JP2021522283A - 分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害 - Google Patents

分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害 Download PDF

Info

Publication number
JP2021522283A
JP2021522283A JP2020560382A JP2020560382A JP2021522283A JP 2021522283 A JP2021522283 A JP 2021522283A JP 2020560382 A JP2020560382 A JP 2020560382A JP 2020560382 A JP2020560382 A JP 2020560382A JP 2021522283 A JP2021522283 A JP 2021522283A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lipofuscin
molecular tweezers
disease
ncl
group
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2020560382A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020036656A5 (ja
Inventor
ガル・ビタン
アレッサンドロ・フラルディ
アルベルト・アウリッキオ
アントーニオ・モナコ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of California
Original Assignee
University of California
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of California filed Critical University of California
Publication of JP2021522283A publication Critical patent/JP2021522283A/ja
Publication of JPWO2020036656A5 publication Critical patent/JPWO2020036656A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P27/00Drugs for disorders of the senses
    • A61P27/02Ophthalmic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/66Phosphorus compounds
    • A61K31/661Phosphorus acids or esters thereof not having P—C bonds, e.g. fosfosal, dichlorvos, malathion or mevinphos
    • A61K31/6615Compounds having two or more esterified phosphorus acid groups, e.g. inositol triphosphate, phytic acid
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Hospice & Palliative Care (AREA)
  • Ophthalmology & Optometry (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Abstract

様々な実施形態では、リポフスチン関連障害の治療及び/または予防のための方法が提供される。所定の実施形態では、その方法は、有効量の分子ピンセットをそれを必要とする対象に投与することを含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月27日に出願されたUSSN62/663,948の優先権及び利益を主張し、これはすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
政府の支援の声明
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された許可番号AG050721の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において所定の権利を有する。
リポフスチンは、共有結合的に架橋されたポリペプチド鎖及び脂質を含む、リソソーム消化の残留物から構成される黄褐色の自発蛍光性色素顆粒として記載されている。それは、「消耗性」色素であり、肝臓、腎臓、心筋、網膜、副腎、神経細胞、及び神経節細胞に見られる加齢の徴候と考えられている。リポフスチンの蓄積は、黄斑変性及び黄斑変性の遺伝性若年期型であるスターガルト病に関与している主要なリスク要因である。リポフスチン症としても知られているリポフスチンの異常な蓄積は、神経変性障害(ニューロンセロイドリポフスチン症)のファミリーと関連しており、その最も一般的なものはバッテン病である。また、リポフスチンの病理的蓄積は、所定のリソソーム蓄積症、末端肥大症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、及び中心核ミオパシーに関連している。結腸におけるリポフスチンの蓄積は、大腸メラノーシスの原因である(例えば、Hohn & Grune(2013)Redox Biol.1:140−144;Terman & Brunk(2004)Free Radic. Res.40:1335−1338;Uchida(2006)Free Radic. Res.40:1335−1338を参照されたい)。
リポフスチン物質の蓄積は、主に分裂終了細胞に影響を及ぼし、いくつかの生理病理的条件に関与している(例えば、Jung et al.(2007)Ann.N.Y.Acad.Sci.1119:97−111;Brunk & Terman(2002)Free Radic. Biol.Med.33(5):611−6198を参照されたい)。それは、加齢の特質として認識されている。リソソーム区画内でのリポフスチンの異常な蓄積は、ニューロンセロイドリポフスチン症として知られる遺伝性神経変性リソソーム蓄積障害のファミリーに関与している(バッテン病は、リポフスチン症の最も一般的で重症の形態である)(Fraldi et al.(2016)Annu.Rev.Neurosci.39:277−295;Mole et al.(2013)Biochimica et Biophysica Acta(BBA)−Molecular Basis of Disease,1832(11):1793−191210)。
リポフスチンの毒性はまた、心筋細胞及び骨格筋細胞などの分裂終了細胞に影響を及ぼし、そのため、脂質ミオパシー及び中心核ミオパシーなどのいくつかのミオパシーに関与している。
慢性閉塞性肺疾患、末端肥大症及び大腸メラノーシスなどの多数の他の病態の発病は、罹患した組織におけるリポフスチンの異常な蓄積に関連している。
重要なことに、網膜色素上皮(RPE)細胞(リポフスチンの最も大きな構築を有する組織の1つ)内のリポフスチン蓄積は、加齢黄斑変性及び遺伝性若年期黄斑変性の最も頻繁な形態であるスターガルト病などの多数の網膜疾患の発病に関与している(Marcelo et al.(2017)Lipofuscin Accumulation into and Clearance from Retinal Pigment Epithelium Lysosomes:Physiopathology and Emerging Therapeutics,Lysosomes−Associated Diseases and Methods to Study Their Function,Dr.Pooja Dhiman(Ed.),InTech,DOI:10.5772/intechopen.69304)。網膜変性疾患で蓄積するリポフスチン顆粒に存在する最も一般的なフルオロフォアは、N−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン(A2Eとも呼ばれる)として知られている。
眼疾患の観点からリポフスチン細胞毒性の薬理学的阻害剤を生成する試みは、主要な視覚サイクル酵素の直接的阻害剤、RBP4アンタゴニスト、第1級アミン含有アルデヒド捕捉剤、及びビタミンAの重水素化アナログを含んでいる(Petrukhin,(2013)Drug Discov. Today Ther. Strateg.10:e11−e20)。しかしながら、我々の知る限りでは、その成分の凝集の直接的阻害またはリポフスチン凝集体の減少をもたらす薬理学的治療は試みられていない。
USSN62/663,948
Hohn & Grune(2013)Redox Biol.1:140−144 Terman & Brunk(2004)Free Radic. Res.40:1335−1338 Uchida(2006)Free Radic. Res.40:1335−1338 Jung et al.(2007)Ann.N.Y.Acad.Sci.1119:97−111 Brunk & Terman(2002)Free Radic. Biol.Med.33(5):611−6198 Fraldi et al.(2016)Annu.Rev.Neurosci.39:277−295 Mole et al.(2013)Biochimica et Biophysica Acta(BBA)−Molecular Basis of Disease,1832(11):1793−191210 Marcelo et al.(2017)Lipofuscin Accumulation into and Clearance from Retinal Pigment Epithelium Lysosomes:Physiopathology and Emerging Therapeutics,Lysosomes−Associated Diseases and Methods to Study Their Function,Dr.Pooja Dhiman(Ed.),InTech,DOI:10.5772/intechopen.69304 Petrukhin,(2013)Drug Discov. Today Ther. Strateg.10:e11−e20
分子ピンセットは、PCT特許出願第WO2010102248号及び複数の刊行物に記載されているように、アミロイドへの異常なタンパク質自己集合の阻害剤である(Attar & Bitan(2014)Curr.Pharm.Des.20:2469−2483;Schrader et al.(2016)Chem.Commun. (Camb),52:11318−11334)。分子ピンセットは、中央の空洞に通された、リジン残基のアルキル側鎖との疎水的相互作用が可能な2つの炭化水素腕部から構成される馬蹄形の構造を有する。それらの橋頭において、分子ピンセットは、負に荷電した基、例えば、リン酸塩を有し、これは、リジン及びアルギニンのそれぞれの正に荷電したアンモニウムまたはグアニジニウム基とイオン性相互作用を形成する。分子ピンセットは、アミロイドベータの集合に対するそれらの阻害性活性を発揮し、Aβ誘発性毒性を減少させることが報告されているが、その理由は、それらが、初期のアミロイドベータの集合で見られる同じ種類の疎水性及び静電性相互作用ならびにアミロイドベータと細胞膜とのリジン媒介性相互作用を利用するからである。しかしながら、アミロイド中のポリペプチド鎖の互いの会合は非共有結合であるため、また、それらの既知の作用メカニズムは、弱い非共有結合との干渉を伴うため、本明細書に記載の実験の前では、分子ピンセットは、酸化されたタンパク質(30〜58%)及び脂質(19〜51%)のクラスターからなる高度に酸化された架橋凝集体であるリポフスチンの形成を阻害することは予期できなかった。
しかしながら、驚くべきことに、本発明者は、分子ピンセットCLR01が、網膜細胞におけるリポフスチンの蓄積及び凝集を阻害し、それがスターガルト病、黄斑変性、及び多数のリポフスチン症を含むがこれらに限定されない他のリポフスチン関連障害に対抗するために使用され得ることを示唆していることを実証した。
したがって、本明細書で企図される様々な実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得るがこれらに限定される必要はない。
本明細書で企図される様々な実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得るがこれらに限定される必要はない。
実施形態1:哺乳動物におけるリポフスチン関連障害を治療する方法であって、前記方法は、
タンパク質の凝集を阻害することが可能な有効量の分子ピンセットを前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
実施形態2:前記分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害することが可能である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:前記有効量は、前記リポフスチン関連障害に関連するリポフスチンの蓄積/凝集の発症を遅らせるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集の進行を遅延させるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効な量である、実施形態1〜2のいずれか1つに記載の方法。
実施形態4:前記有効量は、前記リポフスチン関連障害の1つ以上の症状を改善するのに有効な量である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5:前記有効量は、前記リポフスチン関連障害の発症を遅らせもしくは停止させるのに、またはその進行を遅延させ、もしくは停止させ、もしくは逆行させるのに有効な量である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6:前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7:前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害である、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8:前記眼疾患は、加齢黄斑変性、スターガルト病、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、及び重度眼外傷からなる群から選択される疾患を含む、実施形態7に記載の方法。
実施形態9:前記眼疾患は、黄斑変性を特徴とする、実施形態6に記載の方法。
実施形態10:1つ以上の症状の前記改善は、網膜の表面上のドルーゼンまたは老廃物堆積物、黄斑の色(色素)の変化、不鮮明または不明瞭な視力、直線が波状となる錯視;いくつかの物体が本当のものよりも小さくなる錯視、視野の中心における灰色、暗または空領域の出現、及び色覚の衰退からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態9に記載の方法。
実施形態11:前記投与は、網膜の表面上のドルーゼンまたは老廃物堆積物の形成、黄斑の色(色素)の変化、視力の不鮮明または不明瞭;直線が波状となる錯視;いくつかの物体が本当のものよりも小さくなる錯視、視野の中心における灰色、暗または空領域の出現、及び色覚の衰退からなる群から選択される1つ以上のプロセスの発症を遅らせるのに、またはそのプロセスを遅延させ、停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、実施形態9に記載の方法。
実施形態12:前記眼疾患は、スターガルト病を含む、実施形態6に記載の方法。
実施形態13:1つ以上の症状の前記改善は、不鮮明なまたは歪んだ視力、低照明での視認不能、見覚えのある顔の認識困難、及び色覚の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態12に記載の方法。
実施形態14:前記投与は、視力の不鮮明または歪み、低照明での視認不能、見覚えのある顔の認識困難、及び色覚の喪失からなる群から選択される1つ以上のプロセスを遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態12に記載の方法。
実施形態15:前記リポフスチン関連障害は、ニューロンセロイドリポフスチン症である、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16:前記リポフスチン関連障害は、乳児期NCL(サンタブオリ−ハルチア病)、後期乳児期NCL(ジャンスキー−ビールショウスキー病、若年期NCL(CLN1、バッテン病)、成人NCL(クフス病)、フィンランド後期乳児期NCL、バリアント後期乳児期NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL(北部てんかん、すなわち、精神遅滞を有する進行性てんかん(EPMR))、トルコ後期乳児期バリアントNCL、バッテン病、及びCLN10 NCL(先天性、カテプシンD欠損症)からなる群から選択されるリポフスチン症を含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態17:前記リポフスチン症は、バッテン病を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態18:1つ以上の症状の前記改善は、認知機能不全、動き/運動機能不全、及び視力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態15〜17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19:前記投与は、認知機能不全の進行、動き/運動機能不全の進行、及び視力喪失の進行からなる群から選択される1つ以上のプロセスを遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態15〜17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20:前記リポフスチン関連障害は、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21:前記分子ピンセットは、式I〜IV:
Figure 2021522283
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
及びXは、両方ともOであり、
A単独、またはXと組み合されたAは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、
B単独、またはXと組み合されたBは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、
、R、R、及びRの各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR、NO、COH、及びCO(式中、Rは、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/またはR及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の方法。
実施形態22:A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
からなる群から選択される、実施形態21に記載の方法。
実施形態23:A及びBは、同じである、実施形態22に記載の方法。
実施形態24:A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
、及び−(CH−CO からなる群から選択され、Rは、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである、実施形態21に記載の方法。
実施形態25:A及びBは、同じである、実施形態24に記載の方法。
実施形態26:前記分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態21〜25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27:前記分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態21〜25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28:前記分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態21〜25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29:前記分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態21〜25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30:前記分子ピンセットは、式:’’
Figure 2021522283
(TW1/CLR01)に記載の化合物を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態31:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW2)に記載の化合物を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態32:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW3)に記載の化合物を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態33:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW4)に記載の化合物を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態34:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW5)に記載の化合物を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態35:前記投与は、経口送達、イソフォレティック(isophoretic)送達、経皮送達、非経口送達、エアロゾル投与、吸入による投与、静脈内投与、眼投与、デポ送達(皮下/真皮下デポ送達を含む)、膣投与、及び直腸投与からなる群から選択される経路を介する、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36:前記投与は、眼投与を含む、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37:前記眼投与は、局所眼投与、全身及び/または経口投与と組み合された局所眼投与、IVT注射、眼周囲投与、結膜下注射、嚢下注射、硝子体内注射、網膜下投与及び眼球後方注射からなる群から選択される経路を介する投与を含む、実施形態36に記載の方法。
実施形態38:前記投与は、非経口である、実施形態1〜34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39:前記投与は、中枢神経系への投与を含む、実施形態38に記載の方法。
実施形態40:前記投与は、脊髄内投与、髄腔内または硬膜外投与、硬膜下投与からなる群から選択される経路から選択され、投与は、カニューレを介する、実施形態39に記載の方法。
実施形態41:前記投与は、皮下投与、静脈内投与、及び皮下埋込装置を介する投与からなる群から選択される経路から選択される、実施形態38に記載の方法。
実施形態42:前記哺乳動物は、ヒトである、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43:前記哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である、実施形態1〜41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44:リポフスチンの凝集を阻害するのに使用するための分子ピンセットであって、前記リポフスチンの凝集を阻害することは、(例えば、生体外の細胞において、または哺乳動物において)リポフスチンの凝集の発症を遅らせること、またはリポフスチンの凝集の進行を遅延させること、またはリポフスチンの凝集を停止させ、もしくは逆行させることを含む、前記分子ピンセット。
実施形態45:前記リポフスチンの凝集を阻害することは、哺乳動物におけるリポフスチン関連障害の治療においてタンパク質の凝集を阻害することを含む、実施形態44に記載の分子ピンセット(例えば、前記分子ピンセットは、哺乳動物におけるリポフスチン関連障害の治療における使用のためのものである)。
実施形態46:前記分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害することが可能である、実施形態44〜45のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態47:前記治療は、前記リポフスチン関連障害に関連するリポフスチンの蓄積/凝集の発症を遅らせるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集の進行を遅延させるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、実施形態44〜46のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態48:前記治療は、前記リポフスチン関連障害の1つ以上の症状を改善するのに有効である、実施形態44〜47のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態49:前記治療は、前記リポフスチン関連障害の発症を遅延させもしく遅らせるのに、またはその進行を遅延させ、もしくは停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、実施形態44〜47のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態50:前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、実施形態44〜49のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態51:前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害である、実施形態44〜50のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態52:前記眼疾患は、加齢黄斑変性、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、及び重度眼外傷からなる群から選択される疾患を含む、実施形態51に記載の分子ピンセット。
実施形態53:前記リポフスチン関連障害は、黄斑変性を含む、実施形態52に記載の分子ピンセット。
実施形態54:1つ以上の症状の前記改善は、網膜の表面上のドルーゼンまたは老廃物堆積物、黄斑の色(色素)の変化、不鮮明または不明瞭な視力、直線が波状となる錯視;いくつかの物体が本当のものよりも小さくなる錯視、視野の中心における灰色、暗または空領域の出現、及び色覚の衰退からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態53に記載の分子ピンセット。
実施形態55:前記投与は、網膜の表面上のドルーゼンまたは老廃物堆積物の形成、黄斑の色(色素)の変化、視力の不鮮明または不明瞭;直線が波状となる錯視;いくつかの物体が本当のものよりも小さくなる錯視、視野の中心における灰色、暗または空領域の出現、及び色覚の衰退からなる群から選択される1つ以上のプロセスの発症を遅らせるのに、またはそのプロセスを遅延させ、停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、実施形態53に記載の分子ピンセット。
実施形態56:前記眼疾患は、スターガルト病を含む、実施形態52に記載の分子ピンセット。
実施形態57:1つ以上の症状の前記改善は、不鮮明なまたは歪んだ視力、低照明での視認不能、見覚えのある顔の認識困難、及び色覚の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態56に記載の分子ピンセット。
実施形態58:前記投与は、視力の不鮮明または歪み、低照明での視認不能、見覚えのある顔の認識困難、及び色覚の喪失からなる群から選択される1つ以上のプロセスを遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態56に記載の分子ピンセット。
実施形態59:前記リポフスチン関連障害は、ニューロンセロイドリポフスチン症である、実施形態44〜50のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態60:前記リポフスチン関連障害は、乳児期NCL(サンタブオリ−ハルチア病)、後期乳児期NCL(ジャンスキー−ビールショウスキー病、若年期NCL(CLN1、バッテン病)、成人NCL(クフス病)、フィンランド後期乳児期NCL、バリアント後期乳児期NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL(北部てんかん、すなわち、精神遅滞を有する進行性てんかん(EPMR))、トルコ後期乳児期バリアントNCL、バッテン病、及びCLN10 NCL(先天性、カテプシンD欠損症)からなる群から選択されるリポフスチン症を含む、実施形態59に記載の分子ピンセット。
実施形態61:前記リポフスチン症は、バッテン病を含む、実施形態60に記載の分子ピンセット。
実施形態62:1つ以上の症状の前記改善は、認知機能不全、動き/運動機能不全、及び視力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態59〜61のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態63:前記投与は、認知機能不全の進行、動き/運動機能不全の進行、及び視力喪失の進行からなる群から選択される1つ以上のプロセスを遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態59〜61のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態64:前記リポフスチン関連障害は、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、実施形態44〜50のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態65:前記分子ピンセットは、式I〜IV:
Figure 2021522283
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
及びXは、両方ともOであり、
A単独、またはXと組み合されたAは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、
B単独、またはXと組み合されたBは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、
、R、R、及びRの各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR、NO、COH、及びCO(式中、Rは、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/またはR及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、実施形態44〜64のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態66:A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
からなる群から選択される、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態67:A及びBは、同じである、実施形態66に記載の分子ピンセット。
実施形態68:A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
、及び−(CH−CO からなる群から選択され、Rは、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態69:A及びBは、同じである、実施形態68に記載の分子ピンセット。
実施形態70:前記分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態65〜69のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態71:前記分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態65〜69のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態72:前記分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態65〜69のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態73:前記分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態65〜69のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態74:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW1/CLR01)に記載の化合物を含む、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態75:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW2)に記載の化合物を含む、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態76:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW3)に記載の化合物を含む、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態77:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW4)に記載の化合物を含む、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態78:前記分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW5)に記載の化合物を含む、実施形態65に記載の分子ピンセット。
実施形態79:治療は、経口送達、イソフォレティック(isophoretic)送達、経皮送達、非経口送達、エアロゾル投与、吸入による投与、静脈内投与、眼投与、デポ送達(皮下/真皮下デポ送達を含む)、膣投与、及び直腸投与からなる群から選択される経路を介する投与を含む、実施形態44〜78のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態80:治療は、眼投与を含む、実施形態44〜78のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態81:前記眼投与は、局所眼投与、全身及び/または経口投与と組み合された局所眼投与、IVT注射、眼周囲投与、結膜下注射、嚢下注射、硝子体内注射、網膜下投与及び眼球後方注射からなる群から選択される経路を介する投与を含む、実施形態80に記載の分子ピンセット。
実施形態82:前記投与は、非経口である、実施形態44〜78のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態83:前記投与は、中枢神経系への投与を含む、実施形態82に記載の分子ピンセット。
実施形態84:前記投与は、脊髄内投与、髄腔内または硬膜外投与、硬膜下投与からなる群から選択される経路から選択され、投与は、カニューレを介する、実施形態83に記載の分子ピンセット。
実施形態85:前記投与は、皮下投与、静脈内投与、及び皮下埋込装置を介する投与からなる群から選択される経路から選択される、実施形態82に記載の分子ピンセット。
実施形態86:前記哺乳動物は、ヒトである、実施形態44〜85のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態87:前記哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である、実施形態44〜85のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
実施形態88:前記分子ピンセットは、前記分子ピンセットを含む薬学的製剤として提供される、実施形態44〜87のいずれか1つに記載の分子ピンセット。
所定の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される分子ピンセットは、TW3を明白に除外する。所定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して治療された対象は、Aβ、タウ、及びα−シヌクレインからなる群から選択されるタンパク質の凝集を特徴とする病状を有すると診断されず及び/またはその治療下にない。所定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して治療された対象は、アルツハイマー病、アミロイド媒介性軽度認知障害(MCI)、脳または脊髄損傷(脳卒中を含むがこれに限定されない)、ハンチンチン病、及びパーキンソン病からなる群から選択される病態を有すると診断されず及び/またはその治療下にない。
定義
分子ピンセットは、ゲスト分子を結合させることが可能な開口キャビティを有するホスト分子である(例えば、Hardouin−Lerouge et al.(2011)Chem.Soc.Rev.40:30−43を参照されたい)。分子ピンセットの開口キャビティは、水素結合、金属配位、疎水性力、ファンデルワールス力、π−π相互作用、及び/または静電作用のうちの1つ以上を含み得る非共有結合を使用してゲストを結合させ得る。これらの複合体は、大環状分子受容体のサブセットとみなすことができ、それらの典型的な構造は、それらの間にゲスト分子を結合させ、かつ一端でのみ接続されてこれらの分子の所定の柔軟性をもたらす2つの「腕部」を特徴とする(誘導フィットモデル)。
リポフスチンは、酸化されたタンパク質(30〜58%)及び脂質(19〜51%)クラスターからなる高度に酸化された架橋凝集体である(Jung et al.(2007)Ann.N.Y.Acad.Sci.1119:97−111)。それは、経時的に蓄積する黄褐色の物質である。リポフスチン内のタンパク質は、分子内及び分子間の架橋によって連結されている。これらの架橋の多くは、4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)などの他の細胞成分の酸化生成物を含む非タンパク質性化合物によって引き起こされる。このように形成された最終生成物は、細胞タンパク質分解系による分解に対して耐性である。一般に、そのような物質は、リポフスチンと称されるが、他の用語には、セロイド、セロイド様色素、または加齢色素が含まれる。
リポフスチン形成の細胞内速度は、分裂終了細胞の余命と負の相関があり、年齢とともに増加する。経時的な細胞内リポフスチン蓄積の速度が高いほど、細胞の将来の寿命が短くなる。特異的なリポフスチン抗体が存在せず、組成は異なる細胞間で変わるため、リポフスチン自発蛍光の使用が、検出及び定量の最も重要な方法の1つとなっている(Terman & Brunk (2004)Int.J.Biochem. Cell Biol.36:1400−1404)。他の方法には、いくつかの古典的な組織化学的脂質染色技術及び薬剤、例えば、スダンブラック、ナイル及びベルリンブルー、フェロシアン化第二鉄、フォンタナマッソン、チール−ネルゼン、ヘマトキシリン、エオシン、またはオスミン酸が含まれる。リポフスチンの典型的な蛍光放出スペクトルは、366nmで励起された場合に570〜605nmから伸長する。そのようなスペクトルはおそらく、リポフスチンのものと類似する自発蛍光を示す、1,4−ジヒドロピリジンまたは2−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピロール−3−オンなどのシッフ塩基をもたらすカルボニルとアミノ基との間の反応によって引き起こされる。網膜色素上皮細胞では、リポフスチンフルオロフォア(A2−E)が、網膜誘導体の反応の結果として形成され、シッフ塩基構造(N−レチニル−N−レチニリデンエタノールアミン)を示す。
用語「リポフスチン関連障害」は、リポフスチンが凝集した病状、及び/または細胞内リポフスチン凝集の量が、同じ性別、年齢、及び種の正常な健康な哺乳動物よりも多い病状を指す。リポフスチン関連障害は特に、加齢プロセスの結果として(例えば、分裂終了加齢細胞において)、酸化ストレス中に、病理的事象の進行において、またはバッテン病を含むがこれに限定されないリソソーム蓄積症であるリポフスチン症において、酸化されたタンパク質(複数可)からサイトゾルを除去するためのリソソーム及びプロテオソームの能力が低下した障害を指す。結果として、いくつかの酸化的に損傷した細胞内タンパク質はすぐに分解されず、さらに酸化され、リポフスチンの細胞内蓄積をもたらし、これは、細胞に対する毒性的帰結を伴って細胞性代謝を撹乱し、かつさらなるタンパク質及び脂質の過酸化ならびにより多くのリポフスチンの形成を促進し得る化学的反応性表面を特徴とする。骨髄または粘膜上皮細胞などの恒久的に分裂する短命細胞は、細胞分裂によって蓄積したリポフスチンを希釈する能力を有する。対照的に、ニューロン、心筋細胞、または骨格筋細胞などの分裂終了細胞はそうすることができない。眼では、RPEは、リポフスチンの最も大きな構築を有する組織の1つである。RPEリポフスチンは、すべての健康な眼において加齢と共に増加する。リポフスチンは、RPEのリソソーム体に局在化し、80歳の年齢までに細胞質空間の約20%を占有し得る。リポフスチンに見られるA2−E−フルオロフォアは、加齢依存性黄斑変性だけでなく、多くの他の病理的プロセスにおいて網膜細胞に蓄積する。RPEリソソームにおけるリポフスチンの構築はしばしば、光受容体を覆う不可逆的な損傷に発達する。これは、ABCA4遺伝子における変異を有する個体、例えば、スターガルト病を有する個体において一般的な事象であり、高齢者集団における失明の最も一般的な原因であるAMDを有する人々における加齢病変の進行の根底にあると考えられる。
例示的なリポフスチン関連障害には、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害(例えば、加齢黄斑変性、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、重度の眼外傷など)、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、大腸メラノーシスなどが含まれるがこれらに限定されない。所定の実施形態では、「リポフスチン関連障害」は、アルツハイマー病、及び/またはパーキンソン病を明示的に除外する。所定の実施形態では、リポフスチン関連障害は、リポフスチンが病因的役割を有する病状を含む。
用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、互換的に使用され得、ヒト、及び非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、ウシ、有蹄動物、ウサギ目類など)を指し得る。様々な実施形態では、対象は、外来患者、または他の臨床的意味としての、病院における医師または他の医療労働者のケア下にあるヒト(例えば、成人男性、成人女性、思春期の男性、思春期の女性、男児、女児)であり得る。所定の実施形態では、対象は、医師または他の医療労働者のケアまたは処方下にない場合がある。
本明細書で使用される場合、語句「それを必要とする対象」は、以下に記載されるように、リソソーム蓄積障害に罹患しているか、またはリソソーム蓄積障害に罹患するリスクがある(例えば、遺伝子及び/または代謝マーカーによって示される)対象を指す。
用語「治療」、「治療すること」、または「治療する」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されているようなリソソーム蓄積症の症状または病状に対して所望の効果をもたらす作用を指し、治療されている疾患または病態の1つ以上の症状及び/または1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または好転でさえも含み得るがこれらに限定されない。「治療」、「治療すること」、または「治療する」は、必ずしも疾患もしくは病態、またはそれに付随する症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。一実施形態では、治療は、治療されている疾患の少なくとも1つの症状の好転を含む。好転は、部分的または完全であり得る。この治療を受ける対象は、それを必要とする任意の対象である。臨床的な好転の例示的なマーカーは、当業者に明らかとなる。
「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。本明細書に記載の分子ピンセットまたはその製剤の「治療的有効量」は、疾患状態、年齢、性別、及び個体の体重、ならびに個体における所望の反応を誘発させるための治療の能力などの要因に応じて異なり得る。治療的有効量はまた、治療の有毒または有害な作用が実質的に存在しないか、または治療的に有益な効果に勝るものである。用語「治療的有効量」は、哺乳動物(例えば、患者)におけるリソソーム蓄積障害を「治療する」のに有効である、本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットまたはそれを含む組成物の量を指す。一実施形態では、治療的有効量は、リソソーム蓄積障害に関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに十分な量である。
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するために、例えば、疾患の発症を遅延または停止させるために、または疾患の1つ以上の症状の発症を遅延または停止させるために必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の症状の出現前に投与される。
用語「軽減すること」または「改善すること」は、症状に関して使用される場合、その病状の1つ以上の症状の減少または除去を指す。
本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与すること」は、導入すること、例えば、化合物または組成物を対象に導入することを意味する。その用語は、任意の特定の送達様式に限定されず、例えば、皮下送達、静脈内送達、筋肉内送達、嚢内送達、注入技術による送達、経皮送達、経口送達、経鼻送達、及び直腸送達を含み得る。さらに、送達経路に応じて、投与は、例えば、ヘルスケア専門家(例えば、医師、看護師など)、薬剤師、または対象(例えば、自己投与)を含む様々な個人によって実施され得る。
語句「投与される原因」は、問題となっている薬剤(複数可)/化合物(複数可)の対象への投与を管理及び/または決定、及び/または許可する医療専門家(例えば、医師)、または対象の医学的ケアを処方及び/または管理する者によってとられる行動を指す。投与される原因は、適切な治療的または予防的レジメンの診断及び/または決定、及び/または対象のための特定の薬剤(複数可)/化合物の処方を含み得る。そのような処方は、例えば、処方フォームの起草、カルテへの注釈などを含み得る。
用語「タンパク質の凝集を阻害すること」は、タンパク質の凝集の速度を停止または遅延させること、及び/または凝集したタンパク質の解離を誘発または加速させることを指し得る。タンパク質の凝集が、凝集したタンパク質の蓄積に寄与している場合、タンパク質の凝集及びタンパク質の蓄積という用語は、互換的に使用され得る。タンパク質の凝集及び/または蓄積を検出するための方法は、当業者に知られており、部分的に、凝集する特定のタンパク質(複数可)に依存する。
CLR01がARPE−19細胞におけるリポフスチンの蓄積及び凝集を阻害することを示している。パネルA)PBS中のCLR01及びリポフスチンA2Eを、示された時点で細胞に添加した。細胞をすべての場合で最大で6時間インキュベートし、リポフスチン自発蛍光(赤)及び細胞核(DAPI、青)の可視化のために蛍光顕微鏡を使用して画像化した。 CLR01がARPE−19細胞におけるリポフスチンの蓄積及び凝集を阻害することを示している。パネルB)パネルAに示されたデータの定量(条件当たりN=15)。 CLR01がARPE−19細胞におけるリポフスチンの蓄積及び凝集を阻害することを示している。C)リポフスチンがリソソーム膜マーカーlamp1と共局在化することを示す共焦点顕微鏡画像。 パネルA)PBS中のCLR01及びリポフスチンA2Eを、示された時点で細胞に添加した。細胞をすべての場合で最大で22時間インキュベートし、リポフスチン自発蛍光(赤)及び細胞核(DAPI、青)の可視化のために蛍光顕微鏡を使用して画像化した。パネルB)パネルBに示されたデータの定量(条件当たりN=15)。条件1−陰性対照−20μlのDMSOをt=0で細胞に添加した。10時間後、培地を除去し、細胞をF12培地で洗浄し、新たな培地を添加した。条件2−陽性対照−100μMの最終濃度のDMSO中のリポフスチンA2Eをt=0で細胞に添加した。10時間後、培地を除去し、細胞をF12培地で洗浄し、新たな培地を添加した。条件3−DMSO中のリポフスチンA2Eをt=0で細胞に添加した。10時間後、培地を除去し、細胞をF12培地で洗浄し、新たな培地を添加した。100μMの最終濃度のPBS中のCLR01をt=10時間で添加した。
様々な実施形態では、リポフスチン関連障害の治療及び/または予防において分子ピンセットを使用するための方法が提供される。所定の実施形態では、分子ピンセットは、タンパク質の凝集を阻害する分子ピンセットである。
アミロイドへの異常なタンパク質自己集合を阻害する分子ピンセットは、PCT公開第WO2010/102248号及び複数の刊行物に記載されている(例えば、Attar & Bitan(2014)Curr.Pharm.Des.20:2469−2483;Schrader et al.(2016)Chem.Commun. (Camb),52:11318−113345,6を参照されたい)。しかしながら、アミロイド中のポリペプチド鎖の互いの会合は非共有結合であるため、また、それらの既知の作用メカニズムは、弱い非共有結合との干渉を伴うため、本明細書に記載の研究の前では、分子ピンセットは、リポフスチン凝集体の形成を阻害することは予期できなかった。
本明細書で実施例に記載されているように、細胞培養実験は、分子ピンセット、すなわち、CLR01が網膜細胞におけるリポフスチンの蓄積及び凝集を阻害し、それがスターガルト病、黄斑変性、及び他のリポフスチン関連障害に対抗するために使用され得ることを示していることを実証した。そのデータは、分子ピンセットCLR01が細胞に害を与えず、リポフスチンA2Eの添加前にCLR01を細胞に添加し、洗浄した場合、おそらく細胞によって内在化されたCLR01の一部が、6時間後においてリポフスチン凝集体の蓄積を約60%減少させるのに十分であったことを示した。その上、細胞をまずリポフスチンA2Eと共に1時間インキュベートし、次いでCLR01に曝露した場合、リポフスチン凝集体の蓄積は、ほぼ陰性対照レベルまで減少し、分子ピンセットCLR01が、おそらくリポフスチンのリソソーム分解を可能にすることによってリポフスチン凝集体の形成を強力に阻害することを実証している。
これらの及び他の結果の観点から、分子ピンセットは、リポフスチン関連障害の治療及び/または予防に使用され得ると考えられる。したがって、様々な実施形態では、リポフスチン関連障害の治療または予防のための方法が提供される。所定の実施形態では、その方法は、治療的有効量及び/または予防的有効量の1つ以上の分子ピンセットを、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与することを含む。所定の実施形態では、「それを必要とする」対象は、リポフスチン関連障害と診断された対象(例えば、症状のある対象)またはリポフスチン関連障害の「リスクがある」と決定された対象(例えば、リポフスチン関連障害の1つ以上の遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーを有すると同定された無症状の対象)を含む。典型的には、分子ピンセットは、タンパク質の凝集を阻害する分子ピンセットである。所定の実施形態では、分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害する分子ピンセットであり得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、リポフスチン関連障害に関連する蓄積/凝集の進行を遅延させ、またはその蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆転させるのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、治療的であり、リポフスチン関連障害の1つ以上の症状を改善するのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、治療的であり、リポフスチン関連障害の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、予防的であり、リポフスチン関連障害の発症を遅らせもしくは停止させるのに、またはリポフスチン関連障害の1つ以上の症状の発症を遅らせもしくは停止させるのに有効である。
リポフスチン関連病状の治療及び/または予防のための分子ピンセット.
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な分子ピンセット(複数可)は、1つ以上のタンパク質の凝集を阻害及び/または調節すること、及び/またはタンパク質線維または他のタンパク質凝集体の解離を促進すること、またはその両方が可能であり得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害及び/または調節すること、及び/またはリポフスチン線維または他のリポフスチン凝集体の解離を促進すること、またはその両方が可能である。
所定の例示的であるが非限定的な実施形態では、リポフスチン関連病状を有する対象の分子ピンセットでの治療は、ニューロンの生存、及び/またはニューロンの再生、及び/またはリポフスチン関連障害の結果として死滅する可能性の高い細胞における他の成果を好転させ得る。異なる細胞の種類または細胞群は、様々な効力または様々な反応で分子ピンセットでの治療に反応し得る。治療の成果はまた、機能回復のいくつかの側面を含む全身または生体レベルで観察され得る。
分子ピンセットの例は、当該技術分野、例えば、国際公開番号WO2010/102248(US2012/0108548としても公開されている)において知られており、これはその全体が、特にそこに記載されている分子ピンセットについて参照により本明細書に組み込まれる(特にその表2を参照されたい)。
本明細書に記載の方法において有用な例示的な分子ピンセットは、式I、II、III、及びIV:
Figure 2021522283
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、クラスレート、またはプロドラッグ(式中、X及びXは、両方ともOであり、A単独、またはXと組み合されたAは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、B単独、またはXと組み合されたBは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
Figure 2021522283
からなる群から選択される置換基を形成し、R、R、R、及びRの各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR、NO、COH、及びCO(式中、Rは、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、またはR及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/またはR及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
のいずれか1つに記載の分子ピンセットであり得る。
所定の実施形態では、A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
からなる群から選択される。所定の実施形態では、A及びBは同じである。所定の実施形態では、A及びBは、独立して、
Figure 2021522283
、及び−(CH−CO (式中、Rは、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである)からなる群から選択される。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW1/CLR01)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW2)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW3)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW4)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
Figure 2021522283
(TW5)に記載の化合物を含む。
他の分子ピンセットは当該技術分野で知られており、本明細書で提供される教示を使用して、本明細書に記載の方法で使用するのに十分に好適な分子ピンセットは当業者に容易に利用可能となる。
分子ピンセットの合成
分子ピンセットは、当業者に知られている多数の方法のいずれかに従って合成され得る(例えば、Zimmerman et al.(1991)J.Am.Chem.Soc.113:183−196を参照れたい)。分子ピンセットTW1(すなわち、CLR01)、TW2、及びTW3の合成は、以下に記載されている(PCT出願第PCT/US2010/026419号も参照されたい)。
1つの例示的であるが、非限定的な実施形態では、テトラメチレン−架橋分子ピンセットの骨格(ピンセットTW1(すなわち、CLR01)及びTW2の出発物質)は、ジエンとしてのエキソ−5,6−ビスメチレン−2,3−ベンゾノルボルネンとビスジエネオフィルとしてのビスノルボルナジエノベンゼンとのディールス・アルダー反応の繰り返しによって構築され得る。(1:2)のDDQとのディールス・アルダー環化付加物におけるシクロヘキセン環の後続の酸化的脱水素が分子ピンセットをもたらす(Klarner et al. (1999)Chem. Eur. J.5:1700−1707;Klarner et al.(2001)Tetrahedron,57:3573−3687;Klarner et al.(2004)Eur. J.Org.Chem.7:1405−1423;Klarner et al.(2008)Synthesis of molecular tweezers and clips by the use of a molecular Lego set and their supramolecular functions,Chapter 4:99−153,in Strategies and Tactics in Organic Synthesis,Vol.7(ed. Harmata,M.),Academic Press,Elsevier,Amsterdam)。
関連するジメチレン−架橋分子クリップの骨格は、ジエンとしてのジブロモ−o−キノジメタン誘導体及び同じビスジエノフィルを使用するピンセットの合成と類似して、ディールス・アルダー反応の繰り返しによって合成され得る。この場合、(1:2)ディールス・アルダー環化付加体におけるHBr除去が、ワンポット反応で分子クリップにつながる形成の条件下で生じる。
1つの例示的な実施形態では、ビスジエノフィルは、TW3型のピンセットの合成のための出発物質である。それらの調製は、ノルボルナジエノキノンを生成するワンポット反応から開始する。1,3−シクロペンタジエンのp−ベンゾキノンへのディールス・アルダー環化付加は、既知の(1:1)付加体をもたらし、これはトリエチルアミンの存在下で対応するヒドロキノンに異性化し、これはその後、過剰のp−ベンゾキノンで酸化される。得られたキノンは、−78℃で1,3−シクロペンタジエンと容易に反応し、ほぼ定量的にsyn及びantiディールス・アルダー付加体の(60:40)混合物をもたらし、これはトルエンからの再結晶によって容易に分離され得る。無水酢酸の存在下での塩基性条件下では、syn付加体は、TW3の出発物質である、対応するジアセトキシ置換ビスジエノフィルに変換される。
中央のベンゼン環におけるメタンホスホネートまたはホスフェート基によって置換されたピンセットTW1−3は、対応するジアセトキシ誘導体の還元的または塩基性エステル加水分解と、それに続くヒドロキノンのMePOCl及びPOClそれぞれでのエステル化によって調製された。水酸化リチウムを用いたメタンホスホン酸またはリン酸誘導体の加水分解及び中和は、所望のメタンホスホン酸塩またはリン酸塩をもたらす(Fokkens et al.(2005)Chem.Eur. J.11:477−494;Schrader et al.(2005)J.Org.Chem.70:10227−10237;Talbiersky et al.(2008)J.Am.Chem.Soc.130:9824−9828)。
TW−2の合成は、Fokkens et al.(2005)J.Am.Chem.Soc.27(41):14415−14421に記載されているのに対し、様々な他の分子ピンセット(切断バリアントを含む)の合成は、Klarner et al.(2006)J.Am.Chem.Soc.128(14):4831−4841に記載されている。そこに記載されている方法は、他の分子ピンセットを合成するために容易に改変され得る。これらの方法は、本発明の他の分子ピンセットを調製するために容易に適応または改変され得る。
分子ピンセットの製剤化及び投与
いくつかの例では、裸の、すなわち、本来の形態の分子ピンセットの送達は、細胞内の標的タンパク質(例えば、リポフスチン)の凝集を阻害するのに十分であり得る。様々な実施形態では、分子ピンセットは、塩、エステル、アミド、クラスレート、または誘導体が薬理学的に有効である(例えば、タンパク質の凝集を阻害する、例えば、所定の実施形態では、α−シヌクレイン、Aβ、及び/またはタウのうちの1つ以上の凝集を阻害することが可能である)限り、塩、エステル、アミド、クラスレート、誘導体などの形態で投与され得る。所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットのプロドラッグまたは他の付加物もしくは誘導体が企図される。そのようなプロドラッグ(複数可)は、それを必要とする対象に投与すると、直接的にまたは間接的に分子ピンセットを提供することが可能である。
所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセット(またはそのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なエステル、薬学的に許容可能なアミド、プロドラッグ、または他の薬学的に許容可能な誘導体)の任意の1つ以上を含み、かつ薬学的に許容可能な担体を任意に含む薬学的組成物が提供される。所定の実施形態では、これらの組成物は任意に、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、それを必要とする患者に1つ以上の他の治療剤の投与と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書に記載の分子ピンセットを有する薬学的組成物での共同投与または包含のための追加の治療剤は、同じまたは関連する適応症を治療するために承認された薬剤であり得るか、またはそれはリポフスチン関連障害のために食品医薬品局で承認中の多数の薬剤のうちのいずれか1つであり得る。
分子ピンセットの塩、エステル、アミド、クラスレート、プロドラッグ及び他の誘導体は、合成有機化学の技術分野で知られている標準的な手順を使用して調製され得る。例えば、所定の実施形態では、分子ピンセットの薬学的に許容可能な塩の形態が企図される。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずに、ヒト及び下級動物の組織と接触して使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合ったそれらの塩を指す。アミン、カルボン酸、及び他の種類の化合物の薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Berge,et al.(1977)J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19は、薬学的に許容可能な塩を詳細に記載している。塩は、活性剤(例えば、分子ピンセット)の最終的な単離及び精製中にその場で調製され得るか、または以下に一般に記載されるように、遊離塩基または遊離酸機能を好適な試薬と反応させることによって別々に調製され得る。例えば、遊離塩基機能は、好適な酸と反応され得るか、または遊離酸機能は、好適な遊離塩基と反応され得る。さらに、化合物(分子ピンセットなど)が酸性部位であるか、またはそれを有する場合、その好適な薬学的に許容可能な塩には、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、または銅の塩などの金属塩;水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなど;及びアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウムの塩が含まれ得る。
薬学的に許容可能な非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸を用いて、またはイオン交換などの当該技術分野で使用されている他の方法を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容可能な塩には、適切な場合には、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、及びハライド、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ナイトレート、低級アルキルスルホネート及びアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成されるアミンカチオンが含まれる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、「薬学的に許容可能なエステル」として製剤化され得る。所定の実施形態では、好適なエステルには、in vivoで加水分解するエステルが含まれるがこれに限定されず、人体で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものが含まれる。好適なエステル基には、薬学的に許容可能な脂肪族カルボン酸、特にアルカノン、アルケノン、シクロアルカン及びアルカンジオン酸に由来するものであって、各アルキルまたはアルケニル部位が有利には、6個以下の炭素原子を有するものが含まれるがこれらに限定されない。特定のエステルの例には、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、アクリレート及びエチルスクシネートが含まれる。
エステルの調製は、例えば、分子ピンセットの分子構造内に存在するヒドロキシル基及び/またはカルボキシル基の官能化を含み得る。所定の実施形態では、エステルは、遊離アルコール基のアシル置換誘導体、すなわち、式RCOOH(式中、Rはアルキルであり、好ましくは低級アルキルである)のカルボン酸に由来する部位である。エステルは、所望の場合、従来の水素化分解または加水分解の手順を使用することによって遊離酸に再変換され得る。
アミドもまた、当該技術分野で知られている技術を使用して調製され得る。例えば、アミドは、好適なアミン反応物を使用して調製され得るか、またはアンモニアまたは低級アルキルアミンとの反応によって無水物または酸塩化物から調製され得る。
様々な実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットの任意の1つ以上は、薬理学的組成物(薬学的製剤)を形成するために薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と組み合わせて使用され得る。所定の薬学的に許容可能な担体は、例えば、組成物を安定化する、分子ピンセットの吸収を増加もしくは減少させる、または血液脳関門の侵入を好転させる(適切な場合)ために作用する1つ以上の生理学的に許容可能な化合物(複数可)を含有し得る。生理学的に許容可能な化合物には、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、保護及び取り込み向上剤(例えば、脂質)、活性剤のクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物、または賦形剤または他の安定化剤及び/または緩衝液が含まれ得る。他の生理学的に許容可能な化合物、特に錠剤、カプセル、ゲルキャップなどの調製において使用されるものには、結合剤、希釈剤/充填剤、崩壊剤、滑沢剤、懸濁剤などが含まれるがこれらに限定されない。所定の実施形態では、薬学的製剤は、分子ピンセットの送達または効力を増強し得る。
様々な実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、非経口、局所、経口、経鼻(またはそうでなければば吸入)、直腸、または部分的投与のために調製され得る。投与は、例えば、経皮的に、またはエアロゾルによって行われ得る。
本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物は、投与方法に応じて様々な単位投薬形態で投与され得る。好適な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、ロゼンジ、坐剤、パッチ、鼻スプレー、注射剤、埋込可能な持続放出製剤、及び脂質複合体が含まれるがこれらに限定されない。
所定の実施形態では、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトールなど)、任意の崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンなど)、結合剤(例えば、アルファ−デンプン、アラビアガム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリンなど)、または任意の滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)が分子ピンセットに添加され得、得られた組成物は圧縮されて経口投薬形態(例えば、錠剤)が製造され得る。特定の実施形態では、圧縮生成物は、例えば、圧縮製品の味を隠すため、圧縮製品の腸溶解を促進するため、または分子ピンセットの持続放出を促進するためにコーティングされ得る。好適なコーティング物質には、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びEudragit(Rohm & Haas、Germany;メタクリル−アクリルコポリマー)が含まれるがこれらに限定されない。
1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物に含まれ得る他の生理学的に許容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤または微生物の成長または作用を防止するのに特に有用な防腐剤が含まれ得る。様々な防腐剤はよく知られており、例えば、フェノール及びアスコルビン酸を含む。生理学的に許容可能な化合物を含む薬学的に許容可能な担体(複数可)の選択は、例えば、分子ピンセットの投与経路及び分子ピンセットの特定の生理化学的特徴に依存する。
所定の実施形態では、1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物で使用するための1つ以上の賦形剤は、無菌である場合があり及び/または不要の物質を実質的に含まない場合がある。そのような組成物は、当該技術分野で知られている従来の技術によって滅菌され得る。錠剤及びカプセルなどの様々な経口投薬形態の賦形剤については、滅菌は必要とされない。標準は、当該技術分野で知られており、例えば、USP/NF標準である。
本明細書に記載されているような1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物は、投薬量、必要とされる投与頻度、ならびに投薬量及び投薬頻度に関して薬学的組成物についての対象の既知または予想される耐性に応じて単回または複数回の投与で投与され得る。様々な実施形態では、組成物は、対象における脊髄損傷または外傷性脳損傷を効果的に治療する(その1つ以上の症状を改善する)(例えば、細胞障害または細胞死(例えば、神経変性)を減少させ、機能回復を好転させ、損傷後ニューロン活性を好転させる)のに十分な量の分子ピンセットを提供し得る。
いくつかの実施形態では、分子ピンセットは、リポフスチン関連障害と診断された対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与される。所定の実施形態では、そのような対象は、リポフスチン関連障害の1つ以上の症状を示している。所定の実施形態では、分子ピンセットは、無症状ではあるが、リポフスチン関連障害の「リスクがある」と同定された対象(例えば、リポフスチン関連障害の1つ以上の遺伝子または代謝マーカーを有する対象)に投与される。所定の実施形態では、分子ピンセットは、乳児に投与される。所定の実施形態では、分子ピンセットは、リポフスチン関連障害の症状の出現前(例えば、ヒトの場合は、治療されているリポフスチン関連障害に応じて、生後3ヶ月以内、または生後6ヶ月以内、または生後1年以内、または生後2年以内、または生後3年以内、または生後4年以内、または生後5年以内、または生後6年以内、または思春期前など)に対象に投与される。
対象に投与される分子ピンセットの量及び/または濃度は、広く変わり得、典型的には、主に分子ピンセットの活性及び対象の特徴、例えば、種及び体重、ならびに特定の投与様式及び対象のニーズに基づいて選択される。所定の実施形態では、分子ピンセットの投薬量は、0.001〜約50mg/kg/日またはそれ以上であり得る。例えば、分子ピンセットの投薬量は、約0.001、0.01、0.1、1、5、10、20、30、40、もしくは50mg/kg/日またはそれ以上であり得る。所定の実施形態では、典型的な投薬量は、約1mg/kg/日〜約3mg/kg/日、約3mg/kg/日〜約10mg/kg/日、約10mg/kg/日〜約20.0mg/kg/日、または約20mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。所定の実施形態では、投薬量は、約10mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。所定の実施形態では、投薬量は、1日2回で経口で与えられる約20mg〜約50mgの範囲である。投薬量は、特定の対象または対象の群における治療及び/または予防レジメンを最適化するために変化し得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、例えば、ロゼンジ、エアロゾルスプレー、口腔洗浄、被覆スワブ、または当該技術分野で知られている他のメカニズムの使用によって口腔内に投与される。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、当該技術分野で知られている標準的な方法に従って全身的に(例えば、経口で、または注射剤として)投与され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、経皮薬物送達システム、すなわち、経皮「パッチ」を使用して皮膚を通して送達され得、そのパッチでは、分子ピンセットは典型的には、皮膚に貼付される薬物送達装置として機能する積層構造内に含有されている。そのような構造では、薬物組成物は典型的には、上部裏地層の下にある層、またはリザーバー内に含有されている。経皮パッチのリザーバーは、最終的に皮膚の表面への送達のために利用可能な量の分子ピンセットを含む。よって、リザーバーは、例えば、パッチの裏地層上の接着剤中に、または当該技術分野で知られている様々な異なるマトリックス製剤のいずれかの中に、本発明の分子ピンセットを含み得る。パッチは、単一のリザーバーまたは複数のリザーバーを含有し得る。
例示的であるが非限定的である1つの経皮パッチの実施形態では、リザーバーは、薬物送達中にシステムを皮膚に貼付する機能をする薬学的に許容可能な接触接着剤物質のポリマーマトリックスを含み得る。好適な皮膚接触接着剤物質の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、及びポリウレタンが含まれるがこれらに限定されない。代替的に、分子ピンセット含有リザーバー及び皮膚接触接着剤は、リザーバーの下にある接着剤を有する別個の区別された層として存在し、そのリザーバーは、この場合、上述したようなポリマーマトリックス、液体もしくはヒドロゲルリザーバー、または当該技術分野で知られている別の形態のリザーバーのいずれかであり得る。装置の上面として機能するこれらの積層体の裏地層は、好ましくは、パッチの主要な構造要素として機能し、装置に実質的な部分の柔軟性を提供する。裏地層のために選択される物質は好ましくは、分子ピンセットに対して、及び存在する任意の他の材料に対して実質的に不透過性である。
局所送達のための追加の製剤には、軟膏、ゲル、スプレー、流体、及びクリームが含まれるがこれらに限定されない。軟膏は、典型的にはワセリンまたは他の石油誘導体をベースとする半固体調製物である。分子ピンセットを含むクリームは典型的には、粘性のある液体または半固体エマルション、例えば、水中油または油中水エマルションである。クリームベースは典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、及び水相を含む。クリームベースの時に「内」相と呼ばれる油相は一般に、ワセリン及び脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコールで構成され;水相は通常、必ずしもそうではないが、体積が油相を超え、一般に保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は一般に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性界面活性剤である。使用される特定の軟膏またはクリームベースは、当該技術分野に従って最適な薬物送達を提供するように選択され得る。他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏ベースは、不活性、安定、非刺激性、及び非増感性であり得る。
様々なバッカル及び舌下製剤も企図される。
所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、非経口であり得る。非経口投与には、例えば、脊髄内、髄腔内、硬膜外、硬膜下、皮下、または静脈内投与が含まれ得る。非経口投与の手段は、当該技術分野で知られている。特定の実施形態では、非経口投与には、皮下に埋め込まれた装置が含まれ得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットを脳及び/または中枢神経系(CNS)に送達することが所望であり得る。系投与を含む所定の実施形態では、これは、分子ピンセットが血液脳関門を通過することを必要とし得る。様々な実施形態では、これは、血液脳関門を越えて分子ピンセットを運搬し得るカチオン性デンドリマーまたはアルギニンリッチペプチドなどの担体分子と分子ピンセットを共投与することによって促進され得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、生体適合性放出システム(例えば、リザーバー)の埋め込みによる投与によって、埋め込まれたカニューレによる直接投与によって、埋め込まれたもしくは部分的に埋め込まれた薬物ポンプ、または当該技術分野で知られている同様の機能のメカニズムによる投与によって脳に直接送達され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、全身的に投与され得る(例えば、静脈内に注射され得る)。所定の実施形態では、分子ピンセットは、血液脳関門を通る輸送を増強するために薬学的組成物に含まれる追加の化合物を使用することなく、血液脳関門を通って輸送されることが予期される。
所定の実施形態では、1つ以上の分子ピンセットは、濃縮物として、例えば、所定体積の水、アルコール、過酸化水素、または他の希釈剤に希釈または添加する準備がされている保存容器または可溶性カプセル内で提供され得る。濃縮物は、特定の量の分子ピンセット及び/または特定の総体積を提供するように設計され得る。濃縮物は、投与前に特定の体積の希釈剤での希釈のために製剤化され得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、眼投与のために製剤化される。眼用薬剤を眼に送達する方法の3つの主な方法は、局所性、部分的眼(すなわち、結膜下、硝子体内、眼球後方、前房内、網膜下)、及び全身性である。最も適切な投与方法は、投薬される眼の領域に依存する。結膜、角膜、前房、及び虹彩は通常、局所療法によく反応する。まぶたは、局所療法で治療され得るが、より頻繁には全身療法を必要とする。ほとんどの局所薬剤が後区に侵入しないため、後区は典型的には、全身療法により達成される。眼球後方及び眼窩組織は、全身的に治療され得る。結膜下または嚢下療法は、真の形態の全身薬剤投与ではないものの、薬物の吸収及び接触時間の両方を増加させる能力を有する。所定の実施形態では、薬剤は両方とも、注射の入口孔から角膜上に漏出し、強膜を通って眼球内に拡散する。低い溶解度を有する薬物は、数日から数週間持続する薬物の収納を提供し得る。薬剤の適切な量及び製剤が使用されるべきである。特に長期作用する塩の多量は、重大な炎症反応を引き起こし得る。嚢下注射の場合、小さな動物では通常1部位当たり0.5mLが安全かつ有効であり、ウマ及びウシなどの大きな動物では≦1mLが使用され得る。
眼球後方薬剤も治療のために使用され得る。薬剤を眼窩内に入れる場合はいつでも、薬剤が不注意で血管、視神経、または眼窩孔の1つに注射されないことを確保するように注意しなければならない。
全身性薬剤は、後区両方のために、及び後区のための局所療法を補完するために使用され得る。血液−眼障壁は、脂溶性がより低い薬物の吸収を制限し得るが、炎症により、最初はより高い薬物濃度が部位に到達することが可能になる。眼が治癒し始めると、これらの障壁は再びより有効になり、さらなる薬物の侵入を制限し得る。
様々な実施形態では、局所投与の後、適用された薬物(複数可)の最大で80%が高度に血管化された鼻咽頭粘膜を通って全身的に吸収される。この経路を介する吸収は肝臓を経由するため、経口投与後に見られる大きな初回通過代謝はない。使用される薬物に応じて、これは全身的有害作用をもたらし得る。
他の好適な製剤及び投与様式が知られているか、または当該技術分野から導かれ得る。
様々な実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、それを必要とする哺乳動物、例えば、リポフスチン関連障害を有するかまたはそのリスクがあると診断された哺乳動物に投与され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、1つ以上のタンパク質(例えば、リポフスチン)の凝集を阻害するために投与され得る。本明細書に記載の分子ピンセットは、リポフスチン関連障害の1つ以上の症状を軽減するために投与され得る。
本発明の薬学的組成物の治療的有効用量は、対象の年齢、対象の性別、対象の種、特定の病状、症状の重症度、及び対象の健康の全般的状態に依存し得る。
本明細書に記載の薬学的組成物は、動物への投与に、例えば、獣医学的使用に好適であり得る。したがって、本明細書に記載の方法の所定の実施形態は、非ヒト生物、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、有蹄動物、ウサギ目類、または他の脊椎動物などの非ヒト哺乳動物への本明細書に記載の薬学的組成物の投与を含み得る。様々な実施形態では、薬学的組成物は、ヒトへの投与に好適である。
分子ピンセットでの治療のためのリポフスチン関連障害.
様々な実施形態では、分子ピンセットは、リポフスチン関連障害の治療または予防のために対象(例えば、それを必要とする哺乳動物)に投与される。所定の実施形態では、リポフスチン関連障害は、リポフスチン関連障害である眼疾患を含む。所定の実施形態では、リポフスチン関連障害は、リポフスチン症を含む。
所定の実施形態では、リポフスチン関連障害は、眼障害に関連するリポフスチン関連障害、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、大腸メラノーシスなどを含む。所定の実施形態では、リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害(例えば、加齢黄斑変性、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、重度眼外傷など)である。
加齢黄斑変性
加齢に伴って生じる網膜内の自発蛍光色素リポフスチンの蓄積は、視覚サイクルの副作用として説明されてきた。それは、2分子のオールトランスレチナールが1分子のホスファチジルエタノールアミンと桿状体外節の円板内で縮合する場合に生じ、続いて網膜色素上皮(RPE)内に取り込まれ、RPE細胞に対して毒性であるピリジニウムビスレチノイドである安定なA2Eに変換する。リポフスチンの主成分であるA2Eの蓄積は、RPE細胞のアポトーシスを引き起こし、それによって加齢黄斑変性が説明される。
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者にける不可逆的な中央視力喪失の最も一般的な原因である。拡張眼底検査所見が診断的であり;カラー写真、フルオレセイン血管造影、及び光コヒーレンストモグラフィーは、診断の確認及び治療の指示を補助する。AMDは、高齢者における永続的で不可逆的な視力喪失の主要な原因である。加齢黄斑変性は、2つの形態:1)乾性(非滲出性または萎縮性)、2)湿性(滲出性または新生血管性)で生じる。
乾性AMDは、典型的には暗いピンポイントの領域として見える網膜色素上皮の変化を引き起こす。網膜色素上皮は、円錐体及び桿状体を健康に維持し、良好に機能させる上で重要な役割を果たす。桿状体及び円錐体からの老廃物の蓄積は、黄色の斑点として現れるドルーゼンをもたらし得る。乾性AMDのより進行した場合では、脈絡網膜萎縮(地図状萎縮と称される)の領域が生じる。増大した黄斑瘢痕(円盤状瘢痕)、浮腫、出血、または滲出はない。
乾性AMDでは、中央視力の喪失は何年もかけて生じ、無痛であり、ほとんどの患者は読むのに及び運転するのに十分な視力を保持する。中央盲点(暗点)は通常、疾患の後期に生じ、時に重症化し得る。症状は通常、両側性である。眼底変化には、網膜色素上皮の変化、ドルーゼン、及び網脈絡膜萎縮の領域が含まれるがこれらに限定されない。
湿性AMDでは、通常、急速な視力喪失が数日から1週間にわたって生じる。最初の症状は通常、中央盲点(暗点)または直線の湾曲(変視症)などの視力の歪みである。周辺視力及び色覚は一般に影響を受けない;しかしながら、患者は、特にAMDが治療されない場合、罹患した眼で法的に失明(<20/200の視力)し得る。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防的及び/または治療的方法は、上記の症状の1つ以上(例えば、網膜の表面上のドルーゼンまたは老廃物堆積物、黄斑の色(色素)の変化、不鮮明または不明瞭な視力、直線が波状となる錯視;いくつかの物体が本当のものよりも小さくなる錯視、視野の中心における灰色、暗または空領域の出現、及び色覚の衰退からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、もしくは逆行させることを含む。
卵黄様黄斑変性
卵黄様黄斑変性(卵黄様黄斑ジストロフィーとしても知られている)は、進行性の視力喪失を引き起こし得る遺伝性眼障害である。この障害は網膜に影響を及ぼし得る。具体的には、卵黄様黄斑ジストロフィーは、黄斑と呼ばれる網膜の中心に近い小さな領域における細胞を破壊する。リポフスチンは、黄斑の下にある細胞内で構築する。経時的に、この物質の異常な蓄積は、明瞭な中央視力にとって重要な細胞を損傷させ得る。結果として、この障害を有する人々はしばしば、中央の視力を喪失し、視野は不鮮明になり得るか、または歪み得る。卵黄様黄斑ジストロフィーは典型的には、側方(周辺部)視力または夜間に視認する能力に影響を及ぼさない。
卵黄様黄斑ジストロフィーの2つの形態は、類似した特徴を伴って記載されている。早期発症型(ベスト病として知られる)は通常、小児期に現れ;症状の発症及び視力喪失の重症度は広く異なる。成人発症型は、後に、通常は中期成人期に始まり、経時的に徐々に悪化する視力喪失を引き起こす傾向がある。卵黄様黄斑ジストロフィーの2つの形態はそれぞれ、眼科検査中に検出され得る黄斑における特徴的な変化を有する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防的及び/または治療的方法は、上記の症状の1つ以上(例えば、中央視力喪失、不鮮明な視野、歪んだ視野、黄斑細胞死からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、もしくは逆行させることを含む。
スターガルト病
スターガルト病は、最も一般的な遺伝性網膜疾患である。それは通常、ABCA4遺伝子における変異によって引き起こされる常染色体潜性遺伝を有する。まれにそれは、ELOVL4またはPROM1遺伝子の欠陥のため、常染色体顕性遺伝を有する。スターガルト病のすべての形態は、小児期、思春期または成人期に始まり、その結果、視力が進行的に喪失するリポフスチンの蓄積の結果としての黄斑変性を特徴とする。
潜性スターガルト病(STGD1)は、Abca4遺伝子における変異によって引き起こされる遺伝性失明障害である。ABCA4は、光受容体外側セグメント(OS)におけるフリッパーゼであり、これは、ホスファチジルエタノールアミンに複合体化したレチンアルデヒドをOS円板膜を通して移行させる。Abca4−/−マウス及びSTGD1患者におけるABCA4の喪失は、網膜色素上皮(RPE)におけるリポフスチンの構築及び光受容体の変性を引き起こし、失明につながる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防的及び/または治療的方法は、上記の症状の1つ以上(例えば、高レベルのビタミン二量体及びその副生成物、不鮮明なまたは歪んだ視力、低照明での視認不能、見覚えのある顔の認識困難、及び色覚の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、もしくは逆行させることを含む。
ニューロンセロイドリポフスチン症
所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、ニューロンセロイドリポフスチン症の治療及び/または予防において使用される。ニューロンセロイドリポフスチン症の例示的であるが、非限定的な例には、乳児期NCL(サンタブオリ−ハルチア病)、後期乳児期NCL(ジャンスキー−ビールショウスキー病、若年期NCL(CLN1、バッテン病)、成人NCL(クフス病)、フィンランド後期乳児期NCL、バリアント後期乳児期NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL(北部てんかん、すなわち、精神遅滞を有する進行性てんかん(EPMR))、トルコ後期乳児期バリアントNCL、及びCLN10 NCL(先天性、カテプシンD欠損症)が含まれるがこれらに限定されない。
ニューロンセロイドリポフスチン症(NCL)は、小児期の最も一般的な神経変性障害を共に構成する一群の遺伝性リソソーム蓄積症である。それらは、臨床的かつ遺伝的に異質であり、自発蛍光物質の細胞内蓄積、運動及び精神的能力の進行的で永久的な喪失を伴う神経変性、ならびに失明を特徴とする。蓄積物質であるセロイドは、リポフスチンと類似する組成を共有し、脳及び網膜を含むほとんどの組織に存在する。歴史的には、4つの主要なNCLサブタイプ(乳児期、後期乳児期、若年期、及び成人)が、発症年齢及び蓄積物質の超微細構造に基づいて定義されてきた。分子遺伝学の出現により、NCLはさらに、発症年齢に関係なく、8つの遺伝的に異なる形態に分類されてきた(例えば、表1を参照されたい)。NCLのすべての形態は、成人バリアント(パリー型)を除き、劣性遺伝する。
Figure 2021522283
NCLの早期乳児期バリアント(INCLまたはサンタブオリ−ハルチアとも呼ばれる)では、対象は出生時には正常に見えるが、2歳までに完全な網膜失明につながる早期視力喪失がその疾患の最初の指標であり;3歳までに植物状態に達し、4歳までに等電性脳造影図が脳死を確認する。後期乳児期バリアントは通常、2〜4歳で発作及び視力の低下を伴って発症する。後期乳児期バリアントの死亡までの最高年齢は10〜12歳である。若年期NCL(JNCL、バッテン病、またはスピールメイヤー−ボグト)、すなわち、JNCLは、100,000人に1人の有病率で米国及び欧州においてNCLの最も一般的な種類であり、通常は4〜10歳で現れる;最初の症状には、発作を伴う網膜ジストロフィーによる重大な視力喪失、精神的衰退が含まれる。疾患が進行すると、発作、運動機能低下、発話の問題、精神衰弱、及びその後の20代半ばから後半または30代での最終的な死を含む。心臓の問題も、特に疾患の後期段階で一般的である。進行した疾患では、網膜変性は広範囲となり、ニューロン枯渇ならびにその後の萎縮及び重度のグリオーシスを伴い、これは進行した網膜色素変性(RP)に見られるものに類似している。成人バリアントNCL(ANCLまたはクフ病)は、あまり理解されておらず、一般により軽度の症状を発症するが、症状は典型的には、30歳前後で現れ、通常は10年後に死亡する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防的及び/または治療的方法は、上記の症状の1つ以上(例えば、認知機能不全、動き/運動機能不全、及び視力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、もしくは逆行させることを含む。
前述のリポフスチン関連障害は、例示的であり、非限定的である。本明細書で提供される教示を使用して、当業者は、多数の他のリポフスチン関連障害の治療及び/または予防において分子ピンセットを容易に利用し得る。
キット.
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法の実践のための物質を含有するキットが提供される。所定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含有する容器及び/または本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的製剤を含む。所定の実施形態では、キットは、分子ピンセットを投与するための装置(例えば、事前に装填されたシリンジ)を含有し得る。
所定の実施形態では、キットは任意に、例えば、本明細書に記載されているようなリポフスチン関連障害の治療または予防における分子ピンセットの使用のための指示(例えば、プロトコル)を提供するラベル及び/または説明資料を含む。説明資料はまた、推奨される投薬量、禁忌の説明(複数可)を含み得る。
様々なキットにおける説明資料は典型的には、書面のまたは印刷された資料を含むが、そのようなものに限定されない。そのような説明を記憶し、それらをエンドユーザに伝達することが可能な任意の媒体が本発明によって企図される。そのような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるがこれらに限定されない。そのような媒体には、そのような説明資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれ得る。
以下の実施例は、特許請求された発明を限定するためではなく、例示するために提供される。
実施例1
分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害
リポフスチンの凝集に対するCLR01の効果を試験するために、ヒト、ARPE−19細胞(網膜色素上皮;RPE)を以下のようにCLR01の非存在下または存在下でリポフスチン(A2E)で処置し、6時間のインキュベートの最後に蛍光顕微鏡によって画像化した(図1、パネルA):
条件1−陰性対照−20μlのPBSをt=0で細胞に添加し、20μlのDMSOをt=1.5時間で添加した。
条件2−安全対照−100μMの最終濃度のPBS中のCLR01をt=0で細胞に添加し、DMSOをt=1.5時間で添加した。
条件3−陽性対照−PBSをt=0で細胞に添加し、100μMの最終濃度のDMSO中のリポフスチンA2Eをt=1.5時間で添加した。リポフスチンA2Eは、11−シス−レチナールから誘導され、かつ網膜色素上皮内に蓄積するN−レチニリデン−N−レチニルエタノールアミン(A2E)が濃縮されたリポフスチンの特定種である(Boyer et al.(2012)J.Biol.Chem.287:22276−22286)。
条件4−100μMの最終濃度のPBS中のCLR01をt=0で細胞に添加し、1.5時間後、培地を除去し、細胞をF12培地で洗浄し、新たな培地を添加した。100μMの最終濃度のDMSO中のリポフスチンA2Eをt=1.5時間で添加した。
条件5−DMSO中のリポフスチンA2Eをt=0で細胞に添加し、100μMの最終濃度のPBS中のCLR01をt=1時間で添加した。
そのデータは、CLR01が細胞に害を与えず(条件2)、リポフスチンA2Eの添加前にCLR01を細胞に添加し、洗浄した場合(条件4)、おそらく細胞によって内在化されたCLR01の一部が、6時間後においてリポフスチン凝集体の蓄積を約60%減少させるのに十分であったことを示した。その上、細胞をまずリポフスチンA2Eと共に1時間インキュベートし、次いでCLR01に曝露した場合(条件5)、リポフスチン凝集体の蓄積は、ほぼ陰性対照レベルまで減少し(図1、パネルB)、CLR01が、おそらくリポフスチンのリソソーム分解を可能にすることによってリポフスチン凝集体の形成を強力に阻害することを実証している。リポフスチンA2E及びリソソーム関連膜タンパク質1(LAMP−1)の共焦点画像化は、リポフスチンがリソソームと共局在化したこと、及びリソソームの完全性がCLR01によって影響を受けなかったことを示した(図1、パネルC)。
事前に形成されたリポフスチン凝集体に対するCLR01の効果も試験した。ヒト、ARPE−19細胞をリポフスチン(A2E)で10時間処置した(リポフスチン凝集体を形成させため)。細胞を洗浄して培地からA2Eを除去してから、CLR01を培地にさらに12時間添加した。次いで細胞を蛍光顕微鏡によって画像化し、蛍光を定量した(図2)。データは、CLR01がこの条件でも同様にリポフスチンを除去することができたこと示した。しかしながら、その除去効果は、CLR01をリポフスチン負荷と同時に添加した条件(図1における条件5)に対して低かった。
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示の目的のためだけのものであること、及びそれに照らして様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲の中に含まれることが理解される。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許、及び特許出願は、すべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (21)

  1. 哺乳動物におけるリポフスチン関連障害を治療する方法であって、前記方法は、
    タンパク質の凝集を阻害することが可能な有効量の分子ピンセットを前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
  2. 前記分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害することが可能であり、前記有効量は、前記リポフスチン関連障害に関連するリポフスチンの蓄積/凝集の発症を遅らせるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集の進行を遅延させるのに、またはそのリポフスチン蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効な量である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
  4. 前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害であり、前記眼疾患は、加齢黄斑変性、スターガルト病、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、及び重度眼外傷からなる群から選択される疾患を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記眼疾患は、黄斑変性を特徴とする、請求項3に記載の方法。
  6. 前記リポフスチン関連障害は、ニューロンセロイドリポフスチン症であり、例えば、前記リポフスチン関連障害は、乳児期NCL(サンタブオリ−ハルチア病)、後期乳児期NCL(ジャンスキー−ビールショウスキー病、若年期NCL(CLN1、バッテン病)、成人NCL(クフス病)、フィンランド後期乳児期NCL、バリアント後期乳児期NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL(北部てんかん、すなわち、精神遅滞を有する進行性てんかん(EPMR))、トルコ後期乳児期バリアントNCL、バッテン病、及びCLN10 NCL(先天性、カテプシンD欠損症)からなる群から選択されるリポフスチン症を含み、好ましくは前記ニューロンセロイドリポフスチン症は、バッテン病である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記分子ピンセットは、式I〜IV:
    Figure 2021522283
    、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
    及びXは、両方ともOであり、
    A単独、またはXと組み合されたAは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される置換基を形成し、
    B単独、またはXと組み合されたBは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される置換基を形成し、
    、R、R、及びRの各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR、NO、COH、及びCO(式中、Rは、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
    及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/または
    及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
    のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. A及びBは、独立して、
    Figure 2021522283
    (式中、A及びBは任意に同じである)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
  9. A及びBは、独立して、
    Figure 2021522283
    、及び−(CH−CO (式中、Rは、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールであり、A及びBは任意に同じである)からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
  10. 前記分子ピンセットは、
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される式に記載の化合物を含む、請求項7に記載の方法。
  11. リポフスチンの凝集を阻害するのに使用するための分子ピンセットであって、前記リポフスチンの凝集を阻害することは、リポフスチンの凝集の発症を遅らせること、またはリポフスチンの凝集の進行を遅延させること、またはリポフスチンの凝集を停止させること、もしくは逆行させることを含む、前記分子ピンセット。
  12. 前記リポフスチンの凝集を阻害することは、哺乳動物におけるリポフスチン関連障害の治療においてタンパク質の凝集を阻害することを含む、請求項11に記載の分子ピンセット。
  13. 前記分子ピンセットは、リポフスチンの凝集を阻害することが可能であり、前記治療は、前記リポフスチン関連障害に関連するリポフスチンの凝集/蓄積の発症を遅らせるのに、またはそのリポフスチン凝集/蓄積の進行を遅延させるのに、またはそのリポフスチン凝集/蓄積を停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、請求項11〜12のいずれか1項に記載の分子ピンセット。
  14. 前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、バッテン病)、末端肥大症、筋萎縮性側索硬化症、脱神経萎縮、脂質ミオパシー、慢性閉塞性肺疾患、中心核ミオパシー、及び大腸メラノーシスからなる群から選択される、請求項12〜13のいずれか1項に記載の分子ピンセット。
  15. 前記リポフスチン関連障害は、眼疾患に関連するリポフスチン関連障害であり、前記眼疾患は、加齢黄斑変性、卵黄様黄斑変性(ベスト黄斑ジストロフィー)、脈絡膜メラノーマに関連する網膜色素上皮症、及び重度眼外傷からなる群から選択される疾患を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の分子ピンセット。
  16. 前記リポフスチン関連障害は、黄斑変性を特徴とする、請求項15に記載の分子ピンセット。
  17. 前記リポフスチン関連障害は、ニューロンセロイドリポフスチン症であり、前記リポフスチン関連障害は、乳児期NCL(サンタブオリ−ハルチア病)、後期乳児期NCL(ジャンスキー−ビールショウスキー病、若年期NCL(CLN1、バッテン病)、成人NCL(クフス病)、フィンランド後期乳児期NCL、バリアント後期乳児期NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL(北部てんかん、すなわち、精神遅滞を有する進行性てんかん(EPMR))、トルコ後期乳児期バリアントNCL、バッテン病、及びCLN10 NCL(先天性、カテプシンD欠損症)からなる群から選択されるリポフスチン症を含む、請求項12〜14のいずれか1項に記載の分子ピンセット。
  18. 前記分子ピンセットは、式I〜IV:
    Figure 2021522283
    、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
    及びXは、両方ともOであり、
    A単独、またはXと組み合されたAは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される置換基を形成し、
    B単独、またはXと組み合されたBは、ホスフェート、水素ホスフェート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される置換基を形成し、
    、R、R、及びRの各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR、NO、COH、及びCO(式中、Rは、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
    及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/または
    及びRは、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
    のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、請求項12〜17のいずれか1項に記載の分子ピンセット。
  19. A及びBは、独立して、
    Figure 2021522283
    (式中、A及びBは任意に同じである)からなる群から選択される、請求項18に記載の分子ピンセット。
  20. A及びBは、独立して、
    Figure 2021522283
    、及び−(CH−CO (式中、Rは、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールであり、A及びBは任意に同じである)からなる群から選択される、請求項18に記載の分子ピンセット。
  21. 前記分子ピンセットは、
    Figure 2021522283
    からなる群から選択される式に記載の化合物を含む、請求項18に記載の分子ピンセット。
JP2020560382A 2018-04-27 2019-04-25 分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害 Pending JP2021522283A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US201862663948P 2018-04-27 2018-04-27
US62/663,948 2018-04-27
PCT/US2019/029221 WO2020036656A2 (en) 2018-04-27 2019-04-25 Inhibition of lipofuscin aggregation by molecular tweezers

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021522283A true JP2021522283A (ja) 2021-08-30
JPWO2020036656A5 JPWO2020036656A5 (ja) 2022-06-15

Family

ID=69525768

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020560382A Pending JP2021522283A (ja) 2018-04-27 2019-04-25 分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害

Country Status (4)

Country Link
US (1) US20210069217A1 (ja)
EP (1) EP3784795A4 (ja)
JP (1) JP2021522283A (ja)
WO (1) WO2020036656A2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010102248A2 (en) * 2009-03-05 2010-09-10 The Regents Of The University Of California Molecular tweezers for the treatment of amyloid-related diseases

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010135004A1 (en) * 2009-05-22 2010-11-25 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Enzymatic degradation of a2e and other bisretinoid compounds of rpe lipofuscin
WO2013166041A1 (en) * 2012-05-01 2013-11-07 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Transthyretin ligands capable of inhibiting retinol-dependent rbp4-ttr interaction for treatment of age-related macular
EP3112466A1 (en) * 2015-07-01 2017-01-04 Samsung Electronics Co., Ltd. Composition for reducing cellular senescence level including activity inhibitor inhibiting dcun1d3 activity or expression inhibitor inhibiting expression of dcun1d3-encoding gene and use thereof

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010102248A2 (en) * 2009-03-05 2010-09-10 The Regents Of The University Of California Molecular tweezers for the treatment of amyloid-related diseases

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY B, vol. 119, JPN6023014133, 2015, pages 4831 - 4841, ISSN: 0005037396 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020036656A9 (en) 2020-04-23
EP3784795A2 (en) 2021-03-03
WO2020036656A2 (en) 2020-02-20
WO2020036656A3 (en) 2020-03-26
EP3784795A4 (en) 2022-01-19
US20210069217A1 (en) 2021-03-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5212849B2 (ja) 眼内血管新生及び/又は眼内血管透過性亢進を伴う疾患の予防又は治療のための医薬
JP2010529128A (ja) レット症候群および他の障害の処置
CA2819628C (en) Folic acid - ramipril combination: cellprotective, neuroprotective and retinoprotective ophtalmologic compositions
US20230052152A1 (en) Compounds for treatment of alzheimer's disease
EP3448388B1 (en) Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors for topical eye treatment of retinal neurodegenerative diseases
US20180296646A1 (en) Treatment of epithelial layer lesions
JP2021522283A (ja) 分子ピンセットによるリポフスチンの凝集の阻害
US11717513B2 (en) Mirabegron for the treatment of retinal diseases
US10322129B2 (en) Therapeutic compositions containing dipyridamole, treatment packs and kits including such compositions and methods for producing same
JP2020522568A (ja) テセタキセル及びカペシタビンの投与スケジュール
JP2020518678A (ja) ギャップ結合細胞間コミュニケーションモジュレータ及び糖尿病性眼疾患の治療のためのそれらの使用
AU2005269293A1 (en) Methods of treating ophthalmic conditions
US11826340B1 (en) Method for treateing or preventing ischemic optic neuropathy
JP2021522282A (ja) リソソーム蓄積障害の治療
WO2023220136A1 (en) Ultra low dosage zoledronic acid for treatment of retinal disease
WO2023211929A1 (en) Probes and methods for targeted visualization of nlrp3 inflammasomes
JP2024513192A (ja) 色素沈着過剰障害を処置するための方法及び組成物
AU2006200822B2 (en) Treatment of epithelial layer lesions
JP2022104448A (ja) 認知症治療薬

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220425

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220425

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220606

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230417

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230718

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230919