JP2021194673A - レーザ加工方法 - Google Patents

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俊輔 川合
Shunsuke Kawai
静波 王
Seiha O
勤 杉山
Tsutomu Sugiyama
憲三 柴田
Kenzo Shibata
雅史 石黒
Masafumi Ishiguro
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Abstract

【課題】設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上とが図れるレーザ加工方法を提供する。【解決手段】レーザ加工方法は、レーザ光LBをY方向に進行させながら、さらにY方向に沿って往復させるように走査してワーク200に照射することで、ワーク200の所定の領域220を加熱する予熱ステップを備えている。また、レーザ加工方法は、予熱ステップの後に、レーザ光LBをY方向に進行させながら、レーザ光LBを領域220に照射して、ワークをレーザ加工する加工ステップを備えている。また、予熱ステップと加工ステップとを交互に繰り返して実行する。【選択図】図3

Description

本開示は、レーザ加工方法に関する。
レーザ溶接を含むレーザ加工は、被加工物であるワークに照射されるレーザ光のパワー密度が高いため、高速かつ高品質の加工を行うことができる。特に、レーザ光をワークの表面で高速にスキャンしながら加工を行うスキャニング加工では、加工速度をより高めることができる(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−095934号公報
ところで、レーザ光による加工速度を高めていくと、ワークのレーザ光が照射された部分では、ワークへの入熱量及び当該部分の温度が急激に変化し、ワークが固体から溶融状態になる状態変化の速度も大きくなる。このため、いわゆる突沸が起きやすく、スパッタの発生率が高くなることが知られている。スパッタとは、溶融状態の金属が飛び散ってワークに付着凝固したものである。スパッタの発生率が高くなると、加工箇所近傍でワークの外観を損ね、加工品質を大きく低下させる。
スパッタの発生を抑制するために、加工速度を低くすると、ワークの加工生産性が低下してしまう。一方、加工速度を高めつつスパッタの発生を抑制するために、レーザ光の出力を高め、ワークのレーザ光が照射された部分で、入熱量及び温度の時間変化を緩やかにする手法も考えられる。
しかし、レーザ光の出力を高めるためには、レーザ発振器を含めてレーザ加工装置が大型化し、設備コストが大幅に上昇するという課題がある。
また、レーザ加工時にワークに吹き付けられるシールドガスの噴射条件を調整したり、レーザ光をパルス状や三角波状に出力変調したりする手法も考えられるが、スパッタの発生を十分に抑制することは難しかった。
また、アーク溶接等では、ワークを予め加熱しておくことで、アークが照射された部分での温度変化を緩やかにし、スパッタの発生を抑制する手法が知られている。加熱方式として、ワークに電流を流したり、あるいはヒーター等で直熱加熱する方式や誘導加熱方式が知られている。
しかし、このような予備加熱(以下、予熱という)を行うためには、ワークの加熱設備が別途必要となり、設備コストが大幅に上昇するという課題がある。
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上とが図れるレーザ加工方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本開示に係るレーザ加工方法は、レーザ光を所定の方向に進行させながら、さらに前記所定の方向に沿って往復させるように走査してワークに照射することで、前記ワークの所定の領域を加熱する予熱ステップと、前記予熱ステップの後に、前記レーザ光を前記所定の方向に進行させながら、前記レーザ光を前記所定の領域に照射して、前記ワークをレーザ加工する加工ステップと、を少なくとも備え、前記予熱ステップと前記加工ステップとを交互に繰り返して実行することを特徴とする。
本開示によれば、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上とが図れる。
実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成図である。 レーザ光スキャナの概略構成図である。 実施形態1に係るレーザ加工方法の説明図である。 レーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートである。 変形例に係るレーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートである。 実施形態2に係るレーザ光の加工軌跡を示す図である。 実施形態2に係るレーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートである。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
[レーザ加工装置及びレーザ光スキャナの構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置の構成の模式図を示し、図2は、レーザ光スキャナの概略構成図を示す。
なお、以降の説明において、反射ミラー33からレーザ光スキャナ40に向かうレーザ光LBの進行方向と平行な方向をX方向と、レーザヘッド30から出射されるレーザ光LBの光軸と平行な方向をZ方向と、X方向及びZ方向とそれぞれ直交する方向をY方向とそれぞれ呼ぶことがある。X方向とY方向とを面内に含むXY平面は、ワーク200の表面が平坦面である場合、当該表面と略平行でもよく、一定の角度を有してもよい。
図1に示すように、レーザ溶接装置100は、レーザ発振器10と光ファイバ20とレーザヘッド30とコントローラ50とマニピュレータ60とを備えている。
レーザ発振器10は、図示しない電源から電力が供給されてレーザ光LBを発生させるレーザ光源である。なお、レーザ発振器10は、単一のレーザ光源で構成されていてもよいし、複数のレーザモジュールで構成されていてもよい。後者の場合は、複数のレーザモジュールからそれぞれ出射されたレーザ光を結合してレーザ光LBとして出射する。また、レーザ発振器10で使用されるレーザ光源あるいはレーザモジュールは、ワーク200の材質や溶接部位の形状等に応じて、適宜選択される。
例えば、ファイバレーザかディスクレーザ、あるいはYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザをレーザ光源とすることもできる。この場合、レーザ光LBの波長は、1000nm〜1100nmの範囲に設定される。また、半導体レーザをレーザ光源あるいはレーザモジュールとしてもよい。この場合、レーザ光LBの波長は、800nm〜1000nmの範囲に設定される。また、可視光レーザをレーザ光源あるいはレーザモジュールとしてもよい。この場合、レーザ光LBの波長は、400nm〜800nmの範囲に設定される。
光ファイバ20は、レーザ発振器10に光学的に結合されており、レーザ発振器10で発生したレーザ光LBは、光ファイバ20に入射されて、その内部をレーザヘッド30に向けて伝送される。
レーザヘッド30は、光ファイバ20の端部に取り付けられており、光ファイバ20から伝送されたレーザ光LBをワーク200に向けて照射する。
また、レーザヘッド30は、光学部品として、コリメーションレンズ32と反射ミラー33と集光レンズ34とレーザ光スキャナ40とを有しており、筐体31の内部にこれらの光学部品が所定の配置関係を保って収容されている。
コリメーションレンズ32は、光ファイバ20から出射されたレーザ光LBを受け取って、平行光に変換し、反射ミラー33に入射させる。また、コリメーションレンズ32は、図示しない駆動部に連結されており、コントローラ50からの制御信号に応じて、Z方向に変位可能に構成されている。コリメーションレンズ32をZ方向に変位させることで、レーザ光LBの焦点位置を変化させ、ワーク200の形状に応じて適切にレーザ光LBを照射させることができる。
反射ミラー33は、コリメーションレンズ32を透過したレーザ光LBを反射して、レーザ光スキャナ40に入射させる。反射ミラー33の表面は、コリメーションレンズ32を透過したレーザ光LBの光軸と約45度をなすように設けられている。なお、反射ミラー33の表面とレーザ光LBの光軸とがなす角度は、コリメーションレンズ32と集光レンズ34との配置関係に応じて、適宜変更されうる。
図2に示すように、レーザ光スキャナ40は、第1ガルバノミラー41と第2ガルバノミラー42とを有する公知のガルバノスキャナである。第1ガルバノミラー41は、第1ミラー41aと第1回転軸41bと第1駆動部41cとを有し、第2ガルバノミラー42は、第2ミラー42aと第2回転軸42bと第2駆動部42cとを有している。反射ミラー33で反射されたレーザ光LBは、第1ミラー41aで反射され、さらに第2ミラー42aで反射されて、集光レンズ34に入射する。
例えば、第1駆動部41c及び第2駆動部42cは、モータであり、第1回転軸41b及び第2回転軸42bは、モータの出力軸である。第1駆動部41cが、コントローラ50からの制御信号に応じて回転駆動することで、第1回転軸41bに取り付けられた第1ミラー41aが第1回転軸41bの軸線回りに回転する。同様に、第2駆動部42cが、コントローラ50からの制御信号に応じて回転駆動することで、第2回転軸42bに取り付けられた第2ミラー42aが第2回転軸42bの軸線回りに回転する。
第1ミラー41aが第1回転軸41bの軸線回りに所定の回転動作をすることで、レーザ光LBがX方向に走査される。また、第2ミラー42aが第2回転軸42bの軸線回りに所定の回転動作をすることで、レーザ光LBがY方向に走査される。つまり、レーザ光スキャナ40は、レーザ光LBをXY平面内で一次元的に、または二次元的に走査してワーク200に向けて照射するように構成されている。
コントローラ50は、レーザ発振器10のレーザ発振を制御する。具体的には、レーザ発振器10に接続された図示しない電源に対して出力電流やオンオフ時間等の制御信号を供給することにより、レーザ発振制御を行う。
また、コントローラ50は、選択されたレーザ加工プログラムの内容に応じて、レーザヘッド30の動作を制御する。具体的には、レーザヘッド30に設けられたレーザ光スキャナ40及びコリメーションレンズ32の駆動部の駆動制御を行う。さらに、コントローラ50は、マニピュレータ60の動作を制御する。なお、レーザ加工プログラムは、コントローラ50の内部または別の場所に設けられた記憶部(図示せず)に保存され、コントローラ50からの命令によってコントローラ50に呼び出される。
コントローラ50は、図示しないLSIまたはマイクロコンピュータ等の集積回路を有しており、この集積回路上でソフトウェアであるレーザ溶接プログラムを実行することで、前述のコントローラ50の機能が実現される。
マニピュレータ60は、多関節ロボットであり、レーザヘッド30の筐体31に取り付けられている。また、マニピュレータ60は、コントローラ50と信号の授受が可能に接続され、前述のレーザ加工プログラムに応じて所定の軌跡を描くようにレーザヘッド30を移動させる。なお、マニピュレータ60の動作を制御する別のコントローラ(図示せず)を設けるようにしてもよい。
[レーザ加工方法]
図3は、レーザ加工方法の説明図を示し、図4は、レーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートを示す。なお、本実施形態では、マニピュレータ60を動作させて、レーザ光LBをX方向に直線的に進行させ、板状のワーク200に対してY方向に溶接または切断を行うレーザ加工方法を例にとって説明する。以降の説明において、Y方向を加工方向または進行方向と呼ぶことがある。また、Y方向において、ある時点でのワーク200へのレーザ光LBの照射位置を基準として、同じ時点で既にレーザ光LBが照射された側を後方と、未だレーザ光LBが照射されていない側を前方とそれぞれ呼ぶことがある。
図3に示すように、レーザ光LBは、Y方向前方に進行しながらワーク200の表面に照射される。このときのレーザ光LBの進行速度をV(mm/sec)とする。進行速度Vは、レーザ光LBによるワーク200の加工速度に相当し、以降の説明において、加工速度Vと呼ぶことがある。本実施形態では、加工速度Vは、マニピュレータ60に保持されて、ワーク200に対してY方向に相対的に移動するレーザヘッド30の移動速度でもある。
また、レーザ光LBは、進行速度VでY方向前方に進行中に、第2ガルバノミラー42により、後で述べる周期T毎に、さらにY方向に沿って前方に走査され、次に後方に戻るように走査される。つまり、レーザ光LBは、周期T毎にY方向に沿って所定の距離を往復するように走査される。このようにすることで、ある時点でのレーザ光LBの照射領域210(図3参照;以下、単に領域210という)のY方向前方に位置するワーク200の所定の領域220(図3参照;以下、単に領域220という)に、レーザ光LBが照射される。このことにより、領域220において、ワーク200が加熱される。
なお、本実施形態では、Y方向に沿った領域210と領域220との距離は、数mm〜十数mmに設定されるが、特にこれに限定されず、ワーク200の形状や材質、また、進行速度Vやレーザ光LBに出力に応じて適宜変更されうる。
つまり、本実施形態に示すレーザ加工方法では、レーザ光LBをY方向に進行させながら、さらにY方向に沿って往復させるように走査してワーク200に照射することで、ワーク200の領域220を加熱する(予熱ステップ)。また、この予熱ステップの後に、レーザ光LBをY方向に進行させながら、レーザ光LBを予熱ステップで加熱された領域220に照射して、ワーク200をレーザ加工する(加工ステップ)。
また、図4に示すように、予熱ステップと加工ステップとは、交互に繰り返して実行される。各ステップにおけるマニピュレータ60や第2ガルバノメータ42の動作及びレーザ光LBの出力は、予め設定されたレーザ加工プログラムにしたがってコントローラ50により制御される。
なお、レーザ光LBは連続発振され、進行速度V及びレーザ光LBの出力P(W)は、レーザ加工中、一定の値に保持される。つまり、予熱ステップにおける進行速度V及びレーザ光LBの出力Pは、加工ステップにおける進行速度V及びレーザ光LBの出力Pとそれぞれ等しい。
なお、本願明細書において、「等しい」または「同じ」とは、制御系の誤差を含んで制御対象の制御結果が同じまたは同一という意味であり、厳密に比較対象となる両者が同じまたは同一であることまでを要求するものではない。
ここで、予熱ステップにおけるレーザ光LBのY方向前方への最大変位量をA(mm)とし、予熱ステップにおけるレーザ光LBの走査周波数をf(Hz)とすると、以下に示す式(1)を満たすように各パラメータが設定される。なお、走査周波数fは、第2ガルバノメータ42の動作周波数(=f)に相当する。本実施形態では、第2ガルバノメータ42は、最大動作周波数fmaxで動作し、レーザ光も周波数fmaxで走査される。ただし、これに限定されず、fmaxよりも低い周波数で第2ガルバノメータ42を動作させてもよい。
2fA/B≧V ・・・(1)
ここで、Bは、予熱ステップにおいて、領域220を所望の温度に加熱するのに必要なエネルギーに関係した値である。なお、式(1)の左辺の項(2fA)は、予熱ステップでのレーザ光LBの走査速度に相当する。
加工速度Vやワーク200の材質にもよるが、レーザ光LBの出力Pが、1kW〜十数kWの範囲で設定される場合、予熱に必要なエネルギーは、出力Pの1/10〜1/100程度の範囲となる。予熱に必要なエネルギーは、領域220を所望の温度に加熱するのに必要なエネルギーである。例えば、予熱に必要なエネルギーが100W〜400W程度である場合、式(1)の関係を考慮すると、例えば、式(2)の関係が成立する必要がある。
100V≦2fA ・・・(2)
また、図4から明らかなように、周期Tは、予熱ステップの処理時間とこれに連続する前記加工ステップの処理時間との和である。予熱ステップにおいて、レーザ光LBをY方向前方に走査するときの第2ガルバノミラー42によるレーザ光LBのワーク200上での変位量をA1とするとき、以下の式(3)が成立する。
T=A1/V ・・・(3)
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るレーザ加工方法は、レーザ光LBをY方向に進行させながら、さらにY方向に沿って往復させるように走査してワーク200に照射することで、ワーク200の所定の領域220を加熱する予熱ステップを備えている。また、レーザ加工方法は、予熱ステップの後に、レーザ光LBをY方向に進行させながら、レーザ光LBを領域220に照射して、ワークをレーザ加工する加工ステップを備えている。また、予熱ステップと加工ステップとを交互に繰り返して実行する。
本実施形態によれば、予熱ステップで、その時点でのレーザ光LBの照射領域210の前方に位置するワーク200の領域220を加熱することで、領域220の温度を上昇させることができる。このことにより、後に続く加工ステップで、領域220にレーザ光LBが照射された場合に、スパッタが発生するのを抑制できる。
また、加工速度Vが同じである場合、予熱ステップがない場合に比べて、スパッタの発生を抑制できる。言い換えると、本実施形態によれば、予熱ステップがない場合に比べて、加工速度Vを高めることができ、ひいては、ワーク200の加工生産性を向上できる。
また、レーザ光スキャナ40は、公知のガルバノスキャナとして構成されている。ガルバノスキャナはレーザ加工装置100やレーザ発振器10、また、これを駆動する電源(図示せず)等に比べて十分に小型化されている。よって、レーザ光スキャナ40を設けることによる設備コストの上昇は、レーザ発振器10を大型化したり、加熱設備を別途設けたりする場合に比べて、大幅に抑えることができる。
つまり、本実施形態によれば、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができる。
予熱ステップでは、前述の式(1)の関係を満たすように、レーザ光LBが走査されるのが好ましい。
このようにすることで、予熱ステップで、領域220が過度に加熱されず、領域220が溶融したりするおそれがない。このことにより、領域220を適切に加熱してスパッタの発生を確実に抑制できる。
予熱ステップにおけるレーザ光LBの走査は、レーザ光スキャナ40に設けられた第2ガルバノメータ42を用いて行われる。
このようにすることで、簡便かつ確実に、ワーク200の表面でレーザ光LBを所定の方向に所定の距離だけ走査することができる。
また、周期Tは、前述の式(3)の関係を満たすことが好ましい。
このようにすることで、加工速度Vを変更することなく、予熱ステップを実行でき、レーザ加工の制御が簡素化される。このことにより、加工コストが上昇するのを抑制できる。
予熱ステップでは、第2ガルバノミラー42を最大動作周波数fmaxで動作させるのが好ましい。
このようにすることで、予熱ステップの処理時間を短くでき、加工ステップでのレーザ加工に与える予熱ステップの影響を小さくできる。つまり、加工品質を大きく低下させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、レーザ光LBのY方向への進行速度Vが、予熱ステップと加工ステップとで等しくなるように設定されている。このことにより、レーザ光LBの進行速度Vの制御が簡素化され、加工コストが上昇するのを抑制できる。
また、本実施形態では、レーザ光LBの出力Pが、予熱ステップと加工ステップとで等しくなるように設定されている。このことにより、出力Pの制御が簡素化され、加工コストが上昇するのを抑制できる。
本実施形態に係るレーザ加工装置100は、レーザ光LBを発生させるレーザ発振器10と、レーザ光LBを受け取ってワーク200に向けて照射するレーザヘッド30と、レーザヘッド30の動作を制御するコントローラ50と、を少なくとも備えている。
レーザヘッド30は、レーザ光LBをX方向とX方向と交差するY方向のそれぞれに走査するレーザ光スキャナ40を有している。
また、レーザ光スキャナ40は、レーザ光LBをX方向に走査する第1ガルバノミラー41と、レーザ光LBをY方向に走査する第2ガルバノミラー42と、で構成されている。
また、レーザ溶接装置100は、レーザヘッド30が取り付けられたマニピュレータ60をさらに備え、コントローラ50は、マニピュレータ60の動作を制御する。マニピュレータ60は、ワーク200の表面に対して、所定の方向にレーザヘッド30を移動させる。
コントローラ50は、レーザヘッド30の移動中に、所定の周期T毎に、レーザ光LBを加工方向であるY方向に沿って往復して走査させるように、レーザ光スキャナ40の第2ガルバノミラー42を駆動制御する。
また、コントローラ50は、レーザヘッド30がY方向に沿って進行速度Vで移動するように、マニピュレータ60の動作を制御する。
本実施形態によれば、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができる。
また、マニピュレータ60を設けることで、レーザ光LBの加工方向を変化させることができる。また、複雑な形状、例えば、立体的な形状のワーク200に対して、レーザ加工を容易に行うことができる。
また、レーザ光スキャナ40を公知のガルバノスキャナで構成することで、レーザ光LBを簡便に一次元的、または二次元的に走査することができ、さらにレーザ加工装置100の設備コストが上昇するのを抑制できる。
コントローラ50は、周期T毎に、第2ガルバノミラー42が最大動作周波数fmaxで動作するように制御する。
このようにすることで、加工ステップでのレーザ加工に与える予熱ステップの影響を小さくできる。つまり、加工品質を大きく低下させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができる。
また、コントローラ50は、レーザ加工中に、レーザ光LBの出力Pを一定に保つようにレーザ発振器10を制御する。
このことにより、出力Pの制御が簡素化され、加工コストが上昇するのを抑制できる。
レーザ発振器10とレーザヘッド30とは光ファイバ20で接続されており、レーザ光LBは、光ファイバ20を通って、レーザ発振器10からレーザヘッド30に伝送される。
このように光ファイバ20を設けることで、レーザ発振器10から離れた位置に設置されたワーク200に対してレーザ加工を行うことが可能となる。このことにより、レーザ加工装置100の各部を配置する自由度が高められる。
<変形例>
図5は、本変形例に係るレーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートを示す。なお、図5及び以降に示す各図面において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図5に示すように、本変形例は、予熱ステップと加熱ステップとで、レーザ光LBのX方向への進行速度が異なる点で、実施形態1に示すレーザ加工方法と異なる。
具体的には、予熱ステップでは、レーザ光LBをY方向に進行速度V1で進行させながら、さらにレーザ光LBをY方向に沿って往復走査している。このときの進行速度V1は、加工ステップにおけるレーザ光LBの進行速度Vよりも低くなっている。
実施形態1で説明した進行速度Vが所定以下の場合、予熱ステップを実行して、レーザ光LBをY方向に往復走査したとしても、ワーク210への入熱量が大きく減少することはない。よって、レーザ切断では、ワーク200の厚さ方向に溶け残りが生じたりしないし、レーザ溶接では溶接部の溶け込み深さが不足したりしない。よって、レーザ加工不良の発生を抑制できる。
しかし、レーザ光LBの進行速度Vを高めていくと、予熱ステップの実行時に、前述したワーク200の領域210にレーザ光LBが十分に照射されず、領域210への入熱量が不足してしまうことがある。このようなことが起こると、レーザ切断での溶け残りやレーザ溶接での溶け込み深さの不足が生じてしまう。つまり、レーザ加工不良が発生してしまう。
このような不具合を回避するために、本変形例では、予熱ステップにおけるレーザ光LBの進行速度V1を、加工ステップにおけるレーザ光LBの進行速度Vよりも低くなるように設定している。つまり、コントローラ50は、レーザ光LBのY方向への進行速度がこのようになるように、マニピュレータ60の動作を制御している。
このようにすることで、予熱ステップの実行時に、領域210へのレーザ光LBの照射時間を確保でき、領域210に十分に入熱することができる。このことにより、レーザ加工不良の発生を抑制できる。
また、本変形例によれば、実施形態1に示す方法が奏するのと同様に、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制を図ることができる。
なお、通常、予熱ステップの処理時間は、加工ステップの処理時間よりも十分に短いため、予熱ステップで、レーザ光LBのY方向への進行速度を低下させたとしても、全体の加工タクトに与える影響は低く抑えられる。つまり、本変形例によれば、実施形態1に示す方法が奏するのと同様に、加工生産性の向上を図ることができる。
なお、説明の便宜上、図5では、レーザ光LBの進行速度が階段状に変化する例を示しているが、実際には、レーザヘッド30の移動中には、レーザヘッド30に慣性力が加わるため、予熱ステップから加工ステップへ、またその逆にステップが移行する際には、レーザ光LBの進行速度は、連続的に変化させるのが好ましい。
(実施形態2)
図6は、本実施形態に係るレーザ光の加工軌跡を示し、図7は、レーザ加工時の加工パラメータのタイムチャートを示す。
例えば、レーザ溶接では、ワーク200に所定の幅の溶接ビード(図示せず)を形成する。溶接ビードの幅は、ワーク200の形状や、外観に求められる要求仕様等に応じて様々である。所定以上の幅の溶接ビードを形成するために、前述のスキャニング溶接、例えば、レーザ光LBをY方向に進行させながら、レーザ光をさらにX方向に走査する溶接方法が多く採用される。また、レーザ溶接に限らず、レーザ切断等でも同様の方法が採られることがある。
例えば、図6に示すように、レーザ光LBが時間軸上でらせん状の軌跡を描くように走査される。なお、図6に示すレーザ光LBの軌跡は、レーザ光LBをY方向に一定の進行速度Vで進行させた場合の、ワーク200の表面でのレーザ光LBの加工軌跡に相当する。
ワーク200の表面に図6に示すレーザ光LBの加工軌跡を描くようにするためには、加工ステップにおいて、図2に示す第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ用いて、レーザ光LBを進行させる。
例えば、マニピュレータ60を動作させて、レーザヘッド30をY方向に一定の進行速度Vで移動させながら、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ動作させて、レーザ光LBが円形を描くように走査することで得られる。
また、この場合、予熱ステップにおいて、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ動作させて、レーザ光LBを往復走査させる。このときの動作周波数は、前述の最大動作周波数fmaxであることが好ましい。加工品質を大きく低下させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができるからである。ただし、第2ガルバノミラー42のみを最大動作周波数fmaxで動作させるようにしてもよい。
加工ステップにおいて、レーザ光LBを円形状に走査する場合の第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42の動作周波数をfopとする。図7に示すように、動作周波数fopは、予熱ステップでの最大動作周波数fmaxよりも小さくなるように設定される。レーザ光LBの走査幅が、前述の最大変位量Aよりも大きいためである。
一方、本実施形態における最大動作周波数fmaxは、以下の式(4)を満たすように設定されるのが好ましい。
max/2≧fop ・・・(4)
言い換えると、コントローラ50は、レーザ加工中に、式(4)の関係を満たすように、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42のそれぞれを駆動制御する。
加工ステップでの動作周波数fopが所定以上に高いと、変形例で説明したように、領域210での入熱不足が生じ、レーザ加工不良が発生するおそれがある。
一方、本実施形態によれば、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42の動作周波数を前述の関係に設定している。
このようにすることで、変形例に示したのと同様に、予熱ステップの実行時に、領域210へのレーザ光LBの照射時間を確保でき、領域210に十分に入熱することができる。このことにより、レーザ加工不良の発生を抑制できる。
また、本実施形態によれば、実施形態1に示す方法が奏するのと同様に、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上を図ることができる。
なお、本実施形態では、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42の動作周波数fopを同じ値としているが、それぞれ異なっていてもよい。その場合、式(4)に示すfopは、2つのガルバノミラー41,42を1つとしてみた場合の動作周波数に書き換えられる。予熱ステップで、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ動作させる場合の最大動作周波数fmaxについても同様である。
(その他の実施形態)
実施形態1,2及び変形例に示した各構成要素を適宜組み合わせて、新たな実施形態とすることもできる。例えば、実施形態2において、変形例に示すように、レーザ光LBの進行速度を変化させるようにしてもよい。
また、実施形態2では、レーザ光LBの加工軌跡がらせん状である例を示したが、特にこれに限定されず、三角波が連続したジグザグ状であってもよいし、正弦波状であってもよい。
また、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ用いて、リサージュ図形を描くようにレーザ光LBを走査してもよい。
また、予熱ステップにおいて、第1ガルバノミラー41及び第2ガルバノミラー42をそれぞれ用いて、レーザ光LBを往復走査させる場合、レーザ光LBの進行方向に沿ったガルバノミラーの動作周波数、例えば、図7に示す例では、第2ガルバノミラー42の動作周波数は、最大動作周波数fmaxかそれに近い値であることが好ましい。
なお、図1に示す例では、集光レンズ34は、レーザ光スキャナ40の前段に配置されていたが、レーザ光スキャナ40の後段、つまり、レーザ光スキャナ40とレーザヘッド30の光出射口との間に配置されていてもよい。
本開示のレーザ加工方法は、設備コストを大幅に上昇させることなく、スパッタ発生の抑制と加工生産性の向上とが図れるため、有用である。
10 レーザ発振器
20 光ファイバ
30 レーザヘッド
31 筐体
32 コリメーションレンズ
33 反射ミラー
34 集光レンズ
40 レーザ光スキャナ
41 第1ガルバノミラー
41a 第1ミラー
41b 第1回転軸
41c 第1駆動部
42 第2ガルバノミラー
42a 第2ミラー
42b 第2回転軸
42c 第2駆動部
200 ワーク

Claims (10)

  1. レーザ光を所定の方向に進行させながら、さらに前記所定の方向に沿って往復させるように走査してワークに照射することで、前記ワークの所定の領域を加熱する予熱ステップと、
    前記予熱ステップの後に、前記レーザ光を前記所定の方向に進行させながら、前記レーザ光を前記所定の領域に照射して、前記ワークをレーザ加工する加工ステップと、を少なくとも備え、
    前記予熱ステップと前記加工ステップとを交互に繰り返して実行することを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 請求項1に記載のレーザ加工方法において、
    前記予熱ステップでは、
    2fA/B≧V
    の関係を満たすことを特徴とするレーザ加工方法。
    ここで
    V(mm/sec):加工速度であって、前記加工ステップにおける前記レーザ光の進行速度
    A(mm):前記予熱ステップにおける前記レーザ光の前記所定の方向への最大変位量
    f(Hz):前記予熱ステップにおける前記レーザ光の走査周波数
    B:前記予熱ステップにおいて、前記所定の領域を所望の温度に加熱するのに必要なエネルギーに関係した値
  3. 請求項2に記載のレーザ加工方法において、
    前記予熱ステップにおける前記レーザ光の走査は、ガルバノミラーを用いて行われることを特徴とするレーザ加工方法。
  4. 請求項3に記載のレーザ加工方法において、
    前記加工ステップでは、前記ガルバノミラーを用いて、所定の軌跡を描くように前記レーザ光を進行させることを特徴とするレーザ加工方法。
  5. 請求項3または4に記載のレーザ加工方法において、
    前記予熱ステップの処理時間とこれに連続する前記加工ステップの処理時間との和を周期Tとし、前記予熱ステップにおいて、前記レーザ光を前記所定の方向に沿って前方に走査するときの前記ガルバノミラーによるレーザ光の位置変位量をA1とするとき、
    T=A1/Vの関係を満たすことを特徴とするレーザ加工方法。
  6. 請求項5に記載のレーザ加工方法において、
    前記予熱ステップでは、前記ガルバノミラーを最大動作周波数fmaxで動作させることを特徴とするレーザ加工方法。
  7. 請求項6に記載のレーザ加工方法において、
    前記加工ステップにおける前記ガルバノミラーの動作周波数をfopとするとき、
    max/2≧fopの関係を満たすことを特徴とするレーザ加工方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載のレーザ加工方法において、
    前記レーザ光の前記所定の方向への進行速度は、前記予熱ステップと前記加工ステップとで等しいことを特徴とするレーザ加工方法。
  9. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載のレーザ加工方法において、
    前記予熱ステップでは、前記レーザ光を前記所定の方向に所定の速度で進行させながら、前記レーザ光を前記所定の方向に沿って往復走査し、
    前記所定の速度は、前記加工ステップにおける前記レーザ光の前記所定の方向への進行速度よりも低いことを特徴とするレーザ加工方法。
  10. 請求項1ないし9のいずれか1項に記載のレーザ加工方法において、
    前記レーザ光の出力は、前記予熱ステップと前記加工ステップとで等しいことを特徴とするレーザ加工方法。
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