JP2022060048A - 抗体及びその使用 - Google Patents

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宏和 矢木
Hirokazu Yagi
晃一 加藤
Koichi Kato
貴也 志村
Takaya SHIMURA
芙美子 梅澤
Fumiko Umezawa
博人 川島
Hiroto Kawashima
郁弥 山▲崎▼
Ikuya Yamazaki
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Abstract

【課題】αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基を特異的に認識できる技術を提供する。【解決手段】αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と結合する抗体又はその抗体断片であり、前記抗体は、所定のアミノ酸配列をそれぞれ含むHCDR1、HCDR2及びHCDR3を有する重鎖可変領域と、所定のアミノ酸配列をそれぞれ含むLCDR1、LCDR2及びLCDR3を有する軽鎖可変領域とを有する;CDP-Groの合成酵素を過剰発現させて得られるリコンビナントαジストログリカンを抗原として、前記抗体又はその抗体断片を発現する動物細胞を得ることを特徴とする方法;前記抗体又はその抗体断片をコードする核酸及びベクター;前記ベクターを含む、形質転換体;前記抗体又はその抗体断片を含むがん診断薬。【選択図】なし

Description

本発明は、抗体及びその使用に関する。
ジストログリカンは、筋ジストロフィーの発症と関係する膜タンパク質として研究されている。ジストログリカンは、細胞外領域のαサブユニット(αジストログリカン)と膜貫通領域のβサブユニット(βジストログリカン)を有する。
野生型のαジストログリカンは、ラミニン結合性の糖鎖修飾を受けていることが知られている。この糖鎖修飾の一例として、αジストログリカンのThr317/Thr319の部分のリン酸化三糖構造がある(非特許文献1)。
このリン酸化三糖構造は、リン酸化マンノース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミンから形成される。そして、ラミニン結合性の糖鎖においては、このリン酸化三糖構造の先端に二分子のリン酸化リビトール(RboP)から形成されるタンデムのリビトールリン酸構造が形成されている。
Molecular & Cellular Proteomics 2016, 15(11) 3424-3434.
本発明者は、αジストログリカンがグリセロールリン酸修飾基を有することを真核生物で初めて見出している(非特許文献1)。しかし、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾の分子生物学的意義、生理学的作用の解明にはさらなる研究が必要である。
そこで、本発明は、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基を特異的に認識できる技術を提供する。
本発明者は、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と特異的に結合する抗体によれば、グリセロールリン酸修飾基が発現した細胞を選択的に検出、分別できると考えた。分別したその細胞の遺伝的性質の解析等は、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基の分子生物学的意義、生理学的作用の解明に有効である。
加えて、本発明者は、グリセロールリン酸修飾基ががん細胞において高発現していることを知見し、当該抗体のがん診断薬としての有用性を見出した。
本発明は下記の[1]~[9]の態様を有する。
[1] αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と結合する抗体又はその抗体断片であり、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1;配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2;及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3;を有する、重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1;配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3;を有する、軽鎖可変領域と、を有する抗体、又はその抗体断片。
[2] 前記重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含む、[1]の抗体又はその抗体断片。
[3] 前記軽鎖可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含む、[1]又は[2]の抗体又はその抗体断片。
[4] [1]~[3]のいずれかの抗体又はその抗体断片の生産方法であり、CDP-Groの合成酵素を細胞中で過剰発現させ、次いで、前記細胞で発現したグリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンを抗原として用いて、前記抗体又はその抗体断片を発現する動物細胞を得ることを特徴とする、方法。
[5] 前記リコンビナントαジストログリカンの発現に際して、さらに、CDP-Rboの合成酵素の機能を抑制又は阻害することを特徴とする、[4]の方法。
[6] [1]~[3]のいずれかの抗体又はその抗体断片をコードする、核酸。
[7] [6]の核酸を含む、ベクター。
[8] [7]のベクターを含む、形質転換体。
[9] [1]~[3]のいずれかの抗体又はその抗体断片を含む、がん診断薬。
本発明によれば、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基を特異的に認識できる技術が提供される。
αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基の一例を説明するための図である。 αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基の一例を説明するための図である。 実験例1における抗ラミニン結合性糖鎖抗体を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す写真である。 実験例2におけるαジストログリカンの一次構造を示す図である。 実験例3で樹立した抗体のグリセロールリン酸修飾基に対する結合能をウエスタンブロッティングにより分析した結果を示す図である。 実験例3で樹立した抗体のグリセロールリン酸修飾基に対する結合能をフローサイトメトリーにより分析した結果を示す。 実験例3で樹立した抗体を用いた免疫染色の結果を示す蛍光顕微鏡像である。 実験例3で樹立した抗体を用いて大腸癌組織を免疫染色した結果を示す図である。
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「CDP-Gro」は、「CDP-glycerol」の略である。「CDP-Gro」のIUPAC名は、[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-amino-2-oxopyrimidin-1-yl)-3,4-dihydroxyoxolan-2-yl]methoxy-hydroxyphosphoryl] [(2R)-2,3-dihydroxypropyl] hydrogen phosphateである。
「CDP-Rbo」は、「CDP-ribitol」の略である。「CDP-Rbo」のIUPAC名は、[[(2R,3S,4R,5R)-5-(4-amino-2-oxopyrimidin-1-yl)-3,4-dihydroxyoxolan-2-yl]methoxy-hydroxyphosphoryl] [(2R,3S,4S)-2,3,4,5-tetrahydroxypentyl] hydrogen phosphateである。
「グリセロールリン酸修飾基」は、αジストログリカンに結合したリン酸化三糖構造に結合した修飾基であって、一分子のリン酸と一分子のグリセロールから化学的に形成された原子団を意味する。
アミノ酸配列における「数個」とは、5個、4個、3個又は2個を意味する。
アミノ酸が「付加」されるとは、ペプチドのN末端、C末端にアミノ酸が付加されること又はペプチドの任意の位置にアミノ酸が挿入されることを意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
<抗体又はその抗体断片>
本発明の一実施形態は、抗体又はその抗体断片を提供する。当該抗体又はその抗体断片は、αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基と特異的に結合する。つまり、抗体は、αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基に対する抗体であり、抗グリセロールリン酸修飾抗体であるとも言える。
グリセロールリン酸修飾基と抗体(又はその抗体断片)との解離定数(Kd)は、例えば1.0×10-6M未満でもよく、1.0×10-7M未満でもよく、1.0×10-8M未満でもよく、1.0×10-9M未満でもよい。解離定数(Kd)は、例えば、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)の原理を利用したSPR法による測定、競合ELISA法による測定等により測定できる。SPR法に際しては、Biacore(登録商標)等の市販の装置、センサー、試薬類を使用できる。
図1、2は、αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基の一例を説明するための図である。グリセロールリン酸修飾基1は、リン酸化三糖構造2の先端に結合している。リン酸化三糖構造2は、N-アセチルガラクトサミン3とN-アセチルグルコサミン4とリン酸化マンノース5とを有する。
グリセロールリン酸修飾基1は、リン酸化三糖構造2の先端のN-アセチルガラクトサミン3の3位の酸素原子と結合している。そして、N-アセチルガラクトサミン3の1位の酸素原子は、N-アセチルグルコサミン4の3位の酸素原子と結合している。
N-アセチルグルコサミン4の1位の酸素原子は、リン酸化マンノース5の4位の酸素原子と結合している。そして、リン酸化マンノース5の1位の酸素原子は、αジストログリカン6と結合している。
グリセロールリン酸修飾基1を有するαジストログリカン6においては、リン酸化三糖構造2の先端のN-アセチルガラクトサミン3に一分子のリン酸化グリセロール(GroP)が結合している。このように、グリセロールリン酸修飾基1を有するαジストログリカン6は、リン酸化三糖構造2を介して結合したグリセロールリン酸修飾基1を細胞外の表面に提示していると考えられる。
グリセロールリン酸修飾基1は、細胞内のCDP-Gro7をドナー基質とする酵素反応によって、リン酸化三糖構造2の先端に形成されると考えられている。この酵素反応には、FKTN(Fukutin)、FKRP(Fukutin-Related Protein)の関与が指摘されている(J Biol Chem. 2018 Aug 3; 293(31):12186-12198.)。
一実施形態において抗体は、重鎖可変領域と、軽鎖可変領域とを有する。
重鎖可変領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1;配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2;及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3;を含む。以下、「重鎖相補性決定領域」を「HCDR」と記載する。
軽鎖可変領域は、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1;配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3;を含む。以下、「軽鎖相補性決定領域」を「LCDR」と記載する。
ただし、HCDR1、HCDR2、HCDR3は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号1~3のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号1~3のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;とそれぞれ代替可能である。
また、LCDR1、LCDR2、LCDR3は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号4~6のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号4~6のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;と代替可能である。
一実施形態において、抗体の重鎖可変領域は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。配列番号7のアミノ酸配列は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号7のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号7のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;と代替可能である。
配列番号7のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列としては、例えば、配列番号7のアミノ酸配列と90~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号7のアミノ酸配列と95~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号7のアミノ酸配列と96~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号7のアミノ酸配列と97~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号7のアミノ酸配列と98~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列が挙げられる。
一実施形態において、抗体の軽鎖可変領域は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。配列番号8のアミノ酸配列は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号8のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号8のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;と代替可能である。
配列番号8のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列としては、例えば、配列番号8のアミノ酸配列と90~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号8のアミノ酸配列と95~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号8のアミノ酸配列と96~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号8のアミノ酸配列と97~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号8のアミノ酸配列と98~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列が挙げられる。
一実施形態において、抗体の重鎖は、配列番号9のアミノ酸配列からなる。配列番号9のアミノ酸配列は、マウスIgM由来のアミノ酸配列を有する。配列番号9のアミノ酸配列のうち、マウスIgMに由来する部分の配列のUniprotの登録番号は、P01872である。
配列番号9のアミノ酸配列は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号9のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;と代替可能である。
配列番号9のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列としては、例えば、配列番号9のアミノ酸配列と85~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列と90~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列と95~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列と96~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列と97~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号9のアミノ酸配列と98~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列が挙げられる。
一実施形態において、抗体の軽鎖は、配列番号10のアミノ酸配列からなる。配列番号10のアミノ酸配列は、マウスIgκ由来のアミノ酸配列を有する。配列番号10のアミノ酸配列のうち、マウスIgκに由来する部分の配列のUniprotの登録番号は、P01837である。
配列番号10のアミノ酸配列は、抗体がグリセロールリン酸修飾基との結合能を維持できる範囲であれば、配列番号10のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列;と代替可能である。
配列番号10のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列としては、例えば、配列番号10のアミノ酸配列と85~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列と90~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列と95~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列と96~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列と97~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号10のアミノ酸配列と98~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列が挙げられる。
アミノ酸配列の配列同一性は、例えば、基準アミノ酸配列に対する対象アミノ酸配列の配列同一性として、次のようにして求めることができる。まず、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列をアラインメントする。ここで、各アミノ酸配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。次いで、基準アミノ酸配列及び対象アミノ酸配列において、一致したアミノ酸のアミノ酸残基数を算出し、下記式(1)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
配列同一性(%)=一致したアミノ酸残基数/対象アミノ酸配列の総アミノ酸残基数×100 ・・・(1)
特に、天然の抗体は、重鎖と軽鎖とを有する糖タンパク質である。そして、重鎖及び軽鎖はジスルフィド結合により相互に結合されている。
各重鎖は、重鎖可変領域と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1;CH2;及びCH3;を含む。
各軽鎖は、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、すなわち、CLを含む。
重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる可変性の領域とフレームワーク領域(FR)とにさらに細分可能である。各重鎖可変領域及び各軽鎖可変領域は、3つのCDR及び4つのFRからなる。この3つのCDR及び4つのFRは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置される。
本実施形態の抗体は、一本のペプチド鎖からなる一本鎖抗体でもよい。例えば、ヒトコブラクダ、フタコブラクダ、アルパカ等のラクダ科動物は、重鎖からなる一本鎖抗体を有する。
この場合、一本鎖抗体の可変領域の配列は、本実施形態に開示の重鎖のアミノ酸配列から決定できると考えられる。一本鎖抗体は、天然由来でもよく、ナノボディのように遺伝子工学的な手法により生産された一本鎖ペプチドでもよい。
抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)をとり得る。すなわち、抗体は、IgG抗体でもIgM抗体でもIgA抗体でもIgD抗体でもIgE抗体でもよい。
抗体は、任意のクラスの抗体(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)でもよく、任意のサブクラスの抗体でもよい。
抗体のアイソタイプ、クラス、サブクラスについて、例えば、抗体の重鎖は、下記の配列番号18~26のアミノ酸配列からなるものが挙げられる。ただし、抗体の重鎖は下記の配列番号の配列に限定されず、Uniprot登録番号等で特定される公知の定常領域の配列を用いて適宜設計、変更、置換可能である。
配列番号18:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01878のマウスIgA由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号19:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01881のマウスIgD由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号20:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P06336のマウスIgE由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号21:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01868のマウスIgG1由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号22:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01876のヒトIgA由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号23:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01880のヒトIgD由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号24:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01854のヒトIgE由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号25:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01857のヒトIgG1由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号26:配列番号7の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01871のヒトIgM由来のアミノ酸配列を有する重鎖全長のアミノ酸配列。
抗体のアイソタイプ、クラス、サブクラスについて、例えば、抗体の軽鎖は、下記の配列番号27~29のアミノ酸配列からなるものが挙げられる。ただし、抗体の軽鎖は下記の配列番号の配列に限定されず、Uniprot登録番号等で特定される公知の定常領域の配列を用いて適宜設計、変更、置換可能である。
配列番号27:配列番号8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01843のマウスIgλ由来のアミノ酸配列を有する軽鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号28:配列番号8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P01834のヒトIgκ由来のアミノ酸配列を有する軽鎖全長のアミノ酸配列。
配列番号29:配列番号8の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と、Uniprot登録番号:P0CG04のヒトIgλ由来のアミノ酸配列を有する軽鎖全長のアミノ酸配列。
抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。また、抗体は、天然の供給源に由来してもよく、人工の組換え供給源に由来してもよい。モノクローナル抗体は、例えば、グリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンを抗原として用いて、通常のモノクローナル抗体の生産方法により取得することができる。モノクローナル抗体の生産方法としては、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の一実施形態は、上述した抗体の抗体断片を提供する。
本実施形態の抗体断片は、αジストログリカンに結合したグリセロールリン酸修飾基と特異的に結合する。そのため、抗体断片は、グリセロールリン酸修飾基結合性フラグメントであるとも言える。
抗体断片としては、Fv、Fab、scFv、上述した抗体の一部からなるペプチド等が挙げられる。ペプチドは化学的に合成できるため、抗体全長やscFv等と比較してより容易に製造でき、取り扱いも容易である。また、品質管理が容易で安定性が高い。
本実施形態の抗体断片は、下記のいずれかのペプチドでもよい。
配列番号1のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号1のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号2のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号2のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号3のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号3のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号3のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号4のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号4のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号5のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号5のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号5のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号6のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号6のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号6のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号7のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号7のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号7のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号8のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号8のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号8のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号9のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号9のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号9のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
配列番号10のアミノ酸配列を含むペプチド;又は配列番号10のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列若しくは配列番号10のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、グリセロールリン酸修飾基に対する結合能を有するペプチド。
ここで、配列番号1~10のアミノ酸配列の詳細は、上述した抗体における配列番号1~10のアミノ酸配列と同内容である。
本実施形態の抗体断片は、基板上に結合するための官能基をさらに有してもよい。この場合の官能基としては、例えばシステイン残基のチオール基等が挙げられる。すなわち、本実施形態のペプチドは、配列番号1~10のアミノ酸配列において、N末端側又はC末端側にシステイン残基がさらに付加されたアミノ酸配列を有していてもよい。
(作用効果)
以上説明した本実施形態の抗体又はその抗体断片は、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と特異的に結合するため、グリセロールリン酸修飾基の特異的な認識が可能となる。
<抗体の生産方法>
本発明の一実施形態は、上述した抗体又はその抗体断片の生産方法を提供する。当該生産方法では、CDP-Groの合成酵素を細胞中で過剰発現させる。次いで、前記細胞で発現したグリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンを抗原として用いて、前記抗体又はその抗体断片を発現する動物細胞を得ることを特徴とする。
CDP-Groの合成酵素を細胞中で過剰発現させる方法は、特に限定されないが、CDP-Groの合成酵素をコードする発現ベクターを細胞内に導入する方法が好ましい。ただし、CDP-Groの合成酵素は、リコンビナントαジストログリカンの発現に使用する細胞が元来保有するものでもよい。
CDP-Groの合成酵素は、当該細胞内でCDP-Groの生化学的な合成反応を促進できるものであればよく、特に限定されない。CDP-Groの生化学的な合成反応の一つとして、細胞内のCTPとグリセロールリン酸からCDP-Groを合成する反応がある。
CDP-Groの合成酵素の過剰発現により、当該細胞内のCDP-Groの存在量、すなわち、グリセロールリン酸修飾基の形成反応のドナー基質の存在量が多くなる。その結果、グリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンが当該細胞の表面に発現しやすくなる。これは、図1、2に示すリン酸化三糖構造2の先端におけるグリセロールリン酸修飾基1の形成反応が、CDP-Groの存在量の増加に伴い、競合反応より起きやすくなるためである。
ここでの競合反応とは、リン酸化三糖構造2の先端におけるタンデムのリビトールリン酸構造の形成反応である。通常の条件下、例えば、CDP-Groの合成酵素を過剰発現させていない条件下では、タンデムのリビトールリン酸構造の先に、細胞間接着に寄与する糖鎖、すなわちラミニン結合性の糖鎖が相対的に形成されやすい。一方で、CDP-Groの合成酵素を過剰発現させた条件下では、リン酸化三糖構造2の先端におけるグリセロールリン酸修飾基1の合成反応が起きやすく、グリセロールリン酸修飾基の存在率が高くなると考えられる。
グリセロールリン酸修飾基の先には糖鎖が伸長していない。そのため、グリセロールリン酸修飾基は、αジストログリカンの糖鎖伸長を終結させるように働くと考えられる。また、グリセロールリン酸修飾基が発現したαジストログリカンにおいては、ラミニンとの結合能が消失する。
CDP-Groの合成酵素としては、例えば、グラム陽性菌由来のTagDが挙げられる。ただし、CDP-Groの合成酵素は、TagDに限定されない。
TagDのアミノ酸配列及び立体構造は、例えば、J Biol Chem 2003,278,51863-51871等の文献、Protein Data Bank ID:1N1D等のデータベースに記載されている。本願において、TagDのアミノ酸配列及び立体構造については、これら文献、データベースの内容を援用できる。
一実施形態において、リコンビナントαジストログリカンは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。そして、リコンビナントαジストログリカンは、配列番号11のアミノ酸配列からなるポリペプチドがフォールディングしたものである。
本実施形態においては、リコンビナントαジストログリカンの配列番号11のアミノ酸配列は、配列番号11のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列:と代替可能である。
配列番号11のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列としては、例えば、配列番号11のアミノ酸配列と80~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と85~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と90~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と95~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と96~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と97~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列;配列番号11のアミノ酸配列と98~99%の配列同一性を示すアミノ酸配列が挙げられる。
CDP-Groの合成酵素を過剰発現させる細胞には、あらかじめリコンビナントαジストログリカンの発現用ベクターを導入し、リコンビナントαジストログリカンの発現誘導をかけておくことが好ましい。リコンビナントαジストログリカンの発現用ベクターは、例えば、配列番号12の塩基配列からなる。ただし、リコンビナントαジストログリカンの発現ベクターは、グリセロールリン酸修飾を有するリコンビナントαジストログリカンを発現し得るものであればよく、特に限定されない。
リコンビナントαジストログリカンの発現に際しては、CDP-Groの合成酵素の過剰発現に加えて、さらに、CDP-Rboの合成酵素の機能を抑制又は阻害することが好ましい。グリセロールリン酸修飾基の存在率がさらに高くなると期待されるからである。
CDP-Rboの合成酵素は、リコンビナントαジストログリカンの発現に使用する細胞が元来保有するものである。ただし、CDP-Rboの合成酵素は、当該細胞内でCDP-Rboの生化学的な合成反応を促進し得るものであれば、特に限定されない。CDP-Rboの生化学的な合成反応の一つとして、細胞内のCTPとリビトールリン酸からCDP-Rboを合成する反応がある。
CDP-Rboの合成酵素の機能の抑制又は阻害により、当該細胞内のCDP-Rboの存在量が少なくなる。その結果、CDP-Groの合成酵素の過剰発現との重畳的効果が得られ、グリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンが当該細胞の表面に発現しやすくなり、グリセロールリン酸修飾基の存在率が高くなる。これは、グリセロールリン酸修飾基1の合成反応の競合反応(すなわち、タンデムのリビトールリン酸構造の形成反応)が相対的に起きにくくなることで、グリセロールリン酸修飾基1の合成反応がさらに起きやすくなるためである。
CDP-Rboの合成酵素としては、例えば、ISPD(Isoprenoid Synthase Domain-Containing Protein)が挙げられる。ISPDは、CRPPA遺伝子にコードされている。ただし、CDP-Rboの合成酵素はこの例示に限定されない。
ISPDのアミノ酸配列及び立体構造は、例えば、Chem Biol(2015)22:1643等の文献、Protein Data Bank(ID:2XWL)等のデータベースに記載されている。また、CRPPA遺伝子の塩基配列は、Uniprot(Entry A4D126)等のデータベースに記載されている。本願において、ISPDのアミノ酸配列及び立体構造については、これら文献、データベースの内容を援用できる。
CDP-Rboの合成酵素の機能を抑制又は阻害させる方法は、特に限定されない。例えば、CDP-Rboの合成酵素の発現量(転写量、翻訳量)を低減させる方法でもよく、ゲノムDNA中のCDP-Rboの合成酵素をコードする遺伝子に変異を導入して合成機能が低下したCDP-Rboの合成酵素の変異体を発現させてもよい。
CDP-Rboの合成酵素の発現量の低減に際しては、種々の遺伝子工学的手法を用いることができ、その具体的手法は特に限定されない。
リコンビナントαジストログリカンは、CDP-Groの合成酵素が過剰発現した細胞から定法にしたがって、回収すればよい。リコンビナントαジストログリカンの回収に際しては、種々の分析的手法、タンパク質精製方法を用いることができ、その具体的手法は特に限定されない。
次いで、一実施形態の方法においては、回収したリコンビナントαジストログリカンを抗原として用いて、本実施形態の抗体又はその抗体断片を発現する動物細胞を得る。
例えば、リコンビナントαジストログリカンを用いて免疫した動物からハイブリドーマを調製してもよい。ハイブリドーマの中から、スクリーニングによってグリセロールリン酸修飾基と良好に反応する抗体を産生するハイブリドーマを選択し、当該ハイブリドーマをクローニングし、抗グリセロールリン酸修飾抗体のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを本実施形態の抗体等を発現する動物細胞としてもよい。
ハイブリドーマの調製に際しては、例えば、リコンビナントαジストログリカンを、動物に対して、希釈剤、アジュバントとともに抗体産生が可能な部位に投与し、動物を免疫することができる。希釈剤としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等が挙げられる。
抗原等の投与量、投与間隔は特に限定されない。定法にしたがって投与量、投与間隔を設定できる。
動物としては、例えば、マウス、モルモット、ラット、ヤギ、サル、アカゲザル、イヌ、ウサギ、ウシ、ニワトリ、ネコ、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ラクダ等が挙げられる。なかでも、マウス、ラットが好ましい。
ハイブリドーマの調製方法、培養方法は、特に限定されない。また、グリセロールリン酸修飾基と良好に反応する抗体のスクリーニング、クローニングの具体的手法も特に限定されない。これらの具体的な方法は、種々の実験的プロトコールにしたがって行うことができる。
<核酸>
本発明の一実施形態は、上述した抗体又はその抗体断片をコードする核酸を提供する。本実施形態の核酸を発現させることにより、抗体又はその抗体断片を製造できる。
本実施形態の核酸としては、例えば、上述した抗体の重鎖可変領域遺伝子、上述した抗体の軽鎖可変領域遺伝子、上述した抗体の重鎖可変領域遺伝子の一部をコードする遺伝子、上述した抗体の軽鎖可変領域遺伝子の一部をコードする遺伝子、上述した抗体の重鎖全長をコードする遺伝子、上述した抗体の軽鎖全長をコードする遺伝子、上述した抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを適切なリンカーで連結したscFvをコードする遺伝子等が挙げられる。
上述した抗体の重鎖可変領域遺伝子の塩基配列を配列番号13に示す。また、上述した抗体の軽鎖可変領域遺伝子の塩基配列を配列番号14に示す。本実施形態の核酸は、配列番号13の塩基配列からなる核酸でもよく、抗体の重鎖可変領域をコードする核酸でもよい。また、本実施形態の核酸は、配列番号14の塩基配列からなる核酸でもよく、抗体の軽鎖可変領域をコードする核酸でもよい。
配列番号13の塩基配列は、配列番号13の塩基配列と相同な塩基配列と代替可能である。配列番号13の塩基配列と相同な塩基配列としては、例えば、配列番号13の塩基配列と60~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と70~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と80~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と85~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と90~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と95~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と96~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と97~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号13の塩基配列と98~99%の配列同一性を示す塩基配列が挙げられる。
配列番号14の塩基配列は、配列番号14の塩基配列と相同な塩基配列と代替可能である。配列番号14の塩基配列と相同な塩基配列としては、例えば、配列番号14の塩基配列と60~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と70~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と80~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と85~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と90~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と95~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と96~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と97~99%の配列同一性を示す塩基配列;配列番号14の塩基配列と98~99%の配列同一性を示す塩基配列が挙げられる。
塩基配列の配列同一性は、例えば、基準塩基配列に対する対象塩基配列の配列同一性として、次のようにして求めることができる。まず、基準塩基配列及び対象塩基配列をアラインメントする。ここで、各塩基配列には、配列同一性が最大となるようにギャップを含めてもよい。次いで、基準塩基配列及び対象塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(2)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
配列同一性(%)=一致した塩基数/対象塩基配列の総塩基数×100 ・・・(2)
<ベクター>
本発明の一実施形態は、上述した核酸を含むベクターを提供する。本実施形態のベクターは、発現ベクターでもよい。本実施形態のベクターを適切な宿主に導入することにより、抗体又はその抗体断片を製造できる。
発現ベクターとしては、投与対象の細胞中で抗体又はその抗体断片を発現可能であれば特に限定されない。例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のベクター;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のベクター;pSH19、pSH15等の酵母由来ベクター;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等が挙げられる。ただし、ベクターはこれらの例示に限定されない。
発現ベクターにおける、抗体又はその抗体断片の発現用プロモーターは特に限定されない。例えば、lacプロモーター、cspAプロモーター、ポリヘリドンプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SV40プロモーター等が挙げられる。ただし、発現用プロモーターはこれらの例示に限定されない。
発現ベクターは、発現用プロモーター以外に他の構成要素をさらに有してもよい。発現ベクターにおける他の構成要素としては、例えば、マルチクローニングサイト、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等が挙げられる。ただし、発現ベクターにおける他の構成要素はこれらの例示に限定されない。
<形質転換体>
本発明の一実施形態は、上述したベクターを含む形質転換体を提供する。本実施形態の形質転換体又はその培地等より、抗体又はその抗体断片を製造できる。
形質転換体としては、例えば、上述したベクターが導入された、大腸菌、酵母、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞等の培養細胞;上述したベクターが導入された、カイコ等の昆虫生体;上述したベクターが導入された、タバコ等の植物体;例えば、乳中、卵中に上述した抗体又はその抗体断片を発現するように遺伝子改変された、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ニワトリ等の動物等が挙げられる。ただし、形質転換体はこれらの例示に限定されない。
<がん診断薬>
本発明の一実施形態は、下記(a)の抗体又はその抗体断片を含むがん診断薬を提供する。
(a)αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と結合する抗体であり、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1;配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2;及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3;を有する、重鎖可変領域と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1;配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3;を有する、軽鎖可変領域とを有する、抗体又はその抗体断片。
前記(a)の抗体又はその抗体断片においては、重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含んでもよく、軽鎖可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含んでもよい。また、前記(a)の抗体又はその抗体断片においては、重鎖が配列番号9のアミノ酸配列からなるものでもよく、軽鎖が配列番号10のアミノ酸配列からなるものでもよい。
前記(a)の抗体又はその抗体断片において、配列番号1~10のアミノ酸配列の詳細は、<抗体又はその抗体断片>の項において配列番号1~10のアミノ酸配列について説明した内容と同内容である。
がん診断薬は、前記(a)の抗体、前記(a)の抗体断片以外の他の成分をさらに含んでもよい。
他の成分は、典型的には、薬学的に許容される担体、添加剤である。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、崩壊剤、流動性促進剤等が挙げられる。
他の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、他の成分は、これらの例示に制限されない。
がん診断薬の使用方法は特に限定されない。例えば、診断対象から採取した細胞を含む組織とがん診断薬との結合能を評価する方法が挙げられる。具体例には、診断対象から採取した試料とがん診断薬とを接触させ、がん診断薬中の抗体又はその抗体断片が試料中の細胞由来のグリセロールリン酸修飾基と結合したか否かを検出する方法が挙げられる。試料とがん診断薬とを接触させる際には、抗体又はその抗体断片を基板に結合して固定して、基板上で結合の有無を検出してもよい。
がん診断薬の使用対象、すなわち、診断対象は、がんに罹患し得る動物種であればよく、特に限定されない。例えば、ヒト、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳類が挙げられるが、これらの例示に制限されない。
診断目的としてのがん種は、特に限定されないが、グリセロールリン酸修飾基が高発現していることが好ましい。例えば、後述の実験例に示すように、大腸癌においてはグリセロールリン酸修飾基が高発現していることを本発明者は確認している。加えて、ステージI~IVにかけて大腸癌の悪性度が高くなるにつれてグリセロールリン酸修飾基が高発現していることも確認されている。
ただし、αジストログリカンは、細胞外マトリックスとの結合能と関与していることから、大腸癌以外のがん種であってもグリセロールリン酸修飾基を有するαジストログリカンが高発現している可能性がある。したがって、診断目的としてのがん種は、大腸癌に限定されない。今後の実験等により大腸癌以外のがん種についても、本実施形態のがん診断薬の適用性が実証されるであろうと期待できる。
以上説明した本実施形態のがん診断薬によれば、診断対象の動物種ががんに罹患しているか否かについて、診断結果、予測結果を得られる。このように、本実施形態のがん診断薬は、あくまでも診断対象の動物種ががんに罹患しているか否かの診断結果、予測結果を得ることを目的としたものであり、がん細胞の死滅のような治療効果を得ることを目的としたものではない。
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されない。
<実験例1:HCT116変異細胞>
以下の実験例では、WTのHCT116細胞に加えて、以下の3種類のHCT116変異細胞を使用した。
(HCT116△FKTN)
HCT116△FKTNは、FKTNが欠損したHCT116変異細胞である。HCT116△FKTNは、非特許文献1に記載の方法にしたがって調製した。
(HCT116△ISPD)
HCT116△ISPDは、ISPDが欠損したHCT116変異細胞である。HCT116△ISPDは、非特許文献1に記載の方法にしたがって調製した。
(HCT116△ISPD+TagD)
HCT116△ISPD+TagDは、HCT116△ISPDにおいてTagDを過剰発現させたHCT116変異細胞である。TagDは、グラム陽性菌由来のCDP-Gro合成酵素である。したがってHCT116△ISPD+TagDにおいては、CDP-Gro合成酵素が過剰発現している。
HCT116△ISPD+TagDは、HCT116△ISPDにTagD発現用ベクターを導入し、TagDの発現を誘導して得た。TagD発現用ベクターは、哺乳細胞発現用ベクターpCAG-Neo(富士フイルム和光純薬株式会社)のXhoI及びNotIの制限酵素切断部位に、TagDをコードする人工核酸を組み込んで得た。TagDをコードする人工核酸は、FASMAC社に受託合成した。受託合成した人工核酸の塩基配列は配列番号15に示す。
図3は、抗ラミニン結合性糖鎖抗体を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す。TagDの過剰発現の有無(+-)でラミニン結合性糖鎖の発現の有無が変化し、具体的には、TagDの過剰発現(+)によりラミニン結合性糖鎖のバンドが消失している。このことから、TagDの過剰発現によりリビトールリン酸構造の形成の競合反応、すなわち、グリセロールリン酸修飾基の形成反応が起きやすくなり、グリセロールリン酸修飾基が高発現していることが期待された。
野生型(WT)のHCT116細胞と各変異細胞について、LC-MS/MS(Thermo Fisher Scientific社)による質量分析を行い、グリセロールリン酸修飾、リビトールリン酸構造の発現を確認した。各変異細胞のグリセロールリン酸修飾、リビトールリン酸構造のそれぞれの発現傾向を表1に示す。表1中、「△FKTN」は、HCT116△FKTNであり、「△ISPD」は、HCT116△ISPDであり、「△ISPD+TagD」は、HCT116△ISPD+TagDである。
Figure 2022060048000001
HCT116△FKTNでは、グリセロールリン酸修飾、リビトールリン酸構造のいずれも発現が認められにくい。
HCT116△ISPD及びHCT116△ISPD+TagDでは、グリセロールリン酸修飾が高発現する傾向がある。一方、リビトールリン酸構造の発現は認められにくい。そして、グリセロールリン酸修飾基は、HCT116△ISPD+TagDの方が、HCT116△ISPDより高発現する傾向がある。
<実験例2:リコンビナントαジストログリカンの発現>
10cmの細胞用シャーレを用い、HCT116△ISPD+TagDを5%のCO存在下、37℃で培養した。次いで、HCT116△ISPD+TagDにリコンビナントαジストログリカンをコードする配列番号12の発現用プラスミドを25μg導入した。発現用プラスミドの導入に際しては、PEI(polyethylenimine max、Polysciences,Inc.)を用いた。発現用プラスミドの導入後、ウシ胎児血清(FBS)を10%添加したDMEM培地(dulbecco’s modified eagle’s medium、Invitrogen社)で培養し、リコンビナントαジストログリカンを発現させた。リコンビナントαジストログリカンの発現時の培養条件は、5%のCO存在下で37℃、72時間とした。
培地を回収し、プロテインGアフィニティカラムを用いて培地からリコンビナントαジストログリカンを精製した。プロテインGアフィニティカラム樹脂はPBSバッファーで洗浄し、pH2.5のグリシンバッファーで溶出させた。溶出液はトリス塩酸バッファーでpHを中性に調製した。精製後、リコンビナントαジストログリカンをSDS-PAGEで分画化した。
実験例2で使用したリコンビナントαジストログリカンのアミノ酸配列は、配列番号11に示した。図4は、αジストログリカンの一次構造を示す図である。
図4の上段に示すように、通常、αDG(ジストログリカン)は、内因性プロセシングでN末端ドメイン(N-term)が失われ、Q313から始まるポリペプチドである。また、ムチン様ドメイン中に存在するThr317/Thr319はラミニン結合性糖鎖形成に必要である。
実験例2で使用したリコンビナントαジストログリカンは、図4中、中段及び下段で、「αDG373(T322R)-Fc」として示した。αDG373(T322R)-Fcは、通常のαDGのムチン様ドメイン及びC末端ドメインの代わりに、FcドメインがR373に融合されている。αDG373(T322R)-Fcをトリプシンで処理すると、2つのラミニン結合性糖鎖が結合するスレオニン部位を有する10アミノ酸からなるペプチドが得られる。
<実験例3:抗グリセロールリン酸修飾抗体のクローニング及びシーケンシング>
HCT116△ISPD+TagDから単離したリコンビナントαジストログリカンをPBSバッファーに懸濁し、Titer MAX Gold(TiterMax社)と1:1の比率で最終容量が200μLとなるように5分間混合し、抗原懸濁液を得た。得られた抗原懸濁液を用いて、BALB/cマウスを皮下免疫した。投与間隔は2週間とし、合計3回投与した。各投与量は、20~40μLとし、尾基部の両側に投与した。
最終免疫の3日後に、2匹のBALB/cマウスの鼠径リンパ節からのリンパ球を、ECFG21(NEPAGENE)を用いてSp2/0-Ag12骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマを調製した。次いで、15%FBS(Biowest)を添加したHAT培地RPMI1640培地(Sigma-Aldrich)中でハイブリドーマを培養した。
ハイブリドーマ培養液の上清液を回収し、上清液と各HCT116変異細胞との差動反応性をフローサイトメトリーにより分析した。HCT116△FKTNよりもHCT116△ISPD+TagDと反応性に優れる抗体を分泌するハイブリドーマを限界希釈によりクローニングした。
次いで、市販のキット(商品名「RNeasy Mini kit」、Qiagen社)を用いて、ハイブリドーマから全RNAを抽出した。続いて、市販のキット(商品名「SMARTer RACE 5’/3’Kit」、Clontech Laboratories, Inc.)を用いて、RACE(Rapid Amplification of cDNA End)法による完全長cDNAを合成した。
次いで、マウス抗体重鎖定常領域、及びマウス抗体軽鎖定常領域に特異的なプライマーを用いてPCR増幅を行い、PCR産物を得た。PCR増幅に用いたプライマーの塩基配列を配列番号16、17に示す。
次いで、得られたPCR産物の塩基配列をサンガー法によりシークエンスした。続いて、IMGTデータベース(http://www.imgt.org/)を用いて、得られた塩基配列及び当該塩基配列から予測されるアミノ酸配列を解析し、抗グリセロールリン酸修飾抗体を樹立した。
表2に、抗グリセロールリン酸修飾抗体の塩基配列、アミノ酸配列と、配列表の配列番号との対応を示す。
Figure 2022060048000002
<実験例4:抗原-抗体結合能の評価>
(抗グリセロールリン酸修飾抗体と抗原との相互作用)
抗グリセロールリン酸修飾抗体について、下記の2種類のαジストログリカンとの結合能をウエスタンブロッティングで分析した。
・(α1)HCT116△ISPD+TagD細胞由来のリコンビナントαジストログリカン。
・(α2)HCT116△FKTNから回収、精製したリコンビナントαジストログリカン。
(α1)は、実験例3でBALB/cマウスの免疫に用いたものであり、グリセロールリン酸修飾基を有する。一方、(α2)は、グリセロールリン酸修飾基が発現していないHCT116△FKTNに由来することから、グリセロールリン酸修飾基を有さないと考えられる。
図5に示すウエスタンブロッティングの結果のように、抗グリセロールリン酸修飾抗体は、(α1)に対して(α2)より優れた結合能を示した。この結果から、本抗体は、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基に対して特異的に結合することを確認できた。
(抗グリセロールリン酸修飾抗体を用いたフローサイトメトリー)
WTのHCT116、HCT116△FKTN、HCT116△ISPD、HCT116△ISPD+TagDの4種の各細胞を使用し、フローサイトメトリーを行った。
まず、培地を取り除きPBSバッファーで洗浄した後、0.05%trypsin/2mM EDTAを含むPBSバッファーを加え、37℃で3分静置後、DMEM:F12(high glucose)mediumを添加した。その後遠心して上清を取り除きPBSバッファーで洗いFACSチューブに移した。さらに遠心して上清を取り除き、一次抗体として実験例3で得たハイブリドーマの培養上清を加え、氷上で20分静置した。0.1%BSAを含むPBSバッファーで洗い、遠心して上清を取り除いた後、二次抗体として、PE-anti-mouseIgM(2.0μg/ml)を添加し、氷上で20分静置した。0.1%BSA/PBSで洗い、遠心してフィルター滅菌済PBSバッファーで懸濁し、フローサイトメトリーを行った。
図6は、フローサイトメトリーの結果を示す。抗グリセロールリン酸修飾抗体は、グリセロールリン酸修飾基の発現がないHCT116△FKTN細胞、グリセロールリン酸修飾基の発現が乏しいWTのHCT116に対して10~30%程度の反応性を示した。一方で、本抗体は、HCT116△ISPD細胞に対して50%程度の反応性を示し、TagDが過剰発現したHCT116△ISPD+TagDでは50~80%程度の反応性を示した。このように、グリセロールリン酸修飾基の発現量の増加に伴い、反応性が上昇することから、本抗体は、細胞表面に発現したグリセロールリン酸修飾基に特異的な結合能を具備していることを確認できた。
<実験例5:免疫染色>
HCT116△FKTN、HCT116△ISPD+TagDを、5%CO中、10%FBSを添加したDMEM中、37℃で培養した。次いで、4%パラホルムアルデヒドを含むPBSを加えて室温30分静置し固定化させた。PBSで洗い、免疫組織染色用ブロッキング剤(Blocking one histo、ナカライテスク)を加えて室温10分(又は3%BSAを含むPBSを加えて室温1時間半)ブロッキングを行った。抗グリセロールリン酸修飾抗体を一次抗体液として添加し、一晩4℃で静置して染色した。PBSで洗い、二次抗体液を加えて4℃で一時間静置し、さらにPBSで洗浄した。細胞にはその後核染色溶液(hoechst 33342(DOJINDO)5μg/mL in PBS)を添加し、次いで遮光して室温で5分間静置した。続いてPBSで洗い、封入剤(Vector laboratories社)を、カバーガラスをかける際にカバーガラスとプレートの間に充填させた。その後蛍光顕微鏡でプレートを観察した。
グリセロールリン酸修飾基の発現量が多いHCT116△ISPD+TagDにおいては、グリセロールリン酸修飾基が発現しないHCT116△FKTNと比較して蛍光強度の高い染色像が認められた(図7)。図7の染色像のように、抗グリセロールリン酸修飾抗体を用いた免疫染色により、グリセロールリン酸修飾基の発現の発現量に依存した染色像を得ることができた。なお、図7では細胞核を青色で示し、抗グリセロールリン酸修飾抗体による染色を赤色で示した。
(抗グリセロールリン酸修飾抗体を用いた大腸癌組織免疫染色)
転移性の大腸癌細胞を用いた以外は、上記と同様にして、抗グリセロールリン酸修飾抗体を用いて大腸癌組織を染色する組織免疫染色を行った。結果を図8に示す。
図8の上段の右側の写真に示すように、抗グリセロールリン酸修飾抗体によれば大腸癌組織のグリセロールリン酸修飾基(GroP)を免疫染色することができた。
図8の下段に示すように、大腸癌のステージがステージIVへと段階的に進行するにしたがって、グリセロールリン酸修飾基が高発現する傾向があることを確認した。特に、ステージIVの大腸癌組織においては、およそ75%がグリセロールリン酸修飾基の発現陽性率を示した。
この結果から、抗グリセロールリン酸修飾抗体によれば、がん組織上のグリセロールリン酸修飾基を特異的に認識できることが示唆された。したがって、がん診断薬への適用の可能性が充分に期待できる。
本発明によれば、αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基を特異的に認識する技術を提供できる。
1 グリセロールリン酸修飾基
2 リン酸化三糖構造
3 N-アセチルガラクトサミン
4 N-アセチルグルコサミン
5 リン酸化マンノース
6 αジストログリカン
7 CDP-Gro

Claims (9)

  1. αジストログリカンのグリセロールリン酸修飾基と結合する抗体又はその抗体断片であり、
    配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1;配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2;及び配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3;を有する、重鎖可変領域と、
    配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1;配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2;及び配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3;を有する、軽鎖可変領域と、
    を有する抗体、又はその抗体断片。
  2. 前記重鎖可変領域が配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗体断片。
  3. 前記軽鎖可変領域が配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗体断片。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗体断片の生産方法であり、
    CDP-Groの合成酵素を細胞中で過剰発現させ、次いで、前記細胞で発現したグリセロールリン酸修飾基を有するリコンビナントαジストログリカンを抗原として用いて、前記抗体又はその抗体断片を発現する動物細胞を得ることを特徴とする、方法。
  5. 前記リコンビナントαジストログリカンの発現に際して、さらに、CDP-Rboの合成酵素の機能を抑制又は阻害することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. 請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗体断片をコードする、核酸。
  7. 請求項6に記載の核酸を含む、ベクター。
  8. 請求項7に記載のベクターを含む、形質転換体。
  9. 請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又はその抗体断片を含む、がん診断薬。
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