以下、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、システム、装置の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る人物追跡支援システム10の全体構成を模式的に示す図である。人物追跡支援システム10は、公共施設、商業施設等に現れる指名手配犯等の追跡対象者の追跡を支援するシステムである。公共施設としては、例えば空港、駅、バスターミナル、客船ターミナル等が挙げられ、商業施設としては、例えばショッピングモール、ホームセンター、遊園地等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。以下では、人物追跡支援システム10を空港に適用した例について説明する。追跡対象者は、国内外の指名手配犯に限らず、追跡して取り押さえる必要がある人物であればよい。
人物追跡支援システム10は、施設内に設置された複数のカメラ14−1〜14−n(nは正の整数)と、認証装置16と、人物追跡支援装置12と、施設内の監視者のそれぞれが所持する携帯端末装置18−1〜18−m(mは正の整数)と、を備え、それらは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク22を介して通信可能に接続されている。複数の携帯端末装置18−1〜18−mは、アクセスポイント20に無線接続することで、ネットワーク22に接続されている。なお、監視者とは、監視員、警備員、警察官等であり、追跡対象者を追跡する追跡者になり得る者である。以下、カメラ14−1〜14−nのそれぞれを識別する必要がない場合はカメラ14と言い、携帯端末装置18−1〜18−mのそれぞれを識別する必要がない場合は携帯端末装置18と言う。
カメラ14は、撮影機能と通信機能を有する監視カメラ等の撮像装置であり、施設の壁、天井などに設置されて、予め定められた領域を撮像する。カメラ14は、撮像画像をネットワーク22を介して認証装置16に送信する。
認証装置16は、顔認証を行うコンピュータである。認証装置16は、各カメラ14から撮像画像を受信して、各撮像画像に現れる人の顔画像を、追跡対象者のリストの顔画像と照合することで、追跡対象者を特定する。なお、追跡対象者のリストには、追跡対象者ごとに、顔画像、氏名等の識別情報と、性別、国籍、犯罪容疑、武器所持歴等の特徴情報とが対応づけて記録されている。認証装置16は、カメラ14の撮像画像から特定した追跡対象者の識別情報および特徴情報と、特定した追跡対象者が各カメラ14に映った時刻を、ネットワーク22を介して人物追跡支援装置12に送信する。
人物追跡支援装置12は、追跡対象者を追跡して取り押さえるための情報を、各監視者の携帯端末装置18に提供するコンピュータである。人物追跡支援装置12は、認証装置16から、同装置が特定した追跡対象者の識別情報と特徴情報を受信して、ネットワーク22を介して各携帯端末装置18に転送する。また、人物追跡支援装置12は、認証装置16から、同装置が特定した追跡対象者が各カメラ14に映った時刻を受信して、それらから追跡対象者が施設内の特定領域に到達する時刻を予測し、予測した時刻をネットワーク22を介して各携帯端末装置18に送信する。
携帯端末装置18は、スマートフォン、タブレット端末等である。携帯端末装置18は、人物追跡支援装置12から、追跡対象者の識別情報および特徴情報を受信すると共に、同装置が予測した、追跡対象者が施設内の特定領域に到達する時刻を受信し、それらを自装置のタッチパネルやディスプレイ(以下、タッチパネル等と言う)に表示する。図6には、携帯端末装置18の表示画面の一例が示されている。
また、携帯端末装置18には、人物追跡支援システム10が適用される施設(本実施形態では空港)のマップがインストールされている。携帯端末装置18は、屋内測位技術を用いて自装置の位置情報を取得し、自装置の位置を施設のマップに重畳させた画面(以下、マップ画面と言う)を、自装置のタッチパネル等に表示する。図7には、マップ画面92の一例が示されており、星印が自装置の位置Mを示している。なお、屋内測位技術としては、例えば、ビーコン(Beacon)やWi−Fi(登録商標)アクセスポイントからの電波を携帯端末装置18が受信し、その受信強度から自装置の位置情報を得る公知技術を用いることができるが、他の測位技術を用いてもよい。
次に、人物追跡支援装置12について詳細に説明する。図2は、人物追跡支援装置12のハードウェア構成の一例を示す図である。人物追跡支援装置12は、例えば、プロセッサ30、ROM36、RAM38、ハードディスクドライブ(HDD)40、ネットワークカード等の通信部42、マウスやキーボード等の入力部32、およびディスプレイ等の表示部34を含み、これらがバス46に接続されて構成されている。なお、プロセッサ30は、1つまたは複数のCPUから構成されてもよく、複数のCPUのそれぞれは物理的に互いに離れて位置してもよい。
人物追跡支援装置12は、HDD40等に記憶されたプログラムをプロセッサ30が実行することにより、図3に示すように、取得部50、予測部52、通知部54、特定部56、および設定部58として機能する。なお、プロセッサ30が実行するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、光ディスクやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
次に、人物追跡支援システム10の詳細な動作について説明する。図4には、人物追跡支援システム10を用いて空港に現れた追跡対象者Tを追跡する例が示されている。同図には、追跡対象者Tが航空機を降りた後、空港内の通路を通って到着ロビーに向かう様子が示されており、到着ロビーには、出口Aまたは出口Bを通ることで到達できる。また、同図において、頭部分が白抜きの人マークは監視者Pを表しており、頭部分にハッチングが付された人マークは監視者Pのうち後述する配備指令を受けた監視者(追跡者PA)を表している。空港には、複数のカメラ14−1〜14−7が間隔をあけて設置されている。
人がゲート側から出口Aまたは出口Bに向かう時、まず、第1カメラ14−1に人の顔が映る。認証装置16は、第1カメラ14−1の撮像画像に現れる人の顔画像から追跡対象者Tを特定し、特定した追跡対象者Tの識別情報と特徴情報を人物追跡支援装置12に送信する。この時、認証装置16は、追跡対象者Tが第1カメラ14−1に映った時刻である第1時刻を取得し、それも人物追跡支援装置12に送信する。
人物追跡支援装置12の取得部50は、認証装置16からの追跡対象者Tの識別情報、特徴情報、および第1時刻を取得する。そして、人物追跡支援装置12の通知部52は、追跡対象者Tの識別情報と特徴情報を、各監視者Pの携帯端末装置18に転送する。また、人物追跡支援装置12の予測部52は、第1時刻に基づいて、追跡対象者Tが施設の特定領域(図4では70A、70B)に到達する時刻(以下、到達予測時刻と言う)を予測し、同装置12の通知部54は、特定領域を示す情報と共に、到達予測時刻を各監視者Pの携帯端末装置18に送信する。
なお、特定領域は、追跡対象者Tが通過する可能性がある、施設内の予め定められた領域であり、1カ所以上、設けられる。この実施形態では、特定領域は2カ所あり、特定領域70A、70Bのそれぞれは、出口A、Bのそれぞれの手前に設けられている。また、この実施形態では、特定領域70A、70Bは、追跡者PAが追跡対象者Tを取り押さえるために配備される領域でもある。以下、特定領域70A、70Bのそれぞれを識別する必要がない場合は特定領域70と言う。
ここで、第1カメラ14−1から特定領域70Aまでの距離は、予め把握することができる。予測部52は、第1カメラ14−1から特定領域70Aまでの距離を、人の一般的な歩く速度の代表値(例えば平均値)で割り算することで、第1カメラ14−1から特定領域70Aまでの所要時間を予測し、それを第1時刻に加算することで、追跡対象者Tが特定領域70Aに到達する時刻(到達予測時刻)を予測する。特定領域70Bについても同様に、到達予測時刻を予測する。
各監視者Pの携帯端末装置18は、人物追跡支援装置12からの追跡対象者Tの識別情報、特徴情報、特定領域を示す情報、および到達予測時刻を受信する。そして、各監視者Pの携帯端末装置18は、図6に示すように、自装置のタッチパネル等に、追跡対象者Tの識別情報80(図6では氏名および顔画像81)、特徴情報(図6では性別、国籍、および犯罪容疑)、特定領域を示す情報84、および到達予測時刻86を表示する。
また、この時、携帯端末装置18は、アラームやバイブレーションにより、監視者Pに、追跡対象者Tが現れたことを知覚させる。なお、図6に示す配備指令メッセージ88は、監視者P全員の携帯端末装置18に現れるのではなく、以下で説明するように、監視者Pの中から追跡者PAとして設定された者が所持する携帯端末装置18のみに現れるものである。
第1カメラ14−1の撮像画像から追跡対象者Tが特定された際には、人物追跡支援装置12は、さらに、追跡対象者Tを追跡する追跡者PAを設定して、追跡者PAの携帯端末装置18に、特定領域70に配備する指令を出す。具体的には、これは次のように行う。
人物追跡支援装置12は、図5に示すような、追跡対象者の特徴と、配備する追跡者の人数および特徴を対応づけたテーブル96を、HDD40等に予め記憶している。人物追跡支援装置12の設定部58は、認証装置16からの追跡対象者Tの特徴情報を、テーブル96と照合することで、追跡対象者Tの特徴に対応した追跡者PAを設定する。ここで、図5のテーブル96を用いて設定される追跡者PAには次の特徴がある。
追跡対象者Tの容疑の種類が、強力犯である場合には、知能犯である場合に比べて、特定領域70に配備する追跡者PAの人数を多くする。また、追跡対象者Tが強力犯であれば、容疑の種類が殺人または強盗の場合には、その他の容疑の種類の場合に比べて、特定領域70に配備する追跡者PAの人数を多くする。また、追跡対象者Tが武器所持歴を有する場合には、追跡対象者Tが武器所持歴を有しない場合に比べて、特定領域70に配備する追跡者PAの人数を多くする。このようにすれば、追跡対象者Tの追跡者PAに対する抵抗力を予測して、追跡者PAの過小または過剰な配備を抑制することができる。
また、追跡対象者Tの容疑の種類が、強力犯である場合には、知能犯である場合に比べて、特定キャリアを有する監視者Pがより多く追跡者PAとして設定されるようにする。特定キャリアを有する監視者Pとは、例えば警備員または警察官としての経験年数が予め定められた年数以上(図5では5年以上)ある監視者である。また、特定キャリアを有する監視者Pは、例えば、容疑者を取り押さえた経験が過去に予め定められた回数以上ある者や、柔道、空手等の武術のレベルが予め定められたレベル以上である者であってもよい。このようにすれば、追跡対象者Tが強力犯である場合に、それに相応しい追跡者PAを配備することができ、追跡対象者Tの取り逃しを抑制することができる。
また、追跡対象者Tが女性である場合には、女性の監視者Pが少なくとも1人、追跡者PAとして設定されるようにする。このようにすれば、女性の追跡対象者Tを円滑に取り押さえることができる。以上が、図5のテーブル96に基づいて設定される追跡者PAの特徴である。
次に、人物追跡支援装置12の取得部50は、各携帯端末装置18から、監視者Pの位置情報として、携帯端末装置18の位置情報を取得する。また、人物追跡支援装置12の取得部50は、各携帯端末装置18から、携帯端末装置18に予め記憶された、それを所持する監視者Pの特徴情報(性別、特定キャリアの有無等)を取得する。
そして、人物追跡支援装置12の設定部58は、テーブル96で得られた追跡者PAの人数だけ、特定領域70の近くにいる監視者Pから順に追跡者PAを割り当てる。この際、女性、または、特定キャリアを有する者を追跡者PAとして設定する必要がある場合には、特定領域70のより近くにいる女性、または、特定キャリアを有する者を、まず、追跡者PAとして割り当てた後、残りの人数だけ、特定領域70の近くにいる監視者Pを追跡者PAとして割り当てる。
ここで、図4に示すように、施設の通路が分岐されていることで、追跡対象者Tが進んでくる可能性がある領域が2カ所以上あり、それに対応させて特定領域70が2カ所以上設けられている場合(図4では特定領域70A、70Bの2カ所)には、人物追跡支援装置12の設定部58は、特定領域70A、70Bごとに追跡者PAを設定する。これは、具体的には次のように行う。
まず、人物追跡支援装置12の特定部56は、各特定領域70A、70Bに追跡対象者Tが進む予測割合を、現在または過去の各特定領域70A、70Bへの人の流れの情報に基づいて特定する。例えば、特定部56は、特定領域70A、70Bのそれぞれに向かう通路の途中に設けられたカメラ14の現在または過去の撮像画像から、特定領域70A、70Bのそれぞれに向かう人の量の相対的な割合を検出し、それを、特定領域70A、70Bの予測割合とする(例えば、特定領域70Aに向かう人の量:特定領域70Bに向かう人の量=8:2であれば、特定領域70Aの予測割合=80%、特定領域70Bの予測割合=20%とする)。また、例えば、特定部56は、特定領域70A、70Bのそれぞれに向かう通路の途中に設けられたカメラ14の現在の撮像画像から、どちらかの通路が清掃や工事などにより塞がっている、または、通り難くなっていることを検出した際には、その通路の先にある特定領域の予測割合を0%、または、それに近くしてもよい。また、例えば、特定部56は、時期(各月、繁忙期、閑散期など)や1日の中の時間帯によって、特定領域70A、70Bのそれぞれに向かう人の相対的な割合が変化するような場合には、時期や1日の中の時間帯に対する各特定領域70A、70Bの人の量の蓄積情報(過去の統計情報)から、現在の特定領域70A、70Bのそれぞれに向かう人の量の相対的な割合を予測し、その割合を、特定領域70A、70Bの予測割合としてもよい。
次に、人物追跡支援装置12の設定部58は、図5のテーブル96で得られた追跡者PAの人数を、特定された予測割合に応じて分配する。例えば、図5のテーブル96から追跡者PAの数が10人と得られて、特定領域70Aの予測割合が80%、特定領域70Bの予測割合が20%の場合には、特定領域70Aに8人の追跡者PAを設定し、特定領域70Bに2人の追跡者PAを設定する。また、この際、上記と同様に、各特定領域70A、70Bの近くにいる監視者Pから順に追跡者PAを割り当てる。このようにすれば、追跡対象者Tが進む可能性がある複数の特定領域70のそれぞれに、適切な人数の追跡者PAを配備することができる。また、追跡対象者Tが進んでくる可能性が高い特定領域の配備を手厚くすることができ、追跡対象者Tを見失う可能性を低減することができる。
そして、人物追跡支援装置12の通知部54は、追跡者PAとして設定された監視者Pの携帯端末装置18に、配備先の特定領域を示す情報と、当該特定領域への配備指令を通知する。これにより、追跡者PAの携帯端末装置18には、図6の配備指令メッセージ88に示すように、配備先の特定領域(図6では「出口Aの手前」)を含む配備指令が表示される。なお、人物追跡支援装置12の通知部54は、各特定領域70A、70Bの上記した予測割合を、監視者Pの携帯端末装置18に通知し、監視者Pの携帯端末装置18は、それをタッチパネル等に表示するとしてもよい(図6の「可能性80%」、「可能性20%」の表示)。
追跡者PAは、配備指令メッセージ88に従って、指令を受けた特定領域に急行する。なお、監視者Pの携帯端末装置18は、図7に示すように、施設のマップに自装置の位置Mを重畳させたマップ画面92を表示可能である。携帯端末装置18は、人物追跡支援装置12から、他の携帯端末装置18の位置情報を得ることで、マップ画面92上に他の監視者Pの位置も表示することができる。また、携帯端末装置18は、他の携帯端末装置18の所持者が追跡者PAなのか、追跡者PAではない監視者Pなのかを示す情報も得ることで、追跡者PAと、追跡者PAではない監視者Pを区別できるように、監視者Pの位置を表示することができる。図7のマップ画面92では、追跡者PAと、追跡者PAではない監視者Pの違いによって、他の監視者Pの位置を示すマークの形状とハッチングを変えている。なお、携帯端末装置18の所持者自身が、追跡者PAなのか、追跡者PAではない監視者Pなのかに応じて、マップ画面92上の自身の位置Mを示すマークの形状、色、ハッチング等が変わってもよい。また、図7のマップ画面92には、携帯端末装置18の所持者自身が追跡者PAである場合に、配備指令を受けた特定領域の位置(図7では破線の四角)も表示することができる。追跡者PAは、このようなマップ画面92を確認することで、他の追跡者PAの位置を確認しながら、正確に特定領域に向かうことができる。
図4に戻り、説明を続ける。追跡対象者Tが、第1カメラ14−1から第2カメラ14−2に向かって進むと、第2カメラ14−2に追跡対象者Tが映ることになる。認証装置16は、第2カメラ14−2の撮像画像の顔画像から追跡対象者Tを特定し、特定した追跡対象者Tの識別情報を人物追跡支援装置12に送信する。この時、認証装置16は、追跡対象者Tが第2カメラ14−2に映った時刻である第2時刻を取得し、それも人物追跡支援装置12に送信する。
人物追跡支援装置12の取得部50は、認証装置16からの追跡対象者Tの識別情報および第2時刻を取得する。そして、人物追跡支援装置12は、取得した追跡対象者Tの識別情報が、前回取得した追跡対象者Tの識別情報と同じであることを確認すると、同装置12の予測部52は、第1時刻から第2時刻までの経過時間と、第1カメラ14−1から第2カメラ14−2までの距離L1から、追跡対象者Tの移動速度を算出する。
そして、予測部52は、第2カメラ14−2から特定領域70Aまでの距離を、算出した移動速度で割り算することで、第2カメラ14−2から特定領域70Aまでの所要時間を予測し、それを第2時刻に加算することで、追跡対象者Tが特定領域70Aに到達する時刻(到達予測時刻)を再び予測する。特定領域70Bについても同様である。そして、人物追跡支援装置12の通知部54は、特定領域70A、70Bのそれぞれを示す情報と共に、特定領域70A、70Bのそれぞれの到達予測時刻を各監視者Pの携帯端末装置18に送信する。
各監視者Pの携帯端末装置18は、人物追跡支援装置12から特定領域70A、70Bの到達予測時刻を受信して、自装置のタッチパネル等に表示した特定領域70A、70Bの到達予測時刻86を、受信した到達予測時刻に更新する。このようすれば、監視者Pは、追跡対象者Tの実際の移動速度に基づいた、より正確な追跡対象者Tの特定領域70A、70Bへの到達予測時刻を把握することができる。よって、追跡者PAは、特定領域70Aまたは70Bに、追跡対象者Tの到達時刻よりも前に先回りする動作が可能となり、追跡対象者を見失うことを抑制することができる。
次に、追跡対象者Tが、第2カメラ14−2から第3カメラ14−3に向かって進むと、第3カメラ14−3に追跡対象者Tが映ることになる。認証装置16は、第3カメラ14−3の撮像画像の顔画像から追跡対象者Tを特定し、特定した追跡対象者Tの識別情報を人物追跡支援装置12に送信する。この時、認証装置16は、追跡対象者Tが第3カメラ14−3に映った時刻である第3時刻を取得し、それも人物追跡支援装置12に送信する。
人物追跡支援装置12の取得部50は、認証装置16からの追跡対象者Tの識別情報および第3時刻を取得する。そして、人物追跡支援装置12は、取得した追跡対象者Tの識別情報が、前回取得した追跡対象者Tの識別情報と同じであることを確認すると、同装置12の予測部52は、第2時刻から第3時刻までの経過時間と、第2カメラ14−2から第3カメラ14−3までの距離L2から、追跡対象者Tの移動速度を算出する。
そして、予測部52は、第3カメラ14−3から特定領域70Aまでの距離を、算出した移動速度で割り算することで、第3カメラ14−3から特定領域70Aまでの所要時間を予測し、それを第3時刻に加算することで、追跡対象者Tが特定領域70Aに到達する時刻(到達予測時刻)を再び予測する。特定領域70Bについても同様である。そして、人物追跡支援装置12の通知部54は、特定領域70A、70Bのそれぞれを示す情報と共に、特定領域70A、70Bのそれぞれの到達予測時刻を各監視者Pの携帯端末装置18に送信する。
各監視者Pの携帯端末装置18は、人物追跡支援装置12から特定領域70A、70Bの到達予測時刻を受信して、自装置のタッチパネル等に表示した特定領域70A、70Bの到達予測時刻86を、受信した到達予測時刻に更新する。
このように、追跡対象者Tがカメラ14に映るたびに、追跡対象者Tの特定領域70A、70Bの到達予測時刻を更新する。このようにすれば、追跡対象者Tの移動速度が変化する場合でも、到達予測時刻の精度を高めることができる。例えば、追跡対象者Tが第1カメラ14−1と第2カメラ14−2の間で立ち止まったり、化粧室や売店等に寄り道をしたりすると、第1時刻と第2時刻の間の経過時間が長くなり、それから得られた到達予測時刻は過剰に遅くなり得る。一方、追跡対象者Tが第1カメラ14−1と第2カメラ14−2の間で、水平型または階段型のエスカレーター等に乗ると、第1時刻と第2時刻の間の経過時間が短くなり、それから得られた到達予測時刻は過剰に早くなり得る。しかし、上記のように、追跡対象者Tが出口A、Bに向かう途中にある各カメラ14に映るたびに、追跡対象者Tの移動速度を更新すれば、追跡対象者Tの特定領域70A、70Bの到達予測時刻がより正確なものとなる。
なお、人物追跡支援装置12は、追跡対象者Tがカメラ14に映るたびに得られる追跡対象者Tの移動速度を用いて、それらの平均値(以下、平均移動速度と言う)を算出し、平均移動速度で、追跡対象者Tが直近で映ったカメラ14から特定領域70までの距離を割り算することで、追跡対象者Tが直近で映ったカメラ14から特定領域70に到達するまでの所要時間を予測し、特定領域70の到達予測時刻を更新してもよい。また、この際、過大または過小な移動速度を閾値により排除した上で、平均移動速度を算出してもよい。
なお、以上説明した、追跡対象者Tが各カメラ14に映った時刻(第1時刻、第2時刻・・)の情報は、第1、第2・・という各カメラ14の識別子の情報も含んでいるため、人物追跡支援装置12は、認証装置16から、追跡対象者Tがカメラ14に映った時刻を得ることで、追跡対象者Tが現在、どのカメラ14の位置を通過したかを示す情報を得ることができる。そして、人物追跡支援装置12がその情報を各監視者Pの携帯端末装置18に送信することで、携帯端末装置18は、図7のマップ画面92に、追跡対象者Tの位置を重畳して表示することができる。この際、人物追跡支援装置12は、追跡対象者Tが現在、どのカメラ14の位置を通過したかを示す情報と、追跡対象者Tの上記した移動速度または平均移動速度とから追跡対象者Tの現在の位置を予測し、予測した位置情報を、各監視者Pの携帯端末装置18に送信してもよい。このようにすれば、携帯端末装置18は、図7のマップ画面92に、追跡対象者Tのより正確な位置を表示することができる。
追跡者PAは、携帯端末装置18から提供される情報により、追跡対象者Tが特定領域70Aまたは70Bに到達する前に、そこに先回りする動作が可能となり、追跡対象者Tを見失うことが抑制され、追跡対象者Tを取り押さえやすくなる。
なお、以上説明した実施形態では、人物追跡支援装置12が監視者Pの中から追跡者PAを設定し、追跡者PAに配備指令を出した。しかし、人物追跡支援装置12は、追跡者PAを設定せず、配備指令を出さない形態でもよい。この場合でも、監視者Pは、携帯端末装置18から提供される情報に基づいて、特定領域70に、適宜、向かうことができる。