JP2022007524A - 蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体 - Google Patents

蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体 Download PDF

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Abstract

【課題】溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている樹脂組成物からなる層を備え、良好なガスバリア性を有する蒸着フィルム等を提供する。【解決手段】EVOH(A)及びアルミニウムイオン(B)を含有する樹脂組成物からなる基材層(α)と、基材層(α)の少なくとも片面に積層される無機蒸着層(β)とを備える蒸着フィルムであって、上記樹脂組成物におけるEVOH(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)が14μmol/g以上78μmol/g以下である、蒸着フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は樹脂組成物、蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体に関する。
一般的に、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう。)は、透明性、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性等に優れる。このような特性を生かして、EVOHは、食品、医薬品、工業薬品、農薬等の包装材料として、フィルム、シート、容器等に利用されている。また、EVOHは、そのバリア性、保温性、耐汚染性等を活かして、自動車等車両の燃料タンク、タイヤ用チューブ材、農業用フィルム、ジオメンブレン、靴用クッション材等の用途にも使用されている。
また、EVOHの各種性能の中でも、その高いガスバリア性を生かして、EVOHの層に無機蒸着層を積層させてなる蒸着フィルムが、包装材、真空断熱体等の用途に使用されている。
一方で、EVOHは、他の樹脂と比較すると熱安定性が低く、熱処理及び成形加工の際にブツ等が生じることがある。また、EVOHは、屋外での使用により光、熱等に暴露されると、機械的強度が低下することもある。EVOHの熱安定性に関し、特許文献1には、エチレン単位(III)、ビニルアルコール単位(IV)及びビニルエステル単位(V)を含み、上記単位の合計(III+IV+V)に対するエチレン単位(III)の比率が20~60mol%であり、上記単位の合計(III+IV+V)に対する共重合体の重合体末端におけるカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計(I+II)の比率が0.12mol%以下であるEVOHが記載されている。特許文献1によれば、このような末端のカルボン酸単位及びラクトン環単位が少ないEVOHにより、熱処理及び成形加工の際にブツ等が生じ難く、溶融成形時のロングラン性が向上するとされている。
国際公開第2004/092234号
しかし、特許文献1のEVOHは、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計(I+II)の比率が0.12mol%以下のものであり、この合計の比率が高いEVOHでは、熱安定性を改善すること、すなわち、熱処理及び成形加工の際に発生するブツを抑制することができていない。また、特許文献1のEVOHは、屋外での長期間の使用を考慮した、耐熱耐光性については考慮されていない。さらに近年、廃棄されたプラスチック製品が海洋に流出し、マイクロプラスチックとなり海洋を汚染することが問題となっている。このため、マイクロプラスチック化し難い樹脂の開発が求められている。特に、後述する実施例の表11(参考比較例18~20)等で示されているように、上記特許文献1のEVOHのようなカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計(I+II)の比率が低いものは、マイクロプラスチック化しやすいことを発明者らは知見している。
一方、熱安定性、耐熱耐光性等のEVOHの特性は、エチレン含有量等のEVOH自体の構造が影響する。このため、エチレン含有量等を調整することで、熱安定性、耐熱耐光性等の改善を図ることも、ある程度可能である。しかし、通常、成形体の用途等に応じた好適なエチレン含有量等を有するEVOHが用いられるため、EVOH自体を変更することなく、熱安定性、耐熱耐光性等の各特性の改善を図ることが望まれる。また、EVOHの層を備える蒸着フィルムにおいても、よりガスバリア性の高い性能を有する蒸着フィルムの開発が期待される。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、長時間にわたる溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じEVOHを用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている樹脂組成物からなる層を備え、良好なガスバリア性を有する蒸着フィルム、並びにこの蒸着フィルムを備える包装材及び真空断熱体を提供することである。
本発明によれば上記の目的は、
[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)及びアルミニウムイオン(B)を含有する樹脂組成物からなる基材層(α)と、基材層(α)の少なくとも片面に積層される無機蒸着層(β)とを備える蒸着フィルムであって、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の少なくとも一部が、重合体末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の少なくとも一方を有し、上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)が14μmol/g以上78μmol/g以下であり、上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)が0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下である、蒸着フィルム;
[2]上記樹脂組成物におけるカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)とアルミニウムイオン(B)の含有量(b)との比率((i+ii)/b)が、180以上20,000以下である、[1]の蒸着フィルム;
[3]アルミニウムイオン(B)が炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩に由来する、[1]又は[2]の蒸着フィルム;
[4]上記樹脂組成物が、桂皮酸類及び分子量1,000以下の共役ポリエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(C)をさらに含有し、上記樹脂組成物における化合物(C)のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する含有量(c)が1ppm以上1,000ppm以下である、[1]~[3]のいずれかの蒸着フィルム;
[5]上記樹脂組成物におけるカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)に対するラクトン環単位(II)の含有量(ii)の比率(ii/(i+ii))が40mol%以上である、[1]~[4]のいずれかの蒸着フィルム;
[6]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)は、エチレン単位含有量が20mol%以上50mol%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)、及びエチレン単位含有量が30mol%以上60mol%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)を含有し、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)のエチレン単位含有量からエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)のエチレン単位含有量を減じた値が5mol%以上であり、上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)に対する質量比(A1/A2)が60/40以上95/5以下である、[1]~[5]のいずれかの蒸着フィルム;
[7]無機蒸着層(β)の平均厚みが15nm以上150nm以下である、[1]~[6]のいずれかの蒸着フィルム;
[8]基材層(α)が延伸された層である、[1]~[7]のいずれかの蒸着フィルム;
[9]接着層(γ)と、上記接着層に積層される熱可塑性樹脂層(δ)とをさらに備える、[1]~[8]のいずれかの蒸着フィルム;
[10]基材層(α)の片面に無機蒸着層(β)が積層され、基材層(α)の無機蒸着層(β)が積層される面とは反対側に、接着層(γ)を介して熱可塑性樹脂層(δ)が積層されている、[9]の蒸着フィルム;
[11]少なくとも基材層(α)、接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)が一体で延伸されてなる、[9]又は[10]の蒸着フィルム;
[12][1]~[11]のいずれかの蒸着フィルムを備える、包装材;
[13][1]~[11]のいずれかの蒸着フィルムを備える、真空断熱体;
のいずれかを提供することで達成される。
本発明によれば、長時間にわたる溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じEVOHを用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている樹脂組成物からなる層を備え、良好なガスバリア性を有する蒸着フィルム、並びにこの蒸着フィルムを備える包装材及び真空断熱体を提供できる。
溶媒:DMSO-d 測定温度:25℃の条件で測定した合成例1のEVOH-AのH-NMRスペクトルである。 溶媒:DMSO-d 測定温度:80℃の条件で測定した合成例1のEVOH-AのH-NMRスペクトルである。 溶媒:DO+MeOD 測定温度:80℃の条件で測定した合成例1のEVOH-AのH-NMRスペクトルである。
<蒸着フィルム>
本発明の蒸着フィルムは、所定の樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(α)」とも称する。)からなる基材層(α)と、基材層(α)の少なくとも片面に積層される無機蒸着層(β)とを備える蒸着フィルムである。本発明の蒸着フィルムは、酸素バリア性が要求される用途、例えば食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の包装材料、或いは家電製品、住宅用、自動車用の断熱材等、種々の分野で利用される。当該蒸着フィルムは、上述した層以外に、接着層(γ)、熱可塑性樹脂層(δ)、樹脂コート層(ε)、及びその他の層を備えてもよい。以下、各層について説明する。
[基材層(α)]
基材層(α)は、樹脂組成物(α)からなる層である。樹脂組成物(α)は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)(以下、「EVOH(A)」と称することがある。)及びアルミニウムイオン(B)を含有する。EVOH(A)の少なくとも一部は、重合体末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の少なくとも一方を有する。EVOH(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)は14μmol/g以上78μmol/g以下である。EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)は0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下である。
樹脂組成物(α)は、長期間にわたる溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じEVOHを用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている。従って、樹脂組成物(α)によれば、EVOHの種類を変更することなく、ブツの発生がより抑制され、得られる成形体等(蒸着フィルムの基材層等を含む。以下同様)の耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性が高められる。このような効果が生じる理由は定かではないが、以下が推測される。所定量のアルミニウムイオン(B)が、EVOH(A)の末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)と相互作用することで、安定な構造が形成される。これにより、溶融成形時のゲル化が抑制される結果、ブツの発生が抑制される。また、得られる成形体においても、上記の安定な構造が形成されている結果、耐熱耐光性に優れ且つ廃棄後マイクロプラスチック化し難くなっているものと推測される。
また、本発明の蒸着フィルムは、このような樹脂組成物(α)から形成された基材層(α)と、この基材層(α)の少なくとも片面に積層される層(β)とを備えることにより、蒸着欠陥が少なく且つ基材層(α)と層(β)との密着強度が高く、その結果、ガスバリア性が良好である。このような効果が生じる理由も定かではないが、上述の所定量のアルミニウムイオン(B)がEVOH(A)の末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)と相互作用することで形成される安定な構造が、基材層(α)の表面物性等に影響し、層(β)との密着性を高めていることなどが推測される。
(樹脂組成物(α))
樹脂組成物(α)は、EVOH(A)及びアルミニウムイオン(B)を含有し、これら以外の成分をさらに含有していてもよい。以下、樹脂組成物(α)の各成分等について詳説する。
(EVOH(A))
EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコ-ル単位とを有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体のケン化反応で得られる。従って、EVOH(A)は、残存するビニルエステル単位をさらに有していてよい。すなわち、EVOH(A)は、エチレン単位とビニルアルコール単位とを有し、任意の単量体単位としてのビニルエステル単位をさらに有する又は有さない共重合体である。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造及びケン化は公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
EVOH(A)の少なくとも一部は、重合体末端(主鎖末端)に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の少なくとも一方を有する。カルボン酸類単位(I)は、重合体末端に位置する構造単位であって、カルボキシ基を有する構造単位をいう。カルボン酸類単位(I)を末端カルボン酸類単位ともいう。カルボン酸類単位(I)が有するカルボキシ基の一部又は全部は、塩又はアニオン(-COO)の状態で存在していてもよい。ラクトン環単位(II)は、重合体末端に位置する構造単位であって、ラクトン環を有する構造単位をいう。ラクトン環単位(II)を末端ラクトン環単位ともいう。ラクトン環の環員数は特に限定されず、例えば4~6員環であってよく、5員環が好ましい。カルボン酸類単位(I)は、例えば下記式(1)で表される構造単位であってよい。ラクトン環単位(II)は、例えば下記式(2)で表され構造単位であってよい。
Figure 2022007524000001
式(1)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基又はエステル化されたヒドロキシ基である。Yは、水素原子又は金属原子である。
上記Xで表されるエステル化されたヒドロキシ基としては、-OCO-CH、-OCO-C等が挙げられる。
上記Yで表される金属原子としては、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の典型元素である金属、遷移金属等が挙げられる。中でも、典型元素が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びアルミニウムが好ましい。Yがアルミニウムである場合、このアルミニウムは、アルミニウムイオン(B)に含まれる。Yが2価以上の金属原子である場合、1つのYに対して2以上のカルボキシラートアニオン(-COO)が結合又は配位していてよい。
EVOH(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)、すなわちEVOH(A)1g中に存在するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計量(物質量:モル数)の下限は、14μmol/gであり、18μmol/gが好ましく、22μmol/gがより好ましい。また、EVOH(A)のエチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計含有量に対するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量の下限は、0.10mol%が好ましく、0.12mol%がより好ましく、0.14mol%がさらに好ましい。カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量が上記下限以上であると、アルミニウムイオン(B)との相互作用が十分に生じ、特にマイクロプラスチック化耐性が向上する。
一方、EVOH(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計量含有量(i+ii)の上限は、78μmol/gであり、70μmol/gが好ましく、60μmol/gがより好ましく、50μmol/gがさらに好ましく、40μmol/gが特に好ましい。また、EVOH(A)のエチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の合計含有量に対するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量の上限は、0.4mol%が好ましく、0.3mol%がより好ましく、0.25mol%がさらに好ましい。カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)が多すぎる場合、熱安定性が低下する。具体的には、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)は、高温下でEVOH(A)のヒドロキシ基と反応して分岐を有する高重合度の重合体となり得る。このため、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の含有量が多いと、EVOH(A)の溶融成形性を低下させる傾向がある。従って、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量が上記上限以下であると、溶融成形時のブツの発生を抑制できる。
EVOH(A)のカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)に対するラクトン環単位(II)の含有量(ii)の比率(ii/(i+ii):ラクトン環単位比率)の下限としては、例えば30mol%であってもよいが、40mol%が好ましく、50mol%がより好ましい。ラクトン環単位比率(ii/(i+ii))が上記下限以上である場合、アルミニウムイオン(B)との効果的な相互作用が生じること等により、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性がより高まる傾向にある。一方、このラクトン環単位比率(ii/(i+ii))の上限としては、例えば90mol%であってよく、80mol%又は70mol%であってもよい。
EVOH(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)は、例えば重合開始剤の種類等の重合条件、乾燥雰囲気等の乾燥条件等によって調整される。分岐構造を有さないEVOH(A)においては、重合度が高いとカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)は相対的に小さくなる傾向にあるが、この傾向に沿わない場合も多い。例えば、特許文献1に記載のように、エチレン-ビニルエステル共重合体又はEVOHに対して還元剤を接触させることでカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)を少なくできる。逆に、エチレン-ビニルエステル共重合体又はEVOHに対して酸化剤を接触させることや、酸化しやすい雰囲気下で乾燥させること等でカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)を増やすことも可能である。また、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)に対するラクトン環単位(II)の含有量(ii)の比率(ii/(i+ii):ラクトン環単位比率)は、ケン化条件等によって調整できる。例えば、ケン化が促進する条件でケン化を行うと、ラクトン環単位比率(ii/(i+ii))が多くなる傾向にある。
EVOH(A)の重合体末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)並びにラクトン環単位比率(ii/(i+ii))は、H-NMR測定で求められる。なお、発明者らは、測定の際に用いる溶媒の種類によって、上記測定結果が異なることを知見している。このため、上記測定は、水/メタノールの混合溶媒(質量比4/6、ただし試料が溶解しない場合は適宜質量比を変更する)を用いて行うものとする。具体的には、カルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)並びにラクトン環単位比率(ii/(i+ii))は、後述する実施例に記載の方法によって測定された値とする。
EVOH(A)のエチレン単位の含有量の下限は10mol%が好ましく、15mol%がより好ましく、20mol%がさらに好ましく、25mol%がよりさらに好ましいこともある。一方、EVOH(A)のエチレン単位の含有量の上限は60mol%が好ましく、55mol%がより好ましく、50mol%又は45mol%がさらに好ましいこともある。エチレン単位の含有量を上記下限以上とすることで、熱安定性、マイクロプラスチック化耐性等が向上する傾向にある。また、エチレン単位の含有量を上記下限以下とすることで、酸素バリア性等が向上する傾向にある。
EVOH(A)のケン化度の下限は、90mol%が好ましく、95mol%がより好ましく、99mol%がさらに好ましく、99.6mol%が特に好ましい。EVOH(A)のケン化度を上記下限以上とすることで、溶融成形性、得られる成形体等におけるガスバリア性、耐熱耐光性、耐湿性等が良好となる傾向がある。また、ケン化度は100mol%以下であっても、99.97mol%以下であっても、99.94mol%以下であってもよい。
EVOH(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボン酸類単位(I)、ラクトン環単位(II)、並びにエチレン、ビニルエステル及びこのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。他の単量体由来の単位(カルボン酸類単位(I)、ラクトン環単位(II)、エチレン単位、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位以外の単位)のEVOH(A)の全構造単位に対する含有量は30mol%以下が好ましく、20mol%以下がより好ましく、10mol%以下がさらに好ましく、5mol%以下がよりさらに好ましく、1mol%以下が特に好ましい。また、EVOH(A)が上記他の単量体由来の単位を有する場合、その含有量は0.05mol%以上であっても、0.1mol%以上であってもよい。
他の単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、他の単量体由来の単位は、下記式(I)で表される構造単位(X)、下記式(II)で表される構造単位(Y)、及び下記式(III)で表される構造単位(Z)の少なくともいずれか一種であってもよい。
Figure 2022007524000002
上記式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基、炭素数6~10の芳香族炭化水素基又は水酸基を表す。R、R及びRのうちの一対、RとR、RとRは結合していてもよい(但し、R、R及びRのうちの一対が共に水素原子の場合、及びRとRとが、又はRとRが、共に水素原子の場合は除く)。また、上記炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の脂環式炭化水素基及び炭素数6~10の芳香族炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。上記式中、R12及びR13は、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基又は炭素数2~10のアルカノイル基を表す。
EVOH(A)が構造単位(X)、(Y)又は(Z)を有する場合、樹脂組成物の柔軟性及び加工特性が向上し、得られる成形体や多層構造体における延伸性及び熱成形性等が良好になる傾向がある。
構造単位(X)、(Y)又は(Z)において、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基等が挙げられる。炭素数3~10の脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。炭素数6~10の芳香族炭化水素基としてはフェニル基等が挙げられる。
構造単位(X)において、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、水酸基、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基が好ましく、中でも、得られる多層構造体等における延伸性及び熱成形性をさらに向上できる観点から、それぞれ独立して水素原子、メチル基、水酸基及びヒドロキシメチル基がより好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(X)を含有させる方法は特に限定されず、例えばエチレンとビニルエステルとの重合において、構造単位(X)に誘導される単量体を共重合させる方法等が挙げられる。構造単位(X)に誘導される単量体としては、例えばプロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-ヒドロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、3-ヒドロキシ-1-ブテン、4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-ヒドロキシ-1-ペンテン、5-ヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5-ヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、4-ヒドロキシ-1-ヘキセン、5-ヒドロキシ-1-ヘキセン、6-ヒドロキシ-1-ヘキセン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン等の水酸基あるいはエステル基を有するアルケンが挙げられる。中でも、共重合反応性、及び得られる成形体及び多層構造体の加工性、ガスバリア性の観点からは、プロピレン、3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテンが好ましい。なお、“アシロキシ”はアセトキシが好ましく、具体的には3-アセトキシ-1-プロペン、3-アセトキシ-1-ブテン、4-アセトキシ-1-ブテン及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが好ましい。エステルを有するアルケンの場合は、ケン化反応の際に構造単位(X)に誘導される。
構造単位(Y)において、R及びRは共に水素原子であることが好ましい。特にR及びRが共に水素原子であり、上記R及びRのうちの一方が炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、他方が水素原子であることがより好ましい。脂肪族炭化水素基としてはアルキル基及びアルケニル基が好ましい。得られる成形体及び多層構造体におけるガスバリア性を特に重視する観点からは、R及びRのうちの一方がメチル基又はエチル基、他方が水素原子であることがより好ましい。また上記R及びRのうちの一方が(CHOHで表される置換基(但し、hは1~8の整数)、他方が水素原子であることがさらに好ましい。なお、hは1~4の整数であることが好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(Y)を含有させる方法は特に限定されず、ケン化反応によって得られたEVOHに一価エポキシ化合物を反応させる方法等が用いられる。一価エポキシ化合物としては、下記式(IV)~(X)で示される化合物が好適に用いられる。
Figure 2022007524000003
上記式中、R14、R15、R16、R17及びR18は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルケニル基等)、炭素数3~10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)又は炭素数6~10の脂肪族炭化水素基(フェニル基等)を表す。また、i、j、k、p及びqは、それぞれ独立して1~8の整数を表す。ただし、R17が水素原子である場合、R18は水素原子以外の置換基を有する。
式(IV)で表される一価エポキシ化合物としては、例えばエポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、3-メチル-1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、3-メチル-1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、2,3-エポキシヘキサン、3,4-エポキシヘキサン、3-メチル-1,2-エポキシヘキサン、3-メチル-1,2-エポキシヘプタン、4-メチル-1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、2,3-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、2,3-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1-フェニル-1,2-エポキシプロパン、3-フェニル-1,2-エポキシプロパン等が挙げられる。式(V)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。式(VI)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルキレングリコ-ルモノグリシジルエーテルが挙げられる。式(VII)で表される一価エポキシ化合物としては、各種アルケニルグリシジルエーテルが挙げられる。式(VIII)で表される一価エポキシ化合物としては、グリシドール等の各種エポキシアルカノールが挙げられる。式(IX)で表される一価エポキシ化合物としては、各種エポキシシクロアルカンが挙げられる。式(X)で表される一価エポキシ化合物としては、各種エポキシシクロアルケンが挙げられる。
一価エポキシ化合物の中では炭素数が2~8のエポキシ化合物が好ましい。特に取り扱いの容易さ及び反応性の観点から、一価エポキシ化合物の炭素数は2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。また、一価エポキシ化合物は式(IV)又は式(V)で表される化合物が特に好ましい。具体的には、EVOH(A)との反応性及び得られる多層構造体及び熱成形体の加工性、ガスバリア性等の観点からは、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン又はグリシド-ルが好ましく、中でもエポキシプロパン又はグリシド-ルがより好ましい。
構造単位(Z)において、R、R、R10及びR11は水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基又はn-ペンチル基が好ましい。
EVOH(A)中に構造単位(Z)を含有させる方法については、特に限定されず、例えば、特開2014-034647号公報に記載の方法が挙げられる。
EVOH(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物(α)におけるEVOH(A)の含有量の下限は例えば50質量%であってよいが、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましく、95質量%、97質量%又は99質量%がよりさらに好ましい場合もある。一方、EVOH(A)の含有量の上限は例えば99.9質量%であってよく、99質量%であってもよい。なお、EVOH(A)の含有量とは、乾燥状態の樹脂組成物における含有量(含有割合)をいう。以下、樹脂組成物を基準にした含有量について同様である。
樹脂組成物(α)は、2種以上のEVOH(A)を含有する場合、ガスバリア性を維持しつつ、柔軟性、二次加工性、加熱延伸性等が改善される傾向にある。
EVOH(A)を2種以上併用する場合は、エチレン単位含有量が20mol%以上50mol%以下のEVOH(A1)、及びエチレン単位含有量が30mol%以上60mol%以下のEVOH(A2)を含有し、EVOH(A2)のエチレン単位含有量からEVOH(A1)のエチレン単位含有量を減じた値が5mol%以上であり、EVOH(A1)のEVOH(A2)に対する質量比(A1/A2)が60/40以上95/5以下であることが好ましい。
EVOH(A1)のエチレン含有量の下限としては、通常20mol%であり、23mol%が好ましく、25mol%がより好ましい。一方、EVOH(A1)のエチレン含有量の上限としては、通常50mol%であり、47mol%が好ましい。EVOH(A1)のエチレン含有量を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)の柔軟性、二次加工性、加熱延伸性等の効果がより十分に奏される。一方、EVOH(A1)のエチレン含有量を上記上限以下とすることで、樹脂組成物(α)のガスバリア性をより高めることができる。
EVOH(A2)のエチレン含有量の下限としては、通常30mol%であり、34mol%が好ましく、38mol%がより好ましい。一方、EVOH(A2)のエチレン含有量の上限としては、通常60mol%であり、55mol%が好ましく、52mol%がより好ましい。EVOH(A2)のエチレン含有量を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)の柔軟性、二次加工性、加熱延伸性等の効果がより十分に奏される。一方、EVOH(A2)のエチレン含有量を上記上限以下とすることで、樹脂組成物(α)のガスバリア性をより高めることができる。
EVOH(A2)のエチレン単位含有量からEVOH(A1)のエチレン単位含有量を減じた値の下限としては、5mol%が好ましく、8mol%がより好ましく、12mol%がさらに好ましく、15mol%が特に好ましく、18mol%が最も好ましい。また、上記値の上限としては、40mol%が好ましく、30mol%がより好ましく、20mol%がさらに好ましい。EVOH(A2)とEVOH(A1)とのエチレン含有量差を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)の加熱延伸性を高めることができる。逆に、上記エチレン含有量差を上記上限以下とすることで、樹脂組成物(α)のガスバリア性をより高めることができる。
EVOH(A1)のEVOH(A2)に対する質量比(A1/A2)の下限としては60/40が好ましく、62/38がより好ましく、65/35、68/32、70/30又は85/15がさらに好ましい場合もある。該質量比の上限としては、95/5が好ましく、93/7がより好ましく、92/8がさらに好ましく、91/9がよりさらに好ましく、85/15がよりさらに好ましい場合もある。該質量比が上記範囲であると、各種ガスに対するガスバリア性を保ちつつ、樹脂組成物(α)の柔軟性、加熱延伸性及び二次加工性が優れる。例えば上記質量比(A1/A2)を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)のガスバリア性及び耐油性をより高めることができる。一方、上記質量比(A1/A2)を上記上限以下とすることで、樹脂組成物(α)の柔軟性、加熱延伸性及び二次加工性を高めることができる。
EVOH(A1)の融点とEVOH(A2)の融点との差の下限としては、12℃が好ましく、14℃がより好ましく、15℃がさらに好ましく、17℃が特に好ましい。EVOH(A1)の融点とEVOH(A2)の融点との差の上限としては、例えば100℃であってもよいが、80℃が好ましく、40℃がより好ましく、34℃がさらに好ましく、28℃が特に好ましい。上記融点の差を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)の加熱延伸性を高めることができる。逆に、上記融点の差を上記上限以下とすることで、樹脂組成物(α)のロングラン(長期間の連続運転)時のフローマークの抑制性効果を高めることができる。
樹脂組成物(α)のEVOH(A1)及びEVOH(A2)の合計含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99.9質量%が特に好ましい場合もある。
樹脂組成物(α)の樹脂分におけるEVOH(A2)の含有量の下限としては、4質量%が好ましく、6質量%がより好ましく、7質量%がさらに好ましい。一方、EVOH(A2)の含有量の上限としては、40質量%が好ましく、35質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、15質量%が特に好ましい。EVOH(A2)の含有量を上記下限以上とすることで、樹脂組成物(α)の柔軟性、加熱延伸性及び二次加工性を高めることができる。逆に、EVOH(A2)の含有量を上記上限以下とすることで、EVOH(A1)の含有量を大きくし、樹脂組成物(α)のガスバリア性及び耐油性を高めることができる。
EVOH(A2)は、樹脂組成物(α)の柔軟性、二次加工特性、及び加熱延伸性の向上の観点から、変性エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「変性EVOH」ともいう)でもよい。変性EVOHは、上記した、カルボン酸類単位(I)、ラクトン環単位(II)、並びにエチレン、ビニルエステル及びこのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有するEVOHを挙げることができる。
(アルミニウムイオン(B))
樹脂組成物(α)に含有されるアルミニウムイオン(B)は、アニオンから解離した状態で存在していてもよく、アニオンと結合した塩の状態で存在していてもよい。また、EVOH(A)やその他の任意成分が有する基等(例えば、カルボキシ基、水酸基等)に配位した状態で存在していてもよい。
アルミニウムイオン(B)は、通常、塩に由来するものであるが、炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩に由来するものが好ましい。すなわち、樹脂組成物(α)を調製する際に炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩が用いられることが好ましい。換言すれば、樹脂組成物(α)においては、アルミニウムイオン(B)を構成する成分として、炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩が添加又は含有されていることが好ましい。炭素数が5以下の脂肪酸のアルミニウム塩は水への溶解性が比較的高い。このため、炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩を製造工程で添加しても析出が生じ難く、異物の少ない外観に優れる樹脂組成物又は成形体が得られる。添加された炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩は、アルミニウムイオン(B)と脂肪酸アニオンとが結合したままの塩の状態で樹脂組成物中に存在していてもよく、アルミニウムイオン(B)と脂肪酸アニオンとが解離した状態で樹脂組成物中に存在していてもよい。
炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩としては、ギ酸アルミニウム(トリギ酸アルミニウム等)、酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム(トリプロピオン酸アルミニウム等)、酪酸アルミニウム(三酪酸アルミニウム等)等が挙げられる。中でも、酢酸アルミニウム及びトリプロピオン酸アルミニウムの少なくとも一方を用いることが好ましい。ここで、酢酸アルミニウムは、塩基性酢酸アルミニウム、トリ酢酸アルミニウム等に代表される酢酸のアルミニウム塩の構造を有するものの総称である。溶媒への溶解性等の観点から、これらの中のいずれか1種又は2種以上が適宜使用される。
その他、炭素数6以上の脂肪酸アルミニウム塩、脂肪酸アルミニウム塩以外のアルミニウム塩(硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等)等を用いることもできる。
樹脂組成物(α)において、EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)、すなわちEVOH(A)の含有量(質量)を基準としたアルミニウムイオン(B)の含有量(物質量:モル数)の下限は、0.002μmol/gであり、0.005μmol/gが好ましく、0.01μmol/g又は0.015μmol/gがより好ましい場合もある。一方、上記含有量(b)の上限は、0.17μmol/gであり、0.15μmol/gが好ましく、0.10μmol/gがより好ましく、0.05μmol/g又は0.03μmol/gがさらに好ましい場合もある。EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)を上記範囲内とすることで、ブツの発生抑制、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性を十分に改善できる。特にこの含有量(b)を比較的大きい範囲内とすることで、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性が大きく改善される傾向にある。一方、この含有量(b)を比較的小さい範囲内とすることで、ブツの発生抑制効果が高まる傾向にある。
EVOH(A)の重合体末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)とアルミニウムイオン(B)の含有量(b)との比率((i+ii)/b)の下限としては、180が好ましく、300がより好ましく、1,000がより好ましい。一方、この比率((i+ii)/b)の上限としては、20,000が好ましく、15,000がより好ましく、10,000、8,000、6,000又は4,000がさらに好ましい場合もある。比((i+ii)/b)を上記範囲内とすることで、ブツの発生抑制、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性をより十分に改善できる。特にこの比((i+ii)/b)を比較的高い範囲とすることで、EVOH(A)との相互作用に寄与しない過剰なアルミニウムイオン(B)が少なくなること等により、ブツの発生抑制効果が高まる傾向にある。一方、比((i+ii)/b)を比較的低い範囲とすることで、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性がより改善される傾向にある。
樹脂組成物(α)におけるアルミニウムイオン(B)の含有量の下限としては、例えば0.01ppmであってもよいが、0.05ppmが好ましく、0.1ppmがより好ましい場合もある。樹脂組成物全体におけるアルミニウムイオン(B)の含有量を上記下限以上とすることで、本発明の効果をより高められる。一方、この含有量の上限としては、4ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、2ppm又は1ppmがさらに好ましい場合もある。樹脂組成物全体におけるアルミニウムイオン(B)の含有量を上記上限以下とすることで、過剰なアルミニウムイオン(B)に起因するブツの発生を抑制すること等ができる。
なお、本明細書において、「ppm」は質量基準の含有量(含有比率)を示す。
(化合物(C))
樹脂組成物(α)は、化合物(C)をさらに含有することが好ましい。化合物(C)は、桂皮酸類及び共役ポリエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種である。樹脂組成物(α)がこのよう化合物(C)をさらに含有することで、ブツの発生抑制、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性をより改善できる。この理由は定かではないが、アルミニウムイオン(B)がさらに化合物(C)とも相互作用することにより、耐熱性や耐光性が向上すること等が推測される。
桂皮酸類としては、桂皮酸(シス-桂皮酸、トランス-桂皮酸、又はこれらの混合物)、並びに桂皮酸エステル及び桂皮酸塩等の桂皮酸誘導体が挙げられる。桂皮酸誘導体とは、桂皮酸を反応させて得られる化合物等を言う。桂皮酸エステルとしては、桂皮酸メチル、桂皮酸エチル等が挙げられる。桂皮酸塩としては、桂皮酸ナトリウム、桂皮酸マグネシウム、桂皮酸カルシウム等が挙げられる。中でも、桂皮酸類として桂皮酸、特に安定性と価格の観点からトランス-桂皮酸を用いることが好ましい。なお、桂皮酸を用いた場合、アルミニウムイオン(B)と共存すること等により、桂皮酸の一部又は全部が桂皮酸塩となっていてもよい。
共役ポリエン化合物とは、炭素-炭素二重結合と炭素-炭素単結合が交互に繋がってなる構造を有し炭素-炭素二重結合の数が2個以上である、いわゆる共役二重結合を有する化合物である。この共役ポリエン化合物は、共役二重結合を2個有する共役ジエン、3個有する共役トリエン、又はそれ以上の数を有する共役ポリエンであってもよい。また、上記共役二重結合が互いに共役せずに1分子中に複数組あってもよい。例えば、桐油のように共役トリエン構造が同一分子内に3個ある化合物も上記共役ポリエン化合物に含まれる。
共役ポリエン化合物の共役二重結合の数としては、7個以下が好ましい。共役二重結合の数が7個以下の共役ポリエン化合物を用いることで、着色が低減できる。
共役ポリエン化合物は、共役二重結合に加えて、カルボキシ基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基及びその塩、スルホニル基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、三重結合等のその他の官能基を有していてもよい。
共役ポリエン化合物としては、例えば
イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-t-ブチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、2,5-ジメチル-2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン、1-メトキシ-1,3-ブタジエン、2-メトキシ-1,3-ブタジエン、1-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-エトキシ-1,3-ブタジエン、2-ニトロ-1,3-ブタジエン、クロロプレン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1-ブロモ-1,3-ブタジエン、2-ブロモ-1,3-ブタジエン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩等の共役ジエン化合物;
1,3,5-ヘキサトリエン、2,4,6-オクタトリエン-1-カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール、フルベン、トロポン等の共役トリエン化合物;
シクロオクタテトラエン、2,4,6,8-デカテトラエン-1-カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の共役ポリエン化合物等が挙げられる。
共役ポリエン化合物の分子量は、通常1,000以下であり、500以下が好ましく、300以下がより好ましい。共役ポリエン化合物の分子量が1,000以下であると、EVOH(A)中への共役ポリエン化合物の分散状態が向上し、溶融成形後の外観が向上する。
共役ポリエン化合物としては、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、ミルセン、及びこれらのうちの2以上の混合物が好ましく、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びこれらの混合物がより好ましい。ソルビン酸、ソルビン酸塩及びこれらの混合物は、高温での酸化劣化の抑制効果が高く、また食品添加剤としても広く工業的に使用されているため衛生性や入手性の観点からも好ましい。
化合物(C)は、不飽和カルボン酸及びその塩であってもよい。このような化合物としては、桂皮酸、ソルビン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。この不飽和カルボン酸の炭素数としては、4以上20以下が好ましく、6以上10以下がより好ましい。化合物(C)はアニオンの状態で存在していてもよい。
樹脂組成物(α)において、化合物(C)のEVOH(A)に対する含有量(c)の下限は、1ppmが好ましく、5ppmがより好ましく、10ppmがさらに好ましく、30ppmがよりさらに好ましい場合もある。化合物(C)の含有量(c)を上記下限以上とすることで、化合物(C)を含有させることの効果を特に十分に発揮できる。一方、この含有量(c)の上限は、EVOH(A)に対して1,000ppmが好ましく、500ppmがより好ましい場合もある。化合物(C)の含有量(c)が上記上限以下であると、ブツの発生をより低減させること等ができる。樹脂組成物(α)全体に対する化合物(C)の含有量も上記範囲内が好ましい。なお、上記含有量(c)は、EVOH(A)1gあたりの化合物(C)の含有量(質量)であり、EVOH(A)の含有量(質量)対する化合物(C)の含有量(質量)の比率である。
(無機粒子(H))
樹脂組成物(α)は、該樹脂組成物から形成されるフィルム等(基材層(α)、基材フィルム等)の耐破断性、蒸着欠点抑制性及び無機蒸着層(β)の密着強度をより改善することなどのため、さらに無機粒子(H)を含有しても良い。
無機粒子を含有させた樹脂組成物は、形成されるフィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)を適度なものとし、耐ブロッキング性及び滑り性を向上させるものである。ここで、無機粒子とは、無機物を主成分とする粒子をいう。主成分とは、最も含有量が多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
無機粒子(H)を構成する無機物は、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、タングステン及びモリブデンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、入手が容易であることから、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。上記無機物としては、例示した元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物等が挙げられ、酸化物が好ましい。
無機粒子(H)の平均粒子径の下限は、0.5μmが好ましく、1.5μmがより好ましく、2.5μmがさらに好ましい。無機粒子(H)の平均粒子径の上限は、10μmが好ましく、8μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。無機粒子(H)の平均粒子径が上記範囲であると、該樹脂組成物から形成されるフィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が適度なものとなり、耐ブロッキング性及び滑り性が向上する。その結果、該樹脂組成物は、耐破断性、蒸着欠点抑制性及び無機蒸着層(β)の密着強度を向上できる。
無機粒子(H)のEVOH(A)に対する含有量(h)の下限は、50ppmが好ましく、100ppmがより好ましく、150ppmがさらに好ましい。無機粒子(H)の含有量(h)の上限は、5,000ppmが好ましく、4,000ppmがより好ましく、3,000ppmがさらに好ましく、2,000ppm又は1,000ppmがよりさらに好ましい場合もある。無機粒子(H)の含有量(h)が上記範囲であると、該樹脂組成物から形成されるフィルムの表面の算術平均粗さ(Ra)が適度なものとなり、耐ブロッキング性及び滑り性が向上する。その結果、該樹脂組成物は、耐破断性及び蒸着欠点抑制性に優れ、また、得られるフィルムの無機蒸着層(β)との密着強度を向上させることができる。無機粒子(H)としては、1種又は2種以上の粒子を含んでいてもよい。また、1個の粒子が1種又は2種以上の無機物から形成されていてもよい。
(その他の成分)
樹脂組成物(α)は、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の樹脂、アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン、酸(化合物(C)に該当するものを除く)、ホウ素化合物、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、補強材等、他の成分を有していてもよい。中でも、熱安定性や他樹脂との接着性の観点から、アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン、酸(化合物(C)に該当するものを除く)並びにホウ素化合物のうちの一種又は二種以上を含むことが好ましい。
アルミニウムイオン(B)以外の金属イオンとしては、樹脂組成物(α)を積層体(多層フィルム)として用いる場合に層間接着性をより高められることから、アルカリ金属イオンが好ましい。これらの金属イオンは、塩の状態で存在していてよい。
樹脂組成物(α)がかかる金属イオンを含む場合、その含有量は樹脂組成物に対して1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましく、20ppm以上がよりさらに好ましく、40ppm以上が特に好ましい。またアルミニウムイオン(B)以外の金属イオンの含有量は、樹脂組成物に対して3,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましく、300ppm以下が特に好ましい。アルミニウムイオン(B)以外の金属イオンの含有量が上記範囲にあると、前記積層体の層間接着性を良好に保ちつつ、該積層体を回収してリサイクルを行った際の熱安定性が良好となる傾向になる。
酸(化合物(C)に該当するものを除く)としては、カルボン酸又はリン酸が溶融成形時の熱安定性を高める観点から好ましい。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。カルボン酸としては、炭素数4以下のカルボン酸又は飽和カルボン酸が好ましく、酢酸がより好ましい。酸は、塩又はアニオンの状態で存在していてもよい。
樹脂組成物(α)がカルボン酸を含む場合、カルボン酸の含有量は樹脂組成物に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、カルボン酸の含有量は10,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。樹脂組成物(α)がリン酸を含む場合、リン酸の含有量は樹脂組成物に対し、リン酸根換算で、1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましい。また、リン酸化合物の含有量は10,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。樹脂組成物(α)がカルボン酸又はリン酸を上記範囲内で含むと、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素が挙げられる。
樹脂組成物(α)がホウ素化合物を含む場合、ホウ素化合物の含有量は樹脂組成物又はEVOH(A)に対し1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましい。また、ホウ素化合物の含有量は、2,000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましい。樹脂組成物(α)がホウ素化合物を上記範囲内で含むと、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
これらの各成分を樹脂組成物(α)に含有させる方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。
樹脂組成物(α)におけるEVOH(A)、アルミニウムイオン(B)、化合物(C)、アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン、酸(化合物(C)に該当するものを除く)及びホウ素化合物以外の成分の含有量の上限は10質量%が好ましいことがあり、1質量%、0.1質量%、0.01質量%又は0.001質量%が好ましいこともある。
(メルトフローレート)
樹脂組成物(α)の温度210℃、荷重2,160gにおけるメルトフローレートの下限としては、1.0g/10分が好ましく、2.0g/10分がより好ましい。一方、このメルトフローレートの上限としては、30g/10分が好ましく、20g/10分がより好ましく、10g/10分がさらに好ましい。樹脂組成物(α)のメルトフローレートが上記範囲内であると、溶融成形性や加工性等が良好となる。
(樹脂組成物の製造方法)
樹脂組成物(α)の製造法としては、例えば1)含水率20~80質量%のEVOH(A)の多孔性析出物を、アルミニウム塩等を含有する水分散液と接触させて、EVOH(A)にアルミニウム塩等を含有させてから乾燥する方法、2)EVOH(A)の均一溶液(水/アルコール溶液等)にアルミニウム塩等を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、3)EVOH(A)とアルミニウム塩等とを一括してドライブレンドする方法、4)EVOH(A)とアルミニウム塩等とを一括してドライブレンドしてから押出機等で溶融混練する方法、5)EVOH(A)の製造時においてエチレン-ビニルエステル共重合体を得た後に、アルミニウム塩等とを添加する方法等が挙げられる。本発明の効果をより顕著に得るには、1)、2)及び5)の方法がアルミニウムイオン(B)の分散性に優れることから好ましい。
上記1)及び2)の方法においては、アルミニウム塩等が添加された後、また、5)の方法においては、エチレン-ビニルエステル共重合体を得た後、ケン化工程、洗浄工程を経た後、通常、乾燥が行われる。かかる乾燥方法としては、種々の乾燥方法を採用できる。例えば、実質的にペレット状の樹脂組成物が、機械的に又は熱風により撹拌分散されながら行われる流動乾燥や、実質的にペレット状の樹脂組成物が、撹拌、分散等の動的な作用を与えられずに行われる静置乾燥が挙げられる。流動乾燥を行うための乾燥器としては、円筒・溝型撹拌乾燥器、円管乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥器、振動流動層乾燥器、円錐回転型乾燥器等が挙げられる。静置乾燥を行うための乾燥器として、材料静置型としては回分式箱型乾燥器が、材料移送型としてはバンド乾燥器、トンネル乾燥器、竪型乾燥器等を挙げられる。流動乾燥と静置乾燥を組み合わせて行ってもよい。
乾燥処理時に用いられる加熱ガスとしては、空気又は不活性ガス(窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等)が用いられ、該加熱ガスの温度としては、40~150℃が、生産性とEVOH(A)の熱劣化抑制の点で好ましい。乾燥処理の時間としては、樹脂組成物の含水量やその処理量にもよるが、通常は15分~72時間程度が、生産性とEVOH(A)の熱劣化防止の点で好ましい。
また、上記4)の方法としては、例えば単軸又は二軸の押出成形機等で溶融混練する方法がある。溶融混練温度は、通常150~300℃、好ましくは170~250℃である。
樹脂組成物(α)が、EVOH(A)及びアルミニウムイオン(B)以外の他の成分をさらに含有する場合、(1)EVOH(A)とアルミニウムイオン(B)との混合物に対して他の成分を溶融混練等によって混合する方法、(2)EVOH(A)、アルミニウム塩等及び他の成分を一括で溶融混練等により混合する方法などにより、樹脂組成物(α)を製造することができる。
樹脂組成物(α)は、ペレット、粉末等の任意の形態に加工し、成形材料として使用でき、通常、乾燥状態である。樹脂組成物(α)の全固形分に対する水の含有割合の上限は1質量%が好ましいことがあり、0.1質量%又は0.01質量%がより好ましいことがある。樹脂組成物(α)が乾燥状態であると、良好な溶融成形性等を発揮できる。
(基材層(α)の厚さ等)
基材層(α)の平均厚さは特に限定されず、下限は例えば0.5μm、1μm、5μm、7μm又は10μmであってよい。基材層(α)の平均厚さを上記下限以上とすることでガスバリア性を高めることなどができる。一方、平均厚さの上限は例えば100μm、30μm、25μm又は20μmであってもよい。基材層(α)の平均厚さを上記上限以下とすることで外観特性や後述するリサイクル性が良好となる傾向にある。
基材層(α)の酸素透過度の上限としては、50mL・20μm/m・day・atmが好ましく、10mL・20μm/m・day・atmがより好ましく、5mL・20μm/m・day・atmがさらに好ましく、1mL・20μm/m・day・atmが特に好ましい。
(単層フィルム)
基材層(α)は、例えば、樹脂組成物(α)からなる単層フィルム(基材フィルム)として形成することができる。この場合の形成方法としては、特に限定されず、例えば溶融法、溶液法、カレンダー法等が挙げられ、これらの中で溶融法が好ましい。溶融法としては、キャスト法、インフレーション法が挙げられ、これらの中でキャスト法が好ましい。
キャスト法によるフィルム形成の場合、延伸を行ってもよい。延伸方法としては、特に限定されるものではなく、一軸延伸、同時二軸延伸、及び逐次二軸延伸のいずれであってもよい。面積換算の延伸倍率の下限としては、8倍が好ましく、9倍がより好ましい。延伸倍率の上限としては、12倍が好ましく、11倍がより好ましい。延伸倍率が上記範囲であることで、フィルムの厚みの均一性、ガスバリア性及び機械的強度の点を向上させることができる。これに対して、延伸倍率が上記下限未満であると、延伸斑が残りやすくなるおそれがある一方、上記上限を超えると、延伸時にフィルムの破断が生じやすくなるおそれがある。
延伸を行う場合、原反に予め含水させておくことが好ましい。これにより、連続延伸が容易となる。延伸前原反の含水率の下限としては、2質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。延伸前原反の含水率の上限としては、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。含水率が上記下限未満であると、延伸斑が残りやすく、また特にテンターで延伸する場合、グリップに近い部分の延伸倍率が高くなるためにグリップ近辺での破れが生じやすくなるおそれがある。一方、含水率が上記上限を超える場合、延伸された部分の弾性率が低く、未延伸部分との差が十分でなく、延伸斑が残り易くなるおそれがある。
延伸温度は、延伸前の原反の含水率、延伸方法によって多少異なるが、一般に50℃以上130℃以下とされる。延伸温度としては、延伸斑の少ない二軸延伸フィルムが得るためには、同時二軸延伸では70℃以上100℃以下が好ましく、逐次二軸延伸ではロールでの長手方向の延伸においては70℃以上100℃以下が好ましく、テンターでの幅方向の延伸においては80℃以上120℃以下が好ましい。
(多層フィルム)
基材層(α)は、他の層をさらに有する多層フィルム(基材フィルム)の一つの層であってもよい。例えば、本発明の蒸着フィルムは、基材層(α)の片面に無機蒸着層(β)が積層され、基材層(α)の無機蒸着層(β)が積層される面とは反対側に、接着層(γ)を介して熱可塑性樹脂層(δ)が積層されている構造を有するものであってよい。このような場合、基材層(α)、接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)がこの順に積層された多層フィルム(基材フィルム)を作製し、この多層フィルムにおける基材層(α)が露出した側の面に蒸着により無機蒸着層(β)を積層することができる。なお、多層フィルムは上記層構造に限定されるものでなく、一方の最外層として基材層(α)を有し、その他の一層以上の他の層を有するものであればよい。但し、多層フィルムは、基材層(α)と共に熱可塑性樹脂層(δ)を有することが好ましく、さらに基材層(α)と熱可塑性樹脂層(δ)との間に設けられる接着層を有することがより好ましい。
多層フィルムの製造方法としては、特に限定されず、例えば、共押出成形、インフレーション成形等が挙げられる。
多層フィルムの全体厚みは、用途に応じて適宜設定することができる。全体厚みは10μm以上が好ましく、13μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。全体厚みが10μm以上であることで、工業的な生産性が向上する傾向となる。また、全体厚みは300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下が特に好ましい。全体厚みが300μm以下であることで、工業的な生産性が向上する傾向となる。
多層フィルムは、延伸されていることが好ましい。この場合、例えば多層フィルムが少なくとも基材層(α)、接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)を備える場合、得られる蒸着フィルムは、少なくとも基材層(α)、接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)が一体で延伸されてなるものとなることが好ましい。延伸の程度としては、少なくとも一軸方向に面積換算の延伸倍率として3倍以上12倍以下延伸されていることが好ましく、4倍以上10倍以下延伸されていることがより好ましく、5倍以上8倍以下延伸されていることがさらに好ましい。上記延伸倍率が3倍以上であることで、ガスバリア性が向上する。一方、上記延伸倍率が12倍以下であることで、膜面が良好になる。
多層フィルムは、二軸方向に面積換算の延伸倍率として9倍以上144倍以下延伸されていても良く、16倍以上100倍以下延伸されていることが好ましく、25倍以上64倍以下延伸されていることがより好ましい。上記延伸倍率が9倍以上であることで、ガスバリア性が向上する。一方、上記延伸倍率が144倍以下であることで、膜面が良好になる。
多層フィルムの延伸方法としては、特に限定されず、例えば、テンター延伸法、チューブラー延伸法、ロール延伸法などが例示される。製造コストの観点からは、ロール延伸法による一軸延伸が好ましい。また、多層フィルムがインフレーション成形体である場合、インフレーション成形後の折りたたまれた円筒状の多層フィルムを容易に一軸方向に延伸できる観点からも、ロール延伸法であることが好ましい。
[無機蒸着層(β)]
無機蒸着層(β)は、当該蒸着フィルムにおいて主としてガスバリア性を確保するものである。この無機蒸着層(β)は、基材層(α)上に積層されている。無機蒸着層(β)は、基材層(α)の両面に積層されていても、基材層(α)の片面のみに積層されていてもよいが、基材層(α)の両面に積層されていることが好ましい。無機蒸着層(β)を基材層(α)の両面に積層することで、ガスバリア性をより向上させ、ガスバリアの安定性が得られる。すなわち、一方の無機蒸着層(β)に物理的衝撃等により欠陥が生じても、他方の無機蒸着層(β)がバリア性を維持することにより、蒸着フィルムとしてのガスバリア性が好適に維持される。
無機蒸着層(β)は無機物を蒸着することで形成できる。無機物としては、金属(例えば、アルミニウム)、金属酸化物(例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム)、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素)、金属窒化酸化物(例えば、酸窒化ケイ素)、または金属炭化窒化物(例えば、炭窒化ケイ素)等が挙げられる。中でもアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、または窒化ケイ素で形成される無機蒸着層が、工業的な生産性の観点から好ましく、アルミニウムがより好ましい。
なお、アルミニウムの蒸着層であったとしても、不可逆的に酸化が生じ、一部酸化アルミニウムが含まれる場合がある。無機蒸着層(β)に一部酸化アルミニウムが含まれる場合、無機蒸着層(β)を構成するアルミニウム原子の物質量(Almol)に対する酸素原子の物質量(Omol)の比(Omol/Almol)は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、0.05以下が特に好ましい。
無機蒸着層(β)の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、15nmがより好ましく、20nmがさらに好ましく、30nmがよりさらに好ましく、40nmが特に好ましい。無機蒸着層(β)の平均厚みの上限としては、200nmが好ましく、150nmがより好ましく、130nmがさらに好ましく、80nmが特に好ましい。無機蒸着層(β)の平均厚みを上記下限以上とすることで、ガスバリア性を高めることができる。一方、無機蒸着層(β)の平均厚みを上記上限以下とすることで、ヒートブリッジを抑制し、断熱効果を高めることなどができる。なお、無機蒸着層(β)が複数の層から構成される場合、各層の平均厚みが上記範囲であることが好ましい。ここで、無機蒸着層(β)の平均厚みとは、電子顕微鏡により測定される無機蒸着層(β)断面の任意の10点における厚みの平均値である。無機蒸着層(β)が複数の層から構成される場合、無機蒸着層(β)の合計厚みは、1μm以下であることが好ましい。
無機蒸着層(β)におけるアルミニウム粒子等の蒸着粒子の平均粒子径の下限としては、特に限定されないが、10nmが好ましく、15nmがより好ましく、20nmがさらに好ましい。一方、蒸着粒子の平均粒子径の上限としては、150nmが好ましく、125nmがより好ましく、100nmがさらに好ましく、75nmが特に好ましく、50nmが最も好ましい。ここで、蒸着粒子の平均粒子径は、無機蒸着層(β)表面を走査型電子顕微鏡で観察し、同一方向に存在する複数の蒸着粒子の最大径(定方向最大径)の合算値を測定粒子個数で除した平均値を意味する。また、平均粒子径は、蒸着粒子が粒塊を形成している場合、粒塊を構成する蒸着粒子の粒子径(一次粒子径)を意味する。
基材層(α)に無機蒸着層(β)を形成する場合、以下のいずれかの条件を満たすことで、蒸着粒子の平均粒子径が150nm以下である無機蒸着層(β)を形成することが可能となる。
(1)蒸着時の基材層(α)の表面温度を60℃以下にする
(2)蒸着前の基材層(α)に含まれる揮発分の含有量を1.1質量%以下にする
(3)蒸着前の基材層(α)の表面をプラズマ処理し改質する
これらの方法の中でも、条件(1)を満たすことが好ましく、条件(1)に加えて、条件(2)及び条件(3)のうちの少なくとも一方の条件をさらに満たすことがより好ましい。
蒸着を行う際の基材層(α)の表面温度の上限としては、上述のように60℃が好ましく、55℃がより好ましく、50℃がさらに好ましい。また、蒸着時の基材層(α)の表面温度の下限としては、特に限定されないが、0℃が好ましく、10℃がより好ましく、20℃がさらに好ましい。
蒸着前の基材層(α)に含まれる揮発分の含有量の下限としては、特に限定されないが、0.01質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。上記揮発分の上限としては、1.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。ここで、揮発分の含有量は、105℃で3時間乾燥した乾燥前後の質量変化から、後述する蒸着フィルムの揮発分の含有量と同様の式により求められる。
蒸着前の基材層(α)の表面をプラズマ処理する方法としては、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。この大気圧プラズマ処理においては、放電ガスとしては、例えば窒素ガス、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が挙げられる。これらの中でも、窒素、ヘリウム及びアルゴンが好ましく、コスト低減の観点から窒素がより好ましい。
[接着層(γ)]
本発明の蒸着フィルムは、接着層(γ)と、この接着層(γ)に積層される熱可塑性樹脂層(δ)とをさらに備えることが好ましい。本発明の蒸着フィルムをリサイクルする際に、接着層(γ)が存在すると、基材層(α)中のEVOH(A)と熱可塑性樹脂層(δ)中の熱可塑性樹脂との相溶性を高められ、リサイクル性が向上する傾向となるため、その観点からも接着層(γ)を有することが好ましい。
接着層(γ)は、接着性樹脂から形成される層である。接着性樹脂としては、カルボキシ基、カルボン酸無水物基又はエポキシ基を有するポリオレフィンを用いることが好ましい。このような接着性樹脂は、基材層(α)等と熱可塑性樹脂層(δ)との接着性にも優れている。
カルボキシ基を含有するポリオレフィンとしては、アクリル酸やメタクリル酸を共重合したポリオレフィンなどが挙げられる。このとき、アイオノマーに代表されるようにポリオレフィン中に含有されるカルボキシル基の全部あるいは一部が金属塩の形で存在していてもよい。カルボン酸無水物基を有するポリオレフィンとしては、無水マレイン酸やイタコン酸でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。また、エポキシ基を有するポリオレフィンとしては、グリシジルメタクリレートを共重合したポリオレフィンが挙げられる。中でも、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物基を有するポリオレフィン、特にカルボン酸無水物基を有するポリエチレン及びカルボン酸無水物基を有するポリプロピレンが接着性に優れる点から好ましい。
接着層(γ)を構成する接着性樹脂のJIS K 7210:2014に従って測定した190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)は0.1~20.0g/10分が好ましく、1.0~10.0g/10分がより好ましい。接着性樹脂のMFRが前記範囲であると、成形時の製膜安定性が良好になる傾向となる。
接着層(γ)の平均厚みは、工業的な生産性、品質安定性の観点から、0.5~20μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。本発明の蒸着フィルムが複数の基材層(α)及び熱可塑性樹脂層(δ)を有する場合や、基材層(α)とは異なるEVOH層等を備える場合、接着層(γ)はそれぞれの層間に設けられていてもよく、本発明の蒸着フィルムにおける接着層(γ)の層数は特に限定されない。
[熱可塑性樹脂層(δ)]
本発明の蒸着フィルムは、熱可塑性樹脂層(δ)を含むことで、機械強度を高められる。また、基材層(α)と多層で製膜することで、基材層(α)の膜厚を薄くすることができる傾向となり、結果として、本発明の蒸着フィルムまたはこれを含む積層体のリサイクルが容易となる傾向となる。また、ヒートシール性、機械強度等の特性を、熱可塑性樹脂層(δ)を構成する熱可塑性樹脂の種類に応じて付与できる。
熱可塑性樹脂層(δ)に用いられる熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、或いはこれらを不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したものなどのポリオレフィン;ポリエステル;ポリアミド(共重合ポリアミドも含む);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;アクリル樹脂;ポリスチレン;ポリビニルエステル;ポリエステルエラストマー;ポリウレタンエラストマー;塩素化ポリスチレン;塩素化ポリプロピレン;芳香族ポリケトン又は脂肪族ポリケトン、及びこれらを還元して得られるポリアルコール;ポリアセタール;ポリカーボネート等が挙げられる。中でも、ヒートシール性及びリサイクル性に優れる観点からは、ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましい。ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
熱可塑性樹脂層(δ)における、熱可塑性樹脂の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましく、熱可塑性樹脂層(δ)は、実質的に熱可塑性樹脂のみから構成されていてもよく、熱可塑性樹脂のみから構成されていてもよい。
熱可塑性樹脂層(δ)を構成する熱可塑性樹脂のJIS K 7210:2014に従って測定した190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)は0.10~10.0g/10分が好ましく、0.30~5.0g/10分がより好ましい。熱可塑性樹脂のMFRが前記範囲であると、製膜安定性が良好になる傾向となる。
熱可塑性樹脂層(δ)の平均厚みは、工業的な生産性、機械物性の観点から、5~200μmが好ましく、7~100μmがより好ましく、10~50μmがさらに好ましい。なお、熱可塑性樹脂層(δ)を複数層有する場合は、その厚みの合計が上記範囲であることが好ましい場合がある。
本発明の蒸着フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層(δ)は、一層でも複数層設けられていてもよい。本発明の蒸着フィルムに接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)を設ける方法としては、各種の公知の製造方法を採用でき、ドライラミネート法、サンドラミネート法、押出ラミネート法、共押出ラミネート法、溶液コート法、などを採用できる。また、熱可塑性樹脂層(δ)は、上述した延伸又は非延伸の多層フィルムを構成する層の一つであってよく、多層フィルムとは別に作製され、積層された層であってもよく、これらの双方であってもよい。また、複数の熱可塑性樹脂層(δ)を備える場合、これらの組成は同一でも異なっていてもよく、延伸された層と延伸されていない層との双方が含まれていてもよい。
[樹脂コート層(ε)]
樹脂コート層(ε)は、蒸着フィルム製造後の工程、例えばラミネーション等のフィルム加工における屈曲等による無機蒸着層(β)の損傷を抑制するものである。このような樹脂コート層(ε)を備える蒸着フィルムはガスバリア性の低下を抑制できる。樹脂コート層(ε)は、例えばビニルアルコール系重合体(エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールなど)を含んでいてもよく、必要に応じて膨潤性無機層状ケイ酸塩を含んでいてもよい。
膨潤性無機層状ケイ酸塩は、樹脂コート層(ε)の強度を向上させるものである。この膨潤性無機層状ケイ酸塩としては、例えば膨潤性モンモリロナイト、膨潤性合成スメクタイト、膨潤性フッ素雲母系鉱物等が挙げられる。樹脂コート層におけるビニルアルコール系重合体に対する膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量の下限としては、特に限定されないが、固形分換算で、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましく、5質量%が特に好ましい。一方、樹脂コート層(ε)におけるビニルアルコール系重合体に対する膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量の上限としては、特に限定されないが、固形分換算で、55質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%が特に好ましい。膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量が上記下限より小さいと、樹脂コート層(ε)の強度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、膨潤性無機層状ケイ酸塩の含有量が上記上限を超えると、樹脂コート層(ε)の柔軟性が低下してクラック等の欠点を生じ易くなるおそれがある。
樹脂コート層(ε)の平均厚みの下限としては、特に限定されないが、効果的なガスバリア性を得るためには0.001μmが好ましい。一方、樹脂コート層(ε)の平均厚みの上限としては、特に限定されないが、10μmが好ましく、2μmがより好ましい。
無機蒸着層(β)に樹脂コート層(ε)を積層する方法としては、特に限定されないが、コーティング法、及びラミネート法が好ましい。コーティング方法としては、例えばダイレクトグラビア法、リバースグラビア法、マイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法;ドクターナイフ法;ダイコート法;ディップコート法;バーコーティング法;これらを組み合わせたコーティング法などが挙げられる。また、無機蒸着層(β)と樹脂コート層(ε)との界面は、コロナ処理、アンカーコート剤等による処理などが施されていてもよい。
[その他の層]
本発明の蒸着フィルムが有していてもよいその他の層としては、紙層等が挙げられる。また、本発明の蒸着フィルムは、無機蒸着層(β)とは別に蒸着層が備えられていてもよい。かかる蒸着層は、例えば、熱可塑性樹脂層(δ)を基材として、この熱可塑性樹脂層(δ)上に備えられていてもよい。かかる蒸着層を構成する成分としては、蒸着層として用いられる公知の成分を適宜用いることができる。
[層構造、物性等]
本発明の蒸着フィルムの層構造としては、例えば、
(1)α/β、
(2)δ/γ/α/β、
(3)δ/γ/δ/γ/α/β、
(4)δ/γ/α/β/γ/δ、
(5)δ/γ/δ/γ/α/β/γ/δ、
(6)α/β/ε、
(7)δ/γ/α/β/ε、
(8)δ/γ/δ/γ/α/β/ε、
(9)δ/γ/δ/γ/α/β/ε/γ/δ、
(10)δ/γ/α/β/ε/γ/δ、
(11)α/β/γ/δ、
等が挙げられる。なお、α:基材層、β:無機蒸着層、γ:接着層、δ:熱可塑性樹脂層、及びε:樹脂コート層である。
例えば、上記(2)等における「δ/γ/α」の層構造部分は、上述のような多層フィルム(基材フィルム)として成形されていてよい。多層フィルムの部分は、延伸されていてもよく、延伸されていなくてもよい。上記「δ/γ/α」の層構造からなる多層フィルムが延伸されている場合、蒸着フィルム中の上記「δ/γ/α」の層構造部分は、一体で延伸されたものとなっている。また、例えば上記(3)においては、「δ/γ/δ/γ/α」の層構造部分が多層フィルムとして成形されていてもよく、「δ/γ/α」の層構造部分のみが多層フィルムとして成形され、これにさらに別途接着層(γ)を介して熱可塑性樹脂層(δ)が積層されたものであってもよい。
本発明の蒸着フィルムの平均厚さは特に限定されず、下限は例えば10μm、13μm又は15μmであってよい。一方、平均厚さの上限は例えば300μm、200μm、100μm又は50μmであってもよい。当該蒸着フィルムの形状は、積層構造を有するものであれば特に限定されるものではない。
当該蒸着フィルムの40℃、蒸着層側の湿度90%RH、基材フィルム側の湿度0%RHで測定した酸素透過度の上限としては、5mL/m・day・atmが好ましく、3mL/m・day・atmがより好ましく、2mL/m・day・atmがさらに好ましく、1mL/m・day・atmが特に好ましく、0.1mL/m・day・atmがさらに特に好ましい。酸素透過度が上記上限以下であることで、当該蒸着フィルムを備える包装材によって形成される容器等の内部空間の真空度を維持できる期間が長くなる。ここで、酸素透過度(mL/m・day・atm)とは、蒸着フィルムを透過する酸素量(mL)を蒸着フィルム面積(m)、透過時間(day)及び蒸着フィルムの一方の面側における酸素ガス圧力と他方の面側における酸素ガス圧力との差(atm)で割った値をいう。具体的には、酸素透過度が例えば「5mL/m・day・atm以下」である場合、酸素ガスの圧力差が1気圧のもとで、1日にフィルム1m当たりで5mLの酸素が透過することを表す。また、基材フィルムの両面に無機蒸着層を積層されている場合、上記酸素透過度は、40℃、一方の無機蒸着層側の湿度90%RH、他方の無機蒸着層側の湿度0%RHで測定するものとする。
当該蒸着フィルムに含まれる揮発分の含有量の下限としては、特に限定されないが、0.01質量%が好ましく、0.03質量%がより好ましく、0.05質量%がさらに好ましい。揮発分の含有量の上限としては、1.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。
但し、当該蒸着フィルムを真空断熱体に適用する場合、当該蒸着フィルムにおける揮発分の含有量は、可能な限り小さいことが好ましい。これは、真空断熱体の真空部分に蒸着フィルムから発生する揮発分が侵入し、その結果、真空断熱体の内部の真空度が下がって断熱性能が低下するおそれがあるからである。
ここで、揮発分の含有量は、105℃で3時間乾燥前後の質量変化から下記式により求められる。
揮発分の含有量(質量%)=[(乾燥前質量-乾燥後質量)/乾燥後質量]×100
[リサイクル性]
本発明の蒸着フィルムは、リサイクル性に優れる構成となることが好ましい。近年では、環境問題や廃棄物問題が契機となり、市場で消費された包装材料を回収して再資源化する、いわゆるポストコンシューマーリサイクル(以下、単にリサイクルと略称することがある)の要求が世界的に高まっている。リサイクルにおいては、回収された包装材料を裁断し、必要に応じて分別・洗浄した後に、押出機を用いて溶融混合する工程が一般に採用される。
ここで、ポリエステルフィルムやポリアミドフィルムなどは、回収して再資源化する際に溶融混合工程において他の成分と均一に混合することが困難であり、再資源化の障害となっている。したがって、リサイクル性を高める観点から、熱可塑性樹脂層(δ)中には実質的にポリエステル及びポリアミドを含まないことが好ましい。具体的に熱可塑性樹脂層(δ)中のポリエステル及びポリアミドの含有量は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。また、本発明の蒸着フィルムにおけるポリエステル及びポリアミドの含有量は、10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
また、上記リサイクル性の観点から、熱可塑性樹脂層(δ)におけるポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンが占める含有割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、99質量%がさらに好ましい。同様に、本発明の蒸着フィルムにおいてポリオレフィンが占める含有割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。また、本発明の蒸着フィルムにおいて、EVOHが占める含有割合は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。一方、本発明の蒸着フィルムにおいて、EVOHが占める含有割合は、0.1質量%以上であってよく、1質量%以上であってもよい。このような構成又は組成とすることでリサイクル性が高まり、また、リサイクル後の組成物の機械物性へ影響が小さくなる。
同様のリサイクル性の理由から、本発明の蒸着フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層(δ)がポリオレフィンを含み、熱可塑性樹脂層(δ)の合計厚みが、当該蒸着フィルムの全層の厚みに対して、50%以上が好ましい場合があり、80%以上がより好ましい場合があり、90%以上がさらに好ましい場合がある。また、基材層(α)の合計厚みが、当該蒸着フィルムの全層の厚みに対して20%以下が好ましい場合があり、10%以上がより好ましい場合がある。一方、当該蒸着フィルムの全層の厚みに対する基材層(α)の合計厚みは、例えば0.1%以上であってよく、1%以上であってよい。
また、本発明の蒸着フィルムは、基材層(α)が所定の含有量のアルミニウムイオン(B)を含む樹脂組成物(α)から形成されていることによって、リサイクル性が高まり、リサイクルして得られる成形体の外観等が良好なものとなる。この理由も定かではないが、上述と同様に所定量のアルミニウムイオン(B)がEVOH(A)の末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)と相互作用することで、安定な構造が形成され、リサイクルの際の溶融成形時のゲル化が抑制される結果、外観等が良好な成形体としてリサイクルできていると推測される。
[用途]
本発明の蒸着フィルムは、蒸着欠点が少なく且つ無機蒸着層の密着強度が高く、高いガスバリア性を有する。このため、当該蒸着フィルムは、様々な用途に適用できる。当該蒸着フィルムの用途としては、例えば食品包装、医薬品包装、工業薬品包装、農薬包装等の各種包装材、真空断熱体等が挙げられる。
<包装材>
本発明の包装材は、本発明の蒸着フィルムを備える。本発明の包装材は、例えば本発明の蒸着フィルム、又はこれを備える積層体等を二次加工することで形成される。当該包装材は、当該蒸着フィルムを備えることで、ガスバリア性に優れる。
本発明の包装材は、例えば、本発明の蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成されるものであってよい。他の層としては、例えばポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、紙層、無機蒸着フィルム層、EVOH層、接着層等が挙げられる。当該包装材における層数及び積層順には特に制限はないが、ヒートシールが行われる場合には少なくとも最外層がヒートシール可能な層とされる。なお、ポリオレフィン層は、当該包装材が後述のラミネートチューブ容器等として構成される場合には顔料を含有していてもよい。
本発明の包装材は、例えば食品、飲料物、農薬や医薬等の薬品、医療器材、機械部品、精密材料等の産業資材、衣料などを包装するために使用される。特に、当該包装材は、酸素に対するバリア性が必要となる用途、包装材の内部が各種の機能性ガスによって置換される用途に好ましく使用される。
本発明の包装材は、用途に応じて種々の形態、例えば縦製袋充填シール袋、真空包装袋、スパウト付パウチ、ラミネートチューブ容器、容器用蓋材等に形成される。
[縦製袋充填シール袋]
縦製袋充填シール袋は、例えば液体、粘稠体、粉体、固形バラ物、これらを組み合わせた形態の食品、飲料物等を包装するために使用される。
縦製袋充填シール袋は、蒸着フィルムをヒートシールすることで形成される。ヒートシールが行われる場合、通常、蒸着フィルムにおける縦製袋充填シール袋の内側となる層、又は縦製袋充填シール袋の内側となる層及び外側となる層の両方として、ヒートシール可能な層を配置することが必要である。ヒートシール可能な層が縦製袋充填シール袋の内側のみにある場合、通常、胴体部は合掌貼りよりシールされる。ヒートシール可能な層が縦製袋充填シール袋の内側及び外側の両方にある場合、通常、胴体部は封筒貼りによりシールされる。ヒートシール可能な層としては、ポリオレフィン層(以下、「PO層」ともいう)が好ましい。
縦製袋充填シール袋の層構成としては、蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、蒸着フィルム/PO層、PO層/蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。また、基材層(α)の片面にのみ無機蒸着層(β)が形成されている蒸着フィルムを適用する場合、この蒸着フィルムは、無機蒸着層(β)が基材層(α)よりも外側に配置されるように積層されていても、無機蒸着層(β)が基材層(α)より内側に配置されるように積層されていてもよい。
本発明の包装材は、上述のようにガスバリア性に優れるため、当該包装材の一例である縦製袋充填シール袋によれば、内容物の品質劣化を長期間にわたって抑制できる。
[真空包装袋]
真空包装袋は、真空状態で包装することが望まれる用途、例えば食品、飲料物等の保存に使用される。真空包装袋の層構成としては、蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このような真空包装袋は、当該蒸着フィルムを備えることから、真空包装後、真空包装後に行われる加熱殺菌後のガスバリア性に特に優れる。
[スパウト付パウチ]
スパウト付パウチは、液状物質、例えば清涼飲料等の液体飲料、ゼリー飲料、ヨーグルト、フルーツソース、調味料、機能性水、流動食などを包装するために使用される。このスパウト付パウチの層構成としては、蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このようなスパウト付パウチは、当該蒸着フィルムを備えるため、ガスバリア性に優れる。そのため、スパウト付パウチは、輸送後、長期保存後においても、内容物の変質を防ぐことが可能である。
[ラミネートチューブ容器]
ラミネートチューブ容器は、例えば化粧品、薬品、医薬品、食品、歯磨等を包装するために使用される。このラミネートチューブ容器の層構成としては、PO層/蒸着フィルム/PO層、PO層/顔料含有PO層/PO層/蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このようなラミネートチューブ容器は、当該蒸着フィルムを備えるためガスバリア性に優れる。
[容器用蓋材]
容器用蓋材は、畜肉加工品、野菜加工品、水産加工品、フルーツ等の食品などが充填される容器の蓋材である。この容器用蓋材の層構成としては、蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。このような容器用蓋材は、当該蒸着フィルムを備えるためにガスバリア性に優れるため、内容物である食品の品質劣化を長期間にわたって抑制できる。
<真空断熱体>
本発明の真空断熱体は、本発明の蒸着フィルムを備える。真空断熱体は、保冷や保温が必要な用途に使用されるものである。この真空断熱体としては、例えば外包材内にポリウレタンフォーム等の芯材が真空状態で封入されるものが挙げられる。外包材は、例えば本発明の蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成される一対の積層フィルムとをヒートシールすることで形成される。
他の層としては、例えばポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、接着層等が挙げられ、ヒートシール可能な層とであるポリオレフィン層を含むことが好ましい。
外包材における層数及び積層順には特に制限はないが、最外層がヒートシール可能な層(例えばポリオレフィン層)とされることが好ましい。外包材の層構成としては、蒸着フィルム/ポリアミド層/PO層、ポリアミド層/蒸着フィルム/PO層が好ましく、層間に接着層を設けてもよい。また、基材層(α)の片面にのみ無機蒸着層(β)が形成されている蒸着フィルムを適用する場合、この蒸着フィルムは、無機蒸着層(β)が基材層(α)よりも外側に配置されるように積層されていても、無機蒸着層(β)が基材層(α)より内側に配置されるように積層されていてもよい。
このような真空断熱体は外包材が本発明の蒸着フィルムを備えるためにガスバリア性に優れる。従って、当該真空断熱体は、長期間にわたって断熱効果を保持できることから、冷蔵庫、給湯設備、炊飯器等の家電製品用の断熱材;壁部、天井部、屋根裏部、床部等に用いられる住宅用断熱材;車両屋根材;自動販売機等の断熱パネルなどに利用できる。
以下、本発明を実施例等で具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、測定、算出及び評価の方法はそれぞれ以下の方法に従った。
<EVOHの一次構造の定量(NMR法)測定条件>
装置名:日本電子製 超伝導核磁気共鳴装置ECZ-600
観測周波数:600MHz(1H)
(1)溶媒:重ジメチルスルホキシド(DMSO-d) ポリマー濃度:5質量% 測定温度:25℃、80℃
フリップ角:30°積算回数:256s
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
(2)溶媒:重水(DO)+重メタノール(MeOD)(質量比4/6) ポリマー濃度:5質量% 測定温度:80℃
フリップ角:30°積算回数:1024s
内部標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
<エチレン単位含有量、ケン化度、末端カルボン酸類単位含有量及び末端ラクトン環単位含有量の定量>
EVOHのエチレン単位含有量(Et Cont.)、ケン化度(SP)、末端カルボン酸類単位含有量(α)及び末端ラクトン環単位含有量(β)はH-NMR測定(DMSO-d溶媒:25℃、80℃での測定結果、DO+MeOD溶媒での測定結果)を用いて下記式により算出した。なお、化学シフト値はTMSのピーク0ppmを基準とした。また、式中、VAc、VAl及びEtはそれぞれ酢酸ビニル単位、ビニルアルコール単位及びエチレン単位を表す。
I1、I3:0.4~2.35ppmのメチレン水素の積分値(I1:DMSO-d25℃での測定値、I3:DMSO-d80℃での測定値)
I9::0.4~2.8ppmのメチレン水素の積分値(DO+MeOD溶媒での測定値)
I2:3.4~4.0ppmのビニルアルコール単位のメチン水素(同単位の両隣がビニルアルコールのメチン水素)の積分値(DMSO-d25℃での測定値)
I4:3.15~3.45ppmのビニルアルコール単位のメチン水素(同単位の両隣がビニルアルコールのメチン水素)の積分値(DMSO-d80℃での測定値)
I5:酢酸ビニル単位中の末端メチル基の水素に由来の積分値(DMSO-d80℃での測定値)
I6:1.8~1.85付近の積分値(DMSO-d80℃での測定値)
I7:EVOHの重合体末端に存在する-CH(OH)CH基におけるメチル基の水素に由来の積分値(DMSO-d80℃での測定値)
I8:EVOHの重合体末端に存在する-CHCH基におけるメチル基の水素に由来の積分値(DMSO-d80℃での測定値)
I10:0.8~0.95付近の積分値(DO+MeOD溶媒での測定値)
I11:末端ラクトン環単位のカルボニル基に隣接するCH単位の水素に由来の積分値(DO+MeOD溶媒での測定値)
I12:末端カルボン酸類単位の直鎖COOH基に由来の積分値(DO+MeOD溶媒での測定値)
I13、I14:末端カルボン酸類単位のカルボン酸塩に由来の積分値(DO+MeOD溶媒での測定値)
なお、求めたエチレン単位含有量(Et Cont.)、末端カルボン酸類単位含有量(α)及び末端ラクトン環単位含有量(β)は、いずれもエチレン単位、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位の合計量(mol)に対する各単位の量(mol)の百分率(mol%)である。但し、エチレン単位、ビニルエステル単位及びビニルアルコール単位以外の単位の含有量は、これらの単位に比べて極めて微量である。従って、求めたエチレン単位含有量(Et Cont.)、末端カルボン酸類単位含有量(α)及び末端ラクトン環単位含有量(β)は、いずれも全構造単位の合計量(mol)に対する各単位の量(mol)の百分率(mol%)と実質的に等しい。
Figure 2022007524000004
<メルトフローレート(MFR)の測定>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレットを、メルトインデクサーL244(宝工業株式会社製)の内径9.55mm、長さ162mmのシリンダーに充填し、210℃で溶融した後、溶融した樹脂組成物に対して、質量2,160g、直径9.48mmのプランジャーを使用して均等に荷重をかけた。シリンダーの中央に設けた径2.1mmのオリフィスより単位時間当たりに押出される樹脂組成物量(g/10分)を測定し、これをMFRとした。
<ナトリウムイオン含有量、リン酸含有量及びホウ酸含有量>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。30分後に蓋をし、湿式分解装置(株式会社アクタック製「MWS-2」)を用いて150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することで分解させ、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX(登録商標)製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー社製「OPTIMA4300DV」)で含有金属の分析を行い、ナトリウムイオン(ナトリウム元素)、リン酸の含有量に関してはリン酸根換算値として、ホウ酸の含有量についてはホウ素元素換算値として算出した。なお、定量に際しては、それぞれ市販の標準液を使用して作成した検量線を用いた。
<酢酸含有量>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレット20gをイオン交換水100mlに投入し、95℃で6時間加熱抽出した。フェノールフタレインを指示薬として、1/50規定のNaOHで抽出液を中和滴定し、酢酸含有量を定量した。
<ソルビン酸含有量>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、クロロホルム100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたクロロホルム抽出液中のソルビン酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中のソルビン酸の含有量を定量した。なお、定量に際しては、ソルビン酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
<桂皮酸類含有量>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレットを凍結粉砕後、呼び寸法0.150mm(100メッシュ)のふるい(JIS規格Z8801-1~3準拠)によって粗大粒子を除去して得た粉砕物22gをソックスレー抽出器に充填し、アセトン100mLを用いて16時間抽出処理した。得られたアセトン抽出液中の桂皮酸の量を高速液体クロマトグラフィーにて定量分析して、樹脂組成物中の桂皮酸の含有量を定量した。なお、定量に際しては、桂皮酸の標品を用いて作成した検量線を使用した。
<アルミニウムイオン含有量>
各参考例及び参考比較例で得られた乾燥樹脂組成物ペレット15gを白金るつぼに量り取り、硝酸と硫酸とを用いて乾式分解を行った。灰化した試料に塩酸2mLを加え、50mL容ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メスフラスコに定容し、孔径0.45μmのPTFEフィルターでろ過して試料溶液を調製した。該溶液を用いて、高周波プラズマ発光分析(ジャーレルアッシュ製ICP発光分光分析装置「IRIS AP」)により樹脂組成物中のアルミニウムイオン含有量を測定した。
<合成例1>EVOH-Aの合成
ジャケット、撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた200L加圧反応槽に、酢酸ビニル(以下、VAcと称することがある)を75.0kg、メタノール(以下、MeOHと称することがある。)を7.2kg仕込み、30分間窒素バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで、反応槽内の温度を65℃に調整した後、反応槽圧力(エチレン圧力)が4.13MPaとなるようにエチレンを導入し、開始剤として9.4gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フィルム和光純薬工業株式会社製「V-65」)を添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を4.13MPaに、重合温度を65℃に維持した。4時間後にVAcの転化率(VAc基準の重合率)が49.7%となったところで冷却するとともに、酢酸銅0.2gを20kgのメタノールに溶解させた物を容器内に投入して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで重合液を容器から抜き取り、20LのMeOHで希釈した。この液を塔型容器の塔頂よりフィードし、塔底よりMeOHの蒸気をフィードして、重合液内に残る未反応モノマーをMeOH蒸気と共に除去して、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、EVAcと称することがある。)のMeOH溶液を得た。
次いで、ジャケット、撹拌機、窒素導入口、還流冷却器及び溶液添加口を備えた300L反応槽にEVAcの20質量%MeOH溶液150kgを仕込んだ。この溶液に窒素ガスを吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウムの濃度が2規定のMeOH溶液を450mL/分の速度で2時間添加した。水酸化ナトリウムMeOH溶液の添加を終えた後、系内の温度を60℃に保ち、反応槽外にMeOH及びケン化反応で生成した酢酸メチルを流出させながら、2時間撹拌してケン化反応を進行させた。その後酢酸を8.7kg添加してケン化反応を停止した。
その後、80℃で加熱攪拌しながら、イオン交換水120Lを添加し、反応槽外にMeOHを流出させ、EVOHを析出させた。デカンテーションで析出したEVOHを収集し、粉砕機で粉砕した。得られたEVOH粉末を1g/Lの酢酸水溶液(浴比20:粉末1kgに対して水溶液20Lの割合)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間攪拌洗浄した。これを脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して攪拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行った。洗浄液の電気伝導度は、3μS/cm(東亜電波工業株式会社の「CM-30ET」で測定)であった。次いで、酢酸0.5g/L及び酢酸ナトリウム0.1g/Lを含有する水溶液250Lに4時間攪拌浸漬してから脱液し、これを60℃で16時間乾燥させることでEVOHの粗乾燥物を16.1kg得た。上記操作を再度行い、EVOHの粗乾燥物を15.9kg得ることで、合計32.0kgのEVOH(EVOH-A)の粗乾燥物を得た。
<樹脂組成物の調製>
[参考例1~6及び参考比較例1~3]
ジャケット、撹拌機及び還流冷却器を備えた60L撹拌槽に、合成例1で得たEVOH(EVOH-A)の粗乾燥物2kg、水0.8kg及びMeOH2.2kgを仕込み、60℃で5時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に酢酸アルミニウムを添加し、さらに1時間攪拌して酢酸アルミニウムを完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。なお、参考比較例3では酢酸アルミニウムは添加せずに樹脂組成物溶液を得た。この溶液を径4mmの金板を通して-5℃に冷却した水/MeOH=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることでEVOHの含水ペレットを得た。得られたEVOHの含水ペレットの含水率をメトラー社製ハロゲン水分計「HR73」で測定したところ、52質量%であった。得られたEVOHの含水ペレットを1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間撹拌洗浄した。これを脱液し、さらに1g/Lの酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間撹拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液で洗浄してから脱液したものを、イオン交換水(浴比20)に投入して撹拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して、洗浄液の電気伝導度が、3μS/cm(東亜電波工業株式会社の「CM-30ET」で測定)まで精製を行い、ケン化反応時の触媒残渣が除去された、EVOHの含水ペレットを得た。
該含水ペレットを酢酸ナトリウム濃度0.510g/L、酢酸濃度0.8g/L、及びリン酸濃度0.04g/Lである水溶液(浴比20)に投入し、定期的に撹拌しながら4時間浸漬させ化学処理を行った。このペレットを脱液し、酸素濃度1体積%以下の窒素気流下80℃で3時間、及び105℃で16時間乾燥させることで、EVOH-A、酢酸、ナトリウムイオン(ナトリウム塩)、リン酸及びアルミニウムイオン(アルミニウム塩)を含有した円柱状の平均直径2.8mm、平均長さ3.2mmの乾燥樹脂組成物ペレットを得た。なお、各参考例及び参考比較例においてアルミニウムイオン含有量は、酢酸アルミニウムの添加量を調節することで、表3に記載の通りとなるように調整した。得られた乾燥樹脂組成物ペレット中のEVOH-Aのエチレン含有量、ケン化度、末端ラクトン環単位含有量、末端カルボン酸類単位含有量、末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量、ラクトン環単位比率、MFR及びホウ酸含有量は、アルミニウムイオン含有量が0.3ppmの乾燥樹脂組成物ペレットを試料として、上記定量方法を用いて定量した(以下、同様である。)。エチレン含有量、ケン化度、末端ラクトン環単位含有量、末端カルボン酸類単位含有量、末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量、ラクトン環単位比率、MFR及びホウ酸含有量を表2に示す。また、いずれの乾燥樹脂組成物ペレットでも、ナトリウムイオン含有量は90~110ppmであり、リン酸含有量はリン酸根換算値で35~45ppm、酢酸含有量は190~210ppmであった。また、図1に、溶媒DMSO-d、測定温度25℃の条件で測定したEVOH-AのH-NMRスペクトルを示す。図2に、溶媒DMSO-d、測定温度80℃の条件で測定したEVOH-AのH-NMRスペクトルを示す。図3に、溶媒DO+MeOD、測定温度:80℃の条件で測定したEVOH-AのH-NMRスペクトルを示す。
<合成例2~11>
EVOHの重合に用いる原料の添加量、重合条件、ケン化処理における仕込み量、及び2規定の水酸化ナトリウムMeOH溶液の添加速度を表1に示す通りとし、合成を1回のみとした以外は合成例1と同様にして各EVOH(EVOH-B~EVOH-K)の粗乾燥物10.1~11.5kgを得た。
<樹脂組成物の調製>
[参考例7~27、34及び参考比較例4~23]
上記合成例2~11で得られた各EVOH(EVOH-B~EVOH-K)の粗乾燥物を用い、化学処理における水溶液に含まれる各成分を表1に示す通りとした以外は、参考例1と同様にして各乾燥樹脂組成物ペレットを得た。また、参考例1等と同様に、アルミニウムイオン含有量は、酢酸アルミニウムの添加量を調節することで、表3~12、14に記載の通りになるように調整した。各種測定も参考例1と同様に上記定量方法を用いて定量した。エチレン含有量、ケン化度、末端ラクトン環単位含有量、末端カルボン酸類単位含有量、末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量、ラクトン環単位比率、MFR及びホウ酸含有量を表2に示す。また、いずれの乾燥樹脂組成物ペレットでもナトリウムイオン含有量は90~110ppmであり、リン酸含有量はリン酸根換算値で35~45ppm、酢酸含有量は190~210ppmであった。
<樹脂組成物の調製>
[参考例28~33及び参考比較例24]
上記合成例1で得たEVOH(EVOH-A)の粗乾燥物2kg、水0.8kg及びMeOH2.2kgを仕込み、60℃で5時間攪拌し完全に溶解させた。得られた溶液に酢酸アルミニウム、ソルビン酸又は桂皮酸を添加し、さらに1時間攪拌して酢酸アルミニウム、及びソルビン酸又は桂皮酸を完全に溶解させ、樹脂組成物溶液を得た。なお、参考比較例24では、酢酸アルミニウムは添加せずソルビン酸のみ添加して樹脂組成物溶液を得た。この後の処理は参考例1と同様にして各乾燥樹脂組成物ペレットを得た。アルミニウムイオンは酢酸アルミニウムの添加量を調節することで、ソルビン酸又は桂皮酸の含有量はこれらの添加量を調節することで、表13に記載の通りとなるように乾燥樹脂組成物ペレットを得た。各種測定も参考例1と同様に上記定量方法を用いて定量した。いずれの乾燥樹脂組成物ペレットでもナトリウムイオン含有量は90~110ppmであり、リン酸含有量はリン酸根換算値で35~45ppm、酢酸含有量は190~210ppmであった。
なお、表3~14等においては、EVOHにおけるエチレン単位、ビニルアルコール単位及び酢酸ビニル単位の合計量に対する末端カルボン酸類単位及びラクトン環単位の合計含有量(mol%)と共に、これを換算した、EVOH1gあたりの末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量(μmol/g)を併せて示す。また、樹脂組成物中のアルミニウムイオン含有量(ppm)と共に、これを換算した、EVOH1gあたりのアルミニウムイオンの含有量(μmol/g)を併せて示す。さらに、EVOH1gあたりの末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量(i+ii:μmol/g)とEVOH1gあたりのアルミニウムイオンの含有量(b:μmol/g)との比率((i+ii)/b)を併せて示す。
<粒子径の異なる無機粒子(H)の準備>
合成シリカ;富士シリシア化学社の「サイリシア380」(平均粒径9.0μm)について粉砕及びふるいによる分級を行い、平均粒子径4.9μmの無機粒子を作製した。また、平均粒子径2.7μmの無機粒子として、上記「サイリシア310P」を用いた。いずれも、平均粒子径は、レーザー法で測定した値である。
<無機粒子(H)ブレンド樹脂組成物の調製>
[実施例1~7及び比較例1~2]
参考例2、8、11、14及び参考比較例1、2で得られた各乾燥樹脂組成物ペレット(樹脂組成物)100質量部に対して、表15に記載の平均粒子径の無機粒子(H)を表15に記載の含有量となるようにドライブレンドし、30mmφの同方向二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX-30N」)を用いて220℃の押出温度、窒素雰囲気下で押出すことで樹脂組成物ペレットを得た。
<評価>
<単層フィルム作製条件>
参考例1~34、参考比較例1~24、実施例1~7及び比較例1~2で得られた各樹脂組成物ペレットを下記条件で製膜し、厚さ20μmの単層フィルムを得た。
・装置:20mmφ単軸押出機(D2020、東洋精機製作所社製)
・L/D:20
・スクリュー:フルフライト
・ダイス幅:30cm
・引取りロール温度:80℃
・スクリュー回転数:40rpm
・引取りロール速度:3.0~3.5m/分
・設定温度:C1/C2/C3/D=180℃/210℃/210℃/210℃
<ブツの発生抑制(ブツ)>
運転開始50時間後に作製された単層フィルムのゲル状ブツ(肉眼で確認できる150μm以上のもの)の個数を数え、1.0mあたりに換算した。1.0mあたりのブツの個数によって以下のように判定した。評価結果を表3~15に示す。
A:20個未満
B:20個以上40個未満
C:40個以上100個未満
D:100個以上
評価結果がA~Bの場合はブツの発生が十分に抑制されており、問題が発生しないレベルである。評価結果がCの場合もブツの発生は抑制されており、用途等によってはブツが問題となることもあるが、使用可能なレベルである。評価結果がDの場合、ブツが多量にあり使用できないレベルである。
<耐熱耐光性試験>
得られた単層フィルムをTD方向150mm、MD方向70mmのサイズにカットし、同じサイズで厚さ0.3mmのPTFE製のシートに張り付け、幅135mm高さ55mmの開口部を持つサンプルホルダーにセットした。スガ試験機株式会社製スーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて、放射照度150W/m、ブラックパネル温度83℃、槽内湿度50%RHの条件で48時間紫外線を連続して照射した。照射後、フィルム周囲の未照射部分を切り落とし、幅135mm高さ55mmの耐熱耐光性試験のフィルムサンプルを得た。
<破断伸度>
得られた単層フィルムをTD方向150mm、MD方向70mmのサイズにカットしたフィルムサンプルに予め15mm間隔の切り込みをカミソリ刃で入れ、該フィルムサンプルに上記耐熱耐光性試験と同様に紫外線を照射した。紫外線照射後のサンプルを幅15mm、長さ50mmに切断し、引張試験用のサンプルを作製し、温度23℃、湿度50%RHで該サンプルを5日間調湿した。調湿後のサンプルを引張試験機(島津製作所製「AUTOGRAPH AGS-H」)にて、チャック間距離30mm、引張速度500mm/minでMD方向に引張試験をN=5で行い、破断伸度を測定した(耐熱耐光性試験後評価)。また、紫外線照射を行わなかったフィルムサンプルについても同様にして破断伸度を測定した(耐熱耐光性試験前評価)。耐熱耐光性試験前の破断伸度に対する耐熱耐光性試験後の破断伸度の減少率(%)を算出した。これらの評価結果を表3~15に示す。破断伸度減少率が低いほど、耐熱耐光性に優れると判断した。
<質量損失:促進マイクロプラスチック化試験>
耐熱耐光性試験処理後のフィルムサンプルを4枚用意し、60℃で24時間真空乾燥した後、後述する粉砕処理前のフィルムサンプル4枚の合計乾燥質量(W1)を測定した。容量300mLのアルミナ製セラミックポットミルに計量した耐熱耐光性試験後のフィルムサンプル4枚、直径3mmのジルコニアボール500g及び100mLの脱イオン水を投入した。密閉したポットミルをアズワン社製卓上型ポットミル架台「PM-001」に設置し、200rpmの回転速度で運転し、室温で4時間粉砕処理を行った。粉砕処理を行ったポットミルの内容物を水と共に取出し、脱イオン水を加えて撹拌しデカンテーションする作業をくり返してジルコニアボールを粉砕物と水から分離した。ジルコニアボールを除去した内容物を目開き46μmのナイロンメッシュで減圧濾過し、濾物を60℃で真空乾燥した。ナイロンメッシュでろ過されて残った46μm以上の破砕物の質量(W2)を測定し、下記の式(i)に従って質量損失(M)を算出した(耐熱耐光性試験後評価)。
M(%)=(W1-W2)/W1×100・・・(i)
また、紫外線照射試験を行わなかったフィルムサンプルについても同様にして質量損失を測定した(耐熱耐光性試験前評価)。これらの評価結果を表3~に示す。
耐熱耐光性試験後評価における質量損失の値をマイクロプラスチック化の指標とし、該値が小さいほどマイクロプラスチックス化が抑制できる。
<蒸着フィルムの作製>
実施例1~7及び比較例1~2の樹脂組成物ペレットの調製と同様に、参考例2、8、11、14及び参考比較例1、2で得られた各乾燥樹脂組成物ペレット(樹脂組成物)100質量部に対して、表15に記載の平均粒子径の無機粒子(H)を表15に記載の含有量となるようにタンブラーを用いてドライブレンドし、240℃にて溶融し、ダイからキャスティングロール上に押出すと同時にエアーナイフを用いて空気を風速30m/秒で吹付け、厚さ170μmの未延伸フィルムを得た。すなわち、この未延伸フィルムの組成は、実施例1~7及び比較例1~2の各樹脂組成物ペレットと同じである。得られた未延伸フィルムを、80℃の温水に10秒接触させ、テンター式同時二軸延伸機を用い、90℃雰囲気下で縦方向に3.2倍、横方向に3.0倍延伸し、さらに170℃に設定したテンター内にて5秒間熱処理を行い、フィルム端部をカットすることで二軸延伸フィルム(厚み12μm、幅50cm、巻長さ4,000m)を100本得た。
得られた二軸延伸フィルムを用い、日本真空技術社製「バッチ式蒸着設備EWA-105」を使用して、フィルム表面温度38℃、フィルム走行速度200m/分で、フィルム片側にアルミニウムを蒸着させ、積層体(蒸着フィルム)を得た。
<無機蒸着層の厚みの測定>
得られた積層体をミクロトームでカットし断面を露出させた。この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)(エス・アイ・アイナノテクノロジー社製「ZEISS ULTRA 55」)を用いて観察し、反射電子検出器を用いて蒸着層の厚みを測定した。測定結果を表15に示す。
<蒸着欠点抑制性>
得られた積層体の蒸着欠点抑制性を蒸着欠点数の測定により行った。積層体の1本目のロールをスリッターにかけて、フィルム下部から100Wの蛍光灯を当てながら巻き出し、幅0.5m、長さ2mの領域について異なる10箇所で蒸着欠点数を計測し、その平均値を1mあたりの蒸着欠点数とした。蒸着欠点数を基に、以下の基準で蒸着欠点抑制性を評価した。評価結果を表15に示す。
(判定基準)
A:0~20個/m
B:21~40個/m
C:41~60個/m
D:61~80個/m
E:81~100個/m
F:101個以上/m
<密着強度>
得られた積層体の無機蒸着層側の表面に、ドライラミネート用接着剤(三井化学製「タケラックA-385/A-50」を6/1の質量比で混合し、固形分濃度23質量%の酢酸エチル溶液としたもの)を、バーコーターを用いてコートし、50℃で5分間熱風乾燥させた後、80℃に加熱したニップロールにて、PETフィルム(東洋紡製E5000)とラミネートを行った。このとき、フィルムの半分は、無機蒸着層とPETフィルムの間にアルミホイルを挟むことで貼り合わされない部分を設けた。その後、40℃で72時間養生し、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムをアルミ蒸着の境目を中心として100mm×15mmの短冊に裁断した。得られた短冊のうち、貼り合わされていない部分における積層体とPETフィルムの端を把持し、引張試験機(島津製作所社製「AUTOGRAPH AGS-H」)で、引っ張り速度10mm/分にてT型剥離試験を5回行った。得られた測定値の平均値を密着強度とし、以下の基準で評価した。評価結果を表15に示す。
(判定基準)
A:500g/15mm以上
B:450g/15mm以上500g/15mm未満
C:400g/15mm以上450g/15mm未満
D:350g/15mm以上400g/15mm未満
E:350g/15mm未満
<OTR(酸素透過速度)>
得られた蒸着フィルムを用いて、無機蒸着層(β)を酸素供給側、熱可塑性樹脂層(δ)をキャリアガス側として酸素透過速度を測定した。具体的には、酸素透過量測定装置(モダンコントロール社製「MOCON OX-TRAN2/21」)を用い、温度20℃、酸素供給側の湿度65%RH、キャリアガス側の湿度65%RH、酸素圧1気圧、キャリアガス圧力1気圧の条件下で酸素透過速度(単位:cc/(m・day・atm))を測定した。キャリアガスには2体積%の水素ガスを含む窒素ガスを使用した。結果を下記のA~Cの3段階で評価した。評価結果を表15に示す
判定基準
A :0.1cc/(m・day・atm)未満
B :0.1cc/(m・day・atm)以上、0.5cc/(m・day・atm)未満
C :0.5cc/(m・day・atm)以上、2cc/(m・day・atm)未満
<2種EVOHブレンド樹脂組成物の調製>
[調製例1~2、比較調製例1~2]
参考例2、14、23及び参考比較例1、2、14、15で得られたEVOH-A、EVOHD及びEVOH-Gをそれぞれ含む樹脂組成物を表16に記載の配合比率でドライブレンドした後、二軸押出機(東洋精機製作所製、2D25W、25mmφ,ダイ温度220℃,スクリュー回転数100rpm)を用い、窒素雰囲気下で押出すことで樹脂組成物ペレットを得た。
<多層フィルムを用いた蒸着フィルムの作製>
[実施例8~10、比較例3~4]
参考例2、調製例1~2及び比較調製例1~2で得られた各乾燥樹脂組成物ペレット(樹脂組成物)を用い、インフレーション押出成形機を用いて、以下の条件で円筒状の多層フィルムを作製した。なお、熱可塑性樹脂層(δ)は30μmの厚みで3層積層させており、結果として90μmの厚みの熱可塑性樹脂層(δ)を1層としている。
(多層フィルム作製条件)
多層フィルムの層構成:[外面側]熱可塑性樹脂層(δ)/接着層(γ)/基材層(α)[内面側]=90μm/20μm/20μm(総厚み130μm)
熱可塑性樹脂層(δ):δ-1(ポリエチレン40ST05)
接着層(γ):γ-1(アドマー(商標)NF528)
基材層(α):上記で得られた樹脂組成物
装置:5種5層インフレーション押出成形機(Dr Collin社製)
ダイ温度:210℃
ブローアップ比:2.7
引取り速度:4m/min
フィルム折径幅:25cm
(熱可塑性樹脂層(δ)押出機1の条件)
押出機:30φ単軸押出機(Dr Collin社製)
回転数:60rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部=170℃/190℃/210℃
(熱可塑性樹脂層(δ)押出機2の条件)
押出機:20φ単軸押出機(Dr Collin社製)
回転数:70rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部=170℃/190℃/210℃
(熱可塑性樹脂層(δ)押出機3の条件)
押出機:20φ単軸押出機(Dr Collin社製)
回転数:70rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部=170℃/190℃/210℃
(接着層(γ)押出機の条件)
押出機:20φ単軸押出機(Dr Collin社製)
回転数:70rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部=170℃/190℃/210℃
(基材層(α)押出機の条件)
押出機:30φ単軸押出機(Dr Collin社製)
回転数:24rpm
押出温度:供給部/圧縮部/計量部=190℃/210℃/210℃
得られた円筒状の多層フィルムを、基材層(α)が重なるように折りたたみ、エトー株式会社の延伸装置(SDR-506WK)を用い、120℃で縦方向(MD方向)に6倍一軸延伸し、延伸後の多層フィルム(熱可塑性樹脂層(δ)/接着層(γ)/基材層(α)=15μm/3.3μm/3.3μmを得た。
得られた延伸後の多層フィルムの両端部を切断し、平面状の多層フィルムを作製した。得られた平面状の多層フィルムを用い、日本真空技術社製「EWA-105」を用いて、厚みが40nmとなるようにアルミニウムを基材層(α)側に真空蒸着し、蒸着フィルム(層構成:δ/γ/α/β)を作製した。得られた蒸着フィルムについて、上記と同様の方法で酸素透過度を測定した。評価結果を表16に示す。
<多層構造体(蒸着フィルム)の作製>
上記で得られた蒸着フィルムにさらに熱可塑性樹脂層(δ’)として厚み30μmの一軸延伸PEフィルム(δ’-1)と厚み50μmのLLDPEフィルム(δ’-2)を用いて下記層構成の蒸着フィルム(一軸延伸PEフィルム(δ’-1)/接着層(γ’)/熱可塑性樹脂層(δ)/接着層(γ)/基材層(α)/無機蒸着層(β)/接着層(γ’)/LLDPE(δ’-2))を作製した。蒸着フィルム(δ/γ/α/β)に対して一軸延伸PEフィルム(δ’-1)及びLLDPEフィルム(δ’-2)を積層させる際、二液型のウレタン系接着剤(三井化学社製「タケラックA-520」及び「タケネートA-50」)を乾燥厚みが2μmとなるように塗工して接着層(γ’)を設け、ドライラミネート法により、積層させた。
<リサイクル性>
実施例8~10及び比較例3、4で得られた多層構造体(蒸着フィルム)について、4mm四方以下のサイズに粉砕し、下記に示す押出条件にて単層製膜を行うことで、厚み20μmの単層フィルムをそれぞれ得た。
(押出条件)
押出機:東洋精機製作所製一軸押出機
スクリュー径:20mmφ(L/D=20、圧縮比=3.5、フルフライト型)
押出温度:C1/C2/C3/D=190/230/230/230℃
引取りロール温度:80℃
得られた単層フィルムを目視で確認し、以下の基準でリサイクル性を評価した。評価結果を表16に示す。
A:ブツ、ストリークは確認されなかった
B:ブツ、ストリークが確認された
Figure 2022007524000005
Figure 2022007524000006
Figure 2022007524000007
Figure 2022007524000008
Figure 2022007524000009
Figure 2022007524000010
Figure 2022007524000011
Figure 2022007524000012
Figure 2022007524000013
Figure 2022007524000014
Figure 2022007524000015
Figure 2022007524000016
Figure 2022007524000017
Figure 2022007524000018
Figure 2022007524000019
Figure 2022007524000020
<考察>
表3に示されるように、アルミニウムイオンが含有されていない参考比較例3の樹脂組成物は、ブツの発生の抑制効果が不十分であり、耐熱耐光性(破断伸度減少率)及びマイクロプラスチック化耐性(耐熱耐光性試験後評価における質量損失)も比較的大きかった。これに対し、少量のアルミニウムイオンを含有させた参考比較例1の樹脂組成物は、参考比較例3の樹脂組成物に対して、これらが改善された傾向にあるものの、その改善効果は低かった。また、多量のアルミニウムイオンを含有させた参考比較例2の樹脂組成物は、ブツの発生抑制効果が改善されなかった。これらに対し、EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)が0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下の範囲内である参考例1~6の各樹脂組成物は、少量のアルミニウムイオンを含有させた参考比較例1の樹脂組成物より、さらにブツの抑制効果、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性が改善されたことがわかる。
表4~10は、他のEVOHを用いた結果である。これらからも、表3の結果と同様に、EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)が0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下の範囲内である場合には、ブツの抑制効果、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性が改善されていることがわかる。
なお、表3で示されているように、アルミニウムイオンの含有量が少ない(0.02ppm、0.001μmol/g)場合、改善効果が不十分であったため、各表4~10においても、アルミニウムイオンの含有量が0.02ppm(0.001μmol/g)の参考比較例を基準とし、これより改善されたものを「+」、改善されていないものを「-」として評価し、これらを各表中に示した。
一方、表11に示されるように、末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量(i+ii)が少なすぎる場合は、アルミニウムイオンの含有量を調整しても、耐熱耐光性試験後評価における質量損失が14.0質量%以上となり、十分なマイクロプラスチック化耐性を有するものにはならなかった。また、表12に示されるように、末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量(i+ii)が多すぎる場合は、アルミニウムイオンの含有量を調整しても、ブツの評価がDであり、ブツの発生が十分に抑制できるものにはならなかった。
以上の結果から、EVOH(A)1gあたりの末端カルボン酸類単位及び末端ラクトン環単位の合計含有量(i+ii)が14μmol/g以上78μmol/g以下の範囲内である場合、EVOH(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)を0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下の範囲内とすることで、溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じEVOHを用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている樹脂組成物が得られることがわかる。
また、表13に示されるように、アルミニウムイオンに加え、桂皮酸類及び分子量1,000以下の共役ポリエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物をさらに含有させることにより、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性はより改善されることがわかる。
表14に示されるように、ラクトン環単位比率以外はほぼ同じEVOHが用いられた参考例8と参考例34とを比較すると、ラクトン環単位比率の高いEVOH-Bが用いられた参考例8は、耐熱耐光性及びマイクロプラスチック化耐性が高いことがわかる。
表15に示されるように、実施例1~7の各樹脂組成物も、長時間にわたる溶融成形時のブツの発生が抑制され、十分な耐熱耐光性を有し且つ廃棄後にマイクロプラスチック化し難い成形体が得られる樹脂組成物であり、同じEVOHを用いたものと比較して上記の各特性が十分に改善されている。また、実施例1~7の各蒸着フィルムは、蒸着欠点が少なく、無機蒸着層との密着強度も高く、良好なガスバリア性を有するものであった。
なお、表15の「耐熱耐光性試験前評価」及び「耐熱耐光性試験後評価」においては、同じ種類のEVOHを用い、アルミニウムイオンの含有量が0.02ppm(0.001μmol/g)の参考比較例を基準とし、これより改善されたものを「+」、改善されていないものを「-」として表している。すなわち、表15における「改善」の欄は、表15中の比較例と対比して改善したか否かを示したものではない。例えば、EVOH-Bを用いた実施例2は、参考比較例4に対して改善したか否かを示している。但し、表15においても、例えば比較例1、2と実施例1との対比から、アルミニウムイオンの含有量のみの組成の差異による改善効果は確認できる。
また、表16に示されるように、実施例8~10の蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れ、また、良好なリサイクル性を有するものであった。
なお、実施例1~10の蒸着フィルム以外でも、例えば、参考例1~34の樹脂組成物を用いて基材層(α)を形成した蒸着フィルムも、各実施例の結果と同様に良好なガスバリア性、リサイクル性等を有するものとなることは明らかであると考えられる。
本発明の蒸着フィルムは、包装材等として有用である。

Claims (13)

  1. エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)及びアルミニウムイオン(B)を含有する樹脂組成物からなる基材層(α)と、基材層(α)の少なくとも片面に積層される無機蒸着層(β)とを備える蒸着フィルムであって、
    エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)の少なくとも一部が、重合体末端に位置するカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の少なくとも一方を有し、
    上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)1gあたりのカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)が14μmol/g以上78μmol/g以下であり、
    上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)1gあたりのアルミニウムイオン(B)の含有量(b)が0.002μmol/g以上0.17μmol/g以下である、蒸着フィルム。
  2. 上記樹脂組成物におけるカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)とアルミニウムイオン(B)の含有量(b)との比率((i+ii)/b)が、180以上20,000以下である、請求項1に記載の蒸着フィルム。
  3. アルミニウムイオン(B)が炭素数5以下の脂肪酸アルミニウム塩に由来する、請求項1又は2に記載の蒸着フィルム。
  4. 上記樹脂組成物が、桂皮酸類及び分子量1,000以下の共役ポリエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(C)をさらに含有し、
    上記樹脂組成物における化合物(C)のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A)に対する含有量(c)が1ppm以上1,000ppm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  5. 上記樹脂組成物におけるカルボン酸類単位(I)及びラクトン環単位(II)の合計含有量(i+ii)に対するラクトン環単位(II)の含有量(ii)の比率(ii/(i+ii))が40mol%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  6. エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)は、エチレン単位含有量が20mol%以上50mol%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)、及びエチレン単位含有量が30mol%以上60mol%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)を含有し、
    エチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)のエチレン単位含有量からエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)のエチレン単位含有量を減じた値が5mol%以上であり、
    上記樹脂組成物におけるエチレン-ビニルアルコール共重合体(A1)のエチレン-ビニルアルコール共重合体(A2)に対する質量比(A1/A2)が60/40以上95/5以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  7. 無機蒸着層(β)の平均厚みが15nm以上150nm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  8. 基材層(α)が延伸された層である、請求項1~7のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  9. 接着層(γ)と、上記接着層に積層される熱可塑性樹脂層(δ)とをさらに備える、請求項1~8のいずれか1項に記載の蒸着フィルム。
  10. 基材層(α)の片面に無機蒸着層(β)が積層され、
    基材層(α)の無機蒸着層(β)が積層される面とは反対側に、接着層(γ)を介して熱可塑性樹脂層(δ)が積層されている、請求項9に記載の蒸着フィルム。
  11. 少なくとも基材層(α)、接着層(γ)及び熱可塑性樹脂層(δ)が一体で延伸されてなる、請求項9又は10に記載の蒸着フィルム。
  12. 請求項1~11のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える、包装材。
  13. 請求項1~11のいずれか1項に記載の蒸着フィルムを備える、真空断熱体。



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