JP2021185835A - コロナウイルスのサブタイプの識別方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コロナウイルスSARS−CoV−2のL型とS型とを識別する方法の提供。【解決手段】SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域を識別用標的領域とし、ゲノムRNA中の前記識別用標的領域を包含する領域を増幅用標的領域とし、被験試料から抽出されたRNA又はそのcDNAを鋳型として、L型ウイルスの識別用標的領域のプラス鎖ゲノムRNA又は相補鎖ゲノムRNAのcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸をL型結合性オリゴヌクレオチドプローブと、S型ウイルスの識別用標的領域のプラス鎖ゲノムRNA又は相補鎖ゲノムRNAのcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸をS型結合性オリゴヌクレオチドプローブとの存在下で、増幅用標的領域を増幅する鋳型依存的核酸増幅反応を行い、増幅産物に基づいて、被験試料に含まれているSARS−CoV−2のL型とS型とを識別する方法。【選択図】なし

Description

本発明は、コロナウイルスSARS−CoV−2のゲノムRNAの28,144番目の塩基がウラシル(U)であるL型ウイルスと、当該塩基がシトシン(C)であるS型ウイルスとを識別する方法、及び当該方法に用いられるキットに関する。
2019年12月に最初の感染が報告された後、世界的な感染拡大が問題となっている新型コロナウイルス感染症(COVID−19)は、新型コロナウイルスSARS−CoV−2(Severe Acute Respiratory Syndrome CoronaVirus 2)を原因病原体とする感染症である。ごく最近、SARS−CoV−2のゲノムRNA配列(NCBIアクセッション番号:NC_045512.2)の28,144番目がウラシルであるL(ロイシン)型と、28,144番目がシトシンであるS(セリン)型の2つの主要な型が報告されている(非特許文献1)。L型は感染の初期段階で一般的であったことから、S型と比較して感染力が強い可能性があるとして注目されている。
遺伝子の塩基配列が変化する遺伝子変異の多くは、わずか1〜数塩基が挿入、欠失、他の塩基への転換等がなされている。このため、遺伝子変異の検出は1〜数塩基の変異部位以外は同じ塩基配列からなる野生型核酸と変異型核酸を識別して検出する必要がある。
DNAやRNAの1〜数塩基の変異を検出する方法としては、様々な技術が存在している。PCR(polymerase chain reaction)を利用した変異検出方法としては、例えば、蛍光物質とクエンチャーによる修飾オリゴヌクレオチドプローブを用いたPCR法が挙げられる。当該方法では、変異が入っていることが予想されるDNA領域を含むDNA断片をPCR増幅する反応を、変異が入っていることが予想される変異型DNA領域にハイブリダイズし、蛍光物質とクエンチャーで修飾されたオリゴヌクレオチドプローブの存在下で行う。変異型DNAに対しては当該プローブがアニールし、PCRに使われるDNAポリメラーゼのエクソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断され、蛍光物質とクエンチャーが乖離する結果、反応系に蛍光が生じる。野生型DNAの場合には、当該プローブがアニールしないため、蛍光は生じない。ただ、野生型と変異型のDNAが混在するサンプルでは、定量的な評価をする場合には煩雑な操作が必要なため、ヘテロ変異の検出には使いにくい。
1〜数塩基の変異を検出する方法として、DNA上の変異を含む領域を標的領域とし、当該標的領域にハイブリダイズ可能な17〜29塩基程度の短鎖RNA(オリゴリボヌクレオチド、ORN)の存在下で、当該標的領域を含む領域をPCR増幅するORNi−PCR法が報告されている(特許文献1)。ORNi−PCR法では、ORNがハイブリダイズするDNA領域のPCR増幅は特異的に阻害され、ORNがハイブリダイズしないDNAのみがPCR増幅される。つまり、増幅産物が得られた場合には、鋳型としたDNAは、目的の変異を有しておらず、増幅産物が得られなかった場合には、当該DNAは目的の変異を有していると識別できる。
特許第6653932号公報 国際公開第00/28082号 国際公開第02/16639号 特公平7−114718号公報 特許第2650159号公報
Tang et al, National Science Review, 2020, DOI: 10.1093/nsr/nwaa036 Barany, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 1991, vol.88, p.189-193. Sarrazin et al., Journal of Clinical Microbiology, 2001, vol.39, p.2850-2855. Dean et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2002, vol.99, p.5261-5266. Piepenburg et al., PLoS Biology, 2006, vol.4, e204. Nakaguchi et al., Journal of Clinical Microbiology, 2004, vol.42, p.4248-4292.
本発明は、SARS−CoV−2のL型とS型を識別する方法や当該方法のためのキットを提供することを主たる目的とする。
本発明者は、鋭意研究した結果、ORNi−PCR法を利用することによって、SARS−CoV−2のL型とS型の一塩基の差異を、陽性シグナルとして検出できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係るコロナウイルスのサブタイプの識別方法、及びコロナウイルス識別用キットは、下記の通りである。
[1] コロナウイルスSARS−CoV−2のゲノムRNAのうち、28,144番目の塩基がウラシルであるL型ウイルスと、28,144番目の塩基がシトシンであるS型ウイルスとを識別する方法であって、
SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域を、識別用標的領域とし、
SARS−CoV−2のゲノムRNA中の前記識別用標的領域を包含する領域を、増幅用標的領域とし、
L型ウイルスの前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブとし、
S型ウイルスの前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブとし、
被験試料から抽出されたRNA又は当該RNAから逆転写反応により得られたcDNAを鋳型として、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で、前記増幅用標的領域を増幅する鋳型依存的核酸増幅反応を行い、前記増幅反応の増幅産物に基づいて、前記被験試料に含まれているSARS−CoV−2が、S型ウイルスとL型ウイルスのいずれであるかを識別する、
コロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[2] 前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合に、前記被験試料中のSARS−CoV−2はS型ウイルスであり、
前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合に、前記被験試料中のSARS−CoV−2はL型ウイルスである、と識別する、前記[1]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[3] 前記識別用標的領域が、SARS−CoV−2のゲノムRNAのうち、28,122番目〜28,147番目の領域である、前記[1]又は[2]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[4] 前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及び前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、RNAを含むオリゴヌクレオチドプローブである、前記[1]〜[3]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[5] 前記被験試料から抽出されたRNAを鋳型として、逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型として鋳型依存的核酸増幅反応を行う、前記[1]〜[4]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[6] 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、PCR法、LAMP法、ICAN法、LCR法、SDA法、TMA法、MDA法、及びRPA法からなる群より選択される一種以上である、前記[5]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[7] 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、PCR法である、前記[6]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[8] PCR法が、変性ステップ、アニーリングステップ及び伸長ステップからなり、前記アニーリングステップ及び前記伸長ステップが、同じ温度で実施される、前記[7]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[9] 前記アニーリングステップ及び前記伸長ステップの温度が、54〜56℃である、前記[8]のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[10] 前記PCR法を、配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するフォワードプライマーと、配列番号6で表される塩基配列を有するリバースプライマーとを用いて行う、前記[7]〜[9]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[11] 前記増幅用標的領域の長さが、180〜700塩基長である、前記[7]〜[10]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[12] 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、NASBA法及びTRC法からなる群より選択される一種以上である、前記[1]〜[4]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[13] 前記鋳型依存的核酸増幅反応の開始時点における、前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又は前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの濃度が、10nM〜10μMである、前記[1]〜[12]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
[14] 前記[1]〜[11]のいずれかのコロナウイルスのサブタイプの識別方法に用いられる、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有し、
前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1で表される塩基配列を含み、
前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号2で表される塩基配列を含む、
コロナウイルス識別用キット。
[15] さらに、配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するフォワードプライマーと、配列番号6で表される塩基配列を有するリバースプライマーとを含有する、前記[14]のコロナウイルス識別用キット。
[16] さらに、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAと、配列番号8で表される塩基配列を有するDNAと、を含有する、前記[14]又は[15]のコロナウイルス識別用キット。
本発明に係るコロナウイルスのサブタイプの識別方法により、SARS−CoV−2のL型とS型の一塩基の差異を陽性シグナルとして検出することができ、両者を高精度かつ簡便に識別することができる。
また、本発明に係るコロナウイルス識別用キットにより、より簡便に、前記コロナウイルスのサブタイプの識別方法を実施して、被験試料中に含まれているSARS−CoV−2がL型とS型のいずれであるかを識別することができる。
本発明に係るコロナウイルスのサブタイプの識別方法の原理のうち、SARS−CoV−2のゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAを鋳型としてPCRを行う態様の模式図である。 SARS−CoV−2のORF8のSARS−CoV−2の遺伝子のORF8(open reading frame 8)(配列番号8)を示した図である。 表2に記載のフォワードプライマー3種とリバースプライマー1種がハイブリダイズする領域付近の、SARSとSARS−CoV−2のゲノムRNAのアラインメント図である。 実施例1において、L型鋳型用DNA又はS型鋳型用DNAを鋳型として、ORN_L、ORN_S、SARS−CoV−2_F1プライマー、及びSARS−CoV−2_Rプライマーを用いてORNi−PCRを行い、得られた反応液をアガロース電気泳動して分離したバンドの染色像である。 実施例2において、L型鋳型用DNA又はS型鋳型用DNAを鋳型として、ORN_L、ORN_S、SARS−CoV−2_F2プライマー、及びSARS−CoV−2_Rプライマーを用いてORNi−PCRを行い、得られた反応液をアガロース電気泳動して分離したバンドの染色像である。 実施例3において、L型SARS−CoV−2のゲノムRNAから得られたcDNAを鋳型としてORNi−PCRを行い、得られた反応液をアガロース電気泳動して分離したバンドの染色像である。
本発明及び本願明細書において、「塩基配列が相同である」とは「塩基配列が同一である」を意味し、「塩基配列が相補である」とは「塩基配列が互いに相補的である」を意味する。
<コロナウイルスのサブタイプの識別方法>
本発明に係るコロナウイルスのサブタイプの識別方法(以下、「本発明に係る識別方法」ということがある。)は、被験試料中のコロナウイルスSARS−CoV−2が、ゲノムRNAの28,144番目の塩基がウラシルであるL型ウイルスであるか、28,144番目の塩基がシトシンであるS型ウイルスであるかを、識別する方法である。SARS−CoV−2のL型ウイルスとS型ウイルスは、感染力は重症化のしやすさなどの点で相違する可能性がある。このため、本発明に係る識別方法により、被験動物から採取された被験試料中のSARS−CoV−2がL型とS型を識別することにより、当該型の特性に応じた適切な治療方法の選択が可能になる。例えば、L型はS型よりも感染力が高い可能性があるため、L型に感染していると判明した動物は、S型に感染していることが判明した動物よりも優先的に、隔離等の感染拡大防止措置をとったり、治療をすることが好ましい。
本発明に係る識別方法は、ORNi−PCR法を利用した方法であって、被験試料から抽出されたRNA又は当該RNAから逆転写反応により得られたcDNAを鋳型として、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域を、L型又はS型のSARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基に結合する1本鎖核酸の存在下で、鋳型依存的核酸増幅反応により増幅し、増幅産物の有無や量に基づいて、L型かS型のいずれであるかを識別する。本発明に係る識別方法においては、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域を、識別用標的領域とし、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の識別用標的領域を包含する領域を、増幅用標的領域とする。また、L型ウイルスのゲノムRNA中の前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブとする。S型ウイルスのゲノムRNA中の前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブとする。
図1に、本発明に係る識別方法のうちの一態様を模式的に示す。当該態様では、被験試料から抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型としてPCRを行う。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブとして、表1に記載の塩基配列からなるオリゴリボヌクレオチド(ORN_L)1を用い、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブとして、表1に記載の塩基配列からなるオリゴリボヌクレオチド(ORN_S)2を用いる。表1の塩基配列中、大文字の箇所がSARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基に相当する。
Figure 2021185835
図2に、SARS−CoV−2の遺伝子のORF8(open reading frame 8)のcDNA(配列番号9)を示す。図2中、28,144番目の塩基を、白黒反転文字で示し、四角で囲った部分が識別用標的領域(SARS−CoV−2のゲノムRNAの28,122番目〜28,147番目の領域)である。表1に記載のORNは、図2中の識別用標的領域と相同な塩基配列からなるオリゴリボヌクレオチドである。
図1の左側は、ORN_L1の存在下でPCRを行った場合の模式図である。鋳型のcDNAが、S型ウイルスのゲノムRNAの逆転写反応物であるDNA鎖3cとその相補鎖であるDNA鎖3gとからなる2本鎖DNAの場合には、ORN_L1は、鋳型のDNA鎖3gに対してミスマッチを有しているため両者の結合が弱く、よってプライマー4からのDNA鎖伸長反応が阻害されず、DNA増幅が生じ、増幅産物が得られる。一方で、鋳型のcDNAが、L型ウイルスのゲノムRNAの逆転写反応物であるDNA鎖3tとその相補鎖であるDNA鎖3aとからなる2本鎖DNAの場合には、ORN_L1はDNA鎖3aとミスマッチなくハイブリダイズする。DNA鎖3aを鋳型としたプライマー4からのDNA鎖伸長反応は、ORN_L1により阻害されるため、DNA増幅は起こらず、増幅産物は得られない。
図1の右側は、ORN_S2の存在下でPCRを行った場合の模式図である。鋳型のcDNAが、S型ウイルスのゲノムRNAの逆転写反応物であるDNA鎖3cとその相補鎖であるDNA鎖3gとからなる2本鎖DNAの場合には、S型ORN2は、DNA鎖3gとミスマッチなくハイブリダイズする。DNA鎖3gを鋳型としたプライマー4からのDNA鎖伸長反応は、ORN_S2により阻害されるため、DNA増幅は起こらず、増幅産物は得られない。一方で、鋳型のcDNAが、L型ウイルスのゲノムRNAの逆転写反応物であるDNA鎖3tとその相補鎖であるDNA鎖3aとからなる2本鎖DNAの場合には、ORN_S2は、鋳型のDNA鎖3aに対してミスマッチを有しているため両者の結合が弱く、よってプライマー4からのDNA鎖伸長反応が阻害されず、DNA増幅が生じ、増幅産物が得られる。
本発明に係る識別方法において、識別用標的領域は、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域であり、オリゴヌクレオチドプローブがハイブリダイズする領域である。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、鋳型依存的核酸増幅反応の核酸鎖伸長反応時に、L型ゲノムRNAの識別用標的領域(28,144番目の塩基がウラシルである領域:L型識別用標的領域)と相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAと、選択的にハイブリダイズする。S型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、鋳型依存的核酸増幅反応の核酸鎖伸長反応時に、S型ゲノムRNAの識別用標的領域(28,144番目の塩基がシトシンである領域:S型識別用標的領域)と相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAと、選択的にハイブリダイズする。
本発明に係る識別方法において、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の識別用標的領域は、28,144番目の塩基を含む領域であれば特に限定されるものではない。例えば、識別用標的領域は、SARS−CoV−2のゲノムRNA中の、28,144番目の塩基を含む10塩基以上の領域であることが好ましく、15塩基以上の領域であることがより好ましく、20塩基以上の領域であることがさらに好ましく、20〜35塩基の領域がよりさらに好ましい。
本発明に係る識別方法において、識別用標的領域は、鋳型依存的核酸増幅反応の核酸鎖伸長反応時に、L型識別用標的領域と同一の塩基配列からなるRNAが、L型ゲノムRNAと相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAとは結合するが、S型ゲノムRNAと相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAとは結合しないように、逆に、S型識別用標的領域と同一の塩基配列からなるRNAが、S型ゲノムRNAと相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAとは結合するが、L型ゲノムRNAと相補的な塩基配列からなるRNA又はDNAとは結合しないように、設計される。当該設計は、鋳型依存的核酸増幅反応の核酸鎖伸長反応の反応温度や反応液の塩濃度、鋳型依存的核酸増幅反応の種類等を考慮して、SARS−CoV−2のゲノムRNAの塩基配列に基づいて常法により設計される。当該設計は、一般的なプロープ設計に用いられる各種のソフトウェアを用いて行うこともできる。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、SARS−CoV−2のゲノムRNA又はそのcDNAと、それぞれの識別用標的領域においてハイブリダイズできる限り、プローブを構成するヌクレオチドは、特に限定されるものではない。当該核酸としては、例えば、RNA、DNA、修飾RNA、修飾DNA、RNAやDNAと同様にオリゴヌクレオチドを構成可能な人工核酸等が挙げられる。修飾RNA及び修飾DNAとしては、ヌクレオチドの糖、塩基、及びリン酸塩のいずれが修飾されたものであってもよい。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ等は、これらのヌクレオチドのうち、1種類のみからなるものであってもよく、2種類以上を組み合わせて構成されたものであってもよい。
塩基が修飾されたヌクレオチドとしては、例えば、5位修飾ウリジン又はシチジン(例えば、5−プロピニルウリジン、5−プロピニルシチジン、5−メチルシチジン、5−メチルウリジン、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ハロシチジン、5−ハロウリジン、5−メチルオキシウリジン等);8位修飾アデノシン又はグアノシン(例えば、8−ブロモグノシン等) ; デアザヌクレオチド(例えば7−デアザ-アデノシン等);O−及びN−アルキル化ヌクレオチド(例えば、N6−メチルアデノシン等) 等が挙げられる。また、糖が修飾されたヌクレオチドとしては、例えば、リボヌクレオチドの2'−OHが、H、OR、R、ハロゲン原子、SH、SR、NH2、NHR、NR、又はCN(ここで、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示す)等によって置換された2'位糖修飾、5'末端がモノリン酸化された5'末端リン酸化修飾が挙げられる。リン酸塩が修飾されたヌクレオチドとしては、隣接するリボヌクレオチドを結合するホスホエステル基を、ホスホチオエート基で置換したものが挙げられる。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、RNAを含むオリゴヌクレオチドプローブであることが好ましく、1本鎖RNA(オリゴリボヌクレオチドプローブ)であることがより好ましい。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、RNAとその他のヌクレオチドのキメラである場合、その他のヌクレオチドは、全塩基長の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、その5'末端及び/又は3'末端が修飾されていてもよい。例えば、5'末端及び/又は3'末端が、デオキシ化、リン酸化、アミノ化、ビオチン化、チオール化、コレステロール化、DIG(ジゴキシゲニン)化、クエンチャー(BHQ−1、BHQ−3など)、蛍光色素(DNP、Cy3、Cy5、TAMRA、6−FAMなど)などで修飾された一本鎖核酸を用いることができる。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、識別用標的塩基配列とハイブリダイズする領域を有していればよく、当該領域以外の領域を有していてもよい。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、公知の方法で人工的に化学合成することにより作製することができる。また、これらのオリゴヌクレオチドプローブは、SARS−CoV−2のゲノムRNAのcDNAを鋳型として、in vitro転写法により作製することができる。
本発明に係る識別方法では、被験試料から抽出されたRNAを鋳型として、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で、識別用標的領域を含む領域を増幅する鋳型依存的核酸増幅反応を行い、得られた増幅産物に基づいて、被験試料に含まれているSARS−CoV−2が、S型ウイルスとL型ウイルスのいずれであるかを識別する。SARS−CoV−2のゲノムRNA中、鋳型依存的核酸増幅反応において増幅する対象の領域を、増幅用標的領域という。増幅用標的領域は、識別用標的領域を含む領域であれば特に限定されるものではなく、鋳型依存的核酸増幅反応の種類や、増幅産物の検出方法等を考慮して適宜決定することができる。
本発明に係る識別方法において、鋳型依存的核酸増幅反応は、核酸合成酵素が鋳型核酸に基づいて相補鎖の合成を繰り返すことにより、目的領域の核酸鎖を増幅させる反応である。本発明において用いられる鋳型依存的核酸増幅反応は、DNAを鋳型とする反応であってもよく、RNAを鋳型とする反応であってもよい。本発明において行なわれる鋳型依存的核酸増幅反応が、RNAを鋳型とする反応の場合、被験試料から抽出されたRNAを鋳型として、直接鋳型依存的核酸増幅反応を行うことができる。一方で、本発明において行なわれる鋳型依存的核酸増幅反応が、DNAを鋳型とする反応の場合、被験試料から抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型として鋳型依存的核酸増幅反応を行うことができる。逆転写反応は、逆転写酵素を用いて常法により行うことができる。
DNAを鋳型とする鋳型依存的核酸増幅反応としては、例えば、PCR法、LAMP法(Loop-mediated isothermal Amplification:特許文献2)、ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids:特許文献3)、LCR法(Ligase Chain Reaction:非特許文献2)、SDA法(Strand Displacement Amplification:特許文献4)、TMA法(Transcription Mediated Amplification:非と特許文献3)、MDA法 (Multiple Displacement Amplification:非特許文献4)、 及びRPA(Recombinase Polymerase Amplification:非特許文献5)法からなる群より選択される1種以上を用いることができる。これらの鋳型依存的核酸増幅反応は、反応液にL型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有させる以外は、常法により行うことができる。
RNAを鋳型とする鋳型依存的核酸増幅反応としては、例えば、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification:特許文献5)、及びTRC法(Transcription-Reverse Transcription-Concerted method:非特許文献6)からなる群より選択される1種以上を用いることができる。これらの鋳型依存的核酸増幅反応は、反応液にL型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有させる以外は、常法により行うことができる。
DNAを鋳型とする鋳型依存的核酸増幅反応を行う場合、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、被験試料から抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応により得られたcDNAのうち、識別用標的領域と相補的な塩基配列からなる領域とハイブリダイズする。RNAを鋳型とする鋳型依存的核酸増幅反応を行う場合、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブは、被験試料から抽出されたRNAのうち、識別用標的領域と相補的な塩基配列からなる領域とハイブリダイズする。
鋳型依存的核酸増幅反応において用いるプライマーは、それぞれの核酸増幅方法に応じて、適切なプライマーを用いることができる。それぞれの核酸増幅方法に適切なプライマーは、SARS−CoV−2のゲノムRNAの配列情報に基づき、公知技術を用いて設計することができ、公知の方法で製造することができる。また、鋳型依存的核酸増幅反応の反応条件は、それぞれの核酸増幅方法の原理に則った特異的増幅産物が生成される限り特に限定されず、公知技術に基づいて適宜設定することができる。
鋳型依存的核酸増幅反応において用いるプライマーは、目的のSARS−CoV−2のゲノムRNA又はそのcDNA中の増幅用標的領域を特異的に増幅できるように設計される。具体的には、プライマーは、SARS−CoV−2のゲノムRNAに特異的な塩基配列であり、他の生物やウイルスのゲノム等において同一又は類似の塩基配列が見られないような領域を標的として設計されることが好ましい。特に、SARS−CoV−2の近縁種であるSARSのゲノムRNA(NCBIアクセッション番号:NC_004718.3)は、SARS−CoV−2のゲノムRNAと類似しているため、本発明に係る識別方法において、鋳型依存的核酸増幅反応で使用されるプライマーとしては、SARSのゲノムRNAとは相違する塩基配列とハイブリダイズするように設計されることが好ましい。このようなプライマーは、通常公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL等)を利用して、一般的にPCRのプライマーを設計する際に使用されているソフトウェアを利用して設計できる。
鋳型依存的核酸増幅反応に用いる核酸合成酵素は特に限定されず、上記に例示したそれぞれの核酸増幅方法に適したDNAポリメラーゼ及び/又はRNAポリメラーゼを適宜選択して用いることができる。鋳型依存的核酸増幅反応にDNAポリメラーゼを用いる場合、用いるDNAポリメラーゼは特に限定されず、上記に例示したそれぞれの核酸増幅方法に適したDNAポリメラーゼを用いることができる。例えば、polI型、α型、非polI非α型、又は混合型DNAポリメラーゼ(複数のDNAポリメラーゼの混合物)などを挙げることができる。なかでも、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。α型DNAポリメラーゼは、5’−3’エクソヌクレアーゼ活性を有しないDNAポリメラーゼである。α型DNAポリメラーゼとしては、例えば、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)、Pyrobest DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ社製) などが市販されており、これらを好適に用いることができる。α型DNAポリメラーゼを用いる鋳型依存的核酸増幅反応としては、PCRが好ましい。
核酸増幅反応の反応液は、目的の反応が進行する組成の反応液であれば特に限定されないが、通常、鋳型核酸、プライマー(プライマーセット)、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ及び/又はRNAポリメラーゼ)、核酸合成酵素の基質となるヌクレオチドが含まれる。これら以外に、反応液には、緩衝剤、塩類等が添加され、必要に応じて、酵素の保護剤、Tm値の調整剤、界面活性剤等が添加される。緩衝剤としては、Tris−HCl等の中性から弱アルカリ性に緩衝作用を持つものが用いられる。pHは使用する核酸合成酵素に応じて至適pH付近に調整される。塩類は、酵素の活性維持や核酸のTm値調整のために適宜添加され、具体的には、KCl、NaCl、MgCl、MgSO、(NH SO等が用いられる。酵素の保護剤としては、ウシ血清アルブミンや糖類が使用される。さらに、Tm値の調整剤には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、ベタイン(N,N,N,−トリメチルグリシン)等が使用される。界面活性剤には、Tween 20、Triton X等が使用される。反応液の具体的な組成は、公知技術に基づいて適宜設定することができる。反応液の具体的な組成は、実際に使用する鋳型、プライマー、核酸合成酵素、一本鎖核酸の具体的な組み合わせに応じて予備検討を行い、適宜設定することが好ましい。
鋳型依存的核酸増幅反応の反応液へのL型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブの添加量は、L型とS型の一塩基の差異を認識して、鋳型核酸にハイブリダイズすることによって増幅反応を阻害する効果が奏される量であれば、特に限定されるものではなく、使用する鋳型依存的核酸増幅反応における具体的条件ごとに予備検討を行い、適宜設定することができる。具体的には、例えば、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブの鋳型依存的核酸増幅反応の開始時点における反応液の濃度が、10μM以下が好ましく、2μM以下がより好ましい。当該濃度の下限は特に限定されないが、10nM以上が好ましく、50nM以上がより好ましく、100nM以上がさらに好ましく、500nM以上がよりさらに好ましい。
鋳型依存的核酸増幅反応により得られた増幅産物は、PCR等の核酸増幅反応の増幅産物の検出に一般的に使用されている各種の方法により検出することができる。当該検出方法としては、例えば、アガロースゲル電気泳動で分画したバンドをエチジウムブロマイド等により染色する方法、インターカレーター法、融解曲線分析法、TaqManプローブ等を用いた蛍光検出法が挙げられる。インターカレンター法は、サイバーグリーン等の蛍光性インターカレーターが、生成された二本鎖DNAに結合して蛍光を発することを利用した方法であり、増幅産物の増加とともに蛍光強度が増大する。反応溶液に励起光を照射して蛍光強度を測定することにより、増幅産物の生成量をモニタリングすることができる。また、標識物質で修飾したプライマーを用いた場合には、当該標識物質を指標として検出することができる。蛍光物質で標識されたプライマーを使用した場合には、カラムクロマトグラフィー等により核酸増幅反応後の反応液から未反応のプライマーを除いた後、蛍光強度を測定することにより、増幅産物を検出できる。TaqManプローブ等を用いた蛍光検出法は、蛍光物質(プローブの5'側)とクエンチャー(プローブの3'側)で修飾されたオリゴヌクレオチドプローブをPCR反応液に加えることにより、プローブ標的領域の核酸増幅に応じて、PCRに使われるDNAポリメラーゼのエクソヌクレアーゼ活性によってプローブが切断され、蛍光物質とクエンチャーが乖離する結果、反応系に生じる蛍光を検出できる。
本発明に係る識別方法においては、型依存的核酸増幅反応により得られた増幅産物に基づいて、被験試料に含まれているSARS−CoV−2が、S型ウイルスとL型ウイルスのいずれであるかを識別する。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物が得られ、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での鋳型依存的核酸増幅反応では増幅産物が確認できなかった場合には、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブによって増幅阻害が生じていることから、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はS型ウイルスであると識別できる。逆に、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下では鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物が得られ、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での鋳型依存的核酸増幅反応では増幅産物が確認できなかった場合には、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブによって増幅阻害が生じていることから、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はL型ウイルスであると識別できる。
S型結合性オリゴヌクレオチドプローブによる増幅阻害効果が弱い場合には、被験試料に含まれているSARS−CoV−2がS型ウイルスであった場合でも、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物が得られるだけではなく、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下でも鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物が検出される場合がある。L型結合性オリゴヌクレオチドプローブによる増幅阻害効果が弱い場合も同様である。S型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有させた反応液と、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有させた反応液の両方で増幅産物が得られた場合には、両反応の増幅産物量を比較する。
L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合には、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブによって増幅阻害が生じていることから、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はS型ウイルスであると識別できる。例えば、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での相対増幅産物量を1とした場合の、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での相対増幅産物量が、好ましくは1.25倍以上である場合、より好ましくは1.5倍以上である場合、さらに好ましくは1.75倍以上である場合、よりさらに好ましくは2倍以上である場合に、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はS型ウイルスであると識別できる。
逆に、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合には、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブによって増幅阻害が生じていることから、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はL型ウイルスであると識別できる。例えば、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での相対増幅産物量を1とした場合の、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での相対増幅産物量が、好ましくは1.25倍以上である場合、より好ましくは1.5倍以上である場合、さらに好ましくは1.75倍以上である場合、よりさらに好ましくは2倍以上である場合に、被験試料に含まれているSARS−CoV−2はL型ウイルスであると識別できる。
本発明に係る識別方法における鋳型依存的核酸増幅反応としては、汎用されており、増幅産物の検出も比較的簡単であることから、PCR法であることが好ましい。PCR法は、一般的には、変性ステップ、アニーリングステップ及び伸長ステップからなるサイクルを繰り返すことで増幅産物を得る。アニーリング温度は、使用するポリメラーゼの至適温度や識別用標的領域のTm値を考慮して設定することが好ましい。Tm値は、最近接塩基対法、GC%法等の公知の計算方法に基づいて算出することができる。例えば、以下の計算式で算出することができる。なお、式中、a、u、g、cは、A、U、G、Cそれぞれの塩基の数を示す。
Tm(℃)= (a+u)×2+(g+c)×4
アニーリング温度は、例えば上記計算式で算出される識別用標的領域のTm値に対して、[Tm値−25℃]〜[Tm値℃]の範囲内であることが好ましく、[Tm値−20℃]〜[Tm値−5℃]の範囲内であることがより好ましい。
本発明に係る識別方法において、鋳型依存的核酸増幅反応としてPCRを行う場合、一般的な3ステップ法(変性→アニーリング→伸長のサイクル)で行ってもよいが、アニーリングステップと伸長ステップを同じ温度で行う2ステップ法(変性→アニーリング/伸長のサイクル)で行うことが好ましい。アニーリング温度では、鋳型核酸中の識別用標的領域と相補的な領域とハイブリダイズするが、伸長温度では当該領域とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドプローブを用いた場合、当該オリゴヌクレオチドプローブによる伸長反応の阻害が不十分となり、偽陽性が生じる場合がある。2ステップ法を行うことにより、この様な偽陽性の問題を回避できる。
例えば、表1に記載のORN_L又はORN_Sを添加し、被験試料から抽出されたRNAから逆転写反応により得られたcDNAを鋳型として、2ステップPCRを行う場合には、ORN_L及びORN_SのTm値と使用するポリメラーゼの至適温度から、アニーリングステップと伸長ステップの温度は、50〜75℃が好ましく、50〜60℃がより好ましく、54〜56℃がさらに好ましい。また、核酸伸長反応が比較的安定であること、かつ増幅産物の検出も比較的容易である点から、増幅産物の大きさ(塩基長)が、50〜1000、好ましくは100〜800、より好ましくは180〜700となるように、フォワードプライマーとリバースプライマーは設計されることが好ましい。
より具体的には、アニーリングステップと伸長ステップを50〜60℃で行う場合、2ステップPCRで使用するプライマーは、表2に記載のセットを用いることが好ましい。表中の増幅産物は、SARS−CoV−2のゲノムRNAから得られたcDNAを鋳型としてPCRを行った場合に得られる増幅産物の長さである。
Figure 2021185835
本発明に係る識別方法において、鋳型依存的核酸増幅反応としてPCRを行う場合、定量PCR(リアルタイムPCR、デジタルPCR等) を行ってもよい。これらの定量的PCRを行う場合には、反応終了時点には、増幅産物の相対量が得られる。
本発明及び本願明細書において、「被験試料」とは、核酸が含まれている試料であって、SARS−CoV−2の存在の有無やその型の識別に供試されるものである。本発明に係る識別方法に供される被験試料としては、SARS−CoV−2が存在している可能性があるものであれば、特に限定されるものではなく、動物の組織や細胞の抽出液(ライセート)、培養細胞の細胞抽出液、土壌等の自然界から採取された試料やその粗精製物等を用いることができる。中でも、SARS−CoV−2の感染が疑われる動物から採取された試料であることが好ましい。
被験試料が動物から採取された試料である場合、動物としては、ヒトであってもよく、家畜、養殖魚、愛玩動物、実験動物のようにヒトに飼育されている動物であってもよく、野生動物であってもよい。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、ロバ、ヒツジ、サル、クジラ等の哺乳類;ニワトリ、インコ、ハト、カラス、カモ、ハクチョウ、インコ、カナリア、オウム、カモメ、ツバメ等の鳥類;ヘビ、ワニ、トカゲ等の爬虫類;カエル、イモリ、サンショウウオ等の両生類;ゼブラフィッシュ、メダカ、フナ、キンギョ、コイ、マグロ、ハマチ、タイ、イワシ等の魚類;エビ、カニ等の甲殻類等が挙げられる。サルとしては、具体的には、チンパンジー、オランウータン、ニホンザル、ゴリラ、ボノボ、テナガザル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセットメガネザル、クモザル、オマキザル等の非ヒト霊長類が挙げられる。
被験試料が動物から採取された試料である場合、当該被検試料は、血液、血清、血漿、リンパ液、鼻咽頭ぬぐい液、唾液、涙液、喀痰、腹腔液、骨髄液、尿等が挙げられる。これらの試料の動物からの採取は、常法により行うことができる。被験試料からのRNAの抽出は、フェノール/クロロホルム法等の公知の手法により行うことができる。また、市販のRNA抽出用キットを用いることもできる。
<コロナウイルス識別用キット>
本発明に係る識別方法に用いられる試薬等をキット化することにより、当該方法をより簡便に行うことができる。本発明に係る識別方法のうち、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを有する含むことが好ましい。中でも、ORN_Lのように、配列番号1で表される塩基配列を含むL型結合性オリゴヌクレオチドプローブと、ORN_Sのように、配列番号2で表される塩基配列を含むS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含むキットがより好ましい。
当該キットには、核酸増幅反応に用いるプライマーを更に含むことが好ましい。キットが有するプライマーとしては、表に記載の物が挙げられる。当該キットには、さらに、逆転写反応や核酸増幅反応に使用する、逆転写酵素、ポリメラーゼ、反応液を調製するための濃縮バッファー、dNTP等を含ませることもできる。
当該キットには、核酸増幅反応のコントロールとなる、人工的に設計されたDNAやRNAを鋳型として含ませることもできる。これらの鋳型として用いられる人工核酸は、被験試料から抽出されたRNA又はそのcDNAに混合した内部コントロールとしても使用できるように、当該人工核酸を鋳型として得られる増幅産物の塩基長が、SARS−CoV−2のゲノムRNAのcDNAを鋳型とした場合に得られる増幅産物の塩基長と異なるように設計されていることが好ましい。
例えば、表2のSARS−CoV−2_F1プライマーとSARS−CoV−2_Rプライマーのセット、又はSARS−CoV−2_F2プライマーとSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用い、表1に記載のORN_L又はORN_Sをオリゴヌクレオチドプローブとして用いて2ステップPCRを行う場合には、L型用の人工合成DNA(配列番号7)とS型用の人工合成DNA(配列番号8)を、鋳型コントロールとしてキットに含ませることができる。これらの人工合成DNAを鋳型とした場合の増幅産物の大きさは、SARS−CoV−2のゲノムRNAのcDNAを鋳型とした場合とは異なる。SARS−CoV−2_F1プライマーとSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた場合、人工合成DNAを鋳型とした場合の増幅産物は300bpであり、SARS−CoV−2_F2プライマーとSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた場合、人工合成DNAを鋳型とした場合の増幅産物は250bpである。
Figure 2021185835
本発明に係るコロナウイルス識別用キットには、さらに、当該キットを用いて本発明に係る識別方法を行うためのプロトコールが記載された書面を含むことも好ましい。当該プロトコールは、当該キットを収容した容器の表面に記載されていてもよい。
次に、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1]
ORNi−PCR法を利用してSARS−CoV−2のL型とS型を識別するために、SARS−CoV−2のゲノムRNAの塩基配列情報を検討し、識別用標的領域を設計した。PCRは、KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO社製)を用いる2ステップPCRを行った。
<識別用標的領域の設計とL型/S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの合成>
SARS−CoV−2のゲノムRNAの塩基配列情報に基づいて、Tm値が55〜75℃程度となり、1塩基のみのミスマッチの識別が可能となるよう、28,144番目の塩基が領域の末端付近、例えば、両末端から5塩基以内になるように、識別用標的領域を設計した。この結果、図2の四角で囲われた領域(L型のTm値:74℃、S型のTm値:76℃)を、識別用標的領域として決定した。
設計された識別用標的領域の塩基配列と同一の塩基配列からなるRNA(リボオリゴヌクレオチド)を、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブとした(表1)。両者は、塩基配列に基づいて、化学合成されたもの(FASMAC社製)を用いた。
<プライマーの設計と合成>
SARS−CoV−2のゲノムRNAの塩基配列情報に基づいて、増幅産物の大きさが150〜800bp、伸長反応時の温度が55℃でプライマーとして機能し得るフォワードプライマーとリバースプライマーを設計した。この際、SARS−CoV−2の近縁種である他のコロナウイルスのゲノムRNAの非特異的な増幅が抑制されるように、これらのコロナウイルスのゲノムRNAの塩基配列との相同性が低い領域を選択してプライマーを設計した。検討した7種のコロナウイルスのゲノムRNAのNCBIアクセッション番号は以下の通りである:HCoV−229E(NC_002645.1)、HKU1(NC_006577.2)、NL63(NC_005831.2)、OC43(NC_006213.1)、MARS(NC_019843.3)、SARS(NC_004718.3)、及びSARS−CoV−2(NC_045512.2)。
7種のコロナウイルスのゲノムRNAの塩基配列を比較したところ、SARS−CoV−2の28,144番目の塩基付近の領域は、SARSとSARS−CoV−2では比較的保存されていたものの、その他のコロナウイルスでは保存されていなかった。そこで、SARSとSARS−CoV−2のゲノムRNAを比較したところ、両者の相同性が低い領域を選択して、表2に記載のフォワードプライマー3種とリバースプライマー1種を設計した。各プライマーがハイブリダイズする領域付近について、SARSとSARS−CoV−2のゲノムRNAのアラインメント図を図3に示す。図3(A)は、SARS−CoV−2_F1プライマー付近であり、図3(B)は、SARS−CoV−2_F2プライマー付近であり、図3(C)は、SARS−CoV−2_F3プライマー付近であり、図3(D)は、SARS−CoV−2_Rプライマー付近である。図中、四角で囲われた領域が、各プライマーが設計された領域である。各プライマーは、塩基配列に基づいて、化学合成されたもの(ユーロフィンジェノミクス社製)を用いた。
<ORNi−PCR>
ORN_L、ORN_S、SARS−CoV−2_F1プライマー、及びSARS−CoV−2_Rプライマーを用いてORNi−PCRを行い、得られた増幅産物に基づいてSARS−CoV−2のL型とS型を識別できるか調べた。表3に記載のL型鋳型用人工DNA又はS型鋳型用人工DNAに対して、CUGA 7gRNA Synthesis Kit(ニッポンジーン社製)を用いてin vitro転写反応を行い、得られたRNAを鋳型として逆転写酵素(ReverTraAce qPCR RT Kit、TOYOBO社製)を用いて逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型(L型鋳型用DNA、S型鋳型用DNA)として用いた。
0.004pgのL型鋳型用DNA又はS型鋳型用DNA、0.3μMのSARS−CoV−2_F1プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマー、並びに1μMのORN_L又はORN_S、並びにポリメラーゼを含む反応用濃縮液(TOYOBO社製)を混合して、10μLの反応液を調製した。各反応液に対してPCRを行った。PCRは、94℃、2分間の変性ステップ、次いで、98℃、10秒間、55℃、50秒間を1サイクルとし、これを28サイクル行うアニーリング/変性ステップ、からなる温度条件で行った。得られた増幅産物は、2%のアガロースゲルを用いて電気泳動し、分離したバンドをエチジウムブロマイド染色した。
アガロース電気泳動して分離したバンドの染色像を図4に示す。図4(A)はORN_L存在下でのPCRの増幅産物の結果であり、図4(B)はORN_S存在下でのPCRの増幅産物の結果である。ORN_LとORN_Sのいずれも含まない反応液では、L型鋳型用DNAとS型鋳型用DNAのいずれであっても、目的の大きさ(300bp)の増幅産物のバンドが確認された。一方で、ORN_Lを含む反応液では、S型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドが確認されたが、L型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドは確認されなかった(図4(A))。ORN_Sを含む反応液では、L型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドが確認されたが、S型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドは確認されなかった(図4(B))。これらの結果から、本実験で使用したプライマーセットとORN_L及びORN_Sを用いることにより、増幅産物の有無によってSARS−CoV−2のL型とS型を識別できることが確認された。
[実施例2]
SARS−CoV−2_F1プライマーに代えて、SARS−CoV−2_F2プライマーを用いた以外は、実施例1と同様にして、ORNi−PCRを行い、得られた増幅産物に基づいてSARS−CoV−2のL型とS型を識別できるか調べた。
アガロース電気泳動して分離したバンドの染色像を図5に示す。図5(A)はORN_L存在下でのPCRの増幅産物の結果であり、図5(B)はORN_S存在下でのPCRの増幅産物の結果である。ORN_LとORN_Sのいずれも含まない反応液では、L型鋳型用DNAとS型鋳型用DNAのいずれであっても、目的の大きさ(250bp)の増幅産物のバンドが確認された。一方で、ORN_Lを含む反応液では、S型鋳型用DNAを鋳型とした場合には、ORN_Lを含まない反応液と同程度の染色強度の増幅産物のバンドが確認されたが、L型鋳型用DNAを鋳型とした場合には、ORN_Lを含まない反応液よりもかなり染色強度の弱いバンドしか確認されなかった(図5(A))。一方で、ORN_Sを含む反応液では、L型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドが確認されたが、S型鋳型用DNAを鋳型とした場合には増幅産物のバンドは確認されなかった(図5(B))。これらの結果から、実施例1と同様に、本実験で使用したプライマーセットとORN_L及びORN_Sを用いることにより、増幅産物の有無によってSARS−CoV−2のL型とS型を識別できることが確認された。
[実施例3]
L型のSARS−CoV−2のゲノムRNAの全長を鋳型とし、SARS−CoV−2_F1プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセット、SARS−CoV−2_F2プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセット、又はSARS−CoV−3_F1プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた以外は、実施例1と同様にして、ORNi−PCRを行い、得られた増幅産物に基づいてSARS−CoV−2のL型とS型を識別できるか調べた。
L型のSARS−CoV−2のゲノムRNA(Twist Bioscience社製)を鋳型として、逆転写酵素(ReverTraAce qPCR RT Kit、TOYOBO社製)を用いた逆転写反応を行い、cDNAを得た。逆転写反応は、逆転写酵素の製造元が推奨するプロトコールに従って行った。
得られたcDNAを鋳型として、実施例1と同様にしてORNi−PCRを行い、得られた増幅産物を電気泳動し、分離したバンドをエチジウムブロマイド染色した。アガロース電気泳動して分離したバンドの染色像を図6に示す。図6(A)は、SARS−CoV−2_F1プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた反応液の増幅産物の結果、図6(B)は、SARS−CoV−2_F2プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた反応液の増幅産物の結果、図6(C)は、SARS−CoV−3_F1プライマー及びSARS−CoV−2_Rプライマーのセットを用いた反応液の増幅産物の結果である。
いずれのプライマーセットを用いた場合でも、ORN_Sを含む反応液では、ORN_LとORN_Sのいずれも含まない反応液と同程度の染色強度の増幅産物のバンドが確認されたが、ORN_Lを含む反応液では、ORN_Lを含まない反応液よりもかなり染色強度の弱いバンドしか確認されなかった(図6(A)〜(C))。これらの結果から、L型のSARS−CoV−2のゲノムRNAに由来するcDNAを鋳型とした場合には、ORN_Sは特に増幅阻害を生じさせないが、ORN_Lによって増幅阻害が生じることから、得られた増幅産物に基づいてSARS−CoV−2のL型とS型を識別できることが明らかである。
1…ORN_L、2…ORN_S、3c、3g、3t、3a…SARS−CoV−2のゲノムRNAから得られたcDNA、4…プライマー。

Claims (16)

  1. コロナウイルスSARS−CoV−2のゲノムRNAのうち、28,144番目の塩基がウラシルであるL型ウイルスと、28,144番目の塩基がシトシンであるS型ウイルスとを識別する方法であって、
    SARS−CoV−2のゲノムRNA中の28,144番目の塩基を含む領域を、識別用標的領域とし、
    SARS−CoV−2のゲノムRNA中の前記識別用標的領域を包含する領域を、増幅用標的領域とし、
    L型ウイルスの前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブとし、
    S型ウイルスの前記識別用標的領域におけるプラス鎖ゲノムRNA、又は前記識別用標的領域における相補鎖ゲノムRNAから逆転写反応により得られたcDNAにハイブリダイズ可能な1本鎖核酸を、S型結合性オリゴヌクレオチドプローブとし、
    被験試料から抽出されたRNA又は当該RNAから逆転写反応により得られたcDNAを鋳型として、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又はS型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下で、前記増幅用標的領域を増幅する鋳型依存的核酸増幅反応を行い、前記増幅反応の増幅産物に基づいて、前記被験試料に含まれているSARS−CoV−2が、S型ウイルスとL型ウイルスのいずれであるかを識別する、
    コロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  2. 前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合に、前記被験試料中のSARS−CoV−2はS型ウイルスであり、
    前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量が、前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブの存在下での前記鋳型依存的核酸増幅反応の増幅産物量よりも多い場合に、前記被験試料中のSARS−CoV−2はL型ウイルスである、と識別する、請求項1に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  3. 前記識別用標的領域が、SARS−CoV−2のゲノムRNAのうち、28,122番目〜28,147番目の領域である、請求項1又は2に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  4. 前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及び前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、RNAを含むオリゴヌクレオチドプローブである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  5. 前記被験試料から抽出されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型として鋳型依存的核酸増幅反応を行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  6. 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、PCR法、LAMP法、ICAN法、LCR法、SDA法、TMA法、MDA法、及びRPA法からなる群より選択される一種以上である、請求項5に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  7. 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、PCR法である、請求項6に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  8. PCR法が、変性ステップ、アニーリングステップ及び伸長ステップからなり、前記アニーリングステップ及び前記伸長ステップが、同じ温度で実施される、請求項7に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  9. 前記アニーリングステップ及び前記伸長ステップの温度が、54〜56℃である、請求項8に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  10. 前記PCR法を、配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するフォワードプライマーと、配列番号6で表される塩基配列を有するリバースプライマーとを用いて行う、請求項7〜9のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  11. 前記増幅用標的領域の長さが、180〜700塩基長である、請求項7〜10のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  12. 前記鋳型依存的核酸増幅反応が、NASBA法及びTRC法からなる群より選択される一種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  13. 前記鋳型依存的核酸増幅反応の開始時点における、前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ又は前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブの濃度が、10nM〜10μMである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法。
  14. 請求項1〜11のいずれか一項に記載のコロナウイルスのサブタイプの識別方法に用いられる、L型結合性オリゴヌクレオチドプローブ及びS型結合性オリゴヌクレオチドプローブを含有し、
    前記L型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1で表される塩基配列を含み、
    前記S型結合性オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号2で表される塩基配列を含む、
    コロナウイルス識別用キット。
  15. さらに、配列番号3〜5のいずれかで表される塩基配列を有するフォワードプライマーと、配列番号6で表される塩基配列を有するリバースプライマーとを含有する、請求項14に記載のコロナウイルス識別用キット。
  16. さらに、配列番号7で表される塩基配列を有するDNAと、配列番号8で表される塩基配列を有するDNAと、を含有する、請求項14又は15に記載のコロナウイルス識別用キット。
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