JP2021503952A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子であって、上記CARは、ヒト化抗IL−1RAP結合領域と、膜貫通領域と、少なくとも刺激領域を含む細胞内シグナル伝達領域とを有する抗体又は抗体断片を有している、単離核酸分子、該核酸分子でコードされるポリペプチド、及び上記抗体又は抗体断片を有する単離キメラ抗原受容体(CAR)分子に関する。
本発明はまた、CARをコードする核酸分子を有するベクター、及び該ベクターを有するT細胞に関する。
本発明はまた、哺乳類における増殖性疾患を治療するための、CAR分子を発現する上記T細胞の使用に関する。
慢性骨髄性白血病(CML:chronic myelogenous leukemia(chronic myeloid leukemiaとしても知られている))は、分化能を喪失することなく顆粒球細胞株の増殖が増加することを特徴とする骨髄増殖性疾患である。
CMLは造血幹細胞の疾患であり、フィラデルフィア染色体22q−と名付けられた短縮化した22番染色体を伴うt(9;22)(q34;q11)転座から生じる。上記転座によって9番染色体のABL1遺伝子と22番染色体のBCR遺伝子とが並置され、BCR−ABL1転写物及びチロシンキナーゼ活性が高い融合タンパク質をコードするBCR−ABL1融合遺伝子が生じる。CMLの分子的原因が十分に理解されているとして、遺伝子転座が生じるメカニズムは知られていない。
CMLの発生率は、大きな地理的な差又は人種差はなく、10〜15件/106/年である。診断時の年齢中位数は欧州で60〜65歳だが、人口の若い国々ではかなり低くなる。小児のCMLは稀である。
CMLの診断は概して単純明快である。ほとんどの場合は、特徴的な血球数に基づいて診断できる。末梢血又は骨髄細胞においてフィラデルフィア染色体22q−若しくはBCR−ABL1転写物、又は両方を同定することで診断を確認できる。
2000年代初頭より前は、インターフェロン・アルファ(IFNα)及び造血幹細胞移植がCMLにおける唯一有効な治療法であった。HLA適合ドナーが存在する場合、造血幹細胞の同種移植が適格患者に対する唯一治癒の可能性のある治療法だと考えられていた。このような同種移植は、悪性度が高い血液疾患の大半の治療で採用されている養子免疫療法という手法である。その原理は、特定のT受容体を介した細胞傷害性Tエフェクターの活性に依存した免疫移入である。しかしながら、これらのリンパ球に特異的な細胞傷害活性は、ヒト白血球抗原(HLA)系の分子を用いた腫瘍抗原の提示によって制限される。このような移植手順の死亡率及び同種移植後の再発リスクは、依然としてこのような免疫療法の大きな賭けである。
移植関連の死亡毒性にも関わらず、同種幹細胞移植の移植片対白血病の免疫学的効果、更にはドナーリンパ球輸注(DLI)の有効性が、依然として、治癒とはいかなくとも疾患の長期寛解を達成できる唯一の治療法であることがよく知られている。
2000年代初頭から、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)が発見され、慢性期CMLの治療に広く使用されるようになったことで、当該血液疾患の予後がかなり変化して、90%を超える生存率が達成された。CMLにおける造血幹細胞の同種移植の適応は、現在、TKIに不耐性/抵抗性を示す患者及びCMLの進行期(移行期又は急性転化期)に限定されている。
2017年における第一選択治療としては、他の代替治療も採用できるものの、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の使用が依然として選択される治療法である。TKI療法では、ほとんどの患者が正常な造血を回復する。しかしながら、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、又はポナチニブのようなTKIは、CML患者に対して全生存期間及びクオリティ・オブ・ライフの点で多くをもたらしたものの、これらの薬剤がCMLを治癒させる能力は限定的である。
また、不耐性及び毒性、妊娠に対する潜在的なリスク、又は医療資金提供機関の医療経済的目的としての考慮から、TKIの中止を検討することとなる。
イマチニブの多施設治験において、分子遺伝学的検出限界以下の白血病であるCML患者では(2年を超える期間の)イマチニブ治療を中止した。登録患者69名について、これらの患者69名のうち42名(61%)で再発した。12ヶ月の時点で、これらの患者69名について分子遺伝学的検出限界以下の白血病が持続している確率は41%であった。この失敗は、TKIが静止状態のCML幹細胞を根絶できないことに起因する。
近年、分子遺伝学的完全奏効患者においてイマチニブを中止する試みを検討するフランスの研究STIM1(n=100名の患者)が2017年に更新された。TKI中止後の分子遺伝学的再発率は、平均期間2.5ヶ月で61%であり、これらの再発患者において疾患の髄質蓄積が持続していることが明らかとなった。
実際に、現在のTKIは根治療法というよりは抑制的治療であるため、TKIの長期継続投与を必要とし、予期しない未知の有害事象が発生する可能性がある。また、CML若年患者へのTKI長期投与は将来的な課題となり得る。
従って、持続性TKI耐性CML静止前駆物質を除去する必要がある。遺伝的手法は、がん細胞の免疫的な認識及び除去を向上させるのに有望な手段を提供する。有望な方針の一つとして、免疫エフェクター細胞を遺伝子操作して、細胞傷害性を腫瘍細胞へリダイレクトするキメラ抗原受容体を発現させることが挙げられる。
近年、腫瘍エスケープのメカニズムを迂回可能とする細胞工学の進歩のおかげで、最新世代のCAR(キメラ抗原受容体)−T細胞が登場している。CAR−T細胞は、免疫グロブリン可変断片と融合したTCRの定常部で構成されたキメラTCRを発現するTリンパ球である。標的の認識はHLAでは制限されないため、あらゆる種類の腫瘍マーカーを標的とすることができる。
新規な免疫療法のなかでも、細胞表面の腫瘍関連抗原に対するこれらのCAR−T細胞は、難治性/再発性のALL(急性リンパ性白血病)(CD19)又はCLL(慢性リンパ性白血病)(CD19)患者だけでなく、固形腫瘍や血液学分野における前臨床研究において、主にはMM(多発性骨髄腫)(CD38、BCMA(B細胞成熟抗原)、CD44v6、又はCS1)、AML(急性骨髄性白血病)(CD33又はCD123)、T細胞悪性腫瘍(CD5)、又はリンパ腫(CD30)においても予期せぬ成功を見せている。
CMLにおいて、遺伝子発現のプロファイリング研究により、正常なCD34+/CD38−造血幹細胞では発現されないが白血病性のものでは発現される細胞表面バイオマーカー(IL−1RAP又はIL−1R3)が明らかとなった。また、IL−1RAPの発現は腫瘍量やCML疾患の臨床相と相関している。
IL−1RAP(インターロイキン−1受容体アクセサリータンパク質、Genbankアクセッション番号AAB4059)は、IL−1シグナル伝達に関与するIL−1及びIL33受容体の共受容体であり、炎症及び増殖に関わるMAPキナーゼ、p38、NF−κB等の遺伝子等、各種のシグナル伝達経路を活性化する。このタンパク質は腫瘍細胞表面で発現される。従って、IL−1RAPは有望な腫瘍関連抗原である。
本出願人は、このIL−1RAP抗原を用いることで、がん又は腫瘍、特にCMLの患者に投与される遺伝子改変CAR T細胞を作製できることを見出した。
標的IL−1RAPを用いて、CMLの原因である造血幹細胞Phi+を標的とする細胞性CAR−Tを開発することで、血液疾患の前駆体を本質的に標的とするTKIに加えて、又はその代わりに、血液疾患の原因を根絶する手段となる。
このような新規治療手段は以下に適用できる。
・TKI中止後に再発する患者
・同種移植(移植片対白血病、同種幹細胞移植、ドナーリンパ球輸注(DLI))後に再発した患者
・TKI下で最適以下の奏効を示す非適格患者
・再発のリスクが大きい移行期/急性転化期CML患者
・若年又は小児CML患者
・TKI中止後に再発する患者
・同種移植(移植片対白血病、同種幹細胞移植、ドナーリンパ球輸注(DLI))後に再発した患者
・TKI下で最適以下の奏効を示す非適格患者
・再発のリスクが大きい移行期/急性転化期CML患者
・若年又は小児CML患者
一実施形態では、CARをコードするポリヌクレオチドであって、上記CARは、標的抗原に結合する細胞外領域、膜貫通領域、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達領域を有している、ポリヌクレオチドが提供される。本明細書中、一実施形態では、CARを有するベクターで遺伝子改変されたT細胞が検討される。本明細書中、CARを発現するT細胞は、CAR T細胞又はCAR改変T細胞という。
本発明は、特定の実施形態において、がんの治療に使用するための、本明細書で検討されるCARを発現するよう遺伝子改変された細胞を検討している。本明細書中、「遺伝子操作された」又は「遺伝子改変された」という語は、追加の遺伝子材料をDNA又はRNAとして細胞中の全遺伝子材料に付加することを意味する。
「#E3C3」及び「#A3C3」という語は同一であると理解され、#E3C3は#A3C3を表すために自由に使用でき、その逆も同様である。
本発明の他の目的、特徴、態様、及び利点は、以下の説明、図面、及び実施例を参照することでより明確になるであろう。
以下の表に配列識別子をまとめる。
IgG1、IgG4、CD8α、4−1BB、CD3ζ、CD28、及びICasp9遺伝子のヒンジ領域の配列は、Genbankで入手できる。
本発明の実施においては、そうでないということが特に明示されない限り、当該技術分野の範囲内にある化学、生化学、有機化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、遺伝学、免疫学、及び細胞生物学の従来の方法が採用され、これらの多くを説明のため以下に記載する。これらの方法は文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,updated July 2008);Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Glover,DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(IRL Press,Oxford,1985);Anand,Techniques for the Analysis of Complex Genomes(Academic Press,New York,1992);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,Eds.,1984);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984);Harlow and Lane,Antibodies(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998);Current Protocols in Immunology,Q.E.Coligan,A.M.Kruisbeek,D.H.Margulies,E.M.Shevach and W.Strober,eds.,1991;Annual Review of Immunology;及びAdvances in Immunology等の学術誌の論文を参照されたい。
特に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書で記載したのと類似又は同等の方法及び材料を使用できるが、本明細書には組成、方法、及び材料の好ましい実施形態を記載している。
当業者に理解されるように、また本明細書のどこかで記載する通り、完全抗体は2つの重鎖と2つの軽鎖とを有する。各重鎖は可変領域と第1、第2、及び第3定常領域とで構成され、各軽鎖は可変領域と定常領域とで構成される。哺乳類の重鎖はα、δ、ε、γ、及びμに分類され、哺乳類の軽鎖はλ又はκに分類される。α、δ、ε、γ、及びμ重鎖を有する免疫グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)A、IgD、IgE、IgG、及びIgMに分類される。完全抗体は「Y字」型を形成する。Y字の幹部は、互いに結合した2つの重鎖の第2及び第3定常領域(IgE及びIgMの場合、更に第4定常領域)で構成され、ヒンジ部で(鎖間)ジスルフィド結合が形成される。γ、α、及びδ重鎖は、3つのタンデム型(直列型)Ig領域で構成された定常領域と、柔軟性を付与するヒンジ領域とを有する。μ及びε重鎖は、4つの免疫グロブリン領域で構成された定常領域を有する。第2及び第3定常領域は、それぞれ「CH2領域」及び「CH3領域」ともいう。Y字の各腕部は、可変領域と、可変領域に結合した単一重鎖の第1定常領域と、単一軽鎖の定常領域とを有する。軽鎖及び重鎖の可変領域は抗原結合を担う。
軽鎖及び重鎖の可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」ともいわれる3つの超可変領域で分断された「フレームワーク」領域を有する。CDRは、Kabat et al(Wu,TT and Kabat,E.A.,J Exp Med.132(2):211−50,(1970);Borden,P.and Kabat E.A.,PNAS,84:2440−2443(1987);(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991参照)の配列、又はChothia et al(Choithia,C. and Lesk,A.M.,J Mol.Biol.,196(4):901−917(1987),Choithia,C.et al,Nature,342:877−883(1989))の構造等といった従来の方法によって定義又は同定できる。
異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、ヒト等の種内では比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成する軽鎖及び重鎖の組み合わさったフレームワーク領域であり、3次元空間にCDRを配置及び配列させるよう機能する。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合を担う。各鎖のCDRは、典型的には、N末端から順に番号が付けられてCDR1、CDR2、及びCDR3といわれ、また典型的には、個々のCDRが位置する鎖によって特定される。従って、抗体の重鎖の可変領域に位置するCDRはCDRH1、CDRH2、及びCDRH3といわれ、抗体の軽鎖の可変領域に位置するCDRはCDRL1、CDRL2、及びCDRL3といわれる。特異性の異なる(すなわち、異なる抗原に対して異なる結合部位を有する)抗体は、異なるCDRを有する。
「VH」又は「VH」とは、免疫グロブリン重鎖の可変領域を意味しており、本明細書で開示される抗体、Fv、scFv、Fab、又は他の抗体断片のものを含む。
「VL」又は「VL」とは、免疫グロブリン軽鎖の可変領域を意味しており、本明細書で開示される抗体、Fv、scFv、dsFv、Fab、又は他の抗体断片のものを含む。
「モノクローナル抗体」は、Bリンパ球の単一クローンによって、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体である。モノクローナル抗体は、当業者に知られている方法、例えば、骨髄腫細胞を免疫脾臓細胞と融合させてハイブリッド抗体形成細胞を作製することで得られる。モノクローナル抗体はヒト化モノクローナル抗体を含む。
本明細書中、「a」、「an」、及び「the」という冠詞は、当該冠詞の文法的対象が1つであること又は1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つであること)を意味する。
本明細書中、「約」又は「およそ」という語は、基準となる分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量、又は長さに対して30%、25%、20%、25%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%分変動する分量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量、又は長さを意味する。特定の実施形態において、「約」又は「およそ」という語は、数値の前に使用した場合、その値±15%、10%、5%、又は1%の範囲であることを示す。
本明細書を通じて、文脈上別段の解釈が必要とされない限り、「有する(comprise、comprises、及びcomprising)」という語は、記載された工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群を包含することを意味しており、他の任意の工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群を除外することは意味していないと解釈される。
本明細書を通じて、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「ある実施形態」、「追加実施形態」、「更なる実施形態」、又はそれらの組み合わせとは、当該実施形態に関して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。
本発明の目的のために、「同一性」又は「相同性」は、比較ウインドウ中の2つのアライメント配列を比較することで算出される。配列をアライメントすることで、比較ウインドウ中の2つの配列に共通する位置(ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を決定できる。次いで、共通する位置の数を比較ウインドウ中の全位置数で割り、100を掛けることで、相同性のパーセンテージが得られる。配列同一性のパーセンテージの決定は、手動で、又はよく知られたコンピュータープログラムを用いて実施できる。
本発明は、細胞傷害性を腫瘍細胞へリダイレクトするキメラ抗原受容体を発現するよう設計されたベクターで遺伝子操作された免疫エフェクター細胞を提供する。本明細書中、該遺伝子操作された受容体をキメラ抗原受容体(CAR)という。CARは、標的抗原(腫瘍抗原等)に対する抗体に基づいた特異性をT細胞受容体活性化細胞内領域と組み合わせることで、特異的な抗腫瘍細胞性免疫活性を示すキメラタンパク質を生成する分子である。本明細書中、「キメラ」という語は、由来の異なる種々のタンパク質又はDNAの一部分で構成されていることを表す。
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離核酸分子であって、上記CARは、抗IL−1RAP結合領域と、膜貫通領域と、少なくとも刺激領域を有する細胞内シグナル伝達領域とを有する抗体又は抗体断片を有しており、上記抗IL−1RAP結合領域は、
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖と
を有している、単離核酸分子に関する。
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖と
を有している、単離核酸分子に関する。
CARの主な特性は、免疫エフェクター細胞特異性をリダイレクトすることで、増殖、サイトカイン産生、貪食、又は主要組織適合性(MHC)とは独立して標的抗原発現細胞の細胞死を媒介し得る分子の産生を引き起こし、モノクローナル抗体、可溶性リガンド、又は細胞特異的共受容体の細胞特異的標的化能を活用することができることである。
本明細書中、「結合領域」、「細胞外結合領域」、「抗原特異的結合領域」、及び「細胞外抗原特異的結合領域」という語は互換的に使用され、対象である標的抗原と特異的に結合できる能力をCARに付与する。結合領域は、生物学的分子(細胞表面受容体、腫瘍タンパク質、脂質、多糖等の細胞表面標的分子、又はそれらの成分等)を特異的に認識して結合できる能力を有する任意のタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、又はペプチドを有していてもよい。結合領域には、対象である生物学的分子に対する任意の天然、合成、半合成、又は組換え生成された結合パートナーが含まれる。本明細書中、「特異的結合親和性」、「特異的に結合する」、「特異的に結合した」、「特異的な結合」、又は「特異的に標的とする」という語は、バックグラウンド結合よりも結合親和性が高い分子間の結合を表す。結合領域(又は結合領域を有するCAR又は結合領域を含む融合タンパク質)は、親和性又はKa(すなわち、1/M単位の特定の結合相互作用の平衡会合定数)が例えば約105M−1以上で標的分子と結合又は会合する場合、標的分子と「特異的に結合する」。本開示に係る結合領域ポリペプチド及びCARタンパク質の親和性は、競合ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)のような従来の方法で容易に測定できる。
上記抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、又はヒト化抗体である。
ある好ましい実施形態において、上記抗体は、腫瘍細胞上の表面タンパク質と特異的に結合するヒト化抗体(ヒト化モノクローナル抗体等)である。「ヒト化」抗体は、ヒトフレームワーク領域と、非ヒト(例えば、マウス、ラット、又は合成)免疫グロブリン由来の1種以上のCDRとを有する免疫グロブリンである。従って、恐らくはCDRを除くヒト化免疫グロブリンの全ての部分が、天然のヒト免疫グロブリン配列の対応部分と実質的に同一である。ヒト化又は他のモノクローナル抗体は、抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に対して実質的に影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換を追加で有することができる。ヒト化抗体は、遺伝子操作によって構築できる(例えば、米国特許第5,585,089号明細書を参照)。
抗体にはその抗原結合断片が含まれ、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab)’2断片、F(ab)’3断片、Fv、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、及び抗原結合を担う全長抗体の一部が挙げられる。また、上記用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ結合抗体(バイスペシフィック抗体等)、及びそれらの抗原結合断片等の遺伝子操作形態も含む。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH領域及びVL領域を有し、これらの領域は単一のポリペプチド鎖中にいずれかの配向(VL−VH又はVH−VL等)で存在している。
一本鎖抗体は、所望の標的に特異的なハイブリドーマのV領域遺伝子からクローニングしたものであってもよい。このようなハイブリドーマの作製はルーチン化されている。可変領域重鎖(VH)及び可変領域軽鎖(VL)をクローニングするのに採用される方法は、例えばOrlandi et al,PNAS,1989;86:3833−3837に記載されている。
一般に、scFvポリペプチドは、VH及びVL領域間にポリペプチドリンカーを更に有し、これによりscFvは抗原結合に対して所望の構造を形成できる。
本明細書で検討されるCARは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以上のリンカーを有していてもよい。特定の実施形態において、リンカーの長さは、約1〜約25アミノ酸、約5〜約20アミノ酸、約10〜約20アミノ酸、又は任意の介在アミノ酸長である。いくつかの実施形態において、上記リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、又はそれ以上のアミノ酸長である。
リンカーの具体例としては、グリシン重合体(G)n、グリシン−セリン重合体(Gi_sSi_5)n(式中、nは1、2、3、4、又は5以上の整数)、グリシン−アラニン重合体、アラニン−セリン重合体、及び当該分野で知られている他の可動性リンカーが挙げられる。グリシン及びグリシン−セリン重合体は相対的に不定形であるため、本明細書に記載したCAR等の融合タンパク質の領域間で中立テザーとして機能できる。グリシンはアラニンと比べても非常に多くのphi−psi空間にアクセスし、より長い側鎖を有する残基よりも制限がはるかに少ない(Scheraga,Rev.Computational Chem.1 1173−142(1992)を参照)。当業者に認識される通り、特定の実施形態におけるCARの設計には、可動性リンカーや、所望のCAR構造が得られるようにそれより可動性の低い構造を与える1つ以上の部分が含まれるように、全体又は一部が可動性であるリンカーが含まれていてもよい。
特定の実施形態において、上記リンカーはVH領域とVL領域との間にある。
特定の実施形態において、上記リンカーは、配列番号5のアミノ酸配列を有する又はそれで構成される。
一実施形態において、上記IL−1RAP結合領域は、配列番号4の軽鎖可変領域のアミノ酸配列において1、2、又は3個以上30、20、又は10個以下の改変を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号2の重鎖可変領域のアミノ酸配列において1、2、又は3個以上30、20、又は10個以下の改変を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域とを有するscFvである。
上記IL−1RAP結合領域は、(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖可変領域と、(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖可変領域とを有するscFvであることが好ましい。
一般に、CARの結合領域には1つ以上の「ヒンジ領域」が続いており、これが抗原結合領域をエフェクター細胞表面から離して配置することで、適切な細胞/細胞接触、抗原結合、及び活性化を可能とするという役割を果たす。CARは、一般に、結合領域と膜貫通領域との間に1つ以上のヒンジ領域を有する。ヒンジ領域は、天然、合成、半合成、又は組換え源のいずれかに由来するものであってもよい。
上記抗IL−1RAP結合領域は、ヒンジ領域によって膜貫通領域と接続していることが好ましい。
一実施形態において、上記ヒンジ領域は、IgG1のヒンジ配列又はその同一性が95〜99%である配列を有する。
更なる実施形態において、上記ヒンジ領域は、IgG4のヒンジ配列又はその同一性が95〜99%である配列を有する。更なる実施形態において、上記ヒンジ領域は、IgG1若しくはIgG4のCH2−CH3領域又はその同一性が95〜99%である配列を有していてもよい。
更なる実施形態において、上記ヒンジ領域は、CD8α又はその同一性が95〜99%である配列を有する。
「膜貫通領域」は、細胞外結合部と細胞内シグナル伝達領域とを融合し、CARを免疫エフェクター細胞の細胞膜にアンカリングするCARの一部である。上記膜貫通領域は、天然、合成、半合成、又は組換え源のいずれかに由来するものであってもよい。
コード化CARは、好ましくは、T細胞受容体のα、β、又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154からなる群より選択されるタンパク質、より好ましくはCD28の膜貫通領域を有する。
特定の実施形態において、本明細書で検討されるCARは細胞内シグナル伝達領域を有する。「細胞内シグナル伝達領域」とは、標的抗原に結合している有効CARのメッセージを免疫エフェクター細胞の内部へと伝達して、エフェクター細胞機能、例えば、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び細胞傷害活性(CAR結合標的細胞への細胞傷害性因子の放出等、細胞外CAR領域との抗原結合とともに引き起こされる細胞応答を含む)を引き起こすのに関与するCARの一部を意味する。
「エフェクター機能」という語は、細胞の特殊化した機能を意味する。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、あるいはサイトカインの分泌を含む援助又は活性であってもよい。従って、「細胞内シグナル伝達領域」という語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、且つ細胞に特殊化した機能を実行するよう指示するタンパク質の一部を意味する。通常は細胞内シグナル伝達領域全体を使用できるが、多くの場合、領域全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達領域の切断部を使用する場合、エフェクター機能シグナルを伝達しさえすれば、そのような切断部を領域全体の代わりに使用してもよい。「細胞内シグナル伝達領域」という語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達領域の切断部を有することを意味する。
TCRのみを介して生成されたシグナルは、T細胞を完全に活性化させるには不十分であり、二次又は共刺激シグナルも必要であることが知られている。従って、T細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞内シグナル伝達領域、すなわち、TCR(TCR/CD3複合体等)を介して抗原依存的な一次活性化を開始する一次シグナル伝達領域と、抗原非依存的に作用して二次又は共刺激シグナルを提供する共刺激シグナル伝達領域とによって媒介されるといえる。好ましい実施形態において、本明細書で検討されるCARは、1つ以上の「共刺激シグナル伝達領域」を有する細胞内シグナル伝達領域を有する。
実施形態において、上記単離核酸分子は、少なくとも1つの共刺激領域を有する細胞内シグナル伝達領域をコードしていてもよい。従って、この実施形態において、上記細胞内シグナル伝達領域は少なくとも1つの共刺激領域を有する。
本明細書中、「共刺激シグナル伝達領域」又は「共刺激領域」という語は、共刺激分子の細胞内シグナル伝達領域を意味する。共刺激分子は、抗原受容体又はFc受容体以外の細胞表面分子であり、抗原との結合時にTリンパ球の効率的な活性化及び機能に必要な二次シグナルを提供する。
上記機能的細胞内シグナル伝達領域の少なくとも1つの共刺激領域は、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、CD3ζ、ICAM−1、LFA−1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び4−1BB(CD137)からなる群より選択される1種以上のタンパク質から得られることが好ましい。
4−1BB(CD137)から得られた共刺激領域は、4−1BBの共刺激領域のアミノ酸配列との同一性が95〜99%である配列を有することがより好ましい。
CD3ζから得られた共刺激領域は、CD3ζの共刺激領域のアミノ酸配列との同一性が95〜99%である配列を有することがより好ましい。
別の実施形態において、上記細胞内シグナル伝達領域は、4−1BBから得られた共刺激領域及び/又はCD3ζから得られた共刺激領域を有する。
特定の好ましい実施形態において、CARは、CD3ζ一次シグナル伝達領域と1つ以上の共刺激シグナル伝達領域とを有する。上記細胞内一次シグナル伝達領域及び共刺激シグナル伝達領域は、膜貫通領域のカルボキシル末端に任意の順序で直列に連結していてもよい。
本発明の核酸分子でコードされた単離ポリペプチド分子もまた検討され、更には、抗IL−1RAP結合領域と、膜貫通領域と、細胞内シグナル伝達領域とを有する抗体又は抗体断片を有する単離CAR分子であって、上記抗IL−1RAP結合領域は、
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖とを有している、単離CAR分子も検討される。
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖とを有している、単離CAR分子も検討される。
「ポリペプチド」、「ポリペプチド断片」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、そうでないということが明示されない限り、また従来の意味に従って、すなわちアミノ酸の配列として、互換的に使用される。ポリペプチドは特定の長さに限定されず、例えば、全長のタンパク質配列又はタンパク質全長の断片を有していてもよく、糖鎖付加、アセチル化、リン酸化等のポリペプチドの翻訳後修飾や、当該分野で知られている他の修飾(天然及び非天然いずれも)を含んでいてもよい。
ポリペプチドは、よく知られている様々な組換え及び/又は合成法のいずれかを採用して調製できる。本明細書で検討されるポリペプチドは、具体的には、本開示のCAR、あるいは本明細書で開示されるCARにおいて1個以上のアミノ酸が欠失、付加、及び/又は置換された配列を包含する。
本明細書中、「単離ペプチド」又は「単離ポリペプチド」等は、ペプチド又はポリペプチド分子を細胞環境から及び細胞の他の成分との会合からインビトロで単離及び/又は精製することを意味する。同様に、「単離細胞」は、インビボ組織又は器官から得られた細胞であって、実質的に細胞外マトリクスを含まない細胞を意味する。
本明細書中、「ベクター」という語は、別の核酸分子を導入又は輸送できる核酸分子を意味する。導入された核酸は、一般に、ベクター核酸分子と連結(例えば、該分子に挿入)されている。ベクターは、細胞における自律増殖を指示する配列を含んでいてもよく、宿主細胞DNAへの組込みを可能とするのに十分な配列を含んでいてもよい。
本発明はまた、本発明のCARをコードする核酸分子を有するベクターであって、該ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はレトロウイルスベクターから選択され、好ましくはレンチウイルスベクターである、ベクターを提供する。
いくつかの実施形態において、本発明のベクターは、プロモーター、好ましくはEF−1αプロモーターを有する。
レトロウイルスは遺伝子導入用の一般的なツールである。特定の実施形態において、レトロウイルスは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入するのに使用される。本明細書中、「レトロウイルス」という語は、そのゲノムRNAを直鎖二本鎖DNAコピーへ逆転写した後、そのゲノムDNAを宿主ゲノムへ共有結合的に組み込むRNAウイルスを意味する。ウイルスは、宿主ゲノムへ組み込まれてしまえば、「プロウイルス」と呼ばれる。プロウイルスはRNAポリメラーゼIIのテンプレートとして作用し、新しいウイルス分子を産生するのに必要な構造タンパク質及び酵素をコードするRNA分子の発現を指示する。
従って、本発明のベクターで形質導入したT細胞は、安定的な長期間持続するCAR介在性T細胞応答を引き起こすことができる。
特定の実施形態において、上記T細胞は、本発明に係るCARをコードするレトロウイルスベクター(レンチウイルスベクター等)で形質導入される。
本明細書中、「レンチウイルス」という語は、複雑レトロウイルスの群(又は属)を意味する。レンチウイルスの例としては、特に限定されないが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIVタイプ1及びHIVタイプ2等)、ビスナ・マエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎・脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。
「レンチウイルスベクター」という語は、構造的及び機能的遺伝要素又はその一部(主にレンチウイルスに由来するLTR等)を含むウイルスベクター若しくはプラスミドを意味する。
「自己不活型(SIN)」ベクターとは、U3領域として知られている右側(3’)LTRエンハンサー/プロモーター領域が、1回目のウイルス複製以降のウイルス転写を妨げるように(欠失又は置換等により)改変されている複製欠損ベクター(レトロウイルス又はレンチウイルスベクター等)を意味する。
一実施形態において、SINベクターバックボーンが好ましい。
使用するベクターは、EF−1αプロモーター等のプロモーターを更に有することが好ましい。
本明細書中、「プロモーター」という語は、RNAポリメラーゼが結合するポリヌクレオチド(DNA又はRNA)の認識部位を意味する。RNAポリメラーゼは、該プロモーターに作動可能に連結したポリヌクレオチドを開始及び転写する。特定の実施形態において、標的抗原を発現する細胞へT細胞をリダイレクトするのに十分なレベルで、T細胞において安定的な長期間のCAR発現を可能とするプロモーターからCARを有するポリヌクレオチドを発現することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本発明のCARをコードする核酸分子又は本発明のベクターを有する細胞であって、好ましくは、ヒトT細胞等のT細胞であり、より好ましくはヒトCD8+T細胞等のCD8+T細胞である細胞を提供する。好ましい実施形態において、本発明の細胞(T細胞等)は、その膜で本発明のCARを発現する。
特定の実施形態において、本明細書に記載された免疫エフェクター細胞のインビトロ操作又は遺伝子改変に先立って、対象から細胞源を取得する。特定の実施形態において、膜で本発明のCARを発現する免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。T細胞は、特に限定されないが、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍等、様々な細胞源から得ることができる。ある実施形態において、T細胞は、沈降(例えばFICOLL(商標)分離)等の当業者に知られている各種方法を用いて対象から採取した血液単位から得ることができる。一実施形態において、個体の循環血の細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞等のリンパ球、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む。一実施形態において、アフェレーシスによって採取した細胞は、洗浄により血漿画分を除去し、細胞を適当な緩衝液又は培地に配置して、その後の処理を実施してもよい。
ある実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解し、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離等によって単球を枯渇させることで、末梢血単核細胞から単離される。ポジティブ又はネガティブ選択法によって、CD4又はCD8のようなマーカーを1つ又は複数発現するT細胞の特定の亜集団を更に単離できる。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団の濃縮は、ネガティブに選択された細胞に特徴的な表面マーカーに対する抗体を組み合わせることで達成できる。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドを内部に有するポリヌクレオチド又は細胞は、誘導性自殺遺伝子等の自殺遺伝子を利用して、直接毒性(すなわち、同種投与状況における移植片対宿主病)及び/又は遺伝子改変細胞の制御されない増殖のリスクを低減する。特定の態様において、上記自殺遺伝子は、上記ポリヌクレオチド又は細胞を内部に有する宿主に対して免疫原性ではない。使用できる自殺遺伝子の一例としては、誘導性カスパーゼ−9(iCASP9)、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(HSV−tk)、CD20、切断型EGFR、カスパーゼ−8、又はシトシンデアミナーゼが挙げられる。カスパーゼ−9は、特定の化学誘導二量体形成物質(CID)を用いて活性化できる。他の系は、代謝プロドラッグ(ガンシクロビル)によって又は結合抗体(リツキシマブ、シツキシマブ)によって活性化できる。
本明細書には、T細胞がCARを発現するようにエクスビボで遺伝子改変され、CAR T細胞がそれを必要とするレシピエントに注入される細胞治療の1種が開示されている。注入された細胞は、レシピエント、好ましくはヒトにおいて腫瘍細胞を死滅させることができる。抗体療法とは異なり、CAR T細胞はインビボで複製できるので、長期間持続し、腫瘍を持続的に制御できる。
また、CARは、抗体由来受容体が結合する際にエフェクターT細胞を任意の細胞表面分子に対してリダイレクト及び活性化させることができ、MHCの制限からは独立している。
本発明の遺伝子改変T細胞は、患者自身のT細胞(自己)から構築されるが、骨髄又は末梢造血幹細胞同種移植の関係(ドナーリンパ球輸注)で同種遺伝子改変T細胞を得るために他の同種ドナーに由来するものであってもよい。本発明に係るCAR分子を発現する上記T細胞は、哺乳類、好ましくはヒトの増殖性疾患を治療するのに有用であり、該疾患は細胞表面IL−1RAP発現と関連している。
好ましくは、上記T細胞は、抗IL−1RAP結合領域を有する抗IL−1RAP scFvである抗原結合領域、CD28タンパク質の膜貫通領域、共刺激4−1BBシグナル伝達領域、及びCD3ζシグナル伝達領域を有するCAR分子を発現し、上記抗IL−1RAP結合領域は、
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖とを有する。
(i)アミノ酸配列番号6との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号7との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号8との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する軽鎖と、
(ii)アミノ酸配列番号12との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域1(CDR1)、アミノ酸配列番号13との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域2(CDR2)、及びアミノ酸配列番号14との同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である相補性決定領域3(CDR3)を有する重鎖とを有する。
本発明はまた、薬剤として使用される本発明に係る細胞(T細胞等)を提供する。
本発明はまた、哺乳類、好ましくはヒトにおける増殖性疾患の治療に使用される本発明に係る細胞(T細胞等)を提供する。
いくつかの実施形態において、上記増殖性疾患は、IL−1RAP発現に関連する疾患である。
上記IL−1RAP発現に関連する疾患は、脊髄形成異常症、骨髄異形成症候群、又は前白血病等のがん、悪性腫瘍、又は前がん状態から選択されることが好ましい。
成人の腫瘍/がん及び小児の腫瘍/がんも含まれる。
上記疾患は、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)等の1種以上の急性白血病;慢性骨髄性白血病(CML)及び慢性リンパ性白血病(CLL)等の1種以上の慢性白血病からなる群より選択される血液がんであることがより好ましい。
より好ましい実施形態において、上記疾患は慢性骨髄性白血病である。
第一選択において、CMLの治療ではTKIを使用する。しかしながら、治療を中止すると半分以上の患者が再発するので、TKIの使用では上記疾患は治癒しないことが分かる。
従って、IL−1RAPに特異的なCAR分子を発現するT細胞は、少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)によって既に治療されたヒトにおいてCMLを治療する方法において有用である。
従って、IL−1RAPに特異的なCAR分子を発現するT細胞は、少なくとも1種のチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と組み合わせて哺乳類の増殖性疾患を治療する方法において有用であることが好ましい。
使用するTKIは、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、及びポナチニブであってもよい。
従って、IL−1RAPに特異的なCAR分子を発現するT細胞は、移植片対白血病、同種幹細胞移植、又はドナーリンパ球輸注(DLI)を既に受けたヒトにおいてCMLを治療する方法において有用である。
本明細書中、「治療」とは、疾患の症状若しくは病理、又は病態に対して有益な又は望ましい効果を含むものであり、治療される疾患又は異常、例えばがんの1種以上の測定可能なマーカーのごくわずかな低下であってもよい。治療は、場合によっては疾患又は異常の症状の低減又は寛解のいずれかを含んでいてもよく、疾患又は異常の進行の遅延を含んでいてもよい。「治療」は、必ずしも疾患若しくは異常又はその関連症状が完全に根絶又は治癒することを指していない。
従って、本開示は、投与を必要とする対象に本発明のT細胞を治療有効量投与することを含むCMLの治療又は予防を提供する。
本明細書に開示されたT細胞は、単独で投与してもよく、希釈剤及び/又は他の成分(IL−2等のサイトカインや細胞集団等)と組み合わせて医薬品組成物として投与してもよい。簡潔に言うと、医薬品組成物は、医薬的又は生理学的に許容される1種以上の担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載される標的細胞集団を含んでいてもよい。該組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース、デキストラン、マンニトール等の炭水化物;タンパク質;グリシン等のポリペプチド又はアミノ酸;酸化防止剤;EDTA又はグルタチオン等のキレート剤;アジュバント(水酸化アルミニウム等);及び保存料を含んでいてもよい。本明細書中、「医薬的に許容される」という表現は、適切な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題又は合併症を起こすことなく、合理的なリスク・ベネフィット比に見合った形で、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適している化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を意味するのに用いられる。
本発明はまた、本発明に係る細胞(T細胞等)を含む組成物(医薬品組成物等)を提供する。
本発明の組成物は、血管内(静脈内又は動脈内)、腹腔内、又は筋肉内投与等の非経口投与用に処方されることが好ましい。
本明細書中、「非経口投与された」とは、経腸及び局所投与以外の(通常は注射による)投与方法を意味しており、特に限定されないが、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節内、眼窩内、腫瘍内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内の注射及び注入を含む。
一実施形態において、本明細書で検討されるCAR改変T細胞又は組成物は、腫瘍、リンパ節、体循環、又は感染部位へ直接注射することで対象に投与される。
一実施形態において、本発明は、がんであると診断された対象から免疫エフェクター細胞を除去し、本明細書で検討されるCARをコードする核酸を有するベクターで該免疫エフェクター細胞を遺伝子改変することで改変免疫エフェクター細胞の集団を得、該改変免疫エフェクター細胞の集団を同対象に投与することによって、同対象を治療するのに有用である。好ましい実施形態において、上記免疫エフェクター細胞はT細胞を含む。
投与の分量及び頻度、並びにTKI等の従来のCML治療との考えられる組合せの順序は、患者の状態、患者の疾患の種類及び重症度等の要因により決定されるが、適当な用量は、動物モデル、最終的には臨床試験で決定してもよい。
遺伝子改変した治療細胞の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに幹細胞及び前駆細胞が個体において所望の応答を引き起こす能力等の要因に応じて変動してもよい。また、治療有効量は、ウイルス又は形質導入治療細胞の有毒又は有害作用よりも治療上有益な効果が上回るようなものである。一般的に、本明細書に記載したT細胞を含む医薬品組成物は、細胞104〜109個/kg体重、好ましくは105〜106個/kg体重(これらの範囲内にある全ての整数値を含む)の用量で投与してもよいといえる。
以下の実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。これらの実施例は単なる例示に過ぎず、特に明示されない限り、限定的なものではない。
<実施例1:患者の試料、健常ドナーの血液試料、細胞株>
診断時及びTKI治療後の経過観察時に、患者からCML試料コレクションを確立した。末梢血単核細胞は、Ficoll−Paque(Velizy−Villacoublay、フランス)を用いたフィコール密度勾配遠心分離により、フランス血液センター(仏国ブザンソン)で収集した健常ドナーの匿名血液試料から単離した。ヒト腫瘍細胞株KU812(CRL−2099)、K562(CCL−243)、又は上皮細胞株239T(CRL−3216)、HT1080(CCL−121)は、ATCC(登録商標)コレクション(LGC Standards、仏国モルスアイム)由来である。
診断時及びTKI治療後の経過観察時に、患者からCML試料コレクションを確立した。末梢血単核細胞は、Ficoll−Paque(Velizy−Villacoublay、フランス)を用いたフィコール密度勾配遠心分離により、フランス血液センター(仏国ブザンソン)で収集した健常ドナーの匿名血液試料から単離した。ヒト腫瘍細胞株KU812(CRL−2099)、K562(CCL−243)、又は上皮細胞株239T(CRL−3216)、HT1080(CCL−121)は、ATCC(登録商標)コレクション(LGC Standards、仏国モルスアイム)由来である。
<実施例2:モノクローナル抗体作製>
標準的なハイブリドーマ法により、マウス抗hIL−1RAPモノクローナル抗体を作製した。
標準的なハイブリドーマ法により、マウス抗hIL−1RAPモノクローナル抗体を作製した。
簡潔に言うと、IL−1RAPの細胞外部分(NM_002182.2、NCBI)及びヒトIgG1のFc部分(R&D Systems、仏国リール)で構成された組換え融合タンパク質を用いて、足蹠(n=3)又は腹腔内(n=5)のいずれかでBALB/cマウス(5週齢、Charles River)を免疫化した。リンパ節又は脾臓細胞及び血液試料を採取し、細胞をマウス骨髄腫細胞株と融合した後、IL−1RAPポジティブ細胞株(KU812)及びネガティブ細胞株(Raji、KG1)に対してFACS分析(Becton Dickinson)によりスクリーニングした。
ハイブリドーマのスクリーニングにより、IL−1RAPポジティブ細胞株(KU812又はKG−1、それぞれAML又はPhi+p210CML)とネガティブ細胞株(Tom−1、NALM−20、Jurkat、又はRaji、それぞれPhi+ p190 B−ALL、Phi−B−ALL、T−ALL、又はバーキットリンパ腫)とを識別する5つのモノクローナル抗体サブクローンを選択することができた。
・抗体の分子キャラクタリゼーション
Wang.Z.,et al(J.Immunol.Methods,2000;233,pp167−77)のプロトコルに従い、FR1並びに重鎖及び軽鎖の定常領域に特異的な縮重プライマーで得られたクローン化PCR増幅産物のサンガーシークエンシングによって、分子キャラクタリゼーションを実施した。Brochet X.,et al.(Nucleic Acids Res.,2008,36,pp503−8)に従い、V−QUESTオンラインツールを用いて、IMGT(登録商標)データベースに対して共通ヌクレオチド配列をアライメントすることにより、V−D−J−C遺伝子再構成及びCDR3領域を同定できた。分子サンガーシークエンシングにより、5つのモノクローナル抗体は全て同一であり、同じCDR3ヌクレオチド配列を有していることが分かった。サイトメトリーによる相対蛍光強度(RFI)が最も高かったことから、モノクローナル抗体サブクローン(#E3C3)を選択した。
Wang.Z.,et al(J.Immunol.Methods,2000;233,pp167−77)のプロトコルに従い、FR1並びに重鎖及び軽鎖の定常領域に特異的な縮重プライマーで得られたクローン化PCR増幅産物のサンガーシークエンシングによって、分子キャラクタリゼーションを実施した。Brochet X.,et al.(Nucleic Acids Res.,2008,36,pp503−8)に従い、V−QUESTオンラインツールを用いて、IMGT(登録商標)データベースに対して共通ヌクレオチド配列をアライメントすることにより、V−D−J−C遺伝子再構成及びCDR3領域を同定できた。分子サンガーシークエンシングにより、5つのモノクローナル抗体は全て同一であり、同じCDR3ヌクレオチド配列を有していることが分かった。サイトメトリーによる相対蛍光強度(RFI)が最も高かったことから、モノクローナル抗体サブクローン(#E3C3)を選択した。
ウェスタンブロッティング法、組換えIL−1RAPタンパク質に対するELISA、免疫組織化学的検査、共焦点顕微鏡観察、正常組織(FDA正常ヒト器官組織アレイ、コア99個/33部位/75症例)及びCML患者の一次試料の組織マイクロアレイ(TMA)により、選択した抗体(クローン#E3C3)を特徴付けた。
・細胞成分画分のウェスタンブロッティング
超音波処理により、実施例1で列挙した細胞の全細胞画分、細胞成分画分、又は分泌タンパク質画分を得、プロテアーゼインヒビターカクテル(complete Mini EDTA−free、Roche、スイス)を添加したRIPA溶解・抽出緩衝液(ThermoFisher Scientific)に懸濁させた。IL−1RAP cDNA変異体1(NM_002182.2、NCBI)でトランスフェクトしたHT1080細胞株をコントロールとして使用した。アクチンはタンパク質ローディングコントロールとして検出した。IL−1RAP、CAR、又はβ−アクチン発現に対して、それぞれ一次IL−1RAP#E3C3(1:103に希釈)、CD3ζ(BD Pharmigen、クローン#8D3)、又はβ−アクチン(1:103、クローンAC15、#A5441、Sigma−Aldrich)のいずれかを用いて、PDVF膜に移したタンパク質を1晩プローブした。二次ポリクローナル抗体ヒツジ抗マウスIgG(#515−035−062、Jackson、米国)を用いて免疫検出染色を実施した。カメラ及びBio−1Dソフトウェア(Vilber−Lourmat、仏国コレジアン)を用いて検出した。ウェスタンブロットにおいて#E3C3モノクローナル抗体を使用すると、KU812が示される(図1)。
超音波処理により、実施例1で列挙した細胞の全細胞画分、細胞成分画分、又は分泌タンパク質画分を得、プロテアーゼインヒビターカクテル(complete Mini EDTA−free、Roche、スイス)を添加したRIPA溶解・抽出緩衝液(ThermoFisher Scientific)に懸濁させた。IL−1RAP cDNA変異体1(NM_002182.2、NCBI)でトランスフェクトしたHT1080細胞株をコントロールとして使用した。アクチンはタンパク質ローディングコントロールとして検出した。IL−1RAP、CAR、又はβ−アクチン発現に対して、それぞれ一次IL−1RAP#E3C3(1:103に希釈)、CD3ζ(BD Pharmigen、クローン#8D3)、又はβ−アクチン(1:103、クローンAC15、#A5441、Sigma−Aldrich)のいずれかを用いて、PDVF膜に移したタンパク質を1晩プローブした。二次ポリクローナル抗体ヒツジ抗マウスIgG(#515−035−062、Jackson、米国)を用いて免疫検出染色を実施した。カメラ及びBio−1Dソフトウェア(Vilber−Lourmat、仏国コレジアン)を用いて検出した。ウェスタンブロットにおいて#E3C3モノクローナル抗体を使用すると、KU812が示される(図1)。
・ELISAによる組換えIL−1RAPタンパク質のインビトロ検出
抗ヒトFc抗体をプラスチック製ELISAプレートの底に被覆した。ヒト抗体にロードしたIL−1RAPタンパク質をマウス及びヒトIL−1RAP(#E3C3)抗体でプローブした後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で被覆した抗マウスFC抗体により検出した。
抗ヒトFc抗体をプラスチック製ELISAプレートの底に被覆した。ヒト抗体にロードしたIL−1RAPタンパク質をマウス及びヒトIL−1RAP(#E3C3)抗体でプローブした後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で被覆した抗マウスFC抗体により検出した。
ELISAにより、#E3C3モノクローナル抗体がIL−1RAP組換えタンパク質を認識することが確認された(図2)。
・CML患者の初代細胞に対するフローサイトメトリー分析
マウスAlexa Fluor488標識IL−1RAP抗体クローン#E3C3を含むCD45、CD34、CD38、CD33、CD133、CD117のパネルを用いて、CML患者の造血幹細胞をトラッキングした。CD3、CD4、CD8、及びCD19を含む抗体パネルを用いて、形質導入細胞を染色して、ヘルパー又は細胞傷害性GMTCを識別した。CD45RA、CD62L、CD95、CCR7モノクローナル抗体のパネルを用いて、ナイーブ、セントラル、又はメモリーT細胞サブセットを分析した。CANTO IIサイトメーター(BD Biosciences、仏国ルポンドクレ)を用いて細胞を採取し、DIVA6.1ソフトウェア(BD Biosciences、仏国ルポンドクレ)を用いて分析した。
マウスAlexa Fluor488標識IL−1RAP抗体クローン#E3C3を含むCD45、CD34、CD38、CD33、CD133、CD117のパネルを用いて、CML患者の造血幹細胞をトラッキングした。CD3、CD4、CD8、及びCD19を含む抗体パネルを用いて、形質導入細胞を染色して、ヘルパー又は細胞傷害性GMTCを識別した。CD45RA、CD62L、CD95、CCR7モノクローナル抗体のパネルを用いて、ナイーブ、セントラル、又はメモリーT細胞サブセットを分析した。CANTO IIサイトメーター(BD Biosciences、仏国ルポンドクレ)を用いて細胞を採取し、DIVA6.1ソフトウェア(BD Biosciences、仏国ルポンドクレ)を用いて分析した。
イマチニブ(TKI)治療を受けた又は受けていないCMLポジティブ患者2名の末梢血又は骨髄に対して免疫表現型検査を実施した。IL−1RAP(#E3C3)をCD34+及びCD38−の蛍光染色と併用した。各種モノクローナル抗体の蛍光色素結合アイソタイプコントロールモノクローナル抗体を体系的に使用した。
抗体パネルにおいて#E3C3モノクローナル抗体を組み込むことで、診断時又はイマチニブ12ヶ月後の患者の骨髄又は末梢血中において、IL−1RAP+白血病を発現する幹細胞CD34+CD38+又はCD34+CD38−亜集団を識別することができた(図3)。
・共焦点顕微鏡観察
サイトスピンでスライドグラス(SuperfrostTM Plus、4951PLUS4、ThermoFisher Scientific)上に集めたKU812細胞株及びRaji細胞株に対して、共焦点顕微鏡観察で評価した。簡潔に言うと、上記細胞を蛍光モノクローナル抗体である抗マウスFc−IgG;IL−1RAP(#E3C3)で染色し、QImaging製Retiga2000Rカメラを取り付けたOlympus製BХ51顕微鏡で分析した。40倍の対物レンズを使用し、Image−Pro Plus(version 6.0、Media Cybernetics)でデジタル化したデジタル画像を取得した。核染色DAPI(2−(4−アミジノフェニル)−6−インドールカルバミジン二塩酸塩、Sigma−Aldrich、フランス)により対比染色を実施し、蛍光染色と重ね合わせた。
サイトスピンでスライドグラス(SuperfrostTM Plus、4951PLUS4、ThermoFisher Scientific)上に集めたKU812細胞株及びRaji細胞株に対して、共焦点顕微鏡観察で評価した。簡潔に言うと、上記細胞を蛍光モノクローナル抗体である抗マウスFc−IgG;IL−1RAP(#E3C3)で染色し、QImaging製Retiga2000Rカメラを取り付けたOlympus製BХ51顕微鏡で分析した。40倍の対物レンズを使用し、Image−Pro Plus(version 6.0、Media Cybernetics)でデジタル化したデジタル画像を取得した。核染色DAPI(2−(4−アミジノフェニル)−6−インドールカルバミジン二塩酸塩、Sigma−Aldrich、フランス)により対比染色を実施し、蛍光染色と重ね合わせた。
共焦点顕微鏡観察により、IL−1RAP発現に相当する細胞膜染色が明示された(図4)。
・インサイツ検出
特異的又は非標的組織結合を検討するために、1器官あたり3名の個々のドナーから得た90個の組織コア(30器官)を含むFDA標準凍結組織アレイ(US Biomax、米国ロックビル)を上述した通りインキュベートした。UltraView Universal DAB Detection Kit(Ventana、米国)を用いて免疫染色を検出した。NDP.view2ソフトウェアで画像を取得し、分析した。IL−1RAP高発現(KU812)又はネガティブ発現(Raji)細胞株をそれぞれポジティブ又はネガティブコントロールとして使用した。染色強度は以下の通り等級を付けた:ネガティブ(0)、弱染色(1+)、中染色(2+)、又は強染色(3+)。IL−1RAP高発現(KU812)又はネガティブ発現(Raji)細胞株をそれぞれポジティブ又はネガティブコントロールとして使用した。
特異的又は非標的組織結合を検討するために、1器官あたり3名の個々のドナーから得た90個の組織コア(30器官)を含むFDA標準凍結組織アレイ(US Biomax、米国ロックビル)を上述した通りインキュベートした。UltraView Universal DAB Detection Kit(Ventana、米国)を用いて免疫染色を検出した。NDP.view2ソフトウェアで画像を取得し、分析した。IL−1RAP高発現(KU812)又はネガティブ発現(Raji)細胞株をそれぞれポジティブ又はネガティブコントロールとして使用した。染色強度は以下の通り等級を付けた:ネガティブ(0)、弱染色(1+)、中染色(2+)、又は強染色(3+)。IL−1RAP高発現(KU812)又はネガティブ発現(Raji)細胞株をそれぞれポジティブ又はネガティブコントロールとして使用した。
#E3C3モノクローナル抗体を用いてIL−1RAP発現を検討した。リンパ節、結腸、小腸、胎盤、胃、及び前立腺という6組織のみの主に上皮又は内皮細胞において、様々な強度の染色が検出された(図5)。
<実施例3:レンチウイルスコンストラクト>
VDJ又はVJ再構成の分子シークエンシング及びCDR3ヌクレオチド配列決定に基づき、実施例1の#E3C3 IL−1RAPハイブリドーマ由来の合成的に作製された一本鎖可変領域断片(scFv)をSIN−pSDYバックボーンにクローニングして、CARレンチウイルスコンストラクト(pSDY−iC9−IL−1RAPCAR−dCD19)を調製した(Rossolillo P,Winter F,Simon−Loriere E,Gallois−Montbrun S,Negroni M.,Retrovolution:HIV−driven evolution of cellular genes and improvement of anticancer drug activation.,PLoS Genet.,2012;8(8):e1002904)。
VDJ又はVJ再構成の分子シークエンシング及びCDR3ヌクレオチド配列決定に基づき、実施例1の#E3C3 IL−1RAPハイブリドーマ由来の合成的に作製された一本鎖可変領域断片(scFv)をSIN−pSDYバックボーンにクローニングして、CARレンチウイルスコンストラクト(pSDY−iC9−IL−1RAPCAR−dCD19)を調製した(Rossolillo P,Winter F,Simon−Loriere E,Gallois−Montbrun S,Negroni M.,Retrovolution:HIV−driven evolution of cellular genes and improvement of anticancer drug activation.,PLoS Genet.,2012;8(8):e1002904)。
簡潔に言うと、安全カセットiCASP9と、#E3C3モノクローナル抗体の一本鎖可変領域断片と、モニタリング及び有望な細胞選択のための細胞表面発現マーカーΔCD19とを有するSINレンチウイルスコンストラクトを構築した。これら3種の導入遺伝子はいずれも、EF1プロモーター及びSP163エンハンサー配列(マウスVEGF遺伝子の5’UTRの一部、GenBankアクセッション番号#U41383)の制御下、2Aペプチド切断配列で隔てられている。
図6に示す通り、上記コンストラクトは、自殺安全カセットiCASP9(化学誘導性カスパーゼ9)、IL−1RAP CAR、及び細胞表面選択マーカーΔCD19(シグナル伝達しない細胞内部を切断したCD19)という3つの異なる部分を有しており、これらは、2つの異なる2Aリボソームスキップ配列(P2A及びT2A)で隔てられており、SP163エンハンサー及びEF1a(伸長因子1プロモーターα)プロモーターの制御下にある。EF1aプロモーター及びSP163エンハンサーの制御下、CD28−4.1BB−CD3zシグナル伝達鎖を用いて、#E3C3免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)配列の可変領域で構成されたscFvをインフレームでクローニングする。IL−1RAP CARは一本鎖可変領域断片(scFv)を有し、この断片は、リーダー配列(L)と結合し、ヒトインフルエンザヘマグルチニン(HA)でタグ付けされ、2つの共刺激領域(改変膜貫通及び細胞内シグナル伝達CD28及び4−1BB)とCD3z細胞内シグナル伝達領域とで構成されたT細胞活性化領域にヒンジ領域を介して接続されている。Mock Tは、IL−1RAP scFvを含まない同様のコンストラクトで構成されている。
<実施例4:IL−1RAP CART細胞の作製>
製造業者の指示書に従い、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies、フランス)を用いて、健常ドナーの末梢血単核細胞から得たCD3+Tリンパ球を活性化した後、磁気カラム(MACS、Miltenyi Biotec、仏国パリ)で単離した。2日目に、活性化したT細胞を上清(SN)と接触させて2000g、10℃で90分間スピノキュレーション(spinoculation)して形質導入した。フローサイトメトリー分析によって形質導入効率を測定して、ΔCD19細胞表面マーカー発現を同定した。形質導入から4日後、CD19マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、仏国パリ)で標識したCD19ポジティブ細胞をMACSカラムで磁気的に分離した。単離したCD19発現細胞を、8%ヒト血清を添加した500UI/mLのrhIL−2(プロロイキン、Novartis)を含むX−vivo完全培地(Lonza、スイス国バーゼル)で増殖させ、凍結保存した。実験的には、T Cell TransAct試薬と、ヒトIL−2、IL−7、IL−15、又はIL−7+IL−15を添加したTexMACS培地(Miltenyi Biotec、仏国パリ)とを使用した。
製造業者の指示書に従い、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies、フランス)を用いて、健常ドナーの末梢血単核細胞から得たCD3+Tリンパ球を活性化した後、磁気カラム(MACS、Miltenyi Biotec、仏国パリ)で単離した。2日目に、活性化したT細胞を上清(SN)と接触させて2000g、10℃で90分間スピノキュレーション(spinoculation)して形質導入した。フローサイトメトリー分析によって形質導入効率を測定して、ΔCD19細胞表面マーカー発現を同定した。形質導入から4日後、CD19マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、仏国パリ)で標識したCD19ポジティブ細胞をMACSカラムで磁気的に分離した。単離したCD19発現細胞を、8%ヒト血清を添加した500UI/mLのrhIL−2(プロロイキン、Novartis)を含むX−vivo完全培地(Lonza、スイス国バーゼル)で増殖させ、凍結保存した。実験的には、T Cell TransAct試薬と、ヒトIL−2、IL−7、IL−15、又はIL−7+IL−15を添加したTexMACS培地(Miltenyi Biotec、仏国パリ)とを使用した。
<実施例5:ドナーT細胞のレンチウイルス形質導入>
水疱性口内炎ウイルス(VSV)エンベロープ(pMDG)をコードするヘルパープラスミドと、GAG/POL(psPAX2)パッケージングプラスミド(Addgene、それぞれ#12259及び#12260、Trono et al、スイス国ローザンヌ)とを用いたCaCl2法でサブコンフルエントな293T細胞の一過性同時導入を行うことによって、レンチウイルスベクター上清ストックを作製した。48時間及び72時間後にウイルス上清を回収し、PEG及び低速遠心分離(3000g、一晩)により濃縮してから、使用するまで−80℃で保管した。IL−1RAP scFvを含まない同レンチウイルスコンストラクト(Mock)をコントロールとして使用した。SNの段階希釈液を用いた293T許容細胞の形質導入により、レンチウイルス上清の力価測定を確立した。
水疱性口内炎ウイルス(VSV)エンベロープ(pMDG)をコードするヘルパープラスミドと、GAG/POL(psPAX2)パッケージングプラスミド(Addgene、それぞれ#12259及び#12260、Trono et al、スイス国ローザンヌ)とを用いたCaCl2法でサブコンフルエントな293T細胞の一過性同時導入を行うことによって、レンチウイルスベクター上清ストックを作製した。48時間及び72時間後にウイルス上清を回収し、PEG及び低速遠心分離(3000g、一晩)により濃縮してから、使用するまで−80℃で保管した。IL−1RAP scFvを含まない同レンチウイルスコンストラクト(Mock)をコントロールとして使用した。SNの段階希釈液を用いた293T許容細胞の形質導入により、レンチウイルス上清の力価測定を確立した。
フローサイトメトリーで形質導入効率を測定した。開始細胞数に応じて上清力価測定から感染多重度(MOI)を差し引いた。
レンチウイルス上清を用いたインビトロ作製プロセスによって、Mock又はCAR IL−1RAP上清についてそれぞれMOI=2で初代T細胞を形質導入することができる。
・IL−1RAP CAR発現のウェスタンブロット分析
IL−1RAP形質導入T細胞の膜又は細胞質細胞亜画分(超遠心後に得られたもの)から抽出したタンパク質又は全タンパク質ライセートを、マウス抗ヒトCD3z抗体でプローブした。細胞成分画分へのウェスタンブロッティングにより、IL−1RAP CARがCD3zシグナル伝達(予測される内在性CD3zシグナルが16KDaであるのに対して、55KDaのシグナル)と関連することが分かった(図7)。
IL−1RAP形質導入T細胞の膜又は細胞質細胞亜画分(超遠心後に得られたもの)から抽出したタンパク質又は全タンパク質ライセートを、マウス抗ヒトCD3z抗体でプローブした。細胞成分画分へのウェスタンブロッティングにより、IL−1RAP CARがCD3zシグナル伝達(予測される内在性CD3zシグナルが16KDaであるのに対して、55KDaのシグナル)と関連することが分かった(図7)。
・フローサイトメトリーによる分析
T細胞表面でのCAR発現について、組換えIL−1RAPビオチン化タンパク質を用いて分析し、二次抗ビオチン抗体(Miltenyi Biotec、クローン#Bio3−18E7)を用いたフローサイトメトリーにより検出した。Mock又はCAR IL−1RAPのいずれかでCEM細胞株又は初代T細胞を形質導入した。次いで、ビオチンで標識した組換えIL−1RAPの量を増やしながら、各量の存在下で細胞をインキュベートした。抗ビオチン蛍光抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーで分析した。ビオチン+/CD19+CEM又はT細胞のパーセンテージを標識ビオチン組換えタンパク質の量に対してプロットした。サイトメトリー分析のドットプロットは、最大値を含む代表的な染色に対して示したす。非形質導入細胞(C0)又はMock T細胞をコントロールとして使用する。
T細胞表面でのCAR発現について、組換えIL−1RAPビオチン化タンパク質を用いて分析し、二次抗ビオチン抗体(Miltenyi Biotec、クローン#Bio3−18E7)を用いたフローサイトメトリーにより検出した。Mock又はCAR IL−1RAPのいずれかでCEM細胞株又は初代T細胞を形質導入した。次いで、ビオチンで標識した組換えIL−1RAPの量を増やしながら、各量の存在下で細胞をインキュベートした。抗ビオチン蛍光抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーで分析した。ビオチン+/CD19+CEM又はT細胞のパーセンテージを標識ビオチン組換えタンパク質の量に対してプロットした。サイトメトリー分析のドットプロットは、最大値を含む代表的な染色に対して示したす。非形質導入細胞(C0)又はMock T細胞をコントロールとして使用する。
ビオチン化IL−1RAPタンパク質の段階希釈液(20ng〜2.4pg/ml)を用いた追加分析及びFACS分析によって、IL−1RAP CAR形質導入CEM T細胞株又は初代T細胞のいずれかを検出できる。1回の実験から、最大のCEM(85.8%)又は初代(68.5%)GMTCを動員するためには、それぞれ1.25ng及び0.15ngという異なる量の組換えタンパク質が必要であることを示すことができる(図8)。
CEMの細胞表面では初代T細胞よりも多くのCARが発現される。また、E:T共培養系に多量(1000倍>血漿濃度)の非標識組換えIL−1RAPタンパク質を添加すると、エフェクター細胞傷害性が顕著に阻害される。
これらの実験から、CARは細胞表面にアドレッシングされること、及びIL−1RAPタンパク質のCAR特異的な認識及び結合が起こることが確認された。
<実施例6:自殺遺伝子iCASP9安全カセットの効率>
形質導入細胞(IL−1RAP CAR293T)又は非形質導入細胞(293T)を、培地のみ(−化学誘導二量体形成物質(CID))又は20nMのCID AP1903を含む培地で24時間培養した。光学顕微鏡観察によって、培養液中の生細胞又は死細胞の存在及び構造を画像化できる(×40)。
形質導入細胞(IL−1RAP CAR293T)又は非形質導入細胞(293T)を、培地のみ(−化学誘導二量体形成物質(CID))又は20nMのCID AP1903を含む培地で24時間培養した。光学顕微鏡観察によって、培養液中の生細胞又は死細胞の存在及び構造を画像化できる(×40)。
光学顕微鏡観察により、IL−1RAP CARで形質導入した293T細胞培養液はCIDに対して感受性を有することが分かる(図9)。
IL−1RAP CARを発現する又はしないGMTC細胞混合物及び非形質導入T細胞(C0)に対するCID暴露(20nM、24時間)後又は非暴露(薄灰色)でのフローサイトメトリー分析。CD3+/CD19+染色により、CARを発現するGMTCをそれ以外から識別できる。
非形質導入細胞(C0)又はIL−1RAP CART細胞をいずれも培地のみ又は培地+CID(20nM、24時間)に暴露した。
正確な細胞死は、まず、製造業者の指示書(Beckman Coulter、IM3614)に従い、アネキシン−V/7−AADゲーティング後にフローサイトメトリーで評価した。蛍光分析は、CD3+/CD19+ポジティブ細胞に対してゲーティングした。5000個の蛍光ビーズを取得してから定量化した。致死効率をコントロール細胞(未処理細胞)に対して標準化した。細胞致死を以下の通り算出した。死細胞%=[1−(AP1903処理細胞中の生細胞の絶対数/未処理細胞中の生細胞の絶対数)]×100。C0又はIL−1RAP CART(CD3+/CD19+でゲーティング)細胞のCID暴露24時間又は48時間。結果を3つの独立した実験の平均±SDで表す。***:p<0.001(図10)。
サイトメトリー分析から、IL−1RAP CARを発現する(CD19+)又はしない(CD19−)T細胞の混合集団を24時間CID暴露した後、CD19−CD3+細胞のみが存続したことが分かる。より正確には、アポトーシスの定量的AnnV/7AADアッセイにより、非形質導入T細胞(C0)(24時間又は48時間でそれぞれ1.28%及び6.13%)と比較して、それぞれ24時間又は48時間CID暴露後に84.11%及び88.93%のIL−1RAP CART細胞が除去されることが分かった(p<0.001、n=3)。
<実施例7:IL−1RAP CAR発現T細胞のIL−1RAP依存性増殖及びサイトカイン分泌>
IL−1RAP CART細胞の増殖性、ひいては機能性を分析するために、天然IL−1RAP発現細胞株KU812に加えて、変異体1(v1)又は5(v5)転写物からそれぞれ翻訳された膜型(アイソフォーム1)又は可溶型(アイソフォーム3)IL−1RAPのいずれかを発現する欠損MHCクラスI細胞株K562を作製した。膜型(mb)又は可溶型(s)IL−1RAP発現細胞株を得るために、K562細胞をそれぞれ変異体1(アイソフォーム1、NM_002182.2)又は変異体5(アイソフォーム2、NM_001167930)ORFクローン(pCMV6−AC−GFPベクター、Origen、又はpEZ−M61、Gene Copoeia)でトランスフェクトした。次いで、安定したmb−又はs−IL−1RAP発現K562細胞をpLenti CMV V5−LUC Blast(Addgene、プラスミド#21474)で形質導入した。
IL−1RAP CART細胞の増殖性、ひいては機能性を分析するために、天然IL−1RAP発現細胞株KU812に加えて、変異体1(v1)又は5(v5)転写物からそれぞれ翻訳された膜型(アイソフォーム1)又は可溶型(アイソフォーム3)IL−1RAPのいずれかを発現する欠損MHCクラスI細胞株K562を作製した。膜型(mb)又は可溶型(s)IL−1RAP発現細胞株を得るために、K562細胞をそれぞれ変異体1(アイソフォーム1、NM_002182.2)又は変異体5(アイソフォーム2、NM_001167930)ORFクローン(pCMV6−AC−GFPベクター、Origen、又はpEZ−M61、Gene Copoeia)でトランスフェクトした。次いで、安定したmb−又はs−IL−1RAP発現K562細胞をpLenti CMV V5−LUC Blast(Addgene、プラスミド#21474)で形質導入した。
これらの細胞に対してウェスタンブロッティング分析を実施した。簡潔に言うと、プロテアーゼインヒビターカクテル(complete Mini EDTA−free;Roche、スイス国バーゼル)を添加したRIPA緩衝液で超音波処理した後、トランスフェクトK562細胞株から全細胞(総細胞)又は分泌タンパク質(培地上清)画分を得た。タンパク質20μgをSDS−PAGE電気泳動にかけた後、PVDF膜に電気泳動転写した。IL−1RAP発現のために膜を一次IL−1RAP#E3C3(1:103に希釈)で一晩プローブした。タンパク質ローディング評価として、β−アクチンmAb染色(1:103、クローンAC15、#A5441、Sigma−Aldrich)を用いた。二次ポリクローナル抗体ヒツジ抗マウスIgG(#515−035−062、Jackson)を用いて免疫検出染色を実施した。カメラ及びBio−1Dソフトウェア(Vilber−Lourmat、仏国コレジアン)を用いて化学発光検出を評価した。
フローサイトメトリー及びウェスタンブロッティングによって、これらの実験から、アイソフォーム1(v1)は細胞表面でよく発現されること、及びアイソフォーム3(v5)はK562−v5の培養上清で検出されるが、−v1では検出されないことが確認された(図11A及びB)。
K562−v1(暗)及びKU812(明)をIL−1RAP抗体(赤いヒストグラム)で染色し、非標識細胞(青いヒストグラム)と比較した。ソフトウェアで得られた相対蛍光強度を報告する。
興味深いことに、トランスフェクトしたK562−v1のIL−1RAP発現は、天然IL−1RAP発現KU812細胞株より高い(蛍光強度比(RFI)=10.57対33.46)(図11A及びB)。
<実施例8:IL−1RAP CART細胞の増殖能>
IL−1RAP標的発現細胞に誘発されるIL−1RAP CART細胞の増殖能を測定するために、K562、K562−v1、K562−v5、又はKU812細胞株の存在下、CFSE染色したC0、Mock、又はIL−1RAP CART細胞を共培養した(エフェクター/標的比E:T=1:1)。
IL−1RAP標的発現細胞に誘発されるIL−1RAP CART細胞の増殖能を測定するために、K562、K562−v1、K562−v5、又はKU812細胞株の存在下、CFSE染色したC0、Mock、又はIL−1RAP CART細胞を共培養した(エフェクター/標的比E:T=1:1)。
C0又はMock細胞と比較して、エフェクターIL−1RAP CART細胞は、IL−1RAP細胞表面発現K562−v1(76.1%±10.9)及びKU812細胞(81.6%±6.16)の存在に対してのみ応答して顕著に分裂したが、K562−v5(27.3%±9.03)又は培地のみ(18.8%±7.02)に対しては最低レベルであった(p<0.001、n=4)。
E:T比を1:5とした以外は同様にして、どのようにしてCART細胞がIL−1RAP+標的細胞の存在下でIFN−γを産生できるのかを細胞内IFN−γ産生染色により評価した。
C0又はMock細胞ではなく、IL−1RAP CART CD8+又はCD8−細胞が、IL−1RAP発現標的細胞K562−v1(CD8+:23.7±0.71%、CD8−:14.8±3.58%)及びKU812(CD8+:22.3±2.39%、CD8−:13.1±2.79%)(p<0.001、n=4)に対して排他的にIFN−γを産生した(図12)。
<実施例9:サイトカインのプロファイル>
CART細胞により産生されたサイトカインのプロファイルを決定するために、ヒトIL−2、IL−4、IL−6、IL−10、TNF−a、IFN−γ、及びIL−17Aの分泌を定量化できるヒトTh1/Th2/Th17Cytokines Bead Array(CBA)Kit(BD Biosciences)を製造業者の指示書に従って使用した。簡潔に言うと、標的細胞の存在下(比1:1)又は非存在下(コントロール)、ビーズ及びPE結合抗サイトカイン抗体を用いて、1×105個のCART細胞の一晩培養液の上清を3時間インキュベートした。ビーズを洗浄し、標準化フローサイトメトリーアッセイにより取得した。FCAP ArrayaソフトウェアVersion3.0(BD Biosciences)を用いてデータを分析した。標的細胞から回収した上清のみをコントロールとして使用した。IL−1RAPを発現する標的(K562−IL−1RAP+v1、KU812)又は発現しない標的(K562)の存在下又は非存在下(培地、PMA/Iono)、非形質導入、Mock−、又はCAR IL−1RAP T細胞の培養上清の代表的なキャプチャービーズ蛍光分析。IL−1RAPポジティブ細胞培養上清をエフェクターと共培養するために、上清を1/3に希釈した。培地及びPMA/Ionoは、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールとして使用する。
CART細胞により産生されたサイトカインのプロファイルを決定するために、ヒトIL−2、IL−4、IL−6、IL−10、TNF−a、IFN−γ、及びIL−17Aの分泌を定量化できるヒトTh1/Th2/Th17Cytokines Bead Array(CBA)Kit(BD Biosciences)を製造業者の指示書に従って使用した。簡潔に言うと、標的細胞の存在下(比1:1)又は非存在下(コントロール)、ビーズ及びPE結合抗サイトカイン抗体を用いて、1×105個のCART細胞の一晩培養液の上清を3時間インキュベートした。ビーズを洗浄し、標準化フローサイトメトリーアッセイにより取得した。FCAP ArrayaソフトウェアVersion3.0(BD Biosciences)を用いてデータを分析した。標的細胞から回収した上清のみをコントロールとして使用した。IL−1RAPを発現する標的(K562−IL−1RAP+v1、KU812)又は発現しない標的(K562)の存在下又は非存在下(培地、PMA/Iono)、非形質導入、Mock−、又はCAR IL−1RAP T細胞の培養上清の代表的なキャプチャービーズ蛍光分析。IL−1RAPポジティブ細胞培養上清をエフェクターと共培養するために、上清を1/3に希釈した。培地及びPMA/Ionoは、それぞれネガティブ及びポジティブコントロールとして使用する。
最後に、IL−1RAP CART細胞を刺激するとTh1様サイトカインプロファイル分泌が示されることの確認に加えて、C0、Mock、又はCART細胞(E:T=1:1)と共培養した後の上清中のTh1/Th2/Th17サイトカインを測定した。
IL−1RAP細胞表面発現K562−v1及びKU812細胞のみがサイトカイン分泌を誘発でき、IFNg及びIL−2を強く分泌し、TNFaを中程度に分泌し、IL−4、IL−6、及びIL−10を弱く分泌するが、IL−17は分泌することなく、幾分特定のTh1プロファイルへ向いたものとなっている(図13)。
<実施例10:IL−1RAP依存性CAR細胞傷害性及びIL−1RAP発現腫瘍標的細胞株の溶解>
CD107脱顆粒アッセイでT細胞介在性細胞傷害活性を分析した。各種E:T細胞比で20〜24時間インキュベートすることにより、生腫瘍細胞に対するCAR−T細胞の細胞傷害性を評価した。IL−1RAP+(K532−V1、KU812)発現標的細胞に対してE:T比=1:5で共培養したIL−1RAP CART細胞に実施したCD107a&b脱顆粒アッセイから、IL−1RAP特異的T細胞のCD8−(主にCD4+)及びCD8+区画の両方においてCD107a&bの顕著な細胞表面動員が見られたが、細胞表面IL−1RAP−(K562、K562−v5)発現細胞では見られず、また、細胞ドナーのMock又は非形質導入(C0)細胞では、認識可能な脱顆粒は見られなかった(p<0.001、n=4)(図14)。
CD107脱顆粒アッセイでT細胞介在性細胞傷害活性を分析した。各種E:T細胞比で20〜24時間インキュベートすることにより、生腫瘍細胞に対するCAR−T細胞の細胞傷害性を評価した。IL−1RAP+(K532−V1、KU812)発現標的細胞に対してE:T比=1:5で共培養したIL−1RAP CART細胞に実施したCD107a&b脱顆粒アッセイから、IL−1RAP特異的T細胞のCD8−(主にCD4+)及びCD8+区画の両方においてCD107a&bの顕著な細胞表面動員が見られたが、細胞表面IL−1RAP−(K562、K562−v5)発現細胞では見られず、また、細胞ドナーのMock又は非形質導入(C0)細胞では、認識可能な脱顆粒は見られなかった(p<0.001、n=4)(図14)。
IL−1RAP CAR発現T細胞のインビトロでのIL−1RAP依存性細胞溶解能を測定するために、蛍光(eFluor)染色及び7−AAD染色を用いて、それぞれCART細胞及び生細胞を識別した。
IL−1RAP+(K562−v1及びKU812)標的細胞とIL−1RAP−(K562、K562−v5)標的細胞との間で7−AAD−/eFluor−ゲートにおいて細胞が消失することを特徴とする統計的に有意な溶解活性(p<0.001、n=4)が見られる。非形質導入又はMock形質導入T細胞をコントロールとして使用した(図15)。
<実施例11:異種移植マウスモデル(インビボ試験)(図16)>
エフェクターCAR T細胞を注射して又はしないで、NSG(NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1WjI/SzJ)マウス(Charles River、フランス)にLuc+、IL−1RAP+腫瘍細胞株を移植した。マウス生存率に加え、循環CART細胞及び腫瘍量をサイトメトリー又は生物発光分析のいずれかで毎週分析した。
エフェクターCAR T細胞を注射して又はしないで、NSG(NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1WjI/SzJ)マウス(Charles River、フランス)にLuc+、IL−1RAP+腫瘍細胞株を移植した。マウス生存率に加え、循環CART細胞及び腫瘍量をサイトメトリー又は生物発光分析のいずれかで毎週分析した。
簡潔に言うと、移植前に、3.5Gyの線量で24時間、亜致死的にマウスに放射線照射した(n=5/群)。その後、2×106個のIL−1RAP+、Luciferase+、GFP+発現細胞株K562−v1(K562−v1IL−1RAP+/GFP+/Luc+)を6〜8週齢のNOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウス(The Jackson Laboratory、メイン州バーハーバー)に尾静脈内(i.v)注射で移植した。腫瘍注射から4日後に1×10E6〜5×10E6個のMock T又はIL−1RAP CART細胞を1度だけ静注した。また、K562−v1IL−1RAP+/GFP+/Luc+を注射したがT細胞では未処理であるマウス群をコントロールとして使用した。K562−v1IL−1RAP+/GFP+/Luc+腫瘍量を追跡するために、毎週、イソフルラン麻酔下で、50mg/gのD−ルシフェリン(Promega、仏国リヨン)をマウスに腹腔内注射してから10分後、NightOwl(Berthold Technologies、仏国トワリー)で画像化した。IL−1RAP CART細胞のインビボでのIL−1RAP発現細胞除去能を評価した。
結果から、腫瘍生着後(D4)、大きさが減少して(D4〜D9)完全に除去された(>D9)と認識されるまで、IL−1RAP CART細胞(E:T=1:1)がK562−v1IL−1RAP+/Luc+腫瘍を標的とすることができることが分かる。
それに対して、未処理又はMock T細胞処理マウスにおいて腫瘍増殖が確認され、マウスが死亡したが(D28においていずれの群でも2/3)、CART細胞処理群ではマウスの死亡は見られない。興味深いことに、未処理又はMock T細胞処理群の生存マウスでは、CART細胞の非存在下で腫瘍が増殖し続ける。
<実施例12:CML患者の初代IL−1RAP発現細胞に対するインビトロ細胞傷害性>
4年にわたる4種のTKIを用いた5つの治療ライン(図17上)に対する初代TKI耐性CML患者(常にBCR−ABL(IS)比>10%)から、形質導入効率95.5%でCART細胞を作製できた(図17下)。IL−1RAP CART細胞は、E:T比=3:1で95%の効率でIL−1RAP+KU812細胞に対して用量依存的細胞傷害活性を示したのに対して、C0又はMock T細胞ではそれぞれ18%及び21%のアロ反応性細胞傷害性が示された(図18)。これは、健常ドナーから得られたIL−1RAP CART細胞と同等であった。また、CML患者PBMCに対する自己IL−1RAP CART細胞の共培養では、24時間後にIL−1RAP+/CD34+細胞の特異的な溶解(IL−1RAP CART細胞では76.65±9.2%であるのに対して、C0又はMock T細胞ではそれぞれ4.16±4.3%及び2.78±1.72%)が示された(図19)。
4年にわたる4種のTKIを用いた5つの治療ライン(図17上)に対する初代TKI耐性CML患者(常にBCR−ABL(IS)比>10%)から、形質導入効率95.5%でCART細胞を作製できた(図17下)。IL−1RAP CART細胞は、E:T比=3:1で95%の効率でIL−1RAP+KU812細胞に対して用量依存的細胞傷害活性を示したのに対して、C0又はMock T細胞ではそれぞれ18%及び21%のアロ反応性細胞傷害性が示された(図18)。これは、健常ドナーから得られたIL−1RAP CART細胞と同等であった。また、CML患者PBMCに対する自己IL−1RAP CART細胞の共培養では、24時間後にIL−1RAP+/CD34+細胞の特異的な溶解(IL−1RAP CART細胞では76.65±9.2%であるのに対して、C0又はMock T細胞ではそれぞれ4.16±4.3%及び2.78±1.72%)が示された(図19)。
また、TKIを含む長期治療下又は非治療下のCML患者(n=3)から得られた自己IL−1RAP CART細胞(形質導入効率:85.33±8.8%)は(図21)、それぞれの初期長期凍結保存(>20年)末梢血幹細胞自家移植に対するものであり、79.78±10.7%の効率でCD34+/IL−1RAP+細胞を死滅させた(図20)。
<実施例13:iCASP9安全スイッチで保護されたIL−1RAP−CART細胞は健常造血細胞に対して大きな有害作用は示さない>
オフターゲット毒性を予測するために、#A3C3mAbを使用して、30個の正常ヒト組織の組織マクロアッセイ(TMA)によりIL−1RAP発現を検討した。染色は、リンパ節、前立腺、骨格筋、胃、結腸及び小腸、並びに膵臓という6組織のみにおいて、炎症性又は壊死性要素を除いて様々な強度レベルで検出された(図22A及び表2)。興味深いことに、微小血管HMEC−1内皮細胞株は、我々の#A3C3 IL−1RAP mAbでは認識されず(図22B)、R&D IL−1RAP mAb(R&D Systems、Ref#89412)では細胞表面発現が明確に検出されるため、異なるエピトープが認識されたものと思われる。
オフターゲット毒性を予測するために、#A3C3mAbを使用して、30個の正常ヒト組織の組織マクロアッセイ(TMA)によりIL−1RAP発現を検討した。染色は、リンパ節、前立腺、骨格筋、胃、結腸及び小腸、並びに膵臓という6組織のみにおいて、炎症性又は壊死性要素を除いて様々な強度レベルで検出された(図22A及び表2)。興味深いことに、微小血管HMEC−1内皮細胞株は、我々の#A3C3 IL−1RAP mAbでは認識されず(図22B)、R&D IL−1RAP mAb(R&D Systems、Ref#89412)では細胞表面発現が明確に検出されるため、異なるエピトープが認識されたものと思われる。
健常造血系の標的化に関して、mAb#A3C3では健常ドナーの骨髄(図23A、C)又は正常臍帯血(図23B、C)においてHSCは検出されないとして(RFI<1.2、n=5)、健常ドナーの末梢血の2/5及び骨髄の3/5において、単球亜集団の弱い染色(RFI<2)が確認された(図23A)。次いで、PBMC及び自己CART細胞を様々なE:T比で共培養することで、単球のインビトロ感受性を検討した。E:T比=1:1では、単球の一部のみが標的とされ、41.45%の単球が生存したままであったが(図23D、右、表3)、リンパ球、顆粒球、及びK562 IL−1RAPネガティブ細胞株は、高いE:T比でも、影響を受けなかった(図22D)。興味深いことに、上記E:T比では、白血病細胞の94.77%が死滅した(図23E)。
これらの結果はhCD34生着マウスモデル(hu−NOG)においてインビボで確認され、単球は15日目で減少したが(41±25%、n=3、p=n.s)、hCD34+細胞由来の他のヒト免疫担当細胞はCART細胞の影響を受けないことが明らかとなった(図24)。健常CD34+臍帯血HSCと自己CART細胞とのインビトロ共培養後に造血幹細胞培養アッセイを実施したところ(n=3)、HSCは影響を受けないことが確認された(図25)。これらの結果は、造血系に対するわずかな副作用を伴うIL−1RAP CART細胞免疫療法と一致する。
潜在毒性を制限するために、化学誘導二量体形成物質(CID、10nM)に暴露してからiCASP9/AP1903自殺系カセットの安全スイッチの機能性を評価した。まず、光学顕微鏡観察から、IL−1RAP CARで形質導入した293T細胞培養はCIDに感受性があることを示した(図26、上)。サイトメトリー分析から、CD19+及びCD19−IL−1RAP CART細胞の混合集団において、CID暴露24時間後にCD19−CD3+細胞のみが存続していた(図26、下)。より正確には、アポトーシスの定量アッセイにおいて、CID暴露24時間又は48時間後にそれぞれIL−1RAP CART細胞の84.11%及び88.93%が除去されたのに対して、非形質導入T細胞(C0)では、24時間又は48時間でそれぞれ1.28%及び6.13%であった(p<0.001、n=3、図23F)。最後に、NSGマウスモデルでの安全スイッチのインビボ評価から、AP1903の腹腔内投与後にIL−1RAP CART細胞の87±7.32%(p<0.01、n=3)が除去されるが、PBS投与後には影響を受けず、コントロールT細胞(C0)ではいずれの治療の影響も受けないことが分かった(図23G)。
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