JP2022027694A - 縫合糸を用いて組織どうしを接近させるための低侵襲性システム及び方法 - Google Patents

縫合糸を用いて組織どうしを接近させるための低侵襲性システム及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】組織どうしを接近させるための低侵襲性システム及び方法を提供すること。【解決手段】組織どうしを接近させる低侵襲性の外科的方法は、挿入器の周囲で縫合糸の調節可能ループを連結することを含む。縫合糸の尾部に張力を加えることによって、挿入器の周囲でループを折り畳ませて、ループを挿入器に連結することができ、次いで、挿入器及びループが、組織内の第1位置を通過させられる。ループが挿入器から分離され、挿入器は、第1位置から後退される。挿入器が組織内の第2位置に再度挿入され、その後、ループが組織の遠位側にある間にループが挿入器に再度連結される。分離、後退、及び再挿入は、挿入器を患者の身体から引き抜くことなく行うことができる。次いで、挿入器及びループは、この第2位置を通って組織から一緒に、患者の身体の外側に引き抜かれる。尾部及びループは、組織の周囲で収縮される、ラゲージ結びを形成することができる。【選択図】図2A

Description

本開示は、軟組織どうしを1つに固定するためのシステム、装置、及び方法に関し、より具体的には、例えば、半月板修復及び二頭筋の長頭の軟組織腱固定の間に、縫合糸リムを回収するための皮下プレインを確立する必要なしに、単一の切開部を通して、マットレスステッチとラゲージタグ結びとを用いて組織どうしを接近させるためのシステム、装置、及び方法に関する。
特に運動選手及び高齢者の間で一般的損傷は、腱、靭帯、又は他の軟組織の完全な又は部分断裂である。軟組織の断裂は、転倒時や、過度の運動努力や、又は他の様々な理由で発生し得る。特に、組織が部分的に又は完全に断裂した場合に、しばしば外科的介入が必要とされる。組織付着用に現在利用可能な装置としては、ねじ、ステープル、縫合糸アンカー及びタックが挙げられる。高齢の患者に現在利用可能な装置は、変性した組織のために特に不充分である場合があり、アンカーに対する縫合糸の固定が不適切となり、軟組織の更なる損傷をもたらす。
これらのタイプの損傷に対して、低侵襲的方法で手術することが望まれている。(例えば、インサイドアウト半月板修復術の間に)マットレスステッチを通過させるための現在の技術は、典型的には、修復中に表面組織を捕捉することなく、縫合糸リムを回収したり及び結んだりすることを可能にするための、皮下プレインを確立することを必要とする。また現在の手技においては、外科医は、典型的には、所望の強度及び確実な固定を達成するために、糸を撚ることを何度か必要とし得る、一連の結び目を結ぶ必要がある。繰り返し作業及び適切な結び目を結ぶ複雑性を緩和するためにこの結び目の積み重ねを低減すること、結び目の積み重ねによって使用される空間に基づいて組織への干渉又は組織に害をなす可能性を低減すること、及び患者に埋め込まれる材料を低減することが望ましい。
したがって、単一の切開部を使用し、標的組織に最小限の破壊を用いることにより、組織どうしを、正確で、より効率的で、しかもより破壊的ではない方法で接近させるための、低侵襲的方法のための改善されたシステム、方法、及び装置に対する需要が存在する。
本開示の実施形態は、縫合糸リムを回収するための皮下プレインを確立する必要なしに、単一の切開部を通して、マットレスステッチを用いて組織どうしを接近させるための低侵襲的方法を提供する。本開示の趣旨から逸脱することなく他の結び目構成を使用することができるが、多くの場合、ラゲージタグ結び構成を手技と共に使用することができる。この方法の実施形態は、一般的に適用され得るが、例えば、半月板修復及び二頭筋の長頭の軟組織腱固定において有利である。
本開示のいくつかの実施形態では、縫合糸フィラメントはそれ自体を貫通しているか、又は分岐編組部分によって画定されたアイレットを通して糸通しされて、調節可能ループとも呼ばれるループ又はスネア部分を形成する。この縫合糸フィラメント構造体は、本明細書においてシャックルと呼ばれることもあるが、2つのリム、すなわち縫合糸を貫通する端部によって作られた内側リムと、貫通された縫合糸の区域に関連付けられる外側リムとを作製する。内側リムを引っ張ることで、ループ部分を締める又は閉じることができる一方、外側リムに張力を加えると、ループ部分を緩める又は開くことができる。本明細書でより詳細に記載されるように、挿入器が、縫合糸フィラメントと共に使用するために提供されてもよく、その挿入器は、調節可能ループと係合するために、先端付近に減少直径区域を有する針様の遠位端を有するものである。
例示的な操作では、縫合糸フィラメントの調節可能ループは、縫合糸フィラメントの内側リムを引っ張ることによって、挿入器の減少直径区域の周囲に締め付けられる。その後、張力が内側リム上に保持された状態で、挿入器は、患者の単一の切開部内に導入され、接近させられる軟組織及び/又は軟骨を通過させられて、第1開口部を形成することができる。挿入器及び縫合糸フィラメントが軟組織を通って配設された状態で、内側リムに加えられる張力を除去することができ、張力を縫合糸フィラメントの外側リムに加えて、調節可能ループを挿入器の減少直径区域から係合解除することができる。挿入器は、患者から部分的に後退させることができるが、ここでは、縫合糸フィラメントがその上に折り畳まれてはいない。また、別の位置にて軟組織を通して挿入器を再挿入することによって、軟組織の第2の噛み込み作ることができ、それによって、第2切開部を作ることなく第2開口部を形成することができる。挿入器の遠位先端は、調節可能ループを通され得るが、挿入器の減少直径区域の周囲で調節可能ループを締め付けるために、張力が内側リムに印加され得る。いくらかの張力が内側リムに維持されている状態で、挿入器が、第2開口部を通して患者から引き出され、更に縫合糸フィラメントが第1開口部及び第2開口部の両方を通して引き出され得る。挿入器が軟組織から取り除かれた状態で、外側リムを使用してループを拡大することができ、挿入器は、縫合糸フィラメントから分離、又はそうでなければ係合解除され得る。縫合糸フィラメントの尾部は、ループを通して送り込まれて、ラゲージ結びを作ることができ、それによって軟組織を捕捉することができる。しかも尾部には、内側リム、次いで外側リムを使用して張力をかけることができ、それによりラゲージ結びによって形成されるループの直径を低減することができ、組織どうしを接近させることができる。その後、1つ以上の片結びの結び目が、修復の最終的な張力及び確実な固定のためのポストとして内側リムを使用して結ばれ、張力をかけられ得る。
外科的方法の例示的な一実施形態は、縫合糸フィラメントが連結された挿入器を、切開部を通してかつ少なくとも第1標的組織を通して挿入することを含む。挿入器は、第1標的組織内の第1開口部を通して、縫合糸フィラメントの第1尾部の全長及び第2尾部の全長を引き込む。本方法は、挿入器から縫合糸フィラメントの調節可能ループを分離して、調節可能ループにそのループの調節可能開口部を画定させることを更に含む。調節可能ループが挿入器から分離された後、挿入器は、標的組織内の第1開口部から引き抜かれる。更に、この方法は、挿入器を、第1標的組織内の第2開口部を通し、かつ調節可能ループの調節可能開口部を通して挿入することを含む。調節可能ループは、挿入器の周囲で調節可能ループを折り畳むことによって、挿入器に再連結される。調節可能ループを挿入器に再連結した後、縫合糸フィラメントの第1尾部の全長及び第2尾部の全長を第2開口部を通して引き込む挿入器を、第1標的組織内の第2開口部から引き抜く。挿入器が第2開口部から引き抜かれた後、調節可能ループが、挿入器から分離される。標的組織は、例えば、腱又は軟骨を含み得る。
いくつかの実施形態では、挿入器が第2開口部から引き抜かれ、調節可能ループが挿入器から分離された後に、縫合糸フィラメントに張力を加えて、第1組織の位置を、第2組織、骨、又は第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させ得る。この方法はまた、縫合糸フィラメントの第1尾部及び第2尾部を調節可能ループに通過させることと、調節可能ループを第1尾部及び第2尾部の周りに折り畳むこととを含み得る。そのような例において、縫合糸フィラメントに張力を加えて、第1組織の位置を、第2組織、骨、又は第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させることが、第1尾部及び第2尾部のうちの1つに張力を加えて、折り畳まれた調節可能ループを、第1組織に向かって前進させて、第1組織の位置を、第2組織、骨、又は第1組織が配設されている患者の体内に配設されている他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させることを含み得る。この張力の印加の結果、例えば、第1組織が第2組織に近くに引き寄せられ得る。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の結び目を第1尾部及び第2尾部を用いて結ぶことによって、折り畳まれた調節可能ループの位置を設定することを含み得る。
方法を実施する際、挿入器が切開部を通して挿入される時と少なくとも第1標的組織を通して挿入される時との間から、挿入器を、第2開口部から引き抜くまで、挿入器の遠位端の少なくとも一部分が、第1組織が配設されている患者の体内に配設されたままであり得る。これにより、挿入器の遠位端は、その間に第1組織に近接して配設された表面組織から引き抜かれないという結果になり得る。いくつかの実施形態では、表面組織は、皮膚層を含むことができる。
方法は、縫合糸フィラメントが連結されている挿入器を切開部を通して挿入する前に、挿入器を調節可能ループによって画定された調節可能開口部を通して配置することと、挿入器の周囲で調節可能ループを折り畳むことで、縫合糸フィラメントを挿入器に連結することと、を含み得る。挿入器の遠位端は、針を含むことができる。このような実施形態では、方法は、挿入器が第1標的組織を通して挿入される際に、第1標的組織内に第1開口部を形成すること、及び/又は挿入器が第1標的組織を通して挿入される際に、第1標的組織内に第2開口部を形成することを含むことができる。更に、挿入器は、調節可能ループが挿入器の周囲で折り畳まれたときに、挿入器に対して所望の位置に調節可能ループを保持するように構成された連結領域を含むことができる。非限定的な例として、連結領域は、挿入器の外表面に形成され得る減少直径区域を含むことができる。
いくつかの実施形態では、縫合糸フィラメントの調節可能ループを挿入器から分離する動作は、第1尾部及び第2尾部のうちの一方に張力を加えて、調節可能ループによって画定される開口部の直径を増加させることを含み得る。少なくとも場合によっては、第2尾部が第1尾部内に摺動可能に配設されるように、第2尾部が第1尾部を通り抜けて、縫合糸フィラメントの調節可能ループを形成することができる。この方法はまた、挿入器を第1標的組織内の第2開口部から引き抜く動作中に、第1尾部及び第2尾部のうちの少なくとも一方に張力を加えることを含み得る。これは、挿入中に、縫合糸フィラメントの挿入器への連結を維持するのに役立ち得る。張力はまた、挿入器を切開部を通してかつ第1標的組織を通して挿入して、第1尾部の全長及び第2尾部の全長を、第1開口部を通して引く動作の間に、第1尾部及び第2尾部の少なくとも一方に加えられ得るが、この張力も、挿入中に、縫合糸フィラメントの挿入器への連結を維持するのに役立ちうる。
外科的修復システムの例示的な一実施形態は、縫合糸フィラメントと挿入器とから形成された縫合糸構造体を含む。縫合糸構造体は、第1尾部と、第2尾部と、調節可能ループとを含む。調節可能ループの開口部が、第1尾部内に摺動可能に配設される第2尾部によって画定され、第2尾部に張力を加えると、調節可能ループの開口部が折り畳まれる。挿入器は、近位側ハンドルと、連結領域と、遠位端とを含む。遠位端は針を含み、連結領域は、調節可能ループが連結領域の周囲で折り畳まれたときに、標的組織を通る針の挿入中、連結領域に調節可能ループを保持するように構成されている。
いくつかの実施形態では、第1尾部は、その中に形成されたアイレットを含むことができ、第2尾部は、そのアイレットを通して摺動可能に配設され得る。いくつかの実施形態では、縫合糸フィラメントは編組縫合糸であってもよい。そのような例では、編組縫合糸は、第2尾部が第1尾部内に摺動可能に配設される位置で分岐され得る。
挿入器の連結領域は、挿入器の外表面の減少直径区域を含むことができる。いくつかのこのような実施形態では、減少直径区域は、挿入器の2つの異なる直径区域の間に配置された面取り縁部を有する、近位側遷移区域又は遠位側遷移区域のうちの少なくとも1つを画定することができる。いくつかの実施形態では、第1尾部及び第2尾部は、1本の縫合糸フィラメントの一部であり得る。
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
内側尾部が外側尾部を通過して調節可能ループを形成する外側尾部及び内側尾部を有する縫合糸フィラメントを含む、縫合糸構造体の例示的な一実施形態の上面図である。 遠位針と減少直径区域とを有する挿入器の例示的な一実施形態の概略上面図である。 遠位針と減少直径区域とを有する挿入器の別の例示的な一実施形態の概略上面図である。 図1Bの挿入器に連結されている図1Aの縫合糸構造体の調節可能ループの1つの例示的な実施形態の概略図を提供し、図2Aは、縫合糸フィラメントの調節可能ループを通過している挿入器の上面図である。 図1Bの挿入器に連結されている図1Aの縫合糸構造体の調節可能ループの1つの例示的な実施形態の概略図を提供し、図2Bは、挿入器の減少直径区域の周囲で折り畳まれている調節可能ループの上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。患者の皮膚の単一の切開部を通して手術部位に導入されている図2Bの配置における挿入器及び縫合糸フィラメントを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。軟組織内の第1位置を通過している挿入器及び縫合糸フィラメントを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。縫合糸フィラメントと挿入器の両方が軟組織を通過した後に、挿入器から縫合糸フィラメントを分離するために拡張されている、縫合糸フィラメントの調節可能ループを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。軟組織から除去されている挿入器を、縫合糸フィラメントが軟組織内の第1位置を通って配設されたまま残された状態で示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。軟組織内の第2位置を通過している挿入器を示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。縫合糸フィラメントの調節可能ループを通過している挿入器を示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。挿入器に連結された縫合糸フィラメントを、調節可能ループが挿入器上に折り畳まれ、挿入器が軟組織内の第2位置から引き抜かれている状態で示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。縫合糸フィラメントの外側尾部に張力を加えることによって挿入器から拡張されかつ分離されている、調節可能ループを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。縫合糸フィラメントの内側尾部及び外側尾部を調節可能ループに通すことによって、縫合糸フィラメントに結ばれているラゲージタグ結びを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。ラゲージタグ結びによって形成され、軟組織を一緒に引き寄せるために折り畳まれている調節可能ループを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。ラゲージタグ結びによって形成され、軟組織を一緒に引き寄せるために折り畳まれている調節可能ループを示す概略上面図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Bの挿入器を使用する外科手術の例示的な一実施形態の概略図を提供する。軟組織に対して縫合糸フィラメントの位置を固定し、縫合糸フィラメントの内側尾部及び外側尾部をトリミングし、切開部を閉じるための、縫合糸フィラメント内の1つ以上の片結びの形成を示す概略上面図である。 挿入器の減少直径区域の例示的な一実施形態の概略上面図である。 挿入器の減少直径区域の別の例示的な一実施形態の概略上面図である。 図1A及び1Bの挿入器及び縫合糸フィラメントのような挿入器及び調節可能ループを有する縫合糸フィラメントを使用して、単一の切開部を通して組織どうしを接近させるための低侵襲的方法の例示的な一実施形態のフローチャートである。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。 図1Aの縫合糸フィラメント及び図1Cの挿入器を使用した外科手術の例示的な一実施形態の概略図である。
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解される。当業者は、具体的に本明細書において説明され、添付の図面において例解される装置及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本開示の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような修正及び変形は、本開示の範囲内に含まれるものとする。
本開示において、様々な実施形態で同様の番号が付された構成要素は、類似する特徴を概ね有する。更に、システムの寸法及び形状、並びにその構成要素は、システムが使用されることになる患者の解剖学的形態、装置と共に使用されることになる構成要素の寸法及び形状、並びに装置が使用されることになる方法及び手技に少なくとも依存し得る。例示された実施形態及び付随の説明が特定の手術を参照する程度において、本明細書に記載されるシステム及び方法は、組織を低侵襲的に接近させることが必要とされ得るロボット手術、ロボット支援手術、及び非ロボット手術を伴う様々な用途において利用することができる。例示的な用途としては、半月板修復及び二頭筋の長頭の軟組織腱固定が挙げられ、接近させられる解剖学的構造体は、半月板組織又は1つ以上の腱であり得る。本発明のシステム及び技術を使用することができる他の手技としては、関節包修復、肩鎖関節修復、関節唇への骨の取り付けが挙げられる。本開示の教示は、そのような手技に適用することができるが、本明細書に記載されるシステム及び方法は、これらの用途に限定されない。加えて、開示される構造物並びに他の器具及びツールの方向、配向、及び/又は相対位置を説明するために用語が本開示において使用される限りでは、かかる用語は、限定することを意図しない。例えば、当業者は、外科医又は他の操作者の観点に少なくとも部分的に依存して、方向、配向、及び/又は相対位置(例えば、近位、遠位など)の用語を交換可能に使用することができることを認識するであろう。
本明細書で提供される図面は、必ずしも原寸に比例していない。更に、構成要素に張力付与するか又はそれを引っ張ることができる方向を説明するために矢印が使用される限りにおいて、これらの矢印は、例解的なものであり、個々の構成要素に張力付与するか又はそれを引っ張ることができる方向をいかなる形でも限定するものではない。当業者であれば、所望の張力又は移動をもたらすための他の方法及び方向を認識するであろう。本明細書で提供されるように、力及び張力という用語は互換的に使用されてもよく、当業者は、これらの2つの用語の間の違い及び類似点を理解するであろう。したがって、例えば、本出願が張力の印加又は張力の存在を記載する限りでは、典型的には、張力の代わりに力という用語を使用することができる。同様に、いくつかの実施形態では、ある構成要素の動きが別の構成要素に対して説明されるが、当業者であれば、他の動きも可能であることを認識するであろう。更に、「第1」及び「第2」といった用語は、例えば、第1端部及び第2端部など、構成要素の様々な態様について説明するために用いられ、一方の構成要素が他方の構成要素より前に位置することを示すものではない。この種の用語の使用は、2つの類似した構成要素又は特徴を区別するために用いられることができ、そうした第1の構成要素及び第2の構成要素は、しばしば交換可能に用いられることができる。更に、本開示の全体を通じて多くの用語が互換可能に用いられる場合があるが、当業者には理解されるところであろう。非限定例として、用語「縫合糸」及び「フィラメント」は互換的に使用されることがある。
軟組織修復のための外科的修復構造体及び方法は、一般に提供されており、それらは一般に、外科手術中に結び目を作ることを様々な方法で最小限に抑える及び/又は排除するように構成されると同時に、構造体を用いる組織及び/又は他の組織などに該構造体がもたらす外傷量も最小限に抑えるように構成された、外科用フィラメント(本明細書においては、外科用構造体又はシャックルとしてより広く言及される)の使用を含む。本明細書に記載される構造体は、例えば半月板修復及び二頭筋の長頭の軟組織固定のような、更には他の種類の腱及び組織修復手術といった多くの異なる外科手術で用いるための優れた強度を提供する。本明細書に記載される構造体は、フィラメントが挿入器に連結される場所が体内の手術部位にある場合であっても、構造体が何度も、挿入器に容易に連結され、かつ挿入器から容易に分離され得るように設計されている。結合及び分離は、例えば、構造体の異なる尾部に張力を加えることによって、体外で制御することができる。組織を通して縫合糸ループを通過させ、最小限の外傷で組織を接近させることが可能になるのは、組織内の第1開口部を通って縫合糸を通過させ、その後、第2開口部を通して縫合糸を回収することで、それぞれに対応する2回、組織を通して挿入器を挿入だけでよしとした結果として生じるものである。これは全て、体内の単一の、低侵襲性切開部を通して実行することができる。
図1A、図1B、図2A、及び図2Bは、縫合糸フィラメント100及び挿入器200を含む、本開示による外科用システムの一実施形態の概要を示す。図1Cは、挿入器200’の代替的一実施形態を提供する。
図1Aは、縫合糸フィラメント構造体又はシャックル1の例示的な一実施形態を提供する。構造体1は、調節可能ループ110を形成する、第1尾部とも称される外側尾部101と第2尾部とも称される内側尾部102とを有する縫合糸フィラメント100を含む。詳細図Aに示されるように、内側尾部102は、外側尾部101を貫通する。ここで、外側尾部101は、フィラメントを貫通する開口部109を有するように図示されており、その開口部109を内側尾部102が通過し、内側尾部102が開口部109に対して自由に移動して、調節可能ループ110を拡張又は収縮させる。手術中、内側尾部102に張力を加えることにより、調節可能ループ110が収縮し、調節可能ループ110が物体の周囲にしっかりと締め付ける。外側尾部101に張力を加えることにより、開口部109を付勢して物体から離れさせると、調節可能ループ110が拡張される。当業者であれば、これらの縫合糸構造体は、例えば調節可能ループ110、又はループ部分又はスネアといった異なる名称によって互換可能に称され得ることを理解するであろう。同様に、尾部はまた、縫合糸フィラメントの、リム又は一般的に区間若しくは部分(例えば、第1部分、第2部分)とも称され得る。図1Aの例示された実施形態では、調節可能ループ110が、内側尾部102を外側尾部101内の開口部109内に挿入することによって形成されているが、当業者であれば、本開示の趣旨を逸脱することなくこの接合が形成され得る他の方法を理解するであろう。非限定的な例として、開口部109は、一般に縫合糸フィラメント100を貫通する通路として形成されてもよく、その形成は、縫合糸フィラメント100を貫く穴を開けること、例えばフィラメントが編組フィラメントであるときなどには縫合糸フィラメント100内に分岐を形成すること、又は当業者に既知の、フィラメントをフィラメントに通すための他の技術を含むことができる。
図1Bは、概ね細長い本体を有する挿入器装置200の例示的な一実施形態の概略図であり、その挿入器装置200は、遠位針220を含む遠位端と、ハンドル又はハンドル部分210を含む近位端とを有する。遠位針220は、鋭い組織貫通先端部240で終端し、また、遠位針220の長さ方向に沿って外表面に形成された、減少直径区域として示される、挿入器の外表面上に位置する連結領域又は機構230を含む。いくつかの実施形態では、連結領域又は特徴部230は、縮小された直径を有しておらず(ただしそのような直径を有していてもよい)、挿入器200上の指定された位置において縫合糸フィラメントの調節可能ループ区域を保持するように構成された1つ以上の機構を含む。例えば、突出部(例えば、フィラメントが着座することができるシェルフ)又はテクスチャ(例えば、挿入器200上の指定された位置でフィラメントを把持あるいは別の方法で保持するように構成された輪郭)のようなものがそのような機構として考えられる。当業者であれば、挿入器200が概略的に図示されており、挿入器の簡略化されたバージョンを提供していることを認識するであろう。実施及び使用において、典型的には、挿入器200は、追加的及び/又はより顕著な機構を有する。例えば、ハンドル部分210は、ユーザーが挿入器200を取り扱い制御するのを助ける溝又は他の把持機構を有していてもよい。装置は、挿入器200を制御する能力を向上させることができる追加の機械的又は電子的機構を含んでもよい。
図1Cは、湾曲した挿入器700である挿入器の別の一実施形態を示す。挿入器700は、ハンドル部分710から延出し、減少直径区域730を有する遠位針720と、鋭い組織貫通先端部740とを有する。遠位針720は、材料(例えば、ニチノールなどの形状記憶材料)及び/又は針720の構造に基づいて、湾曲していてもよく、かつ/又は選択的可撓性を有していてもよい。遠位針720の曲率、又は使用中に選択的に湾曲する能力は、負荷がない場合には、ある程度の配置の自由度を可能にすることができ、また、長手方向軸線Zを中心にハンドル710を回転させる(ハンドル710の回転299によって示されるように)ことによって構造体1を捕捉することによって、鋭い組織貫通先端部740の円運動298を引き起こす。
図2A及び図2Bは、縫合糸構造体1が挿入器200に、どのように連結されるか、あるいは関連付けられ得るかを図示する概略図を提供する。ただし、他の挿入器(例えば図1Cの湾曲した挿入器700が挙げられるがそれに限定されない)、及び他の縫合糸構造体(構造体1に対して提供されるものと同様の機能を可能にするもの)を使用することができる。図2Aに示されるように、挿入器200は、縫合糸フィラメント100によって、又は縫合糸フィラメント100内に形成された調節可能ループ110を通過することができ、また、図2Bに示されるように、調節可能ループ110は、挿入器200の連結領域230の周囲で折り畳まれ得る。減少直径区域がより一般的には、縮小された直径を有しても有さなくてもよい機構である場合、調節可能ループ110は、構造体1を挿入器200に連結するための機構と係合するように、機構の周囲に折り畳まれ得る。図示された実施形態では、方向Aに縫合糸フィラメントの内側尾部102を引くか又は力を加えることにより(図2A)、調節可能ループ110内に張力を発生させ、挿入器200の連結領域230(図2B)に示されるように、調節可能ループ110が遠位針220と係合するまでループ110の直径を減少させ、それによって構造体1が挿入器200に連結される。手術中、挿入器200が、患者に導入され、かつ/又は接近される組織を通過する間及びその後に、張力が内側尾部102にかかったままにすることができる。なお、そのような動作については、図3A~図3Lなどに関してより詳細に後述される。内側尾部に張力が維持されるということは、例えば、調節可能ループ110内の張力を維持し、組織が、挿入器200の遠位針220から調節可能ループ110を外すことを防止するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、連結機構230は、縫合糸フィラメント100の調節可能ループ110が挿入器200の遠位針220と相互に嵌合することを可能にし、収縮状態に保持されたときに、調節可能ループ110を、その位置で連結された状態に維持することを可能にするように構成されている。このように維持されることより、ユーザーは、組織を通して縫合糸フィラメント100を押したり、引っ張ったりすることができる。
図3A~図3Lは、縫合糸構造体1及び図1A及び1Bの挿入器200の、例示的な一使用方法を示す。しかしながら、図1Cの湾曲した挿入器700などの他の設計の挿入器、及び他の縫合糸構造体も使用することができる。図3A~図3Lでは、挿入器200を使用して、構造体1の縫合糸フィラメント100を、2つの軟組織片310、320の第1開口部400に通し、次いで縫合糸フィラメント100を再捕捉して、第2開口部401を通して2つの軟組織片310、320から引き戻す。次に、構造体1を操作して、2つの軟組織片310、320を1つに接近させるが、そのために、フィラメント100のループ110を折り畳ませ、2つの軟組織片310、320の周囲で縫合糸フィラメント100の位置を固定することによって、組織310、320を所望の位置に維持する。この実施例は、プロセス全体が、患者の単一の切開部301を通して、挿入器200の4回の意図的な動き(挿入が2回、及び除去が2回)(なお、より一般的には、これは2回の動きと言及され得るが、それは1回の挿入と1回の除去の組み合わせが「単一の動き」と見なされるからである)のみで実施されているのを示している。第1回目の挿入と除去では、第1開口部400が作製され、縫合糸フィラメント100を2つの軟組織片310、320を貫通させて配設する。第2回目の挿入と除去では、第2開口部401が作製され、第2開口部401を通して縫合糸フィラメント100を捕捉して回収する。
図3Aは、患者の皮膚300内の単一の切開部301を通して患者の体内の手術部位に導入されている、図2Bの配置の挿入器200及び縫合糸構造体1の概略図である。縫合糸フィラメント100の調節可能ループ110は、挿入中に調節可能ループ110が外れないように、挿入器の遠位針220の周囲にしっかりと締め付けられる。挿入器200の、鋭い組織貫通先端部240を遠位方向に前進させて、切開部301を作製することができる。あるいは挿入器200を導入する前に、先端部240によって又は別のツール若しくは器具によって、切開部301を作製することができる。鋭い組織貫通先端部240が切開部301を通り過ぎて前進した状態で、鋭い組織貫通先端部240を遠位方向に前進させて、接近及び/又はシャックルされる軟組織に導入することができる。図3Aでは、接近される軟組織は、第1軟組織片310及び第2軟組織片320であるが、これらは、皮膚300の下で、互いに隣接しているものとして示されているが、これは、単に例示を容易にする目的で、そのように示されている。当業者であれば、本開示の趣旨から逸脱することなく記載された技術を適用することができる多くの異なる組織構成を認識するであろう。したがって、組織片310、320及び身体の関連する部分は、体内の任意の数の異なる組織片及び位置を表すことができる。鋭い組織貫通先端部240を体内に、遠位方向に向けてかつ/又は組織片310、320を通して挿入する間、調節可能ループ110が軟組織片310、320を完全に通過するまで、張力が内側尾部102に維持されて、図3Bに示されるように、調節可能ループ110を遠位針220に固定されたまま維持することができる。なおここでは、縫合糸フィラメント100の内側尾部102及び外側尾部101の両方が、軟組織片310、320を通って配設され、切開部301から外に延出している。あるいは、組織貫通先端部240が体内にかつ/又は組織片310、320を通って挿入されている間、ループ110が既に折り畳まれて、構造体1が挿入器200に連結された後には、内側尾部102に張力が適用される必要はない。例えば、フィラメント100は、挿入器200の本体への挿入中に、ループ110がその折り畳まれた状態を維持するように、挿入器200と係合され得る。
図3Cは、調節可能ループ110が、軟組織片310、320を通過した後に、どのように拡張されて、挿入器200から縫合糸フィラメント100を分離又は別の方法で解放できるかを示す。遠位針220が、調節可能ループ110を完全に軟組織片310、320内の第1開口部400を通して配設すると、すなわち、組織310、320の遠位側にループ110が通されると、張力(挿入中及び/又は挿入後に印加されている場合)が内側尾部102から取り除かれて、方向Bに印加されている力によって示されるように、外側尾部101に印加される。挿入器200の表面は、フィラメント100が係合してループ110の直径を実質的に増加させることができる表面を提供することによって、方向Bの力に応答して調節可能ループ110を拡張させるのを助けることができる。外側尾部101に加えられた張力は、調節可能ループ110を拡張し、図3Cに示すように、調節可能ループ110を遠位針220の連結機構230から係合解除させる。内側尾部102が自由端であり、外側尾部101と挿入器200とに互いに対向する力がかかった状態で、内側尾部102が開口部109を通って戻り、調節可能ループ110の直径を拡大し、それによって縫合糸フィラメント100と挿入器200とが分離される。
図3Dに示すように、挿入器200をユーザーに向かって近位方向に前進させて、軟組織片310、320からそれを除去し、縫合糸フィラメント100を、軟組織片310、320内の第1開口部400を通って配設された状態で残すことができる。典型的には、挿入器200は、組織に更なる外傷を生じないように、挿入器200が作製した同じ開口部を通して引き抜かれる。調節可能ループ110が挿入器200の遠位針220から完全に係合解除された状態で、遠位針220が、軟組織片310、320の第1開口部400から引き抜かれ、調節可能ループ110が軟組織片310、320の遠位側の第1開口部400の端部に来るように、縫合糸フィラメント100の内側尾部102及び外側尾部101を、第1開口部400を通って配設された状態に残す。図3Dに示されるように、遠位先端240は体内に残り、切開部301が身体に形成された制限されていない開口部を有する時間を最小化し、挿入器200が新しい開口部を形成するか又は配置される、したがって第2切開部が形成される可能性を低減することができる。一般に、切開部の数及び手技中に形成される開放切開部の数を最小限にすることが望ましい場合がある。更に、挿入器200は、修復によって治療される深部組織(例えば、組織片310、320)を通してのみ引き抜かれ得るようにしてもよく、したがって、より表層の組織(例えば、皮下組織、皮膚の層など)が修復中に捕捉されないようにすることを可能にする。本明細書に記載される通過工程中を通じてずっと、挿入器200を表面組織内の単一のポータル内に維持することができるため、尾部101、102を回収してから後で結びつける必要はない。
図3Dに示される位置から、鋭い組織貫通先端部240は、新たな位置で軟組織片310、320を通して再度挿入されて、図3Eに示すような第2開口部401を形成することができる。より具体的には図3Eは、挿入器200が、軟組織片310、320内の第2位置401を通過しているのを示す。挿入器200が縫合糸フィラメント100から完全に分離された状態で、第2位置401において、軟組織片310、320を通して遠位針220を再挿入しても、内側尾部102も、外側尾部101も、調節可能ループ110も破壊されない。鋭い組織貫通先端部は、図3Fに示されるように、拡張された調節可能ループ110を通して誘導され得るが、その後、調節可能ループ110を挿入器200に再度、取り付けることができる。第2開口部401が第1開口部400に十分に近く近接して存在するので、手術中、挿入器200の、鋭い組織貫通先端部240は、第2開口部401を通過した後に、調節可能ループ110をそのまま通されるか、ないしは別の方法で通される。なお、上記の十分に近くとは、遠位針220が第2開口部401を通って配設されるとき、調節可能ループ110が、鋭い組織貫通先端部240の到達範囲内にあることが可能である程度の近接性である。調節可能ループ110の位置を特定するのを助けるために、当業者に既知の様々な可視化技術を使用することができる。これらの技術の例としては、特に、スコープ(例えば、内視鏡、腹腔鏡など)、診断用超音波、又はテラヘルツ可視化を挙げることができる。あるいは又はそれに加えて、ループ110及び/又はフィラメント100は、より一般的には、それぞれに付けられた1つ以上の識別子を含んで、視覚化を伴うか又は伴わないかに関わらず、体内での自らの位置を識別する助けとすることができる。非限定的な例として、ループ部分が本体内に配設されたときにその位置を識別するのを支援するのを助けるために、ループ部分は、自らについて配設された何らかの種類の触覚フィードバック(例えば、縫合糸フィラメントとは異なる材料又はコーティング、ループ110上に形成された隆起形状など)を有することができる。
その後、図3Fに示すように、方向Cの力を内側尾部102に加えることができ、それによって、遠位針220の周囲で、調節可能ループ220の直径を収縮させることができる張力を作り出すことができる。遠位針220は、調節可能ループ110が遠位針220の連結領域230に確実に連結されるようにするために、必要に応じて調節することができる。いくつかの例では、減少直径区域として示される連結領域230の位置は、鋭い組織貫通先端部240に近く、調節可能ループ110が、減少直径区域230の近位側において、遠位針220の周囲で収縮し、その後挿入器200を第2開口部401から引き抜くことができるようになっている。内側尾部102にかかる張力は、調節可能ループ110が減少直径区域230と係合するまで、調節可能ループ110を遠位針220に沿って遠位方向に移動させる。その後で、図3Gに示されるように、挿入器200を第2開口部401から継続的に抜去することにより、内側尾部102の全長及び外側尾部101の全長と共に、調節可能ループ110を第2開口部401を通して引き抜く。
図3Gは、折り畳み可能ループ110として図示されるようなフィラメント100の一部分を、手術部位から遠位方向に引き抜くのを、より具体的に示す。図示されるように、挿入器200は、軟組織片310、320内の第2位置401及び切開部301から、調節可能ループ110と共に、方向Dに引き抜かれ得る。その際、内側尾部102及び外側尾部101が、軟組織片310、320内の第1位置400及び第2位置401の両方を通過し、かつ切開部301を通って外に戻る。図示されるように、挿入器200が近位方向に引き抜かれつつある間、内側尾部102に対して方向Eに力を加えることによって、内側尾部102にかかる張力を維持することができる。これにより、調節可能ループ110が確実に連結機構230によって保持されて、調節可能ループ110を軟組織片310、320から回収し、かつ少なくともいくつかの実施形態では、調節可能ループ110を切開部301を通過させることができる。挿入器200及びフィラメント100の同時的移動に関連する先の例と同様に、場合によっては、フィラメント100と挿入器200との間連結が形成されることにより、挿入器200及びフィラメント100を手術部位から除去しつつある間、張力の適用が不要になる場合があり得る。
図3Hは、調節可能ループ110の直径が拡張されてフィラメント100を挿入器220から分離する、別の事例を提供するものである。先の事例と同様に、これは、方向Fとして示されるように外側尾部101に力を加えて、それによって外側尾部101に張力を加えることによって実現することができる。これは、例えば、挿入器200及び調節可能ループ110が患者の身体から完全に引き抜かれた後に行うことができる。当業者であれば、少なくとも、挿入器220からのフィラメント100の分離が体外で行われるため、フィラメント100を挿入器220から引き離すために実行され得る多くの異なる動作が存在し、そのような動作が、外側尾部101に力を加えることに対する好適な代替物又は追加の動作であるということを理解するであろう。調節可能ループ110が身体及び/又は軟組織片310、320から自由になった状態では、張力を、内側尾部102から除去してから、挿入器200を保持しながら外側尾部101に張力を加えて、図3Hに示されるように、調節可能ループ110を拡張させ、調節可能ループ110を挿入器から係合解除することができる。挿入器200の表面は、フィラメント100が係合してループ110の直径を増加させることができる表面を提供することによって、方向Fの力に応答して調節可能ループ110を拡張させる可能にするのを助けることができる。実際に、挿入器200は、ループ100の直径を増加させるために、力Fの代わりに又は力Fに加えて、自らが方向Gに移動されることによって、ループ110に力を加えることができる。手術中、これは、患者の体内で従来行われていた調節可能ループ110の解放と同様である。しかしここでは、少なくとも部分的には、ループ拡張を実行する余地がより大きいことから、上記の解放がより劇的に行われて、後続の工程で縫合糸尾部を通すのをより容易にするための大きなループを形成してもよい。
図3Iは、調節可能ループ110が拡張され、挿入器200から係合解除された後に、内側尾部102及び外側尾部101を調節可能ループ110に通すことによって、ラゲージタグ結びが縫合糸フィラメント110に結ばれることの例示的な実施形態の概略図である。手術中、ユーザーはここで内側尾部102及び外側尾部101を掴み、それらを調節可能ループ110に通過させ、次いでそれらを引っ張って、ラゲージタグ結びを完成させることができる。尾部102及び尾部101がループ110を通過し、方向Hの力が尾部のうちの一方、例えば、内側尾部102に加えられると、最終的にループ110の直径が減少し、ループ110が尾部101及び尾部102上で折り畳まれる。
力Hが内側尾部102に加えられ続けられると、折り畳まれたループ110は切開部301を通って戻り、軟組織片310、320どうしを接近させる。折り畳まれたループ110自体は、ループ又はループ部分122を有するスネア120を形成し、ループ122は組織片310、320内及び組織片310、320の周囲に配設される。図3J及び3Kに示されるように、内側尾部102に張力を加えて、ループ122を軟組織内及びその周囲で収縮させることにより、組織片310、320が一体に引き寄せられる。まず内側尾部に張力をかけると、ラゲージ結びのシャックルループ長が捕捉された組織片310、320によって画定される前に、ラゲージ結びのループを、それを通された尾部101、102の直径にまで折り畳ませることによって、ラゲッジ結びが確実に、適切に結ばれるようにすることができる。まず外側尾部101に張力をかけると、ラゲージ結びのループが、シャックルの周の一部分を画定する場合に、結び目の強度を低減し得るが、その後の内側尾部102による調整では、ラゲージ結びの強度を意図されるようには低減しない場合があり得る。
図3Lに示されるように、フィラメント100及び組織片310、320が所望の位置及び場所に調整された後、最終的な張力及び堅固さを得るために、ポストとして内側リム102を使用することなどによって、1つ以上の片結びの結び目111が結ばれるか又は別の方法で形成され得る。このような結び目(複数可)111は、フィラメント100の位置を維持して、結び目を適切に結ばせて、フィラメント100を望ましくないように緩める可能性がある結び目及び/又は縫合糸の滑りの可能性を低減することができる。更に、内側尾部102及び外側尾部101は、それらが皮膚切開部301の内側に留まるようにトリミングすることができ、それにより、切開部301の閉鎖を可能にし、かつ組織などに意図しない外傷を引き起こし得る、体内に配設された材料の量を最小限に抑えることができる。尾部101及び尾部102は、当業者に既知の、任意の数の技術を使用してトリミングすることができ、そのような技術としては、関節鏡下縫合糸カッターを使用することが挙げられるがこれに限定されない。
図4及び図5は、挿入器200の減少直径区域230の、例示的な幾何学的形状を示す。挿入器200の遠位針240の、減少直径区域又は幾何学的形状の移行部は、調節可能ループ110の遠位針220への連結を維持するために、内側尾部102においてあまり張力を必要としない形態をとることができる。逆に、幾何学的形状は、調節可能ループ110がより容易に解放されるようなものであってもよい。図4は、減少直径区域230を1つ以上の面取りされた縁部231を有して形成することによって、遠位針220から調節可能ループ110を係合解除する抵抗を低減するために使用される1つの例を示しており、調整可能なループ110のより容易な解放を実現するために、減少直径区域230と遠位針220との間に傾斜した移行部が作製されている。あるいは又はそれに加えて、図5は、調節可能ループ110と遠位針220との間の相互嵌合量を増加させるために使用することができる一例を示す。減少直径区域230と遠位針220との間の移行部232の保持能力を増加させるために、縫合糸フィラメント100の厚さに対する減少直径区域230の深さを増加させている。いくつかの実施例では、減少直径区域の周りで、近位側の移行部の幾何学的形状と遠位側移行部の幾何学的形状とが異なる、図4及び図5の両方の実施例の組み合わせも可能である。いくつかの例では、移行部並びに/又は減少直径区域のサイズ及び形状は、遠位針220の周囲で円周方向に変化し得る。
図6は、挿入器200と、内側尾部102を外側尾部101に通すことによって形成された調節可能ループ110を有する縫合糸フィラメント100とを使用して、単一の切開部301を通して組織片310、320どうしを接近させるための低侵襲的方法の例示的な一実施形態のフローチャートを提供する。第1工程又は動作(これらの語は互換的に使用されてもよい)601では、縫合糸フィラメントの調節可能ループ110が、挿入器200の遠位端の周囲に位置決めされる。次に、工程602では、張力を縫合糸フィラメント100の内側尾部102に印加して、挿入器200の連結領域230(例えば減少直径区域、ただしこの領域のための他の構成も可能である)の周囲で、調節可能ループ110を折り畳ませることができ、それによって調節可能ループ110を挿入器200に連結することができる。ひとたび連結されると、工程603では、挿入器及び連結領域230の遠位端240を、互いに接近させられる又は縮小される標的組織310、320に挿入することができ、挿入器200が、挿入器200によって形成された、標的組織310、320内の第1開口部400を通して内側尾部102の全長及び外側尾部101の全長を引き寄せることができる。
工程604では、調節可能ループ110が標的組織を通過するまで、挿入器200が標的組織内に配設された状態で、外側尾部101に張力を加えて、調節可能ループ110を挿入器の連結領域230から分離することができる。更に工程605では、挿入器200が、縫合糸フィラメント100なしで、標的組織310、320から除去され得る。工程606では、挿入器200が、第2位置で、標的組織310、320を通して再び挿入されて、第2開口部401を形成することができ、挿入器200の遠位端は、標的組織310、320内に残された開口調節可能ループ110を通過することができる。工程607では、内側尾部102に張力を加えて、連結領域230において挿入器220の周囲で調節可能ループ110を再度連結することができる。工程608では、調節可能ループ110が連結された状態の挿入器を、第2開口部401から引き出すことができ、これにより、内側尾部102及び外側尾部101を、第2開口部401を通して、更に第1開口部400を通して引き寄せることができる。工程609では、挿入器及び調節可能ループ110が標的組織310、320から除去された状態で、外側尾部101に張力を加えて、挿入器から調節可能ループ110を分離することができる。工程610では、内側尾部102及び外側尾部101が、調節可能ループ110を通過して、第1開口部400及び第2開口部401を通って、標的組織310、320の周囲でラゲージタグ結び及びループを形成することができる。最後に工程611では、内側尾部102及び外側尾部101のうちの一方に張力を加えることによって、上の結果として得られたラゲージタグ結びが、手術部位に向かってかつ手術部位まで遠位方向に折り畳まれて、標的組織310、320を一緒に引き寄せることが可能になる。組織310、320に対するラゲージタグ結びの位置を設定することができ、その位置を固定するために1つ以上の片結びの結び目を形成することができる。尾部101、102をトリミングし、切開部301を閉じて、手術を完了することができる。
図1A~図3Lは、縫合糸フィラメント100を単一のストランドとして示してきたが、他の構成が想到され、当業者であれば、調節可能ループを有する多数の縫合糸構造体が、本明細書の開示に従って使用され得るということを理解するであろう。加えて、挿入器200は、遠位針及び近位側ハンドルを有する概ね細長い形状を有するものとして示されているが、本明細書に開示される挿入及び除去工程を可能にする他のサイズ、形状、及び配置が想到される。例えば、挿入器200は、ロボット又は他の外科支援システムによって操作されるもののような、より大きなツールアセンブリの一部であり得る。同様に、挿入器200の連結領域230は、減少直径区域として示されているが、挿入器200の自動化された機能又は構造などの、調節可能ループ110の挿入器への連結及び/又は分離を選択的に支援する他の構成が想到される。
上述したように、本明細書に記載される縫合糸フィラメント及び挿入器の実施形態を利用して、様々な外科手術の任意のものを実施することができる。例えば、本開示から利益を得ることができる2つの処置は、半月板修復及び二頭筋の長頭の軟組織固定である。他の例示的な手技は、軟組織を通して縫合糸を締結することを必要とする、身体全体にわたる任意の手技を含み得るが、例えば、様々な関節、靭帯、及び腱の修復を含む、身体全体にわたる様々な整形外科的処置が挙げられる。
図7A~図7Hは、湾曲した挿入器700を使用した、本開示の例示的な外科適用の実施形態を示す。具体的には、図7A~図7Hは、多方向性肩不安定症が、本開示の態様を用いて実施される関節包縫縮手術によって治療されるのを示す。図7Aは、関節包71、関節唇72、関節窩73を、二頭筋腱74、上関節上腕靭帯75、中関節上腕靱帯76、及び下関節上腕靱帯77を含む、患者の肩領域70を示す。
図7Bでは、構造体1が、湾曲した挿入器700と連結され、縫合糸フィラメント100の内側尾部102上に力Jを加えることによって、調節可能ループ110が、湾曲した挿入器700の減少直径区域730に締め付けられて、その周囲に固定されている。次に、内側尾部102にかかる張力Jを保持しながら、鋭い組織貫通先端部740が、図7Cに示されるように、第1位置で関節包71を貫通し、関節唇72内に入る。ひとたび鋭い組織貫通先端部740が所望の深さ/位置に達すると、例えば、縫合糸フィラメント100の外側尾部101上に力(図示せず)を加えることによって、調節可能ループ110が、湾曲した挿入器の遠位針720の減少直径区域730から分離され、その後、図7Dに示されるように、湾曲した挿入器700が第1位置から後退させられる。図7Eに示されるように、鋭い組織貫通先端部740が、修復に組み込まれる組織層から後退した後、鋭い組織貫通先端部740は、第2位置で再度挿入される。これにより、第1位置(ここでは縫合糸フィラメント100が配設されている場所)と第2位置(湾曲した挿入器の遠位針720が現在配設されている)との間に、一噛みの組織を取ることができる。鋭い組織貫通先端部740が第2位置を通過した状態で、鋭い組織貫通先端部740が、調節可能ループ110を通して誘導され、内側尾部102にかかる張力Kが、図7Eにも示されるように、減少直径区域730の周囲で調節可能ループを収縮させる。
ひとたび湾曲した挿入器700が、縫合糸フィラメント100と再度連結されると、引き続き張力Kを内側尾部102上に保持し、縫合糸フィラメント100と湾曲した挿入器700との連結を維持することができる。また、図7Fに示されるように、湾曲した挿入器700を後退させて、第2位置を通して縫合糸フィラメント100の調節可能ループ110を患者から回収することができる。図7Fはまた、第1位置と第2位置との間の軟組織内の、縫合糸フィラメント110の修復位置770を示し、この位置770は、以下に説明する最終工程において構造体を締め付けることによって組織が接近させられる位置である。調節可能ループ110が患者から取り外された状態で、張力が外側尾部101に加えられると、調節可能ループ110を湾曲した挿入器700の減少直径区域730から分離することができ、かつ調節可能ループ110を拡張することができる。図7Gは、構造体1から取り外された湾曲した挿入器700を示し、内側尾部102及び外側尾部101の端部Mが、開口調節可能ループ110(端部Mの経路Nによって示されるように)に通されて、構造体1でラゲージタグ結びを完成させることができる。続いて、構造体1によって形成されたラゲージタグ結びは、内側尾部102を最初に引っ張ることによって修復位置770の周囲で縮められて、結び目が外側尾部101に対して適切に結ばれることを確実にすることができる。次に、(修復位置770における軟組織の内側に広がる)第1位置及び第2位置は、例えば、内側尾部102及び外側尾部101のうちの少なくとも一方に張力を加えることによって、軟組織の周囲の構造体1のサイズを縮小することによって接近させられる。加えて、上で詳述したように、組織が接近された配置に保持された状態で構造体を結び目のある構成にロックするためのポストとして、内側尾部102を使用して片結びが結ばれ得る。特に、同じような具体性を以って記載されていないが、本明細書に記載される技術、修復、及びシステムは、図7A~図7Hに示される修復に適用され得る。また同様に、図7A~図7Hに関して説明される技術及びシステムは、本開示全体を通して記載される技術、修復、及びシステムに適用することができる。
多方向性肩不安定性に対処する手術において、図7B~7Gの工程を、肩領域70内の軟組織の周りの複数の修復位置770で繰り返して、図7Hに示すように、安定化された肩領域70’を形成することができる。
上記の説明若しくは添付図面において表現された又は示唆された方法工程の任意の順序は、開示された方法を、その順序で工程を実施することに限定するものと解釈すべきではないことに留意すべきである。むしろ、本明細書で開示される方法のそれぞれの種々の工程は、任意の種々の順序で行うことができる。なお、記載した方法は、代表的実施形態に過ぎず、追加の工程を含む、又はより少ない工程を含む、種々のその他の方法もまた本開示の範囲内である。
本明細書にて開示された器具、装置、及びシステムは、種々の既知の材料のうちの任意のものから構成され得る。挿入器200、700の例示的な材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、コバルトクロム、又はそれらの合金及び組み合わせなどの金属、PEEKなどのポリマー、セラミックス、炭素繊維などを含む、外科用途で使用するのに適した材料が挙げられる。本明細書に開示される挿入器200、700の様々な構成要素は、それらの使用に適切な様々な程度の剛性又は可撓性を有することができる。挿入器200、700のサイズもまた、使用目的及び手術部位の解剖学的構造によって大きく異なり得る。更に、特定の構成要素は、他の構成要素とは異なる材料から形成され得る。挿入器200、700及び/又は構造体1の1つ以上の構成要素又は部分は、蛍光透視法及び他の画像処理技法の下での可視化を容易にするために、放射線不透過性材料から形成することができるが、あるいはそれらは、他の構造物の可視化を干渉しないように放射線透過性材料から形成することができる。例示的な放射線透過性の材料としては、炭素繊維及び高強度のポリマーが挙げられる。
構造体1及び縫合糸フィラメント100は、細長い縫合糸フィラメントを含むことができ、様々な異なる種類の縫合糸フィラメントを使用することができ、これには、カニューレ状フィラメント、編組フィラメント、及びモノフィラメントが挙げられるが、これらに限定されない。また、そのようなフィラメントは、例えば、吸収性、非吸収性、及び膨潤性であり得る。フィラメントの種類、サイズ、及び強度は、構造体1の他の材料、組織、骨、それが通される関連した骨孔、並びにそれが使用される処置の種類に少なくとも部分的に依存してもよい。
例示的な一実施形態では、縫合糸フィラメントは、DePuy Synthes Sports Medicine (Mitek) (325 Paramount Drive,Raynham,Massachusetts 02767)から市販されているOrthocord(商標)フィラメント、又はEthicon,Inc.(Route 22 West,Somerville,NJ 08876)から市販されているEthibond(商標)フィラメント等の#0フィラメント(約26ゲージ~約27ゲージ)である。別の例示的な実施形態では、縫合糸フィラメントは、固体コアを有し、膨潤性である。例えば、DePuy Synthes Sports Medicine (Mitek)(Raynham,MA)から入手可能なDePuy Synthes Dynacord(商標)縫合糸などが挙げられる。フィラメントの厚さは、接続部に強度を提供するべきであるが、同時に、それが通過する組織に生じる外傷を最小限に抑えるものであるべきである。いくつかの実施形態では、縫合糸フィラメントは、約#5フィラメント(約20ゲージ~約21ゲージ)から約#3-0フィラメント(約29ゲージ~約32ゲージ)の範囲のサイズを有することができる。Orthocord(商標)縫合糸は、約55~65パーセントのPDS(商標)ポリジオキサノンであり、これは生体吸収性であり、残りの35~45パーセントは超高分子量ポリエチレンであり、一方、Ethibond(商標)縫合糸は、主として高強度ポリエステルである。本開示の縫合糸フィラメントに利用される生体吸収性材料が存在する場合、その量及び種類は、主に、実施される外科手術に対する外科医の選好の問題である。いくつかの例示的な実施形態では、縫合糸フィラメントの長さは、約0.2メートル~約5メートルの範囲であり得る。
本明細書で開示された装置、システム及び方法は、低侵襲性手術及び/又は切開手術で用いることができる。本明細書に開示される装置及び方法は、一般に、ヒト患者における整形外科手術の文脈で説明されているが、本明細書に開示される方法及び装置は、任意のヒト若しくは動物の対象との様々な外科手術のいずれかで、又は非外科処置で使用され得ることが理解されるであろう。加えて、本明細書に開示される方法は、軟組織修復の文脈で概ね説明されているが、1つ以上の他の種類の解剖学的構造の修復が、本開示の態様を用いて、例えば軟骨又は骨などのより硬い組織で、例えば、開口部(例えば、予め形成された、既存の、又は骨内に開口部を形成するように構成された挿入器によって形成されるもの)用いて、又は体内に配設された他の物体(例えば、移植組織、インプラント、靭帯、筋肉など)を通して行うことができる。
本明細書に開示される装置は、1回の使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、装置は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄工程又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含むことができる。具体的には、装置は分解することができ、装置の任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、装置を後の使用のために、再調整施設で、又は外科手術の直前に外科チームによってのいずれかで再度組み立てることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を利用できることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、全て本発明の範囲内にある。
本明細書に記載の装置は、外科手術に使用される前に処理されてもよい。まず、新品又は使用済みの器具を入手し、必要に応じて洗浄してもよい。次いで、器具を滅菌することができる。1つの滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなど、閉鎖され密封された容器に入れられてもよい。次に、容器及びその内容物は、γ線、X線、又は高エネルギー電子などの、容器を貫通できる放射線場の中に設置されてもよい。放射線は、器具上及び容器内の細菌を死滅させることができる。この後、滅菌された器具を滅菌容器内で保管することができる。密封された容器は、医療施設において開封されるまで器具を滅菌状態に保つことができる。当技術分野で既知の別の形態の滅菌も可能である。これにはβ線又はその他の放射線、酸化エチレン、蒸気、又は液体浴(例えば寒冷浸漬)を挙げることができる。特定の形態の滅菌は、利用される材料、電気構成要素の存在などに起因して、装置の異なる部分に対して使用するのに好適であり得る。いくつかの実施例では、密封容器又は他の梱包物は、密封容器内の挿入器に縫合糸構造体が予め装填された状態で出荷される挿入器及び縫合糸構造体を保持し、かつ/又はそうでなければ、構造体が挿入器に容易に装填されることを可能にするように構成されている挿入器及び縫合糸構造体を保持している。例えば、調節可能ループの調整可能開口部を、挿入器が開口部内に配置され、ループが折り畳まれて2つの構成要素を一緒に連結することを可能にするのに十分な大きさとする。
上記の本開示の実施形態は、単なる例示であることを意図しており、当業者には、様々な変形及び修正も明らかであろう。当業者であれば、上述の実施形態に基づいた本開示の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に明示的に援用する。
当業者であれば、上述の実施形態に基づいた本開示の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書に引用される全ての刊行物及び文献は、それらの全容を本明細書に明示的に援用する。
〔実施の態様〕
(1) 縫合糸フィラメントが連結された挿入器を、切開部を通して、かつ少なくとも第1標的組織を通して挿入し、前記挿入器に、前記第1標的組織内の第1開口部を通して、前記縫合糸フィラメントの第1尾部の全長及び第2尾部の全長を引き込ませることと、
前記縫合糸フィラメントの調節可能ループを前記挿入器から分離して、前記調節可能ループにその調節可能開口部を画定させることと、
前記調節可能ループを前記挿入器から分離した後、前記挿入器を前記第1標的組織内の前記第1開口部から引き抜くことと、
前記挿入器を、前記第1標的組織内の第2開口部を通し、かつ前記調節可能ループの前記調節可能開口部を通して挿入することと、
前記挿入器の周囲で前記調節可能ループを折り畳むことによって、前記調節可能ループを前記挿入器に再連結することと、
前記調節可能ループを前記挿入器に再連結した後、前記縫合糸フィラメントの前記第1尾部の全長及び前記第2尾部の全長を前記第2開口部を通して引き込む前記挿入器を、前記第1標的組織内の前記第2開口部から引き抜くことと、
前記挿入器が前記第2開口部から引き抜かれた後、前記調節可能ループを前記挿入器から分離することと、
を含む外科的方法。
(2) 前記挿入器が前記第2開口部から引き抜かれ、前記調節可能ループが前記挿入器から分離された後に、前記縫合糸フィラメントに張力を加えて、前記第1組織の位置を、第2組織、骨、又は前記第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させることを更に含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(3) 前記縫合糸フィラメントの前記第1尾部及び前記第2尾部を前記調節可能ループに通すことと、
前記調節可能ループを前記第1尾部及び前記第2尾部の周りに折り畳むことと、
を更に含み、
前記縫合糸フィラメントに張力を加えて、前記第1組織の位置を、第2組織、骨、又は前記第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させることが、前記第1尾部及び前記第2尾部のうちの1つに張力を加えて、折り畳まれた前記調節可能ループを、前記第1組織に向かって前進させて、前記第1組織の前記位置を、第2組織、骨、又は前記第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させること、を更に含む、
実施態様2に記載の外科的方法。
(4) 前記第1尾部及び前記第2尾部のうちの1つに張力を加えて、前記折り畳まれた調節可能ループを、前記第1組織に向かって前進させて、前記第1組織の前記位置を、第2組織、骨、又は前記第1組織が配設されている患者の体内に配設された他の物体のうちの少なくとも1つに対して移動させることが、前記第1組織を、前記第2組織の近くに引き寄せることを更に含む、実施態様3に記載の外科的方法。
(5) 前記第1尾部及び前記第2尾部で1つ以上の結び目を結ぶことによって、前記折り畳まれた調節可能ループの位置を設定することを更に含む、実施態様3に記載の外科的方法。
(6) 前記挿入器が前記切開部を通して挿入される時と少なくとも前記第1標的組織を通して挿入される時との間から、前記挿入器を、前記第2開口部から引き抜くまで、前記挿入器の遠位端の少なくとも一部分が、前記第1組織が配設されている患者の体内に配設されたままであり、その間に、前記挿入器の前記遠位端が、前記第1組織に近接して配設された表層組織から引き抜かれないようになっている、実施態様1に記載の外科的方法。
(7) 縫合糸フィラメントが連結されている前記挿入器を切開部を通して挿入する前に、
前記調節可能ループによって画定された前記調節可能開口部を通して前記挿入器を配置することと、
前記挿入器の周囲で前記調節可能ループを折り畳むことで、前記縫合糸フィラメントを前記挿入器に連結することと、
を更に含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(8) 前記挿入器の遠位端が針を含み、
前記方法が、
前記挿入器が前記第1標的組織を通して挿入される際に、前記第1標的組織内に前記第1開口部を形成することと、
前記挿入器が前記第1標的組織を通して挿入される際に、前記第1標的組織内に前記第2開口部を形成することと、
を更に含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(9) 前記縫合糸フィラメントの前記調節可能ループを前記挿入器から分離することが、
前記第1尾部及び前記第2尾部のうちの一方に張力を加えて、前記調節可能ループによって画定される前記開口部の直径を増加させることを更に含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(10) 前記第1標的組織内の前記第2開口部から前記挿入器を引き抜くことが、前記縫合糸フィラメントの前記挿入器への連結を維持するために、前記引き抜き中に前記第1尾部及び前記第2尾部のうちの少なくとも一方に張力を加えることを含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(11) 前記第2尾部が前記第1尾部内に摺動可能に配設されるように、前記第2尾部が前記第1尾部を通り抜けて、前記縫合糸フィラメントの前記調節可能ループを形成する、実施態様1に記載の外科的方法。
(12) 前記挿入器は、前記調節可能ループが前記挿入器の周囲で折り畳まれたときに、前記挿入器に対して所望の位置に前記調節可能ループを保持するように構成された連結領域を含む、実施態様1に記載の外科的方法。
(13) 前記連結領域が、前記挿入器の外表面に形成された減少直径区域を含む、実施態様12に記載の外科的方法。
(14) 外科的修復システムであって、
縫合糸フィラメントから形成された縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1尾部、第2尾部、及び調節可能ループを含み、前記調節可能ループの開口部が、前記第1尾部内に摺動可能に配置される前記第2尾部によって画定され、前記第2尾部に張力を加えることによって前記調節可能ループの前記開口部が折り畳まれるようになっている、縫合糸構造体、及び
近位側ハンドルと、連結領域と、遠位端とを有する挿入器を備え、
前記遠位端が針を含み、
前記連結領域は、前記調節可能ループが前記連結領域の周囲で折り畳まれたときに、標的組織を通る前記針の挿入中、前記連結領域に前記調節可能ループを保持するように構成されている、
外科的修復システム。
(15) 前記第1尾部が、その中に形成されたアイレットを含み、前記第2尾部が、前記アイレットを通して摺動可能に配設されている、実施態様14に記載の外科的修復システム。
(16) 前記縫合糸フィラメントが編組縫合糸であり、前記編組縫合糸が、前記第2尾部が前記第1尾部内に摺動可能に配設される位置で分岐される、実施態様14に記載の外科的修復システム。
(17) 前記挿入器の前記連結領域が、前記挿入器の外表面の減少直径区域を含む、実施態様14に記載の外科的修復システム。
(18) 前記減少直径区域が、前記挿入器の2つの異なる直径区域の間に配置された面取り縁部を有する、近位側遷移区域又は遠位側遷移区域のうちの少なくとも1つを画定する、実施態様17に記載の外科的修復システム。
(19) 前記第1尾部及び前記第2尾部が、1本の前記縫合糸フィラメントの一部である、実施態様14に記載の外科的修復システム。

Claims (6)

  1. 外科的修復システムであって、
    縫合糸フィラメントから形成された縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1尾部、第2尾部、及び調節可能ループを含み、前記調節可能ループの開口部が、前記第1尾部内に摺動可能に配置される前記第2尾部によって画定され、前記第2尾部に張力を加えることによって前記調節可能ループの前記開口部が折り畳まれるようになっている、縫合糸構造体、及び
    近位側ハンドルと、連結領域と、遠位端とを有する挿入器を備え、
    前記遠位端が針を含み、
    前記連結領域は、前記調節可能ループが前記連結領域の周囲で折り畳まれたときに、標的組織を通る前記針の挿入中、前記連結領域に前記調節可能ループを保持するように構成されている、
    外科的修復システム。
  2. 前記第1尾部が、その中に形成されたアイレットを含み、前記第2尾部が、前記アイレットを通して摺動可能に配設されている、請求項1に記載の外科的修復システム。
  3. 前記縫合糸フィラメントが編組縫合糸であり、前記編組縫合糸が、前記第2尾部が前記第1尾部内に摺動可能に配設される位置で分岐される、請求項1に記載の外科的修復システム。
  4. 前記挿入器の前記連結領域が、前記挿入器の外表面の減少直径区域を含む、請求項1に記載の外科的修復システム。
  5. 前記減少直径区域が、前記挿入器の2つの異なる直径区域の間に配置された面取り縁部を有する、近位側遷移区域又は遠位側遷移区域のうちの少なくとも1つを画定する、請求項4に記載の外科的修復システム。
  6. 前記第1尾部及び前記第2尾部が、1本の前記縫合糸フィラメントの一部である、請求項1に記載の外科的修復システム。
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