JP2021187958A - 筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具 - Google Patents

筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具 Download PDF

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Abstract

【課題】 インキ吐出安定性に優れ、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制すると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、良好な筆跡を形成できる筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供する。【解決手段】 少なくとも着色剤と、水と、特定構造のリン酸エステル系界面活性剤とからなる筆記具用水性インキ組成物とし、また、前記リン酸エステル系界面活性剤における、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基の炭素数を12〜20とし、前記リン酸エステル系界面活性剤を水性インキ組成物全量中に0.1〜20質量%の範囲で添加し、さらに、前記筆記具用水性インキ組成物の表面張力を20〜60mN/mとし、前記筆記具用水性インキ組成物を収容した筆記具とする。【選択図】 なし

Description

本発明は筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。さらに詳細には、良好なインキ吐出安定性を有しながらも、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制する筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。
従来より、水を主溶媒としたインキ(水性インキ)が知られ、低臭気で安全性が高いことから盛んに利用されている。また、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられてなるペン芯のようなインキ流量調節体を介して、ペン先へインキを誘導する筆記具(直液式筆記具という)が広く利用されている。
通常ペン芯は合成樹脂から成形されるが、合成樹脂の表面は相対的に疎水性であるため、直液式筆記具に水性インキを適用する場合には、疎水性表面への親和性を付与するためにインキの表面張力を調整してペン芯に対する濡れ性(親和性)を向上させる必要がある。インキの表面張力が高いとペン芯に対する濡れ性が悪く、ペン先からインキが安定して吐出せずカスレや線飛び等の筆記不良を生じることがある。そこで、各種添加剤を用いてインキの表面張力を下げ、ペン先からのインキ吐出安定性を高めたインキ組成物が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
特許文献1には、水溶性染料と、HLBが18.0〜20.0の非イオン系界面活性剤と、水とより少なくともなる水性インキ組成物が開示されている。
また、特許文献2には、着色剤含有の水性インキ組成物に、水溶性シリコーンオイルと脂肪酸塩を併用させて含有させてなる水性ボールペン用インキ組成物が開示されている。
また、特許文献3には、染料と、水及び多価アルコールとからなる溶剤と、フッ素系界面活性剤と、シリコーン系界面活性剤を含んでなる水性ボールペン用インキが開示されている。
しかしながら、インキの表面張力を下げてインキ吐出安定性を高めた場合、添加剤の種類や量によっては、紙面への浸透性が極端に高まり、筆跡に滲みや裏抜けが発生することがあった。さらに、ペン芯の櫛溝間にインキが円滑に流入保持されるようになり、インキの保持力(貯溜性)は向上するものの、櫛溝間に保持されたインキは筆記具のインキ貯蔵部に十分に回収されず、温度変化やキャップの着脱によって筆記具内部の圧力変化が繰り返されると、ペン先からインキ漏れ(インキのボタ落ち)が生じてしまうという問題があった。
特開平3−79682号公報 特開平10−212444号公報 特開2004−346181号公報
本発明は、インキ吐出安定性に優れながらも、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制する筆記具用水性インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供しようとするものである。
本発明は、少なくとも着色剤と、水と、下記式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤とからなる筆記具用水性インキ組成物を要件とする。
Figure 2021187958
(式中、Rは、炭素数が10〜24の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基を示す。また、Xはアルカリ金属原子を示し、Yはハロゲン原子を示す。)
さらには、Rは、炭素数が12〜20の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であること、前記リン酸エステル系界面活性剤が、水性インキ組成物全量中に0.1〜20質量%の範囲で添加されてなること、表面張力が20〜60mN/mであることを要件とする。
さらには、前記筆記具用水性インキ組成物を収容してなる筆記具であること、前記筆記具が、ペン先と、インキ充填機構と、インキ供給機構とを備え、前記インキ充填機構に前記筆記具用水性インキ組成物を直に充填し、前記インキ供給機構が、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備える直液式筆記具であること、前記ペン先がボールペンチップであること、前記筆記具が、キャップを備えてなることを要件とする。
本発明は、特定構造のリン酸エステル系界面活性剤を含有した筆記具用水性インキ組成物であって、ペン先や、インキ流量調節体等の筆記具部材に対する濡れ性が良好であり、インキ吐出安定性に優れるため、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制すると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、良好な筆跡を形成できる筆記具用水性インキ組成物を提供できる。
さらに、本発明の水性インキ組成物は潤滑性に優れ、ボールペン形態の筆記具に適用した場合には、ボール受け座の摩耗が抑制され、良好な筆記感を有する筆記具を提供できる。
また、本発明の水性インキ組成物を、インキ流量調節体としてペン芯を備えた筆記具に適用した場合には、温度変化やキャップ着脱が繰り返されることによって筆記具内部の圧力変化が生じた際にも、ペン芯の櫛溝部におけるインキ貯溜性とインキ充填機構のインキ貯蔵部へのインキ回収性が共に良好であり、ペン先からインキがボタ落ちし難い良好なペン芯性能を有する筆記具を提供できる。
本発明の筆記具用水性インキ組成物(以下、「水性インキ組成物」、「インキ組成物」、又は「インキ」と表すことがある)は、少なくとも着色剤と、水と、上記式(1)で示される特定構造のリン酸エステル系界面活性剤とからなる。以下に、本発明の水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
着色剤としては、水性系媒体に溶解又は分散可能な、染料又は顔料であれば特に限定されるものではない。
染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等が挙げられる。
酸性染料として具体的には、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等を例示できる。
塩基性染料として具体的には、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、ローダミンB(C.I.45170)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等を例示できる。
直接染料として具体的には、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファーストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等を例示できる。
顔料としては、無機顔料、有機顔料、光輝性顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、ルチル型又はアナターゼ型等の酸化チタン、酸化亜鉛、鉄黒、黄色酸化鉄、弁柄、及び群青等を例示できる。
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、フタロン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、金属錯体系顔料等を例示できる。
また、顔料を予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水性媒体中に分散させた水分散顔料等を用いることもできる。
水分散顔料として具体的には、C.I.Pigment Blue 15:3B〔山陽色素(株)製、製品名:Sandye Super Blue GLL−E(固形分:24%)〕、C.I.Pigment Red 146〔山陽色素(株)製、製品名:Sandye Super Pink FBL(固形分:21.5%)〕、C.I.Pigment Yellow 81〔大日精化工業(株)製、製品名:TC Yellow FG(固形分:約30%)〕、C.I.Pigment Red 220/166〔大日精化工業(株)製、製品名:TC Red FG(固形分:約35%)〕等を例示できる。
なお、顔料を分散する樹脂としては、例えば、ポリアミド、ウレタン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン、及びそれらの誘導体、上記の樹脂の共重合体等を例示できる。
光輝性顔料としては、ガラス片等の芯物質の表面を金、銀等で被覆した金属光沢顔料、天然雲母、合成雲母、薄片状酸化アルミニウム等の芯物質の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型顔料、金属粉顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる金属顔料、及び無色透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成し粉末処理した金属顔料等が挙げられる。
ガラス片等の芯物質の表面を金、銀等で被覆した金属光沢顔料として具体的には、日本板硝子(株)製、製品名:メタシャイン5480PS、同5230PS、同5150PS、同5090PS、同2080PS、同1030PS、同2025PS、同1030GP、同2080GP等を例示できる。
天然雲母の表面を酸化チタンで被覆したパール顔料として具体的には、メルク(株)製、製品名:Iriodin100、同111、同120、同153、同201、同211、同223、同231、同302、同323、同520、同522、同524等を例示できる。
また、合成雲母の表面を酸化チタンで被覆したパール顔料として具体的には、日本光研工業(株)製、製品名:TWINCLE PEARL SXB、同YXB、同RXB、同BXB、同SXD、同YXD、同RXD、同BXD、同SX、同YX、同RX、同BX、
日本光研工業(株)製、製品名:ULTIMICA SB−100、同SD−100、同SE−100、同SF−100、同SH−100、同YB−100、同YE−100、同YF−100等を例示できる。
また、薄片状酸化アルミニウムの表面を酸化チタンで被覆したパール顔料として具体的には、メルク(株)製、製品名:Xirallic T60−10 WNT Crystal Silver、同T60−20 WNT Sunbeam Gold、同T60−21 WNT Solaris Red、同T60−23 WNT Galaxy Blue、同T60−24 WNT Stellar Green、同T60−25 WNT Cosmic Turquoise等を例示できる。
コレステリック液晶型顔料として具体的には、ワッカーケミー社製、製品名:HELICONE HC Sapphire、同Scarabeus、同Jade、同Maple等を例示できる。
金属粉顔料としては、アルミニウム粉、真鍮粉、ステンレス鋼粉、ブロンズ粉等の金属光沢を有する金属粉顔料や、これらの金属粉顔料に染料や顔料等の着色剤を吸着した金属粉顔料等が挙げられる。また、上記の金属粉顔料を予め界面活性剤、樹脂、溶剤等で加工処理して分散させてペースト状にした顔料分散体や液体状の金属粉顔料分散体を用いることもできる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が挙げられる。
蓄光顔料としては、太陽や電灯等の光線を吸収、蓄積し、暗所において光を徐々に放出して発光する(これを残光とよんでいる)特性を有するものであれば汎用のものが用いられ、CaS/Bi系、CaSrS/Bi系、ZnS/Cu系、ZnCdS/Cu系、SrAl2O4/稀土類金属系等の蓄光顔料が挙げられる。
上記の着色剤は、一種又は二種以上を適宜混合して用いることができ、インキ組成物全量中に、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%の範囲で配合される。着色剤の配合割合が50質量%を超えると、インキ組成物を収容した筆記具のインキ吐出安定性が低下し、カスレや線飛び等の筆記不良が発生し易くなる。一方、配合割合が1質量%未満では、筆記具としての好適な筆跡濃度が得られ難くなる。
また、着色剤として上記の顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤としては、アニオン系、ノニオン系等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が挙げられる。
また、着色剤として、熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料、熱変色性組成物と共に染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料、熱変色性組成物を熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させた樹脂粒子等を用いることもできる。
熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)上記(イ)、(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が挙げられる。
可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることができる。
さらに、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されているヒステリシス幅が比較的大きい特性(ΔH=8〜50℃)を有するものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による発色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度t以下の温度域での発色状態、または完全消色温度t以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔発色開始温度t〜消色開始温度tの間の温度域(実質二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることができる。
なお、本発明に適用される上記の色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度tを冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度tを摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
また、可逆熱変色性組成物として、特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報等に記載された、没食子酸エステルを用いた加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
可逆熱変色性組成物は、上記の(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜100、好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100の範囲である(上記した割合はいずれも質量部である)。
可逆熱変色性組成物は、そのまま用いても有効であるが、マイクロカプセルに内包して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、「マイクロカプセル顔料」と表すことがある)を形成したり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させて可逆熱変色性樹脂粒子(以下、「樹脂粒子」と表すことがある)を形成することもできる。
可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包して可逆熱変色性マイクロカプセルとすることが好ましい。これは、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができ、さらに、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
マイクロカプセル化は、従来より公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。カプセルの材質としては、例えば、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等を例示できる。
さらにマイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
上記の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1〜1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比が6:1〜1:1である。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料又は樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜50μm、より好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは0.5〜20μmの範囲が実用性を満たす。
マイクロカプセル顔料又は樹脂粒子の平均粒子径が50μmを超えると、インキ、塗料、或いは樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、平均粒子径が0.01μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
なお、平均粒子径の測定は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔マウンテック(株)製、製品名:マックビュー〕を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕を用いて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記したソフトウェア又はコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA−300〕を用いて、体積基準の粒子径及び平均粒子径を測定しても良い。
上記の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料又は樹脂粒子は、インキ組成物全量中に、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%の範囲で配合される。マイクロカプセル顔料の配合割合が40質量%を超えると、インキ組成物を収容した筆記具のインキ吐出安定性が低下し、カスレや線飛び等の筆記不良が発生し易くなる。一方、配合割合が5質量%未満では、筆記具としての好適な変色性及び筆跡濃度が得られ難く、変色機能を十分に満たすことができ難くなる。
上記式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤はアルカリ金属塩であり、且つ、リン酸基中の2つの水酸基が、第4級アンモニウム塩(第4級アンモニウムカチオンとハロゲン化物イオンとの塩)を有する特定の基とエステル化したリン酸ジエステルであることから、リン酸エステル型の両性界面活性剤である。
上記のリン酸エステル系界面活性剤は、インキ組成物の表面張力を低下させて、ペン先やインキ流量調節体等の筆記具部材に対する濡れ性を向上させて、優れたインキ吐出安定性を発現させて、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制すると共に、インキ組成物の表面張力の低下を適度に抑制するため、紙面に対する浸透性を過剰に高めることがなく、紙面に形成される筆跡の滲みや裏抜けを抑制することができる。
また、上記のリン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基が金属類に対して吸着し易い性質を有するため、インキ組成物中で潤滑剤としての効果を奏する。よって、本発明の水性インキ組成物をボールペン形態の筆記具に適用した場合には、リン酸エステル系界面活性剤がボールペンチップとボールに吸着して、ボールペンチップとボールとの間の潤滑性を向上させてボールの回転をスムーズにすることにより、ボール受け座の摩耗を抑制して、書き味等の筆記感を良好とすることができる。
式(1)中のRは、炭素数が10〜24の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基を示す。脂肪酸残基とは、炭化水素の1価カルボン酸である脂肪酸〔R′−COOH(R′は炭化水素を示す。)〕において、カルボキシル基から水酸基が脱離した構造、即ち、カルボニル基を有する炭化水素〔R′−C(=O)−〕を表す。
炭素数が10〜24の、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、オレイン酸、リシノール酸、エライジン酸、パウリン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等を例示できる。
また、インキ組成物での溶解安定性に優れることから、Rは、炭素数が12〜20の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であることが好ましい。
炭素数が12〜20の、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、オレイン酸、リシノール酸、エライジン酸、パウリン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸等を例示できる。
さらに、Rは、炭素数が14〜18の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であることがより好ましい。
炭素数が14〜18の、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、オレイン酸、リシノール酸、エライジン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、γ−リノレン酸、ステアリドン酸等を例示できる。
また、式(1)中のXに関して、アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等を例示できる。
Yに関して、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を例示できる。
式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤として、インキ組成物の表面張力を適度に低下させて、優れたインキ吐出安定性を発現させて、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制すると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、より良好な筆跡を形成できることから、Rは、炭素数が10〜24の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であり、Xはナトリウム原子又はカリウム原子であり、Yは塩素原子であることが好ましく、上記構造のリン酸エステル系界面活性剤において、Xはナトリウム原子であることが好ましい。
さらに、インキ組成物中での溶解安定性に優れ、よりいっそう良好な筆跡を形成できることから、Rは、炭素数が12〜20の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であり、Xはナトリウム原子又はカリウム原子であり、Yは塩素原子であることがより好ましく、上記構造のリン酸エステル系界面活性剤において、Xはナトリウム原子であることが好ましい。
さらに、Rは、炭素数が14〜18の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であり、Xはナトリウム原子又はカリウム原子であり、Yは塩素原子であることがさらに好ましく、上記構造のリン酸エステル系界面活性剤において、Xはナトリウム原子であることが好ましい。
本発明に適用される、式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤として、Rは、炭素数が14〜18の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基であり、Xはナトリウム原子であり、Yは塩素原子であるリン酸エステル系界面活性剤が、最も好適に用いられる。
式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤として、例えば、コカミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸、ミリスタミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸、リノールアミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸、ヒマワリ種子アミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸、オリーブアミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸ナトリウム、リシノールアミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸ナトリウム、ボラージアミドプロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸ナトリウム、ブドウ種子プロピルPG−ジモニウムクロリドリン酸ナトリウム等を例示できる。
上記のリン酸エステル系界面活性剤として具体的には、Colonial Chemical社製、製品名:Cola Lipid C〔主要脂肪酸がヤシ油由来のラウリン酸(炭素数が12の飽和脂肪酸)〕、同M(主要脂肪酸がヤシ油由来のミリスチン酸(炭素数が14の飽和脂肪酸))、同SAFL〔主要脂肪酸がベニバナ油由来のリノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、同SUN〔主要脂肪酸がヒマワリ油由来のリノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、同OL〔主要脂肪酸がオリーブ油由来のオレイン酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、同RC〔主要脂肪酸がヒマシ油由来のリシノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、同BP〔主要脂肪酸がルリジサ種子油由来のリノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、同GS〔主要脂肪酸がブドウ種子油由来のリノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕、
クローダジャパン(株)製、製品名:ARLASILK PTC〔主要脂肪酸がヤシ油由来のラウリン酸(炭素数が12の飽和脂肪酸)〕、同PTM〔主要脂肪酸がミリスチン酸(炭素数が14の飽和脂肪酸)〕、同EFA〔主要脂肪酸がリノール酸(炭素数が18の不飽和脂肪酸)〕等を例示できる。
これらのリン酸エステル系界面活性剤は、一種又は二種以上を適宜混合して用いることができる。
また、本発明の水性インキ組成物には、上記のリン酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤をさらに添加することにより、インキ組成物を所望の粘度、表面張力に調整し、インキ吐出安定性を向上させて筆記不良を抑制すると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、より良好な筆跡を形成できるインキ組成物とすることができる。
上記のリン酸エステル系界面活性剤以外の界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
水としては特に制限されるものではなく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水、又は蒸留水等を例示できる。
また、本発明の水性インキ組成物には、増粘剤を配合することにより、インキ組成物を静置した際に着色剤が沈降、凝集することを抑制することができるため、発色性に優れる筆跡を形成すると共に、良好な経時安定性を有するインキ組成物とすることができる。
増粘剤としては従来より公知の物質を用いることが可能であるが、インキ組成物にせん断減粘性を付与できる物質(せん断減粘性付与剤)であることが好ましい。このような物質を用いることにより、インキ組成物は、静置した際に着色剤が沈降、凝集し難い粘度でありながらも、外部から力が加わった際に容易に低粘度化するため、静置時におけるインキ組成物中での着色剤の沈降、凝集を抑制すると共に、筆記時において筆記具のペン先からのインキ吐出安定性を良好とすることが容易となる。とりわけ、ボールペン形態の筆記具にこのようなインキ組成物を用いた際には、筆記時にボールの回転に伴ってインキ組成物に強いせん断応力が加わり、インキ組成物がより低粘度化し易いため、インキ吐出安定性を良好とすると共に、発色性に優れる筆跡を形成することができる。
せん断減粘性付与剤としては、例えば、水溶性多糖類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、ポリN−ビニル−カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール、又はこれらの誘導体、アルカリ増粘型アクリル樹脂、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。
水溶性多糖類としては、例えば、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量が約100万〜800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物等を例示できる。
また、本発明の水性インキ組成物には、必要に応じて各種添加剤を配合することもできる。
添加剤としては、例えば、カオリン、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、セリサイト、及びチタン酸カリウム等の体質材、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリン等のアルコール又はグリコール、ポリオレフィン、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素樹脂等からなる樹脂粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合樹脂、アルキッド樹脂、スルフォアミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン−マレイン酸エステル共重合樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、シアネート変性ポリアルキレングリコール、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、尿素アルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂及びその水添化合物、ロジンフェノール樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、及びシクロヘキサノン系樹脂等の定着剤、pH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、及びサポニン等の防錆剤、尿素、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、シリコーン系、及びフッ素系等の各種界面活性剤、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂からなる顔料分散剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、及びピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、エチレンジアミン四酢酸及びその塩等のキレート剤、防腐剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤等を例示できる。
本発明の水性インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、上記した各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、又はホモミキサー等の各種攪拌機やビーズミル等の各種分散機等にて混合し、製造することができる。
上記式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤は。インキ組成物全量中に、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲で配合される。リン酸エステル系界面活性剤の配合割合が上記の範囲内にあると、インキ組成物の表面張力を適度に低下させて、優れたインキ吐出安定性を発現させて、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制すると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、より良好な筆跡を形成できるインキ組成物とすることができる。
本発明の水性インキ組成物の表面張力は、20℃において、20〜60mN/mであることが好ましく、25〜50mN/mであることがより好ましく、30〜40mN/mであることがさらに好ましい。インキ組成物の表面張力が上記の範囲内にあると、紙面に対するインキ組成物の浸透性を過剰に高めることがなく、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制し、より良好な筆跡を形成できる。さらに、筆記具部材、特に合成樹脂からなるペン芯に対するインキ組成物の濡れ性を良好とし、筆記具のペン先からのインキ吐出安定性がさらに向上すると共に、より優れたペン芯性能を発現できるインキ組成物とすることができる。
なお、インキ組成物の表面張力は、自動表面張力計〔協和界面科学(株)製、製品名:DY−300〕を用いて、インキ組成物を20℃の環境下において、白金プレートを用いた垂直平板法によって測定した値である。
本発明の水性インキ組成物において、粘度特性は特に限定されるものではないが、例えば、高せん断減粘性のインキ組成物(ゲルインキ)、低粘度で低せん断減粘性のインキ組成物、低粘度で非せん断減粘性のインキ組成物(ニュートニアンインキ)等の粘度特性を有するインキ組成物を用いることができ、これらの中でも、低粘度のインキ組成物が好適に用いられる。
本発明の水性インキ組成物の粘度は、20℃において、回転速度10rpm(せん断速度38.4sec−1)の条件で測定した場合、1〜500mPa・sであることが好ましく、1〜200mPa・sであることがより好ましく、1〜100mPa・sであることがさらに好ましい。また、20℃において、回転速度100rpm(せん断速度384sec−1)の条件で測定した場合、1〜50mPa・sであることが好ましく、1〜20mPa・sであることがより好ましく、1〜10mPa・sであることがさらに好ましい。インキ組成物の粘度が上記の範囲内にあると、筆記具のペン先からのインキ吐出安定性がさらに向上し、カスレや線飛び等の筆記不良を抑制して、より良好な筆跡を形成できるインキ組成物とすることができる。
なお、インキ組成物の粘度は、レオメーター〔TAインスツルメント社製、製品名:Discovery HR−2、コーンプレート(直径40mm、角度1°)〕を用いて、インキ組成物を20℃の環境下に置いて、回転速度10rpm(せん断速度38.4sec−1)、又は回転速度100rpm(せん断速度384sec−1)の条件で測定した値である。
また、本発明の水性インキ組成物は、20℃において、下記式(2)中の粘性指数nが、0.6〜1.0であることが好ましく、0.8〜1.0であることがより好ましく、0.9〜1.0であることがさらに好ましい。
S=αD (2)
{式中、Sはせん断応力〔dyn/cm(=0.1Pa)〕、Dはせん断速度(sec−1)、αは粘性係数を示す。}
なお、インキ組成物の粘性指数nは、レオメーター〔TAインスツルメント社製、製品名:Discovery HR−2、コーンプレート(直径40mm、角度1°)〕を用いて、インキ組成物を20℃の環境下に置いて、38.4sec−1及び384sec−1のせん断速度と、それらのせん断速度でそれぞれ得られるせん断応力とを、上記式(2)に適用して算出した値である。
本発明の水性インキ組成物のpHは、6〜11であることが好ましく、7〜10であることがより好ましく、7〜9であることがさらに好ましい。インキ組成物のpHが上記の範囲内にあると、インキ組成物中における、上記のリン酸エステル系界面活性剤の溶解安定性に優れる。また、本発明のインキ組成物をボールペン形態の筆記具に適用した場合には、インキ組成物が接触するボールペンチップやボール等の金属部材の腐食を防止することができる。
なお、インキ組成物のpHは、pHメーター〔東亜ディーケーケー(株)製、製品名:IM−40S〕を用いて、20℃の環境下において測定した値である。
本発明の水性インキ組成物は、ペン先と、インキ充填機構と、インキ充填機構に充填されるインキ組成物をペン先に供給するためのインキ供給機構とを備えた筆記具に収容される。
筆記具としては、例えば、ボールペン、マーキングペン、万年筆、筆ペン等の各種筆記具を例示できる。
本発明の水性インキ組成物は、筆記具のペン先へ円滑に供給され、ペン先の種類によらず優れたインキ吐出安定性を発現できる。ペン先としては特に制限されるものではなく、各種チップを備えたペン先が用いられる。
各種チップのうち、ボールペンチップとしては、例えば、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、上記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を例示できる。なお、ボールペンチップ及びボールの材質としては特に限定されるものではないが、具体的には、超硬合金(超硬)、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等を例示でき、ボールの直径は0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。さらにボールには、DLCコート等の表面処理を施すこともできる。
また、マーキングペンチップとしては、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、毛筆等を例示できる。
また、万年筆形態のチップ(ペン体)としては、例えば、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等を例示できる。なお、上記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
インキ充填機構はインキ供給機構の後方に配設され、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできるインキ収容体又はインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。
筆記具がインキ組成物を直に充填する構成であり、さらに着色剤に顔料を用いる場合、顔料の再分散を容易とするために、インキ収容体にはインキを攪拌する攪拌ボール等の攪拌体を内蔵することが好ましい。攪拌体の形状としては、球状体、棒状体等が挙げられる。攪拌体の材質としては特に限定されるものではないが、具体的には、金属、セラミック、樹脂、硝子等を例示できる。
また、筆記具がインキ組成物を充填することのできるインキ吸蔵体を備えるものである場合は、インキ吸蔵体は、撚り合わせた繊維を用いてなる繊維集束体が好適に用いられる。
さらに、インキ充填機構は、着脱可能な構造としてインキカートリッジ形態とすることもできる。この場合、筆記具本体が、収容するインキ組成物を使い切った後に新たなカートリッジと取り替えて使用されるため、新たにインキ充填機構のインキ貯蔵部内のインキ組成物をペン先に円滑に流動させることが必要となる。本発明の水性インキ組成物をインキカートリッジ形態のインキ充填機構を備える筆記具に適用する場合には、新たなインキカートリッジに取り替えた際にインキ貯蔵部内のインキ組成物がペン先に円滑に流動し、筆記具が優れたインキ吐出安定性を発現するため、カスレや線飛び等の筆記不良が生じ難くなると共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して良好な筆跡を形成できるため、好適に用いられる。
インキカートリッジとしては、筆記具本体に接続することで筆記具を構成する軸筒を兼ねたものや、筆記具本体に接続した後に軸筒(後軸)を被覆して保護するものが用いられる。なお、後者においては、インキカートリッジ単体で用いる他、使用前の筆記具において、筆記具本体とインキカートリッジが接続されているものや、筆記具のユーザーが使用時に軸筒内のインキカートリッジを接続して使用を開始するように非接続状態で軸筒内に収容したもののいずれであっても良い。
インキ供給機構としては特に限定されるものではないが、例えば、(1)繊維束等からなるインキ誘導芯をインキ流量調節体として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ流量調節体を備え、これを介在させてインキ組成物をペン先に供給する機構、(3)多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を介して、インキ組成物をペン先に供給する機構、(4)弁機構によるインキ流量調節体を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(5)ペン先を具備したインキ収容体又は軸筒より、インキ組成物を直接ペン先に供給する機構が挙げられる。
ペン芯の材質としては、多数の円盤体を櫛溝状とした構造に射出成形できる合成樹脂であれば特に制限されるものではない。合成樹脂としては、例えば、汎用のポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等を例示できる。特に、成形性が高く、ペン芯性能を得られ易いことから、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)が好適に用いられる。
ペン先を具備したインキ収容体としては、上記のボールペンチップを先端に具備し、後端にグリース等の粘稠液体からなるインキ逆流防止体を充填したインキレフィルであっても良い。
本発明の水性インキ組成物を収容する筆記具は、上記したペン先、インキ充填機構、インキ供給機構の中から各部材を適宜選択して構成することが可能であるが、本発明の水性インキ組成物は、インキ吐出安定性に優れ、さらに、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制できることを考慮すれば、本発明において好ましい筆記具は、インキ充填機構が、インキ組成物を直に充填する構成の筆記具である。
インキ充填機構に直にインキ組成物を充填した筆記具は、インキの吐出量が多いため明瞭な筆跡を形成できると共に、インキを最後まで使い切ることが可能であり、さらに、インキ充填機構が透明である場合にはインキ残量を視認できる点で好ましく用いられるが、紙面における筆跡に滲みや裏抜けを生じ易い。しかしながら、本発明の水性インキ組成物を収容した上記構成の筆記具は、インキ吐出安定性に優れ、カスレや線飛び等の筆記不良が生じ難いと共に、インキ組成物の表面張力が適度に良好であるため、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制でき、良好な筆跡を形成できる筆記具として、好適に用いられる。
また、インキ供給機構として、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備えた筆記具は、本発明において好ましい筆記具として用いられる。
本発明の水性インキ組成物を収容した上記構成の筆記具は、インキ充填機構からのインキ流量が適度に調節され、インキ充填機構に充填されるインキ組成物のペン芯に対する濡れ性が適度に調節されているため、インキ吐出安定性が向上し、さらに、温度変化やキャップの着脱が繰り返されることにより生じる筆記具内部の圧力変化に対して、ペン先からインキがボタ落ちすることがなく、ペン芯におけるインキ貯溜性とインキ充填機構のインキ貯蔵部へのインキ回収性に優れた良好なペン芯性能を有する筆記具として、好適に用いられる。
また、ペン先がボールペンチップである筆記具は、本発明において好ましい筆記具として用いられる。一般にボールペンチップは、チップ自体の毛細管力が乏しく、ペン先へのインキ誘導力が低いため、インキ吐出安定性が課題となり易く、金属製パイプの先端にボールを抱持するボールペンチップでは、さらにインキ吐出安定性が得られ難い。しかしながら、本発明の水性インキ組成物を収容した上記構成の筆記具は、インキ組成物の、ペン先に対する濡れ性が良好であるため、インキ吐出安定性に優れ、カスレや線飛び等の筆記不良が生じ難いと共に、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して良好な筆跡を形成できる筆記具として、好適に用いられる。さらに、ボールペンチップに金属製パイプを用いる場合には、チップ内に中芯を配設し、チップ内部の毛細管力を高めた構成とすることが好ましく、インキ吐出安定性をよりいっそう向上させることができる。
さらに、上記構成の筆記具において、インキ組成物中のリン酸エステル系界面活性剤は、ボールペンチップとボールに吸着して潤滑性の高い層を形成し、ボールペンチップとボールとの間の潤滑性を向上させる潤滑剤として作用する。よって、本発明の水性インキ組成物を収容した上記構成の筆記具は、ボールの回転がスムーズであり、ボール受け座の摩耗が抑制されるため、書き味等の筆記感が良好である筆記具として、好適に用いられる。
ペン先と、インキ充填機構と、インキ供給機構とを備えた筆記具には、ペン先を覆うように装着されるキャップを設けたり、筆記具本体(軸筒)からペン先が出没可能とするペン先出没機構を設けることが好ましく、ペン先が乾燥して筆記できなくなることや、ペン先が汚染や破損されることを防ぐことができる。
ペン先出没機構としては、例えば、(1)軸筒の後部側壁より前後方向に移動可能な操作部(クリップ)を径方向外方に突設させ、操作部を前方にスライド操作することにより筆記具のペン先が出没するサイドスライド式の出没機構、(2)軸筒後端に設けた操作部を前方に押圧することによりペン先が出没する後端ノック式の出没機構、(3)軸筒側壁外面より突出する操作部を径方向内方に押圧することによりペン先が出没するサイドノック式の出没機構、(4)軸筒後部の操作部を回転操作することによりペン先が出没する回転式の出没機構等を例示できる。
本発明における好ましい筆記具としては、ペン先を覆うようにキャップを装着した筆記具(キャップ式筆記具)であり、より好ましくは、インキ供給機構が、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備えた筆記具に、さらに、ペン先を覆うようにキャップを装着した筆記具である。一般的に、水性インキ組成物を収容した筆記具は、ペン先が乾燥し易いため筆記不良を生じ易く、ペン先の乾燥を防ぐ目的でペン先を覆うようにキャップが設けられるが、筆記具のキャップの着脱により筆記具内部の圧力変化が繰り返されると、ペン先からインキが漏れ易く(ボタ落ちし易く)、特に、ペン芯を備えた筆記具においてはインキがボタ落ちし易いという問題があった。しかしながら、本発明の水性インキ組成物を収容した上記構成の筆記具は、収容されるインキ組成物のペン芯に対する濡れ性が適度に調節されているため、キャップの着脱が繰り返されることにより生じる筆記具内部の圧力変化に対して、ペン先からインキがボタ落ちし難く、良好なペン芯性能を有するため、好適に用いられる。
本発明の水性インキ組成物を収容した筆記具として、インキ充填機構が、インキ組成物を直に充填する構成のものであり、インキ供給機構が、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備え、ペン先がボールペンチップである筆記具が、本発明においてより好ましい筆記具であり、インキ吐出安定性に優れ、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、よりいっそう良好な筆跡を形成できると共に、優れたペン芯性能を有し、筆記感が良好であるボールペンとして、より好適に用いられる。
また、上記構成の筆記具のペン先を覆うようにキャップを装着したキャップ式筆記具が、本発明においてさらに好ましい筆記具として用いられ、インキ吐出安定性に優れ、紙面における筆跡の滲みや裏抜けを抑制して、よりいっそう良好な筆跡を形成できると共に、優れたペン芯性能を有し、筆記感が良好であり、さらに、キャップの着脱が繰り返されることにより生じる筆記具内部の圧力変化に対してペン先からインキがボタ落ちし難く、ペン先が乾燥し難い実用的な筆記具として、さらに好適に用いられる。
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
水性インキ組成物の調製
下記に示した各材料を下記量にて配合し、室温で1時間攪拌混合し、水性インキ組成物を調製した。
・赤色染料溶液 20部
〔ダイワ化成(株)製、製品名:エオシンGH−35%−L(NP)(固形分:35%)〕
・リン酸エステル系界面活性剤A 0.5部
〔クローダジャパン(株)製、製品名:ARLASILK EFA〕
・防腐剤 0.4部
〔ロンザジャパン(株)製、製品名:プロキセルXL−2(S)〕
・イオン交換水 79.1部
以下の表1に実施例1〜8、並びに、比較例1及び2の各水性インキ組成物の組成を示した。
なお、実施例2〜8、並びに、比較例1及び2の各水性インキ組成物は、実施例1に対して、配合する材料の種類や量を表1の通りに変更して調製した。
Figure 2021187958
表中の材料の内容を注番号に沿って説明する。
(1)赤色染料溶液
〔ダイワ化成(株)製、製品名:エオシンGH35%−L(NP)(固形分:35%)〕
(2)青色染料溶液
〔ダイワ化成(株)製、製品名:ブリリアントブルーFCF−L(固形分:35%)〕
(3)青色顔料分散液
〔山陽色素(株)製、製品名:Sandye Super Blue GLL−E(固形分:24%)〕
(4)リン酸エステル系界面活性剤A
〔クローダジャパン(株)製、製品名:ARLASILK EFA〕
(5)リン酸エステル系界面活性剤B
〔クローダジャパン(株)製、製品名:ARLASILK PTM〕
(6)フッ素系界面活性剤
〔AGCセイミケミカル(株)製、製品名:サーフロンS−243〕
(7)防腐剤
〔ロンザジャパン(株)製、製品名:プロキセルXL−2(S)〕
表面張力測定
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2で調製した各水性インキ組成物について、自動表面張力計〔協和界面科学(株)製、製品名:DY−300〕を用いて、室温(20℃)環境下で、白金プレートを用いた垂直平板法により表面張力を測定した。
粘度測定
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2で調製した各水性インキ組成物について、レオメーター〔TAインスツルメント社製、製品名:Discovery HR−2、コーンプレート(直径40mm、角度1°)〕を用いて、室温(20℃)環境下で、回転速度100rpmの条件で粘度を測定した。
pH測定
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2で調製した各水性インキ組成物について、pHメーター〔東亜ディーケーケー(株)製、製品名:IM−40S〕を用いて、室温(20℃)の環境下で、pHを測定した。
筆記具の作製
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2で調製した各水性インキ組成物を、ボールの直径が0.5mmであるボールペンチップを備えたペン先と、ペン芯とを備え、さらに、インキ充填機構に直にインキ組成物を充填する構成の筆記具〔(株)パイロットコーポレーション製、製品名:Vコーン(LVE−10EF)〕の、インキ充填機構のインキ貯蔵部に2.0g充填し、キャップを装着して筆記具を作製した。
なお、筆記具のペン芯はABS樹脂材料を射出成形することで作製した。
ペン芯性能試験
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2の各水性インキ組成物を収容した各筆記具を、ペン先を下向きにした状態で保持し、キャップ装着状態で0℃、1時間放置した後、ペン先を下向きにした状態のままキャップを外して30℃に加温した際の、ペン芯の櫛溝部へのインキ流入状態、及び、ペン先からのインキのボタ落ちの有無を観察した。さらに、その後再び0℃に冷却した際の、ペン芯の櫛溝部からインキ充填機構のインキ貯蔵部へのインキの回収状態を観察した。筆記具におけるインキの流入状態、及び、回収状態から下記基準でペン芯性能を評価した。
A:インキはペン芯の櫛溝部へ円滑に流入し、ボタ落ちは発生しなかった。また、ペン芯内の全てのインキを良好に回収した。
B:ペン芯の櫛溝部へのインキの流入が変則的であり、ボタ落ちが発生した。または、ペン芯内のインキが回収されず、櫛溝部内に残留した。
筆記試験
実施例1〜8、並びに、比較例1及び2の各水性インキ組成物を収容した各筆記具を用いて、室温(20℃)環境下で、A4サイズの試験用紙(縦向き)の短手方向と平行方向に、1行あたりに、長径15mm、短径8mm程度の楕円形状の丸を12個、丸が互いに接するように、手書きで3行、連続筆記した。続けて、別のA4サイズの試験用紙(縦向き)に、「小諸なる」の文字を筆記した。
なお、試験用紙には旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
インキ吐出安定性の評価
上記の筆記試験で得られた楕円形状の丸の筆跡を目視により確認し、筆跡の状態から下記基準でインキ吐出安定性を評価した。
A:筆跡にカスレや線飛びがなく、良好な筆跡が得られた。
B:筆跡にカスレや線飛びがやや確認されたが、実用上問題のないレベルであった。
C:筆跡にカスレや線飛びが多数確認され、良好な筆跡が得られなかった。
滲み・裏抜け性の評価
上記の筆記試験で得られた「小諸なる」の文字の筆跡について、滲みの有無、及び筆跡を形成した紙面裏面におけるインキの裏抜けの有無を目視により確認し、下記基準で滲み・裏抜け性を評価した。
A:滲みや裏抜けがなく、良好な筆跡が得られた。
B:滲みや裏抜けが確認され、良好な筆跡が得られなかった。
以下の表2に、実施例1〜8、並びに、比較例1及び2の各水性インキ組成物の物性値(表面張力値、粘度値、pH)、各筆記具のペン芯性能試験、及び筆記試験(インキ吐出安定性の評価、滲み・裏抜け性の評価)の結果を示した。
Figure 2021187958

Claims (8)

  1. 少なくとも着色剤と、水と、下記式(1)で示されるリン酸エステル系界面活性剤とからなる筆記具用水性インキ組成物。
    Figure 2021187958
    (式中、Rは、炭素数が10〜24の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基を示す。また、Xはアルカリ金属原子を示し、Yはハロゲン原子を示す。)
  2. Rは、炭素数が12〜20の、飽和脂肪酸残基又は不飽和脂肪酸残基である請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
  3. 前記リン酸エステル系界面活性剤が、水性インキ組成物全量中に0.1〜20質量%の範囲で添加されてなる請求項1又は2記載の筆記具用水性インキ組成物。
  4. 表面張力が20〜60mN/mである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の筆記具用水性インキ組成物を収容してなる筆記具。
  6. 前記筆記具が、ペン先と、インキ充填機構と、インキ供給機構とを備え、前記インキ充填機構に前記筆記具用水性インキ組成物を直に充填し、前記インキ供給機構が、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ充填機構からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備える直液式筆記具である請求項5記載の筆記具。
  7. 前記ペン先がボールペンチップである請求項6記載の筆記具。
  8. 前記筆記具が、キャップを備えてなる請求項6又は7に記載の筆記具。
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