JP2021188628A - 締結部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】高温環境下で使用されても、優れた耐固着性が得られる締結部材および締結方法を提供する。【解決手段】実施形態の締結部材1は、ボルト10とナット40とからなる。ボルト10のねじ部13の表面、またはナット40のねじ部42の表面に、金属窒化物からなる硬化層20が形成されている。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、締結部材に関する。
火力発電所に備えられる発電機器には、高温で長時間の運転を行う機器がある。この高温機器の各部品においては、長期的に劣化せず、安定した性能を発揮することが求められる。
このような高温機器の定期検査において、ボルトやナットなどの締結部材どうしが固着して取り外せないことがある。この場合、例えば、締結部材に打撃や切断を加えて取り外される。
このような固着した締結部材の取り外し処理は、検査工期を延長させる。さらに、新たな締結部材が必要となるため、検査コストが増加する。
高温下での締結の場合、締結部材の固着の原因として次の原因が挙げられる。第1の原因として、締結状態が高温かつ高負荷応力の状態で長時間保持されることにより、一方の締結部材の表面に塗布した焼付き防止剤が他方の締結部材と反応して固着することが挙げられる。第2の原因として、締結部材の当接面において、高温酸化および腐食が生じ、酸化スケールが成長することによって固着することが挙げられる。第3の原因として、締結部材どうしが拡散接合することによって固着することが挙げられる。
上記したいずれの固着においても、締結部材間に本来存在する間隙が消滅する。そして、隙間の消滅後の固着面の親和性が高いほど、その固着面を摺動させるための静的摩擦係数が大きくなる。例えば、同じ部材どうしの圧着は、親和性が高く静的摩擦係数が大きい。
従来の締結部材において、接触する締結部材間における電解腐食を防止する技術や、接触する締結部材間における錆を防止する技術が検討されている。これらの技術は、室温における耐環境劣化を念頭に置いて検討されている。
特許第4532310号公報 米国特許出願公開第2015/0056041号明細書
上記したように、従来の締結部材では、使用環境が室温程度の温度を想定して、腐食による劣化対策がなされている。そのため、高温使用環境下における上記した固着の原因などは考慮されていない。
また、高温機器に使用される締結部材は、例えば、500℃を超える温度になる。このような高温環境下では、上記した固着の原因の他に、クリープなどの変形も重畳する。高温機器に使用される締結部材においては、このような複合的な環境の中で長時間劣化せず、固着を防止することが求められる。
本発明が解決しようとする課題は、高温環境下で使用されても、優れた耐固着性が得られる締結部材を提供するものである。
実施形態の締結部材は、雄ねじと雌ねじとからなる。前記雄ねじのねじ部の表面、または前記雌ねじのねじ部の表面に、金属窒化物からなる硬化層が形成されている。
実施の形態の締結部材の縦断面を示す図である。 実施の形態の締結部材によって被締結部材を締結した状態の縦断面を示す図である。 実施の形態の締結部材によって被締結部材を締結した状態の縦断面を示す図である。 実施の形態の締結部材によって被締結部材を締結した状態の縦断面を示す図である。 本実施の形態の締結部材の製造方法の工程を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態の締結部材1の縦断面を示す図である。ここで、図1には、締結部材1であるボルト10が示されている。
締結部材1は、ボルトとナット、またはボルトとこのボルトと螺合するねじ穴で構成される。ここで、ボルトは雄ねじとして機能し、ナットおよびねじ穴は雌ねじとして機能する。
まず、締結部材1であるボルト10について説明する。
図1に示すように、ボルト10は、頭部11と、円筒部12と、ねじ部13とを備える。
少なくともねじ部13の表面には、硬化層20が形成されている。すなわち、硬化層20は、ねじ部13を構成するボルト10の基材の表面に形成されている。
ここでは、ねじ部13以外にも、円筒部12の表面12a、および頭部11の裏面(座面)11aに硬化層20を形成した一例を示している。
ボルト10は、フェライト系耐熱鋼、Ni基超合金、オーステナイト系耐熱鋼などで構成される。ボルト10をこれらの材料で構成するのは、高温強度に優れ、高温に曝される締結部における緩みが比較的少ないからである。
フェライト系耐熱鋼としては、例えば、9〜12Cr−Mo耐熱鋼、Cr−Mo耐熱鋼、Cr−Mo−V耐熱鋼などが挙げられる。なお、9〜12Cr−Mo耐熱鋼は、Crを9〜12質量%の範囲で含むことを意味する。
Ni基超合金としては、例えば、INCONEL718、UDIMET520、WASPALLOYなどが挙げられる。
オーステナイト系耐熱鋼としては、例えば、SUS304、SUS316、SUS310などが挙げられる。
硬化層20は、締結部材1とは異なる材料で構成される。また、硬化層20は、高温にて不活性であり、耐酸化特性および耐摩耗性に優れる材料で構成される。具体的には、硬化層20は、窒素と金属の化合物である金属窒化物で構成される。金属窒化物は、高温にて不活性であり、耐酸化特性に優れる。また、金属窒化物は、硬く耐摩耗性に優れる。
硬化層20は、金属窒化物の中でも、耐熱性、耐酸化性および耐摩耗性に優れるTi系窒化物、Cr系窒化物で形成されることが好ましい。
Ti系窒化物としては、例えば、TiN、TiAlN、TiCNなどが挙げられる。Cr系窒化物としては、例えば、CrN、CrAlNなどが挙げられる。硬化層20として、Ti系窒化物、Cr系窒化物の中でも、TiAlNやCrNがより適している。
硬化層20の膜厚は、2μm〜10μmであることが好ましい。硬化層20の膜厚をこの範囲とすることで、優れた耐固着性が得られる。硬化層20の膜厚が10μmを超える場合、耐固着性は得られるが、硬化層20を形成する施工時間とコストが増大する。
ここで、耐固着性とは、締結部材の取り外しの際、締結部材どうしが固着しておらず、通常のスパナなどの工具で緩めることができる特性をいう。優れた耐固着性が得られる場合とは、締結部材の取り外しの際、締結部材どうしが固着しておらず、通常のスパナなどの工具で、例えば、700Nm以下の緩めトルクで容易に緩めることができる場合をいう。
緩めトルクが700Nm以下の場合、検査現場において使用する工具類によって締結部材を正常に取り外すことができる。なお、緩めトルクが、例えば800Nmを超える場合、締結部材を正常に取り外すことができない。この場合、締結部材に打撃を加える、または締結部材を切断することなどによって、締結部材は取り外される。
硬化層20は、例えば、物理蒸着法(PVD法:Physical Vapor Deposition)によって形成される。硬化層20は、ねじ部13のねじ山の表面にねじ山形状に形成される。PVD法によって硬化層20を形成することで、ねじ部13の表面に均一に硬化層20を形成することができる。すなわち、PVD法によって、硬化層20は、ねじ部13のねじ山の表面の全体に亘って均一な厚さに形成される。
ここで、PVD法とは、硬化層20を形成する物質を高温にして蒸発させ、ボルト10に吸着させ、ボルト10の表面に物質の固体被膜(硬化層20)を形成する方法である。
硬化層20の表面硬さは、1500HV(ビッカース硬さ)以上であることが好ましい。この表面硬さの範囲では、表面において十分な硬さを有し、優れた耐摩耗性が得られる。
硬化層20の表面における酸化速度は、1×10−6mm/h以下であることが好ましい。ここでの酸化は、高温大気雰囲気下における酸化を想定しており、酸化速度は、硬化層20の表面に形成する酸化スケールによる太り量の時間変化を表す。酸化速度の測定方法は、JIS Z2290「金属材料の高温腐食試験方法」に準拠する。
この酸化速度の範囲では、優れた耐酸化特性を有し、硬化層20の表面における酸化スケールの生成による固着を抑制できる。
ここで、ボルト10と螺合する、ナットやねじ穴が形成された被締結部材は、例えば、上記したボルト10と同じ材料で構成されても、ボルト10の材料と異なる材料で構成されてもよい。ボルト10を構成する材料およびボルト10と締結される締結部材を構成する材料は、機械的強度を考慮してそれぞれ決定される。
硬化層20の摩擦係数は、0.3以下であることが好ましい。ここでの摩擦係数は、室温における無潤滑ボールオンディスク試験によって得られる動摩擦係数である。摩擦係数の測定方法は、JIS R1613「ファインセラミックスのボールオンディスク法による摩耗試験方法」に準拠する。
この摩擦係数の範囲では、摩擦係数が小さいため、ボルトを緩める際の緩めトルクを低く抑えることができる。
図2、図3および図4は、実施の形態の締結部材1によって被締結部材30、31を締結した状態の縦断面を示す図である。
ここで、図2および図3には、締結部材1であるボルト10と、締結部材1であるナット40を締結した状態が示されている。図4には、被締結部材30に形成された、締結部材1として機能するねじ穴50に、締結部材1であるボルト10を締結した状態が示されている。
締結部材1は、例えば、ボルト10とナット40、またはボルト10とねじ穴50で構成される。なお、ボルト10として、例えば、図1に示すような、一端側が頭部11を有し、他端側にナット40と螺合するねじ部13を有する形態がある。また、ボルト10として、後述するが、両端にナット40と螺合するねじ部を有する形態がある。
まず、締結部材1がボルト10とナット40で構成される場合について、図2を参照して説明する。
図2に示すように、ボルト10は、一端側に頭部11を有し、他端側にねじ部13を有する。被締結部材30、31には、ボルト10の円筒部12およびねじ部13を通すための貫通孔30a、31aが形成されている。ナット40は、貫通孔30a、31aを貫通したねじ部13に螺合されている。
ここで、ナット40は、硬化層20が形成されたねじ部13に直接螺合されてもよい。また、ナット40は、硬化層20が形成されたねじ部13に焼付き防止剤を介して螺合されてもよい。
焼付き防止剤を使用する場合には、例えば、ナット40に螺合するねじ部13の硬化層20の表面に焼付き防止剤を塗布した後、ボルト10は、ナット40と螺合される。なお、焼付き防止剤は、ナット40のねじ穴41の内周に形成されたねじ部42に塗布されてもよい。
焼付き防止剤を使用する場合、ボルト10とナット40との間に焼付き防止剤からなる層が形成される。
ここで、焼付き防止剤は、例えば、酸化物などの微細粒子と水分を含んだペースト状の塗布材である。焼付き防止剤としては、例えば、ネバーシーズ標準グレード(Bostik社製)、モリコート(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル社製)、ロックタイト(HENKEL社製)などが挙げられる。
焼付き防止剤は、初期締結時の潤滑剤としての役割と、高温運転後の固着防止剤としての役割がある。なお、焼付き防止剤の使用は必須ではない。
ここで、締結部材1の締結は、トルクレンチなどを用いて行われる。締結の際、ボルト10は加熱されてもよい。この際、例えば、ボルト10の中心軸に沿って形成された中心孔にボルトヒータを設置し、ボルト10を加熱する。
締結の際ボルト10を加熱することで、ボルト10は、熱膨張して軸方向に伸長される。締結後ボルトヒータによる加熱を停止し、ボルト10が冷えて軸方向に収縮することで、高い締め付け力が得られる。
また、締結部材1を一定時間運用後、締結部材1を緩める際、締結部材1を締結する方法と同様の方法が適用される。すなわち、締結部材1の取り外しは、スパナなどの工具を用いて行われる。また、ボルト10を加熱して締結した場合には、ボルトヒータによってボルト10を加熱した後、締結部材1を緩める。
次に、締結部材1がボルト10とナット40A、40Bで構成される場合について、図3を参照して説明する。
図3に示すように、ボルト10は、ねじ部60A、60Bと、円筒部61と、頭部62A、62Bを備える。ねじ部60A、60Bは、ボルト10の両端に備えられている。頭部62A、62Bは、ねじ部60A、60Bの軸方向の端面から軸方向外側に突出している。
頭部62A、62Bは、例えば、ボルト10をナットと螺合する際の作用部として機能する。また、頭部62A、62Bは、例えば、ボルト10をナットと螺合する際、ボルト10の回転を防止するための支持部として機能する。
なお、頭部62A、62Bにおけるボルト10の軸方向に垂直な断面形状は、例えば、六角形などである。頭部62A、62Bのサイズは、ねじ部60A、60Bの外縁の内部に収まるサイズに構成されている。
ボルト10のねじ部60A、60Bの表面には、硬化層20が形成されている。
なお、ここでは、円筒部61にねじ部を備えない一例を示しているが、ボルト10の円筒部61にねじ部を備えていてもよい。すなわち、ボルト10の側面に軸方向に亘ってねじ部が形成されていてもよい。
被締結部材30、31には、ボルト10を通すための貫通孔30a、31aが形成されている。ボルト10は、貫通孔30a、31aを貫通すように配置されている。そして、ねじ部60Aは、ナット40Aに螺合され、ねじ部60Bは、ナット40Bに螺合されている。
なお、ナット40A、40Bは、硬化層20が形成されたねじ部60A、60Bに直接螺合されてもよい。また、ナット40A、40Bは、硬化層20が形成されたねじ部60A、60Bに焼付き防止剤を介して螺合されてもよい。
次に、締結部材1がボルト10と被締結部材30に形成されたねじ穴50で構成される場合について説明する。
図4に示すように、被締結部材31には、ボルト10の円筒部12およびねじ部13を通すための貫通孔31aが形成されている。被締結部材30には、ねじ穴50が形成されている。ねじ穴50の内周には、硬化層20が形成されたねじ部13と螺合するねじ部51が形成されている。
ここで、硬化層20が形成されたねじ部13は、被締結部材30のねじ穴50に直接螺合されてもよい。また、硬化層20が形成されたねじ部13は、被締結部材30のねじ穴50に焼付き防止剤を介して螺合されてもよい。
焼付き防止剤は、ボルト10におけるねじ部13の硬化層20の表面に塗布されてもよいし、被締結部材30におけるねじ穴50のねじ部51の表面に塗布されてもよい。焼付き防止剤を使用する場合、ボルト10とねじ穴50との間に焼付き防止剤からなる層が形成される。なお、焼付き防止剤の使用は必須ではない。
なお、締結部材1がボルト10とねじ穴50で構成される場合においても、締結部材1の締結方法や締結部材1を緩める方法は、前述したボルト10とナット40の場合におけるそれらと同様である。
ここで、本実施の形態の締結部材1は、例えば、火力発電所に備えられる高温で長時間の運転を行う発電機器の締結に使用される。締結部材1は、例えば、500℃を超える温度になる発電機器の締結に使用される。そのため、締結部材1も、500℃を超える温度になる。
発電機器としては、例えば、高温の作動流体の流量を調整する制御バルブの構成部材の締結、高温となるタービン部材の締結などに使用される。なお、締結部材1が使用される機器は、特に限定されるものではなく、締結部材1は、例えば、500℃を超える高温機器の構成部材の締結に使用される。
ここで、前述したように、締結部材どうしが固着する際、締結部材間に本来存在する間隙が消滅する。そして、隙間の消滅後の固着面の親和性が高いほど、その固着面を摺動させるための静的摩擦係数が大きくなる。例えば、同じ部材どうしの圧着は、親和性が高く静的摩擦係数が大きい。
本実施の形態では、ボルト10のねじ部13の表面に硬化層20を形成することで、ボルト10のねじ部13とナット40のねじ部42との間、またはボルト10のねじ部13と被締結部材30のねじ穴50との間に、高温でも安定で劣化しない、異材からなる硬化層20をムラなく均一に形成することができる。
これによって、高温環境下で使用されても、優れた耐固着性が得られる締結部材1を提供することができる。このように、本実施の形態の締結部材1は、優れた耐固着性を有するため、高温環境下で使用されても、締結部材1どうしの固着が防止できる。これによって、固着した締結部材を取り外すための処理が不要となり、検査工期の延長は生じない。さらに、新たな締結部材の準備も不要となるため、検査コストが削減できる。
なお、ここでは、硬化層20は、雄ねじであるボルト10のねじ部13の表面に形成される一例を示したが、この構成に限られるものではない。例えば、硬化層20は、雄ねじのねじ部の表面ではなく、雌ねじのねじ部の表面に形成されてもよい。すなわち、硬化層20は、雄ねじのねじ部の表面、雌ねじのねじ部の表面のいずれか一方に形成されていればよい。
(締結部材1の製造方法)
次に、本実施の形態の締結部材1の製造方法について説明する。
図5は、本実施の形態の締結部材1の製造方法の工程を示す図である。
ここでは、ボルト10のねじ部13の表面に硬化層20を形成する方法について、図5を参照して説明する。硬化層20は、以下の工程で、PVD法によって形成される。
まず、硬化層20を形成するボルト10を準備する(締結部材の準備工程:ステップS1)。
続いて、ボルト10を洗浄し、表面の汚れを十分に除去する(洗浄工程:ステップS2)。
続いて、真空または減圧雰囲気としたチャンバー内にボルト10を装填する。そして、ボルト10を自転または公転させながら、硬化層20を形成する物質を気化させ、ボルト10の表面にその物質を吸着させる。これによって、ボルト10のねじ部13の表面に硬化層20が形成される(硬化層形成工程:ステップS3)。
この際、硬化層20の膜厚は、気化した物質をボルト10の表面に吸着させる時間によって調整される。なお、ボルト10は、円筒形状であるため、PVD法によって均一な硬化層20を形成することに適している。
なお、ナット40のねじ部42の表面または被締結部材30に形成されたねじ穴50のねじ部51の表面に硬化層20を形成する工程も、上記したボルト10のねじ部13の表面に硬化層20を形成する工程と同様である。
(締結試験)
次に、本実施の形態の締結部材1が優れた耐固着性を有することを示すため、締結試験を行った。
締結試験において、締結部材1としてボルトおよびナットを使用した。
ねじ部の直径が25.4mm(1インチ)のボルトを使用した。なお、ナットは、ボルトのねじ部と締結可能なねじ部を有するものを使用した。
各条件で締結試験を行うため、ボルトおよびナットからなる試料部材を20セット準備した(試料部材1〜試験部材20)。
各試料部材を構成する材料および硬化層を構成する材料は、表1に示されている。また、表1には、使用した焼付き防止剤も示している。
なお、表1において、硬化層材の「なし」とは、ボルトのねじ部の表面に硬化層を形成せずに、ボルトとナットを螺合したことを意味する。また、焼付き防止剤の「なし」とは、焼付き防止剤を使用せずに、ボルトとナットを直接螺合したことを意味する。
なお、試料部材1〜試料部材10は、本実施の形態の締結部材1に相当し、試料部材11〜試料部材20は、本実施の形態の範囲にない、比較例である。
Figure 2021188628
ここで、硬化層は、前述した締結部材1の製造方法に基づいて形成された。すなわち、まず、ボルトおよびナットを洗浄した。続いて、PVD法によって、各硬化層を構成する材料を気化してボルトのねじ部の表面に吸着させた。すべて試料部材における硬化層の膜厚を2μm〜10μmとした。
焼付き防止剤を使用する試料部材においては、ボルトのねじ部の表面に焼付き防止剤を塗布した後、ナットと螺合した。
各試料部材において、ナットを固定し、トルクレンチを使用してボルトをナット螺合した。この際の締結トルクを412Nmとした。トルクレンチは、デジタルトルクメータ付きのトルクレンチを使用した。
ボルトをナット螺合した各試料部材に対して、566℃の温度で1000時間の時効処理を行った。時効処理は、大気雰囲気下で行われた。
時効処理後、各試料部材の緩め作業を行った。この際、ナットを固定し、トルクレンチを使用してボルトを緩めた。そして、トルクレンチにおいて緩めトルクを計測した。各試料部材の緩めトルク値(Nm)は、表1に示されている。
また、表1には、硬化層の表面硬さ、硬化層の表面における酸化速度、硬化層の動摩擦係数も示されている。
表1に示すように、試料部材1〜試料部材10における緩めトルクは、試料部材11〜試料部材20の緩めトルクよりも小さい。試料部材1〜試料部材10における緩めトルクは、いずれも700Nmを下回っている。なお、緩めトルクが700Nm以下であることが好ましい理由は、前述したとおりである。
すなわち、緩めトルクを小さくするためには、硬化層を形成する材料として、Ti系窒化物であるTiAlNおよびCr系窒化物であるCrNを使用することが有効あることがわかる。
試料部材1〜試料部材10において、試料部材を構成するいずれの材料(11Cr−Mo耐熱鋼、INCONEL718)においても、TiAlNまたはCrNからなる硬化層を備えることで、緩めトルクの低減の効果が得られた。
また、試料部材15および試料部材20の結果から、高温でも安定な材料で試料部材を構成した仕様であっても、硬化層を備えない場合や硬化層がTiCからなる場合には、緩めトルクの低減の効果が得られないことがわかる。
また、試料部材1〜試料部材10において、焼付き防止剤を使用しない場合においても、緩めトルクの低減の効果が得られた。これは、表面に形成された硬化層が、締結部材どうしの接触を防ぐ働きをする焼付き防止剤と同等以上の効果を発揮したためであると考えられる。
試料部材1〜試料部材10において焼付き防止剤を使用しない場合でも、焼付き防止剤を塗布した場合と同等以上の効果を発揮したのは、次のことが原因と考えられる。まず、焼付き防止剤を締結部表面に対して完全にムラなく塗布することが困難である。次に、焼付き防止剤は、高温において締結部材と反応して劣化する場合があることに対し、硬化層は、締結部表面に均一に形成され高温でも安定である。
締結試験の結果から、本実施の形態の締結部材1においては、500℃を超える温度で使用された場合でも、優れた耐固着性が得られた。
以上説明した実施形態によれば、高温環境下で使用されても、優れた耐固着性を得ることが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…締結部材、10…ボルト、11、62A、62B…頭部、11a…裏面、12、61…円筒部、12a…表面、13…ねじ部、20…硬化層、30、31…被締結部材、30a、31a…貫通孔、40、40A、40B…ナット、41、50…ねじ穴、42、51、60A、60B…ねじ部。

Claims (7)

  1. 雄ねじと雌ねじとからなる締結部材であって、
    前記雄ねじのねじ部の表面、または前記雌ねじのねじ部の表面に、金属窒化物からなる硬化層が形成されていることを特徴とする締結部材。
  2. 前記金属窒化物が、Ti系窒化物またはCr系窒化物で構成されていることを特徴とする請求項1記載の締結部材。
  3. 前記締結部材が、500℃以上の温度下で使用されることを特徴とする請求項1または2記載の締結部材。
  4. 前記締結部材が、フェライト系耐熱鋼、Ni基超合金またはオーステナイト系耐熱鋼で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の締結部材。
  5. 前記硬化層の表面硬さが、1500HV以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の締結部材。
  6. 前記硬化層の表面における酸化速度が、1×10−6mm/h以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の締結部材。
  7. 室温における無潤滑ボールオンディスク試験によって得られる、前記硬化層の動摩擦係数が、0.3以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の締結部材。
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