JP2022037814A - リチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電池容量及びクーロン効率に優れたリチウムイオン二次電池を得るための正極活物質及びその製造方法を提供する。【解決手段】リチウムとニッケルを含むリチウム金属複合酸化物であって、リチウムとリチウム以外の金属のモル比が0.95~1.30であり、リチウム金属複合酸化物を含む正極、金属リチウムを含む負極を用いてリチウムイオン二次電池を組み立て、dQ/dV曲線を作成した時、電圧4.10~4.30Vで得られる充電ピーク強度が500~1100mAh/g/Vであり、電圧3.35~3.55Vで得られる放電ピーク強度が150~300mAh/g/Vである。【選択図】図2

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、リチウムイオン二次電池に用いた際に、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法に関する。
大気中に含まれるCOなどの温室効果ガスの増加により、地球温暖化がクローズアップされてから、ある程度の年月が経過したものの、状況が好転したとは言い難く、温室効果ガスの排出量を減らすための様々な取り組みが、現在もなお、世界的規模で行われている。
その中でも、ガソリン自動車やディーゼル自動車など、化石燃料を用いて走行する自動車は、COのほか、NO、SO、炭化水素などを排出し、大気汚染物質の発生源として、特に問題視されていたため、リチウムイオン二次電池に蓄えられた電気を利用する、ハイブリット自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車が、環境に優しい次世代自動車として注目され、早くから実用化に向けた研究開発が進められてきた。これらの次世代自動車に搭載されるリチウムイオン二次電池に関しては、より一層、高エネルギー密度で長寿命、かつ、低コストであることが要求されており、電池特性向上のための検討が、益々盛んになっている。
また、化石燃料を燃焼させることにより得られる熱エネルギーを、電気エネルギーに変換する火力発電所についても、多量のCOが排出されるため、火力発電所を新規に建設することが、非常に困難となっている。そこで、増大する電力需要に対応するべく、電力の有効利用法の一つとして、余剰電力になり得る夜間電力を、一般家庭に設置したリチウムイオン二次電池に蓄えて、これを電力消費量が多い昼間に使用し、負荷を平準化する、ロードレベリングが行われている。更に、リチウムイオン二次電池からなる家庭用蓄電池を、太陽光発電システムと一緒に利用する取り組みも、徐々に拡がりを見せており、蓄えられたクリーンな電力を、昼間だけでなく夜間も使用出来るほか、地震や台風などの災害による、停電発生時の非常用電源としても、大いに期待されている。
リチウムイオン二次電池は、正極、負極、非水電解質、或いは、固体電解質などで構成され、その正極、及び、負極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離、及び、挿入することが可能な材料が使用される。なお、非水電解質としては、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液があり、固体電解質としては、不燃性でリチウムイオン電導性を有する無機、或いは、有機の固体電解質がある。
リチウムイオン二次電池のうち、層状岩塩型、又は、スピネル型の構造を有するリチウム金属含有複合酸化物を、正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として、研究開発、及び、実用化が進められている。
リチウムイオン二次電池の正極材料としては、製造が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(コバルト酸リチウム、LiCoO、LCOとも称される)、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(ニッケル酸リチウム、LiNiO、LNOとも称される)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(マンガン酸リチウム、LiMn、LMOとも称される)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5、LNMOとも称される)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えば、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、NMCとも称される)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(例えば、LiNi0.75Co0.15Al0.10、NCAとも称される)など、リチウム金属複合酸化物からなる正極活物質が提案されている。
リチウム金属複合酸化物の中でも、ニッケル、マンガン、コバルトを含有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(NMC)や、ニッケル、コバルト、アルミニウムを含有するリチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物(NCA)からなる正極活物質は、熱安定性に優れ、高容量で、サイクル特性も良好で、かつ、低抵抗で高出力が得られる材料として期待されている。
例えば、特許文献1では、一般式:Li(Ni1-yCo1-z(0.98≦x≦1.1、0.05≦y≦0.4、0.01≦z≦0.2、Mは、Al、Mn、Ti、及び、Mgからなる群から選択される一種、又は、二種以上)で示される組成のニッケル酸リチウムであり、少なくともSOCが50% の状態において、(1)a軸が2.8Å以上、(2)格子体積が99.6Å以上、(3)Ni-O結合距離が1.8Å以上、(4)Ni-Ni結合距離が2.8Å以上、(5)Ni-Oのデバイ-ワーラー因子が0.065以上、及び、(6)Ni-Niのデバイ-ワーラー因子が0.066以下、のうち、少なくとも一つの構造上の特性を有する正極活物質が開示され、構造安定性(熱安定性)に優れ、高い放電容量(高エネルギー密度)の正極活物質を提供することが出来ると記載されている。
特許文献2では、共沈法を用いて作製されたリチウムイオン電池用正極活物質であって、前記共沈法は、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び、硫酸コバルトの混合物の水溶液にアンモニア水を加え、撹拌しながら、水酸化リチウムを加えて金属水酸化物を得る工程を備え、前記リチウムイオン電池用正極活物質は、前記共沈法で得られた金属水酸化物と炭酸リチウムとを混合させて、前記金属水酸化物と前記炭酸リチウムとの混合粉を得た後、前記混合粉を焼成する工程とで作製され、かつ、組成式:LiNiCoMn1-x-y(前記式において、0.9≦a≦1.2、0.7≦x≦0.9、0.1≦y≦0.3である)で表され、ナトリウム含有量が100ppm以下であるリチウムイオン電池用正極活物質が開示されている。そして、水酸化リチウムを用いて共沈反応を行うことにより、不純物となるナトリウムを含まない共沈物を作製でき、これによって電池の分極を抑えられ、結果として電池のサイクル特性の大幅な改善が出来ると記載されている。
特開2005-332713号公報 特開2016-162601号公報
しかしながら、特許文献1に記載の正極活物質では、更なる改善が求められている、電池の高容量化に、十分対応可能であるとは言い難く、更に、電池特性向上のために、リチウム金属複合酸化物への異種元素の添加を行っているが、異種元素の添加に頼るあまり、既述のLNOをはじめ、NCA、NMCなど、リチウム金属複合酸化物自体の改善には、全く触れられておらず、高容量でコスト的にも安価である、リチウム金属複合酸化物の長所が、活かし切れているとは言えない。また、特許文献2に記載の正極活物質では、サイクル特性の向上のみが示されており、電池の高容量化に関しては、殆ど触れられていない。
この様な課題に鑑み、本発明は、リチウム金属複合酸化物自体を改善し、最適化することにより、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
即ち、上記の課題を解決する本発明の第1の態様は、リチウムとニッケルを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は、前記一次粒子と前記二次粒子の両者からなるリチウム金属複合酸化物であって、前記リチウム金属複合酸化物は、前記リチウムとリチウム以外の金属のモル比が0.95~1.30であり、前記リチウム金属複合酸化物を含む正極、金属リチウムを含む負極を用いて、リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に電池容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成した時、電圧4.10~4.30Vで得られる充電ピーク強度が500~1100mAh/g/Vであり、電圧3.35~3.55Vで得られる放電ピーク強度が150~300mAh/g/Vであることを特徴とする。
本発明の第1の態様によれば、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することが出来る。
このとき、前記リチウム金属複合酸化物は、比表面積が0.25~1.50m/g、(003)結晶子径が800~1600Å、金属(Me)席占有率が97.2~100%としてもよい。
このようにすれば、正極活物質を構成するリチウムニッケル複合酸化物の結晶性を高くすることが出来る。そして、リチウムイオン二次電池の電池容量を増加させることが出来る。
このとき、前記リチウム金属複合酸化物を含む正極、前記金属リチウムを含む負極を用いて、前記リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行った時、得られる放電容量が232~240mAh/g、得られるクーロン効率が90.0~95.0%としてもよい。
このようにすれば、放電容量、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することが出来る。
このとき、前記リチウム金属複合酸化物が、一般式(B):LiNi1-x2+α(式中、s、x、及び、αは、0.95≦s≦1.30、0≦x≦0.2、及び、-0.1≦α≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)としてもよい。
このようにすれば、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質を提供することが出来る。
本発明の第2の態様は、リチウムとニッケルを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は、前記一次粒子と前記二次粒子の両者からなるリチウム金属複合酸化物の製造方法であって、前記ニッケルを含む原料水溶液、水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液、アンモニウムイオンを含むアンモニウム水溶液を混合して反応溶液を作製し、前記反応溶液のpH(液温25℃基準)が11.0~12.5となる様に制御して、金属複合水酸化物ケーキを得る晶析工程と、前記金属複合水酸化物ケーキを洗浄した後、100~200℃、1~10時間の条件で乾燥し、前記金属複合水酸化物を得る乾燥工程と、前記金属複合水酸化物とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、前記リチウム混合物を、300~500℃、1~10時間の条件で仮焼し、金属複合酸化物を含まない状態で反応させ、リチウム仮焼物を得る仮焼工程と、前記リチウム仮焼物を、650~900℃、1~20時間の条件で焼成し、前記金属複合酸化物を含まない状態で反応させ、リチウム金属複合酸化物を得る焼成工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供することが出来る。
このとき、前記製造方法は、前記リチウム金属複合酸化物の原料である前記金属複合水酸化物が、製造過程で前記金属複合酸化物の形態を経由せず、直接、前記リチウム化合物と反応することとしてもよい。
このようにすれば、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供することが出来る。
このとき、前記仮焼工程と前記焼成工程の間に、リチウム仮焼物を解砕する第一解砕工程と、前記焼成工程の後に、リチウム金属複合酸化物を解砕する第二解砕工程と、を有してもよい。
このようにすれば、第一解砕工程において、より確実に金属複合酸化物(中間物)の生成を抑制することが出来る。また、第一解砕工程の後工程である焼成工程において、得られるリチウム金属複合酸化物の凝集体、又は、焼結体の発生を低減することが出来る。第二解砕工程後に得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を、好適な範囲に制御することが出来る。
このとき、前記リチウム金属複合酸化物が、一般式(B):LiNi1-x2+α(式中、s、x、及び、αは、0.95≦s≦1.30、0≦x≦0.2、及び、-0.1≦α≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)としてもよい。
このようにすれば、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法を提供することが出来る。
このとき、前記金属複合水酸化物は三方晶の結晶構造を有し、前記金属複合酸化物は立方晶の結晶構造を有し、前記リチウム金属複合酸化物は菱面体晶の結晶構造を有することとしてもよい。
このようにすれば、金属複合水酸化物(前駆体)からのリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の生成を、結晶系が異なる金属複合酸化物(中間物)を経由せずに行うことが出来る。
このとき、前記リチウム化合物は、水酸化リチウム、及び/又は、炭酸リチウムとしてもよい。
これらのリチウム化合物は取り扱いが容易であり、品質が定性し、硫酸根、塩素根、硝酸根などの不純物の残存が少ない。
本発明によれば、リチウムイオン二次電池に用いた際に、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法を提供することが出来る。
図1は、従来プロセスにおける、結晶構造変化の一例を示す説明図である。図1(A)は、金属複合水酸化物(前駆体)が有する、空間群P3-ml(三方晶)の結晶構造、図1(B)は、金属複合酸化物(中間物)が有する、空間群Fm3m(立方晶)の結晶構造、図1(C)は、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)が有する、空間群R3-m(菱面体晶)の結晶構造の概略図である。 図2は、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の概略を示す工程図である。 本発明に係る、X線回折法(XRD)により得られた、リチウム仮焼物の化合物同定結果を示すグラフである。 本発明に係る、リチウムイオン二次電池の評価により得られた、充放電曲線を示すグラフである。 本発明に係る、リチウムイオン二次電池の評価により得られた、dQ/dV曲線を示すグラフである。 本発明に係る、X線回折法(XRD)により得られた、リチウム金属複合酸化物の(003)ピーク、(104)ピークを示すグラフである。 本発明に係る、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた、リチウム金属複合酸化物の粒子形状を示す観察画像である。 本発明に係る、レーザー回折・散乱法により得られた、リチウム金属複合酸化物の粒度分布を示すグラフである。 本発明に係る、リチウムイオン二次電池の評価に用いたコイン電池の説明図である。
以下、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」とも称する)、及び、その製造方法について、1~5の記載順で、詳細に説明する。本発明は、以下に記載する実施態様のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者の知識に基づいて実施態様を変更することが出来る。
1.プリカーサーと正極活物質の結晶整合性
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
3.リチウムイオン二次電池用正極活物質
4.リチウムイオン二次電池
5.1~4に関する評価
1.プリカーサーと正極活物質の結晶整合性
リチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法においては、リチウム金属複合酸化物の原料である金属複合水酸化物(例えば、Ni(OH)、(NiMnCo)(OH)、(NiCoAl)(OH)など)を、一旦、金属複合酸化物(例えば、NiO、(NiMnCo)O、(NiCoAl)Oなど)を含む形態とし、それからリチウム化合物(例えば、LiOH、LiCOなど)と共に焼成して、リチウム金属複合酸化物(例えば、LNO、NMC、NCAなど)を得る方法がある。
ところが、この従来の工程では、図1に示す一例の通り、金属複合水酸化物(前駆体)(以下、「前駆体」、「プリカーサー」とも称する)、金属複合酸化物(以下、「中間物」とも称する)、リチウム金属複合酸化物(以下、「正極活物質」とも称する)に関して、それぞれの結晶構造に着目した場合、空間群P3-ml(三方晶)の金属複合水酸化物(前駆体)であるNi(OH)から、結晶系がかなり異なる空間群Fm3m(立方晶)の金属複合酸化物(中間物)NiOを経由し、再び、結晶系が金属複合水酸化物(前駆体)に類似する構造に戻る形で、空間群R3-m(菱面体晶)のリチウム金属複合酸化物(正極活物質)LiNiOを得ていたことから、最終的なリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の結晶構造に対して、大きな負荷が加わる条件となっていた。ここで、図1(A)は、金属複合水酸化物(前駆体)が有する、空間群P3-ml(三方晶)の結晶構造、図1(B)は、金属複合酸化物(中間物)が有する、空間群Fm3m(立方晶)の結晶構造、図1(C)は、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)が有する、空間群R3-m(菱面体晶)の結晶構造の概略図である。
この結晶構造の変化がリチウム金属複合酸化物(正極活物質)に及ぼす悪影響として、遷移金属がリチウムイオンサイトへ移行するカチオンミキシングの発生が考えられ、リチウムイオンの固相内の拡散を阻害し、拡散抵抗を増大させるほか、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)の低下が懸念された。
そこで、金属複合水酸化物(前駆体)から、直接、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)が製造可能であれば、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の結晶構造に対する負荷を、大幅に低減させることが出来ると考えられる。
そして本発明者は、リチウムイオン二次電池用正極活物質の更なる高容量化について、鋭意研究を行った結果、リチウム金属複合酸化物の原料である金属複合水酸化物が、製造過程で金属複合酸化物を含まない状態、即ち、金属複合酸化物の形態を経由せず、直接、リチウム化合物と反応することにより、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れたリチウムイオン二次電池(以下、単に「二次電池」、「電池」とも称する)を得るためのリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法を、新たに提供出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
以下、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法について、図を用いながら説明する。本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は図2に示すように、晶析工程S1、乾燥工程S2、混合工程S3、仮焼工程S4、焼成工程S7を有する。ここで、仮焼工程S4と焼成工程S7の間に冷却工程S5及び第一解砕工程S6を有してもよく、焼成工程S7の後に第二解砕工程S8を有してもよい。以下、各工程について(2-1)~(2-3)の記載順で説明する。
(2-1)金属複合水酸化物(前駆体)の製造
(2-2)リチウム仮焼物の製造
(2-3)リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の製造
(2-1)金属複合水酸化物(前駆体)の製造
金属複合水酸化物(前駆体)の製造では、以下に示す1)の晶析工程S1及び2)の乾燥工程S2を行い、3)の金属複合水酸化物(前駆体)を製造する。
1)晶析工程S1
まず、原料溶液として、ニッケル、及び、任意で添加される元素M(M)を含む金属化合物の水溶液を作製する。金属化合物の水溶液は、金属化合物を、水温が30℃程度の水中に溶解させることにより、容易に作製することが出来る。金属化合物としては、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、例えば、金属の硫酸塩、水和物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。金属化合物の水溶液における金属化合物の濃度は、特に限定されないが、通常、1.0~2.6mol/Lである。なお特に明記の無い限り、明細書等における「~」は以上、以下の範囲を示す。
次に、金属化合物の水溶液を、反応槽内に注入された40~60℃の水中に添加し、後述する様に、pHや、アンモニウムイオン(NH )濃度を調整することにより、粒子を晶析させる。また、粒子を晶析させる際には、一次粒子の凝集による二次粒子の生成が併行して進行する。晶析における温度は、金属複合水酸化物(前駆体)の粗大化を抑制する観点から、40℃以上であることが好ましく、金属複合水酸化物(前駆体)の微小化を抑制する観点から、60℃以下であることが好ましい。なお、晶析においては、粒子を効率良く晶析させる観点から、反応槽内の内容物を十分に撹拌することが好ましい。
晶析における雰囲気(反応雰囲気)は、不活性雰囲気であり、好ましくは酸素濃度を2容量%以下、より好ましくは酸素濃度を1容量%以下とすることが必要になる。即ち、酸素を殆ど含まない、窒素やアルゴンなどの不活性ガスからなる雰囲気とすることが好ましく、反応槽内の内容物の表面に、これらの不活性ガスを吹き付け、内容物と酸素との接触を完全に遮断することが、特に好ましい。晶析における雰囲気を、この様な不活性雰囲気に制御することにより、高密度で適度な粒径を有する二次粒子を得ることが出来る。更に、水酸化ナトリウム水溶液などのpH調整剤で、反応槽内の水のpHを、11.0~12.5に調整しながら、金属化合物の水溶液、及び、アンモニウムイオン(NH )濃度を調整するためのアンモニア水を、反応槽内に添加することが好ましい。晶析におけるpHは、正極活物質に残存する硫酸塩の濃度を低下させ、電池の出力特性を向上させる観点から、11.0以上であることが好ましく、金属複合水酸化物(前駆体)が小さくなり過ぎることを抑制する観点から、12.5以下であることが好ましい。晶析におけるアンモニウムイオン(NH )濃度は、晶析処理を安定化させる観点から、好ましくは5~30g/L、より好ましくは10~20g/Lである。
2)乾燥工程S2
晶析工程S1で得られた、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを含むスラリーを、例えば、フィルタープレスなどの濾過装置で固液分離し、回収された固体の金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを、洗浄水で洗浄することにより、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキから、不純物を除去することが出来る。
水洗された金属複合水酸化物(前駆体)ケーキの表面に、水分が付着していることから、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを、乾燥機で乾燥させることが好ましい。乾燥機としては、例えば、静置式乾燥機、流動式乾燥機、気流式乾燥機などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。乾燥機として、加熱式乾燥機を用いる場合、乾燥雰囲気中で炭素ガスを発生しない、電気加熱式乾燥機であることが好ましい。
金属複合水酸化物(前駆体)ケーキの乾燥温度は、乾燥効率を高める観点から、好ましくは100℃ 以上、より好ましくは120℃以上であり、金属複合水酸化物(前駆体)の劣化を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。金属複合水酸化物(前駆体)ケーキの乾燥時間は、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキの乾燥温度などにより異なるので、一概には決定することが出来ないことから、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキの乾燥温度などに応じ、適宜決定することが好ましいが、通常、1~10時間程度である。
3)金属複合水酸化物(前駆体)
乾燥工程S2で得られた金属複合水酸化物(前駆体)の平均粒子径は、金属複合水酸化物(前駆体)の充填密度を高めることにより、電池容量(体積当たりの充放電容量)を高める観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、正極活物質の比表面積を高め、電池の出力特性を向上させる観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下である。
金属複合水酸化物(前駆体)の組成は、リチウムイオン二次電池に用いた際、電池容量(充放電容量)及びクーロン効率(充放電効率)などの電池特性に優れた、後述する一般式(B)で表されるリチウムイオン二次電池用正極活物質を得る観点から、一般式(A):Ni1-x(OH)(式中、xは、0≦x≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)で表される金属複合水酸化物(前駆体)であることが好ましい。
なお、一般式(A)で表される金属複合水酸化物(前駆体)において、これを構成するニッケル及び添加元素Mの組成範囲およびその臨界的意義は、後述の一般式(B)で表されるリチウム金属複合酸化物(正極活物質)と同様となる。このため、これらの事項について、ここでの説明は省略する。
また、図1に示すように、金属複合水酸化物(前駆体)は空間群P3-ml(三方晶)の結晶構造を有する。なお、金属複合水酸化物(前駆体)を酸化焙焼等して得られる金属複合酸化物(中間物)は、金属複合水酸化物(前駆体)と異なる結晶構造である、空間群Fm3m(立方晶)の結晶構造を有する。また、上記一般式(B)における元素Mは三方晶におけるNiの位置に存在し、上記一般式(B)における元素Mのモル比「x」の値が0.20以下において、金属複合水酸化物(前駆体)は空間群P3-ml(三方晶)の結晶構造を有する。なお元素Mを添加した金属複合酸化物(中間物)は空間群Fm3m(立方晶)の結晶構造を有する。
上記晶析工程S1及び乾燥工程S2により、金属複合水酸化物(前駆体)粒子が得られる。
(2-2)リチウム仮焼物の製造
リチウム仮焼物の製造では、以下に示す1)の混合工程S3及び2)の仮焼工程S4を行い、リチウム仮焼物を製造する。また、2)の仮焼工程S4後に3)の冷却工程S5及び4)の第一解砕工程S6を行うことも出来る。
リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の原料として、金属複合水酸化物(前駆体)、及び、リチウム化合物が用いられるが、本発明では、金属複合酸化物(中間物)の形態を経由せず、直接、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物が反応し、リチウム仮焼物が得られる。即ち、本発明では焙焼により金属複合水酸化物(前駆体)を金属複合酸化物(中間物)に変化させることをしない。そして、リチウム仮焼物の製造では後述するリチウム金属複合酸化物(正極活物質)を得るために、金属複合酸化物(中間物)を含まない状態での1段目の熱処理が仮焼工程S4において行われる。
1)混合工程S3
混合工程S3では、上述の金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を製造する。
(a)リチウム化合物
リチウム化合物としては、例えば、炭酸リチウム(LiCO、融点:723℃)、水酸化リチウム(LiOH、融点:462℃)、硝酸リチウム(LiNO、融点:261℃)、塩化リチウム(LiCl、融点:613℃)、硫酸リチウム(LiSO、融点:859℃)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのリチウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのリチウム化合物の中では、取り扱いが容易であり、品質が定性し、硫酸根、塩素根、硝酸根などの不純物の残存が少ないことから、水酸化リチウム、及び、炭酸リチウムが好ましいが、より好ましいのは水酸化リチウムである。また、後述する仮焼温度の観点からも水酸化リチウムが好ましい。また、リチウム化合物の最大粒子径は、10μm以下であることが好ましく、リチウム化合物の平均粒子径は、5μm以下であることが好ましい。
(b)リチウム混合物の製造
上述したように混合工程S3では、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物を混合することで、リチウム混合物が得られる。また、混合装置としては、シェーカーミキサーなどを用いることが出来る。
金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物は、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)に含まれている金属元素の原子数の合計量、及び、リチウムの原子数との比の値(以下、単に「比の値」とも称する。即ち、後述するLi/Me)が、0.95~1.30となる様に、混合することが好ましい。「比の値」の上限値は、粒子径、及び、結晶子径の粗大化を抑制し、サイクル特性などを向上させる観点から、より好ましくは0.97~1.20、特に好ましくは0.98~1.05である。「比の値」で、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物を混合した場合、リチウムサイトである3aサイトに、リチウム原子が取り込まれることから、電池特性を向上させることが出来る。
ここで、上記のサイトは、結晶学的に等価な格子位置を意味する。格子位置に原子が存在することを、「サイトが占有される」と言い、占有されたサイトは、「占有サイト」と称される。リチウムニッケル複合酸化物(ニッケル酸リチウム、LiNiO、LNO)を例に挙げると、LiNiOには、3つの占有サイトが存在する。3つの占有サイトは、それぞれ、リチウムサイト、ニッケルサイト、及び、酸素サイトと称されたり、3aサイト、3bサイト、及び、6cサイトと称されたりする。
2)仮焼工程S4
仮焼工程S4では、混合工程S3で得られたリチウム混合物を、大気雰囲気中、又は、酸化性雰囲気中で仮焼することにより、一次粒子が凝集した二次粒子を含有する、リチウム仮焼物が得られる。また、仮焼工程S4では、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム混合物を直接反応させ、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)を生成する。そして、金属複合水酸化物(前駆体)から、結晶構造が類似するリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の生成を、結晶系が異なる金属複合酸化物(中間物)を経由せずに行うことが出来る。このように、仮焼工程S4では反応前後において、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の結晶構造を整合させることで、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の結晶構造に対する負荷を、大幅に低減させることが出来る。
酸化性雰囲気における酸素濃度は、18~100容量%であることが好ましい。また、リチウム混合物の仮焼温度は、金属複合水酸化物(前駆体)が、結晶系がかなり異なる金属複合酸化物(中間物)を経由せず、直接、リチウム化合物と反応して、金属複合水酸化物(前駆体)と結晶系が類似するリチウム金属複合酸化物(正極活物質)を生成するために、300~500℃であることが好ましく、400℃~480℃であることがより好ましい。リチウム化合物の融点付近あるいは反応温度付近で仮焼を行うことが好ましく、金属複合水酸化物(前駆体)へのリチウムの拡散が十分に行われ、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物との反応を促進することが出来る。300℃未満では、金属複合水酸化物(前駆体)の分解が進み難く、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物との反応が抑制される可能性がある。500℃を超えると、金属複合水酸化物(前駆体)から金属複合酸化物(中間物)への転換が進み、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物との反応が抑制される可能性がある。なお、リチウム混合物の仮焼時間は、リチウム混合物の仮焼温度などによって異なり、一概には決定することが出来ないため、リチウム混合物の仮焼温度などに応じて、適宜決定することとなるが、通常、好ましくは1~10時間程度、より好ましくは2~8時間程度である。
3)冷却工程S5
更に、金属複合水酸化物(前駆体)が、金属複合酸化物(中間物)を経由せず、直接、リチウム化合物と反応するために、仮焼工程S4から、後工程である焼成工程S7に移る際には、仮焼工程S4の後、一旦、室温にまで冷却することが好ましい。この冷却工程S5を行うことで、より確実に金属複合酸化物(中間物)の生成を抑制することが出来る。また、詳細な理由は不明だが、後述する焼成工程S7における反応をより穏やかに進めることが出来る。
4)第一解砕工程S6
仮焼工程S4により得られたリチウム仮焼物は、凝集、又は、軽度の焼結を生じている場合がある。この様な場合には、リチウム仮焼物の凝集体、又は、焼結体を解砕することが好ましい。この第一解砕工程S6を行うことで、後工程である焼成工程S7において、リチウムと、ニッケルなどの遷移金属との反応性を向上させ、より確実に金属複合酸化物(中間物)の生成を抑制することが出来る。また、これにより、後工程である焼成工程S7において、得られるリチウム金属複合酸化物の凝集体、又は、焼結体の発生を低減することが出来る。なお、解砕とは、仮焼時に、二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた、複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体を殆ど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。解砕の方法は、公知の手段を用いることができ、例えば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することが出来る。この際には、二次粒子を破壊しない様、解砕力を適切な範囲に制御することが好ましい。
上記混合工程S3、仮焼工程S4により、また、混合工程S3、仮焼工程S4、冷却工程S5、第一解砕工程S6により、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)が得られる。
(2-3)リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の製造
リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の製造では、以下に示す1)の焼成工程S7を行い、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)を製造する。また、1)の焼成工程S7後に、2)の第二解砕工程S8を行うことも出来る。
1)焼成工程S7
焼成工程S7では、リチウム仮焼物を、大気雰囲気中、又は、酸化性雰囲気中で焼成することにより、一次粒子が凝集した二次粒子を含有する、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)が得られる。即ち、本発明では、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)を得るために、金属複合酸化物(中間物)を含まない状態での2段目の熱処理が焼成工程S7において行われる。
酸化性雰囲気における酸素濃度は、18~100容量%であることが好ましい。リチウム仮焼物の焼成温度は、未反応の余剰リチウム量を低減させ、結晶性を向上させる観点から、好ましくは650℃以上、より好ましくは700℃以上であり、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の粒子間で、焼結が過度に進行することを抑制する観点から、900℃以下であることが好ましい。リチウム仮焼物の焼成時間は、リチウム仮焼物の焼成温度などによって異なり、一概には決定することが出来ないため、リチウム仮焼物の焼成温度などに応じて、適宜決定することとなるが、通常、好ましくは1~20時間程度、より好ましくは5~15時間程度である。
以上の様にして、リチウム仮焼物を焼成することにより、リチウム、ニッケルを含むリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の一次粒子が形成され、一次粒子が凝集した二次粒子を含有する、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)粒子が得られる。上記の二次粒子は、通常、球状ないし楕円球状を有する。
2)第二解砕工程S8
焼成工程S7によって得られたリチウム金属複合酸化物(正極活物質)は、凝集、又は、軽度の焼結が生じている場合がある。この様な場合には、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の凝集体、又は、焼結体を解砕することが好ましい。これにより、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を、好適な範囲に制御することが出来る。なお、解砕とは、焼成時に、二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた、複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギーを投入して、二次粒子自体を殆ど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。解砕の方法は、公知の手段を用いることができ、例えば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することが出来る。なお、この際、二次粒子を破壊しない様に、解砕力を適切な範囲に制御することが好ましい。
上記焼成工程S7により、また、焼成工程S7、第二解砕工程S8により、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)粒子が得られる。
3.リチウムイオン二次電池用正極活物質
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質は、リチウムとニッケルを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は、一次粒子と二次粒子の両者からなるリチウム金属複合酸化物であって、リチウム金属複合酸化物は、リチウムとリチウム以外の金属のモル比が0.95~1.30であり、リチウム金属複合酸化物を含む正極、金属リチウムを含む負極を用いて、リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に電池容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成した時、電圧4.10~4.30Vで得られる充電ピーク強度が500~1100mAh/g/Vであり、電圧3.35~3.55Vで得られる放電ピーク強度が150~300mAh/g/Vである、ことを特徴とする。以下詳細を説明する。
1)組成
本発明の一実施形態に係るリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の組成は、一般式(B):LiNi1-x2+α(式中、s、x、及び、αは、0.95≦s≦1.30、0≦x≦0.2、及び、-0.1≦α≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)であることが好ましい。上記組成の正極活物質をリチウムイオン二次電池に用いた際、電池容量(充放電容量)など電池特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることが出来る。そして、ニッケル、及び、任意で添加される元素M(M)のモル比(含有量)、並びに、臨界的意義については、以下の通りである。
ニッケル(Ni)は、リチウムイオン二次電池の高電位化、及び、高容量化に寄与する元素であり、その効果を十分に得るために、モル比を示す「1-x」の値を、好ましくは0.80~1.00、より好ましくは0.85~1.00、特に好ましくは0.90~1.00の範囲内とする。「1-x」の値が0.80未満では、リチウムイオン二次電池の充放電容量を向上させることが出来ない。
元素M(M)は、リチウムイオン二次電池の出力特性、サイクル特性、熱安定性、安全性などに寄与する元素であり、任意で添加される。元素Mのモル比を示す「x」の値は0であってもよいが、上述の効果を十分に得るために「x」の値を、好ましくは0を超え0.20以下、より好ましくは0を超え0.15以下、特に好ましくは0を超え0.10以下の範囲内とする。「x」の値が0では、リチウムイオン二次電池の出力特性、サイクル特性、熱安定性、安全性などを向上させることが出来ない。一方、「x」の値が0.20を超えると、ニッケルのモル比が減少し、その効果を十分に得ることが出来なくなる。この様な元素M(M)としては、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ケイ素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、硫黄(S)から選択される1種以上を用いることが出来る。
Li含有量を示すsは、0.95≦s≦1.30である。また、sは0.97≦s≦1.20が好ましく、0.98≦s≦1.05がより好ましい。Li含有量をかかる範囲にすることで、正極活物質の粒子径、及び、結晶子径の粗大化を抑制することが出来る。そして、正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池において、サイクル特性など電池特性を向上させることが出来る。
上記一般式(B)におけるαは、化学量論比のLi(Ni、M)Oに対する酸素の過不足を表している。αが前記の数値範囲であれば、結晶構造の欠陥が少ない状態であり、適切な結晶構造により、高い充放電容量や出力特性を得ることが出来る。
2)dQ/dV曲線のピーク特性
リチウム金属複合酸化物を含む正極、金属リチウムを含む負極を用いて、リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に電池容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成した時、電圧4.10~4.30Vで得られる充電ピーク強度が500~1100mAh/g/Vであり、電圧3.35~3.55Vで得られる放電ピーク強度が150~300mAh/g/Vである。各種検討することにより本発明者らは、正極活物質の充電ピーク強度及び放電ピーク強度と、優れた電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に関連性があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
3)粒径及び粒子構造
上記のリチウム金属複合酸化物(正極活物質)における一次粒子の粒子径は、特に限定されないが、通常、0.2~1μm程度である。また、二次粒子の粒子径は、特に限定されないが、通常、3~30μm程度である。リチウム金属複合酸化物(正極活物質)は、本質的には二次粒子で構成されるが、二次粒子以外に一次粒子が微量で含まれることがある。
4)結晶子径
正極活物質の結晶子径は、(003)面のX線回折ピークから得られる結晶子径が、800Å以上1600Å以下が好ましい。正極活物質では、結晶子径を800Å以上1600Å以下とすることにより、正極活物質を構成するリチウムニッケル複合酸化物の結晶性を高くすることが出来る。そして、リチウムイオン二次電池の電池容量を増加させることが出来る。正極活物質の結晶子径が800Å未満の場合では、結晶成長が不十分であり容量や出力が低下する可能性がある。一方、結晶子径が1600Åを超えると、カチオンミキシングにより電池特性が低下する可能性がある。
5)Li席占有率
正極活物質のLi席占有率は、97%以上が好ましい。このような高いリチウム席占有率を有することにより、このリチウム金属複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池において、カチオンミキシングの発生を抑制し、また、高い充放電容量を実現することが可能となる。また、これらのLi席占有率が97%未満の場合、カチオンミキシング発生が発生している可能性がある。
6)Me席占有率
正極活物質のMe席占有率は、97.2以上が好ましい。Me席占有率は、電池特性と相関があり、Me席占有率が高い程、良好な電池特性を示す。また、Me席占有率の上限は特に限定されず、Me席占有率が100%、すなわち、すべてのMe席にMeが存在する状態も本発明の範囲に含められる。また、これらのMe席占有率が97.2%未満の場合、カチオンミキシング発生が発生している可能性がある。
7)比表面積
正極活物質の比表面積は、0.25以上1.50m/g以下が好ましい。比表面積がこのような範囲にある正極活物質は、電解液との接触面積が大きく、これを用いたリチウムイオン二次電池の充放電容量を改善することが出来る。これに対して、正極活物質の比表面積が0.25m/g未満では、リチウムイオン二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することができず、十分な充放電容量が得られない場合がある。一方、正極活物質の比表面積が1.50m/gを超えると、電解液との反応性が高くなりすぎるため、熱安定性が低下する場合がある。
8)結晶構造
正極活物質は、図1(C)に示すように空間群R3-mの菱面体晶の結晶構造を有する。また、上記一般式(B)における元素Mは菱面体晶におけるNiの位置に存在し、上記一般式(B)における元素Mのモル比「x」の値が0.20以下において、正極活物質は空間群R3-mの菱面体晶の結晶構造を有する。上記一般式(B)における元素Mのモル比「x」の値が0.20を超えると、元素Mの種類(組み合わせ)によっては、スピネル構造等の第2の相が生成する可能性があるため、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の結晶性を整合させる観点からは、「x」の値は0.20以下であることが好ましい。
9)格子定数
正極活物質は、a軸の格子定数が2.8450Å以上、c軸の格子定数が14.170Å以上であることが好ましい。a軸およびc軸の格子定数を上記範囲とすることで、結晶格子の歪が大きくなくなり過ぎることを抑制して高い電池容量を維持することが出来る。電池容量の観点から、a軸の格子定数は2.8756~2.8900Åであることがより好ましく、c軸の格子定数は14.198~14.250Åであることがより好ましい。
4.リチウムイオン二次電池
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質を含有する正極を有することを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池の構成要素は、一般に用いられているリチウムイオン二次電池の構成要素と同様であればよく、特に限定されるものではない。例えば、本発明のリチウムイオン二次電池が、非水系電解質リチウムイオン二次電池である場合、正極、負極、セパレーター、及び、非水系電解液を備えている。また、本発明のリチウムイオン二次電池が、全固体リチウムイオン二次電池である場合、正極、負極、及び、固体電解質を備えている。
以下で説明する、本発明のリチウムイオン二次電池の実施態様は、例示であり、当該実施態様に、当業者の知識に基づいて、種々の変更、又は、改良を施した実施態様は、本発明の範囲内に包含される。
(4-1)非水系電解質二次電池
1)正極
上記のリチウムイオン二次電池用正極活物質のほか、導電剤と結着剤を混合して正極合剤とし、必要に応じて、活性炭や、粘度調整などを目的として有機溶媒を添加し、これを更に混練して正極合剤ペーストを作製する。その他、正極合剤中の各材料の混合比も、リチウムイオン二次電池の性能を決定する重要な要素となる。正極合剤中の各材料の混合比は、特に限定されないが、一般的なリチウム二次電池の正極と同様、有機溶媒を除いた正極合剤の固形分における全質量100質量%に対し、それぞれ正極活物質を60~95質量%、導電剤を1~20質量%、結着剤(バインダー)を1~20質量%含有することが好ましい。
得られた正極合剤ペーストは、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して有機溶媒を揮発(蒸発)させる。必要に応じて、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。この様にしてシート状の正極が作製されるが、シート状の正極は、必要応じて、適当な大きさに裁断し、所望の条件における電池の製造に供することが出来る。但し、正極の作製方法は、上記のものに限られることなく、他の方法に依ってもよい。
上記の正極の作製において、導電剤には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることが出来る。また、結着剤には、正極活物質の粒子を繋ぎ止める役割を果たすものとして、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴムなどの含フッ素樹脂、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂などを用いることが出来る。更には、必要に応じて、正極活物質、導電剤、活性炭を分散させると共に、結着剤を溶解する有機溶媒を正極合剤に添加し、混練して正極合剤ペーストを作製してもよい。添加する有機溶媒には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などを用いることが出来る。その他、正極合剤には、電気二重層の容量を増加させるために、活性炭を添加してもよい。
2)負極
負極には、金属リチウム、リチウム合金のほか、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な負極活物質に結着剤を混合し、適当な有機溶媒を加えてペースト状にした負極合剤を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥させて、必要に応じて、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧形成したものを使用する。負極活物質には、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂などの有機化合物焼成体や、コークスなどの炭素物質の粉状体を用いることが出来る。この場合、負極結着剤には、正極と同様に、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの含フッ素樹脂が用いられ、負極活物質、結着剤を分散させる有機溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などを用いることが出来る。
3)セパレーター
正極と負極の間には、セパレーターを配置する。セパレーターは、正極と負極を分離して、電解質を保持するためのものであり、ポリエチレンや、ポリプロピレンなどで出来た薄い膜で、かつ、微少な穴を多数有する膜などを用いることが出来る。
4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を、有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)や、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、トリフルオロプロピレンカーボネート(TFPC)などの環状カーボネートや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネートや、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)、ジメトキシエタン(DME)などのエーテル化合物のほか、エチルメチルスルホンや、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物から選ばれる1種を、単独で、或いは、2種以上を混合して用いることが出来る。支持塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)のほか、テトラフルオロホウ酸化リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(CFSO)など、及びそれらの複合塩を用いることが出来る。更に、非水系電解液は、ラジカル補足剤、界面活性剤及び難燃剤などを、含んでいてもよい。
5)形状及び構成
これまで説明してきた、正極、負極、セパレーター、非水系電解液で構成される、本発明におけるリチウムイオン二次電池の形状は、円筒型、積層型など、種々のものとすることが出来る。いずれの形状を取る場合であっても、正極、及び、負極に、セパレーターを介して積層させて電極体とし、この電極体に非水系電解液を含浸させる。正極集電体と、外部に通ずる正極端子との間、並びに、負極集電体と、外部に通ずる負極端子との間に、集電用リードなどを用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して、電池を完成させることが出来る。
(4-2)全固体電池
1)正極
上記の正極活物質粉末と、LiS-P系ガラスやLi10GeP12などの硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を、適量比(例えば、重量比で7:3)で混合し、この混合物を正極とする。
2)負極
負極には、金属リチウムやリチウム-インジウム合金など、或いは、リチウムイオンを吸蔵、及び、脱離出来る負極活物質に、上記の硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質粉末を、適量比(例えば、重量比で7:3)で混合した混合物を使用する。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂などの有機化合物焼成体、コークスなどの炭素物質の粉状体を用いることが出来る。
3)固体電解質
固体電解質としては、イオン伝導度が10-4 S/cm以上を有する、良好なリチウムイオン伝導体であれば、特に限定する必要は無い。例えば、硫化物系リチウムイオン伝導性固体電解質として、LiS-P系ガラス、Li10GeP12、LiPO-LiS-SiS系ガラスなどを用いることが出来る。
4)形状及び構成
これまで説明してきた、正極、負極、固体電解質で構成される、本実施形態の全固体電池の形状は、円形型、シート型、種々のものとすることが出来る。いずれの形状を取る場合であっても、正極、及び、負極を、固体電解質を介した電極体とし、得られた電極体に、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、及び、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、全固体電池を完成させる。
(4-3)リチウムイオン二次電池の特性
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述したように、本発明の正極活物質を正極材料として用いているため、電池容量(充放電容量)、及び、クーロン効率(充放電効率)に優れる。
5.1~4に関する評価
(5-1)試料の評価方法
1)組成
組成の評価方法は、特に限定されないが、例えば、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法による化学分析法から、組成を求めることが出来る。また、測定には、例えば、マルチ型ICP発光分光分析装置である、ICPE-9000(株式会社島津製作所製)を用いることが出来る。なお、得られた結果から、Li/Me(リチウム金属複合酸化物(正極活物質)に含まれている金属元素の原子数の合計量(Me)、及び、リチウムの原子数(Li)との比の値)を、求めることが出来る。
2)化合物同定
化合物の同定方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、化合物を同定することが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、試料ホルダーに採取した試料に対し、線源としてCuKα線を使用して、測定速さが2°/min、管電圧が45kV、管電流が40mA、測定範囲が2θ=10~100°の条件で測定する。そして、ICDD(International_Centre_for_Diffraction_Data)におけるPDF(Powder_Diffraction_File)データベースを用いて、化合物の標準回折パターンと試料の回折パターンを、照合することにより、同定することが出来る。
3)席占有率
席占有率(Li、Me)の評価方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、席占有率を求めることが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、Li席占有率は、リチウム金属複合酸化物のリチウム(Li)が、層状構造のリチウム層(Li席)中に占める、リチウムの存在割合を示し、金属(Me)席占有率は、リチウム金属複合酸化物のニッケル、及び、任意で添加される元素M(M)が、層状構造のメタル層(Me席)中に占める、金属元素の存在割合を示すもので、測定した回折パターンについて、例えば、一般的に広く用いられているRIETAN-FPのほか、High_Score_Plus(スペクトリス株式会社製)、JADE_PRO(Materials_Data社製)などの解析プログラムを用いて、リートベルト解析を行うことより、求めることが出来る。
4)格子定数
格子定数(a軸長、c軸長)の評価方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、格子定数(a軸長、c軸長)を求めることが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、測定した回折パターンについて、例えば、一般的に広く用いられているRIETAN-FPのほか、High_Score_Plus(スペクトリス株式会社製)、JADE_PRO(Materials_Data社製)などの解析プログラムを用いて、リートベルト解析を行うことより、求めることが出来る。
5)酸素座標Z
酸素座標Zの評価方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、酸素座標Zを求めることが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、測定した回折パターンについて、例えば、一般的に広く用いられているRIETAN-FPのほか、High_Score_Plus(スペクトリス株式会社製)、JADE_PRO(Materials_Data社製)などの解析プログラムを用いて、リートベルト解析を行うことより、求めることが出来る。
6)スラブ厚
スラブ厚(Li-O、Me-O)の評価方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、スラブ厚(Li-O、Me-O)を求めることが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、測定した回折パターンについて、例えば、一般的に広く用いられているRIETAN-FPのほか、High_Score_Plus(スペクトリス株式会社製)、JADE_PRO(Materials_Data社製)などの解析プログラムを用いて、リートベルト解析を行うことより、求めることが出来る。
7)結晶子径
結晶子径((003)、(104))の評価方法は、特に限定されないが、例えば、X線回折法(XRD)により、結晶子径((003)、(104))を求めることが出来る。また、測定には、例えば、X線回折装置(XRD)である、X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いることが出来る。即ち、測定した回折パターンについて、例えば、一般的に広く用いられているRIETAN-FPのほか、High_Score_Plus(スペクトリス株式会社製)、JADE_PRO(Materials_Data社製)などの解析プログラムを用いて、リートベルト解析を行うことより、求めることが出来る。
8)平均粒子径
平均粒子径の評価方法は、特に限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布から、平均粒子径を求めることが出来る。また、測定には、例えば、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置である、マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いることが出来る。
9)比表面積
比表面積の評価方法は、特に限定されないが、例えば、BET多点法やBET1点法を用いた窒素ガス吸着・脱離法により、比表面積を求めることが出来る。また、測定には、例えば、比表面積測定装置である、マックソーブ1200シリーズ(株式会社マウンテック製)を用いることが出来る。
10)粒子形状
粒子形状の評価方法は、特に限定されないが、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像観察により、粒子形状を確認することが出来る。また、測定には、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)である、JSM-6360LA(日本電子株式会社製製)を用いることが出来る。
11)第一原理計算によるシミュレーション
第一原理計算によるシミュレーションにより、カチオンミキシングが発生しない場合、カチオンミキシングが発生した場合の構造計算を行い、格子定数(a軸長、c軸長)、酸素座標Z、スラブ厚(Li-O、Me-O)を算出した。そして、上記方法にて作成した試料にて測定した格子定数(a軸長、c軸長)、酸素座標Z、スラブ厚(Li-O、Me-O)と比較し、カチオンミキシング発生の有無を確認した。シミュレーションには、第一原理電子状態計算プログラムとしてMedeA-VASP(Materials_Design社製)を用い、密度汎関数理論(DFT)に基づく平面波-擬ポテンシャル法(PAW法、Projector_Augmented_Wave_Methods)を用いた。
(5-2)電池の評価方法
1)電池容量(充放電容量)
電池容量(充放電容量)の評価方法は、特に限定されないが、後述する評価用電池(図9に示す、コイン型電池10)を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open_Circuit_Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとし、カットオフ電圧4.30Vまで充電することにより、充電容量を求めることができ、1時間の休止を経て、カットオフ電圧3.00Vまで放電することにより、放電容量を求めることが出来る。また、測定には、例えば、マルチチャンネル電圧/電流発生器である、R6741A(株式会社アドバンテスト製)を用いることが出来る。なお、得られた結果から、横軸に電圧を示し、縦軸に電池容量を電圧で微分した値である、dQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)が作成でき、かつ、充電容量に対する放電容量の割合である、クーロン効率(充放電効率)を求めることが出来る。
以下、参考例、実施例、及び、比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。また、下記の実施例、及び、比較例では、特に断りがない限り、富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬類を用いた。更に、本発明は、下記の参考例、実施例、及び、比較例より、何ら制限されるものではない。
また、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)において、カチオンミキシングが発生した場合の傾向を確認するため、参考例として、第一原理計算によるシミュレーションを行い、実施例、比較例との比較を行った。
(参考例1)
第一原理電子状態計算プログラムであるMedeA-VASP(Materials_Design社製)を用いて、密度汎関数理論(DFT)に基づく平面波-擬ポテンシャル法(PAW法、Projector_Augmented_Wave_Methods)によるシミュレーションを行い、空間群R3-m(菱面体晶)のリチウム金属複合酸化物として、リチウムニッケル複合酸化物(ニッケル酸リチウム、LiNiO、LNO)における、X線回折法(XRD)のプロファイルを予見した。
(参考例2)
空間群R3-m(菱面体晶)のリチウムニッケル複合酸化物(ニッケル酸リチウム、LiNiO、LNO)において、リチウム(3a)サイトにニッケルが混入した場合、即ち、カチオンミキシングが発生した場合の構造計算として、リチウム(3a)サイトのリチウム原子の8%を、ニッケル原子に置換したこと以外は、参考例1と同様の操作を行った。
(実施例1)
(1)金属複合水酸化物(前駆体)の製造
はじめに、反応槽内に水を供給し、撹拌速度120rpmで撹拌しつつ、その温度を50℃に制御すると共に、窒素ガスを導入し、酸素濃度が0.7容量%以下の不活性雰囲気とした。この状態で、反応槽内に、硫酸ニッケルを含む水溶液を、ポンプを用いて一定流量で供給した。この際、反応槽内の内容物(反応水溶液)の液温25℃基準におけるpHが11.6に、アンモニウムイオン(NH )濃度が10g/Lに維持される様に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適時供給し、金属複合水酸化物(前駆体)粒子を晶析させた。その後、反応槽からオーバーフローした金属複合水酸化物(前駆体)を含むスラリーをフィルタープレスに投入し、加圧濾過することにより、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを回収した。
この金属複合水酸化物(前駆体)ケーキに、その質量の10倍量となる5質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて撹拌し、再びフィルタープレスに投入した後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液と同量の水を送り込み、加圧濾過することにより、金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを洗浄した。洗浄済みの金属複合水酸化物(前駆体)ケーキを、電気加熱式乾燥機を用いて、150℃で、かつ、5時間乾燥することにより、金属複合水酸化物(前駆体)を得た。更に、金属複合水酸化物(前駆体)の一部を採取し、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により、組成を分析した結果、Ni1.00(OH)であることが確認された。
(2)リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の製造
上記の金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物である水酸化リチウムを、リチウムの原子数(Li)とリチウム以外の金属の原子数(Me)の比である「比の値(Li/Me)」が、1.03となる様に秤量し、十分に混合してリチウム混合物を得た。このリチウム混合物を、酸素(酸素濃度:100容量%)気流中、480℃で、かつ、3時間加熱することにより、仮焼(1段目の熱処理)を行なった後、一旦、室温にまで冷却し、得られたリチウム仮焼物に含まれる凝集体を解砕するため、第一(1回目)の解砕を行った。更に、リチウム仮焼物の一部を採取し、X線回折法(XRD)により、化合物同定を行った結果、図3に示す通り、R3-m構造のLiNiO、及び、未反応分のLi(LiCO)に帰属されるピークが検出され、Fm-3m構造のNiOは、検出されなかった。
このリチウム仮焼物を、酸素(酸素濃度:100容量%)気流中、710℃で、かつ、10時間加熱することにより、焼成(2段目の熱処理)を行なった後、室温にまで冷却し、焼成物に含まれる凝集体を解砕するため、第二(2回目)の解砕を行い、最終的にリチウム金属複合酸化物(正極活物質)を得た。更に、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の一部を採取し、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により、組成を分析した結果、Li1.03Ni1.00であることが確認された。
(3)正極活物質の分析
得られた正極活物質について、X線回折測定を行った。測定には、X線回折分析装置X’PertPRO(スペクトリス株式会社製)を用いた。得られたX線回折パターンを用いて、リートベルト解析を行い、Li席占有率、Me席占有率、格子定数、酸素座標Z、スラブ厚及び結晶子径を求めた。リートベルト解析は、解析用ソフトウェア「RIETAN-FP」(フリーウェア)を用いた。なお結晶子径については、図6に示すリチウム金属複合酸化物の(003)ピーク、(104)ピークを基に結晶子径を求めた。
(平均粒子径)
得られた正極活物質の平均粒径は、レーザー回折・散乱法を用いて測定した体積基準分布から求めた。なお、測定にはレーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置である、マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いた。図8に、リチウム金属複合酸化物の粒度分布を示す。
(正極活物質粒子の形状)
また、得られた正極活物質粒子の試料を、樹脂に埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工を行ったものについて、倍率を10,000倍としたSEM観察結果を行った。図7に、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた、リチウム金属複合酸化物の粒子形状を示す。
(比表面積)
得られた正極活物質について、BET1点法による、窒素ガス吸着・脱離法による比表面積の測定を行った。測定には比表面積測定装置である、マックソーブ1200シリーズ(株式会社マウンテック製)を用いた。
(4)コイン型電池の製造
正極活物質を52.5mg、アセチレンブラックを15mg、ポリテトラフルオロエチレンを7.5mg、それぞれ秤量したものを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、図9に示す正極1(評価用電極)を作製した。その作製した正極1を、真空乾燥機中、かつ、120℃で12時間乾燥した。そして、この正極1を用いて、2032型コイン型電池10を、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
負極2には、直径17mm、厚さ1mmの金属リチウムを用い、電解液には、1モルのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレーター3には、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池10は、ガスケット4とウェーブワッシャー5を配置し、正極缶6と負極缶7でコイン型の電池に組み立てた。
(5)電池容量(充放電容量)及びクーロン効率(充放電効率)の測定
作製した電池は24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open_Circuit_Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとし、カットオフ電圧4.30Vまで充電したときの容量を充電容量とした。そして、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を放電容量とした。そして、充電容量に対する放電容量の割合である、クーロン効率(充放電効率)を求めた。また、測定にはマルチチャンネル電圧/電流発生器であるR6741A(株式会社アドバンテスト製)を用いた。
測定時に得られた充放電曲線を図4に示す。そして、得られた充放電曲線を電位で微分して、図5に示すdQ/dV曲線を得た。得られたdQ/dV曲線から、充電ピーク、放電ピークの位置及び強度を決定した。
(実施例2)
金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物である水酸化リチウムを、リチウムの原子数(Li)とリチウム以外の金属の原子数(Me)の比である「比の値(Li/Me)」が、1.00となる様に秤量したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。更に、得られたリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の一部を採取し、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により、組成を分析した結果、Li1.00Ni1.00であることが確認された。
(比較例1)
従来プロセスである、金属複合酸化物(中間物)を経由する方法に従い、上記の金属複合水酸化物(前駆体)を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、600℃で、かつ、2時間加熱することにより、酸化焙焼(リチウム化合物を含まない熱処理)を行い、金属複合酸化物(中間物)を得た。更に、金属複合酸化物(中間物)の一部を採取し、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により、組成を分析した結果、Ni1.00Oであることが確認された。
得られた金属複合酸化物(中間物)とリチウム化合物である水酸化リチウムを混合し、焼成してリチウム金属複合酸化物(正極活物質)を製造したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。更に、得られたリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の一部を採取し、酸分解-ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析法により、組成を分析した結果、Li1.03Ni1.00であることが確認された。
参考例、実施例、比較例の条件を表1に示す。また、参考例、実施例、比較例における、Li/Me、Li席占有率、Me席占有率、格子定数(a軸長、c軸長)、酸素座標Z、スラブ厚(Li-O、Me-O)、結晶子径((003)、(104))、平均粒子径、比表面積を表1に示す。
なお表1の条件について、参考例1の「LiNO」は、リチウム(3a)サイトにニッケルが混入しない場合のシミュレーション条件、参考例2の「8%カチオンミキシング」は、リチウム(3a)サイトのリチウム原子の8%をニッケル原子に置換した場合のシミュレーション条件を示す。また、実施例1及び実施例2の「Ni(OH)前駆体」は、金属複合水酸化物(前駆体)とリチウム化合物を混合し、反応させた条件、比較例1の「NiO中間物」は、金属複合酸化物(中間物)とリチウム化合物混合し、反応させた条件を示す。
Figure 2022037814000002
また実施例、比較例における、dQ/dV曲線における4.10~4.30Vの充電ピーク強度、3.35~3.55Vの放電ピーク強度、充電容量、放電容量、クーロン効率を表2に示す。
Figure 2022037814000003
表1に示されるように、第一原理計算によるシミュレーションを行った、参考例1、及び、2の計算値より、カチオンミキシングが発生した場合には、(1)格子定数(a軸長、c軸長)は、a、c共に小さくなる、(2)酸素座標Zは、大きくなる、(3)スラブ厚(Li-O、Me-O)は、Li-Oが大きくなり、Me-Oが小さくなることが分かる。
これに対して、Li/Meが同じ値となっている、実施例1と比較例1について、それぞれの実験値を比べてみると、比較例1のほうが、上記(1)~(3)の傾向と合致していることが分かった。この結果から、比較例1では、実施例1よりも、カチオンミキシングが顕著に発生しており、言い換えるなら、実施例1では、比較例1よりも、カチオンミキシングを大幅に抑制出来ていることが考えられる。
また、実施例1では、席占有率(Li、Me)が、どちらも比較例1に比べて増加しており、かつ、電池容量(充放電容量)、クーロン効率(充放電効率)などの電池特性が、比較例1よりも向上していることから、カチオンミキシングの抑制効果を裏付ける結果が得られているものと思われる。
更に、表2に示されるように、電池の評価で作成したdQ/dV曲線において、実施例1、及び、2では、比較例1に比べて、(a)4.20V付近(実施例1のみなら、3.70V付近も含め)の充電ピーク強度が小さくなり、高電圧側へシフトする、(b)3.50V付近の放電ピーク強度が大きくなる結果が得られた。特に、(b)の特徴は、放電容量向上の要因であると判断出来る。
また表1から、実施例1及び実施例2におけるリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の比表面積は、比較例1の比表面積より大きくなっていることが分かる。
また表1から、(003)面のX線回折ピークから得られる結晶子径は、比較例1では実施例1及び実施例2より長くなっていることが分かる。
実施例、比較例における、X線回折法(XRD)により得られた、リチウム金属複合酸化物の(003)ピーク、(104)ピークを図6に示す。これらのピークから、実施例の(003)ピーク位置は比較例の(003)ピーク位置に比べ低角側に位置することが分かる。また、実施例1の(003)/(104)ピーク強度比は、比較例1の(003)/(104)ピーク強度比より小さいことが分かる。
実施例、比較例における、走査型電子顕微鏡(SEM)により得られた、リチウム金属複合酸化物の粒子形状を示す観察画像を図7に示す。これらの画像から、実施例、比較例において二次粒子形状は同等だが、実施例の粒子表面は比較例の粒子表面のように平滑でなく、凹凸形状であることが分かる。
なお、上記のように本発明の各実施形態および各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解出来るであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることが出来る。またリチウムイオン二次電池用正極活物質、及び、その製造方法の構成、動作も本発明の各実施形態および各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 晶析工程、S2 乾燥工程、S3 混合工程、S4 仮焼工程、S5 冷却工程、S6 第一解砕工程、S7 焼成工程、S8 第二解砕工程、1 正極(評価用電極)、2 負極、3 セパレーター、4 ガスケット、5 ウェーブワッシャー、6 正極缶、7 負極缶、10 コイン型電池(評価用)

Claims (10)

  1. リチウムとニッケルを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は、前記一次粒子と前記二次粒子の両者からなるリチウム金属複合酸化物であって、
    前記リチウム金属複合酸化物は、前記リチウムとリチウム以外の金属のモル比が0.95~1.30であり、
    前記リチウム金属複合酸化物を含む正極、金属リチウムを含む負極を用いて、リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行い、横軸に電圧を示し、縦軸に電池容量を電圧で微分した値であるdQ/dVを示したグラフ(dQ/dV曲線)を作成した時、電圧4.10~4.30Vで得られる充電ピーク強度が500~1100mAh/g/Vであり、電圧3.35~3.55Vで得られる放電ピーク強度が150~300mAh/g/Vである、
    ことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記リチウム金属複合酸化物は、比表面積が0.25~1.50m/g、(003)結晶子径が800~1600Å、金属(Me)席占有率が97.2~100%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 前記リチウム金属複合酸化物を含む正極、前記金属リチウムを含む負極を用いて、前記リチウムイオン二次電池を組み立て、電圧4.30Vまで充電後、電圧3.00Vまで放電を行った時、得られる放電容量が232~240mAh/g、得られるクーロン効率が90.0~95.0%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 前記リチウム金属複合酸化物が、一般式(B):LiNi1-x2+α(式中、s、x、及び、αは、0.95≦s≦1.30、0≦x≦0.2、及び、-0.1≦α≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)で表されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. リチウムとニッケルを含む一次粒子が凝集した二次粒子、又は、前記一次粒子と前記二次粒子の両者からなるリチウム金属複合酸化物の製造方法であって、
    前記ニッケルを含む原料水溶液、水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液、アンモニウムイオンを含むアンモニウム水溶液を混合して反応溶液を作製し、前記反応溶液のpH(液温25℃基準)が11.0~12.5となる様に制御して、金属複合水酸化物ケーキを得る晶析工程と、
    前記金属複合水酸化物ケーキを洗浄した後、100~200℃、1~10時間の条件で乾燥し、前記金属複合水酸化物を得る乾燥工程と、
    前記金属複合水酸化物とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、
    前記リチウム混合物を、300~500℃、1~10時間の条件で仮焼し、金属複合酸化物を含まない状態で反応させ、リチウム仮焼物を得る仮焼工程と、
    前記リチウム仮焼物を、650~900℃、1~20時間の条件で焼成し、前記金属複合酸化物を含まない状態で反応させ、リチウム金属複合酸化物を得る焼成工程と、
    を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記製造方法は、前記リチウム金属複合酸化物の原料である前記金属複合水酸化物が、製造過程で前記金属複合酸化物の形態を経由せず、直接、前記リチウム化合物と反応することを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記仮焼工程と前記焼成工程の間に、前記リチウム仮焼物を室温にまで冷却する冷却工程、及び、前記リチウム仮焼物を解砕する第一解砕工程と、
    前記焼成工程の後に、リチウム金属複合酸化物を解砕する第二解砕工程と、
    を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 前記リチウム金属複合酸化物が、一般式(B):LiNi1-x2+α(式中、s、x、及び、αは、0.95≦s≦1.30、0≦x≦0.2、及び、-0.1≦α≦0.2、Mは、Co、Mn、W、Mo、V、Ca、Mg、Sr、Ba、Ti、Cr、Zr、Al、Nb、Ta、Si、P、B、Sからなる群より選ばれた、少なくとも1種の金属元素)で表されることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記金属複合水酸化物は三方晶の結晶構造を有し、前記金属複合酸化物は立方晶の結晶構造を有し、前記リチウム金属複合酸化物は菱面体晶の結晶構造を有することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 前記リチウム化合物は、水酸化リチウム、及び/又は、炭酸リチウムであることを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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CN115571928A (zh) * 2022-11-23 2023-01-06 宜宾锂宝新材料有限公司 一种超高镍正极材料及其制备方法与电池
JP7483987B1 (ja) 2023-05-31 2024-05-15 住友化学株式会社 リチウム金属複合酸化物、リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極、及び、リチウム二次電池
JP7518946B2 (ja) 2022-04-22 2024-07-18 宜賓▲り▼宝新材料有限公司 残留アルカリの少ないハイニッケル三元系正極材料の調製方法

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