JP2022030713A - 導電膜の形成方法、および、成膜装置 - Google Patents

導電膜の形成方法、および、成膜装置 Download PDF

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泰彦 赤松
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【課題】導電膜において、成膜対象の凹部の開口を囲む頂面に形成される部分の厚さを確保しつつ、凹部を区画する底面および内側面に形成される部分の厚さにおけるばらつきを抑えることを可能とした導電膜の形成方法、および、成膜装置を提供する。【解決手段】導電膜CFの形成の開始を含む第1工程と、第1工程の後に行われ、導電膜CFの形成の終了を含む第2工程とを含む。第1工程は、複数の凹部SHを有した成膜面を備え、ターゲットに対して相対移動する成膜対象Sにスパッタ成膜によって導電膜CFを形成すること、成膜対象Sに形成された導電膜CFをエッチングすることを含む。第2工程は、成膜対象Sにスパッタ成膜によって導電膜CFを形成すること、単位時間当たりのエッチング量を第1工程よりも小さくして導電膜CFをエッチングすることを含む。【選択図】図4

Description

本発明は、導電膜の形成方法、および、成膜装置に関する。
成膜対象に形成された凹部の内面に金属膜を被覆する技術が知られている。当該技術では、成膜対象に金属膜を形成することと、成膜対象に形成された金属膜のオーバーハング部をエッチングすることとを交互に繰り返す。これにより、金属膜のオーバーハング部によって凹部の開口が塞がれることを抑えて、凹部の内面に金属膜を被覆する(例えば、特許文献1を参照)。
特開2008-283144号公報
ところで、配線として機能する金属膜に覆われる凹部は、凹部の底面、凹部の内側面、および、凹部の開口を囲む頂面によって形成されている。近年では、こうした成膜対象を用いて製造されるデバイスの要請に応じて、底面と内側面とにおいて均一な厚さを有する一方で、頂面においては底面や内側面よりも十分に厚いという導電膜の形成が新たに求められている。
本発明は、導電膜において、成膜対象の凹部の開口を囲む頂面に形成される部分の厚さを確保しつつ、凹部を区画する底面および内側面に形成される部分の厚さにおけるばらつきを抑えることを可能とした導電膜の形成方法、および、成膜装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための導電膜の形成方法は、導電膜の形成の開始を含む第1工程と、前記第1工程の後に行われ、前記導電膜の形成の終了を含む第2工程とを含む。前記第1工程は、複数の凹部を有した成膜面を備え、ターゲットに対して相対移動する成膜対象にスパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングすること、を含む。前記第2工程は、前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、単位時間当たりのエッチング量を前記第1工程よりも小さくして前記導電膜をエッチングすること、を含む。
上記課題を解決するための成膜装置は、複数の凹部を有した成膜面を備えた成膜対象にターゲットを用いたスパッタ成膜によって導電膜を形成する成膜部と、前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングするエッチング部と、前記ターゲットに対して前記成膜対象を相対移動させる搬送部と、前記成膜部、前記エッチング部、および、前記搬送部の駆動を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記成膜部、前記エッチング部、および、前記搬送部の駆動を制御することによって、前記導電膜の形成の開始を含む第1工程と、前記第1工程の後に行われ、前記導電膜の形成の終了を含む第2工程とを実行させる。前記第1工程は、前記ターゲットに対して相対移動する前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングすることを含む。前記第2工程は、前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、単位時間当たりのエッチング量を前記第1工程よりも小さくして前記導電膜をエッチングすること、を含む。
凹部を有する成膜面に対してスパッタ成膜を行った場合には、凹部の開口を囲む頂面にスパッタ粒子が到達しやすく、凹部の底面、凹部の内側面の順にスパッタ粒子が到達しにくくなる。そのため、スパッタ成膜を行うのみによって導電膜を形成した場合には、凹部を区画する面での膜厚のばらつきが大きくなる。この点で、上記構成によれば、第1工程において成膜対象に形成された導電膜をエッチングするから、導電膜のうち、凹部の開口付近を覆う角部、および、底面に形成された部分から導電粒子を放出させ、これによって、凹部の内側面に導電粒子を付着させることが可能である。結果として、導電膜のうち、凹部の内側面に位置する部分の厚さを厚くすることが可能である。また、第2工程では、第1工程よりもエッチング量を小さくしてスパッタ成膜を行うから、凹部の開口を囲む頂面、および、底面に優先的にスパッタ粒子を到達させることが可能である。結果として、導電膜のうちで、凹部の開口を囲む頂面での厚さを厚くしつつ、凹部を区画する底面と内側面との間での厚さにおけるばらつきを抑えることが可能である。
上記導電膜の形成方法において、前記第1工程は、前記導電膜を形成することと、前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことを含んでもよい。この構成によれば、導電膜の形成と導電膜のエッチングとの各々を1度のみ行う場合に比べて、凹部を区画する面における膜厚のばらつきを抑えることが可能である。
上記導電膜の形成方法において、前記第1工程において前記導電膜を形成することと前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことは、単位時間当たりに第1エッチング量で前記導電膜をエッチングすることと、単位時間当たりに前記第1エッチング量よりも大きい第2エッチング量で前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことを含んでもよい。
上記構成によれば、第1工程において、凹部の開口を囲む頂面および凹部を区画する底面にスパッタ粒子が付着することを優先する工程と、凹部を区画する内側面に導電膜から放出された導電粒子が付着することを優先する工程とを交互に行うことが可能である。そのため、凹部を区画する面における厚さのばらつきをより抑えることができる。
上記導電膜の形成方法において、前記スパッタ成膜は、コサイン則に従ってスパッタ粒子を放出することを含み、前記第1工程における前記導電膜をエッチングすること、および、前記第2工程における前記導電膜をエッチングすることは、イオンビームの照射によって前記導電膜をエッチングすることを含み、前記第2工程における前記導電膜をエッチングすることは、前記第1工程の入射角度よりも小さい入射角度で前記イオンビームを前記成膜対象に照射することを含んでもよい。
上記構成によれば、第2工程では、スパッタ成膜によってターゲットから放出されたスパッタ粒子のうち、成膜対象に対して斜め方向から入射したスパッタ粒子が優先的にエッチングされる。そのため、導電膜のうちで、内側面と底面との間における厚さのばらつきが大きくなることを抑えながら、導電膜のうちで、頂面に形成される部分の厚さを厚くすることが可能である。
上記導電膜の形成方法において、前記第1工程において前記導電膜をエッチングすることは、第1イオン源から前記イオンビームを照射することを含み、前記第2工程において前記導電膜をエッチングすることは、前記第1イオン源の入射角度よりも小さい入射角度で前記イオンビームを照射する第2イオン源を用いて前記イオンビームを照射することを含んでもよい。
上記構成によれば、互いに異なる入射角度でイオンビームを照射する2つのイオン源を備えることから、1つのイオン源のみを備える場合に比べて、各イオン源を簡素化すること、および、イオン源の処理における負荷を軽減することが可能である。
上記導電膜の形成方法において、前記第1工程において前記導電膜をエッチングすることは、イオン源から前記イオンビームを照射することを含み、前記第2工程において前記導電膜をエッチングすることは、前記第1工程と同一の前記イオン源を用い、前記第1工程において照射した前記イオンビームの前記入射角度よりも小さい前記入射角度で前記イオンビームを照射することを含んでもよい。
上記構成によれば、同一のイオン源を用いて第1工程でのエッチングと第2工程でのエッチングとが可能であるから、2つのイオン源を用いる場合に比べて、成膜装置を簡素化することが可能である。
第1実施形態における成膜装置の構成を示す装置構成図。 成膜装置の動作における一例を説明するための模式図。 成膜装置の動作における他の例を説明するための模式図。 第1実施形態における導電膜の形成方法を説明するための模式図。 ターゲットから放出されるスパッタ粒子の分布曲線を示す模式図。 同実施形態における導電膜の形成方法を説明するための模式図。 同実施形態における導電膜の形成方法を説明するための模式図。 実施例1の試験片における断面構造を撮像したSEM画像。 比較例1の試験片における断面構造を撮像したSEM画像。 比較例2の試験片における断面構造を撮像したSEM画像。 第2実施形態における導電膜の形成方法を説明するための模式図。 第2実施形態における成膜チャンバーの構成を示す装置構成図。 同実施形態における成膜チャンバーの構成を示す装置構成図。
[第1実施形態]
図1から図10を参照して、第1実施形態の導電膜の形成方法、および、成膜装置を説明する。以下では、成膜装置、導電膜の形成方法、および、実施例を順に説明する。
[成膜装置]
図1から図3を参照して、成膜装置を説明する。図1は、成膜装置を側面視した構成を模式的に示している。
図1が示すように、成膜装置10は、成膜チャンバー11と搬出入チャンバー12とを備えている。成膜チャンバー11と搬出入チャンバー12との間には、ゲートバルブ13が位置している。成膜チャンバー11および搬出入チャンバー12には、排気部14が接続されている。
成膜チャンバー11は、カソード15、イオン源16、搬送部17、ガス供給部18、および、ターゲット電源19を備えている。カソード15は、ターゲット15Tを備えている。ターゲット15Tは、所定の金属から形成されている。ターゲット15Tは、単一の金属から形成されてもよいし、合金から形成されてもよい。ターゲット15Tの形成材料は、例えば、Cu、Al、Ti、Ta、W、Mn、Zr、Hf、V、Ag、Pd、Pt、Au、Mg、Co、および、Niから構成される群から選択される少なくとも1つであってよい。
ターゲット15Tは、図1の奥行き方向に沿って延びる形状を有している。ターゲット15Tの被スパッタ面は、成膜チャンバー11が区画する空間内に露出している。被スパッタ面は、搬送部17と対向している。そのため、被スパッタ面は、搬送部17によって成膜対象Sが搬送されている場合に、成膜対象Sと対向する。
イオン源16は、イオンビームを照射する照射口を備えている。照射口は、成膜チャンバー11が区画する空間内に露出している。照射口は、図1の奥行き方向に沿って延びる形状を有している。照射口は、搬送部17と対向している。そのため、照射口は、搬送部17によって成膜対象Sが搬送されている場合に、成膜対象Sと対向する。イオン源16は、所定のガスからイオンビームを生成する。イオンビームの生成に用いられるガスは、例えば希ガスであってよい。希ガスは、例えばArであってよい。イオン源16は、成膜対象Sに形成された導電膜をエッチングするエッチング部の一例である。イオン源16は、導電膜に対してイオンビームを照射することによって、導電膜をエッチングする。
搬送部17は、ターゲット15Tに対して成膜対象Sを相対移動させる。本実施形態では、搬送部17は、成膜チャンバー11における位置が固定されたターゲット15Tに対して成膜対象Sを移動させることによって、ターゲット15Tに対して成膜対象Sを相対移動させる。搬送部17は、成膜対象Sの搬送方向に沿って延びる形状を有している。
搬送部17は、成膜対象Sがターゲット15Tの被スパッタ面、および、イオン源16の照射口と対向する状態を維持するように、搬送方向に沿って成膜対象Sを搬送する。搬送部17は、成膜対象Sの搬送において、第1搬送と第2搬送とを交互に繰り返す。第1搬送は、搬出入チャンバー12から成膜チャンバー11に向かう成膜対象Sの搬送である。これに対して、第2搬送は、成膜チャンバー11から搬出入チャンバー12に向かう方向に沿う成膜対象Sの搬送である。
ガス供給部18は、成膜チャンバー11が区画する空間内に所定のスパッタガスを供給する。ガス供給部18は、スパッタガスを所定の流量で供給することによって、排気部14とともに成膜チャンバー11が区画する空間内を所定の圧力に維持する。スパッタガスは、例えば希ガスであってよい。希ガスは、例えばArであってよい。
ターゲット電源19は、カソード15に接続されている。ターゲット電源19は、ターゲット15Tに電圧を印加する。ターゲット電源19は、直流電源であってもよいし、交流電源であってもよい。
本実施形態の成膜装置10において、成膜部は、カソード15、ターゲット電源19、および、ガス供給部18を含む。成膜部は、成膜対象Sにターゲット15Tを用いたスパッタ成膜によって導電膜を形成する。
成膜対象Sは、例えば四角形状を有している。成膜対象Sにおいて、一辺の長さが例えば1500mm以上2200mm以下である。成膜対象Sは、例えばガラス基板であってよい。成膜対象Sは、導電膜が形成される成膜面を備えている。成膜面は、複数の凹部を有している。例えば、成膜面は、ターゲット15Tが延びる方向と直交する方向に沿って延びる複数の溝を有し、当該複数の溝は、ターゲット15Tが延びる方向において間隔を空けて並んでいる。また例えば、成膜面は、ターゲット15Tが延びる方向に沿って延びる複数の溝を有し、当該複数の溝は、ターゲット15Tが延びる方向と直交する方向において間隔を空けて並んでいる。
搬出入チャンバー12は、成膜前の成膜対象Sを成膜チャンバー11に搬入し、成膜後の成膜対象Sを成膜チャンバー11から搬出する。成膜前の成膜対象Sを成膜チャンバー11に搬入する際には、まず、大気に暴露された搬出入チャンバー12に成膜前の成膜対象Sが搬入される。次いで、搬出入チャンバー12が区画する空間内が排気部14によって排気されることによって、成膜チャンバー11と同程度に減圧される。その後、ゲートバルブ13が開放されることによって、搬出入チャンバー12の区画する空間が、成膜チャンバー11が区画する空間に連通される。そして、搬出入チャンバー12が、成膜前の成膜対象Sを成膜チャンバー11に搬入する。
これに対して、成膜後の成膜対象Sが搬出される際には、ゲートバルブ13が開放されることによって、搬出入チャンバー12の区画する空間が、成膜チャンバー11が区画する空間に連通される。次いで、搬出入チャンバー12が、成膜後の成膜対象Sを成膜チャンバー11から搬出する。そして、ゲートバルブ13が閉鎖された後に、搬出入チャンバー12が大気に暴露される。その後、成膜後の成膜対象Sが搬出入チャンバー12の外部に搬出される。
成膜装置10は、制御部10Cを備えている。制御部10Cは、成膜部、イオン源16、および、搬送部17の駆動を制御する。なお、制御部10Cは、成膜部、イオン源16、および、搬送部17に加えて、ゲートバルブ13、および、排気部14の駆動も制御する。
図2が示すように、制御部10Cは、例えば、搬送部17に第1搬送を実行させている間に、成膜部を駆動することによって、成膜対象Sの成膜面に導電膜を形成させる。この際に、制御部10Cは、ガス供給部18に所定の流量でスパッタガスを供給させ、かつ、ターゲット電源19にターゲット15Tに対して所定の電圧を印加させる。これにより、ターゲット15Tの近傍においてプラズマが生成され、ターゲット15Tがスパッタされる。これによって、ターゲット15Tからスパッタ粒子SPが放出される。
図3が示すように、制御部10Cは、例えば、搬送部17に第2搬送を実行させている間に、イオン源16を駆動することによって、成膜対象Sに形成された導電膜をエッチングさせる。この際に、制御部10Cは、イオン源16を駆動することによって、イオン源16に照射口からイオンビームIBを照射させる。
なお、制御部10Cは、搬送部17に第2搬送を実行させている間に、成膜部を駆動することによって、導電膜を形成させてもよい。また、制御部10Cは、搬送部17に第1搬送を実行させている間に、イオン源16を駆動することによって、導電膜をエッチングさせてもよい。
[導電膜の形成方法]
図4から図6を参照して、導電膜の形成方法を説明する。なお、以下に参照する図4、図6、および、図7は、成膜対象Sが広がる平面に直交し、かつ、成膜対象Sが備える凹部SHが延びる方向に直交する平面に沿う成膜対象Sの断面構造を示している。
導電膜の形成方法は、導電膜の形成の開始を含む第1工程と、第1工程の後に行われ、導電膜の形成の終了を含む第2工程とを含む。第1工程は、ターゲットに対して相対移動する成膜対象Sにスパッタ成膜によって導電膜を形成すること、成膜対象Sに形成された導電膜をエッチングすることを含む。第2工程は、成膜対象Sにスパッタ成膜によって導電膜を形成すること、単位時間当たりのエッチング量を第1工程よりも小さくして導電膜をエッチングすること、を含む。以下、図面を参照して、導電膜の形成方法を詳しく説明する。
本実施形態において、第1工程は、導電膜を形成することと、導電膜をエッチングすることとを交互に行う。第1工程は、導電膜を形成することと、導電膜をエッチングすることの組を複数回繰り返す。第1工程では、成膜対象Sの第1搬送において成膜対象Sに導電膜が形成され、成膜対象Sの第2搬送において導電膜がエッチングされる。
図4は、第1搬送において成膜対象Sに向けて飛行するスパッタ粒子SP、および、スパッタ粒子SPの堆積によって形成された導電膜を模式的に示している。
図4が示すように、成膜対象Sは、複数の凹部SHを備えている。各凹部SHは、頂面ST、底面SHb、および、内側面SHsによって形成されている。第1搬送の間には、ターゲット15Tがスパッタされることによって、複数のスパッタ粒子SPが成膜対象Sに向けて飛行する。これにより、成膜対象Sには、底面SHbおよび内側面SHsと、成膜対象Sの頂面STとを覆う導電膜CFが形成される。頂面STは、成膜対象Sにおいて凹部SHの開口SHaを囲む面である。
図5は、金属製のターゲット15Tにおいて被スパッタ面のエロージョン点から放出されるスパッタ粒子SPの放出角度分布を極座標系で示す放出頻度分布図である。
図5が示すように、極座標上の所定の点と、被スパッタ面15Taのエロージョン点15TEとの間の距離である動径が放出頻度Fである。また、極座標上の所定の点とエロージョン点15TEとを結ぶ直線と、被スパッタ面15Taとが形成する角度である偏角が放出角度θである。なお、図5が示す放出角度分布は、成膜対象S上における膜厚分布の実測値から得ることが可能である。放出角度分布は、例えば、互いに異なるTS間距離に配置された成膜対象Sの各々における膜厚の分布から得ることが可能である。
図5が示すように、スパッタ粒子SPの放出頻度の分布を示す分布曲線DCでは、放出頻度Fの最も高い放出角度θが90°であって、放出頻度Fと放出角度θとの関係が、一般的なコサイン則、すなわちF=cosn(90-θ)(nは1以上の整数)で与えられる。
そのため、図4が示すように、成膜対象Sが広がる平面に直交し、かつ、成膜対象Sが備える凹部SHが延びる方向に直交する平面に沿う断面において、導電膜CFは以下のような形状を有する。すなわち、導電膜CFにおいて、頂面ST上に位置する部分は、所定の厚さを有する。また、各凹部SHの開口SHaには、成膜対象Sが広がる平面に対して垂直な方向に向けて飛行するスパッタ粒子SPだけでなく、当該平面に対して所定の角度で交差する方向に向けて飛行するスパッタ粒子SPも到達する。そのため、頂面STには、開口SHaが区画する領域内に張り出すようにスパッタ粒子SPが堆積する。
これに対して、凹部SHを区画する面のうち、底面SHbには、底面SHbから離れる方向に向けた凸状を有するようにスパッタ粒子SPが堆積する。一方で、内側面SHsには、スパッタ粒子SPがほとんど到達しない。そのため、第1搬送が終了した時点においては、導電膜CFのうちで、凹部SHを区画する面に形成された部分において、厚さのばらつきが生じている。
図6は、第2搬送において成膜対象Sに向けて飛行するイオンビームIBの粒子、および、イオンビームIBを用いたエッチングにより得られる導電膜CFの形状を模式的に示している。
図6が示すように、イオンビームIBはイオン源16の照射口と搬送部17とが対向する方向に沿って進むため、イオンビームIBに含まれる複数の粒子IPも、照射口と搬送部17とが対向する方向に沿って進む。そのため、各粒子IPは、成膜対象Sが広がる平面に対してほぼ垂直な方向から成膜対象Sに入射する。これにより、粒子IPの一部は、導電膜CFのうちで、凹部SHの底面SHbに形成された部分に衝突する。また、粒子IPの他の一部は、導電膜CFのうちで、頂面ST上に位置する部分に衝突する。これに対して、導電膜CFのうちで凹部SHの内側面SHsに位置する部分には、粒子IPはほぼ衝突しない。
導電膜CFのうちで、粒子IPが衝突した部分では、導電膜CFから導電粒子CPが放出される。導電膜CFのうちで、底面SHbに形成された部分から放出された導電粒子CPは、内側面SHsに向けて飛行し、導電膜CFのうちで内側面SHsに形成された部分に付着する。開口SHaと対向する視点から見て、導電膜CFのうちで、開口SHaが区画する領域に向けて張り出した部分から放出された導電粒子CPも、内側面SHsに向けて飛行し、導電膜CFのうちで、内側面SHsに形成された部分に付着する。これにより、導電膜CFのうちで、導電粒子CPが放出された部分における厚さが薄くなる一方で、導電粒子CPが付着した部分における厚さが厚くなる。
第1工程では、第1搬送での成膜と、第2搬送でのエッチングとが交互に行われるから、導電膜CFの形成と導電膜CFのエッチングとの各々を1度のみ行う場合に比べて、凹部SHの底面SHbおよび内側面SHsにおける膜厚のばらつきを抑えることが可能である。第1搬送での成膜と第2搬送でのエッチングとを行う回数を重ねるごとに、凹部SHの内側面SHsのうちで、導電膜CFから放出された導電粒子CPが付着する位置が変わる。詳細には、第1搬送での成膜を行う回数を重ねるごとに、導電膜CFの厚さが厚くなるから、第2搬送でのエッチングを行う回数を重ねるごとに、導電膜CFから放出された導電粒子CPが付着する位置と底面SHbとの間の距離が大きくなる。そのため、凹部SHの内側面SHsにおいて、膜厚のばらつきを抑えることが可能である。
上述したように、第1工程において導電膜CFを形成することと、導電膜CFをエッチングすることとを交互に行う場合には、単位時間当たりに第1エッチング量で導電膜CFをエッチングすることと、単位時間当たりに第2エッチング量で導電膜CFをエッチングすることとを交互に行ってもよい。第2エッチング量は、第1エッチング量よりも大きい。
例えば、1回目の第2搬送において第1エッチング量で導電膜CFをエッチングし、かつ、2回目の第2搬送において第2エッチング量で導電膜CFをエッチングしてよい。そして、3回目以降の第2搬送では、第1エッチング量での導電膜CFのエッチングと、第2エッチング量での導電膜CFのエッチングとをこの順に交互に繰り返してよい。また例えば、1回目の第2搬送において第2エッチング量で導電膜CFをエッチングし、かつ、2回目の第2搬送において第1エッチング量で導電膜CFをエッチングしてよい。そして、3回目以降の第2搬送では、第2エッチング量での導電膜CFのエッチングと、第1エッチング量での導電膜CFのエッチングとをこの順に交互に繰り返してよい。
イオンビームIBによるエッチング量は、イオン源16に供給されるガスの流量、および、成膜チャンバー11が区画する空間内の圧力などによって調整される。例えば、エッチング量は、イオン源16に供給されるガスの流量が大きいほど大きくなる傾向を有する。また、エッチング量は、成膜チャンバー11が区画する空間内の圧力が小さいほど大きくなる傾向を有する。
第1工程において、頂面STおよび底面SHbにスパッタ粒子SPが付着することを優先する工程と、内側面SHsに導電膜CFから放出された導電粒子CPが付着することを優先する工程とを交互に行うことが可能である。そのため、底面SHbおよび内側面SHsにおける厚さのばらつきをより抑えることができる。
第1搬送での成膜では、上述したように、頂面STと、底面SHbとにスパッタ粒子SPが到達しやすい。ただし、頂面STに到達可能なスパッタ粒子SPの数に比べて、底面SHbに到達可能なスパッタ粒子SPの数は少ない。そのため、開口SHaを囲む頂面STにおける膜厚が、底面SHbにおける膜厚よりも厚くなる。これにより、成膜対象Sが広がる平面と対向する視点から見て、導電膜CFのうちで開口SHaが区画する領域内に張り出した部分をエッチングすることを優先してエッチング量を定めた場合には、導電膜CFのうち底面SHbに形成された部分が過剰にエッチングされる。一方で、導電膜CFのうち、底面SHbに形成された部分のエッチングが過剰になることを抑えるようにエッチング量を定めた場合には、導電膜CFのうちで開口SHaが区画する領域内に張り出した部分のエッチングが十分でない。
従って、第1エッチング量でのエッチングと、第2エッチング量でのエッチングとを交互に行うことによって、導電膜CFのうちで開口SHaが区画する領域内に張り出した部分のエッチングと、底面SHbに形成された部分のエッチングとにおいて過剰なエッチングまたはエッチングの不足が生じることが抑えられる。
図7は、第2工程において成膜対象Sに飛行するスパッタ粒子SP、および、成膜対象Sに形成された導電膜CFの形状を模式的に示している。なお、図7は、第1工程が終了し、第2工程が開始された時点における導電膜CFの形状を模式的に示している。
図7が示すように、第2工程では、第1工程よりもエッチング量を減らした状態で、成膜対象Sに対して導電膜CFが形成される。本実施形態では、第2工程において、導電膜CFのエッチングが行われないことによって、第1工程よりもエッチング量が減らされる。そのため、上述した第1搬送および第2搬送の両方において、ターゲット15Tを用いたスパッタ成膜により導電膜CFが形成される。
第2工程が開始される時点では、導電膜CFのうちで、凹部SHの内側面SHsに形成された部分の厚さにおけるばらつきを抑える観点から、凹部SHの底面SHbに形成された部分において、厚さにおけるばらつきが生じている。すなわち、成膜対象Sが広がる平面と直交し、凹部SHが延びる方向と直交する断面において、導電膜CFのうちで底面SHbに形成された部分は、底面SHbに近付く方向に向けた凹状を有している。
上述したように、スパッタ粒子SPはコサイン則に従ってターゲット15Tの被スパッタ面15Taから放出されるから、底面SHbには、膜厚のばらつきを抑えるようにスパッタ粒子SPが堆積する。これにより、第2工程が行われることによって、凹部SHの内側面SHsにおける膜厚と、凹部SHの底面SHbにおける膜厚とのばらつきを抑えることが可能である。
一方で、頂面STには、成膜対象Sが広がる平面と対向する視点から見て、開口SHaが区画する領域内への張り出しを抑えるように導電膜CFの一部が形成されている。そのため、第2工程においてエッチングを行うことなく導電膜CFを形成したとしても、第1工程を行わない場合に比べて、開口SHaが区画する領域内への張り出しを抑えながら、頂面STに対してさらにスパッタ粒子SPを堆積させることが可能である。
凹部SHを有する成膜面に対してスパッタ成膜を行った場合には、成膜対象Sの頂面STにスパッタ粒子が到達しやすく、凹部SHの底面SHb、凹部の内側面SHsの順にスパッタ粒子SPが到達しにくくなる。そのため、スパッタ成膜を行うのみによって導電膜CFを形成した場合には、凹部SHを区画する面での膜厚のばらつきが大きくなる。
この点で、本実施形態によれば、第1工程において成膜対象Sに形成された導電膜CFをエッチングするから、導電膜CFのうち、凹部SHの開口SHa付近を覆う角部、および、底面SHbに形成された部分から導電粒子CPを放出させ、これによって、凹部の内側面SHsに導電粒子CPを付着させることが可能である。結果として、導電膜CFのうち、凹部SHの内側面SHsに位置する部分の厚さを厚くすることが可能である。
また、第2工程では、第1工程よりもエッチング量を小さくしてスパッタ成膜を行うから、凹部SHの開口SHaを囲む頂面ST、および、底面SHbに優先的にスパッタ粒子SPを到達させることが可能である。結果として、導電膜CFのうちで、凹部SHの開口SHaを囲む頂面STでの厚さを厚くしつつ、凹部SHを区画する底面SHbと内側面SHsとの間での厚さにおけるばらつきを抑えることが可能である。
[実施例]
図8から図10を参照して、実施例および比較例を説明する。
[実施例1]
成膜対象として成膜面に複数の凹部を有したガラス基板を準備した。成膜面には、成膜対象が広がる平面に直交し、かつ、凹部の延びる方向に対して直交する断面において、650nmの深さを有し、500nmの幅を有した凹部を1μmのピッチで形成した。成膜対象の搬送方向に対して成膜対象が有する凹部が延びる方向が直交する状態で成膜対象を搬送した。そして、成膜対象を搬送している間に、以下の条件で第1工程と第2工程とを行うことにより、導電膜のうち、凹部の開口を囲む頂面に形成された部分の厚さが600nm以上となるように導電膜を形成した。
なお、第1工程では、第1搬送において成膜を行い、第2搬送においてエッチングを行った。これに対して、第2工程では、第1搬送および第2搬送の両方において成膜を行った。また、第2搬送では、第1エッチング量でのエッチングを行う搬送と、第2エッチング量でのエッチングを行う搬送とを交互に行った。
[第1工程]
[成膜条件]
・ターゲット NiCuターゲット
・供給電力 5.8kW
・成膜圧力 0.45Pa
・スパッタガス Arガス
・ガス流量 150sccm
・搬送速度 857mm/分
・搬送回数 4回
[エッチング条件]
・供給ガス Arガス
・印加電圧 2500V
・チャンバー内圧力 0.06Pa(第1エッチング量)
・ガス流量 20sccm(第1エッチング量)
・チャンバー内圧力 0.04Pa(第2エッチング量)
・ガス流量 25sccm(第2エッチング量)
・搬送速度 100mm/分
・搬送回数 4回
[第2工程]
・ターゲット NiCuターゲット
・供給電力 5.8kW
・チャンバー内圧力 0.45Pa
・スパッタガス Arガス
・ガス流量 150sccm
・搬送速度 857mm/分
・搬送回数 3回
[比較例1]
実施例1の成膜対象と同じ成膜対象を準備した。そして、第1搬送での成膜と、第2搬送でのエッチングとを8回ずつ以下の条件で行うことによって、成膜対象の成膜面に導電膜を形成した。なお、第2搬送では、実施例1と同様に、第1エッチング量でのエッチングを行う搬送と、第2エッチング量でのエッチングを行う搬送とを交互に行った。
[成膜条件]
・ターゲット NiCuターゲット
・供給電力 5.8kW
・成膜圧力 0.45Pa
・スパッタガス Arガス
・ガス流量 150sccm
・搬送速度 857mm/分
・搬送回数 8回
[エッチング条件]
・供給ガス Arガス
・印加電圧 2500V
・チャンバー内圧力 0.06Pa(第1エッチング量)
・ガス流量 20sccm(第1エッチング量)
・チャンバー内圧力 0.04Pa(第2エッチング量)
・ガス流量 25sccm(第2エッチング量)
・搬送速度 100mm/分
・搬送回数 8回
[比較例2]
実施例1の成膜対象と同じ成膜対象を準備した。第1搬送と第2搬送との両方において以下の条件でスパッタ成膜を行うことによって、成膜対象の成膜面に導電膜を形成した。
[成膜条件]
・ターゲット NiCuターゲット
・供給電力 5.8kW
・成膜圧力 0.45Pa
・スパッタガス Arガス
・ガス流量 150sccm
・搬送速度 857mm/分
・搬送回数 6回
[観察結果]
実施例1、比較例1、および、比較例2の方法によって形成された導電膜を観察した結果は、図8から図10に示す通りであった。なお、図8は実施例1の方法によって形成された導電膜を撮像したSEM画像であり、図9は比較例1の方法によって形成された導電膜を撮像したSEM画像であり、図10は比較例2の方法によって形成された導電膜を撮像したSEM画像である。
図8が示す導電膜では、頂面での厚さTTが635nmであり、内側面での厚さTSが108nmであり、底面での厚さTBが121nmであることが認められた。また、厚さTTを有する部分間の距離Gが100nmであることが認められた。このように、実施例1の方法によって形成された導電膜では、内側面での厚さTSと底面での厚さTBとがほぼ同一であり、かつ、頂面での厚さTTが600nm以上であることが認められた。さらには、頂面での厚さTTを有する部分間の距離Gも十分に維持されていることが認められた。
図9が示す導電膜では、頂面での厚さTTが648nmであり、内側面での厚さTSが119nmであり、底面での厚さTBが89nmであることが認められた。また、厚さTTを有する部分間の距離Gが58nmであることが認められた。このように、比較例1の方法によって形成された導電膜では、内側面での厚さTSに対して底面での厚さTBが薄く、実施例1の方法によって形成された導電膜に比べて、内側面と底面との間での厚さのばらつきが大きいことが認められた。また、導電膜のうちで、底面に形成された部分が底面に向かう凹状を有することが認められた。さらに、比較例1の方法によって形成された導電膜では、厚さTTを有する部分間の距離Gが十分に維持されないことが認められた。
図10が示す導電膜では、頂面での厚さTTが597nmであり、内側面での厚さTSが92nmであり、底面での厚さTBが185nmであることが認められた。また、厚さTTを有する部分間の距離Gが129nmであることが認められた。このように、比較例2の方法によって形成された導電膜では、底面での厚さTBが内側面での厚さTSのほぼ2倍であり、内側面と底面との間での厚さのばらつきが大きいことが認められた。また、導電膜のうちで、底面に形成された部分が底面から離れる方向に向けた凸状を有することが認められた。一方で、頂面での厚さTTが600nmに満たないことが認められた。厚さTTを有する部分間の距離は十分に維持されることが認められた。
このように、実施例1の方法によれば、目標とする頂面での厚さTTを達成し、かつ、内側面と底面との間での厚さのばらつきが抑えられることが認められた。また、導電膜のうちで、底面に位置する部分での平坦性が高められること、および、厚さTTを有する部分間の距離Gも十分に維持されることが認められた。
以上説明したように、導電膜の形成方法、および、成膜装置の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)導電膜CFのうちで、凹部SHの開口SHaを囲む頂面STに形成された部分の厚さを厚くしつつ、凹部SHを区画する内側面SHsと底面SHbとの間での厚さにおけるばらつきを抑えることが可能である。
(2)導電膜CFの形成と導電膜CFのエッチングとの各々を1度のみ行う場合に比べて、凹部SHを区画する内側面SHsと底面SHbとの間での厚さのばらつきを抑えることが可能である。
(3)第1工程において、凹部SHの開口SHaを囲む頂面STおよび凹部SHを区画する底面SHbにスパッタ粒子SPが付着することを優先する工程と、凹部SHを区画する内側面SHsに導電膜CFから放出された導電粒子CPが付着することを優先する工程とを交互に行うことが可能である。そのため、内側面SHsと底面SHbとの間での厚さのばらつきをより抑えることができる。
[第2実施形態]
図11から図13を参照して、第2実施形態の導電膜の形成方法、および、成膜装置を説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、第2工程において導電膜がエッチングされる点が異なっている。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明する。また、以下では、導電膜の形成方法、および、成膜装置を順に説明する。
[導電膜の形成方法]
図11を参照して、導電膜の形成方法を説明する。なお、上述したように、本実施形態における導電膜の形成方法は、第1実施形態の導電膜の形成方法と比べて第2工程のみが異なるから、以下では第2工程について詳しく説明する一方で、第1工程についての説明を省略する。
すなわち、本実施形態の第2工程は、第1実施形態の第2工程におけるスパッタ成膜に加えて、導電膜CFのエッチングを含む。本実施形態の第2工程では、第1工程と同様に、第1搬送においてスパッタ成膜が行われ、第2搬送においてエッチングが行われる。このうち、第1搬送において行われるスパッタ成膜は、第1実施形態の第2工程において行われるスパッタ成膜と共通するから、以下では、第2工程において行われるエッチングについて詳しく説明する。
図11は、第2工程において成膜対象Sに飛行するスパッタ粒子SP、成膜対象Sに向けて飛行するイオンビームIBの粒子IP、および、導電膜CFの形状を模式的に示している。
図11が示すように、第2工程における導電膜CFのエッチングは、第1工程における導電膜CFのエッチングと同様に、イオンビームIBの照射によって導電膜CFをエッチングする。上述したように、第2工程の第2搬送では、成膜対象Sに向けてイオンビームIBが照射されるから、成膜対象SにはイオンビームIBが含む粒子IPが到達する。この際に、第1工程の入射角度よりも小さい入射角度でイオンビームIBを成膜対象Sに照射する。
成膜対象Sが広がる平面と、イオンビームIBの照射方向とが形成する角度が、イオンビームIBの入射角度である。上述したように、第1工程において、イオンビームIBは、イオン源16の照射口と搬送部17とが対向する方向に沿って照射されるから、第1工程におけるイオンビームIBの入射角度はほぼ90°である。これに対して、第2工程では、イオンビームIBは、90°よりも小さい入射角度で成膜対象Sに照射される。
そのため、第2工程では、スパッタ成膜によってターゲット15Tから放出されたスパッタ粒子SPのうち、成膜対象Sに対して斜め方向から入射したスパッタ粒子SPが優先的にエッチングされる。これにより、導電膜CFのうちで、凹部SHを区画する内側面SHsに形成された部分の厚さにおけるばらつきが大きくなることを抑えながら、導電膜CFのうちで、成膜対象Sの頂面STに形成される部分の厚さを厚くすることが可能である。
上述したように、ターゲット15Tから放出されたスパッタ粒子SPはコサイン則に従って被スパッタ面15Taのエロージョン点15TEから放出されるから、スパッタ粒子SPには、成膜対象Sに向けて直進するスパッタ粒子SPと、成膜対象Sに対して斜め方向から入射するスパッタ粒子SPとが含まれる。第2工程においてイオン源16から照射されたイオンビームIBは、90°よりも小さい入射角度で成膜対象Sに入射するから、成膜対象Sに形成された導電膜CFのうちで、成膜対象Sが広がる平面に対して斜め方向から入射したスパッタ粒子SPの堆積によって形成された部分にイオンビームIBの粒子IPが衝突する。これにより、導電膜CFのうちで、成膜対象Sが広がる平面に対して斜め方向から入射したスパッタ粒子SPの堆積によって形成された部分から導電粒子CPが放出される。
結果として、凹部SHの開口SHaを含む平面に形成された部分、および、底面SHbに形成された部分の厚さは維持され、かつ、成膜対象Sと対向する視点から見て、開口SHaが区画する領域内に張り出す部分がイオンビームIBの粒子IPによってエッチングされる。
第2工程では、第1工程と同様に、第1搬送でのスパッタ成膜と第2搬送でのエッチングとが交互に繰り返されるから、第1搬送と第2搬送との組が繰り返されるごとに、導電膜CFのうちで、頂面STに形成された部分と、底面SHbに形成された部分との厚さが厚くなる。
[成膜装置]
図12および図13を参照して、成膜装置を説明する。なお、本実施形態の成膜装置は、第1実施形態の成膜装置と比べて、成膜チャンバーが備えるイオン源の構造が異なるのみであるから、成膜装置におけるそれ以外の構造についての説明を省略する。なお、以下に参照する図12は、本実施形態の成膜装置における第1例の構造を示す一方で、図13は、本実施形態の成膜装置における第2例の構造を示している。
図12が示すように、成膜チャンバー11は、上述したイオン源16に加えて、第1傾斜イオン源21と、第2傾斜イオン源22とを備えている。第1傾斜イオン源21および第2傾斜イオン源22の各々は、イオン源16の入射角度よりも小さい入射角度で成膜対象Sに入射するイオンビームIBを照射する。成膜装置の側面と対向する視点から見て、第1傾斜イオン源21が照射するイオンビームIBの方向と、第2傾斜イオン源22が照射するイオンビームIBの方向とは、イオン源16が照射するイオンビームIBの方向を対称軸とする線対称の関係を有する。
成膜チャンバー11は、第1工程の第2搬送において、イオン源16を用いて導電膜CFをエッチングする一方で、第2工程の第2搬送において、第1傾斜イオン源21および第2傾斜イオン源22を用いて導電膜CFをエッチングする。これにより、成膜対象Sに形成された導電膜CFのうちで、被スパッタ面15Taから成膜対象Sに向けて斜め方向から入射したスパッタ粒子SPの堆積によって形成された部分が、イオンビームIBの粒子IPによってエッチングされる。これにより、成膜対象Sが広がる方向と対向する視点から見て、凹部SHの開口SHaが区画する領域内に張り出すように導電膜CFの一部が成長することを抑えつつ、導電膜CFのうちで頂面STに形成された部分と、底面SHbに形成された部分の厚さとを厚くすることが可能である。
本実施形態の成膜装置における第1例を用いることによって、第2工程において導電膜CFをエッチングする際に、イオン源16の入射角度よりも小さい入射角度でイオンビームIBを照射する傾斜イオン源21,22を用いてイオンビームIBを照射することができる。なお、イオン源16が第1イオン源の一例であり、傾斜イオン源21,22が第2イオン源の一例である。
このように、成膜装置が互いに異なる入射角度でイオンビームIBを照射するイオン源16,21,22を備えることから、1つのイオン源のみを備える場合に比べて、各イオン源16,21,22を簡素化すること、および、イオン源16,21,22の処理における負荷を軽減することが可能である。
図13が示すように、成膜チャンバー11は、1つのイオン源23を備えている。本実施形態のイオン源23は、上述した第1実施形態のイオン源16とは異なり、イオン源23が照射するイオンビームIBの照射方向を変更することが可能である。イオン源23は、イオン源23の照射口と搬送部17とが対向する方向、すなわち、成膜対象Sが広がる平面に対して直交する方向に沿ってイオンビームIBを照射することが可能である。また、イオン源23は、成膜チャンバー11の側面と対向する視点から見て、搬送方向と交差する第1傾斜方向に沿ってイオンビームIBを照射することが可能である。さらに、イオン源23は、成膜チャンバー11の側面と対向する視点から見て、搬送方向と交差する第2傾斜方向に沿ってイオンビームIBを照射することが可能である。イオン源23の照射口と搬送部17とが対向する方向に対して、第1傾斜方向は、第2傾斜方向に対して線対称の関係を有する。
成膜チャンバー11は、第1工程の第2搬送において、成膜対象Sが広がる平面に対して直交する方向に沿ってイオンビームIBを照射する。これに対して、成膜チャンバー11は、第2工程の第2搬送において、例えば、第1傾斜方向に沿ってイオンビームIBを照射しながら成膜対象Sを搬送する第2搬送と、第2傾斜方向に沿ってイオンビームIBを照射しながら成膜対象Sを搬送する第2搬送とを交互に行うことが可能である。
本実施形態の成膜装置における第2例を用いることによって、第2工程において導電膜CFをエッチングする際に、第1工程と同一のイオン源23を用い、第1工程において照射したイオンビームIBの入射角度よりも小さい入射角度でイオンビームIBを照射することができる。
このように、同一のイオン源23を用いて第1工程でのエッチングと第2工程でのエッチングとが可能であるから、2つのイオン源を用いる場合に比べて、成膜装置を簡素化することが可能である。
以上説明したように、導電膜の形成方法、および、成膜装置の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(4)導電膜CFのうちで、凹部SHを区画する内側面SHsに形成された部分の厚さにおけるばらつきが大きくなることを抑えながら、導電膜CFのうちで、頂面STに形成される部分の厚さを厚くすることが可能である。
(5)各イオン源16,21,22を簡素化すること、および、イオン源16,21,22の処理における負荷を軽減することが可能である。
(6)同一のイオン源23を用いて第1工程でのエッチングと第2工程でのエッチングとが可能であるから、2つのイオン源を用いる場合に比べて、成膜装置を簡素化することが可能である。
なお、上述した各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[第1工程]
・第1工程では、第2搬送でのエッチング量が、全ての第2搬送において同一であってもよい。この場合であっても、第1搬送での成膜と第2搬送でのエッチングとを交互に繰り返せば、上述した(2)に準じた効果を得ることができる。
・第1工程では、導電膜CFの成膜と導電膜CFのエッチングとを同時に行ってもよい。例えば、第1搬送および第2搬送の両方において、導電膜CFの成膜と導電膜CFのエッチングとを行ってもよい。この場合であっても、第2工程において、単位時間当たりのエッチング量を第1工程よりも小さくして導電膜CFをエッチングすれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
[第2工程]
・第2実施形態の第2工程では、導電膜CFの成膜と導電膜CFのエッチングとを同時に行ってもよい。例えば、第1搬送および第2搬送の両方において、導電膜CFの成膜と導電膜CFのエッチングとを行ってもよい。この場合であっても、第2工程において、単位時間当たりのエッチング量を第1工程よりも小さくして導電膜CFをエッチングすれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
[成膜チャンバー]
・第2実施形態の成膜装置における第1例では、成膜チャンバー11は、第1傾斜イオン源21および第2傾斜イオン源22のいずれか一方のみを備えてもよい。この場合であっても、第1傾斜イオン源21または第2傾斜イオン源22が照射するイオンビームIBを備えることによって、上述した(4),(5)に準じた効果を少なからず得ることはできる。
・第2実施形態の成膜装置における第2例では、イオン源23は、成膜対象Sが広がる平面に直交する方向に加えて、第1傾斜方向および第2傾斜方向のいずれか一方のみに沿ってイオンビームIBを照射することが可能であってもよい。この場合であっても、イオン源23が、第1傾斜方向および第2傾斜方向のいずれかに沿ってイオンビームIBを照射可能であるため、上述した(4),(6)に準じた効果を少なからず得ることはできる。
[搬送部]
・搬送部17は、成膜対象Sではなく、ターゲット15Tおよびイオン源16,21,22,23を搬送してもよい。この場合には、成膜チャンバー11は、成膜対象Sを支持する支持部を備えればよい。搬送部は、成膜チャンバー11における位置が固定された成膜対象Sに対して、ターゲット15Tおよびイオン源16,21,22,23の位置を変えてもよい。この場合であっても、第2工程において、単位時間当たりのエッチング量を第1工程よりも少なくして導電膜CFをエッチングすれば、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
10…成膜装置
10C…制御部
11…成膜チャンバー
15…カソード
15T…ターゲット
16…イオン源
17…搬送部
21…第1傾斜イオン源
22…第2傾斜イオン源
CF…導電膜
IB…イオンビーム
S…成膜対象
SH…凹部
SHa…開口
SHb…底面
SHs…内側面
ST…頂面

Claims (7)

  1. 導電膜の形成の開始を含む第1工程と、
    前記第1工程の後に行われ、前記導電膜の形成の終了を含む第2工程と、を含み、
    前記第1工程は、複数の凹部を有した成膜面を備え、ターゲットに対して相対移動する成膜対象にスパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングすること、を含み、
    前記第2工程は、前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、単位時間当たりのエッチング量を前記第1工程よりも小さくして前記導電膜をエッチングすること、を含む
    導電膜の形成方法。
  2. 前記第1工程は、前記導電膜を形成することと、前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことを含む
    請求項1に記載の導電膜の形成方法。
  3. 前記第1工程において前記導電膜を形成することと前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことは、
    単位時間当たりに第1エッチング量で前記導電膜をエッチングすることと、単位時間当たりに前記第1エッチング量よりも大きい第2エッチング量で前記導電膜をエッチングすることとを交互に行うことを含む
    請求項2に記載の導電膜の形成方法。
  4. 前記スパッタ成膜は、コサイン則に従ってスパッタ粒子を放出することを含み、
    前記第1工程における前記導電膜をエッチングすること、および、前記第2工程における前記導電膜をエッチングすることは、イオンビームの照射によって前記導電膜をエッチングすることを含み、
    前記第2工程における前記導電膜をエッチングすることは、前記第1工程の入射角度よりも小さい入射角度で前記イオンビームを前記成膜対象に照射することを含む
    請求項1から3のいずれか一項に記載の導電膜の形成方法。
  5. 前記第1工程において前記導電膜をエッチングすることは、第1イオン源から前記イオンビームを照射することを含み、
    前記第2工程において前記導電膜をエッチングすることは、前記第1イオン源の入射角度よりも小さい入射角度で前記イオンビームを照射する第2イオン源を用いて前記イオンビームを照射することを含む
    請求項4に記載の導電膜の形成方法。
  6. 前記第1工程において前記導電膜をエッチングすることは、イオン源から前記イオンビームを照射することを含み、
    前記第2工程において前記導電膜をエッチングすることは、前記第1工程と同一の前記イオン源を用い、前記第1工程において照射した前記イオンビームの前記入射角度よりも小さい前記入射角度で前記イオンビームを照射することを含む
    請求項4に記載の導電膜の形成方法。
  7. 複数の凹部を有した成膜面を備えた成膜対象にターゲットを用いたスパッタ成膜によって導電膜を形成する成膜部と、
    前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングするエッチング部と、
    前記ターゲットに対して前記成膜対象を相対移動させる搬送部と、
    前記成膜部、前記エッチング部、および、前記搬送部の駆動を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記成膜部、前記エッチング部、および、前記搬送部の駆動を制御することによって、前記導電膜の形成の開始を含む第1工程と、前記第1工程の後に行われ、前記導電膜の形成の終了を含む第2工程とを実行させ、
    前記第1工程は、前記ターゲットに対して相対移動する前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、前記成膜対象に形成された前記導電膜をエッチングすることを含み、
    前記第2工程は、前記成膜対象に前記スパッタ成膜によって前記導電膜を形成すること、単位時間当たりのエッチング量を前記第1工程よりも小さくして前記導電膜をエッチングすること、を含む
    成膜装置。
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