本発明に係る食道カテーテルは、左心房の肺静脈付近の組織を加熱または冷却により壊死させるカテーテルアブレーションが行われる際に、患者の食道内に挿入および配置されるカテーテルである。カテーテルアブレーション時に食道カテーテルを食道内に配置する主な目的として、下記の第1および第2の目的が挙げられる。
第1の目的は、カテーテルアブレーション時に変動する食道壁の温度を測定することである。心臓と食道とは近い位置にあり、特にカテーテルアブレーションにおいて加熱対象または冷却対象となる左心房は食道と近接して位置している。このため、カテーテルアブレーションにおける加熱または冷却による温度変動は食道にも伝わってしまい、食道に障害が生じてしまうおそれがある。そのため、カテーテルアブレーションと同時に、食道カテーテルで食道壁の温度を把握することが重要となる。
第2の目的は、食道ペーシングを行って、異常電気信号の発生箇所を活性化させることである。カテーテルアブレーションでは、異常電気信号が発生している頻脈状態下で心臓の異常伝導路を確認しながら、加熱または冷却により壊死させる組織の特定が行われる。ただし、異常電気信号は常に発生しているわけではないため、カテーテルアブレーション時に不整脈が発生していない場合、加熱または冷却により壊死させる組織を正確に特定することが困難となる。このような場合に、食道カテーテルの電極間において電気信号を発信し、心臓を刺激する食道ペーシングを行って、治療対象の組織を正確に特定することができるようになる。
本発明に係る食道カテーテルは、カテーテルチューブの遠位側に、食道内の温度を測定するための温度測定用電極および/またはペーシングを行うためのペーシング用電極を含む複数の電極を備えるとともに、カテーテルチューブ内に、電極に接続された導線を挿通させるための導線用ルーメンと流体を流通させるための流体流通用ルーメンとが形成されており、流体流通用ルーメン内の流体を食道内へ放出するための流体流通孔が形成されている。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態における食道カテーテルについて説明する。
まず、本発明の実施形態における食道カテーテルの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態における食道カテーテルの概略構成を示す正面図である。図2は、図1に示す食道カテーテルを構成するカテーテルチューブの遠位側の部分拡大図である。
なお、本明細書では、説明を明瞭にするため、食道カテーテル使用時に患者の体内に挿入される側を食道カテーテルの遠位側と定義し、患者の体外に露出される側を食道カテーテルの近位側と定義する。
図1に示すように、本実施形態における食道カテーテル100は、カテーテルチューブ110、分岐部150、温度測定用コネクタ160、ペーシング用コネクタ170、流体供給/吸引ポート180を概略備えて構成されている。
後述するように、カテーテルチューブ110の遠位側には、複数のリング状部材121~129が設けられている。本明細書では、カテーテルチューブ110の遠位側に設けられている複数のリング状部材121~129の軸方向の領域全体、すなわち、最遠位側に配置されているリング状部材121の遠位側近傍と最近位側に配置されているリング状部材129の近位側近傍との軸方向間の領域を電極群配置領域Rと呼ぶ。
カテーテルチューブ110は、可撓性の長尺部材により構成されている。カテーテルチューブ110の遠位側は、カテーテルアブレーション時に、例えば経鼻的アプローチにより患者の体内に挿入されて食道内に配置される。
カテーテルチューブ110の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド等の合成樹脂を用いることができる。また、カテーテルチューブ110の軸方向の長さは、例えば患者の鼻腔から挿入された際に電極群配置領域Rが心臓のアブレーション部周辺(心臓の裏側に位置する食道内)に配置可能な長さであればよく、一例として500~1200mmである。また、カテーテルチューブ110の外径は、例えば患者の鼻腔に挿入可能な太さであればよく、一例として1.3~4.0mmである。
カテーテルチューブ110は、その内部に複数のルーメンが長尺方向に沿って形成されたマルチルーメン構造を有している。図3を参照しながら、カテーテルチューブの遠位側の内部構造について説明する。図3は、図2におけるA-A断面図である。
図3に示すように、カテーテルチューブ110の内部には、導線113を挿通するための導線用ルーメン111と、流体を流通させるための流体流通用ルーメン112との少なくとも2つのルーメンが軸方向に沿って形成されている。導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112は互いに離隔した空間であり、流体流通用ルーメン112内の流体が導線用ルーメン111内に流れ込まないようになっている。
導線用ルーメン111は、カテーテルチューブ110内に挿通される複数の導線113の挿通路として使用される。カテーテルチューブ110内に挿通される各導線113は、一端がカテーテルチューブ110の遠位側に設けられた各リング状部材121~129により構成された電極に接続されており、他端が温度測定用コネクタ160またはペーシング用コネクタ170に接続されている。導線用ルーメン111内には複数の導線113がカテーテルチューブ110の軸方向に延在しているが、導線113間で通電してショートすることを防止するため、各導線113の外周面は絶縁性の樹脂により被覆されている。
流体流通用ルーメン112は、カテーテルアブレーション時に、アブレーション部周辺の食道壁や各リング状部材121~129により構成された電極を適切な温度に保つための温度制御媒体としての流体を流通させる流通路として使用される。
なお、導線用ルーメン111内に流体が流れ込んでしまうと、導線用ルーメン111内に露出する各リング状部材121~129の内周面(電極部)の抵抗値が変わってしまい、電極による温度測定やペーシングが適切に行われなくなる。そのため、導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112を互いに離隔した空間として形成して、流体流通用ルーメン112内の流体が導線用ルーメン111内に流れ込まないようにするとともに、さらに、カテーテルチューブ110外部の流体(食道内の流体)が導線用ルーメン111内に流れ込むことを防止する適切なシーリングが施されていることが好ましい。
分岐部150は、カテーテルチューブ110と各種コネクタおよび各種ポートとを接続するための部材である。具体的には、分岐部150の遠位側にはカテーテルチューブ110の近位端が接続され、分岐部150の近位側には温度測定用コネクタ160、ペーシング用コネクタ170、流体供給/吸引ポート180が接続された構成となっている。
詳細な構成については図示省略するが、分岐部150は、カテーテルチューブ110内の導線用ルーメン111と温度測定用コネクタ160およびペーシング用コネクタ170とを接続し、カテーテルチューブ110内の流体流通用ルーメン112と流体供給/吸引ポート180とを接続するように構成されている。なお、分岐部150においては、カテーテルチューブ110内の流体流通用ルーメン112と流体供給/吸引ポート180とが、内部の流体が漏れないように連結されており、特に、流体流通用ルーメン112内の流体が導線用ルーメン111内に流入しないように構成されている。
温度測定用コネクタ160には、温度測定用電極(温度センサー用電極)を構成するリング状部材(リング状部材122~128)に接続されている複数の導線113が導線用ルーメン111および分岐部150を経由して繋がっている。温度測定用コネクタ160には、図示省略されている温度表示装置が接続可能であり、温度表示装置において、各温度測定用電極で測定された温度が表示されるようになっている。
ペーシング用コネクタ170には、ペーシング用電極を構成するリング状部材(リング状部材121、122、128、129)に接続されている複数の導線113が導線用ルーメン111および分岐部150を経由して繋がっている。ペーシング用コネクタ170には、図示省略されているペーシング装置が接続可能であり、ペーシング装置で発生させた電気的な信号が1つのペーシング用電極から他のペーシング用電極へ組織を経由して流れることにより、心臓に電気的な刺激を与えることができるようになっている。
流体供給/吸引ポート180には、図示省略されているポンプ装置が接続可能であり、ポンプ装置による流体排出および流体吸引により、流体が流体流通用ルーメン112内に導出および導入されるようになっている。ポンプ装置による流体排出が行われると、流体流通用ルーメン112内の流体は、遠位端側に設けられた流体流通孔131~133を通じてカテーテルチューブ110の外部(食道内)へ排出されるようになっている。また、ポンプ装置による流体吸引が行われると、カテーテルチューブ110の外部(食道内)の流体は、遠位端側に設けられた流体流通孔131~133を通じて流体流通用ルーメン112内へ吸引されるようになっている。後述するように、流体流通孔131~133は、電極群配置領域Rの略中央部Mに向かうように配向されていることを特徴とする。
流体流通用ルーメン112内の流体は、カテーテルアブレーション時に温度変動するアブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度に制御するための温度制御媒体である。アブレーション部周辺の食道壁に向けて排出される流体は、過度に昇温または降温した部位を通常の体温付近まで戻す冷却用媒体または加熱用媒体であり、流体の温度は10~40℃に設定される。アブレーション部周辺に向けて流体を排出することで、アブレーション部周辺の食道壁、アブレーション部周辺に配置される食道カテーテルの電極等が適切な温度となるように冷却または加熱することができる。流体は、人体に害の無い物質であれば特に限定されず、例えば、生理食塩水等の液体や炭酸ガス等の気体を用いることができる。
また、図示省略されているが、分岐部150には、カテーテルチューブ110内にスタイレットを挿通させるためのスタイレット挿入口が設けられていてもよい。スタイレットは、金属製または合成樹脂製の可撓性および形状保持性を備えた線状体である。スタイレットは、食道カテーテルを鼻腔から食道内に挿入する際に、カテーテルチューブ110の遠位側の形状を安定させるとともに、カテーテルチューブ110のプッシャビリティを向上させる目的で使用される。
カテーテルチューブ110内には、スタイレットを挿通させるための空間が設けられている。本実施形態では、例えば図3に示すように、導線用ルーメン111内に軸方向に延びるコイル状部材114が挿通されており、このコイル状部材114の内部をスタイレット挿通空間115として利用できるようになっている。スタイレット挿通空間115を画定するコイル状部材114は、例えば線材が巻回されて構成されている。コイル状部材114は、カテーテルチューブ110の断面径方向および軸方向のどちらの方向に力が作用しても、その形状を柔軟に適合させることができるようになっている。
なお、カテーテルチューブ110の遠位側を患者の食道内に挿入する際、カテーテルチューブ110内へスタイレットを挿入し、カテーテルチューブ110内からスタイレットを抜去する動作が行われる。仮にコイル状部材114を設けずに導線用ルーメン111内にスタイレットを挿通させた場合、挿入および抜去が繰り返し行われるスタイレットが導線113と接触して、導線の被覆が剥がれたり断線したりしてしまうおそれがある。こうした問題を解消するため、コイル状部材114によりスタイレット挿通空間115を画定することで、コイル状部材114を隔離壁としてスタイレットと導線113との接触を防止することができる。
なお、本実施形態では、図3に示すようにカテーテルチューブ110の内部に導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112が形成されており、導線用ルーメン111内にコイル状部材114を配置することで、スタイレット挿通空間115が画定されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、流体流通用ルーメン112内にスタイレットを挿通させる構成であってもよい。さらに、図4に示すように、カテーテルチューブ110の内部に導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112に加えて、スタイレットを挿通させるためのスタイレット挿通用ルーメン116が形成されている構成であってもよい。
また、本実施形態では、図3に示すように断面略円状の導線用ルーメン111および断面略弓状の流体流通用ルーメン112が形成されているが、導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112の形状は特に限定されない。例えば、図5に示すように、導線113を挿通するための導線用ルーメン111が断面略弓状に形成され、流体流通用ルーメン112が断面略円状に形成されてもよい。この場合においても、スタイレットを挿通させるために、導線用ルーメン111内にコイル状部材114を配置した構成であってもよく、あるいは、流体流通用ルーメン112内にスタイレットを挿通させる構成であってもよい。
カテーテルチューブ110の最遠位端には、先端チップ140が設けられている。先端チップ140の形状や材質は特に限定されないが、カテーテルチューブ110を患者の鼻腔から食道内に挿入する際の挿入性の向上や挿入時の体腔保護を目的として、先端チップ140として丸みを帯びた軟質性の部材や金属チップを用いることができる。
カテーテルチューブ110の遠位側には、カテーテルチューブ110の外周面を取り囲むように複数のリング状部材121~129が設けられている。リング状部材121~129には、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、タングステン、銅、白金等の金属を用いることができる。金属製のリング状部材121~129は、X線透視下で視認可能なマーカーとして用いることもできる。
なお、リング状部材121~129の個数やサイズ、リング状部材間の離隔距離は特に限定されない。一例として、2~10個のリング状部材を設けることができる。リング状部材の外径はカテーテルチューブ110の外径と同一とするかあるいはわずかに大きくすることができる。図1~図9に示す構成では、リング状部材の外径がカテーテルチューブ110の外径よりわずかに大きく、リング状部材がカテーテルチューブ110の外周面から膨らんでいるが、後述する図10に示す構成のように、リング状部材の外径がカテーテルチューブ110の外径と同一であってもよい。リング状部材の幅(軸方向の長さ)は1~10mmとすることができる。複数のリング状部材間の軸方向の離隔距離は、1~20mmとすることができる。
本実施形態では、9個のリング状部材121~129が設けられており、最遠位側のリング状部材121の幅を10mmとし、その他のリング状部材122~129の幅を5mmとしている。また、リング状部材121とリング状部材122との軸方向の離隔距離を10mmとし、各リング状部材122~128の軸方向の離隔距離を3mmとし、リング状部材128とリング状部材129との軸方向の離隔距離を10mmとしている。
複数のリング状部材121~129は、導線用ルーメン111内に挿通されている導線113の端部が接続されており、電極としての機能を有している。導線用ルーメン111内の導線113の端部がリング状部材121~129の内周面に接続可能となるように、カテーテルチューブ110には、リング状部材121~129の配置位置に導線挿通孔(後述する図6、図7、図8を参照)が設けられている。導線113は、各リング状部材121~129の内周面に導線挿通孔を通じて案内されており、溶接等により接続固定されている。なお、カテーテルチューブ110の外周側(食道内)に存在する流体が導線挿通孔を通じて導線用ルーメン111内に流入しないようにするため、リング状部材121~129は、導線挿通孔を密閉するように設けられている。
複数のリング状部材121~129は、例えば、温度測定用電極、ペーシング用電極、並びに、温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極を構成する。
温度測定用電極は、例えば2種類の異なる金属導体を用いたT熱電対により構成される。温度測定用電極としてのリング状部材には2本の導線113が接続される。カテーテルアブレーションでは心臓組織の加熱または冷却が行われるが、このとき、心臓に近接した食道が加熱または冷却されてしまい、食道潰瘍や食道閉塞等の食道障害が惹起される可能性がある。温度測定用電極により食道内の温度を測定することで、食道内の温度を管理することができるようになる。
ペーシング用電極は、食道ペーシングを可能とする電極である。食道ペーシングは、ペーシング用電極から心臓を電気的に刺激して心臓内の異常電気信号の発生源を意図的に活性化させ、該発生源を特定するものであり、複数のペーシング用電極間で組織を通じて電流が流れることで、心臓に刺激を与えることができるようになっている。ペーシング用電極としてのリング状部材には1本の導線113が接続される。
また、温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極は、上記の温度測定用電極およびペーシング用電極の両方の構成を有している。温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極には、温度測定用電極として機能するための2本の導線113およびペーシング用電極として機能するための1本の導線113の合計3本の導線113が接続される。
複数のリング状部材121~129の各々に対して、温度測定用電極、ペーシング用電極、並びに、温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極のうちのどの機能を持たせるかは任意に設定可能である。本実施形態では、最遠位側のリング状部材121および最近位側のリング状部材129がペーシング用電極を構成し、リング状部材122およびリング状部材128が温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極を構成し、リング状部材123~127が温度測定用電極を構成している。
また、カテーテルチューブ110の遠位側には、流体流通孔131~133が設けられている。流体流通孔131~133は、流体供給/吸引ポートから導入される流体を外部に流通させるための貫通孔であり、図6~図8を参照しながら後述するように、流体流通用ルーメン112に導通するように形成されている。流体流通孔131~133の個数や位置は特に限定されないが、本実施形態では、リング状部材122の遠位側に流体流通孔131が形成されており、リング状部材125の近位側に流体流通孔132が形成されており、リング状部材129の近位側に流体流通孔133が形成されている。
次に、図6、図7および図8を参照しながら、カテーテルチューブの遠位側の内部構造について説明する。図6、図7および図8には、カテーテルチューブ110の遠位側(電極群配置領域R周辺)の軸方向に沿った断面が図示されている。
図6について説明する。図6は、図2に示す領域X(リング状部材122を含む領域)の断面図である。図6には、リング状部材122およびカテーテルチューブ110の断面が図示されている。カテーテルチューブ110の内部には、導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112の2つのルーメンが形成されており、導線用ルーメン111内に複数の導線113およびスタイレット挿通空間115を画定するコイル状部材114が挿通されている。
図6に示すように、リング状部材122の配置位置には導線挿通孔142が設けられている。導線挿通孔142は、導線用ルーメン111の内腔とカテーテルチューブ110の外周側とを繋ぐ貫通孔である。導線挿通孔142は、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部142aと、導線用ルーメン111の周壁(内腔)で開口する導線用ルーメン内側開口部142bとを有している。
本実施形態では、リング状部材122は、温度測定用電極およびペーシング用電極の両方として機能できるようになっている。このため、温度測定用電極として機能するための2本の導線113およびペーシング用電極として機能するための1本の導線113の合計3本の導線113が、導線用ルーメン111内から導線挿通孔142を通じてリング状部材122の内周面に接続されている。なお、カテーテルチューブ110の外周側(食道内)に存在する流体が導線挿通孔142を通じて導線用ルーメン111内に流入しないようにするため、リング状部材122は導線挿通孔142の外周側開口部142aを密閉するように設けられている。
図6に示すように、カテーテルチューブ110には、リング状部材122の遠位側に流体流通孔131が設けられている。流体流通孔131は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の軸方向遠位側に位置している。
流体流通孔131は、流体流通用ルーメン112の内腔とカテーテルチューブ110の外周側(食道内)とを繋ぐ貫通孔であり、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部131aと、流体流通用ルーメンの周壁(内腔)で開口する流体流通用ルーメン内側開口部131bとを有している。
流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内に流体が導入されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を遠位側へ向かう方向に押し出され、流体流通孔131を通じてカテーテルチューブ110の外部へ排出されるようになっている。また、流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内の流体が吸引されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を近位側へ向かう方向に引き戻され、カテーテルチューブ110の外周側に存在する流体は、流体流通孔131を通じて流体流通用ルーメン112内へ吸引されるようになっている。
流体流通孔131は略直線状の貫通孔であり、例えば電極群配置領域Rの略中央部M上に位置する仮想基準点Pに向かうように斜めに形成されている。より詳細には、流体流通孔131は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の軸方向遠位側に位置する略直線状の貫通孔であり、外周側開口部131aが流体流通用ルーメン内側開口部131bより軸方向近位側に配置されるように形成されている。
カテーテルアブレーションが行われる際、食道カテーテル100は、電極群配置領域Rの略中央部Mがアブレーション部の最も近傍に位置するように配置されることが望ましい。上記のように電極群配置領域Rの略中央部Mに向かって流体流通孔131を配向し、流体流通孔131から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向(図6に示す矢印方向)に流れるようにすることで、カテーテルアブレーションにより最も温度変動の影響を受けるアブレーション部周辺に流体を効率的に供給できるようになる。これにより、アブレーション部周辺の食道壁やアブレーション部周辺に配置される食道カテーテルの電極等が過度に昇温または降温した場合であっても、適切に冷却または加熱して、アブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度に戻すことができるようになる。
図7について説明する。図7は、図2に示す領域Y(リング状部材125を含む領域)の断面図である。図7には、リング状部材125およびカテーテルチューブ110の断面が図示されている。カテーテルチューブ110の内部には、導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112の2つのルーメンが形成されており、導線用ルーメン111内に複数の導線113およびスタイレット挿通空間115を画定するコイル状部材114が挿通されている。
図7に示すように、リング状部材125の配置位置には導線挿通孔145が設けられている。導線挿通孔145は、導線用ルーメン111の内腔とカテーテルチューブ110の外周側とを繋ぐ貫通孔である。導線挿通孔145は、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部145aと、導線用ルーメン111の周壁(内腔)で開口する導線用ルーメン内側開口部145bとを有している。
本実施形態では、リング状部材125は、温度測定用電極として機能できるようになっている。このため、温度測定用電極として機能するための2本の導線113が、導線用ルーメン111内から導線挿通孔145を通じてリング状部材125の内周面に接続されている。なお、カテーテルチューブ110の外周側(食道内)に存在する流体が導線挿通孔145を通じて導線用ルーメン111内に流入しないようにするため、リング状部材125は導線挿通孔145の外周側開口部145aを密閉するように設けられている。
図7に示すように、カテーテルチューブ110には、リング状部材125の近位側に流体流通孔132が設けられている。流体流通孔132は、電極群配置領域Rの略中央部Mに位置している。
流体流通孔132は、流体流通用ルーメン112の内腔とカテーテルチューブ110の外周側(食道内)とを繋ぐ貫通孔であり、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部132aと、流体流通用ルーメンの周壁(内腔)で開口する流体流通用ルーメン内側開口部132bとを有している。
流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内に流体が導入されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を遠位側へ向かう方向に押し出され、流体流通孔132を通じてカテーテルチューブ110の外部へ排出されるようになっている。また、流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内の流体が吸引されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を近位側へ向かう方向に引き戻され、カテーテルチューブ110の外周側に存在する流体は、流体流通孔132を通じて流体流通用ルーメン112内へ吸引されるようになっている。
流体流通孔132は略直線状の貫通孔であり、例えば電極群配置領域Rの略中央部M上に位置する仮想基準点Pに向かうように、カテーテルチューブ110の軸方向に対して略垂直方向に形成されている。より詳細には、流体流通孔132は、電極群配置領域Rの略中央部Mに位置する略直線状の貫通孔であり、外周側開口部132aと流体流通用ルーメン内側開口部132bとが軸方向の略同一位置に配置されるように形成されている。
カテーテルアブレーションが行われる際には、食道カテーテル100は、電極群配置領域Rの略中央部Mがアブレーション部の最も近傍に位置するように配置される。上記のように電極群配置領域Rの略中央部Mに向かって流体流通孔132を配向し、流体流通孔132から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向(図7に示す矢印方向)に流れるようにすることで、カテーテルアブレーションにより最も温度変動の影響を受けるアブレーション部周辺に流体を効率的に供給できるようになる。これにより、アブレーション部周辺の食道壁やアブレーション部周辺に配置される食道カテーテルの電極等が過度に昇温または降温した場合であっても、適切に冷却または加熱して、アブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度に戻すことができるようになる。
図8について説明する。図8は、図2に示す領域Z(リング状部材129を含む領域)の断面図である。図8には、リング状部材129およびカテーテルチューブ110の断面が図示されている。カテーテルチューブ110の内部には、導線用ルーメン111および流体流通用ルーメン112の2つのルーメンが形成されており、導線用ルーメン111内に複数の導線113およびスタイレット挿通空間115を画定するコイル状部材114が挿通されている。
図8に示すように、リング状部材129の配置位置には導線挿通孔149が設けられている。導線挿通孔149は、導線用ルーメン111の内腔とカテーテルチューブ110の外周側とを繋ぐ貫通孔である。導線挿通孔149は、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部149aと、導線用ルーメン111の周壁(内腔)で開口する導線用ルーメン内側開口部149bとを有している。
本実施形態では、リング状部材129は、ペーシング用電極として機能できるようになっている。このため、ペーシング用電極として機能するための1本の導線113が、導線用ルーメン111内から導線挿通孔149を通じてリング状部材129の内周面に接続されている。なお、カテーテルチューブ110の外周側(食道内)に存在する流体が導線挿通孔149を通じて導線用ルーメン111内に流入しないようにするため、リング状部材129は導線挿通孔149の外周側開口部149aを密閉するように設けられている。
図8に示すように、カテーテルチューブ110には、リング状部材129の近位側に流体流通孔133が設けられている。流体流通孔133は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の軸方向近位側に位置している。
流体流通孔133は、流体流通用ルーメン112の内腔とカテーテルチューブ110の外周側(食道内)とを繋ぐ貫通孔であり、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部133aと、流体流通用ルーメンの周壁(内腔)で開口する流体流通用ルーメン内側開口部133bとを有している。
流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内に流体が導入されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を遠位側へ向かう方向に押し出され、流体流通孔133を通じてカテーテルチューブ110の外部へ排出されるようになっている。また、流体供給/吸引ポート180から流体流通用ルーメン112内の流体が吸引されると、流体流通用ルーメン112内の流体は、流体流通用ルーメン112内を近位側へ向かう方向に引き戻され、カテーテルチューブ110の外周側に存在する流体は、流体流通孔133を通じて流体流通用ルーメン112内へ吸引されるようになっている。
流体流通孔133は略直線状の貫通孔であり、例えば電極群配置領域Rの略中央部M上に位置する仮想基準点Pに向かうように斜めに形成されている。より詳細には、流体流通孔133は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の軸方向近位側に位置する略直線状の貫通孔であり、外周側開口部133aが流体流通用ルーメン内側開口部133bより軸方向遠位側に配置されるように形成されている。
カテーテルアブレーションが行われる際には、食道カテーテル100は、電極群配置領域Rの略中央部Mがアブレーション部の最も近傍に位置するように配置される。上記のように電極群配置領域Rの略中央部Mに向かって流体流通孔133を配向し、流体流通孔133から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向(図8に示す矢印方向)に流れるようにすることで、カテーテルアブレーションにより最も温度変動の影響を受けるアブレーション部周辺に流体を効率的に供給できるようになる。これにより、アブレーション部周辺の食道壁やアブレーション部周辺に配置される食道カテーテルの電極等が過度に昇温または降温した場合であっても、適切に冷却または加熱して、アブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度に戻すことができるようになる。
なお、本実施形態では、カテーテルチューブ110の遠位側の3箇所に流体流通孔131~133が設けられているが、カテーテルチューブ110の遠位側に設けられる流体流通孔の個数や位置は特に限定されない。例えば、流体流通孔131~133のいずれか1つまたは任意選択された2つが設けられてもよい。
また、電極群配置領域Rの任意の位置、具体的には、リング状部材121の遠位側、リング状部材121とリング状部材122との間、リング状部材122とリング状部材123との間、リング状部材123とリング状部材124との間、リング状部材124とリング状部材125との間、リング状部材125とリング状部材126との間、リング状部材126とリング状部材127との間、リング状部材127とリング状部材128との間、リング状部材128とリング状部材129との間、リング状部材129の近位側の任意の位置に1つまたは複数の流体流通孔を設けてもよい。この場合、上述した流体流通孔131~133と同様に、いずれの位置においても流体流通孔を電極群配置領域Rの略中央部Mに向かうように配向し、流体流通孔から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向に流れるようにすることが好ましい。
なお、流体流通孔132のように、流体流通孔を電極群配置領域Rの略中央部M近傍に設けた場合には、アブレーション部に近い位置で流体を排出することができるため、アブレーション部周辺の食道壁に流体をより効率的に供給できるという効果がある。また、流体流通孔131のように、流体流通孔を電極群配置領域Rの略中央部Mより遠位側に設けた場合には、流体流通用ルーメン112内を流れる流体が略中央部Mを越えて流体流通孔131に至るため、アブレーション部周辺(略中央部M周辺)を流れる流体流通用ルーメン112内の流体により、カテーテルチューブ110の内側からアブレーション部周辺を冷却または加熱することができるという効果がある。
さらに、流体流通孔はリング状部材を貫通するように形成されてもよい。図9は、図2に示す領域Y(リング状部材125を含む領域)の別の構成を示す断面図である。図9には、リング状部材125およびカテーテルチューブ110を貫通するように流体流通孔134が設けられた構成が図示されている。
流体流通孔134は、流体流通用ルーメン112の内腔とカテーテルチューブ110の外周側(食道内)とを繋ぐ貫通孔であり、リング状部材125の外周面で開口する外周側開口部134aと、流体流通用ルーメンの周壁(内腔)で開口する流体流通用ルーメン内側開口部134bとを有している。外周側開口部134aと流体流通用ルーメン内側開口部134bとは、軸方向の略同一位置に配置されるように形成されている。リング状部材125を貫通するように流体流通孔134を設けた場合、流体流通孔134を通じてカテーテルチューブ110の外周側に流体が、流体流通孔134の一部を構成するリング状部材125に直接接触するため、リング状部材125を効率的に冷却または加熱することができるという効果がある。なお、図9では、一例としてリング状部材125に流体流通孔134が設けられているが、リング状部材121~129のうちの任意のリング状部材を貫通するように流体流通孔が設けられてもよい。
流体流通孔131~134の形成方法は特に限定されない。例えば、図6~図8に示す流体流通孔131~133のようにカテーテルチューブ110を貫通する流体流通孔は、カテーテルチューブ110の外周面から流体流通用ルーメン112の周壁に至るまで針を穿刺することで形成することができる。このとき、導線用ルーメン111と流体流通用ルーメン112との間の隔壁に誤って孔を開けないように注意する必要がある。また、針を加熱してから穿刺すると、カテーテルチューブ110が溶融して容易かつ確実に流体流通孔を形成することができる。
また、図9に示す流体貫通孔134のようにカテーテルチューブ110およびリング状部材を貫通する流体流通孔は、リング状部材がカテーテルチューブ110に装着された状態で工具等を用いて形成してもよく、あるいは、事前に貫通孔を設けたリング状部材をカテーテルチューブ110に装着してから、リング状部材の貫通孔を通すようにカテーテルチューブ110に針を穿刺して形成してもよい。
本実施形態における食道カテーテル100は、カテーテルアブレーション時に、カテーテルチューブ110の遠位側が患者の食道内に挿入および配置されることで使用される。食道カテーテル100は、主に2つの用途、すなわち、食道壁の温度を測定する用途、および、食道から心臓を電気的に刺激する食道ペーシングの用途で使用される。
本実施形態における食道カテーテル100の使用法について説明する。まず、カテーテルアブレーションを行うために、X線透視下で、例えば患者の大腿動脈から心臓にアブレーション用カテーテルを挿入する。また、本実施形態における食道カテーテル100を準備し、食道カテーテル100にスタイレットを挿入した状態で、食道カテーテル100の遠位端を患者の鼻腔から食道に向けて挿入する。患者の咽頭または食道に食道カテーテル100の遠位端が到達した段階でスタイレットを抜去し、さらに、位置調整を行って、食道カテーテル100の遠位端をアブレーション部(例えば左心房)に近接する位置に配置する。このとき、カテーテルアブレーションによって変動する食道壁の温度を適切に測定できるように、アブレーション部に最も近接する位置に電極群配置領域Rの略中央部Mを配置することが望ましい。
アブレーション用カテーテルを心臓内に配置し、さらに、本実施形態における食道カテーテル100を食道内に配置した状態で、アブレーション用カテーテルによる組織のアブレーション(加熱焼灼または冷凍焼灼)を開始する。なお、アブレーション開始前またはアブレーション処置中に、本実施形態における食道カテーテル100を用いた食道ペーシングを行って心臓内の異常電気信号の発生源を特定し、アブレーション部を決定してもよい。
カテーテルアブレーション処置中は、本実施形態における食道カテーテル100により食道壁の温度を測定し、食道壁の温度変動を監視する。加熱焼灼の場合には食道壁の温度が上昇する可能性があり、冷凍焼灼の場合には食道壁の温度が降下する可能性がある。本実施形態における食道カテーテル100により測定された食道壁の温度が過度に高温または低温となって所定の温度範囲を逸脱した場合には、流体供給/吸引ポート180を通じて流体を供給し、流体流通孔131~134を通じて食道内へ流体を放出させて、アブレーション部周辺の食道壁を冷却または加熱する。アブレーション部周辺の食道壁を冷却または加熱して制御することで、温度変動により惹起される食道障害の発生を抑止することができる。
カテーテルアブレーション処置中は、複数回にわたってアブレーションが行われる。例えば、ホットバルーンやクライオバルーンを用いたカテーテルアブレーションでは、バルーンを接触させて加熱または冷却するアブレーションが複数回行われる。また、特に高周波電流を印加する高周波カテーテルアブレーションでは、高周波電流をピンポイントで印加するアブレーションが繰り返し行われる。食道カテーテル100により測定される温度は、アブレーションにより上昇または下降し、アブレーション終了に伴って徐々に体温まで戻る。このとき、食道カテーテルの温度表示が体温まで戻らないと次のアブレーションを開始することができない。そこで、迅速かつ早期に電極を適切な温度(体温付近)に戻すために、アブレーション終了後に、流体供給/吸引ポート180から体温付近の温度の流体を供給し、流体流通孔131~134を通じて食道内へ流体を放出させて、アブレーション部周辺の電極を冷却または加熱してもよい。これにより、連続して行われるアブレーション間の時間(電極の温度を安定させる時間)を短縮して、カテーテルアブレーションに要する治療時間全体を短縮することができる。治療時間の短縮は、患者の負担軽減および症例数の増加につながるため有効かつ重要である。
さらに、食道内へ流体を放出させて食道壁や電極が所定の温度範囲内に戻った場合には、流体供給/吸引ポート180を通じて流体を吸引することで、流体流通孔131~134を通じて食道内の流体を回収してもよい。これにより、流体流通孔131~134を通じて放出されて食道内に溜まった流体を回収することができるようになる。
一連のアブレーションが完了すると、食道内から食道カテーテル100を抜去および回収し、さらに、心臓内からアブレーション用カテーテルを抜去および回収して、カテーテルアブレーションは終了となる。
また、上述したように、食道カテーテル100のカテーテルチューブ110の遠位側に設けられる各リング状部材は、その外径がカテーテルチューブ110の外径と同一であってもよい。図10は、本発明の別の実施形態における食道カテーテルを構成するカテーテルチューブの遠位側の部分拡大図である。
本発明に係る食道カテーテル100は、カテーテルチューブ110の遠位側の構成を、図10に示す構成としてもよい。図10に示す構成では、カテーテルチューブ110の遠位側には、カテーテルチューブ110の外周面を取り囲むように複数のリング状部材221~228が設けられている。複数のリング状部材221~228の外径は、カテーテルチューブ110の外径と同一となるように設定されており、カテーテルチューブ110の遠位側が長手方向に沿って起伏の無い平坦な構造となっている。なお、図10では、図示明確化のため、リング状部材221~228を網掛けにより示している。
図10に示す構成では、最遠位側のリング状部材221の幅を1mm程度とし、その他のリング状部材122~128の幅を5mmとしている。また、リング状部材221とリング状部材222との軸方向の離隔距離を20mmとし、各リング状部材222~228の軸方向の離隔距離を3mmとしている。
最遠位側のリング状部材221は、先端チップ240の外周に設けられており、ペーシング用電極を構成する。なお、図10に示す構成では、リング状部材221と先端チップ240とが別体で構成されているが、リング状部材221と先端チップ240が同一の部材で構成され、リング状部材221が先端チップ240を兼ねてもよい。また、リング状部材222、224、226、228は、温度測定用およびペーシング用の両方の機能を有する電極を構成し、リング状部材223、225、227は、温度測定用電極を構成する。したがって、リング状部材221、222、224、226、228によりペーシングを行うことができ、リング状部材222~228により温度測定を行うことができるように構成されている。
また、カテーテルチューブ110の遠位側には、上述した流体流通孔131~133と同様の機能を有し、流体流通用ルーメン112に連通する流体流通孔231~233が設けられている。図10に示す構成では、リング状部材222の遠位側に流体流通孔231が形成されており、リング状部材225の近位側に流体流通孔232が形成されており、リング状部材228の近位側に流体流通孔233が形成されている。
上述した流体流通孔131~133と同様、流体流通孔231~233も電極群配置領域Rの略中央部Mに向かうように配向されている。
流体流通孔231は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の遠位側に形成された貫通孔である。図10には不図示であるが、流体流通孔131と同様に、流体流通孔231の外周側開口部(カテーテルチューブ110の外周面で開口する開口部)は、流体流通孔231の流体流通用ルーメン内側開口部(流体流通用ルーメン112の内周壁で開口する開口部)よりカテーテルチューブ110の近位側に配置されている。
流体流通孔232は、電極群配置領域Rの略中央部M付近に形成された貫通孔である。図10には不図示であるが、流体流通孔132と同様に、流体流通孔232の外周側開口部(カテーテルチューブ110の外周面で開口する開口部)と、流体流通孔232の流体流通用ルーメン内側開口部(流体流通用ルーメン112の内周壁で開口する開口部)とがカテーテルチューブ110の軸方向の略同一位置に配置されている。
流体流通孔233は、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の近位側に形成された貫通孔である。図10には不図示であるが、流体流通孔133と同様に、流体流通孔233の外周側開口部(カテーテルチューブ110の外周面で開口する開口部)は、流体流通孔231の流体流通用ルーメン内側開口部(流体流通用ルーメン112の内周壁で開口する開口部)よりカテーテルチューブ110の遠位側に配置されている。
これにより、流体流通孔231~233から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向に流れるようになり、アブレーション部周辺の食道壁に流体をより効率的に供給することができる。
なお、図10に示す構成では、カテーテルチューブ110の遠位側の3箇所に流体流通孔231~233が設けられているが、カテーテルチューブ110の遠位側に設けられる流体流通孔の個数や位置は特に限定されない。例えば、流体流通孔231~233のいずれか1つまたは任意選択された2つが設けられてもよい。また、例えば、リング状部材221の遠位側、リング状部材221とリング状部材222との間、リング状部材222とリング状部材223との間、リング状部材223とリング状部材224との間、リング状部材224とリング状部材225との間、リング状部材225とリング状部材226との間、リング状部材226とリング状部材227との間、リング状部材227とリング状部材228との間、リング状部材228の近位側の任意の位置に1つまたは複数の流体流通孔を設けてもよい。この場合、いずれの位置においても流体流通孔を電極群配置領域Rの略中央部Mに向かうように配向し、流体流通孔から排出された流体が電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう方向に流れるようにすることが好ましい。さらに、図9に示す構成と同様に、各リング状部材221~228のうちの任意のリング状部材を貫通するように流体流通孔が設けられてもよい。
以下、本発明に係る食道カテーテルの作用について説明する。
本発明に係る食道カテーテル100は、カテーテルアブレーション時に食道内に配置される食道カテーテルであって、可撓性の長尺部材からなり、導線用ルーメン111と流体流通用ルーメン112とが内部に形成されているカテーテルチューブ110と、カテーテルチューブ110の遠位側に配置されており、導線用ルーメン111内に挿通された導線113が電気的に接続されている複数の電極(リング状部材121~129、221~228)とを備え、カテーテルチューブ110の外周面で開口する外周側開口部131a~134aと流体流通用ルーメン112の内周壁で開口する流体流通用ルーメン内側開口部131b~134bとを有する1つまたは複数の流体流通孔131~134、231~233が、カテーテルチューブ110の遠位側に形成されており、流体流通孔131~134、231~233を通じて流体流通用ルーメン112内の流体を食道内へ放出できるようになっている。
上記の構成によれば、カテーテルチューブ110内に導線用ルーメン111とは別に流体流通用ルーメン112を設け、流体流通用ルーメン112から流体流通孔131~134、231~233を通じて食道内に流体を放出することで、アブレーション部周辺の食道壁の温度が過度に上昇した場合には冷却し、あるいは、アブレーション部周辺の食道壁の温度が過度に下降した場合には加熱して、アブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度に制御することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、流体流通孔131~134、231~233が、複数の電極(リング状部材121~129、221~228)が配置されている電極群配置領域Rの略中央部Mに向かって流体を放出するように配向されていてもよい。
上記の構成によれば、カテーテルアブレーション時に電極群配置領域Rの略中央部Mが配置されるアブレーション部周辺の食道壁に向かって、カテーテルアブレーションにより最も温度変動の影響を受けるアブレーション部周辺の食道壁に電極群配置領域Rの略中央部Mが配置された際に、アブレーション部周辺の食道壁に向かって流体を効率的に供給することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、流体流通孔131、231が、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の遠位側に形成された貫通孔であり、該流体流通孔131、231の外周側開口部131aが該流体流通孔131、231の流体流通用ルーメン内側開口部131bよりカテーテルチューブ110の近位側に配置されていてもよい。
上記の構成によれば、電極群配置領域Rの略中央部Mより遠位側に形成された流体流通孔131から電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう斜め方向に流体を放出することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、流体流通孔133、233が、電極群配置領域Rの略中央部Mよりカテーテルチューブ110の近位側に形成された貫通孔であり、該流体流通孔133、233の外周側開口部133aが該流体流通孔133、233の流体流通用ルーメン内側開口部133bよりカテーテルチューブ110の遠位側に配置されていてもよい。
上記の構成によれば、電極群配置領域Rの略中央部Mより近位側に形成された流体流通孔133から電極群配置領域Rの略中央部Mに向かう斜め方向に流体を放出することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、流体流通孔132、134、232が、電極群配置領域Rの略中央部M付近に形成された貫通孔であり、該流体流通孔132、134、232の外周側開口部132a、134aと該流体流通孔132、134、232の流体流通用ルーメン内側開口部132b、134bとがカテーテルチューブ110の軸方向の略同一位置に配置されていてもよい。
上記の構成によれば、電極群配置領域Rの略中央部M付近に形成された流体流通孔132、134、232からカテーテルチューブ110の軸方向に対して略垂直方向に向かって流体を放出することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、複数の電極(リング状部材121~129、221~228)のうちの少なくとも1つが、食道内の温度を測定するための温度測定用電極(リング状部材122~128、222~228)であってもよい。
上記の構成によれば、カテーテルチューブ100の遠位側に設けられた温度測定用電極により食道壁の温度を測定することができる。
本発明に係る食道カテーテルにおいて、前記複数の電極のうちの少なくとも2つが、食道から心臓に電気的な刺激を与えるためのペーシング用電極(リング状部材121、122、128、129、221、222、224、226、228)であってもよい。
上記の構成によれば、カテーテルチューブ110の遠位側に設けられたペーシング用電極により食道から心臓に電気的な刺激を与えることができる。
本発明に係る食道カテーテル100は、流体流通孔131~134、231~233を通じて食道内の流体を流体流通用ルーメン112内へ吸引してもよい。
上記の構成によれば、流体流通用ルーメン112から流体流通孔131~134、231~233を通じて食道内に放出した流体を回収することができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、カテーテルチューブ110の内部に、スタイレットを挿通させるためのスタイレット挿通用ルーメン116が形成されていてもよい。
上記の構成によれば、カテーテルチューブ110内に挿入されたスタイレットにより、カテーテルチューブ110の遠位側の形状を安定させるとともに、カテーテルチューブ110のプッシャビリティを向上させることができる。
本発明に係る食道カテーテル100において、流体が液体または気体であってもよい。
上記の構成によれば、カテーテルアブレーション時にアブレーション部周辺の食道壁の温度が過度に上昇または下降した場合に、液体または気体である流体をアブレーション部周辺の食道壁に向かって放出することで、アブレーション部周辺の食道壁の温度を適切な温度にすることができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。