JP2021187156A - 成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法 - Google Patents

成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法 Download PDF

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弘法 佐藤
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Abstract

【課題】脱型時の割れや変形等の発生を抑制し、より簡易な操作で脱型でき、形状精度の高いセラミックス材料の成形方法及びバリの少ないセラミックス物品の製造方法を提供する。【解決手段】セラミックス粉末、樹脂、硬化剤及び溶媒を混合して、セラミックス材料となる注型液を得る原料混合工程(S1)と、注型液を水溶性高分子材料で形成された水溶性成形型1のキャビティ10に注入する注型液注入工程(S2)と、水溶性成形型1に注入された注型液中の樹脂を硬化させて所望の形状を有する硬化体とする硬化工程(S3)と、水溶性成形型1から硬化体を脱型させる脱型工程(S4)と、を有するセラミックス材料の成形方法。【選択図】図1B

Description

本発明は、成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法に係る。特に、セラミックス材料の成形時における成形体及び硬化体の割れや変形等を抑制し、所望の寸法、形状のセラミックス成形体及び焼結体が得られる、成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法に関する。
セラミックス物品の成形は、射出成型、鋳込み成型、押出成形、ゲルキャスティング等の各種成形方法を使用でき、様々な形状のセラミックス物品が作製されるようになっている。
セラミックス物品の成形においては、所望の製品形状とするための成形型が用いられる。硬質の成形型の場合には、脱型時におけるハンドリングで硬化体ゲル硬化で得られる硬化体が割れやすい場合がある。脱型時の割れを抑制するために、軟質の成形型も知られているが、この場合には、注型時に変形して所望の形状が得られなかったり、所望の寸法精度にならなかったり、する場合がある。
これに対して、注型時には所望の剛性を有し、脱型時に、非吸水性で、加熱により融解又は溶融可能な成形型や(例えば、特許文献1、2参照)、溶剤可溶性の成形型(例えば、特許文献3、4参照)等を用い硬化体を得て、セラミックス物品を製造する方法が提案されている。
特開平11−12044号公報 特開2004−34572号公報 特開2010−228424号公報 特許第5146010号公報
しかしながら、上記のような加熱により融解又は溶融可能な成形型では、成形型の融解又は溶融温度と、硬化体を得るための成形温度との関係を調整しなければならず、成形条件(硬化条件)において、使用可能な材料が制限される場合があった。
また、溶剤可溶性の成形型を用いる場合には、溶剤として特定の有機溶剤を用意しなければならず、手間やコストがかかっていた。
上記課題に鑑み、本発明は、セラミックス物品の製造において、脱型時の割れや変形等の発生を抑制し、より簡易な操作で脱型でき、形状精度の高いセラミックス硬化体が得られるセラミックス材料の成形方法及びその方法で得られる硬化体を焼結させて得られるセラミックス物品の製造方法の提供を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、スラリー状のセラミックス材料を水溶性成形型に注型、充填した後、硬化させ、水溶性成形型を水に溶解させて脱型することで、形状精度の高いセラミックス硬化体が、簡便な操作により得られることを見出した。
すなわち、本発明の一態様の水溶性成形型は、水溶性高分子材料で形成され、内部にセラミックス材料が充填されて所望の形状の硬化体を得るためのキャビティを有することを特徴とする。
本発明の一態様のセラミックス材料の成形方法は、セラミックス粉末、樹脂、硬化剤及び溶媒を混合して、セラミックス材料となる注型液を調製し、前記注型液を、水溶性高分子材料製の水溶性成形型に注型し、前記水溶性成形型に注型された前記注型液中の前記樹脂を硬化させて所望の形状を有する硬化体とし、前記水溶性成形型を水に溶解させて前記硬化体を脱型させる、ことを特徴とする。
また、本発明の一態様のセラミックス物品の製造方法は、上記セラミックス材料の成形方法により得られた前記硬化体を乾燥させて成形体とし、前記成形体を脱脂して脱脂体とし、前記脱脂体を焼成して焼結体とする、ことを特徴とする。
本発明の一態様の水溶性成形型及びセラミックス材料の成形方法によれば、脱型時に、硬化体に余計な外力がかからないため、形状保持性が良好で、形状精度の高い硬化体が得られる。また、本発明の一態様のセラミックス物品の製造方法によれば、上記硬化体を、乾燥、脱脂、焼成して焼結体を製造するため、所望の形状を有するセラミックス物品が得られる。
本発明の一実施形態である水溶性成形型の概略構成を示した図である。 図1Aの水溶性成形型の断面図である。 本発明の一実施形態であるセラミックス材料の成形方法における、各工程のフローチャートである。 本発明の一実施形態であるセラミックス物品の製造方法の一例を示す各工程のフローチャートである。
以下、本発明の一実施形態である水溶性成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法について詳細に説明する。
[水溶性成形型]
本発明の一実施形態である水溶性成形型は、水溶性高分子材料で形成され、内部にセラミックス材料が充填されて所望の形状の硬化体を得るためのキャビティを有する水溶性成形型である。
水溶性成形型としては、例えば、図1A及び1Bに示したように、所望の形状の硬化体を得るためのキャビティ10を有し、キャビティ10が水溶性高分子材料製の型で覆われるように形成されている水溶性成形型1が挙げられる。また、水溶性成形型1は、キャビティ10内にセラミックス材料を注入するための注入口1aを有する。
水溶性成形型1に使用される水溶性高分子材料としては、成形材料が硬化(ゲル化)するまで形状保持でき、水との接触により溶解する材料が挙げられる。より具体的には、後述する成形方法に好適な特性、すなわち、水と接触して溶解する特性を有し、かつ、硬化〜脱型時の加温により融解しない材料が好ましい。
このような水溶性高分子材料としては、例えば、アルキレングリコール類、ポリビニルアルコール類、脂肪族ポリアミド、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、またはこれらの複合体等が挙げられる。さらに具体的には、アルキレングリコール類としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンオキシド(PPO)等が挙げられる。ポリビニルアルコール類としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ブテンジオールビニルアルコール共重合体(BVOH)等が挙げられる。脂肪族ポリアミドとしては、「AQナイロン」シリーズ(東レケミカル社製)等が、セルロース誘導体としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
水溶性高分子材料の融点は、上記特性から、100℃以上が好ましく、120〜250℃がより好ましく、特に150〜230℃が好ましい。
水溶性高分子材料としては、上記に加え、非水溶性の成分を含有してもよい。非水溶性の成分としては、例えば、無機フィラー等の樹脂材料に混合する公知の成分が挙げられる。無機フィラーを混合すると、成形型としたときの剛性を向上させ、形状保持性を良好なものとできる。
なお、無機フィラーは、水に溶解しないため、後述する脱型工程の際には、水中に分散又は沈降する。無機フィラーは、脱型操作の後、回収、再利用してもよい。
水溶性成形型1は、所望の形状のキャビティを有するように、公知の成形方法により形成して得られる。水溶性成形型1の成形方法としては、例えば、射出成型、ブロー成型等が挙げられる。また、水溶性成形型1は、一体として形成されたものでも、分割して形成されたもの(分割型)でもよい。
なお、図1にはキャビティ10として球状のもの(得られる硬化体、成形体及び焼結体が球状)を例示している。キャビティ10は球状に限らず、任意の形状とできる。本実施形態においては、脱型を成形型の水への溶解で行うため、キャビティが、凹凸が多かったり入り組んでいたりする複雑な形状や、くびれや細線形状等の損傷しやすい形状を有する場合であっても、所望の形状を保持した硬化体、成形体及び焼結体を、所望の形状を損なわずに安定して得られる。
水溶性成形型1は、上記のように水に溶解する特性を有する材料で形成されている。水溶性成形型1の脱型操作は、後述するように水との接触、好ましくは水への浸漬により溶解させればよい。このときの水溶性成形型が溶解する時間は、使用される水溶性高分子材料の種類や成形型の肉厚、使用する水の温度等により変わるため、それらの条件の組み合わせを変更して適宜調整できる。
水溶性成形型1は、使用する水溶性高分子材料の溶解速度が0.02〜0.50g/minが好ましく、0.04〜0.20g/minがより好ましい。なお、水溶性高分子材料の溶解速度は、接触させる水の水温が80℃かつ水中の水溶性高分子濃度が20%以下の際の値である。
水溶性成形型1は、上記のように、形状保持性が高いものが好ましく、セラミックス材料の充填、その後の脱型において、成形体の形状を所望の形状とできる程度に変形せず、安定的に形状を保持できる剛性を有する。このような特性を有するものとしては、水溶性高分子材料の引張強度(23℃、相対湿度0%)が20〜150N/mmが好ましく、40〜100N/mmがより好ましい。また、引張弾性率(23℃、相対湿度0%℃)が500〜5000N/mmが好ましく、900〜4500N/mmがより好ましい。引張強度および引張弾性率は、ISO 527−1およびISO 527−2により、測定できる。
水溶性成形型1は、上記したような水溶性高分子材料の溶解速度や剛性等を考慮し、その肉厚が調整できる。水溶性成形型の肉厚としては、例えば、0.2〜5.0mm程度とするのが好ましく、0.5〜2.0mm程度がより好ましい。水溶性成形型の肉厚は、使用条件等を考慮して適宜決定すればよい。水溶性成形型の厚さを調整して、後述する脱型工程における水溶性成形型1の溶解時間を調整できる。
水溶性成形型1は、注型液の注入口は1つが好ましい。これは、注型液の注型(注入)が終了したとき、注入口を1か所塞ぐだけで容易に密閉できるためである。
なお、ここでは、注型液の注入口が一つの例を示したが、注入口を複数設けてもよい。注入口が一つの場合、成形体又は焼結体の注入口近傍において、所望の形状を得るための加工数が少ない点で好ましい。注入口が複数の場合、注型液の均一注入や生産性の向上の点で好ましいが、成形体又は焼結体において注入口近傍の複数箇所の加工が必要となる場合がある。
水溶性成形型1には、その内面に、撥水性材料で形成された被膜を設けてもよい。撥水性材料で被膜を形成すると、水溶性成形型1と、その内部に充填される注型液とが直接接触しないため、成形体表面をより平滑にできる。特に、注型液の溶媒として水を用いている場合には、水溶性成形型1と溶媒の水とが互いに干渉しないため、成形体表面がより平滑にできる。また、水溶性成形型1の内面に凹凸がある場合には、被膜により、水溶性成形型1内面の凹凸の影響を少なくできるため、成形体表面をより平滑なものとできる。
撥水性材料としては、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂が挙げられ、フッ素系樹脂が好ましい。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)等が挙げられる。
シリコーン系樹脂としては、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
撥水性材料としては、上述の材料を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
撥水性材料の被膜は、水溶性成形型1の内面に撥水性材料を塗布、乾燥して形成できる。撥水性材料の塗布方法としては、刷毛による塗布や、ディップコート、スプレーコート等の公知の塗布方法が挙げられる。
撥水性材料の被膜を形成する際には、被膜の厚さは、水溶性成形型1と注型液とが接触しないようにできればよく、例えば、0.1〜100μmが好ましく、5〜30μmがより好ましい。
[セラミックス材料の成形方法]
本発明の一実施形態であるセラミックス材料の成形方法は、原料混合工程、注型液注入工程、硬化工程及び脱型工程を有する(図2)。各工程についてそれぞれ説明する。
(原料混合工程)
原料混合工程は、所望の組成を有するセラミックス粉末と、樹脂、硬化剤及び溶媒とを混合して、スラリー状のセラミックス材料(以下、注型液と称する)を得る工程である(S1)。
セラミックス粉末は、焼結によりセラミックスとなるものであれば特に限定されるものではなく、公知のセラミックス粉末が挙げられる。このセラミックス粉末としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、サイアロン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
セラミックス粉末は、後述する焼結工程において安定した焼結体が得られるように、セラミックス粉末の50%粒径D50は1.0μm未満が好ましい。50%粒径D50が1.0μm以上では、スラリー中の粒子沈降による成形不良を引き起こし、焼結密度の低下を招くおそれがある。50%粒径D50は、より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。また、粒径D50は0.1μm以上が、取扱い時の飛散、詰まり防止や調達が容易になるため好ましい。
また、セラミックス粉末として窒化ケイ素(Si)を使用する場合、焼結して得られる組織は、窒化ケイ素を主成分とする主相結晶粒子が、ガラス質及び/又は結晶質の結合相にて結合した形態のものとなることが好ましい。
セラミックス粉末として窒化ケイ素を使用する場合、セラミックス粉末としては、粉末に含まれる窒化ケイ素のα化率が70%以上の粉末が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。α化率が70%未満の窒化ケイ素粉末の場合は、焼結時のαからβへの相転移の際の針状組織の組み込み効果が十分得られず焼結体の強度が低下する。α化率が90%以上の窒化ケイ素粉末であれば、充分な組み込み効果が得られ強度、特に靱性の高い焼結体が得られる。セラミックス粉末中に、このようなα化率を有する窒化ケイ素の含有量は85質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましい。
また、セラミックス粉末には、焼結を改善するための焼結助剤を配合する。焼結助剤として、第2族(アルカリ土類金属)、第3族(希土類(スカンジウム族))、第4族(チタン族)、第5族(土類金属(バナジウム族))、第13族(ホウ素族(土類金属))、第14族(炭素族)の元素群から選ばれる少なくとも1種を含む焼結助剤が挙げられ、そのセラミックス粉末中の含有量は酸化物換算で1〜15質量%が好ましく、2〜8質量%がさらに好ましい。均一で高強度な焼結体を得るためには焼結助剤の含有量は、少ない方が好ましいが、1質量%未満になると焼結が困難になるおそれがある。
樹脂は、後述する硬化工程において、セラミックス材料を所望の形状に成形するための成分であり、公知の硬化性樹脂が挙げられる。本実施形態に用いられる樹脂としては、硬化工程において保形性が求められ、重合反応により3次元網目構造を形成するものが使用される。樹脂は、注型液の流動性を高め、後述する水溶性成形型への充填性が良好な点で液状が好ましい。
また、樹脂は、硬化工程後、焼結する前の脱脂工程においてセラミックス成形体から容易に除去できる必要もある。本実施形態に用いられる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂は、保形性が良好であるため好適に用いられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、メチルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキサイド型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、等が挙げられる。
エポキシ樹脂の平均分子量は20〜30000が好ましい。エポキシ樹脂の平均分子量は、樹脂と粉体との混合が容易であり、かつ一定の機械強度が得られる点で、50〜3000がより好ましく、50〜2500がさらに好ましい。
硬化剤は、樹脂を硬化させるものであり、使用する樹脂に応じて選択する。硬化剤としては、水溶性で、樹脂を速やかに硬化させるものが好ましく、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤等が挙げられる。アミン系硬化剤は反応が迅速であるという点で好ましく、酸無水物系硬化剤は耐熱衝撃性に優れた硬化物が得られるという点で好ましい。
アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンのいずれも使用できる。酸無水物系硬化剤としてはメチルテトラヒドロ無水フタル酸、2塩基酸ポリ無水物等が挙げられる。
溶媒は、使用する原料の混合物の粘度を調整してスラリー状にし、後述する水溶性成形型内への注型液の充填を容易にするものである。溶媒としては、例えば、水、アルコール類、その他有機溶媒が使用できる。その中でも、製造コストや環境負荷の観点から水系が好ましい。
なお、樹脂と溶媒の選択は後述する脱脂工程において、樹脂の除去を容易にするため、樹脂と溶媒との親和性が良好な組み合わせとする。樹脂と溶媒との親和性が悪いと樹脂と溶媒が分離して成形体内部で偏析し、焼結時にポアなどの欠陥が発生する原因となるおそれがある。
上記した、セラミックス粉末、樹脂、硬化剤及び溶媒を混合して、注型液とする。また必要に応じて分散剤等を添加する。このとき、混合は公知の方法により行えばよく、例えば、ディゾルバー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、バイブレーターミル、高速インペラーミル、超音波ホモジナイザー、振とう機、遊星ミル、自公転ミキサー、インラインミキサー等が挙げられる。
必要に応じて添加する分散剤としては、セラミックス粉末の凝集を解離し、より分散させるため、pH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤等を、適宜選択して添加できる。pH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤等は、上記した硬化性樹脂のゲル化に悪影響を与えないものが好ましい。
塩基性のpH調整剤には、塩基性有機物質を用いることができ、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、コリン、グアニジン類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。
酸性のpH調整剤には、無機酸、有機酸及びその塩類を用いることができ、例えば、リン酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等やそれらの塩類、アミノ酸類等の両性塩類等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、脂肪族又は芳香族第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム、イミダゾリウム等の複素環第4級アンモニウム塩類、脂肪族若しくは複素環を含むホスホニウム又はスルホニウム塩類、アセチレングリコール等が挙げられる。
高分子分散剤としては、ポリマー主鎖又は側鎖に第1〜3級アミン、第4級アンモニウム塩基、若しくは第4級ホスホニウム塩基等を有する高分子、アクリル酸、その塩の単独重合体、水溶性アミノカルボン酸系重合体、或いは、アクリル酸エステルの(共)重合体等が挙げられる。
これらのpH調整剤、界面活性剤、高分子分散剤は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、室温硬化型の場合、樹脂と硬化剤とを混合した時点から反応が開始してしまうため、樹脂を含有する樹脂添加スラリーと、硬化剤を含有する硬化剤添加スラリーと、を別々に調製しておき、別々に調製したスラリーを、使用時に混合するようにしてもよい。樹脂添加スラリーと硬化剤添加スラリーを別々に調製した場合、セラミックス粉末は、いずれかのスラリーに混合しておけばよく、両方のスラリーに混合しておいてもよく、両方のスラリーとは別に、セラミックス粉末を含有するスラリーを別に用意しておいてもよい。なかでも、混合したとき濃度変動等が少なく、安定した操作ができるため、セラミックス粉末は樹脂添加スラリーと硬化剤添加スラリーの両方のスラリーに混合し、同程度の濃度に調整しておくと好ましい。
上記した原料混合物である原料スラリーを用い注型液を調製する。
注型液の粘度は、後述する注型液注入工程における充填が容易に行える粘度であればよく、例えば、せん断速度が10[1/s]における粘度は50Pa・s以下が好ましく、20Pa・s以下がより好ましい。充填後のハンドリング性を考慮すると注型液の粘度は0.1〜10Pa・sの範囲がさらに好ましい。注型液の粘度は、使用する原料において溶媒の使用量や樹脂の添加量によって容易に調整できる。
なお、原料混合工程における混合によって空気等が巻き込まれ、得られた注型液中に気体が含まれる場合がある。そのため、必要に応じて、次工程である注型液注入工程の前に、注型液に含有される気体を除去する脱泡工程を行う。注型液中に気体が含まれていると、硬化工程において内部に気泡によるポアが生じ、焼成して得られるセラミックス物品中にも残ってしまうおそれがある。
脱泡工程は、注型液を減圧状態において脱泡させればよく、脱泡ポンプ(真空ポンプ)や脱泡ミキサー等が用いられる。脱泡は、例えば、1〜5分、0.6〜10kPaの減圧下において処理すればよい。脱泡ミキサーを使用する場合、原料混合工程と脱泡工程を同時に実施できる。脱泡ミキサーとしては、例えば、真空ポンプ搭載の自転・公転ミキサー、プラネタリーミキサー等が挙げられる。
(注型液注入工程)
注型液注入工程は、上記原料混合工程及び必要に応じて脱泡工程を経て得られた注型液を、水溶性成形型に注入する工程である(S2)。
水溶性成形型は、水溶性の材料から構成され、注型液の注入、硬化の工程で安定的に形状を保持できる容器である。水溶性成形型は、水との接触により溶解するもので、例えば、上記本発明の一実施形態として説明した水溶性成形型が挙げられる。
水溶性成形型に注型液を注入するには、注型液を送液して水溶性成形型内に供給できる装置を用いればよく、例えば、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプ、シリンジポンプ等のポンプが一般的に挙げられる。特に、脈動を発生させない構造をもつ、精密等速カムを搭載した回転容積式ダイヤフラムポンプが好ましい。また、原料を混合して注型液を調製しながら送液可能なインラインミキサー等も使用できる。インラインミキサーを使用する場合には、上記原料混合工程と注型液注入工程とを同時に行うようにできる。また、インラインミキサーは、上記したように樹脂添加スラリーと、硬化剤添加スラリーと、を別々に用意して成形する場合、両スラリーを混合して直ぐに水溶性成形型に送液し充填可能であり好ましい。
(硬化工程)
硬化工程は、水溶性成形型内に注型液を注入した後、注型液内の樹脂成分を硬化させてセラミックス材料を所望の形状に硬化させるものである(S3)。硬化工程においては、注型液の特性に応じて、所望の硬化条件として硬化させるものである。
例えば、室温硬化型の注型液の場合は、樹脂添加スラリーと硬化剤添加スラリーとを混合した時点から反応が始まり硬化するため、所定時間放置しておけばよい。硬化時間としては、1時間〜3日程度とし、製造効率の点から1〜24時間が好ましく、1〜12時間がより好ましい。
また、加熱硬化型の注型液の場合は、所望の温度に加熱し、十分な硬化時間を確保すればよい。例えば、30〜95℃で5分〜2880分加熱硬化させればよい。製造条件や製造効率などを考慮すれば、35〜95℃で5分〜1440分が好ましく、50〜85℃で5分〜180分がより好ましい。
(脱型工程)
脱型工程は、硬化工程で硬化させたセラミックス材料の硬化体を水溶性成形型から取り出す工程である(S4)。脱型工程においては、水溶性成形型を水と接触させて、溶解させればよい。なお、水溶性成形型の溶解を効果的に行うために、水との接触は、水中への浸漬が好ましい。水溶性成形型の溶解に水中への浸漬を利用すれば、内部でセラミックス材料が硬化された水溶性成形型を水中に放置しておくだけで、極めて容易に脱型できる。
脱型工程で使用する水としては、常温(23℃)の水でもよいが、溶解を促進するために加温した温水でもよい。温水とする場合、その温度は、例えば、30〜80℃が好ましく、40〜70℃がより好ましく、50〜60℃が特に好ましい。
なお、水溶性成形型1が完全に溶解するまでの時間が長すぎると脱型が効率的に行えない。水溶性成形型1が完全に溶解するまでの時間が短すぎると、成形型の水への溶解性が高すぎたり、成形型の肉厚が薄すぎたり、するため硬化体の形状保持性が悪化するおそれがある。そのため、水溶性成形型1が全て溶解する全溶解時間は、10〜480分が好ましく、30〜300分がより好ましい。
また、脱型工程は、上記した硬化工程と同時に進行させてもよい。すなわち、水溶性成形型1に、注型液を注入後、すぐに脱型工程を行ってもよい。この場合、注型液が充填された水溶性成形型1が、注型液充填後直ちに水と接触され、水溶性成形型の溶解が進行する。このとき、注型液の硬化(ゲル化)を、水溶性成形型の溶解と同時に進行させる。
ただし、この場合、注型液が十分に硬化する前に、脱型に使用する水との接触をしないように、水溶性成形型1の溶解に対して、注型液を十分に硬化させておく。具体的には、注型液の硬化時間よりも、水溶性成形型の露出溶解時間が長くなるように(硬化時間<露出溶解時間)、水溶性成形型1を製造する。硬化時間と露出溶解時間の両者の時間の調整によって、注型液が硬化した後に、水溶性成形型が溶解(内部の成形体の一部が露出)され、所望の形状の硬化体が得られる。
硬化時間は、注型液を調製直後からゲル硬化により注型液が成形型通りの形状を保持できるまでの時間を意味し、露出溶解時間は、水溶性成形型1が水に浸漬されてからその内部の硬化体の一部が露出するまでの時間を意味する。
なお、本明細書における「硬化時間」とは、注型液中の樹脂と硬化剤の重合反応により3次元網目構造の形成が進行して、注型液が粘弾性固体である硬化体となり、ハンドリングに耐える充分な硬さを有するまでの時間のことである。硬化体が所定以上の硬さになっていない状態で脱型工程に進めたり、脱型後の硬化体を乾燥工程に進めたりした際には、硬化体に変形やクラックが生じる。
ハンドリングに充分といえる硬さは形状や寸法により適宜決定されるが、本明細書における「ハンドリングに充分といえる硬さ」とは、硬化体が2MPa以上の曲げ弾性率の値を持っていることである。本明細書における「硬化時間」の確認方法は、本発明の一態様における硬化体と同時に、破壊検査用の丸棒硬化体を所定の経過時間(例えば5分、10分、15分、20分、30分、60分、120分、180分)で最低3個(n=3)ずつ測定できる個数(例えば24個)作製し、所定の経過時間ごとに3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率が2MPa以上になった時間とする。例えば、測定条件は下記の通りである。
温度 室温(25±5℃)
支点間距離 30mm
試験片サイズ φ9mm×35mm
装置 島津製作所製 万能試験機テンシロン AGS−J10kN
3点曲げ試験における曲げ弾性率は、荷重−伸びのグラフから、直線部の初期勾配から任意の2点をとる接線法を用いて計算する。ここでは荷重0.3N、0.6Nの2点を取り、式(1)、(2)により計算を行い、測定数n=3で、その平均値を硬化体の曲げ弾性率とできる。
Figure 2021187156
Figure 2021187156
上記式において、Lは支点間距離(mm)、Dはサンプル直径(mm)、Fmaxは最大荷重d(N)、ΔFは曲げ荷重の変化量(N)、ΔSは伸びの変化量(N)である。
なお、硬化時間と露出溶解時間は、脱型に使用する水の温度、水溶性成形型の種類(樹脂及び硬化剤の種類や添加量等)や厚さ等により調整できる。
上記したように、本実施形態においては、水溶性成形型1に対して、注型液の溶媒として水を使用した場合も包含される。実際に溶媒として水を使用した場合にも大部分がセラミックス粉末等であるためか、良好な形状保持性を維持できており(実施例等)、実施可能性を確認した。
[セラミックス物品の製造方法]
次に、本発明の一実施形態であるセラミックス物品の製造方法について説明する。セラミックス物品の製造方法は、上記セラミックス材料の成形方法により得られた硬化体を乾燥させ成形体とする乾燥工程と、成形体を脱脂して脱脂体とする脱脂工程と、脱脂体を焼結させ焼結体とする焼結工程と、を有する。
すなわち、セラミックス物品の製造方法は、原料混合工程と、注型液注入工程と、硬化工程と、脱型工程と、乾燥工程と、脱脂工程と、焼成工程と、を有する(図3)。ただし、原料混合工程から脱型工程まで(S1〜S4)は、上記セラミックス材料の成形方法と同一であるため説明を省略する。
(乾燥工程)
乾燥工程は、脱型工程で得られた上記硬化体から水分、揮発性溶媒等を除去して乾燥させ成形体とする工程である(S5)。乾燥工程においては、硬化体にクラック等を生じさせないように緩やかに乾燥を行う。すなわち、硬化体の表面と内部における乾燥速度の差に起因する収縮応力によるクラック等の発生を防止しながら、乾燥させる。
乾燥工程の条件としては、例えば、25〜30℃、相対湿度60〜95%で、48時間〜7日等の比較的穏やかな条件で、長い時間かけて硬化体に含有する水分等を除去する。乾燥工程は、好ましくは、硬化体の含水率が絶乾時の質量に対して20%以下となるまで行う。
(脱脂工程)
脱脂工程は、乾燥工程で得られた上記成形体から樹脂、不揮発性溶媒等を除去して脱脂体とする工程である(S6)。脱脂工程においては、次工程の焼結工程で焼結を阻害する成分の大部分を取り除く。焼結を阻害する成分が多量に残留していると、焼結時に焼結体内にポアが生じたり、炭化物が副生成物として生じたりして、最終的な製品として求める特性が得られなくなる等のおそれがある。
脱脂工程の条件としては、例えば、400〜800℃までゆっくり時間をかけて昇温、保持し、その合計の処理時間として、5日〜14日等の比較的長い時間かけて成形体に含有する樹脂成分等を除去する。ここで、特に窒化ケイ素における脱脂工程は、好ましくは、成形体中の残存炭素量が200ppm以下となるまで行う。なお、残存炭素量について、炭化ケイ素(SiC)等の炭化物に関してはこの限りではない。
(焼成工程)
焼成工程は、脱脂工程を経た脱脂体を焼成してセラミックス材料を焼結させ、焼結体(セラミックス物品)とする工程である(S7)。焼成工程における焼成は、セラミックス材料を焼結させて、セラミックスとするものであり、公知の焼成方法を適用すればよい。
焼成工程は焼成して焼結体とできれば、焼成工程の条件は特に限定されないが、例えば窒化ケイ素を含む成形体を焼成する場合には、焼成は窒素雰囲気下で酸素濃度が50ppm以下の雰囲気が好ましい。また、焼成工程における焼成温度の最高温度を、窒化ケイ素が熱分解をし始める1800℃以下とするもので、この最高温度は1650〜1750℃の範囲が好ましい。また、焼成時間は240分〜12時間の範囲が好ましい。
(2次焼成工程)
焼成工程で得られた焼結体を、さらに所望の特性を有する焼結体とするために、2次焼成工程に付してもよい。この2次焼成工程は、上記した焼成工程(1次焼成)で得られた焼結体に対して、さらに高圧処理をして、焼結体の組織を緻密化する工程である。
この2次焼成工程における高圧処理としては、熱間等方圧加圧法(HIP)、ガス圧焼成、ホットプレス等を使用できる。一般に焼結により得られる焼結体は強度が高く、好ましくは、HIPにより1500〜1700℃、50〜200MPaの範囲で処理する。
本発明の一実施形態であるセラミックス物品の製法方法で製造されるセラミックス物品は、例えば軸受ボール(ベアリングボールなど)であってもよいが、特に限定されず、任意のセラミックス物品であってよい。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。なお、例1〜3は実施例である。
[例1]
(スラリーabの調製)
窒化ケイ素粉末(デンカ(株)製、商品名SN−9FWS) 75.73質量部、焼結助剤としてスピネル粉末 3.22質量部、溶媒として水 19.36質量部、分散剤として第4級アンモニウム塩35パーセント水溶液(セイケム製)1.69質量部、をビーズミルにより混合し、注型液のベースとなる窒化ケイ素スラリー(スラリーab)を調製した。
なお、上記ビーズミルにおいては、粉砕メディアとして窒化ケイ素ボール((株)ニッカトー製、直径1mm)を用いた。
(スラリーa1の調製及び脱泡)
上記スラリーabを94.56質量部、水溶性エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製) 5.44質量部、を真空ポンプ搭載自転公転式ミキサーにより混合し、エポキシ樹脂含有窒化ケイ素スラリー(スラリーa1)を調製した。
なお、減圧処理(0.6kPa)により、スラリーa1は10μm以上の気泡を含まないものとした。
(スラリーa2の調製及び脱泡)
上記スラリーab 99.19質量部、硬化剤(トリエチレンテトラミンと2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを2:1の質量比で混合したもの) 0.81質量部、を真空ポンプ搭載自転公転式ミキサーにより混合し、硬化剤含有窒化ケイ素スラリー(スラリーa2)を調製した。
なお、減圧処理(0.6kPa)により、スラリーa2は10μm以上の気泡を含まないものとした。
(注型液注入)
スラリーa1をスラリータンク1に、スラリーa2をスラリータンク2に、それぞれ同じ体積となるように充填した。続けて、脈動を発生させず、エアーの巻き込みを発生させない、精密等速カムを搭載した株式会社タクミナ製回転容積式ダイヤフラムポンプ2台を用いてスラリータンク1及びスラリータンク2からそれぞれスラリーa1及びスラリーa2を吸引、吐出させ、スラリーa1及びスラリーa2を合流させる配管を介して、ノリタケカンパニー製インラインミキサー(商品名:スタティックミキサー)に送液した。
インラインミキサーにて、混合してエポキシ樹脂及び硬化剤を含有する注型液Aとし、注型液Aをインラインミキサーの出口側に接続した水溶性成形型に供給し、充填した。
ここで使用した水溶性成形型は、図1A及び1Bに示した形状であり、その内部に球状のキャビティを有する成形型である。水溶性成形型は、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(商品名:Nichigo G−Polymer BVE8049、三菱ケミカル製)製で肉厚が0.8mmであり、有するキャビティの直径は64mmである。注入口としては、直径6.0mmの開口部が1つ設けられている2分割の型である。水溶性成形型を構成するブテンジオールビニルアルコールコポリマーの溶解速度は、80℃かつ水中の水溶性高分子濃度が0%で0.14 g/min、引張強度が88N/mm(23℃、相対湿度0%)、引張弾性率が3990N/mm(23℃、相対湿度0%)である。2分割の型は、事前に開口部をイオン交換水で濡らして押し付けて接合することで図1Bの形状となる。
(硬化)
注型液Aが充填された水溶性成形型1内で、エポキシ樹脂と硬化剤とを反応させ硬化させた。
(脱型)
水溶性成形型1を常温の水中に浸漬させ、その後、水を50℃に加熱して、水溶性成形型1を水に溶解させ脱型し、球状に硬化した窒化ケイ素硬化体Aを取り出した。
(乾燥)
脱型した窒化ケイ素硬化体(1)は、急速な乾燥によるクラック(球体表面と球体内部の乾燥速度差に起因する収縮応力によるクラック)の発生を抑制するために、温度25℃、相対湿度90%に制御した恒温・恒湿槽内で、1週間静置し乾燥させた。
(脱脂)
乾燥して得られた窒化ケイ素成形体(1)を、大気雰囲気下で、室温から600℃まで1週間かけて昇温させ、600℃で3時間保持して窒化ケイ素成形体(1)に含有する硬化樹脂成分を焼失させて脱脂処理を行った。
(焼成)
脱脂した窒化ケイ素成形体(1)を、窒素雰囲気下1700℃、保持時間7時間で焼成した。この焼成後に球状の窒化ケイ素焼結体(1)を得た。
(HIP)
さらに、窒化ケイ素焼結体(1)に対し、窒素ガスを圧媒として100MPaの圧力下1700℃、保持時間5時間でHIP(熱間等方圧プレス)を行った。HIP後に密度が3.2g/cmの緻密な球状の窒化ケイ素焼結体(1)を得た。
[例2]
水溶性成形型に注型液Aを注入後、速やかに水溶性成形型を50℃に加熱した水中に浸漬させ、注型液Aの硬化と、水溶性成形型の溶解による脱型とを、同時に進行させた以外は、例1と同様の操作により緻密な球状の窒化ケイ素焼結体(2)を得た。
例2において、硬化時間、露出溶解時間及び全溶解時間を調べたところ、硬化時間は約20分、露出溶解時間は約30分、全溶解時間は約3時間であった。本例において、硬化時間よりも露出溶解時間の方が長く、硬化と脱型を同時に進行しても問題ないことを確認した。
硬化時間は、下記の通りに測定した。
本実施例の水溶性成形型に注型液Aを注入して硬化体を作製すると同時に、注型液Aと同じ注型液を用いて丸棒硬化体(サイズは直径(φ)9mm×35mmの円柱状)を24個作製した。丸棒硬化体は、注型液Aと同じ注型液をポリプロピレン製の型に注入し、50℃に加熱した水中に浸漬することで得た。水中に浸漬させた24個の丸棒硬化体は、所定の経過時間(5分、10分、15分、20分、30分、60分、120分、180分)ごとに3個ずつ水中から引き上げ、型から取り外し、3点曲げ試験を実施し、曲げ強度および曲げ弾性率を算出した。各経過時間の曲げ強度および曲げ弾性率は、3個(n=3)の平均値とした。硬化時間は、試験結果より得られた曲げ弾性率が2MPa以上となった時間である。3点曲げ試験は、島津製作所製 万能試験機テンシロン AGS−J10kNを用い、温度25℃±5℃で、支点間距離30mmとした。曲げ強度および曲げ弾性率は詳細な説明中に記載した上述の式(1)、(2)を用いて算出した。このときの経過時間ごとの曲げ強度と曲げ弾性率を表1に示した。
Figure 2021187156
露出溶解時間は、水溶性成形型を水中に浸漬してから、水溶性成形型が溶解し、中の硬化体の一部が露出するまでの時間を測定した。
全溶解時間は、水溶性成形型を水中に浸漬してから、水溶性成形型全てが溶解するまでの時間を測定した。
[例3]
水溶性成形型として、その内面にスプレーコートによりフッ素樹脂コーティングして、1晩乾燥させて、5〜20μm厚のフッ素コートを有する水溶性成形型を得た。このフッ素コート水溶性成形型を使用した以外は、例1と同様の操作により緻密な球状の窒化ケイ素焼結体(3)を得た。
なお、上記例1〜3で得られた各窒化ケイ素焼結体(1)〜(3)について、その乾燥させた後の成形体と、焼結後の焼結体の直径を7箇所で測定した。このときの、直径の平均値と、最大値と最小値との差(max−min)を、表2及び表3に示した。
Figure 2021187156
Figure 2021187156
表2、表3の結果から、直径不同が小さく、精度の良い、所望の形状(本実施例の場合は所望の球状)を有するセラミックス焼結体が得られたことがわかった。
以上より、本実施形態のセラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法によれば、形状保持性が良好で、形状精度の高い硬化体及び焼結体が得られた。
本発明の成形型、セラミックス材料の成形方法及びセラミックス物品の製造方法により、脱型時の割れや変形等の発生を抑制し、形状精度の高いセラミックス硬化体及びセラミックス物品を製造できる。ここで製造されるセラミックス物品は、球状等以外にも複雑な形状の製造も可能で、同様に脱型時の割れや変形等の発生を抑制できる。
1…水溶性成形型、1a…注入口、10…キャビティ

Claims (15)

  1. 水溶性高分子材料で形成され、内部にセラミックス材料が充填されて所望の形状の硬化体を得るためのキャビティを有することを特徴とする水溶性成形型。
  2. 前記水溶性高分子材料が、アルキレングリコール類又はポリビニルアルコール類である請求項1に記載の水溶性成形型。
  3. 前記キャビティが球状である請求項1又は2に記載の水溶性成形型。
  4. 前記セラミックス材料が、セラミックス粉末、樹脂、硬化剤及び溶媒を混合してなる注型液であり、
    前記セラミックス材料の成形過程において前記水溶性成形型を水に溶解させたとき、前記硬化体の一部が露出する前記水溶性成形型の露出溶解時間が前記注型液の硬化時間よりも長い請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶性成形型。
  5. 前記水溶性成形型の内面に、撥水性材料で形成された被膜を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の水溶性成形型。
  6. セラミックス粉末、焼結助剤、樹脂、硬化剤及び溶媒を混合して、セラミックス材料となる注型液を調製し、
    前記注型液を、水溶性高分子材料製の水溶性成形型に注型し、
    前記水溶性成形型に注型された前記注型液中の前記樹脂を硬化させて所望の形状を有する硬化体とし、
    前記水溶性成形型を水に溶解させて前記硬化体を脱型させる、
    ことを特徴とするセラミックス材料の成形方法。
  7. 前記水溶性成形型を構成する前記水溶性高分子材料が、アルキレングリコール類又はポリビニルアルコール類である請求項6に記載のセラミックス材料の成形方法。
  8. 前記水溶性成形型として、内面に、撥水性材料で形成された被膜を有する水溶性成形型を用いる、請求項6または7に記載のセラミックス材料の成形方法。
  9. 前記硬化と前記脱型を同時に行う請求項6〜8のいずれか1項に記載のセラミックス材料の成形方法。
  10. 前記脱型において、前記硬化体の一部が露出する前記水溶性成形型の露出溶解時間が前記注型液の硬化時間よりも長い請求項9に記載のセラミックス材料の成形方法。
  11. 前記脱型を、前記水溶性成形型を30〜80℃の水中に浸漬して行う請求項6〜10のいずれか1項に記載のセラミックス材料の成形方法。
  12. 前記硬化により得られる前記硬化体が球形である請求項6〜11のいずれか1項に記載のセラミックス材料の成形方法。
  13. 前記セラミックス粉末が、酸化物基準の質量%表示で、α化率70%以上のSiを85質量%以上、第2族、第3族、第4族、第5族、第13族及び第14族の元素群から選ばれる少なくとも1種を含む焼結助剤を酸化物換算で1〜15質量%含有する請求項6〜12のいずれか1項に記載のセラミックス材料の成形方法。
  14. 請求項6〜13のいずれか1項に記載のセラミックス材料の成形方法により得られた前記硬化体を乾燥させて成形体とし、
    前記成形体を脱脂して脱脂体とし、
    前記脱脂体を焼成して焼結体とする、
    ことを特徴とするセラミックス物品の製造方法。
  15. 前記焼成で得られた焼結体を、熱間等方圧加圧(HIP)により緻密化する2次焼成を行う請求項14に記載のセラミックス物品の製造方法。
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