JP2021512910A - ノボビオシン類似体とプロリンとの共結晶形態 - Google Patents

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Abstract

N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6 ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリンまたはD-プロリンとの共結晶形態、それらの薬学的組成物、製造方法、ならびに糖尿病性末梢神経障害等の神経変性障害を治療するための使用方法が開示される。

Description

優先権の主張
本特許出願は、2018年2月7日に出願された米国特許出願第62/627,570号の優先権の恩典を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み入れられる。
背景
およそ2,600万人の米国人が、1型または2型のどちらかの糖尿病に罹患している。インシュリンおよび経口抗糖尿病薬を使用して正常血糖値の維持を助けているにもかかわらず、これら個体の約60〜70%が糖尿病性末梢神経障害(DPN)を発症する。Veves, A.; Backonja, M.; Malik, R. A., Pain Med. 9 (2008) 660-674(非特許文献1)を参照されたい。ノボビオシン骨格に基づく多数の小分子が熱ショックタンパク質90(Hsp90)を阻害することが報告されており、動物モデルにおいて有意な神経保護特性を有することおよびDPNの症状を正常に戻すのに有用であることが報告されている。B. R. Kusuma et al., J. Med. Chem. 55 (2012) 5797-5812(非特許文献2);米国特許第9,422,320号(特許文献1)を参照されたい。
この種のノボビオシン類似体(「ノボログ(novologue)」)1つは、高い神経保護活性を呈することが報告されているN-(2-(5-(((3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド (4)である。Kusuma (2012)。ノボログ 4は、別の熱ショックタンパク質であるHsp70の存在に依存する効果を有するが、他の効果はHsp70とは無関係であることがさらに報告されている。ノボログ 4および関連化合物の作用機序におけるHsp70の正確な役割は完全には特徴付けられていない。J. Ma et al., ACS Chem. Neurosci. 6(9) (2015) 1637-1648(非特許文献3)。
ノボログ 4の合成は、非晶質固体をもたらす手法に従うことが報告されており、その物理化学的特性評価は2位の立体化学の決定的な割り当てを割愛しており(Kusuma (2012); 米国特許第9,422,320号)、それにより下記に示すような2個の可能なアノマー4aおよび4bの存在が原則として許容されている。
Figure 2021512910
4(KU-596としても知られる)の公開された合成は、95.6%のHPLC純度を示しているものの、ノビオス(noviose)の2位だけが立体化学の決定的な割り当てを欠いているという事実により証明されるように、非晶質固体のアノマー純度を示していない。(Kusuma (2012))。
米国特許第9,422,320号
Veves, A.; Backonja, M.; Malik, R. A., Pain Med. 9 (2008) 660-674 B. R. Kusuma et al., J. Med. Chem. 55 (2012) 5797-5812 J. Ma et al., ACS Chem. Neurosci. 6(9) (2015) 1637-1648
概要
本開示は、ノボログ 4aとL-プロリンまたはD-プロリンとの共結晶形態が、高い収率、純度およびアノマー純度で実現されるという驚くべき発見を前提としている。本発明の形態は、さらに公知の非晶質形態4に対してバイオアベイラビリティの有意な改善を実証している。
したがって、本開示の一態様は、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:2)との共結晶である。該共結晶は、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:14.76、16.86、19.00および21.05°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。本明細書ではこの共結晶を「形態B」と称する。
別の態様は、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:2)との共結晶である。該共結晶は、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:9.20、16.19、18.45および24.51°2θ±0.2°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。本明細書ではこの共結晶を「形態D」と称する。
加えて、ある態様は、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリンとの共結晶であって、アセトン溶媒和物として存在する共結晶(1:1:1)である。この共結晶は、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:14.64、17.53、18.91および21.33°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。本明細書ではこの共結晶を「形態C」と称する。
さらなる態様において、本開示は、それぞれ約1:1.2:0.6:0.1のモル比での、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリンとの共結晶であって、メチルエチルケトンおよびピラジンの溶媒和物としての共結晶に関するものである。該共結晶は、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:10.42、14.62、19.28および21.14°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。本明細書ではこの共結晶を「形態G」と称する。
本開示は、1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:11.77、14.52、19.54および21.23°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとD-プロリン(1:1)との共結晶も提供する。
本開示は、さらに、1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:8.52、16.33、19.50および21.22°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:1)との共結晶を提供する。
別の態様によれば、本開示は、本明細書において記載される共結晶形態のいずれかひとつを含む薬学的組成物に関するものである。組成物は薬学的に許容される固体担体をさらに含む。いくつかの態様において、組成物は1種または複数種の付加的な共結晶をさらに含む。
本開示の別の態様は、対象における熱ショックタンパク質90(Hsp90)を阻害するための方法である。方法は、本明細書において記載される共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む。
本開示は、神経変性障害に罹患している対象における神経変性障害を治療または予防するための方法にも具現化されている。方法は、本明細書において記載される共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む。いくつかの態様において、神経変性障害は糖尿病性末梢神経障害(DPN)である。
あるいは、他の態様によれば、本開示は、1型または2型の糖尿病に罹患している対象において糖尿病性末梢神経障害を発症する可能性を予防または低減するための方法を提供する。方法は、本明細書において記載される共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む。
別の態様によれば、本開示は、形態Bの共結晶を作製するための方法を提供する。方法は、約1:1〜約1:2のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとの組み合わせを、C1-6-アルキルアルコール中で第一の温度まで加熱して溶液を与える段階を含む。次いで、溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶のスラリーを与え、次いで、該スラリーを第二の温度で約72時間以下の間撹拌する。
別の態様は、形態Dの共結晶を作製する方法である。方法は、約1:1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとの組み合わせを、EtOHまたはアセトニトリル中で第一の温度まで加熱する段階、次いで、溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶の懸濁液を与える段階を含む。次いで、該懸濁液を第二の温度で約72時間以下の間撹拌する。
本開示は、形態Cの共結晶を作製することに関するさらに別の方法に具現化されている。方法は、任意で、等モル量のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとを、EtOH中で還流して溶液を与え、該溶液を約30℃以下の温度まで冷却してそれにより固体生成物を与える段階(a)を含む。段階(a)の生成物、または別の方法での約1:1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとの組み合わせを、次いで、アセトン中、約30℃以下の温度で約72時間以下の間撹拌してそれにより共結晶を与える。
別の態様によれば、本開示は、形態Gの共結晶を作製する方法を提供する。方法は、それぞれ約1:1:20のモル比で、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとピラジンとを、メシルエチルケトン(MEK)およびMeOHの混合溶媒中で混ぜ合わせて溶液を与える段階、および次いで該溶液を撹拌してそれにより共結晶を与える段階を含む。
加えて、本開示は、約1:1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とD-プロリンとの組み合わせを、C1-6-アルキルアルコール中で第一の温度まで加熱して溶液を与える段階;および該溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶の懸濁液を与える段階を含む、本明細書において記載されるような4a/D-プロリン共結晶を作製するための方法を提供する。
付加的な態様において、本開示は、4aおよび4bを含む組成物中の、N-(2-(5-(((2S,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4b)に対するN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)の濃度を増加させる方法を提供する。方法は、溶媒中で組成物をプロリンと接触させる段階、ならびに組成物、プロリンおよび溶媒を4aとプロリンとの共結晶が生成される結晶化条件に供する段階を含む。バルク共結晶(bulk co-crystal)は、4aおよび4bを含む組成物中よりも高い4aの濃度を呈する。
図1は、形態Bの粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図2は、形態Bの示差走査熱量測定(DSC)曲線である。 図3は、形態Bの熱重量分析(TGA)曲線である。 図4は、形態Bの動的水蒸気収着(DVS)曲線である。 図5は、形態Bの赤外線(IR)スペクトルである。 図6は、形態Bのラマンスペクトルである。 図7は、単結晶X線構造解析により決定された形態Bの原子変位楕円体図である。 図8は、単結晶構造決定に基づく形態Bの計算XRPDパターンである。 図9は、形態Bの計算XRPDパターン(下のトレース)と形態Bの実験XRPDパターン(上のトレース)との比較を示す。 図10は、形態Cの粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図11は、形態Cの熱重量分析(TGA)曲線である。 図12は、単結晶X線構造解析により決定された形態Cの原子変位楕円体図である。 図13は、単結晶構造決定に基づく形態Cの計算XRPDパターンである。 図14は、形態Dの粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図15は、形態DのDSC曲線(下のトレース)およびTGA曲線(上のトレース)を示す。 図16は、形態Dの動的水蒸気収着(DVS)曲線である。 図17は、形態Gの粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図18は、4a/D-プロリン共結晶の粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図19は、4a/D-プロリン共結晶のDSC曲線(下のトレース)およびTGA曲線(上のトレース)を示す。 図20は、4a/D-プロリン共結晶の動的水蒸気収着(DVS)曲線である。 図21は、物質A(●)および非晶質の4a(〇)の単回経口投与後のマウスにおける4aの平均血漿濃度を示す。 図22は、強制経口投与による物質A(●)および非晶質の4a(〇)、ならびにカプセルにゆるく詰めた物質A(▼)および非晶質の4a(△)の単回経口投与後のサルにおける4aの平均血漿濃度を示す。 図23は、4a/L-プロリン共結晶物質Aの粉末X線回折(XRPD)パターンを提示する。 図24は、4a/L-プロリン共結晶物質AのDSC曲線(下のトレース)およびTGA曲線(上のトレース)を示す。 図25は、4a/L-プロリン共結晶物質Aの動的水蒸気収着(DVS)曲線である。
詳細な説明
定義
本開示の全体にわたって用いられる略語、頭字語、および用語は下記の意味を有する。
Figure 2021512910
序文
上記で要約したように、ノボログ 4の研究では、Hsp70とは無関係なHsp90の阻害において化合物の優れた効力が浮き彫りにされた(Kusuma (2012)およびMa (2015))。研究は、α-アノマー 4aおよびβ-アノマー 4bの混合物ならびに低い全収率をもたらす傾向を含む、化合物の合成の潜在的な欠点を明らかにした。加えて、4の報告されたカラムクロマトグラフィー精製方法が小規模研究には適しているものの、化合物が約95%純度(HPLC)であった場合でさえ、該方法は、医薬品開発のためのα-アノマー 4aの大規模かつ薬学的に純粋な量を産生するには実用的ではない。
そこで、本発明者らは4aを単離するために種々の結晶化戦略に着手した。しかしながら、本発明者らは結晶化により4aを4bから分離できる条件を発見しなかった。本発明者らは、非晶質の4aを、28種のコフォーマー(co-former)から構成される共結晶化スクリーンに供し、驚くべきことにL-プロリンおよびD-プロリンがα-アノマー 4aと選択的に共結晶化したことを発見した。さらに、本発明者らは、L-プロリンおよびD-プロリンが、決定的な特性評価に適したいずれかの結晶物質を与えた唯一の試験されたコフォーマーであることを発見した(実施例3を参照されたい)。
共結晶形態
化合物4とコフォーマーであるL-プロリンまたはD-プロリンとの接触は、驚くべきことに、どちらのコフォーマーとも4aとの選択的共結晶化をもたらす(実施例2および10を参照されたい)。このように、共結晶化は、例えばHPLCにより決定される、4bと比べて4aに非常に富む4の量を達成する。したがって、ある態様において、4aとL-プロリンとの選択的共結晶化は、β-アノマーの濃度を低減し、微量の不純物の除去を容易にする。その結果として、4a/L-プロリン共結晶の形成は、4aの純度(HPLC)を約90%〜少なくとも95%、96%、97%または98%に改善する。後続の4a/L-プロリン共結晶の再結晶化は、4aの純度を少なくとも97%、98%または99%までさらに改善する。
同様に、他の態様において、4aおよび4bの出発組成物とD-プロリンとの共結晶化、例えば、4a/4bおよびD-プロリンがほぼ等モル量での共結晶化は、HPLCにより決定される場合、4aの純度(すなわち、濃度)が出発組成物中の4aの濃度と比べて少なくとも15%、10%、5%、または3%改善される、4a/D-プロリン共結晶をもたらす。したがって、例えば、4a/4bの出発組成物は、約93%の濃度で4aを含有し、D-プロリンとの共結晶化の後に得られる共結晶は、約98%の濃度で4aを含有する。いくつかの態様において、4a/D-プロリン共結晶は、少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、または99%の最終純度で4aを含有する。
他の態様において、多量のα-アノマー 4aは、例えば等モル量でそれをD-プロリンと接触させることにより4a/D-プロリン共結晶が生成され、精製される。バルク共結晶中の4aの得られた濃度は、4aの出発量における4aの濃度よりも、例えば少なくとも1%、2%、3%、4%、または5%(HPLC)高い。これらの各態様は、所与の共結晶中の4aの純度をさらにもっと向上させるための1つまたは複数の再結晶化の任意の工程を意図する。
本明細書において上記で要約したように、共結晶化は種々の共結晶形態も生成する。種々の形態が、粉末X線回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、および熱重量分析(TGA)を含む1種または複数種の分析技術により同定され、かつお互いに識別される。
形態B
このように、形態Bと表記される一態様は、それぞれ1:2のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとの共結晶である。粉末X線ディフラクトグラムは、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、14.76、16.86、19.00および21.05°2θ±0.2°2θに特徴的なピークを含む。ある態様において、粉末X線ディフラクトグラムは、さらに12.14、17.51、18.89および19.41°2θ±0.2°2θにピークを含む。さらなる別の態様において、形態Bは実質的にそれの粉末X線ディフラクトグラム全体によりさらに特徴付けられる(図1を参照されたい)。
形態BのDSC曲線は、約211℃での発熱を呈することがこの共結晶の特性である。一態様によれば、形態Bは図2に実質的に示されるようなDSCサーモグラム全体により特徴付けられる。
本開示は、形態Bを作製するための方法にさらに具現化されている(実施例4を参照されたい)。方法は、約1:1〜約1:2のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンの組み合わせを、C1-6-アルキルアルコール中で加熱して溶液を与える段階を含む。いくつかの態様において、4aは純粋な4aとして存在する一方で、他の態様において、4aは、β-アノマー 4bとの組み合わせ、例えば公開されている4の合成(Kusuma 2012、上記参照)でもたらされる組み合わせ等で存在する。例えば、4aは95%、96%、97%、98%、または99%(w/w)で存在する。組み合わせは、約50℃〜約80℃の範囲の第一の温度まで加熱される。例示的なC1-6-アルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、ならびにn-およびi-プロパノール等が挙げられる。一態様において、アルコールはエタノールである。ある態様によれば、適当な第一の温度は、標準気圧下でのアルコールの沸点である。したがって、例えば、エタノールがアルコールである場合、第一の温度は沸点、すなわち約78℃である。
方法は、4aとL-プロリンとの溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶のスラリーを与える段階をさらに含む。該スラリーを第二の温度で約72時間以下の間撹拌する。ある態様において、該スラリーを濾過して形態Bを単離する。
形態D
本開示は、それぞれ1:2のモル比で存在する4aとL-プロリンとの共結晶にさらに具現化されており、それは形態Dとして表記される。形態Dは、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:9.20、16.19、18.45および24.51°2θ±0.2°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。さらなる態様は、11.83、17.16、20.15および25.34°2θ±0.2°2θに生じる付加的で特徴的なピークに関するものである。形態Dは図14に実質的に示されるようなそれの粉末X線ディフラクトグラムによりさらに特徴付けられる。
形態DのDSC曲線は、約211.2℃の開始温度をともなう約212.2℃での吸熱を呈することもこの共結晶の特性である。ある態様によれば、形態Dは図15に実質的に示されるようなDSCサーモグラム全体により特徴付けられる。
本開示のある態様は、形態Dを作製する方法にも関する。方法は、約1:1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとの組み合わせを、EtOHまたはアセトニトリル中で第一の温度まで加熱する段階を含む。いくつかの態様において、4aは純粋な4aとして存在する一方で、他の態様において、4aは、β-アノマー 4bとの組み合わせ、例えば公開されている4の合成(Kusuma 2012、上記参照)でもたらされる組み合わせ等で存在する。例えば、4aは95%、96%、97%、98%、または99%(w/w)で存在する。第一の温度は、約70℃〜約85℃の範囲で選択される温度である。適当な温度は、例えば、組み合わせを還流させることにより、すなわち約82℃のアセトニトリルの沸点で達成される。
方法は、溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶の懸濁液を与える段階、および次いで該懸濁液を第二の温度で約72時間以下の間撹拌する段階をさらに含む。ある態様によれば、該スラリーを濾過して、例えば形態Dを単離する。
形態C
本開示は、それぞれ1:1:1のモル比で存在する、4aとL-プロリンとの共結晶のアセトン溶媒和物にさらに具現化されており、それは形態Cとして表記される(実施例6を参照されたい)。共結晶は、1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:14.64、17.53、18.91および21.33°2θ±0.2°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。さらに具体的には、別の態様によれば、粉末X線ディフラクトグラムは、12.10、15.14、18.26および19.56°2θ±0.2°2θに付加的なピークを含む。形態Cの特性であるこれらのピークおよび付加的なピークは、図10に実質的に示されるようなそれの粉末X線ディフラクトグラムに示される。
形態Cは、約150℃および約220℃で終わる重量減少段階を含む、それのTGAサーモグラムを参照することによりさらに特徴付けられる。ある態様は、図11に実質的に示されるような形態CのTGAサーモグラムに関するものである。
形態Cは、本開示の種々の態様に従う方法により作製される。したがって、一態様において、方法は、等モル量のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとを、EtOH中で還流して溶液を与える段階、該および溶液を約30℃以下の温度まで冷却してそれにより固体生成物を与える段階を含む。次いで、固体生成物を、アセトン中、約30℃以下の温度で約72時間以下の間撹拌してそれにより形態Cを与える。
あるいは、約1:1のモル比の4aとL-プロリンとの組み合わせを、アセトン中、約30℃以下の温度で約72時間以下の間撹拌してそれにより形態Cを与える。これらの態様のどちらにおいても、4aは、純粋な4aとして、またはβ-アノマー 4bとの組み合わせ、例えば公開されている4の合成により生成される組み合わせ等で存在する。さらなる態様において、濾過等により形態Cが単離される。
形態G
本開示は、さらにメチルエチルケトンおよびピラジンの溶媒和物として存在する4aとL-プロリンとの共結晶に関するものであり、それは形態Gとして表記される(実施例9を参照されたい)。実施例において説明されるように、形態GのXRPD指数付けは、1:1の4a:L-プロリンのモル比と一致するが、該指数付けは、同等な大きさのMEK分子とピラジン分子とを識別しないため、この分析技術により溶媒の決定的な量を確定することは困難である。形態GのプロトンNMR分析は、しかしながら、4aとL-プロリンとMEKとピラジンのモル比をそれぞれ約1:1.2:0.6:0.1で確定した。形態Gは、このように1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、10.42、14.62、19.28および21.14°2θ±0.2°2θに特徴的なピークを有するそれのXRPDディフラクトグラムにより特徴付けられる。さらなる態様は、11.85、14.93、17.40および19.28°2θ±0.2°2θに付加的なピークを提供する。形態Gは図17に実質的に示されるようなそれの完全なXRPDディフラクトグラムによっても特徴付けることができる。
別の態様によれば、形態G のXRPD分析は、共結晶を特徴付ける単位格子パラメータをさらに確定した。すなわち、パラメータは、a=10.975Å、b=10.310Å、c=15.704Å、α=90°、β=108.56°、およびγ=90°である。
本開示は、さらに形態Gを作製するための方法に関する。方法は、それぞれ約1:1:20のモル比で、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とL-プロリンとピラジンとを、メシルエチルケトン(MEK)およびMeOHの混合溶媒中で混ぜ合わせて溶液を与える段階を含む。いくつかの態様において、4aは純粋な4aとして存在する一方で、他の態様において、4aは、β-アノマー 4bとの組み合わせ、例えば公開されている4の合成(Kusuma 2012、上記参照)でもたらされる組み合わせ等で存在する。例えば、4aは95%、96%、97%、98%、または99%(w/w)で存在する。一般的に、混合溶媒は、MeOH対して過剰なMEKにより具現化される。すなわち、MEK対MeOHの例示的な比率は、約9:1(v/v)である。次いで、溶液は撹拌され、それにより形態Gを与える。
物質A
本開示の別の態様は、それぞれ1:1のモル比で存在する4aとL-プロリンとの共結晶であり、それは物質Aとして表記される。物質Aは、1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:8.52、16.33、19.50および21.22°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる。さらなる態様は、9.19、13.22、14.75および17.57°2θ±0.2°2θに生じる付加的で特徴的なピークに関するものである。物質Aは図23に実質的に示されるようなそれの粉末X線ディフラクトグラムによりさらに特徴付けられる。
別の態様によれば、物質AのXRPD分析は、共結晶を特徴付ける単位格子パラメータをさらに確定した。すなわち、パラメータは、a=10.126Å、b=11.021Å、c=30.259Å、α=90°、β=90°、およびγ=90°である。
物質AのDSC曲線は、約145℃での吸熱を呈することもこの共結晶の特性である。ある態様によれば、物質Aは図24に実質的に示されるようなDSCサーモグラム全体により特徴付けられる。
物質Aは、約160℃および約230℃で終わる重量減少段階を含む、それのTGAサーモグラムを参照することによりさらに特徴付けられる。ある態様は、図24に実質的に示されるような物質AのTGAサーモグラムに関するものである。
4a/D-プロリン共結晶
本開示は、別の態様において、1:1のモル比で存在する4aとD-プロリンとの共結晶も提供する(実施例11を参照されたい)。共結晶は、1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、11.77、14.52、19.54および21.23°2θ±0.20°2θに特徴的なピークを有するそれのXRPDディフラクトグラムにより特徴付けられる。付加的で特徴的なピークは、8.45、13.18、16.95および19.12°2θ±0.2°2θに生じる。共結晶の特性であるこれらのピークおよび付加的なピークでさえ、図18に実質的に示されるようなそれの粉末X線ディフラクトグラムに示される。
4a/D-プロリン結晶のDSC曲線は、約130℃での吸熱を呈することもこの共結晶の特性である。ある態様によれば、共結晶は、図19に実質的に示されるようなDSCサーモグラム全体により特徴付けられる。
共結晶は、約150〜160℃および約230℃でそれぞれ終わる2つの重量減少段階を含む、それのTGAサーモグラムを参照することによりさらに特徴付けられる。ある態様は、図19に実質的に示されるような共結晶のTGAサーモグラムに関するものである。
本開示は、さらに4a/D-プロリン結晶を作製するための方法に関する。方法は、約1:1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)とD-プロリンとの組み合わせを、C1-6-アルキルアルコール中で第一の温度まで加熱して溶液を与える段階(a);および溶液を約30℃以下の第二の温度まで冷却してそれにより共結晶の懸濁液を与える段階(b)を含む。いくつかの態様において、4aは純粋な4aとして存在する一方で、他の態様において、4aは、β-アノマー 4bとの組み合わせ、例えば公開されている4の合成(Kusuma 2012、上記参照)でもたらされる組み合わせ等で存在する。例えば、4aは95%、96%、97%、98%、または99%(w/w)で存在する。
精製の方法
4aがL-プロリンおよびD-プロリンと選択的に共結晶化するという驚くべき発見は、ある態様によれば、バルク量の4から4aを精製するための方法を生み出す。すなわち、4aとプロリンとの共結晶化は、得られる4a/プロリン共結晶のバルク試料中の4bに対する4aの濃度を富ませる。4aの濃度を増加させる方法は、まず4aおよび4bの出発組成物を意図する。出発組成物は、公開されている4の合成から、または有機合成の分野の当業者に知られているかもしくは合理的に意図される4をもたらす多くの代替合成経路のひとつによりもたらされるバルク固体であり得る。加えて、出発組成物は、カラムクロマトグラフィー等の他の精製手段からもたらされる、大部分が4aであるバルク固体であり得る。本発明者らは、驚くべきことに、4aがあらゆる結晶化の試みに反したという点を発見した。実際に、4aが結晶形態で存在することが観測された条件は無かった。これらの例のいずれかにおいて、出発組成物は、0.5〜約10%(w/w)等の少なくともある程度の4bを含有する。
1〜約2当量等のモル過剰のプロリンは、溶媒中で出発組成物と混ぜ合わされる。いくつかの態様において、プロリンはL-プロリンであり、他の態様において、プロリンはD-プロリンである。L-プロリンおよびD-プロリンの混合物を用いることが可能である。プロリンおよび出発組成物を実質的に溶解することができる任意の溶媒が、この目的に適している。本明細書において記載される任意の溶媒等の例示的な溶媒は、メタノールおよびエタノール等のC1-6-アルキルアルコールを包含する。方法のいくつかの態様において、出発組成物、プロリンおよび溶媒の混合物を加熱することにより溶解を促進することは有益である。この目的のために適当な温度は、溶媒の還流温度である。
出発組成物とプロリンと溶媒との組み合わせは、次いで、結晶化条件に供され、4aとプロリンとの共結晶化を達成する。本明細書において記載される結晶化技術のいずれか等の種々の結晶化技術が、この状況において有用である。例示的な態様において、出発組成物およびプロリンの加温した溶液を室温まで放冷する。外部冷却処置が、溶液を室温より下に冷却するために実行され、共結晶化を促進する。代わりに、または組み合わせて、溶媒をゆっくり蒸発させてもよい。これらの手段のいずれかを、単独でまたはと互いに組み合わせて、溶解平衡を結晶化の方へ動かす。
4aとプロリンの得られるバルク共結晶は、それにより出発組成物中の4aの濃度に比べて4aに富む。4bの対応する濃度は低減される。加えて、方法は、他の不純物から4aを精製する。キラル固定相上で行われるガスクロマトグラフィー(GC)を包含する、混合物中に存在する成分を分割して定量することができる任意の分析技術がこの目的に適しているが、4aの濃度を定量化するための適当な方法は、HPLCによるものである。すなわち、例えば、バルク共結晶中の4aの濃度は、出発組成物中よりも約3〜約20%、または約5〜約15%(w/w)高い。あるいは、バルク共結晶中の4aの増加は、バルク出発組成物中の4aの濃度に対して少なくとも約5%、約10%、または約15%(w/w)である。すなわち、例えば、4の出発組成物は、HPLCにより決定される約93%の4aおよび約6%の4bを含有する(実施例10(A)を参照されたい)。本発明の方法により指示されるように、L-プロリンとの共結晶化の後、得られるバルク共結晶中の4bの量は約2.5%まで低減される。これらの態様のいずれかにおいて、4a/プロリン共結晶の後続の再結晶化は、バルク物質における4bの量をさらに低減させることができる。
本開示は、それらの特徴的なピークの観点でのXRPDパターン等のパターンのことをいう。このようなピークの集合体は、個々の機器および実験条件に起因する不確実性の範囲内で所与の共結晶形態に特有である。したがって、例えば、±0.2°2θの許容できる不確実性を有する角度2θの観点で各XRPDピークが開示されることから、この不確実性の範囲内での特徴的なピークの差異は、それの特徴的なピークの対応する集合体をもつ共結晶形態の同一性を決して損なうものではないことが、理解されている。
薬学的組成物
本開示は、別の態様として、本明細書において記載される共結晶を含む薬学的組成物も意図する。実施例において説明されるように、本発明の共結晶は、驚くべきことに4a単独、すなわち非晶質固体としてよりもはるかに優れたバイオアベイラビリティを呈する。したがって、薬学的組成物は、非晶質の4aを含有する製剤と比べて治療的に同じ効果を達成するために、より低濃度の共結晶を含有するように製剤化され得る。本発明の共結晶のこの恩恵により、薬学的組成物中の共結晶の治療的有効量は、必要に応じて対象の体重に応じて調整される、約0.1 mg〜約1000 mgの用量を提供する。典型的な投与量は、1日当たり約0.01 mg/kg〜約100 mg/kgで変動し得る。
凝集物が薬学的に許容される担体の構成要素となる点で、医薬品調合の慣行にしたがって、薬学的組成物は、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、補助剤、安定剤、乳化剤、保存剤、着色剤、緩衝剤、または風味付与剤をさらに含む。一般的に、薬学的組成物は、通常の材料および技術、例えば、混合、および配合等を用いて調製される。原則として、例えば担体に溶解しないこと等により、共結晶が構成的および構造的な安定性を維持する限りは、薬学的に許容される担体は液体であり得る。しかしながら、一般的に、薬学的に許容される担体、およびそれ故に全体としての組成物は固体である。
いくつかの態様によれば、薬学的組成物は、本明細書において開示されるような1種または複数種の付加的な共結晶形態をさらに含む。例えば、組成物は2種の形態、3種の形態、または4種の形態を含む。例示的な組成物は、形態Bおよび形態Dを含む。二成分組成物、すなわち、2種の形態だけを含有する組成物が、約0.05:1〜約1:0.05の範囲にある種々の重量比で形態を提供する。中間体の比率および範囲も、例えば、0.2:1〜約1:0.2、および0.5:1〜約1:0.5等が意図される。
錠剤組成物に関して、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混和した本発明の共結晶が錠剤の製造のために用いられる。このような賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムもしくはリン酸ナトリウム等の不活性希釈剤;造粒剤および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプンもしくはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンもしくはアカシア;ならびに滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸もしくはタルク等が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または錠剤は消化管における崩壊および吸収を遅らせるため、およびそれにより所望の期間にわたる持続性の治療効果を提供するために公知のコーティング技術によりコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を使用してもよい。
経口使用のための製剤は、活性成分が、不活性な固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンとが混合されている硬ゼラチンカプセルとして、あるいは活性成分が、水または油媒体、例えばラッカセイ油、流動パラフィンもしくはオリーブ油とが混合されている軟ゼラチンカプセルとしても提示され得る。これらの製剤、および本明細書において記載される全ての他の液剤が、固体共結晶の構成的および構造的な完全性を保持するために上記で詳細に説明した制限を受ける。
下記で記載される態様によれば、薬学的組成物は懸濁剤として提示される。該態様は「安定懸濁剤」のことをいい、これは所与の共結晶または共結晶の組み合わせが、懸濁剤の他の成分と接触している間でさえ、すなわち懸濁剤の液状賦形剤に溶解しないことにより、別の共結晶もしくは非晶質形態に変換しないことにより、または両方により、その特性、例えばXRPDピークを維持するということを意味する。
水性懸濁剤に関して、本発明の共結晶は、安定懸濁剤を維持するために適した賦形剤と混和される。このような賦形剤の例としては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアカシアゴム等が挙げられるがそれらに限定されるわけではない。
経口懸濁剤は、天然由来のリン脂質、例えばレシチン;またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン;またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール(heptadecaethyleneoxycetanol);またはポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート等の、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合生成物;またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等の分散剤または湿潤剤も含有することができる。水性懸濁剤は、1種もしくは複数種の保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル、1種もしくは複数種の着色剤、1種もしくは複数種の香味剤、ならびにスクロースもしくはサッカリン等の1種もしくは複数種の甘味剤も含有してもよい。
油性懸濁剤は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油に、または流動パラフィン等の鉱油に、活性成分を懸濁させことにより製剤化することができる。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含有してもよい。
上述したもの等の甘味剤、および香味剤を添加して、味の良い経口剤を提供してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸等の酸化防止剤を添加することにより保存され得る。
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性粉剤および分散性顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤ならびに1種もしくは複数種の保存剤と混和した活性成分を提供することができる。適した分散剤もしくは湿潤剤ならびに懸濁化剤は、既に上述したものにより例示される。付加的な賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤も存在してもよい。
本発明の薬学的組成物は、水中油型乳剤の形態でもあり得る。油性相は、植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、または鉱油、例えば液体パラフィン、またはこれらの混合物であり得る。適した乳化剤は、天然由来のゴム、例えばアカシアゴムまたはトラガカントゴム;天然由来のリン脂質、例えばダイズ、レシチン;ならびに脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン;ならびに該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。乳剤は、甘味剤および香味剤も含有してもよい。
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えはグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて製剤化することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、香味剤および着色剤も含有してもよい。薬学的組成物は、無菌注射剤、水性懸濁剤または油脂性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、上述してきたこれらの適した分散剤もしくは湿潤剤、ならびに懸濁化剤を用いて、公知の技術にしたがって製剤化され得る。無菌注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、例えば1,3-ブタンジオール溶液として無菌で注射可能な液剤または懸濁剤でもあり得る。使用することができる許容される媒体および溶媒には、水、リンガー液および生理食塩液がある。加えて、無菌の不揮発性油が、慣習的に溶媒または懸濁媒介物として使用される。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の不揮発性油が使用され得る。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注射剤の調製に用いられる。
本発明の共結晶は、共結晶の直腸投与のための坐剤の形態でも投与され得る。これらの組成物は、共結晶を、常温で固体であるが直腸温度で液体であることから直腸中で溶解して共結晶を放出すると考えられる、適した刺激性のない賦形剤と混合することにより調製することができる。このような物質の例は、ココアバターおよびポリエチレングリコールである。
非経口投与のための組成物は、無菌の媒介物で投与される。製剤中の用いられる媒体および共結晶の濃度に応じて、ただし共結晶の粒度分布がこの投与様式に適しているという条件で、非経口製剤は共結晶の懸濁剤であり得る。局所麻酔薬等の補助剤、保存剤および緩衝剤も、非経口組成物に添加することができる。
使用方法
本発明の共結晶により付与される驚くべき一利点は、添付の実施例により証明されるように、大量の4aを非常に高いジアステレオマー純度および化学純度で製造する能力である。これは、例えば、米国食品医薬品局により公布された医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(GMP)の規則に従って4aを開発するために特に重要である。対照的に、非晶質の4aの合成は、GMP目的のために高い化学純度およびジアステレオマー純度で4aを単離しても依然として非効率的である -クロマトグラフィー等の後続の骨の折れる分離技術を必要とし、かつ結晶化の試みは全て上述したように失敗した。これらの理由から、本発明の共結晶およびそれらを作製する方法は、臨床試験および製品化の取り組みに有用である大量の4aを提供する。
本発明の共結晶の別の利点は、非晶質の4aと比較して共結晶由来の4aの予想外に高いバイオアベイラビリティにある。より具体的には、共結晶のインビボ投与は、4aのバイオアベイラビリティを非晶質の4aの同じ用量に対して約1.5〜2倍増加させた(実施例12および13を参照されたい)。本発明の共結晶のこの特徴は、実際に、医薬品の非晶質形態がそれらの結晶性の対応物よりも著しく可溶性であり、そのためにより体内に吸収され利用され得るという概説の観点から、いっそう驚くべきことである。B. C. Hancock et al., Pharm. Res. 17(4) (2000) 397-404; B. C. Hancock et al., J. Pharm. Sci. 86(1) (1997) 1-12を参照されたい。
これらの利点に照らして、さらに、本開示は、神経変性障害に罹患している対象における神経変性障害を治療または予防するための、それらの薬学的組成物を包含する共結晶形態のいずれかの使用に関するものである。このような神経変性障害の非限定的な例としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調および失調の形態、ならびに運動ニューロン疾患を包含する脱髄性神経障害等が挙げられる。加えて、共結晶形態およびそれらの薬学的組成物は、糖尿病性神経障害(それの有痛性および無感覚の形態の両方を包含する)、ならびに糖尿病によるものではない神経因性疼痛を包含する神経障害の他の形態の治療に有用である。
共結晶形態およびそれらの薬学的組成物は、ニューロンにおけるミトコンドリア機能の障害を改善し、糖尿病ニューロンにおける炎症マーカーの発現を減少させると報告された化合物4aの使用に照らして(Ma (2015))、ミトコンドリア機能障害、酸化的ストレス、または炎症を伴う神経学的障害の治療にも有用である。糖尿病性組織が著しい酸化的ストレスを被ることから、これらの結果は、本発明の共結晶形態およびそれらの薬学的組成物が、酸化的ストレスおよび慢性炎症を伴う他の神経学的障害、例えばてんかん、多発性硬化症、脊髄損傷;ならびに統合失調症、うつ病、双極性障害、自閉症および関連障害、ならびに外傷後ストレス障害を包含する精神障害等の治療にも有用であることを示している。共結晶形態の組成物は、他の療法、特に、他の機構により酸化的ストレス、炎症およびミトコンドリア機能障害を低減する療法と組み合わせて用いることができる。
本明細書において用いられる場合、「神経変性障害」なる用語は、ニューロンの進行性消失が末梢神経系において、または中枢神経系において生じる障害のことをいう。したがって、一態様において、本開示は、細胞死を引き起こすニューロンの進行性劣化を阻害することにより、例えば、神経変性障害の治療中に、または神経変性障害の治療に従って、対象におけるHsp90を阻害するための方法を提供する。
本明細書において記載される方法は、対象に本発明の共結晶の治療的有効量を投与する段階を含む。上記での述べた投与指針の範囲内で、「治療的有効量」は、障害の進行を全体的にもしくは部分的に抑制するか、または障害の1種または複数種の症状を少なくとも部分的に緩和する共結晶の量である。治療的有効量は、予防的に有効な量でもあり得る。治療的に有効である量は、患者の大きさおよび性別、治療されるべき障害、障害の重篤度ならびに求められる結果に依存するであろう。所与の患者および障害のために、治療有効量は、当業者に公知の方法により決定され得る。
種々の態様において、方法は、神経学的障害の予防を内含する。本明細書において用いられる「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」なる用語は、投与時に障害を有する可能性があると診断されていないが、通常は障害を発症すると予測されるか、または障害のリスクが増加していると考えられる、対象に投与された場合に本発明の共結晶が有用であることを意味する。本発明の共結晶は、障害症状の発症を遅らせるか、障害の発病を遅延させるか、または対象が障害を発症するのを完全に防ぐ。予防は、年齢、家族歴、遺伝学的異常もしくは染色体異常により、および/または障害に関する1種または複数種の生物学的マーカーの存在により、障害にかかりやすい素因を持っていると考えられる対象への共結晶の投与も意図する。
他の態様において、本発明の方法は、共結晶が、少なくとも障害の暫定診断を受けた対象に用いられることを意味する、「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」を内含する。したがって、本発明の共結晶は、障害の進行を遅延させるか、または遅らせる。加えて、「治療」なる用語は、少なくとも障害に関連する症状の寛解を包含し、ここで寛解は、治療されている状態に関連するパラメータ、例えば症状、の重篤さにおける少なくとも低減を指すように広い意味で使用される。そのため、「治療」は、対象が障害または少なくとも障害を特徴付ける症状をもはや患っていないように、障害または少なくともそれに関連する症状を、完全に抑制する、例えば起こることを予防するか、または停止させる、例えば終わらせる、状況も包含する。
一態様において、神経変性障害は、例えば糖尿病状態に関連する高血糖症から結果として生じる感覚ニューロンのブドウ糖毒性である。例えば、対象は、1型または2型の糖尿病に罹患している。さらに具体的には、ある態様によれば、神経変性障害は、糖尿病性末梢神経障害である。したがって、ある態様において、本発明の方法は、1型または2型の糖尿病に罹患している対象において糖尿病性末梢神経障害を発症する可能性を予防または低減する段階を含む。
本発明の方法および使用との関連において、本発明の共結晶で治療される「対象」は動物であり、好ましくは哺乳類、例えばイヌ、ネコ、マウス、サル、ラット、ウサギ、ウマ、カウ、モルモット、ヒツジである。ある態様において、対象はヒトである。
下記の非限定的な実施例は、本開示の付加的な態様を説明するために提供される。
例えば、公開された手法(Kusuma (2012)および米国特許第9,422,320号)に従って、約95%の純度(HPLC)で非晶質の4aが得られる。
I. 一般的な結晶化実験方法
クラッシュ沈殿(Crash Precipitation)(CP):種々のコフォーマーを所与のモル比で用い、種々の溶媒中でかき混ぜて4aの溶液を調製した。沈殿物が生じるまで撹拌しながら、種々の逆溶媒(antisolvent)の分割量を投入した。混合物を特定の期間撹拌した。規定される場合、付加的な結晶化技術が使用された。
高速蒸発(FE):種々のコフォーマーを所与のモル比で用い、種々の溶媒または溶媒系中でかき混ぜて4aの溶液を調製した。特に規定されない限り、各溶液を周囲条件で開口バイアルから蒸発させた。規定された方法により固体を単離した場合、または規定されたように付加的な結晶化技術を使用した場合、部分蒸発(固体が少量の溶媒残存を伴って存在する)と指定されない限り、溶液を蒸発乾固させた。
手動粉砕(grinding):秤量した量の4aおよび種々のコフォーマーを瑪瑙の乳鉢に移した。少量の所与の溶媒を固体に添加し、所与の時間、瑪瑙の乳棒を用いて混合物を手動で粉砕した。
摩砕(milling):秤量した量の4aおよび所与のコフォーマーを瑪瑙の摩砕容器に移した。少量の所与の溶媒および瑪瑙のミルボールを容器に添加し、次いでこれをレッチェミルに取り付けた。混合物を、規定された継続時間30 s-1で摩砕した。サイクルの間で、固体をジャーの壁からこそげ落とした。
反応結晶化(RC):1つの成分の固体を2番目の成分の溶液に添加することにより、4aと種々のコフォーマーとの混合物を所与の溶媒中で調製した。異なる濃度の各成分(一般的に、一方の成分対他方の成分がモルで10倍〜20倍の差)を溶液が含有するように十分な固体を添加した場合、溶液を長時間撹拌した。特定される場合、沈殿物が生じなければ、より高濃度の成分の追加の固体を添加して、混合物を再び長時間撹拌した。沈殿した固体をいずれも単離して、分析した。
徐冷(SC):種々のコフォーマーを所与のモル比で用い、種々の溶媒系中で撹拌しながら昇温して4aの高濃度溶液を調製した。各バイアルに蓋をしてホットプレート上に静置し、ホットプレートを切って周囲温度まで試料を徐冷した。周囲温度まで冷却した後に固体が存在しない場合、さらに冷却するために試料を冷蔵庫(およそ2〜8℃)および/または冷凍庫(およそ−10〜−25℃)に入れた。固体が存在しない場合、特定されるように、付加的な結晶化技術を使用した。
低速蒸発(SE):種々のコフォーマーを所与のモル比で用い、種々の溶媒系中で4aの溶液を調製した。各溶液を、ピンホールを開けたアルミホイルで覆われたバイアル中、周辺条件で蒸発させた。溶媒の一部分を蒸発させる部分低速蒸発として指定されない限り、溶液を蒸発乾固させた。得られた固体を規定される技術により単離したか、または、規定される場合、付加的な結晶化技術を使用した。
スラリー実験:規定されるモル比の4aと種々のコフォーマーとの懸濁液を、未溶解の固体が存在するように、周囲条件で十分な固体を所与の溶媒系に添加することにより調製した。次いで、混合物を、規定される条件で長時間、密封したバイアル中でかき混ぜた(典型的には撹拌により)。固体を、規定される技術により収集したか、または、規定される場合、付加的な結晶化技術を使用した。
蒸気拡散(VD):所与の出発物質(4a/L-プロリンの所与の形態または4aとL-プロリンとの規定される化学量論的混合物のどちらか)の高濃度溶液を種々の溶媒中で調製した。いくつかの場合、溶液を0.2μmのナイロンフィルターを通して濾過した。各溶液を、小バイアルに分注し、これを次いで所与の逆溶媒を含有する大バイアルの内部に入れた。規定される場合、4a/L-プロリンの所与の形態の種晶を溶液に添加した。小バイアルは蓋をしないままにし、大バイアルは蓋をして蒸気拡散を起こさせた。規定される場合、付加的な結晶化技術を試みた。
真空濾過:固体を、真空濾過により濾紙またはナイロンフィルター上に集め、バイアルに移す前に短い間、減圧下フィルター上で風乾した。
相互変換スラリー:所与の出発物質(4a/L-プロリンの所与の形態または4aとL-プロリンとの規定される化学量論的混合物のどちらか)の溶液を、規定される温度で所与の溶媒系に固体を添加することにより調製した。飽和溶液が規定される場合、懸濁液を長時間周囲温度でかき混ぜて、液相の飽和を確実にした。未溶解の固体が存在するように、目的とする4a/L-プロリンの所与の形態のそれぞれの種結晶を、調製した溶液に(または、飽和溶液から濾過した液相に)添加した。次いで、密封したバイアル中、所与の時間、規定される温度で各混合物をかき混ぜた(典型的には撹拌により)。固体を真空濾過により単離して、分析した。
II. 粉末X線回折(XRPD)ピークの同定
本開示の全体を通して、X線回折パターンおよび表はピーク一覧を伴う。最大約30°2θまでの範囲内のピークを選択した。丸めアルゴリズムを、各ピークを0.01°2θの位に丸めるために用いた。図と一覧表の両方においてx軸(°2θ)に沿うピークの位置を、所有権を主張できるソフトウェア(TRIADS(商標)v2.0)を用いて決定し、小数点以下の有効数字2桁に丸めた。ピーク位置の変動は、粉末X線回折における変動(米国薬局方、S2までを含むUSP 38-NF 33, <941> 12/1/2015)についてのUSP討議で概説された勧告に基づいて、±0.2°2θの範囲内で与えられる。本明細書において開示される任意の特定の測定法に関連する正確性および精度は決定されていない。さらには、異なる機器で独自に調製された試料での第三者の測定は、±0.2°2θを超える変動をもたらすかもしれない。d-面間隔を算出するために用いた波長は1.5405929ÅのCu-Kα1波長であった(Holzer, G.; Fritsch, M.; Deutsch, M.; Hartwig, J.; Forster, E. Phys. Rev. 1997, A56 (6), 4554-4568)。d-面間隔推定値に関連する変動を、d-面間隔毎にUSP勧告から計算し、それぞれのデータ表に提供した。
USPガイドラインに準拠して、可変性の水和物および溶媒和物は0.2°2θを超えるピーク分散を示し得るため、0.2°2θのピーク分散はこれらの物質に適用できない。
1つのXRPDパターンだけで他を持たない試料で、試料が粉末平均にかなり近似のものを提供するかどうかを評価する他の手段がない場合、ピーク表には「顕著なピーク」としてのみ同定されるデータが含有されている。これらのピークは、観測されたピーク一覧全体のサブセットである。顕著なピークは、強い強度をもつ、好ましくは重なっていない低角度のピークを同定することにより、観測されたピークから選択される。
複数の回折パターンが利用できる場合には、粒子統計(PS)および/または優先配向(PO)の判定が可能である。単一の回折計で分析される複数の試料からのXRPDパターン間の再現性は、粒子統計が適切であることを示している。複数の回折計からのXRPDパターンからのXRPDパターンの間の相対強度の一貫性は、良好な配向統計を示している。あるいは、可能な場合は、観測されるXRPDパターンを単結晶構造に基づく計算XRPDパターンと比較し得る。面積検出器を使用する二次元散乱パターンも使用して、PS/POを評価することもできる。PSおよびPOの両方の影響を無視できると決定される場合には、XRPDパターンは試料の粉末平均強度を代表的するものであり、顕著なピークを「代表的なピーク」として同定し得る。一般的に、代表的なピークを決定するために収集されるデータが多ければ多いほど、より確実にそれらのピークの分類を行うことができる。
「特徴的なピーク」は、それらが存在する限りにおいて、代表的なピークのサブセットであり、ある結晶多形を別の結晶多形(同じ化学組成を有する結晶形態である多形体)から区別するために使用される。どの代表的なピークが、もしあれば、化合物のある1つの結晶性多形中に、その化合物の他の全ての公知の結晶性多形に対して±0.2°2θの範囲内で存在するかを評価することにより、特徴的なピークは決定される。化合物の全ての結晶多形が少なくとも1つの特徴的なピークを必ずしも有するわけではない。
機器操作
示差走査熱量測定(DSC):DSCは、TA Instruments製のQ2000示差走査熱量計を使用して実施した。NIST追跡可能なインジウム金属を使用して温度較正を実施した。試料をアルミニウムTzero圧着DSCパン(an aluminum Tzero crimped DSC pan)に入れて蓋で覆い、重量を正確に記録した。試料パンとして形成されている秤量したアルミニウムパンをセルの基準側面に置いた。
動的水蒸気収着(DVS):動的水蒸気収着データをVTI SGA-100水蒸気収着分析装置で収集した。較正基準としてNaClおよびポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。分析前に試料を乾燥させなかった。収着および脱着のデータを、窒素パージ下において、10%RH増分で5%〜95%RHの範囲にわたって集めた。分析に用いた平衡基準は、5分で0.0100%未満の重量変化であり、最大平衡時間は3時間であった。データは試料の最初の水分含有量に対して補正されなかった。
EasyMax(商標)反応器:結晶化実験を、Julabo F26冷却/循環装置をもつMettler Toledo製のEasyMax(商標)102を用いて実施した。20 mLのガラス管(蓋をして)中で、マグネチックスターラで撹拌して結晶化を実施した。ジャケット温度(Tj)設定を用いて温度を調整した。
元素分析:元素分析は、テネシー州ノックスビルのGalbraith Laboratoriesにより行われた。
赤外線分光法:IRスペクトルを、Ever-Glo中波長/遠波長IR源、臭化カリウム(KBr)ビームスプリッター、および重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器を備えた、Nicolet 6700フーリエ変換赤外(FT-IR)分光光度計(Thermo Nicolet)で取得した。波長検定は、NIST SRM 1921b(ポリスチレン)を用いて実施した。ゲルマニウム(Ge)結晶をもつ減衰全反射(ATR)アクセサリー(Thunderdome(商標)、Thermo Spectra-Tech)をデータ収集のために用いた。各スペクトルは、4 cm-1のスペクトル分解能で収集した256の共加重走査(co-added scan)を表す。バックグラウンドのデータセットを、純粋なGe結晶を用いて取得した。これら2つのデータセットのお互いに対する比を取ることにより、Log 1/R(R=反射率)スペクトルを得た。
ラマン分光法:ラマンスペクトルを、インジウムガリウムヒ化物(InGaAs)検出器を備えたNexus 670 FT-IR分光光度計(Thermo Nicolet)に接続したFT-Ramanモジュールで取得した。波長検定は、硫黄およびシクロヘキサンを用いて実施した。各試料を、試料をペレットホルダー中に置くことにより分析用に調製した。試料を照射するためにおよそ0.514 WのNd:YVO4レーザー出力(1064 nmの励起波長)を使用した。各スペクトルは、4 cm-1のスペクトル分解能で収集した256の共加重走査を表す。
単結晶X線回折(SCXRD):4a/L-プロリンの形態Bおよび形態Cの単結晶構造を、パデュー大学のCrystallography Laboratoryで決定した。
熱重量分析(TGA):TG分析を、TA Instruments製の2050熱重量分析器またはDiscovery熱重量分析器を用いて実施した。ニッケルおよびAlumel(商標)を使用して温度較正を実施した。各試料を、アルミニウムパンまたは白金パンに入れて、TG炉に挿入した。炉を、窒素パージ下、10℃/分の加熱速度で、周囲温度から350℃まで加熱した。
光学顕微鏡法:直交偏光子をもつWolfe光学顕微鏡下、2×もしくは4×の対物レンズで、または直交偏光子をもつ鋭敏色板(a first order red compensator)を備えたLeica製の実体顕微鏡下、0.8×から10×の対物レンズで、試料を観察した。
溶液 1 H NMR分光法:溶液1H NMRスペクトルは、VarianUNITYINOVA-400分光計を用いて25℃でイリノイ州シャンペーンのSpectral Data Servicesにより取得した。試料をDMSO-d6に溶解した。不完全に重水素化されたDMSO由来の残余ピークはおよそ2.5 ppmにあり、およそ3.3 ppmにある比較的ブロードなピークは水によるものである。
粉末X線回折(XRPD)
PANalytical製のX'PERT Pro MPD回折計 - 透過幾何学(大部分の試料):Optix製の長高精度焦点源(long, fine- focus source)を用いて発生させたCu放射線の入射ビームを用いて、XRPDパターンをPANalytical製のX'Pert PRO MPD回折計で収集した。楕円状傾斜多層膜ミラー(elliptically graded multilayer mirror)を用いて、標本を介して検出器上へとCu KαX線の焦点を合わせた。分析前に、ケイ素標本(NIST SRM 640e)を分析して、観測されるSi 111ピークの位置がNISTに認定された位置と一致することを検証した。試料の標本を3μmの厚さの膜の間に挟み、透過幾何学で分析した。ビームストップ、短い散乱線除去エクステンション(short antiscatter extension)、および散乱線除去ナイフエッジ(antiscatter knife edge)を用いて、大気により生じたバックグラウンドを最小化した。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを用いて軸発散からの広がりを最小化した。回折パターンを、標本から240 mmに位置する走査位置敏感型検出器(X'Celerator)およびData Collectorソフトウェアのバージョン2.2bを用いて収集した。
PANalytical製のX'PERT Pro MPD回折計 - 反射幾何学(限られた量の試料):長高精度焦点源およびニッケルフィルターを用いて発生させたCu Kα放射線の入射ビームを用いて、XRPDパターンをPANalytical製のX'Pert PRO MPD回折計で収集した。回折計を対称Bragg-Brentano幾何学を用いて構成した。分析前に、ケイ素標本(NIST SRM 640e)を分析して、観測されるSi 111ピークの位置がNISTに認定された位置と一致することを検証した。試料の標本を、ケイ素ゼロ-バックグラウンド基板上に中心がある、薄い円形層として調製した。散乱線除去スリット(SS)を用いて大気により生じたバックグラウンドを最小化した。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを用いて軸発散からの広がりを最小化した。回折パターンを、試料から240 mmに位置する走査位置敏感型検出器(X'Celerator)およびData Collectorソフトウェアのバージョン2.2bを用いて収集した。
HPLC手法
本明細書において記載されるHPLC測定のためのパラメータおよび条件を、以下の表に提示する。報告された4aおよび4bのHPLC純度は、プロリンに対するピークを考慮していない。
Figure 2021512910
実施例1:4a/L-プロリン共結晶(物質A)の合成
Figure 2021512910
化合物4aをクロマトグラフィー分離により得て(HPLC:4a 96.4%および4b 1.2%, 500 mg)、EtOH(4 mL)中でL-プロリン(128 mg, 1 eq.)と混合した。混合物を15分間加熱還流した。綿栓を通して熱溶液を濾過した。得られた透明な濾液を徐冷して、16時間室温で維持した。沈殿した固体を濾取し、室温で風乾して、物質Aとして指定された4a/L-プロリン共結晶(456 mg, 73%収率)を白色固体として与えた。M.P. 203〜205℃。1H NMRは4a対L-プロリンの比を1:1.1として示した。
物質Aは、1:1の4a/L-プロリン共結晶であり、同型構造の溶媒和物である可能性が高い。物質Aは、XRPDパターン(図23)に基づいて、うまく指数付けされた微量のL-プロリン成分を含有する(表A1)。XRPD指数付けは、典型的には、主としてまたは排他的に単結晶相からなる試料に成功する。しかしながら、8.7°、15.0°、および18.0°2θのXRPDパターンに存在する微小ピーク/ショルダーが、指数付けの解(indexing solution)と一致せず、おそらくL-プロリンに起因する可能性が高いと理解した上で、この混合物に関して指数付けの解を得た。指数付けの解から得られた、選んだ単位格子パラメータを表A2に提示する。
(表A1)4a/L-プロリン物質Aに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
Figure 2021512910
(表A2)4a/L-プロリン物質Aに関する単位格子パラメータ
Figure 2021512910
単位格子体積は、溶媒和された1:1の4a/L-プロリン共結晶に適合するのに十分な大きさである。自由体積(または共結晶が占めた後に残る単位格子体積)は、水ならびに/またはEtOH、IPAおよびTHFを包含する、それから物質Aが生成される溶媒のいずれかにおそらくあてはまり得る。
上記に記載される物質Aは、DSC、TGAおよびDVSによりさらに特徴付けられる。物質に関するDSCサーモグラムおよびTGAサーモグラムのオーバーレイを図24に示す。TGAサーモグラムは、約100〜160℃の間に生じる第一段階(7 wt%)および160〜230℃の間に生じる第二段階(21 wt%)の2つの明確な重量減少段階を呈する。ブロードな吸熱が、145℃にピーク最大値をもつDSCにより観測され、これは第一のTGA重量減少段階に相当する。これらの現象が生じる比較的高い温度は、重量減少の段階的な本質と同様に結合した溶媒/水の喪失を示す可能性が高い。DSCによる約170〜約240℃の間の重複する吸熱現象は、TGAサーモグラムにおける第二の重量減少段階に相当し、これは共結晶の同時発生の融解およびL-プロリン成分の揮発に相当する可能性が高い。約250℃より上でのTGAサーモグラムにおける急落は、分解と一致する可能性が高い。
上記に記載される物質Aに関するDVS等温線を図25に提示する。物質が、未反応L-プロリンとの混合物として特徴付けされるため、もしあれば、過剰のL-プロリンが水蒸気収着挙動にどのような影響を与えたかは不明である。物質は、85% RHまたは85% RHより上で著しい吸湿性を呈し、85%〜95% RHの間で約6 wt%の水蒸気を占める。水蒸気収着の動力学平衡は、85%〜95% RHでタイムアウトしており、これはより長い平衡時間を許容した場合、共結晶が、測定されたものよりも多くの水分を取り込む可能性があったことを示している。比較的一定した重量減少が、95%〜5% RHの間での脱着上にみられた。脱着時に失った重量(約8 wt%)は、収着の間に増えたものよりも著しく多く、これは分析の開始時に物質が溶媒和/水和された可能性が高いことを示している。XRPDによるDVS後の物質の分析は、固体形態はそのまま残っているが、結晶性の低下を示した。DVS後の試料中の過剰のL-プロリンの有無は、XRPDパターン中の乱れにより確認することができなかった。
実施例2:L-プロリンとの共結晶化による4aの精製
化合物4aおよび4bから成る4の混合物500 mg(HPLC:92.0%の4aおよび7.1%の4b)とL-プロリン(128 mg, 1 eq)をエタノール中(4 mL)で15分間還流した。混合物に、実施例1で得られた共結晶の種晶を添加し、混合物を放冷して、次いで18時間室温で維持した。母液を用いて白色残留固体を反応フラスコから移しながら白色固体を濾別した。4a/L-プロリン共結晶の収集量(1H-NMRにより決定した比1:1, 497 mg, 79%収率)は、98.0%の4aおよび1.49%の4b(HPLCにより分析した)から成った。
実施例3:共結晶化スクリーン
非晶質の4aを、下記の表1で要約したように、L-プロリンおよびD-プロリン以外の26種のコフォーマーを用いたおよそ50種の共結晶スクリーン実験に利用した。溶媒補助をともなう摩砕および手動粉砕、冷却、蒸発、スラリー、急速沈殿、ならびに高モル過剰の1成分を含有する溶液を別の成分と混ぜ合わせて共結晶形成を好む反応平衡を促進する反応結晶化等を包含する、共結晶形成を行いやすい種々の結晶化技術を使用した。カルボン酸、アミノ酸、糖、アミド、アミン、および多官能性芳香族化合物等を包含する、水素結合を形成することができる官能基を持つ、種々のコフォーマーを利用した。種々の条件下で、コフォーマーがこのスクリーンで調査されたが、4aは、これらの通常のコフォーマーとはいずれの確認された共結晶も形成しなかった。
(表1)
Figure 2021512910
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Figure 2021512910
Figure 2021512910
Figure 2021512910
Figure 2021512910
a,b 4aおよびピログルタミン酸を含む特徴付けされていない結晶性物質の種晶の種々のバッチ
実施例4:4a/L-プロリンの形態Bの調製および特性評価
等モル量の非晶質の4aおよびL-プロリン(1:1)をメタノール中で混合して、約68℃まで加熱した。得られた溶液を室温まで徐冷したら、その時点で白色懸濁液が形成された。次いで懸濁液を室温で3日間撹拌し、その後、形態Bを白色固体として濾取して乾燥した。
あるいは、1:2のモル比で非晶質の4aおよびL-プロリンをエタノール中で混ぜ合わせ、約82℃まで加熱して白色懸濁液を与えた。懸濁液を82℃で約5分間保持して室温まで徐冷し、次いで室温で3日間撹拌した。形態Bを白色固体として濾取して乾燥した。
形態Bは無水物の1:2の4a/L-プロリン共結晶である。形態BをXRPD(指数付けを伴う)、DSC、TGA、DVS、ラマン分光法、IR分光法、プロトンNMR、HPLCおよび元素分析により特徴付けした。
形態Bに関するXRPDパターンはうまく指数付けされ(表2)、それは形態Bが主としてまたは排他的に単結晶相からなることを示した(図1)。指数付けの解から得られた単位格子体積は無水物の1:2の4a/L-プロリン共結晶と一致する。下記の表3に単位格子パラメータを提示する。
(表2)4a/L-プロリンの形態Bに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
(表3)4a/L-プロリンの形態Bに関する単位格子パラメータ
Figure 2021512910
MeOHスラリーから単離した形態Bの試料をプロトンNMRおよびHPLCにより特徴付けした。プロトンNMRデータは、検出された残存溶媒がない1:2の4a/L-プロリンの化学量論を示している。HPLCにより決定した試料中の4aの純度は99.7%であった。
形態Bに関するDSCサーモグラムおよびTGAサーモグラムを図2および図3にそれぞれ提示する。異なる試料が各技術に関して分析されたので、データは別々にプロットされた。TGAにより分析された試料はMeOHスラリーから単離されたものであり、一方DSC試料はMeOH中での共結晶形成実験に由来するものであった。事実上、周辺温度と190℃の間のTGAにより観測される重量減少は無く、これは無水物/非溶媒和の物質と一致する。同様に、DSCはこれと一致しており、重複する強い発熱現象を伴う208℃での吸熱現象の発現まで顕著な熱的現象がないこと示している。注意すべきことに、この分析の後で試料はパンから取り出されたことが観測され、発熱の大きさに寄与した可能性が高い。これらの現象は、共結晶の融解/解離に相当する可能性が高い。同様に、190℃より上でのTGAサーモグラムにおける急な減少は、その後に分解する可能性が高い、共結晶のL-プロリン成分の一部の揮発に起因する可能性が高い。
共結晶の化学量論をさらに確認するために、形態BをC、H、N、FおよびOの元素分析により分析した(表4)。1:1および1:2の共結晶に関するパーセント組成の実験値と理論値との比較は、試料が1:2の共結晶とより厳密に一致することを示している。この結果は、他の特性評価データと一致する。
(表4)4a/L-プロリンの形態Bの元素分析
Figure 2021512910
形態Bに関する動的水蒸気収着(DVS)等温線を図4に示す。2.3 wt%の重量増加が5% RHと95% RHの間でみられ、収着の大部分が50% RHより上で生じた。この重量の全てが、少ヒステリシスがみられた脱着で失われた。水蒸気収着の動力学平衡は、85%〜95% RHの間の収着段階でタイムアウトしており、これはより長い平衡時間を許容した場合、共結晶が、測定されたものよりも多くの水分を取り込む可能性があったことを示している。XRPDによるDVS後の物質の分析は、形態に観測可能な変化はないことを示した。
形態Bに関するIRスペクトルおよびラマンスぺクトルを取得したので、図5および図6にそれぞれ提示する。
実施性5:4a/L-プロリンの形態Bの単結晶X線構造決定
データ収集
およそ0.70×0.45×0.30 mmの寸法を有する4a/L-プロリンの形態B(C34H48FN3O10 [C24H30FNO6, 2(C5H9NO2)])の無色の板状物を、ランダム配向でナイロンループにマウントした。共焦点光学を備えたRigaku製Rapid II回折計でCu Kα放射線(λ=1.54178Å)を用いて、予備試験およびデータ収集を実施した。精密化を、SHELX2013を用いて実施した。(Sheldrick, G. M. Acta Cryst., 2008, A64, 112)
4°<θ<68°の範囲での21646反射の設定角を用いて最小二乗精密化から、データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを得た。DENZO/SCALEPACKからの精密化したモザイク性は、良好な結晶品質を示す0.44°であった(Otwinowski, Z.; Minor, W. Methods Enzymol. 1997, 276, 307)。空間群をプログラムXPREP(Bruker, XPREP in SHELXTL v. 6.12., Bruker AXS Inc., Madison, WI, USA, 2002)により決定した。次の条件:0k0 k=2nの系統的な存在から、およびそれに続く最小二乗精密化から、空間群がP21(no.4)であることを決定した。
データを、室温で135.73°の最大回折角(2θ)まで収集した。
データ整理
フレームをHKL3000(Otwinowski (1997))で積分した。合計21646反射を収集し、そのうち5936が特有であった。ローレンツ補正および偏光補正をデータに適用した。線形吸収係数はCu Kα放射線に関して0.833 mm-1である。SCALEPACK(Otwinowski (1997))を用いる経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.128〜0.779の範囲であった。二次消失補正(a secondary extinction correction)を適用した(Sheldrick (2008))。最小二乗で精密化した最終係数は0.0157(11)(絶対単位で)であった。等価な反射の強度を平均化した。平均化のためのアグリーメント(agreement)因子は強度に基づき4.1%であった。
構造解および精密化
SHELXT(Sheldrick (2008))を用いる直接的方法により構造を解析した。残りの原子は続く差フーリエ合成により位置づけした。水素原子を精密化に含めたが、それらが結合する原子次第で制限した。
構造は関数:
Figure 2021512910
を最小化することにより完全行列最小二乗法にて精密化した。重量wは1/[σ2(Fo 2)+(0.0640P)2+(0.5095P)](式中P=(Fo 2+2Fc 2)/3)として定義する。
散乱因子は「International Tables for Crystallography」(International Tables for Crystallography, Vol. C, Kluwer Academic Publishers: Dordrecht, The Netherlands, 1992, 表4.2.6.8および6.1.1.4)から採用した。精密化に用いた5936反射のうちFo 2>2σ(Fo 2)の反射のみをフィット剰余Rの計算において用いた。合計5601反射を計算に用いた。精密化の最終サイクルは490変数パラメータを含み、かつ
Figure 2021512910
の非加重および加重アグリーメント因子に収斂した(最大パラメータシフトはその推定標準偏差の<0.01倍であった)。
単位重量の観測の標準偏差(適合度)は1.062であった。最終差フーリエにおける最高ピークは0.187 e/Å3の高さを有した。最小負ピークは−0.193 e/Å3の高さを有した。
計算粉末X線回折(XRPD)パターン
計算XRPDパターンはMercury(Macrae, C. F. Edgington, P. R. McCabe, P. Pidcock, E. Shields, G. P. Taylor, R. Towler M. and van de Streek, J.; J. Appl. Cryst., 2006, 39, 453-457)を用いるCu放射線および単結晶構造からの原子座標、空間群および単位格子について生成した。
原子変位楕円体ダイアグラムおよび充填ダイアグラム
原子変位楕円体ダイアグラムはMercury(Macrae (2006))を用いて作成した。原子は50%蓋然性の異方性熱振動楕円体により表される。充填ダイアグラムおよび付加的な図はMercury(Macrae (2006))を用いて生成した。水素結合は破線で表される。キラル中心の判定はPLATON(Spek, A.L. PLATON. Molecular Graphics Program. Utrecht University, Utrecht, The Netherlands, 2008. Spek, A.L., J. Appl. Cryst. 2003, 36, 7)を用いて実施した。絶対配置は分子キラル則の仕様書を用いて評価する(Cahn, R.S.; Ingold, C; Prelog, V. Angew. Chem. Intern. Ed. Eng., 1966, 5, 385 and Prelog, V., Helmchen, G. Angew. Chem. Intern. Ed. Eng., 1982, 21, 567)。
結果
単斜晶系格子パラメータおよび計算体積は:a=11.1270(4)Å、b=10.1566(4)Å、c=16.0790(6)Å、β=109.309(2)°(α=γ=90°)、V=1714.91(11)Å3である。形態Bの結晶構造における非対称単位の式量はZ=2を伴う677.75 g mol-1であり、計算密度は1.313 g cm-3となる。空間群がP21(no.4)であることを決定した。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメータの概要を表5に提供する。
(表5)4a/L-プロリンの形態Bに関する結晶データおよびデータ収集パラメータ
Figure 2021512910
a Otwinowski, Z.; Minor, W. Methods Enzymol. 1997, 276, 307.
b Flack, H. D. Acta Cryst., 1983 A39, 876.
c Hooft,R.W.W., Straver,L.H., and Spek, A.L. J Appl Cryst, 2008, 41, 96-103.
空間群および単位格子パラメータは、形態BのXRPD分析から得られたものと一致する(上記の表3を参照されたい)。
0.0422(4.22%)のフィット剰余Rにより示されるように、得られた構造の質は高い。0.02〜0.06の範囲のR値が、最も確実に決定された構造に関して引用される。(Glusker, Jenny Pickworth; Trueblood, Kenneth N. Crystal Structure Analysis: A Primer, 2nd ed.; Oxford University press: New York, 1985; p.87)
形態Bの原子変位楕円体図を図7に示す。単結晶構造の非対称単位に観測された分子は、4aの提案された分子構造と一致する。図7に示される非対称単位は、1個の4a分子および2個のL-プロリン分子を含有し、これは1:2の4a:L-プロリンの化学量論と一致する。両性イオンを示す2個のプロトンを両方のプロリン窒素原子上に別個み位置づけして精密化した。両方のL-プロリン分子が2つの位置にわたって無秩序であり、これを82/18%および71/29%の占有率に精密化する。
絶対配置は、結晶による異常X線散乱の分析によって決定することができる。Flackパラメータとして知られている精密化パラメータx(Flack, H. D.; Bernardinelli, G., Acta Cryst. 1999, A55, 908; Flack, H. D.; Bernardinelli, G., J. Appl. Cryst. 2000, 33, 1143; Flack, H. D. Acta Cryst. 1983, A39, 876; Parsons, S., Flack, H. D., Wagner, T., Acta Cryst. 2013, B69, 249-259)は逆双晶における二成分の相対存在度をコード化する。構造は精密化されるモデルのフラクション1-xおよびその逆数xを含有する。低い標準不確かさが得られる場合、Flackパラメータは解決された構造が正しい場合に0に近く、逆モデルが正しい場合に1に近くなるべきである。図7に示される形態Bの構造に関する測定Flackパラメータは-0.02であり、0.11の標準不確かさを伴う。これは反転構造を区別する力(inversion-distinguishing power)が弱いことを示しているため、Flackパラメータの解釈がなされていない可能性がある。標準不確かさにおける誤差がFlack因子だけに基づく割り当てを防止する。
Flackパラメータ(x)の精密化は、絶対構造の割り当てについて定量的な記載をもたらすものではない。しかしながら、Bayesian統計をBijvoet差に適用するアプローチは絶対構造の異なる仮説について一連の蓋然性を提供することができる(Hooft,R.W.W., Straver,L.H., and Spek, A.L. J. Appl. Cryst., 2008, 41, 96-103; Bijvoet, J.M.; Peerdeman, A.F.; van Bommel A.J. Nature 1951, 168, 271)。この分析は、絶対構造が正しいか、誤りか、またはラセミ双晶なのかという蓋然性に加えて、Flack等価(Hooft)パラメータを提供する。現在のデータセットに関して、Flack等価(Hooft)パラメータは-0.02(5)であると決定された。構造が正しいという蓋然性は1.000であり、構造が誤りである蓋然性は0.9×10-91であり、物質がラセミ双晶である蓋然性は0.2×10-24である。したがって、図7におけるモデルの絶対配置は正しい。この構造は、それぞれR、R、SおよびRの配置で結合するC7、C9、C11およびC12に位置する4a上の4個のキラル中心(図7)と、両方がS配置で結合するC26およびC31に各プロリン分子上の1個のキラル中心とを含有する。
図8は、単結晶構造から生成した形態Bの計算XRPDパターン示す。先に指数付けした形態Bの実験XRPDパターン(実施例4)が上記に示されており、計算XRPDパターン(図9)と一致する。
実施例6:4a/L-プロリンの形態Cの調製および特性評価
等モル量の非晶質の4aおよびL-プロリン(1:1)をスラリーにして、次いでアセトン中、室温で3日間撹拌した。スラリーを濾過して形態Cを白色固体として収集した。
形態Cは、等モル量の非晶質の4aおよびL-プロリンをEtOHに溶解することによっても調製された。次いで、蒸気拡散(VD)により溶液にアセトンを投入して形態Cを沈殿させた。
アセトンは水素結合に関与していないが、形態Cが結晶格子中に存在する1モルのアセトンをともなう1:1の共結晶からなることを、データは示している。単結晶データは、化学組成物および固相組成物の確認を提供する。
形態Cに関するXRPDパターン(図10)はうまく指数付けされた。観測されたピークを表6に示す。
(表6)4a/L-プロリンの形態Cに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
XRPD指数付けからの単位格子パラメータを下記の表7に提示する。
(表7)4a/L-プロリンの形態Cに関する単位格子パラメータ
Figure 2021512910
形態C に関するTGAサーモグラムは段階的な重量減少を呈し、物質がアセトン溶媒和物からなるという所見と一致する(図11)。アセトンは、2つの別々の段階において揮発するように見える。第一段階において、2.6%の重量減少が約60〜150℃の間に観測される。揮発性物質がアセトンであると仮定して、2.6 wt%は0.26モル(または、単結晶構造当たりの総アセトンの約1/4)に相当する。アセトンが唯一の揮発性物質であると仮定する場合、150〜220℃の間の第二の重量減少段階は、6.7%または0.70モルの重量減少に相当する。
実施性7:4a/L-プロリンの形態Cの単結晶X線構造決定
およそ0.19×0.18×0.10 mmの寸法を有するC32H45FN2O9 [C24H30FNO6, C5H9NO2, C3H6O]の無色の板状物を、ランダム配向でファイバーにマウントした。共焦点光学を備えたRigaku製Rapid II回折計でCu Kα放射線(λ=1.54178Å)を用いて、予備試験およびデータ収集を実施した。精密化をSHELX2013(Sheldrick (2008))を用いて実施した。
4°<θ<59°の範囲での12615反射の設定角を用いて最小二乗精密化から、データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを得た。DENZO/SCALEPACKからの精密化したモザイク性は、良好な結晶品質を示す0.25°であった(Otwinowski (1997))。空間群をプログラムXPREP(Bruker (2002))により決定した。次の条件:0k0 k=2nの系統的な存在から、およびそれに続く最小二乗精密化から、空間群がP21(no.4)であることを決定した。
データを、室温で117.84°の最大回折角(2θ)まで収集した。
フレームをHKL3000(Bruker (2002))で積分した。合計12615反射を収集し、そのうち4368が特有であった。ローレンツ補正および偏光補正をデータに適用した。線形吸収係数はCu Kα放射線に関して0.788 mm-1である。SCALEPACK(Bruker (2002))を用いる経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.060〜0.924の範囲であった。二次消失補正を適用した(Sheldrick (2008))。最小二乗で精密化した最終係数は0.0049(7)(絶対単位で)であった。等価な反射の強度を平均化した。平均化のためのアグリーメント因子は強度に基づき4.8%であった。
上記の実施例5と類似した方法で構造解および精密化を実施した。精密化に用いた4368反射のうちFo 2>2σ(Fo 2)の反射のみをフィット剰余Rの計算において用いた。合計3518反射を計算に用いた。精密化の最終サイクルは417変数パラメータを含み、かつ
Figure 2021512910
の非加重および加重アグリーメント因子に収斂した(最大パラメータシフトはその推定標準偏差の<0.01倍であった)。
単位重量の観測の標準偏差(適合度)は1.078であった。最終差フーリエにおける最高ピークは0.271 e/Å3の高さを有した。最小負ピークは−0.167 e/Å3の高さを有した。
計算XRPDパターンおよび原子変位楕円体ダイアグラムを実施例5における手法にしたがって生成した。
単斜晶系格子パラメータおよび計算体積は:a=10.9962(6)Å、b=10.2721(6)Å、c=15.3197(9)Å、β=107.937(4)°(α=γ=90°)、V=1646.32(17)Å3である。形態Cの結晶構造における非対称単位の式量はZ=2を伴う620.70 g mol-1であり、計算密度は1.252 g cm-3となる。空間群がP21(no.4)であることを決定した。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメータの概要を表8に提供する。空間群および単位格子パラメータは、XRPD指数付けにより先に得られたものと一致する(実施例6)。
(表8)4a/L-プロリンの形態Cに関する結晶データおよびデータ収集パラメータ
Figure 2021512910
a Otwinowski (1997).
b Flack (1983).
c Hooft (2008).
形態Cの原子変位楕円体図を図12に示す。単結晶構造の非対称単位に観測された分子は、4a/L-プロリンの提案された分子構造と一致する。図12に示される非対称単位は、1個の4a分子、1個のL-プロリン分子および1個のアセトン分子を含有する。両性イオンを示す2個のプロトンをプロリン窒素原子上に別個に位置づけして精密化した。
図13は、単結晶構造から生成した形態Cの計算XRPDパターンを示す。上記に記載されるように、そこから結晶が得られるバルク物質の実験XRPDパターンが図10に示される。実験パターンにおける全ピークが計算XRPDパターンに表示されており、これはバルク物質が単相である可能性が高いことを示す。計算粉末回折パターンと実験粉末回折パターンの間の強度における差は、多くの場合優先配向によるものである。優先配向は結晶が
いくらかの秩序度をもって一列に並ぶ傾向である。試料のこの優先配向は、実験粉末回折パターンにおいて、ピーク強度に大きな影響を与え得るがピーク位置には影響を与えない。
現在のデータセットに関して、Flack等価(Hooft)パラメータは実施例5に記載される方法で決定され、それは0.09(9)であると決定された。構造が正しいという蓋然性は1.000であり、構造が誤りである蓋然性は0.4×10-21であり、物質がラセミ双晶である蓋然性は0.4×10-4である。
したがって、図12におけるモデルの絶対配置は正しい可能性が高い。この構造は、R、R、S、Rの配置でそれぞれ結合するC7、C9、C11およびC12に位置する4a上の4個のキラル中心(図12)と、S配置で結合するC26にプロリン上に位置する1個のキラル中心とを含有する。
実施例8:4a/L-プロリンの形態Dの調製および特性評価
等モル量の非晶質の4aおよびL-プロリンをアセトニトリル中で混ぜ合わせて、希薄な懸濁液を与え、これを次いで約85℃まで加熱した。懸濁液を約71℃まで冷却して、実施例1で調製された少量の物質で種晶添加し、約71℃で約15分間保持した。次いで懸濁液をゆっくり室温まで放冷して、次いで3日間撹拌した。得られた白色懸濁液を濾過して形態Dを与え、これを次いで乾燥した。
形態Dは、等モル量の非晶質の4aおよびL-プロリンをEtOH中で混ぜ合わせて、約82℃まで加熱してその温度で約15分間保持し、約76℃まで冷却し、実施例1で調製された少量の物質で種晶添加し、温度まで徐冷し、かつ3日間撹拌することによっても調製された。得られた灰白色スラリーを濾過して、収集した量の形態Dを約48℃で真空乾燥した。
形態Dは、無水物/非溶媒和の1:2の4a/L-プロリン共結晶からなる。形態Dに関するXRPDパターンはうまく指数付けされ、それは物質が主としてまたは排他的に単結晶相からなることを示した(図14、表9)。指数付けの解から得られた単位格子体積(表10)は無水物の1:2の4a/L-プロリン共結晶と一致する。
(表9)4a/L-プロリンの形態Dに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
(表10)4a/L-プロリンの形態Dに関する単位格子パラメータ
Figure 2021512910
形態Dを、熱的手法、プロトンNMR、HPLCおよびDVSにより特徴付けした。乾燥した形態Dに関するDSCおよびTGAサーモグラムのオーバーレイを図15に示す。最高185℃までのTGAによるほんのわずかな重量減少およびDSCによるブロードな脱溶媒和吸熱が、無水物/非溶媒和の物質と一致する。小さいブロードな吸熱が132℃(ピーク最大値)で観測された。211℃で生じたシャープな吸熱は、TGAサーモグラムにおける26 wt%の急で段階的な重量減少に相当し、これは共結晶の同時発生の融解およびL-プロリンの揮発に相当する可能性が高い。
プロトンNMRデータは、検出された0.2 wt%の残存EtOHをともなう1:2の4a/L-プロリンの化学量論を示した。HPLCによる試料中の4aの純度は99.6%であった。
形態Dに関するDVS等温線を図16に示す。物質は、5%〜95% RHの間にみられる4.7 wt%の重量増加をともなう著しい吸湿性、特に55% RHより上での吸湿性を呈した。この重量の全てが、少ヒステリシスがみられた脱着で失われた。注意すべきことに、水蒸気収着の動力学平衡は、85%〜95% RHの間の収着段階でタイムアウトしており、これはより長い平衡時間を許容した場合、共結晶が、測定されたものよりも多くの水分を取り込む可能性があったことを示している。
実施例9:4a/L-プロリンの形態Gの調製および特性評価
最初にピラジンをメチルエチルケトンおよびMeOH(90:10, v/v)に溶解することにより、非晶質の4a、ピラジンおよびL-プロリンをそれぞれ1:20:1のモル比で混ぜ合わせた。ピラジン溶液を4aおよびL-プロリンの混合物に添加し、室温で2日間撹拌して不透明な白色懸濁液を与えた。懸濁液の真空濾過により形態Gを単離した。
形態Gは、MEK溶媒和物の4a/L-プロリン共結晶からなる。形態Gは、指数付け(表11)されたXRPD(図17)による特有の結晶性パターンを呈した。
(表11)4a/L-プロリンの形態Gに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
XRPDパターンの指数付けから得られた単位格子体積(表12)は、最大1モルまでのMEKまたはピラジンの存在(MEK分子およびピラジン分子は体積が同程度であり、XRPD指数付けにより区別することはできない)をもつ1:1の4a/L-プロリン共結晶と一致する。単位格子パラメータ(表12)は、形態Gが形態BおよびCと同型構造であることも示す。形態Gは、プロトンNMRにより約1:1.2:0.6:0.1のモル比で4a、L-プロリン、MEKおよび微量に残存するピラジンを含有することが確認された。
(表12)4a/L-プロリンの形態Gに関する単位格子パラメータ
Figure 2021512910
形態BおよびCの単結晶分析は、これらの形態が、形態Bに関しては付加的なL-プロリンおよび形態Cに関してはアセトンを収容するチャネル(channel)を形成する4aおよびL-プロリンをともなう同型構造であることを示した。それぞれのチャネルにおけるL-プロリン分子とアセトン分子の両方が、チャネルを含む分子とは水素結合を形成しない。上述したように、形態Gに関して得られた空間群および他の単位格子パラメータは、それが形態BおよびCと同型構造であることを示した。他の説明が可能であるが、これらの形態に関する分子充填について、および形態Gに関するプロトンNMRにより測定された非化学量論的当量のL-プロリンおよびMEKについて知られていることを考慮すると、形態Gにおけるチャネルが、チャネル内の水素結合の欠如によりもたらされる交換し易さに起因する非化学量論的(かつおそらく変数)比率でL-プロリンとMEKの両方に適合し得るという可能性は極めて高い。
実施例10:共結晶形成による4aの精製
A. L-プロリンを用いた精製
上記の手法に従う4の共結晶化は形態Bおよび形態Dをもたらし、それによりβ-アノマー4bの量を非常に効率的に低減させた。非晶質4の典型的なバッチは、HPLCにより決定した93.2%/6.3%の4a/4bからなった。典型的な実験における共結晶形成工程の後、4bのレベルは6.3%〜2.4%(HPLC)に減少した。得られた4a/L-プロリン共結晶をMeOH(2容量)と混合することにより再結晶化し、混合物を3時間加熱還流した。混合物を2.5時間かけて0±3℃まで冷却し、次いで終夜撹拌した。得られた固体を濾取した。再結晶化後、4bの量はさらに1.2%まで低減され、4aの純度は98.7%(HPLC)まで改善された。
B. D-プロリンを用いた精製
非晶質化合物4の別々の量は、HPLCにより決定した89.3%の4aおよび10.1%の4bを含有した。EtOH(2.4 mL)中の化合物4(300 mg, 0.670 mmol)およびD-プロリン(77.3 mg, 0.671 mmol)を90℃のオイルバス中で加熱した。15分間還流した後、得られた溶液をバイアル中で室温まで冷却し、バイアルの蓋を外して24時間保持してEtOHを室温で低速蒸発させた。沈殿した固体を濾取し、風乾して4a/D-プロリン共結晶を与えた。共結晶は、HPLCにより決定した97.6%の4aおよび2.1%の4bを含有した(白色固体として150 mg, 40%収率)。共結晶の1H NMR分析は、1:1モル比の4aおよびD-プロリンを示した。
実施例11:4a/D-プロリン共結晶の調製および特性評価
EtOH(0.8 mL)中の化合物4a(100 mg, 0.223 mmol)およびD-プロリン(25.8 mg, 0.224 mmol)混合物を90℃のオイルバス中で加熱した。15分間還流した後、溶液を室温まで冷却し、蓋をしたバイアル中、室温で24時間保持した。次いで、バイアルの蓋を外してEtOHを室温で低速蒸発させた。24時間後、沈殿した固体を濾取し、次いで風乾して99+%純度(HPLC)で白色固体として4a/D-プロリン共結晶を与えた(74 mg, 59%収率)。1H NMR分析は、共結晶が1/1比の化合物4aおよびD-プロリンを含有することを示した。
4a/D-プロリン共結晶をXRPD、DSC、TGAおよびDVSにより特徴付けした。4a/D-プロリン共結晶に関するXRPDパターンはうまく指数付けされ、これは物質が主としてまたは排他的に単結晶相からなることを示した(図18、表13)。
(表13)4a/D-プロリンに関して観測されたピーク
Figure 2021512910
Figure 2021512910
Figure 2021512910
物質に関するDSC/TGAオーバーレイを図19に示す。4a/D-プロリン共結晶に関するTGAサーモグラムは、約100℃および150〜160℃の間に生じる第一段階(7.0%重量減少)および150〜230℃の間に生じる第二段階(20.0%重量減少)の2つの明確な重量減少段階を呈した。ブロードな吸熱が、130℃にピーク最大値をもつDSCにより観測されたが、これは結合した溶媒/水の喪失を示す可能性が高い第一のTGA重量減少段階に整合している。重複する吸熱現象が約170℃より上で観測されたが、これは共結晶のD-プロリン成分の同時発生の融解/揮発に起因する可能性が高い。約250℃より上でのTGAサーモグラムにおける急落は分解に相当する可能性が高い。
D-プロリン共結晶に関するDVS等温線を図20に示す。収着時に、共結晶は、85%〜95% RHの間で生じる重量増加の大部分を伴って、5%〜95% RHの間で26 wt%増加した。この段階の間に動力学平衡はタイムアウトしたが、これはより長い平衡時間を許容した場合、共結晶が、測定されたものよりも多くの水分を取り込む可能性があったことを示している。脱着時に、共結晶は95%〜5% RHの間での比較的一定した重量減少を呈し、収着の間に増加したものよりも多い重量を失った(29 wt%)が、これは分析の開始時に物質が溶媒/水を含有した可能性が高いことを示している。注意すべきことに、D-プロリン共結晶のDVS後の試料がパンに張り付いて回収できなかったことが観測されており、これは実験中に部分的に潮解したこと示している。
実施例12:4a/L-プロリン物質Aおよび非晶質の4aのマウスへの比較投与
この実施例では、雄性C57BL/6マウスにおいて、非晶質の4aの懸濁製剤と比較して、実施例1で調製した物質Aの懸濁製剤の経口投与後の4aへの全身曝露を評価した。
非晶質の4aまたは物質Aを5% DMSOをともなう0.5% CMC中で製剤化し(重量基準でのプロリンの存在を考慮して)、15 mL/kgの投与容量を用いて35匹の雄性C57BL/6マウスに1000 mg/kgで強制経口投与により投与した。下記の表14に要約されるように、各時点に関して別々の群のマウス(n=5/群/時点)を用いて血漿単離用の血液試料を投与の0.25、0.5、1、2、4、8および24時間後に収集した。下記に記載されるように、LC/MS/MS技法により4aの濃度に関して血漿試料を分析した。
(表14)マウス研究の概要
Figure 2021512910
試薬および供給品:試薬および供給品は全て、高品質のもので、適切な場合、LC/MS等級のものであり、標準的な商業供給者から得た。
血漿試料の調製:タンパク質沈殿法を用いて、4aをK3EDTA強化血漿試料から抽出した。ポリプロピレンマイクロプレート(96ウェル)のウェルに、アセトニトリル/H2O(1:1)で調製した2.5-ng/mL D3-4a(内部標準, IS)溶液 20μLを添加した後、20μLの血漿試料を添加した。プレートをシーリングテープ(Phenomenex, AH0- 7362)で密封し、ボルテックスミキサーで1分間やさしく混合した。ピペットで500μLのメタノールを含有したポリプロピレンプレートのウェル(96ウェル, 2 mL, Phenomenex, AH0-7194)に溶液を取った。プレートを密封し、5分間ボルテックスミキサー処理した後、室温で3分間、3000×gで遠心分離した。300μL分割量の上清を、300μLの脱イオン水を含有した新しいウェルに移した。やさしく混合した後、プレートを密封して12℃に維持したLCオートサンプラーに入れ、4aの定量分析のために10μL分割量をLC/MS/MSシステムに注入した。
クロマトグラフィーおよび質量分析の条件:H2O、アセトニトリルおよびフマル酸を含有する移動相溶液を用いた逆相分析カラムにより4aの液体クロマトグラフィー分離を達成した。クロマトグラフィーの分析物を、多重反応モニタリング(MRM)モードで作動するWaters製 Xevo TQ-S三連四重極質量分析計により検出した。精度管理試料、較正基準および研究試料に関するクロマトグラフのピーク面積は、MassLynxソフトウェアV4.1(Waters Corp.)を用いて積分した。
薬物動態解析:WinNonlin(商標)ソフトウェア バージョン6.3 (Pharsight Corp., Cary, NC)を用いて、各投与群に関する平均4a血漿濃度-時間データの非区画分析(non-compartmental analysis)から、薬物動態パラメータ推定値を得た。時間ゼロ〜最後の4aの濃度が測定可能な時間(t)の血漿濃度-時間曲線下の面積(AUC(0-t))を、対数線形台形公式(linear log trapezoidal rule)を用いて決定した。最後の濃度が測定可能な時間は、その後は各投与群の過半数の動物において4aの濃度が定量下限未満(BLQ)である時間として定義された。
結果:物質Aおよび非晶質の4aの単回強制経口投与後の平均(±SD)4a血漿濃度-時間データを下記の表15に提示し、図21に表示する。4aに関する薬物動態パラメータ推定値を表16に提示する。
(表15)物質Aおよび非晶質の4aの単回経口投与後のマウスにおける4aの平均(±SD)の血漿濃度
Figure 2021512910
a 群の全試料がBLQであった。
(表16)マウスへの単回経口投与後の血漿薬物動態パラメータ推定値
Figure 2021512910
実施例13:4a/L-プロリン物質Aおよび非晶質の4aのサルへの比較投与
この実施例では、下記の表17に要約されるように、媒体(5 mL/kg)として滅菌水中の0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた30 mg/kgでの、またはカプセルにゆるく詰めた50 mg(体重に関係なく)での単回強制経口投与後の雄性カニクイザルにおいて、実施例1で調製した物質Aの製剤および非晶質の4aの製剤それぞれの全身曝露を評価した。
(表17)サル研究の概要
Figure 2021512910
a 体重に関係なく投与された用量
b NA, 適用されない
物質Aの投与は、重量基準でのプロリンの存在を考慮した。各サルから血漿単離用の血液試料を投与の0.25、0.5、1、2、4、8、12および24時間後に収集した。LC/MS/MS技法により4aの濃度に関して血漿試料を分析し、上記実施例12に記載されるように薬物動態解析を実行した。
結果:単回強制経口投与(30 mg/kg, 5 mL/kg)後、またはカプセル投与(50 mg)後の平均(±SD)血漿濃度を下記の表18に提示し、図22に表示する。薬物動態パラメータ推定値を表19に提示する。
(表18)懸濁剤またはカプセルとしての物質Aおよび非晶質の4aの経口投与後のサルにおける平均(±SD)の4a血漿濃度
Figure 2021512910
a 中間の時点に関する3個の値のうちの2個(すなわち、定量可能な値をもつ2時点間)は、定量限界未満(BLQ)であり、かつ定量下限(LLOQ)の1/2(すなわち、0.200 ng/mL)として平均に含まれた。
b 中間の時点に関する全値(すなわち、定量可能な値をもつ2時点間)はBLQであり、LLOQの1/2(すなわち、0.200 ng/mL)として報告された。
c 3個の値のうちの1個はBLQであり、LLOQの1/2の値(すなわち、0.200 ng/mL)を割り当てて平均および標準偏差を算出した。
d 2または3個の試料がBLQであったため、平均はBLQ として報告された。
e 全値がBLQであった。
(表19)懸濁剤またはカプセルの強制経口投与による4aの投与後のサルにおける平均(±SD)の血漿濃度
Figure 2021512910
a データは中央値として提示した。
両方のカプセル製剤(しかし、経口懸濁製剤でない)は、4aの血漿濃度をもたらし、該血漿濃度は、投与の4時間後および8時間後で定量下限(すなわち、0.400 ng/mL)未満または定量下限付近であったが、物質Aの製剤および非晶質の4aの製剤に関してそれぞれ12.5±11.0および6.11±9.23 ng/mLの平均(±SD)4a濃度を有する24時間に、曝露の二次的なピークを示した。

Claims (47)

1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:14.76、16.86、19.00および21.05°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:2)との共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに12.14、17.51、18.89および19.41°2θ±0.20°2θにピークを含む、請求項1記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図1に示されるものである、請求項1または2記載の共結晶。
約211℃での発熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか一項記載の共結晶。
DSCサーモグラムが実質的に、図2に示されるものである、請求項4記載の共結晶。
1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:9.20、16.19、18.45および24.51°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:2)との共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに11.83、17.16、20.15および25.34°2θ±0.2°2θにピークを含む、請求項6記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図14に示されるものである、請求項6または7記載の共結晶。
約211.2℃の開始温度を有する、吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより特徴付けられる、請求項6〜8のいずれか一項記載の共結晶。
DSCサーモグラムが実質的に、図15に示されるものである、請求項9記載の共結晶。
1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:14.64、17.53、18.91および21.33°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリンとの共結晶のアセトン溶媒和物(1:1:1)。
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに12.10、15.14、18.26および19.56°2θ±0.2°2θにピークを含む、請求項11記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図10に示されるものである、請求項11または12記載の共結晶。
約150℃および約220℃で終わる重量減少段階を含む、熱重量分析(TGA)サーモグラムにより特徴付けられる、請求項11〜13のいずれか一項記載の共結晶。
TGAサーモグラムが実質的に、図11に示されるものである、請求項14記載の共結晶。
1.54178Åの波長でCu-Kα放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:10.42、14.62、19.28および21.14°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、約1:1.2:0.6:0.1のモル比のN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリンとメチルエチルケトンとピラジンとの共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに11.85、14.93、17.40および19.28°2θ±0.2°2θにピークを含む、請求項16記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図17に示されるものである、請求項16または17記載の共結晶。
以下の通りの単位格子寸法:a=10.975Å、b=10.310Å、c=15.704Å、α=90°、β=108.56°、およびγ=90°により特徴付けられる、請求項16〜18のいずれか一項記載の共結晶。
1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:11.77、14.52、19.54および21.23°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとD-プロリン(1:1)との共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに8.45、13.18、16.95および19.12°2θ±0.2°2θにピークを含む、請求項20記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図18に示されるものである、請求項20または21記載の共結晶。
約130℃に吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより特徴付けられる、請求項20〜22のいずれか一項記載の共結晶。
DSCサーモグラムが実質的に、図19に示されるものである、請求項23記載の共結晶。
1.5405929Åの波長でCu-Kα1放射線を用いた回折計で決定される場合、以下のピーク:8.52、16.33、19.50および21.22°2θ±0.20°2θを含む粉末X線ディフラクトグラムにより特徴付けられる、N-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミドとL-プロリン(1:1)との共結晶
粉末X線ディフラクトグラムが、さらに9.19、13.22、14.75および17.57°2θ±0.2°2θにピークを含む、請求項25記載の共結晶。
粉末X線ディフラクトグラムが実質的に、図23に示されるものである、請求項25または26記載の共結晶。
以下の通りの単位格子寸法:a=10.126Å、b=11.021Å、c=30.259Å、α=90°、β=90°、およびγ=90°により特徴付けられる、請求項25〜27のいずれか一項記載の共結晶。
約145℃に吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムにより特徴付けられる、請求項25〜27のいずれか一項記載の共結晶。
DSCサーモグラムが実質的に、図24に示されるものである、請求項29記載の共結晶。
請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶および薬学的に許容される固体担体を含む、薬学的組成物。
請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、対象における熱ショックタンパク質90(Hsp90)を阻害するための方法。
請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、神経変性障害に罹患している対象における神経変性障害を治療または予防するための方法。
神経変性障害が、糖尿病性末梢神経障害である、請求項33記載の方法。
請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶の治療的有効量を対象に投与する段階を含む、対象において糖尿病性末梢神経障害を発症する可能性を予防または低減するための方法であって、対象が1型または2型の糖尿病に罹患している、方法。
4aおよび4bを含む出発組成物中の、N-(2-(5-(((2S,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4b)に対するN-(2-(5-(((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ-6,6-ジメチルテトラ-ヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-3'-フルオロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)エチル)-アセトアミド(4a)の濃度を増加させる方法であって、溶媒中で出発組成物をプロリンと接触させる段階、ならびに出発組成物、プロリンおよび溶媒を4aとプロリンとの共結晶が生成される結晶化条件に供する段階を含み、バルク共結晶(bulk co-crystal)が、4aおよび4bを含む出発組成物中よりも高い4aの濃度を呈する、方法。
プロリンがL-プロリンである、請求項36記載の方法。
プロリンがD-プロリンである、請求項36記載の方法。
出発組成物、プロリンおよび溶媒を加熱する段階をさらに含む、請求項36〜38のいずれか一項記載の方法。
4aの濃度がHPLCにより決定される、請求項36〜39のいずれか一項記載の方法。
4aとプロリンとのバルク共結晶中の4aの濃度が、出発組成物中よりも約3〜約20%(w/w)高い、請求項36〜40のいずれか一項記載の方法。
4aとプロリンとのバルク共結晶中の4aの濃度が、出発組成物中よりも約5〜約15%(w/w)高い、請求項36〜41のいずれか一項記載の方法。
4aとプロリンとのバルク共結晶中の4aの濃度が、約5%、約10%、または約15%(w/w)増加する、請求項36〜42のいずれか一項記載の方法。
神経変性障害に罹患している対象における神経変性障害を治療または予防するための、請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶。
1型または2型の糖尿病に罹患している対象における糖尿病性末梢神経障害を発症する可能性を予防または低減するための、請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶。
神経変性障害に罹患している対象における神経変性障害を治療または予防するための医薬の製造における、請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶の使用。
1型または2型の糖尿病に罹患している対象における糖尿病性末梢神経障害を発症する可能性を予防または低減するための医薬の製造における、請求項1〜30のいずれか一項記載の共結晶の使用。
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