JP2022026065A - 飛翔体発生装置、画像形成装置、立体造形物の製造方法、及び飛翔体発生方法 - Google Patents

飛翔体発生装置、画像形成装置、立体造形物の製造方法、及び飛翔体発生方法 Download PDF

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Atsushi Aoto
浩之 須原
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Abstract

Figure 2022026065000001
【課題】飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができる飛翔体発生装置の提供。
【解決手段】光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、前記レーザビームの照射方向に前記光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である、飛翔体発生装置である。
【選択図】図13B

Description

本発明は、飛翔体発生装置、画像形成装置、立体造形物の製造方法、及び飛翔体発生方法に関する。
インクジェット方式などを用いた画像形成装置は、インク滴を所望の位置に飛翔させることができることから、近年では、立体的な造形を行う3Dプリンタ分野、印刷技術により電子部品を形成するプリンテッドエレクトロニクス分野などにも応用が検討されている。
これらの分野においては、例えば、従来の画像形成装置で用いられているような低粘度のインクだけではなく、顔料の濃度が高いインクや導電体を含む導電性ペーストなどの粘度が高い材料を所望の位置に正確に飛翔させる必要がある。このため、高粘度の材料を飛翔させるための種々の技術が提案されている。
このような技術としては、レーザを用いてインクを飛翔させる技術が検討されており、例えば、光渦レーザを用いたレーザ誘起前方転写(Laser-Induced Forward Transfer:LIFT)法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。LIFT法は、例えば、基板上に配した転写対象材料の膜(層)を形成し、当該転写対象材料の膜にレーザビームを照射して転写対象材料を飛翔させ、当該転写対象材料の膜の対面に配置した基板の所望の位置に当該転写対象材料を配する方法である。
また、LIFT法については、例えば、樹脂成分と、粒子と、沸点が130℃より高い溶媒(反応性希釈剤)とを所定の割合で含み、貯蔵弾性率と損失弾性率とが所定の条件を満たすインクを用いることにより、迅速で再現性のある転写を行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明は、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができる飛翔体発生装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段としての本発明の飛翔体発生装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、
光吸収材が、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。
本発明によると、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができる飛翔体発生装置を提供することができる。
図1Aは、光渦レーザビームにおける波面(等位相面)の一例を示す概略図である。 図1Bは、光渦レーザビームにおける光強度分布の一例を示す図である。 図1Cは、光渦レーザビームにおける位相分布の一例を示す図である。 図2Aは、光渦レーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す図である。 図2Bは、中心に光強度0の点を有するレーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す図である。 図3Aは、飛翔体発生方法の一例について説明するための概念図である。 図3Bは、飛翔体発生方法の一例について説明するための概念図である。 図3Cは、飛翔体発生方法の一例について説明するための概念図である。 図3Dは、飛翔体発生方法の一例について説明するための概念図である。 図4Aは、円環レーザビーム変換手段としてアキシコンレンズを用いた場合の一例を示す模式図である。 図4Bは、円環レーザビーム変換手段として図4Aにおける2枚目のアキシコンレンズと集光レンズを用いた一例を示す模式図である。 図4Cは、円環レーザビーム変換手段として、図4Bにおいてアキシコンレンズを、回折光学素子(Diffractive Optical Element;DOE)に変更した場合の一例を示す模式図である。 図4Dは、単レーザビームを図4CにおけるDOEに対して照射した場合の一例を示す斜視模式図である。 図4Eは、図4Dにおいて、複数のレーザビームを一つのDOEに対して照射した場合の一例を示す斜視模式図である。 図4Fは、図4Cにおいて、DOEを液晶位相変換素子(SLM)に変更した場合の一例を示す模式図である。 図4Gは、液晶位相変換素子(SLM)として反射型液晶位相変調素子とプリズムミラーを組み合わせた場合の一例を示す模式図である。 図5Aは、レーザ強度分布の一例を示す模式図である。 図5Bは、図5Aにおけるレーザ照射方向と直交方向における面内レーザ強度分布の測定結果の一例を示す図である。 図5Cは、本発明におけるレーザ強度分布の他の一例を示す模式図である。 図5Dは、図5Cにおけるレーザ照射方向と直交方向における面内レーザ強度分布の測定結果の一例を示す図である。 図6Aは、ラゲールガウシアンビームの指数Lと円錐波面の高さ指数Hとを重畳させたときの露光強度分布の一例を示す図である。 図6Bは、レーザビームの内径と飛翔体の大きさ(液滴径)の関係の一例を示す図である。 図6Cは、照射エネルギーと飛翔体の大きさ(液滴径)の関係の一例を示す図である。 図7Aは、レーザビーム変倍手段の一例を示す図である。 図7Bは、レーザビーム変倍手段の他の一例を示す図である。 図8は、位相分布変換手段の一例を示す図である。 図9Aは、飛翔体の体積と光吸収材の平均厚みとの関係の一例を示す図である。 図9Bは、飛翔体の体積と光吸収材の平均厚みとの関係の他の一例を示す図である。 図9Cは、飛翔体の体積と光吸収材の平均厚みとの関係の一例を示す図である。 図9Dは、飛翔体の体積と光吸収材の平均厚みとの関係の一例を示す図である。 図10Aは、飛翔体発生装置の一例を示す模式図である。 図10Bは、飛翔体発生装置の他の一例を示す模式図である。 図11は、光吸収材供給手段の一例を示す模式図である。 図12は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す模式図である。 図13Aは、インクCにおける1Pa~1,000Paの圧力条件での、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値の変化の一例を示す図である。 図13Bは、インクIにおける1Pa~1,000Paの圧力条件での、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値の変化の一例を示す図である。 図14は、インクCとインクIについて、インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値との関係の一例を示すグラフである。 図15Aは、飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)の一例を示す写真である。 図15Bは、飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)の他の一例を示す写真である。 図15Cは、飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)の他の一例を示す写真である。
(飛翔体発生装置、飛翔体発生方法)
本発明の飛翔体発生装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、更に必要に応じてその他の手段を有すると共に、光吸収材が、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。
また、本発明の飛翔体発生方法は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含むと共に、光吸収材が、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。
本発明の飛翔体発生方法は、例えば、本発明の飛翔体発生装置を用いて好適に行うことができ、光吸収材飛翔工程は光吸収材飛翔手段により好適に行うことができる。このため、以下では、本発明の飛翔体発生装置についての説明を通じて、本発明の飛翔体発生方法についても明らかにする。
本発明の飛翔体発生装置は、従来技術では、飛翔させた光吸収材の飛散が多く発生してしまう場合があるという、本発明者らの知見に基づくものである。
近年では、立体的な造形を行う3Dプリンタ分野や、印刷技術により電子部品を形成するプリンテッドエレクトロニクス分野において、顔料の濃度が高いインクや導電性ペーストなどの粘度が高い材料を飛翔させて、立体造形物や画像を形成(印刷)する技術に注目が集まっている。さらに、生体材料を用いた印刷や意匠性の高い機能的印刷などを行う際にも、粘度が高い材料を飛翔させて印刷することが求められる場合がある。このように、近年では、粘度が高い材料を、精度よく飛翔させる技術への要望が高まっている。
ここで、従来のインクジェット方式などを用いた画像形成装置においては、粘度の高いインクを用いて印刷を行おうとする場合には、インクを吐出するノズルにおけるインクの目詰まりが生じ、安定してインクを吐出することが難しいという問題がある。さらに、従来のインクジェット方式の画像形成装置においては、インクの目詰まりを抑制するためには、例えば、インクの粘度が高さに応じて、インクを吐出するノズルの径(ノズル径)を大きくする必要があるが、ノズル径を大きくすると、吐出されるインク滴の径が相対的に大きくなるため、解像度が低下してしまう場合があるという問題がある。
このため、従来のインクジェット方式の画像形成装置においては、粘度の高いインクを用いる場合には、インクの吐出を安定して行うことができない場合や、解像度が低下してしまう場合があるという問題があり、実用することが難しかった。
上述したレーザ誘起前方転写(Laser-Induced Forward Transfer:LIFT)法により、光を吸収可能なインクを飛翔させる場合には、インクジェット方式を用いる場合と異なり、ノズルからインクを吐出する必要がないので、粘度の高いインクであっても、インクを飛翔させることができる。
しかしながら、LIFT法(LIFT方式)によりインクを飛翔させて印刷等を行う場合には、インクを飛翔させる際にインクが飛散してしまう場合や、インクが被印刷物(対象物)に着弾した際にインクが飛散してしまう場合があり、インクの着弾位置を制御することが難しいときがあるという問題がある。
さらに、従来のLIFT法を用いて印刷等を行う場合に、印刷等の品質の低下を抑制するためには、一般に、インクが配されたドナー基板とインクが着弾するレシーバ基板との間の間隙(ギャップ)を、数十マイクロメートル(μm)程度に保つ必要がある。従来のLIFT法を用いてインクを飛翔させる場合、例えば、ドナー基板とレシーバ基板とのギャップが100μm以上のときには、サテライト(吐出したインク滴から分離した小さな液滴)やスプレー(吐出したインク滴がスプレー状に飛散して着弾すること)が発生することが報告されている(例えば、「L. Rapp, J. Ailuno, A. P. Alloncle and P. Delaporte, “Pulsed-laser printing of silver nanoparticles ink: control of morphological properties,” Opt. Express 19 (2011) 21563-74」参照)。
ここで、LIFT法を用いた印刷法を産業用途で利用する際には、スループット(生産効率)を高めるために、ドナー基板とレシーバ基板とのギャップを長くすることが好ましく、例えば、スループットの観点ではギャップを500μm以上とすることが好ましい。さらに、LIFT法を用いてインクを飛翔させることにより、凹凸や曲面を有する印刷物を製造する場合や、立体造形物を製造する場合などにおいては、ドナー基板とレシーバ基板とのギャップを更に長くすることが好ましく、例えば、1,000μm以上とすることが好ましい。
しかしながら、上述したように、従来技術において、LIFT法によりインクを飛翔させる際のドナー基板とレシーバ基板とのギャップが長い場合(即ち、インクの飛翔距離が長い場合)には、インクが飛散して、サテライトやスプレーなどの印刷不良が生じるときがあった。
そこで、本発明者らは、飛翔させた光吸収材(例えば、光を吸収可能なインク等)の飛散を抑制して対象に着弾させることができる飛翔体発生装置等について鋭意検討を重ね、以下の知見を得た。すなわち、本発明者らは、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、光吸収材が、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である飛翔体発生装置等により、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができることを知見した。
本発明の飛翔体発生装置は、光を吸収可能な光吸収材を、光吸収材飛翔手段により飛翔させる。光吸収材飛翔手段の詳細については後述するが、光吸収材飛翔手段としては、例えば、上述したLIFT法(LIFT方式)で用いられるレーザ照射手段を用いることができる。レーザ照射手段が照射するレーザビームの種別としては、例えば、ガウシアンレーザビーム、光渦レーザビーム、円環レーザビーム、なども用いられる。また、これに限定されず必要に応じて適宜適正なプロファイルのものを選択することができる。
そして、本発明の飛翔体発生装置においては、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定した動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値(η)が10Pa・s以下である光吸収材を、光吸収材飛翔手段により飛翔させる。
ここで、LIFT方式による印刷に用いるインクとしては、例えば、樹脂成分に顔料が微分散した粘度が高いインクを用いることが可能であるが、このようなインクは、応力によって粘度が変化する非ニュートン流体としての物性を持つ。言い換えると、LIFT方式による印刷に用いるインクにおいては、せん断応力(ずり応力)がせん断速度(ずり速度)に比例しない流体である非ニュートン流体としての物性を有する場合が多い。
このような非ニュートン流体のインクについての物性を調べる場合に、例えば、粘度を測定しようとするときに、例えば、通常の粘度(静的な粘度)の測定に用いられる、B型回転粘度計やE型回転粘度計による測定を行っても、当該インクの性質を的確に特定することはできない。そこで、本発明者らは、検討を重ねて、LIFT方式による印刷に用いるインクについて、レオメータにより動的粘弾性の応力依存性を測定することにより、インクの性質を的確に特定できることを見出した。
ここで、LIFT方式により光吸収材(インク)を飛翔させる際には、例えば、光吸収材が配された基材を介してレーザビームが照射され、当該レーザビームのエネルギーを光吸収材が吸収して、当該レーザビームの照射方向に光吸収材が飛翔する(光吸収材が液滴状の飛翔体(インク滴)となって飛んでいく)。このため、LIFT方式により光吸収材(インク)を飛翔させる際、光吸収材がレーザビームのエネルギーを吸収して、液滴状の飛翔体となって飛翔するときには、光吸収材には大きな応力が生じる。特に、レーザビームを照射した範囲の内の所定の領域を気化させることにより、光吸収材を飛翔させる場合には、光吸収材に特に大きな応力が生じる。
したがって、LIFT方式により光吸収材を飛翔させる場合における、光吸収材を飛翔させる際の光吸収材の挙動には、光吸収材に大きな応力が作用したときの物性が大きく影響する。
そこで、本発明者らは、光吸収材を飛翔させる際の光吸収材の挙動に大きく影響する、即ち、光吸収材を飛翔させる際の精度や安定性に大きく影響すると考えられる、大きな応力が作用したときの光吸収材の特性として、上述したレオメータによる動的粘弾性の応力依存性の測定における、大きな圧力条件での複素粘度値(η)に着目した。
複素粘度値(η;複素粘性係数、複素粘性率)は、例えば、上述したレオメータを用いて、基材に配されたときの状態の光吸収材に周期的な変形(ひずみ)を与え、それによって生じる応力と位相差を測定(検出)することによって、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)などと共に求めることができる。
本発明者らは、LIFT方式により光吸収材(例えば、光を吸収可能なインク)を飛翔させる際に、基材に配されたときの状態の光吸収材に作用する応力と、飛翔させた光吸収材の飛散の程度とを検討して以下の知見を得た。
すなわち、本発明者らは、基材に配されたときの状態の光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下とすることにより、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができることを知見した。言い換えると、本発明者らは、大きな応力が作用したとき(飛翔させるとき)の光吸収材の物性として、レオメータにより動的粘弾性の応力依存性を計測した際の、1,000Paの応力条件での複素粘度値(η)を、10Pa・s以下とすることにより、対象に着弾した光吸収材の飛散(ちり)を少なくすることができることを見出した。
このように、本発明の飛翔体発生装置においては、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下となる光吸収材を、光吸収材飛翔手段により飛翔させることにより、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができ、インクの着弾位置の精度を向上させることができる。これは、1,000Paの応力条件という、大きな応力が作用する条件における、基材に配されたときの状態の光吸収材の複素粘度値が所定値以下(10Pa・s以下)となるようにすることで、光吸収材飛翔手段により光吸収材を、安定して正確に、液滴形状(球に近い形状)で飛翔させることができるためであると考えられる。
さらに、本発明の飛翔体発生装置においては、上述したように、安定して正確に、液滴形状(球に近い形状)で光吸収材を飛翔させることができるため、例えば、光吸収材が表面に配された基板(ドナー基板)と、光吸収材が着弾する対象(例えば、レシーバ基板)との間の間隙(ギャップ)が長い場合であっても、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができる。言い換えると、本発明の飛翔体発生装置においては、光吸収材が飛翔する距離が、500μm以上である場合などの長い距離であっても、安定して正確に、液滴形状(球に近い形状)で光吸収材を飛翔させることができるため、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができ、インクの着弾位置の精度を向上させることができる。このため、本発明の飛翔体発生装置は、例えば、産業用途で利用する際などにおけるスループット(生産効率)を向上させることができると共に、凹凸や曲面を有する印刷物の製造や立体造形物の製造に、好適に応用することができる。
以下では、本発明の飛翔体発生装置及び飛翔体発生方法における、光吸収材飛翔手段及び飛翔体発生工程や光吸収材の詳細について説明する。
<光吸収材飛翔手段、光吸収材飛翔工程>
光吸収材飛翔手段は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる手段である。
光吸収材飛翔工程は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる工程である。
光吸収材飛翔手段としては、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。つまり、光吸収材飛翔手段としては、例えば、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、光吸収材の飛翔体を発生させて飛翔させる手段を用いることができる。
なお、「飛翔体」とは、例えば、レーザビームを光吸収材に照射することにより生じた飛翔する物体を意味する。また、「飛翔する」とは、例えば、光吸収材が基材上から離れて、対象(例えば、光吸収材が着弾するレシーバ基板)に向かって飛んでいくことを意味する。
飛翔体の形状は、例えば、光吸収材の材質によって異なる。例えば、光吸収材が液体である場合には飛翔体は略球状となることが好ましく、光吸収材が固体である場合には飛翔体は扁平形状、粒子形状など任意の形状となることが好ましい。なお、液体又は固体であるとは、飛翔体を発生させる環境(温度、圧力など)における光吸収材の状態を意味する。
ここで、光吸収材飛翔手段としては、より具体的には、例えば、レーザ光源を有するものを用いることができる。また、光吸収材飛翔手段は、レーザビーム変換手段、レーザビーム整形手段を有することが好ましく、必要に応じて、その他の手段を有する。
-レーザ光源-
レーザ光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザビームを発生させる固体レーザ、気体レーザ、半導体レーザなどが挙げられ、パルス発振可能なものが好ましい。
固体レーザとしては、例えば、YAGレーザ、チタンサファイアレーザなどが挙げられる。
気体レーザとしては、例えば、アルゴンレーザ、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。
--レーザビーム--
光吸収材飛翔手段が照射する(例えば、レーザ光源が照射する)レーザビームの種別としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したように、ガウシアンレーザビーム、光渦レーザビーム、円環レーザビームなどが挙げられる。これらの中でも、円環レーザビームを用いることが好ましい。言い換えると、本発明においては、光吸収材飛翔手段が、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に円環レーザビームを照射することが好ましい。
光吸収材飛翔手段が、円環レーザビームを照射して光吸収材を飛翔させることにより、光吸収材が飛翔する距離が、500μm以上である場合などの長い距離であっても、飛翔させた光吸収材の飛散をより抑制して対象に着弾させることができ、インクの着弾位置の精度をより向上させることができる。なお、円環レーザビームに関する詳細は後述する。
レーザビームの波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300nm以上11μm以下が好ましく、350nm以上1100nm以下がより好ましい。
レーザビームのビーム径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上10mm以下が好ましく、10μm以上1mm以下がより好ましい。
レーザビームのパルス幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2ナノ秒以上100ナノ秒以下が好ましく、2ナノ秒以上10ナノ秒以下がより好ましい。
レーザビームのパルス周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Hz以上1MHz以下が好ましく、20Hz以上50kHz以下がより好ましい。
なお、レーザ光源としては、より具体的には、例えば、波長1064nmのNd:YAGレーザ光源などが挙げられる。
ここで、レーザビームを変換するレーザビーム変換手段としては、レーザビームを所定の種別に変換することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光渦レーザビーム変換手段、円環レーザビーム変換手段などが挙げられる。
-光渦レーザビーム-
レーザビームを光渦レーザビームに変換する光渦レーザビーム変換手段としては、レーザビームを光渦レーザビームに変換できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回折光学素子、マルチモードファイバ、液晶位相変調器などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
回折光学素子としては、例えば、螺旋状位相板、ホログラム素子などが挙げられる。これらの中でも、螺旋状位相板が好ましい。
なお、光渦レーザビームを発生させる方法としては、光渦レーザビーム変換手段を用いる方法に限らず、レーザ共振器から光渦を固有モードとして発振させる方法、ホログラム素子を共振器に挿入する方法、ドーナツビームに変換した励起光を用いる方法、暗点を有する共振器ミラーを用いる方法、側面励起固体レーザで発生する熱レンズ効果を空間フィルタとして用いて光渦モード発振する方法などが挙げられる。
また、光渦レーザビームの出力を安定させるには、光渦レーザビーム変換手段より下流側の光路に1/4波長板を配置し、直線偏光の前記光渦レーザビームに対して、1/4波長板の光学軸を+45°の角度に設置して、円偏光に変換させることが好ましい。
なお、光渦レーザビームを照射する装置等に関しては、例えば、上述した特許文献1で開示されている装置等を、適宜変更して用いることができる。
ここで、光渦レーザビームは、例えば、図1Aに示すように螺旋状の等位相面を有しているものを用いることができる。例えば、光渦レーザビームのポインティングベクトルの方向が螺旋状の等位相面に対して直交方向であるため、光渦レーザビームが光吸収材に照射された場合には、直交方向に力が作用する。このため、図1Bに示すように、光強度分布がビームの中央が零となる凹んだドーナツ状の分布となり、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、ドーナツ状のエネルギーを放射圧として印加され、光渦レーザビームの照射方向に沿って飛翔し、被付着物(対象)に飛散しにくい状態で付着する。また、位相分布の観察を行うと図1Cに示すように位相差が発生していることが確認される。
光渦レーザビームか否かを判別する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の位相分布の観察、干渉計測などが挙げられ、干渉計測により好適に判別することができる。
干渉計測では、レーザビームプロファイラ(Spiricon社製レーザビームプロファイラ、浜松ホトニクス社製レーザビームプロファイラなど)を用いて観察できる。光渦レーザビームを干渉計測した結果の一例を図2A、図2Bに示す。
図2Aは、光渦レーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す説明図であり、図2Bは、中心に光強度0の点を有するレーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す説明図である。
光渦レーザビームを干渉計測すると、例えば、図2Aに示すように、エネルギー分布がドーナツ状であって、中心に光強度0の点を持つレーザビームであることが確認できる。
一方、中心に光強度0の点を有する一般的なレーザビームを干渉計測すると、図2Bに示すように、図2Aで示した光渦レーザビームの干渉計測と類似しているが、ドーナツ状部のエネルギー分布が一様ではないことから、光渦レーザビームとの差異が確認できる。
--円環レーザビーム--
以下では、本発明における好ましい形態の一つである、円環レーザビームに関係する形態について説明する。
ここで、本発明においては、光吸収材飛翔手段が、基材と光吸収材との界面において、レーザビームが照射された領域における外周部に気化領域を発生させることが好ましい。言い換えると、本発明においては、基材と光吸収材との界面において照射するレーザビームの光軸を取り囲むように(円環状に)外気圧以上の気化領域を発生させることが好ましい。
なお、本発明において「レーザビームが照射された領域における外周部」とは、レーザビームが照射された領域における中心を含まない領域を意味する。
また、本発明において、「光軸」とは、照射するレーザビーム軸を意味する。より詳細には、本発明において「光軸」とは照射するレーザビームの照射方向と直交する方向における断面において得られる図形の内接円の中心としてもよい。
「光軸を取り囲む」とは、「光軸」上ではなく、光軸を囲んだ周辺の領域に存在することを意味する。ここで、光軸を囲んだ周辺の領域は、レーザビームが照射された領域における中心を含まない領域を意味する。
次に、「外気圧以上の気化領域」について説明する。
例えば、室温環境から光吸収材が気化し始める上昇温度がTb(K)であるとき、光軸を取り囲むように、下記式(1)を満たすようにして光吸収材に対して光(レーザビーム)を照射すると、光吸収材が外気圧以上となり気化した領域、即ち、外気圧以上の気化領域を発生させることができる。ここで、開放系である場合には、「外気圧」は大気圧を意味する。
Q≧Tb(v・c・ρ)・・・式(1)
ここで、vは体積(kg)、cは比熱(J/(kg・K))、ρは密度(kg/m)である。
このとき、Q(J)は入熱量である(光の照射エネルギー量ではない)。光吸収材の光エネルギーの吸収率又は吸収係数を考慮することで、外気圧以上の気化領域を発生させるのに必要な光の照射エネルギー量(エネルギー密度)を求めることができる。
次に、「基材と光吸収材との界面において、レーザビームが照射された領域における外周部に外気圧以上の気化領域を発生させる」ことについて、図3Aから図3Dを参照して更に詳細に説明する。
図3Aから図3Dにおいて、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面に照射するレーザビームとして、上記式(1)を満たすエネルギー量(エネルギー密度)の円環レーザビームを照射した場合の一例を示す。
図3Aに示すように、まず、基材101の表面に光吸収材102を配したドナー基板に対して、光吸収材102が配された側とは反対側の基材101の表面にレーザビーム103を照射する。このとき、レーザビーム103を照射された光吸収材102は低粘度化した領域102Bを生じる。また、基材101と光吸収材102との界面において、光軸を取り囲むように光吸収材102が気化した気化領域102Aが発生する。発生した気化領域102Aは、図3B及び図3Cに示すように膨張していく。
このようにして、発生した気化領域102Aが膨張することによって、図3Aから図3C中の矢印に示すように、光軸に向かう圧力が生じる。この内向きの圧力(光軸に向かう圧力)によって、低粘度化した光吸収材102Bに囲まれた光吸収材102Cをレーザビーム103の照射方向に押し出し、最終的に、図3Dに示すように、光吸収材の液滴102Dがレーザビームの照射方向に飛翔する。
このように、「基材と光吸収材との界面において、レーザビームが照射された領域における外周部に外気圧以上の気化領域を発生させる」ことでレーザビームを光吸収材に照射することによって、光軸近傍の光吸収材は光軸上の光吸収材を取り囲むような圧力を受けるため、飛散することなく飛翔体を発生させることができる。
なお、以下の説明において、基材と光吸収材との界面において、レーザビームが照射された領域における外周部の外気圧以上の気化領域のことを「Bubble Ring」と称する場合があり、「Bubble Ring」により光吸収材に飛翔可能なエネルギーを与える方式を、「Bubble Ring 方式(BR方式)」と称する場合がある。また、レーザ用いたBR方式のことをBR-LIFTと称する場合がある。
BR-LIFTで使用される光源は、高品質のビームプロファイルと高出力を有することが好ましい。より具体的には、例えば、主発振器電力増幅器(MOPA)レーザシステムに基づくナノ秒パルスファイバレーザが、1064nmの波長のレーザ光源ユニットとして使用されることが好ましい。レーザ光源ユニットから照射されたレーザは、非線形光学結晶を通過し、第二高調波発生(SHG)を生じる。SHGは、例えば、1064nm波長を532nm波長に変換するように作用する。
ここで、環状レーザビームを生成する手法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。環状レーザビームを生成する手法としては、例えば、ガウスビーム(ガウシアンレーザビーム)を特定のレーザビームに変換する手法、レンズを用いた幾何光学法による手法、回折素子を用いた波長光学法による手法などが挙げられる。また、ガウスビームを特定のレーザビームに変換する手法としては、例えば、アキシコンレンズ、回折光学素子、液晶などの空間光変調器を使用する手法などが挙げられる。
例えば、アキシコンレンズを用いた環状レーザビームの発生は、アキシコンレンズの頂角αの場合、環状ビームのリング半径R0は以下のように表される。
Figure 2022026065000002
nは屈折率、Fは焦点距離である。頂角α及び焦点距離Fは、R0を決定するために変更することができる。また、R0は、アキシコンレンズとコンデンサレンズとの間の距離を変化させることによって決定することもできる。また、液晶位相変換素子(SLM)を用いて、環状レーザビームに変換した波面を生成する方法を用いることもできる。なお、位相板又は円筒レンズを用いてラゲールガウスビームを生成する方法を用いることもできる。
ここで、円環レーザビームとしては、例えば、レーザビームの光軸におけるレーザ強度が外周部のレーザ強度よりも小さいレーザビームを用いることができる。言い換えると、円環レーザビームとしては、光軸を取り囲む領域のレーザビームのレーザ強度が、光軸におけるレーザビームのレーザ強度よりも大きいレーザ強度分布を有するレーザビームを用いることができる。
レーザビームを円環レーザビームに変換する円環レーザビーム変換手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円環レーザビーム変換手段などが挙げられる。
円環レーザビーム変換手段としては、例えば、アキシコンレンズ、Vortex素子、回折光学素子(Diffractive Optical Element;DOE)、空間光変調素子、液晶位相変換素子(SLM)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
図4Aは、円環レーザビーム変換手段としてアキシコンレンズを用いた場合の一例を示す模式図である。図4Aに示す例は、円環レーザビーム変換手段としてアキシコンレンズ201A及び201Bの2枚を用いる例である。この例においては、1つ目のアキシコンレンズでレーザビームを分離し、2つ目のアキシコンレンズで、所望の円環ビームをつくる。2つのアキシコンレンズの距離を調整し、合成焦点距離を調節することで、ビームの直径(内径)を適宜変更することができる。
図4Bは、前記円環レーザビーム変換手段として図4Aにおける2枚目のアキシコンレンズ201Bと集光レンズ202を用いた一例を示す模式図である。この例においては、アキシコンレンズ201Bと集光レンズとの距離を調節することによってビームの直径(内径)を適宜変更することができる。
図4Cは、円環レーザビーム変換手段として、図4Bにおいてアキシコンレンズを、回折光学素子(Diffractive Optical Element;DOE)に変更した一例を示す模式図である。DOEを用いることによって、あらかじめ決められた波面を作ることができる。
図4Dは、図4CにおけるDOEを用いた単レーザビーム照射の場合における一例を示す斜視模式図である。図4Eは、図2Dにおいて、複数のレーザビームを一つのDOEに対して照射した場合における一例を示す斜視模式図である。
図4D及び図4Eに示すように、DOEを用いることによって、一つのDOEに対して一つのレーザビームを照射して一つの円環レーザビームを得ることもでき、また、一つのDOEに対して複数のレーザビームを照射して複数の円環レーザビームを得ることもできる。
また、1枚の頂角の異なるアキシコンレンズや位相パターンの異なるDOEを複数用意しておき、光吸収材に応じて変更することにより、光吸収材に応じて最適なレーザ強度のレーザビームを照射させることができる。
図4Fは、図4Cにおいて、DOEを液晶位相変換素子(SLM)201Dに変更した場合の一例を示す模式図である。液晶位相変換素子(SLM)を用いることによって、時間変調可能であるため、円錐波面やVortex波面、又はそれらの複合波面を重畳させた波面を生成することができる。なお、図4Gは、液晶位相変換素子(SLM)として反射型液晶位相変調素子201Dとプリズムミラー201D’を組み合わせた場合の一例を示す模式図である。
円環レーザビームのレーザ強度としては、また、光軸中心には気化領域が存在せず、なおかつ、光軸中心は、気化を生じるエネルギー密度より小さいエネルギーで照射させることがより好ましい。すなわち、照射するレーザの強度分布としては、レーザの最大強度が、光軸から離れたところにあることが好ましい。
また、光軸のレーザ強度は、気化領域のレーザ強度よりは小さいが、光吸収材の温度を上昇させる程度のレーザ強度であることが好ましい。こうすることにより、光吸収材を光吸収材自体の界面から分離して飛翔させるためのエネルギーを、光吸収材に与えることができ、光吸収材を飛翔させやすくなるため好ましい。
ここで、光吸収材飛翔手段が照射するレーザビームのレーザ強度の好ましい形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図5Aから図5Dは、レーザ強度分布の一例を示す模式図と、レーザ照射方向と直交方向における面内レーザ強度分布の測定結果の一例を示す図である。
図5A及び図5Bに示すように、照射するレーザビームのレーザ強度としては、照射するレーザビームの外周部において強度が高く、外周部から光軸(中心)に向かって漸次強度が低下するような分布をとることが好ましい。
また、図5C及び図5Dでは、図5A及び図5Bと同様に外周部においてレーザ強度が高い強度分布について、光軸(中心)では光軸近傍のレーザ強度よりも高いレーザ強度となる場合を示す。図5C及び図5Dに示すようなレーザ強度分布を有するレーザビーム(円環レーザビーム)を使用することによって、光軸(中心)においてレーザビーム照射された光吸収材が低粘度化し、光吸収材を押し出す動きが向上するため好ましい。このように、本発明では、レーザビームが照射された領域の外周部においてレーザ強度が高い強度分布となり、かつ、光軸(中心)では光軸近傍のレーザ強度よりも高いレーザ強度の強度分布となるレーザビーム(例えば、図5C及び図5Dに示すようなレーザ強度分布を有するレーザビーム)を円環レーザビームとして用いることができる。
図5C及び図5Dに示すようなレーザ強度分布(円環レーザビーム)を作るためには、例えば、上述した図4Aから図4Gに示すレーザ変換手段を用いることができる。
なお、液晶位相変換素子(SLM)は、通常、1次光のみを利用し、0次光は利用しない場合が多いが、0次光を有効に使うことにより、ラゲールガウスビームを用いるときに、特異点となる光軸中心にも光強度を与えることができる。本発明においては、これらをマトリックス的に可変できるデータベース化しておき、最適なものを選択するようにしてもよい。
円環レーザビームのレーザ強度分布としては、軸対称形が好ましい。なお、レーザ強度分布のムラは±20%であることが好ましい。
また、基材と接する面と反対側の光吸収材の露出表面におけるレーザビームのフルエンス(J/cm)は、気化領域を発生させるエネルギー密度より小さいエネルギー密度のレーザビームを照射することにより得られることが好ましい。こうすることにより、背面側(基材と接する面と反対側の光吸収材の露出表面側)の粘度を低下させることができるため、飛翔体の飛散を抑制し着弾位置精度を向上させることができる。
なお、フルエンスとは、通常は、レーザが入射する側のフルエンス(フロントサイドフルエンス)を意味する。フルエンスは、通常、材料の吸収係数により制御することが多い。しかしながら、光吸収材膜の光照射と反対側の膜表面のフルエンス(以後、バックサイドフルエンスと称する場合がある)を制御することが、飛翔品質に重要であることが本発明者らの検討によってわかった。
ここでは、バックサイドフルエンスについて、詳細に説明する。
まず、光吸収材に入射する前のレーザ強度をIとしたとき、入射後の光の強度Iはランベルト・ベールの法則から、吸収係数αを用いて以下の式(3)で示される。
I= I exp(-αt)・・・式(3)
なお、上記の式(3)において、αは吸収係数、tは膜厚、I/Iは膜厚tでの吸収率を意味する。
上記の式(3)からわかるように、深さ方向で入熱量Qが異なり、また、上昇温度が異なることを意味する。これにより、吸収係数と膜厚がわかれば、背面側のフルエンス(バックサイドフルエンス)を求めることができる。
レーザビームの断面形状、大きさ(内径、外径)としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
レーザビームの断面形状としては、例えば、円環状、多角形の環状、不定形の環状などが挙げられる。
レーザビームの内径(光ビームの波面における光軸を取り囲むビームプロファイルの内径)としては、20μm以上90μm以下が好ましく、30μm以上70μm以下がより好ましい。
ここで、レーザビームの大きさの調節方法について、図面を参照して説明する。
図6Aは、ラゲールガウシアンビームの指数Lと円錐波面の高さ指数Hとを重畳させたときの露光強度分布の一例を示す図である。
ラゲールガウスビームの指数は整数であるため、ラゲールガウスビームの指数を変更するだけでは、円環レーザビームの大きさが離散的になり、大きさを調節しにくい場合がある。例えば、ラゲールガウスビームL=1での実測値は、内径20μm/外径70μmであった。また、L=2での実測値は、内径30μm/外径80μmであった。したがって、ラゲールガウスビームの指数を変更するだけでは、この中間値(内径20μm/外径70μm~内径30μm/外径80μm)のレーザビームの大きさを有するレーザビームを作ることが難しい場合がある。
これに対して、円錐波面の高さ指数Hは、実数の範囲であるため任意に値を選ぶことができるので、内径および外径を自在に選ぶことができる。
例えば、図6Aに、ラゲールガウスビームに円錐波面の高さ指数Hを0,a,b,c(ただし、a,b,cは実数であり、a<b<cを満たす)と変化させたときの強度分布の等高線図を示す。図6Aに示すように、円錐波面の高さ指数Hが大きくなるにつれて、内径及び外径が漸次大きくなっていることがわかる。
例えば、H=cかつL=1のとき、内径90μm/外径160μmとなり、また、H=cかつL=2のとき、内径100μm/外径170μmであった。
このように、照射するレーザビームに円錐波面の高さ指数Hを重畳することで、このレーザビームの大きさを、用意かつ任意に調節することができる。また、L=1、2と変えることで内径/外径の比率も変えることができる。これらにより、光吸収材に最適なプロファイルを選択することが可能となる。
円錐波面の高さ指数Hを重畳する手段としては、例えば、液晶位相変換素子(SLM)などが挙げられる。
図6Bは、レーザビームの内径と飛翔体の大きさ(液滴径)の関係の一例を示す図である。レーザビームの内径が大きくなるにしたがって、飛翔体の大きさ(液滴径)大きくなることがわかる。すなわち、照射するレーザビームの内径によって、飛翔体の大きさを制御できる。
さらに、言い換えると、レーザビームの内径(リング直径)が増加するにつれて、液滴直径は線形増加することがわかる。リング直径を決めると、液滴直径は、同一のドナーの条件(光吸収材が配された基板の条件)により一意的に決定される。換言すれば、これは、液滴直径が、リング直径を変化させることによって制御できることを意味する。
おこで、液滴サイズは、印刷品質に関係する重要なパラメータである。BR-LIFT法では、リング直径を変化させることにより液滴直径を制御することが可能であるので、小径リングで高精細印刷ができ、大径リングで高速印刷ができるため、システムの制御性を向上させることができる。
また、図6Cに、照射(パルス)エネルギーと飛翔体の大きさ(液滴直径)の関係について示す。
図6Cでは、粘度4Pa・s、膜厚20μmのマゼンタインクを500μmのギャップで飛翔させたときの結果を示している。横軸は照射エネルギー、縦軸は液滴径である。この結果、照射エネルギーに関わらず、液滴径が一定であることがわかった。
図6Cに示すように、パルスエネルギーが34.6μJから45.8μJに32%増加した一方、液滴直径は僅か3.4%しか増加しなかった。これらの結果は、液滴直径が照射エネルギーに関係なく一定であることを意味する。LIFT法の場合、照射エネルギーが増加するにつれて、液滴サイズはそれに応じて増加するのが一般的であるであるが、BR-LIFT法においては、液滴直径が照射エネルギーに依存しないので、より安定な印刷ができるという特徴を有することがわかった。
-レーザビーム整形手段-
レーザビーム整形手段としては、例えば、レーザビーム変倍手段、位相分布変換手段などが挙げられる。
レーザビーム整形手段は、例えば、集光レンズの光源側に配置されており、入射ビームが集光レンズの前面で所望の断面形状と透過波面を形成することができる。
--レーザビーム変倍手段--
レーザビーム変倍手段は、例えば、入射ビームの光軸に垂直な断面で、一方の軸の径と、それに直交するもう一方の軸の径の割合を変更する手段とすることができる。
レーザビーム変倍手段としては、例えば、プリズムなどが挙げられる。
図7A及び図7Bにレーザビーム変倍手段の一例を示す。図7Aに示すレーザビーム変倍手段は、ガラスなど透明体のプリズムが2枚ペア(ダブルプリズム)で構成されており、光の屈折を利用して光の方向を変えることで、一方向のみを変倍するものである。なお、ここでの変倍とは、ビーム断面の縦横比が変化させるような倍率変化を意味する。図7A中、左の円は入射ビームの断面形状を示す。説明の簡単化のため、入射ビームは円形としている。ここで、入射ビームのx方向断面の半径をRx、y方向断面の半径をRyとするとRx/Ry=1となる。
図7Aは、入射側プリズムを反時計回り、射出側プリズムを時計回りに回転させた例である。この場合、x方向の射出ビームは、入射ビームに比べて相対的に小さくなる。すなわち、Rx/Ry<1に縮小変倍させることができる。
また、図7Bは、入射側プリズムを時計回り、射出側プリズムを反時計回りに回転させた例である。この場合、x方向の射出ビームは、入射ビームに比べて相対的に大きくなる。すなわちRx/Ry>1に拡大変倍させることができる。
以上より、レーザビーム変倍手段を用いることによって、入射ビームの光軸に対して直交する断面において、一方の軸の径と、それに直交するもう一方の軸の径の割合Rx/Ryを自在に変更することができる。
--位相分布(波面)変換手段--
位相分布変換手段は、例えば、入射ビーム波面の位相分布を変換する手段とすることができる。
位相分布変換手段としては、例えば、凸シリンダレンズなどが挙げられる。
ここで、図8に位相分布変換手段の一例を示す。
図8に示す位相分布変換手段は、2枚の凸シリンダレンズ光学系を用いて、透過波面を補正する光学系である。2枚のシリンダレンズ(CYL1、CYL2)を対向させ、焦点位置が重なるように配置(シリンダレンズ間の距離がLとなるように配置)すれば、倍率1となり波面はフラットのままであり、集光位置がx方向とy方向で変わらないが、シリンダレンズ間をわずかに変化(シリンダレンズ間の距離がL+ΔLとなるように配置)させると、x方向に独立したシリンダ波面を作ることができる。集光レンズ(軸対象)のデフォーカス効果と組み合わせることにより、透過波面の0度アスティグマ成分を作り出すこともできる。
より具体的には、下記の構成のレーザビーム整形手段を利用することができる。
・第1レンズ(CYL1):焦点距離50mmの平凸シリンダレンズ、硝材:合成石英
・第2レンズ(CYL2):焦点距離50mmの平凸シリンダレンズ、硝材:合成石英
・第3レンズ:焦点距離100mmの集光レンズ(軸対象レンズ)、硝材:合成石英
なお、焦点距離Sは、集光レンズ第1面から集光点までの距離である。CYLの間隔Lが100μm短くなると、焦点位置が0.5mm遠くなる関係にある。これにより、xyの焦点位置を独立に設定できる。なお、上記具体例においては、シリンダ1つに対して2枚の凸シリンダレンズを用いた構成を示したが、アクロマートレンズなどを張り合わせたレンズでもよい。
また、レンズの形状を非球面形状にすればさらに収差を補正することができる。
その他の基本的な特性は凹凸CYL光学系と同様である。凹凸CYL光学系よりも光路長は長くなるが、非常に良好な波面を作ることができる。
複数枚からなるシリンダレンズや液晶位相変調素子を用いることにより、入射ビーム波面の位相分布を理想状態に変換することが可能となる。
シリンダレンズ方式の場合、位相分布の変換パターンに制約はあるが、光学部品のアライメントでは解決できない非点収差補正を良好かつ高品質に補正することが可能である。
このようにして、光吸収材の飛翔の精度をより向上させることができる。
-その他の手段-
その他の手段としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ビーム波長変更素子、出力調整部などが挙げられる。
--ビーム波長変更素子--
ビーム波長変更素子としては、レーザビームの波長を、光吸収材が吸収可能であり、かつ後述する基材を透過可能である波長に変更できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ビーム波長変更素子としては、例えば、KTP結晶、BBO結晶、LBO結晶、CLBO結晶などが挙げられる。
--出力調整部--
出力調整部としては、レーザビームを適正な出力値に調整することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスなどが挙げられる。
<基材>
ここで、光吸収材飛翔手段は、上述したように、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射する
基材の形状としては、光吸収材を表面に担持し、裏面からレーザビームを照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。基材の形状としては、例えば、平板状、真円又は楕円等の筒状、筒状の一部を切り出した面、無端ベルト状、ロール状に巻かれたフィルムの一方から他方のローラに巻き取られる、いわゆるロール・ツー・ロール状などが挙げられる。これらの中でも、基材が筒状であって、周方向に回転する基材の表面に光吸収材を供給する光吸収材供給手段を有するようにすることが好ましい。筒状の基材の表面に光吸収材を担持すると、外周方向における被付着物の寸法に依存せずに供給することができる。また、この場合、筒状の内部には光吸収材飛翔手段を配置し、内部から外周に向けてレーザビームを照射可能とし、基材が周方向に回転することで連続的に照射することができる。また、平板状の基材としては、例えば、スライドガラスなどが挙げられる。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被付着物(例えば、光吸収材を付着させる対象物)の幅に合わせた寸法とすることが好ましい。
基材の材質としては、光を透過させるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光を透過させるもののうち、酸化珪素を主成分とする各種ガラスなどの無機材料、透明性の耐熱プラスチック、エラストマーなどの有機材料が、透過率と耐熱性の点で、好ましい。なお、基材を透明体と称することがある。
基材の表面粗さRaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、レーザビームの屈折散乱を抑制し、光吸収材に付与するエネルギーを低下させない点で、表面及び裏面のどちらも1μm以下であることが好ましい。また、表面粗さRaが好ましい範囲内であると、被付着物に付着した光吸収材の平均厚みのばらつきを抑制することができ、所望の量の光吸収材を付着させることができる点で有利である。
表面粗さRaは、JIS B0601に従って測定することができ、例えば、共焦点式レーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製)や触針式表面形状測定装置(Dektak150、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて測定することができる。
<光吸収材>
以下では、本発明で用いる光吸収材について、詳細に説明する。
<<光吸収材の動的粘弾性>>
本発明の飛翔体発生装置においては、上述したように、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定した動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値(η)が10Pa・s以下である光吸収材を、光吸収材飛翔手段により飛翔させる。
ここで、光吸収材としては、光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、測定した動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下であり、かつ光吸収材飛翔手段に用いられるレーザ光の波長の光を吸収可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材における動的粘弾性としては、例えば、レオメータにより、基材に配されたときの状態の光吸収材の動的粘弾性の応力依存性を測定したときの、測定した動的粘弾性に関する物性値(特性値)とすることができる。動的粘弾性の測定は、例えば、上述したように、レオメータを用いて、基材に配されたときの状態の光吸収材に周期的な変形を与え、それによって生じる、ひずみ、応力、位相差を測定(検出)することにより行うことができる。周期的な変形を与える方法としては、応力を制御するモードとひずみを制御するモードがあるが、本発明では、応力を制御するモードにて行う。
本発明では、レオメータにより、光吸収材の動的粘弾性を測定し、測定した動的粘弾性に基づいて、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)が求められる。
また、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)の計測における角速度ωを用いて、
η′′=G′/ω、η′=G′′/ω、の2つの粘度成分が求められる。
そして、これらの粘度成分から、複素粘度値(η)を、η=(η′+η′′1/2により定義することができる。
レオメータとしては、動的粘弾性を測定可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、HAAKE RheoStress600(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)などを用いることができる。
また、光吸収材における動的粘弾性の測定における応力条件とは、例えば、レオメータを用いて、光吸収材に周期的な変形(ひずみ)を与え、それによって生じる応力の大きさを指定する条件とすることができる。例えば、1,000Paの応力条件としては、光吸収材における動的粘弾性の測定において、光吸収材に1,000Paの応力が生じする条件とすることができる。なお、光吸収材における動的粘弾性の測定における応力条件は、レオメータの測定条件を適宜設定することにより指定することができる。
なお、光吸収材における動的粘弾性の測定においては、例えば、温度条件(測定温度)を25℃として測定する。ここで、温度条件とは、レオメータにおける測定部の温度であり、測定にあたっては、測定対象物が当温度環境になじませた状態で測定を行う。
また、光吸収材における動的粘弾性の測定において、光吸収材に周期的な変形(ひずみ)を与える際の周波数としては、例えば、1Hzとすることができる。
加えて、光吸収材として、有機溶剤のような沸点の低い揮発成分を含むものを用いる場合は、測定中に光吸収材が揮発しないようにして測定を行う。
ここで、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより測定する際の応力条件としては、少なくとも1,000Paの応力条件を含むものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1Paから1,000Paの範囲で、光吸収材における応力を変更しながら、当該光吸収材の動的粘弾性の応力依存性を測定する条件を用いることが好ましい。なお、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより測定する際には、例えば、1,000Paの応力条件を選択して、ピンポイントに1,000Paの応力条件での光吸収材の動的粘弾性を測定してもよい。
本発明において、光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したときの、当該動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値としては、10Pa・s以下であり、7Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上5Pa・s以下であることがより好ましい。例えば、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が7Pa・s以下となる光吸収材を用いることにより、対象に着弾したインクの飛散(ちり)をより抑制することができる。
また、光吸収材における動的粘弾性に関する物性値(特性値)としての貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G′′)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、貯蔵弾性率(G′)及び損失弾性率(G′′)から求めることができる損失正接(tanδ)が20以上となることが好ましい。
ここで、損失正接(tanδ)は、次の式により求めることができる。
tanδ=G′′/G′
つまり、損失正接(tanδ)は、損失弾性率(G′′)を貯蔵弾性率(G′)で除する(割る)ことにより、求めることができる。
光吸収材における損失正接(tanδ)の値が大きいことは、当該光吸収材における粘性が高いこと、即ち、作用する応力に対して、より大きく変形しやすい特性を持つことを意味する。
このため、光吸収材を飛翔させる際には、光吸収材に大きな応力が作用することを考慮すると、大きな応力が作用したときの光吸収材における損失正接(tanδ)が、ある程度大きな値であると、光吸収材を飛翔させるときに光吸収材が変形しやすくなり、よりスムーズに光吸収材を飛翔させることができると考えられる。
より具体的には、本発明者らは、飛翔させる光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた損失正接を20以上とすることにより、飛翔させた光吸収材の飛散をより抑制して対象に着弾させることができることを知見した。このように、本発明においては、光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が20以上であることが好ましい。
また、光吸収材における、1,000Pa以外の応力条件での動的粘弾性についての物性値(特性値)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1Paから1,000Paの範囲の応力条件で測定して求めた、光吸収材における応力の常用対数値と、光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係が非線形であることが好ましい。言い換えると、本発明においては、1Paから1,000Paの応力の範囲で、光吸収材における応力の常用対数値と、光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係を表すグラフが極値(変曲点)を持つことが好ましい。
このように、光吸収材における応力の常用対数値と、光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係が非線形である光吸収材を用いることにより、光吸収材飛翔手段が照射するレーザビームのエネルギーが、最適な値よりも大きい場合などでも、飛翔した光吸収材の飛散(ちり)をより抑制することができる。つまり、光吸収材における応力の常用対数値と、光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係が非線形である光吸収材を用いることにより、光吸収材飛翔手段が照射するレーザビームのエネルギーの変化が、光吸収材の飛翔状態に及ぼす影響を抑制することができる。
なお、本発明においては、光吸収材における応力の常用対数値と、光吸収材におけるひずみの常用対数値とにおける、最小二乗法を用いて特定した近似直線における決定係数(相関係数の2乗)が、0.990未満となる場合を、関係が非線形であるとする。
加えて、本発明では、光吸収材における1,000Pa以外の応力条件での動的粘弾性についての物性値(特性値)の一例として、例えば、小さい応力条件での損失正接が、ある程度小さくなることが好ましい。より具体的には、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより100Paの応力条件で測定したとき、当該動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が10以下であることが好ましい。
このように、作用する応力が小さいときには損失正接が比較的小さく、作用する応力が大きいときには損失正接が比較的大きくなるインクを用いることにより、飛翔した光吸収材の飛散(ちり)をより抑制することができる。言い換えると、大きな応力が作用することにより、損失正接が大きくなる、すなわち、より液体的な振る舞いをする光吸収材を用いることにより、むやみに過剰なエネルギーを与えることなく飛翔させることができ、飛翔後、速やかに固体的な振る舞いに変わることで、液切れ時に発生する不要なサテライトの生成が抑制され、飛翔した光吸収材の飛散をより抑制することができる。
つまり、本発明では、例えば、100Paの応力条件における損失正接が10以下であり、かつ1,000Paの応力条件における損失正接が20以上である光吸収材を用いることにより、飛翔した光吸収材の飛散をより抑制することができる。これは、例えば、光吸収材を飛翔させるときに大きな応力が作用する際には損失正接が20以上となり、安定して正確に、液滴形状(球に近い形状)で光吸収材を飛翔させることができると共に、光吸収材が飛翔しているときや対象に着弾(付着)したときに小さな応力が作用する際には損失正接が10以下となり、飛翔した光吸収材の形状(飛翔体の形状)を保つことができるためであると考えられる。
また、上述した、大きな応力が作用することにより、損失正接が大きくなる光吸収材を用いる場合について、例えば、1,000Paの応力条件における損失正接を「損失正接A」とし、100Paの応力条件における損失正接を「損失正接B」としたとき、損失正接Aと損失正接Bは、次の不等式〔損失正接A / 損失正接B ≧ 10〕を満たすことが好ましい。
言い換えると、本発明においては、光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた、1,000Paの応力条件での損失正接Aと、100Paの応力条件での損失正接Bとが、次の不等式、
損失正接A / 損失正接B ≧ 10
を満たすことが好ましい。
1,000Paの応力条件での損失正接Aと、100Paの応力条件での損失正接Bとが、上記の不等式を満たすことにより、飛翔した光吸収材の飛散をより抑制することができる。これは、例えば、光吸収材を飛翔させるときに大きな応力が作用する際には損失正接Aが20以上の大きな値となり、安定して正確に、液滴形状(球に近い形状)で光吸収材を飛翔させることができると共に、光吸収材が飛翔しているときや対象に着弾(付着)したときに小さな応力が作用する際には損失正接Bが、損失正接Aの1/10以下の小さな値となり、飛翔した光吸収材の形状(飛翔体の形状)を保つことができるためであると考えられる。
<<光吸収材の組成とその他の特性>>
光吸収材としては、例えば、光吸収物質を含有し、更に必要に応じてその他の物質を有するものを用いることができる。光吸収物質としては、所定の波長の光を吸収するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収物質(色材等)の詳細については後述する。
光を吸収する光吸収材により形成された塗膜における光の透過率としては、照射する光(レーザビーム)の波長に対して、50%~0%とすることが好適である。より具体的には、50%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましく、0.1%以下が特に好ましく、0.01%以下が格別に好ましい。
光を吸収する光吸収材により形成された塗膜における光の吸光度としては、照射する光(レーザビーム)の波長に対して、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が特に好ましい。
透過率又は吸光度が好ましい範囲内であると、基材に吸収されたレーザビームのエネルギーが熱に変換されにくいため、光吸収材に乾燥や溶融などの変化を与えることが少ない点でも有利である。さらに、透過率又は吸光度が好ましい範囲内であると、光吸収材に与えるエネルギーが低下しにくいため、付着位置のバラつきが生じにくい点で有利である。
なお、透過率及び吸光度は、例えば、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV3600)などを用いて測定することができる。
光吸収材としては、その形態、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材の形態としては、例えば、液体、固体、粉体などが挙げられる。特に、本発明においては、固体や粉体が高濃度で分散した高粘度な液体の光吸収材等を飛翔させることが可能であり、これは、従来のインクジェット記録方式には成し得ない長所となっている。
また、固体又は粉体の光吸収材を用いる場合は、光吸収材としては、光吸収材飛翔手段によりレーザビームを照射する際には、粘性を有する状態としておくことが好ましい。具体的には、固体又は粉体を飛翔させたい場合には、例えば、レーザビームを照射する前に、光吸収材を加熱し溶融状態にすることで、粘性を有する形態にすることが好ましい。
光吸収材としては、例えば、画像形成を行う場合にはトナーであってもよく、立体造形物を製造する場合には後述する立体造形剤であってもよい。
液体の光吸収材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、色材及び溶剤を含むインク、導電体及び溶剤を含む導電性ペーストなどが挙げられる。なお、顔料及び溶剤を含むインクにレーザビームが照射されると、溶剤が光を吸収しない場合には、例えば、溶剤以外の光を吸収する含有物にレーザビームのエネルギーが付与され、当該含有物とともに溶剤が飛翔する。
インクとしては、例えば、溶剤としての水に、染料、顔料、着色粒子、着色油滴などの色材を分散させた水性インクが使用可能である。また、水性インクに限らず、溶剤として、例えば、炭化水素系の有機溶剤、アルコール、樹脂などを溶剤としたインクも使用可能である。
また、本発明において、光吸収材として用いるインクとしては、例えば、揮発性溶媒を多く含まず、固形分が50%以上100%以下のものが好ましい。
また、インク(インキ)としては、例えば、オフセットインキ、スクリーンインキ、フレキソインキ、グラビアインキなどの市販のインクを利用することができる。つまり、インク(インキ)としては、水性インク、油性インク、UV(Ultra Violet;紫外線硬化)インク、EB(Electron Beam;電子線硬化)インクなどの各種市販インクを利用可能である。揮発成分が少なく、粘度や膜厚の安定性の観点から、UVインク、EBインクが好ましい。また、これらのインクに、必要に応じて適宜各種材料を配合してもよい。
また、本発明の飛翔体発生装置を利用した画像形成装置では、例えば、版を用いるオフセット印刷用のプロセスインキ、JAPAN COLOR対応インキ、特色インキなどでも画像形成が可能であるため、オフセット印刷で用いる色に合わせたデジタル画像を無版で容易に再現することができる。
さらに、本発明の飛翔体発生装置を利用した画像形成装置では、例えば、UV硬化インキでも画像形成が可能であるため、インクに紫外線を照射して硬化することにより、重なった記録媒体が貼り付くブロッキングの防止、及び乾燥工程の簡略化が可能となる。
導電性ペーストとしては、導電体を含むペースト状のものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回路基板の製造方法において公知乃至慣用の導電性ペーストなどが挙げられる。
導電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ITO、カーボン、カーボンナノチューブ等の導電性を有する無機粒子;ポリアニリン、ポリチオフェン(例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)等)、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性の有機高分子からなる粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性ペーストの体積抵抗率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の電極用途として使用できる点から10Ω・cm以下が好ましい。
液体の光吸収材の通常の粘度(静的粘度)としては、例えば、0.1Pa・s以上1,000Pa・s以下が好ましく、0.1Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましく、0.5Pa・s以上10Pa・s以下がより好ましい。
粉体の光吸収材としては、例えば、顔料及び結着樹脂を含むトナーや半田ボールの様な金属微粒子などが挙げられる。
この場合、レーザビームが照射されると、例えば、顔料にレーザビームのエネルギーが付与され、顔料とともに結着樹脂がトナーとして飛翔する。なお、粉体の光吸収材としては、顔料のみとしてもよい。
固体の光吸収材としては、例えば、スパッタや蒸着により製膜された金属薄膜、分散体などの粉体を押し固めたものなどが挙げられる。
金属薄膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。金属としては、例えば、銀、金、アルミ、白金、銅など蒸着やスパッタ加工が可能な一般的な金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属薄膜を飛翔させて画像パターンを形成する方法としては、例えば、予めガラスやフィルムなどの基材上に金属薄膜を作製し、金属薄膜にレーザビームを照射して飛翔させることで画像パターンを形成させる方法が挙げられる。また、他の方法としては、非画像部を飛翔させることで画像パターンを形成させる方法などが挙げられる。
粉体を押し固めたものとしては、例えば、所定の平均厚みである膜(層)状であることが好ましく、基材の表面に膜(層)状の固体を担持されるようにしてもよい。
ここで、基材に配したときの光吸収材の平均厚み(膜厚)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。光吸収材の平均厚みを上記の好ましい範囲とすることにより、レーザビームを照射したときの光吸収材の飛散をより抑制することができる。
また、本発明においては、例えば、基材に配したときの光吸収材の平均厚みを制御することにより、発生させる飛翔体の体積及び大きさを制御することができる。
このことについて、図面を用いてさらに説明する。図9Aから図9Dは後述する図10Aに示す飛翔体発生装置を用いて発生させた飛翔体と光吸収材の平均厚みについて検討した結果を示す図である。
飛翔体の発生は、532nmの波長を持つナノ秒レーザと、焦点距離100mmの集光レンズを用いた。また、走査光学系はガルバノスキャナを用い、走査速度100mm/s、200μm間隔で、1ショット露光を行ったものである。
光吸収材としては、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定した動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値(η)が10Pa・s以下となるものを用いた。
基材に配したときの光吸収材の平均厚みを、20μm、10μm、6μm、とした以外は同様の条件として飛翔体を発生させて、飛翔体の大きさ、飛翔体を対象(被付着物)に着弾させて得られた液滴の大きさを測定した。なお、ビームプロファイルは、内径20μmから90μmの範囲で最適な条件のものを用いた。
図9Aから図9Cに、500μmのギャップ(飛翔体の飛翔距離)で被付着物に付着した光吸収材を撮影した写真を示す。図9Aから図9Cに示すように、真円に近い形状の液滴が観測された。
より具体的には、図9Aには、基材に配したときの光吸収材の平均厚みを20μmとして、32μJの円環レーザビームを照射することにより飛翔させた、光吸収材が被付着物に付着したときの液滴を撮影した写真を示す。図9Aに示した液滴は、直径124μm、液滴量30plであり、飛翔体における平均(球)直径は39μmであった。
図9Bには、基材に配したときの光吸収材の平均厚みを10μmとして、18μJの円環レーザビームを照射することにより飛翔させた、光吸収材が被付着物に付着したときの液滴を撮影した写真を示す。図9Bに示した液滴は、直径81μm、液滴量8plであり、飛翔体における平均(球)直径は25μmであった。
図9Cには、基材に配したときの光吸収材の平均厚みを6μmとして、12μJの円環レーザビームを照射することにより飛翔させた、光吸収材が被付着物に付着したときの液滴を撮影した写真を示す。図9Cに示した液滴は、直径68μm、液滴量5plであり、飛翔体における平均(球)直径は21μmであった。
上述した光吸収材のそれぞれの平均厚みについて、飛翔体を対象(被付着物)に着弾させて得られた液滴の大きさをグラフにプロットしたものを図9Dに示す。ビームプロファイルは、内径20μmから90μmの範囲で最適な条件のものを用いた。
図9Dに示すように、飛散を抑制できるように光吸収材を飛翔させるときの液滴直径(ドット径)と、光吸収材の膜厚との間には成立することがわかる。なお、図9Dにおいて、縦軸は、飛翔体を対象(被付着物)に着弾させて得られた液滴の直径であり、横軸は、基材に配したときの光吸収材の平均厚みである。
したがって、小径ドットを作るためには、例えば、基材に配したときの光吸収材の平均厚みを薄くし、レーザビームの照射エネルギーを、光吸収材の平均厚みに応じて小さくすればよいことがわかった。このように、光吸収材の平均厚みを制御することによって、所望の解像度の画像を形成することができることがわかった。
さらに、上述したように、光吸収材の平均厚みが好ましい範囲内であると、光吸収材を膜(層)状にして供給した場合、連続して飛翔させたときであっても膜(層)の強度を確保することができるため、安定した供給が可能となる点で有利である。また、レーザビームのエネルギーをより適切に制御しやすいため、特に光吸収材が有機物の場合などに、劣化や分解が発生しにくい点で有利である。なお、塗布する方法によっては、一定のパターンを保持した膜(層)として供給することも可能となる。
また、例えば、一般的なオフセット印刷で用いられるコート紙や平滑なフィルムを記録媒体(光吸収材を着弾させる対象)として用いる場合には、光吸収材の平均厚みとしては、0.5μm以上5μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、記録媒体の微小な平均厚みの違いによる色差が人間の目でも判別しにくくなるためコート紙でも彩度の高い画像になりやすくなるとともに、網点のドットゲインが顕著とならず鮮鋭な画像が表現しやすくなる点で有利である。
さらに、例えば、オフィスなどで用いられる上質紙など、表面粗さがコート紙やフィルムよりも大きな記録媒体(光吸収材を着弾させる対象)を用いる場合には、光吸収材の平均厚みとしては、3μm以上10μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、記録媒体の表面粗さに影響されにくく良好な画質を得やすくなるとともに、特にプロセスカラーの着色剤でフルカラー画像を表現する場合、複数の着色剤の膜(層)を重ね合わせても段差感が顕著となりにくい。
加えて、例えば、布、繊維などを染色する捺染に用いる場合、記録媒体(光吸収材を着弾させる対象)となる綿、絹、化学繊維などに光吸収材を付着させる際には、光吸収材の平均厚みとしては、5μm以上の平均厚みとすることが好ましい。これは、繊維の太さが紙に比べ大きくなるので、多くの光吸収材を付着させることが好ましいためである。
平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材に対して任意の複数の点を選択し、複数の点の厚みの平均を算出することにより求める方法などが挙げられる。平均としては、5点の厚みの平均が好ましく、10点の厚みの平均がより好ましく、20点の厚みの平均が特に好ましい。
平均厚みの測定機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ変位計等の非接触方式の測定機器、マイクロメータなど接触方式の測定機器などが挙げられる。これらの中でも、基材に配したときの光吸収材の平均厚みの測定は、例えば、wetな状態での測定となるため、レーザ変位計等の非接触方式の測定機器を用いることが好ましい。
また、基材に配する光吸収材の平均厚みは、例えば、光吸収材における紫外線透過率や重量を測定することにより、基材に対する光吸収材の塗布量を制御することで、変更することができる。
ここで、記録媒体(光吸収材を着弾させる対象)に浸透する液体の光吸収材を用いた場合、本発明の飛翔体発生装置を用いた画像形成装置で取り扱いが可能である高粘度の光吸収材を用いることにより、記録媒体への浸透速度に対して乾きのほうを速くすることができるため、特にブリーディングの減少によって発色性の向上とエッジ部分の鮮鋭化が図れ、高画質の画像を形成することができる。また、着色剤を重ねて付着させる重ね打ちによる階調表現を行う場合にも、着色剤の量の増加による滲みも少なくすることができる。
さらに、液体の光吸収材を飛翔させて付着させることできるため、例えば、フィルム状の担持体から熱により溶融転写するいわゆる熱転写方式と比較すると、記録媒体に微小な凹凸が存在していても良好に記録を行うことができる。
--光吸収物質--
光吸収材が含み得る光吸収物質としては、所定の波長の光を吸収するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、色材(着色剤)などが挙げられる。
---色材---
色材としては、光吸収材と同様に、その形状、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。色材としては、例えば、顔料、染料などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
色材としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機顔料としては、例えば、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、サップグリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ポリアゾイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、イソインドリノンイエロー、ファーストイエロー、クロモフタルイエロー、ニッケルアゾイエロー、アゾメチンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、アリザリンレッド、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、モノアゾレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アンスラキノニルレッド、ジケトピロロピロールレッド、ジケトピロロピロールオレンジ、ベンズイミダゾロンブラウン、セピア、アニリンブラック、などが挙げられ、有機顔料のうち金属レーキ顔料としては、例えば、ローダミンレーキ、キノリンイエローレーキ、ブリリアントブルーレーキなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、チタンイエロー、クロムチタンイエロー、ライトレッド、クロムオキサイドグリ-ン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、リトポン、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレット、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム、黄銅、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、真鍮顔料、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、カーボンブラック、プルシャンブルー、オーレオリン、雲母チタン、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、オーピメント、辰砂、珊瑚末、胡粉、ベンガラ、群青、紺青、魚燐箔、酸化鉄処理パールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ブラックの顔料(ブラック顔料)としては、色相、画像保存性の点から、カーボンブラックが好ましい。
また、シアンの顔料(シアン顔料)としては、色相、画像保存性の点から、銅フタロシアニンブルーであるC.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
マゼンタの顔料(マゼンタ顔料)としては、キナクリドンレッドであるC.I.ピグメントレッド122、ナフトールレッドであるC.I.ピグメントレッド269、及びローダミンレーキであるC.I.ピグメントレッド81:4が好ましく、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントレッド269の混合物がより好ましい。また、C.I.ピグメントレッド122(P.R.122)及びC.I.ピグメントレッド269(P.R.269)の混合物としては、P.R.122:P.R.269が5:95以上80:20以下の混合物が特に好ましい。P.R.122:P.R.269が特に好ましい範囲内であると、色相がマゼンタ色として外れない。
イエローの顔料(イエロー顔料)としては、モノアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー74、ジスアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー155、ベンズイミダゾロンイエローであるC.I.ピグメントイエロー180、イソインドリンイエローであるC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントイエロー185がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光吸収材を着色剤としてのプロセスカラーインクとして用いる場合には、例えば、4色のインクセットとして用いることが好ましい。
染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料、アントラキノン誘導体、アントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、フタロシアニン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ポリメチン染料、アゾメチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
--その他の物質--
光吸収材が含み得るその他の物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した溶剤、添加剤などが挙げられる。
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、炭化水素系の有機溶剤、アルコール、樹脂などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
光吸収材が液体である場合においては、表面張力調整剤を含有することが好ましい。
光吸収材の表面張力を好ましい範囲にすることによって、所望の大きさの飛翔体を形成することができることを見出した。本発明の飛翔体発生装置を画像形成装置及び立体造形物の製造装置に適用した場合に、被付着物(対象)に所望の量の液滴(光吸収材)を着弾させることができる。
光吸収材の静的表面張力としては、15mN/m以上73mN/m以下が好ましく、20mN/m以上40mN/m以下がより好ましい。
表面調整剤としては、光吸収材の表面張力を低下させるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
表面張力調整剤としては、例えば、市販の界面活性剤が適用可能である。界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤などが挙げられる。これらは、適用する光吸収材の性質(水性、油性、UV硬化性など)に応じて適宜選択することができる。
表面張力調整剤の具体例としては、例えば、BYK社の市販品として、アクリルシロキサン系のBYK-UV3500、BYK-UV3530、ポリエーテルシロキサン系のBYK-UV3510、ポリエーテル系のBYK-UV3535などが、また、楠木化成社製の市販品として、アクリル系のUVX―35、UVX-36、アクリルシロキサン系のUVX-272などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
表面張力調整剤の含有量としては、光吸収材の全量に対して0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
静的表面張力の測定方法としては、例えば、ウィルヘルミ法による白金プレートの接液で計測する方法を用いることができる。なお、静的表面張力の標準的な測定機としては、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計DY-300などが挙げられる。
<<光吸収材の調製方法>>
本発明において、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定した動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値(η)が10Pa・s以下となる光吸収材を調整する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ここで、光吸収材における、1,000Paの応力条件での複素粘度値は、例えば、光吸収材における固形分の濃度、顔料の濃度、顔料の粒径などが影響すると考えられる。このため、例えば、光吸収材における固形分の濃度、顔料の濃度、顔料の粒径などを、適宜選択することにより、光吸収材の複素粘度値を調整することができる。
また、本発明においては、上述したように、市販のインクや添加剤を混合したものを、光吸収材として用いることができる。このため、例えば、顔料が樹脂に細かく密に分散した粘度の高い市販のインクを、そのインクに適合した粘度調整剤などの添加剤を配合することにより、1,000Paの応力条件での複素粘度値を簡便に調整することができる。また、必要に応じてレオロジーコントロール剤や他の顔料、ポリマーなどを添加剤として配合してもよい。
インクに添加する添加剤としては、例えば、シリカの粒子を含む添加剤を用いることもできる。このような添加剤を用いることにより、インクの静的な状態の粘度を保ちつつ、当該インクの濃度等を調整することができ、1,000Paの応力条件での複素粘度値を調整することができる。
以下では、1,000Paの応力条件での複素粘度値(η)が10Pa・s以下となる光吸収材を調製する方法について、より詳細に説明する。
本発明では、例えば、揮発成分を含まない点から、UV硬化性ポリマーを好適に用いることができるため、UV硬化性ポリマーを用いる場合について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
上述した通り、光吸収材を調製する際には、例えば溶液状のUV硬化性ポリマーに光吸収顔料を適量、微細に分散させる。光吸収材の液性は、ポリマーと顔料の組み合わせ、ポリマーの分子量、顔料の粒径や含有量によって制御される。本発明の光吸収材の溶液における分散粒径としては、サブミクロン、好ましくは10nm~100nmであることが好適であり、含有量は、5%~20%が好ましい。このときの材料の組み合わせ、粒径、添加量を制御することによって、光吸収材を狙いの液性に制御することができる。また、このとき、粘度調整用の低分子量のUV硬化性モノマーを添加して調整することもできる。
さらに、応力による粘度を意図的に制御するための添加剤を選択することもできる。この添加剤としては、シリカ、ベンナイトやモンモリロナイトなどの粘土状物質、カーボンナノファイバーやセルロースナノファイバーなどの繊維物質、金属せっけん、ワックス類、界面活性剤などが挙げられる。これらは、溶液系内で弱い網目構造を形成し、静的には固まっている(粘度を高める)が、高い応力によりその構造が容易に崩れ、粘度が低下する。本発明では、例えば、この添加剤の種類、量を適宜選定することで意図的に応力による液性とすることができる。これらの中でも、粒径が1nm~10nmと細かく、UV硬化性ポリマーとの親和性の点からシリカが好ましい。
本発明では、添加量を適宜調整することにより、光吸収材における狙いの液性を得ることができる。
次に、本発明の飛翔体発生装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
図10Aは本発明の飛翔体発生装置の一例を示す模式図である。図は便宜上、軸対称モデルとしている。図10Aに示すように、飛翔体発生装置は、光源、ビーム変換光学系、走査光学系であるガルバノスキャナ、集光光学系である集光レンズを有しており、試料台上に光吸収材を表面に配した透明体(基材)を設置することができるようになっている。また、透明体(基材)と被付着物(アクセプター基板)との間隙を設けるためのGap(ギャップ)保持部材を有している。
また、図10Aに示した飛翔体発生装置の一例においては、光源、ビーム変換光学系、走査光学系であるガルバノスキャナ、及び集光レンズを有する光吸収材飛翔手段により、光吸収材が配された側とは反対側の透明体(基材)の表面に円環レーザビームを照射することにより、円環レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる。そして、図10Aに示した飛翔体発生装置の一例では、飛翔させた光吸収材(飛翔体)は、被付着物(対象)に着弾して付着する。
図10Bは、図10Aで示した飛翔体発生装置の一例の構成をより簡潔に示すと共に、基材と光吸収材との界面において、レーザビームが照射された領域における外周部に外気圧以上の気化領域を発生させる様子を示す図である。
図10Bに示すように、透明体(基材)の表面に高粘度光吸収材を配したものに対して、高粘度光吸収材が配された側とは反対側の透明体の表面にレーザビームを照射すると、レーザビームを照射された高粘度光吸収材は低粘度化領域を生じると共に、透明体と高粘度光吸収材との界面において、光軸を取り囲むように高粘度光吸収材が気化した気化領域が発生する。そして、発生した気化領域が膨張することによって生じた内向きの圧力(光軸に向かう圧力)により、低粘度化領域に囲まれた高粘度光吸収材をレーザビームの照射方向(光軸方向)に押し出し、液滴がレーザビームの照射方向に飛翔する。
(画像形成装置、画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段と、
飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、を有し、
光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。また、本発明の画像形成装置は、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の画像形成方法は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔工程と、
飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する転写工程と、を含み、
光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。また、本発明の画像形成方法は、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記光吸収材飛翔工程は前記光吸収材飛翔手段により工程に実施することができ、前記転写工程は前記転写手段により好適に実施することができ、前記その他の工程は前記その他の手段により好適に実施することができる。
本発明の画像形成装置及び画像形成方法において、転写手段及び転写工程以外については、本発明の飛翔体発生装置及び飛翔体発生方法と同様とすることができるため、説明を省略する。
<転写手段、転写工程>
転写手段は、飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する手段である。
転写工程は、飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する工程である。
転写手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材から生じさせた飛翔体を被転写媒体に接触させる機構を備える手段などが挙げられる。具体的には、転写手段としては、例えば、被付着物(対象)と光吸収材との間隙を調整する機構や、被付着物を搬送する機構を有するようにすることが好ましい。
-被転写媒体-
被転写媒体(被付着物、飛翔した光吸収材が着弾する対象)としては、光吸収材から生じさせた液滴が接触できれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像形成装置で用いられる記録媒体や中間転写ベルトなどが挙げられる。
--記録媒体--
記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コート紙、上質紙、フィルム、布、繊維などが挙げられる。
被転写媒体と光吸収材との間隙(ギャップ)としては、被転写媒体と光吸収材とを接触させなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上5mm以下が好ましく、0.10mm以上2.0mm以下がより好ましく、0.2mm以上1.0mm以下が特に好ましく、0.10mm以上0.50mm以下が最も好ましい。被転写媒体と光吸収材との間隙が好ましい範囲内であると、被付着物に対する光吸収材の着弾位置の精度をより向上させることができる。また、被転写媒体と光吸収材とを接触させないことにより、光吸収材、被付着物の組成を選ばず光吸収材を被付着物に付着させることが可能となる。本発明においては、特に、少なくとも0.5mm以上離れた被付着物に着弾させる場合の着弾位置精度に優れる。
また、間隙(ギャップ)は、例えば、被付着物の位置を一定に維持する位置制御手段などにより一定に保たれることが好ましい。この場合、光吸収材及び被転写媒体の位置変動、平均厚みのバラつきを考慮して各部位を配置することが好ましい。
また、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の平均直径(平均ドット径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下とすることが、形成する画像をより向上させることができる点で好ましい。本発明においては、例えば、飛翔する液滴の径は照射されるレーザビーム径よりも小さい径で飛翔させることができる、被転写媒体上では着滴時の衝撃及び被転写媒体表面との表面張力の関係によって形成されるドット径は変化する。
また、平均ドット径は、例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出したドット領域のピクセル数から各ドットの面積を算出、円形に換算した時の直径をドット径とし、これを平均することにより求めることができる。
さらに、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の直径(ドット径)のばらつきの値としては、10%以下とすることが好ましく、6%以下とすることがより好ましい。被転写媒体における、転写後の光吸収材の直径のばらつきの値を、上記の好ましい範囲とすることにより、画像や立体造形物を形成する際の精度をより向上させることができる。
また、被転写媒体における、転写後の光吸収材の直径のばらつきの値は、例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出したドット領域のピクセル数から各ドットの面積を算出、円形に換算した時の直径をドット径とし、各ドットの粒径分布の平均粒径と標準偏差から算出することにより求めることができる。
加えて、被転写媒体(被付着物)における、転写(付着)後の光吸収材の位置(ドット位置)のばらつきの値としては、10μm以下とすることが好ましく、5μm以下とすることがより好ましい。被転写媒体における、転写後の光吸収材の位置のばらつきの値を、上記の好ましい範囲とすることにより、画像や立体造形物を形成する際の精度をより向上させることができる。なお、被転写媒体における、転写後の光吸収材の位置のばらつきの値としては、例えば、光吸収材のドットを一列に付着させる場合には、そのドットの列と直行する方向における、光吸収材の位置のばらつきの値とすることができる。
例えば、マイクロスコープ等で光吸収材のドット画像を取得して画像輝度情報からドット領域を検出し、検出した各ドット領域の重心座標を算出、各重心の最小二乗法による近似直線からのずれを算出することにより求めることができる。
<その他の手段、その他の工程>
その他の手段としては、例えば、光吸収材供給手段、膜厚制御手段、ビーム走査手段、被付着物搬送手段、定着手段、制御手段などが挙げられる。
その他の工程としては、例えば、光吸収材供給工程、膜厚制御工程、ビーム走査工程、被付着物搬送工程、定着工程、制御工程などが挙げられる。
また、光吸収材飛翔手段、基材、光吸収材供給手段、及びビーム走査手段を一体として光吸収材飛翔ユニットとして扱ってもよい。
光吸収材供給手段としては、光吸収材飛翔手段と被転写媒体との間のレーザビームの光路上に、光吸収材を供給できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収材供給手段としては、例えば、光路上に配置された円筒状の基材を介して光吸収材を供給するようにしてもよい。
具体的には、光吸収材が液体であって、基材に光吸収材を供給する場合には、光吸収材供給手段として供給ローラ及び規制ブレードを設けることが、簡単な構成で光吸収材を基材の表面に一定の平均厚みで供給することができるため好ましい。
この場合、供給ローラは、光吸収材を貯蔵する貯蔵槽に表面が一部浸漬し、光吸収材を表面に担持しながら回転して、基材に当接することにより光吸収材を供給する。規制ブレードは、供給ローラの回転方向における貯蔵槽の下流側に配置され、供給ローラが担持した光吸収材を規制して平均厚みを均一にし、飛翔させる光吸収材の量を安定させる。平均厚みを薄くすることにより、飛翔させる光吸収材の量を低減できるため、光吸収材を飛散が抑制された微小なドットとして被付着物に付着可能とし、網点が太るドットゲインを抑制することができる。なお、規制ブレードは、基材の回転方向における供給ローラの下流側に配置されていてもよい。
また、光吸収材が高粘度である場合には、供給ローラの材質は、基材と確実に接触させるようにする点で、少なくとも表面が弾性を有するものが好ましい。光吸収材が比較的低粘度である場合には、供給ローラとしては、例えば、精密ウェットコーティングで用いられるような、グラビアロール、マイクログラビアロール、フォーワードロールなどが挙げられる。
さらに、供給ローラを設けない光吸収材供給手段としては、貯蔵槽内の光吸収材に基材を直接接触させた後にワイヤーバーなどで余分な光吸収材を掻き取ることにより基材の表面に光吸収材の膜(層)を形成するようにしてもよい。なお、貯蔵槽は、光吸収材供給手段とは別に設け、ホース等で光吸収材を光吸収材供給手段に供給するようにしてもよい。
光吸収材供給工程としては、光吸収材飛翔手段と被付着物との間のレーザビームの光路上に、光吸収材を供給する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材供給手段を用いて好適に行うことができる。
膜厚制御手段としては、例えば、基材表面と所定の間隙を設けて接触するように設置することによって、基材表面に付与した光吸収材の厚みを制御する手段を用いることができる。
図11は、光吸収材供給手段10を含む画像形成装置の構成の一例を説明する図である。
光吸収材供給手段10は、光吸収材11を貯留する貯留槽101と、供給ローラ102と、規制ブレード103と、搬送ローラ104と、シート回収ローラ105を有している。
供給ローラ102は、搬送ローラ104と当接するように配置され、貯留槽101の光吸収材11に一部が浸漬されている。供給ローラ102は、図示を省略する回転駆動部によって、又は搬送ローラ104の回転に従動して、矢印方向(時計回り方向)に回転しながら光吸収材11を周面に付着させる。
供給ローラ102の周面に付着した光吸収材11は、規制ブレード103により平均厚みを均一にされる。その後、基材表面に付与した光吸収材が膜厚制御手段106を通過することで、基材表面に付与した光吸収材の膜厚が、膜厚制御手段106と基材表面との間隙の距離と等しくなるようにそぎ落とされる。このようにして、膜厚制御手段106と基材表面との間隙を制御することで所望の膜厚の光吸収材を基材表面に付与することができる。
その後、搬送ローラ104から送出される透明シート12上に光吸収材11を転移することにより膜(層)として供給される。透明シート12は、供給された光吸収材11を、被付着物3に対向する側の面に分子間力によって担持する。なお、エア吸着や静電吸着によって、透明シート12による光吸収材11の担持力を補強してもよい。
搬送ローラ104には透明シート12が予め巻き付けられており、巻き付けられた透明シート12の一端は、搬送ローラ104から+y方向に離間して配置されたシート回収ローラ105に接続されている。
モータ等の駆動部による回転によって、シート回収ローラ105は透明シート12を巻き取り、この巻き取り動作により透明シート12は+y方向に走行する。搬送ローラ104は、透明シート12の走行に従動回転するとともに、巻き付けられている透明シート12を、シート回収ローラ105に向けて送り出す。
透明シート12は、光吸収材11を担持して走行し、搬送ローラ104とシート回収ローラ105の間に配置された光照射部2に対向する位置で、光照射部2により飛翔用レーザビーム211が照射される。そして、光吸収材11を透明シート12から飛翔させる処理と、被付着物3に固定する処理が行われる。
透明シート12に供給された光吸収材11は、搬送ローラ104が回転することにより、飛翔用レーザビーム211が照射される位置に連続的に供給される。処理後に、光吸収材11は、透明シート12ごとシート回収ローラ105によって回収される。
このように、光吸収材の膜厚を膜厚制御手段で制御することができる。上述したように、本発明においては、基材表面に配した光吸収材の膜厚を制御することにより、光吸収材の液滴径を制御することが可能となる。これにより、所望の解像度を得ることができ、スループットを制御することができる。光吸収材を供給する手段の一つとして、膜厚制御手段を用いることにより解像度を制御することができる。
ビーム走査手段としては、レーザビームを光吸収材に対して走査可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビーム走査手段は、光吸収材飛翔手段から照射されたレーザビームを光吸収材に向けて反射させる反射鏡と、反射鏡の角度及び位置を変化させてレーザビームを光吸収材に対して走査させる反射鏡駆動部とを有するようにしてもよい。
ビーム走査工程としては、レーザビームを光吸収材に走査させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーム走査手段を用いて好適に行うことができる。
被付着物搬送手段としては、被付着物を搬送することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラ対などが挙げられる。
被付着物搬送工程としては、被付着物を搬送する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被付着物搬送手段を用いて好適に行うことができる。
定着手段としては、被付着物に付着させた光吸収材を定着させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱加圧部材を用いた熱圧着方式のものなどが挙げられる。
加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラ、加圧ローラ、加熱ローラ及び加圧ローラを組み合わせたものなどが挙げられる。他の加熱加圧部材としては、例えば、これらに定着ベルトを組合せたもの、これらのうち加熱ローラを加熱ブロックに代えたものなどが挙げられる。
加圧ローラとしては、被付着物搬送手段により搬送される被付着物と等速度で加圧面が移動するものが、擦れによる画像劣化を抑制する点で、好ましい。この中でも、表面近傍に弾性層を形成したものが、被付着物に対して接触加圧しやすい点で、より好ましい。更に、最表面にシリコーン系の撥水性材料やフッ素化合物などの低表面エネルギーの素材で撥水性表面層を形成した加圧ローラが、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、特に好ましい。
シリコーン系の撥水性材料からなる撥水性表面層としては、例えば、シリコーン系離型剤の皮膜、シリコーンオイル又は各種変性シリコーンオイルの焼付皮膜、シリコーンワニスの皮膜、シリコーンゴムの皮膜、シリコーンゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
フッ素化合物からなる撥水性表面層としては、フッ素樹脂の皮膜、有機フッ素化合物の皮膜、フッ素オイルの焼付皮膜又は吸着膜、フッ素ゴムの皮膜、若しくはフッ素ゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
加熱ローラにおける加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
定着ベルトとしては、耐熱性があり、機械的強度が高ければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイミド、PET、PEN等のフィルムなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、定着ベルトとしては、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、加圧ローラの最表面を形成する材料と同じものを用いることが好ましい。定着ベルトは、肉厚を薄くすることができることにより、ベルト自体を加熱するエネルギーを小さくできるため、電源を入れてすぐに使用することができる。このときの温度及び圧力は定着させる光吸収材の組成により変化するが、温度としては200℃以下が省エネの観点から好ましく、圧力としては1kg/cm以下が装置の剛性の点で好ましい。
なお、2種以上の光吸収材を用いる場合は、各色の光吸収材が被付着物に付着する毎に定着させてもよく、全種の光吸収材が被付着物に付着して積層された状態で定着させてもよい。
また、光吸収材が非常に高粘度であって、乾燥が遅くなり被付着物に対する付着速度の向上が困難な場合には、被付着物を追加で加熱し、乾燥を促進させてもよい。
更に、光吸収材の被付着物への浸透及び濡れが遅く、付着させた光吸収材が十分に平滑化していない状態で乾燥させた場合、光吸収材が付着した被付着物の表面が粗くなるため、被付着物の表面の光沢が得られない場合がある。被付着物の表面の光沢を得るためには、加圧して定着させる定着手段とすることにより、被付着物に付着した光吸収材をつぶしながら被付着物に押し込むよう定着させて、被付着物の表面粗さを小さくするようにしてもよい。
定着手段は、特に粉体を押し固めて形成した固体の光吸収材を用いた場合などに、被付着物に定着させるために必要となる。なお、必要に応じて、定着手段とともに公知の光定着器を用いてもよい。
定着工程としては、被付着物に付着させた光吸収材を、被付着物に定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、定着手段を用いて好適に行うことができる。
制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
なお、光吸収材飛翔手段、光吸収材供給手段、及びビーム走査手段を一体として光吸収材飛翔ユニットとして扱ってもよい。
例えば、光吸収材飛翔ユニットを画像形成装置に4つ設け、プロセスカラーであるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの着色剤を飛翔させるようにしてもよい。光吸収材の色数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて光吸収材飛翔ユニットの数を増減させてもよい。また、記録媒体の搬送方向における、プロセスカラーの光吸収材を有する光吸収材飛翔ユニットの上流側に、白色の光吸収材を有する光吸収材飛翔ユニットを配置することで、白色隠蔽層を設けることが可能となるため、透明な記録媒体に色再現性に優れた画像を形成できる。ただし、特にイエロー、白色、透明の光吸収材においては、レーザビームの波長の光の透過率(吸光度)が適正となるように、レーザ光源を、例えば、ブルーレーザビーム、紫外線レーザビームなどとすることが好ましい。
さらに、本発明の画像形成装置では、高粘度の光吸収材を用いることができるので、記録媒体上に順次異なる色の光吸収材を重ねて画像を形成しても、光吸収材が滲み出して交じり合うブリーディングの発生を抑制できるため、高画質のカラー画像を得ることができる。
画像形成装置の小型化などを目的として、光吸収材飛翔ユニットを1つだけ設け、供給ローラ及び着色剤担持体に供給する光吸収材自体を切り替えて複数色の画像を形成するようにしてもよい。
(立体造形物の製造装置、立体造形物の製造方法)
本発明の立体造形物の製造装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段と、
飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、
転写した光吸収材を硬化する硬化手段と、を有し、
光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下であり、
硬化した光吸収材の上に、光吸収材飛翔手段により光吸収材を飛翔させた後、硬化手段により未硬化の光吸収材を硬化することを繰り返して、立体造形物を製造する。また、本発明の立体造形物の製造装置は、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の立体造形物の製造方法は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔工程と、
飛翔させた光吸収材を被転写媒体に転写する転写工程と、
転写した光吸収材を硬化する硬化工程と、を含み、
光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下であり、
硬化した光吸収材の上に、光吸収材飛翔工程において光吸収材を飛翔させた後、硬化工程において未硬化の光吸収材を硬化することを繰り返して、立体造形物を製造する。また、本発明の立体造形物の製造方法は、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の立体造形物の製造装置及び立体造形物の製造方法は、本発明の画像形成装置及び画像形成方法において、硬化手段及び硬化工程を有すること、硬化した光吸収材の上に、光吸収材飛翔工程において光吸収材を飛翔させた後、硬化工程において未硬化の光吸収材を硬化することを繰り返して、立体造形物を製造すること以外は本発明の画像形成装置及び画像形成方法と同様とすることができるため、説明を省略する。
<硬化手段、硬化工程>
硬化手段は、転写した光吸収材を硬化する手段である。
硬化工程は、転写した光吸収材を硬化する工程である。
硬化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材が紫外線硬化性材料であれば、紫外線照射器などが挙げられる。
本発明の立体造形物の製造装置においては、例えば、既に硬化した光吸収材の上に、光吸収材飛翔手段により光吸収材を飛翔させた後、硬化手段により未硬化の(まだ硬化していない)光吸収材を硬化することを繰り返すことにより、立体造形物を製造することができる。
<その他の手段、その他の工程>
その他の手段としては、例えば、光吸収材供給手段、立体造形ヘッドユニット走査手段、基板位置調整手段、制御手段などが挙げられる。
その他の工程としては、例えば、光吸収材供給工程、立体造形ヘッドユニット走査工程、基板位置調整工程、制御工程などが挙げられる。
<<光吸収材供給手段>>
立体造形物の製造装置における光吸収材供給手段は、光吸収材が硬化手段により硬化可能なもの(立体造形剤)であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は、前述の画像形成手段における光吸収材供給手段と同様であるため、その説明を省略する。
<<立体造形ヘッドユニット走査手段>>
立体造形ヘッドユニット走査手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材飛翔ユニットと硬化手段とを一体とした立体造形ヘッドユニットを造形物支持基板上で装置の幅方向(X軸)に走査させてもよい。なお、立体造形ヘッドユニットは、例えば、光吸収材飛翔ユニットが付与した紫外線硬化性の光吸収材を硬化手段により硬化させるものとすることができる。また、立体造形ヘッドユニットは複数設けるようにしてもよい。
<<基板位置調整手段>>
基板位置調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、装置の奥行き方向(Y軸)及び高さ方向(Z軸)に造形物支持基板の位置を調整可能な基体(ステージ)としてもよい。
<<制御手段>>
制御手段は、前述した画像形成装置の制御手段と同様であるため、その説明を省略する。
立体造形剤としては、硬化手段により硬化可能な光吸収材であれば特に制限はなく、硬化性材料を含むことが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
<<硬化性材料>>
硬化性材料としては、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)の照射、加熱などにより重合反応を生起し硬化する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物、熱硬化性化合物などが挙げられる。これらの中でも、常温で液体の材料が好ましい。
活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子構造中にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
<<その他の成分>>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶剤、光重合開始剤、界面活性剤、着色剤、安定化剤、水溶性樹脂、低沸点アルコール、表面処理剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
-造形物支持基板-
造形物支持基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板位置調整手段によりY軸及びZ軸の位置が調整されるようにしてもよい。
造形物支持基板と基材との間隙としては、被付着物と基材との間隙と同じであるので、その説明を省略する。
次に、本発明における立体造形物の製造装置の一例について図面を参照して説明する。
立体造形物の製造装置300について、図12を参照して説明する。図12は、立体造形物の製造装置300の構成の一例を説明する図である。また、立体造形物の製造装置300において、図11に示した光吸収材供給手段10を含む画像形成装置と同様とすることができる手段等については、説明を省略する。
上述したように、図11に示した光吸収材供給手段10を含む画像形成装置においては、被被付着物3が+y方向に移動することによって画像を形成する。一方、図12に示した立体造形物の製造装置300においては、被被付着物3が、±x、±y方向に移動可能に制御されて2次元の描画(2次元造形層)の形成を行い、さらに被被付着物3がz方向に移動可能に制御されることで、既に被被付着物3に付着している光吸収材の上に、光吸収材を積層していくことで立体造形物400を製造する。
このとき、x方向とy方向に2次元造形層を形成する毎に、被被付着物3に付着している光吸収材に対して、加熱硬化又は光硬化を行うことによって、光吸収材を硬化(固定化)させてから、次の2次元造形層を積層することが好ましい。硬化させずに連続的に積層することも可能であるが、硬化した方が積層時の造形物の乱れが発生せず、高精度な造形物を形成することができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<光吸収材の調製>
光吸収材の材料として以下のインキ及び添加剤を使用した。
・インキOF:ベストキュア UV CORE TYPE-A紅(株式会社T&K TOKA製)
・インキFL:ベストキュア UV フレキソ 500 紅(株式会社T&K TOKA製)
・添加剤RE:ベストキュア UV DG レジウサー(株式会社T&K TOKA製) UV硬化性モノマー添加剤
・添加剤CO:ベストキュア NO.2 UV コンテックス(株式会社T&K TOKA製) シリカ配合UV硬化性モノマー添加剤
上記の4種のインキ及び添加剤を、下記の表1に示す割合で混合し、インクA~インクIの9種類の光吸収材を調整した。なお、インキ及び添加剤の混合は、各種材料の混合物を遠心式攪拌脱泡装置(あわとり練太郎ARV930TWIN;株式会社 シンキー製)を用いて、1400rpmで2分間攪拌することにより行った。
Figure 2022026065000003
続いて、調製したインクA~インクIについて、レオメータにより動的粘弾性の応力依存性を測定した。より具体的には、1Pa~1,000Paの範囲で、インクにおける応力(応力条件)を変更しながら、基材に配されたときの状態の当該インクの動的粘弾性の応力依存性(インクに周期的な変形(ひずみ)を与えたときの、それによって生じる応力と位相差)を測定した。動的粘弾性の測定に用いたレオメータの詳細と測定条件を、以下に示す。
<レオメータ>
・本体:HAAKE RheoStress600(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
・センサ:Φ35mm/1°-Tiコーンセンサ
<測定条件>
・インクに周期的な変形(ひずみ)を与える際の周波数:1Hz
・応力条件の範囲:1Pa~1,000Pa
・測定温度:25℃
そして、インクA~インクIについて、レオメータによる動的粘弾性の応力依存性の測定の結果から、それぞれのインクにおける、1,000Paの応力条件での貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、複素粘度値(η)、損失正接(tanδ)を求めた。求めた各特性値の値を、下記の表2に示す。
Figure 2022026065000004
さらに、インクA~インクIについて、レオメータによる動的粘弾性の応力依存性の測定の結果から、それぞれのインクにおける、1,000Paの応力条件での損失正接A(表2におけるtanδと同じもの)と、100Paの応力条件での損失正接Bを求めた。また、求めた損失正接Aと損失正接Bに基づいて、〔損失正接A / 損失正接B〕の値を算出した。結果を、下記の表3に示す。
Figure 2022026065000005
ここで、図13A及び図13Bに、インクCとインクIについて、1Pa~1,000Paの圧力条件での動的粘弾性の応力依存性を測定結果から求めた、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値の変化を示す。
図13Aは、インクCにおける1Pa~1,000Paの圧力条件での、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値の変化を示す図である。図13Aに示すように、インクCにおいては、応力条件(作用する応力の大きさ)が変化しても、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値は、あまり変化しなかった。
また、表2及び図13Aに示すように、インクCは、1,000Paの応力条件における複素粘度値(η)が、12.89Pa・sであり、10Pa・sより大きいため、本発明における光吸収材の要件を満たさない例である。
図13Bは、インクIにおける1Pa~1,000Paの圧力条件での、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値の変化を示す図である。図13Bに示すように、インクIにおいては、応力条件(作用する応力の大きさ)が大きくなると、貯蔵弾性率(G′)、損失弾性率(G′′)、及び複素粘度値(η)の値が、急激に低下することがわかった。
また、表2、表3及び図13Bに示すように、インクIは、1,000Paの応力条件における複素粘度値(η)が、2.925Pa・sであり、更に、100Paの応力条件における損失正接(tanδ)が、1.2であるため、本発明における光吸収材の要件を満たす好適な例である。また、インクIにおいては、1,000Paの応力条件での損失正接Aと、100Paの応力条件での損失正接Bとの比は、〔損失正接A / 損失正接B =164 ≧ 10〕となり、本発明における好適な条件を満たす。
続いて、インクA~インクIについて、レオメータによる動的粘弾性の応力依存性を測定の結果から、各インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値とにおける決定係数を求めた。決定係数は、インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値とにおける、最小二乗法を用いて特定した近似直線における決定係数を用いた。
そしては、決定係数が0.990未満となるインクを、応力の常用対数値と、ひずみの常用対数値との関係が非線形であるインクとし、決定係数が0.990以上のインクを応力の常用対数値と、ひずみの常用対数値との関係が線形であるインクとした。各インクにおける決定係数の値と線形性を、下記の表4に示す。
Figure 2022026065000006
ここで、図14に、インクCとインクIについて、インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値との関係を示すグラフを示す。
図14に示すように、インクC(図14中の(a))についての近似直線における決定係数(R)は、0.9979(小数点以下4位で四捨五入すると0.998)となり、インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値との関係は線形である。一方、インクI(図14中の(b))についての近似直線における決定係数(R)は、0.9689(小数点以下4位で四捨五入すると0.969)となり、インクにおける応力の常用対数値と、インクにおけるひずみの常用対数値との関係は非線形である(極値を持つ)ため、本発明における好適な条件を満たす。
次いで、インクA~インクIを光吸収材として用いて、図10A及び図10Bに示したような装置により、ドットの画像を形成した。以下では、ドットの画像の形成について、詳細に説明する。
基材としてのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製、マイクロスライドガラスS7213;532nm波長光の透過率が99%)上に、平均厚み20μmとしたインクの膜を、バーコータにより形成した。
次に、インクを塗布した基材の表面を被付着物(被転写媒体)と対向させ、光吸収材の裏面から円環レーザビームを垂直に照射できるように基材を設置した。
被付着物(被転写媒体)としては、インクジェット用光沢紙を用い、被付着物(被転写媒体)と光吸収材との間隙(ギャップ)を1.0mmとした。
レーザビームとしては、532nmの波長のナノ秒レーザ光源(パルスの時間幅がナノ秒オーダーのレーザ光源)、焦点距離100mmの集光レンズを用い、外径Φ70μm、内径Φ50μmの円環レーザビームを照射した。そして、ガルバノスキャナの走査速度100mm/sとして、飛翔させたインクの間隔が200μmとなるように1ショット露光(一度のレーザビームの照射で、一つの飛翔体を発生させること)を行い、ドットの画像(ドットの転写像)を形成した。
上記のドットの画像の形成を、インクA~インクIのそれぞれについて行った。
また、レーザビームの照射エネルギーは、各インクについての最適な照射エネルギーを検討して、最適な照射エネルギーにより、各インクを飛翔させてドットの画像を形成した。さらに、光吸収材飛翔手段が照射するレーザビームのエネルギーの変化が、光吸収材の飛翔状態に及ぼす影響を調べるため、上記の各インクについての最適な照射エネルギーを1.2倍にした照射エネルギー(+20%)として、各インクを飛翔させてドットの画像を形成した。
<インクの飛散についての評価>
飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)を、図15A~図15Cに示す。
図15Aは、インクEを飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)を示す写真である。図15Aに示すように、インクEを飛翔させて形成したドットの画像は、インクの飛散がほとんどなく、非常に優れた着弾位置精度であることがわかる。
図15Bは、インクDを飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)を示す写真である。図15Bに示すように、インクDを飛翔させて形成したドットの画像は、インクの飛散が多少生じているものの、着弾位置精度としては十分であり実用可能である。
図15Cは、インクGを飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)を示す写真である。図15Cに示すように、インクGを飛翔させて形成したドットの画像は、インクの飛散が非常に多く生じており、着弾位置精度が悪いことがわかる。
そして、インクA~インクIのそれぞれに知手、飛翔させたインクが付着した被付着物の付着状態(ドットの画像)を評価した。
ドット画像の評価においては、以下の基準に基づいて、目視による評価を行った。
・「○」:インクの飛散がほとんどなく、良好な着弾位置精度である
・「△」:インクの飛散が多少あるものの、十分な着弾位置精度である
・「×」:インクの飛散が非常に多く生じ、着弾位置精度が不十分である
評価の結果を下記の表5に示す。
Figure 2022026065000007
<考察>
ここで、各インクについて、本発明の実施例となる(インクにおける動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下となる)インクと、本発明の比較例となる(複素粘度値が10Pa・sより大きくなる)インクとにおける、調製方法の差異(インクの組成の差異)について考察する。
本発明の実施例となるインクA、B、D、E、F、H、及びIにおいては、以下の理由から、1,000Paの応力条件における複素粘度値が10Pa・s以下となったと考えられる。
インクAは、ポリマー分子量が小さめの粘度が小さいポリマーが主体の構成であり、インクBは、インクAに分子量の大きいポリマーによる粘度の高いインクを配合したものである。インクC、D、及びEは、分子量の大きいポリマーによる粘度の高いインクに分子量の小さいモノマーを配合し粘度を適正に調整したものである。インクFは、インクEにシリカ配合の添加剤を配合することにより、低応力での粘度と高応力での粘度差を大きくしたものである。
インクH及びIは、シリカ配合添加剤の量を多く配合し、低応力時の粘度と高応力時の粘度差をより顕著に制御したものである。
また、本発明の比較例となるインクC及びGにおいては、以下の理由から、1,000Paの応力条件における複素粘度値が10Pa・sより大きくなったと考えられる。
インクC及びGは、上記分子量の大きいポリマーによる粘度の高いインクへの分子量の小さいモノマーの配合量が不足しているため粘度が高すぎて、1,000Paの応力下でも粘度が10Pa・s以下に至らなかったものである。
以上、説明したように、本発明の飛翔体発生装置は、光吸収材を表面に配した基材における、光吸収材が配された側とは反対側の基材の表面にレーザビームを照射することにより、レーザビームの照射方向に光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、光吸収材が、光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である。
こうすることにより、本発明の飛翔体発生装置は、飛翔させた光吸収材の飛散を抑制して対象に着弾させることができる。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、前記レーザビームの照射方向に前記光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、
前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である、
ことを特徴とする飛翔体発生装置である。
<2> 前記光吸収材が、前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた前記複素粘度値が7Pa・s以下である、前記<1>に記載の飛翔体発生装置である。
<3> 前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性を前記レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が20以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<4> 前記光吸収材が、前記光吸収材の動的粘弾性を前記レオメータにより1Paから1,000Paの範囲の応力条件で測定して求めた、前記光吸収材における応力の常用対数値と、前記光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係が非線形である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<5> 前記光吸収材が、前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより100Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が10以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<6> 前記光吸収材が、
前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより測定したとき、
前記動的粘弾性に基づいて求めた、1,000Paの応力条件での損失正接Aと、100Paの応力条件での損失正接Bとが、次の不等式、
前記損失正接A / 前記損失正接B ≧ 10、
を満たす、前記<1>から<5>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<7> 光前記光吸収材飛翔手段が、前記基材と前記光吸収材との界面において、前記レーザビームが照射された領域における外周部に気化領域を発生させる、前記<1>から<6>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<8> 前記光吸収材飛翔手段が、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に円環レーザビームを照射する、前記<1>から<7>のいずれかに記載の飛翔体発生装置である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の飛翔体発生装置と、
前記飛翔体発生装置により飛翔させた前記光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の飛翔体発生装置と、
飛翔させた前記光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、
転写した前記光吸収材を硬化する硬化手段と、を有し、
硬化した前記光吸収材の上に、前記飛翔体発生装置により前記光吸収材を飛翔させた後、前記硬化手段により未硬化の前記光吸収材を硬化することを繰り返して、立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
<11> 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、前記レーザビームの照射方向に前記光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔工程を含み、
前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である、
ことを特徴とする飛翔体発生方法である。
例えば、前記<1>から<8>のいずれかに記載の飛翔体発生装置、前記<9>に記載の画像形成装置、前記<10>に記載の立体造形物の製造装置、及び前記<11>に記載の飛翔体発生装置によれば、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
101 基材
102 光吸収材
103 レーザビーム
国際公開第2016/136722号 米国特許出願公開第2019/0301006号明細書

Claims (11)

  1. 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、前記レーザビームの照射方向に前記光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔手段を有し、
    前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性をレオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である、
    ことを特徴とする飛翔体発生装置。
  2. 前記光吸収材が、前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた前記複素粘度値が7Pa・s以下である、請求項1に記載の飛翔体発生装置。
  3. 前記光吸収材が、前記光吸収材における動的粘弾性を前記レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が20以上である、請求項1から2のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  4. 前記光吸収材が、前記光吸収材の動的粘弾性を前記レオメータにより1Paから1,000Paの範囲の応力条件で測定して求めた、前記光吸収材における応力の常用対数値と、前記光吸収材におけるひずみの常用対数値との関係が非線形である、請求項1から3のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  5. 前記光吸収材が、前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより100Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた損失正接が10以下である、請求項1から4のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  6. 前記光吸収材が、
    前記光吸収材における前記動的粘弾性を前記レオメータにより測定したとき、
    前記動的粘弾性に基づいて求めた、1,000Paの応力条件での損失正接Aと、100Paの応力条件での損失正接Bとが、次の不等式、
    前記損失正接A / 前記損失正接B ≧ 10、
    を満たす、請求項1から5のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  7. 前記光吸収材飛翔手段が、前記基材と前記光吸収材との界面において、前記レーザビームが照射された領域における外周部に気化領域を発生させる、請求項1から6のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  8. 前記光吸収材飛翔手段が、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面に円環レーザビームを照射する、請求項1から7のいずれかに記載の飛翔体発生装置。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の飛翔体発生装置と、
    前記飛翔体発生装置により飛翔させた前記光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
  10. 請求項1から8のいずれかに記載の飛翔体発生装置と、
    飛翔させた前記光吸収材を被転写媒体に転写する転写手段と、
    転写した前記光吸収材を硬化する硬化手段と、を有し、
    硬化した前記光吸収材の上に、前記飛翔体発生装置により前記光吸収材を飛翔させた後、前記硬化手段により未硬化の前記光吸収材を硬化することを繰り返して、立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造装置。
  11. 光吸収材を表面に配した基材における、前記光吸収材が配された側とは反対側の前記基材の表面にレーザビームを照射することにより、前記レーザビームの照射方向に前記光吸収材を飛翔させる光吸収材飛翔工程を含み、
    前記光吸収材における動的粘弾性を、レオメータにより1,000Paの応力条件で測定したとき、前記動的粘弾性に基づいて求めた複素粘度値が10Pa・s以下である、
    ことを特徴とする飛翔体発生方法。

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