JP2022039220A - 異常診断装置および異常診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の機器の振動音響が混在する施設内であっても、機器毎に異常診断を行うことができる異常診断装置および異常診断方法を提供する。【解決手段】異常診断装置は、複数の機器が設置された施設内を移動可能であり、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンを備える受音器と、マイクロフォンによりそれぞれ受音された音データを取得する音データ取得部と、施設内における受音器の位置を示す位置データおよび受音器の姿勢を示す姿勢データを取得する位置姿勢データ取得部と、取得された位置データおよび姿勢データと、施設内における機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、音データ取得部により取得された音データから施設内の機器毎に対応する音データを抽出するデータ処理部と、データ処理部により抽出された機器毎に対応する音データに基づいて、機器の異常診断を行う異常診断部と、を備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、運転中の機器の異常を診断する異常診断装置および異常診断方法に関する。
従来、振動音響を利用した機器異常診断システムとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、少なくとも3個の互いに異なる周波数の標識音響を発する発音器と、回転機器から発せられる振動音響と発音器から発せられる標識音響とを受音する受音器と、を備え、受音した標識音響から受音器の受音位置を特定し、回転機器から発せられる振動音響を回転機器の回転異常を診断するための基準位置で受音したときの信号レベルに補正し、補正された振動音響を解析することで回転機器の異常診断を行う技術である。
特開2011-191181号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の技術では、複数の機器の振動音響が混在した場合、受音した振動音響がどの機器から発生された振動音響かを判別することができない。そのため、機器毎に適切に異常診断を行うことができない。
そこで、本発明は、複数の機器の振動音響が混在する施設内であっても、機器毎に異常診断を行うことができる異常診断装置および異常診断方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様の異常診断装置は、複数の機器が設置された施設内を移動可能であり、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンを備える受音器と、前記マイクロフォンによりそれぞれ受音された音データを取得する音データ取得部と、前記施設内における前記受音器の位置を示す位置データおよび前記受音器の姿勢を示す姿勢データを取得する位置姿勢データ取得部と、前記位置姿勢データ取得部により取得された位置データおよび姿勢データと前記施設内における前記機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、前記音データ取得部により取得された音データから前記施設内の機器毎に対応する音データを抽出するデータ処理部と、前記データ処理部により抽出された前記機器毎に対応する音データに基づいて、前記機器の異常診断を行う異常診断部と、を備える。
このように、それぞれ独立した方向の音を受音するように配置された少なくとも3つのマイクロフォンを利用するので、受音器を中心とした3次元の音データを取得することができる。そのため、当該音データと、受音器の位置データおよび姿勢データと、施設内における機器の設置場所が記録された地図データとを組み合わせることで、どの機器からどのような振動音響が発生しているかを判別することができる。したがって、複数の機器の振動音響が混在する施設内であっても、機器毎に適切に異常診断を行うことができる。
また、上記の異常診断装置において、前記データ処理部は、前記音データ取得部により取得された音データをもとに、前記受音器を中心とした全方位についての音圧レベルを示す全方位音データを作成するデータ作成部と、前記位置データ、前記姿勢データおよび前記地図データに基づいて、前記受音器を中心とした極座標系における前記機器の偏角方向を割り出し、前記音データ作成部により作成された全方位音データから、前記機器の偏角方向に対応する音データを、前記機器毎に対応する音データとして抽出するデータ抽出部と、を備えていてもよい。
この場合、受音器により受音されたサラウンド音データと、受音器の位置データと、受音器の姿勢データと、施設内の地図データとを組み合わせることにより、施設内の機器毎に音データを適切にマッピングすることができる。
さらに、上記の異常診断装置において、前記データ処理部は、前記データ抽出部により抽出された前記機器毎に対応する音データの音圧レベルを、対応する前記機器から基準距離だけ離れた基準位置での音圧レベルに補正するレベル補正部と、前記レベル補正部により補正された音データを周波数解析する周波数解析処理部と、をさらに備えていてもよい。
この場合、受音器が移動して音源となる機器と受音器との距離が変化する場合であっても、機器から基準距離だけ離れた位置における音圧レベルに補正された音データに基づいて異常診断を行うことができるので、高精度な異常診断が可能となる。
また、上記の異常診断装置において、前記異常診断部は、前記データ処理部により抽出された前記機器毎に対応する音データから特異点を抽出し、抽出された特異点に基づいて、前記機器に異常が発生しているか否かを診断してもよい。
この場合、日常音との違いに着目した異常診断を行うことができ、適切に機器の異常を検知することができる。
さらに、上記の異常診断装置は、前記異常診断部により診断された異常診断結果を、前記施設外で前記機器を管理する設備管理者、および前記施設内で作業する作業者の少なくとも一方に通知する通知部をさらに備えていてもよい。
この場合、機器の異常発生に対して適切な対応が可能となる。例えば、異常診断結果を設備管理者に通知することで、設備管理者は、通知に従って機器メンテナンス用品の調達や機器メンテナンス、機器メンテナンス委託企業等への修理依頼を迅速に行うことが可能となる。また、異常診断結果を施設内の作業者に通知することで、作業者は、通知に従って機器メンテナンスを行ったり、異常が発生している機器を停止したりすることができる。
また、上記の異常診断装置において、前記受音器は、前記施設内を移動可能な人物が携帯していてもよい。
この場合、施設内で作業する作業者が施設内を移動可能なセンサ端末となって、各機器から発せられる音を受音することができる。したがって、例えば、施設内にセンサを搭載したロボット等を配置するなど、追加の設備投資が必要なく、その分のコストを削減することができる。また、施設内を自由に移動可能な人物が受音器を携帯するので、煩雑な配線も不要である。
さらにまた、上記の異常診断装置において、前記少なくとも3つのマイクロフォンのうち2つのマイクロフォンは、前記施設内を移動可能な人物が装着している左右のイヤホンにそれぞれ取り付けられており、前記イヤホンは、当該イヤホンに取り付けられている前記マイクロフォンにより受音された音と逆位相の音を発生させるマイクロスピーカを備えていてもよい。
この場合、施設内を移動可能な人物は、音データを収集可能なノイズキャンセルイヤホンを装着した状態とすることができる。したがって、当該人物への環境音を低減することができる。
さらに、上記の異常診断装置は、それぞれ独立して移動可能な複数の前記受音器を備えていてもよい。
この場合、施設内の異なる位置で受音された複数の音データを総合的に判断して機器の異常診断を行うことができる。したがって、機器の異常診断を精度良く行うことが可能となる。
また、本発明の一つの態様の異常診断方法は、複数の機器が設置された施設内を移動可能な受音器が備える、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンによりそれぞれ受音された音データを取得するステップと、前記施設内における前記受音器の位置を示す位置データおよび前記受音器の姿勢を示す姿勢データを取得するステップと、前記位置データおよび前記姿勢データと、前記施設内における前記機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、取得された前記音データから前記施設内の機器毎に対応する音データを抽出するステップと、抽出された前記機器毎に対応する音データに基づいて、前記機器の異常診断を行うステップと、を含む。
これにより、複数の機器の振動音響が混在する施設内であっても、機器毎に異常診断を行うことができる。
本発明の一つの態様によれば、複数の機器の振動音響が混在する施設内であっても、機器毎に異常診断を行うことができる。
図1は、本実施形態における異常診断を行う機器が設置された施設の模式図である。 図2は、受音器の構成例を示す図である。 図3は、異常診断システムの構成例を示す図である。 図4は、異常診断に用いるデータの一例である。 図5は、音データのAD変換の一例である。 図6は、全方位音データの一例である。 図7は、各機器に対応する音データの抽出例である。 図8は、音データのレベル補正方法を説明する図である。 図9は、音データのレベル補正および周波数解析の一例である。 図10は、機器の異常診断の一例である。 図11は、受音器の別の構成例を示す図である。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
本実施形態では、複数の機器(例えば、回転機器)が設置された施設内において、各機器から発せられる音を解析することで、機器毎の異常診断を行う異常診断システムについて説明する。
図1は、本実施形態における異常診断を行う機器が設置された施設10の模式図である。この図1に示すように、施設10内には、複数(本実施形態では4台)の機器20A~20Dが設置されている。ここで、施設10は、例えば工場である。機器20A~20Dは、それぞれモータ等の可動部21A~21Dを備え、振動音響を発生させている。なお、機器の台数は4台に限定されるものではなく、任意の台数であってよい。
施設10内は、作業者30A、30Bがそれぞれ独立して移動可能である。なお、施設10内を移動可能な作業者は2人に限定されるものではなく、任意の人数であってよい。
作業者30A、30Bは、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンを備える受音器40を携帯している。本実施形態では、作業者30A、30Bは、それぞれ3つのマイクロフォン41a~41cを備える受音器40を携帯している。マイクロフォン41a~41cが受音する音は、施設10内の機器20A~20Dが発する振動音響と、施設10内の環境音と、を含む。
図2(a)は、マイクロフォン41a~41cを備える受音器40の構成例(外観例)を示す図であり、図2(b)は、受音器40の装着例を示す図である。
図2(a)および図2(b)に示すように、受音器40は、イヤホン型受音器とすることができる。
この図2(a)に示すように、受音器40は、3つのマイクロフォン41a~41cと、2つのマイクロスピーカ42a、42bと、コントロールユニット43と、を備える。
2つのマイクロフォン41a、41bと、2つのマイクロスピーカ42a、42bとは、作業者30Aの左右の耳に装着されるイヤホン本体にそれぞれ取り付けられている。マイクロフォン41cは、コントロールユニット43に組み込まれている。
コントロールユニット43は、図2(b)に示すように、例えば作業者30Aの首に装着可能な首かけアーム44に取り付けられている。また、コントロールユニット43とイヤホン本体とは、ワイヤ45を介して接続されている。
また、コントロールユニット43には、特に図示しないが、マイクロフォン41a~41cにより受音された音データをデジタルデータに変換するAD変換器と、位置センサと、姿勢センサと、無線通信機と、バッテリーとが組み込まれている。ここで、位置センサは、例えばGPS等とすることができる。また、姿勢センサは、例えばジャイロセンサや地磁気センサ等とすることができる。
コントロールユニット43は、マイクロフォン41a~41cにより受音された音データをAD変換器によりデジタルデータに変換し、デジタルデータに変換された音データと、位置センサにより取得された位置データと、姿勢センサにより取得された姿勢データとを、無線通信機を通して送信することができる。これらのデータは、施設10内の各機器の異常診断に用いられる。
マイクロフォン41a~41cは、例えば5Hzから20kHzまでの音を受音することができる。これにより、異常診断を行うために十分な周波数帯域の振動音響を受音することが可能となる。
また、マイクロスピーカ42a、42bは、それぞれマイクロフォン41a、41bにより受音された音と逆位相の音を発生させることができる。つまり、受音器40は、音データを収集可能なノイズキャンセルイヤホンとすることができる。これにより、受音器40を装着している作業者30Aへの環境音を低減することができる。
工場等の作業現場においては、騒音対策として、作業者は耳栓を装着することが多い。本実施形態のようにノイズキャンセル機能を有するイヤホン型受音器を採用することで、作業者に違和感なく受音器を携帯させることができる。
以下、本実施形態における異常診断装置の具体的構成について説明する。
図3は、本実施形態における異常診断システム100の構成例を示す図である。
図3に示すように、異常診断システム100は、異常診断装置50を備える。異常診断装置50は、クラウドサーバやネットワークに接続されたPC等とすることができる。異常診断装置50は、施設10内を移動可能な作業者30A、30Bが装着している受音器40と無線通信が可能に接続されている。なお、通信規格は問わない。
作業者30A、30Bが受音器40を装着して施設10内を移動することで、施設10内の機器20A~20Dが発する振動音響と、施設10内の環境音とをマイクロフォン41a~41c(図2(a)参照)により受音することができる。また同時に、受音器40に組み込まれた位置センサおよび姿勢センサにより、受音器40の位置を示す位置データおよび受音器40の姿勢を示す姿勢データを検出することができる。
異常診断装置50は、診断用データ取得部51と、地図データ格納部52と、データ処理部53と、異常診断部54と、ログ記録部55と、を備える。
診断用データ取得部51は、音データ取得部51aと、位置姿勢データ取得部51bと、を備える。音データ取得部51aは、作業者30A、30Bが装着している各受音器40から、マイクロフォン41a~41cにより受音されAD変換器によりAD変換された音データを取得する。位置姿勢データ取得部51bは、作業者30A、30Bが装着している各受音器40から、位置センサおよび姿勢センサにより取得された受音器40の位置データおよび姿勢データを取得する。
地図データ格納部52は、作業者30A、30Bが移動可能な施設10内の機器20A~20Dの設置場所が記録された地図データを格納している。この地図データは、例えば施設10の設計段階において作成され、予め地図データ格納部52に格納しておくことができる。
なお、地図データ格納部52は、外部装置から地図データを取得し、格納するようにしてもよい。例えば、地図データ格納部52は、施設10内の各機器の配置や台数が変更された場合には、格納している地図データを更新するようにしてもよい。
図4は、異常診断装置50による異常診断に用いるデータの一例である。ここでは、図1に示した作業者30Aの受音器40により取得されたデータの例を示す。図4(a)は、地図データ格納部52が格納している地図データ61の一例であり、図4(b)は、音データ取得部51aが取得する音データ62の一例である。また、図4(c)は、位置姿勢データ取得部51bが取得する位置データ63の一例であり、図4(d)は、位置姿勢データ取得部51bが取得する姿勢データ64の一例である。
ここで、図4(b)に示す音データ62は、受音器40が備えるマイクロフォン41a~41cにより受音された音データを、それぞれ受音器40が備えるAD変換器によってデジタルデータに変換した音データである。例えばマイクロフォン41a~41cによって、図5(a)に示すようにマイク1~マイク3の音データが取得された場合、図3の音データ取得部51aは、図5(b)に示すAD変換後の音データを取得する。
図4(b)において、音データ62aは、マイクロフォン41a(マイク1)により一定時間ごとに受音された音データのデジタルデータであり、音データ62bは、マイクロフォン41b(マイク2)により一定時間ごとに受音された音データのデジタルデータであり、音データ62cは、マイクロフォン41c(マイク3)により一定時間ごとに受音された音データのデジタルデータである。
図4(c)に示す位置データ63は、受音器40の位置を示すデータであり、図4(a)に示す地図データ61と組み合わせることで、受音器40が施設10内のどこに位置しているかを把握することができる。
また、図4(d)に示す姿勢データ64は、受音器40の姿勢を示すデータであり、図4(a)に示す地図データ61と組み合わせることで、受音器40が施設10内においてどちらの方向を向いているかを把握することができる。
図3に戻って、データ処理部53は、診断用データ取得部51により取得された音データ、位置データおよび姿勢データと、地図データ格納部52が格納している地図データとに基づいて、施設10内の機器毎に対応する音データを抽出し、機器毎にマッピングする。
まず、データ処理部53は、図4(b)に示す音データ62a~62cを組み合わせることで、受音器40を中心とした全方位についての音圧レベルを示す全方位音データを作成する。例えば、図6(a)に示すように、受音器40を中心とし、作業者30Aの正面を基準の方向(偏角0度)とした座標系を考える。そして、各マイクロフォン41a~41cの姿勢をそれぞれ考慮して、各マイクロフォン41a~41cにより受音された音データ62a~62cを組み合わせ、例えば図6(b)に示すように、全方位(偏角:0度~360度)の音圧レベルを示す音データを作成する。
なお、図6(b)では、図示の都合上、2次元で示しているが、実際には3次元であってもよい。
次に、図3のデータ処理部53は、音データ62a~62cを組み合わせて作成した全方位音データから、施設10内の機器毎に対応する音データを抽出する。
具体的には、図4(a)に示す地図データ、図4(c)に示す位置データおよび図4(d)に示す姿勢データをもとに、図7(a)に示すように、受音器40を中心とした極座標系にて、各機器20A~20Dまでの距離r1~r4と偏角θ1~θ4とを割り出す。そして、全方位音データから、各機器20A~20Dの偏角θ1~θ4に対応する音データを抽出する。その結果を図7(b)~図7(e)に示す。
図7(b)は機器20A(機器A)に対応する音データであり、図7(c)は機器20B(機器B)に対応する音データであり、図7(d)は機器20C(機器C)に対応する音データであり、図7(e)は機器20D(機器D)に対応する音データである。
次に、データ処理部53は、各機器20A~20Dに対応する音データを補正する。具体的には、データ処理部53は、図7(b)~図7(e)に示す音データの各音圧レベルを、各機器から基準距離dだけ離れた基準位置における音圧レベルに補正する。
図8に示すように、音源から距離Ra、Rbだけ離れた位置に観測点a、bがあり、それぞれの観測点で受音された音データの音圧レベルをLa、Lbとすると、以下の式が成り立つことが一般的に知られている。
Lb=La-20・log(Rb/Ra) ………(1)
したがって、例えば、図7(a)に示すように音源である機器20Aから距離r1の位置にある受音器40での音圧レベルをLaとした場合、機器20Aから基準距離dの位置にある基準位置での音圧レベルLdAは、以下の式で表すことができる。
LdA=La-20・log(d/r1) ………(2)
そこで、データ処理部53は、機器20Aに対応する音データについては、上記(2)式に従って音圧レベルを補正する。
このとき、機器20Aから受音器40までの距離r1が基準距離dと等しい場合(d=r1)には、LdA=Laであるため、音圧レベルの補正は行わない。一方、機器20Aから受音器40までの距離r1が基準距離dよりも短い場合(d>r1)には、音圧レベルはLdA<Laとなるように減少補正される。また、機器20Aから受音器40までの距離r1が基準距離dよりも長い場合(d<r1)には、音圧レベルはLdA>Laとなるように増加補正される。
なお、機器20B~20Dに対応する音データについても同様である。
これにより、例えば図9(a)に示す補正前の音圧データは、図9(b)に示すように音圧レベルが補正される。ここで、図9(a)に示す音圧データは、図7(b)~図7(e)に示す音圧データと等しい。
次に、データ処理部53は、図9(b)に示す音圧レベル補正後の音データを周波数解析し、図9(c)に示す音データを得る。周波数解析処理の手法としては、高速フーリエ変換や、ウェーブレット変換等がある。
このように、データ処理部53は、特に図示しないが、全方位音データを作成するデータ作成部と、全方位音データから機器毎に対応する音データを抽出するデータ抽出部と、抽出された機器毎に対応する音データの音圧レベルを補正するレベル補正部と、レベル補正された音データを周波数解析する周波数解析処理部と、を備える。
上記のデータ作成部およびデータ抽出部により、施設10内の複数の機器から発せられる振動音響が混在する場合であっても、施設10内の機器毎に音データを適切にマッピングすることができる。また、上記のレベル補正部および周波数解析処理部により、受音器40が移動して音源となる機器と受音器40との距離が変化する場合であっても、機器から基準距離dだけ離れた位置における音圧レベルに補正された音データに基づいて異常診断を行うことができるので、高精度な異常診断が可能となる。
図3に戻って、異常診断部54は、診断処理部54aと、メッセージ作成部54bと、メッセージ送信部54cと、を備える。
診断処理部54aは、データ処理部53により機器毎にマッピングされ、周波数分解された音データに基づいて、各機器の異常診断を行う。ここでは、診断処理部54aは、機器毎に時系列に保存された所定期間分の上記音データに基づいて、各機器の異常診断を行う。
図10(a)は、機器毎にマッピングされ周波数分解された音データであり、一定期間t毎に得られる音データである。この図10(a)に示す音データは、図9(c)に示す音データと等しい。この図10(a)に示す一定期間t毎の音データは、図10(b)に示すように時系列に保存される。
図3の診断処理部54aは、図10(b)に示す各音データから特異点を抽出し、各機器の異常診断を行う。診断処理部54aは、例えば、決定木、サポートベクターマシン、k近傍法、オートエンコーダ、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)などの機械学習、もしくは、深層学習を活用することで特異点を抽出することができる。
そして、診断処理部54aは、特異点が抽出された音テータに対応する機器を、異常が発生している機器であると判定する。例えば、図10(c)に示すように、機器Bの音データから特異点αが抽出された場合、この機器Bに異常が発生していると判定する。
ここで、施設10内に受音器40を装着した作業者が複数存在する場合、異常診断装置50は、複数の受音器40によりそれぞれ受音された音データを取得することができる。つまり、データ処理部53は、複数の受音器40によりそれぞれ受音された音データに対して上述した各種データ処理を行い、機器毎に対応する音データを複数(受音器40の数と同数)抽出することができる。そこで、診断処理部54aは、機器毎に対応する複数の音データを、総合的に判断して異常(特異点)を抽出するようにしてもよい。
このように、施設内をそれぞれ独立して移動可能な複数の受音器の音データを総合的に判断して機器の異常診断を行うことで、より精度良く機器の異常を検知することができる。
また、診断処理部54aは、異常診断結果を、診断ログとして図3のログ記録部55に記録することができる。
なお、図3においては、異常診断装置50がログ記録部55を備える場合について示しているが、ログ記録部55は、異常診断装置50に接続され、例えば異常診断システム100の管理者等がアクセス可能なクラウドサーバやPCであってもよい。
さらに、診断処理部54aは、異常診断結果を、ネットワークを介して施設10外で機器20A~20Dを管理する設備管理者30Cに通知することができる。例えば、診断処理部54aは、設備管理者30Cが操作可能な端末機器に異常診断結果を送信する。
これにより、設備管理者30Cは、通知に従って機器メンテナンス用品の調達、機器メンテナンス、機器メンテナンス委託企業への修理依頼を、異常発生後すぐに行うことが可能となる。なお、設備管理者30Cは、通知された異常診断結果を確認し、そのチェック結果を診断処理部54aに返信してもよい。
また、図3のメッセージ作成部54bは、診断処理部54aの異常診断結果をもとに、作業者30A、30Bへ通知するメッセージを作成する。具体的には、メッセージ作成部54bは、異常が発生している機器を作業者へ通知するためのメッセージを作成する。例えば、機器Bに異常が発生している場合には、「機器Bをチェックしてください」といったメッセージを作成する。
そして、図3のメッセージ送信部(通知部)54cは、メッセージ作成部54bにより作成されたメッセージを、異常が発生している機器の最も近くに位置する作業者に対して送信する。例えば、図3に示すように機器Bに異常が発生しており、機器Bの最も近くに作業者30Aが存在する場合、メッセージ送信部54cは、作業者30Aに対して、メッセージ作成部54bにより作成されたメッセージを送信する。
これにより、作業者30Aは、通知に従って、機器20Bのメンテナンスや機器停止を行うことが可能となる。
なお、異常診断システム100の管理者は、ログ記録部55に記録された診断ログをもとに、決定木、サポートベクターマシン、k近傍法、オートエンコーダ、CNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)などの機械学習、もしくは、深層学習を活用した異常診断アルゴリズムの更新を継続的に行うことができる。これにより、異常診断の精度を向上させることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態における異常診断装置50は、それぞれ異なる方向の音を受音する3つのマイクロフォン41a~41cによりそれぞれ受音された音データと、施設10内における受音器40の位置を示す位置データおよび受音器40の姿勢を示す姿勢データを取得する。そして、異常診断装置50は、上記の位置データおよび姿勢データと、施設内における機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、上記の音データから機器毎に対応する音データを抽出し、抽出された機器毎に対応する音データに基づいて、各機器の異常診断を行う。
このように、それぞれ独立した方向の音を受音するように配置された3つのマイクロフォン41a~41cを利用するので、受音器40を中心とした3次元の音データを取得することができる。
なお、本実施形態では、受音器40が3つのマイクロフォン41a~41cを備える場合について説明したが、マイクロフォンは3つ以上であればよい。また、各マイクロフォンの配置は、それぞれが独立した方向を向き、3次元の音データを取得可能な配置であればよい。
本実施形態では、受音器40は、作業者30A、30Bが装着可能なイヤホン型受音器であり、3つのマイクロフォン41a~41cのうち2つのマイクロフォン41a、41bは左右のイヤホンにそれぞれ取り付けられており、残りの1つのマイクロフォン41cは、作業者30A、30Bの首の後ろに配置されている。人間の左右の耳は、それぞれやや前方に傾いている。そのため、受音器40をイヤホン型受音器として、3つのマイクロフォン41a~41cを上記のように配置することで、3つのマイクロフォン41a~41cはそれぞれ異なる3方向を向くことになり、3次元の音データを取得することができる。
このように、受音器40を中心とした3次元の音データを取得することができるので、当該音データと、受音器40の位置データおよび姿勢データと、施設10内の地図データとを組み合わせることで、どの機器からどのような振動音響が発生しているかを判別することができる。
具体的には、異常診断装置50は、音データ取得部51aにより取得された音データをもとに、受音器40を中心とした全方位についての音圧レベルを示す全方位音データを作成し、当該全方位音データから、機器毎に対応する音データを抽出する。このとき、異常診断装置50は、上記の位置データ、姿勢データおよび地図データに基づいて、受音器40を中心とした極座標系における機器20A~20Dの偏角方向を割り出し、全方位音データから、機器20A~20Dの偏角方向に対応する音データを、機器毎に対応する音データとして抽出する。
これにより、施設10内の機器毎に音データを適切にマッピングすることができる。したがって、複数の機器の振動音響が混在する施設10内であっても、機器毎に適切に異常診断を行うことができる。
異常診断に際し、異常診断装置50は、機器毎に対応する音データから特異点を抽出し、抽出された特異点に基づいて、機器に異常が発生しているか否かを診断する。
この場合、日常音との違いに着目した異常診断を行うことができるので、適切に機器の異常を検知することができる。また、機器に依存しない異常検知が可能となる。さらに、設備診断ノウハウが不要となるため、専任の設備診断スタッフの配置が不要となり、省人化を図ることができる。
また、本実施形態において、受音器40は、作業者30A、30Bといった施設10内を移動可能な人物が携帯することができる。そのため、作業者30A、30Bが施設10内を移動可能なセンサ端末となって、各機器から発せられる音を受音することができる。
したがって、例えば、施設10内にセンサを搭載したロボット等を配置して施設10内を巡回させる場合のように追加の設備投資が必要なく、その分のコストを削減することができる。また、施設10内を自由に移動可能な人物が受音器40を携帯するので、煩雑な配線も不要である。
(変形例)
上記実施形態においては、少なくとも3方向の音を受音する受音器が、図2(a)に示すようなイヤホン型受音器である場合について説明したが、受音器の構成は上記に限定されるものではない。例えば、受音器は、例えばヘッドフォン型受音器であってもよいし、ヘルメット型受音器であってもよい。
図11は、ヘルメット型受音器40Aの構成例を示す図である。
図11に示すように、マイクロフォン41a~41cは、ヘルメット46の表面に取り付けられていてもよい。また、特に図示しないが、マイクロスピーカ42a、42bは、それぞれヘルメット46内部に設けることができる。なお、マイクロスピーカ42a、42bは、固定バンド47に設けてもよい。マイクロフォン41aとマイクロフォン41bとで受音した音データと逆位相の音を、それぞれマイクロスピーカ42aとマイクロスピーカ42bとから発生させることにより、当該ヘルメットを装着している作業者への環境音を低減することができる。
このように、ヘルメット型の受音器40Aを用いた場合、ヘルメット46上の所望の位置に、所望の数のマイクロフォンを設置することができる。つまり、マイクロフォンの配置の自由度を向上させることができる。
また、上記実施形態においては、施設10内を移動可能な作業者30A、30Bが受音器40を携帯する場合について説明したが、受音器40は、施設10内を移動可能なロボットに取り付けてもよい。ただし、上述したように、施設10内を移動可能な人物が受音器40を携帯する方が、設備投資の問題や煩雑な配線の問題等を回避することができるため、好ましい。
さらに、上記実施形態においては、受音器40が備えるマイクロフォン41a~41cにより受音された音データを無線通信により異常診断装置50に送信し、異常診断装置50においてデータ処理および異常診断処理を行う場合について説明した。しかしながら、受音器40と異常診断装置50とは、1つの装置が備えていてもよい。この場合、受音器40の機能と異常診断装置50の機能とを有する異常診断装置(情報端末装置)を、施設10内を移動可能な人物のうちの1人が携帯する。
なお、本発明は、上述した実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介して、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行することによっても実現可能である。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が実施形態の機能を実現することになる。また、当該プログラムを記録した記録媒体は本発明を構成することができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより、実施形態の機能が実現されるだけでなく、プログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記した実施形態の機能が実現されてもよい。
10…施設、20A~20D…機器、30A,30B…作業者、30C…設備管理者、40…受音器、41a~41c…マイクロフォン、42a,42b…マイクロスピーカ、43…コントロールユニット、50…異常診断装置、51…診断用データ取得部、51a…音データ取得部、51b…位置姿勢データ取得部、52…地図データ格納部、53…データ処理部、54…異常診断部、54a…診断処理部、54b…メッセージ作成部、54c…メッセージ送信部、55…ログ記録部、61…地図データ、62…音データ、63…位置データ、64…姿勢データ

Claims (9)

  1. 複数の機器が設置された施設内を移動可能であり、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンを備える受音器と、
    前記マイクロフォンによりそれぞれ受音された音データを取得する音データ取得部と、
    前記施設内における前記受音器の位置を示す位置データおよび前記受音器の姿勢を示す姿勢データを取得する位置姿勢データ取得部と、
    前記位置姿勢データ取得部により取得された位置データおよび姿勢データと、前記施設内における前記機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、前記音データ取得部により取得された音データから前記施設内の機器毎に対応する音データを抽出するデータ処理部と、
    前記データ処理部により抽出された前記機器毎に対応する音データに基づいて、前記機器の異常診断を行う異常診断部と、を備えることを特徴とする異常診断装置。
  2. 前記データ処理部は、
    前記音データ取得部により取得された音データをもとに、前記受音器を中心とした全方位についての音圧レベルを示す全方位音データを作成するデータ作成部と、
    前記位置データ、前記姿勢データおよび前記地図データに基づいて、前記受音器を中心とした極座標系における前記機器の偏角方向を割り出し、前記音データ作成部により作成された全方位音データから、前記機器の偏角方向に対応する音データを、前記機器毎に対応する音データとして抽出するデータ抽出部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
  3. 前記データ処理部は、
    前記データ抽出部により抽出された前記機器毎に対応する音データの音圧レベルを、対応する前記機器から基準距離だけ離れた基準位置での音圧レベルに補正するレベル補正部と、
    前記レベル補正部により補正された音データを周波数解析する周波数解析処理部と、をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の異常診断装置。
  4. 前記異常診断部は、
    前記データ処理部により抽出された前記機器毎に対応する音データから特異点を抽出し、抽出された特異点に基づいて、前記機器に異常が発生しているか否かを診断することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  5. 前記異常診断部により診断された異常診断結果を、前記施設外で前記機器を管理する設備管理者、および前記施設内で作業する作業者の少なくとも一方に通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  6. 前記受音器は、前記施設内を移動可能な人物が携帯していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  7. 前記少なくとも3つのマイクロフォンのうち2つのマイクロフォンは、前記施設内を移動可能な人物が装着している左右のイヤホンにそれぞれ取り付けられており、
    前記イヤホンは、当該イヤホンに取り付けられている前記マイクロフォンにより受音された音と逆位相の音を発生させるマイクロスピーカを備えることを特徴とする請求項6に記載の異常診断装置。
  8. それぞれ独立して移動可能な複数の前記受音器を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の異常診断装置。
  9. 複数の機器が設置された施設内を移動可能な受音器が備える、それぞれ異なる方向の音を受音する少なくとも3つのマイクロフォンによりそれぞれ受音された音データを取得するステップと、
    前記施設内における前記受音器の位置を示す位置データおよび前記受音器の姿勢を示す姿勢データを取得するステップと、
    前記位置データおよび前記姿勢データと、前記施設内における前記機器の設置場所が記録された地図データとに基づいて、取得された前記音データから前記施設内の機器毎に対応する音データを抽出するステップと、
    抽出された前記機器毎に対応する音データに基づいて、前記機器の異常診断を行うステップと、を含むことを特徴とする異常診断方法。
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