以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る人体検知センサを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、人体検知センサ10は、検知電極12と、検知回路14と、制御部16と、電源回路18と、を備える。
検知電極12は、人体HBの有無に応じて静電容量が変化する。検知電極12は、人体HBが有る状態において、人体HBと静電結合する。これにより、検知電極12は、人体HBが無い状態よりも人体HBが有る状態において静電容量が大きくなる。このため、例えば、パルス信号を検知電極12に送信した場合に、検知電極12に流れる電流は、人体HBが無い状態よりも人体HBが有る状態において大きくなる。この例において、人体検知センサ10は、人体の有無にともなう静電容量の変化を1つの電極で検知する、いわゆる自己容量型の静電容量式の人体検知センサである。
検知回路14は、検知電極12と電気的に接続され、所定の周波数のパルス信号を検知電極12に送信することにより、検知電極12の静電容量の変化を検知する。検知回路14は、例えば、所定数のパルスのパルス信号を検知電極12に送信し、各パルスを検知電極12に印加した際に検知電極12に蓄積された電荷を検知するとともに、各パルスの印加毎の電荷を積分する。検知回路14は、この電荷の積分値により、検知電極12の静電容量の変化を検知する。
制御部16は、検知回路14による静電容量の検知を制御するとともに、検知された静電容量を基に、人体の有無を判定する。自己容量型のセンサでは、前述のように、人体HBが無い状態よりも人体HBが有る状態において検知電極12の静電容量が大きくなる。この場合、制御部16は、例えば、検知回路14によって検知された電荷の積分値が閾値を超えた場合に、人体HBが有ると判定し、検知回路14によって検知された電荷の積分値が閾値を超えない場合に、人体HBが無いと判定する。
電源回路18は、例えば、電源端子30と電気的に接続されている。電源回路18は、電源端子30を介して交流電源PSと電気的に接続される。電源回路18は、交流電源PSから供給される交流電力を直流電力に変換し、変換後の直流電力を検知回路14及び制御部16に供給する。検知回路14及び制御部16は、電源回路18からの直流電力の供給に基づいて動作する。交流電源PSは、例えば、AC100V(実効値)の商用電源である。電源端子30は、例えば、コンセントプラグである。
電源回路18は、例えば、整流回路31と、平滑コンデンサ32と、変換回路33と、を有する。整流回路31は、交流電源PSから供給された交流電圧を整流し、脈流の整流電圧に変換する。整流回路31は、例えば、ダイオードブリッジを用いた全波整流器であり、交流電圧を全波整流した整流電圧に変換する。整流回路31は、例えば、半波整流器などでもよい。
平滑コンデンサ32は、整流回路31によって整流された整流電圧を平滑化し、整流電圧を直流電圧に変換する。
変換回路33は、平滑コンデンサ32によって変換された直流電圧を検知回路14及び制御部16に対応した直流電力に変換する。変換回路33は、いわゆるDC-DCコンバータである。変換回路33は、例えば、100Vの直流電圧を5V~24V程度の直流電圧に変換する。変換回路33は、換言すれば、降圧コンバータである。変換回路33は、変換後の直流電力を検知回路14及び制御部16に供給する。これにより、検知回路14及び制御部16が、変換回路33(電源回路18)からの直流電力の供給に応じて動作可能となる。
変換回路33は、一次側(交流電源PS側)と二次側(負荷側)とを電気的に絶縁するトランス34を有する。変換回路33は、換言すれば、入力側と出力側とを電気的に絶縁する。変換回路33は、例えば、絶縁型の変換器である。変換回路33は、例えば、フライバックコンバータである。但し、変換回路33は、必ずしも絶縁型の変換器でなくてもよい。電源回路18の構成は、交流電力を検知回路14及び制御部16に応じた直流電力に変換可能な任意の構成でよい。
電源回路18は、例えば、コモンモードノイズを抑制するためのコンデンサ35、36をさらに有する。コンデンサ35、36は、電源端子30と整流回路31との間に設けられる。コンデンサ35の一端は、整流回路31の一方の入力端子と電気的に接続される。コンデンサ35の他端は、共通電位GNDに設定される。コンデンサ36の一端は、整流回路31の他方の入力端子と電気的に接続される。コンデンサ36の他端は、共通電位GNDに設定される。共通電位GNDは、例えば、大地の電位(いわゆるアース)である。共通電位GNDは、例えば、装置の導電性のフレーム又はシャーシなどの電位(いわゆるフレームグラウンドやシャーシグラウンド)などでもよい。
電源回路18は、コンデンサ37をさらに有する。コンデンサ37は、変換回路33の一次側の共通電位GNDと二次側の共通電位GNDとの間に設けられる。コンデンサ37は、変換回路33の電圧変換動作によって二次側のGNDに乗るノイズを抑制する。
検知回路14は、例えば、送信パルス出力部20と、送信電荷量計測部22と、を有する。送信パルス出力部20は、制御部16と接続され、制御部16からの送信指示の入力に応じてパルス信号を検知電極12に出力する。制御部16は、送信パルス出力部20に送信指示を入力することにより、検知回路14による静電容量の検知を制御する。
送信電荷量計測部22は、送信パルス出力部20から検知電極12にパルス信号を送信した際の検知電極12の電荷量を基に、検知電極12の静電容量を計測し、計測した検知電極12の静電容量を制御部16に入力する。送信電荷量計測部22は、例えば、電荷の積分値を検知電極12の静電容量として制御部16に入力する。
図2は、第1の実施形態にかかる検知回路の具体例の一例を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、送信パルス出力部20は、例えば、切替スイッチ40と、基準電圧源41と、保護抵抗42と、駆動回路43と、を有する。切替スイッチ40は、第1端子40aと第2端子40bと第3端子40cとを有する。第1端子40aは、基準電圧源41と接続される。第1端子40aには、基準電圧源41から供給された直流電圧が入力される。第2端子40bは、送信電荷量計測部22と接続される。第3端子40cは、保護抵抗42を介して検知電極12と接続される。
保護抵抗42は、検知電極12と切替スイッチ40との間に設けられる。保護抵抗42は、電子部品から構成される検知回路14を、外部から入ってくる電気的なストレスから保護する部品である。
切替スイッチ40は、図示を省略した制御端子をさらに有し、制御端子を介して駆動回路43と接続される。切替スイッチ40は、駆動回路43の駆動に基づいて、第1端子40aと第3端子40cとを導通させた第1状態と、第2端子40bと第3端子40cとを導通させた第2状態と、を交互に切り替える。
駆動回路43は、制御部16と接続され、制御部16から入力された送信指示に応じて、切替スイッチ40の第1状態と第2状態とを切り替える。
図2において、C1は、検知電極12から近接する人体HBを介して共通電位GNDに繋がる静電容量を模式的に表している。従って、静電容量C1は、人体HBが検知電極12に近接している状態と、近接していない状態と、によって変化する。
切替スイッチ40を第1端子40aと第3端子40cとを導通させた第1状態にすると、基準電圧源41と検知電極12とが導通し、静電容量C1に電荷が蓄積される。このように、第1状態は、換言すれば、検知電極12の静電容量C1に電荷を蓄積させる状態である。
切替スイッチ40を第2端子40bと第3端子40cとを導通させた第2状態にすると、検知電極12と送信電荷量計測部22とが導通し、静電容量C1に蓄積された電荷が、送信電荷量計測部22に入力される。このように、第2状態は、換言すれば、検知電極12の静電容量C1に蓄積された電荷を送信電荷量計測部22に出力させる状態である。
駆動回路43は、制御部16から送信指示が入力された際に、所定の周波数で切替スイッチ40の第1状態及び第2状態を切り替え、これを繰り返す。この切替スイッチ40の切り替えにより、基準電圧源41の電圧に応じたパルス信号が検知電極12に入力されるとともに、静電容量C1に蓄積された電荷が、送信電荷量計測部22に入力される。パルス信号の周波数は、切替スイッチ40の切り替えの周波数に応じて変更することができる。
送信電荷量計測部22は、例えば、積分回路50を有する。切替スイッチ40の切り替えによって送信電荷量計測部22に入力された静電容量C1の電荷は、積分回路50に入力される。積分回路50の出力は、切替スイッチ40の切り替え回数、すなわち「積分回数」に比例して増大する。
電気回路にはホワイトノイズと呼ばれるランダムノイズが必ず発生するが、積分回数が増えるほど、ランダムノイズが平均化され、積分回路50の出力は安定する。つまり、積分回数が増えるほど、信号量が増えノイズが減少するので、検知回路14としては、高S/Nの動作となる。
積分回路50は、切替スイッチ40の切り替えに応じて所定の周波数で入力される静電容量C1の電荷を積分し、積分値を検知結果として制御部16に出力する。人体HBが有る状態(検知電極12に人体が近接している状態)の静電容量C1は、人体HBが無い状態(検知電極12に人体が近接していない状態)の静電容量C1よりも大きくなる。従って、切替スイッチ40の切り替えを所定の周期で所定の回数行い、上記のように静電容量C1の電荷を積分した場合、人体HBが有る状態の積分値(変化量)は、人体HBが無い状態の積分値よりも大きくなる。制御部16は、この積分値を基に、人体HBの有無を判定する。
積分回路50は、例えば、オペアンプ51と、コンデンサ52と、リセットスイッチ53と、を有する。オペアンプ51の非反転入力端子は、基準電位GNDに設定されている。オペアンプ51の反転入力端子は、切替スイッチ40の第2端子40bと接続されている。これにより、切替スイッチ40を第2状態にすると、静電容量C1に蓄積された電荷が、オペアンプ51の反転入力端子に入力される。コンデンサ52の一端は、オペアンプ51の出力端子と接続されている。コンデンサ52の他端は、オペアンプ51の反転入力端子と接続されている。また、オペアンプ51の出力端子は、制御部16と接続されている。これにより、静電容量C1に蓄積された電荷が、オペアンプ51の反転入力端子に入力される毎に、対応する電荷がコンデンサ52に蓄積され、コンデンサ52の電荷が積分値として制御部16に入力される。また、リセットスイッチ53は、コンデンサ52に並列に接続され、図示を省略した制御端子をさらに有し、制御端子を介して制御部16と接続される。リセットスイッチ53は、制御部16の制御に基づいて、コンデンサ52を開放状態と短絡状態とに切り替える。
積分回路50は、換言すれば、反転増幅回路の帰還抵抗をコンデンサに置き換えた回路である。この場合、静電容量C1に蓄積された電荷を、オペアンプ51の反転入力端子に入力する毎に、オペアンプ51の出力電圧は、低下する。このため、この積分回路50の場合、制御部16は、オペアンプ51の出力電圧が、リセットスイッチ53が短絡状態の出力電圧を基準とし、積分後にどれだけ出力電圧が低下したかを積分値、つまり、静電容量の検知結果として扱う。
また、制御部16は、コンデンサ52と並列に接続されたリセットスイッチ53の解放状態と短絡状態の切り替えを制御する。制御部16は、静電容量の検知動作の準備として、まず、リセットスイッチ53を短絡状態としてコンデンサ52に蓄積された電荷を放電して、積分回路50の積分値をリセットし、その後、リセットスイッチ53を開放状態とし、切替スイッチ40の切り替えを所定の周波数で所定の回数行い、その積分値に基づいて人体HBの有無の判定を行った後、リセットスイッチ53を短絡状態として積分回路50の積分値を再びリセットし、次の検知動作に備える。制御部16は、これを所定の周期で繰り返すことにより、検知回路14による人体HBの検知動作を所定の周期で繰り返し行うことになり、結果として、人体HBの検知動作を連続的に行うことができる。
図3は、第1の実施形態にかかる人体検知センサの動作の一例を模式的に表すグラフである。
図3に表したように、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせる。所定位相は、交流電源PSの交流電圧の一周期を所定数Nで均等に分けた位相に相当する。換言すれば、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の度に、交流電源PSの交流電圧の一周期を所定数Nで等分した位相ずつずれていくように、検知電極12の静電容量の検知の周期を設定する。
図3では、所定数Nを「6」とし、交流電源PSの交流電圧の一周期を「6」で均等に分けた例を示している。この例において、所定位相は、60°である。制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して60°ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせる。
また、この例において、制御部16は、位相が遅れる方向に検知の開始のタイミングをずらしている。すなわち、制御部16は、検知の周期を交流電源PSの交流電圧の周期+60°に設定している。例えば、交流電圧の周波数が50Hzである場合には、制御部16は、約23.3ms(20ms+3.3ms)の周期で、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に行わせる。換言すれば、制御部16は、交流電源PSの交流電圧の位相に対し、0°、60°、120°、180°、240°、300°のタイミングで、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に行わせる。
制御部16は、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせるとともに、所定数Nの静電容量の検知結果の平均値を算出し、この平均値を基に、人体HBの有無を判定する。制御部16は、より具体的には、積分回路50から入力される積分値の所定数Nの平均値を算出する。制御部16は、例えば、静電容量の検知が行われる毎に、所定数Nの静電容量の検知結果の移動平均を算出する。制御部16は、例えば、静電容量の検知が行われる毎に、直近の所定数Nの静電容量の検知結果の平均値を算出する。図3に表した例では、制御部16は、直近の6個の静電容量の検知結果(積分回路50の積分値)の平均値を算出する。
なお、平均値の算出は、所定数Nの静電容量の検知結果に限るものではない。例えば、この例では、12個や18個など、所定数Nの整数倍の静電容量の検知結果を基に、平均値を算出してもよい。あるいは、0°と120°と240°や0°と180°など、所定数Nの静電容量の検知結果のうちの2つや3つの検知結果を用いて平均値を算出してもよい。制御部16は、例えば、最新の静電容量の検知結果を含む複数の静電容量の検知結果を基に、平均値の算出を行えばよい。制御部16は、所定数Nの静電容量の検知結果のうちの少なくともいずれかの検知結果を用いて平均値を算出すればよい。
制御部16は、所定数Nの静電容量の検知結果の平均値に対して所定の閾値を設定する。制御部16は、平均値が閾値を超えない場合に、人体HBが無いと判定し、平均値が閾値を超えた場合に、人体HBが有ると判定する。これにより、検知回路14によって人体HBの有無を検知することができ、制御部16において人体HBの有無を判定することができる。
この例では、前述のように、積分後にどれだけ出力電圧が低下したかを積分値、つまり、静電容量の検知結果として扱う。従って、制御部16は、平均値が所定の閾値よりも大きい場合に、人体HBが無いと判定し、平均値が所定の閾値以下の場合に、人体HBが有ると判定する。
図1及び図2に表したように、検知回路14のGNDは、人体検知センサ10の二次側のGNDである。また、電源回路18の一次-二次間は、ノイズ抑制用のコンデンサ37で繋がっている。一方で、検知対象の人体HBの電位は、大地を基準に安定する。このため、検知回路14による検知電極12の静電容量の検知結果は、一次側の交流電源PSの電位変動の影響を受けてしまう可能性がある。
図3に表したように、この例では、検知電極12の静電容量の検知を6回(所定数N回)行う毎に、交流電源PSの交流電圧の位相状態が、初期の位相状態(1回目の検知の交流電圧の位相状態)に戻る。このため、所定数Nの静電容量の検知結果の平均値を算出することで、検知電極12の静電容量の検知結果における交流電源PSの電位変動の影響を、交流電源PSの1周期に亘って平均化することになり、交流電源PSの影響が一部の位相状態に偏ることがなくなるため、交流電源PSの電位変動の影響を抑制することができる。従って、平均値を基に人体HBの有無を判定することにより、人体HBの誤検知を抑制することができる。このように、本実施形態に係る人体検知センサ10では、交流電源PSによる電位変動の影響に基づく誤検知を抑制することができる。
なお、図3では、理解を用意にするために、検知を開始したタイミングにおける位相の0°を交流電源PSの交流電圧の位相の0°と合わせている。換言すれば、検知回路14による検知電極12の静電容量の検知のタイミングを交流電源PSの交流電圧の位相と同期させている。但し、検知回路14による検知電極12の静電容量の検知のタイミングは、必ずしも交流電源PSの交流電圧の位相と同期していなくてもよい。検知回路14による検知電極12の静電容量の検知は、交流電源PSの交流電圧の任意の位相において開始してよい。例えば、検知を開始するタイミングが、交流電源PSの位相の10°、70°、130°、190°、250°、310°であってもよい。この場合にも、上記のように、所定数Nの静電容量の検知結果の平均値を算出することで、交流電源PSの電位変動の影響を抑制することができる。例えば、交流電源PSの交流電圧のゼロクロス点を検出することなどにより、検知回路14による検知電極12の静電容量の検知のタイミングを、交流電源PSの交流電圧の位相と同期させるようにしてもよい。この場合には、交流電源PSの電位変動の影響をより適切に抑制することができる。
所定数Nは、「6」に限ることなく、2以上の任意の整数でよい。但し、所定数Nを小さくし過ぎると、交流電源PSの電位変動の影響を抑制する効果が低くなってしまう。反対に、所定数Nを大きくし過ぎると、平均値の演算の処理が複雑になってしまう。従って、所定数Nは、「6」程度とすることが好適である。
所定位相は、60°に限ることなく、所定数Nに応じた任意の位相でよい。また、所定位相は、例えば、制御部16の制御のタイミングなど(制御部16に用いるマイコンの内部クロックの周波数やタイマー回路のビット値の設定など)により、交流電源PSの交流電圧の一周期を厳密に所定数Nで均等に分けた位相とはならない可能性がある。交流電源PSの交流電圧の一周期を所定数Nで均等に分けた位相に相当する所定位相は、交流電圧の一周期を所定数Nで均等に分けた位相に略同じであればよく、所定の誤差を含んでもよい。所定位相は、例えば、交流電圧の一周期を所定数Nで均等に分けた位相に対して±1°程度の誤差を含んでもよい。すなわち、理論的には誤差を含まない方が望ましいが、誤差があれば直ちに効果が無くなるというわけではない。
また、図3に表した例では、制御部16は、位相が遅れる方向に検知の開始のタイミングをずらしている。これとは反対に、制御部16は、位相が進む方向に検知の開始のタイミングをずらしてもよい。制御部16は、検知の周期を交流電源PSの交流電圧の周期-60°に設定してもよい。制御部16は、例えば、交流電源PSの交流電圧の一周期に所定位相を加算又は減算することにより、検知電極12の静電容量の検知の周期を設定する。但し、制御部16は、交流電圧の一周期に限ることなく、交流電圧の二周期や三周期に所定位相を加算又は減算することにより、検知電極12の静電容量の検知の周期を設定してもよい。例えば、図3に表した例では、静電容量の検知の周期が、交流電圧の(1+1/6)周期であるが、これを(2±1/6)周期、(3±1/6)周期としても良い。
図4は、第1の実施形態にかかる人体検知センサの動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図4に表したように、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の周期が経過したか否かを判定する(図4のステップS101)。上記のように、制御部16は、例えば、交流電源PSの交流電圧の一周期に所定位相を加算又は減算することにより、検知電極12の静電容量の検知の周期を設定し、設定した周期が経過したか否かを判定する。
制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の周期が経過したと判定すると、検知回路14から検知電極12へのパルス信号の出力を開始する(図4のステップS102)。
制御部16は、パルス信号のパルスの数が所定数に達したか否かを判定し、パルスの数が所定数に達するまで検知回路14から検知電極12へのパルス信号の出力を行う(図4のステップS103)。
制御部16は、パルスの数が所定数に達したと判定した後、検知電極12の静電容量の検知結果を検知回路14から取得する(図4のステップS104)。制御部16は、例えば、積分回路50の積分値を検知電極12の静電容量の検知結果として取得する。
制御部16は、検知電極12の静電容量の検知結果を取得した後、取得した静電容量値のデータを記憶する(図4のステップS105)。
図5は、第1の実施形態にかかる人体検知センサの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図5に表したように、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知結果を取得すると、取得した最新の静電容量値のデータと、検知の開始のタイミングにおける位相の関係と、を関連付けて記憶する。なお、位相は、前述のように、最初の検知のタイミングの位相を0°とし、検知毎に所定位相(この例では60°)ずつずれる相対的な位相であり、必ずしも交流電源PSの交流電圧の位相と同期する位相ではない。また、制御部16は、静電容量値と位相とを制御部16の内部のメモリに記憶させてもよいし、接続された外部の記憶部などに記憶させてもよい。
制御部16は、静電容量値のデータ及び位相を複数記憶する。制御部16は、例えば、最新の静電容量値のデータ及び位相を記憶する際に、最も古い静電容量値のデータ及び位相を消去する。これにより、データ量が過度に増えてしまうことを抑制することができる。図5では、18個のデータを記憶する例を示している。制御部16が記憶するデータの数は、これに限ることなく、静電容量の平均値を算出可能な任意の数でよい。制御部16は、少なくとも所定数N(この例では6個)のデータを記憶していればよい。
制御部16は、静電容量値のデータと位相とを関連付けて記憶した後、ノイズ除去処理を実行する(図4のステップS106)。ノイズ除去処理は、例えば、電源電圧の変動などのノイズに起因する静電容量の単発的な変化を除去する処理である。換言すれば、ノイズ除去処理は、人体HBの有無とは無関係な静電容量の瞬時的な変化を除去する処理である。制御部16は、例えば、記憶した過去の静電容量値のデータを基に、ノイズ除去処理を実行する。なお、ノイズ除去処理を実行する場合には、少なくとも所定数N+1のデータを記憶する必要がある。このように、記憶するデータの数は、ノイズ除去処理の有無などに応じて適宜設定すればよい。
図6は、ノイズ除去処理の動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図7は、ノイズ除去処理の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図6に表したように、制御部16は、ノイズ除去処理を開始すると、まず、処理禁止カウンタの値が0か否かを判定する(図6のステップS201)。
制御部16は、処理禁止カウンタの値が0であると判定した場合には、記憶された複数のデータを基に、最新のデータと6回前のデータとを比較する(図6のステップS202)。すなわち、制御部16は、処理禁止カウンタの値が0であると判定した場合には、最新のデータと同じ位相の前回のデータを読み出し、最新のデータと前回のデータとを比較する。制御部16は、換言すれば、検知電極12の静電容量の検知結果を取得した際に、取得した最新の静電容量値と所定数N前に取得した静電容量値とを比較する。
制御部16は、最新のデータと前回のデータとを比較した後、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が所定の閾値以上か否かを判定する(図6のステップS203)。換言すれば、制御部16は、最新のデータが前回のデータよりも所定値以上大きいか、又は最新のデータが前回のデータよりも所定値以上小さいかを判定する。
例えば、図7のタイミングt0に表したように、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値未満である場合には、前回のデータとの差が小さく、人体HBの有無の状態に変化が無く、ノイズの影響も小さいと考えられる。従って、制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値未満であると判定した場合には、最新のデータをそのままとして、ノイズ除去処理を終了する。
一方、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値以上である場合には、前回のデータとの差が大きく、人体HBの有無の状態に変化が有ったか、もしくはノイズの影響を受けていると考えられる。人体HBの有無の状態に変化が有った場合には、前回のデータとの差が大きい状態が、ある程度連続する。一方、ノイズの影響を受けている場合には、前回のデータとの差が大きい状態が、瞬時的に発生し、すぐに差の小さい状態に戻る。従って、制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値未満の状態から閾値以上の状態に変化した場合には、まずノイズの影響を疑い、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換える(図6のステップS204)。例えば、図7のタイミングt1に表したように、この例では、制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値以上であると判定した場合に、最新のデータを6回前のデータに書き換える。
このように、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知結果を取得した際に、取得した最新の静電容量値と所定数N前に取得した静電容量値とを比較し、最新の静電容量値と所定数N前の静電容量値との差の絶対値が所定の閾値以上である場合に、最新の静電容量値を所定数N前の静電容量値に書き換える。
制御部16は、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換えた後、処理禁止カウンタに6をセットし、ノイズ除去処理を終了する(図6のステップS205、図7のタイミングt1)。ここで、処理禁止カウンタにセットする値は、より詳しくは、所定数Nの値である。換言すれば、交流電源PSの交流電圧の位相状態が、初期の位相状態に戻る検知の回数である。
制御部16は、ステップS201において、処理禁止カウンタの値が0ではないと判定した場合には、続けて、処理禁止カウンタの値が6か否かを判定する(図6のステップS206)。換言すれば、制御部16は、1回目のデータの書き換えが行われた直後か否かを判定する。
例えば、図7のタイミングt2に表したように、制御部16は、処理禁止カウンタの値が6であると判定した場合には、ステップS202と同様に、記憶された複数のデータを基に、最新のデータと6回前のデータとを比較する(図6のステップS207)。
制御部16は、最新のデータと前回のデータとを比較した後、ステップS203と同様に、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が所定の閾値以上か否かを判定する(図6のステップS208)。制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値未満であると判定した場合には、最新のデータをそのままとして、ノイズ除去処理を終了する。
制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が所定の閾値以上と判定した場合には、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換える(図6のステップS209)。
制御部16は、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換えた後、処理禁止カウンタの値を1減らし、ノイズ除去処理を終了する(図6のステップS210)。但し、処理禁止カウンタの最小値は、0である。
また、制御部16は、例えば、図7のタイミングt3~t7に表したように、ステップS206において、処理禁止カウンタの値が6ではないと判定した場合には、ステップS210に進み、処理禁止カウンタの値を1減らす処理を行い、データの書き換えなどを行うことなくノイズ除去処理を終了する。
このように、制御部16は、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が閾値未満の状態から閾値以上の状態に変化した際に、最初の2回の検知については、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換える。これにより、瞬時的に発生するノイズの影響を抑制することができる。
そして、制御部16は、3回目以降の検知については、データの書き換えを行わないようにする。すなわち、ノイズ除去処理を実行した場合、その次の回を1回目とすれば、1回目はノイズ除去処理を行ない、2~6回目の検知はノイズ除去処理を行なわない。これにより、データの変化の原因が瞬時的なノイズでなく、実際に人体HBの有無の状態が変化している場合に、人体HBの検知が遅れてしまうことを抑制することができる。なお、データの書き換えを行う検知の回数は、2回に限ることなく、任意の回数でよい。すなわち、制御部16は、最新の静電容量値を所定数N前の静電容量値に書き換える処理を、所定回数以上連続して行わない。同様に、データの書換えを禁止する検知の回数は、5回に限ることなく、任意の回数でよい。これらの回数は、静電容量の検知周期と、目標とするノイズの除去性能と人体検知の反応時間に応じて決定すればよい。
制御部16は、ノイズ除去処理を実行した後、所定数Nの静電容量値の平均値を算出する(図4のステップS107)。
図8は、平均値の算出の動作の一例を模式的に表す説明図である。
図8に表したように、検知電極12の静電容量値における交流電源PSの電位変動の影響は、交流電源PSの交流電圧の位相毎に概ね同様の傾向として表れる。例えば、図8の例では、120°の位相において静電容量値が他の位相よりも低くなり、300°の位相において静電容量値が他の位相よりも高くなる傾向にある。
従って、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせ、所定数Nの静電容量値の平均値を算出する。これにより、図8に実線で表したように、検知電極12の静電容量値における交流電源PSの電位変動の影響を平均化し、交流電源PSの電位変動の影響を抑制することができる。
また、図8に破線で表したように、3つの静電容量値を用いて平均値を算出した場合にも、交流電源PSの電位変動の影響を抑制することができる。3つの静電容量値を用いて平均値を算出した場合と、6つの静電容量値を用いて平均値を算出した場合と、を比較すると、6つの静電容量値を用いて平均値を算出した場合において、交流電源PSの電位変動の影響をより抑制できている。これは、平均回数を増やせば、その回数分の抑制効果が高まるということではない。図8は、交流電源PSの交流電圧に対し、1/6位相ずつずらすタイミングで静電容量の検知を行っているため、3回の平均は交流電圧の1周期に渡らず、その一部(1/2周期)について平均化を行っているに過ぎない。この場合、平均の計算を行っても、平均される範囲が交流電圧の一部の位相に偏るため、影響の抑制効果が低くなる。よって、3回の平均で済ませるなら、交流電源PSの交流電圧に対し、1/3位相ずつずらすタイミングで検知を行う方がよい。つまり、交流電圧に対して1/6位相ずつずらして検知した静電容量値について、1つおきに値を選んで3つのデータの平均を使うことが好ましい。例えば、0°、120°、240°の位相の値を平均すれば良い。同様に、2つの静電容量値を用いて平均値を算出するなら、2つおきに値を選び、0°と180°の位相の値を平均するのが良い。すなわち、平均値を算出するための静電容量値を、交流電源PSの交流電圧の1周期に渡って均等に分割するタイミングで検知された値を選ぶようにすることで、その影響を抑制する効果が向上する。なお前述のように、平均回数を6ではなく3乃至2まで減らすことで、例えば静電容量値が比較的安定した状態が継続している場合に、平均演算を行うマイコンの消費を低減するなどの効果がある。
制御部16は、所定数Nの静電容量値の平均値を算出した後、平均値を基に、人体HBの有無を判定する(図4のステップS108)。制御部16は、平均値が閾値を超えない場合に、人体HBが無いと判定し、平均値が閾値を超えた場合に、人体HBが有ると判定する。このように、平均値を基に、人体HBの有無を判定することにより、交流電源PSによる電位変動の影響に基づく誤検知を抑制することができる。
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態にかかる検知回路の具体例の一例を模式的に表すブロック図である。
図9に表したように、この例では、検知回路14aが、送信周波数設定部24をさらに有する。なお、上記第1の実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
送信周波数設定部24は、制御部16と接続され、制御部16からの送信周波数設定信号の入力に応じて、周波数情報を送信パルス出力部20に入力する。
送信パルス出力部20は、制御部16から送信指示の入力を受けるとともに、送信周波数設定部24から周波数情報の入力を受けることにより、周波数情報に対応した周波数のパルス信号を検知電極12に出力する。
送信パルス出力部20は、換言すれば、送信周波数設定部24から入力された周波数情報に応じてパルス信号の周波数を変化させる。このように、検知回路14aでは、周波数の異なる複数のパルス信号を検知電極12に送信可能である。
制御部16は、送信周波数設定信号を送信周波数設定部24に入力してパルス信号の周波数を設定し、送信パルス出力部20に送信指示を入力することにより、検知回路14による静電容量の検知を制御する。
駆動回路43は、送信周波数設定部24及び制御部16と接続され、送信周波数設定部24から入力された周波数情報、及び制御部16から入力された送信指示に応じて、切替スイッチ40の第1状態と第2状態とを切り替える。
駆動回路43は、制御部16から送信指示が入力された際に、周波数情報に応じた周波数で切替スイッチ40の第1状態及び第2状態を切り替え、これを繰り返す。この切替スイッチ40の切り替えにより、基準電圧源41の電圧に応じたパルス信号が検知電極12に入力されるとともに、静電容量C1に蓄積された電荷が、送信電荷量計測部22に入力される。このように、パルス信号の周波数は、例えば、切替スイッチ40の切り替えの周波数に応じて変更することができる。
図10は、第2の実施形態に係る人体検知センサの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図11及び図12は、第2の実施形態に係る人体検知センサの動作の一例を模式的に表すグラフである。
図10~図12に表したように、この例において、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14aに所定の周期で行わせるとともに、周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知回路14aから検知電極12に送信させる。
制御部16は、定期的に送信周波数設定部24に送信周波数設定信号を入力することにより、複数の周波数を所定の順序で送信周波数設定部24に設定する。検知回路14aは、制御部16から入力された送信周波数設定信号に応じて切替スイッチ40の切り替えの周波数を変化させることにより、周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知電極12に送信する。
図10に表したように、制御部16は、例えば、検知電極12の静電容量の検知を行う所定の周期毎に、パルス信号の周波数を変化させる。なお、パルス信号の周波数を変化させるタイミングは、これに限定されるものではない。例えば、交流電源PSの交流電圧の一周期分に相当する所定数Nの静電容量値を取得する毎に、パルス信号の周波数を変化させてもよい。例えば、図10に表した例では、60°の位相毎の6個の静電容量値を取得する毎に、パルス信号の周波数を変化させてもよい。但し、図10に表したように、検知電極12の静電容量の検知を行う所定の周期毎に、パルス信号の周波数を変化させることにより、複数の周波数による測定を均等にばらつかせることができる。例えば、検知電極12の静電容量の検知におけるノイズの影響をより適切に抑制することができる。
制御部16は、例えば、第1周波数f1、第2周波数f2、及び第3周波数f3の周波数の異なる3つのパルス信号を検知回路14aから検知電極12に送信させる。検知回路14aは、例えば、第1周波数f1の第1パルス信号、第2周波数f2の第2パルス信号、第3周波数f3の第3パルス信号の順序で検知電極12に送信し、これを繰り返すことにより、3つのパルス信号を循環させるように検知電極12に送信する。従って、この例では、6つの位相と3つの周波数で、18通りの組み合わせとなる。
第1周波数f1は、例えば、9kHzである。第2周波数f2は、例えば、10kHzである。第3周波数f3は、例えば、11kHzである。なお、各周波数は、上記に限ることなく、人体HBを適切に検知できるように適宜設定すればよい。また、周波数の異なる複数のパルス信号の順序は、任意の順序でよい。例えば、図10に表したように、第1周波数f1、第2周波数f2、及び第3周波数f3の順序でパルス信号の周波数を切り替えつつ、6回毎(所定数N回毎)に周波数を1つずらすようにしてもよい。また、周波数の異なる複数のパルス信号の数は、3つに限ることなく、任意の数でよい。
また、パルス信号の周波数を変化させる構成は、上記のように、制御部16から入力された送信周波数設定信号に応じて変化させる構成に限定されるものではない。例えば、検知回路14aに複数の周波数や各周波数の送信順序などを予め記憶させておき、検知回路14aから自動的に周波数の異なる複数のパルス信号を循環させるように送信してもよい。この場合、送信周波数設定部24などは、省略可能である。このように、検知回路14aの構成は、上記に限定されるものではない。検知回路14aの構成は、周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で循環させるように検知電極12に送信可能な任意の構成でよい。
制御部16は、周波数の異なる複数のパルス信号の送信によって取得される複数の静電容量値を基に人体HBの有無を判定する。制御部16は、例えば、周波数の異なる3つのパルス信号の送信によって取得される3つの静電容量値を基に人体HBの有無を判定する。
制御部16は、所定のパルス信号の送信によって静電容量値(積分値)を取得した際に、所定のパルス信号の送信によって取得された最新を含む直近複数回の静電容量値を基に、静電容量値の変動を判定する。
制御部16は、例えば、第1周波数f1の第1パルス信号を検知電極12に送信して静電容量値を取得した際に、第1パルス信号の送信によって取得された最新の静電容量値と、1回前の第1パルス信号の送信によって取得された静電容量値と、2回前の第1パルス信号の送信によって取得された静電容量値と、の直近3回分の静電容量値を基に、静電容量値の変動を判定する。制御部16は、例えば、3回分の静電容量値の分散を求め、分散が所定の閾値未満である場合に、静電容量値が変動していないと判定し、分散が所定の閾値以上である場合に、静電容量値が変動していると判定する。
図11及び図12では、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値の変動N(f1)、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値の変動N(f2)、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値の変動N(f3)を一例として表している。また、図11及び図12では、変動N(f1)、変動N(f2)、変動N(f3)において、変動していない状態をLo、変動している状態をHiとして表している。
図11の期間T11、T12、及び図12の期間T22、T24に表したように、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値、及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値のそれぞれが変動している場合には、人体HBの影響による検知電極12の静電容量値の変動である可能性が高い。
一方、図12の期間T21に表したように、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値のみが変動している場合や、図12の期間T23に表したように、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値のみが変動している場合には、人体検知センサ10が、電源ノイズなどの環境ノイズの影響を受けている可能性が高い。すなわち、パルス信号の周波数が、環境ノイズの周波数と一致してしまったことに起因する静電容量値の変動である可能性が高い。
このため、制御部16は、別のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動していない状態で、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動している場合に、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値を人体HBの有無の判定から除外する。
制御部16は、例えば、図12の期間T21においては、第2パルス信号の送信によって取得された静電容量値を人体HBの有無の判定から除外し、第1パルス信号の送信によって取得された静電容量値及び第3パルス信号の送信によって取得された静電容量値のみを用いて人体HBの有無を判定する。また、制御部16は、例えば、図12の期間T23においては、第1パルス信号の送信によって取得された静電容量値を人体HBの有無の判定から除外し、第2パルス信号の送信によって取得された静電容量値及び第3パルス信号の送信によって取得された静電容量値のみを用いて人体HBの有無を判定する。
制御部16は、複数のパルス信号のそれぞれの送信によって取得された複数の静電容量値の平均値に基づいて人体HBの有無の判定を行う。制御部16は、例えば、交流電源PSの交流電圧の一周期分に相当する各位相の所定数Nの静電容量値の平均値に基づいて人体HBの有無の判定を行う。より具体的には、制御部16は、直近の6個の静電容量値の平均値に基づいて人体HBの有無の判定を行う。
この際、制御部16は、別のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動していない状態で、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動している場合に、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値を平均値の計算から除外する。
また、制御部16は、図11の期間T11、T12、及び図12の期間T22、T24に表したように、複数のパルス信号のそれぞれの最新の送信によって取得された複数の静電容量値のそれぞれが変動している場合、複数のパルス信号のそれぞれの送信によって取得された複数の静電容量値の平均値に基づいて人体HBの有無の判定を行う。
図13(a)~図13(e)は、第2の実施形態に係る人体検知センサの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図13(a)に表したように、制御部16は、複数のパルス信号の静電容量値のいずれも変動していない場合、及び複数のパルス信号の静電容量値のそれぞれが変動している場合には、複数のパルス信号のそれぞれの静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択し、各位相の直近の静電容量値の平均値を算出する。例えば、data118を測定したタイミングでは、data113からdata118までの6個の平均値を計算すれば、交流電源PSの交流電圧の一周期分に相当する各位相の6個の静電容量値の平均値を得ることができる。
図13(b)に表したように、制御部16は、第1パルス信号の静電容量値が変動し、第2パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値が変動していない場合には、第1パルス信号の静電容量値を平均値の計算から除外し、第2パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択し、各位相の直近の静電容量値の平均値を算出する。例えば、data118を測定したタイミングでは、図13(a)に比較して、位相60°のdata114の代わりに同位相のdata108を、位相240°のdata117の代わりに同位相のdata111を選び、他は同じとして6個の平均値を計算すると、第1パルス信号の静電容量値を除いて、交流電源PSの交流電圧の一周期分に相当する各位相の6個の静電容量値の平均値を得ることができる。
図13(c)に表したように、制御部16は、第2パルス信号の静電容量値が変動し、第1パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値が変動していない場合には、第2パルス信号の静電容量値を平均値の計算から除外し、第1パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択し、各位相の直近の静電容量値の平均値を算出する。
同様に、図13(d)に表したように、制御部16は、第3パルス信号の静電容量値が変動し、第1パルス信号の静電容量値及び第2パルス信号の静電容量値が変動していない場合には、第3パルス信号の静電容量値を平均値の計算から除外し、第1パルス信号の静電容量値及び第2パルス信号の静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択し、各位相の直近の静電容量値の平均値を算出する。
また、図13(e)に表したように、制御部16は、第2パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値が変動し、第1パルス信号の静電容量値のみが変動していない場合には、第2パルス信号の静電容量値及び第3パルス信号の静電容量値を平均値の計算から除外し、第1パルス信号の静電容量値のみから各位相の直近の静電容量値を選択し、各位相の直近の静電容量値の平均値を算出する。これは、第2パルス信号の静電容量値のみが変動していない場合、及び第3パルス信号の静電容量値のみが変動していない場合も同様である。
制御部16は、各静電容量値の平均値に対して閾値を設定し、平均値が閾値を超えない場合に、人体HBが無いと判定し、平均値が閾値を超えた場合に、人体HBが有ると判定する。
図14は、第2の実施形態に係る人体検知センサの動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図14に表したように、制御部16は、人体HBの検知を開始すると、検知電極12の静電容量の検知の周期が経過したか否かを判定する(図14のステップS301)。上記のように、制御部16は、例えば、交流電源PSの交流電圧の一周期に所定位相を加算又は減算することにより、検知電極12の静電容量の検知の周期を設定し、設定した周期が経過したか否かを判定する。
制御部16は、所定の周期であると判定すると、送信周波数設定部24に送信周波数設定信号を入力することにより、周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知回路14aから検知電極12に送信させるように送信周波数設定部24に設定する(図14のステップS302)。
制御部16は、周波数を設定した後、送信パルス出力部20に送信指示を入力する。検知回路14aは、送信指示の入力を受けると、制御部16から入力された送信周波数設定信号に応じて切替スイッチ40の切り替えの周波数を変化させることにより、周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知電極12に送信する(図14のステップS303)。
制御部16は、パルス信号のパルスの数が所定数に達したか否かを判定し、パルスの数が所定数に達するまで検知回路14aから検知電極12へのパルス信号の出力を行う(図14のステップS304)。
制御部16は、パルスの数が所定数に達したと判定した後、検知電極12の静電容量の検知結果を検知回路14aから取得する(図14のステップS305)。制御部16は、例えば、積分回路50の積分値を検知電極12の静電容量の検知結果として取得する。
制御部16は、検知電極12の静電容量の検知結果を取得した後、取得した静電容量値のデータを記憶する(図14のステップS306)。
図15は、第2の実施形態にかかる人体検知センサの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図15に表したように、制御部16は、検知電極12の静電容量の検知結果を取得すると、取得した最新の静電容量値のデータと、検知の開始のタイミングにおける位相の関係と、パルス信号の周波数と、を関連付けて記憶する。なお、位相は、前述のように、最初の検知のタイミングの位相を0°とし、検知毎に所定位相(この例では60°)ずつずれる相対的な位相であり、必ずしも交流電源PSの交流電圧の位相と同期する位相ではない。また、制御部16は、静電容量値と位相と周波数とを制御部16の内部のメモリに記憶させてもよいし、接続された外部の記憶部などに記憶させてもよい。
制御部16は、静電容量値と位相と周波数とを関連付けたデータを複数記憶する。制御部16は、例えば、最新のデータを記憶する際に、最も古いデータを消去する。これにより、データ量が過度に増えてしまうことを抑制することができる。図15では、18個のデータを記憶する例を示している。前述のように、この例では、6つの位相と3つの周波数で、18通りの組み合わせの静電容量値が取得される。従って、この場合には、制御部16は、位相及び周波数の各組合せに応じた、少なくとも18個のデータを記憶することが好ましい。制御部16が記憶するデータの数は、位相及び周波数の各組合せに応じた任意の数でよい。
制御部16は、静電容量値と位相と周波数とを関連付けて記憶した後、ノイズ除去処理を実行する(図14のステップS307)。ノイズ除去処理は、図6及び図7に関して説明した処理と同様に行うことができる。制御部16は、例えば、最新のデータと前回のデータとの差の絶対値が所定の閾値以上と判定した場合には、最新のデータを同じ位相の前回のデータに書き換える。この際、同じ位相の前回のデータの周波数は、最新のデータの周波数と同じでもよいし、異なってもよい。以下、ノイズ除去処理は、図6及び図7の例と同様であるから、詳細な説明は、省略する。
制御部16は、所定のパルス信号の送信によって静電容量値を取得した際に、今回の静電容量測定で使用したパルス信号と同一の所定のパルス信号の送信によって取得された最新を含む直近複数回の静電容量値を基に、直近複数回の静電容量値の分散を求める(図14のステップS308)。なお、分散の計算に用いる静電容量値の値は、少なすぎると分散の意味を持たず、多すぎると演算量が増大するので、3乃至6程度が適当である。
制御部16は、分散を求めた後、求めた分散が所定の閾値以上か否かを判定する(図14のステップS309)。制御部16は、閾値未満と判定した場合に、今回測定が行われたパルス信号の静電容量値が変動していないと判定する(図14のステップS310)。そして、制御部16は、閾値以上と判定した場合に、今回測定が行われたパルス信号の静電容量値が変動していると判定する(図14のステップS311)。
制御部16は、静電容量値の変動を判定した後、静電容量値の変動の判定結果、及び取得された静電容量値を基に、人体HBの有無を判定する(図14のステップS312)。
図16は、第2の実施形態に係る人体検知センサの動作の一例を模式的に表すフローチャートである。
図16は、第1パルス信号、第2パルス信号、及び第3パルスの周波数の異なる3つのパルス信号を送信する場合の制御部16による人体HBの有無の判定動作の一例を模式的に表す。
図16に表したように、制御部16は、人体HBの有無の判定を開始すると、まず、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS401)。すなわち図16は、図14のステップS312の判定動作の一例の詳細を示すものである。
制御部16は、変動していないと判定した場合、続いて、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS402)。
制御部16は、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値も変動していないと判定した場合、続いて、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS403)。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値も変動していないと判定した場合、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値、及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値のそれぞれの静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS404)。この例では、制御部16は、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値、及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値のそれぞれの静電容量値から0°、60°、120°、180°、240°、300°の各位相の6個の直近の静電容量値を選択する。これは図13(a)の平均値計算データの選択ルールに該当する。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第2パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS405)。これは図13(d)の平均値計算データの選択ルールに該当する。
制御部16は、ステップS402において第2パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、続いて、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS406)。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していないと判定した場合、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS407)。これは図13(c)の平均値計算データの選択ルールに該当する。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS408)。これは図13(e)の平均値計算データの選択ルールに該当する。
制御部16は、ステップS401において第1パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、続いて、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS409)。
制御部16は、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していないと判定した場合、続いて、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS410)。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値も変動していないと判定した場合、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS411)。これは図13(b)の平均値計算データの選択ルールに該当する。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS412)。
制御部16は、ステップS409において第2パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、続いて、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動しているか否かを判定する(図16のステップS413)。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していないと判定した場合、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値及び第2パルス信号の送信に基づく静電容量値を平均値の算出から除外し、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS414)。
制御部16は、第3パルス信号の送信に基づく静電容量値が変動していると判定した場合、第1パルス信号の送信に基づく静電容量値、第2パルス信号の送信に基づく静電容量値、及び第3パルス信号の送信に基づく静電容量値のそれぞれの静電容量値から各位相の直近の静電容量値を選択する(図16のステップS415)。
制御部16は、ステップS404、S405、S407、S408、S411、S412、S414、S415のいずれかで各位相の直近の静電容量値を選択した後、選択した各位相の静電容量値の平均値を算出する(図16のステップS416)。
制御部16は、平均値を算出した後、平均値が所定の閾値を超えたか否かを判定する(図16のステップS417)。
制御部16は、平均値が閾値を超えたと判定した場合、人体HBが有ると判定する(図16のステップS418)。制御部16は、平均値が閾値を超えていないと判定した場合、人体HBが無いと判定する(図16のステップS419)。これにより、人体検知センサ10では、環境ノイズなどの影響を抑制し、人体HBの有無を適切に検知することができる。
以上、説明したように、本実施形態に係る人体検知センサ10及び検知回路14aでは、所定の周期で静電容量の検知を行うとともに、所定の周期毎に周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知電極12に送信することにより、パルス信号の周波数が環境ノイズの周波数と一致してしまうことを抑制することができる。これにより、複数のパルス信号の送信によって取得される複数の静電容量値を基に人体HBの有無を判定することで、精度良く人体HBの有無を検知することができる。また、所定の周期毎に周波数の異なる複数のパルス信号を所定の順序で検知電極12に送信することにより、1回のセンシング中に送信周波数を変更する場合などと比べて、特殊なハードウェアなどを用いる必要が無く、コスト増を抑制することができる。従って、コスト増を抑制しつつ、環境ノイズの影響を抑制できる人体検知センサ10を提供することができる。
また、人体検知センサ10では、周波数の異なる3つのパルス信号を所定の順序で検知電極12に送信する。これにより、3つのパルス信号の送信によって取得される3つの静電容量値を基に人体HBの有無を判定することで、精度良く人体HBの有無を検知することができる。なお、周波数の異なる2つのパルス信号を所定の順序で送信することも可能だが、環境ノイズの周波数が、2つのパルス信号のちょうど真ん中の周波数であった場合、2つのパルス信号に基づく静電容量値の変動量が、全く同じになる可能性がある。その場合、どちらのパルス信号に基づく静電容量値を元に人体HBの有無を判定すべきか判断できなくなるが、3つのパルス信号を使えば、(限られた条件ではあるにせよ)このようなケースは起きない。また、4つ以上のパルス信号を送信し、4つ以上の静電容量値を基に人体HBの有無を判定する場合と比べて、3つのパルス信号を送信する方が、人体HBの判定までに必要となる時間を短くし、応答性の低下を抑制することができる。従って、人体検知の精度を向上させつつ、応答性の低下を抑制することができる。
また、人体検知センサ10では、制御部16が、所定のパルス信号の送信によって静電容量値を取得した際に、所定のパルス信号の送信によって取得された最新を含む直近複数回の静電容量値を基に、静電容量値の変動を判定し、別のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動していない状態で、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値が変動している場合に、所定のパルス信号の送信によって取得された静電容量値を人体HBの有無の判定から除外する。これにより、直近複数回の静電容量値の変動が大きく、ノイズを含む可能性の高い静電容量値を人体HBの有無の判定から除外し、人体検知の精度をより向上させることができる。
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態に係る人体検知センサを模式的に表すブロック図である。
図17に表したように、人体検知センサ10aでは、検知電極12が、送信電極12aと受信電極12bとを有する。検知回路14は、送信電極12a及び受信電極12bと電気的に接続され、所定の周波数のパルス信号を送信電極12aに送信することにより、受信電極12bとの静電容量の変化を検知する。
人体検知センサ10aにおいて、送信電極12aにパルス信号を送信すると、送信電極12aと受信電極12bとの静電結合により、受信電極12bが受信する電荷量(以下、受信電荷量と称す)が変化する。人体HBが有る状態では、送信電極12aと人体HBとの静電結合により、送信電極12aから受信電極12bに向かう電気力線の一部が、人体HBに向かうため、送信電極12aと受信電極12bの静電結合が減少する。このため、人体HBが有る状態では、人体HBが無い状態と比べて、送信電極12aにパルス信号を送信した際の、受信電極12bの受信電荷量が小さくなる。人体検知センサ10aは、この受信電荷量の変化により、人体HBの有無を検知する。人体検知センサ10aは、いわゆる相互容量型の静電容量式の人体検知センサである。
人体検知センサ10aの検知回路14では、送信電荷量計測部22が、受信電荷量計測部26に置き換えられている。受信電荷量計測部26は、受信電極12bの受信電荷量を検知電極12の静電容量として計測し、計測した検知電極12の静電容量を制御部16に入力する。
人体検知センサ10aでは、前述のように、人体HBが有る状態において、人体HBが無い状態よりも受信電荷量が小さくなる。従って、人体検知センサ10aの制御部16は、例えば、検知回路14によって検知された静電容量値が閾値を超えない場合に、人体HBが有ると判定し、検知回路14によって検知された静電容量値が閾値を超えた場合に、人体HBが無いと判定する。
人体検知センサ10aにおいても、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせ、所定数Nの静電容量値の平均値を算出し、この平均値を基に人体HBの有無を判定することで、検知電極12の静電容量値における交流電源PSの電位変動の影響を平均化し、交流電源PSの電位変動の影響を抑制することができる。
このように、実施形態に係る人体検知センサは、自己容量型の静電容量式の人体検知センサ10でもよいし、相互容量型の静電容量式の人体検知センサ10aでもよい。
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態にかかる便座装置を備えたトイレ装置を模式的に表す斜視図である。
図18に表したように、トイレ装置100は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)104と、その上に設けられた便座装置110と、を備える。便座装置110は、本体部112と、便座114と、便蓋116と、を有する。
以下の実施形態の説明では、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「右側方」、及び「左側方」を用いるが、これらの方向は、図18に表すように、便座114に座った使用者から見た方向である。
便器104は、下方に向けて窪んだボウル部104aを有する。便器104は、ボウル部104aにおいて使用者の尿や便などの排泄物を受ける。便座装置110の本体部112は、便器104のボウル部104aよりも後方の上部に設けられる。本体部112は、便座114及び便蓋116を開閉可能に軸支している。
便座114は、開口部114aを有する。便座114は、ボウル部104aの外縁を囲むように便器104の上に設けられ、開口部114aを介してボウル部104aを露呈させる。これにより、使用者は、便座114に座った状態でボウル部104aに排泄を行うことができる。この例では、貫通孔状の開口部114aが形成された、いわゆるO型の便座114を示している。便座114は、O型に限ることなく、U字型などでもよい。
便座装置110は、便座114の着座面を温める便座114の暖房機能を有する。また、便座装置110は、便座114に座った使用者の「おしり」などの局部を洗浄する衛生洗浄機能を有する。便座装置110は、換言すれば、衛生洗浄装置である。但し、便座装置110は、必ずしも衛生洗浄機能や暖房機能を有しなくてもよい。便座装置110は、例えば、暖房機能のみを有する暖房便座装置でもよい。
便座装置110は、人体局部の洗浄を行うためのノズル120を有する。ノズル120は、本体部112に設けられ、本体部112内に収納された位置と、本体部112からボウル部104a内に進出した位置と、に進退移動する。なお、図18では、ノズル120がボウル部104a内に進出した状態を表している。
本体部112は、リモコンなどの操作部106と通信可能に構成されている。本体部112と操作部106との間の通信は、有線通信でもよいし、無線通信でもよい。本体部112は、例えば、操作部106からの操作指示の入力に応じてノズル120をボウル部104a内に進出させる。
ノズル120は、人体局部に向けて水を吐出し、人体局部の洗浄を行う。ノズル120の先端部には、ビデ洗浄吐水口120a及びおしり洗浄吐水口120bが設けられている。ノズル120は、その先端に設けられたビデ洗浄吐水口120aから水を噴射して、便座114に座った女性の女性局部を洗浄することができる。あるいは、ノズル120は、その先端に設けられたおしり洗浄吐水口120bから水を噴射して、便座114に座った使用者の「おしり」を洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
「おしり」を洗浄するモードのなかには、例えば、「おしり洗浄」と、「おしり洗浄」よりもソフトな水流で優しく洗浄する「やわらか洗浄」と、が含まれる。ノズル120は、例えば、「ビデ洗浄」と、「おしり洗浄」と、「やわらか洗浄」と、を実行することができる。
なお、図18に表したノズル120では、ビデ洗浄吐水口120aがおしり洗浄吐水口120bよりもノズル120の先端側に設けられているが、ビデ洗浄吐水口120aおよびおしり洗浄吐水口120bの設置位置は、これだけに限定されるわけではない。ビデ洗浄吐水口120aは、おしり洗浄吐水口120bよりもノズル120の後端側に設けられていてもよい。また、図18に表したノズル120では、2つの吐水口が設けられているが、3つ以上の吐水口が設けられていてもよい。
図19は、第4の実施形態に係る便座の一部を模式的に表す断面図である。
図19は、図18のA1-A2線断面を模式的に表す。
図19に表したように、便座114は、内部空間SPを有する。換言すれば、便座114は、中空状である。便座114は、例えば、上板130と下板132とを有し、上板130と下板132とを接合することにより、上板130と下板132との間に内部空間SPを形成する。上板130は、使用者が着座する着座面130aと、下板132と対向する内表面130bと、を有する。内表面130bは、換言すれば、内部空間SP内において着座面130aと反対側を向く面である。上板130と下板132との接合は、接着剤を用いた接着でもよいし、振動溶着などを用いた溶着などでもよい。但し、便座114の構成は、上記に限ることなく、少なくとも内部空間SPと着座面130aと内表面130bとを有する任意の構成でよい。
図20は、第4の実施形態にかかる便座装置の電気的構成を模式的に表すブロック図である。
図20に表したように、便座装置110は、人体検知センサ200と、制御部202と、ヒータ204と、電源回路206と、制御負荷208と、を備える。
人体検知センサ200は、便座114に着座した人体を検知する。人体検知センサ200は、検知電極12と検知回路14とを有する。この人体検知センサ200の検知電極12及び検知回路14には、上記各実施形態に関して説明した人体検知センサ10、10aのものと同じものを用いることができる。
制御部202は、便座装置110の各部の動作を統括的に制御する。制御部202は、検知回路14及び制御負荷208と電気的に接続され、人体検知センサ200(検知回路14)及び制御負荷208の動作を制御する。このように、制御部202は、人体検知センサ200とは別に設けてもよい。
便座装置110は、例えば、複数の制御負荷208を有する。制御負荷208は、例えば、ノズル120を進退移動させるためのモーターや、ノズル120への水の供給(ノズル120からの吐水)及びノズル120への水の供給の停止を切り替えるための電磁弁などである。制御負荷208は、例えば、ノズル120に供給する水を加熱する熱交換器、ビデ洗浄吐水口120a及びおしり洗浄吐水口120bの経路の切り替えを行う切替弁、及びボウル部104a内の空気を吸引して脱臭する脱臭装置などをさらに含んでもよい。制御負荷208は、電源回路206から供給される直流電圧によって動作するとともに、制御部202によって動作を制御される任意の機器でよい。
制御部202は、例えば、図示を省略した通信回路などを介して操作部106と通信可能に接続される。制御部202には、例えば、ノズル120による局部洗浄の実行及び局部洗浄の停止など、操作部106の操作に応じた種々の操作指示が入力される。制御部202は、操作部106から入力された操作指示に応じて制御負荷208の動作を制御する。これにより、制御部202は、操作部106の操作に応じて、ノズル120による局部洗浄の実行及び局部洗浄の停止などを制御する。
検知回路14は、制御部202の制御に基づいて便座114への着座を検知し、検知結果を制御部202に入力する。制御部202は、検知回路14による着座の検知を制御するとともに、検知回路14の検知結果に基づいて、便座114に人が着座しているか否かを判定する。制御部202は、操作部106から入力される操作指示及び検知回路14の検知結果に基づいて複数の制御負荷208の動作を制御する。
制御部202は、検知回路14によって便座114への着座が検知されている場合に、操作部106からの操作指示に応じて所定の制御負荷208を動作させる。一方、制御部202は、検知回路14によって便座114への着座が検知されていない場合には、操作部106から操作指示が入力されたとしても、所定の制御負荷208を動作させない。制御部202は、例えば、着座が検知されていない場合には、ノズル120による局部洗浄を行わないようにする。これにより、使用者などが便座114に着座していない状態においてノズル120から水が吐出されてしまうことを抑制することができる。
また、例えば、脱臭装置を制御負荷208とする場合には、制御部202は、検知回路14による便座114への着座の検知に応答して、制御負荷208を動作させる。このように、制御部202は、検知回路14の検知結果に基づく制御負荷208の動作の状態を、制御負荷208の種類に応じて変化させる。制御部202は、検知回路14の検知結果に応じて制御負荷208を動作させたり、制御負荷208の動作を禁止したりする。
ヒータ204は、便座114を温める。すなわち、ヒータ204は、便座114の暖房機能を提供する。
電源回路206は、電源端子210を介して交流電源PSと電気的に接続される。電源回路206は、交流電源PSから供給される交流電圧を直流電圧に変換し、変換後の直流電圧を人体検知センサ200(検知回路14)、制御部202、及び制御負荷208に供給する。電源回路206の構成は、上記実施形態で示した電源回路18の構成と同様とすることができる。
ヒータ204は、電源端子210と接続されている。これにより、ヒータ204には、交流電源PSから供給された交流電圧が印加される。また、ヒータ204と電源端子210との間には、ヒータ204への交流電圧の印加及び印加の停止を切り替えるためのスイッチング素子220が設けられている。スイッチング素子220は、制御部202と接続されている。制御部202は、スイッチング素子220のオン・オフの切り替えを制御する。換言すれば、制御部202は、ヒータ204への通電(交流電圧の印加及び印加の停止)を制御する。
制御部202は、例えば、便座114の着座面130aの温度が、操作部106の操作などによって設定された所定の設定温度となるように、ヒータ204への通電を制御する。また、制御部202は、例えば、検知回路14によって着座が検知されていない場合には、便座114の着座面130aの温度を設定温度よりも低くする。そして、制御部202は、検知回路14によって着座が検知された場合に、便座114の着座面130aの温度を設定温度まで昇温する。これにより、不使用時における不要な電力の消費を抑え、便座装置110の消費電力を抑えることができる。
制御部202は、例えば、交流電圧の複数の半波を1単位とするパターン制御方式によってヒータ204への通電を制御する。制御部202は、例えば、ゼロクロス点の検出結果に応じてヒータ204への通電及び通電の停止を切り替える。制御部202は、例えば、着座面130aの温度を上昇させる場合などに、通電する半波の数を増やし、着座面130aの温度を保温する場合や下げる場合などに、通電する半波の数を減らす。これにより、着座面130aの温度を所望の温度に制御することができる。
図21は、第4の実施形態にかかる便座を模式的に表す平面図である。
図22は、第4の実施形態にかかる便座の一部を模式的に表す部分断面図である。
図21及び図22に表したように、ヒータ204は、内部空間SPに設けられ、外部からの交流電圧の印加により、内表面130bを介して着座面130aを内側から温める。ヒータ204は、電流を流すことによって発熱する。ヒータ204は、例えば、電熱線である。
検知電極12は、内表面130bに設けられる。検知電極12は、例えば、シート状である。ヒータ204は、例えば、コード状である。検知電極12の面積は、ヒータ204の面積よりも大きい。これにより、検知電極12は、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる。このように、検知電極12は、内表面130bに設けられ、便座114への着座の有無に応じて静電容量を変化させるとともに、ヒータ204よりも大きい面積を有し、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる。すなわち、検知電極12は、便座114への着座の有無を検知する電極として機能するとともに、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる熱拡散シートとしても機能する。
検知電極12とヒータ204との間には、第1接着剤240が設けられている。第1接着剤240は、検知電極12とヒータ204とを接合する。
検知電極12と、上板130の内表面130bと、の間には、第2接着剤242が設けられている。第2接着剤242は、検知電極12と、上板130の内表面130bと、を接合する。これにより、検知電極12は、上板130の内表面130bに設けられる。
検知電極12は、導体である。検知電極12は、例えば、金属箔である。金属箔の熱伝導率は、上板130の熱伝導率よりも高い。検知電極12としては、例えばアルミニウム箔や銅箔などが挙げられる。
図21に表したように、ヒータ204は、検知電極12において蛇行し、検知電極12の略全体にわたって配置される。また、図19に表したように、検知電極12は、上板130の内表面130bの略全体にわたって設けられている。ヒータ204は、上板130の内表面130bの下において蛇行し、内表面130bの略全体にわたって配置される。このように、コード状のヒータ204は、曲げながら内表面130bに設けられる。なお、ヒータ204は、コード状に限ることなく、シート状などでもよい。ヒータ204の構成は、着座面130aを内側から温めることができる任意の構成でよい。
以上、説明したように、本実施形態に係る便座装置110では、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせ、所定数Nの静電容量の検知結果のうちの少なくともいずれかの検知結果を用いて平均値を算出し、平均値を基に、人体HBの有無を判定することにより、交流電源PSによる電位変動の影響を抑制し、電位変動の影響による誤検知の発生を抑制することができる。
また、便座装置110では、検知電極12が、便座114の内表面130bに設けられ、便座114への着座の有無に応じて静電容量を変化させるとともに、ヒータ204よりも大きい面積を有し、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる。これにより、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる熱拡散シートの機能を検知電極12に持たせることができ、便座114の着座面130aを温める場合にも部品点数の増加を抑制することができる。また、検知電極12の静電容量の検知の開始のタイミングを交流電源PSの交流電圧の周期に対して所定位相ずつずらすように、検知電極12の静電容量の検知を検知回路14に所定の周期で行わせ、所定数Nの静電容量の検知結果のうちの少なくともいずれかの検知結果を用いて平均値を算出し、平均値を基に、人体HBの有無を判定することにより、ヒータ204からの電位変動の影響も抑制することができる。
図23は、第4の実施形態にかかる便座の変形例を模式的に表す平面図である。
図23に表したように、この例において、便座114は、熱拡散シート250をさらに有する。熱拡散シート250は、便座114の内表面130bに設けられ、ヒータ204よりも大きい面積を有し、ヒータ204の熱を内表面130bに拡散させる。熱拡散シート250は、換言すれば、上記実施形態の検知電極12を置き換えたものである。また、熱拡散シートは、その目的から熱伝導率の大きい材質が望ましく、自由電子が良好な熱伝導をもたらすため、結果として、金属箔のような電気伝導体が適している。
この例において、検知電極12は、便座114の内表面130bに熱拡散シート250と重ねて設けられる。この場合、検知電極12は、熱拡散シート250の上に重ねてもよいし、熱拡散シート250の下に重ねてもよい。換言すれば、熱拡散シート250と内表面130bとの間に検知電極12を設けてもよいし、反対に、検知電極12と内表面130bとの間に熱拡散シート250を設けてもよい。いずれの配置においても、金属である熱拡散シート250は人体HBと静電結合し、検知電極12とも静電結合するので、検知電極12から熱拡散シート250を経由して人体HBとの静電容量を測定することが可能となる。或いは、熱拡散シート250の、検知電極12と重なる部分のみを切り欠いて、熱拡散シート250の静電的な影響を除いてもよい。また、この場合、検知電極12の面積は、例えば、熱拡散シート250の面積よりも小さい。
このように、検知電極12は、熱拡散シート250とは別に設けてもよい。検知電極12は、必ずしもヒータ204の熱を拡散させる機能を有しなくてもよい。検知電極12の配置は、必ずしも内表面130bでなくてもよい。検知電極12の配置は、便座114に着座した人体HBを適切に検知することができる任意の位置でよい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、人体検知センサ10や便座装置110などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。