JP2022040619A - 画像形成装置およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱定着装置によりトナー像を定着させる画像形成装置において、画像データを適切に分割して解析し、目標温度を制御するための技術を提供する。【解決手段】画像データに応じて形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着部と、画像データに基づいて、定着部がトナー像を加熱するときの目標温度を決定する制御部を有する画像形成装置であって、制御部は、記録材が搬送される方向を副走査方向とし、副走査方向に直交する方向を主走査方向としたとき、画像データを主走査方向において分割して複数の主走査エリアを設け、隣接する主走査エリア同士はオーバーラップする領域を有するものであり、複数の主走査エリアそれぞれにおける画像濃度に基づいて目標温度を決定する画像形成装置を用いる。【選択図】図7

Description

本発明は、画像形成装置およびその制御方法に関する。
レーザプリンタやデジタル複写機などの、電子写真方式を用いた画像形成装置が用いられている。かかる画像形成装置において、トナー像を記録材に加熱定着させるときに、画像データから求めた画像上のトナー量に応じて加熱定着装置の目標温度を制御する技術がある。
例えば特許文献1には、画像データを分割した上で画像の特性に応じて温度制御を行う技術が開示されている。すなわち特許文献1では、画像データを、搬送方向およびそれに直交する方向に分割することで複数のブロックを設定し、それぞれのブロックに対して画像濃度に基づいてパラメータを設定している。そして、パラメータから得られる画像の特徴に応じて温度を制御することにより、目標温度を不必要に高くすることを避けて、消費電力の低減を図っている。
特開2019-197171号公報
かかる画像形成装置において、画像データにさらに適応した加熱定着装置の制御が求められており、例えば消費電力の低減または処理時間の短縮などが必要とされている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱定着装置によりトナー像を定着させる画像形成装置において、画像データを適切に分割して解析し、目標温度を制御するための技術を提供することにある。
本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
画像データに応じて形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着部と、
前記画像データに基づいて、前記定着部が前記トナー像を加熱するときの目標温度を決定する制御部と、
を有する画像形成装置であって、
前記制御部は、前記記録材が搬送される方向を副走査方向とし、前記副走査方向に直交する方向を主走査方向としたとき、
前記画像データを前記主走査方向において分割して複数の主走査エリアを設け、隣接する前記主走査エリア同士はオーバーラップする領域を有するものであり、
前記複数の主走査エリアそれぞれにおける画像濃度に基づいて前記目標温度を決定する
ことを特徴とする画像形成装置である。
本発明は、また、以下の構成を採用する。すなわち、
画像データに応じて形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着部と、前記画像データに基づいて、前記定着部が前記トナー像を加熱するときの目標温度を決定する制御部を有する画像形成装置の制御方法であって、前記記録材が搬送される方向を副走査
方向とし、前記副走査方向に直交する方向を主走査方向としたとき、
前記制御部が、前記画像データを前記主走査方向において分割して複数の主走査エリアを設けるステップであって、隣接する前記主走査エリア同士はオーバーラップする領域を有するステップと、
前記制御部が、前記複数の主走査エリアそれぞれにおける画像濃度に基づいて前記目標温度を決定するステップと、
を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法である。
本発明によれば、加熱定着装置によりトナー像を定着させる画像形成装置において、画像データを適切に分割して解析し、目標温度を制御するための技術を提供することができる。
実施例1に係る画像形成装置の構成を示す断面図 実施例1に係る画像形成装置の制御に関する機能ブロック図 実施例1に係る加熱定着装置の構成を示す断面図 実施例1に係る目標温度の制御シーケンスを説明する図 実施例1に係る画像データの分割について説明する図 実施例1に係る縦帯状印字の幅と目標温度の補正量の関係を示す図 実施例1に係る縦帯状印字の長さと目標温度の補正量の関係を示す図 実施例1に係るリージョンの重複状態と縦帯状印字の配置を示す図 実施例1に係る評価用のテキスト系画像を示す図 比較例に係る画像データの分割について説明する図
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、実施形態に記載されている構成部品の寸法や材質や形状やそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件などにより適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。
[実施例1]
<画像形成装置>
図1に本実施例の画像形成装置100の概略断面図を示す。ここでは画像形成装置100の一例としてレーザプリンタを挙げる。本発明は、LEDプリンタ等のレーザプリンタ以外のプリンタや、デジタル複写機等、電子写真方式や静電記録方式を用いた画像形成装置に適用できる。
画像形成装置100は、概略、画像形成部50とプリンタ制御装置304を備える。画像形成部50は、感光ドラム1、帯電ローラ2、レーザスキャナ3、現像装置4、転写ローラ5、定着部としての加熱定着装置6および、クリーニング装置7を備える。画像形成部50は、制御部としてのプリンタ制御装置304の制御に従い、画像データに応じたトナー像を記録材Pに形成する。画像形成装置は他に、給紙トレイ101、給紙ローラ102、搬送ローラ103、トップセンサ104、排紙センサ105、排紙ローラ106、排紙トレイ107等を備える。
感光ドラム1は、ドラム型の電子写真感光体であり、OPC(有機光半導体)、アモルファスシリコン等の感光材料を、アルミニウム合金やニッケルなどで形成されたシリンダ状のドラム基体上に設けて構成される。感光ドラム1は、駆動手段(不図示)によって矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。
帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面を、所定の極性・電位に均一に帯電する。そしてレーザスキャナ3が、帯電後の感光ドラム1にレーザビームEを照射することで、感光ドラム表面に静電潜像が形成される。このときレーザスキャナ3は、画像データに応じてON/OFF制御された走査露光を感光ドラム1の長手方向に行い、露光部分の電荷を除去している。
現像装置4は、形成された静電潜像を現像して可視化する。現像方法としては、本実施例のジャンピング現像法のほか、2成分現像法、接触現像法などが用いられる。あるいは、イメージ露光と反転現像の組み合わせでもよい。現像装置4の現像ローラ41が感光ドラム1上の静電潜像にトナーを付着させて、トナー像を形成する。
感光ドラム1上のトナー像は、記録材Pの表面に転写される。記録材Pは、給紙トレイ101に収納された状態から、給紙ローラ102によって1枚ずつ給紙され、搬送ローラ103等を介して、感光ドラム1と転写ローラ5との間の転写ニップ部Ntに供給される。
記録材Pの先端は、トップセンサ104によって検知される。プリンタ制御装置304は、トップセンサ104の位置と転写ニップ部Ntとの位置、及び記録材Pの搬送速度から、記録材Pの先端が転写ニップ部Ntに到達するタイミングを取得する。そして、転写ローラ5が、所定タイミングで給紙、搬送されてきた記録材P上に転写バイアスを印加することで、感光ドラム1上のトナー像が転写される。
トナー像が転写された記録材Pは、加熱定着装置6へ搬送される。加熱定着装置6は、フィルムユニット10と加圧ローラ20との間の定着ニップ部にて記録材Pを挟持搬送しつつ、加熱・加圧を行う。これにより、記録材Pの表面にトナー像が定着する。その後、記録材Pは、排紙ローラ106により画像形成装置100上面に形成されている排紙トレイ107上に排出される。なお、排紙センサ105が、記録材Pの先端及び後端が通過するタイミングを検知することにより、ジャム等の発生の有無がモニターされる。
一方、クリーニング装置7は、トナー像が転写された後の感光ドラム1の表面の転写残トナー(記録材Pに転写されずに残ったトナー)を、クリーニングブレード71によって除去する。除去された転写残トナーは次回の画像形成に用いられる。
画像形成装置100は、以上の動作を繰り返すことで、連続的に画像形成を行う。本実施例の画像形成装置100は、解像度600dpiの画像を、30枚/分(LTR縦送り:プロセススピード約200mm/s)で形成可能であり、寿命10万枚の装置である。
<プリンタ制御装置>
図2(a)を用いて画像形成装置100が備えるプリンタ制御装置304について説明する。図2(a)に示すように、プリンタ制御装置304とホストコンピュータ300がプリンタシステム(画像形成システム)を構成する。
ホストコンピュータ300は、ユーザからの指示内容や形成されるべき画像の元となる画像データを有する情報処理装置である。プリンタ制御装置304は、ホストコンピュータ300と通信を行って受信した情報を用いて画像形成装置100を制御する。ホストコンピュータ300は、例えば、インターネットやローカルエリアネットワーク(LAN)等のネットワーク上のサーバーやパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末であってもよい。プリンタ制御装置304は、大別してコントローラ301とエンジン制御部302に分かれている。
コントローラ301は、画像処理部303及びコントローラインターフェイス305を有する。コントローラインターフェイス305は、プリンタ制御装置304内外の通信を行う。画像処理部303は、コントローラインターフェイス305を介してホストコンピュータ300から受信した画像データを処理する。画像データ処理としては、文字コードのビットマップ化や、グレイスケール画像のハーフトーニング処理等がある。
またコントローラ301は、コントローラインターフェイス305を介してエンジン制御部302のビデオインターフェイス310へ画像データを送信する。本実施例の画像データには、画像処理部303が算出した、加熱ヒータ11の温度を維持するための目標温度についての情報も含まれる。目標温度の算出方法については後で詳述する。
エンジン制御部302は、ビデオインターフェイス310、CPU(Central Processing Unit)311、ROM(Read Only Memory)312、RAM(Random Access Memory
)313、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け集積回
路)314を含む。コントローラ301は、レーザスキャナ3の点灯タイミングの情報をASIC314に送信し、プリントモード及び画像サイズ情報をCPU311に送信する。コントローラ301は、レーザスキャナ3の点灯タイミングの情報をCPU311に送信する。
CPU311は、プログラムやユーザ指示等に従い、ROM312やRAM313を用いて、エンジン制御部302の各種制御を行う。CPU311は単一のプロセッサでもよく、マルチプロセッサ構成であってもよい。コントローラ301は、ユーザによるホストコンピュータ300を用いた指示に応じて、プリント命令、キャンセル指示などをエンジン制御部302に送信し、印字動作の開始や中止などの動作を制御する。
図2(b)は、本実施例のエンジン制御部302を、機能ブロックの観点から図示したものである。エンジン制御部302は、機能ブロックとして定着制御部320、給紙搬送制御部330及び画像形成制御部340を有する。CPU311は、必要に応じて、RAM313に情報を保存する、ROM312もしくはRAM313に保存されたプログラムを使用する、ROM312もしくはRAM313に保存された情報を参照するなどの処理を行う。CPU311によるこのような処理により、エンジン制御部302が図2Bに示す各部として機能する。機能ブロックは、エンジン制御部302が実行するプログラムモジュールだと考えてもよい。
定着制御部320は、加熱定着装置6の温度を制御する。給紙搬送制御部330は、給紙ローラ102の動作間隔を制御する。画像形成制御部340は、プロセススピード制御、現像制御、帯電制御及び転写制御等を行う。画像形成装置100が行う処理(例えば、エンジン制御部302や画像処理部303が行う処理)の一部または全部を、ホストコンピュータ300や、ネットワーク上のサーバー(不図示)のような処理装置が行ってもよい。また、エンジン制御部302が行う処理の一部又は全部を画像処理部303が行ってもよいし、画像処理部303が行う処理の一部又は全部をエンジン制御部302が行ってもよい。
<加熱定着装置>
図3を用いて加熱定着装置6について説明する。本実施例の加熱定着装置6はフィルム加熱方式であり、加熱装置としてのフィルムユニット10と、加圧ローラ20で構成される。フィルムユニット10は、伝熱部材としての加熱用回転体である耐熱性の定着フィルム13と、加熱部材である加熱ヒータ11と、ヒータ保持部材であるホルダー12で構成される。定着フィルム13の内部に加熱ヒータ11が設けられている。加圧ローラ20は
、フィルムユニット10に対向して設けられる。
加熱定着装置6が、定着フィルム13と加圧ローラ20との間に形成された定着ニップ部において、トナー像tが形成された記録材Pを挟持搬送することにより、定着フィルム13と一緒に搬送されるトナー像tが、記録材Pに定着される。なお、トナー画像を記録材に定着させられるのであれば、加熱定着装置6は本実施例の構成に限定されない。
加熱ヒータ11における定着フィルム13との摺動面の反対側の面には、温度検知部材としてのサーミスタ14が当接配置されている。エンジン制御部302は、サーミスタ14の検知温度に基づいて、加熱ヒータ11の温度が所望の温度となるように、定着制御部320が加熱ヒータ11に流す電流を制御する。
(定着フィルム)
定着フィルム13は、SUS等の薄い金属製素管の表面に、直接又はプライマ層を介してPFA、PTFE、FEP等の離型性層をコーティング又はチューブ被覆した、複合層フィルムである。金属製素管に代えて、ポリイミド等の耐熱樹脂とグラファイトなどの熱伝導フィラーを混練したものを筒状に成型した基層を用いてもよい。本実施例では、基層ポリイミドにPFAをコーティングした定着フィルム13を用いた。本実施例の定着フィルム13は、総膜厚は80μmで、外周長は56mmである。定着フィルム13は内部の加熱ヒータ11及びホルダー12に摺擦しながら回転するため、加熱ヒータ11及びホルダー12と定着フィルム13の間の摩擦抵抗を小さく抑える必要がある。本実施例では、加熱ヒータ11及びホルダー12の表面に耐熱性グリース等の潤滑剤を少量介在させることにより、定着フィルム13をスムーズに回転可能とした。
(加圧ローラ)
加圧ローラ20は、芯金21、弾性層22及び離型層23を有する。鉄等からなる芯金21の上に絶縁性のシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱ゴムを発泡することにより、弾性層22が形成される。弾性層22の上に、接着層としてプライマ処理されて接着性をもつRTVシリコーンゴムが塗布されている(不図示)。そして、離型層23を、接着層を介して弾性層22に形成している。離型層23としては例えば、PFA、PTFE、FEP等に、カーボン等の導電剤を分散させたチューブを被覆又はコーティング塗工したものを用いる。
実施例では、加圧ローラ20の外径は20mmであり、硬度は48°(Asker-C
600g加重)である。加圧ローラ20は、不図示の加圧手段により、長手方向両端部から15kg・fで加圧されている。これにより、加熱定着に必要な定着ニップ部が形成される。また、加圧ローラ20は、長手方向端部から芯金21を介して不図示の回転駆動手段により、図3の矢印R2の方向(紙面で反時計周り)に回転駆動される。これにより、定着フィルム13はホルダー12の外側を図3の矢印R3の方向(紙面で時計周り)に従動回転する。
(加熱ヒータ)
加熱ヒータ11は、定着フィルム13の内部に設けられている。加熱ヒータ11は、セラミックであるアルミナ又は窒化アルミから成る基板(絶縁基板)113と、基板113上に形成された抵抗発熱層(発熱体)112を有する。抵抗発熱層112は、絶縁と耐摩耗性向上のために、薄肉のオーバーコートガラス111で覆われており、オーバーコートガラス111が定着フィルム13の内周面に接触している。オーバーコートガラス111は耐電圧と耐摩耗性に優れており、定着フィルム13に摺動するように構成および配置されている。
実施例では、オーバーコートガラス111の熱伝導率が1.0W/m・Kであり、耐圧特性が2.5KV以上であり、膜厚が70μmである。実施例ではまた、基板113の材質はアルミナであり、その寸法は、幅6.0mm、長さ260.0mm、厚み1.00mmである。また、基板113の熱膨張率は7.6×10-6/℃である。実施例の抵抗発熱層112は、銀パラジウム合金で形成されている。抵抗発熱層112の総抵抗値は20Ω、抵抗率の温度依存性は700ppm/℃である。加熱ヒータ11は、定着部の一例である。
(ホルダー)
ホルダー12は、加熱ヒータ11を保持する部材であるとともに、定着ニップ部の裏側への放熱を防ぐ断熱ステイホルダーである。ホルダー12は、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEK等により形成されている。定着フィルム13は、ある程度の余裕をもってホルダー12に外嵌されて、回転自在に配置されている。実施例のホルダー12は、材質が液晶ポリマーであり、ホルダー12は260℃の耐熱性を有し、熱膨張率が6.4×10-5である。
<エンジン制御部>
エンジン制御部302は制御プログラムに従い、サーミスタ14の検知温度を基に加熱ヒータ11を所定の目標温度に制御する。そのためにエンジン制御部302は、加熱ヒータ11が目標温度を維持するように、加熱ヒータ11に供給する電力を制御する。エンジン制御部302は、制御部の一例である。制御方法としては、比例項、積算項、微分項からなるPID制御が好ましい。下式(1)はこの制御式を示す。
f(t)=α1×e(t)+α2×Σe(t)+α3×(e(t)-e(t-1))
…(1)
ここで、各項目は以下の通りである。
t:制御タイミング
f(t):制御タイミング(t)での制御周期内のヒータ通電時間割合(1以上がフル点灯)
e(t):現在の制御タイミング(t)の目標温度と実温度との温度差
e(t-1):前回の制御タイミング(t-1)での目標温度と実温度の温度差
α1~α3:ゲイン定数
α1:P(比例)項ゲイン
α2:I(積分)項ゲイン
α3:D(微分)項ゲイン
式(1)の右辺の第1項~第3項の順に、比例制御、積分制御、微分制御に対応している。α1~α3は、制御周期内の加熱ヒータ11の通電時間割合の増減量に重み付けを行うための比例係数である。加熱定着装置6の特性に応じてα1~α3を設定することで、適切な温度制御を可能にする。エンジン制御部302は、f(t)の値に応じて制御周期内での加熱ヒータ11の通電時間を決定し、不図示のヒータ通電時間制御回路を駆動させて、加熱ヒータ11の出力電力を決定する。なお、D項が必要でなければ、D項ゲインを0に設定することでP項とI項のみが機能するPI制御で制御しても良い。実施例では、制御タイミングは制御周期100msec間隔で更新され、P項ゲイン(α1)を0.05℃-1、I項ゲインを0.01℃-1(α2)、D項ゲインを0.001℃-1(α3)とする。実施例では、f(t)値が1のとき制御周期内の通電時間が最大となり、計算結果が1より大きい場合は制御周期内の最大通電時間を通電する設定とする。
ここで、図4は、エンジン制御部302による加熱ヒータ11の目標温度の制御シーケンスを示す。前回転中(印字動作の開始から記録材Pの先端が定着ニップ部に突入するまでの間)は、エンジン制御部302は、目標温度Toを維持するように加熱ヒータ11へ
の電力供給を制御する。ここでの目標温度Toは170℃とする。
続いて、通紙中(記録材Pの先端が定着ニップ部に突入してから記録材Pの後端が定着ニップ部を抜けるまでの間)は、エンジン制御部302は目標温度Tを維持するように加熱ヒータ11への電力供給を制御する。通紙中の目標温度Tは170℃以上204℃以下の範囲であり、後述する算出方法によって決定される。
また、紙間(記録材Pの後端が定着ニップ部を抜けてから後続の記録材Pが定着ニップ部に突入までの間)については、エンジン制御部302は目標温度(例えば、180℃)を維持するように、加熱ヒータ11への電力供給を制御する。
<画像処理部>
(画像データから目標温度を算出)
画像処理部303は、CPU等のプロセッサ及びROM、RAM等のメモリを有する。なお、エンジン制御部302として機能する情報処理装置を画像処理部303として機能させてもよい。画像処理部303は、グレイスケール画像のハーフトーニング処理の他に画像データから目標温度を算出する処理も行う。以下の例では、1枚の記録材Pの表面に画像データに応じたトナー像が形成される場合の、画像処理部303の処理を述べる。
画像処理部303は、画像データをブロック、エリア、リージョン等に分割したうえで、各リージョンを7つの代表値に分類する。そして画像処理部303は、分類した代表値を各リージョンでの温度の加算量に変換してから、副走査方向に加算する。そして、複数の主走査エリアでの加算値の中から最大値を選択し、その値をベースの温調に加算して、目標温度Tを算出する。以下、工程ごとに順次説明する。
<画像データの分割>
図5を参照しつつ、画像処理部303による画像データの分割について述べる。以下の説明において「副走査方向」は記録材Pの搬送方向であり、「主走査方向」は副走査方向に直交する方向である。また図示するように、「副走査エリア」は画像データを副走査方向に連続するように分割した各エリアであり、「主走査エリア」とは画像データを主走査方向に連続するように分割した各エリアである。
(ブロック分割工程)
まず画像処理部303は、画像データ全域を、副走査方向に短く主走査方向に長い、短冊状のブロックに分割する。本実施例では、ブロックの副走査方向の長さを2mm、主走査方向の長さを画像データ全幅とする。搬送方向の先頭のブロックをブロックB1として順次番号を振っていき、先頭からi番目のブロックをブロックBと定義する。この例では、画像データがブロックB~ブロックB140に分割されている。
(主走査エリアごとに小ブロック分割工程)
そして画像処理部303は、各ブロックを主走査方向に分割して小ブロックを設ける。本実施例では分割数は4とした。ここで、LTRサイズ(短辺216mm)の紙が加熱定着装置に供給されるときの紙の中心を、加熱定着装置上の原点と設定し、座標を0mmと置く。そして、搬送方向に対して左側を負、右側を正と定義する。本実施例では、表1と図5に示すように、各主走査エリアを設定した。すなわち、主走査エリアMSは-108mm~-52mm、主走査エリアMSは-56mm~+2mm、主走査エリアMSは-2mm~+56mm、主走査エリアMSは+52mm~+108mmの範囲である。
Figure 2022040619000002
このように本実施例では、隣り合う主走査エリア同士を4mmの幅でオーバーラップさせた。これは、4%相当の印字率を長方形状に集めて印字した画像を想定したときに、エリアをまたがった配置をしても正しく検知することを目的としている。詳細な内容は目標温度Tの決定処理の説明にて述べる。以下、ブロックBのうち主走査エリアMSに重なる部分を、「小ブロックSB(i,j)」と呼ぶ。
なお、上記のようにブロックの副走査方向を短く、主走査方向を長くすることは、電子写真方式のレーザプリンタに好適である。電子写真方式のレーザプリンタは、記録材Pの搬送方向に直交する主走査方向に画像データを読み込み、パルス幅等のデータに変換して、レーザスキャナ3に順次データ送信する。そのため、目標温度を決定するための画像処理を、上記のレーザスキャナ3へのデータ送信処理と共通化することで、メモリの使用領域を小さくし、処理時間を短縮できる。
(副走査エリア分割工程)
画像処理部303は、副走査方向において連続する28個のブロックをまとめて、1つの副走査エリアとする。図5では、ブロックB~ブロックB28を副走査エリアSS、ブロックB29~ブロックB56を副走査エリアSS、ブロックB57~ブロックB84を副走査エリアSS、ブロックB85~ブロックB112を副走査エリアSS、ブロックB113~ブロックB140を副走査エリアSSとした。なお、ブロック数を28個としたのは、副走査方向における副走査エリアの長さを、本実施例での定着フィルム13の周長に略一致させるためである。この長さとする理由は、目標温度Tの決定処理の部分で後述する。ここで略一致するとは、完全に同じ長さでなくとも良いが、温度低下抑制に効果がある程度に一致させることが好ましい。
(リージョン設定工程)
画像処理部303は、副走査方向に連続する複数の小ブロックをまとめて、1リージョンとする。以下、副走査エリアSS、かつ主走査エリアMSにより区画される範囲を、「リージョンR(k,n)」と呼ぶ。
<リージョンのランク分け>
画像処理部303は、リージョンR(k,n)内での印字量を算出する。
(高濃度ピクセルのカウント)
まず画像処理部303は、各小ブロックにおいて、4%以上のグレイ濃度を有する高濃度ピクセルを抽出する。そして、小ブロックSB(i,j)における高濃度ピクセルの総数をカウントし、N(i,j)(個)とする。
(移動平均値の算出)
次に画像処理部303は、各小ブロックについて、その小ブロックを中心として副走査方向に前後4個の小ブロックを選択する。小ブロックSB(i,j)については、
SB(i-4,j),SB(i-3,j),…,SB(i+3,j),SB(i+4,
j)
の9個が選択される。
そして画像処理部303は、選択された小ブロックの高濃度ピクセルの総数の移動平均値A(i,j)(個)を下式(2)のように算出する。
(i,j)={N(i-4,j)+N(i-3,j)+ … +N(i+3,j)+N(i+4,j)}/9 …(2)
この処理を各小ブロックについて行うことで、高濃度ピクセルの移動平均値が算出できる。
なお、処理対象の小ブロックが画像の先端または後端の近くにある場合、前方または後方の小ブロックの数が4個に満たないことがある。その場合、所定数である9個よりも少ない数の小ブロックに基づいて移動平均値A(i,j)が算出される。
ここで、本工程で移動平均値を算出しているのは、隣接する小ブロック間で高濃度ピクセルの割合が大きく変動する場合のノイズを低減するためである。このような変動は、典型的には、全体がほぼ文字で構成されているテキスト系画像の場合に発生しやすい。
(リージョン内の印字量を決定してランクに分類)
次に画像処理部303は、リージョンR(k,n)内の各小ブロックで求めた移動平均値の最大値(印字量のリージョン内最大値)を、代表値M(k,n)とする。すなわち、M(k,n)は、
(28*(k-1)+1,n),A(28*(k-1)+2,n),…,A(28*(k-1)+28,n)
の28個の値の最大値である。
そして画像処理部303は、リージョンR(k,n)内における代表値M(k,n)を、表2に基づいて、ランク0~ランク6まで7段階のランクに分類する。
Figure 2022040619000003
このようにして算出されたリージョンR(k,n)内の印字量のランクを、Rank(k,n)とする。以上の処理手順により、画像データ全域の印字量情報を、20個のリージョン毎の7段階のランク情報に集約できる。
<目標温度Tへの換算>
続いて画像処理部303は、各リージョンの印字量のランクに基づいて目標温度Tを決定する。以下、想定する印字形状および関連する現象と共に説明する。
(想定画像と温度低下の影響)
まず、具体的な処理内容について述べる前に、温度低下の影響が大きい想定画像として
、各ランクについて、縦帯状に印字がなされるような画像データについて検討する。すなわち画像処理部303は、各リージョンの印字量のランクが決定されると、そのランクに基づいたピクセル数の幅で、当該リージョン内で副走査方向一杯に広がる長方形の印字(以下、縦帯状の印字と呼ぶ)を行うことを想定する。そして、縦帯状印字が十分に定着可能な目標温度を想定する。
例えば、副走査方向の長さが56.5mmであれば、主走査方向における縦帯状印字の幅は次のように想定される。ランク0のとき、0.42mm。ランク1のとき、1mm。ランク2のとき、2mm。ランク3のとき、4mm。ランク4のとき、8mm。ランク5のとき、16mm。ランク6のとき、リージョンの主走査方向全幅。なお、この横幅は、あるランクにおける移動平均値の上限値を、小ブロックの副走査方向のピクセル数である47で割り算して主走査方向に相当するピクセル数を算出し、それに1ピクセルの幅を掛けることで算出できる。
このように想定する理由は、かかる縦帯状印字が、ある印字量のランクにおいて最も高い目標温度Tを必要とするからである。すなわち、縦帯状にトナーが配置されていると、加熱定着装置6の加熱を担う部材(定着フィルム13や加熱ヒータ11など)の主走査方向の特定の位置から熱が奪われ続ける。すると、その部分の温度が低下して定着性能が低下してしまう。よって、低下する熱を補うために、目標温度Tを高くする必要がある。
このような温度低下現象は、縦帯の主走査方向の太さが細ければ、周囲の部材から流入する熱により補償されるのでほぼ無視できる。しかし、縦帯が太くなればなるほど、縦帯の中央部までは熱が流入しづらくなるため、温度低下の程度が大きくなって無視できなくなり、より高い目標温度Tが必要にある。
図6は、縦帯の主走査方向の幅と、目標温度Tの補正量の関係を示す。ここで、幅0.042mm、搬送方向の長さ56.5mmの縦線を定着させるのに必要な目標温度Tを基準とおく。このとき、幅1mmの縦線の定着に必要な目標温度Tは2℃高い。また、幅16mmの縦帯の定着に必要な目標温度Tは4℃高い。なお、主走査方向の幅が広くなればなるほど目標温度Tの上昇率は緩やかになり、幅が58mmを超えると、縦帯の外部からの熱の流入の影響がほとんど無くなるため、さらなる温度補正は不要となる。
なお、本実施例の記載では、目標温度の基本の値を設定し、画像データに基づいてその基本の値への補正量(加算量)を算出するという構成としている。しかし、最終的に画像データに基づいて目標温度が算出できるのであれば、この方法には限定されない。例えば、基本の値や補正量を設定せず、画像データに基づいて直接目標温度を算出する方式でもよい。
なお、この温度低下現象は、縦帯の副走査方向の長さが長いほど大きくなり、特に、副走査方向の長さが定着フィルム13の周長の定数倍を超えるときに顕著になる。図7は、搬送方向(副走査方向)における縦帯の長さと、温度低下の補償に必要となる目標温度Tの補正量の関係を示すグラフである。
主走査方向の幅0.042mmの縦帯の場合、副走査方向の長さが56.5mmであっても、A4内の画像長さに当たる287mmであっても、必要な目標温度Tの補正量は変わらない。これは、幅0.042mm程度であれば、周囲からの熱の流入が十分であるため、局所的な部材の温度低下を無視できるためである。
一方、主走査方向の幅1mmの縦帯の場合、部材の温度低下の程度が大きくなるため、必要な目標温度Tの補正量が、搬送方向の長さに比例して高くなっていく。このとき、図7に示すように、定着フィルム13の周長の定数倍の長さを超えた時に、必要な目標温度
Tの補正量が顕著に上昇する。これは、回転する定着フィルム13が、1周前の縦帯で熱を奪われた状態でトナーと接触し定着を行うためである。
そこで上述したように、副走査エリア分けにおける副走査方向の長さを、定着フィルム13の周長と略一致させると、この現象を反映した演算ができるため、より高い消費電力低減効果が得られる。ここで副走査方向の長さと定着フィルム13の周長が略一致するとは、両者が厳密に同じ長さで無くとも、温度低下の影響が無視できる程度に一致していれば良いことを示す。
(目標温度Tの算出)
以上の前提を踏まえ、具体的な目標温度Tの算出方法について述べる。目標温度Tは、リージョンの印字量ランクが0であった場合の温度をベースとして、リージョンの印字量が0以外であった場合に必要な補正量を、加算量ΔTとして求めることにより算出する。
まず、本実施例において、ランク0に相当する幅0.042mmの縦帯を定着させるのに必要な温度は170℃である。そして、各リージョンがランク0以外であった場合に必要な加算量は図6をもとに定義され、表3のようになる。これに基づいて、リージョンR(k,n)の印字量ランクを加算量ΔT(k,n)に変換する。
Figure 2022040619000004
ここで、隣り合うリージョン同士を主走査方向でオーバーラップさせている場合、表3を算出するにあたって、図8(a)に示すようなリージョン間(主走査エリア間)をまたがった縦帯を考慮する必要がある。ここで、リージョンR(k,n)で算出された印字量ランクに対応する縦帯の幅をWとし、幅Wがオーバーラップ幅(4mm)を超えている場合を考える。このとき、印字量ランクからは、図8(b)のようにリージョンの中央部に幅Wの縦帯が配置されている場合と、図8(a)のようにリージョンをまたがって幅Wを超える幅の縦帯を配置された場合を区別できない。図8(b)であれば、印字量相当の縦帯から加算量ΔTを算出すればよい。一方、図8(a)の場合、印字量相当の縦帯から算出した加算量ΔTでは、実際の縦帯の幅に必要な加熱量が満たされない可能性がある。
このため、表3の算出においては、縦帯をリージョンの端に寄せた上で、隣接するリージョンにも同じ幅の縦帯を検知された場合を想定する必要がある。具体的には、図6の横軸である「縦帯の主走査方向の幅」として、印字量ランクから想定される縦帯の幅Wを2倍したうえで、オーバーラップ分を差し引いた幅を用いて、加算量を算出する。
なお、こうしてリージョン間をまたがることを考慮して算出された加算量ΔTは、考慮無しで算出したΔTよりも大きな値になるため、消費電力を節約する効果が減少してしまう。本実施例のモデルでは、画像全体で4%の印字率である一般的な均一なテキスト系画像を想定している。本実施例ではこのモデルにおいて所望の消費電力低減効果が得られる
ように、4%の印字率分に相当する縦帯の幅である2.32mmを十分に含められるよう、4mmのオーバーラップ幅を設定した。
次に、加算量ΔT(k,n)を、副走査方向に連続する5つのリージョン(リージョン列)について加算し、目標温度の補正量の候補値としてΔTMSnを算出する。すなわち、n=1~4の5つの主走査エリアについて、それぞれΔT(1,n)、ΔT(2,n)、ΔT(3,n)、ΔT(4,n)、ΔT(5,n)を加算したものを、ΔTMSnとして算出する。これは、副走査方向に連なる5つのリージョンそれぞれに印字量ランクに相当する縦帯が配置されたときに、必要な目標温度Tが比例して上昇していくことに対応している。つまり加算量ΔT(k,n)は、リージョンR(k,n)が含まれる主走査エリアMSにおける候補値ΔTMSnを算出するための、リージョン内の画像濃度からの変換値である。
したがって、算出した4つの候補値ΔTMS1、ΔTMS2、ΔTMS3、ΔTMS4の中で最大のものが必要な目標温度Tの補正量である。こうして求められた補正量を、基本の温度(ここでは170℃)に加算したものが、最終的な補正後目標温度Tである。
(評価方法と評価結果)
本実施例の構成が、所望の消費電力低減効果を得られ、処理負荷が適切であることを確認するための評価例について説明する。図9に、一般的な、ほぼ均一な印字率の、テキスト系のターゲット画像を示す。ここでは、このターゲット画像に必要な消費電力と、1枚当たりの画像処理部303の処理時間を評価した。
まず、ターゲット画像から算出される印字量ランクの情報は、表4のようになる。
Figure 2022040619000005
次に、この印字量ランクを各リージョンおよび各リージョン列の温度の加算量ΔTに変換すると、表5のようになる。結果、この評価画像の目標温度Tは170℃に補正値15℃を加算し、185℃になる。また、上記処理を行うのに画像処理部303が要した処理時間は、1枚当たり320msecであった。
Figure 2022040619000006
本評価例での消費電力は、冷却状態から、ターゲット画像を50枚通紙するときの加熱
ヒータ11への投入電力を電力計で計測することによって計測できる。本実施例における加熱ヒータ11の消費電力は13.8Whであった。これらの本実施例の評価結果は、消費電力と処理時間の両方を総合して考慮すると、後述する比較例よりも優位な結果である。
<比較例>
続いて、本実施例とエリア・リージョンの分け方が類似するものの、オーバーラップの特徴が異なる3つの比較例を示す。
(比較例1)
比較例1では、主走査エリア間のオーバーラップ部を設けない。比較例1の主走査各エリアのエリア範囲を表6に示す。表1と比べると、主走査エリアが重複していないことが分かる。後述するように、本比較例では所望の消費電力低減効果を得られない。
Figure 2022040619000007
表7に、比較例1において、実施例1と同様に各リージョンをランク付けして加算量ΔTを算出した結果を示す。表3と表7を比べて分かるように、比較例1では、すべての印字量ランクで、リージョンをまたがった縦帯を考慮する必要がある。また、表7を表3と比べると、必要な加算量ΔTが、一部の印字量ランクにおいて増加している。
Figure 2022040619000008
表8は、比較例1によってターゲット画像を処理したときの印字量ランクの情報である。表4と比べると、印字量ランクについては実施例1と変わらないことが分かる。
Figure 2022040619000009
また表9は、比較例1によって表8の印字量ランクを加算量ΔTに変換した値を示す。表5と比べると、ΔTMSnの値が全体に増加していることが分かる。
Figure 2022040619000010
比較例1においては、目標温度Tは170℃に補正値17.5℃を加算し、187.5℃となる。加熱ヒータ11の消費電力は14.05Whであった。また、画像処理部303が1枚当たりに要した処理時間は300msecであった。実施例と比較すると、比較例では処理時間はわずかに短いものの、消費電力が増大しており、所望の消費電力低減効果が得られていないことが分かる。
(比較例2)
比較例2では、主走査方向の隣接リージョン間を、2つ隣りのリージョンとは重複しない範囲で最大限オーバーラップさせる。後述するように、本比較例では、画像データの処理時間が実施例の約2倍となってしまう。
比較例2の主走査各エリアのエリア範囲を表10および図10に示す。エリアの主走査方向の幅を維持したままオーバーラップ幅を確保するために、主走査エリアの数が4から7に増加している。
Figure 2022040619000011
比較例2では、すべての印字量ランクで、エリアをまたがった縦帯を考慮する必要がない。このため必要な加算量ΔTは表11で示されるように、印字量相当の縦帯から算出される加算量ΔTと一致する。
Figure 2022040619000012
表12は、比較例2によってターゲット画像を処理したときの印字量ランクの情報である。
Figure 2022040619000013
また表13は、比較例2によって表12の印字量ランクを加算量ΔTに変換した値を示す。
Figure 2022040619000014
比較例2においては、目標温度Tは170℃に補正値15℃を加算し、185℃となる。ターゲット画像の平均印字率がオーバーラップを考慮する必要がない範囲に収まっているため、実施例と比較例2の目標温度Tは同じである。
比較例2では、加熱ヒータ11の消費電力は13.8Whであった。また画像処理部3
03が1枚当たりに要した処理時間は570msecであった。比較例2においては、エリアの数が倍になり、全てのピクセルについて2度計測を行っているため、実施例と比較して、処理時間が倍近くに増加している。この結果として、画像処理部303が目標温度Tの算出のために与えられた処理時間を超過したことが考えられる。かかる処理時間の長期化はスループットの低下をもたらすおそれがある。
(比較例3)
比較例3では、主走査方向のエリア分けを行わない。本比較例では、他の例と比較して最も消費電力が高く、所望の消費電力低減効果が得られない。比較例3の主走査エリアは一つしかなく、そのエリア範囲は-108mm~-108mmである。
比較例3では、すべての印字量ランクで、エリアをまたがった縦帯を考慮する必要はない。このため、必要な加算量ΔTは表11ですでに示した比較例2のものと同じである。
表14は、比較例3によってターゲット画像を処理したときの印字量ランクの情報である。
Figure 2022040619000015
また表15は、比較例3によって表14の印字量ランクを加算量ΔTに変換した値を示す。
Figure 2022040619000016
比較例3では、リージョン一つ当たりの主走査方向幅が広いため、検知されるピクセル数が増加し、算出されるランクが全体的に高くなっている。結果、目標温度Tは187.5℃となる。比較例3での加熱ヒータ11の消費電力は14.05Whであった。また画像処理部303が1枚当たりに要した処理時間は300msecであった。比較例3を実施例と比較すると、処理時間はわずかに短いものの、消費電力が増大しており、所望の消費電力低減効果が得られていないことが分かる。
<結果および効果>
以上の結果をまとめると表16のようになる。実施例によれば、比較例1~3のように類似のエリア分けを行って目標温度Tを算出する方式よりも、消費電力が低く、画像データの処理時間の増大も十分小さく抑えられていることが分かる。
Figure 2022040619000017
実施例では、画像データを、用紙搬送と垂直な複数の領域に、適切な重複領域を設けたうえで分割し、各領域の所定濃度以上のピクセルの総数を計測し、前記計測した総ピクセル数の値に従ってプロセス制御を変える制御方法を用いた。実施例および比較例で検証したように実施例の制御方法によれば、適切な消費電力低減効果と、十分に早い処理速度の維持とを達成できる。
<変形例>
本実施例においては、リージョン間のオーバーラップ幅として、最も定着性能に不利な縦帯状の画像を想定した。これにより、様々なターゲット画像の印字率に対して有効性が発揮できる、汎用性の高い設定とした。しかし、プリンタの用途が限定される場合は、用途に応じて適切な幅を適用してもよい。
例えば、枠線が1mm程度の太さの表を含む文書をプリントする場合しか想定しないのであれば、オーバーラップ幅も4mmではなく1mmとしてもよい。また、太めの文字を搬送方向に連ねて印字する頻度が高いと想定されるのであれば、例えば14ptの文字に相当する5mm程度のオーバーラップ幅を想定してもよい。
本実施例においては、搬送方向に複数の副走査エリアを設けて、定着フィルム13の周長の整数倍の縦帯長さを設定した。しかし、副走査エリア分けを行わずに、常に画像の搬送方向の全長に相当する縦帯長さを想定することによっても、近似した制御を実行できる。このような場合、消費電力低減の効果は減少するものの、処理速度の向上が見込めるメリットがある。
本実施例においては、搬送方向に直交する方向の主走査エリアの幅が略均等になるようにした。しかし、画像形成装置の構成や状態によっては、主走査エリアの幅を不均等としてもよい。
例えば、加熱定着装置6の暖気状態によってフィルムユニット10や加圧ローラ20の両端部の温度低下が懸念される場合には、両端部のエリアの主走査方向の幅を狭くして、管理を厳しくすることもできる。
本実施例においては、各エリアの印字量ランクを加算量ΔTに換算するときに、どのエリアについても同じ値を使用していた。しかし、エリアによって重みづけを行ってもよい。
例えば、加熱ヒータ11に局所的に発熱量が弱いエリアがある場合には、その部分の加算量を別テーブルとし、他のエリアと比較して大きな値を設定してもよい。
本実施例においては、温度低下の影響が大きい画像として、すべてのピクセルが連続した100%の濃度の縦帯の可能性があると想定して加算量ΔTを算出した。しかし、実際の画像データのピクセルの連続性や濃度情報を反映して、加算量ΔTをより低く見積もってもよい。
例えば、小ブロックごとに、連続性の比率の高さをカウントし、その値が一定比率以下であれば、別のカテゴリの印字量ランクに分類してもよい。また、小ブロックごとに、濃度が低いピクセルを別のカテゴリの印字量ランクに分類してもよい。そして、これらの場
合に、より低い加算量ΔTが参照できるようにテーブルを設けても良い。
本実施例においては、小ブロックの移動平均を算出するときに、前後4個の小ブロックを含めた9個の小ブロックを平均した。しかし、選択される所定数として、異なる個数(例えば、3個や、1個など)の小ブロックを選択して移動平均を算出してもよい。
さらに、異なる選択数(例えば、本実施例のように9個の場合と、3個の場合)それぞれの移動平均を併用してもよい。その場合、9個の小ブロックの移動平均値に対して、3個の小ブロックの移動平均値が大きければ、搬送方向への印字の分布が不均一であることが分かる。すると、搬送方向へ連続している縦帯の実質的な幅を細く見積もることができる。よって、定着性能を維持したまま、目標温度Tを下げて、さらなる消費電力低減効果を得ることができる。
本実施例においては、ブロック分けおよび小ブロック分けを用いたが、ブロック分けをせずに、画像データを直接複数個(例えば本実施例のように20個)のリージョンに分割し、直接リージョン内のピクセル数を計測してもよい。この場合、移動平均のメリットは享受できないものの、画像処理部303の内部の処理構造によっては、処理時間を短縮できる場合がある。
本実施例においては、A4/LTR縦送りのプリンタを想定し、画像の全幅を最大216mmとして定義した。しかし、A4横送りや、もっと幅の広いプリンタについて、画像の全幅を297mmや、もっと広い幅とし、分割数を増やしたりして対応したりしてもよい。また、逆にB5やA5などの小サイズのプリンタについて、幅狭い設定を適用してもよい。
本実施例においては、所定値以上の濃度を有するピクセルの総数をカウントした。しかし、複数の閾値を用いて、濃度別にピクセルの総数をカウントして移動平均値を算出し、濃度別の目標温度テーブルに基づいて、目標温度Tを決定してもよい。閾値テーブルの各閾値、移動平均幅及び1ブロックを定義する際の副走査方向における画像データの長さd等は、各実施例で示した値以外の値であってもよい。例えば、トナーの種類、加熱定着装置6における部材の特徴、計算処理のしやすさ、あるいは温度設定の分解能等に応じて、閾値テーブルの各閾値、移動平均幅及び1ブロックを定義する際の副走査方向における画像データの長さd等を適宜変更してもよい。
本実施例ではモノクロタイプのレーザビームプリンタで説明を行ってきたが、カラーレーザビームプリンタでも同様の処理が可能である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のカラーレーザビームプリンタを例とすると、各色の最大濃度を100%とし、各色の合計濃度が100%以上のピクセルの総数をカウントしてもよい。
本発明は、実施例の処理を実行する画像形成装置として捉えてもよく、かかる画像形成装置を用いた画像形成方法や、画像形成装置の制御方法として捉えてもよい。
また本発明は、実施例の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、コンピュータが当該プログラムを実行する方法により、各実施例における各処理を実現してもよい。上記プログラムは、例えば、ネットワークを通じて、又は、非一時的にデータを保持するコンピュータ読取可能な記録媒体等から上記コンピュータに提供されてもよい。上記プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体等に記録してもよい。
6…加熱定着装置、50…画像形成部、100…画像形成装置、302…エンジン制御部、303…画像処理部

Claims (11)

  1. 画像データに応じて形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着部と、
    前記画像データに基づいて、前記定着部が前記トナー像を加熱するときの目標温度を決定する制御部と、
    を有する画像形成装置であって、
    前記制御部は、前記記録材が搬送される方向を副走査方向とし、前記副走査方向に直交する方向を主走査方向としたとき、
    前記画像データを前記主走査方向において分割して複数の主走査エリアを設け、隣接する前記主走査エリア同士はオーバーラップする領域を有するものであり、
    前記複数の主走査エリアそれぞれにおける画像濃度に基づいて前記目標温度を決定する
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記制御部は、前記複数の主走査エリアそれぞれの画像濃度に基づいて前記目標温度を決定するための複数の候補値を算出し、前記複数の候補値のうち最大の値に基づいて前記目標温度を決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記制御部は、前記複数の主走査エリアそれぞれに含まれるピクセルの濃度を閾値と比較し、前記濃度が前記閾値より大きいピクセルの数に応じて前記候補値を算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  4. 前記制御部は、
    前記画像データを、さらに前記副走査方向において分割して複数の副走査エリアを設けることにより、前記主走査エリアと前記副走査エリアで区画される複数のリージョンを設け、
    前記副走査方向に連続する前記複数のリージョンそれぞれにおける画像濃度に基づいて、前記複数の主走査エリアそれぞれにおける前記候補値を算出する
    ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
  5. 前記制御部は、
    前記複数のリージョンそれぞれに含まれるピクセルの濃度を閾値と比較し、前記濃度が前記閾値より大きいピクセルの数に応じて、前記リージョン内の画像濃度の変換値を算出し、
    前記副走査方向に連続する前記複数のリージョンにおいて求められた前記変換値を加算して、前記リージョンが含まれる前記主走査エリアにおける前記候補値を算出する
    ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
  6. 前記制御部は、
    前記画像データを副走査方向において分割して複数のブロックを設け、前記複数のブロックを前記主走査エリアそれぞれと対応するような小ブロックに分割し、
    前記副走査方向で前後にある所定数の前記小ブロックを選択し、選択された前記小ブロックの画像濃度に基づいて、前記主走査エリアにおける前記候補値を決定する
    ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
  7. 前記制御部は、前記小ブロックそれぞれに関して選択された前記所定数の小ブロックそれぞれについて、当該小ブロックに含まれるピクセルのうち濃度が閾値より大きい高濃度ピクセルの数を算出し、選択された前記所定数の小ブロックにおける前記高濃度ピクセルの数の平均値を算出し、前記平均値に基づいて前記リージョン内の画像濃度の変換値を算
    出する
    ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
  8. 前記制御部は、想定される前記画像データに応じて前記主走査エリア同士がオーバーラップする幅を決定する
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  9. 前記制御部は、前記画像データから算出される前記画像濃度に応じた前記定着部の温度低下の程度が大きくなるほど、前記オーバーラップの幅を大きくする
    ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
  10. 前記複数の主走査エリアそれぞれの幅は、前記主走査方向における前記定着部の構成に応じて決定される
    ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
  11. 画像データに応じて形成されたトナー像を加熱して記録材に定着させる定着部と、前記画像データに基づいて、前記定着部が前記トナー像を加熱するときの目標温度を決定する制御部を有する画像形成装置の制御方法であって、前記記録材が搬送される方向を副走査方向とし、前記副走査方向に直交する方向を主走査方向としたとき、
    前記制御部が、前記画像データを前記主走査方向において分割して複数の主走査エリアを設けるステップであって、隣接する前記主走査エリア同士はオーバーラップする領域を有するステップと、
    前記制御部が、前記複数の主走査エリアそれぞれにおける画像濃度に基づいて前記目標温度を決定するステップと、
    を有することを特徴とする画像形成装置の制御方法。
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