本発明は、医薬組成物の送達のための注入器のためのストッパーであって、ストッパーは、ストッパー本体部を有しており、ストッパー本体部は、出口表面の反対側に作動表面を備えており、作動表面と出口表面との間の軸線方向の長さと、横断方向の直径とを有しており、ストッパー本体部は、アクセス直径を画定しており、
ストッパーは、作動表面から軸線方向の場所において、変形可能なシーリングエレメントを備え、変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部を取り囲んでおり、横断方向の直径よりも大きい外径を有しており、変形可能なシーリングエレメントは、熱可塑性エラストマー(TPE)から作製されており、ストッパー本体部の軸線方向の長さの5%から95%の範囲の中の軸線方向の延在を有しており、
ストッパーは、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所においてキャビティーを備え、キャビティーは、ストッパー本体部のアクセス直径よりも大きい横方向の延在を有している、ストッパーに関する。
本発明のストッパーは、キャビティーを備え、キャビティーの場所は、変形可能なシーリングエレメントの場所と重複することとなる。EP2703025は、シリンジのためのガスケットを提案しており、そのガスケットは、ガスケットのフロント円形リブに位置付けされているスクリューの上に形成されたキャビティーを有している。EP2703025のキャビティーは、ガスケットのスライド抵抗の減少を提供すると考えられる。しかし、本発明者は、ここで、EP2703025の中で提案されているようなキャビティーが、TPEから作製された変形可能なシーリングを備えたストッパーの中に含まれているときには、キャビティーは、摺動降伏応力(BLF)に対する影響を提供しないということを観察した。本発明者は、ここで、驚くことには、本発明にしたがって変形可能なシーリングエレメントの場所にキャビティーを有することによって、すなわち、変形可能なシーリングエレメントおよびキャビティーの軸線方向の場所に重複が存在するときに、および、キャビティーの直径がストッパー本体部のアクセス直径よりも大きかったときに、注入器の中のストッパーを移動させるためのBLFは、キャビティーを有さないストッパーと比較して低減されるということを見出した。とりわけ、BLFは、ストッパーが外部潤滑剤無しで使用され得るレベルまで、また、変形可能なシーリングエレメントの表面の上に樹脂コーティング、たとえば、フッ素樹脂コーティングを有することなく使用され得るレベルまで低減された。それによって、本発明のストッパーを備えた注入器は、キャビティーを有していないストッパーと比較して、より滑らかな経験をエンドユーザーに提供することとなる。ストッパー本体部は、アクセス直径を有している。本発明の文脈において、「アクセス直径」は、注入器のシリンダーの中へ挿入されているときに、ストッパーとともに使用するのに適当なピストンロッドの直径に対応している。
本発明者による実験は、公知のストッパーからそのシーリングエレメントを介して容器内側壁部の上に及ぼされる外向きの力は、一般に、保管の間におよび最終的に患者の注入の間に十分なシーリングを実現するために必要とされるものをはるかに超えているということを示している。シーリング能力(容器閉鎖完全性(CCI)としても知られる)は、任意の注入システムの構築に関して注意深く知っておくべきパラメーターである。しかし、本発明は、必要な程度のCCIを維持しながら、過剰な力を排除することが可能であるということを示している。
本発明によれば、ストッパーから変形可能なシーリングエレメントを介して容器内側壁部に向けて及ぼされる過度の逆の力を低減させる目的は、本発明によるストッパー設計によって実現され得る。本発明のストッパーの実装によって、容器内側壁部に対抗する静的な平均の力が、実質的に低減され、それによって、完全な注入システムの性能を大幅に改善する。
ストッパーは、ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとを有している。変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部の横断方向の直径よりも大きい直径を有している。ストッパーは、医薬組成物の送達のための注入器のためのものであり、そのような注入器は、内側壁部と内径とを有するシリンダーを備えることとなる。変形可能なシーリングエレメントの直径は、ストッパーが用いられている場所のシリンダーの内径よりも大きい。ストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入されているときには、変形可能なシーリングエレメントが、ストッパー本体部とシリンダーの内側壁部との間の環状のギャップをシールする。一般的に、ストッパー本体部は、シリンダーの内側壁部と直接的に接触した状態になっていないこととなる。したがって、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、単一の材料から作製されてもよく、もしくは、異なる材料から作製されてもよく、または、ストッパー本体部だけが、異なる材料から作製され得る。シリンダーの内側壁部と接触していないストッパーのセクションは、ストッパー本体部を表していると考えられ得、シリンダーの内側壁部と接触しているストッパーのセクションは、変形可能なシーリングエレメントを表していると考えられ得る。特定の実施形態において、ストッパーは、2つ以上の変形可能なシーリングエレメントを備え、それらは、両方とも、それらの対応する場所にキャビティーを有することが可能である。たとえば、ストッパーは、作動表面から第1の軸線方向の場所において、第1の変形可能なシーリングエレメントを備え、第1の軸線方向の場所においてキャビティーを備え、作動表面から第2の軸線方向の場所において、第2の変形可能なシーリングエレメントを備え、第2の軸線方向の場所において第2のキャビティーを備えることが可能である。ストッパーが2つ以上の変形可能なシーリングエレメントを備えるときには、変形可能なシーリングエレメント同士の間の距離は、一般的に、ストッパーの軸線方向の長さの50%から80%の範囲の中にあることとなり、たとえば、その距離は、1mmから6mmの範囲にあることとなり、たとえば、約5mmなどになることとなる。ストッパーがキャビティーを備えた2つ以上の変形可能なシーリングエレメントを備えるときには、キャビティーは、分離していることが可能であり、または、同じキャビティーが第1の軸線方向の場所から第2の軸線方向の場所へ延在することが可能であり、変形可能なシーリングエレメントがキャビティーを「共有」すると言うことができるようになっている。したがって、ストッパーは、作動表面から第1の軸線方向の場所において、第1の変形可能なシーリングエレメントを備え、作動表面から第2の軸線方向の場所において、第2の変形可能なシーリングエレメントを備え、第1の軸線方向の場所と第2の軸線方向の場所との間に延在するキャビティーを備えることが可能である。特定の実施形態において、ストッパーは、第1の変形可能なシーリングエレメントの第1の軸線方向の場所と第2の変形可能なシーリングエレメントの第2の軸線方向の場所との間に延在するトロイダルキャビティーを備える。いくつかの変形可能なシーリングエレメントがキャビティーを共有するときには、ストッパーの製造が、複数の別個のキャビティーを有するストッパーと比較して簡略化される。そのうえ、2つ以上の変形可能なシーリングエレメントによって、CCIのより良好な制御が取得されるが、一方、ストッパーは、また、注入器のシリンダーの中への挿入の後に低いBLFを有しており、それは、漏れが長期の時間の期間(たとえば、1週間を超える)にわたって防止されるので、プレフィルド注入器に特に関係している。
ストッパー、すなわち、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、任意の適当な材料から作製され得る。とりわけ、変形可能なシーリングエレメントは、注入器のシリンダーの中へ挿入されているときに変形可能なシーリングエレメントが環状のギャップをシールするために適当に弾性的になっていることとなる。ストッパー、たとえば、ストッパー本体部、または、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、たとえば、弾性的なポリマー、たとえば、TPEから作製され得る。特定の実施形態において、ストッパーは、TPE、たとえば、水素化SBCもしくは非水素化SBSまたはこれらの合金からなるリストから選択されるSBCなど、スチレンブロックコポリマー(SBC)から射出成形される。ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとを含むストッパーは、TPEから単一のピースとして射出成形されるということが特に好適である。変形可能なシーリングエレメントに関して、および、とりわけ、単一のピースとして射出成形された変形可能なシーリングエレメントショアおよびストッパー本体部に関して、とりわけ好適な材料は、30から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEであり、さらにより好適なものは、50から90、たとえば、60から80の範囲の中のショアA硬度である。変形可能なシーリングエレメントが、30から90の範囲の中のショアA硬度を備えたTPEであるときには、BLFの低減に対するキャビティーの効果がかなり顕著であるため、ストッパーが外部潤滑無しで使用され得る。この文脈において、外部潤滑は、任意の形態の潤滑、とりわけ、シリコーン油、注入器のシリンダーの内側表面の上に焼き付けられたシリコーン、ストッパーの表面または注入器のシリンダーの内側表面のいずれかの上のペルフルオロポリマーまたは他のラミネートされたポリマーを含む。したがって、変形可能なシーリングエレメントのTPE材料は、シリンダーの中へのストッパーの挿入の後に、注入器のシリンダーの内側表面と直接的に接触した状態になることとなる。本発明者は、とりわけ、TPEから作製された変形可能なシーリングエレメントを備えた本発明のストッパーを備えた注入器が、潤滑原料を備えない医薬組成物とともに使用され得るということを観察した。しかし、BLFは、潤滑剤の存在にかかわらず低下させられることとなり、とりわけ、変形可能なシーリングがTPE以外の材料、たとえば、ブチルゴムから作製されているときには、ストッパーを備えた注入器は、また、潤滑剤を備えることが可能である。
本発明のストッパーのために、たとえば、変形可能なシーリングエレメント、および、また、ストッパー本体部のために、任意のTPEが使用され得る。適当なTPEは、SBC、たとえば、水素化−H−SBC−(SEBS−スチレンエチレンブチレン−スチレンもしくは同様のもの)または非水素化(SBS−スチレン−ブタジエンスチレン)、または、これらのポリマーおよび他の互換性のあるポリマー(たとえば、COCエラストマー、またはスチレン−ブタジエン(SB))などの合金、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン(SIBS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEEPS)、または、これらの化合物のいずれかの合金を備える。好適なSBCは、AlphaGary Corporation(Leominster、MA、USA)、およびMexichem Specialty Compoundsによって市販されているような商標Evopreneの下で知られているものである。Evopreneは、「EVOPRENE(商標) Thermoplastic Elastomer (TPE) Compounds − GENERAL INFORMATION」(2007年7月にAlphaGaryによって発行された)の中に説明されており、好適なEvoprene(商標)ポリマーは、Evoprene(商標) Super G、Evoprene(商標) G、Evoprene(商標) GC、およびEvoprene(商標) HPであり、それらは、それぞれ、パンフレット「EVOPRENE(商標) SUPER G Thermoplastic Elastomer (TPE) Compounds」、「EVOPRENE(商標) G Thermoplastic Elastomer (TPE) Compounds」、「EVOPRENE(商標) GC Thermoplastic Elastomer (TPE) Compounds」、および「EVOPRENE(商標) HP Thermoplastic Elastomer (TPE) Compounds」(2007年7月にAlphaGaryによって発行された)の中に説明されている。AlphaGaryによるすべての上述のパンフレットの内容は、参照により本明細書に組み込まれている。他の関連のエラストマーは、COCエラストマー、たとえば、TOPAS(登録商標)エラストマーE−140を備える。TPEは、ガス(たとえば、酸素)透過性に基づいて選択され得、一般的に、特に、プレフィルドシリンジのためのストッパーに関して、ガス透過性は可能な限り低いということが好適である。SIBS TPEは、一般的に、非常に低いガス透過性を有しており、したがって、これらは、プレフィルドシリンジのためのストッパーにとって適当である。
ストッパーが射出成形されるときには、ストッパーは、従来のゴムピストン、たとえば、ブロモブチルまたはクロロブチルゴムから作製されたピストンの製造において一般に使用されている、加硫などのような技術によって与えられるものよりも低い公差で作製され得る。しかし、ストッパーは、TPEに限定されず、他の適当な材料は、エラストマー、たとえば、ゴムなど、たとえば、天然ゴム、合成ゴム(ポリイソプレンゴム、ブチルゴム)、シリコーンゴムなどを備え、それは、たとえば、ショアデュロメーターに関して定義され得、ショアデュロメーターは、エラストマー材料の弾力性を示し、エラストマー材料の硬度を測定し、ここで、デュロメーターが高ければ高いほど、化合物は硬質になる。たとえば、本発明のある実施形態では、たとえば、変形可能なシーリングエレメントを含むストッパーは、30から90、たとえば、50から90、好ましくは、60から80、より好適には、70から76の範囲の中のショアA硬度を有している。「ショア硬度」および「ショアデュロメーター」という用語は、相互交換可能に使用され得る。一般的に、変形可能なシーリングエレメントは、均質であることとなり、変形可能なシーリングエレメントの体積の全体を通して同じ材料から構成されることとなり、その材料は、所与の範囲の中のショアA硬度を有している。上述の範囲の中のショアA硬度を有する材料を使用することによって、比較的に硬質のエラストマー材料が提供される。ショアAデュロメーターは、選ばれた材料の材料特性を特徴付けるための多くの方式のうちの1つに過ぎないということ、および、他のテストも材料を特徴付けるために用いられ得るということが留意されるべきである。ショアA硬度の測定は、当業者に周知であり、とりわけ、ショアA硬度は、一般的に、ISO868標準にしたがって記録される。
例示的なTPEおよびそれらのショアA硬度が、表1にまとめられている。
TPEは、また、その圧縮永久歪み値によって定義され得、それは、それに印加された(そして、典型的に、%で表現される)力の除去の後に残っている変形に相当する。圧縮永久歪み値は、典型的に、特定の時間の期間にわたって、たとえば、18時間から96時間の範囲、または、22時間から72時間の範囲の中で、および、特定の温度において、たとえば、ISO815標準にしたがって記録される。本発明の文脈において、圧縮永久歪みは、一般的に、「室温」において、たとえば、10℃から40℃の範囲の中で記録される。しかし、温度範囲は、また、室温を超えて、たとえば、23℃から100℃に拡張することが可能である。一般的に、温度が高ければ高いほど、圧縮永久歪みを記録することに関連する時間は短くなる。圧縮永久歪みは、一般的に、可能な限り低くなるべきであるが、本発明のストッパー、または、ストッパーの一部に関して、圧縮永久歪みは、たとえば、室温において、15%から40%の範囲の中にあることが可能である。より高い温度、たとえば、100℃において、圧縮永久歪みは、典型的に、より高くなることとなり、たとえば、最大で50%までとなる。しかし、室温における圧縮永久歪みは、10%から40%の範囲の中にあるということが好適である。圧縮永久歪み値は、一般的に、プレフィルド注入器に関連しており、そこでは、ストッパーがシリンダーの中へ挿入されることとなり、したがって、プレフィルド注入器が長期の時間の期間にわたって保管されるときに圧縮されることとなる。ストッパー、たとえば、ストッパー本体部、および、また、変形可能なシーリングエレメントが、30から90、たとえば、50から90の範囲の中のショアA硬度と、少なくとも25%の、たとえば、25%から35%の範囲の中の圧縮永久歪み値とを有するときには、本発明のプレフィルド注入器のBLFは、保管(たとえば、少なくとも5日間)のときに減少することとなり、本発明のストッパーがプレフィルド注入器にとって特に有利であるようになっている。圧縮永久歪みが室温において40%を下回る限り、CCIが保証される。
変形可能なシーリングエレメントが変形されていないとき、たとえば、ストッパーが注入器の中へ挿入されていないときには、変形可能なシーリングエレメントは、「弛緩した状態」、たとえば、変形のない状態にあると考えられる。ストッパー本体部の材料は、弾性的であることを必要とされず、任意の材料が、ストッパー本体部に関して選ばれ得る。ある実施形態では、ストッパー本体部の材料は、変形可能なシーリングエレメントの材料とは異なっている。別の実施形態では、ストッパー本体部の材料は、変形可能なシーリングエレメントの材料と同じである。たとえば、ストッパー、すなわち、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、単一のピースとして射出成形され得る。
本発明の文脈において、「変形可能なシーリングエレメント」は、ストッパーの任意のセクションを説明することが可能であり、それは、ストッパー本体部の横断方向の直径よりも大きい直径を有している。本発明の文脈において、「直径」という用語は、対応するエレメント、たとえば、ストッパー本体部または変形可能なシーリングエレメントが、円形断面、すなわち、ストッパーの横方向の平面の中の断面を有さなければならないということを暗示しておらず、所望により任意の断面形状が、ストッパー本体部および/または変形可能なシーリングに関して使用され得る。たとえば、断面は、多角形、たとえば三角形、正方形、五角形、六角形など、になっていることが可能であり、直径という用語は、このケースでは、断面寸法、たとえば、対応する断面形状に関して最大の断面寸法を表すこととなる。多角形の断面は、等しい角度と辺の長さとを有する多角形、すなわち、正多角形に限定されず、同様に、断面は、また、楕円形であってもよい。注入器のシリンダーの断面形状は、変形可能なシーリングエレメントの断面形状に対応することとなる。ストッパー本体部は、シリンダーの内側壁部と相互作用せず、ストッパー本体部の断面形状は、変形可能なシーリングエレメントの断面形状にかかわらず、自由に選ばれ得る。
本発明のストッパーは、変形可能なシーリングエレメントを有しており、その変形可能なシーリングエレメントは、ストッパーがシリンダーの中に挿入されているときに、当接境界部においてシリンダーの内側壁部に当接し、ストッパー本体部と容器の内側壁部との間の環状のギャップをシールし、当接境界部および変形可能なシーリングエレメントは、長手方向軸線に対して平行な軸線方向の寸法を有している。変形可能なシーリングエレメントは、作動表面から軸線方向の場所に位置付けされており、キャビティーは、また、その軸線方向の場所に位置付けされている。したがって、キャビティーは、変形可能なシーリングエレメントと同じ場所に位置付けされていると考えられ得、キャビティーは、「シーリングエレメントキャビティー」とも称され得、その場所は、変形可能なシーリングエレメントの反対側であると言うことができる。この場所において、キャビティーは、それによって、変形可能なシーリングエレメントと容器内側壁部との間の力を低減させ、ストッパーを移動させるために必要とされる力の著しい低減を実現し、シーリングエレメントと容器の内側壁部との間の任意の潤滑手段(それに限定されないが、任意のコーティング、任意の液体潤滑剤、および/または焼き付けシリコーンを含む)の完全な除去を可能にする。
変形可能なシーリングエレメントは、好ましくは、凸形になっている。この文脈において、「凸形」という用語は、変形可能なシーリングエレメントの中の任意の2つのポイントの間の真っ直ぐな線が、変形可能なシーリングエレメントの表面と交差しないということを意味している。任意の凸形形状が企図されるが、変形可能なシーリングエレメントは、好ましくは、ストッパーの中心軸線から最大の延在を表すポイント、たとえば、ストッパーの軸線方向の平面の中のポイントを有している。変形可能なシーリングエレメントが凸形表面を有しているときには、変形可能なシーリングエレメントを介して容器の内側壁部に及ぼされる力は、最大化されることとなる。その理由は、シリンダーの長手方向軸線の方向への変形可能なシーリングエレメントの変形が最小化されるからである。接触は、たとえば、変形可能なシーリングエレメントとシリンダーの内側壁部との間の当接境界部にあることが可能である。変形可能なシーリングエレメントとストッパーが挿入されている注入器のシリンダーの内側壁部との間の接触の程度は、可能な限り小さくなっているということが好適である。たとえば、本発明のストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入されているときには、当接境界部が、シリンダーの内側壁部に形成することとなり、当接境界部に関して、当接境界部の最大の軸線方向の寸法と変形可能なシーリングエレメントの最大の軸線方向の寸法との比は、好ましくは、0.01から0.4の範囲、たとえば、0.01から0.2の間、0.01から0.15の間、0.01から0.1の間、0.01から0.05の間の範囲の中にある。たとえば、凸形の変形可能なシーリングエレメント(すなわち、弛緩した状態にある)は、ストッパー本体部の軸線方向の長さの5%から25%の範囲の中の軸線方向の延在、たとえば、0.5mmから2mmの範囲の中の軸線方向の延在と、ストッパー本体部の横断方向の直径よりも105%から120%の範囲の値だけ大きい外径とを有することが可能である。変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとの間の角度によってさらに定義され得、これらの角度は、凸形の変形可能なシーリングエレメントがストッパー本体部の軸線方向の長さの5%から25%の範囲の中の軸線方向の延在を有するときに、120°から160°の範囲の中にあることが可能である。たとえば、外径は、4.65mmの内径を備えたシリンダーを有する0.5mL注入器に関して、4.75mmから5.15mmの範囲の中にあることが可能であり、外径は、6.35mmの内径を備えたシリンダーを有する1mL注入器に関して、6.5mmから7mmの範囲の中にあることが可能であり、または、外径は、8.65mmの内径を備えたシリンダーを有する2.25mL注入器に関して、8.80mmから9.35mmの範囲の中にあることが可能である。ストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入されたときに、接触角度が、シリンダーの内側壁部と変形可能なシーリングエレメントとの間に形成することとなる。したがって、ストッパーの作動表面に面する接触角度、および、ストッパーの出口表面に面する接触角度が存在することとなり、これらの接触角度は、それぞれ、「作動接触角度」および「出口接触角度」と称され得る。ある実施形態では、作動接触角度は、出口接触角度とおおよそ同一であるが、作動接触角度は、また、出口接触角度とは異なっていてもよい。たとえば、接触角度は、5°から60°、たとえば、15°から45°の範囲の中にあることが可能である。接触角度が5°から60°の範囲の中にあるときには、変形可能なシーリングエレメントは、ストッパーがシリンダーの中へ挿入された後にも凸形になることとなる。これは、変形可能なシーリングエレメントのシーリング効果が最大化されることを可能にし、それは、変形可能なシーリングエレメントの外径がシリンダーの内径よりも1.5%から10%大きい、たとえば、2%から5%大きいときに、特に関係している。その理由は、容器閉鎖完全性(CCI)が保証されるからである。ある実施形態では、ストッパー(すなわち、変形可能なシーリングエレメントを含む)は、TPEから射出成形されており、変形可能なシーリングエレメントは、凸形になっており、ストッパーが弛緩した状態にあるときに、シリンダーの内径よりも1.5%から5%の範囲の中の値だけ大きい外径を有しており、また、ストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入されているときには、作動接触角度および出口接触角度は、独立して、5°から45°の範囲の中にある。
ストッパー本体部は、出口表面の反対側に作動表面を有している。したがって、作動表面および出口表面は、ストッパー本体部の反対側端部、すなわち、軸線方向の寸法において反対側端部に位置付けされている。作動表面は、また、ストッパー本体部の作動端部にあると言うことができ、出口表面は、また、ストッパー本体部の出口端部にあると言うことができる。注入器のシリンダーの中へ挿入されているときに、ストッパー本体部の出口端部は、注入器の出口部に面している。
変形可能なシーリングエレメントは、軸線方向の延在を有している。軸線方向の延在は、変形可能なシーリングエレメントの直径がストッパー本体部の直径よりも大きくなっているポイント同士の間の距離によって定義され得る。変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部の軸線方向の長さの5%から95%の範囲の中の軸線方向の延在を有することが可能であり、変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部の上のどこへでも位置付けされ得る。好適な実施形態では、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の延在は、ストッパー本体部の軸線方向の長さの20%から50%の範囲の中にある。
変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部の作動表面から軸線方向の場所に位置付けされている。「軸線方向の場所」という用語は、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の延在によって定義されるポイント、たとえば、ストッパーの軸線方向の平面の中のポイントを表している。一般的に、軸線方向の場所は、変形可能なシーリングエレメントの直径がストッパー本体部の直径よりも大きいポイント同士の間の中間点になることとなる。しかし、ある実施形態では、変形可能なシーリングエレメントは、凸形になっており、ストッパーの中心軸線からの最大の延在、たとえば、変形可能なシーリングエレメントの最大の直径を表すポイントを有している。変形可能なシーリングエレメントが凸形になっており、ストッパーの中心軸線から最大の延在を表すポイントを有しているときには、軸線方向の場所は、作動表面から最大の延在の場所への軸線方向の距離によって定義され得る。したがって、変形可能なシーリングエレメントがストッパーの中心軸線から最大の延在、すなわち、単一の最大の延在を有しているとき、たとえば、変形可能なシーリングエレメントが凸形になっているときには、作動表面から最大の延在の場所は、軸線方向の場所を表している。
ストッパーは、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所にキャビティーを備える。本発明の文脈において、「キャビティー」は、圧縮可能な材料、たとえば、圧縮可能な流体、とりわけ空気またはガスを備え、圧縮可能な材料は、ストッパーの材料によって取り囲まれており、随意的に、ピストンロッドの材料も含む。したがって、たとえば、キャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの中に、たとえば、変形可能なシーリングエレメントの材料の中に、または、ストッパー本体部、たとえば、ストッパー本体部の材料の中に含有、たとえば完全に含有され得る。たとえば、キャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの材料またはストッパー本体部の材料によって囲まれているガスであることが可能である。また、キャビティーは、ストッパー本体部の材料によって囲まれているガスであることが可能である。他の実施形態では、キャビティーは、ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとの間の境界部、たとえば、ストッパー本体部の材料と変形可能なシーリングエレメントの材料との間の境界部に形成されている。さらなる別の実施形態において、キャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの材料とピストンロッドとの間の境界部に形成されており、たとえば、ピストンロッドは、ストッパー本体部を提供することが可能である。特定の実施形態において、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、同じ材料、すなわち、「ストッパー材料」から形成された単一のピースとして作製されている。この実施形態では、キャビティーは、ストッパー材料によって囲まれ得、または、キャビティーは、ストッパー材料とピストンロッドとの間の境界部に形成され得る。
キャビティーは、任意のサイズ、たとえば、体積と形状とを有することが可能である。キャビティーは、単一のキャビティーであることが可能であり、または、キャビティーは、任意の数のより小さいサブキャビティーを備えることが可能であり、たとえば、キャビティーは、「フォーム」であることが可能である。キャビティーがより小さいサブキャビティーを備えるときには、サブキャビティーの合計は、サイズ、形状、および体積に関して、サブキャビティーを備える単一のキャビティーとして表されることとなる。キャビティーは、ストッパー材料の中に含まれ、またはそれによってストッパー材料によって、または変形可能なシーリングエレメントによって囲まれている、ある体積の空気であることが可能である。たとえば、ストッパーは、単一のピース、すなわち、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントを備える単一のピースとして射出成形され得、空気の泡が、射出成形の際に含まれ、キャビティーを形成することが可能である。とりわけ、空気の圧力が、射出成形の温度を考慮に入れて調節され得、射出成形されたストッパーの冷却が、最終的なストッパーの中に適当にサイズ決めされたキャビティーの形成を結果として生じさせることとなるようになっている。
キャビティー、たとえば、ストッパー材料によって囲まれているキャビティーは、任意の所望の形状を有することが可能である。たとえば、キャビティーは、球形になっているか、楕円体になっているか、卵形状になっているか、または円筒状になっていることが可能である。特定の実施形態において、キャビティーは、球形になっているか、楕円体になっているか、卵形状になっているか、または円筒状になっており、ストッパーの横方向の平面の中に横方向の延在、たとえば、直径または長軸を有している。キャビティーは、横方向の延在、たとえば、横方向の直径を有している。横方向の延在は、ストッパー本体部のアクセス直径よりも大きくなっている。ストッパー本体部のアクセス直径は、注入器のシリンダーの中への挿入の後にストッパーを作動させるためのピストンロッドを収容するのに十分になっている。本発明者は、キャビティーがストッパー本体部のアクセス直径よりも小さい延在、とりわけ、直径を有するときに、キャビティーの存在は、潤滑剤の存在にかかわらず、ストッパーのBLFに対する効果を提供しなかったということを見出した。しかし、変形可能なシーリングエレメントの横方向の延在がアクセス直径よりも大きいときには、BLFは、変形可能なシーリングエレメントの上のフッ素樹脂コーティングを含む任意の潤滑無しにストッパーが使用され得る程度まで低下させられた。その効果は、円筒状のキャビティーがピストンロッドとストッパー材料の表面との間に形成されたとき、または、トロイダルキャビティーがピストンロッドとストッパー材料の表面との間に形成されたとき、たとえば、ピストンロッドがストッパーの中へ完全に挿入されたときの両方において観察された。横方向の直径は、好ましくは、変形可能なシーリングエレメントの外径の50%から65%の範囲の中にあり、たとえば、60%から65%の範囲の中にある。
特定の実施形態において、キャビティーは、概してトロイダル形状を有しており、トロイダル形状は、また、ストッパーの横方向の平面の中に横方向の延在、たとえば、横方向の直径または横方向の長軸によって説明され得る。キャビティーがトロイドになっているときには、横方向の延在は、トロイドのコア無しの延在を表すこととなる。たとえば、トロイドは、ストッパー本体部を取り囲むことが可能であり、トロイドが、ストッパー本体部の軸線方向の延在、たとえば、直径、たとえば、アクセス直径に対応するコアを有するようになっている。ストッパー本体部は、一般的に、変形可能なシーリングエレメントの外径の50%から90%の範囲の中の直径を有することとなる。トロイドの深さ、たとえば、ストッパー本体部の表面からの深さは、一般的に、変形可能なシーリングエレメントの外径の10%から30%の範囲の中にあることとなる。キャビティー、たとえば、球形の、楕円体の、卵形状の、または円筒状のキャビティーは、また、ストッパーの軸線方向に軸線方向の延在、たとえば、軸線方向の長さを有することとなり、軸線方向の長さは、たとえば、ストッパーが弛緩した状態にあるときに、ストッパー本体部の軸線方向の長さの5%から95%、たとえば、5%から50%、または、10%から20%の範囲の中にあることが可能である。
さらなる実施形態において、キャビティーは、圧縮可能な材料、たとえば、スポンジなどを備える。たとえば、材料、たとえば、弾性的な材料は、構造体の合計体積の10%から40%を占める材料による規則的なまたは不規則的な構造体のネットワークを有することが可能である。異なる材料、たとえば、2つの材料を備えるそのような構造体を有するストッパーは、2成分成形によって準備され得る。
好適な実施形態では、ストッパー、すなわち、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、その最終的な形状において、材料の単一のピースとして提供される。そのような材料は、TPEの射出成形によって提供され得る。ストッパーは、30から90、たとえば、50から90、たとえば、70から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから、その最終的な形状において単一のピースとして射出成形されるということが特に好適である。このストッパーは、潤滑剤、たとえば、シリコーン潤滑剤を含有しない注入器に関して適当である。
他の実施形態では、キャビティーは、ストッパーのエレメントまたはストッパーのエレメントとピストンロッドとの間の境界部に形成されている。たとえば、ストッパー本体部は、中実の剛性の材料を備えることが可能であり、たとえば、ストッパー本体部は、ピストンロッドであることが可能であり、とりわけ、ピストンロッドの直径は、ストッパー本体部のアクセス直径を画定することが可能であり、変形可能なシーリングエレメントは、Oリングであることが可能であり、Oリングは、Oリングの内径に沿って凹部を備えており、ストッパー本体部、たとえば、ピストンロッドの上にOリングを装着すると、キャビティーが凹部においてOリングとストッパー本体部との間に形成されることとなり、それによって、トロイダル状に形状決めされたキャビティーを形成するようになっている。特定の実施形態において、本発明のストッパーのストッパー本体部は、ピストンロッドの一部であるか、または、ピストンロッドであり、変形可能なシーリングエレメントは、30から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから作製されたOリングであり、Oリングは、Oリングの内径に沿って凹部を有している。ピストンロッドのストッパー本体部パーツの直径は、ピストンロッドを備えたストッパーに関して適当な注入器の内径の10%から90%、たとえば、30%から70%の範囲の中にあることが可能である。Oリングの内径は、ピストンロッドのストッパー本体部パーツの外径よりも小さくなっており、Oリングがピストンロッドのストッパー本体部パーツの上にしっかりと装着されるようになっており、ストッパー本体部の上にOリングを装着すると、キャビティーが、ストッパー本体部とOリングの内側表面との間で、すなわち、凹部において、トロイドとして形成される。ピストンロッドのストッパー本体部パーツの表面は、Oリングがストッパー本体部の上に安定して装着されることを保証するための溝部を有することが可能である。Oリングの材料は、0.2mmから2mmの範囲の中の直径を有することが可能であり、凹部は、Oリングの直径の20%から80%の範囲の中の深さを有することが可能である。さらなる実施形態において、ピストンロッドは、上記に定義されているように、2つ以上のOリングを備える。
さらなる実施形態において、ストッパー本体部は、円筒状の形状、たとえば、アクセス直径を画定する円筒状の形状を有しており、変形可能なシーリングエレメントは、ストッパー本体部の上に装着するための円筒状の構造体、たとえば、「スリーブ」の上に備えられ、ストッパー本体部の上に円筒状の構造体を装着すると、キャビティーがストッパー本体部の表面と円筒状の構造体の内側表面との間に形成されることとなるようになっている。円筒状の構造体は、内側表面を有しており、内側表面は、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所において凹部を含有することが可能であり、および/または、ストッパー本体部の表面は、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所において凹部を含有することが可能である。それによって、トロイダルキャビティーは、ストッパー本体部と円筒状の構造体との間の1つまたは複数の凹部において形成されることとなる。トロイドの「深さ」、すなわち、円筒状の構造体がストッパー本体部の上に装着されているときのストッパー本体部の表面から円筒状の構造体の表面への距離は、概して、変形可能なシーリングエレメントの外径の10%から30%の範囲の中にあることとなる。円筒状の構造体は、2つ、3つ、またはそれ以上の変形可能なシーリングエレメントを備えるということが好適である。ストッパー本体部は、ピストンロッドの一部であることが可能であり、ストッパー本体部が硬質材料、たとえば、熱可塑性のポリマーから作製されているということが好適である。ストッパー本体部は、ストッパーに関して適当な注入器の内径の10%から90%、たとえば、30%から70%の範囲の中の横方向の直径を有することが可能である。円筒状の構造体は、好ましくは、弾性的な材料から作製されており、たとえば、それは、TPE、とりわけ、30から90、たとえば、50から80の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから射出成形され得る。
ストッパーは、ピストンロッドを収容するためのチューブ状のセクションを有することが可能である。ピストンロッドは、ストッパー本体部を備えることが可能である。チューブ状のセクションの直径またはピストンロッドの直径は、一般的に、ストッパー本体部のアクセス直径を画定することとなる。この実施形態では、キャビティーは、ストッパー本体部、たとえば、ピストンロッドと変形可能なシーリングエレメントとの間の境界部内において、たとえば、トロイダルキャビティーとして形成され得る。特定の実施形態において、変形可能なシーリングエレメントを含むストッパーは、たとえば、射出成形によって、単一のピースとして形成されており、ストッパー本体部は、ピストンロッドを収容するためのチューブ状のセクションを有している。ストッパー材料は、好ましくは、TPE、たとえば、スチレンブロックコポリマー(SBC)である。ピストンロッドは、ピストンロッドがチューブ状のセクションの中へ挿入されること、および、ストッパーを作動させる(たとえば、押す)ことを可能にする任意のサイズと形状とを有することが可能である。ピストンロッドの一方の端部は、末端部位を備えた係合セクションと、外径を画定する外側表面とを有している。チューブ状のセクションは、係合セクションを収容するようにサイズ決めされた内径を画定する内側表面を有している。チューブ状のセクションの内径は、係合セクションの外径におおよそ等しいかまたはそれよりも小さくなっていることが可能である。とりわけ、チューブ状のセクションの内径が係合セクションの外径よりも小さいときには、ストッパー材料は、弾性的になっているべきであり、たとえば、ストッパーは、TPEから射出成形され得る。それによって、チューブ状のセクションの中への係合セクションの挿入は、係合セクションの末端部位とチューブ状のセクションとの間の、および/または、チューブ状のセクションの内側表面と係合セクションの外側表面との間の境界部において、キャビティーを形成することが可能である。
チューブ状のセクションは、チューブ状のセクションの作動表面から底部へ、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所を越えて延在している。それによって、チューブ状のセクションの中へのピストンロッドの挿入のときに、キャビティーが、係合セクションの外側表面とチューブ状のセクションの内側表面との間の、および/または、係合セクションの末端部位とチューブ状のセクションの底部との間の軸線方向の場所に形成され得る。たとえば、ピストンロッドは、チューブ状のセクションの中へ挿入され得、末端部位がチューブ状のセクションの底部と接触した状態になるようになっており、トロイダルキャビティーが、係合セクションの外側表面とチューブ状のセクションの内側表面との間に形成される(たとえば、囲まれている)。別の実施形態では、ピストンロッドは、チューブ状のセクションの中へ挿入され、キャビティーが係合セクションの末端部位とチューブ状のセクションの底部との間に形成されるようになっており、このキャビティーは、円筒状のまたは楕円体の形状を有することが可能である。トロイダル形状、円筒状の形状、および楕円体の形状の任意の組み合わせは、また、ピストンロッドがチューブ状のセクションの中にどれくらい遠くへ挿入されるかということを制御することによって可能である。
ピストンロッドがチューブ状のセクションの中にどれくらい遠くへ挿入され得るかということを制御するために、ピストンロッドは、リッジ部などを備えることが可能である。リッジ部は、所望の任意の形状を有することが可能であるが、リッジ部は、一般的に、係合セクションに隣接して位置付けされることとなる。それによって、係合セクションが、チューブ状のセクションの中へ所定の距離まで挿入され得、所定の距離において、チューブ状のセクションの内側表面と係合セクションの外側表面との間に、および/または、末端部位とチューブ状のセクションの底部との間に形成されたキャビティーは、事前定義されたサイズと形状とを有するということが保証される。リッジ部は、ピストンロッドを完全に取り囲むことが可能であり、または、リッジ部は、ピストンロッドの中心軸線から延在する2つ、3つ、またはそれ以上のエレメントを備えることが可能である。リッジ部の形状が何であっても、リッジ部は、注入器のシリンダーの内径よりも小さく、チューブ状のセクションの内径よりも大きい延在、たとえば、直径を有することとなる。
特定の実施形態において、チューブ状のセクションは、係合セクションの相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイスを備える。係合デバイスおよび相補的な係合デバイスは、自由に選ばれ得るが、係合デバイスとその相補的な係合デバイスとの係合は、ピストンロッドがストッパーを押すことと引くことの両方ができることを可能にし、したがって、ストッパーとピストンロッドとを備えた注入器は、それぞれ、注入器の中を上におよび下にピストンを移動させることによって、充填および空にされ得る。ある実施形態では、係合セクションは、外部ネジ山、たとえば、螺旋状の外部ネジ山を有しており、チューブ状のセクションは、それに対応して、相補的な内部ネジ山、たとえば、螺旋状の内部ネジ山を備え、したがって、ネジ山は、それぞれ、係合デバイスと相補的な係合デバイスとを提供する。内部螺旋状ネジ山は、より大きいおよびより小さい直径を有することとなり、それらは、一緒に螺旋を画定している。より小さい直径は、ストッパー本体部のアクセス直径を画定することとなる。係合セクションが外部ネジ山を備えるときには、ピストンロッド、特に、係合セクションは、好ましくは、非弾性的な材料、たとえば、熱可塑性のポリマーから作製される。また、相補的な内部ネジ山を備えたチューブ状のセクションの内側表面は、非弾性的な材料、たとえば、熱可塑性のポリマーから作製され得る。しかし、外部ネジ山が非弾性的な材料から作製される限りにおいて、内部ネジ山、とりわけ、チューブ状のセクション、または、チューブ状のセクションおよび変形可能なシーリングエレメントは、弾性的な材料、とりわけ、TPEから作製され得る。
ストッパー本体部がチューブ状のセクションを備えるときには、底部は、また、たとえば、キャビティーに特定の形状を提供するために、追加的な構造体を備えることが可能である。たとえば、チューブ状のセクションの底部は、突出部を備えることが可能であり、突出部は、上側表面を有しており、上側表面は、係合セクションの末端部位と接触させられ得、キャビティーが突出部の表面とチューブ状のセクションの内側表面との間に形成されるようになっている。また、突出部は、中実部分とも称され得る。突出部は、チューブ状のキャビティーの内径よりも小さい直径を有する円筒状の突出部であることが可能であり、たとえば、そのより小さい直径は、アクセス直径を画定し、形成されるキャビティーが円筒状のシェルの形状を有することとなるようになっている。また、突出部は、他の形状を有することも可能である。たとえば、突出部は、突出部の表面とチューブ状のセクションの内側表面との間にさらなる構造体を備えることが可能であり、チューブ状のセクションの中への係合セクションの挿入のときに、いくつかのサブキャビティーが形成され得るようになっている。たとえば、キャビティーは、中断された円筒状のシェルの形状を有することとなる。たとえば、ストッパーは、突出部からチューブ状のセクションの内側表面へ延在する2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のエレメントを備えた突出部を備え、それぞれ2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のサブキャビティーを生成することが可能である。チューブ状のセクションの底部が追加的な構造体を備えるときには、ストッパーは、好ましくは、変形可能なシーリングエレメントとチューブ状のセクションの底部に突出部を備えたチューブ状のセクションを有するストッパー本体部とを備える単一のピースとして射出成形される。
本発明のストッパーは、少なくとも1つの変形可能なシーリングエレメントを有することとなり、ストッパーは、この少なくとも1つの変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所にキャビティーを有することとなる。しかし、ストッパーは、また、さらなる変形可能なシーリングエレメントを備えることが可能である。ストッパーが2つ以上の、たとえば、2つまたは3つの変形可能なシーリングエレメントを有するときには、それぞれの変形可能なシーリングエレメントは、作動表面から軸線方向の場所にあることとなる。ストッパーは、1つまたは複数のキャビティーを有することが可能であり、少なくとも1つのキャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所にあることとなる。たとえば、ストッパーは、作動表面から第1の軸線方向の場所において、第1の変形可能なシーリングエレメントを有することが可能であり、作動表面から第2の軸線方向の場所において、第2の変形可能なシーリングエレメントを有することが可能である。ストッパーは、作動表面から第1の軸線方向の場所において、第1のキャビティーを有することが可能であり、また、随意的に、作動表面から第2の軸線方向の場所において、第2のキャビティーを有することが可能である。本発明の文脈において、第1の軸線方向の場所は、別段の記述がない限り、ストッパー本体部の出口表面に最も近い軸線方向の場所である。上記に説明されているキャビティーの任意の実施形態は、ストッパーが追加的な変形可能なシーリングエレメントを備えるときには、第1の軸線方向の場所に関連している。
ある実施形態では、ストッパーは、ストッパー本体部の作動表面から第2の軸線方向の場所において、第2の変形可能なシーリングエレメントを有しており、また、第2の軸線方向の場所において、第2のキャビティーを有している。ストッパー本体部は中実であってもよく、両方のキャビティーが、ストッパー本体部の材料によって囲まれていてもよい。特定の実施形態において、ストッパー、とりわけ、TPEの単一のピースとして射出成形されたストッパーは、チューブ状のセクションの作動表面から底部へ変形可能なシーリングエレメントの第1および第2の軸線方向の場所を越えて延在するチューブ状のセクションを備える。この実施形態では、ストッパーは、上記に定義されているような係合セクションを有するピストンロッドとともに使用されることとなる。第1の軸線方向の場所、すなわち、ストッパー本体部の出口表面に最も近い軸線方向の場所における第1のキャビティーは、上記に定義されているように任意のサイズと形状とを有することが可能であり、第2のキャビティーは、係合セクションの外側表面とチューブ状のセクションの内側表面との間の境界部に形成されることとなる。したがって、第2のキャビティーは、概してトロイダル形状のものになることとなり、一方、第1のキャビティーは、トロイダル、楕円体、円筒状、または、それらの組み合わせになることが可能である。この実施形態に関するピストンロッドは、好ましくは、上記に定義されているようなリッジ部を有している。
さらなる実施形態において、ストッパー本体部は、作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとを備え、その作動ストッパーエレメントおよび出口ストッパーエレメントは、弾性フレームによって一緒にリンク接続されている。弾性フレームは、任意の設計を有することが可能であるが、特定の実施形態において、弾性フレームは、リングの全体的な形状を有している。弾性フレームを有するストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入され、作動ストッパーエレメントが押されるときに、弾性フレームが出口ストッパーエレメントを押すこととなり、また、作動ストッパーエレメントが引っ張られるときに、弾性フレームが出口ストッパーエレメントを引っ張ることとなる。出口ストッパーエレメントおよび作動ストッパーエレメントのそれぞれは、上記に定義されているような変形可能なシーリングエレメントを有しており、出口ストッパーエレメントおよび作動ストッパーエレメントは、それぞれ、ストッパー本体部の作動表面から第1および第2の軸線方向の場所に位置付けされており、ストッパーは、それぞれ、第1および第2の軸線方向の場所において、第1のキャビティーと随意的に第2のキャビティーとを有している。キャビティーの直径は、典型的に、独立して、変形可能なシーリングエレメントの外径の50%から65%の範囲の中にあることとなる。出口ストッパーエレメントおよび作動ストッパーエレメントと弾性フレームとを含むストッパーは、好ましくは、たとえば、TPEから、単一のピースとして射出成形される。作動ストッパーエレメント、出口ストッパーエレメント、および弾性フレームのための好適な材料は、TPEのものであり、たとえば、SBC、たとえば、水素化SBCもしくは非水素化SBSまたはこれらの合金からなるリストから選択されるSBCなどである。作動ストッパーエレメント、出口ストッパーエレメント、および弾性フレームは、単一のピースとしてTPEから射出成形されるということがさらに好適である。ある実施形態では、作動ストッパーエレメント、出口ストッパーエレメント、弾性フレーム、または、作動ストッパーエレメント、出口ストッパーエレメント、および弾性フレームは、30から90、たとえば、50から90の範囲の中のショアA硬度を有している。弾性フレームは、50から90、とりわけ、70から90の範囲の中のショアA硬度を有している。
弾性フレームを有するストッパーが注入器のシリンダーの中へ挿入されているときには、作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントの両方の変形可能なシーリングエレメントが、シリンダーの内側壁部に当接し、シリンダーの内側壁部とストッパー本体部との間のギャップをシールし、それによって、作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとの間に圧縮可能なセクションを生成する。弾性フレームは、たとえば、ストッパーが弛緩した状態にあるときに、典型的に、圧縮可能なセクションの体積の10%から90%、たとえば、10%から70%、15%から50%、または20%から40%の範囲の中の体積分率を有することとなり、残りの部分は、圧縮可能な流体、たとえば、空気、または、液体液滴たとえば、空気の湿度に起因して形成された水の液滴などを伴う空気によって構成され得る。圧縮可能なセクションの軸線方向の長さは、典型的に、弛緩した状態にあるストッパーの合計の軸線方向の長さの10%から90%の範囲の中にあることとなり、たとえば、ストッパーの合計の軸線方向の長さの少なくとも20%、たとえば、少なくとも25%または少なくとも30%などになることとなる。たとえば、弾性フレームは、弛緩した状態にあるストッパーの長さの30%から70%の範囲の中の長さ、たとえば、30%、40%、50%、60%、または70%の長さを有することが可能である。弾性フレームを介して作動ストッパーエレメントを出口ストッパーエレメントとリンク接続させることによって、全体的なBLFは、ストッパーの摺動平衡応力と整合させられ、ストッパーの摺動平衡応力と同様の値を有することが可能である。これは、本発明によるキャビティーを備えた2つの変形可能なシーリングエレメントを有する本発明のストッパーを使用して取得され得るものよりも、ストッパーを備えた注入器のエンドユーザーにより滑らかな経験を提供する。弾性フレームを備えたストッパーに関するさらなる詳細は、WO2017/157396に開示されており、それは、参照により本明細書に組み込まれている。
特定の実施形態において、弾性フレームは、円筒状の形状を有している。たとえば、ストッパーは、たとえば、TPEから、単一のピースとして射出成形され得、作動ストッパーエレメントおよび出口ストッパーエレメントとチューブ状のセクションとを有しており、ここで、作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとの間のチューブ状のセクションの少なくとも一部は、低減された壁部厚さを有しており、チューブ状のセクションの中へ挿入されたピストンロッドの係合セクションとの間に接触が存在することができないようになっている。たとえば、壁部厚さは、チューブ状のセクション、すなわち、弾性フレームが圧縮可能なセクションの体積の10%から25%の範囲の中の体積分率を有するようになっている。係合セクションとチューブ状のセクションの壁部との間に接触がない場合、チューブ状のセクションの壁部は、可撓性になることとなり、また、たとえばピストンロッドを使用して、作動ストッパーエレメントが押されるときに、作動ストッパーエレメントが出口ストッパーエレメントよりも前に移動し始めることを可能にすることとなる。それによって、円筒状に形状決めされたチューブ状のセクションは、弾性フレームになることとなる。この実施形態では、トロイダル状に形状決めされたキャビティーが、係合セクションの表面と作動ストッパーエレメントの材料との間に形成されるということが好適である。さらなるキャビティーが、出口ストッパーエレメントの場所に存在することとなる。両方のキャビティーは、キャビティーを有していないピストンエレメントと比較して、低減されたBLFを有することとなり、弾性フレーム(このケースでは、チューブ状のセクション)は、そのうえ、BLFを整合させることとなり、BLFと摺動平衡応力との間の差が、ストッパーを有する注入器のエンドユーザーによってほとんど感じられないようになっている。この実施形態に関して、ピストンロッドは、上記に定義されているようなリッジ部を有するということが好適である。
別の実施形態では、弾性フレームでもあるチューブ状のセクションを備えたストッパーが、係合セクションを有していないピストンロッドとともに使用される。たとえば、ストッパーは、ストッパーを押すことができるピストンロッドとともに使用され得る。この実施形態では、チューブ状のセクションの壁部厚さは、チューブ状のセクション、すなわち、弾性フレームが、圧縮可能なセクションの体積の20%から50%、たとえば、25%から40%の範囲の中の体積分率を有するようになっている。
さらなる実施形態において、ストッパーは、上記に説明されているように弾性フレームでもあるチューブ状のセクションを有しており、また、注入器の中において、ストッパーは、チューブ状のセクションの係合デバイスに対する相補的な係合デバイスを備えた係合セクションを有するピストンロッドとともに使用される。それによって、ピストンロッドは、ストッパーによって注入器を充填することと空にすることの両方を行うことが可能である。たとえば、チューブ状のセクションは、作動表面から作動ストッパーエレメントの材料を通り抜ける第1の内径と、弾性フレームであるチューブ状のセクションの一部における、より大きい第2の内径とを有することが可能であり、ここで、第1の内径からより大きい第2の内径への変化の部位は、チューブ状のセクションの係合デバイスである。ピストンロッドは、第1の内径におおよそ等しい直径を有する係合セクションと、第1の内径よりも大きい断面を有する末端部位とを有することとなる。したがって、末端部位は、返し部としての役割を果たすこととなり、返し部は、ストッパーを備えた注入器の作動端部に向けてピストンを引っ張ることが可能である。したがって、末端部位は、チューブ状のセクションの係合デバイスに対する相補的な係合デバイスである。末端部位は、所望により任意の形状を有することが可能である。たとえば、末端部位は、第1の内径よりも大きいが第2の内径よりも小さい直径を有するディスク形状になっていることが可能であり、または、末端部位は、第1の内径よりも大きい断面を提供するために、ピストンロッドの中心軸線から延在する2つ以上のパーツを有することが可能である。
別の実施形態では、ストッパーは、ストッパーの出口端部に最も近い変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所においてキャビティーを有しており、そのキャビティーは、出口端部に開口しており、すなわち、出口表面において開口している。ストッパーは、上記に定義されているようなチューブ状のセクション、とりわけ、ピストンロッドの係合セクションの相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイスを有するチューブ状のセクションを含むことが可能である。係合デバイスおよび相補的な係合デバイスは、それぞれ、内部螺旋状ネジ山および外部螺旋状ネジ山であることが可能である。この実施形態のストッパーは、そのまま注入器の中で使用され得る。その理由は、キャビティーが、キャビティーを有していないストッパーと比較して、ストッパーのBLFを低減させることとなるからである。しかし、この実施形態のストッパーは、ストッパー本体部の中に囲まれているキャビティーを生成させるための適当な開始ポイントを提供する。たとえば、先端部は、ストッパー本体部に取り付けられ得、キャビティーが先端部の材料とストッパー本体部との間に囲まれるようになっている。ストッパー本体部の材料への先端部の取り付けは、所望により行われ得る。たとえば、先端部およびストッパー本体部は、一緒に接着または溶接され得る。先端部およびストッパー本体部は、同じ材料のものでもよく、または、異なる材料のものでもよい。特定の実施形態において、ストッパー(したがって、ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとを含む)および先端部は、TPEから、たとえば、同じTPEから、作製、好ましくは、射出成形されており、先端部は、超音波溶接またはレーザー溶接を使用してストッパーに取り付けられている。
さらなる別の実施形態において、ストッパー(したがって、ストッパー本体部と変形可能なシーリングエレメントとを含む)は、TPEから射出成形されており、作動表面から変形可能なシーリングエレメントの軸線方向の場所を越えて位置付けされている底部へ延在するチューブ状のセクションを有している。次いで、キャビティーが、チューブ状のセクションの中にプラグを取り付けることによって、チューブ状のセクションの中に形成され、キャビティーがストッパー本体部およびプラグの材料によって囲まれるようになっている。プラグおよびストッパーは、所望により取り付けられ得る。プラグは、チューブ状のセクションを完全にまたは部分的に充填することが可能である。たとえば、チューブ状のセクションがプラグによって完全に充填されるときには、ピストンロッドに係合することができないストッパーが提供され得、それによって、ピストンロッドがストッパーを引っ張ることができるということを防止する。また、プラグは、チューブ状のセクションを部分的に充填することも可能である。これは、チューブ状のセクションが、ピストンロッドの係合セクションの相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイス、たとえば、それぞれ、内部螺旋状ネジ山と外部螺旋状ネジ山とを備えることができるということを可能にする。ストッパーおよびプラグは、同じ材料から作製されてもよく、または、異なる材料から作製されてもよい。しかし、プラグは、TPE、とりわけ、ストッパーと同じTPEから作製されるということが好適である。これは、たとえば、超音波溶接またはレーザー溶接を使用して、プラグおよびストッパーが一緒に溶接していることを可能にする。特定の実施形態において、ストッパー本体部は、たとえば、作動表面において、振動フィーダー、たとえば、ボウルフィーダーの中の配向を促進させるための窪み部を備える。振動フィーダーの中の配向を促進させるための窪み部は、典型的に、内部螺旋状ネジ山を備えない。別の実施形態では、作動表面は、出口表面と対称的になっている。作動表面が出口表面と対称的になっているときには、表面は、ピストンロッドに係合するための任意の係合デバイスを備えないということが好適である。特定の実施形態において、ストッパーは、2つ以上の変形可能なシーリングエレメントを備え、また、変形可能なシーリングエレメントのうちの2つの場所において、少なくとも2つのキャビティーを備え、作動表面は、出口表面と対称的になっている。しかし、別の実施形態では、作動表面は、ピストンロッドの相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイスを備える。任意の係合デバイスおよび相補的な係合デバイスが、本発明の中で使用され得る。ある実施形態では、係合デバイスは、内部螺旋状ネジ山を備え、相補的な係合デバイスは、外部螺旋状ネジ山を備える。
本発明のストッパーは、ピストンロッドの中に一体化され得、作動表面がピストンロッドの作動端部、たとえば、親指プレートになることとなるようになっている。さらなる態様において、本発明は、したがって、医薬組成物の送達のための注入器のためのピストンロッドに関する。ピストンロッドは、本発明のストッパーの任意の実施形態の一体化されたバージョンを有している。
キャビティーまたは「シーリングエレメントキャビティー」は、ストッパーの出口端部に向けたエリアにおいて、および、したがって、薬物配合物に最も近いエリアにおいて、中実のストッパー材料によって取り囲まれ得る。一般的に、容器およびストッパーの長手方向軸線に対して垂直のキャビティー寸法および/または垂直方向の寸法が大きくなればなるほど、変形可能なシーリングエレメントを介して内側壁部に及ぼされる力が低くなり、それによって、変形可能なシーリングエレメントと容器内側壁部との間で、および、たとえば、当接境界部において、静止摩擦および運動摩擦が低くなる。
公知のストッパーにおいて、ストッパーの出口端部に最も近い最も低い変形可能なシーリングエレメントは、ストッパーのシーリング能力の大部分を有している。その理由は、ストッパーが、最も低い変形可能なシーリングエレメントの反対側のエリアにおいて、ならびに、薬物配合物に向けたエリアおよび薬物配合物と接触しているエリアにおいて、中実になっているからである。しかし、容器の内径と比較して、変形可能なシーリングエレメントのより大きい直径と組み合わせられた、変形可能なシーリングエレメントの反対側のエラストマー材料の中実部分は、ストッパー挿入のときにおよびそれ以降に、実質的な当接力を結果として生じさせる。関係する実質的な力は、通常、潤滑手段の使用を決定付け、公知のストッパーの中で克服されるようになっている。
本発明によれば、公知のストッパーの中の変形可能なシーリングエレメントから容器内側壁部への実質的な当接力は、ストッパー中実部分の中にキャビティーを実装することによって著しく低減され、それによって、変形可能なシーリングエレメントの後ろのエラストマー材料の量を低減させ、最終的に、シーリングエレメントと容器との間の静的なおよび動的な力を低減させる。本発明のストッパーは、シーリングエレメントキャビティーを備え、シーリングエレメントキャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの反対側のストッパー中実部分を交換すると考えられ得る。容器の中への挿入の前のその弛緩した状態において、変形可能なシーリングエレメントは、挿入後の十分な容器閉鎖のための適切なシーリングを保証するために容器内径よりも大きい直径を備える。本発明によれば、エラストマー材料とキャビティーとの交換は、ストッパーの上の変形可能なシーリングエレメントの位置にかかわらず、ストッパーの任意の変形可能なシーリングエレメントの後ろで起こることが可能であり、したがって、反対側のキャビティーを備えた変形可能なシーリングエレメントは、本発明を制限することなく、上側の変形可能なシーリングエレメント、および、最も低い変形可能なシーリングエレメント、または、中間のシーリングエレメントであるか、または、上側の変形可能なシーリングエレメントと下側の変形可能なシーリングエレメントとの間の任意の場所、もしくは、ストッパーの作動端部と出口端部との間の任意の場所にあることが可能である。
本発明によるキャビティーは、シーリングエレメントの反対側の完全なキャビティーまたは部分的なキャビティーであることが可能である。本発明によれば、完全なキャビティーは、開口部を有しておらず、したがって、ストッパー本体部の中に完全に埋め込まれている。本発明によれば、部分的なキャビティーは、任意の方向に開口部を有することが可能である。キャビティー開口部は、ピストンロッドのための内側ネジ山キャビティーまたは接続手段に向けて、ストッパーの作動端部の方向になっていることが可能である。本発明によれば、シーリングエレメントキャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの反対側に位置決めされることとなり、シーリングエレメントキャビティーは、好適な実施形態では、ストッパーの出口端部に向けてキャビティーの隣に、隣接するエラストマー材料を有することとなる。
ある実施形態では、シーリングエレメントキャビティーは、ストッパーの出口端部に向けてその開口部を有することとなり、一方、閉じた端部およびキャビティーに隣接したエラストマー材料は、ストッパーの作動セクションに向くこととなる。
最初から、変形可能なシーリングエレメント直径は、容器の内径よりも大きくなっていることとなり、したがって、容器の中に挿入されているときには、変形可能なシーリングエレメントが、容器内側壁に向けて周辺力、たとえば、「基本的な力」を及ぼすこととなる。及ぼされる基本的な力は、容器内径と比較して、シーリングエレメントのより大きい直径から由来する力であることとなる。基本的な力は、比較的に小さくなっているかまたは比較的に大きくなっている可能性があり、それは、変形可能なシーリングエレメントが変形可能なシーリングエレメントの反対側のエラストマー材料によってどのように支持されているかということに依存する。変形可能なシーリングエレメントを支持するための変形可能なシーリングエレメントの反対側のエラストマー材料が多ければ多いほど、容器内側壁部に向けての合計の力が大きくなる。
逆に、変形可能なシーリングエレメントの後ろのエラストマー材料が少なければ少ないほど、容器内側壁部に向けて及ぼされる力は小さくなる。容器壁部に向けての変形可能なシーリングエレメントの合計の力は、変形可能なシーリングエレメントの反対側のエラストマー材料の量の関数として減少または増加した力の行使を引き起こす力と組み合わせられた、変形可能なシーリングエレメント直径の関数としての基本的な力である。結論的に、合計の力は、容器内側壁部に向けてシーリングエレメントに働くエラストマー材料の量によって好影響または悪影響を受け、それは、最終的には、シーリングエレメントキャビティーのサイズおよび寸法の関数であることとなる。
シーリングエレメントキャビティーは、変形可能なシーリングエレメントの軸線に沿ってストッパーの内側の幅を画定するように延在しており、容器の長手方向軸線に沿ってストッパーの内側の高さを画定するように延在している。そして、シーリングエレメントキャビティーの高さは、容器内側壁部に向けてのパワーの行使に影響を与える可能性があるが、特に、変形可能なシーリングエレメントと同じ軸線に沿った幅は、容器内側壁部に向けた力の行使に関して影響の大部分を及ぼすこととなる。幅および高さが大きければ大きいほど、エラストマー材料は少なくなり、低減されたシーリングエレメント当接力を結果として生じさせる。逆に、幅および高さが小さければ小さいほど、エラストマー材料が多くなり、増加されたシーリングエレメント当接力を結果として生じさせる。
ある実施形態では、シーリングエレメントキャビティーは、ストッパー材料によって完全に取り囲まれており、その実施形態によれば、シーリングエレメントキャビティーは、ガスを備えるが、任意の変形可能な材料を備えることが可能である。
本発明の任意の実施形態によれば、シーリングエレメントキャビティーは、ストッパーの任意の寸法において任意の幾何学的形状を有することが可能であり、それは、長方形、長円形、円形、正方形、または、それらの間の任意の形状であることが可能である。シーリングエレメントキャビティーは、変形可能なシーリングエレメント軸線に沿って、ストッパー本体部直径の最大で95%までの直径を有することが可能である。しかし、好適なキャビティー直径は、好ましくは、変形可能なシーリングエレメント軸線に沿って、50%から65%の範囲の中にある。シーリングエレメントキャビティーは、ストッパー長手方向軸線に沿って、ストッパー本体部直径の最大で80%までの直径を有することが可能である。
第4の実施形態において、ストッパー本体部は、それが相互作用する周囲の材料に応じて膨張および収縮する能力を備えた材料のものであることが可能であり、それによって、本発明によるシーリングエレメントキャビティーと同じ結果を実現するが、他の手段によって実現する。特定のプラスチック配合物、たとえば、たとえばブタジエンと組み合わせられたポリスチレン、またはアクリロニトリルなどは、ストッパー本体部を形成し、それによって、変形可能なシーリングエレメントの反対側の公知のエラストマー材料を交換するために計算および使用され得る。ストッパーの中実部分の中の公知のエラストマー材料を、変形可能なシーリングエレメントの反対側の収縮のより重大な手段を備える材料と交換することによって、容器内側壁部に向けての過度の力が低減されることとなる。前記実施形態において、ストッパーは、変形可能なシーリングエレメントの反対側において中実であることが可能であり、したがって、所与の注入システム適用に関する特定の力要件に応じて、シーリングエレメントキャビティーを備えない場合がある。
任意の実施形態またはその組み合わせにおいて、ストッパーは、注入の間に変形可能なシーリングエレメントに向けて、および、さらに容器壁部に向けて及ぼされる過剰な力を吸収する能力を有することが可能であり、公知のストッパーは、変形可能なシーリングエレメントの反対側のエリアにおけるエラストマー材料の中実部分に起因して、それを行うことができない。
ストッパーは、任意の材料から作製され得る。とりわけ、ストッパー本体部は、容器の内側壁部と接触しておらず、ストッパー本体部の材料は、一般的に、注入器の中の任意の医薬組成物に対して不活性であることを必要とされるだけである。変形可能なシーリングエレメントは、同様に、注入器の中の医薬組成物に対して不活性であるべきである。
本発明の1つの実施形態では、ストッパーは、染色または着色されており、たとえば、ストッパーは、ストッパーとシリンジの容器との間のコントラストを提供するために黒色になっている。このコントラストは、容器が体積のインディケーションを備えるときに、より精密な投与量を可能にすることとなる。たとえば、体積を示す黒い線によってマークされた容器において、黒いストッパーは、注入器の中へ吸引されるかまたは注入器から放出される体積のより良好な制御のためにより容易に読み取り可能なインディケーションを作製することが可能である。しかし、顔料および染料は、ストッパーから注入器の中の医薬組成物の中へ浸出する可能性がある。これは、とりわけ、医薬組成物によって事前充填された注入器に関係する。その理由は、このケースでは、医薬組成物が長い時間の期間にわたってストッパーと接触している可能性があるからである。好適な実施形態では、本発明のストッパーは、任意の顔料または染料を備えておらず、たとえば、ストッパーは、「透明」になっている。これは、医薬組成物を備える注入器、たとえば、プレフィルド注入器の中でストッパーが使用されるときに、とりわけ好適である。その理由は、染料または顔料の漏れのリスクが存在しないからであり、また、シリンジの充填は製薬会社において自動化された充填機器によって行われるので、上述のコントラストに関する表現された必要性も存在しないからである。
本発明の特定の実施形態において、ストッパーおよび変形可能なシーリングエレメントは、同じ材料のものであり、たとえば、ストッパー本体部および変形可能なシーリングエレメントは、同じ材料のものであり、1つのコンポーネントとして製造されている。1つの実施形態では、ストッパーおよび変形可能なシーリングエレメントは、変形可能なシーリングエレメントの目的のために適当な任意の材料で、単一のコンポーネントとして製造されている。同じ材料から、ストッパー、たとえば、ストッパー本体部、および変形可能なシーリングエレメント、ならびに任意の随意的な支持シーリングエレメントを提供することによって、よりコスト効率の良い簡単な生産が可能にされ、それによって、かなりの程度まで、異なるプロセスステップ、たとえば、時間のかかる組み立てを回避する。好適な実施形態では、ストッパーおよび/または変形可能なシーリングエレメントは、TPEから作製される。特に適している特定の化合物は、SEBSである、Mexichem Specialty CompoundsからのEvoprene G970であり、比較的に低い圧縮永久歪み比率と組み合わせられたショアA硬度の正しい組み合わせを提供する。
本発明のある実施形態では、ストッパーは、ピストンロッドの接続手段とともにその接続手段を介して、使い捨てのシリンジまたはプレフィルドシリンジのピストンロッドを使用するように特別に専用化されている。この実施形態によれば、ストッパーおよびピストンロッドは、個別に製造され得、ストッパーの中へピストンロッドをその後に装着することがそれに続く。この実施形態によれば、ストッパーおよびピストンロッドの代替的な生産は、デュアル成形手順で特徴付けられており、デュアル成形手順では、ストッパーおよびピストンロッドがデュアル成形シーケンスを通して製造され、デュアル成形シーケンスは、最終的な成形サイクルの後にシーリングエレメントキャビティーの確立を保証し、一方、手動のまたは自動化された組み立てを介したコストのかかる組み立てステップが節減される。前記デュアルまたはトリプル成形の原理は、良好な膨張および収縮特質を備えた中実材料を備える実施形態に関して等しく関係することが可能である。ピストンロッドを含む前記実施形態のいずれかにおいて、これらは、ストッパーの中に装着されているときに、シーリングエレメントキャビティーの中へ延在することができるピストンロッドの最先端部の合計の幅または直径が、シーリングエレメントキャビティーの幅よりも5%から90%の間の値だけ少ないということで特徴付けられる。
第6の実施形態では、シーリングエレメントキャビティーは、シーリングエレメントとストッパーの中心に向かうストッパーの中実部分との間の、中断されたまたは中断されていない円形の円筒状の材料のないエリアによって生成されている。材料のないエリアは、ストッパーの長手方向軸線における所与の寸法の垂直方向の円錐を画定している。
本発明の実施形態のうちのいずれかにおいて、ストッパーは、上側シーリングエレメントと下側シーリングエレメントとの間に、弾性フレームとしても知られる、ストッパー本体部の材料厚さ低減をさらに備えることが可能である。この弾性フレームは、適当な弾性を提供するのに十分である。弾性フレームは、たとえば、弾性的なポリマー、たとえば、TPEから作製され得、または、弾性的な金属から作製され得る。特定の実施形態において、材料低減は、TPE、たとえば、スチレンブロックコポリマー(SBC)、たとえば、水素化SBCもしくは非水素化SBSまたはこれらの合金からなるリストから選択されるSBCなどから射出成形される。ストッパーおよび弾性フレームは、50から90、たとえば、70から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから、その最終的な形状において単一のピースとして射出成形されるということが特に好適である。
既存のストッパーとは反対に、本発明によるストッパーは、シーリングエレメントの段階的な移動によって合計のBLFをより小さいインクリメントに等しく分割するシーリングエレメントの変位させられた移動を導入することによって、ストッパーを移動させるためのBLFとしても知られる、ストッパーを移動させるための静的な力を著しくより低い値に低減させる。作動シーリングエレメントと呼ばれる、容器開放端部に最も近いシーリングエレメントが、移動し始めたときに、その移動は、パッシブシーリングエレメントと呼ばれる、容器針端部に最も近いシーリングエレメントを押すこととなるが、本発明者は、ここで、驚くことには、パッシブシーリングエレメントの静止摩擦が、ストッパーを移動させてシリンダーから液体を放出するために必要とされる力にわずかにしか寄与せず、ストッパーの滑らかな移動が、ストッパーの静止摩擦に寄与する作動シーリングエレメントのみの静止摩擦によって取得されるようになっているということを見出した。
したがって、ユーザーによって感じられる最大BLFは、1つのシーリングエレメントに関するBLFを超えることは決してないこととなる。以下の値は、本発明のある実施形態において取得されるBLF力を例示している。注入完了のために、平均摺動平衡応力4Nに低減された作動シーリングエレメントのBLF7Nは、平均摺動平衡応力4Nに低減されたパッシブシーリングエレメントのBLF7Nに増加され、それは、約14Nの従来のストッパーのBLFのおおよそ50%と同等である。したがって、本発明によるストッパーは、任意の公知のストッパーと比較して半分の値またはそれ以下にBLFを低減させることが可能である。
弾性フレームは、ストッパーシーリングエレメントの差動移動を保証することとなる厚さ寸法を備え、それによって、BLFを低減させる。すべてのシーリングエレメントを同時に移動させる従来のストッパーとは異なり、弾性フレームは、プランジャーロッドによって最初に活性化される容器開口部に最も近いシーリングエレメントが、容器針端部に最も近いシーリングエレメントの移動の前に移動することとなるということを保証する。差動移動によって、合計のBLFは、著しく低減され、著しく改善された滑走性能を実現し、最終的には、注入安定性と、使いやすさと、患者にとっての快適性とを向上し、ここで、プランジャーロッドの急な突然の移動は、患者にとって非常に不快な経験を結果として生じさせる可能性がある。
弾性フレームの寸法は、ストッパーの長手方向および水平方向の軸線に沿った長さおよび厚さに関して変化することが可能である。弾性フレームは、1つの所与のストッパーに関する厚さ寸法に関して、さらに変化することが可能である。
変形可能なシーリングエレメントは、適当な硬度および弾力性の材料から作製されており、ストッパーと容器の内側壁部との間の環状のギャップがシールされることを保証する。任意のTPE材料が、変形可能なシーリングエレメントに関して選ばれ得る。好適な実施形態では、本発明のストッパーおよび変形可能なシーリングエレメントは、適当な熱可塑性のポリマー、たとえば、Mexichemによって製造されているEvoprene(それは、化学的に不活性なSEBS配合物である)などから射出成形することによって、1つのコンポーネントで作製される。ストッパーは、好ましくは、射出成形されており、それによって、変形可能なシーリングエレメントは、従来の加硫技術によって製造された従来のゴムストッパーによって与えられるものよりも低い公差で作製され得る。適当なストッパー材料は、エラストマー、たとえば、ハロブチルゴムなど、たとえば、クロロブチル、ブロモブチル、天然ゴム、合成ゴム(ポリイソプレンゴム、ブチルゴム)、シリコーンゴム、TPEのような熱可塑性エラストマーなどを備え、それらは、たとえば、ショアデュロメーターに関して定義され得、ショアデュロメーターは、エラストマー材料の弾力性を示し、エラストマー材料の硬度を測定し、ここで、デュロメーターが高ければ高いほど、化合物は硬質である。たとえば、本発明の1つの実施形態では、変形可能なシーリングエレメントまたはストッパーおよび変形可能なシーリングエレメントは、約30から約90、好ましくは、60から80、より好適には、70から76の範囲の中のショアA硬度を有している。「ショア硬度」および「ショアデュロメーター」という用語は、相互交換可能に使用され得る。一般的に、変形可能なシーリングエレメントは、均質であることとなり、変形可能なシーリングエレメントの体積の全体を通して同じ材料から構成されることとなり、その材料は、所与の範囲の中のショアA硬度を有している。上述の範囲の中のショアA硬度を有する材料を使用することによって、比較的に硬質のエラストマー材料が提供される。公知のストッパーと比較してより硬質の材料は、同時に適切な容器閉鎖を維持しながら、容器内側壁部との当接境界部を低減させることに関して、特に有利である。その理由は、より硬質の材料が、ブチルゴムおよび他の公知の材料(そのより軟質の材料は、挿入されるときにバレル内側壁部に沿って重大な膨張を有する)の通常の傾向を低減させ、それによって、実質的な当接境界部を取得し、ひいては、変形可能なシーリングエレメントと容器内側壁部との間の力を増加させる実質的な接着エリアを取得するからである。
ストッパーは、上記に定義されているような1つまたは複数の変形可能なシーリングエレメントを有することが可能であるが、ストッパーは、他の形状と機能とを備えた追加的なシーリングエレメントを有することも可能である。たとえば、ストッパーは、シリンダーの中のストッパーの配向をガイドまたは制御することができる支持シーリングエレメントを有することが可能である。さらに、それは、支持用エレメントを有することが可能であり、支持用エレメントは、シーリング能力を備えないが、容器の内側のストッパーの正しい位置決めを支持するための物理的な能力を備えている。
容器内径よりも1.5%大きい直径を有する変形可能なシーリングエレメントは、所与の材料に関して、完全な容器閉鎖を取得するには十分であるが、ほとんどの変形可能なシーリングエレメントは、容器の内径よりも少なくとも3%大きい直径を有しているということをテストは示した。最終的に、シーリングエレメント原材料の硬度および/または設計は、変形可能なシーリングエレメント直径の選択に影響を与える。
同一の原材料、変形可能なシーリングエレメントプロファイル、および直径を有する2つのストッパーは、それらが中実になっているかまたは変形可能なシーリングエレメントの後ろにシーリングエレメントキャビティーを備えるかに応じて、静的なおよび動的な力に関して著しく異なることとなるということをさらなるテストが示した。
他のテストは、本発明によるキャビティーが、Tween溶液液体に関して35.26%、および、WFI液体に関して56%によって、BLFを低減させることが可能であるということを確認している。追加的に、本発明によるキャビティーは、Tween溶液液体に関して73.68%、および、WFI液体に関して62.5%によって、ストッパーの「平均滑走力」としても知られる動的な力を低減させることとなる。
ストッパーは、注入器のためのものであり、別の態様では、本発明は、ストッパーを備えた注入器に関する。変形可能なシーリングエレメントは、ストッパーがシリンダーの中へ挿入されているときに、内側壁部とストッパー本体部との間の環状のギャップをシールする。ストッパーの任意の実施形態は、本発明の注入器の中で使用され得る。注入器は、シリンダーを備え、本発明の文脈において、「シリンダー」は、ストッパーがシリンダーの中の1つの位置から別の位置へ移動させられることを可能にする任意の種類のチューブなどである。シリンダーは、互いに反対側にある「作動端部」と「出口端部」とを有している。シリンダーの作動端部は、シリンダーの中でストッパーを移動させるために、すなわち、作動表面を介してストッパーを「作動」させるために、ストッパーへのアクセスを可能にする。シリンダーの出口端部は、シリンダーの中に含有される流体のための出口部を備える。
変形可能なシーリングエレメントの外径は、典型的に、シリンダーの内径よりも1.5%から10%大きくなっており、たとえば、2%から5%大きくなっている。本発明の注入器が、シリンダーの内径よりも1.5%から10%大きいという範囲の中の外径を備えた変形可能なシーリングエレメントを有するストッパーとともに使用されるとき、および、変形可能なシーリングエレメントが、30から90の範囲の中の、たとえば、50から90の範囲、または70から90の範囲の中のショアA硬度を有するとき、注入器は、外部潤滑剤を必要としない。したがって、本発明のある実施形態では、注入器は、外部潤滑剤を備えない。
シリンダーは、任意の関連材料から作製され得、典型的な材料は、ポリマー材料、たとえば、環状オレフィンコポリマー(COC)、たとえば、TOPASポリマー(TOPAS Advanced Polymers GmbHによって供給される)、環状オレフィンポリマー(COP)、たとえば、Zeonor、もしくはポリスチレンなど、または、ガラス、たとえば、ホウケイ酸ガラスなどを備える。ホウケイ酸ガラスは、一般的に、プラスチックと比較して優れたバリア特質を有している。COCポリマーは、それらの優秀なバリア特質に起因して有利であり、したがって、医薬品の長期の保管に関する要求に応える。別の実施形態では、シリンダーは、ガラス、たとえば、ホウケイ酸ガラスから作製される。また、シリンダーは、金属から作製され得、または、それは、ポリマー材料、ガラス、または金属の任意の組み合わせを備えることが可能であるということが企図される。シリンダーの断面形状は限定されないが、シリンダーは丸い断面を有するということが好適である。また、断面は、長円形、楕円形、多角形などであることが可能であるということが企図される。シリンダーが丸い断面を有するときには、直径、たとえば、内径は、シリンジとともに従来から使用される任意の値を有することが可能である。たとえば、好適な実施形態では、シリンダーは、2mmから12mmの範囲の中の内径、たとえば、4.65mm、6.35mm、8.65mm、または11.85mmの内径を有しているが、それは、本発明によれば、より大きい値を有することが可能である。
変形可能なシーリングエレメントが、30から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEであるときには、BLFの低減に対するキャビティーの効果がかなり顕著であるため、ストッパーが外部潤滑無しで使用され得る。この文脈において、外部潤滑は、シリコーン油、注入器のシリンダーの内側表面の上に焼き付けられたシリコーン、ストッパーの表面または注入器のシリンダーの内側表面のいずれかの上のペルフルオロポリマーを含む。本発明は、とりわけ、TPEから作製された変形可能なシーリングエレメントを備えた本発明のストッパーを備えた注入器が、潤滑原料を備えない医薬組成物とともに使用され得るということを観察した。
ある実施形態では、ストッパーは、TPEから作製された変形可能なシーリングエレメントを備え、注入器は、潤滑剤を備えておらず、とりわけ、注入器は、シリコーン潤滑剤を備えていない。潤滑剤、たとえば、シリコーン潤滑剤は、特定の医薬化合物、たとえば、タンパク質分子に基づく医薬化合物、たとえば、ワクチンなどに対して不活性でなく、潤滑剤は、医薬化合物によって事前充填された注入器の長期保管のために回避されるべきである。したがって、この実施形態は、有利には、医薬化合物に対する有害な影響を伴わずに、医薬化合物、たとえば、タンパク質ベースの医薬化合物を事前充填された本発明の注入器の長期保管を可能にする。シリンダーの内側表面に接触する変形可能なシーリングエレメントが、30から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから作製されているときには、潤滑剤、たとえば、シリコーン潤滑剤が存在しないときでも、および、とりわけ、室温における圧縮永久歪みが15%から40%の範囲の中にあるときでも、スティックイン効果が回避される。したがって、変形可能なシーリングエレメントが、30から90の範囲の中のショアA硬度を有するTPEから作製されており、潤滑剤が存在していない、任意の実施形態は、長期保管に特に適している。その理由は、本発明のストッパーによって与えられるBLFの低減に起因して、滑らかなエンドユーザー経験を依然として保ちながら、スティックイン効果が起こらず、長期のシーリングが提供され、潤滑剤からの医薬品に対する悪影響が回避されるからである。この効果は、ポリマーシリンダーとガラスシリンダーとを有する注入器に関して観察される。これらの効果は、ストッパーが、弾性フレームによって一緒にリンク接続されている作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとを備えるときに、および、したがって、1つの実施形態では、注入器が、上記に定義されているように弾性フレームによって一緒にリンク接続されている作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとを備えたストッパーを備えるときに、とりわけ関係する。
無潤滑相互作用は、ガラスシリンダーを備えた注入器に特に適しており、ある実施形態では、注入器は、ガラスシリンダーを備え、ストッパーは、30から90の範囲の中のショアA硬度を備えたTPEから作製された変形可能なシーリングエレメントを有しており、注入器は、ストッパーと比較して、潤滑、たとえば、外部潤滑を備えていない。特定の実施形態において、注入器は、ガラスシリンダー、たとえば、ホウケイ酸ガラスシリンダーを備え、注入器は、上記に定義されているように弾性フレームによって一緒にリンク接続されている作動ストッパーエレメントと出口ストッパーエレメントとを備えたストッパーを備え、注入器は、潤滑剤を有していない。
一般的に、ガラスシリンダーは、従来のピストンと相互作用するには広過ぎる内径公差を有しており、同時に、従来のピストンに関する高過ぎるBLF値に起因する潤滑を省略する。低い直径値において、BLFは、高くなり過ぎることとなり、高い直径値において、容器閉鎖完全性(CCI)は、従来のピストンによって損なわれることとなる。対照的に、本発明において用いられるストッパーは、変形可能なシーリングエレメントのその変位させられた移動に起因する広い公差を補償することが可能であり、それは、BLFを許容可能な値の中に依然として維持しながら、より大きいピストン直径を可能にし、同時に、従来の潤滑の省略を可能にする。
ある実施形態では、シリンダーは、ガラス、たとえば、ホウケイ酸ガラスから作製されており、注入器は、潤滑剤、特に、シリコーンベースの潤滑剤を備えていない。取得される効率的なシーリングと低減されたBLFとの組み合わせは、プレフィルド注入器の長期保管に関して特に有利である。その理由は、スティックイン効果が起こらず、そのうえ、医薬組成物、たとえば、タンパク質ベースの医薬組成物に対する潤滑剤の有害な影響が回避されるからである。本発明は、スティックイン効果に悩まされない、医薬組成物の長期保管のための注入器を提供すると言うことが可能である。
注入器は、被験者の皮膚を通して被験者に医薬組成物を送達するために用いられる任意の種類の注入器であることが可能である。たとえば、注入器は、シリンジであることが可能であり、シリンジは、たとえば、皮下(SC)送達、筋肉内(IM)送達、皮内(ID)送達、もしくは静脈内(IV)送達、または、別のタイプの送達を介して、医薬組成物を注入するために、皮下注射針と嵌合させられる。
注入器は、たとえば、出口端部において、皮下注射針を取り付けるかまたは装着するためのフィッティングを備えることが可能である。したがって、シリンダーは、皮下注射針の相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイスを提供するシリンダーからのテーパー付きの出口部、たとえば、チューブ状の出口部を有することが可能であり、たとえば、係合デバイスおよび相補的な係合デバイスは、オス−メス相互作用を備えることが可能であり、チューブ状の出口部が、随意的に、外部ネジ山、たとえば、螺旋状の外部ネジ山を備え、皮下注射針が、随意的に、相補的な内部ネジ山、たとえば、螺旋状の内部ネジ山を備える。皮下注射針は、皮下注射針の簡単な除去および交換を可能にするように嵌合させられ得、または、皮下注射針は、注入器の上に恒久的に装着され得る。とりわけ、皮下注射針は、注入器の上に装着され得、その除去が注入器の破壊を必要とするようになっており、それによって、再使用を防止し、それは、本発明の文脈において、「恒久的」であると考えられる。注入器は、シリンダーの出口部に取り付けられている(たとえば、恒久的に取り付けられている)皮下注射針を備えるということが好適である。
本発明のある実施形態では、注入器(好ましくは、プレフィルド)は、皮下注射針を備えたシリンジである。シリンジは、チューブ状の出口部または別の形状の出口部の上に装着された(たとえば、恒久的に装着された)皮下注射針を有することが可能である。注入器が事前充填されているとき、とりわけ、それがピストンロッドとしての使用のための針キャップも備えるときに、シリンダーの作動端部とストッパーの作動表面との間にクリアランスが存在している可能性がある。クリアランスは、ピストンロッドがシリンダーの中に挿入されているときのピストンロッドの安定性を保証し、それは、注入器のより安全でより容易な動作を結果として生じさせる。クリアランス(たとえば、長さの単位で測定される)は、注入器のサイズ、たとえば、体積、および注入器の中の医薬組成物の用量に関係する任意の値であることが可能である。クリアランスに関する典型的な値は、約2mmから約20mmの間にある。しかし、クリアランスは、注入可能な体積の実際の体積がシリンダー使用可能な体積よりもかなり少ないケースでは、たとえば、注入可能な体積が単に0.01mlから0.2mlの間にある(たとえば、0.05mlである)眼科注入に関して、20mmを超えることが可能であるが、注入器本体部ひいてはシリンダーは、ユーザーが注入器をハンドリングおよび制御することができるようにするために、かなり大きくおよび特に長くなっている。
本発明の注入器は、好ましくは、プレフィルド注入器である。テストは、これらの内容物に応じて、同一のシリンダーを備えた同一のストッパーをテストすることからの力を比較するとき、本発明によるストッパーが、異なる静的なおよび動的な力を有しているということを示した。同一のコンポーネントが含まれた状態で、テストは、WFI(注射用水)またはTween溶液(Tween80溶媒)によって充填されたシリンダーをテストするときに、BLFおよび滑走力が低減されるということを示した。逆に、BLFおよび滑走力は、空のシリンダーをテストするときに、より高くなる。この結果は、本発明によるストッパーおよびシーリングエレメントが、述べられているタイプの液体との相互作用の間に潤滑効果を有しており、注入器が、医薬組成物、とりわけ、任意の潤滑添加剤を備えない医薬組成物によって事前充填された注入器に特に適しているようになっているということを示している。出口端部シーリングエレメントとの間のこの相互作用が、医薬注入剤によってさらに改善されるということを考える理由があり、医薬注入剤は、通常、可塑剤の形態の賦形剤、および/または、摩擦力をさらに低減させることとなる油の形態の添加剤を備える。
本発明の任意の態様の注入器の特徴は、自由に組み合わせられ得、特定の特徴に関して取得される任意の利点は、注入器の中のそれぞれの特徴を組み込むことによっていずれかの態様に利用可能である。
以下において、本発明は、例の支援によって、および、概略的な図面を参照して、より詳細に説明されることとなる。
さまざまな実施形態の中の特徴の組み合わせも企図されているということ、ならびに、さまざまな特徴、詳細、および実施形態が、他の実施形態の中へ組み合わせられ得るということが理解されるべきである。
図を参照することは、本発明を説明するのに役に立ち、示されているような特定の実施形態に特徴を限定するものとして解釈されるべきではない。
本発明は、医薬組成物の送達のための注入器のためのストッパーに関し、また、注入器に関する。ここで、本発明は、添付の図面を参照してより詳細に説明されることとなる。特定の図は、本発明の注入器の「断面図」として示されており、ここで、「断面図」の中の注入器は、その他の方法で示されている注入器と比較して90°の角度で示されている。特定の図は、本発明の注入器の側面図を示している。これらの側面図は、注入器の出口部を示していないが、本発明の注入器は、出口部(たとえば、皮下注射針と嵌合されている)を有することとなるということが理解されるべきである。
図1は、先行技術のストッパー1001の例を示している。ストッパー1001は、作動端部1003と出口端部1004とを備えたピストン本体部1002を有しており、作動端部1003は、内部螺旋状ネジ山1008を有するチューブ状のセクション1007を備える。ストッパー1001は、2つの変形可能なシーリングエレメント1005を備える。ストッパー1001は、中実のセクション1006を有している。したがって、ストッパー1001は、中実のエラストマー材料1006から変形可能なシーリングエレメント1005を介して容器内側壁部(図示せず)に向けて実質的な力を及ぼし、満足のいく注入機能性のための潤滑手段の使用を決定付け、重大な不利益を引き起こす。
図2は、本発明のストッパー1の実施形態を示しており、図3では、ストッパー1が、本発明の注入器21の中へ挿入されている。示されているストッパー1は、熱可塑性エラストマー(TPE)から単一のピースとして射出成形されている。図4および図5では、ストッパー1は、ピストンロッド10の異なる実施形態とともに示されている。ストッパー1は、ストッパー本体部2を有しており、ストッパー本体部2は、出口表面4の反対側に作動表面3を備えており、また、作動表面3と出口表面4との間に軸線方向の長さを有している。ストッパー本体部2は、横断方向の直径を有しており、ストッパー本体部2は、アクセス直径を画定している。作動表面3から軸線方向の場所において、ストッパー1は、変形可能なシーリングエレメント5を備え、変形可能なシーリングエレメント5は、ストッパー本体部2を取り囲んでおり、横断方向の直径よりも大きい外径を有している。変形可能なシーリングエレメント5は、ストッパー本体部2の軸線方向の長さの5%から95%の範囲の中の軸線方向の延在を有している。シリンジ21のシリンダー22の中へ挿入されるときには、変形可能なシーリングエレメント5は、シリンダー22の内側壁部23に当接し、変形可能なシーリングエレメント5が、内側壁部23とストッパー本体部2との間の環状のギャップをシールするようになっている。ストッパー1は、支持シーリングエレメント51とともに示されており、支持シーリングエレメント51は、また、内側壁部23に当接している。支持シーリングエレメント51が存在している場合には、それは、典型的に、変形可能なシーリングエレメント5の直径よりも小さい直径を有することとなり、それは、示されている実施形態では、ストッパー本体部2のアクセス直径よりも大きい横方向の延在(直径)を有している。支持シーリングエレメント51は、ストッパー1がシリンダー22の中に装着されているときに、ストッパー1が傾くことを防止することが可能である。変形可能なシーリングエレメント5は、TPEから作製されており、示されている実施形態では、TPEは、無潤滑Evoprene G970(Mexichem Specialty Compounds)である。
チューブ状のセクション7は、作動表面3から延在しており、チューブ状のセクション7は、内部螺旋状ネジ山71を有しており、内部螺旋状ネジ山71は、ピストンロッド10の係合セクション11の相補的な係合デバイスに係合するための係合デバイスを表している。したがって、キャビティー6は、ピストンロッド10がチューブ状のセクション7の中へ挿入されているときに、ピストンロッド10の係合セクション11の末端部位13と変形可能なシーリングエレメント5との間の境界部の中に形成されている。具体的には、相補的な係合デバイスは、外部螺旋状ネジ山14である。内部螺旋状ネジ山71は、螺旋によって画定される最小直径および最大直径を有している。螺旋の最小直径は、この実施形態では、ストッパー本体部2によって画定されるアクセス直径になることとなる。
ピストンロッド10は、通常、硬質ポリマー材料から作製されることとなる。示されているように、ピストンロッド10は、リッジ部12を有しており、リッジ部12は、内部螺旋状ネジ山71の螺旋の最大の直径よりも大きいが、シリンダー22の内径よりも小さい直径を有している。それによって、リッジ部12は、ピストンロッド10の係合セクション11がチューブ状のセクション7の中へどれくらい深く挿入され得るかということを画定する。ピストンロッド10の係合セクション11がチューブ状のセクション7の中へ完全に挿入されているときに、すなわち、示されている実施形態では、係合セクション11がチューブ状のセクション7の中へねじ込まれているときに、キャビティー6は、ピストンロッド10の末端部位13の間に形成されている。したがって、キャビティー6は、図4に示されているような円筒状のキャビティー6であることが可能であり、または、図5に示されているようなトロイダルキャビティー6であることが可能である。両方のケースにおいて、キャビティー6は、ストッパー本体部2のアクセス直径よりも大きい横方向の延在、たとえば、直径を有している。
図6は、ストッパー1の実施形態を示しており、ストッパー1は、ストッパー1の出口表面4に最も近い変形可能なシーリングエレメント5の軸線方向の場所においてキャビティー6を有しており、そのキャビティー6は、出口表面4に開口している。
図7は、ストッパー1の実施形態を示しており、ストッパー1は、キャビティー6を有しており、キャビティー6は、ストッパーのTPEの中に囲まれている。ストッパー1は、たとえば、2つのピースとして射出成形され得、一方のピースは、図6に示されているような開口したキャビティー6を有するストッパー本体部2であり、別のピースは、先端部であり、先端部は、ストッパー本体部2に取り付けられ得、溶接した後に、キャビティー6が先端部の材料とストッパー本体部2との間に囲まれるようになっている。図7のストッパー1は、チューブ状のセクション7を有していないが、チューブ状のセクション7を有するストッパー本体部2も、図7に示されているような囲まれたキャビティー6を備えて準備され得る。
図8、図9、および図10は、ストッパー1の実施形態を示しており、キャビティー6は、トロイダル形状を有している。頂部パネルにおいて、ストッパー1は、断面図で示されており、底部パネルにおいて、ストッパー1は、上面図で示されている。示されているすべての3つの実施形態において、ストッパー1は、好ましくは、TPEの単一のピースとして射出成形することによって準備される。図8および図9において、チューブ状のセクション7は、チューブ状のセクション7の底部において突出部72を有しており、その突出部72は、チューブ状のセクション7の中へ延在している。それによって、ピストンロッド(図8および図9には示されていない)がチューブ状のセクション7の中へ挿入されているときに、トロイダルキャビティー6が形成されることとなる。図9において、突出部72は、2つのサブキャビティーを形成するように形状決めされたトロイダルキャビティー6を形成するように形状決めされており、キャビティー6が、中断された円筒状のシェルの形状を有するようになっている。図10において、チューブ状のセクション7は、キャビティー6から分離されており、キャビティー6は、その代わりに、出口表面4からストッパー本体部2の中へ延在するように形成されている。
図11、図12、および図13は、弾性フレーム83を有するストッパー1の実施形態を示している。これらのストッパーは、好ましくは、TPEの射出成形によって単一のピースとして作製される。図11において、ストッパー1は、それぞれ、aパネルおよびbパネルにおいて、互いに対して90°の異なる角度で示されている。図12および図13において、パネルaは、ストッパー1を示しており、パネルbでは、ストッパー1が、注入器21のシリンダー22の中へ挿入されている。したがって、ストッパー1は、作動ストッパーエレメント81と出口ストッパーエレメント82とを有しており、それらは、弾性フレーム83によって一緒にリンク接続されている。作動ストッパーエレメント81および出口ストッパーエレメント82は、シリンダー22の内側壁部23に当接しており、シリンダー22の内側壁部23とストッパー本体部2との間のギャップをシールしており、それによって、作動ストッパーエレメント81と出口ストッパーエレメント82との間に圧縮可能なセクション84を生成させている。示されている実施形態は、両方の変形可能なシーリングエレメント5において、キャビティー6を有している。図12および図13において、パネルbは、矢印によって示されているような力の印加のときに、どのように弾性フレーム83(それは、円筒状の形状を有している)が変形することができるかということを示している。したがって、矢印は、ピストンロッド10がシリンダー22の出口端部に向けて押されるときに起こる力を表している。図12のストッパー1は、チューブ状のセクション7よりも大きい直径を有する末端部位13を有する係合セクション11を備えたピストンロッド10を有しており、末端部位13が返し部として機能するようになっており、返し部は、ストッパー1を引っ張り戻すことが可能であり、それによって、注入器21のシリンダー22を充填することが可能である。
図14は、ストッパー本体部2の中に囲まれているキャビティー6を有するストッパー1のいくつかの実施形態を示しており、図15では、同様のストッパー1が、それぞれ左側パネルおよび右側パネルにおいて、異なる直径を有するキャビティー6を備えて示されており、ここで、矢印は、変形可能なシーリングエレメント5を介してシリンダー22の内側壁部23に及ぼされる力を示している。したがって、キャビティー6の直径が小さければ小さいほど、内側壁部23への力は大きくなり、それによって、摺動降伏応力(BLF)は高くなる。したがって、キャビティー6の横方向の延在は、変形可能なシーリングエレメント5の外径の少なくとも50%であるべきである。キャビティー6の横方向の延在が、変形可能なシーリングエレメント5の外径の50%を下回る場合には、十分に低いBLFが、ストッパーの潤滑を回避することができない可能性がある。
図16は、どのようにキャビティー6がピストンロッド10の中に一体化され得るかということを示している。したがって、たとえば、ピストンロッド10は、一体化されたストッパー1を備えた円筒状のセクションを有することが可能である。代替的に、ピストンロッド10は、係合セクション11に対応する円筒状のセクションを有することが可能であり、それは、TPEから作製されたOリングによって取り囲まれており、Oリングは、凹部を有しており、それによって、ピストンロッド10の上に装着されているときに、キャビティー6を提供する。さらなる実施形態において、ピストンロッド10は、係合セクション11に対応する円筒状のセクションを有することが可能であり、それは、TPEから作製されたスリーブによって取り囲まれており、スリーブは、キャビティー6を備えた1つ、2つ、またはそれ以上の変形可能なシーリングエレメント5を備え、キャビティー6は、スリーブの内側表面とピストンロッド10の係合セクションパーツの外側表面との間に形成されている。
本発明のストッパー1のさらなる実施形態が、図17に示されている。この実施形態では、ストッパーは、2つの変形可能なシーリングエレメント5を有しており、それらは、ストッパー1の作動表面3から延在するトロイダルキャビティー6を共有している。したがって、キャビティー6は、変形可能なシーリングエレメント5の軸線方向の場所同士の間で延在している。ストッパー1は、支持用の変形可能なシーリングエレメント51を有している。
実施例
図2に示されているストッパーは、TPE材料Evoprene G970(Mexichem Specialty Compounds)から射出成形することによって準備された。ストッパーは、2つの変形可能なシーリングエレメントを有していた。ストッパーは、27Gの打ち込まれた針を備えた6.35mm内径の1.0ml無潤滑ホウケイ酸ガラスシリンダーの中に装着されており、一体化された針を備えたプレフィルドガラス注入器としてテスト施設に提供され、試験が始まるまで、23℃、50%相対湿度(RH)で保管された。テストは、注射用水(WFI)およびTweenの水溶液の中でのBLFおよび摺動平衡応力の分析を含んでいた。試験は、ISO 7886−3:2005 Annex B Sterile hypodermic injectors for single use − Part 3: Autodisable injectors for fixed−dose immunisation, Test method for forces required to operate plungerに基づいていた。特定の条件は、100Nロードセルを装備したInstron機械試験マシンにおいて、100mm/minのテストレートにおいて最初の5mmの間の力の測定を伴って、注入器を空にすることを含んでいた。テスト結果が、表2に示されている。
比較のために、単一の変形可能なシーリングエレメントだけを有するストッパーが準備され、テストが繰り返された。結果が、表3に示されている。
表2および表3において、括弧の中の数は、標準偏差を表している。摺動平衡応力は、2mmから30mmの間の変位に関して平均力を与えている。平均および標準偏差は、組み合わせられたすべてのデータ曲線に関してコンピューター計算されている。
したがって、本発明のストッパーは、一貫して低いBLF値を提供し、また、低い摺動平衡応力を提供した。
また、同じストッパーおよびガラス注入器、すなわち、1つの変形可能なシーリングエレメントを有するストッパー、および、2つの変形可能なシーリングエレメントを有するストッパーが、シリンダー閉鎖完全性(CCI)に関してテストされた。具体的には、注入器は、ASTM F 1929のガイドラインにしたがって準備された青色染料溶液によって事前充填され、テストは、Pharmaceutical Package Integrity, Parenteral Drug Association’s Technical Report No. 27, 1998に基づいていた。注入器は、表4および表5に示されている真空プロファイルを備えたデシケーターの中に吸収紙の上に置かれた。
漏れ無しは、注入システムが真空チャレンジの間に染料を含有することができるということを示している。したがって、本発明のストッパーは、ストッパーが単一の変形可能なシーリングエレメントだけを有するときにもCCI要件に準拠する注入器を提供する。
さらなる実験が、1つまたは2つのいずれかの変形可能なシーリングエレメントストッパーを備えた1ml注入器を用いて実行され、最大で4週間の時間の期間にわたってCCIとBLFとをテストした。例1とは対照的に、注入器は、環状オレフィンポリマー(COP)のシリンダーを有していた。一体化された針を備えた注入器は、0.10%界面活性剤(Tween80)の水溶液によって事前充填され、試験が始まるまで、23℃、50%相対湿度(RH)で保管された。
ストッパーの周りのエリアが、注入器を充填した直後、ならびに、1時間後、1週間後、2週間後、および4週間後に観察された。任意の試料に関して漏れは観察されず、注入器がCCI要件に準拠しているということが結論付けられた。
BLF値の測定に関して、注入器は、28mmにわたって100mm/minのストローク速度でテストされた。BLF値が、表6に示されている。
したがって、BLF値に関して有意の進展は、4週間の期間にわたって観察されず、これは、本発明のストッパーがプレフィルド注入器の中での使用に適しているということを示している。すべてのケースにおいて、BLF値は、許容可能な範囲の中にあった。