JP2022034488A - 塗擦保護材組成物およびその製造方法とそれを用いて得られる塗擦保護膜 - Google Patents

塗擦保護材組成物およびその製造方法とそれを用いて得られる塗擦保護膜 Download PDF

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Abstract

【課題】殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ、抗アレルギー、保湿保水、速乾性、冷涼冷却、疼痛緩和、毛髪ケアのための塗擦保護材組成物、その製造方法および塗擦保護膜の提供。【解決手段】非親水性のパルプ微粉末による摩擦の界面張力を利用した塗擦方法を用い、光触媒溶液が手肌を含む人体や繊維の隙間に入り込み、紫外線・可視光応答の光触媒活性により細菌やウイルス等の塗擦作用と銅イオン、銅水溶液の殺菌・抗菌作用と同時に、アラントインの抗アレルギーやクエン酸分散による冷涼冷却と痛みの緩和作用、ナノセルロースおよびパルプ、糖類または海藻類、藻類による手肌の保湿・保護と速乾性で、菌の付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ事や毛髪に弾力を与える整髪料として塗擦効果が得られる塗擦保護材組成物および塗擦保護膜。【選択図】図2

Description

本発明は光触媒活性塗擦(殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ)と銅イオンおよび銅水溶液、酸化モリブデンによる抗菌、抗ウイルス、アラントインによる抗アレルギー作用およびナノセルロース等の保湿・保護、非親水性微粒子パルプによる手指の摩擦乾燥速乾性と塗布後の冷涼冷却または鎮痛作用がある手肌および繊維または固体物の塗擦保護材組成物およびその製造方法とそれを用いて得られる塗擦保護膜に関する。
抗菌剤や消毒剤として使用されている物として、アルコールや次亜塩素酸等、数多くあるが、その中でも光触媒は有害な薬品を使用することなく太陽光や可視光の光を当てるだけで種々の有害有機物質の分解等の化学反応を起こし、水質浄化や空気浄化・脱臭・抗菌・抗ウイルス・防かび・防汚など環境分野での広範囲の応用が可能であるため環境浄化の切り札として利用されている。光触媒で最も使用されているのが歯磨き粉や化粧品にも使用され、食品添加物としても認められている安全無毒な物質である酸化チタンであり、水分中に光を当てても自己溶解現象が起こらず、非常に安定で特異な物質で、触媒(光触媒)として働くだけで自分は変化しないため、原理的には光があれば効き目が半永久的に使用でき、生物に有害なほどエネルギーの高い光は必要とせず、LEDや蛍光灯の中に含まれる比較的長波長側の近紫外線で反応が進行し、水処理や大気浄化、脱臭VOC処理、抗菌、防カビ、抗ウイルス、セルフクリーニング・防汚、ぬめり防止などの幅広い応用が可能であり、安価で耐久性に優れた数多くの利点を持っている。
また、酸化チタンに光を当てると活性酸素が生じ、特にOHラジカルは、消毒や殺菌に広く使われている塩素や次亜塩素酸、過酸化水素、オゾンなどよりはるかに強い酸化力を持ち、炭酸ガスなどの無毒な物質に変える他、菌の細胞内のコエンザイムAなどの補酵素や呼吸系に作用する酵素や癌細胞などを破壊し、有機物の分解、菌やカビの出す毒素の分解、ウイルスの分解を行い、抗菌・抗ウイルス作用を発揮して菌やかびの繁殖、ウイルスの付着を止める事も出来る。これらの作用により、種々の有害な化学物質や悪臭物質のような空気中の化学物質や、繊維・人体に付着する細菌、ウイルス等、ほぼ全ての有害有機物質を光の照射によって簡単に分解・無害化することができる。
さらに、銅イオンは[非特許文献10]でも示されているが、抗菌・防汚剤・殺菌剤として古くから生活の中でも広く使われる上、今日では酸化チタンや酸化タングステンに担持させ可視光応答型光触媒の材料としても有用であることが公知されている。
その上、光触媒材料以外で水に難溶の金属化合物である銅化合物や銀化合物の暗所下での抗菌・抗ウイルス活性を調べると、銅一価化合物は、銅イオンや銅二価化合物に比べ、抗菌効果のみならず、エンベロープをもつウイルス、エンベロープをもたないウイルスのどちらに対しても高い抗ウイルス活性を発揮することも[非特許文献12]に示され、銀イオンを溶出しない固体の銀化合物(たとえばAg2S)は、抗菌・抗ウイルス活性をほとんど発揮しないことも明らかにされている。
特許第2783339号公報 特許第2517874号公報 特許第6576996号公報 特許第6184108号公報 特開2002-308712号公報 特開2014-113576号公報 特願2020-46968号公報 特開2016-10724号公報
光触媒の材料開発と産業応用及び国際標準化 垰田博史 光触媒技術のバイオ関連応用 中田一弥 フジコー技研 技報「創る」No.26
Figure 2022034488000002
パルプの性質と紙の強度 十条製紙株式会社研究所 奥 杏 一 熱帯樹林の成分と利用(2) 大原誠資 熱帯林業No39 1997年 タンニンの化学 最近の研究 西岡五夫 化学と生物Vol24、No.7 木本性植物の組織培養によるタンニン生産と生合成 谷口抄子、波多野力、矢崎一史 木材学会誌 Vol.52、No.2p.67-76 光触媒応用技術 橋本和仁 2007年7月25日 東京図書株式会社 光触媒のすべて 藤嶋昭 2017年11月22日 ダイヤモンド社 抗菌薬剤感受性試験結果に基づく銅イオン溶液の抗菌・殺菌作用過程 石田恒雄 日本微生物生態学会誌 31巻2号45-46 2016年 はじめて出会う細胞の分子生物学 伊藤明夫 株式会社岩波書店 2006年8月29日 可視光下での金属酸化物の抗ウイルス活性に関する試験 砂田香矢乃、畑山靖佳、永井武、石黒斉 KISTEC研究報告2019 2019年7月
発明が解決しようとしている課題
しかしながら、特許文献1~6に示される光触媒溶液や無光触媒溶液では、一般的に基板を想定した壁や床、住宅用や工業用途等であり、手肌や繊維、住居内で頻繁に使用する場所や不特定多数が使用する固定物を想定した光触媒は改良の余地がある他、紫外線や可視光の照射量により酸化チタンや酸化タングステン等を使用する光触媒の効果に影響を及ぼす。酸化チタンは強力な酸化分解力・殺菌力を示すため、手肌に付着し、外からの侵入菌の増殖を防いでくれる常在細菌や、紫外線から守り健康な肌を作り出す常在菌(善玉常在菌)をも分解・殺菌してしまう他、対象物質が表面に来なければ、分解などの反応を起こすことができない事や、ほぼ全ての有害有機物質を分解するため、光触媒作用で分解されてしまう繊維等への適用が不可能であると言われていた。さらに、光触媒は光が当たらないと殺菌・抗菌・抗ウイルス作用を生じる事が無く、光の照射によってOHラジカルなどの活性酸素は寿命が短く、菌が酸化チタンの近傍に来ないと抗菌効果が発揮されないため、酸化チタンが担体やバインダなどの中に埋もれていると、光が当たりにくく菌が接近し難く抗菌効果は低くなる事から、酸化チタン光触媒を繊維や手肌に被膜させることが必要不可欠である。光触媒反応は対象物質が表面に来なければ分解などの反応を起こすことが出来ないという難点を持ち、対象物質を吸着によって吸い寄せ、それを光触媒で分解させる等、光触媒と活性炭などの吸着剤とのハイブリッド化も行われているが、活性炭は光を透過しないため光触媒が活性炭の陰にあると反応が起こらないという欠点があった。さらに、[非特許文献2]に示されているが、酸化タングステンは可視光下で光触媒活性能を発現する可視光応答型光触媒として知られ、光照射によって励起された電子によって自己還元され、タングステンイオンの価数が6価から5価へと変化することにより光触媒活性が低下するため、揮発性有機化合物の完全分解は困難であることが問題となる他、酸化タングステンの高活性化のため、白金やパラジウムを担持した酸化タングステンが作製され、揮発性有機化合物の完全分解への試みがなされているが、高活性化のための貴金属による高コスト化が問題となる上、夜間の無光状態の場合は、光触媒の安定した効果が確実に得られる事が困難である。また、一般的な消毒剤や抗菌剤は刺激臭が伴う物が多く、塩素系やアルコール類は脱水作用もあるため、頻繁に使用してしまうと、皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪ってしまう脱脂を行ってしまうことになり、手荒れが起こりやすく、病原菌を増殖させることにも繋がり、細菌繁殖の温床となってしまう。また、手肌クリームを塗布すると保湿性は保持できるが、殺菌・抗菌・抗ウイルス作用が弱くなる問題もあった。
以前よりシュウ酸や酢酸を用いたチタン水溶液は知られていたが、これらの水溶液は試薬が有害の場合や安定性が不十分であるなどの問題が存在していた。また、酸化チタンは強い加水分解能の性質により、僅かな水とでも反応し分解され不溶な含水酸化物沈殿になり、チタンの加水分解を抑制できる強酸性溶液もしくは水を含まない有機溶媒を用いざるを得ないが、乳酸やクエン酸といった自然界にも存在する人体に無害な弱い有機酸をチタンに結合させる為に、酸性の強い溶解液に対しアルカリ電解水を混合すると、中性の水に溶ける水溶性チタン錯体、即ちチタンの水溶液が作る事が可能となる。ただし、クエン酸により酸化チタン等の分散は可能である為、アルカリ電解水の使用は任意となる他、アルカリ電解水については一般的な市販品を使用しても良い。
本発明の課題は、以上のような問題点に鑑み、消費者の使用環境に対応するため、殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用がある光触媒溶液に紫外線及び可視光の他、無光状態等の使用する環境に左右されず効果を持続させる銅イオンと銅水溶液、酸化モリブデンと電導性のある保湿・保護作用のあるナノセルロースとパルプおよび糖類または海藻類や藻類と抗アレルギー作用のアラントインを配合し、手肌や繊維の隙間へ入り込む光触媒の剥離性と、内側(手肌、繊維側・以後バルク側)と表面側(以後表面)には分子間力が働き、バルク側の分子密度が圧倒的に高いため、表面に存在する分子は常にバルク側に引き込まれる現象を指す界面活性剤の1つである界面張力によるパルプ微粉末を利用した塗擦で、光触媒作用による汚れと細菌、ウイルスの剥離と、使用環境に左右されずに抗菌・殺菌・抗ウイルス作用が得られる銅イオンや銅水溶液、酸化モリブデンの他、ナノセルロースや非親水性パルプによる手肌の摩擦で乾燥時間を早めて塗擦させることで、塗擦後の保湿と保護やアラントインの抗アレルギー作用と同時に、殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用効果を常態持続させ、肌荒れ防止の他、繊維や固体物に塗布または噴霧により殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ作用効果も持続させる塗擦保護材組成物およびその製造方法とそれを用いて得られる塗擦保護膜を提供する。
課題を解決するための手段
そこで、本発明は上記課題を解決するために、親水性の植物性ナノセルロースに混和させた非親水性のパルプ微粉末摩擦による塗擦方法を用い、超親水性の光触媒溶液が手肌の隙間に入り込み、光触媒活性により手肌等に付着する菌やウイルス等を剥離分解させ、殺菌・分解による菌やウイルスの死滅作用で簡易に取り除かれる塗擦漂白および菌の付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ事による殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ(以下塗擦作用)と、それらの活性が得難い環境でも銅イオン水や銅水溶液、酸化モリブデンによる抗菌・抗ウイルス・殺菌力効果と同時に、無味無臭で安全な親水性の植物性ナノセルロースおよびパルプ、糖類による手肌の保湿・保護効果と非親水性微粒子微粉体パルプの速乾性やアラントインによる抗アレルギー作用やクエン酸分散による冷涼冷却と痛みの緩和作用が得られる他、毛髪に弾力を与える塗擦保護材および保護膜(以下塗擦保護材)と、繊維や固体物の塗擦作用による殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ(以下塗擦加工)をする塗擦保護材および保護膜(以下塗擦保護材)を目的としている。
光触媒溶液に使用する酸化チタンはバンドキャップ3.2eV、波長換算で約388nmの光触媒活性の高い天然のアナターゼ型酸化チタン(以下光触媒溶液)またはブルッカイト型酸化チタンやルチル型酸化チタン(以下光触媒溶液)を利用する。光触媒溶液は不導体被膜を作る特性があり、これは耐食性に優れ、密着性も十分得られる。その上、光触媒酸化チタンの強い酸化力は、表面の汚れを分解・除去する事だけではなく、モラクセラ菌を含めた細菌やウイルス・糸状菌・ガン細胞等を不活性化できることも報告されており、特定の細菌に限定されることがない酸化チタンの抗微生物特性に着目した医学・医療・衛生材料分野への応用も活発に行われている。この効果は光触媒反応を活用するので、コーティングの基本的な考え方は分解活性を主に活用したセルフクリーニング用途と同様となるが、[非特許文献1]に示されている通り、光触媒には殺菌や抗菌・抗ウイルスが可能であると公知されており、酸化チタンは硝酸やクロム配に強い特徴を有し、酸化腐敗や手肌の隙間への薄い被膜を形成する事に特化できるもので、これにより十分な効果を示し、同時に付着した汚れの隙間に入り込む表面張力のエネルギーも加わり、菌やウイルスを殺菌や剥離分解し不要な物質を排除できる事により強い効果が得られる塗擦保護材となる。
また、太陽光には、紫外線は3~4%しか含まれておらず、蛍光灯では紫外線がわずかしか含まれていないため、室内用途で光触媒を効率良く利用するためには、可視光で働く光触媒が不可欠であり、可視光で働く光触媒として、酸素欠陥型や窒素ドープ型など様々な考案が為されており、本発明の塗擦保護材で使用する光触媒溶液の1つとして使用するが、これに限定しない。
本発明に使用する酸化チタンは光触媒活性の高い天然のアナターゼ型酸化チタンまたはブルッカイト型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの少なくとも1種以上であるが、限定しない。
本発明に使用するナノセルロースは濃度約6%以下の微粒子粉体または液体であるが6%に限定はしない。
本発明に使用するナノセルロースは平均繊維径(D)が3nm~100nmであるセルロース系高分子ファイバーと保湿液とを、セルロース系高分子ファイバー:保湿液=1:1~1:20の重量比で含有しているが、重量比は限定しない。
本発明に使用するナノセルロースは、セルロース系高分子ファイバーを構成する高分子が、グルカン構造を有する多糖類、高等植物由来のセルロース、天然セルロース繊維、動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、化学的に合成されたセルロースからなるセルロース・ナノセルロース、キチン、キトサンナノセルロース、シルクナノセルロースおよびカルボキシメチルセルロ―スから選ばれた少なくとも1種から2種以上であるが限定しない。
本発明の塗擦保護剤は、例えば、セルロース繊維を分離抽出した紙パルプのマイクロサイズの微粉末、シクロデキストリン、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトースおよびグリセリン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、数平均分子量120~20000)、ポリグリセリン(例えば、数平均分子量が120~20000)やブチレングリコール等のグリコール系溶媒、キシリトール・マルチトールなどの多価アルコール類、コンドロイチン硫酸・ヒアルロン酸などの多糖類、コラーゲンなどの蛋白質類、ヒドロキシジステアレートなどのステロールエステル類、乳酸ナトリウムなどの有機酸塩類及びジグリセリン付加物等が挙げられ、これらの中から一種または二種以上を組み合せて使用しても良い。これらの中でも多価アルコール類や、皮膚への親水性が強いナノセルロースに対し、マイクロサイズのパルプを含有させる事で、保湿剤が噴霧箇所だけに局所浸潤させる事を防ぎ、手を擦り合わせると全体に保湿剤を行き渡らせるようにするのが好ましく、それらから選ばれる1種または2種以上が好適である。
本発明に使用する海藻類・藻類は、例えばアカモク、モズクの粉体または液体の少なくても1種以上であるが限定しない。
本発明の塗擦保護材に混合する無光触媒液はリン酸チタン、リン酸チタニア、酸化チタン、二価金属および四価金属のリン酸塩等の1種以上であるが限定しない。また、一般に製造販売されている無光触媒液でも良く、限定しない。
本発明の塗擦保護材に使用する酸化チタン、酸化タングステンは、一般に製造販売されている光触媒溶液でも良く、1種以上であるが限定しない。
本発明の塗擦保護材は酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化鉄、ジルコニア、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化水銀等の1種以上であるが限定しない。また、一般に製造販売されている光触媒液でも良く、限定しない。
本発明の塗擦保護材に使用するリン酸類は、リン酸塩、リン酸カルシウムであるが、一般に製造販売されている光触媒溶液中のリン酸類を使用しても良く、限定しない。
本発明の塗擦保護材に使用するにモリブデンは、モリブデンの他、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデンの粉体または液体の1種以上であるが限定しない。
本発明の銅イオン水濃度は0.2mg~0.3mgであるが限定しない。
本発明の塗擦保護材の防腐剤としてはヘキサンジオール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウムの粉体または液体の1種以上であるが、溶液中の配合は100g中、0.005g以下とし、防腐剤の使用は任意である。
本発明の塗擦保護材の酸化防止剤としてはジプチルヒドロキシトルエン(BHT)・t-ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール類(ビタミンE)、アスコルビン酸類(ビタミンC)、エリソルビン酸類、クロロゲン酸、カテキン、没食子酸の粉体または液体の1種以上であるが、使用の有無は限定しない。
本発明の塗擦保護材で使用するアラントインは粉体または液体であるが使用の有無は限定しない。
本発明の塗擦保護材は、手肌以外の人体、例えば足の踵、口腔内等に塗布または噴霧しても良く、使用部位に対しての限定はしない。ただし、眼球以外とし、口腔内で使用する場合、光触媒の含有量は0.004%以下とすることが好ましい。
本発明の塗擦保護材を塗布または噴霧して使用する繊維は、木や天然繊維の例えば植物繊維(セルロース高分子)、動物繊維(タンパク質高分子)、鉱物繊維や化学繊維の例えば無機繊維、精製繊維(天然高分子)、再生繊維(天然高分子)、半合成繊維(半合成高分子)、合成繊維(合成高分子)の(以後、繊維)素材および、それらで製造された製品や商品であるが、それらに限定しない。
本発明の塗擦保護材を塗布または噴霧する固体物の使用例としては、口腔ケア用品、例えば歯ブラシ・歯間ブラシ等、うがい液や金属類、例えば鍵や硬貨等、紙製品、例えば紙幣、新聞紙、文房具等、食器類、例えば箸やコップ等、住宅関連類、例えばドアノブ、トイレ、浴室、寝具等、オーディオ類、例えばCD、DVD等であるがそれらに限定しない。それらの実施例の1つとして、画像のブレや音の変調が生じているCDおよびDVDのディスク表面に塗擦保護材を塗布した後、拭き取ると画像や音の変調が無くなり視聴する事が可能となった。
さらに[非特許文献11]で示された通り、無性生殖で増える単細胞生物は事故とも言える何らかの外傷がない限り無限増殖を繰り返すが、光触媒による有機物の酸化分解は、分解対象の選択性が無いのは公知であり、エンベローブの有無があるウイルスにも、当然、その種類に関わらず効果の発揮を求められている。インフルエンザやノロウイルス等のウイルスに対し、光触媒作用により発生した活性化酸素種がウイルスの外膜であるエンベローブやカプシドを酸化分解する事で、ウイルス活性を抑制する。さらに、抗ウイルス作用は光触媒表面で起こり、気中で光触媒表面に接触したウイルスについて不活化作用が得られることが実験等で報告されている事から、本発明の塗擦保護材を使用する事により塗擦作用が可能になる。
また、銅イオンの細菌細胞壁の抗菌反応として、グラム陰性菌細胞壁、外膜における抗菌反応では細菌細胞はCu2+に対して高い親和性を示し、Cu2+の大部分が細胞表面タンパク質のアミノ酸残基に結合していることが見出され、Cu2+が外膜タンパク質に結合する他、ラクタマーゼ酵素と結合することで、銅-タンパク質複合体を形成しタンパク質合成を阻害する。Cu2+は細菌細胞表層で硫黄、窒素、酸素などの電子密度が高い官能基と反応して、溶解度の小さい塩や銅錯体を形成する。特に呼吸系酵素群には-SH基を含む酵素が存在するため、Cu2+はこれらの-SH基を酸化することで失活させ、その上、無毒無害で水素ガスが発生する事は公知である電解アルカリイオン水により細胞を損傷させる。
さらに、銅イオンや銅水溶液は分子(非乖離)型とイオン型の物質で存在し、このイオン型の物質は、微生物の細胞を構成しているリン脂質を透過できないのに対して、分子型の物質は細胞内部に浸透し、微生物の細胞内にある酵素タンパク質やDNAなどの化学結合を破壊することによって遺伝子の活動を停止させ、その結果として強い殺菌効果を表す。分子型は瞬間的な殺菌力は弱いが、その一方で有機物が存在する環境下でも安定した殺菌力を発揮し、長期間この殺菌力が持続し、周囲に汚れが存在している環境下でも、ターゲットである微生物類に長時間接触することで殺菌が可能になる。
また、光触媒溶液にナノセルロースを配合させ使用するが、混合物質の許容濃度として、この数値は当該物質が単独で空気中に存在する場合のものであり、2種またはそれ以上の物質に曝露される場合には個々の物質の許容濃度のみによって判断してはならないとなっており、現実的には相加が成り立たない事を示す証明がない場合には、2種またはそれ以上の物質の毒性は相加されると想定し、次式によって計算されるIの値が1を越える場合に許容濃度を越える曝露と判断するのが適当であると示されている。
Figure 2022034488000003
この場合、Ciは各成分の平均曝露濃度を示し、Tiは各成分の許容濃度を示す。ただし、有害物質の許容濃度の基準は職場における環境原因による労働者の健康障害を予防するための手引きに用いられることを目的とし、日本産業衛生学会が勧告している。
また、銅イオン水や銅水溶液は強い殺菌力で安定して殺菌効果を持続することができ、有機物が多く存在する汚れた環境下でも持続的に殺菌効果を発揮し、殺菌しにくく困難を要してきた耐性菌(芽胞を形成することで抵抗力が高まる耐熱性菌や抗生物質が効かなくなった薬剤耐性菌)、カビや酵母などの真菌類、さらにはウイルス類(ノンエンベローブウイルス含む)の不活化効果が期待できる。
その上、酸化モリブデン(MoO3)は、高い抗菌・抗ウイルス活性が知られている銅化合物や銀化合物以外の金属化合物の中でも、抗菌・抗ウイルス活性を示す化合物の一つとして特に、エンベロープをもたないウイルス、エンベロープをもつウイルスのどちらに対しても抗ウイルス活性をもつと考えられている。さらに、モリブデン酸化物と酸化チタンを組み合わせた可視光応答形光触媒材料(Mo/TiO2)は、暗所下よりも白色蛍光灯照射下で、より高い抗ウイルス活性が公知されており、本発明の塗擦保護材はそれらを充用し、光触媒による不活化が確実に得られる考案となる。
さらに、本発明で使用するnmサイズ~μmサイズの微粒子パルプは、非親水性の水に馴染まない特性を活かし、液状にした親水性のナノセルロースや超親水性の光触媒溶液を吸収し、混和した状態では良く浸潤されているが、塗布や噴霧される際にはパルプの微粒子は親水成分から解放され本来の非親水性パルプ微粒子の働きをする為、液体垂れを防止し、手肌の使用時の手指による擦り合わせにより微粒子パルプが光触媒溶液の塗擦作用の水分を吸収しながら乾燥させる塗擦方法を用いる。即ち、非親水性のパルプは分解・破壊をしたい細菌やウイルス等を吸着させるための担体であり、それを塗擦により分離・破壊させる為の重要な役割となる。
発明の効果
本発明の塗擦保護材は、刺激臭が伴う一般的な消毒剤または除菌・抗菌剤や、皮膚表面の皮脂と水分の両方を奪ってしまう脱脂による手荒れで、病原菌を増殖させることにも繋がり、細菌繁殖の温床となる可能性が高い塩素系・アルコール類を使用する事無く、強い酸化力で菌やウイルスを殺菌・分解をさせる超親水性の光触媒溶液を手肌や布帛繊維に使用した場合、非親水性のパルプ微粉末による塗擦方法を用い、光触媒溶液が手肌や繊維、の隙間に入り込み、固体物の表面に蒸着して光触媒活性により手肌や繊維、固体物等に付着する菌やウイルス等を殺菌・分解による塗擦作用で簡易に取り除かれる漂白および菌の付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ事による塗擦加工と同時に、親水性で無味無臭の安全な植物性ナノセルロースおよび非親水性のパルプ、糖類または海藻類、藻類による手肌の保湿・保護効果と速乾性が得られる手肌塗擦保護材と、繊維の塗擦加工をする繊維塗擦保護材となる。但し、常にヒトに住みつき、外からの侵入菌の増殖を防いでくれる常在細菌や紫外線から守り健康な肌を作り出す善玉常在菌は、健康であれば悪玉常在菌の増殖を防ぎ感染源にはならないが、抵抗力が落ちた状態では感染を起こすこともある事から、光触媒活性でそれらを死滅させたとしても、塗擦作用と保湿・保護作用が同時に得られる塗擦保護材は体調に関係なく働くため、より安全で安定的な使用が可能になる。その上、クエン酸のピーリング効果は公知であるが、本発明の塗擦保護材では酸化チタンを分散する際にクエン酸を使用するため、塗擦保護材を人体の肌に噴霧または塗布すると、塗擦保護膜による冷涼冷却と肩こりや関節痛などの痛みの緩和が一定時間得られる他、酸化チタンやナノセルロース、糖類、銅等の作用で毛髪に弾力を与える整髪料としても使用が可能である。
また、本発明に使用される光触媒溶液の1つである酸化チタンは無害成分であるが、生産現場工場等での空気中飛沫微粉末に対しては、健康障害等の予防にも万全な対策を講じ、事故の報告も当然なく、塗擦保護材が手肌の皮膚膜への浸潤や、室内空間、繊維塗布等の液体塗布や噴霧に対しても、安全に利用が出来る。
さらに、[非特許文献3]では、酸化チタン不織布の光触媒反応によるウイルス不活性化についても開発実験の結果で、一部で有効性も認められている中で、確定的な報告は検討中とされているが、本発明の液状化した塗擦保護材を、衣類やマスク等の表面に塗布または噴霧させる他、手指等に付着させて使用する事で塗擦効果を遷移固定化させ、光触媒作用により菌やウイルス等の抑制が期待出来る。
また、銅イオン水と銅酸化物である銅水溶液は、光触媒溶液の活性化を促す紫外線や可視光等の使用する環境に左右されずに抗菌・殺菌力が得られる事から、光触媒溶液に混入させ使用する事で、光触媒の活性が得られない環境でも銅イオン水と銅水溶液による殺菌・抗菌作用が得られる。
さらに、酸化タングステン単独では光触媒活性が極めて低いことが知られ、銅化合物や銅イオンを触媒活性促進剤とする事で、可視光応答型光触媒材料として有用であることが公知されており、酸化タングステンは、特に銅化合物と組み合わせることにより、有効な可視光応答型光触媒材料にもなる。銅化合物と酸化タングステンを組み合わせる方法としては、[特許文献8]に示されているが、例えば酸化タングステン粉末に対して、CuO粉末を0.1~3質量%程度混合する、あるいは酸化タングステン粉末に、銅二価塩(塩化銅、酢酸銅、硫酸銅、硝酸銅など)を含む極性溶媒溶液を加え混合して、乾燥処理後、500~600℃程度の温度で焼成し、酸化タングステン表面に銅イオンを担持させる方法等がある。この様に、銅化合物を担持させる事も酸化タングステンの触媒活性剤となるが、本発明では銅イオン水および銅水溶液を含有させ、酸化チタンや酸化タングステンの触媒活性以外でも、[0033]や[0034]に示したように銅イオン水および銅水溶液による抗菌・抗ウイルスを可能とした。
その上、酸化モリブデン(MoO3)は、抗菌・抗ウイルス活性を示す化合物の一つであり、特にエンベロープをもたないウイルス、エンベロープをもつウイルスのどちらに対しても抗ウイルス活性をもつと考えられている。さらに、モリブデン酸化物と酸化チタンを組み合わせた可視光応答形光触媒材料(Mo/TiO2)は、暗所下よりも白色蛍光灯照射下で、より高い抗ウイルス活性が得られると示されている。
また、パルプの特徴である非親水性を活かしたnmサイズ~μmサイズの微粒子パルプは、液状にした親水性のナノセルロースや超親水性の光触媒溶液と混和した際には液中で浸潤され液体垂れを防止させ、塗布や噴霧でパルプの微粒子は親水成分から解放され、手肌に付着した塗擦保護材を手指により擦り合わせると、光触媒溶液成分を被膜させながら非親水性の微粒子パルプが光触媒溶液の塗擦作用をした水分を吸収し乾燥させる塗擦方法により、塗擦保護材をハンカチやタオル等の繊維物で拭き取る必要も無いため、衛生的な上、どこでも使用が可能である。勿論、パルプ微粒子はnmサイズ~μmサイズの為、擦り合わせてもパルプ成分が目に見える形とは成り得ないが、非親水性のパルプは分解・破壊をしたい細菌やウイルス等を吸着させるための担体となり、手肌や繊維の塗擦により分離・破壊させ、抗菌、抗ウイルスとなる。
さらに、酸化チタンや酸化タングステン等の金属は空気に触れると自動酸化を起こし皮膚刺激やアレルギー反応の原因となる過酸化物が創出することを防止するため、アラントインを単独または酸化防止剤と併用することで、組織修復賦活作用(お肌の組織の修復を活性化させる作用)と抗アレルギー作用が得られ、敏感肌の方や幼児まで使用が可能となる。
光触媒反応による抗ウイルス効果を示した図である。 光触媒反応によるウイルス不活化の仕組みを示した図である。 繊維の空間および繊維にパルプ粒子が付着している状態に光触媒酸化チタンが付着した状態を示した図である。 光触媒で大腸菌を死滅させる仕組みを示した図である。 金属酸化物の抗ウイルス活性を示した図である。 塗擦保護材を毛髪に塗布した結果を示した図である。 塗擦保護材を肌に塗布し冷涼冷却の結果を示した図である。
光触媒は太陽光からの紫外線照射により作用する事は既に公知され、光触媒の反応の速さは、光強度×吸収強度×反応効率である。現在では[特許文献6]に示されたように可視光応答型でも様々な開発が為され、光触媒作用が認められている。その中の光触媒材料の1つとして、酸化タングステンは可視光化で光触媒活性能を発現する可視応答型光触媒として知られているのは公知であるが、光照射により励起された電子で自己還元され、タングステンイオンの価数が6価から5価へと変化する事で、光触媒活性が低下する為、揮発性有機化合物の完全分解は困難となる。酸化タングステン高活性化をさせる方法として、[非特許文献2]に記載のとおり、植物から作製される植物灰の添加による酸化タングステンの揮発性有機化合物分解性能への影響を考え、植物灰としてバジル葉を燃焼し酸化タングステン粉末に混合し、アセトアルデヒドを用いた光触媒活性実験をした結果、酸化タングステン単独では難しい完全分解を、可視光照射4時間後にはアセトアルデヒドの完全分解に成功し、バジル灰の添加量の最適化を求めたところ、2.5wt%添加したものが最も高活性であった為、その理由を明らかにするよう、バジル灰の主成分を粉末X線回析した結果、主にCa(OH)、MgO、KHCOである事から、酸化タングステンにそれぞれを添加した結果、MgOは低活性、Ca(OH)とKHCOの両方は高活性化し、アセトアルデヒドは完全分解されたが、KHCOもしくはCa(OH)の片方の場合は高活性化が見られず、両方の成分が必要である事は証明された。したがって、植物灰に含有されるCa(OH)とKHCOが、酸化タングステン表面を塩基処理し、タングステン酸カルシウムまたはタングステン酸カリウム等の薄い層が形成され、光触媒活性向上につながったと推察されるとの検証報告から、塗擦保護材では、植物灰を添加した酸化タングステンを利用し、より光触媒効果が高活性化するようにした。ただし、添加する植物灰に利用する植物についてはバジル葉の他、南天葉等での実験で考察中であり、植物灰の種類は限定しない。
さらに、[非特許文献8]で示されているが、光触媒では塗擦効果が室内の可視光でも有効に効く材料の開発がされた。感染症を引き起こす細菌とウイルスの大きさは、細菌が1~10μm、ウイルスは0.02~0.2μmであり、大きな違いがある。細菌は単細胞の微生物で自己増殖し、ウイルスは核酸とそれを包む膜というシンプルな構造の他、ミミウイルスの様な糖タンパク質を主成分とした表面繊維と呼ばれる繊維状の物質もあり、人体を含む他の生物(借宿)に寄生して自己繁殖する。これらのウイルス表面にあるタンパク質のヘマグルチニン(HA)が人体(宿主)細胞に吸着、侵入、脱殻、合成、成熟、放出する繰り返しにより体内で増殖するが、光触媒反応の酸化分解効果により、ウイルス表面のタンパク質に変性が起こるため吸着出来なくなり、人体(宿主)に侵入し核酸を増殖する事も無い。したがって、この段階でウイルスが光触媒反応によって、ウイルスの不活化(感染が出来ない状態)がされる。但し、人為的に目や口、鼻の中や傷口等にウイルスを挿入する場合は別とする。その上、図2のように光触媒反応は、ウイルスの膜構造を分解し、中に入っている遺伝情報である核酸(RNA)にも損傷を与え、最終的にはウイルス由来の有機物は完全分解に至る他、ウイルスの10倍以上の大きさのある細菌に対しても光触媒の強い酸化分解力により、菌が不活化されるだけでなく、最終的には有機物として完全分解される。例えば、薬剤耐性菌に対し、光触媒反応による不活化効果を調べると、10分~2時間以内には何れも検出限界近くまで減少した結果から、可視光応答型の光触媒によって得られたものであり、太陽光の届かない室内環境における光触媒活用の重要性を示した。上述の通り、光触媒の反応機構は、他の除菌・抗菌・抗ウイルス剤と異なり、図4に示した大腸菌を例えたように、細菌・ウイルス等、相手を選ばない非選択性で効果を得て、結果として耐性菌の出来難さにも繋がる事から、光触媒溶液を使用した本発明の塗擦保護材は、塗擦作用に対し有効且つ、ナノセルロースやパルプ、糖類により、手肌に光触媒溶液の蒸着や保湿保護を可能とした。
また、ウイルスの飛沫は屋内外の床にも付着し、足裏や靴により感染をする場合も考えられるが、スプレー等で噴霧された塗擦保護材は重量により床等に着床し、その微粉末は床材に対し半永久的に抗菌性を保持する事で、ウイルスに対しての滅菌性も失われず発揮する。既に光触媒としては、住宅のタイルや壁面、ガラスでも多く活用され、菌由来の汚れに対しての防汚効果、病院での手術室では表面の細菌以外にも空中に浮遊する菌の数まで激減し、細菌数やアンモニア量が90%以上抑制維持され、塗擦効果があり、光触媒ガラスについては、銅酸化物を用いて有機物分解活性に加え、可視光応答性、高い抗ウイルス性を示している。この様に室内空間でも光触媒の塗擦作用は認められており、塗擦保護材についても、手肌に限定せずに室内の壁や寝具等に噴霧または塗布して使用する事で、光触媒活性が得られる。
その上、酸化チタンの粒子形状を金平糖型等にした上で、骨や歯を構成している物質で生体親和性に優れ、表面に光触媒活性を持たないアパタイトを金平糖のツノのようにつけて被覆させ、この金平糖型の粒子は、人間の体液に近い組成を持つ疑似体液に酸化チタン粒子を浸漬し、体温に近い温度に保つことにより酸化チタンの表面に骨や歯ができるようにアパタイトが自然に生成して調製される光触媒溶液を利用する事で、可視光の環境でも塗擦保護材を使用出来る。
一般的な除菌・抗菌剤および殺菌剤は、薬効成分を溶出などによって放出して菌の発育を阻止あるいは死滅させているのに対し、光触媒反応は表面で反応がおこり、表面積が大きいほど効率が向上する事に着目し、粒子径が小さくて表面積の大きな超微粒子の高活性化チタン光触媒も開発されており、塗擦保護材は、繊維や手肌に塗布・噴霧して表面が全て光触媒溶液として、接触してくる化学物質を効率良く分解させる事で、塗擦作用が得られる。
また、反応性の高い求電子付加反応(電子を奪う酸化反応)は、試験室や研究室などのクリーンな環境下では瞬時に高い殺菌効果を得られるが、実際の現場などの有機物が多く存在している汚れが酷い環境下では、有機物が速やかに反応し殺菌力が消失する可能性もあり、その結果、各種微生物に対する殺菌効果は十分に発揮されずに効果を得られない場合や殺菌処理を施したにも関わらず、二次感染による感染症が発生する原因にもなる事から、瞬間的な殺菌力より長期的に殺菌力が持続する銅イオン水や銅水溶液が有用である。
さらに、図1は、紫外線のみと、酸化チタンによる光触媒反応時にウイルスの減少を示したが、ウイルスの大きさは菌に対して1桁小さく、菌より小さいウイルスを殺すことは光触媒にとり簡単ではあるが、0.4mW/cm紫外線でウイルスを分解するのに1~2分かかるため、室内では更に時間のかかる可能性がある。これらの事から、光触媒溶液に酸化チタンの他、酸化タングステンやリン酸類を使用する事で、室内の可視光でも紫外線と同様に効果を求められる補助的役割となり、塗擦保護材は屋内外の場所を限定する事無く、使用が出来る。
また、常温の空気中で比較的容易に揮発するVOCとしてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸エチルなど様々な化合物があげられ、これらは溶剤またはプラスチック合成の原料や添加物などとして使用されている、種々の産業活動や生活に関連する代表的な環境化学物質であり、規制値は1mあたり300μg~3000μgである。この条件下での光触媒の効果は、300μg/mは、濃度では2ppmで、例えばホルムアルデヒドで計算すると、分子量は1モルあたり30gで、8畳部屋(30m)を仮定すると30mにホルムアルデヒドが2ppmある時、粒子の数は10の21乗個になる。分解の反応式としては、HCHO+HO+4h→CO+4Hで示され、ホルムアルデヒドが分解して二酸化炭素になる為には4個の正孔(光)が必要で効率では30%、これらを反応式に当てはめると8畳の空中の2ppmホルムアルデヒドを分解出来るのは、10の22乗個の光となる。これを室内光のみの場合、1μW/cm、光の数は1秒間に1m4あたり10の16乗個となる。これらの数値から、分解に必要な時間は、1022/1017=10秒、約1日になるが、上述した事はあくまでも部屋の中にあるホルムアルデヒドで計算した。さらに、トルエンで計算式に当てはめると、CCH+14HO+36h→7CO+36H、ホルムアルデヒドと比較すると光触媒反応の効率は1/10倍で、分解に必要な光の数は30倍になるが、窓からの紫外線を含めると、ホルムアルデヒドは20分、トルエンは10時間で光触媒分解が出来る事になり、これらを考察すると、室内にある光だけでは効果は少ないが、外から入ってくる紫外線を利用出来る環境作りも一考である事から、銅イオン水や銅液体等と酸化タングステンおよびモリブデンを混合し、光の環境に左右されずに使用ができる塗擦保護材となる。
また、バクテリアが形成する炭酸塩種は、炭酸塩とひと言でいっても、様々な種類があり、例えば石灰石である炭酸カルシウム(CaCO3)、研磨剤や滑り止めに使われる炭酸マグネシウム(MgCO3)、菱鉄鉱であるシデライト(FeCO3)などがあり、更に炭酸カルシウム(CaCO3)の中にも、同じ化学式を持つが結晶構造の異なるカルサイト(方解石)、アラゴナイト(霰石)、ヴァテライトなどがある。地球上に存在する炭酸塩岩ほとんどはカルサイト、アラゴナイト、そしてマグネシウムが含まれる炭酸カルシウムであるドロマイト(CaMg(CO3)2)の3種で占められると言われ、環境中で無機的にどの炭酸塩種が形成されるのかは、塩分・温度・種々のイオン濃度などにより決定されることが明らかになっているので、これらについても、光触媒溶液の有効性とあわせて使用する事が出来る。
さらに、銅は水分と反応し、強い酸化力をもつ活性酸素分子種が生成し、細菌種により抗菌性能の強弱はあるが細菌等の分子を分解し、抗菌性試験で実証された抗菌効果としてやレジオネラ菌やクリプトスポリジウム、O-157の他、銅に接触したウイルスも感染性が不活化される。その上、銅は人の体内にも70~100mg含まれ、健康に不可欠な栄養成分でもあり、新生児の粉ミルクに添加されているほど安全である為、本発明で使用する銅イオン水や銅水溶液を含有した塗擦保護剤を人体に使用しても無害で抗菌、抗ウイルスの効果が得られ、高価な装置を購入する必要も、酸を併用して使用時に調整する必要もなく殺菌力や消毒・消臭効果を持ち、効率良くしかも安全に利用できる。しかし、沈殿物や白色混濁がある場合は濾過する必要性も一考する。
また、ウイルスにはタンパク質の殻の中にカプシドを有する核酸があるが、そのタンパク質の一部を破壊する事でウイルスを不活化する事から、光触媒の強い酸化・還元力によってウイルス膜タンパク質の一部に損傷を与え、感染力を低下させることが重要である。紫外線や可視光により光触媒液活性をさせ、ウイルスが細胞に吸着することが出来なくさせ、宿主への細胞に感染する能力を失うが、銅イオン水や酸化銅水溶液による抗ウイルス効果でウイルスを不活化させる事も可能となる。
さらに、塗擦保護材の光触媒溶液に、酸化タングステンやリン酸類を混合する事で蛍光光源等も増加するが、使用する環境を考慮すると、銅イオン水や銅水溶液により抗菌・抗ウイルス作用があるため必ずしも強い光源は必要としない。ただし、無光触媒溶液を使用した場合は、光源の必要も無く、光触媒同様の効力を有する。
モリブデンは、ヒトを含む全ての生物種で必須な微量元素であり、人体には体重1kgあたり約0.1mg含まれていると見積もられ、骨、皮膚、肝臓、腎臓に多く分布している。モリブデンは、食品の中やサプリメントでも使用され、過剰摂取した場合でも尿中に排泄されるため健康に害を及ぼす心配はない。
抗菌活性を持つことが知られている金属イオンを含む酸化物のFe2O3,MnO2,CeO2,MoO3,SnO2,NiO,ZnOの抗ウイルス活性値を図5に示したが、白色蛍光灯照射下、暗所下ともに、酸化亜鉛(ZnO)で弱い抗ウイルス活性があり、さらに、酸化モリブデン(MoO3)においては、非常に高い抗ウイルス活性が認められている。また、バクテリオファージφ6についても、酸化モリブデンが高い抗ウイルス活性が示されている事から、エンベロープをもたないバクテリオファージQβ、エンベロープをもつバクテリオファージφ6のどちらに対しても高い抗ウイルス活性を示したのは7種の金属酸化物の中では酸化モリブデンである事から、本発明の塗擦保護材では、光触媒材料として、モリブデンまたはモリブデン酸ナトリウムを使用し、酸化タングステン、酸化チタンとの組合わせにより高い抗菌・抗ウイルス活性が得られる事になる。
さらに酸化モリブデンは、暗所下でも高い抗ウイルス活性を示しており、光照射効果すなわち可視光応答性は低いものである。その上、インフルエンザウイルスやネコカリシウイルスを対象に抗ウイルス活性は、バクテリオファージと同様に高い抗ウイルス活性を持つ事から、酸化モリブデンは、抗菌性の他、高い抗ウイルス活性もある。抗菌・抗ウイルス活性のある酸化モリブデンを可視光応答形光触媒材料として利用する為、実験としてモリブデン酸ナトリウム水溶液に酸化チタン粉末を浸漬し、約80℃に加温して3時間攪拌しながら作製後、酸化タングステン粉末を混合させ、濾過後の溶液500mlに対し0.0001mgの過酸化水素を混合し、暗所下でも抗ウイルス活性が観察された。また、ネコカリシウイルス、インフルエンザウイルスに対しても、バクテリオファージQβの場合と同様に、暗所下より光照射下でより高い抗ウイルス活性を示した結果から、Mo/TiO2が可視光応答性をもつことが考察されている事から、本発明の塗擦保護材でも、モリブデンまたはモリブデン酸ナトリウムを使用し、より高い抗菌・抗ウイルス活性が有効となる。ただし、可視光応答性の更なる詳細については今後の検証が必要となる。
したがって、過酸化水素を酸化チタンに混合すると、酸化チタン粉末を分散することが可能であるが、沈殿物を完全に分散させるのは出来ないため、クエン酸水和物で500mlに対し25gまでを混合し実験した結果、2時間経過後の酸化チタン、酸化タングステンの溶解が見られたので、より安全性を考慮すると塗擦保護材はクエン酸水和物を採用した。ただし、クエン酸水和物の混合で上澄み液を得た後、それを濾過して酸化タングステンやモリブデンの触媒の働きで光触媒の効果を維持させた無色透明で無害な溶液としても良い。
また、ナノセルロースは乳状で粘性があり、乳剤的な役割と水溶性でもあることから手肌に浸潤し易く、保湿・保護材の役割を果たす効果が大きい事は、ナノセルロースの混入有無の実施試験でも認められている。その上、木材由来からなるナノセルロースとパルプの相性は非常に良く有効となる。
さらに、セルロースシングルナノファイバーを使うとゲルの調製が出来、塗擦保護材が液体の場合、スプレー等で付着性向上等の効果が期待され、スプレー容器に充填した場合、逆さまにしても使用出来るという効果もあり、価格的にも圧倒的に安価である。
セルロース系高分子ファイバーを構成するセルロース系高分子としては、β-1,4-グルカン構造を有する多糖類である限り特に制限されず、例えば、高等植物由来のセルロース、例えば、杉等の木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプ等)の天然セルロース繊維(パルプ繊維)や動物由来のセルロース、バクテリア由来のセルロース、化学的に合成されたセルロース(再生セルロース;誘導体含む)などのセルロース・ナノセルロース、キチン、キトサン、シルクなどが挙げられる。なお、前記セルロースは、用途に応じてα-セルロース含有量の高い高純度セルロース、例えば、α-セルロース含有量70~100wt%程度であってもよい。前記セルロースは、単独又は二種以上組み合わせて使用してもよく、セルロース系高分子のうち、木材繊維(針葉樹、広葉樹などの木材パルプなど)コットンリンターなどの種子毛繊維などが好ましい。その上、セルロースを原料として得られるアニオン系水溶性高分子のカルボキシメチルセルロ―スも優れた増粘性・吸水性・保水性を有するため使用が可能であるが、ナノセルロースと併用でも良い。
また、一般的なパルプの利用は紙での使用が多く、これはパルプの軽くて一定の強度が保てる事が1つの理由とも言える。そのパルプを微粉体にして、指先で擦り合わせると指紋の中に入り込み指先同士で動かしてもパルプ微粉体の微分がぶつかり合い、指先は微粒子パルプの乾燥時に滑らなくなる程の抵抗力である事から、塗擦保護材の微粒子パルプは、ナノセルロースや光触媒溶液を手指の摩擦により手肌の角質に擦り込ませ、被膜して塗擦作用をすると同時にナノセルロースの保湿成分も浸潤させる事をパルプ微粒子による塗擦方法とした。しかも、塗擦保護材がスプレーボトル等に水溶液状で充填された場合、上部から中間部に浮遊しているパルプ微粒子はスプレーポンプで吸い込まれやすく、噴霧時の手肌等に必ず塗布され摩擦効果が安定的に得られる事となる。
また、パルプ微粉末を添加することにより、塗擦保護材の塗擦性能、特に二次塗擦性能に対するセルラーゼの作用を向上させることである。パルプ粒子は、少なくとも部分的に機械圧力により得られる圧縮で破断、次いで顆粒化形態で好ましくはセルロースを含有し、特に微小な物質として形づくられ、塗擦性能に対するセルラーゼの作用を刺激するためにパルプ粒子を含有するが、当然、パルプ粒子のサイズは小さい事が適しており塗擦保護材のパルプ粒子はμm以下とする。
塗擦保護材に使用するナノセルロースは,全ての植物の基本骨格物質であり,セルロース繊維を微細化することで得られ、一般的にサイズとしては直径が100nm以下,アスペクト比100以上のファイバーと言われている。木材の断面の一部を電子顕微鏡で1,000倍に拡大してチップ断面として観察し,更にチップから取り出した幅20μm程度のパルプを2,500倍で観察すると、このパルプは,セルロース分子鎖、ミクロフィブリル、フィブリルと階層的に構築された構造を有し、幅10nmのセルロースナノファイバーの場合、数本のミクロフィブリルが集合した状態まで微細化された状態のものを指す。パルプの繊維からセルロースナノファイバーまで1,000分の1のダウンサイジングであり、電子顕微鏡(SEM)写真では、パルプ繊維の表面を観察したものでセルロースナノファイバーが集まってできている沢山の繊維のヒダがわかる。代表的なナノテク素材のカーボンナノチューブでは,ファンデルワールス力によって複数本凝縮してしまうが、セルロースナノファイバーではセルロース分子が6本×6本程度集まって3~4nm径のナノセルロースを形成し、この場合セルロース分子間の結合は主として水素結合によるものでミクロフィブリル、フィブリルと太く成るにしたがってフォンデルワールス力やリグニンによる接着剤効果が効いてくる。カーボンナノチューブの場合,分散されたナノチューブは放っておくと互いにくっついてしまって使い物にならなくなってしまうが,セルロースナノファイバーの場合は解繊して水中に入れておいても直ぐには接着せず、繊維をほぐして微細化する技術と共にできたセルロースナノファイバーを如何にして規則正しく並べるか、あるいは別の材料に如何にして分散して混合させるかの加工利用技術も世界中で開発されている。一般的に使用する様々な材料にもナノ化は必然となりつつあり、塗擦保護材は石鹸に混合している重曹塩等も考慮する事も必要である。
木材は炭素50%、水素6%、酵素44%からなり、ブドウ糖などの多糖類であるセルロース・ヘミセルロースとベンゼン環を有し疎水性で複雑な構造のリグニンの3つの主成分からなり、セルロースは主成分の約50%以上を占め、セルロースミクロフィブリルはさらに集合してフィブリルの束を形成し、幅0.02~0.04mmで、長さ数mmの植物繊維を形成している。植物繊維間はリグニンによって強固に接着され、植物繊維集合体を形成している繊維がパルプであり紙の原料となる。植物繊維は中心が空洞の微小なパイプのような構造で、根から吸収した水を、このパイプを通し重力に逆らって樹木の先端の葉まで送り二酸化炭素を吸収して光合成し酸素を放出するが、樹木の細胞壁はリグニンの疎水性と、鉄筋のような高強度ナノファイバーであるセルロースミクロフィブリル、セルロースミクロフィブリルとリグニンの間隙を埋める非晶性のヘミセルロース成分によってセルロースミクロフィブリル単位、あるいはその集合体として幅が数十nm以下にまで分離・分散した植物由来のナノ素材である。また、セルロースは紙製品の他、食品や化粧品および医薬品でも使用され、有効成分を含む錠剤が体内で崩壊するための成形剤としても広く使用されている。
また、パルプやセルロース繊維に対する様々な前処理方法や多くの優れた特性が見出され、ナノテクノロジーの発展に伴い、バイオマス由来のナノ素材として注目されているが、ナノセルロースには形状に基づき、長さ150nm以下の棒状あるいは紡錘形をしたセルロースナノクリスタル(CNC、あるいはナノ結晶性セルロースNCC)と、ミクロンレベルの長さを含む繊維状のセルロースナノファイバー(あるいはセルロースナノフィブリルCNF、またはナノフィブリル化セルロースNFC)に大別される。
木材パルプの水分散液を処理して得られる微細化された繊維、ミクロフィブリル化セルロースの処理条件の概要は、原料スラリー濃度4~7%、オリフィス径0.4~6mm、処理圧力34,450~55,120kPa(オリフィス通過線速約750km/h)、オリフィス通過回数1~80回となり、この処理によって繊維径6~10μm、繊維長1~4mmの木材パルプは微細化され、繊維径0.02~0.06μm(20~60nm)、繊維長数μm(数千nm)のMFCが得られるが、セルロースのフィブリル化の程度に依存することがわかっており、例えば、填料の歩留り向上効果や透気度の増加効果は、フィブリル化を進めたセルロースほど効果が大きくなることが報告されている。
また、塗擦保護材に使用するナノセルロースは特に限定はしていないが、国立森林総合研究所より1.6%および6%液体を提供され実施例とし2016年より実験を重ねた他、株式会社スギノマシン社製のセルロースナノファイバーBiNFi-sを使用した実験も行った。
さらに、塗擦保護材の成分構成例として、パルプ粒子15%、ナノセルロース25%、光触媒酸化チタン2.5%、砂糖9%を精製水30%で70~80℃で溶解した。溶液が得られた後、冷却して脂肪酸ナトリウム1%を加え混合した。溶液中41%をセルロースとし、全ての原材料が天然由来とした塗擦保護材となる。但し、あくまでも実験での数値設定であり、これらに限定する事は無く、実施例の1つとして示した。当然、仕上げの際は、濾過する事により、溶液を作る為の数値であり%程度の誤差は生じる。
図3に示したが、マスクやハンカチ等の布帛繊維には、光触媒溶液である酸化チタンは表面精が小さい緻密で平滑な表面より、凹凸があり表面積が大きいホーラスな表面であり吸着量が多い事から、塗擦保護材を塗布・噴霧する事で塗擦作用が有効となる。
一方、光触媒酸化チタンは、日本曹達製酸化チタンコーティング材であるビストレイタH:アナターゼ型酸化チタンで造られている他、圧倒的多数の石原産業(株)製コーティング剤の光触媒で、その導因はナノセルロースの増粘性を混成させる事である。しかも、手洗いや水分を拭き取っても施しても、同時に塗擦保護材の強酸性が物理的・化学的に固定化され、光触媒活性により手肌や繊維に付着する菌やウイルス等が反応し、殺菌・分解による塗擦作用で簡易に取り除かれる他、新たな菌やウイルスの付着・増殖の発生し難い環境と衛生的に保つ塗擦効果が期待出来る。本発明は、数多くの臨床試験データを待つ事が必要なため試験を継続中である。
また、光触媒は有機物であれば相手を選ばず最終的には二酸化炭素を水にまで分解してしまう非選択的性の反応であり、多機能、酸化分解力以外にも超親水性という性質がある事から、例えば[特許文献7]の洗濯物の衣類等に遷移・固定化された親水性の高い光触媒ナノセルロース洗剤や添加剤は、光や紫外線、可視光線の照射で必ずしもバインダを必要とせず光触媒が浸透すると殺菌性を発生させる事を知見し、菌の発生の原因を作らない事により可能とした。一般的に洗濯後は雑菌やウイルス等が洗い流されているが、悪天候や湿気の多い部屋内での乾燥等の条件や環境により、モラクセラ・オスロエンシス菌が洗濯物に付着・増殖後、水分や皮脂等を栄養分にして糞のようなものを出し、この糞が所謂、雑巾のような悪臭を発する事から、それを抑止する1つの選択肢として[特許文献7]の光触媒ナノセルロース洗剤や添加剤を既成洗剤に混入し洗濯をする方法が好ましい。但し、洗濯機内の雑菌により洗濯直後でも菌の増殖を招く場合もある為、光触媒溶液や塗擦保護材を噴霧または塗布する事で、それらの殺菌も可能となる。
また、繊維や紙、プラチックなどに酸化チタンをほどよく触れるように使用する方法で公知された市販品の光触媒溶液を塗擦保護材で使用しても、光触媒反応による基材の分解反応を遅らせる又は短時間で済むと、汚れ落としに必要とする濃度で飽和し、防ぐ事が出来る。これは、材質の中や表面に浸透させる方法であり、液状の塗擦保護材を繊維の隙間に入り込ませる為、LEDライトの他、可視光線や紫外線について計算式で求められる事も併せて説明する。可視光線visibie(v)や紫外線Ultraviolet(UV)の光はX線、マイクロ波或は電波と同様に電場と磁場を繰り返しながら進行する波、即ち電磁波である。可視光以外では色の相違は見えないが波長wavelenght(λ)と振動数frequencynumber(ν)を持っており、波長によって単位はメートル(m)で表され、物質はその化学構造と関係して電子遷移に応じ紫外線から可視部の光を吸収する事が計算出来る。それにより、紫外可視吸光度測定法がある。電子遷移に伴う光の吸収を利用するもので、通常200nm~800nmの波長の光紫外線、可視光線を測定する方法である。図10に示した光が厚さのある布地繊維ιの層を通過する場合を仮に想定し、入射光の強さをIo、透過光の強さをIとした時、両者の比率を(I/Io)を透過度t(transmittance)で、これを100分率で透過率(Percenttransmission)T
Figure 2022034488000004
また、透過度tの逆数(l/t)の常用対数を吸光度A(absorbance)
A=-Iogt=2-Iogt吸光度Aは試料濃度に比例し、これはBeer法則である。吸光度Aは試料溶液の濃度及び層長に比例すると表現され、これはLambert-Beerの法則でA=R・C・ιであり、Rは比例定数、C・ιはそれぞれ濃度、層長を表す。CをmoI/Lで表しRをεと表記、モル吸光係数molarabsorptivity A=ε、c、ι 試料溶液濃度1mol/Lのとき吸光度εに相当する事になり、同一測定条件下で物質に固有の値となる。また、cを%(w/
Figure 2022034488000005
これが比吸光度specificabsorptionで試料溶液の濃度が1%(w/v)の吸光度に相当する事になる。
Figure 2022034488000006
この値もまた物質固有の値となり、医薬品の示性値や紫外可視吸光度測定法を用い、上記の2式は測定対象化合物の分子量をMとし、試料溶液のモル濃度をXmol/Lとすると、そのパーセント濃度はX、M/10%(w/v)となり
Figure 2022034488000007
また、酸化チタンに紫外線を照射すると強い酸化力を有するラジカルが発生し、有機化合物(例えば汚れ・悪臭ガス)の酸化・分解、無機化合物(例えばNOx・NH等)の塗擦効果を発揮することから、環境浄化などに応用が進められている。太陽光の照射下では優れた光触媒能を発揮できるが、白熱灯、蛍光灯等における光源に含まれる紫外線量は4%程度と少なく、このような光源化では十分な光触媒能を発揮する事ができない。しかしながら、今日ではアパタイト被覆二酸化チタンで公知されている通り、可視光応答型の酸化タングステンやリン酸類の他、光があたらなくても銅イオン水や銅水溶液により、有害有機物質、臭いやカビ、ウイルス、細菌などの物質を分解して塗擦作用をする事も可能である。
さらに、酸化チタンに紫外光が照射されると、その表面では「光誘起分解反応」と「光誘起親水化反応」の2種類の反応が進行する。これらの光触媒反応は、酸化チタンを構成している電子が励起されるところから進行していき、アナターゼ型の酸化チタンのバンドキャップは3.2eVであるので、波長380nm以下の紫外光が照射されれば、電子は伝導体へ励起され価電子帯には電子の抜殻である正孔(ホール、h)が生成する。この生成した正孔と電子が酸化チタンには効率よく拡散する事が出来、空気中や水中などの反応場所に存在する酸素や水と共に光触媒反応を進行させる。この光触媒反応での特徴は、微弱光であれ、酸化チタンを励起できる光りが照射されてつまり、この光照射が重要でバインダは結果的に光触媒の効果を安定的に供給する為の補助であり、布等に付着した汚れや塗擦するその場の数分のわずかな時間での効果を促す目的性の場合はホール・電子対は連続的に生成している。この連続的に生成する電子・ホールによって、酸化チタン表面に吸着している分子は酸化分解を受け、この光誘起分解反応を利用し防汚効果を狙い抗菌効果でNOx分解を意図する汚れが酸化分解されるため、汚れが付着しない。このように、汚れが分解でき、外観をきれいに保つという効果に大きく働くものである酸化チタン光触媒は、細菌に対して広い抗菌スペクトルを持っているばかりか、他の微生物に対しても非常に広範囲に効果を現し、これは酸化チタン自身が抗菌剤ではないためと考えられる。他の抗菌剤はそれ自身が細菌を殺菌したり増殖を抑制したりする作用を有するものであるのに対し、酸化チタンの場合は、酸化チタン自身が抗菌剤でなくあくまでも光励起されることで生成する電子・ホール対、或はそれから派生する活性種が細菌をアタックして抗菌活性を与える。酸化チタン自身は光触媒であり、広い抗微生物活性を持つ要因と考えられる。また、室内光など微弱な紫外光下でも抗菌効果を得ようと、今日では光触媒反応と銅や銀イオンが持つ抗菌効果が相乗して得られる事もわかった。よって、微弱光下でも銅や銀の耐性菌に対して抗菌効果が得られる事となり、それも一つの抗菌効果の特徴となっている。さらに、光励起によって生成するホール・電子対からの有機物分解が抗菌効果の原動力であるので、殺菌された後も光が照射されていれば有機物分解は続き、殺菌された細菌の死骸が分解していく。このように、酸化チタン光触媒反応による抗菌効果は、他の抗菌剤にない特徴を持つが、その一例としては空気浄化に対しての空気清浄機で製品化されている。
また、酸化タングステンは酸化チタンと同様の特徴を有しつつ、バンドギャップエネルギーが2.8eV(約460nm)程度であるため可視光応答型光触媒として期待されるが,価電子帯端位置が酸化チタンよりも卑であるため酸化能が劣る。このため、貴金属や他の半導体による表面修飾、各種金属との合金化、ナノチューブ構造などによる光触媒特性の改善による表面活性向上が為され、光触媒として有用な潜在力を有する酸化タングステンの光触媒特性を向上させる助触媒として微量の銅による酸化物表面修飾を用いて効率のよい光触媒となる。
さらに、塗擦保護材は、光触媒溶液により手指等の摩擦時に菌やウイルス等の中にナノサイズの微粒子が潜り込み、飛躍的な塗擦作用が可能になる。但し、摩擦時に菌やウイルス等の塗擦作用をするが、皮膚や粘膜等の摩耗はナノセルロースやパルプ微粒子、糖類により保護される。また、その他の雑菌に対しても、光触媒の働きによりそれらを殺菌する効力を持つ事は公知されている。
さらに、光触媒の毒性・無害性については既に詳細は公知されおり、塗擦保護材はその範囲で製造するが、例えば、金魚や熱帯魚等を入れたまま飼育槽内に光触媒溶液を挿入すると、槽内に繁茂する苔や藻類は死滅し、金魚や熱帯魚等には影響を与えない事等も安全性の証明と言える。一方で、光触媒は一般的に壁などの固定物であり固体物に対し有効とされてきたが、現在では手術等にも使用されている体内差し込みカテーテルチューブや歯科治療にも光触媒が使用され公知となっている事から、本発明の塗擦保護材についても同様の効果が得られる。
また、酸化チタンに代表される光触媒溶液は、物理的には光伝導性物質の一種で、通常は電気を通さず光があたると導電性が生じ、光を吸収して触媒となるが、光触媒溶液はナノミクロの粒子である為、吸着量が多く効果も大きく、人体の一部である手肌や繊維に塗擦保護材の被膜をコーティング形成するようになるが、手洗い後等でも塗擦保護材のコーティング作用は継続される。
さらに、抗生物質も効かないようなバクテリアを死滅させ且つ安全で無害な殺菌技術としては光触媒以外に候補が無く、多くの病院の手術室で光触媒が試され、その効果が実証された事から、この後種々の商品分野への展開が進み、その意味で健康医療技術は現在の光触媒の応用端緒であり、経口避妊薬等に用いられる人工女性ホルモン等の多くの化合物についても光触媒分解が試みられており、女性ホルモン活性を完全にゼロにするのを出来るのがわかっている事から、塗擦保護材は医薬部外品も視野に入れる。
ただし、光触媒が短時間で効果が出ない或は出来難い場合を仮定しても、一般的な習慣として、手肌の水洗いは数分~数時間の定期的に行われるが、塗擦保護材をその都度利用しなくても被膜された光触媒の塗擦効果は保持される。ただし、保湿・保護性を重視する点を鑑みると水洗い後に塗擦保護材を使用する事は、結果として手肌の保湿・保護が得られる他、光触媒をより多く物理的、化学的刺激を働かせる事にもなる。
光触媒溶液は手肌や繊維に練り込むと、光触媒作用で分解されてしまうため、基板以外の手肌や繊維の適用に対し敬遠されていたが、これらもアパタイト被覆二酸化チタン等で、手肌や繊維への利用を可能とする防止剤または補助剤も公知されている製品を使用する事により解決している。その上、短時間の使用では、光触媒の反応速度や分解速度と併せ、ナノセルロースや非親水性のパルプ微粒子および糖類による手肌接触時の肌荒れを防ぐ保湿・保護構造で手指の擦り合わせる圧力等も付加されるため手肌の適用も可能となる。
一方、糖類の塗擦能力は、糖類の持つ親和性に関係している。例えば抗菌性が公知されている砂糖はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)の2種類であるスクロースで構成され、主な成分は炭素と水素となり、油の成分である炭素と水素、酸素で構成されている事から類似した成分は混ざりやすく、皮膚よりも砂糖の成分が油に近いためこのような現象が起こるが、水との相性も良い事で効果的に作用し、手荒れの心配もない。また、砂糖はセルロースに比し、分子量が遥かに小さく、8つの水酸基を持ち水に良く溶け、化合物の分子内の小部分が変化した各種の誘導体を与える等、多様な化学的機能を持ち、優れた抗菌・防腐作用と細胞を回復させる作用があると臨床結果も出ている事から、塗擦保護材に混合させ可視光照度が極めて低い場所等で光触媒の塗擦効果を補助する役割が期待できる。
また、手肌の他、顔や人体に塗擦保護材を使用する場合、ナノセルロースの他に、藻類や海藻類により保湿性や保水性が得られる。その中でもアカモクは褐藻類に属した海藻の1つであり、類似種にシダモクがあるが、気胞の形状がアカモクは円柱状でシダモクは球形から楕円体となり、葉は長さ7cmから幅1.5cmで生命力も強い事から日本各地および海外に分布し、葉の形状等は地域差がある。アカモクは強い粘りを持つことが特徴で、この粘性物質はフコースを主な構成糖とした硫酸多糖の1つであるフコイダンと海藻の構成糖として知られているアルギン酸である。中国では古くからアカモクを消炎用の漢方薬で利用されているが、フコイダンには抗腫瘍効果等、アルギン酸は整腸作用等の様々な機能を有する可能性が多く報告されている。例えば、福岡県宗像市で採取したアカモクと比較対象とした福岡県志摩町産・糸島町産、沖縄県久米島産のモズクを凍結乾燥させ粉砕機で粉末化した結果、アカモクのフコイダン量は約500から700mg程度あり、原藻と比較しても7割から5割もフコイダンを保持する事が明らかになった。さらに加工条件を検討する事で、塗擦保護材ではフコイダンをより多く保持させたフコイダンの微粉末を使用し、塗擦作用の他、ナノセルロースやパルプの補助的または代用として皮膚の保水性、弾力性維持、吸湿性等の美肌作用や保湿保護成分となる。但し、海藻類の消臭として次亜塩素酸を併用する場合もあるが、当然、次亜塩素酸は消臭の目的で使用する事を限定したものではない。
さらに、アカモクの試料を加熱処理した場合、一般成分(水分・灰分、タンパク質、脂肪、炭水化物)は、アカモクの原藻との間には大差が認められず、第5訂日本食品成分表に記載されている他の褐藻類の一般成分と同程度の組成になることがわかり、炭水化物が豊富に含有しているのは、食物繊維のアルギン酸やフコイダン等が主成分と考えられる事から、微粉末化の加工をする場合、乾燥等により加熱処理を施しても塗擦保護材に使用するには問題が無い。また、ミネラルの供給源としても有用であるという結果から、有効性も含め、安定した材料であると考えられると同時に、その粘性を利用し、噴霧スプレー容器に充填した塗擦保護材の液垂れ防止にもなる。
その上、熱水抽出物の抽出実験の結果、昆布属の海藻には水溶性アルギンがアカモクは1%以下、真昆布で4%、ホソメ昆布で9%を含有しており、熱水抽出で精製されたフコース含有量(以下フコイダン)に於いては粗影響されず、その構成成分を分析した結果フコイダンの他にウロン酸および硫酸根が含有され、フコダイン含有量は褐藻類で10%以上、最高値はアカモクの44.5%にもなる。また、精製により混在するアルギン酸を完全に除去してもウロン酸や硫酸根は含有されており、構成成分として考えられたフコイダン・ウロン酸・硫酸根をモル比で見ると、フコダインのみを構成糖とするフカン硫酸では、フコダインと硫酸根のモル比1:2と考えてよく、これ以上の場合にはフコダイン以外の構成糖を持っていなければならない。そこで、硫酸モル比が2以下を示す例はアカモクを含め4種類ありこれらはフカン硫酸と考えられるが、他の大部分はフコイダンとそれ以外の単糖で構成される多糖であると報告されている。それらを鑑みると、当然の事ながら褐藻類を含む海藻は熱処理を施しても組成に問題は無く、安全性も認められた原料と成り得、塗擦保護材として有効性を示している。
さらに、アカモクは昆布やもずく、わかめ、ひじき等と同じ形成の褐藻類で、硫酸化多糖の一種で粘質物であるフコダインを多く含有している。このフコダインには抗酸化作用、アポトーシス誘導によるアレルギーを抑える等の抗菌作用があり、特にもずくフコダインの化学構造については、1996年に琉球大学農学部グループ等による報告で、4つのフコース、1つのグルクロン酸と2つの硫酸基からなる構造を一つの単位(分子量約1,000、5つの糖からなる)として繰り返し構造をしているとされ、高分子のもずくフコダインは分子量約10,000以上の多糖類である事から、塗擦保護材の糖類の1つとして褐藻類を含有させ、フコダイン成分を利用した粘着性で手肌や布帛繊維の保湿・保護を得る事が可能となる。
また、光触媒の抗ウイルス効果は、ウイルス全般への効果を期待出来るが、すべてのウイルスあるいは特定のウイルスに対する効果や病気の予防や治療効果を保証するものではない。しかしながら、空気清浄器で光触媒を利用したインフルエンザ等の浮遊感染性ウイルスの不活化性は閉鎖空間で有効な手段となる可能性が高いことも多くの実験で報告されている事から、実施例として塗擦保護材を人体の手指、足指、踵、口腔内、繊維としてはマスク、衣類、寝具、カーテン、靴の中敷き、歯ブラシ、歯間ブラシ、爪楊枝、口内すすぎ液等の口腔ケア用品、ドアノブ、照明器具、割箸、調理器具、装飾品等の木材や繊維に噴霧または塗布する事で、光触媒作用により、細菌やウイルスの働きを抑制、予防が期待できる。
さらに、塗擦保護材の使用環境や保存環境、使用期間を考慮した場合、防腐剤や酸化防止剤を含有させる事も一考する。ソルビン酸カリウムは、細菌やカビの発生・増殖を抑える働きがあり、腐敗防止として食品等に頻繁に使用されている他、歯磨き粉やシャンプー、化粧品の防腐剤としても使用されている。ソルビン酸カリウムの代謝・排泄に関しては、生体内にソルビン酸として取り込まれ、ソルビン酸は不飽和脂肪酸であることから通常の脂肪酸と同様に最終的に二酸化炭素と水に分解され尿排泄されると考えられているため塗擦保護材に含有しても安全に利用できる。また、ソルビン酸カルシウムは食品の保存料として広く欧米諸国などにおいて使用されている食品添加物で、米国においては、ソルビン酸、同カリウム塩、同カルシウム塩及び同ナトリウム塩はGRAS物質(一般に安全とみなされる物質)として安全性評価がなされており、適正製造規範(GMP)による管理のもと、一般の食品に必要量用いることができる。ソルビン酸とその塩類は、広範な抗菌スペクトラムを有しており、カビ、酵母及び細菌に対し、静菌的に働き、安全性が高いことから、カルシウム塩を含めて各国において広範な食品に保存料として使用が認められており、ソルビン酸カリウム同様、塗擦保護材の防腐剤として利用が出来る。ソルビン酸以外の防腐剤としては、さっぱりした感触と優れた抗菌性を有する多価アルコール(二価アルコール:グリコール)の1,2-ヘキサンジオールで、高い抗菌性を有する多価アルコールの一種のアルカンジオールでもある。グリセリンやソルビトールなどでは効果が無いが、プロピレングリコールのようなグリコール類にグラム陰性菌の抗菌作用が認められている。これらグリコール類の抗菌性は、グリコール類が自分自身を溶解させることで、微生物から水分を奪い取ってしまう作用から起こっており、微生物は増殖が不可能になるうえに死滅してしまうと考えられている。その上、アルカンジオール類は、他の多価アルコール類と比較して顕著に大腸菌の増殖を抑制することが示されており、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、クロカビにも1,2-ヘキサンジオールが優れた抗菌性が示されている。さらに1,2-ヘキサンジオールとペンチレングリコールまたはカプリリルグリコールの併用により相乗的な抗菌性を示すことも公知され、塗擦保護材でも防腐剤として皮膚刺激性も略無く、安全に使用する事が出来る。但し、使用については任意となる。
また、酸化防止剤のジプチルヒドロキシトルエンは、p-クレゾールとiso-ブチレンから化学的合成により製造され、脂溶性で他の酸化防止剤に比べて安定性が優れている他、ビタミンEであり脂溶性ビタミンの一種のトコフェロールは水に溶けず、アルコールやオイルに溶ける性質をもち、αトコフェロール、βトコフェロール、γ(ガンマ)トコフェロール、δ(デルタ)トコフェロールの4種類あり、医薬品や食品添加物の酸化防止剤として広く使用されているが、一部では健康有害性も指摘されているため、本発明で使用する事は一考する。その他、アスコルビン酸(ビタミンC)、クロロゲン酸、カテキンについても塗擦保護材の酸化防止剤として利用が出来る。但し、使用については任意となる。
塗擦保護材で酸化防止剤を使用する場合の考察点は、水溶性成分の酸化防止剤として、アスコルビン酸類(ビタミンC)は、ビタミンとしての栄養強化の目的で使われることも多いが、一方では、酸化防止剤として広く使用され、ビタミンC類には、水に溶けるL-アスコルビン酸とL-アスコルビン酸ナトリウム、油脂類に溶け易いL-アスコルビン酸ステアリン酸エステルとL-アスコルビン酸パルミチン酸エステルが使われているが、熱安定性の良い水溶性のビタミンCとしてL-アスコルビン酸2-グルコシドがあり、目的に合わせて使用出来る。トコフェロール(ビタミンE)類のビタミンEは、生体の過酸化物生成を防止する効果を有し、細胞膜や生体膜の機能を維持する効果を持つ油脂類に溶け易いビタミンであり、ビタミンとしての効果の強いα-トコフェロール、酸化防止の効果が強いδ-トコフェロールがあり、他にβ-トコフェロール、γ-トコフェロールなどがある。これらの中で酸化防止の目的で使用するのに適したものは、d-δ-トコフェロールおよびミックストコフェロールである。指定添加物のdl-α-トコフェロールは、使用基準で酸化防止の目的で使用することに限られているが、その効果は、上記した既存添加物の2種類のトコフェロール類に及ばない。さらに、エリソルビン酸類は、アスコルビン酸の異性体であり、イソアスコルビン酸と呼ばれることもある代表的な酸化防止剤で、欧米でも広く使用されているが、エリソルビン酸には、ビタミンCとしての効果はないといわれ、酸化防止の目的のみで使われる。その酸化防止の作用は、ビタミンC類と同様である。BHA(t-ブチルヒドロキシアニソール)とBHT(ジt-ブチルヒドロキシトルエン)は、化学的な合成で得られた酸化防止作用を有する代表的な物質である。いずれも酸化防止作用を有するt-(ターシャリー)ブチルフェノールの効果をより発揮できるように合成された誘導体であるが、一時期、BHAの安全性に疑問が生じたとの理由で使用基準の改正が行われ、改正使用基準の実施時期が定められなかったため、特に輸入食品に関しての実効性は乏しく、この使用基準は、前回の改正前の使用基準に戻る形で改正されたため、BHAは油脂や魚介加工品などに、広く使用することが可能となっている。エチレンジアミン四酢酸を骨格とする塩類がEDTA類であり、2種類が食品添加物として指定され、EDTA類は、酸化を促進する金属イオンを捕捉する力が高いため、酸化を抑える効果を持ち、幅広い食品での使用が考えられるが、日本では、缶詰食品や瓶詰食品での遊離金属イオンを捕捉してその活動を封鎖する金属封鎖剤としてのみ使用が認められており、最終食品に残存する場合は、カルシウム二ナトリウム塩の形にすることが義務づけられている。没食子酸は、ボッショクシサンともモッショクシサンとも呼ばれる植物系の既存添加物である。日本では、五倍子から得られる五倍子タンニンが主要原料であり、ヨーロッパでは、没食子を原料とする没食子タンニンが主体になっているが、いずれも古くから使われてきたものであり、その酸化防止効果は、没食子酸を構成する、ポリフェノール系のトリヒドロキシ安息香酸のさようである。没食子酸プロピルは、没食子酸とプロピルアルコールとのエステル化反応で得られた指定添加物であり、欧米を中心に油脂とバターの酸化防止剤として使用されている。その他の天然系の酸化防止剤として、ルチン類は、クエルセチンの配糖体で、熱に強く、抗酸化作用があるため酸化防止剤として使われている。これらには、「ルチン(抽出物)」、「クエルセチン」、「ルチン酵素分解物」、「酵素処理ルチン(抽出物)」や「酵素処理イソクエルシトリン」などがある他、「チャ抽出物」や、リンゴの果実を酵素で分解した「酵素分解リンゴ抽出物」などもある。
また、塗擦保護材に使用するアラントインには、組織修復賦活作用(お肌の組織の修復を活性化させる作用)と抗刺激剤作用、消炎鎮静作用、抗アレルギー作用があり、これらの作用から肌荒れやニキビに効果があり、敏感肌の人や赤ちゃんにも使用出来る。空気に触れると酸化チタンや酸化タングステン等の金属は過酸化物が作られる場合もある為、酸化防止剤とアラントインを併用することにより抗アレルギー不活作用が得られる。ただし、酸化防止剤の併用は任意である。
塗擦保護材を濾過する場合、その溶液中に有効成分を残存させるため、それぞれの物質が完全分散された状態の溶液であることが必要であり、その上で濾過をすると、それらの抽出液には効果成分の維持が為されており、高い有効性を示す事が出来る。また、一定時間を要した濾過をすればさらに安定的な効果成分が抽出される。
一方、ゲル状の塗擦保護材の場合、スプレー容器や、スポンジキャップ付き容器、ローラキャップ付き容器等に充填させ、手肌へ極度に付着した菌やウイルスを剥離分解する際も、アルエーテルや硫酸エーテル等を添加しなくても、光触媒の濃度の数%を上げた溶液を使用し、より塗擦作用や保湿・保護力が高くなる。また、繊維に対してもゲル状にする事で塗擦作用が大きく上がる他、塗擦効果が多く得られる。
さらに、塗擦保護材を人体の肌や頭髪等に噴霧または塗布すると、肌の表面に対し塗擦保護膜が被膜され、クエン酸のピーリング効果等により、湿布を貼る等の煩わしさや、皮膚の炎症もなく、無臭で冷涼冷却および痛みの緩和が一定時間得られる。ただし、クエン酸の添加量の調整をする事が必須となる。
また、塗擦保護材を毛髪に噴霧または塗布すると、塗擦保護膜が毛髪に弾力を与え、洗髪するまで効果が持続される得られる毛髪ケアまたは整髪料としても使用が可能である。ただし、酸化チタン等を使用しているため、眼への混入を避けるようにする。
本発明の塗擦保護材を実施例に基づいて詳細に説明するが、これら実施例にのみ限定されるものではない。配合量は重量%で表す。
本発明組成物の純分換算し使用して用いた。
本発明の製品安定性及び外観も目視で結果を表した。但し、目視は毛髪や水虫による白癬菌に罹患した爪や足裏に限定される。
実施例として毛髪は市販のシャンプーを使用し洗髪乾燥後、本発明の塗擦保護材をスプレー塗布した。また、塗布後、塗擦保護材が乾燥した時点で毛髪内部と表面を手指にて触診する感触感覚とし、評価基準に従い12名で実施された結果を図6に示した。
その結果、12名中10名がべたつかず、自然なふんわり感とコシがあり指通りがあり良好と判断。但し実施例5のカルボキシメチルセルロースの含有量を増加させた場合は毛髪が若干重く感じ、べたつき感もあるが、まとまりやすいと回答された。
実施例として肌へのスプレー塗布は肩・首周辺、腕、足裏、爪に実施した。塗布後の冷涼冷却感や患部の状態改善を評価基準に従い12名で実施された結果を図7に示した。
その結果、12名中11名が塗布した肌の冷涼感が得られ、肩周辺の痛みの緩和もあったと回答された他、白癬菌に罹患した2名は継続的に使用した結果、爪の水虫や足裏踵部の皮膚が改善したと回答された。ただし、実施例3のクエン酸の含有量が多い場合は塗布された皮膚にピリピリとした感触があると回答された為、クエン酸についての含有量は適量とする。
また、塗擦保護材に香料成分や溶液の着色成分を混合させることは任意である。
なお、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。

Claims (4)

  1. 1種またはそれ以上の光触媒液と、前記光触媒液に分散した複数の担持金属または金属液および化合物、複数のナノセルロース、糖類、藻類およびパルプを含有していることを特徴とした塗擦保護材組成物およびその製造方法。
  2. 前記塗擦保護材組成物は液体、ゲル、ペースト、粒粉、固形化された請求項1に記載の塗擦保護材組成物。
  3. 前記塗擦保護材組成物を用いて殺菌・抗菌・抗ウイルス・除菌・防臭・防カビ、抗アレルギー、保湿保水、速乾性、冷涼冷却、疼痛緩和、毛髪ケアの請求項1または2に記載の塗擦保護膜。
  4. 前記塗擦保護材組成物を用いて人体、固定物、固体物に得られる請求項1から3に記載の塗擦保護膜。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115820020A (zh) * 2022-11-23 2023-03-21 宁波慈溪生物医学工程研究所 一种铜基搭载二氧化钛中空球的抗菌涂层及其制备与应用

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CN115820020A (zh) * 2022-11-23 2023-03-21 宁波慈溪生物医学工程研究所 一种铜基搭载二氧化钛中空球的抗菌涂层及其制备与应用
CN115820020B (zh) * 2022-11-23 2023-09-01 宁波慈溪生物医学工程研究所 一种铜基搭载二氧化钛中空球的抗菌涂层及其制备与应用

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