JP2022034857A - 孔形成方法及び孔形成装置 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022034857000001
【課題】膜に所望の大きさのナノポアを歩留まり良く形成する。
【解決手段】本開示の孔形成方法は、膜に孔を形成する方法であって、電解液中に設けられた前記膜を挟んで設置された第1の電極及び第2の電極間に第1の電流を印加することと、前記第1の電極及び前記第2の電極間に第1の電圧を印加し、そのときに前記第1の電極及び前記第2の電極間に流れる第2の電流を計測することと、前記第2の電流が所定の閾値以上であるか否かを判断することと、を含み、前記第1の電流は、前記閾値よりも大きく、前記第2の電流が前記閾値よりも小さい場合に、前記第1の電流の印加と、前記第1の電圧の印加及び前記第2の電流の計測と、を繰り返すことを特徴とする。
【選択図】図9

Description

本開示は、孔形成方法及び孔形成装置に関する。
水溶液中に存在する分子や粒子を検出する手段として、ナノポアを用いた技術が検討されている。ナノポアデバイスは、メンブレンに、検出対象となる分子や粒子と同程度の大きさの孔(ナノポア)を設け、メンブレンの上下チャンバを水溶液で満たし、両チャンバに水溶液に接触するよう電極を設けたものである。測定時には、チャンバの片側に測定対象である検出対象物を導入し、電極間に電位差を与えて検出対象物を電気泳動させることによりナノポアを通過させる。このときに両電極間に流れるイオン電流(封鎖信号)の時間変化を計測することで、検出対象物の通過を検出したり、検出対象物の構造的な特徴を解析したりすることができる。
ナノポアデバイスの製造において、機械的強度が高いこと等の理由から、半導体基板や半導体材料を半導体プロセスにより加工してナノポアを形成する方法が注目を集めている。このようなナノポア形成方法として、例えば非特許文献1には、メンブレンとしてシリコン窒化膜(SiNx膜)を用い、TEM(transmission electron microscope)装置を用いて、電子ビームの照射面積をメンブレン上に小さく絞り、エネルギーや電流をコントロールすることで、直径が10nm以下のナノポアを形成することが開示されている。
また、特許文献1、非特許文献2~4には、メンブレンの絶縁破壊現象を利用したナノポア形成方法が開示されている。これらの方法においては、まず、孔の空いていないSiNxメンブレンを挟む上下のチャンバに水溶液を満たし、各チャンバの水溶液中に電極を浸し、両電極間に高電圧を印加し続ける。電極間の電流が急激に上昇して(メンブレンが絶縁破壊して)、所定のカットオフ電流に到達したところでナノポアが形成されたと判断し、高電圧の印加を停止することで、ナノポアを形成する。本ナノポア形成方式は、TEM装置を用いたナノポア形成に比べ、製造コストが大幅に削減され、スループットが向上するという利点がある。また、本ナノポア形成方式は、メンブレンにナノポアを形成した後、メンブレンをチャンバから取り外すことなく検出対象物の測定に移行できる。そのため、ナノポアが大気中の汚染物質に曝されることがなく、計測時のノイズが少なくなるという利点がある。
ナノポアを用いた測定の用途として、DNAの塩基配列の解読(DNAシーケンシング)がある。すなわち、DNAがナノポアを通過する際の、ナノポアを通過するイオン電流の変化を検出することで、DNA鎖中の4種の塩基の配列を決定するという方法である。
ナノポアを用いた測定の別の用途としては、水溶液中の特定対象物の検出及び計数がある。例えば非特許文献5には、水溶液中に存在する特定配列のDNAのみにPNAとPEGとを結合させ、PNA及びPEGで修飾されたDNAがナノポアを通過する際のイオン電流の変化を計測することで、特定配列を有するDNAの検出や計数を行う技術が開示されている。
このようなナノポア計測においては、検出対象物の大きさと、ナノポアの大きさとの関係が重要である。検出対象物の大きさになるべく近いナノポアを用いることで、検出対象物がナノポアを通過した際に生じる信号(イオン電流変化)のS/N比(signal/noise比)が向上する。検出対象物の大きさは様々であるので、高精度な計測を行うには、検出対象物の大きさに応じて様々な大きさのナノポアを精度よく形成する必要がある。
国際公開第2013/167955号
Jacob K Rosenstein, et al., Nature Methods, Vol.9, No.5, 487-492 (2012) Harold Kwok, et al., PloS ONE, Vol.9, No.3, e92880. (2013) Kyle Briggs, et al., Nanotechnology, Vol.26, 084004 (2015) Kyle Briggs, et al., Small, 10(10):2077-86 (2014) Trevor J. Morin, et al., PLoS ONE 11(5):e0154426. doi:10.1371/journal.pone.0154426 Itaru Yanagi, et al., Scientific Reports, 4, 5000 (2014) Christopher E. Arcadia, et al., ACS NANO, 11, 4907-4915 (2017)
絶縁破壊現象を利用してメンブレンにナノポアを形成する場合、形成されるナノポアの大きさにはばらつきがあり、所望のナノポアの大きさとの乖離がしばしば生じる。そのため、ある検出対象物の測定を行う際に、その検出対象物の大きさに近いナノポアが形成される確率(歩留まり)は低い。
そこで、本開示は、膜に所望の大きさの孔を歩留まり良く形成する技術を提供する。
上記課題を解決するために、本開示の孔形成方法は、膜に孔を形成する方法であって、電解液中に設けられた前記膜を挟んで設置された第1の電極及び第2の電極間に第1の電流を印加することと、前記第1の電極及び前記第2の電極間に第1の電圧を印加し、そのときに前記第1の電極及び前記第2の電極間に流れる第2の電流を計測することと、前記第2の電流が所定の閾値以上であるか否かを判断することと、を含み、前記第1の電流は、前記閾値よりも大きく、前記第2の電流が前記閾値よりも小さい場合に、前記第1の電流の印加と、前記第1の電圧の印加及び前記第2の電流の計測と、を繰り返すことを特徴とする。
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
本開示の技術によれば、膜に所望の大きさの孔を歩留まり良く形成することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
従来例1に係るナノポア形成装置を示す概略図である。 従来例1の他の構成を有するナノポア形成装置を示す概略図である。 従来例1に係るナノポア形成方法を説明するための図である。 従来例2に係るナノポア形成方法を説明するための図である。 従来例3に係るナノポア形成装置を示す概略図である。 従来例3に係るナノポア形成方法を説明するための図である。 従来例3の課題を説明するための図である。 従来例3の変形例を説明するための図である。 第1の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。 第1の実施形態に係るナノポア形成装置を示す概略図である。 第1の実施形態に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第1の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第1の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第2の実施形態に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第2の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第3の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。 第3の実施形態に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第3の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第3の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第4の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。 第4の実施形態に係るナノポア形成装置を示す概略図である。 第4の実施形態に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第4の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第4の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第5の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。 第5の実施形態に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第5の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第5の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法を実行するためのタイムチャートである。 第6の実施形態に係るパルス電流の形状の例を示す図である。 第7の実施形態に係るナノポア形成装置を示す概略図である。
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を詳細に説明する。本開示の全図において、同一機能を有するものには同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。実施の形態に記載するデバイスの構造及び材料は、本開示の思想を具現化するための一例であり、材料及び寸法などを厳密に特定するものではない。また、実施形態に記載される具体的な電圧値、電流値、並びに電流及び電圧の印加時間は、本開示の思想を具現化するための一例であり、それらを厳密に特定するものではない。
本開示において、「孔形成(forming)方法」には、孔の開いていない膜に孔を作製する(create)方法と、既に膜に形成されている孔を所望の大きさまで拡大する(widen)若しくは調整する(adjust)方法と、のいずれの意味も含まれる。
[従来例1]
まず、従来法における絶縁破壊を用いたナノポア形成方法(従来例1~3)について説明する。
図1は、従来例1に係るナノポア形成方法を実現するためのナノポア形成装置1000を示す概略図である。ナノポア形成装置1000は、メンブレン101、電極104及び105、チャンバ110及び111、並びに制御回路2000を備える。
チャンバ110及び111は、メンブレン101により隔てられる。メンブレン101としては、例えば厚み3~20nmのシリコン窒化膜(SiN膜)を用いることができる。チャンバ110には水溶液102が収容され、チャンバ111には水溶液103が収容される。水溶液102及び103としては、例えばKCl水溶液を用いることができる。チャンバ110には、溶液導入口106及び溶液出口107が設けられ、チャンバ111には、溶液導入口108及び溶液出口109が設けられている。チャンバ110中の水溶液102には電極104が接触し、チャンバ111中の水溶液103には電極105が接触している。電極104及び105は、制御回路2000に接続される。電極104及び105としては、例えばAg/AgCl電極を用いることができる。
制御回路2000は、電圧源2001及び電流計2002を有する。制御回路2000は、電圧源2001を駆動して、電極104及び105間に任意の電圧を印加する。また、制御回路2000は、電流計2002を用いて、電極104及び105間に流れる電流を計測し、計測した電流値を記憶装置(不図示)に記録する。さらに、制御回路2000は、計測した電流値の情報に基づいて、電極104及び105間への印加電圧を変化させることができる。
図2は、他の構成を有するナノポア形成装置1001を示す概略図である。ナノポア形成装置1001においては、メンブレン101が支持基板112により支持されている。また、シール材113がメンブレン101とチャンバ110との間に配置され、シール材114が支持基板112とチャンバ111との間に配置されている。その他の構成は図1のナノポア形成装置1000と同様である。支持基板112の材質としては、例えばシリコン(Si)を用いることができる。シール材113及び114は、例えばOリングであり、それぞれチャンバ110及び111内の水溶液の漏出を防止する。
一般に、ナノポア形成装置は、図2のナノポア形成装置1001のように支持基板112、並びにシール材113及び114を有している。以下、本明細書においては、図示の簡略化のため、支持基板112、並びにシール材113及び114を省略した図1のような簡易図を用いる。
図3は、従来例1に係るナノポア形成方法を説明するための図である。従来例1に係るナノポア形成方法を「定電圧印加方式」と称する。なお、この方式は非特許文献2にも開示されている。定電圧印加方式は、電極104及び105間に電圧V(電極間電圧)を印加した時に、電極104及び105間を流れる電流(電極間電流I)が約Ith(閾値電流)となるような大きさのナノポアを形成する方法である。
図3に示すように、定電圧印加方式では、制御回路2000を用いて、電極104及び105間に一定電圧Vを印加し(上図)、そのときに電極104及び105間を流れる電流を計測する(下図)。そして、制御回路2000は、計測された電極間電流IがIth以上となった場合に、電極104及び105間への電圧印加を停止する。電圧Vは、メンブレン101を絶縁破壊できる程度の高電圧である。
電極間電流Iの計測を完全に連続にすることはできないため、あるサンプリング間隔tsごとに電極間電流Iが記録される。その記録された電極間電流Iを図3の下図に黒点で示している。図3の下図に示されるように、計測された電極間電流Iは、ある時間を境に急激に上昇している。この時点は、メンブレン101が絶縁破壊し、微細ポアがメンブレン101に生成した時点である。その後も電圧Vがメンブレン101に印加され続け、電極間電流IがIth以上となった時点で、電圧Vの印加が停止される。これにより、電圧Vを印加した時に大きさが約Ithの電流が流れるようなナノポアを形成することができる。
なお、先に述べた通り、電極間電流Iの計測は完全に連続には行えず、あるサンプリング間隔tsごとに計測されるので、あるサンプリング点での電極間電流IとIthとが完全に一致することはまずなく、実際は、計測(記録)された電極間電流IがIthを超えた時点で電圧の印加が停止されることとなる。また、制御回路2000が、計測された電極間電流IがIthを超えているかどうかを判断するのにもある時間を要する。そして、制御回路2000が、計測された電極間電流IがIthを超えていたと判断した場合に、電極104及び105間の電圧印加を停止するまでにもある時間がかかる。
つまり、定電圧印加方式では、電極間電流IがIthに到達した後も、ある程度の時間、電圧Vがメンブレン101に印加され続けることとなり、その間、ポアは広がり続ける。ポアはジュール熱(ポアを通過する電流×印加電圧)によって広がる。ポアが大きくなれば、電圧Vが印加されたときに流れる電流も大きくなり、ジュール熱も大きくなる。ジュール熱が大きくなればポアの大きさの広がるスピードはさらに速くなる。このように、定電圧印加方式では、電極間電流IがIthに到達した後も、電圧Vがある程度の時間メンブレン101に印加され続け、その間に加速度的にポアが広がる。したがって、実際に形成されるポアは、電圧Vの印加時に電流Ithが流れるような大きさのポアよりも大きくなる。
上述した通り、定電圧印加方式では、ポアが所望の大きさに達した後も、高いジュール熱が発生し続ける。このジュール熱によってポアが広がる程度は、メンブレンごとに異なる(同じ材料、同じ厚みのメンブレンを用いたとしても)。一気にポアが広がる場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、形成されるポアの大きさにばらつきが生じ得る。
また、メンブレン101を絶縁破壊できる程度の高電圧(V)を印加したときの電極間電流Iから、ナノポアの大きさを正確に算出することは困難である。この理由は以下の通りである。ナノポアが形成された後の電極間電流Iは、I=Inp+Inoiseと表すことができる。Inpは、ナノポアを通過する電流(ナノポア電流)である。水溶液102及び103のイオン濃度及びイオン移動度、メンブレン101の厚み及び材質、電極104及び105への印加電圧が分かっており、かつナノポア電流Inpが分かれば、ポアの大きさを推定することができる。一方、Inoiseは、ナノポア電流Inp以外のノイズとなる電流(ノイズ電流)であり、例えば、メンブレン101のうちポアが開いていない部分を伝導する電流であったり、メンブレン101の表面での化学反応又は電荷のやり取りに起因する電流であったりする。ノイズ電流Inoiseは、印加電圧が大きいほど大きくなる。また、ノイズ電流Inoiseは用いるメンブレン101ごとに異なる(同じ材料、同じ厚みのメンブレンを用いたとしても)。また、ノイズ電流Inoiseは、電圧印加の時間とともに変化する。定電圧印加方式では、メンブレン101を絶縁破壊できる程度の高電圧(V)を印加しているため、電極104及び105間を流れる電流は、ナノポア電流Inp以外のノイズ電流Inoiseの成分も大きい。したがって、ナノポア電流Inpだけを計測することはできないので、電極間電流Iから、正確なポアの大きさを推定することは困難である。また、ノイズ電流Inoiseはメンブレン101ごとに異なるため、複数のメンブレン101に対しそれぞれ電圧Vを印加した時に電流Ithが流れるようなポアを形成できたとしても、それらポアの大きさにはばらつきが生じ得る。
[従来例2]
図4は、従来例2に係るナノポア形成方法を説明するための図である。従来例2に係るナノポア形成方法は、従来例1のナノポア形成装置1000と同様の装置を用いて実現できる。従来例2に係るナノポア形成方法を「パルス電圧印加方式」と称する。なお、この方式は非特許文献6にも開示されている。パルス電圧印加方式は、電極104及び105間に電圧Vを印加した時に、電極104及び105間を流れる電流(電極間電流I)が約Ith’(閾値電流)となるような大きさのナノポアを形成する方法である。
図4に示すように、パルス電圧印加方式では、制御回路2000を用いて、高電圧Vのパルス電圧の印加と、低電圧Vの印加時における電流計測とが繰り返される。制御回路2000は、低電圧Vの印加時に計測された電極間電流IがIth’以上となった場合、高電圧Vのパルス電圧の印加を停止する。
パルス電圧印加方式は、定電圧印加方式と異なり、低電圧Vの印加時に電極間電流Iが約Ith’となるようなポアを形成する方法である。低電圧Vの値は、具体的には、電極間電流I=Inp+Inoiseのうち、ノイズ電流Inoiseがナノポア電流Inpに比べて十分小さくなるように設定される。したがって、メンブレン101にナノポアが形成された後、低電圧V印加時の電極間電流I(≒Inp)から、ほぼ正確にナノポアの大きさを算出することができる。したがって、従来例1の定電圧印加方式において生じ得る、ノイズ電流Inoiseのばらつきに起因したポアの大きさのばらつきは解決される。
しかしながら、実際に形成されるポアが、低電圧Vの印加時に大きさIth’の電流が流れるような大きさのポアよりも大きくなることがある。これは、高電圧Vのパルス電圧の印加中のどこかの時点(図4の例においては、4回目のパルス電圧の印加中のどこかの時点)で、ナノポアの大きさが、低電圧Vを印加した時に電極間電流IがIth’となるような大きさに到達するが、その後もそのパルス電圧の印加が終了するまでは、高電圧Vが電極104及び105間に印加され続けるためである。そしてその間、ジュール熱(ポアを通過する電流×印加電圧)によってポアは広がり続ける。ポアが大きくなれば、高電圧Vが印加されたときに流れる電流も大きくなり、ジュール熱も大きくなる。ジュール熱が大きくなればポアの広がるスピードはさらに速くなる。このように、パルス電圧印加方式では、ポアが所望の大きさに達した後も、パルス終了まで高電圧Vがメンブレン101に印加され続け、その間に加速度的にポアが広がる。
上述した通り、パルス電圧印加方式では、ポアが所望の大きさに達した後も、高いジュール熱が発生し続ける。この高いジュール熱によってポアが広がる程度は、メンブレンごとに毎回異なる(同じ材料、同じ厚みのメンブレンを使ったとしても)。一気にポアが広がる場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、形成されるポアの大きさにばらつきが生じ得る。
パルス電圧印加方式の場合、あるパルス印加中のどこかの時点(図4の例においては、3回目のパルス電圧の印加中のどこかの時点)でメンブレン101に微細ポアが生成する。その後、低電圧Vの印加時の電極間電流Iが、一つ前の計測値より明確に大きくなる(左から4つ目のプロット)。ここで、メンブレン101に微細ポアが生成した後、そのパルスが終了するまでは高電圧Vが印加され続けていて、その間、生成したポアはジュール熱(ポアを通過する電流×印加電圧)によって広がり続ける。ポアが大きくなれば、高電圧Vが印加されたときに流れる電流も大きくなり、ジュール熱も大きくなる。ジュール熱が大きくなればポアの広がるスピードはさらに速くなる。このように、メンブレンに微細ポアが生成してから、その時に印加されているパルス電圧が終了するまでの間に、そのポアの大きさは加速度的に広がる。その結果、メンブレンに微細ポアを生成させたパルス電圧の印加が終了した時点で、すでに所望の大きさ(低電圧Vの印加時に電流Ithが流れるような大きさのナノポア)よりもかなり大きなポアとなる可能性もある。
[従来例3]
図5は、従来例3に係るナノポア形成方法を実現するためのナノポア形成装置1002を示す概略図である。従来例3に係るナノポア形成方法を「定電流印加方式」と称する。なお、この方式は非特許文献7にも開示されている。
従来例3に係るナノポア形成装置1002は、従来例1及び2のナノポア形成装置1000とほぼ同様であるが、制御回路3000の機能が制御回路2000と異なっている。
制御回路3000は、電流源3001及び電圧計3002を有する。制御回路3000は、電流源3001の駆動により、電極104及び105間に任意の電流を印加する(流す)。また、制御回路3000は、電圧計3002により、電極104及び105間の電圧を計測し、計測した電圧値を記憶装置(不図示)に記録する。さらに、制御回路3000は、計測された電圧値の情報に基づいて印加電流を変化させることができる。
図6は、従来例3に係るナノポア形成方法を説明するための図である。定電流印加方式は、電極104及び105間への電流Iの印加時に、電極間の電圧が約Vth(閾値電圧)となるような大きさのナノポアを形成する方法である。
図6に示すように、定電流印加方式では、制御回路3000を用いて、電極104及び105間に一定の電流Iが流れるように電流を印加し、メンブレン101にポアが形成された後、電極間電圧が所定の電圧Vth以下となった時点で、電流印加を停止する。
定電流印加方式の現象を詳細に説明すると、以下の通りである。すなわち、ポアが形成されるまでは、電極104及び105間に一定の電流Iを流すことでメンブレン101に電荷が充電され、その結果、Q=CVの関係式に従って、電極間電圧も大きくなっていく。つまり、メンブレン101がキャパシタとなっている。そして、ある時点でポアが形成された後は、ポアを通じて電流が流れるようになるので、一定の電流Iを流すために必要な電極間電圧は急激に下がる。その後、形成されたポアが広がるにつれて電極間電圧は低下し、電極間電圧がVth以下となった時点で、電極間への電流の印加が停止される。
定電流印加方式では、ポアが形成された直後から電極間電圧が自動的に下がる。そのため、電極間へ印加される電流Iが一定であるので、ジュール熱(ポアを通過する電流×印加電圧)は、ポアが形成された直後から下がる。そして、ポアが広がれば広がるほど、ジュール熱は下がる。したがって、ポアが形成された後に、ポアの急速な拡大は起こりにくい。一方、定電圧印加方式及びパルス電圧印加方式では、ポアが拡大する過程でジュール熱も増え続けるため、ポアの拡大速度は速い。したがって、定電流印加方式では、定電圧印加方式及びパルス電圧印加方式と比べ、所望の大きさのポア(電極間に印加される電流がIの時に電極間電圧がVthとなるような大きさのポア)により近いポアを形成することができる。また、定電流印加方式では、ポアの急速な拡大は起こりにくいため、ポアが、一気に所望の大きさを超えて大きくなってしまうことはない。そのため、形成されるポアの大きさのばらつきが小さくなる。
しかしながら、本発明者らは、定電流印加方式の課題を発見した。図7は、定電流印加方式の課題を説明するための図である。電極104及び105間に一定の電流Iを流し、メンブレン101にポアが生成した後、電極間電圧がVth以下となったら電極間の電流Iの印加を停止することで、所望の大きさのポア(電極間に印加される電流がIの時に電極間電圧がVthとなるような大きさのポア)を形成する場合を想定する。この場合、図7に示す通り、長時間経過しても電極間電圧がVthに到達しない場合や、電極間電圧がVthに到達するまでに長い時間がかかる場合があることが分かった。この現象の起こりやすさは、VthとIの設定の仕方や、メンブレン101の材質及び厚みによって異なるが、Vthを低く設定した場合に起こりやすいことが分かった。長時間経過しても電極間電圧がVthに到達しないということは、ポアが所望の大きさまで広がらないということである。これはなぜかというと、先に述べた通り、定電流印加方式では、ポアが生成した後からジュール熱は減少し、また、ポアが拡大すればするほどジュール熱は減少するためである。そのため、ある程度ポアが拡大すると、ポアを拡大するのに十分なジュール熱が得られなくなってくる。そして、ポアの拡大がほぼ停止してしまう。
図8は、定電流印加方式の変形例を説明するための図である。上記の定電流印加方式の課題の解決策として、図8に示すように、電極間に印加する電流と電極間電圧の閾値とを十分に大きくするという方法が考えられる。つまり、電極間電流がIの時に電極間電圧がVthとなるような大きさのポアを形成する場合、例えば、電極間電流を10×Iとし、電極間電圧の閾値を10×Vthと設定する。これにより、ポアが形成された後のジュール熱は、電極間に印加する電流をIとし電極間電圧の閾値をVthと設定した場合にポアが形成された後のジュール熱よりも大きくなる。なお、ポアが形成されるときの電極間電圧の大きさは、電極間に印加する定電流の大きさにあまり依存しないので、ポアが広がりやすくなる。また、電極間電圧の閾値を大きくすることにより、その閾値に電極間電圧が長時間経っても到達しないケースは減少する。
しかしながら、この定電流印加方式の変形例では、出来上がるポアの大きさにばらつきが生じ得る。先に述べた通り、電極間電流はI=Inp+Inoiseと表すことができる。電極間の電圧が小さい場合は、ノイズ電流Inoiseがナノポア電流Inpよりも十分に小さくなる。しかしながら、電極間の電圧が大きくなると、ノイズ電流Inoiseの値が大きくなる。そのため、電極間電流がIの時に電極間電圧がVthとなるような大きさのポアと、電極間電流が10×Iの時に電極間電圧が10×Vthとなるような大きさのポアとでは、大きさが異なる。したがって、電極間電流を10×Iとし、電極間電圧の閾値を10×Vthと設定してポアを形成しても、所望の大きさのポア(電極間電流がIの時に電極間電圧がVthとなるような大きさのポア)とは異なるポアが形成される。また、ノイズ電流Inoiseはメンブレン101ごと、時間ごとに変化するので、電極間電流と電極間電圧の閾値(Vth)を大きくしてポアを形成した場合、出来上がるポアの大きさのばらつきが大きくなる。
[第1の実施形態]
<ナノポア形成方法>
図9は、第1の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。第1の実施形態に係るナノポア形成方法は、電極間電流がIの時に、電極間電圧が約Vthとなるような大きさのナノポアを形成する方法である。以下において、各ステップの動作の主体をオペレータとして説明するが、各ステップは、制御コンピュータが制御回路の各素子を駆動することにより実行することもできる。
(ステップS1)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に、電流Iよりも大きく、パルス幅(時間幅)がtのパルス電流Iを印加する(流す)。パルス幅tは、例えば1μs以上10s以下、又は1ms以上1s以下に設定することができる。
(ステップS2)
オペレータは、電圧源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に電圧Vthを印加して、電流計により、その時の電極間電流Iを計測する。電圧Vthは、ノイズ電流Inoiseがナノポア電流Inpよりも十分に小さくなるような値に設定することができる。これにより、電圧Vthの印加時の電極間電流I(≒Inp)から、ほぼ正確にナノポアの大きさを算出することができる。したがって、ノイズ電流Inoiseのばらつきに起因するポアの大きさのばらつきを低減することができる。
具体的には、電圧Vthは、1mV以上1V以下の範囲に設定することができる。あるいは、電圧Vthは、1mV以上であり、電圧Vthを電極間に印加した時にメンブレンに掛かる電界が0.3V/nm以下となるように設定することができる。あるいは、電圧Vthは、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流が1nA以下となるような電圧に設定することができる。あるいは、電圧Vthは、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流がIの1/5以下となるような電圧に設定することができる。
(ステップS3)
オペレータは、計測された電極間電流Iが電流I(閾値)以上であるかを判断する。電極間電流Iが電流Iよりも小さい場合(No)、処理はステップS4に移行する。電極間電流Iが電流I以上となった場合(Yes)、オペレータは、所望の大きさのポアが形成されたと判断して、処理を終了する。
(ステップS4)
オペレータは、パルス電流Iの印加回数をn=n+1として、ステップS1に戻る。本実施形態においては、n回目のパルス電流Iのパルス幅をtとし、n+1回目のパルス電流Iのパルス幅をtn+1とした時、t=tn+1とすることができる。
以上のように、第1の実施形態に係るナノポア形成方法は、水溶液(電解液)中に設けられたメンブレン(膜)を挟んで設置された電極間にパルス電流I(第1の電流)を印加することと、電極間に電圧Vth(第1の電圧)を印加して、電極間電流I(第2の電流)を計測することと、電極間電流Iが電流I(所定の閾値)以上となったか否かを判断することとを含み、パルス電流Iは電流Iよりも大きく設定されており、電極間電流Iが電流Iよりも小さい場合に、パルス電流Iの印加と、電圧Vthの印加及び電極間電流Iの計測と、が繰り返される。また、電極間電流Iが電流I以上となった場合に、所望の大きさのポア(電極間電流がI(閾値)の時に、電極間電圧が約Vthとなるような大きさのポア)が形成されたと判断できる。これにより、所望の大きさのポアを歩留まりよく形成することができる。本明細書において、本実施形態に係るナノポア形成方法の方式を「パルス電流印加方式」という場合がある。
<ナノポア形成装置>
図10は、第1の実施形態に係るナノポア形成方法を実現するためのナノポア形成装置100を示す概略図である。ナノポア形成装置100は、メンブレン101、電極104及び105(第1の電極及び第2の電極)、チャンバ110及び111(第1の液槽及び第2の液槽)、並びに制御回路200を備える。
チャンバ110及び111は、メンブレン101により隔てられる。メンブレン101としては、例えば厚み3~20nmのシリコン窒化膜(SiN膜)を用いることができる。チャンバ110には水溶液102が収容され、チャンバ111には水溶液103が収容される。水溶液102及び103としては、例えばKCl水溶液を用いることができる。チャンバ110には、溶液導入口106及び溶液出口107が設けられ、チャンバ111には、溶液導入口108及び溶液出口109が設けられている。チャンバ110中の水溶液102には電極104が接触し、チャンバ111中の水溶液103には電極105が接触している。電極104及び105は、制御回路200に接続される。電極104及び105としては、例えばAg/AgCl電極を用いることができる。
制御回路200は、電流源201、可変電圧202、電流計203及びスイッチ204を備える。スイッチ204を接点Aに接続することにより、電極104及び105は、電流源201のある回路(第1の回路)に接続される。スイッチ204を接点Bに接続することにより、電極104及び105は、可変電圧202及び電流計203がある回路(第2の回路)に接続される。
図11は、第1の実施形態に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図11に示すように、まず、スイッチ204を接点Aに接続した後、電流源201の駆動により、電流Iよりも大きいIのパルス電流を電極104及び105間に印加する。パルス電流のパルス幅はtである。パルス電流は、電極104及び105間に印加されている間、大きさがIで一定であり、矩形波である。本明細書では、このようなパルス電流を「定電流パルス」という。
パルス電流の印加終了後、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替える。そして、可変電圧202の駆動により、電極104及び105間に電圧Vthを印加して、その時の電極間電流Iを電流計203により計測する。電極間電流Iが電流I以上となっていなければ、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替え、その後、電流Iよりも大きいIのパルス電流を電極104及び105間に印加する。その時のパルス幅はtn+1であり、t=tn+1である。以上の手順を、電極104及び105間に電圧Vthを印加した時の電極間電流Iが電流I以上になるまで繰り返し、電極104及び105間に電圧Vthを印加した時の電極間電流IがI以上になった時点で処理は終了する。
図11に示す例においては、パルス電流の立ち上がるタイミングは、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えた後に一定時間が経過した後であるが、パルス電流の立ち上がるタイミングと、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えるタイミングとは、同時であってもよい。同様に、図11に示す例においては、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングは、パルス電流が立ち下がってから一定時間が経過した後であるが、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングと、パルス電流の立ち下がるタイミングとは、同時であってもよい。
スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えた後、電極104及び105間の電圧を一旦0Vに設定することで、パルス電流の印加によって電極104及び105間に生じた電位差を解消することができる。これにより、その後、電極104及び105間に電圧Vthを印加してその時の電極間電流Iを計測する時に、より正確に電極間電流Iを計測できる。
定電流印加方式(従来例3)では、電極間電流がIの時に電極間電圧が約Vthとなるような大きさのナノポアを形成するときに、大きさIの定電流を電極間に印加していた。一方、パルス電流印加方式では、電極間電流がIの時に電極間電圧が約Vthとなるような大きさのナノポアを形成するときに、電流Iよりも大きいIの定電流パルスを印加している。そのため、ポアを通過する電流のジュール熱は、I×V=I×I×R(Rはナノポアの抵抗)となり、定電流印加方式のジュール熱I×V=I×I×R(Rはナノポアの抵抗)よりも大きくなる。したがって、パルス電流印加方式ではポアが広がりやすく、ポア形成後に所望の大きさまでポアが広がらない可能性や、所望のポアの大きさに到達するまでに長い時間がかかる可能性を低減できる。
本発明者らが鋭意検討した結果、パルス電流IをI×1.5≦Iを満たすように設定することで、ポア形成後に所望の大きさまでポアが広がらない可能性や、所望のポアの大きさに到達するまでに非常に時間がかかる可能性を極めて少なくできることが分かった。また、パルス電流IをI×2≦Iを満たすように設定することで、それらの可能性をさらに低減できることが分かった。さらに、0.3V/nm<パルス電流I×パルス幅t÷電極間容量(C)÷メンブレンの厚み(nm)<2V/nmを満たすことによっても、それらの可能性をさらに低減できることが分かった。
さらに、本実施形態では、定電流パルスを用いているため、あるパルス電流の印加中にポアが開いた直後から、電極間電圧は下がり続ける。図11の例においては、5回目のパルス電流の印加中にポアが形成され、ポアが形成した直後から電極間電圧は下がり続ける。そのため、ポアが形成された直後から、その時に印加されていたパルス電流(5回目のパルス電流)が終了するまで、ジュール熱は下がり続ける。また、当然ながら、その後のパルス電流の印加によってポアを所望の大きさにまで拡大する工程においても、ポアが広がるにつれてジュール熱は下がる。そのため、あるパルス電流が印加された後に急速にポアが拡大して所望の大きさより遥かに大きなポアが形成される可能性が低い。つまり、本実施形態の方法では、あるパルス電流が印加された後に、ポアの急速な拡大は起こりにくいため、ポアが所望の大きさを大幅に超えて大きくなることはない。したがって、形成されるポアの大きさのばらつきが小さくなる。
これに対して、パルス電圧印加方式(従来例2)では、あるパルス電圧の印加中にポアが形成された後も、そのパルス電圧の印加が終了するまで同じ電圧が印加され続ける。また、ポアが形成された後、その時に印加されているパルス電圧の印加が終了するまでポアは広がり、それによってポアを流れる電流は増える。その結果、ポアが形成された後、そのパルス電圧が終了するまでジュール熱は増加し続ける。また、このことは、形成されたポアを追加のパルス電圧の印加で拡大し、所望の大きさのポアに調整する過程においても同じである。
<第1の実施形態の変形例1>
図12は、第1の実施形態の変形例1に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。本変形例1においては、電流源201の出力電流の設定値はIに固定とし、スイッチ204を接点A及び接点B間で切り替えることで、実効的に電極104及び105間にパルス電流が印加される。スイッチ204が接点Bに接続されているときは、電流源201のつながった回路は閉じていない。したがって、電流源201の出力電流の設定値をIのままにしても、電流源201からの電流が流れない。その代わり、電流源201の出力電圧は限界値まで上昇する。つまり、スイッチ204が接点Aに接続されている状態の期間(時間幅)が、パルス電流の時間幅tとなっている。スイッチ204が接点Bに接続されているときは、電圧をVthに設定して、電極間電流Iを計測する。計測される電極間電流Iが電流Iに達していなければ、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えて、電極104及び105間に電流を流し、一定時間経過後、再度スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えて、電圧Vthにおける電極間電流Iを計測する。これを繰り返すことにより、パルス電流印加方式を実行する。
本変形例1は、電流源201の出力電流の設定値をパルス状にすることなく、実効的に電極104及び105間にパルス電流を印加できるため、電流源201に対するオペレーションが第1の実施形態(図11)と比べてよりシンプルになる。一方で、本変形例1では、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えた時に、瞬間的に、電流源201の出力電圧の限界値に近い大きな電圧がかかる。この瞬間的な高電圧に起因して、ポアが予定以上に大きくなる可能性がある。逆に言うと、第1の実施形態は、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えた後にパルス電流が立ち上がるので、瞬間的に大きな電圧がかかることはない。
<第1の実施形態の変形例2>
図13は、第1の実施形態の変形例2に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。本変形例2においては、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えた後、大きさIの定電流パルスを印加し、大きさIの定電流パルスの印加中にスイッチ204を接点Aから接点Bに切り替える。その後、スイッチ204が接点Bに接続されている間に、電流源201の出力電流の設定値を0にする。また、スイッチ204が接点Bに接続されている間に、電極104及び105間に電圧Vthを印加し、その時に流れる電極間電流Iを計測する。電極間電流IがIより小さければ、再度スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替え、同様の手順を行う。最終的に、スイッチ204が接点Bに接続されている間に、電極104及び105間に電圧Vthを印加し、その時の電極間電流IがI以上となった時点で手順を終了する。
本変形例2におけるパルス電流Iの時間幅tは、電流源201の出力電流の設定値がIになってから、スイッチ204が接点Aから接点Bに切り替わるまでである。つまり、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングで、電極104及び105間に印加されているパルス電流も同時に立ち下げたい場合、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングを、電流源201の出力電流の設定値をIから0に立ち下げるタイミングより早くすることによって実現できる。これにより、電流源201の駆動によるパルス電流の立ち下げのタイミングを意識することなく、スイッチ204の切り替えによって自動的にパルス電流を立ち下げることができるので、オペレーションが簡単である。
[第2の実施形態]
第1の実施形態においては、パルス電流のパルス幅(時間幅)は全ての回で同じであり、パルス電流の大きさも全て同じであることを説明した。第2の実施形態では、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短くするために、パルス電流の印加回数の増加とともにパルス幅を増加させる方法を提案する。第2の実施形態に係るナノポア形成方法は、第1の実施形態で説明したナノポア形成装置100を用いて実現できる。
図14は、第2の実施形態に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図14に示すように、n回目のパルス電流のパルス幅をtとし、n+1回目のパルス電流のパルス幅をtn+1として、t<tn+1とする。その他の処理については第1の実施形態及びその変形例と同じであるので、説明を省略する。
このように、パルス電流のパルス幅をパルス電流の印加回数とともに増大させることにより、1回のパルス電流の印加でメンブレン又はポアに加わるストレス量が、パルス電流の印加回数とともに増加する。したがって、所望の大きさのポアが形成されるまでにパルス電流を印加すべき回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
第2の実施形態の方法は、例えば以下に説明するような課題に対して有効である。メンブレン101にポアが形成されるまでに必要な電流印加時間は、同じ厚み、同じ材料のメンブレンを用いたとしてもばらつきがある。したがって、電流Iを短時間印加しただけでポアが形成されることもあれば、長時間印加しなければポアが形成されないこともある。特に、電流Iを長時間印加しなければポアが形成されない場合、パルス幅tが短く、かつt=tn+1(パルス電流の印加回数によらずパルス幅が一定)に設定されていると、メンブレンにポアが形成されるまでに長い時間がかかってしまう。これに対し、本実施形態のようにパルス幅をt<tn+1とすることで、ポア形成までの時間を短縮できる。
<第2の実施形態の変形例>
第2の実施形態では、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短くするために、パルス電流の印加回数の増加とともにパルス幅を増加させた。これに対し、本実施形態の変形例においては、パルス電流の大きさを印加回数の増加と共に増加させることによって、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短縮する方法を提案する。
図15は、第2の実施形態の変形例に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図15に示すように、n回目のパルス電流の大きさをIとし、n+1回目のパルス電流の大きさIn+1として、I<In+1とする。ただし、パルス電流の最小値はI(閾値)よりも大きい。
パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルス電流の印加中にポアが形成される確率が高くなるため、少ないパルス印加回数でメンブレン101へのポア形成が可能になる。また、パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルスの印加中に、ポアはより広がりやすくなる。そのため、所望の大きさのポアが形成されるまでに印加すべきパルスの回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
[第3の実施形態]
第1及び第2の実施形態においては、ポアを有しないメンブレンに所望の大きさのポアを作製する方法について説明した。第3の実施形態においては、メンブレンに作製されたポアをより正確に所望の大きさに調整する方法を提案する。第3の実施形態において、所望の大きさのポアとは、電極間電圧がVthの時に、電極間電流が約I’(第2の閾値電流)となるような大きさのポアである。
図16は、第3の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。
(ステップS11~S14)
ステップS11~S14については、第1の実施形態で説明したステップS1~S4とほぼ同じであるので、説明を省略する。ただし、ステップS11で電極104及び105間に印加されるパルス電流を「第1のパルス電流I」という。ステップS14において、電圧Vthの印加時に計測された電極間電流Iが電流I(第1の閾値電流)以上となった場合(Yes)、処理はステップS15に移行する。
(ステップS15)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に、大きさが電流I’(第2の閾値電流)よりも大きく第1のパルス電流Iよりも小さい、パルス幅がtの第2のパルス電流I’を印加する。パルス幅tは、例えば1μs以上10s以下、又は1ms以上1s以下に設定することができる。
(ステップS16)
オペレータは、電圧源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に電圧Vthを印加して、電流計により、その時の電極間電流Iを計測する。このときの電圧Vthは、第1の実施形態と同様に設定することができる。
(ステップS17)
オペレータは、計測された電極間電流Iが電流I’以上であるかを判断する。電極間電流Iが電流I’よりも小さい場合(No)、処理はステップS18に移行する。電極間電流Iが電流I’以上となった場合(Yes)、オペレータは、ポアが所望の大きさになったと判断し、処理を終了する。
(ステップS18)
オペレータは、第2のパルス電流I’の印加回数をm=m+1として、ステップS15に戻る。本実施形態においては、m回目の第2のパルス電流I’のパルス幅をtとし、m+1回目の第2のパルス電流I’のパルス幅をtm+1とした時、t=tm+1とすることができる。
図17は、第3の実施形態に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図17においては、スイッチ204のタイムチャートは省略している。図17に示すように、まず、電流源201の駆動により、電流Iよりも大きい第1のパルス電流Iを電極104及び105間に印加した後、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替える。その後、可変電圧202の駆動により、電圧Vthを印加して、その時の電極間電流Iを電流計203により計測する。これを繰り返し、電圧Vth印加時の電極間電流Iが電流I以上となったら、電流源201の出力電流の設定値を変更して、Iよりも小さく電流I’よりも大きい第2のパルス電流I’を印加する。その後、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えて、可変電圧202の駆動により、電圧Vthを印加して、その時の電極間電流Iを計測する。第2のパルス電流I’の印加と電圧Vth印加時の電流計測を繰り返し、電極間電流Iが電流I’以上となった時点で処理は終了する。
以上のように、本実施形態では、閾値電流を2段階に設けている。すなわち、電流Iと電流I’の2つである。そして、電極間電流Iが電流I以上となった時点から、パルス電流をIからI’に落としている。これにより、パルス電流を1回印加するごとに広がるポアの広がり量を小さくすることができる。換言すれば、パルス電流を1回印加するごとに増大する、電圧Vth印加時の電極間電流Iの増加量を小さくすることができる。そのため、所望の大きさのポア(電極間電圧がVthの時に、電極間電流が約I’となるような大きさのポア)により近い大きさのポアを形成することができる。
また、パルス電流IをI×1.5≦Iを満たすように設定し、パルス電流I’をI’×1.5≦I’を満たすように設定し、かつI>I’及びI’>Iを満たすように設定することにより、所望の大きさのポアにさらに近い大きさのポアを形成することができる。
<第3の実施形態の変形例1>
第3の実施形態においては、第1のパルス電流のパルス幅及び大きさは全ての回で同じであり、第2のパルス電流のパルス幅及び大きさも全ての回で同じであることを説明した。これに対し、第3の実施形態の変形例1では、第2の実施形態に倣い、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短くするために、第1及び第2のパルス電流の印加回数の増加とともにパルス幅を増加させる方法を提案する。
図18は、第3の実施形態の変形例1に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図18に示すように、まず、大きさIの第1のパルス電流のn回目のパルス電流のパルス幅をtとし、n+1回目の第1のパルス電流のパルス幅をtn+1として、t<tn+1とする。同様に、大きさI’のm回目の第2のパルス電流のパルス幅をtとし、m+1回目の第2のパルス電流のパルス幅をtm+1として、t<tm+1とする。これにより、1回のパルス電流の印加でメンブレン又はポアに加わるストレス量が、パルス電流の印加回数とともに増加する。したがって、所望の大きさのポアが形成されるまでにパルス電流を印加すべき回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
<第3の実施形態の変形例2>
第3の実施形態の変形例2においては、第2の実施形態の変形例(図15)に倣い、第1及び第2のパルス電流の大きさをそれぞれ印加回数の増加と共に増加させることによって、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短縮する方法を提案する。
図19は、第3の実施形態の変形例2に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置100により実行するためのタイムチャートである。図19に示すように、n回目の第1のパルス電流の大きさをIとし、n+1回目の第1のパルス電流の大きさIn+1として、I<In+1とする。ただし、第1のパルス電流の最小値は電流Iよりも大きい。Vth印加時の電極間電流がI以上となった後は、再度パルス電流を小さな値(第2のパルス電流)に設定する。m回目の第2のパルス電流の大きさをIとし、m+1回目の第2のパルス電流の大きさIm+1として、I<Im+1とする。ただし、第2のパルス電流の最小値は電流I’よりも大きい。
パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルス電流の印加中にポアが形成される確率が高くなるため、少ないパルス印加回数でメンブレン101へのポア形成が可能になる。また、パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルスの印加中に、ポアはより広がりやすくなる。そのため、所望の大きさのポアが形成されるまでに印加すべきパルスの回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
[第4の実施形態]
第1~第3の実施形態においては、所望の大きさのポア(電極間電流IがIの時に電極間電圧が約Vthとなるようなポア)を形成する方法として、電極間にパルス電流を印加した後、電圧Vthを印加して、その時の電極間電流Iを測定し、電極間電流Iが電流I(閾値)以上となった場合に、所望の大きさのナノポアが形成されたと判断するという方法を説明した。第4の実施形態においては、パルス電流印加方式によって所望の大きさのポア(電極間電流がIの時に電極間電圧が約Vthとなるようなポア)を形成する別の方法を提案する。
<ナノポア形成方法>
図20は、第4の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。以下において、各ステップの動作の主体をオペレータとして説明するが、各ステップは、制御コンピュータが制御回路の各素子を駆動することにより実行することもできる。
(ステップS21)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に、電流Iよりも大きく、パルス幅がtのパルス電流Iを印加する。パルス幅tは、例えば1μs以上10s以下、又は1ms以上1s以下に設定することができる。
(ステップS22)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に電流Iを印加して、電圧計により、その時の電極間の電位差を計測する。
(ステップS23)
オペレータは、計測された電極間の電位差が電圧Vth(閾値)以下であるかを判断する。電極間の電位差が電圧Vthよりも大きい場合(No)、処理はステップS24に移行する。電極間の電位差が電圧Vth以下となった場合(Yes)、オペレータは、所望の大きさのポアが形成されたと判断し、処理を終了する。
電圧Vthは、ノイズ電流Inoiseがナノポア電流Inpよりも十分に小さくなるような値に設定するのが望ましい。
具体的には、電圧Vthは、1mV以上1V以下の範囲に設定することができる。あるいは、電圧Vthは、1mV以上であり、電圧Vthを電極間に印加した時にメンブレンに掛かる電界が0.3V/nm以下となるように設定することができる。あるいは、電圧Vthは、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流が1nA以下となるような電圧に設定することができる。あるいは、電圧Vthは、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流がIの1/5以下となるような電圧に設定することができる。
(ステップS24)
オペレータは、パルス電流Iの印加回数をn=n+1として、ステップS21に戻る。本実施形態においては、n回目のパルス電流のパルス幅をtとし、n+1回目のパルス電流Iのパルス幅をtn+1とした時、t=tn+1とすることができる。
以上のように、第4の実施形態に係るナノポア形成方法は、水溶液(電解液)中に設けられたメンブレン(膜)を挟んで設置された電極間にパルス電流I(第1の電流)を流すことと、電極間に電流I(第2の電流)を印加して、電極間の電位差を計測することと、電極間の電位差が電圧Vth(所定の閾値)以下となったか否かを判断することとを含み、パルス電流Iは電流Iよりも大きく設定されており、電極間の電位差が電圧Vthよりも大きい場合に、パルス電流Iの印加と、電流Iの印加及び電極間の電位差の計測と、が繰り返される。また、電極間の電位差が電圧Vth以下となった場合に、所望の大きさのポア(電極間電流がIの時に、電極間電圧が約Vthとなるような大きさのポア)が形成されたと判断できる。これにより、所望の大きさのポアを歩留まりよく形成することができる。また、本実施形態においては、電流源のみを駆動すればよいため、処理が単純である。
<ナノポア形成装置>
図21は、第4の実施形態に係るナノポア形成方法を実現するためのナノポア形成装置300を示す概略図である。ナノポア形成装置300は、第1の実施形態のナノポア形成装置100(図10)とほぼ同様であるが、制御回路400の構成が第1の実施形態の制御回路200と異なっている。制御回路400は、電流源201、スイッチ204及び電圧計205を有する。電流源201及び電圧計205は並列に配置されている。スイッチ204を接点Aに接続することにより、電極104及び105は、電流源201及び電圧計205がある回路に接続される。スイッチ204を接点Bに接続することにより、電極104及び105は、電流源201及び電圧計205がない回路(電極間が同電位となる回路)に接続される。
図22は、第4の実施形態に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図22に示すように、まず、スイッチ204を接点Aに接続した後、電流源201の駆動により、電流Iよりも大きいIのパルス電流を電極104及び105間に印加する。パルス電流の幅はtである。
パルス電流の印加終了後、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えることで、電極104及び105間の電位差が一旦0になり、パルス電流の印加によって電極104及び105間に生じた電位差を解消することができる。これにより、その後、電極104及び105間に電流Iを印加してその時の電極間電圧を計測する時に、より正確に電極間電圧を計測できる。
次に、再度スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替える。次に、電流源201の駆動により、電極104及び105間に電流Iを印加して、その時の電極104及び105間の電圧(電位差)を電圧計205により計測する。電極104及び105間の電圧を計測するタイミングは、電極104及び105間に電流Iを印加してから一定時間経過後である。この一定時間は、電圧計測の回数に応じて変動させることはない。
電極間電圧が電圧Vth以下となっていなければ、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替え、電極間の電位差を一旦0にする。その後、再度スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替える。
その後、電流Iよりも大きいIのパルス電流を電極104及び105間に印加する。その時のパルス電流の幅はtn+1であり、t=tn+1である。以上の手順を、電極104及び105間に電流Iを印加した時の電極間電圧が電圧Vth以下になるまで繰り返し、電極104及び105間に電流Iを印加した時の電極間電圧がVth以下になった時点で処理は終了する。
図22に示す例においては、パルス電流の立ち上がるタイミングは、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えた後に一定時間が経過した後であるが、パルス電流の立ち上がるタイミングと、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えるタイミングとは、同時であってもよい。同様に、図22に示す例においては、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングは、パルス電流が立ち下がってから一定時間が経過した後であるが、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えるタイミングと、パルス電流の立ち下がるタイミングとは、同時であってもよい。
本実施形態においても、パルス電流IをI×1.5≦Iを満たすように設定することで、ポア形成後に所望の大きさまでポアが広がらない可能性や、所望のポアの大きさに到達するまでに非常に時間がかかる可能性を極めて少なくできる。また、パルス電流IをI×2≦Iを満たすように設定することで、それらの可能性をさらに低減できる。さらに、0.3V/nm<パルス電流I×パルス幅t÷電極間容量(C)÷メンブレンの厚み(nm)<2V/nmを満たすことによっても、それらの可能性をさらに低減できる。
<第4の実施形態の変形例1>
第4の実施形態においては、パルス電流のパルス幅及び大きさは全ての回で同じであることを説明した。これに対し、第4の実施形態の変形例1では、第2の実施形態に倣い、所望の大きさのポア(電極間電圧がVthの時に、電極間電流が約I1となるような大きさのポア)を形成するのにかかる時間を短くするために、パルス電流の印加回数の増加とともにパルス幅を増加させる方法を提案する。
図23は、第4の実施形態の変形例1に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図23に示すように、まず、大きさIのパルス電流のn回目のパルス電流のパルス幅をtとし、n+1回目のパルス電流のパルス幅をtn+1として、t<tn+1とする。その他の処理については上述の通りであるので、説明を省略する。
このように、パルス電流のパルス幅をパルス電流の印加回数とともに増大させることにより、1回のパルス電流の印加でメンブレン又はポアに加わるストレス量が、パルス電流の印加回数とともに増加する。したがって、所望の大きさのポアが形成されるまでにパルス電流を印加すべき回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
<第4の実施形態の変形例2>
第4の実施形態の変形例2においては、第2の実施形態の変形例(図15)に倣い、パルス電流の大きさを印加回数の増加と共に増加させることによって、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短縮する方法を提案する。
図24は、第4の実施形態の変形例2に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図24に示すように、n回目のパルス電流の大きさをIとし、n+1回目のパルス電流の大きさIn+1として、I<In+1とする。ただし、パルス電流の最小値は電流Iよりも大きい。
パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルス電流の印加中にポアが形成される確率が高くなるため、少ないパルス印加回数でメンブレン101へのポア形成が可能になる。また、パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルスの印加中に、ポアはより広がりやすくなる。そのため、所望の大きさのポアが形成されるまでに印加すべきパルスの回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
[第5の実施形態]
第4の実施形態においては、ポアを有しないメンブレンに所望の大きさのポアを作製する方法について説明した。第5の実施形態においては、メンブレンに作製されたポアをより正確に所望の大きさに調整する方法を提案する。第5の実施形態において、所望の大きさのポアとは、電極間電流がIの時に、電極間電圧が約Vth’(第2の閾値電圧)となるような大きさのポアである。
図25は、第5の実施形態に係るナノポア形成方法のフローチャートである。
(ステップS31~S34)
ステップS31~S34については、第4の実施形態で説明したステップS21~S24とほぼ同じであるので、説明を省略する。ただし、ステップS31で電極104及び105間に印加されるパルス電流を「第1のパルス電流I」という。ステップS34において、電流Iの印加時に計測された電極間電圧が電圧Vth(第1の閾値電圧)以下となった場合(Yes)、処理はステップS35に移行する。
(ステップS35)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に、大きさが電流Iよりも大きく第1のパルス電流Iよりも小さい、パルス幅がtの第2のパルス電流I’を印加する。パルス幅tは、例えば1μs以上10s以下、又は1ms以上1s以下に設定することができる。
(ステップS36)
オペレータは、電流源を駆動させ、メンブレンを挟んで設けられた電極間に電流Iを印加して、電圧計により、その時の電極間電圧を計測する。
(ステップS37)
オペレータは、計測された電極間電圧が電圧Vth’(第2の閾値電圧)以下であるかを判断する。電極間電圧が電圧Vth’よりも大きい場合(No)、処理はステップS38に移行する。電極間電圧が電圧Vth’以下となった場合(Yes)、オペレータは、ポアが所望の大きさになったと判断し、処理を終了する。
(ステップS38)
オペレータは、第2のパルス電流I’の印加回数をm=m+1として、ステップS35に戻る。本実施形態においては、m回目の第2のパルス電流I’のパルス幅をtとし、m+1回目の第2のパルス電流I’のパルス幅をtm+1とした時、t=tm+1とすることができる。
電圧Vth及びVth’は、ノイズ電流Inoiseがナノポア電流Inpよりも十分に小さくなるような値に設定することができる。具体的には、電圧Vth及びVth’は、1mV以上1V以下の範囲に設定することができる。あるいは、電圧Vth及びVth’は、1mV以上であり、電圧Vth及びVth’を電極間に印加した時にメンブレンに掛かる電界が0.3V/nm以下となるように設定することができる。あるいは、電圧Vth及びVth’は、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流が1nA以下となるような電圧に設定することができる。あるいは、電圧Vth及びVth’は、ポアが形成されていない状態のメンブレンに電圧を印加した時に、メンブレンを流れる電流がIの1/5以下となるような電圧に設定することができる。
図26は、第5の実施形態に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図26においては、スイッチ204のタイムチャートは省略している。図26に示すように、まず、電流源201の駆動により、電流Iよりも大きい第1のパルス電流Iを電極104及び105間に印加した後、スイッチ204を接点Aから接点Bに切り替えて、一旦電極間の電位差を0にする。その後、スイッチ204を接点Bから接点Aに切り替えて、電流源201の駆動により、電流Iを印加する。電流Iを印加してから一定時間経過後、電極間の電圧を電圧計205により計測する。
これを繰り返し、電極間電流がIの時の電極間電圧が電圧Vth以下となったら、電流源201の出力電流の設定値を変更して、Iよりも小さく電流Iよりも大きい第2のパルス電流I’を印加する。その後、電流Iを印加し、その最中の電極間電圧を計測する。第2のパルス電流I’の印加と電流Iの印加時の電圧計測を繰り返し、電極間電圧がVth’以下となった時点で処理は終了する。
以上のように、本実施形態では、閾値電圧を2段階に設けている。すなわち、電圧Vthと電圧Vth’の2つである。そして、電極間電圧がVth以下となった時点から、パルス電流をIからI’に落としている。これにより、パルス電流を1回印加するごとに広がるポアの広がり量を小さくすることができる。換言すれば、パルス電流を1回印加するごとに減少する、I印加時の電極間電圧の減少量を小さくすることができる。そのため、所望の大きさのポア(電極間電圧がVth’の時に、電極間電流が約Iとなるような大きさのポア)により近い大きさのポアを形成することができる。
また、パルス電流IをI×1.5≦Iを満たすように設定し、パルス電流I’をI×1.5≦I’を満たすように設定し、かつI>I’>IならびにVth>Vth’を満たすように設定することにより、所望の大きさのポアにさらに近い大きさのポアを形成することができる。
<第5の実施形態の変形例1>
第5の実施形態においては、第1のパルス電流のパルス幅及び大きさは全ての回で同じであり、第2のパルス電流のパルス幅及び大きさも全ての回で同じであることを説明した。これに対し、第5の実施形態の変形例1では、第2の実施形態に倣い、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短くするために、第1及び第2のパルス電流の印加回数の増加とともにパルス幅を増加させる方法を提案する。
図27は、第5の実施形態の変形例1に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図27に示すように、まず、大きさIの第1のパルス電流のn回目のパルス電流のパルス幅をtとし、n+1回目の第1のパルス電流のパルス幅をtn+1として、t<tn+1とする。同様に、大きさI’のm回目の第2のパルス電流のパルス幅をtとし、m+1回目の第2のパルス電流のパルス幅をtm+1として、t<tm+1とする。これにより、1回のパルス電流の印加でメンブレン又はポアに加わるストレス量が、パルス電流の印加回数とともに増加する。したがって、所望の大きさのポアが形成されるまでにパルス電流を印加すべき回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
<第5の実施形態の変形例2>
第5の実施形態の変形例2においては、第2の実施形態の変形例(図15)に倣い、第1及び第2のパルス電流の大きさをそれぞれ印加回数の増加と共に増加させることによって、所望の大きさのポアを形成するのにかかる時間を短縮する方法を提案する。
図28は、第5の実施形態の変形例2に係るナノポア形成方法をナノポア形成装置300により実行するためのタイムチャートである。図28に示すように、n回目の第1のパルス電流の大きさをIとし、n+1回目の第1のパルス電流の大きさIn+1として、I<In+1とする。ただし、第1のパルス電流の最小値は電流Iよりも大きい。電流I印加時の電極間電圧がVth以下となった後は、再度パルス電流(第2のパルス電流)を小さな値に設定する。m回目の第2のパルス電流の大きさをIとし、m+1回目の第2のパルス電流の大きさIm+1として、I<Im+1とする。ただし、第2のパルス電流の最小値は電流Iよりも大きい。電流I印加時の電極間電圧がVth’以下となるまで、第2のパルス電流を、印加回数の増加に伴って増大させる。
パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルス電流の印加中にポアが形成される確率が高くなるため、少ないパルス印加回数でメンブレン101へのポア形成が可能になる。また、パルス電流が大きくなればなるほど、そのパルスの印加中に、ポアはより広がりやすくなる。そのため、所望の大きさのポアが形成されるまでに印加すべきパルスの回数が少なくなり、その結果、所望の大きさのポアが形成されるまでの時間が短くなる。
[第6の実施形態]
第1~第5の実施形態では、パルス電流の形状を矩形波として説明したが、パルス電流の形状は必ずしも完全なる矩形波(定電流パルス)でなくてもよい。
図29は、第6の実施形態に係るパルス電流の形状の例を示す図である。このような場合、図29に示すように、パルスの大きさは、パルス電流波形中の最大値と定義され、パルス幅は、パルスの立ち上がり地点から立ち下がり地点と定義される。なお、図29に示す例はあくまで一例であり、パルス電流の波形はこれらの形に限定されない。
[第7の実施形態]
第7の実施形態においては、制御コンピュータが制御回路の各素子を駆動することにより、各実施形態のナノポア形成方法を実行するナノポア形成装置について説明する。
図30は、第7の実施形態に係るナノポア形成装置500を示す概略図である。ナノポア形成装置500は、制御コンピュータ600をさらに備える点で、第1~第3の実施形態のナノポア形成装置100と異なっている。制御コンピュータ600は、制御回路200の電流源201、可変電圧202(電圧源)及びスイッチ204(スイッチング素子)の駆動を制御する。また、制御コンピュータ600は、電流計203の計測信号の入力を受け付ける。なお、制御回路200の代わりに、第4及び第5の実施形態で説明した制御回路400を用いてもよい。
制御コンピュータ600は、制御部601、入力部602、出力部603及び記憶部604を有する。
入力部602は、例えばマウス、キーボード及びタッチパネルなどの入力デバイスにより実現される。ナノポア形成装置500のオペレータ(ユーザ)は、入力部602を介して、ナノポア形成方法を実行するのに必要なパラメータを入力することができる。具体的には、オペレータは、入力部602を介して、メンブレン101の材質及び厚み、所望のポアの大きさ、パルス電流の大きさ、パルス幅、スイッチ204の切り替えのタイミング、電圧Vth及びVth’、電流I及びI’をなど入力することができる。
出力部603は、例えばディスプレイ及びスピーカなどの出力デバイスにより実現できる。出力部603は、例えば、オペレータが上記のパラメータを入力するためのGUI画面、ナノポア形成の状況及び結果などをディスプレイに表示する。
記憶部604は、ポアの大きさと、そのポアにある電圧を印加した時に流れる電流の大きさとの関係を、メンブレン101の厚み又は材質ごとに記憶する。このポアの大きさと、印加電圧及び電流との関係は、例えば、予め異なる条件で複数回行った計測に基づいて得られる検量線である。
制御部601は、例えばCPU又はMPUなどのプロセッサにより実現される。制御部601は、オペレータにより入力されたパラメータに基づいて、制御回路200の各素子を駆動するための指示値を算出し、当該指示値を各素子に出力する。制御回路200の各素子は、制御部601から受け取った指示値に基づいて駆動する。また、制御部601は、オペレータにより所望のポアの大きさとメンブレン101の材質及び厚みとが入力された場合、記憶部604に記憶された検量線を読み出し、検量線と入力されたポアの大きさに基づいて、電圧Vth又はVth’を電極104及び105間に印加した時の電流I又はI’を算出することができる。これにより、オペレータが、所望する大きさのポアにある電圧を印加した時にどのくらいの電流が流れるのかわからなくても、制御部601が自動的に電圧と電流を算出するので、所望の大きさのポアを形成することができる。
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
100、300、500…ナノポア形成装置
101…メンブレン
102、103…水溶液
104、105…電極
106、108…溶液導入口
107、109…溶液出口
110、111…チャンバ
112…支持基板
113、114…シール材
200、400…制御回路
201…電流源
202…可変電圧
203…電流計
204…スイッチ
205…電圧計
600…制御コンピュータ

Claims (17)

  1. 膜に孔を形成する方法であって、
    電解液中に設けられた前記膜を挟んで設置された第1の電極及び第2の電極間に第1の電流を印加することと、
    前記第1の電極及び前記第2の電極間に第1の電圧を印加し、そのときに前記第1の電極及び前記第2の電極間に流れる第2の電流を計測することと、
    前記第2の電流が所定の閾値以上であるか否かを判断することと、を含み、
    前記第1の電流は、前記閾値よりも大きく、
    前記第2の電流が前記閾値よりも小さい場合に、前記第1の電流の印加と、前記第1の電圧の印加及び前記第2の電流の計測と、を繰り返すことを特徴とする孔形成方法。
  2. 前記第1の電圧は、1mV以上1V以下である、若しくは、1mV以上でありかつ前記第1の電圧を印加した時に前記膜にかかる電界が0.3V/nm以下となる電圧であることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  3. 前記第1の電圧は、前記孔の開いていない前記膜に対し前記第1の電圧を印加した際に、前記膜を通過する電流が1nA以下となる又は前記閾値の1/5以下となる電圧であることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  4. 前記第1の電流は、前記閾値の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  5. 0.3V/nm<前記第1の電流×前記第1の電流の1回の印加時間÷電極間容量÷メンブレンの厚み<2V/nmであることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  6. 前記第1の電流の1回の印加時間は、1μs以上10s以下であることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  7. 前記第1の電流の印加後に、前記第1の電流の印加により生じた、前記膜を挟んだ前記電解液間の電位差を解消することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  8. 前記第1の電極及び前記第2の電極は、スイッチの切り替えにより、電流源を有する第1の回路、又は、電圧源及び電流計を有する第2の回路のいずれかに接続され、
    前記第1の電流の印加後、前記スイッチの切り替えにより、前記第1の電極と前記第2の電極が前記第2の回路に接続され、
    前記第2の電流が前記閾値よりも小さい場合に、前記第1の電極と前記第2の電極が、前記第2の回路から切り離され、前記第1の回路に接続されることを特徴とする請求項1に記載の孔形成方法。
  9. 膜に孔を形成する方法であって、
    電解液中に設けられた前記膜を挟んで設置された第1の電極及び第2の電極間に第1の電流を印加することと、
    前記第1の電極及び前記第2の電極間に前記第1の電流よりも小さい第2の電流を印加し、そのときに前記第1の電極及び前記第2の電極間に生じる電位差を計測することと、
    前記電位差が所定の閾値以下であるか否かを判断することと、を含み、
    前記電位差が前記閾値よりも大きい場合に、前記第1の電流の印加と、前記第2の電流の印加及び前記電位差の計測と、を繰り返すことを特徴とする孔形成方法。
  10. 前記閾値は、1mV以上1V以下である、若しくは、1mV以上でありかつ前記閾値の電圧を印加した時に前記膜にかかる電界が0.3V/nm以下となる電圧であることを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  11. 前記閾値は、前記孔の開いていない前記膜に対し前記閾値の電圧を印加した際に、前記膜を通過する電流が1nA以下となる又は前記第2の電流の1/5以下となる電圧であることを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  12. 前記第1の電流は、前記第2の電流の1.5倍以上であることを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  13. 0.3V/nm<前記第1の電流×前記第1の電流の1回の印加時間÷電極間容量÷メンブレンの厚み<2V/nmであることを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  14. 前記第1の電流の1回の印加時間は、1μs以上10s以下であることを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  15. 前記第1の電流の印加後に、前記第1の電極と前記第2の電極を同電位にすることで、前記第1の電流の印加により生じた、前記膜を挟んだ前記電解液間の前記電位差を解消することをさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の孔形成方法。
  16. 膜に孔を形成する装置であって、
    前記膜と、
    前記膜を挟んで配置され、電解液を収容する第1の液槽及び第2の液槽と、
    前記第1の液槽に配置された第1の電極と、
    前記第2の液槽に配置された第2の電極と、
    電流源を有する第1の回路と、
    電圧源及び電流計を有する第2の回路と、
    前記第1の電極及び前記第2の電極を前記第1の回路又は前記第2の回路のいずれか一方に接続するスイッチング素子と、を備える孔形成装置。
  17. 前記電流源、前記電圧源及び前記スイッチング素子を制御する制御部をさらに備え、
    前記制御部は、
    前記電流源により、前記第1の電極及び前記第2の電極間に第1の電流を印加する処理と、
    前記スイッチング素子を前記第1の回路から前記第2の回路に切り替える処理と、
    前記電圧源により、前記第1の電極及び前記第2の電極間に第1の電圧を印加し、そのときに前記第1の電極及び前記第2の電極間に流れる第2の電流を前記電流計により計測する処理と、
    前記第2の電流が所定の閾値以上であるか否かを判断する処理と、を実行し、
    前記第1の電流は、前記閾値よりも大きく、
    前記第2の電流が前記閾値よりも小さい場合に、前記第1の電流の印加と、前記第1の電圧の印加及び前記第2の電流の計測と、を繰り返すことを特徴とする請求項16記載の孔形成装置。
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