JP2021191840A - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 良好な接着性を有し、且つ耐熱性、電気特性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】 エポキシ変性ポリオレフィン(X)及び硬化剤(Q)を含有し、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)が、ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)とを構成原料として含み、前記ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの重量比[エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン]が2/98〜50/50であって、エポキシ変性ポリオレフィン(X)が下記要件(1)〜(3)のいずれも満たす熱硬化性樹脂組成物(Z)。【選択図】 なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。
近年、プリント配線板における伝送信号の高速化に伴い、信号の高周波化が進んでいる。
これに伴い、フレキシブルプリント配線板(FPC)には、高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。このような要求に対して、フレキシブルプリント配線板(FPC)に用いられる基材として、従来のポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、低誘電特性を有する液晶ポリマー(LCP)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などが提案されている。
しかしながら、低誘電特性を有する基材は、低極性のため、従来のエポキシ系接着剤やアクリル系接着剤を用いた場合、接着力が弱く、カバーレイフィルム、積層板等FPC用部材の作製が困難であった。また、エポキシ系接着剤やアクリル系接着剤は、低誘電特性に優れず、FPCの誘電特性を損なう。
一方、ポリオレフィン樹脂は、低誘電特性を有することが知られている。そこで、ポリオレフィン樹脂を用いたFPC用接着剤組成物が提案されている。たとえば、特許文献1では、FPCの電気特性を高めるために、オレフィン骨格を導入した変性ポリアミド接着剤組成物が提案されている。また、特許文献2では、芳香族オレフィンオリゴマー型改質剤とエポキシ樹脂を用いた接着剤及びフレキシブルプリント配線板カバーレイが提案されている。
特開2007−284515号公報 特開2007−63306号公報
しかしながら、特許文献1、2の組成物は、ポリイミドとの接着性は述べられているが、LCPなどの低誘電特性を有する基材との接着性が得られ難い。また、改質剤として使用されるおり、接着剤組成物を占めるオレフィン骨格が少ないため、接着剤の誘電特性が劣る。またLCP基材を用いる場合は、接着剤を用いずにLCPを溶融させ、銅箔と貼り合せて2層基板を作製する方法がある。しかしながらこの方法は、高温で貼り合せる機台が必要であったり、加工時にシワが入りやすく、歩留まりが低下したりするという問題がある。
すなわち、本発明は、ポリイミド、LCPなどの様々な樹脂基材と金属基材双方への良好な接着性を有し、且つ耐熱性、電気特性(低誘電特性)に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、エポキシ変性ポリオレフィン(X)及び硬化剤(Q)を含有し、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)が、ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)とを構成原料として含み、前記ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの重量比[エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン]が2/98〜50/50であって、エポキシ変性ポリオレフィン(X)が下記要件(1)〜(3)のいずれも満たす熱硬化性樹脂組成物(Z)である。
(1)エポキシ基含有量が、0.01〜2mmol/g
(2)数平均分子量(Mn)が1,000〜60,000
(3)α−オレフィン部分のアイソタクティシティーが1〜50%
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、以下の効果を奏する。
(1)ポットライフに優れる。
(2)接着強度に優れる。
(3)硬化物は、耐熱性、電気特性(低誘電特性)[誘電率、誘電正接]に優れる。
<ポリオレフィン(A)>
本発明におけるポリオレフィン(A)は、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとを構成単量体として含む。以下では、「炭素数3〜8のα−オレフィン」を「α−オレフィン」と記載することがある。
上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが挙げられる。なお、α−オレフィンは1種、2種又はそれ以上を併用してもよいが、1種が好ましい。
上記α−オレフィンのうち、硬化物の接着強度及び工業上の観点から、好ましいのはプロピレンである。
ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]は、2/98〜50/50であり、好ましくは5/95〜40/60であり、より好ましくは10/90〜30/70である。
重量比[エチレン/α−オレフィン]が、2/98未満の場合、接着強度に劣り、50/50を超えると耐熱性が劣る。
上記重量比[エチレン/α−オレフィン]は、例えば、1H−NMR(核磁気共鳴分光法)により算出できる。
上記ポリオレフィン(A)は、エチレン、α−オレフィン以外にその他の単量体を構成単量体としてもよい。その場合、ポリオレフィン(A)を構成する全単量体の重量に基づいて、その他の単量体の重量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。
上記その他の単量体としては、例えば、2−ブテン、イソブテン、炭素数[以下、Cと略記することがある]9〜30のα−オレフィン(1−デセン、1−ドデセン等)、α−オレフィン以外のC4〜30の不飽和単量体(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。
ポリオレフィン(A)の数平均分子量(Mn)は、接着強度および溶剤溶解性の観点から、好ましくは800〜50,000であり、より好ましくは1,500〜40,000、さらに好ましくは2,000〜30,000である。
また、(A)のうち、好ましいのはエチレン/プロピレン共重合体である。
本発明において、ポリオレフィン(A)のMnは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定することができる。
本発明におけるGPCによるMnの測定条件は以下のとおりである。
装置:高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ
[「AllianceGPCV2000」、Waters(株)製]
検出装置:屈折率検出器
溶媒:オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel10μm、MIXED−B2本直列[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度:135℃
ポリオレフィン(A)の炭素数1,000個当たりの二重結合数[ポリオレフィン(A)の分子末端及び/又は分子鎖中の炭素−炭素の二重結合数]は、後述のエポキシ基含有ビニルモノマー(B)との反応性及び生産性の観点から、好ましくは0.5〜20個であり、より好ましくは1.0〜18個であり、さらに好ましくは1.5〜15個である。
ここにおいて、該二重結合数は、ポリオレフィン(A)の1H−NMRのスペクトルから求めることができる。すなわち、該スペクトル中のピークを帰属し、ポリオレフィン(A)の4.5〜6ppmにおける二重結合由来の積分値及びポリオレフィン(A)由来の積分値から、ポリオレフィン(A)の二重結合数とポリオレフィン(A)の炭素数の相対値を求め、ポリオレフィン(A)の炭素1,000個当たりの該分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における二重結合数は該方法に従った。
ポリオレフィン(A)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーは、接着強度および溶剤溶解性の観点から、好ましくは1〜50%であり、より好ましくは5〜45%であり、さらに好ましくは10〜40%である。
上記ポリオレフィン(A)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーは、後述のエポキシ変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーに、そのまま反映される傾向がある。
上記アイソタクティシティーは、13C−NMR(核磁気共鳴分光法)を用いて算出することができる。一般的に、α−オレフィンがプロピレンの場合側鎖メチル基、α−オレフィンが1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンの場合主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基は、両隣(三連子、トリアッド)、その三連子の両隣(五連子、ペンタッド)、更にその五連子の両隣(七連子、ヘプタッド)程度まで立体配置(メソ又はラセモ)の影響を受け、異なる化学シフトにピークが観測されることが知られている。そのため、立体規則性の評価はペンタッドについて行うことが一般的であり、本発明におけるアイソタクティシティーも、ペンタッドの評価に基づいて算出する。
即ち、α−オレフィンがプロピレンの場合は13C−NMRで得られるプロピレン中の側鎖メチル基由来の炭素ピークについて、α−オレフィンが1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンの場合は13C−NMRで得られるα−オレフィン中の主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基由来の炭素ピークについて、ポリオレフィン(A)のα−オレフィン部分のペンタッド各ピーク強度を(H)、ペンタッドがメソ構造のみで形成されるアイソタクティックのポリオレフィン中のα−オレフィンがプロピレンの場合メチル基、α−オレフィンが1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンの場合は13C−NMRで得られるα−オレフィン中の主鎖メチン基隣の側鎖メチレン基由来のピーク強度を(Ha)とした場合、アイソタクティシティーは、以下の式で算出される。

アイソタクティシティー(%)=[(Ha)/Σ(H)]×100 (1)

但し、式中、Haはアイソタクティック(ペンタッドがメソ構造のみで形成される)の信号のピーク高さ、Hはペンタッドの各ピーク高さである。なお、後述のエポキシ変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーについても上記同様に測定できる。
本発明におけるアイソタクティシティーの測定条件は以下の通りである。
・装置 : 日本電子(株)製 ECZ400R
・測定モード : プロトンデカップリング法
・パルス幅 : 8μsec
・パルス繰り返し時間 : 4.6sec
・緩和時間 : 3.0sec
・積算回数 : 10,000回
・溶媒 : オルトジクロロベンゼン
・基準物質 : テトラメチルシラン
・サンプル濃度 : 10mg/mL
・測定温度 : 120℃
本発明におけるポリオレフィン(A)の製造方法は、例えば、高分子量(好ましくはMnが60,000〜400,000、より好ましくはMnが80,000〜250,000)ポリオレフィン(A0)を熱減成する方法が挙げられる。
熱減成法には、上記高分子量ポリオレフィン(A0)を(1)有機過酸化物不存在下、例えば300〜450℃で0.5〜10時間、加熱する方法、及び(2)有機過酸化物[例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン]存在下、通常180〜300℃で0.5〜10時間、加熱する方法等が含まれる。
これらのうち工業的な観点及び熱硬化性樹脂組成物(X)の改質特性の観点から、分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法が好ましい。
上記ポリオレフィン(A)を構成する単量体であるエチレンとα−オレフィンとの重量比[エチレン/α−オレフィン]は、高分子量ポリオレフィン(A0)中のこれらの単量体の重量比[エチレン/α−オレフィン]が、そのまま維持される傾向がある。
また、熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、炭素数1,000個当たりの二重結合数は、多くなる傾向がある。
さらに、高分子量ポリオレフィン(A0)のMnが小さい、熱減成温度が高い、又は熱減成時間が長いほど、ポリオレフィン(A)のMnは小さくなる傾向がある。
また、高分子量ポリオレフィン(A0)のアイソタクティシティーが大きいほど、ポリオレフィン(A)のアイソタクティシティーが大きい傾向がある。
なお、ポリオレフィン(A)は、1種単独でも、2種以上併用してもよい。
<エポキシ基含有ビニルモノマー(B)>
本発明におけるエポキシ基含有ビニル系モノマー(B)は、重合性不飽和基を1個以上有するC3〜30のエポキシドである。
(B)としては、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の炭素数6〜20のグリシジル基含有(メタ)アクリレート;4−ビニル−1,2−エポキシシクロヘキサン、5−ビニル−2,3−エポキシノルボルナン等の炭素数6〜20の脂環式エポキシ基含有ビニル系モノマー;N−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルフェニルメチル)アクリルアミド等の炭素数6〜20のグリシジル基含有アクリルアミド等が挙げられる。
上記(B)のうち、ポリオレフィン(A)との反応性の観点から好ましいのはグリシジル(メタ)クリレートである。
(B)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
<エポキシ変性ポリオレフィン(X)>
本発明におけるエポキシ変性ポリオレフィン(X)は、上記ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)とを構成原料として含む。
エポキシ変性ポリオレフィン(X)におけるポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)との重量比[ポリオレフィン(A)/エポキシ基含有ビニルモノマー(B)]は、硬化物の樹脂特性および接着強度の観点から、好ましくは80/20〜99.5/0.5、より好ましくは90/10〜99/1である。
好ましくは、エポキシ変性ポリオレフィン(X)は、上記ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)とを、ラジカル開始剤(C)の不存在下又は存在下で反応させてなる。
エポキシ変性ポリオレフィン(X)は、より好ましくは、ラジカル開始剤(C)の存在下で、上記ポリオレフィン(A)及びエポキシ基含有ビニルモノマー(B)に、必要により適当な有機溶媒[例えばC3〜18の炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、C3〜18のハロゲン化炭化水素(ジ−、トリ−、又はテトラクロロエタン、ジクロロブタン等)、C3〜18のケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジ−t−ブチルケトン等)、C3〜18のエーテル(エチル−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、ジオキサン等)]を加え反応させて製造することができる。
なお、上記ラジカル開始剤(C)は、公知のもの、例えば、アゾ開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等)、過酸化物開始剤(ジクミルパーオキサイド等)が挙げられる。
上記ラジカル開始剤(C)のうち、過酸化物開始剤が好ましい。
反応温度は、ポリオレフィン(A)、エポキシ基含有ビニルモノマー(B)の反応性及び生産性の観点から好ましくは100〜270℃、より好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
上記エポキシ変性ポリオレフィン(X)は、下記要件(1)〜(3)のいずれも満たす。
(1)エポキシ基含有量が、0.01〜2mmol/g
(2)数平均分子量(Mn)が1,000〜60,000
(3)α−オレフィン部分のアイソタクティシティーが1〜50%
要件(1):
エポキシ変性ポリオレフィン(X)のエポキシ基含有量[単位:mmol/g、以下数値のみを示すことがある]は、0.01〜2mmol/g(以下数値のみを示す)、好ましくは0.02〜1.8、より好ましくは0.03〜1.7である。
ここにおけるエポキシ基含有量は、公知の方法(例えば、エポキシ価)により測定できる。
エポキシ基含有量が0.01未満では熱硬化性樹脂組成物(Z)の樹脂特性が劣り、2を超えるとエポキシ変性ポリオレフィン(X)の生産性が劣る。
また、上記エポキシ基含量は、ポリオレフィン(A)の有する二重結合数、ポリオレフィン(A)の重量、エポキシ基含有ビニルモノマー(B)の種類、重量で適宜、調整可能である。
要件(2):
エポキシ変性ポリオレフィン(X)のMnは、1,000〜60,000、好ましくは2,000〜50,000、より好ましくは3,000〜40,000である。Mnが1,000未満では接着強度が劣り、60,000を超えると熱硬化性樹脂組成物(Z)の樹脂特性が劣る。エポキシ変性ポリオレフィン(X)のMnは、上述のポリオレフィン(A)のMnと同様にGPCで測定することができる。
また、上記エポキシ変性ポリオレフィン(X)のMnは、ポリオレフィン(A)のMn、エポキシ基含有ビニルモノマー(B)の種類、量、ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)との反応の制御により、適宜、調整可能である。
要件(3):
エポキシ変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーは、1〜50%であり、好ましくは5〜45%、より好ましくは10〜40%である。アイソタクティシティーが1%未満では接着強度が劣り、50%を超えるとエポキシ樹脂との相溶性に劣り、ポットライフが悪化する。
また、エポキシ変性ポリオレフィン(X)のα−オレフィン部分のアイソタクティシティーは、上記のとおり、ポリオレフィン(A)、高分子量ポリオレフィン(A0)のアイソタクティシティーにより、適宜、調整可能である。
<硬化剤(Q)>
本発明における硬化剤(Q)は、公知のもの、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、第2級アミン、第3級アミン(ジアザビシクロウンデセン等)、酸無水物、イミダゾール誘導体、有機酸ヒドラジド、ジシアンジアミド及びその誘導体、尿素誘導体が挙げられる等を用いることができる。
<熱硬化性樹脂組成物(Z)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)および硬化剤(Q)を含有する。
硬化剤(Q)の含有量は、ポットライフおよび工業上の観点から、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.06〜5重量部、とくに好ましくは0.07〜5重量部である。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、(X)成分および(Q)成分を含有することで、硬化後の電気特性(低誘電特性)が優れるとともに、LCPなどの低極性樹脂基材と金属基材との高い接着性を発現することができる。また、(X)成分および(Q)成分を含有することで、硬化後の電気特性が優れるとともに、LCPなどの低極性樹脂基材と金属基材との高いハンダ耐熱性を発現することができる。
さらに(X)成分および(Q)成分を含有することで、硬化後にLCPなどの低極性樹脂基材と金属基材との優れた接着性、ハンダ耐熱性および電気特性(低誘電特性)の全てを発現することができる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布、硬化後の接着剤塗膜(接着剤層)が優れた低誘電率特性を発現する。
<有機溶剤(P)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、さらに有機溶剤(P)を含有することができる。本発明で用いる有機溶剤(P)は、エポキシ変性ポリオレフィン(X)および硬化剤(Q)を溶解させるものであれば、特に限定されない。
具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノiso−ブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノiso−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノn−ブチルエーテ等のグリコールエーテル系溶剤等を使用することができ、これら1種または2種以上を併用することができる。
上記(P)のうち、好ましいのはケトン系溶媒である。
有機溶剤(P)は、エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、ポットライフおよび工業上の観点から、好ましくは10〜1000重量部、さらに好ましくは50〜800重量部、とくに好ましくは100〜500重量部である。
<エポキシ樹脂(Y)>
本発明の硬化性樹脂組成物(Z)は、さらにエポキシ樹脂(Y)を含有することができる。
エポキシ樹脂(Y)としては、前記(X)以外であって、分子中に2個以上のグリシジル基を有するものである。(Y)としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルパラアミノフェノール、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサノン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−
m−キシレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。
上記(Y)のうち、好ましいのは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂(Y)の含有量は、接着強度、ポットライフ及び硬化後の電気特性の観点から、エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、好ましくは5〜1000重量部、さらに好ましくは5〜500重量部、とくに好ましくは5〜200重量部である。
また、必要に応じて、(Y)以外に、反応性希釈剤(F16)[例えば、2−エチルヘキシルグリシルエーテル等のモノエポキシド]を併用してもよい。その場合、(Y)の重量100重量部に対して、(F16)は、好ましくは1〜10重量部である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、前記(X)、(Q)、(P)、(Y)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要によりさらに種々の添加剤(F)を含有させることができる。
添加剤(F)としては、難燃剤(F1)、粘着性付与剤(F2)、フィラー(F3)、シランカップリング剤(F4)、着色剤(F5)、充填剤(F6)、滑剤(F7)、帯電防止剤(F8)、分散剤(F9)、酸化防止剤(F10)、離型剤(F11)、抗菌剤(F12)、相溶化剤(F13)、及び紫外線吸収剤(F14)からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて難燃剤(F1)を配合しても良い。難燃剤としては、臭素系、リン系、窒素系、水酸化金属化合物等が挙げられる。中でも、リン系難燃剤が好ましく、リン酸エステル、例えば、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等、リン酸塩、例えばホスフィン酸アルミニウム等、ホスファゼン等の公知のリン系難燃剤を使用できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて粘着付与剤(F2)を配合しても良い。粘着性付与剤としては、ポリテルペン樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、スチレン樹脂および水添石油樹脂等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じてシリカなどのフィラー(F3)を配合しても良い。シリカを配合することにより耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シリカとしては一般に疎水性シリカと親水性シリカが知られているが、ここでは耐吸湿性を付与する上でジメチルジクロロシランやヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等で処理を行った疎水性シリカの方が良い。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じてシランカップリング剤(F4)を配合しても良い。シランカップリング剤を配合することにより金属への接着性や耐熱性の特性が向上するため非常に好ましい。シランカップリング剤としては特に限定されないが、不飽和基を有するもの、グリシジル基を有するもの、アミノ基を有するものなどが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点からγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランやβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有したシランカップリング剤がさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて着色剤(F5)を配合しても良い。着色剤としては、無機顔料[白色顔料、コバルト化合物、鉄化合物、硫化物等]、有機顔料[アゾ顔料、多環式顔料等]、染料[アゾ系、インジゴイド系、硫化系、アリザリン系、アクリジン系、チアゾール系、ニトロ系、アニリン系等]等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて充填剤(F6)を配合しても良い。充填剤としては、例えば無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、クレイ等)及び有機充填剤(尿素、ステアリン酸カルシウム等)等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて滑剤(F7)を配合しても良い。滑剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ブチル、オレイン酸アミド、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて帯電防止剤(F8)を配合しても良い。帯電防止剤としては、下記並びに米国特許第3,929,678及び4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性又は両性の界面活性剤が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて離型剤(F11)を配合しても良い。離型剤としては、脂肪酸(C8〜24)の低級(C1〜4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C2〜24)の多価(2価〜4価又はそれ以上)アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸(C2〜24)のグリコール(C2〜8)エステル(エチレングリコールモノステアレート等)、流動パラフィン等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて抗菌剤(F12)を配合しても良い。抗菌剤としては、安息香酸、ソルビン酸、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素、ニトリル(2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル等)、チオシアノ(メチレンビスチアノシアネート)、N−ハロアルキルチオイミド、銅剤(8−オキシキノリン銅等)、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリハロアリル、トリアゾール、有機窒素硫黄化合物(スラオフ39等)、4級アンモニウム化合物、ピリジン系化合物等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて相溶化剤(F13)を配合しても良い。相溶化剤としては、アミノ基、ヒドロキシル基及びポリオキシアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体等:例えば、特開平3−258850号公報に記載の重合体、また、特開平6−345927号公報に記載のスルホン酸基を有する変性ビニル重合体、ポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)には、必要に応じて紫外線吸収剤(F14)を配合しても良い。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン[2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等]、サリチレート[フェニルサリチレート等]、アクリレート[2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等]等が挙げられる。
前記添加剤(F)全体の含有量は、前記(X)と(Q)との合計重量に基づいて、例えば300重量%以下が好ましく、各添加剤(F)の機能発現及び工業上の観点からより好ましくは0.05〜250重量%、さらに好ましくは0.1〜200重量%である。
前記(X)と(Q)との合計重量に基づいて、各添加剤の使用量は、(F1)は、例えば200重量%以下、好ましくは10〜150重量%;(F2)は、例えば50重量%以下、好ましくは10〜40重量%;(F3)は、例えば50重量%以下、好ましくは10〜30重量%;(F4)は、例えば30重量%以下、好ましくは10〜20重量%;((F5)は、例えば5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%;(F6)は、例えば5重量%以下、好ましくは0.1〜1重量%;(F7)は、例えば8重量%以下、好ましくは1〜5重量%;(F8)は、例えば8重量%以下、好ましくは1〜3重量%;(F9)は、例えば1%重量以下、好ましくは0.1〜0.5重量%;(F10)は、例えば2重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%;(F11)は、例えば5重量%以下、好ましくは0.01〜3重量%;(F12)は、例えば25重量%以下、好ましくは0.5〜20重量%;(F13)は、例えば15重量%以下、好ましくは0.5〜10重量%;(F14)は、例えば2重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
上記(F1)〜(F14)の間で化合物が同一で重複する場合は、それぞれの化合物が該当する添加効果を奏する量をそのまま使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
<積層体>
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、種々の用途に使用できるが、好ましくは接着用、さらに好ましくは樹脂基材と、樹脂基材または金属基材との接着に用いられる。
また、本発明の積層体は、基材に熱硬化性樹脂組成物(Z)を積層したもの(基材/接着剤層の2層積層体)、または、さらに基材を貼り合わせたもの(基材/接着剤層/基材の3層積層体)である。ここで、接着剤層とは、本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)を基材に塗布し、乾燥させた後の接着剤組成物の層をいう。本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)を、常法に従い、各種基材に塗布、乾燥すること、およびさらに他の基材を積層することにより、本発明の積層体を得ることができる。
<基材>
本発明において基材とは、本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)を塗布、乾燥し、接着剤層を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、フィルム状樹脂等の樹脂基材、金属板や金属箔等の金属基材、紙類等を挙げることができる。
樹脂基材としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。好ましくはフィルム状樹脂(以下、基材フィルム層ともいう)である。
金属基材としては、回路基板に使用可能な任意の従来公知の導電性材料が使用可能である。素材としては、SUS、銅、アルミニウム、鉄、スチール、亜鉛、ニッケル等の各種金属、及びそれぞれの合金、めっき品、亜鉛やクロム化合物など他の金属で処理した金属等を例示することができる。好ましくは金属箔であり、より好ましくは銅箔である。金属箔の厚みは、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは、3μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上である。また、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは20μm以下ある。厚さが薄すぎる場合には、回路の充分な電気的性能が得られにくい場合があり、一方、厚さが厚すぎる場合には回路作製時の加工能率等が低下する場合がある。金属箔は、例えば、ロール状の形態で提供されている。
本発明のプリント配線板を製造する際に使用される金属箔の形態は特に限定されない。リボン状の形態の金属箔を用いる場合、その長さは特に限定されない。また、その幅も特に限定されないが、250〜500cm程度であるのが好ましい。
紙類として上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙等を例示することができる。また複合素材として、ガラスエポキシ等を例示することができる。
上記基材のうち、接着剤組成物との接着力、耐久性から、好ましいのはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、SUS鋼板、銅箔、アルミ箔、ガラスエポキシである。
<接着シート>
本発明の接着シートは、前記積層体を有する接着シートである。すなわち、接着シートは、前記積層体と離型基材とを、熱硬化性樹脂組成物(Z)[好ましくは(Z)の硬化物]を介して積層したものである。具体的な構成態様としては、積層体/接着剤層/離型基材、または離型基材/接着剤層/積層体/接着剤層/離型基材が挙げられる。離型基材を積層することで基材の保護層として機能する。また離型基材を使用することで、接着シートから離型基材を離型して、さらに別の基材に接着剤層を転写することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)を、公知の方法により、各種積層体に塗布、乾燥することにより、本発明の接着シートを得ることができる。また乾燥後、接着剤層に離型基材を貼付けると、基材への裏移りを起こすことなく巻き取りが可能になり操業性に優れるとともに、接着剤層が保護されることから保存性に優れ、使用も容易である。また離型基材に塗布、乾燥後、必要に応じて別の離型基材を貼付すれば、接着剤層そのものを他の基材に転写することも可能になる。
<離型基材>
離型基材としては、例えば、上質紙、クラフト紙、ロール紙、グラシン紙などの紙の両面に、クレー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの目止剤の塗布層を設け、さらにその各塗布層の上にシリコーン系、フッ素系、アルキド系の離型剤が塗布されたものが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の各種オレフィンフィルム単独、及びポリエチレンテレフタレート等のフィルム上に上記離型剤を塗布したものも挙げられる。離型基材と接着剤層との離型力、シリコーンが電気特性に悪影響を与える等の理由から、上質紙の両面にポリプロピレン目止処理しその上にアルキド系離型剤を用いたもの、またはポリエチレンテレフタレート上にアルキド系離型剤を用いたものが好ましい。
なお、本発明において熱硬化性樹脂組成物(Z)を基材上にコーティングする方法としては、例えば、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。もしくは、必要に応じて、プリント配線板構成材料である圧延銅箔、またはポリイミドフィルムに直接もしくは転写法で接着剤層を設けることもできる。乾燥後の接着剤層の厚みは、必要に応じて、適宜変更されるが、好ましくは5〜200μmの範囲である。接着フィルム厚が5μm未満では、接着強度が不十分である。200μm以上では乾燥が不十分で、残留溶剤が多くなり、プリント配線板製造のプレス時にフクレを生じるという問題点が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥後の残留溶剤率は1重量%以下が好ましい。1重量%超では、プリント配線板プレス時に残留溶剤が発泡して、フクレを生じるという傾向がある。
<プリント配線板>
本発明における「プリント配線板」は、導体回路を形成する金属箔と樹脂基材とから形成された積層体を構成要素として含むものである。プリント配線板は、例えば、金属張積層体を用いてサブトラクティブ法などの従来公知の方法により製造される。必要に応じて、金属箔によって形成された導体回路を部分的、或いは全面的にカバーフィルムやスクリーン印刷インキ等を用いて被覆した、いわゆるフレキシブル回路板(FPC)、フラットケーブル、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用の回路板などを総称している。
本発明のプリント配線板は、プリント配線板として採用され得る任意の積層構成とすることができる。例えば、基材フィルム層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の4層から構成されるプリント配線板とすることができる。また例えば、基材フィルム層、接着剤層、金属箔層、接着剤層、およびカバーフィルム層の5層から構成されるプリント配線板とすることができる。
さらに、必要に応じて、上記のプリント配線板を2つもしくは3つ以上積層した構成とすることもできる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)はプリント配線板の各接着剤層に好適に使用することが可能である。特に本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)を接着剤として使用すると、プリント配線板を構成する従来のポリイミド、ポリエステルフィルム、銅箔だけでなく、LCPなどの低極性の樹脂基材と高い接着性を有し、耐はんだリフロー性を得ることができ、接着剤層自信が低誘電特性に優れる。そのため、カバーレイフィルム、積層板、樹脂付き銅箔及びボンディングシートに用いる接着剤組成物として好適である。
本発明のプリント配線板において、基材フィルムとしては、従来からプリント配線板の基材として使用されている任意の樹脂フィルムが使用可能である。基材フィルムの樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂、及びフッ素系樹脂等を例示することができる。特に、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の低極性基材に対しても、優れた接着性を有する。
<カバーフィルム>
カバーフィルムとしては、プリント配線板用の絶縁フィルムとして従来公知の任意の絶縁フィルムが使用可能である。例えば、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリオレフィン系樹脂等の各種ポリマーから製造されるフィルムが使用可能である。より好ましくは、ポリイミドフィルムまたは液晶ポリマーフィルムである。
本発明のプリント配線板は、上述した各層の材料を用いる以外は、従来公知の任意のプ
ロセスを用いて製造することができる。
好ましい実施態様では、カバーフィルム層に接着剤層を積層した半製品(以下、「カバーフィルム側半製品」という)を製造する。他方、基材フィルム層に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側2層半製品」という)または基材フィルム層に接着剤層を積層し、その上に金属箔層を積層して所望の回路パターンを形成した半製品(以下、「基材フィルム側3層半製品」という)を製造する(以下、基材フィルム側2層半製品と基材フィルム側3層半製品とを合わせて「基材フィルム側半製品」という)。このようにして得られたカバーフィルム側半製品と、基材フィルム側半製品とを貼り合わせることにより、4層または5層のプリント配線板を得ることができる。
基材フィルム側半製品は、例えば、(1):前記金属箔に基材フィルムとなる樹脂の溶液を塗布し、塗膜を初期乾燥する工程、(2):(1)で得られた金属箔と初期乾燥塗膜との積層物を熱処理・乾燥する工程(以下、「熱処理・脱溶剤工程」という)を含む製造法により得られる。
金属箔層における回路の形成は、従来公知の方法を用いることができる。アクティブ法を用いてもよく、サブトラクティブ法を用いてもよい。好ましくは、サブトラクティブ法である。
得られた基材フィルム側半製品は、そのままカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後にカバーフィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
カバーフィルム側半製品は、例えば、カバーフィルムに接着剤を塗布して製造される。必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
得られたカバーフィルム側半製品は、そのまま基材側半製品との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
基材フィルム側半製品とカバーフィルム側半製品とは、それぞれ、例えば、ロールの形態で保管された後、貼り合わされて、プリント配線板が製造される。貼り合わせる方法としては、任意の方法が使用可能であり、例えば、プレスまたはロールなどを用いて貼り合わせることができる。また、加熱プレス、または加熱ロ−ル装置を使用するなどの方法により加熱を行いながら両者を貼り合わせることもできる。
補強材側半製品は、例えば、ポリイミドフィルムのように柔らかく巻き取り可能な補強材の場合、補強材に接着剤を塗布して製造されることが好適である。また、例えばSUS、アルミ等の金属板、ガラス繊維をエポキシ樹脂で硬化させた板等のように硬く巻き取りできない補強板の場合、予め離型基材に塗布した接着剤を転写塗布することによって製造されることが好適である。また、必要に応じて、塗布された接着剤における架橋反応を行うことができる。好ましい実施態様においては、接着剤層を半硬化させる。
得られた補強材側半製品は、そのままプリント配線板裏面との貼り合わせに使用されてもよく、また、離型フィルムを貼り合わせて保管した後に基材フィルム側半製品との貼り合わせに使用してもよい。
基材フィルム側半製品、カバーフィルム側半製品、補強剤側半製品はいずれも、本発明におけるプリント配線板用積層体である。
<硬化物>
本発明の硬化物は、前記熱硬化性組成物(Z)を硬化した硬化物である。すなわち、熱硬化性組成物(Z)を、例えば、塗布、注型したのち、必要により有機溶剤(P)を除去して、加熱(好ましくは90〜200℃、好ましくは1分間〜6時間)して得られる。
硬化物の形状は、用途により、適宜、選択できるが、塗膜(好ましくは厚さ5〜1000μm)、注型物が挙げられる。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を表す。実施例において、数平均分子量(Mn)、ポリオレフィンの二重結合数、アイソタクティシティー、酸価は、上記の方法で測定した。
<製造例1>
反応容器に、高分子量ポリオレフィン(A0−1)[商品名「Vistamaxx6202」、Exxonmobil社製、以下同じ。]1,000gを仕込み、液相に窒素通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら380℃で40分間の条件で、熱減成を行い、ポリオレフィン(A−1)を得た。
なお、ポリオレフィン(A−1)のMnは5,800、炭素1,000個当たりの分子末端及び/又は分子鎖中の二重結合数は5.4個、アイソタクティシティーは18%であった。
<製造例2〜8、比較製造例1〜2>
表1に従って高分子量ポリオレフィン(A0)、温度、時間を変更した以外は、製造例1と同様に熱減成を行い、各ポリオレフィン(A)を得た。結果を表1に示す。
Figure 2021191840
<製造例11>
反応容器に(A−1)100部を仕込み、窒素置換後、窒素通気下に180℃まで加熱昇温して溶解させた。
ここにグリシジルメタクリレート(B−1)2部を加え均一に混合したのち、ここにラジカル開始剤[ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」、日油(株)製](C−1)0.5部をキシレン5部に溶解させた溶液を10分間で滴下した後、180℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ。)でキシレン及び未反応のグリシジルメタクリレートを留去したのち反応容器から取り出した。
得られた内容物を120℃に加熱したキシレンに溶解させたのち、そのキシレン溶液をアセトン中に滴下し再沈殿して、沈殿物から溶剤を留去して、エポキシ変性ポリオレフィン(X−1)を得た。
なお、(X−1)は、エポキシ基含量0.15mmol/g、Mnは7,000、アイソタクティシティーは16%であった。
<製造例12〜23、比較製造例11〜12>
製造例11において、表2に従って、各使用原料を用いた以外は、製造例11と同様に反応を行い、各エポキシ変性ポリオレフィン(X)を得た。結果を表2に示す。
Figure 2021191840
<実施例1>
水冷還流凝縮器と撹拌機を備えた四つ口フラスコに、エポキシ変性ポリオレフィン(X−1)を100部、メチルシクロヘキサン(P−1)を200部、メチルエチルケトン(P−2)を200部仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温し、撹拌を1時間続けることで溶解した。50℃に冷却して得られた溶液に、エポキシ樹脂(Y−1)[YDCN−700−10]を10部、ジアザビシクロウンデセン(Q−1)を2部を配合し、熱硬化性樹脂組成物(Z−1)を得た。
<実施例2〜23、比較例1〜2>
実施例1において、表3にしたがった以外は、実施例1と同様にして、各熱硬化性樹脂組成物(Z)を得た。得られた各熱硬化性樹脂組成物(Z)について、ポットライフ、接着強度、ハンダ耐熱性、電気特性(周波数1MHz)を評価した結果を表1に示す。
(1)ポットライフ
配合してから23℃で24時間後の該溶液の安定性を指す。ポットライフ性が良好な場合は、溶液の粘度上昇が少なく長期間保存が可能であることを指し、ポットライフ性が不良な場合は、溶液の粘度が上昇(増粘)し、ひどい場合にはゲル化現象を起こし、基材への塗布が困難となり、長期間保存が不可能であることを指す。
<評価基準>
◎:塗布可能
○:粘度上昇があり、加工性に劣るが、塗布可能
△:粘度上昇、またはゲル化により塗布困難
×:流動性なく塗布不可
(2)剥離強度(接着強度)
熱硬化性樹脂組成物(Z)を、厚さ25μmのポリイミドフィルム[株式会社カネカ製、アピカル]に、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。
この様にして得られた接着性フィルム(Bステージ品)を18μmの圧延銅箔と貼り合わせた。貼り合わせは、圧延銅箔の光沢面が接着剤と接する様にして、160℃で40kgf/cm2の加圧下に30秒間プレスし、接着した。
次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、剥離強度評価用サンプルを得た。剥離強度は、25℃において、フィルム引き、引張速度50mm/minで90°剥離試験を行ない、剥離強度を測定した。この試験は常温での接着強度を示すものである。
<評価基準>
◎:1.5N/mm以上
○:1.0N/mm以上1.5N/mm未満
△:0.8N/mm以上1.0N/mm未満
×:0.8N/mm未満
(3)ハンダ耐熱性(耐熱性)
上記(2)と同じ方法でサンプルを作製し、2.5cm×2.5cmのサンプル片を120℃で30分乾燥処理を行い、各温度で溶融したハンダ浴に1分間フローし、膨れなどの外観変化を起こさない温度を測定した。
<評価基準>
◎:300℃以上
○:290℃以上300℃未満
△:270℃以上290℃未満
×:270℃未満
(4)誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)[電気特性]
熱硬化性樹脂組成物(Z)を厚さ50μmの離型フィルムに、乾燥後の厚みが30μmとなるように塗布し、130℃で3分乾燥した。
次いで140℃で4時間熱処理して硬化させて、離型フィルムから剥がして測定を行った。PRECISIONLCRmeterHP−4284Aを用いて、22℃58%RH下、周波数1MHzの条件で測定を行い、以下の通りに評価した。同じように、VECTORNETWORKANALYZERHP8510C、SYNTHESIZEDSWEEPERHP83651A、TESTSETHP8517Bを用いて、22℃58RH%下、周波数1GHzの条件で測定を行い、以下の通りに評価した。
<誘電率の評価基準>
◎:2.3以下
○:2.3を超え2.6以下
△:2.6を超え3.0以下
×:3.0を超える
<誘電正接の評価基準>
◎:0.005以下
○:0.005を超え0.01以下
△:0.01を超え0.02以下
×:0.02を超える
Figure 2021191840
表3中、各原料は以下のとおり。
(Y−1):o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
[YDCN−700−10、新日鉄住金化学社製]
(Y−2):ビスフェノールA型エポキシ樹脂[JER−828、三菱化学社製]
(Y−3):ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂[HP−7200、DIC社製]
(Y−4):ナフタレン型エポキシ樹脂:[HP−4700、DIC社製]
(P−1):メチルシクロヘキサノン
(P−2):メチルエチルケトン
(P−3):トルエン
(P−4):シクロヘキサン
(Q−1):ジアザビシクロウンデセン
表1〜3の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、比較のものと比べて、 ポットライフに優れ、接着強度に優れ、かつ硬化物は、耐熱性、電気特性に優れることが分かる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物(Z)は、ポットライフに優れ、接着強度に優れる。また、硬化物は、耐熱性、電気特性(低誘電特性)[誘電率、誘電正接]に優れる。このため、種々の用途に使用できるが、好ましくは接着用、さらに好ましくは樹脂基材と、樹脂基材または金属基材との接着用に好適に使用できる。

Claims (11)

  1. エポキシ変性ポリオレフィン(X)及び硬化剤(Q)を含有し、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)が、ポリオレフィン(A)とエポキシ基含有ビニルモノマー(B)とを構成原料として含み、前記ポリオレフィン(A)の構成単量体であるエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの重量比[エチレン/炭素数3〜8のα−オレフィン]が2/98〜50/50であって、エポキシ変性ポリオレフィン(X)が下記要件(1)〜(3)のいずれも満たす熱硬化性樹脂組成物(Z)。
    (1)エポキシ基含有量が、0.01〜2mmol/g
    (2)数平均分子量(Mn)が1,000〜60,000
    (3)α−オレフィン部分のアイソタクティシティーが1〜50%
  2. 前記ポリオレフィン(A)の数平均分子量が800〜50,000である請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ポリオレフィン(A)が、炭素数1,000個当たり0.5〜20個の二重結合を有する請求項1又は2記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、硬化剤(Q)を0.05〜5重量部含有する請求項1〜3のいずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. さらに、有機溶剤(P)を含有し、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、有機溶剤(P)を10〜1000重量部含有する請求項1〜4のいずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. さらに、エポキシ樹脂(Y)を含有し、前記エポキシ変性ポリオレフィン(X)100重量部に対して、エポキシ樹脂(Y)5〜1000重量部含有する請求項1〜5のいずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 樹脂基材と、樹脂基材または金属基材との接着に用いられる請求項1〜6のいずれか記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか記載の熱硬化性樹脂組成物(Z)によって接着された樹脂基材と、樹脂基材または金属基材の積層体。
  9. 請求項8に記載の積層体を有する接着シート。
  10. 請求項8に記載の積層体または請求項9に記載の接着シートを構成要素として含むプリント配線板。
  11. 請求項1〜6のいずれか記載の熱硬化性組成物(Z)を硬化した硬化物。
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