JP2022019931A - ブリ属養殖魚の飼育方法及びブリ属養殖魚 - Google Patents

ブリ属養殖魚の飼育方法及びブリ属養殖魚 Download PDF

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Abstract

【課題】生殖器官の成熟期後に痩せにくく、持続性に優れたブリ属養殖魚の提供。【解決手段】日長条件及び水温条件の少なくとも一方が調整された調整飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して、ブリ属魚類の仔魚を得ること、得られたブリ属魚類の仔魚から飼育を開始し、ブリ属魚類に成育させること、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体又はGSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、GSIが生殖器官成熟期での数値よりも低いブリ属養殖魚を得ることを含むブリ属養殖魚の飼育方法;当該飼育方法により得られたブリ属養殖魚。【選択図】なし

Description

本開示は、ブリ属養殖魚の飼育方法及びブリ属養殖魚に関する。
ブリは一般に冬が旬の魚類として知られている魚類であり、天然資源の維持、品質管理などの観点から、天然ブリだけでなく、養殖ブリも流通している。
一般にブリは、成熟して産卵期を迎えると、その前後において栄養分を卵に取られ、痩せが生じることが知られている。このため、天然ブリの場合2~4月の産卵期又はその後、養殖ブリの場合には5~6月の産卵期又はその後に、多くの場合、成長の停滞などが生じたり、脂ののりが悪くなって、商品価値が下がる。このために、ブリ養殖魚における成長の停滞、痩せ等の影響を低減させる技術が種々検討されている。
特許文献1には、生殖器官の成熟と産卵、放精の器官に起因している魚の成長の停滞ないし減退がなく、定常的に魚が成熟し、出荷を停滞させることのない養殖方法が提供されている。具体的には、遅くとも10月から翌年の5月までの期間、一定の照度の電灯を夕方から翌朝までの間照射しながら、ハマチ等を飼育する養殖方法が開示されている。この方法によれば、魚の生殖器官の成長が殆ど抑えられ、産卵と精子の水中への放出が起こらず、この期間にも魚が成長を持続すると記載されている。
特許文献2では、1kgあたりのビタミンE含有量が90mg以下であり、コエンザイムQ10、セサミノール、αリボ酸及びアスタキサンチンからなる群より選択される少なくとも1つの抗酸化物質を含有する魚類用飼料が記載されており、この魚類用飼料を用いることによって、生殖活動に起因する魚の成長の停滞等を抑制することができると記載されている。
また、非特許文献1には、冬から春にかけて、繁殖期の直前まで飼料の摂取を制限することによって、非制限群と比較して体重が上昇し、また、繁殖期のブリにおいて生殖腺の発達が抑制されることが開示されている。
特開2003-333953号公報 特開2013-188207号公報
Aquaculture, 424-425 (2014) 10-17
しかしながら、ブリとしての商品価値は大きさに依存するところがあり、生殖器官の成熟期の前に体重が抑えられた場合又は、生殖器官の成熟後に大きく痩せて体重が3kg程度となった場合などでは、商品価値としては充分とは言えない。
また、養殖魚としての良好な形質を維持して継続的な養殖を目的とする場合には、生殖器官の成熟は欠かせないため、生殖器官の成熟を完全に抑制された養殖魚では、養殖の持続性が失われる。
従って、本開示の目的は、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることにある。
本開示は以下を含む。
<1> 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期での数値よりも低い、ブリ属養殖魚を得ること
を含むブリ属養殖魚の飼育方法。
<2> 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが、雄個体で2.5%以下であり、雌個体で1.0%以下である前記<1>記載の飼育方法。
<3> ブリ属魚類の仔魚の飼育開始時から、ブリ属魚類の飼育環境下の水温を、15℃~28℃に調整する前記<1>又は<2>記載の飼育方法。
<4> 前記成育における飼育中に、形態異常及び/又は成長不良の個体の除去を行い、ブリ属魚類の個体を選抜することを含む、前記<1>~<3>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<5> 前記成育における飼育が、少なくとも5ヶ月間の水面下10m~18mでの海中養殖を含み、15ヶ月以上行われる、前記<1>~<4>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<6> 前記成育における飼育中に、ブリ属魚類の計量管理を行う前記<1>~<5>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<7> 前記成育における飼育中に、飼料100重量部に対して0.1重量部~0.3重量部のトウガラシを含む飼料を、少なくとも1ヶ月間、ブリ属魚類に給餌することを含む前記<1>~<6>のいずれか1つ記載の飼育方法。
<8> 生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、
生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、
ブリ属養殖魚。
<9> 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが、雄個体で2.5%以下であり、雌個体で1.0%以下である前記<8>記載のブリ属養殖魚。
<10> 生殖器官成熟期の個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ属養殖魚。
<11> 生殖器官成熟期後の個体であって、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%未満、雌の場合で0.5%未満であるブリ属養殖魚。
<12> 生殖器官成熟期の雄個体のブリ属養殖魚が、以下の(1)~(3)の少なくともひとつを満たす前記<8>又は<10>記載のブリ属養殖魚:
(1) 11-ケトテストステロン(11-KT)の血中濃度が、1800pg/mL~4500pg/mL、
(2) 17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL~450pg/mL、及び、
(3) エストラジオール(E2)の血中濃度が、130pg/mL~400pg/mL。
<13> 生殖器官成熟期の雌個体のブリ属養殖魚が、以下の(4)~(6)の少なくともひとつを満たす前記<8>又は<10>記載のブリ属養殖魚:
(4) 11-ケトテストステロン(11-KT)の血中濃度が、20pg/mL~175pg/mL、
(5) 17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL~350pg/mL、及び、
(6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL~10000pg/mL。
<14> 尾叉長が50cm以上である前記<8>~<13>のいずれか1つ記載のブリ属養殖魚。
<15> ブリ、ヒラマサ、カンパチ、又はヒレナガカンパチである前記<8>~<14>のいずれか1つ記載のブリ属養殖魚。
<16> 前記<1>~<7>のいずれか1つ記載の飼育方法で得られたブリ属養殖魚。
<17> 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
を含む成熟期ブリ属養殖魚の飼育方法。
本開示によれば、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることができる。
本開示の一態様に係るブリ属養殖魚の飼育方法は、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期での数値よりも低い、ブリ属養殖魚を得ることを含む飼育方法である。
本開示の他の一態様に係るブリ属養殖魚は、上記の態様に係るブリ属養殖魚の飼育方法により得られたブリ属養殖魚である。
また本開示の他の一態様に係るブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、ブリ属養殖魚である。
本開示の一態様における上記ブリ属養殖魚の飼育方法によれば、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることができる。
これをさらに説明すれば、本開示のブリ属養殖魚の飼育方法では、人工的な採卵を経て得られたブリ属魚類の仔魚からブリ属魚類を成育させて、生殖器官成熟期に、体重3.5kg以上及び肥満度18以上であって、所定のGSIを有する成熟期ブリ属養殖魚が得られる。このような体重3.5kg以上及び肥満度18以上であって所定のGSIを示す成熟期ブリ属養殖魚から、GSIは下がるものの、体重3.5kg以上を維持し、肥満度が17以上のブリ属養殖魚を得ることができる。このような体重3.5kg以上及び肥満度17以上のブリ属養殖魚は、生殖器官の成熟期後であっても充分な商品価値を有するものであり、いわゆる「成熟期間後に痩せた個体」には相当しない。
したがって、本開示のブリ属養殖魚の飼育方法によれば、生殖器官の成熟期後であっても、「成熟期間後に痩せた個体」ではない体重3.5kg以上及び肥満度17以上のブリ属養殖魚を得ることができる。
本開示の一態様に係るブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期後においてGSIが生殖器官の成熟期よりも下がったとしても、生殖器官成熟期において、3.5kg以上の体重及び18以上の肥満度と低すぎない範囲のGSIとを有し、生殖器官成熟期後においても体重が3.5kg以上及び肥満度17以上を有している。
したがって、生殖器官成熟期において機能的な精子又は卵を提供でき、養殖の持続性に優れ、生殖器官成熟期後で、充分に高い肥満度と体重3.5kg以上の個体であるため、栄養価が高く、可食部の割合も充分に高いので、商品価値が高いという利点も有する。
本開示の他の態様に係るブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期の個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ属養殖魚である。
本開示の他の態様に係る生殖器官成熟期のブリ属養殖魚は、高い肥満度と充分な体重を有すると共に、天然ブリと比較してGSIが低すぎない個体である。この生殖器官成熟期のブリ属養殖魚は、上述した態様に係る生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚を、効率よく提供することができる。
本開示の他の態様に係る生殖期ブリ属養殖魚の飼育方法は、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して、ブリ属魚類の仔魚を得ること、得られたブリ属魚類の仔魚から飼育を開始し、ブリ属魚類に成育させること、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、を含む成熟期ブリ属養殖魚の飼育方法である。
本態様に係る生殖期ブリ属養殖魚の飼育方法によれば、上述した有用な生殖器官成熟期のブリ属養殖魚を提供することができる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示すものとする。
本明細書において、混合物中の各成分の量は、混合物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、混合物中に存在する当該複数の物質の合計の量を意味する。本明細書において、混合物中の各成分の含有率は、混合物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、混合物中に存在する当該複数の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において、パーセントに関して「以下」又は「未満」との用語は、下限値を特に記載しない限り0%、即ち「含有しない」場合を含み、又は、現状の手段では検出不可の値を含む範囲を意味する。
以下、本開示について説明する。
本開示の一形態に係るブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低いブリ属養殖魚である。
ブリ属養殖魚であるブリ属(Seriola Cuvier)としては、カンパチ(Seriola dumerili)、ヒラマサ(Seriola lalandi Valenciennes)、ブリ(Seriola quinqueradiata)、ヒレナガカンパチ(Seriola rivoliana Valenciennes)、Seriola carpenteri、Seriola fasciata、Seriola hippos Gunther、Seriola peruana Steindachner、及びSeriola zonataを挙げることができる。低GSIブリ属養殖魚としては、ブリ、ヒラマサ、カンパチ、又はヒレナガカンパチであることができ、特にブリであることができる。
ブリ属養殖魚は、どのような方法で得られた養殖魚であってもよく、配合飼料を含む飼料で飼育管理されることにより得られたものであることが好ましい。
「配合飼料」とは、魚類の成育に必要なタンパク質、ビタミン、ミネラル等の栄養素を満たすように素材を組み合わせた飼料を意味する。「飼育管理」とは、特定の目的を達成するために選択された餌料を用いて飼育されていることを意味する。
本開示にかかるブリ属養殖魚の体重(総体重)は、生殖器官成熟期及び生殖器官成熟期後の共に、3.5kg以上である。ブリ属養殖魚における生殖器官成熟期及び生殖器官成熟期後の体重は、好ましくは3.8kg以上、より好ましくは4.0kg以上、さらに好ましくは4.2kg以上、よりさらに好ましくは4.5kg以上であってもよい。また、ブリ属養殖魚の生殖器官成熟期前後での体重変化があってもよく、このような体重の変化は、生殖器官成熟期前後で体重の増加であってもよく、減少があってもよい。体重の減少である場合には、体重の減少幅としては、例えば0.5kg以内、好ましくは0.3kg以内、又は0.2kg以内とすることができる。
本明細書において、「生殖器官成熟期」とは、ブリ属魚類において生殖器官が一般に生殖機能が備わり、雄個体の場合には放精、雌個体の場合には産卵が可能になる時期を指す。ブリの場合、一般に孵化後26ヶ月目~27ヶ月目の年齢の時期にあたることが多く、通常、水温が16℃~19℃になる4月から5月の時期に該当する。
本明細書において、「生殖器官成熟期後」とは、生殖器官成熟期の後の時期を意味し、雄個体の場合には放精してから後、雌個体の場合には産卵してから後、あるいは、放精又は産卵しない場合には、生殖器官重量が上記生殖器官成熟期に最大となって減少に転じてから後の時期を意味する。ブリの場合、一般に28ヶ月目以降の年齢の時期にあたることが多く、通常、水温が20℃以上になる5月~9月の時期に該当する。
本明細書において、「生殖器官成熟期」を単に「成熟期」と称する場合があり、「生殖器官成熟期後」を単に「成熟期後」と称する場合がある。
本明細書において「雄(オス)」とは、精巣をつくる個体をいい、染色体の組み合わせではZZ型を有する個体をいう。本明細書において、「雌(メス)」とは、卵巣をつくる個体をいい、染色体の組み合わせとしては、ZW型又はWW型を有する個体をいう。
ブリ属養殖魚におけるGSIは、成熟期において、雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であり、成熟期後において、成熟期のGSIよりも低くなる。
以下、体重が3.5kg以上であって、成熟期におけるGSIが雄の場合で0.5%以上10.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ養殖魚を「低GSIブリ属養殖魚」と称する場合がある。
本明細書における生殖腺体指数(GSI,Gonad Somatic Index)とは、内臓込みの魚体重に対する生殖腺重量の比率であり、以下の式に基づいて算出される:
GSI(%)=生殖腺重量(kg)/内臓込み体重(kg)×100
低GSIブリ属養殖魚が雄の場合、成熟期においてGSIが0.5%以上であるので、機能性の精子を生成するには充分に生殖器官が成熟していると判断することができ、一方、10.0%以下のGSIであるので、成熟期後において生殖器官の成熟に伴う痩せの程度が小さい個体であると判断することができる。
成熟期におけるGSIの下限値としては、0.7%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、7.2%以上、7.5%以上、7.7%以上、8.0%以上、又は8.2%以上とすることができる。成熟期におけるGSIの上限値としては、9.5%以下、9.0%以下、又は8.8%以下とすることができる。
低GSIブリ属養殖魚が雄の場合、生殖器官としては精巣が挙げられる。生殖器官、すなわち精巣の重量は、成熟期において一般に100g以上あればよく、120g以上、150g以上、180g以上、200g以上、250g以上、300g以上、又は350g以上とすることができ、精巣の重量の上限値としては、特に制限はないが、生殖器官の成熟に伴う痩せの影響を小さくする観点から、450g以下、430g以下、又は400g以下とすることができる。
低GSIブリ属養殖魚が雌の場合、成熟期においてGSIが0.5%以上であるので、機能性の卵を生成するには充分に生殖器官が成熟していると判断することができ、一方、4.5%以下のGSIであるので、成熟期後において生殖器官の成熟に伴う痩せの影響を小さい個体であると判断することができる。
成熟期におけるGSIの下限値としては、0.7%以上、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、又は3.5%以上とすることができる。成熟期におけるGSIの上限値としては、4.5%以下、4.3%以下、4.2%以下、又は4.0%以下とすることができる。
低GSIブリ属養殖魚が雌の場合、生殖器官としては卵巣が挙げられる。生殖器官、すなわち卵巣の重量は、成熟期において一般に20g以上あればよく、30g以上、40g以上、50g以上、80g以上、100g以上、120g以上、又は140g以上とすることができ、卵巣の重量の上限値としては、特に制限はないが、生殖器官の成熟に伴う痩せの影響を小さくする観点から、300g以下、250g以下、又は200g以下とすることができる。
低GSIブリ属養殖魚は、上述したようにGSIが所定の範囲内となっているため、成熟期における各種の生殖ホルモンの濃度が天然のブリ属魚類よりも低いものとすることができる。生殖ホルモンとしては、11-ケトテストステロン(11-KT)、17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)、エストラジオール(E2)等を挙げることができる。
11-KTは、内在性のアンドロゲン様性ホルモンとして機能する雄性ホルモンのひとつであり、精子の成熟工程の中期に関与するホルモンとして知られている。成熟期の低GSIブリ属養殖魚における11-KTの血中濃度は、雄個体の場合、1800pg/mL以上、2000pg/mL以上、2300pg/mL以上、2500pg/mL以上、2700pg/mL以上、又は3000pg/mL以上であってもよく、4500pg/mL以下、又は4300pg/mL以下であってもよい。
また11-KTは、雌個体も生成することができる。成熟期の低GSIブリ属養殖魚における11-KTの血中濃度は、雌個体の場合、20pg/mL以上、25pg/mL以上、30pg/mL以上、50pg/mL以上、又は100pg/mL以上であってもよく、200pg/mL以下、180pg/mL以下、又は160pg/mL以下であってもよい。
血中11-KTの測定方法については、特に制限はなく、公知の測定方法のいずれかを用いればよい。例えば、時間分解蛍光免疫測定法(time resolved fluoroimmunoassay:TR-RIA)により測定することができる。TR-RIAを用いた測定方法は、例えば、Gen. Comp. Endocrinol. 106, 181-188に記載された方法を適用することができる。
DHPは、17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オンとも称され、活性型のテストステロンとして作用する黄体ホルモンであり、精子又は卵の成熟工程の後期に関与するホルモンとして知られている。
成熟期の低GSIブリ属養殖魚におけるDHPの血中濃度は、雄個体の場合、100pg/mL以上、110pg/mL以上、130pg/mL以上、150pg/mL以上、又は200pg/mL以上であってもよく、450pg/mL以下、400pg/mL以下、又は350pg/mLであってもよい。低GSIブリ属養殖魚におけるDHPの血中濃度は、雌個体の場合、100pg/mL以上、120pg/mL以上、150pg/mL以上、又は200pg/mL以上であってもよく、350pg/mL以下、320pg/mL以下、又は300pg/mL以下であってもよい。
血中DHPの測定方法については、特に制限はなく、公知の測定方法のいずれかを用いればよい。例えば、時間分解蛍光免疫測定法(time resolved fluoroimmunoassay:TR-FIA)により測定することができる。TR-FIAを用いた測定方法は、例えば、Gen. Comp. Endocrinol. 106, 181-188に記載された方法を適用することができる。
E2は、17-β-エストラジオールとも称される雌性ホルモンのひとつであり、精子又は卵の成熟工程の初期に、直接的に又は肝臓を介して間接的に関与するホルモンとして知られている。低GSIブリ属養殖魚におけるE2の血中濃度は、雄個体の場合、130pg/mL以上、150pg/mL以上、又は200pg/mL以上であってもよく、400pg/mL以下、380pg/mL以下、又は350pg/mL以下であってもよい。成熟期の低GSIブリ属養殖魚におけるE2の血中濃度は、雌個体の場合、300pg/mL以上、500pg/mL以上、800pg/mL以上、又は1000pg/mL以上であってもよく、15000pg/mL以下、10000pg/mL以下、又は7000pg/mL以下であってもよい。
血中E2の測定方法については、特に制限はなく、公知の測定方法のいずれかを用いればよい。例えば、ラジオイムノアッセイ法(Radioimmunoassay;RIA)により測定することができる。RIAを用いた測定方法は、例えば、Cell Tissue Res., 218, 315-329に記載されている。
低GSIブリ属養殖魚は、上述した生殖ホルモンのいずれかを上述した範囲で有するものであればよく、例えば、成熟期の低GSIブリ属養殖魚は、以下の組み合わせの生殖ホルモンを有することができる:
ブリ属養殖魚が雄個体の場合、以下の(1)~(3)の少なくともひとつ:
(1) 11-ケトテストステロン(11-KT)の血中濃度が、1800pg/mL~4500pg/mL、
(2) 17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL~450pg/mL、及び、
(3) エストラジオール(E2)の血中濃度が、130pg/mL~400pg/mL。
ブリ属養殖魚が雌個体の場合、以下の(4)~(6)の少なくともひとつ:
(4) 11-ケトテストステロン(11-KT)の血中濃度が、20pg/mL~175pg/mL、
(5) 17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL~350pg/mL、及び、
(6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL~10000pg/mL。
雄の個体の場合、上記(1)~(3)の少なくともひとつを満たすことができ、例えば(1)及び(2)の組み合わせ、(1)及び(3)の組み合わせ、(2)及び(3)の組み合わせ、(1)~(3)の組み合わせとすることができる。
雌の個体の場合、上記(4)~(6)の少なくともひとつを満たすことができ、例えば(4)及び(5)の組み合わせ、(4)及び(6)の組み合わせ、(5)及び(6)の組み合わせ、(4)~(6)の組み合わせとすることができる。
低GSIブリ属養殖魚におけるGSIは、成熟期において所定の範囲内にあって成熟期後において低下する。成熟期前後におけるGSIの減少幅については、成熟期後において体重3.5kg以上及び肥満度17以上が維持されていれば、特に制限はなく、成熟期のGSIに対して、95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、又は10%以下の成熟期後のGSIであってもよい。
低GSIブリ属養殖魚では、成熟期後のGSIは、成熟期のGSI値よりも低い、すなわち成熟期のGSI値未満のものであればよく、例えば、成熟期のGSI値未満であって、雄の場合で2.5%以下、雌の場合で1.0%以下であってもよい。換言すれば、成熟期後のブリ属養殖魚は、肥満度17以上及び体重3.5kgであり、GSIが、成熟期のGSIよりも低いGSIであって、雄の場合で2.5%以下、雌の場合で1.0%以下であってもよい。
雄個体の成熟期後のGSIは、成熟期のGSI値未満であって、雄個体の場合で、2.5%以下、2.0%以下、1.8%以下、1.5%以下、1.3%以下、1.0%以下、0.8%以下、0.5%以下、又は0.3%以下であってもよい。雌個体の成熟期後のGSIは、成熟期のGSIよりも低いGSIであって、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、又は0.1%以下であってもよい。
低GSIブリ属養殖魚の肥満度は、成熟期で18以上であり、好ましくは19以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは21以上の肥満度を有することができる。成熟期における肥満度の上限値については、成熟期後の肥満度が17以上であれば特に制限はなく、例えば30以下、又は29以下とすることができる。
また、低GSIブリ属養殖魚の肥満度は、成熟期後で17以上であり、好ましくは18以上、より好ましくは19以上の肥満度を有することができる。成熟期後で肥満度が17以上の低GSIブリ属養殖魚は、天然魚と比較して、いわゆる脂がのっている可食部をより多く提供することができる。成熟期後の肥満度の上限値は特に制限はなく、例えば29以下、又は28以下とすることができる。
肥満度は、一般に、以下の式[1]に基づいて評価することができる。
肥満度=
重量(g)/{尾叉長(cm)×尾叉長(cm)×尾叉長(cm)}×1000 ・・・ [1]
本開示の低GSIブリ属養殖魚は、成熟期及びその後で体重が3.5kg以上を維持し、肥満度については、肥満度が成熟期の肥満度よりも下がった場合でも、成熟期後で17以上に維持されている。低GSIブリ属養殖魚における成熟期と成熟期後との肥満度の変動幅は、成熟期後で肥満度17以上であれば、特に制限はないが、好ましくは2以内、より好ましくは1以内とすることができる。
低GSIブリ属養殖魚の尾叉長は、雄雌共に、50cm以上、55cm以上、57cm以上、又は60cm以上の尾叉長を有することができる。50cm以上の尾叉長を有する低GSIブリ属養殖魚は、天然魚と比較して肥満度が高くなる傾向が強く、可食部をより多く提供することができる。尾叉長とは、魚の頭部先端部から尾びれ中央の端部までの距離をいい、当業者には周知の外部形態の指標である。尾叉長の測定は、魚の頭部先端部から尾びれ中央の端部までの平面視直線距離を測定する。低GSIブリ属養殖魚の尾叉長の上限値については、特に制限はなく、例えば200cm以下とすることができる。
魚個体の重量の測定は、水揚げ後に、まず血抜きを行って得られた魚体の重量を測定し、「総魚体重」とする。その後、内臓を除去して、生殖腺重量、肝臓重量をそれぞれ測定することができる。重量の測定には、魚の重量を測定する際に通常用いられる測定器及び内臓重量を測定する際に通常用いられる測定器を用いることができる。
本開示の一態様における低GSIブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期において、以下の特徴を備えることができる:
(A1-1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が20以上であって、GSIが2.5%以上10.0%以下である雄個体、
(A1-2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が20以上であって、GSIが5.0%以上9.0%以下である雄個体、
(B1-1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が19以上であって、GSIが1.0%以上4.5%以下である雌個体、
(B1-2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が19以上であって、GSIが2.0%以上4.0%以下である雌個体。
本開示の一態様における低GSIブリ属養殖魚は、以下の特徴を備えることができる:
(A2-1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が20以上であって、成熟期でのGSIが2.5%以上10.0%以下であり、成熟期後でのGSIが2.5%未満である雄個体、
(A2-2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が20以上であって、成熟期でのGSIが5.0%以上9.0%以下であり、成熟期後でのGSIが5.0%未満である雄個体、
(B2-1)体重が3.5kg以上かつ肥満度が19以上であって、成熟期でのGSIが1.0%以上4.5%以下であり、成熟期後でのGSIが1.0%未満である雄個体、
(B2-2)体重が4.0kg以上かつ肥満度が19以上であって、成熟期でのGSIが2.0%以上4.0%以下であり、成熟期後でのGSIが2.0%未満である雄個体。
本開示の低GSIブリ属養殖魚は、上述したような体重及び肥満度を備えると共にGSIが天然ブリよりも低いものである。このような特徴を備えた低GSIブリ属養殖魚は、少なくとも1.2歳以上、又は1.5歳以上、一般に2歳、又は3歳以上であることができる。特に、天然のブリと同様に春採卵の養殖魚だけでなく、秋採卵の養殖魚であってもよい。秋採卵のブリ養殖魚は、光照射、水温等の条件を人工的に制御すること、成熟ホルモンの投与を適用すること等によって、親魚から卵又は精子を採取する時期をずらすことによって得ることができる。
本開示の他のブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期の個体であって、体重が3.5kg以上かつ肥満度が18以上であって、GSIが雄の場合で0.5%以上20.0%以下、雌の場合で0.5%以上4.5%以下であるブリ属養殖魚である。このブリ属養殖魚を特に示す場合に、本明細書では「成熟期低GSIブリ属養殖魚」と称する場合がある。成熟期低GSIブリ属養殖魚は、上述した(A1-1)~(A1-2)又は(B1-1)~(B1-2)の特徴を備えていてもよい。
成熟期低GSIブリ属養殖魚は、成熟期後の低GSIブリ属養殖魚を効率よく得るために好ましい。
本開示の他のブリ属養殖魚は、生殖器官成熟期後の個体であって、体重が3.5kg以上かつ肥満度が17以上であって、GSIが、成熟期のGSI値よりも低いブリ属養殖魚である。このブリ属養殖魚を、本明細書では、「成熟期後低GSIブリ属養殖魚」と称する場合がある。成熟期後低GSIブリ属養殖魚としては、例えば、体重が3.5kg以上かつ肥満度が17以上であって、GSIが雄の場合で2.5%未満、雌の場合で1.0%未満のブリ属養殖魚、又は、体重が3.5kg以上かつ肥満度が17以上であって、GSIが雄の場合で0.5%未満、雌の場合で0.5%未満のブリ属養殖魚、とすることができる。
成熟期低GSIブリ属養殖魚及び成熟期後低GSIブリ属養殖魚は、本開示の低GSIブリ属養殖魚に関して上述した体重、GSI、生殖ホルモン、肥満度、尾叉長等に関する事項をそのまま適用することができる。
本開示に係る低GSIブリ属養殖魚は、養殖に用いる配合飼料の組成、日長条件、水温条件、養殖期間、給餌量、体重等を管理又は調整することによって、所定の範囲のGSIを調整することによって得ることができる。生殖腺の成熟を調整可能な方法としては、例えば、特開2013-188207号公報、特開2013-188207号公報、特表2015-510878号公報に記載された方法を挙げることができる。なかでも、生殖腺の成熟を調整可能な配合飼料の組成、生殖腺の成熟を調整可能な日長条件及び水温条件に基づいて、生殖腺の成熟を調整する方法を適用することが、外来物質の導入が少ない点で好ましい。
本開示に係るブリ属養殖魚は、本明細書に記載のブリ属養殖魚の飼育方法により得られたものであることできる。
<ブリ属養殖魚の飼育方法>
本開示に係る低GSIブリ属養殖魚の飼育方法は、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、(以下、「飼育工程」ということがある)、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること(以下、「成熟期個体獲得工程」と称することがある)、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、GSIが、生殖器官成熟期での数値よりも低いブリ属養殖魚を得ること(以下、「成熟期後個体獲得工程」と称することがある)を含み、必要に応じて他の工程を含む。
本飼育方法では、ブリ属養殖魚の飼育方法によれば、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることができる。
なお、「飼育方法」とは、本開示の低GSIブリ属養殖魚を生産するための方法として捉えることができ、「生産方法」、「作製方法」等のいずれの用語とも互換的に用いることができる。
また、「調節飼育」とは、日長条件及び水温条件を適宜調節しながら飼育することをいう。
〔飼育工程〕
飼育工程においては、調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚が用いられる。
上記仔魚としては、調節飼育環境下で2か月間飼育されたブリ属魚類から、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を購入等の手段により入手したものを用いてもよいし、上記飼育工程を行う者が、上記調節飼育環境下における少なくとも2ヵ月間の飼育、及び、上記採卵よりなる群から選ばれた少なくとも一方を行うことにより入手したものを用いてもよい。
また、採卵された卵は、仔魚を得るために採卵後に受精処理に供されるが、上記飼育工程を行う者が上記受精処理を行ってもよいし、上記飼育工程を行う者は上記受精処理後に得られた仔魚を購入等の手段により入手して飼育工程における生育に用いてもよい。
調節飼育における日長条件とは、9時間~15時間の明期と、9時間~15時間の暗期とを適宜組み合わせることを意味する。例えば、短日条件では、明期10時間及び暗期14時間を30日間行い、長日条件では、明期14時間及び暗期10時間を60日間行うことができる。水温条件とは、15℃~30℃、又は16℃~28℃の範囲内で水温を調整することを意味する。
調節飼育における日長条件及び水温条件は飼育に併せて適宜調整することができる。例えば、天然環境下で、好ましい明暗サイクル、又は水温が達成できれば、その条件をそのまま適用すればよい。
調節飼育環境下での飼育は、少なくとも2ヶ月、好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは7ヶ月以上、行うことができる。日長条件及び水温条件を調整することにより、例えば、雌個体の生殖器官の成熟を促すことができ、これにより、天然ブリよりも少なくとも3ヶ月早期に採卵が可能となる。
採卵は、人工的に行う。ここで「人工的」とは、採卵に際して、環境の調整、薬剤の投与等、外部から制御された環境下で産卵を誘導させることを意味する。その結果、例えば、天然ブリよりも早く採卵することができる。日本では、一年を通じてどの時期に採卵を行ってもよい。
採卵された卵は、その後、受精処理に供される。受精後の受精卵を、所定の環境下で保持することによってブリ属魚類の仔魚が得られる。ブリ属魚類の仔魚は、成育に供される。
飼育工程では、ブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始してブリ属魚類を成育させる。ブリ属魚類の仔魚から飼育を開始してブリ属魚類を成育させるためには、ブリ属魚類の仔魚から成魚まで、成長段階に適した環境下で通常行う方法を用いて飼育すればよい。海面養殖に適した大きさに達したブリ属魚類は、海面での飼育をすることができる。ブリ属魚類の飼育は、一般にブリが成育する環境下で行えばよい。
本明細書において、「ブリ属魚類の仔魚」は、孵化後から尾叉長が5cm程度よりも小さい個体を意味し、それ以降の稚魚及び成魚をまとめて「ブリ属魚類」と称する。
ブリ属魚類の飼育環境下の水温は、ブリ属魚類の成育効率の観点から15℃~28℃に調整することが好ましい。このとき、ブリ属魚類の仔魚の飼育開始時から、飼育環境下の水温を15℃~28℃の範囲内に調整することにより、より遅い時期から開始するよりも、ブリ属魚類の飼育段階の初期からブリ属魚類の成育速度を速めて、低GSIブリ属養殖魚を効率よく得ることができる。
飼育工程における水温の調整は、飼育段階に応じて変更することができる。例えば、ブリ属魚類の仔魚の飼育には、18℃~22℃に調整し、仔魚が成長してブリ属魚類となってから15℃~28℃に調整することができる。水温の調整には、加水、加温、周囲温度の調整、遮光、日照時間の調整、海面養殖場の選択、飼育魚の移槽等を挙げることができる。
飼育工程では、28℃を超える高水温の時期を含んでもよい。例えば30℃以上の高水温を成熟過程のブリ属魚類に経験させることは、適度なストレスを個体に負荷して成熟調整に有効であり得る。飼育工程において「高水温」となる水温は、例えば、29℃、30℃、又は31℃とすることができる。高水温の期間は、1日以上、2日以上、3日以上、又は5日以上とすることができる。高水温の期間は、連続した期間であってもよく、断続的であってもよい。
飼育工程では、より効果的に目的とするブリ属養殖魚を得るために、前記成育における飼育中に、形態異常及び/又は成長不良の個体の除去を行い、ブリ属魚類の個体を選抜することを含んでもよい。形態異常及び/又は成長不良は、摂餌効率、摂餌率、体重、体長、尾叉長等を基準に判断することができる。体重、体長、尾叉長等を総称して、本明細書では単に「サイズ」と称する場合がある。形態異常としては、たとえば、頭部陥没、脊椎湾曲、短躯、顎部異常等を挙げることができる。形態異常又は成長不良による選抜率は、以下の式により評価することができる。
選抜率(%)=正常魚の個体数/(形態異常又は成長不良の個体数+正常魚の個体数)×100
飼育工程では、個体の計量管理を行うことができる。個体の計量管理は、形態異常及び/又は成長不良に基づく個体選抜と併用して行ってもよい。計量管理は、ブリ属養殖魚のサイズを定期的に測定又は推定して、管理することを意味する。計量管理の方法としては、特に制限はなく、体重の測定、画像解析等を挙げることができる。例えば、1ヶ月毎に個体の重量を測りで測定することができる。この場合には、各個体の重量、すなわち体重を測定してもよく、数十匹まとめて測定し、平均を算出して、平均値で管理してもよい。また、画像解析手段としては、例えば、「AM-100」(AQ1 systems)を用いることができる。体重測定手段としては、例えば、「AM-100」(AQ1 systems)を用いることができる。
飼育工程におけるブリ属魚類の飼育期間は、3.5kg以上の体重を有する成熟期の個体が得られるまで継続することができ、12ヶ月以上であればよく、15ヶ月以上、18ヶ月以上、20ヶ月以上、又は22ヶ月以上とすることができる。飼育工程は、後述する成熟期後個体獲得工程まで継続することができる。
飼育工程における飼育は、海洋で行ってもよく、陸上で行ってもよい。個体管理の容易性及び低GSIブリ属養殖魚の獲得効率の観点から、少なくとも5ヶ月間の水面下10m~18mでの海中養殖を含むことが好ましい。このような海中養殖は、沈下式とも称されるものであり、水温の安定性に優れ、また波などの影響を受けにくい飼育環境を提供しやすい。海中養殖は、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも8ヶ月にわたって行うことができる。海中養殖の期間の上限には、特に制限はなく、飼育期間に応じて適宜設定できる。
海中養殖を行う水面下10m~18mは、15℃~28℃の範囲で水温が一定になっていることが多く、環境の安定性の観点から好ましい。ただし、海中養殖を行う水面下の位置は、10mよりも浅い位置又は18mよりも深い位置であってもよい。給餌の際には、海中養殖の位置を、海中から海面に引き上げることができる。また、通常は浅い位置ほど水温が高く、深い位置ほど水温が低い。このことを利用し、海面養殖を行う位置により水温を調整することもできる。また、上述した高水温による飼育を、海中養殖を行う際に適用してもよい。この場合には、たとえば、より高水温になりやすい海面近くに飼育位置を移動させることによって、簡便に高水温の飼育環境を提供し、より効率よく成熟調整を行うことができる。
本開示において、養殖に用いられる生簀の上限が海面以上の位置にある場合を海面養殖といい、生簀の上限が海面よりも下の位置にある場合を海中養殖という。
飼育工程で使用される飼料としては、特に制限はなく、ブリ属養殖魚に対して通常用いられるものを制限なく使用することができる。ブリ属養殖魚用飼料としては、飼料100重量部に対して0.1重量部~0.3重量部のトウガラシを含む飼料を用いることができる。以下、この飼料を「トウガラシ含有飼料」と称する。トウガラシは、ブリ属養殖魚における血合筋色調改善又は保持効果があることが知られており(例えば、特開2009-232864号公報)、低GSIブリ属養殖魚を得ることにも有効である。トウガラシ含有飼料におけるトウガラシは、トウガラシ成分又はトウガラシ粉末とすることができる。
トウガラシ含有飼料としては、トウガラシ以外にも、チョウジ油を含むことができる。チョウジ油の配合量としては、飼料100重量部に対して0.1重量部~0.25重量部とすることができる。
トウガラシ含有飼料による給餌の期間については特に制限はなく、例えば少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は少なくとも3ヶ月間、給餌することができる。
飼育工程におけるブリ属魚類に対する給餌は、低GSIブリ属養殖魚を効率よく得る観点から、飼育期間において制限なく行うことが好ましい。すなわち、飼育工程では、飼料の量及び組成等において制限を設けることなく、飽食給餌を行うことが好ましい。飽食給餌とは、水面上で餌を要求する個体が観察されなくなるまで給餌を行うことをいう。低GSIブリ属養殖魚をより効率よく得る観点から、高度飽食給餌することが好ましい。高度飽食給餌とは、水中カメラによる観察を行いながら、摂餌が見られなくなるまで給餌をすることをいう。これにより、水面では確認できない水中での摂餌行動も加味し、より多くの個体、好ましくは飼育下にある全ての個体での飽食を達成することができる。高度飽食給餌を行うことにより、飼育工程におけるブリ属魚類の成育速度が速く、より確実に、成熟期低GSIブリ属養殖魚を得ることができる。
飼育工程では、形態異常及び成長不良からなる群より選択される少なくとも一方の発育不良を有する個体を除去することが好ましい。このような発育不良を有する個体を除去することで、生殖腺の成長状態よりも良好な成育状態の個体を選抜して、より効率的に低GSIブリ属養殖魚を得ることができる。形態異常を有する個体とは、頭部陥没、脊椎湾曲、短躯、顎部異常等が見られる個体であり、観察により明らかに外見上の異常があると確認できる個体をいう。成長不良を有する個体とは、観察により明らかに、同時期の成育状態よりも劣ることが確認できる個体をいう。形態異常の個体は成長に制限がかかることから、全体重という観点から成長不良を引き起こしやすい。形態異常が生殖腺の成長を止めない場合には、形態異常の個体を除去することによって、GSIが高い成長不良の個体を排除できる。
〔成熟期個体獲得工程〕
成熟期個体獲得工程では、生殖器官成熟期に、GSIが0.5%以上10.0%以下の雄個体、又は、GSIが0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚が得られる。
ここで得られる成熟期ブリ属養殖魚は、3.5kg以上の体重及び18以上の肥満度を有する成熟期個体であると共に、成熟期個体の天然又は他の養殖魚よりも低いGSIを有する。このような成熟期ブリ属養殖魚を得ることによって、後続の成熟期後個体獲得工程における成熟後低GSIブリ属養殖魚を得ることができる。
成熟期個体獲得工程では、目的とするGSI、体重及び肥満度を有する個体を、サイズの測定、血中ホルモン濃度の測定等を行うことによって選抜することができる。サイズの測定には、計量管理に関して既述した方法を適用することができる。血中ホルモンとしては、11-KT、DHP、E2等を挙げることができる。11-KT、DHP及びE2の測定は、上述した方法を適用することができる。
成熟期ブリ属養殖魚の肥満度は、比較的高いものであり、好ましくは、19以上、20以上、又は21以上であってもよい。成熟期ブリ属養殖魚における肥満度の上限値は特に制限はなく、例えば28以下、又は27以下とすることができる
成熟期ブリ属養殖魚について、上述した事項をそのまま適用することができる。
成熟期個体獲得工程までを含む飼育方法によって、成熟期ブリ属養殖魚を得ることができる。ここで得られた成熟期ブリ属養殖魚の生殖器官は充分に成熟しているため、この個体から卵又は精子を得ることができる。ここで得られた成熟期ブリ属養殖魚からの卵又は精子は、有用な形質を有するブリ属養仔魚を得るための種苗として使用することができる。すなわち、本開示に係るブリ属養殖魚の飼育方法は養殖の持続性に優れるといえる。また成熟期ブリ属養殖魚は、次の成熟期後個体獲得工程へ供給されてもよい。
〔成熟期後個体獲得工程〕
成熟期後個体獲得工程では、得られた成熟期ブリ属養殖魚から、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、GSIが、生殖器官成熟期での数値よりも低いブリ属養殖魚、すなわち成熟期後ブリ属養殖魚が得られる。成熟期後のブリ属養殖魚については、成熟期後低GSIブリ属養殖魚に関して上述した事項をそのまま適用することができる。
得られた成熟期後ブリ属養殖魚は、体重3.5kg未満又は肥満度17未満まで痩せることが回避されたブリ属養殖魚であり、このような有用な形質を次世代に継続させることができる。
目的とするGSI、体重及び肥満度を有する個体は、成熟期ブリ属養殖魚と同様に、サイズ、血中ホルモン濃度等の値によって選抜することができ、または水揚げして生殖器官の重量を計測することによって選抜することもできる。
〔用途〕
また本開示に係るブリ属養殖魚の飼育方法を用いることによって、良好な形質を有するブリ属養殖魚の提供時期を調整することができる。本開示に係る成熟期後ブリ属養殖魚は、養殖魚の状態等に応じて適切な時期に提供することができ、たとえは、成熟期から半年以内、4カ月以内、3カ月以内、又は2カ月以内に提供することができる。例えば、3歳の成熟期ブリ属養殖魚を、4月~5月に得る場合には、成熟期後ブリ属養殖魚は、5月~9月に提供することができる。これにより、例えば、赤潮が発生しやすい夏前に良好な肥満度及び体重を示すブリ属養殖魚を安定して提供することができる。
本開示の低GSIブリ属養殖魚は、充分な体重及び肥満度を備えているので、養殖魚としての栄養価が高い。このため、天然ブリ、延いては肥満度が17未満であり、GSIが高いブリ属養殖魚と比較して、本開示の低GSIブリ属養殖魚は、良質な可食部の割合を多く有することができる。
ブリ属養殖魚の可食部は、加工食品、例えば以下の加熱食品及び非加熱食品として好ましく用いられるほか、動物用飼料としても適用できる。一実施形態にかかる加工食品及び動物用飼料は、低GSIブリ属養殖魚の可食部を含むことができる。
動物用飼料としては、キャットフード、ドッグフード、養殖魚用飼料、養鶏用飼料、畜産飼料などを挙げることができる。動物用飼料における低GSIブリ属養殖魚の可食部の割合については、特に制限はなく、0.1重量%~100重量%等とすることができる。動物用飼料は、低GSIブリ属養殖魚の可食部以外にも、対象となる動物の種類に応じて、ビタミン等の他の栄養素、水等の動物用飼料として許容可能な担体、賦形剤等の他の添加剤を、必要に応じて適宜含むことができる。動物用飼料は、後述する容器に収容されたものであってもよい。食品としては、非加熱食品、加熱食品などを挙げることができる。
本開示の一実施形態は、低GSIブリ属養殖魚の可食部と、前記可食部を収容する容器を含む低GSIブリ属養殖魚の加工食品を含む。加工食品としては、加熱品及び非加熱品を含むことができる。
非加熱品とは、加熱調理に付していない可食部を意味し、すり身、さしみ、さく、ブロック及び切り身、並びに、これらの冷凍品、チルド品、フリーズドライ品、干物、漬けなどを挙げることができる。加熱調理に付していないことは、可食部表面の色調で判断することができる。本明細書において「加熱」とは、視認できる程度にアクトミオシンが変性する状態にまで、熱が付与されることを意味する。養殖魚の可食部に対して加熱処理を行うと、アクトミオシンの変性によって可食部が変色するため、可食部の変色に基づいて判断することができる。
加熱品とは、加熱調理に付された可食部を意味し、煮物、焼き物、蒸し物、揚げ物、練り製品などを挙げることができる。
加工食品に含まれる可食部の形状は特に制限はなく、可食部の部位特有の形状を有していてもよく、細断されて得られる不定形のものであってもよく、更に特定の形状の成形されたものであってもよい。
加工食品には、必要に応じて、他の食品、食品素材、及び付属品からなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。他の食品としては、米、つま(だいこん、海藻類等)、しょうが(がり)、スプラウトなどを挙げることができる。食品素材としては、ねぎとろ用ねぎなどを挙げることができる。付属品としては、例えば、バラン、表示(ラベル)、保冷剤、冷却剤、氷、ドライアイス,シャーベットアイスなどを挙げることができる。付属品は、可食部と共に容器内に収容されていてもよく、容器の外側に配置されていてもよく、また、容器と一体不可分であってもよく、脱着自在に添付されていてもよい。他の食品、食品素材及び付属品はそれぞれ、1つ又は2以上の組み合わせであってもよい。
容器は、可食部を収容するために用いられるものであればよく、発泡スチロール、紙、ビニール、軟質プラスチック、硬質プラスチック、金属、ガラスなどの材質のものが例示できる。容器の形状は、可食部を収容できるものであればよく、包装用シート、蓋付き又は蓋なしのトレー、袋、缶、瓶などを例示できる。
本開示の低GSIブリ属養殖魚は、他の低GSIブリ属養殖魚、又は他の形質を有するブリ属養殖魚と掛け合わせすることが可能である。これより、低GSIブリ属養殖魚の遺伝的な形質を有する子孫を得て、養殖用の種苗として利用することができる。
以下、本開示を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」又は「%」は質量基準である。
[実施例1]
ブリの仔魚を、天然環境下で24ヶ月間飼育し、その後、29ヶ月目から、日長条件及び水温を調整して飼育を開始した。給餌は、通常1日1回飽食給餌、冬季2日1回飽食給餌とした。日長条件としては、短日条件と長日条件を採用した。その他、飼育条件は特開2007-300837号公報に記載の条件に準じて調整した。
ホルモン剤を注射して産卵を誘発させて、雌個体から採卵した。雄個体からは精子を採取して、受精させ、ブリの仔魚を得た。仔魚について、18℃~20℃の水温で、陸上にて飼育を開始した。稚魚に成育した3か月目から、海面に設置された生け簀で飼育した。上記稚魚を水面下10m~18mに沈下させて海中養殖を開始した。稚魚期には15℃~22℃の水温になるように調整した。成魚期には15℃~28℃の水温になるように調整し、また、飼育期間では、生育中の個体の体重が500g~1kg程度となる期間において少なくとも30℃になる日を連続して2日以上設けて、成育中の個体に高水温を経験させた。
給餌は、通常1日1回高度飽食給餌、冬季2日1回高度飽食給餌とし、一年を通じて高度飽食給餌とし、給餌制限は行わなかった。ただしこのときの高度飽食給餌は通常の水面観察による高度飽食給餌ではなく、カメラにより水中の摂餌行動を観察して得られた最適な高度飽食給餌方法に基づく。海面養殖の期間では、水面下10m~18mに沈下させて飼育されている稚魚又は成魚を、給餌の度に海面まで引き上げた。飼料には、市販のEP(エクストルーデッドペレット)に、飼料100重量部に対して0.1重量部~0.3重量部のトウガラシ粉末を添加したものを用いた。
また、稚魚が2g~20gとなった際、陸上水槽より取り上げ、海面生け簀に移動した。上記操作を「沖出し」ともいう。飼育期間中沖出し後は、随時、体長、大きさ、形態等を確認し、1ヶ月おきに体重測定を行った。体重測定には、AM-100(AQ1 system)を使用した体重測定方法を採用した。これらの結果に基づいて、形態異常(頭部陥没、脊椎湾曲、短躯、顎部異常)がなく、成育速度が良好と思われる個体のみを飼育した。形態異常等での選抜率は50~95%だった。
海中養殖を開始してから5ヶ月目以上となる生殖器官成熟期に、平均体重4.63kg、平均尾叉長61.03cm、平均肥満度20.35の雄と、平均体重4.66kg、平均尾叉長61.60cm、平均肥満度19.91の雌の2歳魚をそれぞれ得た。これらの2歳魚の生殖腺重量を測定して、GSIを算出し、また血中ホルモン濃度を以下のように測定した。
血液は魚の心臓部から抜き取り、遠心分離後に上清部分を採取し、分析まで-80℃にて保管した。血液を抜き取る際には、ヘパリンナトリウム(濃度:5,000 units/mL、和光純薬工業株式会社)にて処理したシリンジを用いた。
11-KTの量については、Testosterone, 11-Keto-, EIA Kit(Strip Plate)(Cayman Chemicals社)を使用して測定した。DHPの量については、Maturation-Inducing Steroid (salmonid) AChE Tracer、Maturation-Inducing Steroid (salmonid) EIA Antiserum、Precoated (Mouse Anti-Rabbit IgG) EIA 96well Strip Plate を使用して、Gen. Comp. Endocrinol. 106, 181-188に記載された方法に従って、時間分解蛍光免疫測定法(Time Resolved Fluoroimmunoassay:TR-FIA)により測定した。E2の量については、Estradiol, EIA Kit (Strip Plate)(Cayman Chemicals社)を使用して測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2022019931000001
表1に示されるように、低GSIでありながら、体重3.5kg以上且つ肥満度が18以上の成熟期のブリ養殖魚を得ることができた。
これらの成熟期のブリ養殖魚は、産卵又は放精を行うことが可能であった。得られたブリ養殖魚を低GSI同士の個体で掛け合わせたところ、次世代のブリ仔魚を得ることができた。すなわち、本実施例において得られたブリ属養殖魚は、養殖の持続性に優れるといえる。
得られた成熟期のブリ養殖魚は、成熟期後となる2ヶ月後の6月に、体重3.5kg以上及び肥満度17以上であって、雄個体及び雌個体とも0.5未満のGSIであることが確認できた。
[実施例2]
実施例1と同様にして、早期採卵により得られた仔魚から飼育を行い、2歳魚の雌個体としての成熟期ブリ養殖魚と、成熟期から74日後の4月の雌個体としての成熟期後ブリ養殖魚を得た。これらの成熟期ブリ養殖魚と成熟期後ブリ養殖魚について、実施例1と同様にして体重、肥満度及びGSIを測定した。結果を表2に示す。
表2に示されるように、成熟期後であっても体重は3.5kg以上、肥満度17以上を有する個体であった。
Figure 2022019931000002
このブリ養殖魚は、GSIが充分に低いため可食部の割合が高く、肥満度も高いことから商品価値が高く、また、食したところ美味しかった。
このように、本開示によれば、生殖器官の成熟期後に痩せにくく、かつ持続性に優れたブリ属養殖魚を得ることができる。

Claims (14)

  1. 調節飼育環境下で、ブリ属魚類を少なくとも2ヶ月間飼育してから、人工的に採卵して得られたブリ属魚類の仔魚を用いて飼育を開始し、ブリ属魚類を成育させること、
    生殖器官成熟期に、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上4.5%以下の雌個体であって、肥満度18以上及び体重3.5kg以上の成熟期ブリ属養殖魚を得ること、
    得られた成熟期ブリ属養殖魚から、生殖器官成熟期後に、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期での数値よりも低い、ブリ属養殖魚を得ること
    を含むブリ属養殖魚の飼育方法。
  2. 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが1.0%以下である請求項1記載の飼育方法。
  3. ブリ属魚類の仔魚の飼育開始時から、ブリ属魚類の飼育環境下の水温を、15℃~28℃に調整する請求項1又は請求項2記載の飼育方法。
  4. 前記成育における飼育中に、形態異常及び/又は成長不良の個体の除去を行い、ブリ属魚類の個体を選抜することを含む、請求項1~請求項3のいずれか1項記載の飼育方法。
  5. 前記成育における飼育が、少なくとも5ヶ月間の水面下10m~18mでの海中養殖を含み、15ヶ月以上行われる、請求項1~請求項4のいずれか1項記載の飼育方法。
  6. 前記成育における飼育中に、ブリ属魚類の計量管理を行う請求項1~請求項5のいずれか1項記載の飼育方法。
  7. 前記成育における飼育中に、飼料100重量部に対して0.1重量部~0.3重量部のトウガラシを含む飼料を、少なくとも1ヶ月間、ブリ属魚類に給餌することを含む請求項1~請求項6のいずれか1項記載の飼育方法。
  8. 雌のブリ属養殖魚であって、
    生殖器官成熟期において、肥満度18以上及び体重3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が0.5%以上4.5%以下であり、
    生殖器官成熟期後において、肥満度17以上及び体重が3.5kg以上であって、生殖腺体指数(GSI)が、生殖器官成熟期の数値よりも低い、
    ブリ属養殖魚。
  9. 生殖器官成熟期後のブリ属養殖魚のGSIが雌個体で1.0%以下である請求項8記載のブリ属養殖魚。
  10. 生殖器官成熟期後の雌個体であって、肥満度17以上及び体重3.5kg以上であり、生殖腺体指数(GSI)が0.5%未満であるブリ属養殖魚。
  11. 生殖器官成熟期の雌個体のブリ属養殖魚が、以下の(4)~(6)の少なくともひとつを満たす請求項8記載のブリ属養殖魚:
    (4) 11-ケトテストステロン(11-KT)の血中濃度が、20pg/mL~175pg/mL、
    (5) 17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(DHP)の血中濃度が、100pg/mL~350pg/mL、及び、
    (6) エストラジオール(E2)の血中濃度が、300pg/mL~10000pg/mL。
  12. 尾叉長が50cm以上である請求項8~請求項11のいずれか1項記載のブリ属養殖魚。
  13. ブリ、ヒラマサ、カンパチ、又はヒレナガカンパチである請求項8~請求項12のいずれか1項記載のブリ属養殖魚。
  14. 請求項1~請求項7のいずれか1項記載の飼育方法で得られたブリ属養殖魚。
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