以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図3は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のB-B線に沿う断面を示している。図1~図3を参照すると、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、配線40と、電極50とを有している。
なお、本実施形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。又、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材10上に、例えば、絶縁膜が形成される。
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図1では、便宜上、抵抗体30を濃い梨地模様で示している。
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。抵抗体30の幅は、抵抗値や横感度等の要求仕様に対して最適化し、かつ断線対策も考慮して、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
又、抵抗体30がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
又、CrN及びCr2N中のCr2Nの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCr2N中のCr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCr2Nにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
一方で、膜中に微量のN2もしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
配線40は、基材10上に形成されている。配線40は、第1金属層41と、第1金属層41の上面に積層された第2金属層42とを有している。配線40は直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。又、配線40は、任意の長さとすることができる。なお、図1では、便宜上、配線40及び電極50を抵抗体30よりも薄い梨地模様で示している。
抵抗体30は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図1のA-A線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図1ではB-B線の方向)となる。
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体30のグリッド幅方向の各々の終端30e1及び30e2を形成する。抵抗体30のグリッド幅方向の各々の終端30e1及び30e2は、配線40を介して、電極50と電気的に接続されている。言い換えれば、配線40は、抵抗体30のグリッド幅方向の各々の終端30e1及び30e2と各々の電極50とを電気的に接続している。
電極50は、基材10上に形成され、配線40を介して抵抗体30と電気的に接続されており、例えば、配線40よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極50は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。
電極50は、一対の第1金属層51と、各々の第1金属層51の上面に積層された第2金属層52とを有している。第1金属層51は、配線40の第1金属層41を介して抵抗体30の終端30e1及び30e2と電気的に接続されている。第1金属層51は、平面視において、略矩形状に形成されている。第1金属層51は、配線40と同じ幅に形成しても構わない。
なお、抵抗体30と第1金属層41と第1金属層51とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、抵抗体30と第1金属層41と第1金属層51とは、厚さが略同一である。又、第2金属層42と第2金属層52とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、第2金属層42と第2金属層52とは、厚さが略同一である。
第2金属層42及び52は、抵抗体30(第1金属層41及び51)よりも低抵抗の材料から形成されている。第2金属層42及び52の材料は、抵抗体30よりも低抵抗の材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、第2金属層42及び52の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。第2金属層42及び52の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、3μm~5μm程度とすることができる。
第2金属層42及び52は、第1金属層41及び51の上面の一部に形成されてもよいし、第1金属層41及び51の上面の全体に形成されてもよい。第2金属層52の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。或いは、第2金属層52を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極50の最上層を金層とすることで、電極50のはんだ濡れ性を向上できる。
抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するように、基材10の上面10aにカバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30及び配線40に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30及び配線40を湿気等から保護できる。なお、カバー層60は、電極50を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
このように、配線40は、抵抗体30と同一材料からなる第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造である。そのため、配線40は抵抗体30よりも抵抗が低くなるため、配線40が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
言い換えれば、抵抗体30よりも低抵抗な配線40を設けることで、ひずみゲージ1の実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体30によるひずみ検出精度を向上できる。
特に、抵抗体30としてCr混相膜を用いたゲージ率10以上の高感度なひずみゲージにおいて、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化して実質的な受感部を抵抗体30が形成された局所領域に制限することは、ひずみ検出精度の向上に顕著な効果を発揮する。又、配線40を抵抗体30よりも低抵抗化することは、横感度を低減する効果も奏する。
なお、抵抗体30と電極50とを接続する配線40の長さLは、配線40が直線状か否かにかかわらず、配線40に沿った長さで5mm以上とすることが好ましい。長さLを5mm以上とすることで、電極50にリード線等をはんだ付けする際の熱が、抵抗体30や抵抗体30を覆うカバー層60に伝わり難くなり、ゲージ諸特性の熱負荷を軽減できる。
なお、ひずみ限界を考慮すると、配線40の幅には好適な範囲がある。これに関し、下記に説明する。
発明者らの検討によれば、配線40の第1金属層41の幅が狭い方が、配線40がひずみを受けたときにクラックや断線が発生しにくいことがわかった。具体的には、発明者らは、第1金属層41の幅が10μm、100μm、345μm、560μmの4種類の試験用ひずみゲージを各々複数個ずつ作製して各々にひずみを与え、クラックや断線の発生について調べた。なお、この実験では、第1金属層41は厚さ0.2μmのCr混相膜とし、第1金属層41上に第2金属層42は積層していない。
実験の結果、第1金属層41の幅が狭まるにつれ、クラックや断線が減少する傾向が確認され、ひずみ限界が第1金属層41の幅に依存することがわかった。なお、ひずみ限界とは、ひずみゲージにひずみを与えたときに、クラック又は断線が生じ始める機械的ひずみの値である。
図4は、ひずみ限界の実験結果を示す図であり、複数個の試験用ひずみゲージにおけるひずみ限界の最小値をプロットしたものである。図4に示すように、発明者らの実験結果では、第1金属層41の幅が560μmの場合のひずみ限界が5500με以上であったのに対し、第1金属層41の幅が10μmの場合のひずみ限界は8500με以上であった。つまり、第1金属層41の幅が560μmの場合に比べ、第1金属層41の幅が10μmの場合には、ひずみ限界が約1.5倍となる。また、第1金属層41の幅が560μmから10μmの間では、ほぼ線形にひずみ限界が向上する。
この結果は、弾性率が高いCr混相膜からなる第1金属層41の幅が広いと脆性破壊が生じやすく、第1金属層41の幅を狭くすることで、見かけ上の耐破壊力が上がったために得られたと考えられる。ひずみゲージ1を実際に使用するにあたっては、8000με程度のひずみ限界が要求されるため、第1金属層41の幅は100μm以下が好ましい。一方、製造プロセス上、第1金属層41の幅を10μm未満とすることは困難である。この点を考慮すると、第1金属層41の幅は10μm以上100μm以下が好ましいといえる。
また、発明者らの別の検討によれば、第1金属層41に第2金属層42として厚さ3μmの銅層をベタ状に形成した場合には、第1金属層41の幅にかかわらず、第2金属層を形成しない場合に比べ、ひずみ限界が更に1.5倍~2倍に向上することがわかった。銅層はCr混相膜よりも伸縮性に優れているため、Cr混相膜上に銅層を積層することで、ひずみ限界が更に向上したものと考えられる。
すなわち、ひずみ限界を更に向上する観点から、第2金属層42は、第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料から形成されていることが好ましい。つまり、第2金属層は、第1金属層よりも低抵抗で、かつ第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料から形成されていることが好ましい。第1金属層がCr混相膜である場合、第1金属層よりも低抵抗で、かつ第1金属層41よりも伸縮性に優れた材料としては、銅以外に金、銀やアルミニウムが挙げられる。第2金属層42として、これらの材料を用いた場合にも、同様の結果が得られると考えられる。
なお、ひずみゲージ1は、はかり用途に用いることもできる。ひずみゲージ1を、はかり用途に用いる場合には、クリープに関する規格を満足する必要がある。クリープに関する規格としては、例えば、OIML R60に基づく精度等級C1(以降、C1規格とする)や、OIML R60に基づく精度等級C2(以降、C2規格とする)が挙げられる。
C1規格では、クリープ量及びクリープリカバリー量を±0.0735%以下にする必要がある。又、C2規格では、クリープ量及びクリープリカバリー量を±0.0368%以下にする必要がある。なお、ひずみゲージ1をセンサ用途に用いる場合には、クリープ量及びクリープリカバリー量の規格は±0.5%程度である。
発明者らの検討によれば、クリープ量及びクリープリカバリー量は、抵抗体30を構成する材料の粘弾性項に影響される。すなわち、はかり用途に用いる起歪体には、抵抗体30の長手方向(図1のA-A線の方向)に引張や圧縮が発生する。起歪体の引張や圧縮により抵抗体30が長手方向に伸縮すると、クリープ量及びクリープリカバリー量が大きくなるため、抵抗体30が長手方向に伸縮することを抑制することが好ましい。
配線40を第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造とし、配線40を構成する金属の体積を増やすことにより、抵抗体30が長手方向に伸縮することを抑制可能となる。その結果、クリープ量及びクリープリカバリー量を抑制でき、C1規格やC2規格を満足できる。
さらに、電極50を第1金属層51上に第2金属層52が積層された構造とし、電極50を構成する金属の体積を増やすことにより、抵抗体30が長手方向に伸縮することを一層抑制可能となる。その結果、クリープ量及びクリープリカバリー量を一層抑制できる。
クリープ量及びクリープリカバリー量を抑制する効果は、第2金属層42及び52の厚さにより調整可能である。ひずみゲージ1をはかり用途に用いる場合も、前述のように、第2金属層42及び52は、第1金属層41及び51(すなわち抵抗体30)よりも低抵抗の材料から形成されることが好ましい。
また、抵抗体30自体の体積を増やすと抵抗体30の抵抗が下がり応用面で望ましくないが、第1金属層41及び51上に第2金属層42及び52を積層することで、抵抗体30の抵抗を下げずにひずみゲージ1の剛性を上げることができる。
なお、クリープ量及びクリープリカバリー量は、ひずみゲージ1において抵抗体30が設けられた面の弾性変形の量(ひずみ量)が時間経過と共に変化する量であるため、一対の電極50間の出力に基づいて算出したひずみ電圧をモニタすることで測定できる。
ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体30、第1金属層41、及び第1金属層51となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体30、第1金属層41、及び第1金属層51の材料や厚さと同様である。
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層Aを成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により所定の膜厚の機能層を真空成膜することが好ましい。
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能や、基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に金属層AがCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が金属層Aの酸化を防止する機能を備えることは有効である。
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層A(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
なお、機能層の平面形状は、例えば、図1に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。或いは、機能層は、基材10の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
又、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材10側へ放熱できる。その結果、ひずみゲージ1において、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
機能層の材料と金属層Aの材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層としてTiを用い、金属層Aとしてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層Aを成膜できる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層Aを成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nの割合、並びにCrN及びCr2N中のCr2Nの割合を調整できる。
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
なお、金属層AがCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層Aの結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、及び基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上できる。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上できる。
次に、金属層Aの上面に、第2金属層42及び第2金属層52を形成する。第2金属層42及び第2金属層52は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
具体的には、まず、金属層Aの上面を覆うように、例えば、スパッタ法や無電解めっき法等により、シード層を形成する。次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光及び現像して第2金属層42及び第2金属層52を形成する領域を露出する開口部を形成する。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
次に、例えば、シード層を給電経路とする電解めっき法により、開口部内に露出するシード層上に第2金属層42及び第2金属層52を形成する。電解めっき法は、タクトが高く、かつ、第2金属層42及び第2金属層52として低応力の電解めっき層を形成できる点で好適である。膜厚の厚い電解めっき層を低応力とすることで、ひずみゲージ1に反りが生じることを防止できる。なお、第2金属層42及び第2金属層52は無電解めっき法により形成してもよい。
次に、レジストを除去する。レジストは、例えば、レジストの材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光及び現像して、図1の抵抗体30、配線40、及び電極50と同様の平面形状にパターニングする。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。そして、レジストをエッチングマスクとし、レジストから露出する金属層A及びシード層を除去し、図1の平面形状の抵抗体30、配線40、及び電極50を形成する。
例えば、ウェットエッチングにより、金属層A及びシード層の不要な部分を除去できる。金属層Aの下層に機能層が形成されている場合には、エッチングによって機能層は抵抗体30、配線40、及び電極50と同様に図1に示す平面形状にパターニングされる。なお、この時点では、抵抗体30、第1金属層41、及び第1金属層51上にシード層が形成されている。
次に、第2金属層42及び第2金属層52をエッチングマスクとし、第2金属層42及び第2金属層52から露出する不要なシード層を除去することで、第2金属層42及び第2金属層52が形成される。なお、第2金属層42及び第2金属層52の直下のシード層は残存する。例えば、シード層がエッチングされ、機能層、抵抗体30、配線40、及び電極50がエッチングされないエッチング液を用いたウェットエッチングにより、不要なシード層を除去できる。
その後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するカバー層を設けることで、ひずみゲージ1が完成する。カバー層は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層は、基材10の上面10aに、抵抗体30及び配線40を被覆し電極50を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
なお、抵抗体30、第1金属層41、及び第1金属層51の下地層として基材10の上面10aに機能層を設けた場合には、ひずみゲージ1は図5に示す断面形状となる。符号20で示す層が機能層である。機能層20を設けた場合のひずみゲージ1の平面形状は、例えば、図1と同様となる。但し、前述のように、機能層20は、基材10の上面の一部又は全部にベタ状に形成される場合もある。
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、配線の幅が一定ではない例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図6は、第1実施形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する平面図である。なお、第1実施形態の変形例1に係るひずみゲージにおいて、断面構造は図2及び図3と同様である。
図6を参照すると、ひずみゲージ1Aは、配線40が配線40Aに置換された点が、ひずみゲージ1(図1等参照)と相違する。ひずみゲージ1Aでは、配線40Aの幅は、抵抗体30側が最も狭く、電極50に近づくほど徐々に幅広になる。
このように、配線40Aの幅を、抵抗体30側が最も狭く、電極50に近づくほど徐々に幅広になるようにすることで、抵抗体30と配線40Aとの接続部において、幅が急激に変化する部分がなくなる。そのため、エッチングを用いた抵抗体30と配線40のパターニングが容易となる。ただし、前述のように、ひずみ限界を考慮すると、配線40Aの幅は10μm以上100μm以下の範囲で変化させることが好ましい。
なお、図6の例では、配線40Aの全体において、配線40Aの幅が、抵抗体30側が最も狭く、電極50に近づくほど徐々に幅広になるようになっている。しかし、これには限定されず、配線40Aは、抵抗体30の側から電極50の側に近づくほど徐々に幅広になる部分を備えていればよい。例えば、配線40Aの幅を、抵抗体30側が最も狭く、一定の長さまでは電極50に近づくほど徐々に幅広になるようにし、それ以降は電極50まで一定幅としてもよい。
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、基材上に前記抵抗体が複数個形成されたひずみゲージの例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図7は、第1実施形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する平面図である。なお、第1実施形態の変形例2に係るひずみゲージにおいて、断面構造は図2及び図3と同様である。
図7を参照すると、ひずみゲージ1Bは、抵抗体301及び302を有している点が、ひずみゲージ1(図1~図3参照)と相違する。抵抗体301及び302の材料や膜厚等は、第1実施形態の抵抗体30と同様である。
ひずみゲージ1Bにおいて、抵抗体301の終端の一方は、配線401を介して電極501に電気的に接続されていると共に、抵抗体302の終端の一方と電気的に接続されている。抵抗体301の終端の他方は、配線402を介して電極502に電気的に接続されている。抵抗体302の終端の他方は、配線403を介して電極503に電気的接続されている。
すなわち、ひずみゲージ1Bでは、抵抗体301及び302によりハーフブリッジ回路を構成している。
配線401、402、及び403は、第1実施形態の配線40と同様に、抵抗体301及び302と同一材料からなる第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造である。そのため、配線401、402、及び403は抵抗体301及び302よりも抵抗が低くなるため、配線401、402、及び403が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体301及び302によるひずみ検出精度を向上できる。
言い換えれば、抵抗体301及び302よりも低抵抗な配線401、402、及び403を設けることで、ひずみゲージ1Bの実質的な受感部を抵抗体301及び302が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体301及び302によるひずみ検出精度を向上できる。抵抗体としてCr混相膜を用いた場合の効果や、抵抗体と電極とを接続する配線の長さに関する効果については、第1実施形態と同様である。
なお、配線401の一部は、抵抗体301と抵抗体302とを接続している。このように、低抵抗な配線は、抵抗体と電極との間だけではなく、抵抗体同士を接続する部分にも用いられてよい。これにより、上記のように、抵抗体301及び302によるひずみ検出精度を向上できる。
〈第1実施形態の変形例3〉
第1実施形態の変形例3では、複数の抵抗体を備えたひずみゲージの他の例を示す。なお、第1実施形態の変形例3において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図8は、第1実施形態の変形例3に係るひずみゲージを例示する平面図である。なお、第1実施形態の変形例3に係るひずみゲージにおいて、断面構造は図2及び図3と同様である。
図8を参照すると、ひずみゲージ1Cは、抵抗体301、302、303、及び304を有している点が、ひずみゲージ1(図1~図3参照)と相違する。抵抗体301、302、303、及び304の材料や膜厚等は、第1実施形態の抵抗体30と同様である。
ひずみゲージ1Cにおいて、抵抗体301の終端の一方は、配線401を介して電極501に電気的に接続されていると共に、抵抗体302の終端の一方と電気的に接続されている。抵抗体301の終端の他方は、配線402を介して電極502に電気的に接続されていると共に、抵抗体303の終端の一方と電気的に接続されている。
又、抵抗体302の終端の他方は、配線404を介して電極504に電気的に接続されていると共に、抵抗体304の終端の一方と電気的に接続されている。抵抗体303の終端の他方は、配線403を介して電極503に電気的に接続されていると共に、抵抗体304の終端の他方と電気的に接続されている。
すなわち、ひずみゲージ1Cでは、抵抗体301、302、303、及び304によりフルブリッジ回路を構成している。
配線401、402、403、及び404は、第1実施形態の配線40と同様に、抵抗体301、302、303、及び304と同一材料からなる第1金属層41上に第2金属層42が積層された構造である。そのため、配線401、402、403、及び404は抵抗体301、302、303、及び304よりも抵抗が低くなるため、配線401、402、403、及び404が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体301、302、303、及び304によるひずみ検出精度を向上できる。
言い換えれば、抵抗体301、302、303、及び304よりも低抵抗な配線401、402、403、及び404を設けることで、ひずみゲージ1Cの実質的な受感部を抵抗体301、302、303、及び304が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体301、302、303、及び304によるひずみ検出精度を向上できる。抵抗体としてCr混相膜を用いた場合の効果や、抵抗体と電極とを接続する配線の長さに関する効果については、第1実施形態と同様である。
なお、配線401の一部は、抵抗体301と抵抗体302とを接続している。又、配線402の一部は、抵抗体301と抵抗体303とを接続している。又、配線403の一部は、抵抗体303と抵抗体304とを接続している。又、配線404の一部は、抵抗体302と抵抗体304とを接続している。このように、低抵抗な配線は、抵抗体と電極との間だけではなく、抵抗体同士を接続する部分にも用いられてよい。これにより、上記のように、抵抗体301、302、303、及び304によるひずみ検出精度を向上できる。
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。