性金属成分を高分散化するうえで液乾燥処理を緩和な条件で行う等の注意が必要である。
また、上述した各種原料の混合スラリーに、スラリー性状の制御や生成物の細孔構造等の特性や得られる担体物性を微調整するために無機物や有機物を加えることが可能である。
用いられる無機物の具体例としては、硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸類、Li,Na,K,Rb,Cs等のアルカリ金属、Mg,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属等の金属塩及びアンモニアや硝酸アンモニウム等の水溶性化合物のほか、水中で分散して懸濁液を生じる粘土鉱物が挙げられる。また、有機物の具体例としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の重合体が挙げられる。
無機物及び有機物を加える効果は様々であるが、主には、球状担体の成形、細孔径及び細孔容積の制御等であり、具体的には、球状の担体を得るには混合スラリーの液質が重要な因子となる。無機物或いは有機物によって粘度や固形分濃度を調製することによって、球状の担体が得られやすい液質に変更できる。また、細孔径及び細孔容積の制御は、後述する混合スラリーの多段階での水熱合成工程によって実施できる。また、担体の成形段階で内部に残存し、成形後の焼成並びに洗浄操作により残存物を除去できる最適な有機化合物を適宜選択して用いることも好ましい。
担体は、前述した各種原料及び添加物の混合スラリーを噴霧乾燥して製造することができる。混合スラリーを液滴化する方法としては、回転円盤方式、二流体ノズル方式、加圧ノズル方式等の公知の噴霧装置を使用できる。
噴霧する液は、よく混合された状態で用いることが必要である。混合状態が悪い場合には組成の偏在によって耐久性が低下する等、担体の性能に影響する。特に原料調合時には、スラリーの粘度上昇及び一部ゲル化(コロイドの縮合)が生じる場合もあり、不均一な粒子を形成することが懸念される。そのため、原料の混合を攪拌下で徐々に行う等の配慮を行うほか、酸やアルカリを加える等の方法によって、例えば、pH2付近のシリカゾルの準安定領域に制御して行うことが好ましい場合もある。
噴霧する液は、ある程度の粘度と、固形分濃度を有していることが必要である。粘度や固形分濃度が低すぎると噴霧乾燥で得られる多孔質体が、真球とならずに陥没球が多く生成する。また、粘度や固形分濃度が高すぎると多孔質体同士の分散性に悪影響を及ぼすことがあるほか、性状によっては安定に液滴の形成ができなくなる。そのため、粘度としては、噴霧可能であれば、5~10000cpの範囲にあることが好ましく、形状からは噴霧可能な高い粘度の方が好ましい傾向が見られ、操作性とのバランスからより好ましくは10~1000cpの範囲から選択される。また、固形分濃度は10~50質量%の範囲内にあることが形状や粒子径から好ましい。なお、噴霧乾燥条件の目安として、噴霧乾燥器の乾燥塔入り口の熱風温度は200~280℃、乾燥塔出口温度は110~140℃の範囲内であることが好ましい。
担体の焼成温度は、一般的には200~800℃の範囲から選ばれる。800℃を超える温度で焼成すると比表面積の低下が著しくなる傾向にあるため好ましくない。また、焼成雰囲気は特に限定されないが、空気中或いは窒素中で焼成するのが一般的である。また、焼成時間は、焼成後の比表面積に応じて決めることができるが、一般的に1~48時間である。焼成条件は多孔質性等の担体物性が変化するため、適切な温度条件及び昇温条件の選定が必要である。焼成温度が低すぎると複合酸化物として耐久性の維持が難しくなる傾向にあり、高すぎると細孔容積の低下に至るおそれがある。また、昇温条件は、プログラム昇温等を利用し徐々に昇温していくことが好ましい。急激に高い温度条件で焼成した場合は、無機物及び有機物のガス化や燃焼が激しくなり、設定以上の高温状態に曝され、粉砕の原因になるため好ましくない。
担体の比表面積は、複合粒子の担持し易さ、触媒として用いた場合の反応活性、離脱し難さ及び反応活性の観点から、BET窒素吸着法による測定で10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましく、50m2/g以上がさらに好ましい。また活性の観点からは特に制限はないが、機械的強度及び耐水性の観点から700m2/g以下が好ましく、350m2/g以下がより好ましく、300m2/g以下がさらに好ましい。
担体の細孔モード径が1nmより小さいと、担持金属の剥離性状は良好となる傾向にはあるが、触媒として液相反応等で使用する場合に、反応基質の拡散過程を律速にしないよう細孔内拡散抵抗を大きくし過ぎず、反応活性を高く維持する観点から、細孔モード径は1nm以上であるのが好ましい。一方、担持物の割れ難さ、担持した金属の剥離し難さの観点から、50nm以下であるのが好ましい。さらに金属を担持させ、酸化エステル化用触媒として使用する際には副生成物抑制の観点から15nm以下であるのがより好ましい。従って、担体の細孔モード径は、好ましくは1nm以上15nm以下であり、より好ましくは2nm以上15nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上7nm以下であり、さらにより好ましくは3nm以上7nm以下である。また、担体によって複合粒子を担持することから、ある程度の細孔容積を一定以上確保することが好ましく、強度を確保する観点からは細孔容積を一定以下とすることが好ましい。すなわち、強度及び担持特性の観点から、細孔容積は0.1~1.0mL/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.1~0.5mL/gの範囲である。本実施形態における担体は、細孔径及び細孔容積が共に上記範囲を満たすものが好ましい。
なお、細孔モード径の値は、上述の触媒の細孔モード径Dと同様である。
担体の形状は、反応形式によって、固定床では圧力損失の少ない構造の中空円柱状、ハニカム状形態が選択され、液相スラリー懸濁条件では、一般的に球状で反応性と分離方法から最適な粒子径を選択して使用する形態が選ばれる。例えば、一般的に簡便である沈降分離による触媒の分離プロセスを採用する場合は、反応特性とのバランスから10~200μmの粒子径が好ましく、より好ましくは20~150μm、さらに好ましくは30~150μmの粒子径が選定される。クロスフィルター方式では、0.1~20μm以下の小さな粒子がより反応性が高いことから好ましい。このような利用目的に併せて種類、形態を変えて化学合成用の触媒として利用することができる。
酸化状態のニッケル又はコバルトの担体への担持量は特に限定はないが、担体質量に対し、ニッケル又はコバルトとして通常0.01~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~5質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。Xの担体への担持量は、担体質量に対し、金属として通常0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~2質量%、さらに好ましくは0.3~1.5質量%、特に好ましくは0.5~1.0質量%である。
さらに本実施形態においては、ニッケル及び/又はコバルトと上記担体の構成元素との原子比に好適な範囲が存在する。本実施形態におけるシリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体を用いる場合、触媒中のニッケル又はコバルトとアルミナの組成比は、Ni/Al原子比又はCo/Al原子比で、好ましくは0.01~1.0、より好ましくは0.02~0.8、さらに好ましくは0.04~0.6である。また、シリカ、アルミナ並びにアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の少なくとも1種の塩基性金属の酸化物を含む担体を用いる場合、担持物中のニッケル又はコバルトとアルミナの組成比は、Ni/Al原子比又はCo/Al原子比で、好ましくは0.01~1.0、より好ましくは0.02~0.8、さらに好ましくは0.04~0.6であり、かつ、ニッケル又はコバルトと塩基性金属成分の組成比が、Ni/(アルカリ金属+アルカリ土類金属+希土類金属)原子比又はCo/(アルカリ金属+アルカリ土類金属+希土類金属)原子比で、好ましくは0.01~1.2であり、より好ましくは0.02~1.0、さらに好ましくは0.04~0.6である。
ニッケル及び/又はコバルトと担体構成元素であるアルミニウム、塩基性金属酸化物との原子比が上記範囲内であると、ニッケル及び/又はコバルトの溶出及び担持物粒子の構造変化の改善効果が大きくなる傾向がある。これは、上記範囲内でニッケル及び/又はコバルト、アルミニウム、塩基性金属酸化物が特定の複合酸化物を形成し、安定な結合構造を形成するためと考えられる。
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒は、活性成分として酸化状態のニッケル及び/又はコバルトとXの他に、第3成分元素を含有することもできる。第3成分元素としては、例えば、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ロジウム、カドニウム、インジウム、錫、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスニウム、イリジウム、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、アルミニウム、硼素、珪素、リンを含ませることが可能である。これらの第3成分元素の含有量は、担持物中に、好ましくは0.01~20質量%、より好ましくは0.05~10質量%含まれる。また、カルボン酸エステル製造用触媒にアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属から選択される少なくとも一種の金属成分を含有させてもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の含有量は、担持物中に好ましくは15質量%以下の範囲から選ばれる。
なお、これらの第3成分元素若しくはアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属は、カルボン酸エステル製造用触媒の製造や反応の際に担持物中に含有させてもよいし、あらかじめ担体に含有させておく方法を用いてもよい。
本実施形態のカルボン酸エステル製造用触媒の比表面積は、反応活性及び活性成分の離脱し難さの観点から、BET窒素吸着法による測定で、好ましくは20~350m2/gであり、より好ましくは50~300m2/g、さらに好ましくは100~250m2/gの範囲である。
カルボン酸エステル製造用触媒の細孔容積は、担持特性及び反応特性の観点から、0.1~1.0mL/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.1~0.5mL/g、さらに好ましくは0.1~0.3mL/gの範囲である。
[カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法]
本実施形態におけるカルボン酸エステル製造用触媒の製造方法としては、特に限定されないが、次の好ましい工程を含むものとすることができる。以下、各工程について説明する。
第1の工程として、担体を含む水スラリーと、ニッケル、コバルト、パラジウム、鉛、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液とを混合する。両液の混合物の温度が60℃以上になるように温度を調整する。混合物中には、担体上に触媒粒子が析出したカルボン酸エステル製造用触媒の前駆体が生成する。
次いで、第2の工程として、前記第1の工程で得られた前駆体を必要に応じて水洗、乾燥した後、加熱処理することによってカルボン酸エステル製造用触媒を得ることができる。
この方法によれば、複合粒子が局在した担持層を有し、担体の中心を含む領域に複合粒子を含まないカルボン酸エステル製造用触媒を得ることができる。
本実施形態においては、第1の工程に先立って、担体を水中で熟成する熟成工程を実施することが好ましい。予め担体の熟成を行うことによって、よりシャープな複合粒子の分布層を得ることができる。担体の熟成による効果は、窒素吸着法による細孔分布測定の結果から、担体の細孔構造の再配列が生じることによって、より均一でシャープな細孔構造になることに起因するものと推察される。担体の熟成温度は、室温でも可能であるが、細孔構造の変化が遅いため、室温より高い温度である60~150℃の範囲から選ばれるのが好ましい。常圧で行う場合には、60~100℃の範囲が好ましい。さらに、熟成処理の時間は、温度条件により変わるが、例えば、90℃の場合、好ましくは1分~5時間、より好ましくは1~60分、さらに好ましくは1~30分である。第1工程の操作としては、担体の熟成後、担体を一度乾燥、焼成してから用いることもできるが、水中に担体を分散させたスラリーとニッケル、コバルト、パラジウム、鉛、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む可溶性金属塩の酸性水溶液とを接触させて、触媒粒子を担体上に不溶固定化させることが好ましい。
ニッケルが含まれる可溶性金属塩としては、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル等が挙げられる。また、Xが含まれる可溶性金属塩としては、例えば、Xとしてパラジウムを選択する場合は、塩化パラジウム、酢酸パラジウム等が、ルテニウムを選択する場合は、塩化ルテニウム、硝酸ルテニウム等、金を選択する場合は、塩化金酸、塩化金ナトリウム、ジシアノ金酸カリウム、ジエチルアミン金三塩化物、シアン化金等、銀を選択する場合は、塩化銀、硝酸銀等が挙げられる。
ニッケル及び/又はコバルトとXを含む水溶液の各々の濃度は、通常0.0001~1.0mol/L、好ましくは0.001~0.5mol/L、より好ましくは0.005~0.2mol/Lの範囲である。水溶液中のニッケル又はコバルト及びXの比率は、Ni/X原子比又はCo/X原子比として、0.1~10の範囲が好ましく、より好ましくは0.2~5.0、さらに好ましくは0.5~3.0である。
担体と、上記酸性水溶液とを接触させる際の温度は、触媒粒子の分布を制御する重要な因子の一つであり、担体に予め担持させる触媒粒子の量により異なるが、温度が低くなりすぎると反応が遅くなり触媒粒子の分布が広がる傾向にある。本実施形態の製造方法においては、よりシャープな触媒粒子が局在した担持層を得る観点から、上記酸性水溶液とを接触させる際の温度は、高い反応速度が得られるような温度であり、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。酸性水溶液と水スラリーを混合した液の温度が60℃以上になるように混合すればよいので、酸性水溶液を加えても混合液が60℃を超える程度に水スラリーを加熱しておいてもよいし、反対に酸性水溶液のみを加熱しておいてもよい。酸性水溶液と水スラリーの両方を60℃以上に加熱しておいてもよい。
反応は、加圧下で溶液の沸点以上の温度で行うこともできるが、操作の容易性から、通常は沸点以下の温度で行うことが好ましい。ニッケル及び/又はコバルトとX成分を固定化させる際の時間は特に限定されるものでなく、担体種、ニッケル及び/又はコバルトとXの担持量、比率等の条件により異なるが、通常1分~5時間、好ましくは5分~3時間、より好ましくは5分~1時間の範囲内である。
本実施形態のカルボン酸エステル製造用触媒の製造方法は、例えば、担体に予め担持させたアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属の酸化物と、ニッケル及び/又はコバルトとXを含む可溶性金属塩との化学反応によって、ニッケル及び/又はコバルトとX成分を不溶固定化する原理に基づいて実施してもよい。ニッケル及び/又はコバルトとX成分の複合化をより十分なものとする場合、両成分の混合水溶液から同時に固定化させることが好ましい。
また、本実施形態の製造方法においては、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属の酸化物を担持した担体を含む水スラリーが、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属塩を含有していることが好ましい。
これにより、Xの金属ブラックの発生を抑えられ、ニッケル及び/又はコバルトとXの複合化を促進し、更に、複合粒子の分布をより精密に制御することができる。このような効果は、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属塩を水溶液中に添加することにより、担体上に予め担持させた塩基性金属酸化物とニッケル及び/又はコバルトとXを含む可溶性金属塩との化学反応の速度を制御することに起因するものと推察される。
アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属塩としては、これら金属の有機酸塩、硝酸塩、塩化物等の無機塩等の水溶性塩から選ばれる1種以上を用いることができる。
上記アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属塩の量は、ニッケル及び/又はコバルトとX成分の量や比率によって異なり、また、担体に予め担持させた塩基性金属酸化物の量によって決定される。通常、水溶液中のニッケル及び/又はコバルトとX成分の量に対して0.001~2倍モル、好ましくは0.005~1倍モルである。
また、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩基性金属の酸化物を担持した担体を含む水スラリーが、可溶性アルミニウム塩を含有していることが好ましい。可溶性アルミニウム塩としては、塩化アルミニウムや硝酸アルミニウムを用いることができる。
水スラリーに可溶性アルミニウム塩を添加することによって、複合粒子が局在した担持層の外側に、実質的に複合粒子を含まない外部層を形成させることができる。これも上述した不溶固定化原理に基づくものである。可溶性アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等の可溶性塩が用いられ、担体に予め担持させた塩基性金属酸化物との化学反応によって、担体の外表面でアルミニウムを反応させ、ニッケル及び/又はコバルトとXの反応場を消費し、さらに内部の前記塩基性金属酸化物とニッケル及び/又はコバルトとX成分とを反応によって固定する。
アルミニウム成分の量は、ニッケル及び/又はコバルトとX成分を担持させない層の厚さを何μmに設定するかによって異なり、また、担体に予め担持させた塩基性金属酸化物の量によって決定される。通常、担体に担持された塩基性金属酸化物の量に対して0.001~2倍モル、好ましくは0.005~1倍モルである。
ニッケル及び/又はコバルトとX成分の分布がいかなる機構により達成されるのか、その詳細については不明な点も多いが、ニッケル及び/又はコバルトとX含有可溶成分の担体内における拡散速度と、該成分が化学反応により不溶化する速度とのバランスが本実施形態の条件下でうまく取られ、担体の表面近傍のごく狭い領域に複合粒子を固定化することが可能になったためと推定される。
また、担体の外表面に複合粒子を実質的に含まない外部層を形成する場合は、アルミニウムと担体の外表面近傍の塩基性金属成分とを反応させて担体の外表面近傍のニッケル及び/又はコバルトとX成分と反応し得る塩基性金属成分を消費し、ついでニッケル及び/又はコバルトとXを担持させると、担体の外表面近傍の反応性の塩基性金属成分が既に消費されているために、ニッケル及び/又はコバルトとXが担体内部の塩基性金属酸化物と反応することによって固定化されると推定される。
次に、第2工程について説明する。
第2工程の加熱処理に先立ち、第1の前駆体を必要に応じて水洗、乾燥する。第1の前駆体の加熱温度は、通常40~900℃、好ましくは80~800℃、より好ましくは200~700℃、さらに好ましくは300~600℃である。
加熱処理の雰囲気は、空気中(又は大気中)、酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)又は不活性ガス雰囲気中(ヘリウム、アルゴン、窒素等)で行われる。加熱時間は、加熱温度及び第1の前駆体の量に応じて適宜選択すればよい。また、加熱処理は、常圧、加圧若しくは減圧下で行うことができる。
上述した第2工程の後、必要に応じて還元性雰囲気中(水素、ヒドラジン、ホルマリン、蟻酸等)で還元処理を行うこともできる。その場合、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトが完全に金属状態に還元されない処理方法を選択して行う。還元処理の温度及び時間は、還元剤の種類、Xの種類及び触媒の量に応じて適宜選択すればよい。
さらに上記加熱処理或いは還元処理の後、必要に応じて空気中(又は大気中)又は酸化性雰囲気中(酸素、オゾン、窒素酸化物、二酸化炭素、過酸化水素、次亜塩素酸、無機・有機過酸化物等)で酸化処理することもできる。その場合の温度及び時間は、酸化剤の種類、Xの種類及び触媒の量に応じて適宜選択される。
ニッケル及び/又はコバルトとX以外の第3成分元素は、担持物調製時或いは反応条件下に加えることができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属についても、触媒調製時或いは反応系に添加することもできる。また、第3成分元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属の原料は、有機酸塩、無機酸塩、水酸化物等から選ばれる。
以下に実施例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例により限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、各種物性は以下の方法により実施した。
[触媒中のニッケル及びXの分布の測定]
得られた触媒を樹脂に包埋し研磨して得た試料を、島津製作所社製1600型X線マイクロプローブ(EPMA)を用い、加速電圧15kVで測定した。反射電子像、線分析(Ni:波長 14.5829、分光結晶 RAP; X(Au):波長 5.8419、分光結晶 PET)からNi及びX(Au)の外表面からの深さ方向の解析を行った。
[担体及び触媒の形状観察]
日立製作所社製X-650走査型電子顕微鏡装置(SEM)を用いて、担体及び触媒を観察した。
[担体及び触媒の平均粒子径及び相当直径の測定]
ベックマン・コールター社製LS230型レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置を用いて、平均粒子径(体積基準)を測定し相当直径とした。
[Ni、Xの担持量及びNi/X原子比の決定]
触媒中のニッケル及びXの濃度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 IRIS Intrepid II XDL型ICP発光分析装置(ICP-AES,MS)を用いて定量した。
試料の調製は、触媒をテフロン製分解容器に秤取り、硝酸及びフッ化水素を加えて、マイルストーンゼネラル社製ETHOS TC型マイクロウェーブ分解装置にて加熱分解後、ヒーター上で蒸発乾固し、次いで析出した残留物に硝酸及び塩酸を加えてマイクロウェーブ分解装置にて加圧分解し、得られた分解液を純粋で一定容したものを検液とした。
定量方法はICP-AESにて内標準法で定量を行い、同時に実施した操作ブランク値を差し引いて触媒中のニッケル及びX含有量を求め、担持量と原子比を算出した。
[担体成分元素(Si,Al,塩基性金属)の含有量の決定]
担体を王水で溶解させた試料と、アルカリ溶融塩で溶解させた試料を調製した。セイコー電子工業社製JY-38P2型ICP発光分析装置(ICP-AES)を使用し、王水で溶解させた試料で塩基性金属及び/又はMgの含有量を測定し、アルカリ溶融塩で溶解させた試料でAl、Siの含有量を測定し、得られた金属含有量からを算出した。
[複合粒子の結晶構造の解析]
リガク社製Rint2500型粉末X線回折装置(XRD)を用い、X線源Cu管球(40kV,200mA)、測定範囲5~65deg(0.02deg/step)、測定速度0.2deg/min、スリット幅(散乱、発散、受光)1deg,1deg,0.15mmの条件で行った。
試料は、無反射試料板上に均一散布し、ネオプレンゴムで固定する手法を採用した。
[複合粒子金属成分の化学状態の解析]
サーモエレクトロン社製ESCALAB250型X線光電子分光装置(XPS)を用い、励起源AlKα 15kV×10mA、分析面積 約1mm(形状:楕円)取込領域:サーベイスキャン 0~1,100eV、ナロースキャンNi2pの条件で行った。
測定試料は、触媒をメノウ乳鉢ですりつぶし、粉体専用試料台にて採取してXPS測定に供した。
[ニッケルの化学状態解析]
NiKαスペクトルをTechnos社製XFRA190型二結晶型高分解能蛍光X線分析装置(HRXRF)で測定し、得られた各種パラメーターを標準物質(ニッケル金属、酸化ニッケル)のそれらと比較し、触媒中ニッケルの価数等の化学状態を推測した。
測定試料はそのままの状態で測定に供した。NiのKαスペクトルの測定は、部分スペクトルモードで行った。この際、分光結晶にはGe(220)、スリットは縦発散角1°のものを使用し、励起電圧と電流はそれぞれ35kVと80mAに設定した。その上で、標準試料ではアブソーバとしてろ紙を使用し、測定試料では計数時間を試料毎に選択してKαスペクトルのピーク強度が3,000cps以下、10,000counts以上になるように測定した。それぞれの試料で5回測定を繰り返し、その繰り返し測定前後に金属試料の測定を行った。実測スペクトルを平滑化処理(S-G法7点―5回)後、ピーク位置、半値幅(FWHM)、非対称性係数(AI)を算出し、ピーク位置は試料の測定前後に測定した金属試料の測定値からのズレ、化学シフト(ΔE)として取り扱った。
[複合粒子の形態観察及び元素分析]
JEOL社製3100FEF型透過型電子顕微鏡/走査透過電子顕微鏡装置(TEM/STEM)[加速電圧300kV,エネルギー分散型X線検出器(EDX)付属]を用いて、TEM明視野像、STEM暗視野像、STEM-EDS組成分析(点分析、マッピング、ライン分析)を測定した。
データ解析ソフトは、TEM像、STEM像解析(長さ測定、フーリエ変換解析):DigitalMicrographTM Ver.1.70.16,Gatan、EDSデータ解析(マッピング画像処理、組成定量計算):NORAN System SIX ver.2.0,Thermo Fisher Scientificを用いた。
測定試料は、触媒を乳鉢で破砕後、エタノールに分散させ、超音波洗浄を約1分間行った後、Mo製マイクログリット上に滴下・風間し、TEM/STEM観察用試料とした。
[複合粒子の紫外可視分光スペクトルの測定]
日本分光社製V-550型紫外可視分光光度計(UV-Vis)[積分球ユニット、粉末試料用ホルダ付属]を用い、測定範囲800-200nm、走査速度400nm/minで行った。
測定試料は、触媒をメノウ乳鉢ですりつぶし、粉末試料用ホルダに設置してUV-Vis測定に供した。
[触媒の細孔モード径D]
Quantachrome社のQuadrasorb evoを使用し、吸着ガスとして窒素を用いて細孔径を測定した(窒素吸着法)。「He measure」モードにて、Quadrasorb evo付属のリファレンスセル及び9mm Large bulbをサンプルセルとして使用し、純ヘリウムを使用してフリースペースの測定を行った。
なお、サンプルの水分を取り除くための乾燥は、減圧下200℃18時間で行った。サンプル量は0.1gとした。測定点は、吸着で相対圧(P/P0)0.025~0.9875とし、脱着で相対圧0.975~0.025とした。
また、細孔分布については、脱着についてBJH法を用いて算出し、細孔直径(D)と、累積細孔体積(V)を細孔直径(D)の常用対数で微分したもの(dV/d(logD))でプロットをとり、ピークトップにおける細孔径を細孔モード径Dとした。
〔水含有量の測定方法〕
反応に供給する前のメタクロレイン/メタノール溶液を、以下の条件でガスクロマトグラフによる分析に供し、その水含有量を測定した。
<条件>
装置:GC6850(アジレント・テクノロジー株式会社製)
キャリアガス:He
検出器:TCD
ディテクター温度:190℃
インジェクター温度:160℃
カラムガス流量:60mL/min
使用カラム:ガラスカラム(3mmφ×2m)(カラム充填剤:ガスクロパック56(ジーエルサイエンス株式会社製))
カラム昇温パターン:初期温度103℃で8分、32℃/minで190℃まで昇温し、190℃で16分保持
注入量は以下の試料をマイクロシリンジで1.0μL注入した。
<試料>
サンプリングした溶液を2g精秤し、内部標準物としてアセトニトリルを40μLマイクロシリンジで計量して加え、よく混合したものを試料として用いた。あらかじめ水とアセトニトリルの検量線を作成しておき、内部標準物との比から水含有量を算出・測定した。
〔担体製造参考例〕
硝酸アルミニウム9水和物3.75kg、硝酸マグネシウム2.56kg、60%硝酸540gを純水5.0Lに溶解した水溶液を15℃に保持した攪拌状態のコロイド粒子径10~20nmのシリカゾル溶液(SiO2含有量30質量%)20.0kg中へ徐々に滴下し、シリカゾル、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムの混合スラリーを得た。その後、混合スラリーを50℃で24時間保持し熟成させた。室温に冷却した後、出口温度130℃に設定したスプレードライヤー装置で噴霧乾燥し固形物を得た。
次いで、得られた固形物を上部が開放したステンレス製容器に厚さ約1cm程充填し、電気炉で室温から300℃まで2時間かけ昇温後3時間保持した。さらに600℃まで2時間で昇温後3時間保持した後徐冷し、担体を得た。得られた担体は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの合計モル量に対し、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムをそれぞれ83.3モル%、8.3モル%、8.3モル%含んでいた。担体の平均粒子径は、レーザー・散乱法粒度分布測定による結果から、60μmであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から、担体の形状はほぼ球状であった。
〔実施例1〕
担体製造参考例で得られた担体300gを90℃に加温した1.0Lの水に分散させ、90℃で15分攪拌した。次に硝酸ニッケル6水塩16.35gと1.3mol/Lの塩化金酸水溶液12mLを含む水溶液を調製し、90℃に加温したものを上記担体スラリーに添加し、90℃でさらに30分攪拌を続け、ニッケルと金成分を担体上に不溶固定化させた。
次いで、静置して上澄みを除去し、蒸留水で数回洗浄した後、濾過した。これを乾燥機により105℃で10時間乾燥した後、マッフル炉で空気中450℃で5時間焼成することにより、ニッケル1.05質量%、金0.91質量%担持した触媒(NiOAu/SiO2-Al23-MgO)を得た。得られた担持物のNi/Au原子比は4.0であった。窒素吸着法による細孔モード径Dは3.7nmであった。
(触媒の物性評価)
得られた触媒の比表面積をBET窒素吸着法による測定で求めたところ、141m2/gであった。
次いで、得られた触媒を樹脂に包埋して研磨して得た試料をX線マイクロプローブ(EPMA)を用い、粒子断面の線分析に付した。担体の最外表面から0.5μmの深さの領域にはニッケル及び金を実質的に含まない外部層を有し、表面から10μmまでの深さの領域にニッケル及び金が担持され、担体内部には複合粒子は存在していないことが確認された。
次に、上記触媒の形態を透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)で観察したところ、粒子径2~3nmに極大分布(平均粒子径:3.0nm)を持つ球状のナノ粒子が担体に担持されていることが確認された。ナノ粒子をさらに拡大して観察すると、ナノ粒子にはAu(111)の面間隔と対応する格子縞が観察された。個々のナノ粒子に対してSTEM-EDSによる組成点分析を行ったところ、いずれの粒子にもニッケルと金が検出された。そのナノ粒子のNi/Au原子比の平均値(算出個数:50)は1.05であった。さらに観察された粒子のナノ領域分析を行ったところ、粒子中央部のNi/Au原子比は0.90、粒子エッジ部が2.56であった。粒子以外の部分ではニッケルのみが微量に検出された。同様の測定を50点行った結果、いずれの粒子もエッジ部周辺においてニッケルが多く検出された。EDS元素マッピングからは、ニッケルと金の分布はほぼ一致していることが観察された。また、組成のラインプロファイルからは、いずれの走査方向においても、金の分布より一回り大きくニッケルが分布していた。
粉末X線回折(XRD)の結果から、ニッケルに由来する回折パターンは観測されず、非晶質の状態で存在していることが確認された。一方、明瞭なピークとはいえないものの、金の結晶に相当するブロードなピークが存在した。粉末X線回折の検出限界(2nm)に近い値ではあるものの、その平均結晶子径をScherrerの式より算出すると3nm程度であった。ニッケルの化学状態については、X線光電子分光法(XPS)の結果から、ニッケルは2価であることが確認された。
二結晶型高分解能蛍光X線分析法(HRXRF)の結果から、ニッケルの化学状態は、ニッケルのハイスピン2価と推測され、NiKαスペクトルの相違から単一化合物である酸化ニッケルとは異なる化学状態であることが判明した。実測スペクトルから得られた触媒のNiKαスペクトルの半値幅(FWHM)は3.470、化学シフト(ΔE)は0.335であった。標準物質として測定した酸化ニッケルのNiKαスペクトルの半値幅(FWHM)は3.249、化学シフト(ΔE)は0.344であった。
また、この触媒の電子励起状態の変化を紫外可視分光法(UV-Vis)で調べた結果、530nm近傍の金ナノ粒子に由来する表面プラズモン吸収ピークは現れず、200~800nm波長域にNiO2起因のブロードな吸収が認められた。
以上の結果から、複合粒子の微細構造は、金ナノ粒子を核として有し、その表面が酸化状態のニッケルで覆われた形態を有していることが推測される。
(メタクリル酸メチルの製造)
上記の触媒240gを、触媒分離器を備え、液相部が1.2リットルの攪拌型ステンレス製反応器に仕込み、攪拌羽の先端速度4m/sの速度で内容物を攪拌しながら、アルデヒドとアルコールとの反応を実施した。メタクロレイン、メタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、水分含有量0.02質量%)及び水を混合し、水含有量を0.7質量%に調整したメタクロレイン/メタノール溶液(36.7質量%=メタクロレイン/(メタクロレイン+メタノール)×100)を0.6リットル/hr、1~4質量%のNaOH/メタノール溶液を0.06リットル/hrで連続的に反応器に供給し、反応温度80℃、反応圧力0.5MPaで出口酸素濃度が4.0容量%(酸素分圧0.02MPa相当)となるように空気を吹き込み、反応系のpHが7となるように反応器に供給するNaOH濃度をコントロールした。反応生成物は、反応器出口からオーバーフローにより連続的に抜き出し、ガスクロマトグラフィーで分析して反応性を調べた。
反応開始から500時間後のメタクリル酸の選択率は1.2%であり、メタクロレインアセタールの選択率は0.5%であった。また、反応開始から500時間後のメタクロレイン転化率は75.4%であり、メタクリル酸メチルの選択率は97.6%であった。
〔比較例1〕
メタクロレイン、メタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、水分含有量0.02質量%)及び水を混合し、水含有量を0.3質量%に調整したメタクロレイン/メタノール溶液(36.7質量%=メタクロレイン/(メタクロレイン+メタノール)×100)を用いたこと以外は実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
〔実施例2~23、比較例2〕
触媒として、下記の表1に示すように細孔モード径のみを変更したものを使用したこと、及び/又は、表1に示すように供給するメタクロレイン/メタノール溶液の水含有量を変更したこと以外は実施例1と同様に反応を行った。結果と併せて表1に示す。
表1より、連続供給される原料組成物中の水含有量Wが0.5質量%以上を満たす実施例1~23においては、メタクロレイン-アセタールの副生が抑制されていることがわかる。これに対して、水含有量Wが0.5質量%以上を満たさない比較例1~2においては、メタクロレイン-アセタール選択率が高くなっており、メタクロレイン-アセタールの副生が顕著であることがわかる。
表1より、連続供給される原料組成物中の水含有量Wが0.5質量%以上5質量%以下を満たす実施例1~21においては、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方が抑制されていることがわかる。
さらに、実施例1~13については、実施例14~23に比べると、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方がより効果的に抑制され、結果としてMacr-Ac選択率、MAA選択率、Macr転化率及びMMA選択率を含む反応成績がより向上することがわかる。
本発明者らは、実施例14~23よりも実施例1~13の方が反応成績に優れる理由について、次のように考察した。
すなわち、カルボン酸エステル製造用触媒における細孔モード径Dが5nmを超えると、触媒の活性は低くなる傾向にあり、このようなカルボン酸エステル製造用触媒を用いる際は本来触媒される反応とは無関係の反応であるアセタール化が進みやすい傾向にある。そのため、細孔モード径Dが大きいカルボン酸エステル製造用触媒を用いる際は、細孔モード径Dが小さく触媒活性が高いカルボン酸エステル製造用触媒を使用する際と比較して、多く水を添加するなどして、原料組成物中の水の含有量を多くすることで、積極的にアルデヒド側に平衡を偏らせておくことが好ましいといえる。すなわち、より良好な反応成績を得るべく原料組成物中の水含有量Wを最適化する際、細孔モード径Dが1nm以上5nm以下の範囲と細孔モード径Dが5nm超15nm以下の範囲とで場合分けして考えることが望ましいと考えられる。
上記の考察に基づき、本発明者らは、各例において得られた水含有量Wと細孔モード径Dとの関係を確認した。実施例及び比較例のプロットより、細孔モード径Dが5nm超15nm以下の範囲におけるWの好ましい下限は、Dの増加と共に漸増していく傾向があり、逆に、当該範囲におけるWの好ましい上限は、Dの増加と共に漸減していく傾向があることを見出した。
上記の傾向を踏まえ、細孔モード径Dが5nm超15nm以下の範囲におけるWの好ましい範囲を決定するべく、各プロットに基づいて最小二乗法による直線近似を行った結果、「W=0.08D+0.1」と「W=-0.37D+6.85」で表される境界に基づいてWの好ましい範囲を特定できることが判明した。すなわち、細孔モード径Dと前記水含有量Wが、以下の条件(1)又は(2)を満たす場合、メタクロレイン-アセタールの副生及びメタクリル酸の副生の双方がより効果的に抑制され、結果としてMacr-Ac選択率、MAA選択率、Macr転化率及びMMA選択率を含む反応成績がより向上することが判明した。
1≦D≦5かつ0.5≦W≦5 (1)
5<D≦15かつ0.08D+0.1≦W≦-0.37D+6.85 (2)
各例が上記の条件(1),(2)を満たすか否かについて、表1に併せて示す。
Figure 2022062421000001

Claims (16)

  1. カルボン酸エステルの製造方法であって、
    反応器内にアルデヒドとアルコールを含む原料組成物を連続供給し、カルボン酸エステル製造用触媒と分子状酸素の存在下、前記アルデヒドと前記アルコールを反応させる反応工程を含み、
    連続供給される前記原料組成物中の水含有量W(質量%)を0.5≦Wとする、カルボン酸エステルの製造方法。
  2. 前記水含有量W(質量%)を0.5≦W≦5とする、請求項1に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  3. 前記カルボン酸エステル製造用触媒は、
    ニッケル、コバルト、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀、銅、及び鉛からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む触媒粒子と、
    細孔を有し、前記細孔内に前記触媒粒子を担持する担体と、を含み、
    前記カルボン酸エステル製造用触媒の細孔モード径Dが1nm以上15nm以下であり、
    前記細孔モード径Dと前記水含有量Wが、以下の条件(1)又は(2)を満たす、請求項1又は2に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
    1≦D≦5かつ0.5≦W≦5 (1)
    5<D≦15かつ0.08D+0.1≦W≦-0.37D+6.85 (2)
  4. 前記触媒粒子が、酸化状態のニッケル及び/又はコバルトと、X(Xはニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム、金、銀及び銅からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示す)と、を含む複合粒子である、請求項3に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  5. 前記複合粒子におけるニッケル又はコバルトとXの組成比は、Ni/X原子比又はCo/X原子比として、0.1~10である、請求項4に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  6. 前記複合粒子が、酸化状態のニッケルと、金と、を含む、請求項4に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  7. 前記触媒粒子は、平均粒子径が2~10nmである、請求項3~6のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  8. 前記担体は、シリカ及びアルミナを含むアルミニウム含有シリカ系組成物からなる担体である、請求項3~7のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  9. 前記触媒粒子が局在した担持層が、前記カルボン酸エステル製造用触媒の表面から前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の40%までの領域に存在する、請求項3~8のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  10. 前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径が200μm以下であり、前記触媒粒子が局在した担持層が、前記カルボン酸エステル製造用触媒の表面から前記カルボン酸エステル製造用触媒の相当直径の30%までの領域に存在する、請求項3~9のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  11. 前記触媒粒子が局在した担持層の外側に、実質的に触媒粒子を含まない外部層を有し、外部層は0.01~15μmの厚みで形成されている、請求項3~10のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  12. 前記触媒粒子がXからなる核を有し、前記核が酸化状態のニッケル及び/又はコバルトで被覆されている、請求項3~11のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  13. 前記アルデヒドは、アクロレイン及び/又はメタクロレインである、請求項1~12のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  14. 前記アルデヒドは、アクロレイン及び/又はメタクロレインであり、前記アルコールは、メタノールである、請求項1~13のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  15. 前記反応工程は、液相で行われる、請求項1~14のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
  16. 前記反応工程は、反応系のpHが6以上9以下となるように塩基性物質を添加しながら、行われる、請求項1~15のいずれか1項に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
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