アルツハイマー及びパーキンソン病を含む多くの神経変性疾患は、アミロイド生成性タンパク質からの不溶性凝集体の形成を特徴とする(Ciechanover & Kwon(2015) Exp. Mol.Med.47(3):e147.)。これらの凝集したタンパク質またはペプチドの不溶性形態は、β鎖が分子間会合してβシートになることによって形成する。凝集プロセスは、アミロイド生成性タンパク質の過剰生成または不十分な除去によって引き起こされ得、これらの凝集体は細胞傷害性であり、その理由はそれらが、複数の細胞メカニズムと干渉し、しばしば細胞死に寄与するからである(Rahimi et al.(2008)Curr.Alzheimer. Res.5:319−341;Serpell(2000)Biochim. Biophys. Acta.1502(1):16−30)。
本発明者は以前に、α−シヌクレインがLSDの脳における周核体において蓄積し、シナプス前活性の機能媒介性脱制御の喪失を介して神経変性プロセスに寄与していることを発見した。彼らは今、驚くべきことに、LSDのモデルにおいてα−シヌクレインを含むいくつかのアミロイドタンパク質が周核体において(ほとんどがリソソーム区画内に)蓄積することを見出し、アミロイドβタンパク質(Aβ)、プリオンタンパク質及びタウなどのいくつかの疾患関連タンパク質を含有するアミロイド様沈着物としての包含物を特徴付けた。本発明者はさらに、予想外にも、PCT公開第WO2010102248号に記載されているようなものなどの分子ピンセットが、LSDにおいてニューロン喪失を減弱させ、炎症を減少させることが可能であることを示し、これにより、神経学的障害を有するLSDのための新規な治療を提供し、アミロイド沈着物が、毒性機能メカニズムの獲得を介して神経病状に寄与するLSDにおいて病原的役割を有することを証明した。
したがって、本明細書で企図される様々な実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得るがこれらに限定される必要はない。
実施形態1:哺乳動物におけるリソソーム蓄積症を治療する方法であって、前記方法は、タンパク質の凝集を阻害することが可能な有効量の分子ピンセットを前記哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
実施形態2:前記分子ピンセットは、アミロイドタンパク質の凝集を阻害することが可能である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:前記アミロイドタンパク質は、α−シヌクレイン、Aβ、プリオンタンパク質及びタウからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、実施形態2に記載の方法。
実施形態4:前記有効量は、前記リソソーム蓄積症に関連するタンパク質の蓄積/凝集の進行を遅延させるのに、またはその蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効な量である、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5:前記有効量は、前記リソソーム蓄積症に関連する病状の1つ以上の症状を改善するのに及び/または前記リソソーム蓄積症に関連する神経変性及び/または神経炎症を減少させるのに有効な量である、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6:前記方法は、神経変性を減少させる、実施形態5に記載の方法。
実施形態7:前記方法は、神経炎症を減少させる、実施形態5〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8:前記方法は、記憶障害の発症を遅らせ、その進行を遅延させ、または記憶障害を減少させる、実施形態5〜7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9:前記方法は、異常なリソソームのサイズを減少させる、実施形態5〜8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10:前記方法は、オートファジーフラックスを再活性化する、実施形態5〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11:前記有効量は、前記リソソーム蓄積症に関連する病状の発症を遅らせるか、またはその進行を遅延させ、もしくは停止させ、もしくは逆行させるのに有効な量である、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12:前記投与は、前記哺乳動物における症状の出現前である、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13:前記哺乳動物は、前記リソソーム蓄積症のための遺伝子マーカーの存在によってリソソーム蓄積症を有すると同定されている、実施形態12に記載の方法。
実施形態14:前記投与は、生後3ヶ月以内、または生後6ヶ月以内、または生後1年以内、または生後3年以内である、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15:前記リソソーム蓄積症は、神経学的障害及び/または神経変性プロセスを特徴とするリソソーム蓄積症を含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16:前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症(MPS)、アスパルチルグルコサミン尿症、GM1ガングリオシドーシス、クラッベ(球様細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシス)、異染性白質ジストロフィー、サンドホフ病、ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)、ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)、ニーマン−ピック病C2及びC1型、ダノン病、遊離シアル酸蓄積障害、ムコリピドーシスIV型、及び多重スルファターゼ欠損症(MSD)からなる群から選択される病状を含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態17:前記リソソーム蓄積症は、サンフィリポ症候群(MPS III)、ハーラー症候群(MPS IH)、ハーラー−シャイエ症候群(MPS I−H/S)、シャイエ症候群(MPS IS)、ハンター症候群(MPS II)、モルキオ症候群(MP IV)、マロトー−ラミー症候群(MPS VI)、スライ症候群(MPS VII)、及びMPS IXからなる群から選択されるムコ多糖症を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態18:前記ムコ多糖症は、サンフィリポ症候群(MPS III)を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態19:サンフィリポ症候群(MPS III)の1つ以上の症状の前記改善は、認知障害、鷲手、内臓巨大症、睡眠障害、運動機能の喪失、コミュニケーション能力の喪失、及び発作からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態20:前記方法は、認知障害、鷲手、内臓巨大症、睡眠障害、運動機能の喪失、コミュニケーション能力の喪失、及び発作からなる群から選択されるサンフィリポ症候群(MPS III)の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させることを含む、実施形態17に記載の方法。
実施形態21:前記リソソーム蓄積症は、アスパルチルグルコサミン尿症を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態22:アスパルチルグルコサミン尿症の1つ以上の症状の改善は、発話能力の遅延または喪失、認知機能障害、発作、運動機能障害、骨粗鬆症、及び関節過可動性からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態23:前記方法は、発話能力の喪失の増大、認知機能障害の増大、発作の頻度及び/または重症度の増大、運動機能障害の増大、骨粗鬆症の増大、及び関節過可動性の増大からなる群から選択されるアスパルチルグルコサミン尿症の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態21に記載の方法。
実施形態24:前記リソソーム蓄積症は、GM1ガングリオシドーシスを含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態25:GM1ガングリオシドーシスの1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、運動機能障害、肝脾腫大、骨格異常、発作、角膜の混濁、及び視力の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態24に記載の方法。
実施形態26:前記方法は、認知機能障害の増大、進行性運動機能障害、進行性肝脾腫大、骨格異常の増大、発作の頻度及び/または重症度の増大、角膜の混濁の増大、及び視力の喪失の増大からなる群から選択されるGM1ガングリオシドーシスの1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態24に記載の方法。
実施形態27:前記リソソーム蓄積症は、クラッベ病(球様細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシス)を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態28:クラッベ病の1つ以上の症状の改善は、被刺激性、発熱、手足のこわばり、発作、摂食困難、嘔吐、及び認知機能障害、運動機能障害、筋肉弱体化、痙縮、難聴、視神経萎縮、視神経肥大、失明、麻痺、及び嚥下時困難からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態27に記載の方法。
実施形態29:前記方法は、被刺激性の増大、発熱、手足のこわばり、発作の頻度及び/または重症度の増大、摂食困難、嘔吐、認知機能障害、運動機能障害、筋肉弱体化、痙縮、難聴、視神経萎縮、視神経肥大、失明、麻痺、及び嚥下時困難からなる群から選択されるクラッベ病の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態27に記載の方法。
実施形態30:前記リソソーム蓄積症は、異染性白質ジストロフィーを含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態31:大脳白質ジストロフィーの1つ以上の症状の改善は、CNS及び/または末梢神経系にわたる大脳白質ジストロフィー、認知機能障害、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態30に記載の方法。
実施形態32:前記方法は、CNS及び/または末梢神経系にわたる大脳白質ジストロフィー、認知機能障害、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失からなる群から選択される大脳白質ジストロフィーの1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態30に記載の方法。
実施形態33:前記リソソーム蓄積症は、サンドホフ病を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態34:サンドホフ病の1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺を含む、実施形態33に記載の方法。
実施形態35:前記方法は、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺からなる群から選択されるサンドホフ病の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態33に記載の方法。
実施形態36:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態37:ムコリピドーシスII型の1つ以上の症状の改善は、筋緊張減弱(低血圧症)、成長障害、骨異常、後彎症、内反足、可動障害、心臓弁異常、長期または再発性呼吸器及び/または耳感染症、及び聴力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態36に記載の方法。
実施形態38:前記方法は、筋緊張減弱(低血圧症)、成長障害、骨異常、後彎症、内反足、可動障害、心臓弁異常、長期または再発性呼吸器及び/または耳感染症、及び聴力喪失からなる群から選択されるムコリピドーシスII型の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態36に記載の方法。
実施形態39:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態40:1つ以上の症状の改善は、関節のこわばり、脊柱側彎症、手の骨格変形(例えば、鷲手)、成長遅延、股関節の劣化、眼の角膜の混濁、軽度精神遅滞、易疲労性、手根管症候群、及び心臓疾患からなる群から選択されるムコリピドーシスIIIA型の1つ以上の症状の改善を含む、実施形態39に記載の方法。
実施形態41:前記方法は、関節のこわばり、脊柱側彎症、手の骨格変形(例えば、鷲手)、成長遅延、股関節の劣化、眼の角膜の混濁、軽度精神遅滞、易疲労性、手根管症候群、及び心臓疾患からなる群から選択されるムコリピドーシスIIIA型の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態39に記載の方法。
実施形態42:前記リソソーム蓄積症は、ニーマン−ピック病C2及びC1型を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態43:1つ以上の症状の改善は、脾腫、肝腫大、肝脾腫大、黄疸、認知機能障害、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、大鬱病及び心因性鬱病、随意運動の喪失、及び重度の認知症からなる群から選択されるニーマン−ピック病の1つ以上の症状の改善を含む、実施形態42に記載の方法。
実施形態44:前記方法は、脾腫、肝腫大、肝脾腫大、黄疸、認知機能障害、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、大鬱病及び心因性鬱病、随意運動の喪失、及び重度の認知症からなる群から選択されるニーマン−ピック病の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態42に記載の方法。
実施形態45:前記リソソーム蓄積症は、ダノン病を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態46:ダノン病の1つ以上の症状の改善は、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態47:前記方法は、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択されるダノン病の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態45に記載の方法。
実施形態48:前記リソソーム蓄積症は、遊離シアル酸蓄積障害を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態49:遊離シアル酸蓄積障害の1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、発達遅延、筋緊張減弱(低血圧症)、予期された速度での体重増加及び成長の不全(発育不全)、骨変形、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、及び心臓の肥大(心肥大)からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態50:前記方法は、認知機能障害、発達遅延、筋緊張減弱(低血圧症)、予期された速度での体重増加及び成長の不全(発育不全)、骨変形、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、及び心臓の肥大(心肥大)からなる群から選択される遊離シアル酸蓄積障害の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態51:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスIV型を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態52:ムコリピドーシスIV型の1つ以上の症状の改善は、発達遅延、視力障害、精神運動遅延、認知機能障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、筋緊張減弱(低血圧症)、異常な筋肉硬直(痙縮)、運動機能障害、角膜の混濁、及び胃酸の生成障害(無酸症)からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態51に記載の方法。
実施形態53:前記方法は、発達遅延、視力障害、精神運動遅延、認知機能障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、筋緊張減弱(低血圧症)、異常な筋肉硬直(痙縮)、運動機能障害、角膜の混濁、及び胃酸の生成障害(無酸症)からなる群から選択されるムコリピドーシスIV型の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態51に記載の方法。
実施形態54:前記リソソーム蓄積症は、多重スルファターゼ欠損症(MSD)を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態55:多重スルファターゼ欠損症の1つ以上の症状の改善は、大脳白質ジストロフィー、脊柱側彎症、肝脾腫大、精神運動発達退行)、及び魚鱗癬からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態54に記載の方法。
実施形態56:前記方法は、大脳白質ジストロフィー、脊柱側彎症、肝脾腫大、精神運動発達退行)、及び魚鱗癬からなる群から選択される多重スルファターゼ欠損症の1つ以上の症状の進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む、実施形態54に記載の方法。
実施形態57:1つ以上の症状の前記改善は、神経炎症の減少(及び/または所定の実施形態では、記憶障害の減少、及び/またはオートファジーフラックスの再活性化(復元)、及び/または異常なリソソームのサイズの減少)を含む、実施形態15〜56のいずれか1つに記載の方法。
実施形態58:神経炎症の前記減少は、神経炎症の1つ以上のマーカーの減少を含み、神経炎症の前記マーカー(複数可)は、Iba1(ミクログリア活性化のためのマーカー)、GFAP(星状細胞反応のためのマーカー)、TNF−アルファ、インターロイキン、及びTGF−ベータからなる群から選択される、実施形態57に記載の方法。
実施形態59:1つ以上の症状の前記改善は、ニューロン喪失(神経変性)の減少を含む、実施形態15〜58のいずれか1つに記載の方法。
実施形態60:方法は、前記哺乳動物における神経炎症の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態15〜56のいずれか1つに記載の方法。
実施形態61:前記方法は、神経炎症の1つ以上のマーカーの減少を特徴とする神経炎症の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効であり、神経炎症の前記マーカー(複数可)は、Iba1(ミクログリア活性化のためのマーカー)、GFAP(星状細胞反応のためのマーカー)、TNF−アルファ、インターロイキン、及びTGF−ベータからなる群から選択される、実施形態60に記載の方法。
実施形態62:前記方法は、前記哺乳動物におけるニューロン喪失(神経変性)を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態15〜56、及び60〜61のいずれか1つに記載の方法。
実施形態63:前記分子ピンセットは、式I〜IV:
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
X1及びX2は、両方ともOであり、
A単独、またはX
1と組み合されたAは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
からなる群から選択される置換基を形成し、
B単独、またはX
2と組み合されたBは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
からなる群から選択される置換基を形成し、
R1、R2、R3、及びR4の各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR2、NO2、CO2H、及びCO2R5(式中、R5は、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
R1及びR2は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/または
R3及びR4は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、実施形態1〜62のいずれか1つに記載の方法。
実施形態64:A及びBは、独立して、
からなる群から選択される、実施形態63に記載の方法。
実施形態65:A及びBは、同じである、実施形態64に記載の方法。
実施形態66:A及びBは、独立して、
及び−(CH
2)
n−CO
2 −からなる群から選択され、R
5は、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである、実施形態63に記載の方法。
実施形態67:A及びBは、同じである、実施形態66に記載の方法。
実施形態68:前記分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態63〜67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態69:前記分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態63〜67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態70:前記分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態63〜67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態71:前記分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態63〜67のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72:前記分子は、式:
(TW1/CLR01)
に記載の化合物を含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態73:前記分子ピンセットは、式:
(TW2)
に記載の化合物を含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態74:前記分子ピンセットは、式:
(TW4)
に記載の化合物を含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態75:前記分子ピンセットは、式:
(TW5)
に記載の化合物を含む、実施形態63に記載の方法。
実施形態76:前記投与は、経口送達、イソフォレティック(isophoretic)送達、経皮送達、非経口送達、エアロゾル投与、吸入による投与、静脈内投与、眼投与、デポ送達、膣投与、及び直腸投与からなる群から選択される投与を介する、実施形態1〜75のいずれか1つに記載の方法。
実施形態77:前記投与は、非経口である、実施形態1〜75のいずれか1つに記載の方法。
実施形態78:前記投与は、脊髄内投与、髄腔内または硬膜外投与、硬膜下投与、皮下投与、静脈内投与、皮下埋込装置を介する投与からなる群から選択される経路から選択され、投与は、カニューレを介する、実施形態77に記載の方法。
実施形態79:前記方法は、酵素補充療法及び/または遺伝子療法と組み合わせて使用される、実施形態1〜78のいずれか1つに記載の方法。
実施形態80:前記方法は、レンチウイルス媒介性遺伝子療法、及びAAV媒介性遺伝子療法、及び遺伝子編集(例えば、CRISPR)療法からなる群から選択される遺伝子療法と組み合わせて使用される、実施形態79に記載の方法。
実施形態81:前記哺乳動物は、ヒトである、実施形態1〜80のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82:前記哺乳動物は、非ヒト哺乳動物である、実施形態1〜80のいずれか1つに記載の方法。
実施形態83:哺乳動物におけるリソソーム蓄積症の治療で使用するための、タンパク質の凝集を阻害することが可能な分子ピンセットを含む薬学的製剤。
実施形態84:哺乳動物におけるリソソーム蓄積症の治療で使用するための、タンパク質の凝集を阻害することが可能な分子ピンセット。
実施形態85:前記分子ピンセットは、アミロイドタンパク質の凝集を阻害する、実施形態83に記載の薬学的製剤または実施形態84に記載の分子ピンセット。
実施形態86:前記アミロイドタンパク質は、α−シヌクレイン、Aβ、プリオンタンパク質及びタウからなる群から選択される1つ以上のタンパク質を含む、実施形態85に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態87:前記治療は、前記リソソーム蓄積症に関連するタンパク質の蓄積/凝集の進行を遅延させ、またはその蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効である、実施形態83〜86のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態88:前記治療は、前記リソソーム蓄積症に関連する病状の1つ以上の症状を改善するのに有効である、実施形態83〜87のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態89:前記治療は、前記リソソーム蓄積症に関連する病状の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態83〜87のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態90:前記治療は、前記哺乳動物における症状の出現前の投与を含む、実施形態83〜89のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態91:前記哺乳動物は、前記リソソーム蓄積症のための遺伝子マーカーの存在によってリソソーム蓄積症を有すると同定されている、実施形態90に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態92:前記治療は、生後3ヶ月以内、または生後6ヶ月以内、または生後1年以内、または生後3年以内である、実施形態83〜89のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態93:前記リソソーム蓄積症は、神経学的障害及び/または神経変性プロセスによって特徴付けられるリソソーム蓄積症を含む、実施形態83〜92のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態94:前記リソソーム蓄積症は、ムコ多糖症(MPS)、アスパルチルグルコサミン尿症、GM1ガングリオシドーシス、クラッベ(球様細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシス)、異染性白質ジストロフィー、サンドホフ病、ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)、ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)、ニーマン−ピック病C2及びC1型、ダノン病、遊離シアル酸蓄積障害、ムコリピドーシスIV型、及び多重スルファターゼ欠損症(MSD)からなる群から選択される病状を含む、実施形態93に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態95:前記リソソーム蓄積症は、サンフィリポ症候群(MPS III)、ハーラー症候群(MPS IH)、ハーラー−シャイエ症候群(MPS I−H/S)、シャイエ症候群(MPS IS)、ハンター症候群(MPS II)、モルキオ症候群(MP IV)、マロトー−ラミー症候群(MPS VI)、スライ症候群(MPS VII)、及びMPS IXからなる群から選択されるムコ多糖症を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態96:前記ムコ多糖症は、サンフィリポ症候群(MPS III)を含む、実施形態95に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態97:1つ以上の症状の前記改善は、認知障害、鷲手、内臓巨大症、睡眠障害、運動機能の喪失、コミュニケーション能力の喪失、及び発作からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態95〜96のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態98:前記治療は、認知障害、鷲手、内臓巨大症、睡眠障害、運動機能の喪失、コミュニケーション能力の喪失、及び発作からなる群から選択される1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態95〜96のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態99:前記リソソーム蓄積症は、アスパルチルグルコサミン尿症を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態100:アスパルチルグルコサミン尿症の1つ以上の症状の改善は、発話能力の遅延または喪失、認知機能障害、発作、運動機能障害、骨粗鬆症、及び関節過可動性からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態99に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態101:前記治療は、発話能力の喪失の増大、認知機能障害の増大、発作の頻度及び/または重症度の増大、運動機能障害の増大、骨粗鬆症の増大、及び関節過可動性の増大からなる群から選択されるアスパルチルグルコサミン尿症の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態99に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態102:前記リソソーム蓄積症は、GM1ガングリオシドーシスを含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態103:GM1ガングリオシドーシスの1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、運動機能障害、肝脾腫大、骨格異常、発作、角膜の混濁、及び視力の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態102に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態104:前記治療は、認知機能障害の増大、進行性運動機能障害、進行性肝脾腫大、骨格異常の増大、発作の頻度及び/または重症度の増大、角膜の混濁の増大、及び視力の喪失の増大からなる群から選択されるGM1ガングリオシドーシスの1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態102に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態105:前記リソソーム蓄積症は、クラッベ病(球様細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシス)を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態106:クラッベ病の1つ以上の症状の改善は、被刺激性、発熱、手足のこわばり、発作、摂食困難、嘔吐、及び認知機能障害、運動機能障害、筋肉弱体化、痙縮、難聴、視神経萎縮、視神経肥大、失明、麻痺、及び嚥下時困難からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態105に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態107:前記治療は、被刺激性の増大、発熱、手足のこわばり、発作の頻度及び/または重症度の増大、摂食困難、嘔吐、認知機能障害、運動機能障害、筋肉弱体化、痙縮、難聴、視神経萎縮、視神経肥大、失明、麻痺、及び嚥下時困難からなる群から選択されるクラッベ病の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態105に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態108:前記リソソーム蓄積症は、異染性白質ジストロフィーを含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態109:大脳白質ジストロフィーの1つ以上の症状の改善は、CNS及び/または末梢神経系にわたる大脳白質ジストロフィー、認知機能障害、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態108に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態110:前記治療は、CNS及び/または末梢神経系にわたる大脳白質ジストロフィーの増大、認知機能障害、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失からなる群から選択される大脳白質ジストロフィーの1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態108に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態111:前記リソソーム蓄積症は、サンドホフ病を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態112:サンドホフ病の1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺を含む、実施形態111に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態113:前記治療は、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺からなる群から選択されるサンドホフ病の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態111に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態114:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態115:ムコリピドーシスII型の1つ以上の症状の改善は、筋緊張減弱(低血圧症)、成長障害、骨異常、後彎症、内反足、可動障害、心臓弁異常、長期または再発性呼吸器及び/または耳感染症、及び聴力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態114に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態116:前記治療は、筋緊張減弱(低血圧症)、成長障害、骨異常、後彎症、内反足、可動障害、心臓弁異常、長期または再発性呼吸器及び/または耳感染症、及び聴力喪失からなる群から選択されるムコリピドーシスII型の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態114に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態117:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態118:1つ以上の症状の改善は、関節のこわばり、脊柱側彎症、手の骨格変形(例えば、鷲手)、成長遅延、股関節の劣化、眼の角膜の混濁、軽度精神遅滞、易疲労性、手根管症候群、及び心臓疾患からなる群から選択されるムコリピドーシスIIIA型の1つ以上の症状の改善を含む、実施形態117に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態119:前記治療は、関節のこわばり、脊柱側彎症、手の骨格変形(例えば、鷲手)、成長遅延、股関節の劣化、眼の角膜の混濁、軽度精神遅滞、易疲労性、手根管症候群、及び心臓疾患からなる群から選択されるムコリピドーシスIIIA型の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態117に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態120:前記リソソーム蓄積症は、ニーマン−ピック病C2及びC1型を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態121:1つ以上の症状の改善は、脾腫、肝腫大、肝脾腫大、黄疸、認知機能障害、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、大鬱病及び心因性鬱病、随意運動の喪失、及び重度の認知症からなる群から選択されるニーマン−ピック病の1つ以上の症状の改善を含む、実施形態120に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態122:前記治療は、脾腫、肝腫大、肝脾腫大、黄疸、認知機能障害、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、大鬱病及び心因性鬱病、随意運動の喪失、及び重度の認知症からなる群から選択されるニーマン−ピック病の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態120薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態123:前記リソソーム蓄積症は、ダノン病を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態124:ダノン病の1つ以上の症状の改善は、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態123に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態125:前記治療は、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択されるダノン病の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態123に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態126:前記リソソーム蓄積症は、遊離シアル酸蓄積障害を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態127:遊離シアル酸蓄積障害の1つ以上の症状の改善は、認知機能障害、発達遅延、筋緊張減弱(低血圧症)、予期された速度での体重増加及び成長の不全(発育不全)、骨変形、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、及び心臓の肥大(心肥大)からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態126に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態128:前記治療は、認知機能障害、発達遅延、筋緊張減弱(低血圧症)、予期された速度での体重増加及び成長の不全(発育不全)、骨変形、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、及び心臓の肥大(心肥大)からなる群から選択される遊離シアル酸蓄積障害の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態126に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態129:前記リソソーム蓄積症は、ムコリピドーシスIV型を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態130:ムコリピドーシスIV型の1つ以上の症状の改善は、発達遅延、視力障害、精神運動遅延、認知機能障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、筋緊張減弱(低血圧症)、異常な筋肉硬直(痙縮)、運動機能障害、角膜の混濁、及び胃酸の生成障害(無酸症)からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態129に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態131:前記治療は、発達遅延、視力障害、精神運動遅延、認知機能障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、筋緊張減弱(低血圧症)、異常な筋肉硬直(痙縮)、運動機能障害、角膜の混濁、及び胃酸の生成障害(無酸症)からなる群から選択されるムコリピドーシスIV型の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態129に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態132:前記リソソーム蓄積症は、多重スルファターゼ欠損症(MSD)を含む、実施形態94に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態133:多重スルファターゼ欠損症の1つ以上の症状の改善は、大脳白質ジストロフィー、脊柱側彎症、肝脾腫大、精神運動発達退行)、及び魚鱗癬からなる群から選択される1つ以上の症状の改善を含む、実施形態132に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態134:前記治療は、大脳白質ジストロフィー、脊柱側彎症、肝脾腫大、精神運動発達退行)、及び魚鱗癬からなる群から選択される多重スルファターゼ欠損症の1つ以上の症状の進行を遅延させ、停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態132に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態135:1つ以上の症状の前記改善は、神経炎症の減少を含む、実施形態93〜134のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態136:神経炎症の前記減少は、神経炎症の1つ以上のマーカーの減少を含み、神経炎症の前記マーカー(複数可)は、Iba1(ミクログリア活性化のためのマーカー)、GFAP(星状細胞反応のためのマーカー)、TNF−アルファ、インターロイキン、及びTGF−ベータからなる群から選択される、実施形態135に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態137:1つ以上の症状の前記改善は、ニューロン喪失(神経変性)の減少を含む、実施形態93〜136のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態138:治療は、前記哺乳動物における神経炎症の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態93〜134のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態139:前記治療は、神経炎症の1つ以上のマーカーの減少を特徴とする神経炎症の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効であり、神経炎症の前記マーカー(複数可)は、Iba1(ミクログリア活性化のためのマーカー)、GFAP(星状細胞反応のためのマーカー)、TNF−アルファ、インターロイキン、及びTGF−ベータからなる群から選択される、実施形態138に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態140:前記治療は、前記哺乳動物におけるニューロン喪失(神経変性)を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である、実施形態93〜134、及び138〜139のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態141:前記分子ピンセットは、式I〜IV:
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、またはプロドラッグ(式中、
X1及びX2は、両方ともOであり、
A単独、またはX
1と組み合されたAは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
からなる群から選択される置換基を形成し、
B単独、またはX
2と組み合されたBは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
からなる群から選択される置換基を形成し、
R1、R2、R3、及びR4の各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR2、NO2、CO2H、及びCO2R5(式中、R5は、は、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、または
R1及びR2は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/または
R3及びR4は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)のいずれか1つに記載の分子ピンセットである、実施形態83〜140のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態142:A及びBは、独立して、
からなる群から選択される、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態143:A及びBは、同じである、実施形態142に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態144:A及びBは、独立して、
、及び
−(CH
2)
n−CO
2 −(式中、R
5は、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである)からなる群から選択される、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態145:A及びBは、同じである、実施形態144に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態146:前記分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態141〜145のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態147:前記分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態141〜145のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態148:前記分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態141〜145のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態149:前記分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である、実施形態141〜145のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態150:前記分子ピンセットは、式:
(TW1/CLR01)
に記載の化合物を含む、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態151:前記分子ピンセットは、式:
(TW2)
に記載の化合物を含む、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態152:前記分子ピンセットは、式:
(TW4)
に記載の化合物を含む、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態153:前記分子ピンセットは、式:
(TW5)
に記載の化合物を含む、実施形態141に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態154:治療は、経口送達、イソフォレティック送達、経皮送達、非経口送達、エアロゾル投与、吸入による投与、静脈内投与、眼投与、デポ送達、膣投与、及び直腸投与からなる群から選択される経路を介する前記哺乳動物への前記分子ピンセットの投与を含む、実施形態84〜153のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態155:治療は、非経口投与を含む、実施形態83〜153のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態156:前記投与は、脊髄内投与、髄腔内または硬膜外投与、硬膜下投与、皮下投与、静脈内投与、皮下埋込装置を介する投与からなる群から選択される経路から選択され、投与は、カニューレを介する、実施形態155に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態157:前記哺乳動物は、ヒト哺乳動物である、実施形態83〜156のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態158:前記哺乳動物は、非ヒトである、実施形態83〜156のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態159:前記治療は、酵素補充療法及び/または遺伝子療法と組み合わせて使用される、実施形態83〜158のいずれか1つに記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
実施形態160:治療は、レンチウイルス媒介性遺伝子療法、及びAAV媒介性遺伝子療法、及び遺伝子編集(例えば、CRISPR)療法からなる群から選択される遺伝子療法と組み合わせて使用される、実施形態159に記載の薬学的製剤または分子ピンセット。
所定の実施形態では、本明細書で提供される方法で使用される分子ピンセットは、TW3を明白に除外する。所定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して治療された対象は、Aβ、タウ、及びα−シヌクレインからなる群から選択されるタンパク質の凝集を特徴とする病状を有すると診断されず及び/またはその治療下にない。所定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して治療された対象は、アルツハイマー病、アミロイド媒介性軽度認知障害(MCI)、脳または脊髄損傷(脳卒中を含むがこれに限定されない)、ハンチンチン病、及びパーキンソン病からなる群から選択される病態を有すると診断されず及び/またはその治療下にない。
定義
分子ピンセットは、ゲスト分子を結合させることが可能な開口キャビティを有するホスト分子である(例えば、Hardouin−Lerouge et al.(2011)Chem.Soc.Rev.40:30−43を参照されたい)。分子ピンセットの開口キャビティは、水素結合、金属配位、疎水性力、ファンデルワールス力、π−π相互作用、及び/または静電作用のうちの1つ以上を含み得る非共有結合を使用してゲストを結合させ得る。これらの複合体は、大環状分子受容体のサブセットとみなすことができ、それらの典型的な構造は、それらの間にゲスト分子を結合させ、かつ一端でのみ接続されてこれらの分子の所定の柔軟性をもたらす2つの「腕部」を特徴とする(誘導フィットモデル)。
用語「対象」、「個体」、及び「患者」は、互換的に使用され得、ヒト、及び非ヒト哺乳動物(例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、ウシ、有蹄動物、ウサギ目類など)を指し得る。様々な実施形態では、対象は、外来患者、または他の臨床的文脈としての、病院における医師または他の医療労働者のケア下にあるヒト(例えば、成人男性、成人女性、思春期の男性、思春期の女性、男児、女児)であり得る。所定の実施形態では、対象は、医師または他の医療労働者のケアまたは処方下にない場合がある。
本明細書で使用される場合、語句「それを必要とする対象」は、以下に記載されるように、リソソーム蓄積障害に罹患しているか、またはリソソーム蓄積障害に罹患するリスクがある(例えば、遺伝子及び/または代謝マーカーによって示される)対象を指す。
用語「治療」、「治療すること」、または「治療する」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されているようなリソソーム蓄積症の症状または病状に対して所望の効果をもたらす作用を指し、治療されている疾患または病態の1つ以上の症状及び/または1つ以上の測定可能なマーカーの最小限の変化または好転でさえも含み得るがこれらに限定されない。「治療」、「治療すること」、または「治療する」は、必ずしも疾患もしくは病態、またはそれに付随する症状の完全な根絶または治癒を示すものではない。一実施形態では、治療は、治療されている疾患の少なくとも1つの症状の好転を含む。好転は、部分的または完全であり得る。この治療を受ける対象は、それを必要とする任意の対象である。臨床的な好転の例示的なマーカーは、当業者に明らかとなる。
「有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。本明細書に記載の分子ピンセットまたはその製剤の「治療的有効量」は、特定の疾患、疾患状態、年齢、性別、及び個体の体重、ならびに個体における所望の反応を誘発させるための治療の能力などの要因に応じて異なり得る。治療的有効量はまた、治療の有毒または有害な作用が実質的に存在しないか、または治療的に有益な効果に勝るものである。用語「治療的有効量」は、哺乳動物(例えば、患者)におけるリソソーム蓄積障害を「治療する」のに有効である、本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットまたはそれを含む組成物の量を指す。一実施形態では、治療的有効量は、リソソーム蓄積障害に関連する少なくとも1つの症状を好転させるのに十分な量である。
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するために、例えば、疾患の発症を遅延または停止させるか、または疾患の1つ以上の症状の発症を遅延または停止させるために必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の症状の出現前に投与される。
用語「軽減すること」または「改善すること」は、症状に関して使用される場合、その病状の1つ以上の症状の減少または除去を指す。
本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与すること」は、導入すること、例えば、化合物または組成物を対象に導入することを意味する。その用語は、任意の特定の送達様式に限定されず、例えば、皮下送達、静脈内送達、筋肉内送達、嚢内送達、注入技術による送達、経皮送達、経口送達、経鼻送達、及び直腸送達を含み得る。さらに、送達経路に応じて、投与は、例えば、ヘルスケア専門家(例えば、医師、看護師など)、薬剤師、または対象(例えば、自己投与)を含む様々な個人によって実施され得る。
リソソーム蓄積症、特に神経学的リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソーム機能不全を特徴とする複雑な病状を有する遺伝性障害である。証拠の増加により、LSDにおけるリソソーム分解の低下は、タンパク質の恒常性を損ない、これにより、一方で理解が不十分であるメカニズムによって神経変性プロセスを駆動することが示されている。最近、本発明者は、いくつかのLSDモデルにおいてα−シヌクレインが神経細胞の周核体において蓄積し、これにより、機能喪失メカニズムによる神経変性に寄与していることを見出した。本明細書に記載されているように、α−シヌクレイン凝集体は、アミロイド沈着物の一部であり、それはまた、リソソーム病状の悪化を介して毒素獲得機能を発揮し得る。
また、本発明者は、アミロイド沈着は、実際に、LSD脳病状の一般的な特徴であることを見出した。そのようなアミロイド包含物は、α−シヌクレインと共に、プリオンタンパク質、タウ、アミロイドβペプチド及びプリオンタンパク質などの他のアミロイド生成性タンパク質を含有する。これらのアミロイドの大部分は、リソソーム区画内に集結し、ここでそれらは、リソソームの肥大及び機能不全を悪化させ、これにより神経変性表現型の発症を後押しする。本明細書で実証されるように、重度の神経変性LSDのマウスモデルにおいてアミロイド沈着を阻害することは、リソソーム病状を緩和し、これによりリソソーム分解を改善し、神経病理学的徴候を改善する。
まとめると、これらのデータは、リソソーム脳疾患の根底にあるメカニズムに新たな光を当て、これによりLSDをアミロイド障害の新たなクラスとして同定し、それらの治療のための新たな治療選択肢を切り開く。
また、PCT公開番号第WO2010102248号に記載されているものなどの分子ピンセットが、LSDにおいてニューロン喪失を減弱させ、炎症を減少させることが可能であることは驚くべき発見であり、これによりLSD、特に神経学的障害を有するLSDのための新規な治療を提供する。
したがって、様々な実施形態では、リソソーム蓄積症の治療または予防のための方法が提供される。所定の実施形態では、その方法は、治療的有効量及び/または予防的有効量の1つ以上の分子ピンセットを、それを必要とする対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与することを含む。所定の実施形態では、「それを必要とする」対象は、リソソーム蓄積症と診断された対象(例えば、症状のある対象)またはリソソーム蓄積症の「リスクがある」と決定された対象(例えば、リソソーム蓄積症の1つ以上の遺伝子マーカーまたは生化学的マーカーを有すると同定された無症状の対象)を含む。典型的には、分子ピンセットは、タンパク質の凝集を阻害する分子ピンセットである。所定の実施形態では、分子ピンセットは、アミロイドタンパク質(例えば、α−シヌクレイン、Aβ、及びタウからなる群から選択される1つ以上のタンパク質)の凝集を阻害する分子ピンセットであり得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、前記リソソーム蓄積症に関連する蓄積/凝集の進行を遅延させ、またはその蓄積/凝集を停止させ、もしくは逆行させるのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、治療的であり、リソソーム蓄積症に関連する病状の1つ以上の症状を改善するのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、治療的であり、リソソーム蓄積症に関連する病状の進行を遅延させ、または停止させ、または逆行させるのに有効である。所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、予防的であり、リソソーム蓄積症の発症を遅らせもしくは停止させるのに、またはリソソーム蓄積症の1つ以上の症状の発症を遅らせもしくは停止させるのに有効である。
リソソーム蓄積症の治療及び/または予防のための分子ピンセット.
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な分子ピンセット(複数可)は、1つ以上のタンパク質の凝集を阻害及び/または調節すること、及び/またはタンパク質線維または他のタンパク質凝集体の解離を促進すること、またはその両方が可能であり得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、1つ以上のアミロイド生成性タンパク質(例えば、α−シヌクレイン、Aβ、タウなどのうちの1つ以上)の凝集を阻害及び/または調節すること、及び/またはアミロイドタンパク質線維または他のアミロイドタンパク質凝集体の解離を促進すること、またはその両方が可能である。
所定の例示的であるが非限定的な実施形態では、リソソーム蓄積症を有する対象の分子ピンセットでの治療は、ニューロンの生存、及び/またはニューロンの再生、及び/またはリソソーム蓄積症の結果として死滅する可能性の高い細胞における他の成果を好転させ得る。異なる細胞の種類または細胞群は、様々な効力または様々な反応で分子ピンセットでの治療に反応し得る。治療の成果はまた、機能回復のいくつかの側面を含む全身または生体レベルで観察され得る。
分子ピンセットの例は、当該技術分野、例えば、国際公開番号WO2010/102248(US2012/0108548としても公開されている)において知られており、これはその全体が、特にそこに記載されている分子ピンセットについて参照により本明細書に組み込まれる(特にその表2を参照されたい)。
本明細書に記載の方法において有用な例示的な分子ピンセットは、式I、II、III、及びIV:
、またはその薬学的に許容可能な塩、エステル、アミド、クラスレート、またはプロドラッグ(式中、X
1及びX
2は、両方ともOであり、A単独、またはX
1と組み合されたAは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート、及び
からなる群から選択される置換基を形成し、B単独、またはX
2と組み合されたBは、ホスフェート、リン酸水素、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、アルキルホスファミド、アリールホスファミド、スルフェート、水素スルフェート、アルキルカルボキシレート及び
からなる群から選択される置換基を形成し、R
1、R
2、R
3、及びR
4の各々は、独立して、H、Cl、Br、I、OR、NR
2、NO
2、CO
2H、及びCO
2R
5(式中、R
5は、アルキル、アリールまたはHである)からなる群から選択され、またはR
1及びR
2は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成し、及び/またはR
3及びR
4は、組み合わさって脂肪族または芳香族環を形成する)
のいずれか1つに記載の分子ピンセットであり得る。
所定の実施形態では、A及びBは、独立して、
からなる群から選択される。所定の実施形態では、A及びBは同じである。所定の実施形態では、A及びBは、独立して、
、及び−(CH
2)
n−CO
2 −(式中、R
5は、アルキルまたはHであり、nは、1〜10の範囲であり、Arは、アリールである)からなる群から選択される。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、式Iに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IIIに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式IVに記載の分子ピンセットまたはその薬学的に許容可能な塩である。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
(TW1/CLR01)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
(TW2)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
(TW4)に記載の化合物を含む。所定の実施形態では、分子ピンセットは、式:
(TW5)に記載の化合物を含む。
他の分子ピンセットは当該技術分野で知られており、本明細書で提供される教示を使用して、本明細書に記載の方法で使用するのに十分に好適な分子ピンセットは当業者に容易に利用可能となる。
分子ピンセットの合成
分子ピンセットは、当業者に知られている多数の方法のいずれかに従って合成され得る(例えば、Zimmerman et al.(1991)J.Am.Chem.Soc.113:183−196を参照れたい)。分子ピンセットTW1(すなわち、CLR01)、TW2、及びTW3の合成は、以下に記載されている(PCT出願第PCT/US2010/026419号も参照されたい)。
1つの例示的であるが、非限定的な実施形態では、テトラメチレン−架橋分子ピンセットの骨格(ピンセットTW1(すなわち、CLR01)及びTW2の出発物質)は、ジエンとしてのエキソ−5,6−ビスメチレン−2,3−ベンゾノルボルネンとビスジエネオフィルとしてのビスノルボルナジエノベンゼンとのディールス・アルダー反応の繰り返しによって構築され得る。(1:2)のDDQとのディールス・アルダー環化付加物におけるシクロヘキセン環の後続の酸化的脱水素が分子ピンセットをもたらす(Klarner et al. (1999)Chem. Eur. J.5:1700−1707;Klarner et al.(2001)Tetrahedron,57:3573−3687;Klarner et al.(2004)Eur. J.Org.Chem.7:1405−1423;Klarner et al.(2008)Synthesis of molecular tweezers and clips by the use of a molecular Lego set and their supramolecular functions,Chapter 4:99−153,in Strategies and Tactics in Organic Synthesis,Vol.7(ed. Harmata,M.),Academic Press,Elsevier,Amsterdam)。
関連するジメチレン−架橋分子クリップの骨格は、ジエンとしてのジブロモ−o−キノジメタン誘導体及び同じビスジエノフィルを使用するピンセットの合成と類似して、ディールス・アルダー反応の繰り返しによって合成され得る。この場合、(1:2)ディールス・アルダー環化付加体におけるHBr除去が、ワンポット反応で分子クリップにつながる形成の条件下で生じる。
1つの例示的な実施形態では、ビスジエノフィルは、TW3型のピンセットの合成のための出発物質である。それらの調製は、ノルボルナジエノキノンを生成するワンポット反応から開始する。1,3−シクロペンタジエンのp−ベンゾキノンへのディールス・アルダー環化付加は、既知の(1:1)付加体をもたらし、これはトリエチルアミンの存在下で対応するヒドロキノンに異性化し、これはその後、過剰のp−ベンゾキノンで酸化される。得られたキノンは、−78℃で1,3−シクロペンタジエンと容易に反応し、ほぼ定量的にsyn及びantiディールス・アルダー付加体の(60:40)混合物をもたらし、これはトルエンからの再結晶によって容易に分離され得る。無水酢酸の存在下での塩基性条件下では、syn付加体は、TW3の出発物質である、対応するジアセトキシ置換ビスジエノフィルに変換される。
中央のベンゼン環におけるメタンホスホネートまたはホスフェート基によって置換されたピンセットTW1−3は、対応するジアセトキシ誘導体の還元的または塩基性エステル加水分解と、それに続くヒドロキノンのMePOCl2及びPOCl3それぞれでのエステル化によって調製された。水酸化リチウムを用いたメタンホスホン酸またはリン酸誘導体の加水分解及び中和は、所望のメタンホスホン酸塩またはリン酸塩をもたらす(Fokkens et al.(2005)Chem.Eur. J.11:477−494;Schrader et al.(2005)J.Org.Chem.70:10227−10237;Talbiersky et al.(2008)J.Am.Chem.Soc.130:9824−9828)。
TW−2の合成は、Fokkens et al.(2005)J.Am.Chem.Soc.27(41):14415−14421に記載されているのに対し、様々な他の分子ピンセット(切断バリアントを含む)の合成は、Klarner et al.(2006)J.Am.Chem.Soc.128(14):4831−4841に記載されている。そこに記載されている方法は、他の分子ピンセットを合成するために容易に改変され得る。これらの方法は、本発明の他の分子ピンセットを調製するために容易に適応または改変され得る。
分子ピンセットの製剤化及び投与
いくつかの例では、裸の、すなわち、本来の形態の分子ピンセットの送達は、細胞内の標的タンパク質の凝集を阻害するのに十分であり得る。様々な実施形態では、分子ピンセットは、塩、エステル、アミド、クラスレート、または誘導体が薬理学的に有効である(例えば、タンパク質の凝集を阻害する、例えば、所定の実施形態では、α−シヌクレイン、Aβ、及び/またはタウのうちの1つ以上の凝集を阻害することが可能である)限り、塩、エステル、アミド、クラスレート、誘導体などの形態で投与され得る。所定の実施形態では、必要とする対象に投与すると、直接的にまたは間接的に分子ピンセットを提供することが可能な本明細書に記載の分子ピンセットのプロドラッグまたは他の付加物もしくは誘導体が利用され得る。
所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセット(またはそのプロドラッグ、薬学的に許容可能な塩、薬学的に許容可能なエステル、薬学的に許容可能なアミド、プロドラッグ、または他の薬学的に許容可能な誘導体)の任意の1つ以上を含み、かつ薬学的に許容可能な担体を任意に含む薬学的組成物が提供される。所定の実施形態では、これらの組成物は任意に、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。所定の実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、それを必要とする患者に1つ以上の他の治療剤の投与と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書に記載の分子ピンセットを有する薬学的組成物での共同投与または包含のための追加の治療剤は、同じまたは関連する適応症を治療するために承認された薬剤であり得るか、またはそれはリソソーム蓄積症に関連する障害のために食品医薬品局で承認中の多数の薬剤のうちのいずれか1つであり得る。
分子ピンセットの塩、エステル、アミド、クラスレート、プロドラッグ及び他の誘導体は、合成有機化学の技術分野で知られている標準的な手順を使用して調製され得る。例えば、所定の実施形態では、分子ピンセットの薬学的に許容可能な塩の形態が企図される。本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容可能な塩」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などを伴わずに、ヒト及び下級動物の組織と接触して使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合ったそれらの塩を指す。アミン、カルボン酸、及び他の種類の化合物の薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Berge,et al.(1977)J.Pharmaceutical Sciences,66:1−19は、薬学的に許容可能な塩を詳細に記載している。塩は、活性剤(例えば、分子ピンセット)の最終的な単離及び精製中にその場で調製され得るか、または以下に一般に記載されるように、遊離塩基または遊離酸機能を好適な試薬と反応させることによって別々に調製され得る。例えば、遊離塩基機能は、好適な酸と反応され得るか、または遊離酸機能は、好適な遊離塩基と反応され得る。さらに、化合物(分子ピンセットなど)が酸性部位であるか、またはそれを有する場合、その好適な薬学的に許容可能な塩には、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、または銅の塩などの金属塩;水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなど;及びアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムまたはマグネシウムの塩が含まれ得る。
薬学的に許容可能な非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸を用いて、またはイオン交換などの当該技術分野で使用されている他の方法を使用することによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容可能な塩には、適切な場合には、非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、及びハライド、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ナイトレート、低級アルキルスルホネート及びアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成されるアミンカチオンが含まれる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の化合物は、「薬学的に許容可能なエステル」として製剤化され得る。所定の実施形態では、好適なエステルには、in vivoで加水分解するエステルが含まれるがこれに限定されず、人体で容易に分解して親化合物またはその塩を残すものが含まれる。好適なエステル基には、薬学的に許容可能な脂肪族カルボン酸、特にアルカノン、アルケノン、シクロアルカン及びアルカンジオン酸に由来するものであって、各アルキルまたはアルケニル部位が有利には、6個以下の炭素原子を有するものが含まれるがこれらに限定されない。特定のエステルの例には、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、アクリレート及びエチルスクシネートが含まれるがこれらに限定されない。
エステルの調製は、例えば、分子ピンセットの分子構造内に存在するヒドロキシル基及び/またはカルボキシル基の官能化を含み得る。所定の実施形態では、エステルは、遊離アルコール基のアシル置換誘導体、すなわち、式RCOOH(式中、Rはアルキルであり、好ましくは低級アルキルである)のカルボン酸に由来する部位である。エステルは、所望の場合、従来の水素化分解または加水分解の手順を使用することによって遊離酸に再変換され得る。
アミドもまた、当該技術分野で知られている技術を使用して調製され得る。例えば、アミドは、好適なアミン反応物を使用して調製され得るか、またはアンモニアまたは低級アルキルアミンとの反応によって無水物または酸塩化物から調製され得る。
様々な実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットの任意の1つ以上は、薬理学的組成物(薬学的製剤)を形成するために薬学的に許容可能な担体(賦形剤)と組み合わせて使用され得る。所定の薬学的に許容可能な担体は、例えば、組成物を安定化する、分子ピンセットの吸収を増加もしくは減少させる、または血液脳関門の侵入を改善する(適切な場合)ために作用する1つ以上の生理学的に許容可能な化合物(複数可)を含有し得る。生理学的に許容可能な化合物には、例えば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、保護及び取り込み向上剤(例えば、脂質)、活性剤のクリアランスまたは加水分解を減少させる組成物、または賦形剤または他の安定化剤及び/または緩衝液が含まれ得る。他の生理学的に許容可能な化合物、特に錠剤、カプセル、ゲルキャップなどの調製において使用されるものには、結合剤、希釈剤/充填剤、崩壊剤、滑沢剤、懸濁剤などが含まれるがこれらに限定されない。所定の実施形態では、薬学的製剤は、分子ピンセットの送達または効力を増強し得る。
様々な実施形態では、本明細書に記載の分子ピンセットは、非経口、局所、経口、経鼻(またはそうでなければば吸入)、直腸、または部分的投与のために調製され得る。投与は、例えば、経皮的に、またはエアロゾルによって行われ得る。
本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物は、投与方法に応じて様々な単位投薬形態で投与され得る。好適な単位投薬形態には、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、ロゼンジ、坐剤、パッチ、鼻スプレー、注射剤、埋込可能な持続放出製剤、及び脂質複合体が含まれるがこれらに限定されない。
所定の実施形態では、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトールなど)、任意の崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンなど)、結合剤(例えば、アルファ−デンプン、アラビアガム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリンなど)、または任意の滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)が分子ピンセットに添加され得、得られた組成物は圧縮されて経口投薬形態(例えば、錠剤)が製造され得る。特定の実施形態では、圧縮生成物は、例えば、圧縮製品の味を隠すため、圧縮製品の腸溶解を促進するため、または分子ピンセットの持続放出を促進するためにコーティングされ得る。好適なコーティング物質には、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びEudragit(Rohm & Haas、Germany;メタクリル−アクリルコポリマー)が含まれるがこれらに限定されない。
1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物に含まれ得る他の生理学的に許容可能な化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤または微生物の成長または作用を防止するのに特に有用な防腐剤が含まれ得る。様々な防腐剤はよく知られており、例えば、フェノール及びアスコルビン酸を含む。生理学的に許容可能な化合物を含む薬学的に許容可能な担体(複数可)の選択は、例えば、分子ピンセットの投与経路及び分子ピンセットの特定の生理化学的特徴に依存する。
所定の実施形態では、1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物で使用するための1つ以上の賦形剤は、無菌である場合があり及び/または不要の物質を実質的に含まない場合がある。そのような組成物は、当該技術分野で知られている従来の技術によって滅菌され得る。錠剤及びカプセルなどの様々な経口投薬形態の賦形剤については、滅菌は必要とされない。標準は、当該技術分野で知られており、例えば、USP/NF標準である。
本明細書に記載されているような1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的組成物は、投薬量、必要とされる投与頻度、ならびに投薬量及び投薬頻度に関して薬学的組成物についての対象の既知または予想される耐性に応じて単回または複数回の投与で投与され得る。様々な実施形態では、組成物は、対象におけるリソソーム蓄積症を効果的に治療する(その1つ以上の症状を改善する)(例えば、細胞障害または細胞死(例えば、神経変性及び/または神経炎症)を減少させ、ニューロン活性を好転させる)のに十分な量の分子ピンセットを提供し得る。
いくつかの実施形態では、分子ピンセットは、リソソーム蓄積症と診断された対象(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与される。所定の実施形態では、そのような対象は、リソソーム蓄積症の1つ以上の症状を示している。所定の実施形態では、分子ピンセットは、無症状ではあるが、リソソーム蓄積症の「リスクがある」と同定された対象(例えば、リソソーム蓄積症の1つ以上の遺伝子または代謝マーカーを有する対象)に投与される。所定の実施形態では、分子ピンセットは、乳児に投与される。所定の実施形態では、分子ピンセットは、リソソーム蓄積症の症状の出現前(例えば、ヒトの場合は、治療されているリソソーム蓄積症に応じて、生後3ヶ月以内、または生後6ヶ月以内、または生後1年以内、または生後2年以内、または生後3年以内、または生後4年以内、または生後5年以内、または生後6年以内、または思春期前など)に対象に投与される。
対象に投与される分子ピンセットの量及び/または濃度は、広く変わり得、典型的には、主に分子ピンセットの活性及び対象の特徴、例えば、種及び体重、ならびに特定の投与様式及び対象のニーズに基づいて選択される。所定の実施形態では、分子ピンセットの投薬量は、0.001〜約50mg/kg/日またはそれ以上であり得る。例えば、分子ピンセットの投薬量は、約0.001、0.01、0.1、1、5、10、20、30、40、もしくは50mg/kg/日またはそれ以上であり得る。所定の実施形態では、典型的な投薬量は、約1mg/kg/日〜約3mg/kg/日、約3mg/kg/日〜約10mg/kg/日、約10mg/kg/日〜約20.0mg/kg/日、または約20mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。所定の実施形態では、投薬量は、約10mg/kg/日〜約50mg/kg/日の範囲である。所定の実施形態では、投薬量は、1日2回で経口で与えられる約20mg〜約50mgの範囲である。投薬量は、特定の対象または対象の群における治療及び/または予防レジメンを最適化するために変化し得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、例えば、ロゼンジ、エアロゾルスプレー、口腔洗浄、被覆スワブ、または当該技術分野で知られている他のメカニズムの使用によって口腔内に投与される。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、当該技術分野で知られている標準的な方法に従って全身的に(例えば、経口で、または注射剤として)投与され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、経皮薬物送達システム、すなわち、経皮「パッチ」を使用して皮膚を通して送達され得、そのパッチでは、分子ピンセットは典型的には、皮膚に貼付される薬物送達装置として機能する積層構造内に含有されている。そのような構造では、薬物組成物は典型的には、上部裏地層の下にある層、またはリザーバー内に含有されている。経皮パッチのリザーバーは、最終的に皮膚の表面への送達のために利用可能な量の分子ピンセットを含む。よって、リザーバーは、例えば、パッチの裏地層上の接着剤中に、または当該技術分野で知られている様々な異なるマトリックス製剤のいずれかの中に、本発明の分子ピンセットを含み得る。パッチは、単一のリザーバーまたは複数のリザーバーを含有し得る。
例示的であるが非限定的である1つの経皮パッチの実施形態では、リザーバーは、薬物送達中にシステムを皮膚に貼付する機能をする薬学的に許容可能な接触接着剤物質のポリマーマトリックスを含み得る。好適な皮膚接触接着剤物質の例には、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、及びポリウレタンが含まれるがこれらに限定されない。代替的に、分子ピンセット含有リザーバー及び皮膚接触接着剤は、リザーバーの下にある接着剤を有する別個の区別された層として存在し、そのリザーバーは、この場合、上述したようなポリマーマトリックス、液体もしくはヒドロゲルリザーバー、または当該技術分野で知られている別の形態のリザーバーのいずれかであり得る。装置の上面として機能するこれらの積層体の裏地層は、好ましくは、パッチの主要な構造要素として機能し、装置に実質的な部分の柔軟性を提供する。裏地層のために選択される物質は好ましくは、分子ピンセットに対して、及び存在する任意の他の材料に対して実質的に不透過性である。
局所送達のための追加の製剤には、軟膏、ゲル、スプレー、流体、及びクリームが含まれるがこれらに限定されない。軟膏は、典型的にはワセリンまたは他の石油誘導体をベースとする半固体調製物である。分子ピンセットを含むクリームは典型的には、粘性のある液体または半固体エマルション、例えば、水中油または油中水エマルションである。クリームベースは典型的には、水で洗浄可能であり、油相、乳化剤、及び水相を含む。クリームベースの時に「内」相と呼ばれる油相は一般に、ワセリン及び脂肪アルコール、例えば、セチルアルコールまたはステアリルアルコールで構成され;水相は通常、必ずしもそうではないが、体積が油相を超え、一般に保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は一般に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性界面活性剤である。使用される特定の軟膏またはクリームベースは、当該技術分野に従って最適な薬物送達を提供するように選択され得る。他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏ベースは、不活性、安定、非刺激性、及び非増感性であり得る。
様々なバッカル及び舌下製剤も企図される。
所定の実施形態では、分子ピンセットの投与は、非経口であり得る。非経口投与には、例えば、脊髄内、髄腔内、硬膜外、硬膜下、皮下、または静脈内投与が含まれ得る。非経口投与の手段は、当該技術分野で知られている。特定の実施形態では、非経口投与には、皮下に埋め込まれた装置が含まれ得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットを脳及び/または中枢神経系(CNS)に送達することが所望であり得る。系投与を含む所定の実施形態では、これは、分子ピンセットが血液脳関門を通過することを必要とし得る。様々な実施形態では、これは、血液脳関門を越えて分子ピンセットを運搬し得るカチオン性デンドリマーまたはアルギニンリッチペプチドなどの担体分子と分子ピンセットを共投与することによって促進され得る。
所定の実施形態では、分子ピンセットは、生体適合性放出システム(例えば、リザーバー)の埋め込みによる投与によって、埋め込まれたカニューレによる直接投与によって、埋め込まれたもしくは部分的に埋め込まれた薬物ポンプ、または当該技術分野で知られている同様の機能のメカニズムによる投与によって脳に直接送達され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、全身的に投与され得る(例えば、静脈内に注射され得る)。所定の実施形態では、分子ピンセットは、血液脳関門を通る輸送を増強するために薬学的組成物に含まれる追加の化合物を使用することなく、血液脳関門を通って輸送されることが予期される。
所定の実施形態では、1つ以上の分子ピンセットは、濃縮物として、例えば、所定体積の水、アルコール、過酸化水素、または他の希釈剤に希釈または添加する準備がされている保存容器または可溶性カプセル内で提供され得る。濃縮物は、特定の量の分子ピンセット及び/または特定の総体積を提供するように設計され得る。濃縮物は、投与前に特定の体積の希釈剤での希釈のために製剤化され得る。
他の好適な製剤及び投与様式が知られているか、または当該技術分野から導かれ得る。
本発明の分子ピンセットは、それを必要とする哺乳動物、例えば、リソソーム蓄積症を有するかまたはそのリスクがあると診断された哺乳動物に投与され得る。所定の実施形態では、分子ピンセットは、1つ以上のタンパク質(例えば、1つ以上のアミロイド生成性タンパク質、例えば、α−シヌクレイン、Aβ、及び/またはタウ)の凝集を阻害するために投与され得る。本発明の分子ピンセットは、リソソーム蓄積症の1つ以上の症状を軽減するために投与され得る。
本発明の薬学的組成物の治療的有効用量は、対象の年齢、対象の性別、対象の種、特定の病状、症状の重症度、及び対象の健康の全般的状態に依存し得る。
本明細書に記載の薬学的組成物は、動物への投与に、例えば、獣医学的使用に好適であり得る。本明細書に記載の方法の所定の実施形態は、非ヒト生物、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウマ、ネコ、ブタ、有蹄動物、ウサギ目類、または他の脊椎動物などの非ヒト哺乳動物への本発明の薬学的組成物の投与を含み得る。様々な実施形態では、薬学的組成物は、ヒトへの投与に好適である。
分子ピンセットでの治療のためのリソソーム蓄積症.
様々な実施形態では、分子ピンセットは、リソソーム蓄積症(LSD)の治療または予防のための1つ以上の分子ピンセットとして対象(例えば、それを必要とする哺乳動物)に投与される。所定の実施形態では、リソソーム蓄積症は、神経病理学的関連症及びその結果としての神経学的障害を有するLSDを含む。
リソソーム蓄積症(LSD)は、リソソーム機能における欠陥に起因する約70の先天性代謝障害の群である。リソソームは、大きな分子を消化する酵素を含有し、かつリサイクルのために細胞の他の部分に断片を渡す細胞内区画である。このプロセスは、いくつかの重要な酵素を必要とし、これらの酵素のうちの1つ以上が、例えば、変異により欠陥している場合、大きな分子が細胞内に蓄積し、最終的にそれを死滅させる。
リソソーム蓄積障害は、通常は脂質、糖タンパク質、またはいわゆるムコ多糖類の代謝に必要とされる単一の酵素の欠損の結果としてリソソームの機能不全によって引き起こされる。個々には、LSDは、1:100,000未満の発生率で生じるが、群としては、発生率は、約1:5,000〜1:10,000である(例えば、Meikle et al.(1999)JAMA,281(3):249−254を参照されたい)。これらの障害のほとんどは、ニーマン−ピック病のC型などの常染色体劣性遺伝病であるが、いくつかは、ファブリー病及びハンター症候群(MPS II)などのX連鎖性劣性遺伝病である。
リソソーム障害は通常、特定のリソソーム酵素が少なすぎる量で存在するか、または完全に欠いている場合に誘発される。これが起こると、分解及びリサイクルのために運命づけられた過剰な生成物が細胞内に蓄積される。
他の遺伝性障害のように、個体は、それらの親からリソソーム蓄積症を受け継ぐ。各々の障害は、酵素活性の欠損となる異なる遺伝子変異に起因するが、それらはすべて、一般的な生化学的特徴を共有している−すべてのリソソーム障害は、リソソーム内の物質の異常な蓄積に由来する。
LSDは大部分が小児に影響を及ぼし、彼らはしばしば、若くて予測できない年齢で、多くは生後数ヶ月または数年以内に死亡する。多くの他の小児が、それらの特定の障害の様々な症状に何年も苦しんだ後、この疾患で死亡する。
LSDは一般に、関与する一次蓄積物質の特質によって分類され、次のものに大別され得る:1)脂質蓄積障害、主にスフィンゴリピドーシス(ゴーシェ及びニーマン−ピック病を含む);2)ガングリオシドーシス(テイ−サックス病を含む;3)白質ジストロフィー;4)ムコ多糖症(ハンター症候群及びハーラー病を含む);5)糖タンパク質蓄積障害;及び6)ムコリピドーシス。
所定の実施形態では、リソソーム蓄積症には、スフィンゴリピドーシス、セラミダーゼ(例えば、ファーバー病、クラッベ病)、ガラクトシアリドーシス、アルファ−ガラクトシダーゼ(例えば、ファブリー病(アルファ−ガラクトシダーゼA)、シンドラー病(アルファ−ガラクトシダーゼB))、ベータ−ガラクトシダーゼ(例えば、GM1ガングリオシドーシス、GM2ガングリオシドーシス、サンドホフ病、テイ−サックス病)を含むガングリオシドーシス、グルコセレブロシドーシス(例えば、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、スフィンゴミエリナーゼ(例えば、リソソーム酸リパーゼ欠損症、ニーマン−ピック病)、スルファチドーシス(例えば、異染性白質ジストロフィー、多重スルファターゼ欠損症)、ムコ多糖症(例えば、I型(MPS I(ハーラー症候群、MPS I Sシャイエ症候群、MPS I H−Sハーラー−シャイエ症候群)、II型(ハンター症候群)、III型(サンフィリポ症候群)、IV型(モルキオ)、VI型(マロトー−ラミー症候群)、VII型(スライ症候群)、IX型(ヒアルロニダーゼ欠損症))、ムコリピドーシス(例えば、I型(シアリドーシス)、II型(I−細胞疾患)、III型(偽性ハーラーポリジストロフィー/ホスホトランスフェラーゼ欠損症)、IV型(ムコリピジン1欠損症))、リピドーシス(例えば、ニーマン−ピック病)、ニューロンセロイドリポフスチン症(例えば、1型サンタブオリ−ハルチア病/乳児期NCL(CLN1 PPT1))、2型ジャンスキー−ビルショウスキー病/後期乳児期NCL(CLN2/LINCL TPP1)、3型バッテン−スピールメイヤー−ボグト病/若年期型NCL(CLN3)、4型クフス病/成人NCL(CLN4)、5型フィニッシュバリアント/後期乳児期(CLN5)、6型後期乳児期バリアント(CLN6)、7型CLN7、8型北部てんかん(CLN8)、8型トルコ後期乳児期(CLN8)、9型ドイツ/セルビア後期乳児期、10型先天性カテプシンD欠損症(CTSD))、ウォルマン病、オリゴ糖症(例えば、アルファ−マンノシドーシス、ベータ−マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、フコシドーシス)、リソソーム輸送疾患(例えば、シスチノーシス、濃化異骨症、サラ病/シアル酸蓄積症、乳児期遊離シアル酸蓄積症)、グリコーゲン蓄積症、例えば、II型ポンぺ病、IIb型ダノン病)、コレステリルエステル蓄積症などが含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載の分子ピンセットを使用して治療され得る例示的なリソソーム蓄積症には、ムコ多糖症(MPS)、アスパルチルグルコサミン尿症、GM1ガングリオシドーシス、クラッベ(球様細胞白質ジストロフィーまたはガラクトシルセラミドリピドーシス)、異染性白質ジストロフィー、サンドホフ病、ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)、ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)、ニーマン−ピック病C2及びC1型、ダノン病、遊離シアル酸蓄積障害、ムコリピドーシスIV型、及び多重スルファターゼ欠損症(MSD)が含まれるがこれらに限定されない。
所定の実施形態では、リソソーム蓄積症は、サンフィリポ症候群(MPS III)、ハーラー症候群(MPS IH)、ハーラー−シャイエ症候群(MPS I−H/S)、シャイエ症候群(MPS IS)、ハンター症候群(MPS II)、モルキオ症候群(MP IV)、マロトー−ラミー症候群(MPS VI)、スライ症候群(MPS VII)、及びMPS IXからなる群から選択されるムコ多糖症を含む。
サンフィリポ症候群(MPS III)
ムコ多糖症III型(MPS III)は、重度で急速な知的劣化を特徴とする。ヘパラン硫酸(HS)の分解に必要とされる4つの酵素のうちの1つの欠損は、MPS IIIのサブタイプの各々の原因である:MPS IIIAの場合はヘパランスルファミダーゼ、MPS IIIBの場合はアルファ−N−アセチルグルコサミニダーゼ、MPS IIICの場合はアルファ−グルコサミニドN−アセチルトランスフェラーゼ、及びMPS IIIDの場合はN−アセチルグルコサミン−6−硫酸スルファターゼ。MPS IIIの臨床的特徴には、比較的軽度の身体的特徴(中程度に重度の鷲手及び内臓巨大症、角膜混濁または骨格、例えば、脊椎の変化はほとんどないか全くない)を有する重度の精神疾患が含まれるがこれらに限定されない。最初の症状は典型的には、2〜6歳の年齢に現れ、行動障害(運動過剰症、攻撃性)及び知的劣化、睡眠障害及び非常に軽度の異形症を伴う。神経学的関与は、10歳頃でより顕著になり、運動マイルストーンの喪失及びコミュニケーションの問題を伴う。発作はしばしば、10歳を過ぎて生じる。数例の減弱型も報告されている。予後は悪く、10歳代の終わりにIIIA型のほとんどの場合で死亡する。B及びDサブタイプでは、より長い生存期間(30/40年)が報告されている。
MPS IIIの診断は、尿中のヘパラン硫酸(HS)の増加レベルの検出に基づく。培養白血球または線維芽細胞における4つの酵素欠損のうちの1つの実証により、MPS IIIの型の決定が可能となる。IIIA型及びIIID型の場合、多重スルファターゼ欠損症(MSDまたはオースチン病)の除外のためには、別のスルファターゼの活性の測定が必須である。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記の症状のうちの1つ以上、例えば、認知障害、鷲手、内臓巨大症、睡眠障害、運動機能の喪失、コミュニケーション能力の喪失、及び発作)からなる群から選択される1つ以上の症状を改善すること及び/またはこれらの症状のうちの1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ハーラー症候群(MPS I)
ムコ多糖症I型(MPS I)、ハーラー病、またガーゴイリズムとしても知られているハーラー症候群は、リソソーム内のムコ多糖類の分解を担う酵素であるアルファ−Lイズロニダーゼの欠損により、グリコサミノグリカン(別名、ムコ多糖類)の集結をもたらす遺伝性障害である。この酵素がないと、身体においてデルマタン硫酸及びヘパラン硫酸の集結が生じる。症状は小児期に現れ、器官の損傷により早期死亡が生じ得る。MPS Iは、症状の重症度に基づいて3つのサブタイプに分けられる。3つの型はすべて、酵素α−L−イズロニダーゼの不在、または不十分なレベルに起因する。MPS I Hまたはハーラー症候群は、MPS Iサブタイプの中で最も重度である。他の2つの型は、MPS I Sまたはシャイエ症候群及びMPS I H−Sまたはハーラー−シャイエ症候群である。
ハーラー症候群は、進行性劣化、肝脾腫大、小人症、及び特有の顔面の特徴によって特徴付けられる。進行性の精神遅滞が生じ、10歳の年齢までの死亡が頻繁に生じる。発達遅延は、1年目の終わりまでに明らかになり、患者は通常、2〜4歳に発達を停止する。これに続いて、進行的に精神的に衰え、身体能力を喪失する。聴力喪失及び舌の肥大により言語が制限され得る。やがて、角膜の透明な層が混濁し、網膜が変性し始め得る。手根管症候群(または身体における他の場所の神経の同様の圧迫)及び関節の運動の制限が一般的である。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記の症状のうちの1つ以上を改善することを含む。
ハンター症候群(MPS II)
ハンター症候群としても知られているムコ多糖症II型(MPS II)は、身体の多くの異なる部分に影響を及ぼし、かつほぼ男性にのみ生じる病態である。それは、進行性衰弱障害である。
出生時では、MPS IIを有する個体は典型的には、この病態の特徴を呈さない。2〜4歳に、彼らはふっくらした唇、大きく丸い頬、広い鼻、及び肥大した舌(巨舌症)を発症する。声帯も肥大し、これは深く、かれた声をもたらす。気道の狭窄は、頻繁な上気道感染症及び睡眠中の呼吸の短い停止(睡眠時無呼吸)を引き起こす。障害が進行すると、個体は、それらの気道を開いたままにするための医学的支援を必要とする。
この障害を有する個体はしばしば、大きな頭部(巨頭症)、脳における体液の集結(水頭症)、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)を有する。この障害を有するほとんどの人々は、聴力喪失を発症し、再発性耳感染症を有する。MPS IIを有するいくつかの個体は、網膜に関連する問題を発症し、低下した視力を有する。手根管症候群は一般的に、この障害を有する小児に生じ、手及び指のしびれ、うずき、及び弱体化を特徴とする。首における脊柱管の狭窄(脊柱狭窄症)は、脊髄を圧迫し、損傷させ得る。心臓もまた、MPS IIによって有意に影響を受け、多くの個体は、心臓弁の問題を発症する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上を改善することを含む。
ムコ多糖症VII型(MPS VII)
スライ症候群としても知られているムコ多糖症VII型(MPS VII)は、ほとんどの組織及び器官に影響を及ぼす進行性病態である。MPS VIIの最も重度の場合は、出生前に体内に過剰な体液が集結する病態である「胎児水症」を特徴とする。胎児水症を有するほとんどの新生児は、死産であるか、または生後すぐに死亡する。
MPS VIIを有する他の人々は典型的には、早期小児期の間に病態の徴候及び症状を示し始める。MPS VIIの特徴には、大きな頭部(巨頭症)、脳における体液の集結(水頭症)、「ザラザラ」と表現される独特な外観をした顔面の特徴、及び大きな舌(巨舌症)が含まれる。罹患した個体はまた頻繁に、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、心臓弁異常、及び臍(臍ヘルニア)または下腹部(鼠径ヘルニア)の周りの軟質の突き出た袋体形成を発症する。MPS VIIを有する人々の一部では気道が狭窄し得、頻繁な上気道感染症及び睡眠中の呼吸の短い停止(睡眠時無呼吸)につながる。角膜は混濁し、これは有意な視力喪失を引き起こし得る。MPS VIIを有する人々はまた、再発性耳感染症及び聴力喪失を有し得る。罹患した個体は、発達遅延及び進行性知的障害を有し得るが、知能は、この病態を有する人々の一部では影響を受けない。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上を改善することを含む。
アスパルチルグルコサミン尿症.
アスパルチルグルコサミン尿症は、精神機能の進行性低下を引き起こす病態である。アスパルチルグルコサミン尿症を有する乳児は、出生時は健康に見え、発達は典型的には、早期小児期を通して正常である。この病態の症状は典型的には、2または3歳頃に現れ、しばしば発話能力の遅延を特徴とする。次いで軽度の知的障害が明らかになり、学習はゆっくりとしたペースで行われる。知的障害は、思春期において進行的に悪化する。この障害を有するほとんどの人々は、学んだ発話能力の多くを喪失し、罹患した大人は通常、語彙には数個の単語しか有さない。アスパルチルグルコサミン尿症を有する大人は、発作または運動に関連する問題を発症し得る。この病態を有する人々はまた、進行的に弱くなり、骨折しやすくなる骨(骨粗鬆症)、関節運動の異常に大きな範囲(過可動性)、及び緩んだ皮膚を有し得る。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、発話能力の遅延または喪失、認知機能障害、発作、運動機能障害、骨粗鬆症、及び関節過可動性からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
GM1ガングリオシドーシス
M1ガングリオシドーシスは、脳及び脊髄における神経細胞を進行的に破壊する先天性障害である。I型または乳児期型と呼ばれるGM1ガングリオシドーシスの最も重度の形態の徴候及び症状は通常、6ヶ月齢までに明らかになる。この障害の形態を有する乳児は典型的には、発達が遅延し、運動に使用される筋肉が弱体化するまでは正常に見える。罹患した乳児は最終的に、それまでに取得していた能力を喪失し(発達的に退行する)、大きな音に対する大げさな驚愕反応を発症し得る。疾患が進行すると、GM1ガングリオシドーシスI型を有する小児は、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、骨格異常、発作、重度の知的障害、及び角膜の混濁を発症し得る。視力の喪失は、網膜が徐々に劣化するにつれて生じる。眼の検査で同定され得るサクランボ赤色斑点と呼ばれる眼の異常がこの障害の特徴である。いくつかの場合では、罹患した個体は、肥大して弱体化した心筋(心筋症)を有する。
II型GM1ガングリオシドーシスは、後期乳児期型及び若年期型としても知られている病態の中間型からなる。GM1ガングリオシドーシスII型を有する小児は典型的には、正常な早期発達を示すが、18ヶ月齢(後期乳児期型)または5歳(若年期型)頃に病態の徴候及び症状を発症し始める。GM1ガングリオシドーシスII型を有する個体は、発達退行を経験するが、通常は、サクランボ赤色斑点、独特な顔面の特徴、または器官の肥大を有さない。II型は通常、I型よりもゆっくりと進行するが、それでも余命の短縮を引き起こす。後期乳児期型を有する人々は典型的には、中期小児期まで生存するのに対し、若年期型を有する人々は、早期成人期まで生存し得る。
GM1ガングリオシドーシスのIII型は、成人型または慢性型として知られており、疾患スペクトルの最も軽度な端を表す。GM1ガングリオシドーシスIII型では、症状が最初に現れる年齢は異なるが、罹患したほとんどの個体は、10代で徴候及び症状を発症する。この型の特徴的な特質には、様々な筋肉の不随意緊張(ジストニア)及び脊椎骨(椎骨)の異常が含まれる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、認知機能障害、運動機能障害、肝脾腫大、骨格異常、発作、角膜の混濁、及び視力の喪失からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
クラッベ病(球様細胞白質ジストロフィー).
クラッベ病(球様細胞白質ジストロフィーとも呼ばれる)は、重度の神経学的病態である。それは、神経系におけるミエリンの喪失(脱髄)に起因する、白質ジストロフィーとして知られている一群の障害の一部である。クラッベ病はまた、通常は複数の核を有する大きな細胞である球様細胞と呼ばれる脳内の異常な細胞を特徴とする。
乳児期型と呼ばれる、クラッベ病の最も一般的な形態は通常、1歳前に始まる。初期徴候及び症状には典型的には、被刺激性、筋肉弱体化、摂食困難、感染症の徴候を伴わない発熱、姿勢の硬直、ならびに精神的及び身体的発達の遅延が含まれる。疾患が進行すると、筋肉が弱体化し続け、動く、咀嚼する、嚥下する、及び呼吸する乳児の能力に影響を及ぼす。罹患した乳児はまた、視力喪失及び発作を経験する。病態のその重症度のため、クラッベ病の乳児期型を有する個体は、2歳を超えて生存することはめったにない。あまり一般的ではないが、クラッベ病は、小児期、思春期、または成人期(後期発症型)に始まる。視力の問題及び歩行困難は、これらの形態の障害における最も一般的な初期症状であるが、徴候及び症状は、罹患した個体の中で大幅に異なる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、被刺激性、発熱、手足のこわばり、発作、摂食困難、嘔吐、及び認知機能障害、運動機能障害、筋肉弱体化、痙縮、難聴、視神経萎縮、視神経肥大、失明、麻痺、及び嚥下時困難からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
異染性白質ジストロフィー
異染性白質ジストロフィーは、細胞内にスルファチドと呼ばれる脂肪の蓄積を特徴とする先天性障害である。この蓄積は特に、ミエリンを生成する神経系における細胞に影響を及ぼす。ミエリン生成細胞におけるスルファチド蓄積は、脳及び脊髄(中枢神経系)ならびに脳及び脊髄を筋肉及び触覚、疼痛、熱さ、及び音などの感覚を感知する感覚細胞と接続させる神経(末梢神経系)を含む神経系全体にわたって白質の進行性破壊(白質ジストロフィー)を引き起こす。
異染性白質ジストロフィーを有する人々では、白質の損傷が、知的機能及び歩行能力などの運動能力の進行性劣化を引き起こす。罹患した個体はまた、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失を発症する。最終的に、彼らは周囲の意識を喪失し、無反応になる。神経学的な問題は、異染性白質ジストロフィーの主な特徴であるが、他の臓器及び組織に対するスルファチド蓄積の影響が報告されており、最も多くの場合、胆嚢に関与している。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、CNS及び/または末梢神経系にわたる大脳白質ジストロフィー、認知機能障害、四肢における感覚の喪失(末梢神経障害)、失禁、発作、麻痺、発話の不能、失明、及び聴力喪失からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
サンドホフ病
サンドホフ病は、脳及び脊髄における神経細胞(ニューロン)を進行的に破壊する先天性障害である。サンドホフ病の最も一般的で重度の形態は、乳児期に明らかになる。この障害を有する乳児は典型的には、発達が遅延し、運動に使用される筋肉が弱体化する3〜6ヶ月齢頃までは正常に見える。罹患した乳児は、寝返ること、座ること、及びはいはいなどの運動能力を喪失する。疾患が進行すると、サンドホフ病を有する小児は、発作、視力及び聴力喪失、知的障害、及び麻痺を経験する。眼の検査で同定され得るサクランボ赤色斑点と呼ばれる眼の異常がこの障害の特徴である。罹患した小児の中には、臓器肥大症及び/または骨異常を呈するものもいる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ムコリピドーシスII型(I−細胞疾患)
ムコリピドーシスIIアルファ/ベータ(I−細胞疾患としても知られている)は、身体の多くの部分に影響を及ぼす進行性衰弱性障害である。ほとんどの罹患した個体は、早期小児期を過ぎて生存しない。
出生時では、ムコリピドーシスIIアルファ/ベータを有する小児は小さく、典型的には筋緊張減弱(低血圧症)及び弱い泣き声を有する。罹患した個体は、出生後にゆっくりと成長し、通常は生後2年目の間に成長が停止する。発達、特に発話能力ならびに座ること及び立つことなどの運動能力の発達が遅れる。
ムコリピドーシスIIアルファ/ベータを有する小児は典型的には、いくつかの骨異常を有し、その多くは出生時に存在する。罹患した個体は、異常に丸い上背(後彎症)、異常に回転した足(内反足)、脱臼した腰、異常な形状の長骨、ならびに短い手及び指を有し得る。この病態を有する人々はまた、可動性に有意に影響を及ぼす関節の変形(拘縮)を有し得る。ムコリピドーシスIIアルファ/ベータを有するほとんどの小児は、独立して歩行する能力が発達しない。罹患した個体は、多発異骨症を有し得る。ムコリピドーシスIIアルファ/ベータの他の特徴には、心臓弁異常、長期または再発性呼吸器感染症に寄与し得る気道の狭窄、及び聴力喪失につながり得る再発性耳感染症が含まれるがこれらに限定されない。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、認知機能障害、運動機能の喪失、発作、聴力喪失、視力喪失、臓器肥大症、骨異常、及び麻痺からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ムコリピドーシスIIIA型(偽性ハーラーポリジストロフィー)
偽性ハーラーポリジストロフィー(ムコリピドーシスIII型)は、UPD−N−アセチルグルコサミン−1−ホスホトランスフェラーゼとして知られている欠陥酵素を特徴とする遺伝性代謝障害である。この欠陥酵素は最終的に、身体の様々な組織における所定の複合炭水化物(ムコ多糖類)及び脂肪物質(ムコ脂質)の蓄積をもたらす。この障害の症状は類似しているが、I−細胞疾患(ムコリピドーシスII型)のものよりも重症度が低く、進行性の関節のこわばり、脊柱湾曲症(脊柱側彎症)、及び/または手の骨格変形(例えば、鷲手)を含み得るがこれらに限定されない。股関節の劣化を伴う成長遅延は典型的には、偽性ハーラーポリジストロフィーを有する小児において発症する。追加の症状には、眼の角膜の混濁、顔面の特徴の軽度から中程度のザラザラ度、軽度精神遅滞、易疲労性、及び/または心臓疾患が含まれ得る。
ほとんどの場合では、偽性ハーラーポリジストロフィーを有する小児は、2〜4歳まで症状を示さない。特定の症状及び進行の速度は、場合によって異なり得るが、その障害はしばしばゆっくりとした進行性である。
初期症状には、手及び肩のこわばりが含まれ得る。いくつかの場合では、爪のような手の変形が生じ得る。これらの症状は進行して、特定の作業(例えば、服を着ること)の困難性を引き起こし得る。最終的に、手根管症候群を発症し得る。手根管症候群は、手首の内側の手根管を通る正中神経の圧迫(末梢神経の巻き込み)を特徴とする神経学的障害である。この障害の症状は、手及び手首に影響を及ぼし、疼痛、しびれ、指先の感覚の喪失、及び/または灼熱感または「ピン及び針」などの異常な感覚を含み得る。
偽性ハーラーポリジストロフィーに関連する追加の症状には、脊柱側彎症、腰の変性、湾曲または屈曲した位置で永久に固定された関節(拘縮)、及び低身長が含まれ得る。股の進行性変性及び関節拘縮は、歩行困難を引き起こし得るか、または罹患した個体は、特徴的な動揺歩行での歩行を強いられ得る。罹患した小児はまた、角膜混濁、軽度網膜症、及び角膜の不規則な湾曲(遠視性乱視)を発症し得る。偽性ハーラーポリジストロフィーを有する多くの小児は正常な知能を有するが、一部は軽度精神遅滞または学習障害を発症し得る。いくつかの場合では、罹患した小児は、大動脈弁閉鎖不全症を発症する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、関節のこわばり、脊柱側彎症、手の骨格変形(例えば、鷲手)、成長遅延、股関節の劣化、眼の角膜の混濁、軽度精神遅滞、易疲労性、手根管症候群、及び心臓疾患からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ニーマン−ピック病C2及びC1型(NPC1変異)
ニーマン−ピックC型は、広い臨床的スペクトルを有する。罹患した個体は、脾臓の肥大(脾腫)及び肝臓の肥大(肝腫大)、または組み合わされた脾臓もしくは肝臓の肥大(肝脾腫大)を有し得るが、この知見は後期発症症例では存在しない場合がある。長期黄疸及びビリルビンの上昇は、出生時に存在し得る。いくつかの場合では、脾臓または肝臓の肥大は、数ヶ月間もしくは数年間、または全く生じない。脾臓または肝臓の肥大は頻繁に、ニーマン−ピック病などの他のリソソーム蓄積症の進行とは対照的に、経時的に明らかではなくなる。
進行性神経学的疾患は、ニーマン−ピックC型病の特質であり、早期小児期を超えたほとんどの場合で障害及び早期死亡の原因である。古典的には、NPCを有する小児は初期に、認知機能の低下(認知症)を表す前に、正常な発達マイルストーン能力への到達の遅延を示し得る。神経学的徴候及び症状には、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)(ほとんどは一般的に、歩行時の一方の足の回転(動作性ジストニア)から始まり、広がって全身性になり得る)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、小頭症(以上に小さな頭部)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、幻覚、妄想、無言症、または放心状態を含み得る大鬱病及び心因性鬱病が含まれる。典型的には、ニーマン−ピックC型病の最終段階では、対象は、完全な眼筋麻痺を伴う寝たきり、随意運動の喪失及び重度の認知症である。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、脾腫、肝腫大、肝脾腫大、黄疸、認知機能障害、小脳性運動失調(ぎこちない手足運動を伴う不安定な歩行)、構音障害(不明瞭な発話)、嚥下障害(嚥下困難)、振戦、てんかん(部分性及び全身性の両方)、垂直核上痙攣(上方視痙攣、下方視痙攣、衝動性痙攣または麻痺)、睡眠反転、笑い脱力発作(筋緊張の急激な喪失または転倒発作)、ジストニア(関節を横切る主動筋及び拮抗筋の収縮によって引き起こされる異常な運動または姿勢)、痙縮(筋緊張の速度依存性増大)、低血圧症、下垂(上眼瞼の垂れ下がり)、精神病、進行性認知症、進行性聴力喪失、双極性障害、大鬱病及び心因性鬱病、随意運動の喪失、及び重度の認知症からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ダノン病
ダノン病は、心筋症、骨格筋と呼ばれる運動に使用される筋肉の弱体化(ミオパチー)、及び知的障害を典型的に特徴とする病態である。徴候及び症状は、ほとんどの罹患した男性では小児期または思春期に、ほとんどの罹患した女性では早期成人期に始まる。
心筋症は、ダノン病の最も一般的な症状であり、病態を有するすべての男性に生じる。ほとんどの罹患した男性は、肥大性心筋症を有する。他の罹患した男性は、心臓が弱体化し、肥大化して、血液を効率的に送り出すことが阻害される病態である「拡張型心筋症」を有する。肥大性心筋症を有する罹患した男性の一部は後に、拡張型心筋症を発症する。いずれかの種類の心筋症は、心不全及び早死につながり得る。ダノン病を有するほとんどの女性も心筋症を発症する。
骨格筋症は、ダノン病を有するほとんどの男性及び罹患した女性の約半数に生じる。弱体化は典型的には、上腕、肩、首、及び上部太ももの筋肉に生じる。ダノン病を有する多くの男性は、しばしば筋肉疾患を示すバイオマーカーである血中クレアチンキナーゼレベルの上昇を有する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
遊離シアル酸蓄積障害
シアル酸蓄積疾患は、主に神経系に影響を及ぼす先天性障害である。シアル酸蓄積病を有する人々は、重症度が広く異なり得る徴候及び症状を有する。この障害は一般に、乳児期遊離シアル酸蓄積病、サラ病、及び中程度に重度のサラ病の3つの形態のうちの1つに分類される。
乳児期遊離シアル酸蓄積症(ISSD)は、この障害の最も重度の形態である。この病態を有する新生児は、重度の発達遅延、筋緊張減弱(低血圧症)、及び予期された速度での体重増加及び成長の不全(発育不全)を有する。彼らは、しばしば「ザラザラ」と表現される異常な顔面の特徴、発作、骨変形、肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)、及び心臓の肥大(心肥大)を有し得る。器官の肥大及び腹腔内の体液の異常な集結(腹水)により、腹部が膨潤し得る。罹患した乳児は、出生前に体内に過剰な体液が蓄積する胎児水症と呼ばれる病態を有し得る。この重度の形態の病態を有する小児は通常、早期小児期までしか生存しない。
サラ病は、シアル酸蓄積病の重症度がより低い形態である。サラ病を有する新生児は通常、生後1年目の間に低血圧症を示し始め、次に進行性の神経学的問題を経験する。サラ病の徴候及び症状には、知的障害及び発達遅延、発作、運動及びバランスに関連する問題(運動失調)、筋肉の異常な緊張(痙縮)、及び手足の不随意の遅くしなやかな運動(アテトーシス)が含まれる。サラ病を有する個体は通常、成人期まで生存する。中程度に重度のサラ病を有する人々は、重症度がISSDとサラ病のものとの間に入る徴候及び症状を有する。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、心筋症、骨格筋症、及び認知機能障害からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
ムコリピドーシスIV
ムコリピドーシスIV型は、経時的に悪化する発達遅延及び視力障害を特徴とする先天性障害である。その障害の重度の形態は、定型ムコリピドーシスIV型と呼ばれ、軽度の形態は、非定型ムコリピドーシスIV型と呼ばれる。
この病態を有する個体のおよそ95%が重度の形態を有する。定型ムコリピドーシスIV型を有する人々は典型的には、精神及び運動能力の発達遅延(精神運動遅延)を有する。運動能力には、座ること、立つこと、歩行すること、物をつかむこと、及び書くことが含まれる。精神運動遅延は、中程度から重度であり、通常は生後1年目の間に明らかになる。罹患した個体は、知的障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、異常な筋肉硬直(痙縮)に徐々に変わる筋緊張減弱(低血圧症)、及び手の運動の制御の問題を有する。定型ムコリピドーシスIV型を有するほとんどの人々は、独立して歩行することができない。罹患した個体の約15パーセントにおいて、精神運動の問題が経時的に悪化する。
定型ムコリピドーシスIV型を有する人々において、視力は出生時には正常であり得るが、典型的には、人生の最初の10年の間に次第に損なわれるようになる。この病態を有する個体は典型的には、角膜の混濁及び網膜の進行性分解を発症する。10代の早期までに、罹患した個体はしばしば、重度の視力喪失または失明を有する。
定型ムコリピドーシスIV型を有する人々はまた典型的には、胃酸の生成障害(無酸症)を有する。無酸症は、これらの個体において症状を引きおこさないが、血中のガストリンの異常に高いレベルをもたらす。ムコリピドーシスIV型を有する個体は、血中に十分な鉄を有しない場合があり、これは貧血につながり得る。この障害の重度の形態を有する人々は通常、成人期まで生存するが、短縮した寿命を有し得る。
罹患した個体の約5%は、非定型ムコリピドーシスIV型を有する。これらの個体は通常、軽度の精神運動遅延を有し、歩行能力が発達し得る。非定型ムコリピドーシスIV型を有する人々は、障害の重度の形態を有する人々よりも軽度の眼の異常を有する傾向がある。無酸症はまた、軽度に罹患した個体に存在し得る。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、発達遅延、視力障害、精神運動遅延、認知機能障害、発話能力の制限または欠如、咀嚼及び嚥下困難、筋緊張減弱(低血圧症)、異常な筋肉硬直(痙縮)、運動機能障害、角膜の混濁、及び胃酸の生成障害(無酸症)からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
多重スルファターゼ欠損症(MSD).
多重スルファターゼ欠損症は、主に脳、皮膚、及び骨格に影響を及ぼす病態である。多重スルファターゼ欠損症の徴候及び症状は広く異なるので、病態は、新生児期、後期乳児期、及び若年期の3つの種類に「分割」されている。
新生児型が最も重度の形態であり、生後すぐに現れる徴候及び症状を伴う。罹患した個体は典型的には、神経系における組織の劣化(白質ジストロフィー)を有し、これは運動問題、発作、発達遅延、及び成長遅延に寄与し得る。骨格異常には、脊柱側彎症、関節のこわばり、及び多発異骨症が含まれ得る。罹患した個体はまた、聴力喪失、心臓の先天性異常、及び肝臓及び脾臓の肥大(肝脾腫大)を有し得る。新生児多重スルファターゼ欠損症の徴候及び症状の多くは、経時的に悪化する。
後期乳児期型は、多重スルファターゼ欠損症の最も一般的な形態である。それは典型的には、早期小児期における正常な認知機能発達と、それに続く白質ジストロフィーまたは他の脳異常による精神能力及び運動の進行性喪失(精神運動退行)を特徴とする。この形態の病態を有する個体は、新生児型を有するものほど多くの特徴を有さないが、しばしば魚鱗癬、骨格異常、及びザラザラとした顔面の特徴を有する。
若年期型は、多重スルファターゼ欠損症の最もまれな形態である。若年期型の徴候及び症状は典型的には、中期〜後期小児期に現れる。罹患した個体は、正常な早期認知発達を有するが、次いで精神運動発達退行を有し、しかしながら、若年期型における退行は通常、後期乳児期型よりも遅い速度で生じる。魚鱗癬はまた、多重スルファターゼ欠損症の若年期型で一般的である。
すべての型の多重スルファターゼ欠損症を有する個体では余命が短縮する。典型的には、罹患した個体は、病態の徴候及び症状が現れた後数年間しか生存しないが、余命は、病態の重症度及び神経学的問題がどのくらい早く悪化するかに応じて異なる。
所定の実施形態では、本明細書に記載の予防及び/または治療方法は、上記症状の1つ以上(例えば、大脳白質ジストロフィー、脊柱側彎症、肝脾腫大、精神運動発達退行)、及び魚鱗癬からなる群から選択される1つ以上の症状)を改善すること、及び/またはこれらの症状の1つ以上の発症を遅らせること、その進行を遅延させること、停止させること、または逆行させることを含む。
前述のリソソーム蓄積症は、例示的であり、非限定的である。本明細書で提供される教示を使用して、当業者は、多数の他のLSDの治療及び/または予防において分子ピンセットを容易に利用し得る。
キット.
様々な実施形態では、本明細書に記載の方法の実践のための物質を含有するキットが提供される。所定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含有する容器及び/または本明細書に記載の1つ以上の分子ピンセットを含む薬学的製剤を含む。所定の実施形態では、キットは、分子ピンセットを投与するための装置(例えば、事前に装填されたシリンジ)を含有し得る。
所定の実施形態では、キットは任意に、例えば、本明細書に記載されているようなリソソーム蓄積症の治療または予防における分子ピンセットの使用のための指示(例えば、プロトコル)を提供するラベル及び/または説明資料を含む。説明資料はまた、推奨される投薬量、禁忌の説明(複数可)を含み得る。
様々なキットにおける説明資料は典型的には、書面のまたは印刷された資料を含むが、そのようなものに限定されない。そのような説明を記憶し、それらをエンドユーザに伝達することが可能な任意の媒体が本発明によって企図される。そのような媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CDROM)などが含まれるがこれらに限定されない。そのような媒体には、そのような説明資料を提供するインターネットサイトへのアドレスが含まれ得る。
以下の実施例は、特許請求された発明を限定するためではなく、例示するために提供される。
方法
CLR01注射
Gal Bitan教授(神経学准教授、神経学科、University of California、UCLA)の施設でCLR01を生成した。マウスは、7ヶ月齢までCLR01を1mg/kg/日で摂取した。浸透圧ミニポンプ(モデル1004,)を介してCLR01を皮下投与した。CLR01投薬量は、マウスにおけるCLR01の安全性及び薬理学的特徴に基づいて選択した(Attar et al.(2014)BMC Parmacol.&Toxicol 15:23)。
脳の収集
安楽死後、各実験群からマウスの脳を収集し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS pH7,4)で灌流し、組織から血液を完全に除去した。脳を2つの等しい部分に分割し、各々の半分をドライアイスで凍結させ、生化学的分析に使用した。他の半分は、PBS中の4%(w/v)パラホルムアルデヒド中で固定し、最適切断温度化合物(OCT化合物)またはパラフィン中に包埋した。
免疫蛍光及び免疫組織化学
凍結した脳組織の内側矢状切片を、クライオスタット上で12または40μmのいずれかの厚さで切断し、透過処理し(PBS、0.2%Tween20、及び10%ウシ胎仔血清)、適切な一次及び二次抗体で+40℃で一晩染色した。63倍または40倍のいずれかの対物レンズを使用して共焦点顕微鏡Zeiss LSM 710によって切片を分析した。染色した切片をVectashield(Vector Laboratories,CA,USA)で標本にした。
パラフィン包埋のため、マウスの脳を4%パラホルムアルデヒド(PFA)中で4℃で一晩固定し、次いでマウスの脳を段階的な系のエタノール中で脱水し、キシレンで除去し、パラフィンで浸潤させた。パラフィン包埋ブロックをミクロトーム上で6μmの矢状切片で切断した。免疫組織化学実験は、Universal Vectastain Elite ABC HRP Kit(PK6200,Vector Laboratories)を使用して実施した。すべての免疫染色について、矢状切片を使用し、PBS1x−Triton0.1%中で洗浄し、1%H2O2で30分間処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を抑制した。この時点で切片をPBSまたはプロテイナーゼK消化(50μg/ml)で37℃で2分間曝露して、プロテアーゼ耐性構造を検出した。その後切片をPBS1x−TritonX−100 0.1%〜2%ウマ血清中で1時間ブロッキングし、次いで特異的な抗体と共に+40℃で一晩インキュベートし、続いてビオチン化された普遍的抗体(Vector Laboratories)中で室温で90分間及びABC試薬(Vector Laboratories)中で室温で45分間インキュベートした。切片を脱水し、次いでLeica CV ULTRA(Leica micro systems)で標本にした。可視化は、3,3−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB Vector Laboratories)を使用して実施した。Leica DM5000画像化顕微鏡を使用して明視野画像を撮影した。
チオフラビンS組織化学については凍結切片(12μm)を使用し、次いで切片を0.1%チオフラビンSで10分間インキュベートした。スライドを80%エタノール溶液に5分間浸漬し、FLUORSAVE(商標)試薬を使用して標本にした。Leica DM5500スキャンを使用して陽性染色が観察された。
抗体
ポリクローナルウサギ抗体抗α−シヌクレイン 1:300(Cat 128 102 SySy)、モノクローナルウサギ抗ベータアミロイド1−42(Aβ1−42)構造特異的 1:200(abcam 201060)、ポリクローナルヤギ抗プリオンタンパク質PrP 1:200(abcam 6664)、ポリクローナルヤギ抗、モノクローナルマウス抗タウ 1:400(Cell Signaling #4019)、ポリクローナルウサギ抗体抗グリア線維性酸性タンパク質(GFAP) 1:400(DAKO Z0334)、ポリクローナルウサギ抗体抗IBA1 1:200(Synaptic System)。ALEXA−FLUOR(登録商標)二次抗体をMolecular Probe(Invitrogen)から購入した。
実施例1
アミロイドタンパク質の凝集は、MPS−IIIAマウスにおける神経病状の特質である。
MPS−IIIAは、リソソームヒドロラーゼスルファミダーゼ(SGSH)の欠損によって引き起こされ、LSDの最も一般的で重度の形態の1つを表す(Valstar et al.(2010)Ann.Neurol.68:876−887)。MPS−IIIAマウスでは、SGSH酵素の触媒部位における自然発生的ミスセンス変異(D31N)に起因して、リソソーム分解欠陥が、進行性のリソソーム機能不全及び神経変性をもたらし、これらは生後6ヶ月頃に神経学的障害の最初の徴候を生じさせ、マウスが加齢するにつれてますます重症化する(Bhaumik et al.(1999)Glycobiology,9:1389−1396;Fraldi et al.(2007)Hum.Mol.Genet.16:2693−2702;Lau et al.(2008)Behav. Brain Res.191:130−136)。それ故、MPS−IIIAマウスは、LSDにおけるニューロン変性の基礎となる事象の病原性カスケードを研究するための最適なモデルを表す。本発明者は、MPS−IIIAマウスを含む異なるLSDのモデルにおいてα−シヌクレインがニューロンの周核体において蓄積し、シナプス前活性の機能媒介性脱制御の喪失を介して神経変性プロセスに寄与していることを以前に見出している。前記α−シヌクレイン凝集体の性質をさらに特徴付けるために、異なる年齢のMPSIIIAマウスの脳のチオフラビンS染色の免疫組織化学及び共焦点分析を行った。チオフラビンSは、細胞及び組織におけるアミロイド沈着物を検出するために一般的に使用される:チオフラビンSは、スルホン酸でのデヒドロチオトルイジンのメチル化から生じる化合物の均質な混合物である。それはまた、アミロイドプラークを染色するために使用される。チオフラビンSは、アミロイド線維に結合し、蛍光発光の独特な増加を提供するが、モノマーには結合しない。MPS−IIIAマウスにおけるアミロイドタンパク質の凝集は、3ヶ月では検出されず、生後6ヶ月から脳の異なる領域で有意に明らかになり、このときにマウスモデルにおいて最初の神経変性徴候が現れ始めた(図1、パネルA及びB)(Bhaumik et al.(1999)Glycobiology,9:1389−1396;Sorrentino et al.(2013)EMBO Mol.Med.5:675−690)。
興味深いことに、チオフラビンS陽性のアミロイド沈着物は、細胞、大抵はニューロンの細胞の核周囲領域に広範囲に局在しているように見える(図1、パネルC)。異なる細胞小器官マーカーを用いた共焦点分析は、そのような核周囲のアミロイド蓄積が、リソソーム内腔の内側に広く、リソソーム区画にごく近接して広く生じることを実証した(図1、パネルD、E)。プロテイナーゼK消化を用いたアルファ−シヌクレイン免疫組織化学分析(アミロイド凝集体は、高度に不溶性であり、プロテイナーゼK消化に耐性である)は、MPSIIIAマウス脳内のα−シヌクレイン凝集体がアミロイド様沈着物であることを示した(図1、パネルC)。この結論を支持して、共焦点分析は、α−シヌクレイン染色がほとんどチオフラビンS陽性であることを示した(図1、パネルD)。それ故、本発明者は、驚くべきことに、MPS−IIIAニューロンが周核体アミロイド沈着を特徴とし、α−シヌクレインがこれらの沈着物の成分であることを見出した。
実施例2
アミロイド包含組成物は不均一でCNS領域特異的な凝集型である。
アミロイド凝集体をさらに特徴付けるために、神経変性疾患に関与する異なる既知の凝集傾向のあるタンパク質、すなわち、タウ、プリオンタンパク質(PrP)、アミロイドβペプチド(Aβ)、TAR DNA結合タンパク質(TDP)−43、ハンチンチンに対する抗体を使用して、生後10ヶ月(神経病状が完全に確立されたとき)のMPS IIIAマウス由来の脳のいくつかの領域についてプロテイナーゼK消化でIHC分析を実施した。その上、そのような免疫反応性をまた、α−シヌクレインIHCから得られるものと比較した。
凝集傾向のあるタンパク質の中で、TDP−43及びハンチンチンについてはどの脳領域でも免疫反応性は観察されなかった(図2、パネルA、B)のに対し、他のすべてのタンパク質(タウ、PrP、及びAβ−ペプチド)は免疫反応性を示した。しかしながら、そのような免疫反応性は、分析された脳領域、細胞内局在及び形状の点で不均一であるように見えた。
実際、そのような免疫反応性の一部は、特徴的な軸索スフェロイドまたは線維性神経炎沈着物として検出することができたのに対し、大部分は、核周囲領域に広範囲に局在した小型/粒状、リング状またはもつれ様の包含物として細胞体内で見出された(表1)。
実施例3
アミロイドタンパク質の凝集は、リソソーム蓄積障害の特質である。
本発明者は、いくつかのリソソーム蓄積症のモデルの脳の異なる領域についてチオフラビンS染色を実施し、驚くべきことに、図4に示されるように、アミロイド生成性凝集体が存在したことを見出した。野生型、MPS−IIIA及び他のLSDマウス(クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、サンドホフ病、ニーマンピックC型)の脳凍結切片(10μmの厚さ)を、アミロイド凝集体を可視化するために使用される特異的な染色技術であるチオフラビンSによって染色した(図3を参照されたい)。染色後、スライスを標本にし、FITCフィルターで蛍光を取得した。細胞内に位置するチオフラビンS陽性要素は、時折ごくわずかな染色要素しか認められなかった年齢が一致した野生型マウスと比較して、LSD動物モデルの異なる脳領域では観察された。
実施例4
CLR01投与はMPSIIIAマウスの脳におけるアミロイド凝集を阻害する
アミロイドタンパク質集合体及び毒性は、リジン残基に結合し、かつ複数のアミロイド生成性タンパク質の異常な自己集合体にとって重要である分子間相互作用を破壊するプロセス特異的メカニズムによって作用する「分子ピンセット」と名付けられた化合物のクラスによって特に阻害され得る(Sinha et al.(2011)J.Am.Chem.Soc.133:16958−16969;Attar & Bitan (2014) Curr.Pharm.Des.20:2469−2483)。分子ピンセットの中でも、CLR01は、シヌクレイン病及びアルツハイマー病のマウスモデルにおいてタンパク質の凝集及び神経変性に対する保護に非常に有効であることが示されている(Prabhudesai et al.(2012)Neurotherapeutics,9:464−476;Richter et al.(2017)Neurotherapeutics,14(4):1107−1119)。意外なことに、CLR01の全身投与は、マウスにおいて高い安全余裕度を有すること、及びCLR01が血液脳関門を通過する能力により効率的な脳標的化を可能とすることが示されている(Attar et al.(2012)Brain,135:3735−3748)。それ故、本発明者は、CLR01(図4A、パネルA)が、MPS IIIAマウスにおいてアミロイド凝集を標的とし、破壊するのに有効であるかどうかを試験した。MPSIIIAマウスを、2つの異なる病理学的状況に対応する2つの異なる年齢でCLR01で処置した;第1の群のマウスは、アミロイドタンパク質及びα−シヌクレインの蓄積が既に存在する6ヶ月齢(「症状のある」MPS−IIIAマウス)で処置を開始し、1ヶ月にわたって継続的に薬物を摂取した。第2の群のマウスは、アミロイド生成性タンパク質沈着前の5ヶ月齢(「無症状性」MPS−IIIAマウス)で処置を開始し、2ヶ月にわたって継続的に薬物を摂取した。いずれの処置も、MPS−IIIAマウスにおいて神経病理学的表現型が明らかになる7ヶ月齢で終了した(Lau et al.(2008)Behav. Brain Res.191:130−136;Sambri et al.(2016)EMBO Mol.Med.e201606965;Sorrentino et al.(2013)EMBO Mol.Med.5:675−690;Wilkinson et al.(2012)PloS one,7:e35787)。2つの異なる処置レジメンにより、アミロイド凝集の予防または解体のいずれかに起因してCLR01の潜在的な治療効果の評価が可能となった。CLR01で処置された症状のあるMPS−IIIAマウスは、脳の異なる領域におけるチオフラビンS染色によって示されるように、アミロイド沈着物の部分的除去を示した(図4、パネルB)。CLR01で処置された無症状性MPSIIIAマウスは、いくつかのアミロイド成分の集結の効率的な阻害(図4C)に関連してアミロイドタンパク質の完全な消失を示した(図4、パネル4、パネルB)。まとめると、これらの知見は、CLR01がMPS−IIIAマウスにおけるアミロイド凝集を除去し得ることを示している。
実施例5
CLR01投与はMPS−IIIAマウスにおける神経炎症を改善した
本明細書に記載の分子ピンセットでの処置の治療有効性をさらに評価するために、本発明者は、2ヶ月の化合物CLR01での処置の後にMPS−IIIAマウスにおける神経炎症を7ヶ月齢で分析した。神経炎症は、MPS−IIIAを含む多くの神経変性LSDにおける神経病状の最も顕著な徴候の1つであり、強い神経炎症性マーカーが5〜6ヶ月齢で早くも現れる(Fraldi et al.(2007)Hum.Mol.Genet.16:2693−2702;Wilkinson et al.(2012)PloS one,7:e35787)。CLR01で処置したMPS−IIIAマウスにおける神経炎症マーカーGFAP及びIBA1の免疫蛍光染色は、炎症の強力な減少を示した(図5、パネルA及びB)。これらの結果は、アミロイド凝集のCLR01媒介性阻害が、MPS−IIIAにおける神経変性徴候の予防に有効であることを実証する。
リソソーム蓄積症(LSD)は、神経変性過程を示すことが多い一群の遺伝性障害である。LSDは、リソソームの機能の先天性欠陥によって引き起こされ、これは細胞が異なる物質を除去する能力の低下をもたらし、これにより経時的に神経変性表現型につながる。本発明者は本明細書において、MPS IIIAマウス及び他のリソソーム蓄積症マウスの脳においてアミロイド沈着物が進行的に集結すること、及びα−シヌクレイン、プリオンタンパク質、タウ、Aβなどのアミロイドタンパク質の凝集体が概ねこれらの沈着物と一緒に共局在化することを実証した。本明細書で示された結果は、アミロイド凝集を阻害する分子ピンセットが、MPS IIIAにおけるニューロン変性及び炎症などの関連のある神経変性徴候を予防するのに有効であることを証明する。これは今度は、アミロイド凝集が、MPS IIIA及び他のLSDにおける神経病状の発症に重要な役割を果たすことをさらに確認する。本実施例は、神経変性LSDの重度の形態であるMPS IIIAのマウスモデルにおける本発明による分子ピンセットの投与が、アミロイドタンパク質の凝集及び毒性を減少させることによってニューロン喪失を減弱させ、炎症を減少させ得ることを実証する。よって、分子ピンセットは、MPS IIIAにおける神経病状を改善し、リソソーム蓄積障害における神経病状の治療に広く有用であることが証明される。
実施例6
アミロイド凝集の阻害は、リソソーム−オートファジー機能不全を緩和し、リソソーム蓄積症における神経変性に対して保護をする
MPS−IIIAにおけるCLR01の潜在的な治療効力を、4.5ヶ月齢(大量のアミロイド凝集が起こる前)のMPS−IIIAマウスを4.5ヶ月の期間にわたる毎日のCLR01の皮下注射で処置することによってさらに試験した。処置終了時(9ヶ月齢)に、MPSIIIAマウスは、チオフラビン陽性包含物のほぼ完全な不在(図6、パネルA)及び、それに一貫して、アミロイド沈着物の特定の成分の集結の顕著な減少(図6、パネルB)を示した。
進行性神経炎症は、MPS−IIIAを含む多くのLSDにおける神経病状の最も顕著な徴候の1つである(Attar et al.(2014)BMC Pharmacol. Toxicol.15:23;Wilkinson et al.(2012)PloS one 7:e35787)。一貫して、対照の9ヶ月齢のMPS−IIIAマウスは、GFAP及びIba1 IHCによって示されるように重度の神経炎症を呈した(図7、パネルA)。CLR01処置は、MPS−IIIAマウスにおける神経炎症を強力に減少させたのに対し、WTマウスでは炎症反応を誘発しなかった(図7、パネルA)。MPS−IIIAマウスではシナプスの変化が報告されている(Fraldi et al.(2007)Hum.Mol.Genet.16:2693−2702)。シナプス区画の透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、CLR01処置が、MPS−IIIAマウスの脳におけるシナプス異常を救済することができたことを示した(図7、パネルB)。MPS−IIIAマウスは、年齢に依存した活動性及び不安に関連した行動変化を呈する(Lau et al.(2008)Behav. Brai.n Res.191:130−136)。その上、最近のデータは、MPS−IIIAマウスがまた、文脈記憶機能を試験するために広く使用されているタスクである、恐怖文脈条件付け試験において強い障害を呈することを示した(D’Amelio et al.(2011) Nat. Neurosci. 14: 69−76). このタスクの成果は、9ヶ月齢で非常に確定的で、信頼性があるため、CLR01投与がMPS−IIIAマウスにおける異常行動表現型を改変するかどうかを評価するためにこの試験を適用した。予期されたように、対照の9ヶ月齢のMPS−IIIAマウスは顕著な記憶障害を示し、これは、意外なことに、CLR01の処置で完全に救済された(図7、パネルC)。
まとめると、本データは、MPS−IIIAマウスにおけるアミロイド凝集を疾患進行の早期段階で阻害することが、神経病理学的徴候を有意に減少させることを示し、これによりアミロイド沈着が、神経変性LSDの関連モデルにおいて神経変性プロセスに寄与することを示している。
この時点で、MPS−IIIAマウスにおけるアミロイド神経毒性の根底にあるメカニズムを調査した。特に、本発明者は、LSDに関連して観察されるアミロイド沈着が毒性機能獲得効果を有し得るかどうかを調査した。
異なる細胞小器官マーカーを用いたチオフラビンSの共焦点分析は、そのような周核体のアミロイド蓄積が、リソソーム内腔の内側に広く、リソソーム区画にごく近接して広範に生じたことを実証した(図8、パネルA、B)。アミロイドのそのような区画化された集結は、本発明者に、MPS−IIIAにおけるアミロイド蓄積と、乱されたオートファジー−リソソーム経路(ALP)との間の可能性のある関係性を評価することを促した。LSDの特質であるリソソーム区画の大きな拡大と一貫して、IHC抗LAMP1は、WTと比較して、MPS−IIIAマウスの脳におけるシグナルの増大を示した(図8、パネルC)。CLR01処置は、MPS−IIIAの脳におけるLAMP1陽性免疫染色を著しく減少させたのに対し、WTマウスにおけるLAMP1区画体積を変化させなかった(図8、パネルC)。EM分析は、MPS−IIIAの脳におけるリソソーム拡大が、平均リソソームサイズの増大を反映したのに対し、リソソームの総数は、WTの脳と比較して、わずかに増加したにすぎなかったことを明らかにした(図8、パネルD)。しかしながら、WTの脳においてリソソームは大抵、正常なサイズ(約400nm)であったのに対し、MPS−IIIAの脳では、それらは主に異常なサイズ(>800nm)であった(図8、パネルE)。CLR01処置は、平均リソソームサイズの有意な減少、及び異常なサイズのリソソームの数の減少をもたらした(図8、パネルE)。意外なことに、CLR01で処置されたMPS−IIIAの脳におけるリソソームの総数は、対照のMPS−IIIAマウスよりも有意に多いままであり、これは、異常なサイズのリソソームに対する正常なサイズのリソソームの数の増加を反映している(図8、パネルE)。IHCデータと一貫して、CLR01は、WTマウスにおけるリソソームサイズ/数に影響を及ぼさなかった(図8、パネルE)。
アミロイド沈着阻害によって媒介されるリソソーム区画の正常化がリソソームの機能回復にも関連しているかどうかを評価するため、CLR01処置をしたMPS−IIIAマウスの脳においてALPを分析した。健康なニューロンでは、オートファゴソームは、軸索逆行輸送及びリソソーム遭遇時に効率的に除去されるので、リソソーム依存性オートファゴソーム除去が妨げられない限り、神経突起または細胞体にはほとんど見られない(Boland et al.(2008)J.Neurosci.28:6926−6937;Maday et al.(2012)J.Cell Biol.196:407−417;Lie & Nixon(2019)Neurobiol.Dis.122:94−105)。LC3の免疫蛍光分析は、WTと比較してMPS−IIIAの脳ではLC3陽性斑点の顕著な増加を示し(図9、パネルA、B)、よって、先の知見によって予期されたようにオートファジーフラックスの遮断と共通している(Settembre et al.(2008)Hum.Mol.Genet.17:119−129)。一貫して、LC3ドットの増加は主に、LAMP1陰性及び末梢/神経突起の蓄積(図9、パネルC)、局在化した大きなLC3ドット(>0.8μm2)に起因し、これによりMPS−IIIAのニューロンでは、リソソームがオートファゴソームに遭遇するのが妨げられ、これによりそれらの除去を妨害していることを示唆している。CLR01処置は、MPS−IIIAの脳における大きなLC3ドットを有意に減少させ、オートファジーフラックスが、CLR01処置によって再活性化されたことを実証している(図9、パネルA)。しかしながら、LC3ドット(大サイズ及び正常サイズの両方)の数は、WTの脳と比較して有意に多いままであり、これにより、オートファゴソームはより効率的に除去されるが、MPS−IIIAの脳ではオートファジーは処置により活性化されたままであったことを示している。重要なことに、LC3染色の有意な変化がCLR01で処置されたWTマウスで観察された(図9、パネルA)。LC3の脂質化形態(LC3−II)のレベルも、2つの異なるオートファジー基質であるp62及びUbK63を通してモニターした(Klionsky et al.(2016)Autophagy12:1−222)。脳溶解物に対するウェスタンブロットは、MPS−IIIAの脳におけるp62の蓄積に関連したLC3−IIのレベルの増加を示した(図4d)。LC3−II及びp62の両方のタンパク質レベルは、CLR01処置により抑制された(図9、パネルG)。免疫蛍光データと一致して、LC3−IIレベルは、WTよりも有意に高いままであった(図9、パネルG)。その上、IHC抗UbK63も、CLR01で処置されたMPS−IIIAの脳では、対照のMPS−IIIAの脳と比較して有意なシグナル減少を示した(図9、パネルE)。これらの結果は、CLR01で処置するとMPS−IIIAの脳においてオートファジーフラックスが再活性化されるという結論をさらに支持する。
本明細書に開示されたデータは、CLR01がMPS−IIIAの脳におけるオートファジー遮断を緩和することができたことを示している。CRL01処置がされたWTマウスでは、リソソームオートファジー軸に有意な変化が観察されなかったので、そのような効果はアミロイド沈着の阻害によって媒介され、よって、オートファジー−リソソーム経路(ALP)に対するCRL01の直接的効果を排除している。それ故、本データは、リソソームへの進行性アミロイド集結が、オートファジーフラックを損なうモデルを支持している。そのような効果の根底にあるメカニズムは、リソソーム遭遇の阻止を介するオートファゴソームの除去に対するアミロイドの悪影響を含む。ニューロンにおける効率的なオートファゴソーム除去のために重要であることが示されているプロセスであるリソソームの位置決めとアミロイドが干渉する可能性があり得る(Pu et al.(2016) J. Cell Sci. 129: 4329−4339)。MPS−IIIAにおけるリソソームアミロイド沈着のCLR01媒介性阻害がまた、リソソーム/オートファゴソームの数の増加に関連していたという知見は、ALPがそのような文脈で何らかの形で誘導されることを示唆している。これは、オートファジー遮断の緩和の結果であり得るか、及び/またはMPS−IIIAにおけるアミロイド沈着によって損なわれ得るシグナル伝達である、ALPを誘導するリソソーム媒介性シグナル伝達経路に対するCLR01のより特異的な効果の結果であり得る。
特定の理論に縛られることなく、一次リソソーム蓄積は、アミロイドタンパク質沈着を誘導すると考えられる。この仮説を支持して、GAGがアミロイド凝集を促進する足場を提供することが報告されている(Iannuzzi et al.(2015)Molecules,20:2510−2528)。その上、オートファジー遮断は、今度は、アミロイド集結を後押しし、これにより、CLR01処置によって妨げられ得る悪循環を生成する可能性が高い。
結論として、本知見は、アミロイド凝集がMPS−IIIA及び他のLSDにおいて神経病状の発症に重要な役割を果たすことを実証し、これにより、LSDを新たなクラスのアミロイド障害として同定する。本明細書のデータはまた、分子ピンセット、すなわち、CLR01が、これらの障害における神経病状の治療において特に魅力的な化合物であることを示している。その上、効率的なリソソーム媒介性オートファゴソーム除去の回復は、CLR01の治療有効性を媒介する重要なメカニズムを表し、これにより、アミロイド沈着の毒性機能の取得を媒介するプロセスへの洞察がより深いものとなり、一般的な神経変性疾患をLSDと関連付ける新たな症候を提供する。
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