以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、本実施形態における内視鏡用処置具の説明において、患者の体内側を遠位側とし、内視鏡用処置具の操作者の手元側を近位側とする。
まず、図1~図5を参照しながら、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1を含む構成の全体図である。図2は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の遠位端近傍を示す部分拡大図である。図3は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の遠位端近傍の斜視図である。図4は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の遠位端近傍の構成要素の一部を示す分解斜視図である。図5は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の遠位端近傍の軸線方向断面図である。なお、図4に示す分解斜視図では、シース10および絶縁チューブ15は図示省略されている。
本実施形態における内視鏡用処置具1は、図1に示すように、内視鏡のチャネルに挿通可能なチューブ状のシース10と、シース10の遠位端部に固定された先端チップ20と、シース10に挿通されている操作ワイヤ30と、操作ワイヤ30の遠位端に設けられた接続部35に接続されているスネアワイヤ40と、シース10の近位端であるシース近位端10zおよび操作ワイヤ30の近位端である操作ワイヤ近位端30zが接続されている操作部50と、高周波電源70に接続可能な第1電気コード61および第2電気コード62とを概略備えて構成されている。後述するように、ホットポリペクトミーにおいては、スネアワイヤ40が第1電極、先端チップ20が第2電極として機能し、第1電極と第2電極との間で高周波電流を流すことで発生する電気的エネルギーを用いて、ポリープや腫瘍等の病変を含む生体組織(以下、病変と記載)を切除対象として切除できるようになっている。
シース10は、内視鏡のチャネルに挿通可能な可撓性のチューブにより構成されている。図5に示すように、シース10内部には、シース10の軸線方向に沿ってルーメン(管腔)10aが形成されている。シース10の全長は、例えば1500~2500mm程度とすることができる。シース10の外径は、内視鏡のチャネルに挿通可能な寸法となるように設定され、例えば1.5~3.5mm程度とすることができる。シース10の内径は、例えば、1.2~3.2mm程度とすることができる。シース10の材料は、可撓性を有する電気絶縁材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアミド樹脂あるいはポリアミド系エラストマー等の高分子材料を用いることができる。
また、シース10の遠位側には、先端チップ20が設けられている。先端チップ20は、例えば、シース10の遠位端に接着または融着されて固定されている。先端チップ20には、貫通孔が形成されており、貫通孔の遠位端開口部20b(図3参照)は外部に開口し、近位側開口部はシース10内部に形成されたルーメン10aに連通している。先端チップ20は、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、金、銀、白金、ニッケル、アルミニウム等の耐熱性および耐腐食性に優れた金属で構成されている。なお、先端チップ20の貫通孔内周面に絶縁コーティングを施してもよい。
シース10の遠位側の外周面には、複数のマーカーMが設けられている。マーカーMを設ける方法は特に限定されるものではなく、例えばシース10の外周面に塗料等を塗布することでマーカーMを設けることができる。マーカーMに用いられる塗料の色は、マーカーMを塗布していないシース10の外周面とのコントラストが明確となるものが選択される。内視鏡画像では、シース10の外周面は白または明るい色(明度の高い色)として見えることから、マーカーMに用いられる塗料の色としては、黒または暗い色(明度の低い色)を用いることが好ましい。
本実施形態では、シース10の遠位側の外周面に11個のマーカーMが設けられている。図2に示すように、11個のマーカーMは、シース10の軸線方向の幅D1が同一(例えば、幅D1=5mm)となるように設定されており、かつ、隣接するマーカーMの間隔D2が等間隔(例えば、間隔D2=5mm)となるように設定されており、直感的に把握しやすい構成となっている。最遠位側のマーカーMは、その遠位端がシース10の遠位端と一致する位置に設けられている。また、最遠位側のマーカーMの遠位端と最近位側のマーカーMの遠位端との距離D3が10cmとなるように設定されている。すなわち、本実施形態では、シース10の遠位端から所定範囲(約10cmの範囲)に、5mm幅のマーカーMが5mm間隔で合計11個設けられている。
なお、コールドポリペクトミーは、出血等のリスクが低い安全な手技であり、10mm未満の小さなサイズの病変に対して適用されることが望ましいとされている。一方、10mm以上のサイズの病変に対してコールドポリペクトミーを適用した場合には、病変の切り残し(遺残)や出血等のリスクが高くなることが知られており、このため、10mm以上サイズの病変に対してはホットポリペクトミーを適用することが望ましいとされている。すなわち、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの処置は、病変のサイズを基準として選択的に決定されることが望ましいとされている。
なお、本明細書では説明を明瞭にするため、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの処置に係る病変の判断基準サイズを10mmとして説明しているが、現在、ガイドライン等による明確な判断基準サイズの規定はなく、判断基準サイズを5mmとする事例も報告されている。本実施形態における内視鏡用処理具1では、マーカーMの幅D1およびマーカーMの間隔D2が5mmに設定されており、判断基準サイズを5mmとした場合であっても、マーカーMまたはマーカーMの間隔を参照して、病変のサイズが5mm以上か否かを判断することができる。また、将来の技術進歩等により、判断基準サイズが変更される可能性もある。本発明は、マーカーMの幅やマーカーMの間隔を適宜変更することで、どのような判断基準サイズに対しても適用可能である。
本実施形態で設けられているマーカーMは、病変のサイズを判断するための機能を有している。図示されている例では、マーカーMの幅D1が5mm、隣接するマーカーM間の間隔D2が5mmに設定されており、隣接するマーカーMの遠位端間の距離または近位端間の距離L(幅D1+間隔D2)、すなわち、黒白(明度の低い色および明度の高い色)のコントラストの1セットの寸法が10mmとなるように設定されている。
マーカーMは、シース10の軸線方向に沿った寸法を表している。マーカーMの遠位端および近位端は、マーカーMが撮影される内視鏡画像において、病変のサイズを測定するための目盛位置として視認される。この目盛位置を病変のサイズ測定に用いることで、5mm以上のサイズの病変を5mm単位で測定することができるようになる。
内視鏡用処置具1の操作者は、マーカーMが設けられているシース10の遠位側を病変に近づけて内視鏡画像により観察することで、病変のサイズがコントラストの1セット分(10mm)よりも小さいか大きいかを容易にかつ瞬時に判断できるようになる。その結果、病変のサイズに基づいて、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーのどちらの処置を行うかを適切に決定できるようになる。
本実施形態では、病変の切除を行う際に内視鏡のチャネルの遠位端からシース10を露出させる寸法が最大10cm程度であることを想定して、シース10の遠位端から約10cmの範囲に合計11個のマーカーが設けられている。シース10の遠位側の広範囲に複数のマーカーMが設けられているため、内視鏡用処置具1の操作者は、内視鏡のチャネルの遠位端から露出したシース10の任意の部分において、病変のサイズを判断することができるようになっている。ただし、マーカーMの個数やマーカーMを設ける範囲等は、病変のサイズを判断できるものであれば、特に限定されるものではない。
また、マーカーMの幅D1も同様に、病変のサイズを判断できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、マーカーMの幅D1を10mmとして、病変のサイズがマーカー1つ分(10mm)よりも小さいか大きいかを判断できるようにしてもよい。また、複数のマーカーMの幅D1がそれぞれ異なっていてもよい。
また、マーカーMの間隔D2も同様に、病変のサイズを判断できるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、隣接するマーカーMの間隔D2を10mmとして、病変のサイズがマーカー間隔1つ分(10mm)よりも小さいか大きいかを判断できるようにしてもよい。また、複数のマーカーMの間隔D2がそれぞれ異なっていてもよい。
シース10内部に形成されたルーメン10aには、操作ワイヤ30が挿通されている。操作ワイヤ30は、シース10の軸線方向と一致する挿通方向に沿って進退可能なように、シース10のルーメン10a内に挿通されている。また、操作ワイヤ30は、シース10のルーメン10a内で挿通方向を回転軸として回転できるようになっている。
操作ワイヤ30の全長は、シース10の全長より若干長く設定されることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、操作ワイヤ30の外径は、シース10のルーメン10aの内径よりも小さく設定され、例えば0.3~1.0mm程度とすることができる。操作ワイヤ30は、例えばステンレス鋼等の金属の細線を撚り合わせた撚り線からなるトルクワイヤによって構成されている。ただし、操作ワイヤ30の材質および構造はこれに限定されるものではなく、例えば、単線の金属ワイヤであってもよく、また、樹脂製のワイヤであってもよい。
操作ワイヤ30の遠位端部には接続部35が設けられている。接続部35は、例えば金属製のパイプである。接続部35の近位端には操作ワイヤ30の遠位端が接続固定されており、接続部35の遠位端にはスネアワイヤ40を構成する線条体41の端部が接続固定されている。なお、本実施形態では、接続部35を介して操作ワイヤ30の遠位端とスネアワイヤ40の近位端とが接続されているが、操作ワイヤ30とスネアワイヤ40との接続方法は、特に限定されるものではない。
スネアワイヤ40は、導電性および可撓性を有する線条体41により構成されている。スネアワイヤ40は、線条体41を湾曲または屈曲させてその形状が整えられた後、線条体41の両端部が接続部35の遠位端に固定された部材であり、ループ42を形成している。
スネアワイヤ40は、外力が加わらない自然状態においては、ループ42が大きく開いた(拡径した)拡径状態となるように構成されている。一方で、スネアワイヤ40は、線条体41の可撓性により外力に応じて容易に変形し、ループ42が小さく閉じた(縮径した)縮径状態となるように構成されている。また、スネアワイヤ40は、接続部35を介して操作ワイヤ30と接続されており、シース10のルーメン10a内における操作ワイヤ30の進退に伴って、シース10のルーメン10a内に引き込まれ、また、シース10のルーメン10aから遠位側へ露出するようになっている。すなわち、スネアワイヤ40は、シース10の軸線方向に移動可能なように構成されており、シース10のルーメン10aから遠位側へ露出させると拡径状態となり、シース10のルーメン10a内に収納させると縮径状態となることができる。
スネアワイヤ40の材質は、導電性であれば特に限定されず、例えば、金、銀、白金、ニッケル、鉄、アルミニウム、錫、亜鉛等の金属単体や、ステンレス鋼、ニクロム等の合金を用いることができる。スネアワイヤ40を構成する線条体41の構造は、単線、撚線のいずれであってもよく、撚線としては、単線からなる芯線とこれを囲むコイルとからなるものが含まれる。また、スネアワイヤ40を構成する線条体41の一部または全部の表面に絶縁コーティングを施してもよい。また、さらに、スネアワイヤ40は、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの両方の手技に対応し、ホットポリペクトミーで必要となる焼灼作用に加えて、コールドポリペクトミーで必要となる絞扼力を実現できる強度を有することが好ましい。
スネアワイヤ40を構成する線条体41の線径は特に限定されるものではなく、例えば0.2~0.5mmとすることができる。また、スネアワイヤ40により形成されるループ42のサイズも特に限定されるものではなく、拡径時においてスネアワイヤ40が最も拡径した状態における線条体41間の距離(拡径方向において、対向する線条体41同士が最も離隔する距離)は、例えば、10~30mm程度とすることができる。さらに、スネアワイヤ40により形成されるループ42の形状も特に限定されるものではない。
シース10および操作ワイヤ30の近位端は、操作部50に接続されている。操作部50は、シース固定部52と、ベース部54と、スライド部56とを有している。シース固定部52には、シース10のシース近位端10zが固定されている。シース固定部52の内部には貫通孔(不図示)が形成されており、シース10のルーメン10a内に挿通されている操作ワイヤ30は、シース固定部52の貫通孔を通ってさらに近位側に延びている。
操作部50のベース部54は、シース固定部52に対して、操作ワイヤ30の挿通方向を回転軸として、互いに相対回転可能な状態で係合されている。したがって、ベース部54および当該ベース部54に係合するスライド部56は、シース固定部52に対して相対回転することができる。スライド部56には、操作ワイヤ近位端30zが接続されているため、ベース部54およびスライド部56をシース固定部52に対して相対回転させることにより、シース10を動かさずに、操作ワイヤ30および当該操作ワイヤ30に接続されているスネアワイヤ40を回転させることができるようになっている。
スライド部56には、操作ワイヤ30の近位端である操作ワイヤ近位端30zが固定されている。スライド部56は、シース10のルーメン10a内に挿通されている操作ワイヤ30の挿通方向に関して、シース固定部52に対して相対移動可能な状態で操作ワイヤ近位端30zと係合されている。したがって、スライド部56をシース固定部52に対して挿通方向にスライドさせると、スライド部56に接続された操作ワイヤ30が、シース固定部52に固定されたシース10に対して挿通方向に進退できるようになっている。すなわち、スライド部56を近位側へ移動させると、操作ワイヤ30は、シース10のルーメン10a内で挿通方向に沿って近位側へ移動し、一方、スライド部56を遠位側へ移動させると、操作ワイヤ30は、シース10のルーメン10a内で挿通方向に沿って遠位側へ移動できるようになっている。
この構成により、スライド部56を遠位側および近位側へスライドさせる操作によって、接続部35を介して操作ワイヤ30に接続されているスネアワイヤ40を、先端チップ20の遠位端開口部20bから露出および拡径させたり、先端チップ20の遠位端開口部20bおよびシース10のルーメン10a内に収納および縮径させたりすることができるようになっている。
なお、コールドポリペクトミーでは、スネアワイヤ40を引き込んでループ42を小さくした際の絞扼力で病変の切除が行われる。このことから、先端チップ20の遠位端開口部20bの寸法をなるべく小さくして、スネアワイヤ40による絞扼力がより強くなるようにしてもよい。
スネアワイヤ40は、第1電気コード61等の配線コードおよびコネクタ65を介して高周波電源70に電気的に接続されている。スネアワイヤ40と第1電気コード61との電気的な接続方法は特に限定されるものではない。図示されている例では、第1電気コード61が操作ワイヤ30の近位端に接続されており、操作ワイヤ30を通じてスネアワイヤ40と第1電気コード61とが電気的に接続されている。この構成では、操作ワイヤ30がスネアワイヤ40と高周波電源70との間の導電経路となっており、スネアワイヤ40とシース10の近位側に配置された高周波電源70とが、操作ワイヤ30、第1電気コード61およびコネクタ65を介して電気的に接続されている。
また、先端チップ20は、第2電気コード62等の配線コードおよびコネクタ65を介して高周波電源70に電気的に接続されている。先端チップ20と第2電気コード62との電気的な接続方法は特に限定されるものではない。図示されている例では、後述するように、コイルチューブ11および短絡用線材13を導電経路として第2電気コード62と先端チップ20とが電気的に接続されている。なお、スネアワイヤ40と高周波電源70との間の第1導電経路と、先端チップ20と高周波電源70との間の第2導電経路とは絶縁されている必要がある。
高周波電源70から供給される高周波電圧の周波数は特に限定されるものではないが、100kHz~800kHz程度が好ましく、供給電力は5~35ワット程度であることが好ましい。ホットポリペクトミーの処置時には、高周波電源70から高周波電圧を供給し、スネアワイヤ40からなる第1電極と先端チップ20からなる第2電極との間に高周波電流を流して電気的エネルギーを発生させることで、病変の切除が行われる。
図5に示すように、シース10のルーメン10a内にはコイルチューブ11が挿通されている。コイルチューブ11は、例えば、シース10のルーメン10aの内周面に部分的に接着固定されている。
図4に示すように、コイルチューブ11は、例えばステンレス鋼等からなる導電性線材をコイル状に巻回した構造を有している。導電性線材の線径は、例えば0.1mm程度の細径である。コイルチューブ11は、細径の導電性線材がコイル状に巻回された構造により可撓性を有している。コイルチューブ11の遠位端は先端チップ20に電気的に接続されており、コイルチューブ11の近位端は第2電気コード62に電気的に接続されている。
コイルチューブ11の全長は、シース10の全長と同程度であり、シース10の軸線方向全体にわたって延在している。コイルチューブ11の外径は、シース10のルーメン10a内に挿通可能であり、かつ、コイルチューブ11の内腔に、操作ワイヤ30および絶縁チューブ15が挿通可能であれば、特に限定されるものではない。また、導電性線材をコイル状に巻回する巻回数も特に限定されるものではない。
図4に示すように、コイルチューブ11の外周面には、コイルチューブ11を構成する導電性線材の巻回数よりも少ない巻回数で、短絡用線材13が巻回されている。短絡用線材13の遠位端および近位端は、例えばスポット溶接等によって、コイルチューブ11の外周面の任意の位置、好ましくは、コイルチューブ11の遠位端近傍および近位端近傍に固定されている。また、短絡用線材13の途中の位置が、コイルチューブ11の外周面にスポット溶接等で固定されてもよい。短絡用線材13は、コイルチューブ11の線材と同様の材質、または、コイルチューブ11の線材よりも導電性の高い材質からなることが好ましい。コイルチューブ11および短絡用線材13は、先端チップ20と高周波電源70との間の第2導電経路を構成している。
図5に示すように、コイルチューブ11により形成される内腔には、操作ワイヤ30が挿通されており、さらに、操作ワイヤ30とコイルチューブ11との間に介在するように、絶縁チューブ15が挿通されている。絶縁チューブ15は、例えば、コイルチューブ11の内周面に部分的に接着固定されている。
絶縁チューブ15の全長は、シース10の全長とほぼ同じか、シース10より若干長く設定されることが好ましいが、特に限定されるものではない。絶縁チューブ15の外径は、コイルチューブ11に挿通可能な寸法となるように設定され、絶縁チューブ15の内径は、操作ワイヤ30が挿通可能な寸法となるように設定される。また、絶縁チューブ15の材質は、可撓性を有する電気絶縁材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、シース10と同一の材料を用いることができる。
絶縁チューブ15は、その内周側に配置される操作ワイヤ30と、その外周側に配置されるコイルチューブ11および先端チップ20との接触を防ぎ、第1導電経路と第2導電経路とを絶縁する機能を有している。図示されている例では、絶縁チューブ15の遠位端である絶縁チューブ遠位端15aは、先端チップ20の遠位端である先端チップ遠位端20aと軸線方向の略同一位置となるように設定されているが、絶縁チューブ遠位端15aが先端チップ遠位端20aよりも遠位側に配置されるようにして、絶縁チューブ15を先端チップ20の遠位端開口部20bから露出させてもよい。このように絶縁チューブ15を先端チップ20の遠位端開口部20bから露出させることで、スネアワイヤ40が先端チップ遠位端20aに接触することを確実に防いで、スネアワイヤ40と先端チップ20との電気的な短絡を防ぐことができるようになる。
以下、図6~図8を参照しながら、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の使用方法について、具体例を挙げて説明する。ただし、内視鏡用処置具1の使用方法は、以下に説明する方法に限定されるものではない。
図6~図8は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の使用方法を説明するための概念図であり、図6にはシース10の遠位端部を病変Pの近傍に配置させた状態、図7には病変Pを絞扼するためにスネアワイヤ40を拡径した状態、図8にはスネアワイヤ40により病変Pを絞扼した状態が示されている。
スネアワイヤ40を用いて病変を切除する手技として、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの手技が知られているが、病変のサイズに基づいて、どちらの手技により処置されるべきかが決定される。従来は、内視鏡画像により病変のサイズを正確に測定および判断することが容易ではないという問題があった。また、病変のサイズを判断した後に、その判断結果に応じて、コールドポリペクトミーを行うための処置具またはホットポリペクトミーを行うための処置具を選択して体内に挿入したり、あるいは、適切な手技を実施するために処置具の入れ替えを行ったりする必要が生じ、施術者の手間や患者の体への負担が大きいという問題があった。しかしながら、本実施形態における内視鏡用処置具1を用いることで、上記のような問題を解決することができる。
ポリープや腫瘍等の病変P(図6~図8の病変P)を切除する処置を行う場合、まず、内視鏡を病変Pの近傍まで挿入し、次いで、内視鏡のチャネルに内視鏡用処置具1の遠位側(シース10)を挿通させて、シース10の遠位端部を病変Pの近傍に配置させる。なお、このとき、内視鏡のチャネルに挿通したガイドワイヤ等により、シース10の遠位端部を病変Pの近傍まで案内してもよい。また、内視鏡のチャネルを挿通させる際には、図1に示すスライド部56をベース部54に対して最も近位側へスライドさせた状態として、スネアワイヤ40をシース10のルーメン10a内に収納した状態にしておく。
図6に示すように、シース10の遠位端部を病変Pの近傍に配置させた状態において、施術者は、シース10の遠位端部および内視鏡の遠位端を適切に動かしながら、内視鏡カメラで撮影した内視鏡画像を確認する。内視鏡画像には、シース10の外周面に設けられたマーカーMと病変Pが映し出され、施術者は、マーカーMと病変Pのサイズとを比較することで、病変Pのサイズを判断することができる。そして、施術者は、病変Pのサイズが10mm未満の場合には、コールドポリペクトミーの適用を決定することができ、病変Pのサイズが10mm以上の場合には、ホットポリペクトミーの適用を決定することができる。
次に、施術者は、スライド部56をベース部54に対して遠位側へスライドさせてスネアワイヤ40を拡径させて、図7に示すように、ループ42が病変Pに入り込むように位置合わせを行ってスネアワイヤ40を病変Pに掛ける。なお、このとき、病変Pの基部に生理食塩水等を注射して病変Pが盛り上がった状態としたうえで、スネアワイヤ40を病変Pに掛けてもよい。
次に、施術者は、スネアワイヤ40が病変Pの基部に掛かった状態で、スライド部56をベース部54に対して近位側へスライドさせてスネアワイヤ40を縮径させる。これにより、スネアワイヤ40は、先端チップ20の遠位端開口部20bからシース10のルーメン10a内に引き込まれて、ループ42の大きさが小さくなり、病変Pの基部を絞扼する。
病変Pのサイズに基づいてホットポリペクトミーの適用を決定している場合には、施術者は、高周波電源70を起動して、スネアワイヤ40と先端チップ20との間に高周波電流を流し、これにより発生するジュール熱により病変Pの基部を焼灼して切断する。
一方、病変Pのサイズに基づいてコールドポリペクトミーの適用を決定している場合には、施術者は、スライド部56をベース部54に対して近位側へ一気にスライドさせてループ42を小さくし、スネアワイヤ40の線条体41による絞扼力で病変Pの基部を切断する。
病変Pの基部を切断した後、体内に挿入していた内視鏡用処置具1および内視鏡を体外へ取り出すことで、病変Pを切除する処置は終了となる。なお、切除対象となる病変Pが複数存在している場合には、特定の病変Pの切除が終了した後に、別の病変Pの切除をそのまま続けて行ってもよい。本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、複数の病変PのそれぞれのサイズをマーカーMにより瞬時に判断し、病変Pのサイズに応じて、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの適用を適切に決定することができる。したがって、本実施形態の内視鏡用処置具1によれば、例えばコールドポリペクトミー用の処置具をいったん体外へ取り出してからホットポリペクトミー用の処置具を再び体内へ挿入する等のような処置具の入れ替えを行うことなく、複数の病変Pに対して、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーの適用を選択的にかつ連続して行うことができるようになる。
以下、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の変形例について説明する。なお、以下に説明する第1~第3変形例に係る内視鏡用処置具1は、マーカーMの幅や位置が異なることを除いて、その他の構成要素は上述した図1~図5に示す内視鏡用処置具1と同一であるため、詳細な説明は省略する。
図9は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第1変形例を示す図であり、内視鏡用処置具1の遠位端近傍を示す部分拡大図である。
本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第1変形例では、シース10の遠位側の外周面に、複数のマーカーM11、M12が設けられている。マーカーM11は軸線方向の幅D11が5mmであり、マーカーM12は軸線方向の幅D12が1mmである。隣接するマーカーM11、M12の間隔D13は、1mmの間隔となるように設定されている。また、最遠位側のマーカーM11は、その遠位端がシース10の遠位端と一致する位置に設けられている。なお、図9には図示省略されているが、マーカーM11、M12は、シース10の遠位端から所定範囲(例えば約10cmの範囲)に設けられている。
図9に示すように、当該第1変形例では、遠位側に第1のマーカーM11が配置され、第1のマーカーM11から間隔D13だけ離隔した近位側に第2のマーカーM12が配置され、この第2のマーカーM12から間隔D13だけ離隔した近位側に第3のマーカーM12が配置され、当該第3のマーカーM12から間隔D13だけ離隔した近位側に第4のマーカーM11が配置されている。また、第4のマーカーM11の近位側においても同様の配置が繰り返されている。すなわち、当該第1変形例では、幅D11のマーカーM11、間隔D13、幅D12のマーカーM12、間隔D13、幅D12のマーカーM12、間隔D13を含む範囲を1セットとして、このセットが繰り返し配置された構成となっている。図9に示す距離L1は上記の1セット分の寸法を示しており、距離L1(幅D11+間隔D13+幅D12+間隔D13+幅D12+間隔D13)は10mmである。
マーカーM11、M12の遠位端および近位端は、マーカーM11、M12が撮影される内視鏡画像において、病変のサイズを測定するための目盛位置として視認される。この目盛位置を病変のサイズ測定に用いることで、図9に示す第1変形例では、1mm以上のサイズの病変を1mm単位で測定することができるようになり、上述した図1~図5に示す内視鏡用処置具1と比較して、より高い精度で病変のサイズを判断できるようになる。
また、内視鏡用処置具1の操作者は、マーカーM11、M12が設けられているシース10の遠位側を病変に近づけて内視鏡画像により観察することで、病変のサイズが上記1セット分(10mm)よりも小さいか大きいかを容易にかつ瞬時に判断できるようになる。その結果、病変のサイズに基づいて、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーのどちらの処置を行うかを適切に決定できるようになる。
さらに、内視鏡カメラには、一般的に魚眼レンズが搭載されている。内視鏡カメラで撮影される内視鏡画像は、魚眼レンズにより広い視野が確保されるものの、内視鏡カメラの魚眼レンズから離隔すればするほど、奥行きが詰まって見える。この点を考慮して、第1変形例では異なる幅を有するマーカーM11、M12を設けており、隣接して配置される少なくとも1組のマーカーM11、M12が異なる幅となるように構成されている。これにより、内視鏡画像に映し出される黒白(明度の低い色および明度の高い色)のコントラストが明確となり、内視鏡画像における視認性を向上させて、操作者が、病変のサイズをより容易にかつ瞬時に判断できるようになる。
図10は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第2変形例を示す図であり、内視鏡用処置具1の遠位端近傍を示す部分拡大図である。
本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第2変形例では、シース10の遠位側の外周面に、複数のマーカーM21、M22が設けられている。マーカーM21は軸線方向の幅D21が2mmであり、マーカーM22は軸線方向の幅D22が1mmである。隣接するマーカーM21、M22の間隔D23は、1mmの間隔となるように設定されている。また、最遠位側のマーカーM21は、その遠位端がシース10の遠位端と一致する位置に設けられている。なお、図10には図示省略されているが、マーカーM21、M22は、シース10の遠位端から所定範囲(例えば約10cmの範囲)に設けられている。
図10に示すように、当該第2変形例では、遠位側に第1のマーカーM21が配置され、第1のマーカーM21から間隔D23だけ離隔した近位側に第2のマーカーM22が配置され、この第2のマーカーM22から間隔D23だけ離隔した近位側に第3のマーカーM21が配置されている。また、第3のマーカーM21の近位側においても同様の配置が繰り返されている。すなわち、当該第2変形例では、幅D21のマーカーM21、間隔D23、幅D22のマーカーM22、間隔D23を含む範囲を1セットとして、このセットが繰り返し配置された構成となっている。図10に示す距離L2は上記の2セット分の寸法を示しており、距離L2((幅D21+間隔D23+幅D22+間隔D23)×2)は10mmである。
マーカーM21、M22の遠位端および近位端は、マーカーM21、M22が撮影される内視鏡画像において、病変のサイズを測定するための目盛位置として視認される。この目盛位置を病変のサイズ測定に用いることで、図10に示す第2変形例では、1mm以上のサイズの病変を1mm単位で測定することができるようになり、上述した図1~図5に示す内視鏡用処置具1と比較して、より高い精度で病変のサイズを判断できるようになる。
また、内視鏡用処置具1の操作者は、マーカーM21、M22が設けられているシース10の遠位側を病変に近づけて内視鏡画像により観察することで、病変のサイズが上記2セット分(10mm)よりも小さいか大きいかを容易にかつ瞬時に判断できるようになる。その結果、病変のサイズに基づいて、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーのどちらの処置を行うかを適切に決定できるようになる。
また、内視鏡カメラには、一般的に魚眼レンズが搭載されている。内視鏡カメラで撮影される内視鏡画像は、魚眼レンズにより広い視野が確保されるものの、内視鏡カメラの魚眼レンズから離隔すればするほど、奥行きが詰まって見える。この点を考慮して、第2変形例では異なる幅を有するマーカーM21、M22を設けており隣接して配置される少なくとも1組のマーカーM21、M22が異なる幅となるように構成されている。これにより、内視鏡画像に映し出される黒白(明度の低い色および明度の高い色)のコントラストが明確となり、内視鏡画像における視認性を向上させて、操作者が、病変のサイズをより容易にかつ瞬時に判断できるようになる。
図11は、本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第3変形例を示す図であり、内視鏡用処置具1の遠位端近傍を示す部分拡大図である。
本発明の実施形態における内視鏡用処置具1の第3変形例では、シース10の遠位側の外周面に、複数のマーカーM31が設けられている。マーカーM31は軸線方向の幅D31が2mmである。隣接するマーカーM31の間隔D32は、2mmの間隔となるように設定されている。また、最遠位側のマーカーM31は、その遠位端がシース10の遠位端と一致する位置に設けられている。なお、図11には図示省略されているが、マーカーM31は、シース10の遠位端から所定範囲(例えば約10cmの範囲)に設けられている。
図11に示すように、当該第3変形例では、幅D31のマーカーM31が間隔D32で等間隔に配置されている。すなわち、当該第3変形例では、幅D31のマーカーM31、間隔D32を含む範囲を1セットとして、このセットが繰り返し配置されており、直感的に把握しやすい構成となっている。図11に示す距離L3は3個のマーカーM31および2個の間隔D32を含む寸法を示しており、距離L3(幅D31×3+間隔D32×2)は10mmである。
マーカーM31の遠位端および近位端は、マーカーM31が撮影される内視鏡画像において、病変のサイズを測定するための目盛位置として視認される。この目盛位置を病変のサイズ測定に用いることで、図11に示す第3変形例では、2mm以上のサイズの病変を2mm単位で測定することができるようになり、上述した図1~図5に示す内視鏡用処置具1と比較して、より高い精度で病変のサイズを判断できるようになる。
また、内視鏡用処置具1の操作者は、マーカーM31が設けられているシース10の遠位側を病変に近づけて内視鏡画像により観察することで、病変のサイズが3個のマーカーM31および2個の間隔D32を含む範囲(10mm)よりも小さいか大きいかを容易にかつ瞬時に判断できるようになる。その結果、病変のサイズに基づいて、コールドポリペクトミーおよびホットポリペクトミーのどちらの処置を行うかを適切に決定できるようになる。なお、2個のマーカーM31および3個の間隔D32を含む寸法も10mmであることから、この範囲(10mm)を用いて病変のサイズを判断してもよい。
上述した実施形態における内視鏡用処置具1は、内視鏡のチャネルに挿通可能なチューブ状のシース10と、シース10に挿通されている操作ワイヤ30と、操作ワイヤ30の遠位端に接続されており、シース10の遠位端から露出することにより拡径して、切除対象となる生体組織(病変P)を切除するためのループ42を形成する、導電性の線条体41により構成されたスネアワイヤ40と、スネアワイヤ40とシース10の近位側に配置された高周波電源70との導電経路を構成する配線コードと、を有し、シース10の遠位側外周面に、切除対象となる生体組織(病変P)のサイズを判断するためのマーカーM、M11、M12、M21、M22、M31が設けられている。この構成により、生体組織(病変P)のサイズを容易に判断できるようになり、生体組織(病変P)の切除に係る手技を適切に決定できるようになる。
なお、上述した実施形態では、スネアワイヤ40が第1電極、先端チップ20が第2電極として機能するバイポーラ(双極子)型の内視鏡用処置具1を一例に挙げながら、本発明について説明しているが、本発明は、バイポーラ型の内視鏡用処置具に対する適用に限定されるものではなく、モノポーラ(単極子)型の内視鏡用処置具に対しても適用可能である。モノポーラ型の内視鏡用処置具では、先端チップに電圧を供給しない構成となっており、スネアワイヤから流れる高周波電流を患者の皮膚等に貼付した対極板で回収することで、病変の焼灼および切除を行うようになっている。モノポーラ型の内視鏡用処置具に対しても、シースの外周面にマーカーを施す構成とすることで、本発明を適用することができる。
以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。