本発明の第一、第二実施形態のミシン1を、図面を参照して順に説明する。図1及び図2を参照して、第一、第二実施形態のミシン1に共通する移動部40が装着されたミシン1の物理的構成を説明する。図1の上下方向、右下側、左上側、左下側、及び右上側が、各々、移動部40が装着されたミシン1の上下方向、前方、後方、左方、及び右方である。ベッド部11及びアーム部13の長手方向がミシン1の左右方向である。脚柱部12が配置されている側が右側である。脚柱部12の伸長方向がミシン1の上下方向である。
図1に示すように、ミシン1は、ベッド部11、脚柱部12、アーム部13、及び頭部14を備える。ベッド部11は、左右方向に延びるミシン1の土台部である。脚柱部12は、ベッド部11の右端部から上方へ立設されている。アーム部13は、ベッド部11に対向して脚柱部12の上端から左方へ延びる。頭部14は、アーム部13の左先端部に連結する部位である。
ベッド部11は、その上面に針板(図示略)を備える。針板は、後述する縫針7が挿通可能な針穴(図示略)を有する。ミシン1は、ベッド部11内に、送り歯24(図2参照)、送り機構23(図2参照)、及び釜機構28(図2参照)等を備える。送り歯24は、刺繍縫製ではない通常の縫製時に、送り機構23によって駆動され、被縫製物を所定の移動量で移動させる。釜機構28は、針板の下方において上糸(図示略)を下糸(図示略)に絡ませる。
脚柱部12の前面には、LCD15が設けられている。LCD15は、コマンド、イラスト、設定値、及びメッセージ等の様々な項目を含む画像を表示する。LCD15の前面側には、押圧された位置を検出可能なタッチパネル26が設けられている。ユーザが、指又はスタイラスペン(図示略)を用いてタッチパネル26の押圧操作を行うと、タッチパネル26は押圧位置を検出する。ミシン1の制御部2(図2参照)は、検出した押圧位置に基づき、画像中で選択された項目を認識する。以下、ユーザによるタッチパネル26の押圧操作を、パネル操作と言う。ユーザはパネル操作によって、縫製したい刺繍模様及び実行すべきコマンド等を選択できる。脚柱部12は、内部にミシンモータ33(図2参照)を備える。
アーム部13の上部には、開閉可能なカバー16が設けられている。図1は、カバー16が開かれた状態を示す。カバー16が閉じられた場合のカバー16の下方(つまり、アーム部13の内部)には、糸収容部18が設けられている。糸収容部18は、上糸が巻回された糸駒20を収容可能である。アーム部13内部には、左右方向に延びる主軸34(図2参照)が設けられている。主軸34は、ミシンモータ33により回転駆動される。アーム部13の前面左下部には、スタート/ストップスイッチ29を含む各種スイッチが設けられている。スタート/ストップスイッチ29は、ミシン1の運転を開始又は停止させる、即ち、縫製開始又は停止の指示を入力するのに使用される。
頭部14には、縫製部30(図2参照)、押え棒8、及びプロジェクタ58等が設けられる。縫製部30は、針棒6を有し、針棒6を上下動させて被縫製物Cに縫目を形成するよう構成されている。針棒6は、針穴の上方に位置する。針棒6の下端には、縫針7が取り外し可能に装着される。縫製部30は更に、主軸34と、主軸34の回転により、針棒6を上下方向に駆動させる針棒上下動機構55とを有する。押え棒8の下端部には、押え足9が取り外し可能に装着される。押え足9は、押え棒8とともに、押え足9が被縫製物Cを押える下降位置と、下降位置から上方に退避した(被縫製物Cから離れた)上昇位置との間で移動可能である。押え足9は、針棒6の上下動と連動して、間欠的に被縫製物Cを下方へ押圧する。
プロジェクタ58は、ベッド部11に向けてカラー画像を投影するよう構成されている。プロジェクタ58は、筒状の筐体と、筐体内に収容された反射型表示デバイス59、光源56(図2参照)、及び結像レンズ(図示略)とを備える。筐体は頭部14内の機枠に固定される。光源56はLEDである。反射型表示デバイス59は、光源56からの光を変調し、投影画像を表す画像データに基づき、投影画像の画像光を形成する。結像レンズは、反射型表示デバイス59によって形成された画像光を、ホルダ43に装着された刺繍枠50が保持する被縫製物C上に結像する。投影画像が投影される領域を投影領域Bという。投影領域Bは、針棒6の下方、つまり針穴に対応する位置を含む。投影領域Bは、プロジェクタ58の取付位置、取付姿勢、結像レンズから被縫製物Cの上面までの距離等に応じて一意に定まる領域である。本例のプロジェクタ58は、被縫製物C(ベッド部11)に対して斜め上方から投影画像を投影するので、投影画像には画像の歪みを補正する処理がされる。本例のプロジェクタ58の投影領域Bの大きさ(例えば矩形領域の長辺と短辺とのドット数)は予めフラッシュメモリ84に記憶されている。
移動部40は、ミシン1のベッド部11に対して取り外し可能に装着される。移動部40は、被縫製物Cを保持する刺繍枠50を取り外し可能に装着するホルダ43を備え、ホルダ43を針棒6に対し移動させるよう構成されている。移動部40は、刺繍枠50を含む複数の刺繍枠の内から選択された1つを装着可能である。刺繍枠50は、第一枠51、第二枠52を備え、第一枠51と第二枠52とでシート状の被縫製物C(例えば、加工布)を挟持できる。移動部40は、本体部41及びキャリッジ42を備える。キャリッジ42は、ホルダ43、Y移動機構47(図2参照)及びYモータ45(図2参照)を備える。ホルダ43は、キャリッジ42の右側面に設けられている。キャリッジ42が有するホルダ43は、刺繍枠50を着脱可能に装着する。Y移動機構47は、ホルダ43を前後方向(Y方向)に移動させる。Yモータ45は、Y移動機構47を駆動する。本体部41は、X移動機構46(図2参照)及びXモータ44(図2参照)を内部に備える。X移動機構46は、キャリッジ42を左右方向(X方向)に移動させる。Xモータ44は、X移動機構46を駆動する。刺繍枠50を用いた刺繍縫製時には、移動部40は、キャリッジ42のホルダ43に装着された刺繍枠50を、固有のXY座標系(刺繍座標系)で示される位置に移動可能である。本例では右方をXプラス方向、後方をYプラス方向とする。
図2を参照して、第一、第二実施形態のミシン1に共通するミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1の制御部2は、CPU81、ROM82、RAM83、フラッシュメモリ84、及び入出力インターフェイス(I/O)85を備えている。CPU81はバス86を介して、ROM82、RAM83、フラッシュメモリ84、及び入出力I/O85と接続されている。
CPU81は、ミシン1の主制御を司り、ROM82に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。制御部2は、縫製部30と、移動部40とを制御可能である。ROM82は、図示しないが、プログラム記憶エリアを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、ミシン1を動作させるための各種プログラム(例えば、後述のメイン処理を実行させるためのプログラム)が記憶されている。
RAM83には、CPU81が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが設けられる。フラッシュメモリ84には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータ等が記憶されている。フラッシュメモリ84は、ミシン1で縫製可能な各種刺繍模様を縫製するための縫製データを、複数の刺繍模様の各々について記憶する。縫製データは、座標データを含む。座標データは刺繍模様に含まれる縫目の形成位置(針落ち点の位置)を刺繍座標系の座標で示すデータである。即ち座標データは針落ち点毎の複数の座標を表すデータ群を含む。フラッシュメモリ84は、更に、ホルダ43に装着可能な刺繍枠の種類と、縫製領域との対応を記憶する。縫製領域は、ミシン1のホルダ43に装着された刺繍枠の内側に設定される縫製可能な領域である。本例のフラッシュメモリ84は更に、刺繍座標系の座標と、プロジェクタ58の投影画像の座標系である投影座標系の座標とを対応付ける変数を記憶する。このためミシン1は、縫製データに基づき、投影座標系の座標を特定する処理を実行可能であり、例えば、針落ち点を表す図形を、刺繍枠50に保持された被縫製物C上の針落ち点の位置に投影できる。入出力I/O85には、駆動回路91から96、タッチパネル26、スタート/ストップスイッチ29、プロジェクタ58の光源56、及び検出器35が接続されている。光源56はCPU81からの制御信号に従って点灯し、反射型表示デバイス59に表示される投影画像をベッド部11上で移動される被縫製物上に投影する。検出器35は、刺繍枠が移動部40に装着されたことを検出し、刺繍枠の種類に応じた検出結果を出力するよう構成されている。本例の検出器35は、複数の機械スイッチのONとOFFの組合せに応じて、刺繍枠の種類を検出する。
駆動回路91には、ミシンモータ33が接続されている。駆動回路91は、CPU81からの制御信号に従って、ミシンモータ33を駆動する。ミシンモータ33の駆動に伴い、ミシン1の主軸34を介して針棒上下動機構55が駆動され、針棒6が上下動する。駆動回路92には、送り量調整モータ22が接続されている。駆動回路93は、CPU81からの制御信号に従ってLCD15を駆動することで、LCD15に画像を表示する。駆動回路94には、Xモータ44が接続されている。駆動回路95には、Yモータ45が接続されている。駆動回路94及び95は、各々、CPU81からの制御信号に従って、Xモータ44及びYモータ45を駆動する。Xモータ44及びYモータ45の駆動に伴い、制御信号に応じた移動量だけ、移動部40に装着されている刺繍枠50が左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動する。駆動回路96は、CPU81からの制御信号に従ってプロジェクタ58の反射型表示デバイス59を駆動し、反射型表示デバイス59に投影画像を表示させる。
ミシン1の動作を簡単に説明する。刺繍枠50を用いた刺繍縫製時には、刺繍枠50が移動部40によってX方向及びY方向に移動される処理と併せて、針棒上下動機構55及び釜機構28が駆動される。これにより、針棒6に装着された縫針7によって、刺繍枠50に保持された被縫製物Cに対して刺繍模様が縫製される。
図3から図8を参照して、第一実施形態のミシン1のメイン処理を説明する。メイン処理では、制御部2は、ホルダ43の位置を表す位置情報に基づき変形された刺繍模様を縫製するための縫製データを生成し、生成された縫製データに従って、刺繍枠50が保持する被縫製物Cに変形された刺繍模様を縫製する処理を実行する。ユーザは、図2に示すフラッシュメモリ84に予め記憶された縫製データによって表される複数種類の刺繍模様の中から縫製の対象となる一以上の刺繍模様を選択し、メイン処理を実行する開始指示を入力する。制御部2は開始指示を検知すると、ROM82のプログラム記憶エリアに記憶されたメイン処理を実行するためのプログラムを、RAM83に読み出す。制御部2は、RAM83に読み出したプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを実行する。メイン処理を実行するのに必要な各種パラメータは、フラッシュメモリ84に記憶されている。メイン処理の過程で得られた各種データは、適宜RAM83に記憶される。以下ではステップをSと略記する。図4及び図8では、図面の左右方向及び上下方向を各々、刺繍座標系のX方向及びY方向として、刺繍模様Eの配置を示す。具体例1から3として、図4に示すアルファベット文字「ABC」を表す刺繍模様Eを用いる。具体例1から3は各々、図8の刺繍模様E1からE3を縫製する例である。変形された刺繍模様E1からE3を区別しないとき、刺繍模様EMともいう。
図3に示すように、制御部2は、図1に示すホルダ43に装着された刺繍枠50の内側に設定される縫製領域Rの大きさを取得する(S1)。制御部2は、例えば、検出器35の出力値に基づき特定される刺繍枠50の種類と、フラッシュメモリ84に記憶された刺繍枠50の種類及び縫製領域の大きさとの対応とに基づき、縫製領域Rの大きさを取得する。縫製領域Rの大きさの取得方法は適宜変更されてよく、例えばユーザが入力した値が取得されてもよい。制御部2は、例えば、刺繍枠50の種類を検出する。縫製領域Rは刺繍座標系のX方向及びY方向に延びる辺を有する矩形状であり、縫製領域Rの大きさは、刺繍座標系のX方向の長さと、Y方向の長さとで表される。例えば、X方向の長さが、5から30cmであり、Y方向の長さが、5から30cmである。縫製領域Rは、投影領域Bよりも大きい。
図3に示すように、制御部2は、フラッシュメモリ84を参照し、ユーザによって選択された刺繍模様Eに関するデータを取得する(S2)。刺繍模様Eに関するデータは、刺繍模様E状を表すデータであり、例えば、フラッシュメモリ84に記憶された刺繍模様Eを表す図形データ又は刺繍模様Eを縫製するための縫製データである。制御部2は、ユーザによってパネル操作により描画された刺繍模様の図形データを取得してもよいし、外部機器に記憶された刺繍模様の縫製データ又は図形データを取得してもよい。具体例1から3では、図4の刺繍模様Eを縫製するための縫製データを取得する。制御部2は、フラッシュメモリ84を参照し、S2で取得された刺繍模様Eに対応付けられた変形可能範囲を取得する(S3)。変形可能範囲は、刺繍模様Eを変形する際の許容量を表す。変形可能範囲は、予め設定され、フラッシュメモリ84等の記憶装置に記憶される。変形可能範囲は複数の刺繍模様に対して共通に設定されてもよいし、複数の刺繍模様の一部又は全部に対して個別に設定されてもよい。変形可能範囲は刺繍模様Eの変形方法に応じて適宜設定されればよい。刺繍模様Eの変形方法が刺繍模様Eの大きさを拡大又は縮小することである場合、変形可能範囲は、例えば、刺繍模様Eの初期の大きさに対する倍率で表される。変形可能範囲は、一例として、刺繍模様Eの初期の大きさに対する倍率が0.8から1.2の範囲である。
制御部2は、基準点入力指示を検出したかを判断する(S4)。基準点入力指示は、第一基準点P1と第二基準点P2とをユーザが設定する場合にタッチパネル26を介したパネル操作により入力される。第一基準点P1と第二基準点P2とは、S2で取得された刺繍模様Eに対して設定された点であり、刺繍模様Eを変形する際の基準として用いられる点である。第一基準点P1と第二基準点P2との初期値は、例えば、図4参照して後述する、刺繍模様EのマスクMの対角に配置された二点であり、フラッシュメモリ84に予め記憶される。
基準点入力指示が検出されない場合(S4:NO)、制御部2は、フラッシュメモリ84を参照し、第一基準点P1及び第二基準点P2の初期値を取得する(S6)。基準点入力指示が検出された場合(S4:YES)、制御部2は、基準点入力設定処理を実行する(S5)。本例では第一基準点P1と第二基準点P2とは各々、刺繍模様E上又は後述のマスクM上に設定される。具体的には、図5に示すように、基準点入力設定処理では、制御部2は、駆動回路93を制御して、S2で選択された刺繍模様Eの変形方法を設定する画面G1(図4参照)をLCD15に表示する(S21)。図4に示すように、画面G1は、刺繍模様E、マスクM、及びキー71から74を表示する。マスクMは、刺繍模様Eの大きさを表す図形である。マスクMは、一例として、X方向の延びる二辺とY方向に延びる二辺とを有し、刺繍模様Eを内包する最小矩形である。キー71から73は、刺繍模様Eの変形方法を指示するためのキーである。キー71から73の内、選択中のキー(画面G1ではキー71)は、他のキーと異なる色で表示される。キー71は、刺繍模様EをX方向及びY方向に拡大又は縮小し、後述のS49で算出された角度だけ、刺繍模様Eを回転する方法1を変形方法に設定する場合に選択される。キー72は、刺繍模様EをX方向には変形せず、Y方向に拡大又は縮小し、刺繍模様Eの角度を変更しない方法2を変形方法に設定する場合に選択される。キー73は、刺繍模様EをX方向に拡大又は縮小し、Y方向には変形せず、刺繍模様Eの角度を変更しない方法3を変形方法に設定する場合に選択される。キー74は、変形方法を確定することを指示する場合に選択される。ユーザは、タッチパネル26(図1参照)を用い、キー71から73の何れかを選択した後、キー74を選択する。
図5に示すように、制御部2は、キー74の選択が検出されたかを判断する(S22)。制御部2は、キー74の選択が検出されるまで待機する(S22:NO)。制御部2は、キー74の入力を検出した場合(S22:YES)、方法1から3の内、ユーザによって選択されたキーに対応する変形方法を設定する(S23)。具体例1、2では変形方法に方法1が設定され、具体例3では変形方法に方法2が設定される。
制御部2は、駆動回路93を制御して、第一基準点P1及び第二基準点P2を設定する画面G2(図4参照)を図1に示すLCD15に表示する(S24)。図4に示すように、画面G2は、刺繍模様E、マスクM、第一基準点P1、及びキー74、75を表示する。刺繍模様E、マスクM、及びキー74は画面G1と同様である。画面G2の第一基準点P1は、刺繍模様E及びマスクMの位置に対する第一基準点P1の位置を表す。矩形状の第一基準点P1の中心が第一基準点P1の位置に対応する。第一基準点P1の初期値は、例えば、マスクMの左上の角部である。キー75は、方向を指示するキーであり、画面G2では、第一基準点P1の位置をキー75が示す方向に、キー75が押下された量(押下回数又は押下時間)だけ移動する指示を入力するのに用いられる。キー74は、画面G2では基準点の位置を入力することを指示する場合に選択される。ユーザは、キー75を選択し、第一基準点P1の位置を所望の位置に変更した後、キー74を選択する。
図5に示すように、制御部2は、キー74の選択が検出されたかを判断する(S25)。制御部2は、キー74の選択が検出されるまで待機する(S25:NO)。図4の画面G3に示すように第一基準点P1の位置が変更された後、キー74の選択が検出された場合(S25:YES)、制御部2は、第一基準点P1の位置として、第一基準点P1の中心位置を取得し、取得された第一基準点P1の位置がマスクMを表す矩形の辺上にあるかを判断する(S26)。第一基準点P1の位置がマスクM上にない場合(S26:NO)、制御部2は、取得された第一基準点P1の位置が刺繍模様E上にあるかを判断する(S27)。第一基準点P1の位置が刺繍模様E上にない場合(S27:NO)、制御部2は、駆動回路93を制御して、エラーメッセージをLCD15に表示し(S28)、ユーザに第一基準点P1の再設定を促す。制御部2は処理をS25に戻す。第一基準点P1の位置がマスクM上にある場合(S26:YES)、又は第一基準点P1の位置が刺繍模様E上にある場合(S27:YES)、制御部2は、第一基準点P1に、取得された第一基準点P1の位置を設定する(S29)。
制御部2は、画面G2と同様の画面に第二基準点P2を表示する。ユーザは、キー75を選択し、第二基準点P2の位置を所望の位置に変更した後、キー74を選択する。制御部2は、キー74の選択が検出されたかを判断する(S30)。制御部2は、キー74の選択が検出されるまで待機する(S30:NO)。キー74の選択が検出された場合(S30:YES)、制御部2は、第二基準点P2の位置として、第二基準点P2の中心位置を取得し、取得された第二基準点P2の位置がマスクM上にあるかを判断する(S31)。第二基準点P2の位置がマスクM上にない場合(S31:NO)、制御部2は、取得された第二基準点P2の位置が刺繍模様E上にあるかを判断する(S32)。第二基準点P2の位置が刺繍模様E上にない場合(S32:NO)、制御部2は、駆動回路93を制御して、エラーメッセージをLCD15に表示し(S33)、ユーザに第二基準点P2の再設定を促す。制御部2は処理をS30に戻す。第二基準点P2の位置がマスクM上にある場合(S31:YES)、又は第二基準点P2の位置が刺繍模様E上にある場合(S32:YES)、制御部2は、第二基準点P2に、取得された第二基準点P2の位置を設定する(S34)。制御部2は以上で基準点設定処理を終了し、処理を図3のメイン処理に戻す。基準点入力設定処理により、例えば図4の画面G4に示すように、刺繍模様Eに対して第一基準点P1及び第二基準点P2が設定される。
図3に示すように、制御部2はS5の次に、S5の処理によりタッチパネル26を用いて刺繍模様Eに対して設定された第一基準点P1と第二基準点P2とを取得する(S6)。制御部2は、刺繍模様Eに設定された第一基準点P1と第二基準点P2とに基づき、後述の第一位置Q1からのホルダ43の移動方向を決定する(S7)。移動方向は、第一基準点P1から参照点に向かうベクトルの基準に対する方向(角度)で示される。参照点は、第二基準点P2との距離が、第一基準点P1よりも短い条件を満たす点である。本例の参照点は、第二基準点P2であり、制御部2は、S6で取得された第一基準点P1から第二基準点P2に向かうベクトルの基準に対する方向(角度)を決定する。基準は、例えば、Xプラス方向(右方)である。制御部2は、刺繍模様Eに設定された第一基準点P1と第二基準点P2とに基づき、第一位置Q1からのホルダ43の移動距離を決定する(S8)。移動距離の決定方法は、S7で設定された移動方向に応じて適宜定められればよい。移動距離は、例えば、第一基準点P1と参照点との距離であってもよく、本例の制御部2は、S6で取得された第一基準点P1と第二基準点P2との、縫製データによって表される刺繍模様Eの初期の大きさに応じた、刺繍座標系での距離B2(図4参照)を移動距離として決定する。
制御部2は、オフセット量を取得する(S9)。オフセット量は、S2で取得された刺繍模様Eの大きさを変更する処理に用いる値であり、本例ではマスクMの外側に設定する余白の間隔を規定する。オフセット量は、マスクMの四辺の各々に設定されてもよいし、X方向に延びる二辺と、Y方向に延びる二辺とで互いに異なる値であってもよいし、マスクMの四辺に共通する値であってもよい。具体例1、3ではマスクMの四辺に共通するオフセット量に0が設定され、具体例2ではX方向に延びる二辺のオフセット量がD1、Y方向に延びる二辺のオフセット量がD2に設定される。
制御部2は、駆動回路93を制御して、第一位置情報を設定する画面G5(図4参照)をLCD15に表示する(S10)。第一位置情報は、図1に示すホルダ43が第一位置Q1にある時の、移動部40の座標系で示されるホルダ43の位置を示す。本例ではホルダ43の位置は縫製領域Rに対する針落ち点の位置を示す刺繍座標系の座標で表される。図4に示すように、画面G5は、縫製領域R、第一位置Q1、及びキー74、75を表示する。キー74、75は画面G1と同様である。縫製領域Rは、刺繍枠50の内側に設定される縫製可能な領域の大きさを表す。第一位置Q1の初期位置は、例えば、刺繍模様Eが初期位置に配置された場合の、第一基準点P1の位置である。刺繍模様Eの初期位置は、刺繍模様EのマスクMの中心が、縫製領域Rの中心と一致する位置である。キー75は、画面G5ではホルダ43を移動することを指示する場合に選択される。キー74は、画面G5ではホルダ43の位置の設定を完了することを指示する場合に選択される。
制御部2は、キー74の選択を検出したかを判断する(S11)。キー74の選択が検出されていない場合(S11:NO)、制御部2は、キー75の選択を検出したかを判断する(S12)。キー75の選択が検出された場合(S12:YES)、制御部2は、駆動回路94、95を制御して、選択されたキー75が示す方向に、検出された量だけ、ホルダ43を移動する(S13)。キー75の選択が検出されていない場合(S12:NO)、又はS13の次に、制御部2は処理をS11に戻す。ユーザは、例えば、縫製領域Rに対する針落ち点を基準に第一位置Q1を設定する。つまりユーザは、キー75を選択して、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等の指標を、針落ち点に対応する位置(例えば、針棒6の下方)に配置することで、第一位置Q1を設定する。制御部2は、プロジェクタ58を制御して、針落ち点を示す図形(例えば、円)を針落ち点に対応する位置に被縫製物C上に投影させてもよい。針落ち点に対応する位置は、針落ち点の位置でもよいし、針落ち点の近傍の所定位置であってもよい。この場合、ユーザは、投影された針落ち点の位置に指標を配置することで、指標を針落ち点に対応する位置に配置してもよい。具体例1から3では、ユーザは被縫製物Cの網掛けで示す縞模様を指標として用い、キー75を選択してホルダ43を図6(A)に示す位置に移動させた後、キー74を選択する。図6(A)では、第一位置Q1を、ホルダ43が第一位置Q1にある時の針落ち点で示す。キー74の選択が検出された場合(S11:YES)、制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1にある時の、移動部40の刺繍座標系で示されるホルダ43の位置を示す第一位置情報を取得する(S14)。第一位置情報は、例えばホルダ43が第一位置Q1にある時の針落ち点の刺繍座標系の座標(X1,Y1)で表される。
制御部2は、S14で第一位置情報を取得後、S16で第二位置情報を取得前に、駆動回路94、95を制御して、S7で決定された移動方向にホルダ43を移動させる(S15)。S15の移動距離は適宜設定されればよく、例えば、S8で決定された移動距離である。具体例1から3では、図6(A)のベクトルVで示す移動方向及び移動距離だけ、ホルダ43を移動させる。制御部2は、S8で決定された移動距離を移動するか、又は停止の指示を取得した場合に、駆動回路94、95を制御して、ホルダ43の移動を停止する。
制御部2は、位置情報取得処理を実行する(S16)。第一実施形態の位置情報取得処理では、第二位置情報を取得する処理が実行される。図7に示すように、制御部2は、第二位置情報を設定する画面G6(図4参照)をLCD15に表示する(S41)。第二位置情報は、ホルダ43が第二位置Q2にある時の、移動部40の座標系で示されるホルダ43の位置を示す。第二位置Q2は第一位置Q1とは互いに異なる位置である。キー74は、第二位置Q2の設定を完了することを指示する場合に選択される。制御部2は、駆動回路93を制御して、第二位置範囲をLCD15に表示する(S42)。第二位置範囲は、第一位置Q1に対し、第二位置Q2が取り得る範囲である。本実施形態の第二位置範囲は、第二位置Q2が取り得る範囲であって、次の第一、第二条件をすべて満たす範囲である。第一条件は、第一位置Q1と第二位置Q2との距離B1がS48で参照する所定値より大きい条件である。所定値は、第一位置Q1と、第二位置Q2とにより、変形された刺繍模様EMの角度を算出することを考慮して予め定められる。第二条件は、第一位置情報と第二位置情報とに基づきS2で取得された刺繍模様EをS3で取得された変形可能範囲で変形された場合の、変形された刺繍模様EM全体が縫製領域Rに配置される条件である。制御部2は、駆動回路96を制御し、プロジェクタ58により第二位置範囲を被縫製物C上に投影してもよい。
制御部2は、キー74の選択を検出したかを判断する(S43)。キー74の選択が検出されていない場合(S43:NO)、制御部2は、キー75の選択を検出したかを判断する(S44)。キー75の選択が検出された場合(S44:YES)、制御部2は、駆動回路94、95を制御して、選択されたキー75が示す方向に、検出された量だけ、ホルダ43を移動する(S45)。キー74の選択が検出されていない場合(S44:NO)、又はS45の次に、制御部2は処理をS43に戻す。ユーザは、キー75を選択して、ホルダ43を図6(B)に示す位置に移動させた後、キー74を選択する。ユーザは、例えば、被縫製物Cの縞模様を目印に第二位置Q2を設定する。図6(B)では、第一位置Q1を、ホルダ43が第一位置Q1にある時の針落ち点で示し、第二位置Q2を、ホルダ43が第二位置Q2にある時の針落ち点で示す。キー74の選択が検出された場合(S43:YES)、制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1とは互いに異なる第二位置Q2にある時の、移動部40の座標系で示されるホルダ43の位置を示す第二位置情報を取得する(S46)。第二位置情報は、例えばホルダ43が第二位置Q2にある時の針落ち点の刺繍座標系の座標(X2,Y2)で表される。
制御部2は、図3のS14で取得された第一位置情報と、図7のS46で取得された第二位置情報に基づき、第一位置Q1と、第二位置Q2との間の距離B1を特定する(S47)。距離B1は、第一位置情報と、第二位置情報とを用いた式√((X2?X1)2+(Y2?Y1)2)により特定される。制御部2は、S47で特定された距離B1が所定値よりも大きいかを判断する(S48)。S47で特定された距離B1が所定値よりも大きくはない場合(S48:NO)、制御部2は、S46で取得された第二位置情報を無効化する(S57)。制御部2は、S46で取得された第二位置情報を削除する。制御部2は、駆動回路93を制御して、エラーメッセージをLCD15に表示させて(S58)、第二位置Q2を再設定することをユーザに促し、処理をS43に戻す。これにより制御部2は、距離B1が所定値より大きくはないと判断される場合に(S48:NO)、第二位置情報を再取得させる。S47で特定された距離B1が所定値よりも大きい場合(S48:YES)、制御部2は、図3のS14で取得された第一位置情報と、図7のS46で取得された第二位置情報に基づき、基準方向に対する、第一位置Q1から第二位置Q2に向かうベクトルV(図6(A)参照)の角度を算出する(S49)。基準方向は、例えば、S7で決定された移動方向である。つまり、S49では、S2で取得された刺繍模様Eの初期の角度に対する、ベクトルVの角度が算出される。
制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき、図3のS2で取得された刺繍模様Eを変形させる(S50)。本実施形態の制御部2は、図5のS23で設定された変形方法に従って、S2で取得された刺繍模様Eを変形させる。制御部2は、S2で取得された刺繍模様Eの大きさを、S47で特定された距離B1に基づいて、変形方法で指定された方向に拡大又は縮小する。S9で取得されたオフセット量が0である場合、制御部2は、図5のS29で取得された第一基準点P1と、S34で取得された第二基準点P2との間の距離B2が、第一位置Q1と第二位置Q2との間の距離B1と等しくなるように刺繍模様Eを変形方法で指定された方向に拡大又は縮小する。S9で取得されたオフセット量が0ではない場合、制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とオフセット量とに基づき、刺繍模様Eを変形方法で指定された方向に拡大又は縮小する。具体的には、制御部2は、例えば、第一基準点P1と、第二基準点P2との間の距離B2が、第一位置情報で特定される位置と第二位置情報で特定される位置との間の距離と等しくなるように刺繍模様Eを変形方法で指定された方向に拡大又は縮小する。第一位置情報で特定される位置は、第一位置Q1からオフセット量分刺繍模様Eの中心側の位置である。第二位置情報で特定される位置は、第二位置Q2からオフセット量分刺繍模様Eの中心側の位置である。変形方法が方法1である場合、大きさが変更された刺繍模様EMをS49で算出された角度回転する。
制御部2は、第一基準点P1が第一位置情報で特定される位置に、第二基準点P2が第二位置情報で特定される位置に各々配置される位置に、S50で変形された刺繍模様EMの縫製位置を設定する(S51)。具体例1のように、変形方法が方法1であり、オフセット量が0である場合、第一位置情報で特定される位置は第一位置Q1であり、第二位置情報で特定される位置は第二位置Q2である。つまり、具体例1では、制御部2は、第一基準点P1が第一位置Q1に、第二基準点P2が第二位置Q2に配置される位置に、刺繍模様E1の縫製位置を設定する。一方、具体例2のように、変形方法が方法1であり、オフセット量が0ではない場合、第一位置情報で特定される位置は、第一位置Q1からオフセット量分、刺繍模様E2の中心側の第四位置Q4である。第二位置情報で特定される位置は、第二位置Q2からオフセット量分、刺繍模様E2の中心側の第五位置Q5である。また具体例3のように、変形方法が方法2又は方法3である場合、第一位置情報で特定される位置は、第一位置Q1を通り、変形方法で指定される、刺繍模様Eを拡大又は縮小する方向に直交する直交方向に延びる直線上の位置である。方法2の直交方向は、X方向であり、方法3の直交方向はY方向である。第一位置情報で特定される位置は、第一位置Q1であってもよい。第二位置情報で特定される位置は、第二位置Q2を通り、直交方向に延びる直線上の位置である。第二位置情報で特定される位置は、第二位置Q2であってもよい。
制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合に、変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まるかを判断する(S52)。S52の判断は公知の方法が適宜採用されればよい。本例の制御部2は、S50で変形された刺繍模様EMが、S51で設定された縫製位置に配置された場合、変形された刺繍模様EMの全体が縫製領域R内に配置されるかを判断する。変形された刺繍模様EMの全体が縫製領域R内に配置される場合(S52:YES)、制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合の、変形された刺繍模様EMの変形量が変形可能範囲内に収まるかを判断する(S53)。本例の制御部2は、S50において、刺繍模様Eの大きさを変形可能範囲内で拡大又は縮小したかを判断する。変形された刺繍模様EMの全体が縫製領域R内に配置されない場合(S52:NO)、又は、変形量が変形可能範囲内に収まらない場合(S53:NO)、制御部2は、フラッシュメモリ84を参照し、第二位置情報の再取得設定が記憶されているかを判断する(S54)。本例では、S52又はS53の要件が満たされない場合に、第二位置情報を再設定するかを、フラッシュメモリ84に再取得設定を記憶するかにより設定できる。再取得設定が記憶されている場合(S54:YES)、制御部2は第二位置情報を無効化し(S57)、エラーメッセージをLCD15に表示した後(S58)、処理をS43に戻す。これにより制御部2は、変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まらないと判断された場合(S52:NO)、及び変形量が変形可能範囲に収まらないと判断された場合(S53:NO)の各々で、第二位置情報を再取得させる。
再取得設定が記憶されていない場合(S54:NO)、制御部2は第二位置情報を無効化せず、S52及びS53の条件を満たすように、第一位置情報及び第二位置情報の少なくとも何れかを修正する(S55)。変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まらないと判断された場合(S52:NO)、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合に、変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まるように、第一位置情報及び第二位置情報の少なくとも何れかを修正する。変形量が変形可能範囲に収まらないと判断された場合(S53:NO)、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合の、変形された刺繍模様EMの変形量が変形可能範囲内に収まるように、第一位置情報及び第二位置情報の少なくとも何れかを修正する。制御部2は、例えば、第一位置Q1と第二位置Q2とを結ぶ線分上の位置、且つ、第一位置Q1と第二位置Q2との間の距離が短くなるように、第一位置Q1と第二位置Q2との少なくとも何れかを移動し、第一位置情報及び第二位置情報の少なくとも何れかを修正する。制御部2は、S55後の第一位置情報及び第二位置情報に基づき、S47と同様に距離B1を特定し(S56)、処理をS50に戻す。S56後のS50では、制御部2は、S55後の第一位置情報と第二位置情報とに基づき、図3のS2で取得された刺繍模様Eを変形させ(S50)、S55後の第一位置情報と第二位置情報とに基づき、縫製位置を設定する(S51)。
変形量が変形可能範囲に収まると判断された場合(S53:YES)、制御部2は、駆動回路93を制御して、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合の、変形された刺繍模様EMの大きさをLCD15に表示する(S59)。制御部2は例えば、図8の画面G7をLCD15に表示する。画面G7は、刺繍模様E、マスクM、第一基準点P1、第二基準点P2、欄76、キー77を含む。刺繍模様E、マスクM、第一基準点P1、及び第二基準点P2は、画面G3と同様である。欄76は、変形された刺繍模様EMの大きさを表示する。刺繍模様EMの大きさは、X方向に延びる二辺と、Y方向に延びる二辺とを有し、変形された刺繍模様EMを包含する最小矩形のX方向の長さJ(mm)と、Y方向の長さK(mm)とで表される。キー77は縫製開始する指示を入力する場合に選択される。制御部2は、以上で位置情報取得処理を終了し、処理を図3のメイン処理に戻す。
制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための複数の針落ち点の位置を移動部40の刺繍座標系で示す縫製データを生成する(S17)。制御部2は、S2で取得された刺繍模様Eを縫製するための縫製データを、S50、S51の結果に基づき補正することで、変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する。縫製データの補正方法は公知の方法が適宜採用されればよい。制御部2は、刺繍模様EMを表す図形データに基づき、公知の方法で、変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成してもよい。制御部2は、縫製開始指示が検出されたかを判断する(S18)。ユーザは、キー77を選択する又はスタート/ストップスイッチ29を押下することで、縫製開始指示を入力する。制御部2は、縫製開始指示が検出されるまで待機する(S18:NO)。縫製開始指示が検出された場合(S18:YES)。制御部2は、S17で生成された縫製データに従って、縫製部30と移動部40とを制御し、刺繍枠50が保持する被縫製物Cに変形された刺繍模様EMを縫製する(S19)。制御部2は、以上でメイン処理を終了する。
図8に示すように、メイン処理により、具体例1では刺繍模様E1が被縫製物Cに縫製される。刺繍模様E1は、距離B2が距離B1と一致するように刺繍模様EがマスクM1で示す大きさに拡大又は縮小された後、S49で算出された角度回転された模様である。変形された刺繍模様E1の第一基準点P1は第一位置Q1に配置され、第二基準点P2は第二位置Q2に配置される。
具体例2では刺繍模様E2が被縫製物Cに縫製される。刺繍模様Eは、距離B2が距離B3と一致するように、刺繍模様EがマスクM2で示す大きさに拡大又は縮小された後、S49で算出された角度回転される。距離B3は、第四位置Q4と第五位置Q5との距離である。第一基準点P1は第四位置Q4に配置され、第二基準点P2は第五位置Q5に配置される。マスクM2の四辺に平行な四辺を有し、第一位置Q1と第二位置Q2とを通る矩形UとマスクM2との間の距離は、S9で取得されたオフセット量D1、D2と一致する。
具体例3では刺繍模様E3が被縫製物Cに縫製される。刺繍模様E3は、距離B4(図4参照)が距離B5と一致するように、刺繍模様EがマスクM3で示す大きさにY方向に拡大又は縮小される。距離B4は、第一基準点P1のY座標と、第二基準点P2のY座標との差の絶対値であり、距離B5は第一位置Q1のY座標と、第二位置Q2のY座標との差の絶対値である。
図9及び図10を参照して、第二実施形態のミシン1のメイン処理を説明する。第二実施形態のメイン処理は、S3からS9の処理が省略される点と、S16の位置情報取得処理と、S17とが第一実施形態のメイン処理と異なり、他の処理は第一実施形態と同様である。図9において、第一実施形態の位置情報取得処理と同様の処理には、同じステップ番号を付与する。図9に示すように、第二実施形態の位置情報取得処理では、S47からS59の処理に替えて、S61からS73の処理が実行される点で第一実施形態の位置情報取得処理と異なる。第一実施形態と同様の処理については説明を省略し、第一実施形態と異なるS61からS73、S17の処理を説明する。具体例として、第一実施形態と同様の刺繍模様Eに基づき、縫製領域R内に刺繍模様E4(具体例4)、E5(具体例5)を縫製する場合を説明する。具体例4、5のメイン処理は、各々異なるタイミングで実行されるが、説明を簡単にするために以下では並列に説明する。第二実施形態のメイン処理は、ユーザが刺繍模様Eの編集を開始させる指示を入力した場合に起動される。制御部2は指示を検知すると、ROM82のプログラム記憶エリアに記憶されたメイン処理を実行するためのプログラムを、RAM83に読み出す。制御部2は、RAM83に読み出したプログラムに含まれる指示に従って、以下のステップを実行する。図10では、図面の左右方向及び上下方向を各々、刺繍座標系のX方向及びY方向として、刺繍模様E4、E5の配置を示す。第一実施形態と同様に、変形された刺繍模様E4、E5を区別しないとき、刺繍模様EMともいう。
第二実施形態の位置情報取得処理では、制御部2は、第一位置情報及び第二位置情報に加え、ホルダ43が第一位置Q1と第二位置Q2とは互いに異なる第三位置Q3にある時のホルダ43の位置を示す第三位置情報を取得する。具体的には、制御部2は、図10に示す第三位置Q3を設定するための画面J1を表示する(S61)。図10に示すように、画面J1は、縫製領域R、キー74、75、第一位置Q1、第二位置Q2、及び第三位置Q3を含む。キー75は、画面J1ではホルダ43を移動することを指示する場合に選択される。キー74は、画面J1ではホルダ43の位置の設定を完了することを指示する場合に選択される。画面J1では、位置Q1からQ3を、ホルダ43が各位置にある時の針落ち点で示す。
制御部2は、キー74の選択を検出したかを判断する(S62)。キー74の選択が検出されていない場合(S62:NO)、制御部2は、キー75の選択を検出したかを判断する(S63)。キー75の選択が検出された場合(S63:YES)、制御部2は、駆動回路94、95を制御して、選択されたキー75が示す方向に、検出された量だけ、ホルダ43を移動する(S64)。キー74の選択が検出されていない場合(S63:NO)、又はS64の次に、制御部2は処理をS62に戻す。ユーザは、キー75を選択して、第三位置Q3を変更後、キー74を選択する。キー74の選択が検出された場合(S62:YES)、制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1と第二位置Q2とは互いに異なる第三位置Q3にある時のホルダ43の位置を示す第三位置情報を取得する(S65)。第三位置情報は、例えばホルダ43が第三位置Q3にある時の針落ち点の刺繍座標系の座標(X3,Y3)で表される。
制御部2は、第一位置情報と、第二位置情報と、第三位置情報とに基づき基準図形を設定する(S66)。基準図形は、三つの位置で規定される図形であって、S2で取得された刺繍模様Eを変形するのに利用可能な図形であればよい。制御部2は、基準図形Wとして第一位置Q1、第二位置Q2、及び第三位置Q3の各々に対応する針落ち点を通る円弧を設定する。制御部2は、S66で設定された、基準図形Wに対して刺繍模様Eを配置する方法を設定する(S67)。本例の基準図形Wに対して刺繍模様Eを配置する方法は、刺繍模様Eに含まれる、文字A、B及びCの部分模様を個別に配置する方法であり、例えば、左寄せ、右寄せ、中央寄せ、均等配置、及び連続配置の中から1つを選択できる。刺繍模様Eは、例えば、部分模様毎の縫製データを含んでもよい。具体例4では、基準図形Wに対する刺繍模様Eの配置として、均等配置が選択され、具体例5では、連続配置が選択される。
制御部2は、第一位置情報と第二位置情報と第三位置情報に基づいて刺繍模様Eを変形する(S68)。制御部2は、S66で設定された基準図形Wに沿って、S67で設定された配置方法で刺繍模様Eを配置することで、刺繍模様Eを変形する。制御部2は、基準図形Wが第一位置Q1、第二位置Q2、第三位置Q3の各々に対応する針落ち点を通る位置に、S68で変形された刺繍模様EMの縫製位置を設定する(S69)。具体例4では、図10の画面J2の刺繍模様E4に示すように、刺繍模様Eが変形され、刺繍模様E4の縫製位置が設定される。刺繍模様E4は、刺繍模様Eに含まれる三つのアルファベット模様が、基準図形Wに沿って、均等な間隔で配置された模様である。具体例5では、図10の画面J3の刺繍模様E5に示すように、刺繍模様Eが変形され、刺繍模様E5の縫製位置が設定される。刺繍模様E5は、刺繍模様Eに含まれる三つのアルファベット模様が、基準図形Wに沿って、均等な間隔且つ連続して三組配置された模様である。画面J2、J3は、基準図形W、画面G6(図4参照)と同様の縫製領域R、画面G7(図8参照)と同様の欄76、キー77を含む。欄76は、後述のS73の処理により表示される。画面J2は刺繍模様E4、及び刺繍模様E4のマスクM4を含む。画面J3は刺繍模様E5及び刺繍模様E5のマスクM5を含む。
制御部2は、S68で変形された刺繍模様EMが、S69で設定された縫製位置に配置された場合、変形された刺繍模様EMの全体が縫製領域R内に配置されるかを判断する(S70)。変形された刺繍模様EMの少なくとも一部が縫製領域R内に配置されない場合(S70:NO)、制御部2は、S46で取得された第二位置情報と、S65で取得された第三位置情報とを無効化する(S71)。制御部2は、駆動回路93を制御して、エラーメッセージをLCD15に表示させて(S72)、第二位置Q2及び第三位置Q3を再設定することをユーザに促し、処理をS43に戻す。変形された刺繍模様EMの全体が縫製領域R内に配置される場合(S70:YES)、制御部2は、駆動回路93を制御して、変形された刺繍模様EMの大きさをLCD15に表示する(S72)。制御部2は、具体例4では、画面J2の欄76に、刺繍模様E4の大きさを表示し、具体例5では、画面J3の欄76に、刺繍模様E5の大きさを表示する。制御部2は、以上で第二実施形態の位置情報取得処理を終了し、図3に示す第一実施形態と同様のメイン処理に処理を戻す。
S17では制御部2は、第一位置情報と第二位置情報と第三位置情報に基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための複数の針落ち点の位置を移動部40の座標系で示す縫製データを生成する(S17)。制御部2は、S2で取得された刺繍模様Eに含まれ部分模様を縫製するための縫製データを、S67、S68の結果に基づき補正することで、変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する。
上記第一、第二実施形態のミシン1において、針棒6、縫製部30、ホルダ43、移動部40、及び制御部2は、本発明の針棒、縫製部、ホルダ、移動部、及び制御部の一例である。LCD15及びタッチパネル26は各々、本発明の表示部及び入力部の一例である。S2を実行する制御部2は、本発明の模様取得部の一例である。S14を実行する制御部2は、本発明の第一位置情報取得部の一例である。S46を実行する制御部2は、本発明の第二位置情報取得部の一例である。S17を実行する制御部2は、本発明の生成部の一例である。S19を実行する制御部2は、本発明の縫製制御部の一例である。S47を実行する制御部2は、本発明の距離特定部の一例である。S29、S34を実行する制御部2は、本発明の基準点取得部の一例である。S1を実行する制御部2は、本発明の領域取得部の一例である。S52、S70を実行する制御部2は、領域判断部の一例である。S52、S57後のS46を実行する制御部2は、本発明の第一取得制御部の一例である。S9を実行する制御部2は、本発明のオフセット量取得部の一例である。S7を実行する制御部2は、本発明の方向決定部の一例である。S8を実行する制御部2は、本発明の距離決定部の一例である。S15を実行する制御部2は、本発明の移動制御部の一例である。S59、S73を実行する制御部2は、本発明の表示制御部の一例である。S3を実行する制御部2は、本発明の変形可能量取得部の一例である。S53を実行する制御部2は、本発明の変形判断部の一例である。S53、S57後のS46を実行する制御部2は、本発明の第二取得制御部の一例である。S51、S69を実行する制御部2は、本発明の縫製位置設定部の一例である。S49を実行する制御部2は、本発明の角度算出部の一例である。S48を実行する制御部2は、本発明の距離判断部の一例である。S48、S57後のS46を実行する制御部2は、本発明の第三取得制御部の一例である。S64を実行する制御部2は、本発明の第三位置情報取得部の一例である。S65を実行する制御部2は、本発明の基準図形設定部の一例である。
図1及び図2に示すように、上記第一、第二実施形態のミシン1は、縫製部30、移動部40、及び制御部2を備える。縫製部30は、針棒6を有し、針棒6を上下動させて被縫製物Cに縫目を形成する。移動部40は、被縫製物Cを保持する刺繍枠50を取り外し可能に装着するホルダ43を有し、ホルダ43を針棒6に対し移動させる。制御部2は、縫製部30と、移動部40とを制御可能である。図3及び図4に示すように、制御部2は、刺繍模様Eに関するデータを取得する(S2)。制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1にある時の、移動部40の座標系で示されるホルダ43の位置を示す第一位置情報を取得する(S14)。制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1とは互いに異なる第二位置Q2にある時の、移動部40の座標系で示されるホルダ43の位置を示す第二位置情報を取得する(図7のS46)。制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための複数の針落ち点の位置を移動部40の座標系で示す縫製データを生成する(S17)。制御部2は、S17で生成された縫製データに従って、縫製部30と移動部40とを制御し、刺繍枠50が保持する被縫製物Cに変形された刺繍模様EMを縫製する(S19)。ミシン1では、ユーザは刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等の指標に合わせてホルダ43を第一位置Q1と、第二位置Q2とに移動させることで、ミシン1に第一位置情報と、第二位置情報とを取得させることができる。ミシン1は、取得された第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成できる。このため、ユーザは指標を利用して刺繍模様Eを変形する際に、指標の大きさをものさし等で計測し、計測された大きさに応じた数値をミシン1に入力する必要がない。故にミシン1は、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eを変形する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき、第一位置Q1と第二位置Q2との間の距離B1を特定する(図7のS47)。制御部2は、刺繍模様Eの大きさを、S47で特定された距離B1に基づいて拡大又は縮小することで変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(図7のS50、図3のS17)。ユーザは指標を利用して刺繍模様Eの大きさを拡大又は縮小する際に、指標の大きさをものさし等で計測し、計測された大きさに応じた数値をミシン1に入力する必要がない。故にミシン1は、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eの大きさを拡大又は縮小する際のユーザの利便性を従来よりも向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、刺繍模様Eに対して設定された第一基準点P1と第二基準点P2とを取得する(図5のS29、S34)。制御部2は、取得された第一基準点P1と第二基準点P2との間の距離B2が、第一位置Q1と第二位置Q2との間の距離B1と等しくなるように刺繍模様Eを拡大又は縮小することで変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S50、S17)。ユーザは、第一位置Q1と第二位置Q2とにより、第一基準点P1と第二基準点P2との距離B2を設定できる。ミシン1は、距離B1と距離B2とを用いた比較的簡単な処理により、刺繍模様Eを拡大又は縮小できる。
第一実施形態のミシン1は、LCD15と、LCD15に表示された刺繍模様Eに対し、第一基準点P1と第二基準点P2との設定を受け付けるタッチパネル26とを備える。制御部2は、タッチパネル26を用いて刺繍模様Eに対して設定された第一基準点P1と第二基準点P2とを取得する(S29、S34)。ユーザは、所望の二点を第一基準点P1と第二基準点P2として設定し、設定された第一基準点P1と第二基準点P2との距離B2を設定できる。故にミシン1は、ユーザが刺繍模様Eに対する第一基準点P1、第二基準点P2を設定できない場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eの大きさを拡大又は縮小する際のユーザの利便性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の第一基準点P1と第二基準点P2とは各々、刺繍模様E上に設定される(S29、S34)。ユーザは、縫目が形成される刺繍模様E上の所望の二点を第一基準点P1と第二基準点P2として設定し、設定された第一基準点P1と第二基準点P2との距離B2を設定できる。故にミシン1は、ユーザが刺繍模様Eに対する第一基準点P1、第二基準点P2を刺繍模様E上に設定できない場合に比べ、ユーザの利便性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、刺繍枠50の内側に設定される縫製領域Rを取得する(S1)。制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合に、変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まるかを判断する(S52)。変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まらないと判断された場合(S52:NO)、第二位置情報を再取得させる(S57後のS46)。ミシン1は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まる可能性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まらないと判断された場合(S52:NO)、第一位置情報と第二位置情報とに基づき縫製領域Rに収まるように変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S55、S17)。ミシン1は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMが縫製領域Rに収まる可能性を向上できる。ミシン1はユーザが第一位置Q1及び第二位置Q2の少なくとも何れかを再設定する手間を省くことができる。
ユーザは刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等の指標からオフセット量だけオフセットさせて刺繍模様Eを変形させたい場合がある。これに対し、第一実施形態のミシン1の制御部2は、オフセット量を取得する(S9)。制御部2は、具体例2のように、第一位置情報と第二位置情報とオフセット量とに基づき、刺繍模様Eの大きさを拡大又は縮小することで変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S50、S17)。故にミシン1は、オフセット量に基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成できない場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eを拡大又は縮小する際のユーザの利便性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、刺繍模様Eに設定された第一基準点P1と第二基準点P2とに基づき、第一位置Q1からのホルダ43の移動方向を決定する(S7)。制御部2は、第一位置情報を取得後、第二位置情報を取得前に、移動部40を制御して、決定された移動方向にホルダ43を移動させる(S15)。ユーザはホルダ43を第一位置Q1に移動させた状態で、ミシン1に第一位置情報を取得させた後、ホルダ43を第二位置Q2に移動させる。ミシン1は第一位置Q1取得後、第二位置情報取得前に自動で移動方向にホルダ43を移動させない場合に比べ、第一位置情報が取得された後、第二位置情報が取得されるまでの時間を短縮でき、ユーザがホルダ43を第二位置Q2に移動させる際の利便性を向上できる。
第一実施形態の制御部2は、刺繍模様Eに設定された第一基準点P1と第二基準点P2とに基づき、第一位置Q1からのホルダ43の移動距離を決定する(S8)。制御部2は、第一位置情報を取得後、第二位置情報を取得前に、ホルダ43を決定された移動距離、移動方向に移動させる(S15)。ユーザはホルダ43を第一位置Q1に移動させた状態で、ミシン1に第一位置情報を取得させた後、ホルダ43を第二位置Q2に移動させる。ミシン1は、第一位置Q1取得後、第二位置情報取得前に自動で移動方向に、移動距離だけホルダ43を移動させない場合に比べ、ユーザが設定する第二位置Q2付近にホルダ43を移動させる可能性を高めることができ、ユーザがホルダ43を第二位置Q2に移動させる際の利便性を向上できる。
第一、第二実施形態のミシン1はLCD15を備える。制御部2は、制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合の、変形された刺繍模様EMの大きさをLCD15に表示する(S59、S73)。ユーザはLCD15を参照することで、変形された刺繍模様EMの大きさを確認できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、S2で取得された刺繍模様Eの変形可能範囲を取得する(S3)。制御部2は、第一位置情報と第二位置情報とに基づき刺繍模様Eが変形された場合の、変形された刺繍模様EMの変形量が変形可能範囲内に収まるかを判断する(S53)。制御部2は、変形量が変形可能範囲に収まらないと判断された場合(S53:NO)、第二位置情報を再取得させる(S57後のS46)。ミシン1は第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMの変形量が変形可能範囲内に収まる可能性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、変形量が変形可能範囲に収まらないと判断された場合(S53:NO)、第一位置情報と第二位置情報とに基づき、変形量が変形可能範囲に収まるように変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S55、S17)。ミシン1は第一位置情報と第二位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMの変形量が変形可能範囲内に収まめることができる。ミシン1はユーザが第一位置Q1及び第二位置Q2の少なくとも何れかを再設定する手間を省くことができる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、第一基準点P1が第一位置情報で特定される位置に、第二基準点P2が第二位置情報で特定される位置に各々配置される位置に、刺繍模様Eの縫製位置を設定する(S51)。ユーザは、第一位置Q1と第二位置Q2とにホルダ43を移動させることで、刺繍模様Eの変形量と、刺繍模様Eの配置との双方を設定できる。ミシン1は、第一位置情報と、第二位置情報とに基づき縫製位置が設定されない場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として変形された刺繍模様EMを縫製する際のユーザの利便性を向上できる。
第一実施形態の制御部2は、基準方向に対する、第一位置Q1から第二位置Q2に向かうベクトルVの角度を算出する(S49)。制御部2は、刺繍模様Eの大きさを、S47で特定された距離B1に基づいて拡大又は縮小し、S49で算出された角度回転することで変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S50、S17)。ユーザは、第一位置Q1と第二位置Q2とにホルダ43を移動させることで、刺繍模様Eの変形量と、刺繍模様Eの縫製位置及び角度とを設定できる。ミシン1は、第一位置情報と、第二位置情報とに基づき刺繍模様Eの角度が設定されない場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として変形された刺繍模様EMを縫製する際のユーザの利便性を向上できる。
第一実施形態のミシン1の制御部2は、距離B1が所定値以上であるかを判断する(S48)。制御部2は、距離B1が所定値以上ではないと判断される場合に(S48:NO)、第二位置情報を再取得させる(S57後のS46)。ミシン1は、刺繍模様Eの角度を設定するのに十分な距離を有しない第一位置情報と、第二位置情報とに基づき刺繍模様Eの角度を設定することを抑制できる。
第二実施形態のミシン1の制御部2は、ホルダ43が第一位置Q1と第二位置Q2とは互いに異なる第三位置Q3にある時のホルダ43の位置を示す第三位置情報を取得する(図9のS65)。制御部2は、第一位置情報と第二位置情報と第三位置情報に基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(図9のS68、図3のS17)。ユーザは刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等に合わせてホルダ43を第一位置Q1と、第二位置Q2と、第三位置Q3とに移動させることで、ミシン1に第一位置情報と、第二位置情報と、第三位置情報とを取得させることができる。ミシン1は、取得された第一位置情報と第二位置情報と第三位置情報とに基づき変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成できる。ミシン1は、二つの位置情報を用いて縫製データを生成する場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eを変形する際のユーザの利便性を向上できる。
第二実施形態のミシン1の制御部2は、第一位置情報と、第二位置情報と、第三位置情報とに基づき基準図形Wを設定する(S66)。制御部2は、設定された基準図形Wに応じて変形された刺繍模様EMを縫製するための縫製データを生成する(S68、S17)。ユーザは刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等に合わせてホルダ43を第一位置Q1と、第二位置Q2と、第三位置Q3に移動させることで、被縫製物Cの図柄等に合わせて基準図形Wを設定できる。ミシン1は、基準図形Wに応じて刺繍模様Eを変形しない場合に比べ、刺繍枠50に保持された被縫製物Cの図柄等を指標として刺繍模様Eを変形する際のユーザの利便性を向上できる。
本発明のミシンは、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。
(A)刺繍枠50を装着可能なミシン1の構成は適宜変更してよい。ミシン1は、工業用ミシン及び多針ミシンであってもよい。移動部40は、針棒6に対してホルダ43を相対的に移動できればよい。移動部40は、ミシン1と一体に形成されてもよい。刺繍枠50の形状及び大きさは適宜変更されてよく、例えば、円状、楕円状等であってもよい。第二実施形態のミシン1はプロジェクタ58、LCD15、タッチパネル26の少なくとも何れかを省略してもよい。第一実施形態のミシン1は、プロジェクタ58に替えて、レーザポインタ等の光照射装置を備えてもよい。プロジェクタ58の設置位置、及び投影領域B等は適宜変更されてよい。入力部は、タッチパネル26の他、キーボード、マウス、及びジョイスティック等でもよい。表示部は、画像を表示可能であればよく、例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、プラズマチューブアレイディスプレイ、電気泳動等を利用した電子ペーパーディスプレイ等でもよい。
(B)図3のメイン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、制御部2がプログラムを実行するまでに、ミシン1の記憶機器に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。制御部2が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
(C)ミシン1のメイン処理の各ステップは、制御部2によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。メイン処理の各ステップは、複数の電子機器(例えば、複数のCPU)によって分散処理されてもよい。メイン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。ミシン1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、制御部2からの指令に基づきメイン処理の一部又は全部を行う態様も、本開示の範囲に含まれる。例えば、メイン処理に以下の(C-1)から(C-5)の変更が適宜加えられてもよい
(C-1)第一実施形態のメイン処理において、S5の処理は適宜変更されてよい。制御部2は、S21からS23を省略し、変形方法を設定不能であってもよい。第一基準点及び第二基準点を設定可能な範囲は適宜変更されてよい。第一基準点及び第二基準点の少なくとも何れかは、マスクM上及びマスクM内の任意の位置に設定されてもよいし、マスクM外の任意の位置に設定されてもよい。制御部2は、例えば、アルファベットのOの刺繍模様をS2で取得した場合に、縫目に囲まれる、縫目が形成されない部分(例えば、Oの中心部)に第一基準点及び第二基準点の少なくとも何れかを設定してもよい。制御部2は、S9で取得されたオフセット量に基づき、マスクMの外側(刺繍模様の中心とは反対側)にオフセット領域を設定し、設定されたオフセット領域内に第一基準点及び第二基準点の少なくとも何れかが設定されてもよい。第一基準点及び第二基準点の設定方法は適宜変更されてもよい。第一基準点及び第二基準点の少なくとも何れかは、ユーザが設定不能であってもよいし、複数の基準点の候補の中から選択可能であってもよい。第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報の取得方法は適宜変更されてよい。例えば、ホルダ43(刺繍枠50)はユーザにより手動で移動されてもよく、その場合制御部2は、キー74が押下されたときのホルダ43の位置を取得してもよい。
(C-2)第一実施形態のメイン処理において、S1、S52の処理は適宜省略されてもよい。S52後のS54からS56の処理は適宜省略されてよい。S52後のS57、S58の処理は適宜省略されてよい。S3、S53の処理は適宜省略されてもよい。S53後のS54からS56の処理は適宜省略されてよい。S53後のS57、S58の処理は適宜省略されてよい。制御部2はS58の後にメイン処理を終了してもよい。制御部2は、S57において第二位置情報に替えて第一位置情報を無効化し、第一位置情報を再取得させてもよい。制御部2は、第一位置情報及び第二位置情報の何れを再取得するかの指示に従って、再取得する位置情報を決定してもよい。制御部2はS9を省略し、オフセット量を考慮して刺繍模様を変形できなくてもよい。制御部2は、S7、S8、S15を省略してよい。制御部2は、S59、S73を省略してもよい。制御部2は、S51、S69を省略してよい。つまり、第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報は、刺繍模様の変形する処理に用いられる一方、第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報の少なくとも何れかは、変形された刺繍模様EMの縫製位置の設定に用いられなくてもよい。例えば、制御部2は、第一位置情報及び第二位置情報に基づき算出された距離B1と、第一基準点P1と第二基準点P2との刺繍座標系の距離B2の比率に応じて刺繍模様を拡大又は縮小してもよい。制御部2は、S49を省略し、第一位置情報及び第二位置情報に応じて、刺繍模様を回転しなくてもよい。制御部2は、S48を省略してもよい。制御部2は、S45において、第二位置範囲内でのみホルダ43を移動させてもよいし、ホルダ43が第二位置範囲外に移動した場合に、警告を報知してもよい。制御部2は、S52で変形された刺繍模様EMが縫製領域R内に収まらないと判断された場合(S52:NO)、公知の方法により、変形された刺繍模様EMを分割し、分割された刺繍模様を縫製するための縫製データを生成してもよい。
(C-3)第二実施形態のメイン処理において、S66で設定される基準図形の種類、設定方法は適宜変更されてよい。基準図形は、多角形、円、及び楕円等の環状の図形でもよく、制御部2は、基準図形の内側に刺繍模様が配置されるように、刺繍模様が変形されてもよい。例えば、制御部2は、図11に示す変形例のように基準図形に沿って刺繍模様を変形してもよい。図11に示すように、制御部2は、第二実施形態のメイン処理と同様に、縫製領域Rに対する第一位置Q1、第二位置Q2、及び第三位置Q3に基づき、第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報を取得する。制御部2は、取得された第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報に基づきY方向(上方)に凸となる五角形の基準図形Zを設定する。基準図形Zは、例えば、第一位置Q1と、第二位置Q2との各々に対応する針落ち点を対角頂点とする矩形が設定された後、矩形が有する四辺の内、第一位置Q1に対応する針落ち点を通り、Y方向の延びる辺上の第三位置Q3に対応する針落ち点の位置に応じて、五角形を設定する。制御部2は、刺繍模様E6のように、基準図形Zの内側に刺繍模様Eが配置されるように、刺繍模様Eを変形させる。制御部2は、マスクMの対角頂点を第一基準点及び第二基準点と、対応する第一位置情報及び第二位置情報とを用いて、刺繍模様の大きさ及び縫製位置を設定してもよい。
(C-4)第二実施形態のメイン処理において、制御部2は、S66を省略し、基準図形を用いずに第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報に基づき刺繍模様を変形してもよい。例えば、制御部2は、図12に示す変形例のように基準図形に沿って刺繍模様を変形してもよい。図12に示すように、制御部2は、第一実施形態のメイン処理と同様に、第一基準点P1、第二基準点P2、及び第三基準点P3を取得する。第一基準点P1、第二基準点P2、及び第三基準点P3は、マスクMのX方向に延びる辺上に並ぶ。第一基準点P1は、マスクMの左下の頂点である。第三基準点P3は、マスクMの右下の頂点である。第二基準点P2は、第一基準点P1と、第三基準点P3との間の点である。制御部2は、第二実施形態のメイン処理と同様に、縫製領域Rに対する第一位置Q1、第二位置Q2、及び第三位置Q3に基づき、第一位置情報、第二位置情報、及び第三位置情報を取得する。第一位置Q1、第二位置Q2、及び第三位置Q3の各々に対応する針落ち点は同一直線上に並ぶ。制御部2は、第一基準点P1が第一位置Q1に、第二基準点P2が第二位置Q2、第三基準点P3が第三位置Q3に各々配置されるように、刺繍模様EをX方向に拡大又は縮小し、刺繍模様Eの縫製位置を設定する。制御部2は、X方向において、第一基準点P1と第二基準点P2との間の距離が、第一位置Q1と第二位置Q2との各々に対応する針落ち点の間の距離と一致するように、刺繍模様Eの内、第二基準点P2を通りY方向に延びる線分Fよりも左側の部分をX方向に拡大又は縮小する。制御部2は、X方向において、第二基準点P2と第三基準点P3との間の距離が、第二位置Q2と第三位置Q3との各々に対応する針落ち点の間の距離と一致するように、線分Fよりも右側の部分をX方向に拡大又は縮小する。刺繍模様E7は、線分Fよりも左側の部分と、線分Fよりも右側の部分とで、X方向の倍率が互いに異なる。
(C-5)刺繍模様を変形する処理で用いられる、基準点の数は適宜変更されてよく、四以上でもよい。刺繍模様を変形する処理で用いられる、ホルダ43の位置を示す位置情報の数は適宜変更されてよく、四以上でもよい。第一実施形態のメイン処理と、第二実施形態のメイン処理とは、互いに矛盾がない範囲で適宜組み合わせられてもよい。