JP2022019277A - 発泡紙積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマス樹脂を含む印刷層を有し、優れた耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性が得られ、発泡紙製容器の部材として好適に使用できる発泡紙積層体を提供する。【解決手段】原紙と、前記原紙の一方の面に設けられた熱可塑性樹脂層(A)と、上記原紙の他方の面に設けられた発泡熱可塑性樹脂層(B)とからなる発泡紙、及び上記発泡熱可塑性樹脂層(B)上に設けられた印刷層を具備した発泡紙積層体であって、上記印刷層が、少なくともバインダー樹脂を含み、上記バインダー樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含む、発泡紙積層体。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、発泡紙積層体に関する。
発泡容器は、優れた断熱性を有することから、高温又は低温の液体を含む食品を収容するための容器として広く使用されている。なかでも、容器に収容したラーメン、うどん、及び蕎麦といった即席麺に適量の熱湯を注ぐだけで、数分後に食すことができる、一般的に「カップ麺」と称される製品において発泡容器は欠かせない。カップ麺用の発泡容器として、発泡スチロール製容器、及び発泡紙製容器が知られているが、近年、環境負荷及び安全性の観点から、発泡紙製容器が注目されている。
発泡紙製容器は、紙基材と、容器製造時などの加熱によって発泡し、断熱層を形成する熱可塑性樹脂層とを有する発泡紙材料を用いて製造される。通常、発泡紙製容器(発泡紙材料)の表面には、装飾模様、社名、バーコードなどの印刷パターンを含む印刷層が形成される。そのため、印刷層は、発泡紙材料の熱可塑性樹脂層が加熱によって発泡し断熱層を形成する際に、発泡を妨げることなく、発泡追随性に優れることが望ましい。また、熱可塑性樹脂層が発泡した後の発泡紙積層体における印刷層の表面(印刷面)は、平滑であり、ひび割れ及び火脹れなどがなく、優れた外観(以下「発泡外観」という)を有することが望ましい。また、印刷面は、容器製造時に必要となる耐摩擦性及び耐熱性などの各種耐性に優れることが望ましい。さらに、食品分野では、消毒のためにエタノールなどの溶剤が汎用されることから、印刷層には耐エタノール性などの耐溶剤性も要求される。
従来から、発泡紙製容器の印刷層の形成には、グラビアインキ又はフレキソインキが用いられている。例えば、特許文献1及び特許文献2は、発泡紙製容器の印刷層を形成するインキとして、バインダー樹脂及び顔料を含み、上記バインダー樹脂がウレタン樹脂を含む発泡紙製容器(発泡カップ)用インキを開示している。
一方、循環型社会を構築するために、近年、バイオマス樹脂が注目されている。例えば、フィルム状のバイオマス樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、又はバイオマス原料由来のポリエチレン樹脂などが商業化されている。また、特許文献3~5では、バイオマス樹脂を用いた環境対応型インキ、及び当該インキを使用した積層体が開示されている。
国際公開第2009/119800号 特開2018-109131号公報 特開2018-058955号公報 特開2014-004799号公報 特開2014-005414号公報
上述のように循環型社会を構築する観点から、発泡紙製容器の分野においても、従来の化石燃料から得られる樹脂に代えて動植物由来の原料を使用したバイオマス樹脂を採用することが望ましい。一方、発泡紙製容器における印刷層には、耐摩擦性及び耐エタノール性などの各種特性に加えて、耐熱性及び発泡追随性、並びに発泡外観などの特殊な性能も要求される。なかでも、加熱加工時の印刷層の耐熱性が重要である。
発泡紙製容器の用途では、容器の製造において、発泡層を形成する工程で加熱加工に伴い基材が膨張する。そのため、印刷層の耐熱性が不十分である場合、容器の製造過程で印刷層が基材から剥離し、装置に堆積するなどのトラブルが生じやすくなる。したがって、発泡紙製容器における印刷層には、加熱され、かつ基材が膨張する条件下であっても基材から剥離しない耐熱性が求められる。
上述のように、発泡紙製容器の用途では発泡層を形成する加熱加工に伴い基材が膨張する。一方、包装などの一般的な用途では、印刷層形成後に加熱加工を実施することはないため、基材は殆ど変形しない。このような違いがあることから、発泡紙製容器の印刷層を形成するためのインキ成分を一般的な用途で使用される環境対応型インキに単純に置換えるだけでは耐熱性等の所望とする各種特性を十分に満足できるレベルで得ることは困難である。そのため、バイオマス樹脂を使用した発泡紙製容器の開発が望まれているが、上述のように発泡紙製容器では特殊な性能が要求されることからバイオマス樹脂の採用は進んでいない。したがって、本発明の実施形態は、上述の状況に鑑み、バイオマス樹脂を含む印刷層を有し、優れた耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性が得られ、発泡紙製容器の部材として好適に使用できる発泡紙積層体を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために、発泡紙積層体の印刷層を構成する樹脂成分について鋭意検討を行い、特定のバイオマス樹脂を含む印刷層を形成することによって、耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性といった印刷層の特性とにおいて良好な結果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の実施形態に関するが、これらに限定されることなく様々な実施形態を含む。
一実施形態は、原紙と、上記原紙の一方の面に設けられた熱可塑性樹脂層(A)と、上記原紙の他方の面に設けられた発泡熱可塑性樹脂層(B)とからなる発泡紙、及び上記発泡熱可塑性樹脂層(B)上に設けられた印刷層を具備した発泡紙積層体であって、
上記印刷層が、少なくともバインダー樹脂を含み、
上記バインダー樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含む、発泡紙積層体に関する。
一実施形態において、ウレタン樹脂は、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構造単位をさらに有することが好ましい。ひまし油ポリオール由来の構造単位(a1)とポリエステルポリオール由来の構造単位(a2)との質量比(a1)/(a2)は、75/25~10/90であることが好ましい。
一実施形態において、ウレタン樹脂の全質量を基準として、ポリエーテルポリオール由来の構造単位の含有量は8質量%以下であることが好ましい。
一実施形態において、ひまし油ポリオールの重量平均分子量は、1,000~5,000であることが好ましい。
一実施形態において、バインダー樹脂は、さらに塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含み、バインダー樹脂の全質量を基準として、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の含有量は5質量%以上、50質量以下であることが好ましい。
一実施形態において、バインダー樹脂の伸び率は、400%~3,000%であることが好ましい。
本発明によれば、バイオマス樹脂を含む印刷層を有し、優れた耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性が得られ、発泡紙製容器の部材として好適に使用できる発泡紙積層体を提供することができる。
図1は、一実施形態である発泡紙積層体を具備してなる発泡紙製容器の構造例を示す斜視図である。 図2は、図1に示した発泡紙製容器の一部(参照符号I部)を拡大して示す模式的断面図である。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
<1>発泡紙積層体
一実施形態は、発泡紙積層体に関する。発泡紙積層体は、熱可塑性樹脂層(A)、紙基材、及び発泡熱可塑性樹脂層(B)を順次有する発泡紙と、上記発泡紙の上記発泡熱可塑性樹脂層(B)の表面に形成された印刷層とを有する。上記印刷層は、バインダー樹脂として少なくともバイオマス樹脂を含み、バイオマス樹脂は、少なくともバイオマス由来のウレタン樹脂を含むことが好ましい。一実施形態において、バインダー樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含む。上記ウレタン樹脂は、原料となるポリオール成分として、少なくともひまし油ポリオールを使用して得られるバイオマス由来のウレタン樹脂である。このようなバイオマス由来のウレタン樹脂の詳細については後述する。
一実施形態において、上記発泡熱可塑性樹脂層(B)は、単位表面積あたりの発泡セル数が1000個/1cm以上であり、かつ25℃のエタノール中に、30分間浸漬した後の印刷層の残存率が50質量%以上であることが好ましい。
上記発泡熱可塑性樹脂層(B)(以下、発泡層(B)ともいう)の単位表面積あたりの発泡セル数は、数が多いほど発泡層(B)に存在する気泡が小さく、数が少ないほど発泡層(B)に存在する気泡が大きいことを意味する。発泡層(B)に存在する気泡が大きくなると、印刷面のひび割れ、及び火脹れといった外観不良が起こりやすくなる。
一実施形態において、発泡層(B)の単位表面積あたりの発泡セル数は、1000個/1cm以上であることが好ましく、1250個/1cm以上であることがより好ましい。発泡セル数が上記範囲である場合、発泡層(B)上に形成された印刷層において、ひび割れ及び火脹れのない優れた発泡外観を容易に得ることができる。一方、発泡セル数の上限は特に限定されない。一実施形態において、製造条件などの観点から、上記発泡セル数は1600個/1cm以下であってよい。
ここで、「単位面積あたりの発泡セル数」とは、発泡層(B)の表面において、縦横(X-Y)方向に一定の長さで区画される範囲内に存在する独立セル(気泡)の数をカウントし、1cmあたりの独立セル数として算出される値を意味する。独立セル数は、発泡紙積層体の印刷層を溶剤で除去し、発泡層(B)の表面を露出させた後に、光学顕微鏡を用いて発泡層(B)の表面を観察することによって決定される。
発泡層(B)の厚さは、断熱性の観点から、500μm以上であることが好ましく、630μm以上であることがより好ましい。発泡層(B)の厚みが500μm以上であれば、発泡紙積層体をカップ状の容器に成形し、その容器内に100℃程度の熱水を注いだ場合にも、容器を素手で継続的に保持することが容易となる。一方、省資源化の観点から、樹脂の使用量は、できる限り少ない方が好ましい。また、断熱性の観点からは、断熱層として過剰品質となるほどの厚みは必要ない。したがって、発泡層(B)の厚さは、950μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μmであることが極めて好ましい。
上述の観点から、一実施形態において、上記発泡層(B)の厚さは、500~950μmが好ましく、500~900μmがより好ましく、500~800μmがさらに好ましい。発泡層(B)の厚さは、発泡紙積層体の断面を光学顕微鏡写真で観察し、紙基材の上面から、印刷層の下面までの高さを測定することによって決定される。
上記実施形態の発泡紙積層体において、発泡紙の発泡層(B)は、加熱によって熱可塑性樹脂層が発泡した後の状態を意味する。すなわち、発泡層(B)は、前駆体となる未発泡の熱可塑性樹脂層(発泡熱可塑性樹脂層形成層(B))を加熱し、発泡させることによって形成される。一実施形態において、上記発泡紙積層体を構成するために、熱可塑性樹脂層(A)と、紙基材と、上記熱可塑性樹脂層(A)よりも低い融点を有し、加熱処理によって発泡する、発泡熱可塑性樹脂層形成層(B)とを順次有する発泡紙材料(加熱前発泡紙)を使用することができる。発泡紙材料は当技術分野で公知の材料から構成することができる。以下、発泡紙積層体の構成材料について具体的に説明する。
(紙基材)
発泡紙積層体を構成する紙基材は、特に限定されない。例えば、クラフト紙、又は上質紙を使用することができる。容器として使用する時に十分な強靭さを実現する観点から、紙基材の坪量は、150~450g/mであることが好ましく、250~400g/mであることがより好ましい。また、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂の好適な発泡性を得る観点から、紙基材に含まれる水分量は4~10質量%が好ましく、5~8質量%がより好ましい。
(熱可塑性樹脂層、発泡層形成層)
一実施形態において、熱可塑性樹脂層(A)、及び発泡熱可塑性樹脂層形成層(B)(以下、発泡層形成層(B)ともいう)は、それぞれ、従来から容器材料として周知の樹脂材料からなるフィルムであってよい。例えば、ポリエチレン、及びポリプロピレンなどの延伸及び無延伸ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セロファン、及びビニロンからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなるフィルム(熱可塑性樹脂フィルム)を使用することができる。一実施形態において、ラミネート適性及び発泡性に優れることから、ポリエチレンフィルムを好適に使用することができる。さらに、環境負荷を低減させる観点から、熱可塑性樹脂層(A)及び発泡層形成層(B)の少なくとも一方は、バイオマス由来のポリエチレン樹脂から構成されるフィルムであることが好ましい。
発泡紙材料は、互いに融点が異なる熱可塑性樹脂フィルムを、それぞれ紙基材にラミネートすることによって構成することができる。ここで、熱可塑性樹脂層(A)として紙基材の一面に設けられる熱可塑性樹脂フィルムよりも、発泡層形成層(B)として紙基材の他面に設けられる熱可塑性樹脂フィルムの融点(Mp)が低くなるように材料を選択する。発泡紙材料では、加熱処理時に紙基材中の水分が蒸発し、その蒸発した水分が、軟化状態になった発泡層形成層(B)(低Mp樹脂フィルム)側に押し出される。そして、そのような押し出しに伴って上記低Mp樹脂フィルムが外側に向かって膨み(発泡し)、発泡層(B)が形成される。このようにして形成される発泡層(B)は、容器において断熱層として機能する。一方、熱可塑性樹脂層(A)(高Mp樹脂フィルム)については、低Mp樹脂フィルムが加熱処理によって発泡する時に、溶融又は軟化しない材料を選択する。
発泡紙積層体を使用して発泡紙製容器を製造する観点から、発泡紙材料は、例えば、紙基材の一面(容器の内側)に約125℃~140℃の融点を有する高Mpポリエチレンフィルム(熱可塑性樹脂層(A))、及び上記紙基材の他面(容器の外側)に約105℃~120℃の融点を有する低Mpポリエチレンフィルム(発泡層形成層(B))をそれぞれラミネートした構造を有してよい。発泡紙製容器の製造時などの加熱によって、低Mpポリエチレンフィルムが発泡して発泡層を形成する。一方、高Mpポリエチレンフィルムは、被覆層として機能することが好ましい。すなわち、被覆層は、低Mpポリエチレンフィルムの発泡中に、紙基材中の水分が外部に蒸散することを抑制し、紙基材中の水分を効率よく発泡に寄与させることが可能である。
一実施形態において、発泡層形成層(B)の材料は、ポリエチレン樹脂のなかでも、低密度ポリエチレン樹脂(密度910~925kg/m、融点105~120℃)を含むことが好ましい。低密度ポリエチレン樹脂の密度は、より好ましくは910~922kg/mであり、さらに好ましくは910~918kg/mである。発泡層形成層(B)の材料として、中密度ポリエチレン樹脂(密度925~940kg/m、融点115~130℃)、及び高密度ポリエチレン樹脂(密度940~970kg/m、融点125~140℃)を使用した場合、融点が高く、十分な発泡性を得ることが困難となる傾向がある。また、均一に発泡した層を得る観点から、ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」という)は、8~28g/10分であることが好ましく、10~20g/10分であることがより好ましい。
一実施形態において、バイオマス由来のポリエチレンフィルムを組合せることが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂層(A)としてブラスケム株式会社製の「SHE150(密度948Kg/m、MFR 1g/10分)」を使用し、発泡層形成層(B)の材料としてブラスケム株式会社製の「SBC818(密度918kg/m、MFR8.1g/10分)」を使用することができる。
特に限定するものではないが、一実施形態において発泡層形成層(B)の膜厚は、40μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましい。膜厚を40μm以上に調整することによって、加熱処理後に十分な断熱性を得ることができる。
一方、省資源化の観点から、樹脂の使用量は、できる限り少ない方が好ましい。また、断熱性の観点においても、過剰品質となるほどの厚さは必要ない。したがって、発泡層形成層(B)の膜厚は、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが極めて好ましい。
(印刷層)
上記実施形態の発泡紙積層体において、印刷層は、発泡紙材料の発泡層形成層(B)の表面にインキ組成物を塗布して得られる塗膜である。印刷層(すなわちインキ組成物)を構成する塗膜の主成分はバインダー樹脂であり、バインダー樹脂は、少なくとも、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含むことを特徴とする。このようなバイオマス由来のウレタン樹脂を使用することで、加熱加工時の耐熱性及び発泡追随性、並びに発泡外観及び耐エタノールといった特性に優れ、発泡紙製容器の部材として好適に使用できる発泡紙積層体を実現することができる。
一実施形態において、印刷層(乾燥後の塗膜)の厚さは、印刷層による発泡抑制力、及び耐摩擦性の観点から、0.5~5.0μmであることが好ましい。印刷層の厚さは、より好ましくは0.5~4.0μmであってよく、さらに好ましくは0.5~3.5μmであってよい。
上記実施形態では、印刷層を構成するバインダー樹脂としてバイオマス由来のウレタン樹脂を使用するため、従来の石油由来の樹脂を使用した場合よりも、環境負荷を低減することができる。このような観点から、バインダー樹脂の全質量を基準とするバイオマス度は10質量%以上であることが好ましい。他の実施形態において、印刷層は着色剤とバインダー樹脂とを含んでよい。この場合、着色剤とバインダー樹脂との合計100質量部とするバイオマス度は10質量%以上であることが好ましい。循環型社会を構築する観点において、バイオマス度は高いほど好ましい。具体的には、バイオマス度は15質量%以上であることがより好ましい。
本明細書において「バイオマス度」とは、原料として使用した全成分におけるバイオマス由来の原料の割合を意味する。例えば、バインダー樹脂の合成後に得られる化合物におけるバイオマス由来の成分の割合を意味する。すなわち、バイオマス由来の成分において、原料が植物油等のように全てバイオマス由来からなるものであれば、バイオマス度は100%である。一方、バイオマス由来の原料とバイオマス由来でない(例えば石油に由来する)原料とが一定比率で反応して得られる化合物の場合は、化合物中のバイオマス由来の原料の割合がバイオマス度となる。この場合、バイオマス度は、反応前の原料質量に換算して計算でき、以下の式(1)で表される値である。
式(1):バイオマス度=100×化合物中のバイオマス由来成分の全質量/化合物の全質量
より具体的には、例えば、バイオマス由来のポリオール(バイオマス度A%)と石油由来のジイソシアネートとの反応物であるウレタン樹脂の場合、バイオマス度は下式で表される。
バイオマス度=100×(バイオマス由来のポリオールの質量×A%)/ウレタン樹脂の質量
上記式において、「ウレタン樹脂の質量」とは、バイオマス由来のポリオールと石油由来のジイソシアネートとの和であり、「バイオマス由来のポリオール」とは、ウレタン樹脂に使用された全てのバイオマス由来のポリオールの合計である。
上記実施形態の発泡紙積層体では、ポリオール成分として、少なくともひまし油ポリオールを使用するため、バイオマス度を高めることが容易である。なお、バイオマス度は、加速器質量分析などを使用して化合物における放射性炭素(14C)の濃度を測定することによって決定することもできる。石油由来の化合物には放射性炭素が存在しないことから、バイオマス由来の化合物は、バイオマス度によって石油由来の化合物と区別することもできる。
<2>インキ組成物
一実施形態は、上記実施形態の発泡紙積層体の印刷層を形成するために好適に使用できるインキ組成物に関する。インキ組成物は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含むバインダー樹脂、及び溶媒を含む。他の実施形態において、インキ組成物は、顔料などの着色剤をさらに含んでもよい。インキ組成物は、上記成分に加えて、必要に応じて、各種添加剤をさらに含んでもよい。以下、インキ組成物の構成について説明する。
(バインダー樹脂)
発泡層(B)を形成する加熱加工時に、印刷層は、発泡層形成層(B)の発泡を阻害せず、発泡追随性に優れることが好ましい。その一方で、印刷面のひび割れ及び火膨れといった発泡外観不良を抑制するためには、発泡層形成層(B)の発泡を印刷層によって適切に制御できることが好ましい。これに対し、バインダー樹脂は印刷層(塗膜)の主成分となるため、適切なバインダー樹脂の形態を選択することによって、印刷層の発泡追随性と発泡抑制力とを良好に調整することができる。
バインダー樹脂は、発泡追随性の観点から、50~4,000%の伸び率を有することが好ましく、400~3,000%の伸び率を有することがより好ましい。一方、バインダー樹脂の伸び率が50~4,000%であっても応力が過剰に小さすぎると、印刷層が発泡に追随する一方で、発泡を適切に制御できずに、ひび割れ及び火膨れが発生し発泡外観が低下しやすくなる。したがって、発泡追随性と印刷面の発泡外観とを両立する観点から、バインダー樹脂は、伸び率が50~4,000%であり、かつ応力が0.1mPa以上であることが好ましい。
なお、本明細書において記載する用語「伸び率」は、厚さ0.3mm、幅15mmの寸法を有するサンプルについて、インテスコ社製の小型引張り試験機を用いて、引張り速度100mm/分、室温25℃において測定して得られる値を意味する。
一実施形態において、バインダー樹脂は、伸び率50~4,000%における応力が0.1mPa以上であることが好ましく、1mPa以上であることがより好ましく、5mPa以上であることがさらに好ましい。一方、伸び率50~4,000%における応力は、50mPa以下であることが好ましく、40mPa以下であることがより好ましく、30mPa以下であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂の伸び率50~4,000%における応力は、0.1mPa~50mPaであればよい。
バインダー樹脂が上記範囲の伸び率及び応力を有する場合、発泡追随性に加えて、発泡外観についても良好な結果を得ることが容易となる。また、上記範囲の伸び率及び応力を有するバインダー樹脂は、所望とする印刷層の残存率を得ることが容易であるため、耐エタノール性を高める観点からも好ましい。
(ウレタン樹脂)
上述のように、発泡時の印刷層の発泡追随性などの観点から、バインダー樹脂は、少なくともウレタン樹脂を含むことが好ましい。具体的な実施形態として、ポリオールと、ジイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。また、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを、アミン化合物によって鎖延長して得られる、ウレタンウレア樹脂が挙げられる。すなわち、ウレタン樹脂は、ウレタン結合を有する樹脂であるが、更にウレア結合などを有していてもその概念に含まれる。
ウレタン樹脂を使用した場合、耐光性、耐熱性、耐摩擦性、及び耐ブロッキング性などの各種耐性に優れ、さらに印刷時に基材となる低Mp樹脂フィルム(発泡層形成層(B))に対する接着性に優れる印刷層を形成可能なインキ組成物を容易に構成することができる。また、ウレタン樹脂を使用することによって、インキ組成物を熱又は光が加わる環境下に長期にわたって保存した場合にも、印刷層の耐摩擦性、耐ブロッキング性、及び基材となる低Mp樹脂フィルムに対する接着性といった各種特性において良好な結果を得ることもできる。
ウレタン樹脂は、重量平均分子量が10,000~100,000の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは30,000~ 80,000である。重量平均分子量が上記範囲内である場合、印刷層の耐ブロッキング性、有機溶剤への溶解性、及び顔料分散性を容易に向上させることができる。
ウレタン樹脂は、アミン価を有することが好ましい。当該アミン価としては、0.5~40mgKOH/gであることが好ましく、1~30mgKOH/gであることがより好ましく、3~20mgKOH/gであることが更に好ましい。アミン価が上記範囲内である場合、密着性を高めることが容易となる。
一実施形態において、ウレタン樹脂は、-100℃~0℃のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。ウレタン樹脂のTgは、より好ましくは-10℃以下であってよく、さらに好ましくは-25℃以下であってよい。バインダー樹脂のTgが上記範囲内である場合、発泡紙材料の加熱処理時に優れた発泡追随性が得られ、及び断熱性の低下を抑制することができる。また、印刷面のひび割れ及び火脹れといった発泡外観不良を抑制することができる。Tgは-100℃以上であればよく、-90℃以上であることが好ましく、-80℃以上であることがより好ましく、-60℃以上であることが更に好ましい。Tgが上記範囲内のバインダー樹脂は、所望とする印刷層の残存率を得ることが容易であるため、耐エタノール性の観点でも好ましい。
(ひまし油ポリオール由来の構造単位(a1)を有するウレタン樹脂)
本発明の実施形態では、ウレタン樹脂として、バイオマス由来のウレタン樹脂を使用することを特徴とし、少なくともひまし油ポリオール由来の構造単位(a1)を有するウレタン樹脂を含む。具体的な実施形態として、ひまし油ポリオールを含むポリオールと、ジイソシアネートを反応させてなるウレタン樹脂が挙げられる。さらに、好ましい実施形態として、ポリイソシアネートと、ひまし油ポリオールを含むポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを、アミン化合物によって鎖延長して得られる、ウレタンウレア樹脂が挙げられる。
ジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族又は脂環族の公知のジイソシアネート類を使用することができる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4、4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等である。一実施形態において、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
ポリオールとしては、ひまし油ポリオールを使用することを必須とするが、それ以外に、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、低分子多価アルコール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。ただし、いずれのポリオールも、ひまし油ポリオールに該当する場合を除く。以下、ポリオール成分についてより具体的に説明する。
《ひまし油ポリオール》
ひまし油ポリオールとしては、ひまし油の構成成分であるリシノール酸(以下、ひまし油脂肪酸)由来の構造単位を有していればよい。リシノール酸由来の構造単位が、ひまし油ポリオール全量中の主成分(ひまし油ポリオール総量中50質量%以上)である形態が好ましい。水酸基の平均官能基数は1~3であれば特に構造は限定されず、例えば、ひまし油、及び脱水ひまし油が挙げられる。その他、ひまし油脂肪酸をジオール等のポリオールを開始剤として縮合することより得られるひまし油脂肪酸縮合物、及びこれらの水素化物等が挙げられる。これらのひまし油ポリオールは、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
ウレタン樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を、ウレタン樹脂の樹脂固形分に対して、10~80質量%含有することが好ましく、15~60質量%含有することがより好ましく、15~40質量%含有することが更に好ましい。ひまし油ポリオール由来の構造単位の含有量が上記範囲内である場合、着色剤の分散安定性、印刷層の耐熱性、及び耐ブロッキング性を維持するか、又は向上させることが容易である。
ひまし油ポリオールの分子量としては、重量平均分子量500~6,000であることが好ましく、1,000~5,000がより好ましく、1,500~4,000がさらに好ましく、1,500~3,500の範囲が特に好ましい。上記重量平均分子量が上記範囲内である場合、発泡紙積層体を構成した時に、優れた被膜強度が得られ、かつ発泡層形成層(B)との優れた密着性を得ることが容易となる。
《ポリエステルポリオール》
ウレタン樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位に加えて、ポリエステルポリオール由来する構造単位を含むことが好ましい。本発明者らの検討において、ひまし油ポリオールとポリエステルポリオールを併用して得られるウレタン樹脂を印刷層のバインダー樹脂として用いた場合、ひまし油ポリオールのみを用いて得られるウレタン樹脂を単独で使用した場合よりも優れた発泡外観及び耐熱性が得られる傾向があることが分かった。
上記ポリエステルポリオールとしては、以下の例には限定されないが、例えば、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、等の二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-15-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、等のジオールとのエステル化反応により得られる縮合物、本発明のジオールを開始剤として得られるカプロラクトン重合物、バレロラクトン重合物、メチルバレロラクトン重合物、乳酸重合物等のポリエステルジオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ポリエステルポリオールの使用量としては、積層体における耐熱性、被膜強度、耐ブロッキング性の観点から、ポリエステルポリオール由来の構造単位を、ウレタン樹脂の樹脂固形分に対して15~80質量%含有することが好ましく、より好ましくは25~75質量%である。
一実施形態において、ウレタン樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位に加え、ポリエステルポリオール由来の構造単位を有することが好ましい。当該ポリエステルポリオールは、上記二塩基酸と上記ジオールとの縮合物であり、ひまし油ポリオール由来の構造単位(a1)とポリエステルポリオール由来の構造単位(a2)との質量比(a1)/(a2)が、75/25~10/90であることが好ましく、60/40~25/75であることがより好ましく、50/50~25/75であることが更に好ましい。このように質量比を調整することによって、発泡追従性、耐熱性、及び耐エタノール性を容易に向上させることができる。
一実施形態において、バインダー樹脂は、ポリオール成分として、ひまし油ポリオールのみを用いて得られるウレタン樹脂を含む。他の実施形態において、バインダー樹脂は、ポリオール成分として、ひまし油ポリオールとポリエステルポリオールとを併用して得られるウレタン樹脂を含む。 さらに他の実施形態において、バインダー成分は、上記実施形態のウレタン樹脂と、ポリオール成分として、ポリエステルポリオールのみを用いて得られるウレタン樹脂とを含んでもよい。しかし、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを使用する場合、インキ安定性等の観点から、ひまし油ポリオール由来の構造単位とポリエステルポリオール由来の構造単位とが一高分子鎖中に併存する形態とすることがより好ましい。
《ポリエーテルポリオール》
一実施形態において、ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール由来の構造単位を有していてもよい。ポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、これらの共重合ポリエーテルジオール等を挙げることが出来る。これらのポリエーテルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ウレタン樹脂にポリエーテルポリオール由来の構造単位を導入することで、顔料分散性、樹脂粘度、及び有機溶剤に対する溶解性等の印刷インキ用の樹脂に求められる諸物性を調整することができる。一方、本発明者らの検討において、ポリエーテルポリオール由来の構造単位が多すぎると、発泡紙積層体の印刷層に必須の特性である耐熱性が低下することがわかってきた。このような観点から、一実施形態において、ウレタン樹脂の全質量を基準として、ポリエーテルポリオール由来の構造単位の含有量は、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であってもよい。印刷層の耐熱性を向上させる観点から、ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオール由来の構造単位を含まないことが極めて好ましい。
《低分子多価アルコール》
一実施形態において、ウレタン樹脂は、低分子多価アルコール由来の構造単位を有していてもよい。低分子多価アルコール由来の構造単位を導入することで顔料分散性、樹脂粘度、及び有機溶剤に対する溶解性、耐ブロッキング性等の印刷インキ用の樹脂に求められる諸物性を調整することができる。
低分子多価アルコールとしては、以下の例には限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの低分子多価アルコールは、本発明のインキ組成物の分子量やハードセグメントとソフトセグメントの分布を調節したりする目的で使用される。これらの低分子多価アルコールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
《アミン化合物》
上記アミン化合物はウレタンプレポリマーの鎖延長剤として機能し、ウレタン樹脂にウレア結合を与える。当該アミン化合物としては、例えば、ポリアミン類、アミノアルコール類、等が挙げられる。なお、鎖延長剤は単独、または2種以上を混合して用いることができる。
ポリアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミンなどの他、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)プロピレンジアミン、N ,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロピル)プロピレンジアミン等の分子内に水酸基を有するアミン類、メチルイミノビスプロピルアミン、ラウリルイミノビスプロピルアミン等の分子内に3級アミノ基を有するアミン類が挙げられる。
アミノアルコール類としては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン等が挙げられる。
《反応溶剤》
ウレタン樹脂の製造には、後述の媒体である、アルコール及び/または水酸基を持たない有機溶剤を用いることができる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール等の炭素原子数1~7の脂肪族アルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類等が挙げられる。
イソシアネート基含有のプレポリマー溶液製造の際には、イソシアネート基との反応性の観点から、反応性の低い3級アルコールが好ましく、例えば、ターシャリーブタノールなどが挙げられる。
水酸基を持たない有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらの反応溶剤は、2種以上混合して用いてもよい。
《ウレタン樹脂の製造》
ウレタン樹脂を製造する方法としては、特に制限はなく、一般的な鎖延長反応で製造できる。
例えば、無溶剤下、又は水酸基を持たない有機溶剤下で、ひまし油ポリオール、ひまし油ポリオール以外のポリオール、及びジイソシアネートを反応させてイソシアネート基含有のプレポリマーを製造する。ここで、上記反応はひまし油ポリオール及びひまし油ポリオール以外のポリオールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる当量比で実施する。上記のようにして得られたイソシアネート基含有のプレポリマーを、水酸基を持たない有機溶剤及び/ または、イソシアネート基との反応性の低い3級アルコールに溶解させてプレポリマー溶液を得る。次いで、鎖延長剤を溶剤に溶解させたものに、先に調製したイソシアネート基含有のプレポリマー溶液を添加して鎖延長反応させる方法がある。
鎖延長剤を溶解させるために使用する溶剤は、プレポリマーの製造時に使用した有機溶剤と同じであってよい。溶剤としてアルコールを使用する場合は、イソシアネート基含有プレポリマーとの反応性の観点から、鎖延長剤はジアミン類、アミノアルコール類を用いるのが好ましい。
ウレタン樹脂の製造において、ひまし油ポリオールと、ひまし油ポリオール以外のポリオールと、ジイソシアネートとの割合は、ジイソシアネートのイソシアネート基のモル数と、ひまし油ポリオール及びひまし油ポリオール以外のポリオールの水酸基とのモル数の比であるNCO/OH比を1.1~3.0の範囲となるように調整ことが好ましい。NCO/OH比が上記範囲内の場合、耐ブロッキング性、及び基材密着性を維持、又は向上することが容易である。
なお、上記実施形態では、印刷層の構成成分としてウレタン樹脂を含むことを特徴とするが、ウレタン樹脂以外のバインダー樹脂の併用を除外するものではない。具体的には、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロースなどが好適に挙げられる。
なかでも、ウレタン樹脂と、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体及び/またはニトロセルロースとの併用が好適である。このようにバインダー樹脂が、さらに塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含む場合、バインダー樹脂の全質量を基準として、ウレタン樹脂を50質量%以上含むことが好ましい。上記含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。また、ウレタン樹脂を含むウレタン樹脂と、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体との質量比は、40:60~95:5であることが好ましく、55:45~90:10であることがより好ましく、70:30~90:10であることが極めて好ましい。両者の質量比を上記範囲内に調整することで、発泡紙追従性、及び耐熱性を容易に向上させることができる。
(着色剤)
一実施形態において、インキ組成物はさらに着色剤を含んでもよい。着色剤としては、例えば、有機系顔料、無機系顔料、染料等の通常のインキ組成物において使用されるものであってよい。カラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを好適に使用できる。
有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などが好適に挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
染料としては、例えば、タートラジンレーキ、ローダン6Gレーキ、ビクトリアピュアブルーレーキ、アルカリブルーGトーナー、ブリリアントグリーンレーキ等が挙げられ、この他、コールタール等を使用することもできる。なかでも、耐水性などの点から有機顔料または無機顔料を使用することが好ましい。
着色剤は、特に限定されず、インキ組成物の濃度及び着色力を確保するのに十分な量であればよい。例えば、着色剤の含有量は、インキ組成物の全質量に対して0.5~50質量%の割合が一般的である。また、着色剤は、単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
一実施形態において、白色のインキ組成物を調製する場合、白色顔料の配合量は、インキ組成物の全質量を基準として、20~50質量%の範囲とすることが好ましい。隠蔽性、顔料濃度、及び耐光性の観点から、白色顔料として二酸化チタンを使用することが好ましい。一方、有色のインキ組成物を調製する場合、有色の有機顔料、及びベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色の無機顔料を適宜選択して使用することができる。発色性、及び耐光性の観点からは、有機顔料が好ましい。有色顔料の配合量は、インキ組成物の全質量を基準として、5~30質量%の範囲が好ましい。
(インキ媒体としての有機溶剤)
一実施形態において、インキ組成物は液状媒体として有機溶剤を含む。以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用してもよい。なかでも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更には、ウレタン樹脂と塩化ビニル共重合樹脂の相溶性、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤を含む有機溶剤が好ましく、これらの質量比( エステル系有機溶剤)/(アルコール系有機溶剤)が90/10~40/60であることが好ましい。なお、グラビアインキは、液状媒体として水を含んでいてもよいが、その含有量は液状媒体100質量%中0.1~5質量%が好ましい。
(添加剤)
インキ層、及びインキ組成物は、必要に応じて添加剤、例えば、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート架橋剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
<インキ組成物の製造方法>
インキ組成物は、公知の方法により製造することができる、例えば、国際公開第2009/119800号パンフレットに記載の方法などを用いることができる。より具体的には、ウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、及び上記質量比(エステル系有機溶剤)/(アルコール系有機溶剤)が90/10~40/60である有機溶剤を、サンドミルその他のビーズミルで5~60分程度分散処理し、得られた分散体に対して更にウレタン樹脂、上記有機溶剤、更にレベリング剤その他の添加剤を加え、均一に攪拌することでインキ組成物を得ることができる。
<3>発泡紙積層体の製造方法
一実施形態は、発泡紙積層体の製造方法に関する。すなわち、一実施形態は、熱可塑性樹脂層(A)、紙基材、及び発泡層(B)を順次有する発泡紙と、上記発泡紙の発泡層(B)の表面に形成された印刷層とを有する発泡紙積層体を製造するための方法に関する。より好ましくは、上記発泡紙積層体の構成において、上記発泡層(B)の単位表面積あたりの発泡セル数が1000個/1cm以上であり、25℃のエタノール中に30分間浸漬した後の印刷層の残存率が50質量%以上である発泡紙積層体を製造するための方法に関する。
発泡紙積層体の製造方法は、以下の工程(i)~(iv)、すなわち
(i)熱可塑性樹脂層(A)と、紙基材と、上記熱可塑性樹脂層(A)よりも低い融点を有し、加熱によって発泡する、発泡層形成層(B)とを順次有する、発泡紙材料を準備すること、
(ii)ウレタン樹脂を含有するバインダー樹脂、及び媒体を含む、インキ組成物を準備すること、
(iii)上記発泡紙材料の上記発泡層形成層(B)の表面に、上記インキ組成物を塗布して印刷層を形成すること、
(iv)上記印刷層を有する上記発泡紙材料を加熱することによって、上記発泡紙材料の上記発泡層形成層(B)を発泡させ、発泡層(B)を形成すること
を含む。
上記製造方法において、(i)発泡紙材料の準備、(ii)インキ組成物の準備、(iii)印刷層の形成、(iv)加熱による発泡層(B)の形成に関する各工程は、それぞれ当技術分野で周知の方法に従って実施することができる。以下、各工程について説明する。
(工程(i):発泡紙材料の準備)
(i)発泡紙材料の準備は、例えば、押出ラミネート法に従って実施することができる。発泡紙材料を構成する、紙基材、熱可塑性樹脂層(A)、及び発泡層形成層(B)の構成材料は先に説明したとおりである。押出ラミネート法として、シングルラミネート法、タンデムラミネート法、サンドウィッチラミネート法、及び共押出ラミネート法などの周知の方法を適宜選択することができる。一実施形態において、熱可塑性樹脂層(A)、及び発泡層形成層(B)の構成材料として、それぞれ融点の異なるポリエチレン樹脂を好適に使用することができる。
発泡層形成層(B)は、熱可塑性樹脂層(A)を構成するポリエチレン樹脂の融点(Mp)よりも低いMpを有するポリエチレン樹脂(低Mpポリエチレン樹脂)を使用して構成する。発泡紙材料は、Tダイ押出機を通して、紙基材の片面に対して低Mpポリエチレン樹脂をフィルム状に押出し、また紙基材の他面に対して高Mpポリエチレン樹脂をフィルム状に押出すことによって製造することができる。
ラミネート時のポリエチレン樹脂の温度(Tダイ直下の温度)は、300~350℃が好ましく、320℃~340℃がより好ましい。この温度範囲であれば、各ポリエチレン樹脂層(A、B)と紙基材との間に十分なラミネート強度を実現できる。ラミネート後に経由する冷却ロールの表面温度は10~50℃の範囲で制御することが好ましい。
一実施形態において、ラミネート速度は、50~130m/分が好ましく、60~110m/分がより好ましい。ラミネート速度が遅すぎると生産性が低く、一方、ラミネート速度が早すぎると、ネックインによって歩留まりが低下する傾向がある。ネックインとは、Tダイ押出機によってポリエチレン樹脂を押出しフィルム化する際に、Tダイの有効幅よりも、押し出されたポリエチレン樹脂フィルムの幅が小さくなる現象である。この際、フィルムの両端部が中央部よりも厚くなる。両端部の厚みが規格から外れる場合には、両端部を切断・除去するのが一般的であるが、ネックインが酷い場合には、規格から外れる面積が増加するため、歩留まりが低下する。
一実施形態において、エアギャップは、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。エアギャップを広げすぎると、ポリエチレン樹脂がネックインし、歩留まりが低下する傾向がある。エアギャップとは、Tダイの押出口からニップロールまでの距離を指す。ポリエチレン樹脂がエアギャップを通過している間に、オゾンガス及び/又は酸素ガスを用いて、ポリエチレン樹脂の表面処理を行うことが好ましい。オゾンガス及び/又は酸素ガスを用いて表面処理を行うことによって、酸化被膜の形成を促進し、基材層との接着力を向上させることができる。オゾンガス及び/又は酸素ガスの処理量には特に限定はないが、ポリエチレン樹脂の酸化を促進する観点で、0.5mg/m以上が好ましい。
(工程(ii):インキ組成物の調製)
インキ組成物の具体的な構成、製造等については、先にインキ組成物の実施形態で説明したとおりである。
一実施形態において、インキ組成物として、ウレタン樹脂を含むバインダー樹脂と、媒体とを含有するインキ組成物を調製することが好ましい。ここで、バインダー樹脂は、ポリオール成分として少なくともひまし油ポリオールを用いて製造されたウレタン樹脂であることを特徴とする。このようなバイオマス由来のウレタン樹脂は、伸び率50~4,000%における応力が0.1mPa~50mPaであることが好ましい。
(工程(iii):印刷層の形成)
上記(iii)印刷層の形成については、特に限定されるものではなく、周知の技術を適用することができる。例えば、下地層として、発泡層形成層(B)(低Mp樹脂フィルム)の全面に白色のインキ組成物を印刷する場合、バーコーター、ロールコーター、リバースロールコーターなどのコーターをmもよい。その他、各種印刷方法を適用することができる。
各種印刷方法のなかでも、グラビア印刷、又はフレキソ印刷による印刷方法を適用することが好ましい。これらの印刷方法による印刷層の形成時に、先に説明した実施形態のインキ組成物を好適に使用することができる。
一実施形態において、印刷層は複数の層を含むことが好ましい。印刷層は、発泡層形成層(B)の全表面を被覆する下地層と、下地層表面の少なくとも一部に設けられた印刷パターンとを有してよい。例えば、下地層は白色インキ組成物から構成され、印刷パターンはカラーインキ組成物から形成される。
一実施形態において、印刷層の厚さは、印刷層による発泡抑制力、及び耐摩擦性の観点から、乾燥塗膜の膜厚が、0.5~5μmとなるように調整されることが好ましい。印刷層(乾燥塗膜)の膜厚は、より好ましくは0.5~4μmであってよく、さらに好ましくは0.5~3.5μmであってよい。ここで、印刷層が複数の層から構成される場合、印刷層の膜厚は、印刷層全体の厚さが上記範囲内となるように調整することが好ましい。
他の実施形態において、印刷層は、複数の層を含んでよく、その最外層として透明層を有してもよい。透明層は、顔料を含まないクリアインキ組成物を使用して構成することができる。
(工程(iv):発泡層(B)の形成)
上記(iv)加熱による発泡層(B)の形成において、適切な加熱温度及び加熱時間は、使用する紙基材、及び熱可塑性樹脂フィルムの特性に依存して変化する。当業者であれば、使用する熱可塑性樹脂フィルムなどの材料に応じて、最適な加熱温度と加熱時間との組合せ条件を決定することができる。特に限定するものではないが、一般的に、加熱処理は、容器の成形工程において実施される。加熱処理時の加熱温度が低すぎると十分な発泡性が得られず、加熱温度が高すぎると発泡セルが結合し火脹れが生じやすくなる。
特に限定するものではないが、発泡層形成層を低密度ポリエチレンフィルムから構成する場合、加熱温度は、好ましくは100~125℃であってよく、より好ましくは110~120℃であってよい。加熱時間は、加熱温度に応じて適宜調整することができるが、3~10分間が好ましく、5分~7分がより好ましい。一実施形態において、発泡層形成層を低密度ポリエチレンフィルムから構成し、その上に先に説明したインキ組成物(ii)を使用して印刷層を形成する場合、加熱温度を110~123℃、加熱時間を5~7分に調整することが好ましい。加熱温度を115~121℃、加熱時間を5~7分に調整することがより好ましい。上記条件下で加熱を行った場合、印刷層によって加熱加工時の発泡層形成層の発泡を適切に制御することが容易となる。
加熱手段として、熱風、電熱、電子線など任意の手段を使用できる。コンベヤによる搬送手段を備えたトンネル内で熱風又は電熱などによって加熱すれば、安価に大量の加熱処理を実施できる。
<4>発泡紙製容器
一実施形態は、上記実施形態の発泡紙積層体を具備する発泡紙製容器に関する。発泡紙製容器は、容器胴体部材と底板部材とから構成され、容器胴体部材が上記実施形態の発泡紙積層体から形成されることを特徴とする。図1は、容器の組み立て成形後に加熱処理を実施することによって得られる発泡紙製容器10Aの構造を示す斜視図である。図1に示すように、発泡紙製容器10Aは、発泡紙積層体から構成される容器胴体部材10と底板部材12とから構成される。容器胴体部材(発泡紙積層体)10において、高Mp樹脂フィルムが容器の内壁面10aを形成し、低Mp樹脂フィルム(発泡層)上の印刷層が容器の外壁面10bを形成する。
図2は、図1に示した発泡紙製容器の容器胴体部材の参照符号I部分を拡大して示す模式的断面図である。容器胴体部材(発泡紙積層体)10は、容器の内壁面10a側(図1参照)から順に、高Mp樹脂フィルム20、紙基材30、発泡後の低Mp樹脂フィルム(発泡層)40、及び印刷層50を有し、印刷層50は下地層50aと印刷パターン50bとを有する。
発泡紙製容器の成形加工は、周知の技術を適用して実施することができる。例えば、最初に印刷層を形成した発泡紙積層体(加熱前の発泡紙積層体)を型に沿って所定の形状に打ち抜き容器胴体部材を得る。同様にして、底板材料を所定の形状に打ち抜いて底板部材を得る。次に、常用の容器製造装置を用いて、容器胴体部材と、底板部材とを容器の形状に組み立て成形する。容器製造装置による容器の組み立て成形は、容器胴体部材の上記高Mp樹脂フィルムが内壁面を形成し、上記低Mp樹脂フィルムが外壁面を形成し、さらに底板部材のラミネート面が内側となるようにして実施する。このように容器製造装置によって容器を組み立て成形した後、加熱処理を行うことによって、低Mp樹脂フィルムが発泡し、発泡層(断熱層)を形成し、断熱性を有する発泡紙容器を得ることができる。
一実施形態において、発泡紙製容器の胴部内壁面、及び胴部外壁面をそれぞれポリエチレンフィルムから構成する場合、紙基材の一方の面(容器の内壁面)は中密度又は高密度ポリエチレンフィルムでラミネートし、他方の面(容器の外壁面)は低密度ポリエチレンフィルムでラミネートすることが好ましい。紙基材にラミネートする各フィルムの厚さは、特に限定されない。しかし、容器胴部の外壁面を構成する低Mp樹脂フィルムの厚さは、フィルムを発泡させた場合に、発泡後のフィルムが断熱層として機能するのに十分な厚みとなるように適宜設定されることが好ましい。
例えば、容器胴部の外壁面を低密度ポリエチレンフィルムで構成する場合、紙基材にラミネートするフィルムの厚さは40~150μmであってよい。一方、容器胴部の内壁面を中密度又は高密度ポリエチレンフィルムで構成する場合、紙基材にラミネートするフィルムの厚さは、特に限定されない。しかし、断熱性発泡紙製容器として使用した時に内容物の耐浸透性が確保されるように、フィルムの厚さを適宜設定することが好ましい。紙基材にラミネートするフィルムの厚さは、使用するフィルムの樹脂材料によって異なるため、樹脂材料の特性を考慮して、当業者が適切に設定することが望ましい。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載する「部」及び「%」は、特段の注釈の無い限り、「質量部」及び「質量%」を表す。
<1>バインダー樹脂
(1)ウレタン樹脂の原料(ひまし油ポリオール、及びその他の原料)
以下のウレタン樹脂の合成で使用したひまし油ポリオールは、各種市販のポリオール、及び特開2005-320437で示される既知の方法に従い合成して得たポリオールである。以下に記載する原料において「バイオマス由来」と記載されていない原料は、バイオマス由来でない原料である。
(ひまし油ポリオール1)
伊藤製油製の「URIC HF-2009」(重量平均分子量2,600のリシノレイン酸由来構造を主成分とするバイオマス由来ポリオール、官能基数2)をそのまま使用した。
(ひまし油ポリオール2)
伊藤製油製の「URIC H-57」(重量平均分子量1,700のリシノレイン酸由来構造を主成分とするバイオマス由来ポリオール、 官能基数3)をそのまま使用した。
(ひまし油ポリオール3)
圧力容器に精製ひまし油100部、水酸化カリウム(KOH)を0.57g入れた後、減圧脱水により110℃まで昇温した。これにプロピレンオキサイド200部を反応圧力4kg/cmを維持しながら投入し、圧力効果が認められなくなるまで反応させた。この反応生成物にリン酸を0.91g加えて触媒を中和し、脱水及びろ過を行って水酸基価58mgKOH/gのポリオール(バイオマス由来のひまし油ポリオール3)を得た。GPC測定による重量平均分子量は3,400であった。
(ひまし油ポリオール4)
伊藤製油製の「URIC H-73X」(重量平均分子量600の、リシノレイン酸由来構造を主成分とするバイオマス由来ポリオール、官能基数3)をそのまま使用した。
(ひまし油ポリオール5)
圧力容器に精製ひまし油100部、KOHを0.85g入れた後、減圧脱水により110℃まで昇温した。これにプロピレンオキサイド284部を反応圧力4kg/cmを維持しながら投入し、圧力効果が認められなくなるまで反応させた。この反応生成物にリン酸を1.36g加えて触媒を中和し、脱水及びろ過を行って水酸基価45mgKOH/gのポリオール(バイオマス由来のひまし油ポリオール5)を得た。GPC測定による重量平均分子量は5,000であった。
(MPD/AA)
クラレ社製、3-メチル1,5-ペンタンジオールとアジピン酸とからなる重量平均分子量2,000のポリエステルポリオールを使用した。
(MPD/SA)
クラレ社製、3-メチル1,5-ペンタンジオールとセバシン酸(バイオマス由来)とからなる重量平均分子量2,000のポリエステルポリオールを使用した。
(2)バインダー樹脂(ウレタン樹脂)の合成例
(合成例1)
[ウレタン樹脂PU1]
ひまし油ポリオール1を30部、3-メチル1,5-ペンタンジオールとセバシン酸(バイオマス由来)とからなる重量平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)70部、1,3-プロパンジオール(バイオマス由来)2.0部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)27.4部を窒素気流下にて80℃で5時間反応させ、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。
次いでイソホロンジアミン (以下「IPDA」)6.2部、イミノビスプロピルアミン(以下「IBPA」)2.0部、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(以下「AEA」)1.0部、酢酸エチル/2-プロパノール(以下「IPA」)=60/40(質量比)の混合溶剤323.4部を混合したものに、先に調製した末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を 40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、重量平均分子量65,000のウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を得た。
なお、ウレタン樹脂の重量平均分子量は以下のようにして測定した。
(重量平均分子量)
前処理として、ウレタン樹脂の両末端のアミノ基をすべてα,α-ジメチル-3-イソプロペニルベンジルイソシアナートと反応させる。その後、前処理したウレタン樹脂について、カラムとしてShodex GPC LF-604(Shodex社製)を用い、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC Shodex社製、GPC-104)で展開溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を用いた時のポリスチレン換算分子量を得た。
(合成例2~12)
[ウレタン樹脂PU2~PU12]
表1に示す材料を用いた以外は合成例1と同様の手法により、ウレタン樹脂PU2~PU12を得た。合成についての詳細を表1に示す。
(合成例13)
[ウレタン樹脂PU13]
MPD/SA(バイオマス由来)100部、1,3-プロパンジオール(バイオマス由来)2.0部、IPDI25.5部を窒素気流下にて80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。IPDA6.6部、酢酸エチル/IPA =60/40(質量比)の混合溶剤317.6部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、ウレタン樹脂溶液PU13(固形分30%)を得た。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、68,000であった。
(合成例14)
[ウレタン樹脂PU14]
ポリオール成分としてMPD/SA(バイオマス由来)に代えてポリエーテルポリオールを100部使用したことを除き、全て合成例13と同様にして、ウレタン樹脂溶液PU14(固形分30%)を得た。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、62,000であった。
Figure 2022019277000002
(3)バインダー樹脂の伸び率
前述の合成例で得た各々のウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(塩酢ビ樹脂)、及びニトロセルロースを表2に示す比率で混合した後に塗布及び乾燥させ、塗膜試験サンプル1~22(厚さ0.30mm、幅5.0mm、長さ20.0mm)を作製した。各サンプルについて、インテスコ社製の小型引張り試験機を使用し、伸び率を測定した。測定は、引張り速度100mm/分、室温25℃の条件下でそれぞれ実施した。結果を表2に示す。
Figure 2022019277000003
<2>インキ組成物の製造例
(インキ例1)
[グラビアインキW1の作製]
ウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)を30部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(ソルバインTAO:日信化学工業社製 塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコー ル=91/2/7(質量比)の共重合樹脂、固形分30%酢酸エチル溶液))を5部、白顔料である酸化チタン(テイカ社製 チタニックスJR-805)30部、酢酸n-プロピル20.0部、IPA15部混合し、アイガーミルで30分間分散し、グラビアインキW1を得た。
(インキ例2~21、比較インキ例1)
[グラビアインキW2~W20及びBlue1、T1の作製]
表3に記載された原料及び配合に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、グラビアインキW2~W20、Blue1、T1をそれぞれ得た。表中の略称は以下を表す。また、表中、単位の 標記のない数値は、部を表し、空欄は配合していないことを表す。
ソルバインTA3:水酸基を有する塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学工業社製 塩化ビニル/酢酸ビニル/ヒドロキシアルキルアクリレート=83/4/13(質量比))固形分30%酢酸エチル溶液
ニトロセルロース(以下「NC」):ニトロセルロース1/8H(旭化成社製) 酢酸エチル30部/IPA40部に混合溶解させた、固形分30%ニトロセルロース溶液(バイオマス由来)
C.I.ピグメントブルー15:3:リオノールブルーFG7330(トーヨーカラー社製)
なお、グラビアインキW1とグラビアインキW20とを40℃の条件下で一週間静置したところ、インキの安定性(層分離)等において、グラビアインキW1の方が良好であることが確認された。グラビアインキW1は、PU1(一高分子鎖中にひまし油ポリオール由来の構造単位とポリエステルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂)を用いたインキである。一方、グラビアインキ20は、PU8(ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂)と、PU14(ポリエステルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂)とを併用したインキである。したがって、インキの安定性の観点では、ひまし油ポリオール由来の構造単位とポリエステルポリオール由来の構造単位とが高分子鎖中に併存するウレタン樹脂の方が好ましい形態となることが分かる。
Figure 2022019277000004
<4>発泡紙積層体の製造例
(1)発泡紙材料の製造例
発泡紙材料は、(工程1)紙基材の片面に、中密度ポリエチレン樹脂(M)を押出ラミネートして水蒸気遮断層を形成し、次いで、(工程2)紙基材の他面(非ラミネート面)に低密度ポリエチレン樹脂(L)を押出ラミネートしてすることによって、製造した。
工程1及び工程2における各種条件は以下のとおりである。
(工程1)
紙基材:水分量23kg/m、坪量300kg/m
中密度ポリエチレン樹脂(M):東ソー社製「ペトロセンLW04-1」、MFR4.3g/10分、密度940kg/m
押出温度(Tダイ出口温度):320℃
引取速度(ラミネート速度):50m/分
エアギャップ:130mm
厚さ:40μm(ポリエチレン樹脂層の中央部の厚さ)
(工程2)
低密度ポリエチレン樹脂(L);後述
押出温度(Tダイ出口温度):310℃
引取速度(ラミネート速度):60m/分
エアギャップ:130mm
厚さ:50μm
なお、上記工程2で使用する低密度ポリエチレン樹脂(L)は発泡層形成層(B)となる。低密度ポリエチレン樹脂(L)として、実施例23及び24及び比較例2では低密度ポリエチレン樹脂(L2)及び(L3)を使用し、それ以外は低密度ポリエチレン樹脂(L1)を使用して、発泡紙材料を製造した。低密度ポリエチレン樹脂(L1)、(L2)及び(L3)の詳細は以下のとおりである。
低密度ポリエチレン樹脂(L1):東ソー社製「ペトロセン07C03C」、密度918kg/m、MFR15g/10分
低密度ポリエチレン樹脂(L2):日本ポリエチレン社製「ノバテックLDLC720」、密度922kg/m、MFR9g/10分
低密度ポリエチレン樹脂(L3):ブラスケム社製「SBC818」、密度918kg/m、融点106℃、MFR8.1g/10分
(2)発泡紙材料への印刷層の形成(発泡前の発泡紙積層体)の製造例
先に調製したグラビアインキを使用して、以下に記載するようにして発泡紙材料に印刷層を形成した。
(実施例1)
上記で得られたグラビアインキW1を、メチルエチルケトン(以下「MEK」):酢酸 n-プロピル(以下「NPAC」):IPA=40:40:20(質量比)からなる混合溶剤により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈し、腐食30μmのグラビア印刷機により、発泡紙材料の低密度ポリエチレン樹脂(L1)上に印刷速度100m/分で行い、膜厚1.5μmの印刷層を形成した。なお、印刷層の膜厚は、発泡紙積層体の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真(倍率5000)から求めた。印刷層について任意の5箇所について測定し、これらの平均値を印刷層の膜厚とした。
(実施例2~25、比較例1~3)
表4に記載するように、各印刷インキを使用したことを除き、実施例1と同様の方法で印刷を行い、それぞれ膜厚1.5μmの印刷層を形成した。但し、実施例22については重ね印刷を行ったため印刷層の膜厚は2.5μmであった。なお、実施例23においては、低密度ポリエチレン樹脂(L1)に代えて低密度ポリエチレン樹脂(L2)を使用し、実施例24においては、低密度ポリエチレン樹脂(L1)に代えて低密度ポリエチレン樹脂(L3)を使用した。
(3)発泡紙積層体の製造例
上述のようにして製造した印刷層を有する発泡紙材料(発泡前の発泡紙積層体)について、以下の条件で加熱処理を行い、低密度ポリエチレン樹脂層(L)を発泡させて、発泡層を形成し、発泡紙積層体(発泡後積層体)を製造した。
標準条件(A):120℃のオーブンで6分間加熱(実施例1~24、比較例1~3)
条件(B):122℃のオーブンで6分間加熱(実施例25)
<5>発泡紙積層体の評価
上述のようにして製造した実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体について、以下に記載の方法に従い、各種特性を評価した。それぞれの結果を表4に示す。
<発泡追随性>
実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体の各表面について、加熱処理後(低Mpフィルム発泡後)のインキ印刷部と非印刷部との段差を指触し、インキ印刷部の凹み度合いを以下の基準に従って評価した。評価の数値が高いほど、発泡追随性に優れ、印刷面が平坦であることを意味する。
(評価基準)
5:非印刷部との段差をほとんど感じない。
4:非印刷部との段差をわずかに感じる。
3:非印刷部との段差をかなり感じる。
2:非印刷部との段差をかなり大きく感じる。
1:非印刷部との段差を非常に大きく感じる。
<発泡外観:火膨れ>
実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体について、目視にて発泡紙積層体の印刷面を観察した。評価基準は以下の通りである。なお、表4に示した結果は、発泡紙積層体のサンプルを無造作に10個準備し、各サンプルを観察及び評価した結果における最頻値である。最頻値が複数存在する場合は、より低い評価となる値を採用した。
(評価基準)
5:火脹れが全くない(火脹れが確認できない)。
4:長径5mm未満の火脹れが、100cmあたり1個存在する。
3:長径5mm未満の火脹れが、100cmあたり2個存在する。
2:長径5mm未満の火脹れが、100cmあたり3~5個存在する。又は、長径5~20mmの火脹れが、100cmあたり1個存在する。
1:長径5mm未満の火脹れが、100cmあたり6個存在する。又は、長径5~20mmの火脹れが、100cmあたり2個以上存在する。又は、長径20mmを超える火脹れが、100cmあたり1個以上存在する。
なお、長径が異なる複数の火脹れが混在している場合は、より低い評価を採用する。具体的には、100cmあたり、長径5mm未満の火脹れが2個、及び長径5~20mmの火脹れが1個存在する場合は、評価は「2」となる。
<発泡外観:ひび割れ>
実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体について、火膨れの評価と同様に、目視にて発泡紙積層体の印刷面を観察した。評価基準は以下の通りである。なお、表4に示した結果は、発泡紙積層体のサンプルを無造作に10個準備し、各サンプルを観察及び評価した結果における最頻値である。最頻値が複数存在する場合は、より低い評価となる値を採用した。
(評価基準)
5:ひび割れが全くない(ひび割れが確認できない)。
4:長さ2mm未満のひび割れが、100cmあたり1本存在する。
3:長さ2mm未満のひび割れが、100cmあたり2~4本存在する。
2:長さ2mm未満のひび割れが、100cmあたり5~10本存在する。又は、長さ2~5mmのひび割れが、100cmあたり1本存在する。
1:長さ2mm未満のひび割れが、100cmあたり11本以上存在する。又は、長さ2~5mmのひび割れが、100cmあたり2本以上存在する。又は、長さ5mmを超えるひび割れが、100cmあたり1本以上存在する。
なお、長さの異なる複数のひび割れが混在している場合には、より低い評価を採用する。具体的には、100cmあたり、長さ1mmのひび割れが1本、及び長さ4mmのひび割れが1本存在する場合は、評価は「2」となる。
<耐熱性>
発泡層を形成するための加熱処理中に印刷層の耐熱性を直接的に評価することが困難であるため、代替試験として、発泡紙積層体(発泡後)に再加熱を行って耐熱性を評価した。具体的には、先ず、実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体について、印刷層(塗膜)表面に対し印刷層と同じ大きさに切ったアルミ箔を重ね合わせた。次に、140℃に加熱したヒートシール試験機を用いて、上記アルミ箔の部分を2kg/cmの圧力で1秒間にわたって押圧した。次に、アルミ箔を剥離し、アルミ箔に付着したインキ面積を求め、印刷層を基準したインキ面積の割合を算出し、耐熱性について評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
5:アルミ箔へのインキ付着が全くない(インキ付着が確認できない)。
4:アルミ箔へのインキ付着が確認されるが、3%未満である。
3:アルミ箔へのインキ付着が3%以上、10%未満である。
2:アルミ箔へのインキ付着が10%以上、30%未満である。
1:アルミ箔へのインキ付着が30%以上である。
<耐エタノール性>
実施例1~25及び比較例1~3の発泡紙積層体について、加熱処理によって発泡した低融点フィルム上の印刷層(塗膜)表面に対し、摩擦子に70%エタノール(エタノール:水=70:30)を含ませたカナキン(JIS L 0803)を荷重しながら1往復した。カナキンを往復する時、学振試験機(テスター産業社製)により、200gの荷重を加えた。その後、塗膜を目視で観察し、試験前の塗膜の全面積を基準として、塗膜(インキ)が剥がれた面積の割合を算出し、耐エタノール性について評価した。評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
5:インキの剥がれが30%未満である。
4:インキの剥がれが30%以上、40%未満である。
3:インキの剥がれが40%以上、60%未満である。
2:インキの剥がれが60%以上、70%未満である。
1:インキの剥がれが70%以上である。
表4には示していないが、その他の特性として、以下に記載する方法に従い、発泡紙積層体の発泡層の厚み及び発泡セル数について測定した。その結果、比較例3以外の発泡紙積層体については、いずれも発泡層の厚みが500μm以上であり、かつ、発泡セル数が1250個/1cm以上であり、実用において十分な断熱性が得られることが確認できた。一方、比較例3の発泡紙積層体については、発泡層の厚みは500μmを超えていたものの、発泡セル数が1000個/1cm未満であり、実用において十分な断熱性を得ることができなかった。
(発泡セル数)
発泡紙積層体の印刷層をメチルエチルケトン(MEK)で除去し、発泡熱可塑性樹脂層(発泡層)の表面を露出させた。次いで、光学顕微鏡(ニコン社製、AZ100M)を用いて発泡層の表面を観察し(倍率25倍)、縦横(X-Y)方向に一定の長さで区画される範囲内に存在する独立セルの数を求め、さらに1cmあたりの独立セル数として算出される値を得た。任意の5箇所について観察を行い、これらの平均値を発泡セル数とした。
(発泡層の膜厚)
発泡層の膜厚は、発泡紙積層体の断面を光学顕微鏡写真で観察し、紙基材の上面から、印刷層の下面までの高さを測定することによって決定した。また、発泡前の膜厚は、発泡層形成層の膜厚に対応する。そのため、発泡層形成層として形成した低密度ポリエチレン樹脂の膜厚を測定して得た値とした。
Figure 2022019277000005
表4に示す結果から、本発明の実施形態(実施例)によれば、バインダー樹脂としてひまし油ポリオールに由来する構造単位を含むウレタン樹脂を使用することで、優れた耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性が得られることが分かる。特に、ポリオール成分として、ひまし油ポリオールとポリエステルポリオールとを併用した場合には、耐熱性を容易に向上できることが分かる。これに対し、ひまし油ポリオールに由来する構造単位を含まないウレタン樹脂を使用した比較例では、所望とする特性を得ることができず、特に、耐熱性及び耐アルコール性について著しく低下する結果となった。
以上のことから、本発明によれば、バイオマス樹脂を含む印刷層を有し、優れた耐熱性、発泡追随性、発泡外観、及び耐エタノール性が得られ、発泡紙製容器の部材として好適に使用できる発泡紙積層体を提供できることが分かる。
(符号の説明)
10 発泡紙積層体(容器胴体部材)
10A 発泡紙製容器
10a 容器の外壁面
10b 容器の内壁面
12 底板部材12
20 高Mp樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層(A))
30 紙基材
40 発泡後の低Mp樹脂フィルム(発泡熱可塑性樹脂層(B)、発泡層(B))
50 印刷層
50a 下地層
50b 印刷パターン

Claims (6)

  1. 原紙と、前記原紙の一方の面に設けられた熱可塑性樹脂層(A)と、前記原紙の他方の面に設けられた発泡熱可塑性樹脂層(B)とからなる発泡紙、及び前記発泡熱可塑性樹脂層(B)上に設けられた印刷層を具備した発泡紙積層体であって、
    前記印刷層が、少なくともバインダー樹脂を含み、
    前記バインダー樹脂は、ひまし油ポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂を含む、発泡紙積層体。
  2. 前記ウレタン樹脂が、二塩基酸とジオールとの縮合物であるポリエステルポリオール由来の構造単位をさらに有し、前記ひまし油ポリオール由来の構造単位(a1)と前記ポリエステルポリオール由来の構造単位(a2)との質量比(a1)/(a2)が、75/25~10/90である、請求項1に記載の発泡紙積層体。
  3. 前記ウレタン樹脂の全質量を基準として、ポリエーテルポリオール由来の構造単位の含有量が8質量%以下である、請求項1又は2に記載の発泡紙積層体。
  4. 前記ひまし油ポリオールの重量平均分子量が、1,000~5,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡紙積層体。
  5. 前記バインダー樹脂が、さらに塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体を含み、前記バインダー樹脂の全質量を基準として、前記塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体の含有量が5質量%以上、50質量以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡紙積層体。
  6. 前記バインダー樹脂の伸び率が、400%~3,000%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡紙積層体。
JP2020123027A 2020-07-17 2020-07-17 発泡紙積層体 Pending JP2022019277A (ja)

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