本発明は、マスクに固定する空気殺菌装置とそれを用いたマスク及びフルフェイスマスクに関するものである。
ウィルスや細菌に対する感染防止、特に飛沫感染を防止するため、医療従事者、食品従事者のみならず、花粉症等のアレルギー患者や感染症が流行した際には人の集まる場所において多くの人がマスクをする必要が出てくる。これらのマスクの多くは不織布からなる使い捨てのものが多く、不織布からなるマスクは内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、フィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きいので、ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。
一方、紫外線はウィルスや細菌の核酸に対して化学変化によって遺伝子情報を破壊し死滅させることにより殺菌する効果がある。紫外線には波長の長い方からA波(UVA:315〜400nm)、B波(UVB:280〜315nm)、C波(UVC:100〜280nm)があり、オゾン層のおかげで地上に到達する紫外線は、A波とB波に限られるが、殺菌に特に有効なのは300nm以下である。殺菌装置としては最も強力なC波(UVC)も人工的に作られて用いられるようになり、最近では小型のLEDを用いることでA波、B波だけでなく容易に強力な殺菌装置を得ることができる。
特許文献1の衛生マスクシステムによると、鼻口部を覆うマスク部分と空気殺菌装置が連結ホースで気密状に連結されており、これによって、空気殺菌装置内の紫外線発光ダイオードが照射されて殺菌された空気が連結ホースを通ってマスク部分から呼吸することで、通常のマスクのフィルターでは捕捉しきれないようなインフルエンザや新型コロナウィルス等が殺菌された空気のみを吸うことができる。
しかし、この衛生マスクシステムでは、マスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しなければならないので、携帯性に欠けるものであり、万一連結ホースが外れた場合は機能しなくなる。また、吐き出される呼気はマスク空間に設けられた排気弁を有する排気口から直接外部に排出されるので、仮に本人がウィルス等の感染者であれば、周りに感染をばらまくことになる。
これに対して、特許文献2の紫照明付き安全マスクでは、一般のマスクの表面に面ファスナー等で紫外線が発生するLED等の照明装置を着脱自在に固定するだけで、電源を入れるとマスクの前面で照明装置から紫外線が放射し殺菌された空気を呼吸することができる。このマスクでは、特許文献1のようにマスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しないので携帯性に優れ、ホースの外れも気にする必要がない。さらに吐き出される呼気もマスクの前面で紫外線照射によって殺菌される。
当該マスクの裏側には紫外線が顔に届かないように防護する素材で覆われているので安全であるとのことではあるが、正面側に紫外線が剥き出しで照射されるので、近くにいる人が直接光を見たり手が触れたりすると危険である。また、マスク面の前面に広がる空気を殺菌するためにはマスク全面に多くのLEDを前面に向けて取り付ける必要があり、さらに十分な安全対策を施す必要がある。
特許第6124956号公報
特開2012−139478号公報
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その課題は、ウィルス等の感染を確実に防止するため、簡易な方法で普通のマスクや袋材に簡単に固定できる空気殺菌装置とそれを用いたマスク、フルフェイスマスクを提供することにある。
上記の課題の解決のため、請求項1に記載されたマスク用空気殺菌装置の発明は、
鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部を有するマスク用空気殺菌装置において、前記空気流通部は独立した吸気部と排気部とからなり、前記吸気部と排気部の双方には空気を殺菌する空気殺菌部を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマスク用空気殺菌装置において、
空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり、前記外側部と内側部とは両者の間にマスク本体を挟んで着脱自在に連結されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のマスク用空気殺菌装置において、
吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有し、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のマスク用空気殺菌装置において、
吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなり、前記吸気部と排気部はいずれか一方を外側部とし他方を内側部としたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3に記載のマスク用空気殺菌装置において、
外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、前記吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に空気殺菌部を設けたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5に記載のマスク本体において、
鼻及び口を覆うために顔への固定部を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至5に記載のマスク本体において、
顔全体を覆う袋材からなり、少なくとも1つのマスク用空気殺菌装置を設けたことを特徴とする。
本発明のマスク用空気殺菌装置は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部が独立した吸気部と排気部とからなっているので、吸気と呼気(排気)が混ざることなく流通し、常に新鮮な空気を吸うことができ、前記吸気部と排気部の双方には空気を殺菌する空気殺菌部を設けたことで、吸気だけでなく自分の吐き出した呼気も殺菌できるので、自らがウィルス等の感染者であっても、自分の呼気で周りを感染させることがない。
請求項2の発明によれば、空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり両者は着脱自在に固定されるので、マスク本体に取り付けて使用する場合も分離した両者の間にマスク本体を挟んで連結すれば簡単に使用することができ、別のマスクに取り換える場合も簡単にできる。
請求項3の発明によれば、吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有することで、吸気部に呼気が混じったり、呼気が呼吸空間に戻ることもなく常に新鮮な空気を吸うことができる。また、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられているので、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小で済み、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までの空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
請求項4の発明によれば、吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなるので、長い距離の中で空気殺菌部による空気の殺菌が行われ、各空間内での空気殺菌部に対する曝露時間が長くなって、より確実な殺菌が行われる。また、吸気部と排気部のいずれか一方を外側部とし他方を内側部とすることで、両者の間にマスク本体を挟んで固定すればコンパクトなマスクが得られる。
請求項5の発明によれば、マスクとは別に空気溜め部を設けて、外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に空気殺菌部を設けたことにより、一旦吸気及び排気を空気溜め部に溜めて殺菌したものを吸気部及び排気部を長くすることで、紫外線に対する曝露時間を長く取ることができ殺菌が確実に行える。また、マスクに取り付けるよりも大型の高出力の殺菌装置が使えるので、殺菌が確実に行える。
請求項6の発明によれば、請求項1〜5で説明したマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、鼻及び口を覆うために顔への固定部を有するものであり、すなわち簡単に言うと耳に掛ける紐などの固定部を有する一般的なマスクに使用することができ、特別なものは必要なく上記各発明の空気殺菌装置があれば簡単に利用できる。
請求項7の発明によれば、請求項1〜5で説明したマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、顔全体を覆う袋材からなるフルフェイスマスクなので、普通のマスクやフェイスシールドのように、顔の側面や頭を露出することがなくウィルス感染に対して高度の安全性が保持できる。また、一般のマスクのように吸気部と排気部を鼻又は口の少なくとも一方の近傍に設ける必要がないので、少なくとも1つのマスク用空気殺菌装置を設けることができ、言い換えればマスク用空気殺菌装置を複数個設けることができるので、より殺菌された空気を多量に吸排気できる。
本発明の実施形態1の空気殺菌装置の前方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の側方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部と内側部を後方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の空気収集部材と外側部を前方から見た分解図
実施形態1の吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部の空気入出口の形状の違いによる比較図
実施形態1の空気殺菌装置をマスクを取り付けた組立図
実施形態2の空気殺菌装置を前面(外側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を後方(内側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を側方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを上方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを下方から見た概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたフルフェイスマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクとフルフェイスマスクを装着した概略図
以下、本発明の空気殺菌装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
マスクを通して呼吸をする際に、従来のマスクでは、内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、一般的な不織布マスクのフィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きく5μm以上の飛沫を捕捉できるに過ぎない。ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。N95規格のマスクでは0.3μmの粒子を95%以上捕捉するものであるが、長時間使用には息苦しさを感じるものである。
本願発明は、ウィルスや細菌をフィルターで捕捉するのではなく、空気殺菌装置(具体的には紫外線照射装置)でウィルスや細菌の持つ遺伝子情報を破壊し増殖できなくして死滅させることによる殺菌効果を利用したものであり、空気殺菌装置の具体例を実施形態1(図1〜7)、実施形態2(図8〜10)、実施形態3(図11〜12)で示す。また、実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)を装着した例を図13〜15に示す。実施形態2、3及びその他の必須構成を有する空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)でも良いことは言うまでもない。
本発明のマスク用空気殺菌装置Aの必須構成は、以下説明する各実施形態に共通していて、独立した吸気部11と排気部12とからなる空気流通部1(吸気部と排気部を総称したものであり図示はしない)と空気殺菌部5であり、空気殺菌装置はマスクに着脱自在に連結するため外側部3と内側部4とからなることが好ましい。また、吸気弁21と排気弁22を設けることがさらに好ましい。
(実施形態1)
実施形態1の空気殺菌装置Aの全体構成を説明すると、外側部3と内側部4とが内外接続部材Jで着脱自在に連結され、空気収集部材8が外側部3の前方に固定されており、空気殺菌部5は空気収集部材8の内面に設置され外側部3と共に形成される内部の殺菌空間Iに向かって紫外線が照射される。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けるのがより好ましいが、本実施形態1のように1ヵ所で兼用して殺菌空間Iを殺菌することもできる(図5、6参照)。そして、最終的に組上がった空気殺菌装置Aには外部フィルター61及び内部フィルター62が装着される。
殺菌装置Aは、樹脂又は金属のどちらか又は両方で形成されているが、樹脂の場合は紫外線に対して耐候性の強い、アクリル、ポリカーボネート、塩ビ、テフロン(登録商標)等が好ましく、その他の樹脂を用いる場合は少なくとも内側面にフッ素樹脂やシリコン樹脂等耐紫外線塗料を塗布すれば良い。金属は紫外線で劣化し難いので特に限定せず使用できるが、軽量、防錆、加工性、耐久性等によりアルミ、ステンレス、銅、チタン等が用いられる。
空気殺菌装置において、殺菌には紫外線を用いるのが効果的であるため、紫外線照射装置としてLEDやCCLF(冷陰極管)が用いられる。LEDは小型軽量で高出力であるが、一方向にしか照射できないため広い面積を殺菌するには多くのチップが必要となる。一方、CCLFは全方位に照射が可能であるため広い面積を殺菌できる。紫外線としてはC波が強力(A波の1000倍以上の殺菌効果)なので短時間で処理できるので好ましいが、A波でもB波でも効果はある。なお、紫外線照射装置は交換しやすいように、空気収集部材8の頂点から照射装置交換部51として本体にねじが切られて螺合され着脱自在になっているのが好ましい。
空気収集部材8には3カ所の外側部接合脚81が突出しており若干の弾力性を有しているので、外側部3の外側係止部32に嵌め込んで固定することができる。空気収集部材8と外側部3の間には空気流通部1を形成して外部と空気を入出させるとともに、中心が外側にパラボラ状に突き出すことにより内部で鋭角状に空気を方向転換させることができ外側部3の空気入出口31へ導入する。その際に広がった殺菌空間Iで内向きに設置された空気殺菌部5(紫外線照射装置)から照射される紫外線が空気を殺菌する。
図ではLEDが1個用いられているが、小型のLEDを複数個を点在させて用いても良い。LEDはケーブルによって外部電池に接続されており。外部電池はスマートフォンに使用される小型のものが好ましい。ON、OFFのスイッチは外部電池でもケーブルの途中に設けられても良い。上記で説明したように、LEDに変えてCCLF(冷陰極管)を用いても良い。なお、照射される紫外線の外部への万が一の漏れを防止するために外部フィルター61及び内部フィルター62を装着することが好ましく、フィルターは化学繊維や天然繊維からなる織物や不織布からなり市販品を使用することができる。
外側部32と内側部4は内外接続部材Jによって連結固定される。外側部3の空気入出口31の内径部分である外側係止部32に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径部分が挿入され両者の摩擦力で固定される。あるいは、外側係止部32と外側部接続部J1の間に相互にねじが切られて螺合されても良い。
内外接続部材Jの内側部接合脚J2は、内側部4の底面に円周状に複数(図3では6個)設けられた空気孔41に弾性的に固定されるとともに、外側部から中心を通過してきた空気は、内側部4の遮蔽部42で邪魔され空気孔41に曲げられて通過するので、仮に空気殺菌部5から照射された紫外線が外側部3から漏れても遮蔽部42で遮断されるので安全性に優れる。
図5は吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図で空気の流れを例示している。(a)は全体を示すもので、(b)は内外接続部材の弁の設置部分を拡大した詳細な構造を示す。吸気と排気(呼気)が別れずに同じ空間を通る場合は、ゆっくりと大きく呼吸をしなければ吐いた空気が外に廃棄される前に新たに吸い込んだ吸気に交じり合って酸素濃度が下がり息苦しくなる。本実施形態では、図の上方を吸気部11、下方を排気部12として独立させている。呼吸することで吸い込まれる空気は、空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間から吸気空間IS(吸気部11にも該当)を通って内部中心部で広がった殺菌空間Iに到達し、空気入出口31から内部へ吸い込まれるため、鋭角で折れ曲がる。この時に空気が相互に又は内壁に衝突して対流が生じ流入速度が落ちるため、比較的長い時間紫外線照射される(小さな矢印IR)。この後空気は、内外接続部材Jで結合された内枠材4の遮蔽部42に邪魔され周囲の空気孔41を通り鼻口に吸いこまれる。一方、息を吐きだした場合はこの逆に流れていき、殺菌空間Iで殺菌され排気空間ES(排気部11にも該当)を通って空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間からウィルスや細菌のない状態で放出される。
ここでは吸気弁21と排気弁22が内外接続部材Jの内部に取り付けられる。図5(b)の上半分が吸気部11、下半分が排気部12で吸気部の呼吸空間Bに近い位置に吸気弁21が設けられ、排気弁22は呼吸空間Bより遠い位置に設けられているので(弁は破線で表しそれぞれ中央側に向かって開く)、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
この図では排気部の方が空間容量が大きく作られているが、基本的に口よりも吸引力の小さな鼻につながる吸気側の空間容量を小さくするとともに、吐き出しの大きな口に直結する排気側の空間容量が大きくして一気に排出することで、効果的な吸排出が行われる。
排気弁22は空気入出口31で吸気側に混じらないように吸気側に向かって開放することで吸気側に向かう排気を遮蔽する。なお、吸気弁の開放した状態に合わせて周りを囲むように殺菌空間Iの内部に遮蔽壁(図示せず)を設ければ、さらに吸排気の混入を防止できる。
図6は外側部3の空気入出口31の形状による比較図であり、内部を見易くするため一部を図示せず省略している。(a)は空気入出口31が同じ内径で奥まで形成されたものであり、(b)は空気入出口31が内側に向かって段状に狭くなっているので、外部から流入した空気は空気入出口31から内部へ入る際に、殺菌空間Iで広げられた状態から狭くなって段部にぶつかることで、乱気流が発生し空気の滞留時間がより長くなって紫外線の曝露時間が長くなり殺菌効果が向上する。さらに、空気殺菌装置Aの内部(空気収集部材8、外側部3、内外接続部材Jの内壁部)にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。
空気収集部材8と外側部3とを外部フィルター61で覆い、内側部4を内部フィルター62で覆うことにより、万が一の場合に自分の顔やまわりに紫外線を漏らすことなく遮蔽することができるので安全性に優れる。フィルターの材質は市販のUVカット不織布や織布を用いることができる。また、フィルターの隙間に応じて花粉やほこり等を捕捉することもできるが、あまり極端に細かくなると空気の入出量が減るために息苦しくなる場合もあるので隙間は適度な大きさとしたり一部に小さな空気孔を設けても良い。特に、外部フィルター61の表面部は大きな伸縮性があれば、空気収集部材8と外側部3にまたがってかぶせることができるので好ましい。それぞれのフィルターは、側面部で固定溝33、43に被せてゴムバンドRで留めれば簡単に装着でき洗濯等で外すこともできる。
図7は実施形態1のマスク7を示す組立図であり、前記で説明してきた空気殺菌装置を一般的な鼻と口を覆うマスクに装着したものである。マスク本体(鼻と口を覆う不織布や布地の部分)71を外側部3と内側部4の間に挟んで装着するが、内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて挟み込むことが好ましい。空気殺菌装置は小型軽量のため取り付け時に市販の一般的なマスクでも破れたり形が崩れることはなく、耳にかけても重いなどの不快感はない。
図13はこのマスク71を固定部73(耳掛け)で耳に掛け、顔に装着した状態を示した概略図である。この図では、空気殺菌部5(紫外線照射装置)からケーブル52で外部電池(図示しない)をつないで、電気を供給する。呼吸空間B(鼻と口の部分)が空気の流通路につながっているので、殺菌された空気を吸い、逆に吐く息も殺菌されて外に出ていくので、仮に本人が感染をしていても、飛沫だけでなく細菌やウィルス自体を外部に排出する可能性が少なくなる。このように一般のマスクに装着するだけで、細菌やウィルス感染をより防護することができる。
図14はフルフェイスマスク72を装着した概略図である。フルフェイスマスクは顔の大きさに合わせて比較的厚みのある透明のプラスチックフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等)から作るのが好ましいが、身の回りにある透明のゴミ袋等の袋材7で代用するのが、最も簡単で効果的である。空気殺菌装置Aの取付は、袋材7に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて、外側に外側部3を孔に合わせ、内側部4を連結した内外接続部材Jの外側部接続部J1を孔に挿入して外側部3の外側係止部32に嵌め合わせて連結固定して袋材7に空気殺菌装置Aを取付ける。鼻口だけを覆うマスクではないので、空気殺菌部5を袋材7のどの部分に設けても良いし、1個だけでなく複数個所に設けても良い。
図13に示すマスク71では、鼻口しか防護できず、感染源の一つである目の粘膜からの感染を防止できない。さらに顔や髪の毛に付着した飛沫が手に付くなどして感染することやマスクをしていても正しく装着していないとマスクの隙間から飛沫などが内部に入り込むこともあり、感染者かもしれない人と密に接する機会の多い医療従事者や介護従事者や救急隊員や警察官など過酷な現場で対応しなければならない人にとって十分安心できるのものではなかったが、正式な防護服や防護マスクは感染が急激に拡大した現場では十分な数が揃えられない場合が多い。そのような時に身の回りにあるゴミ袋等で簡易的に作ることができるので、救急車やパトカーなどに積んでおけば場所も取らず費用もあまりかからないので有用である。
図15はマスク71とフルフェイスマスク72を同時に装着した概略図であり、実施図14において袋材7の内側に合わせてマスク7を設けた構成になる。フルフェイスマスクだけでは、薄い袋材を使用した時は、動き回る際に空気殺菌装置Aに遠心力等の荷重がかかって袋面が破れたりするおそれが考えられるが、本仕様によると、空気殺菌装置Aを固定部(耳掛け)73で耳にかけたマスク71によって顔前に固定できるので、袋材7が破れるのを防ぐことができるとともに、口元で直接呼吸する方が空気の入出は効果的に行える。
(実施形態2)
図8乃至10は実施形態2の空気殺菌装置Aを示す。外側部3に該当する吸気部11はジグザグ状のチューブで、内側部4に該当する排気部12はうずまき状のチューブ である。何れも実施形態1よりも大きいがマスクに固定できる大きさであるにもかかわらず、吸気管及び排気管の入口から出口までの長さは圧倒的に長い。このため空気殺菌装置Aでの紫外線による空気の曝露時間が長くなるため、より完璧な殺菌が行える。
図8に示した吸気部11の入口からジグザグ状にチューブが形成され図9の中央の吸気部の出口からから吸気として吸い込まれる。一方、前記吸気部の出口に巻き付くように排気部12が固定され、吐き出された呼気がうずまき状のチューブを通って外部に面した出口から排気される(図に記載した矢印の通りに空気が動く)。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けられている(実際はチューブ内に固定され外からは見えないが、説明上着色して示す)。空気殺菌部5は吸気部及び排気部にそれぞれ着色部の少なくとも1ヵ所に設ければ良く、ジグザグ状の曲がり角どこかに設けるのが紫外線の照射効果が最も高い。なお、効果の違いはあるものの設置個所は図に示す場所でなくてもかまわない。
吸気部11は外側部3として排気部12は内側部4として分離するが、図10に示すように間にマスク本体7を挟んで着脱自在に連結固定して使用する。なお、固定方法が既存の着脱自在の固定法であれば方法は問わない。吸気弁21は吸気部11の出口近傍に設けられ、排気弁22は排気部12の出口近傍に設けられる。すなわち、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
実施形態2で用いられる空気殺菌装置や吸気部、排気部の材質は実施形態1と同様のものが用いられる。なお、本実施形態のように吸気部11、排気部12がジグザグ状又はうずまき状のチューブであれば(吸気部がうずまき状で排気部がジグザグ状であっても良い)、呼気及び吸気の何れにおいても空気の滞在時間が増加するので、照射される紫外線による曝露時間が長く殺菌効果が高まる。より効果を上げるためチューブ内にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。本実施形態においても図14及び15のフルフェイスマスクの仕様は同様に用いることができる。
(実施形態3)
図11及び12は実施形態3の空気殺菌装置Aを示す。他の実施例と同じ紫外線照射のLED等が使用できるが、本実施例の特徴はマスク部分と空気殺菌部5を分離し吸気部と排気部とで結んだことである。例えば空気殺菌部5を腰部分にベルトで固定し独立させることで、空気殺菌部5に大型のLEDや複数個のLEDを用いたり、大型で全方位に照射できるCCLF(冷陰極管)も使用することができるので紫外線照射能力を高めることができる。なお、空気殺菌部5は照射装置交換部51に固定され容器に螺合することで、交換など容易に行うことができる。
マスク部分は外側部3と内側部4に分離し、間にマスク本体7を挟むことで着脱自在に連結固定できる。固定方法はねじを切って螺合したりフックで嵌合固定するなど既存の方法が用いられる。外側部3には吸気部11と排気部12が接続されて前記の空気殺菌装置Aと結ばれる。吸気部及び排気部には顔を動かし易いように柔軟性があり、耐紫外線に優れた素材(例えばシリコンゴム、フッ素ゴム)のチューブが用いられる。また、外部に紫外線が照射しないようにアルミを積層や蒸着したものが好ましく。これによって、紫外線がチューブ内で乱反射して空気の紫外線曝露時間を延ばし、より殺菌効果を高めることができる。
空気殺菌部5は一つの容器で形成され、内部は仕切り93によって吸気部11に結合される吸気溜め91と排気部12に結合される排気溜め92に分割される。排気される呼気が逆流しないように、排気部12が排気溜め92に連結される部分に排気弁22が設けられている。排気口には排出弁23が設けられており、排気溜め92内の排出された呼気が溜まって大気よりも圧力が上昇すると、弁が開いて排出される。吸気側は特に弁がなくマスク部分から息が吸い込まれると吸気溜め91の圧力が下がって外から空気が入る。
吸気溜め91と排気溜め92の双方には個別に空気殺菌部5が設置され、紫外線照射によって容器内に溜まった空気を殺菌する。容器内部はアルミ等によって紫外線が乱反射できるようになっており、さらに、一部は吸気部11のチューブ内まで紫外線が乱反射して吸気を殺菌する。空気殺菌部5は陽気の外側に取り付けられた電池(図示せず)から電気が供給される。なお、本実施例においても既に説明したマスク71だけでなく図14及び15に示されるフルフェイスマスクにも用いられることはもちろんである。
本発明の空気殺菌装置があれば、一般に使用しているマスクに取り付けるだけで、吸気だけでなく呼気についても簡単に殺菌することができる。また、透明な袋材に取付ければ簡易な防護服等の代用としても使用でき、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
1 空気流通部
11 吸気部
12 排気部
2 弁
21 吸気弁
22 排気弁
23 排出弁
3 外側部
31 空気入出口
4 内側部
41 空気孔
42 遮蔽部
5 空気殺菌部
6 フィルター
61 外部フィルター
62 内部フィルター
7 マスク本体、袋材
71 マスク
72 フルフェイスマスク
8 空気収集部材
9 空気溜め部)
A 空気殺菌装置
B 呼吸空間
I 殺菌空間
IR 紫外線照射
J 内外接続部材
O 外界
IS 吸気空間
ES 排気空間
本発明は、マスクに固定する紫外線照射による空気殺菌装置とそれを用いたマスク及びフルフェイスマスクに関するものである。
ウィルスや細菌に対する感染防止、特に飛沫感染を防止するため、医療従事者、食品従事者のみならず、花粉症等のアレルギー患者や感染症が流行した際には人の集まる場所において多くの人がマスクをする必要が出てくる。これらのマスクの多くは不織布からなる使い捨てのものが多く、不織布からなるマスクは内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、フィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きいので、ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。
一方、紫外線はウィルスや細菌の核酸に対して化学変化によって遺伝子情報を破壊し死滅させることにより殺菌する効果がある。紫外線には波長の長い方からA波(UVA:315〜400nm)、B波(UVB:280〜315nm)、C波(UVC:100〜280nm)があり、オゾン層のおかげで地上に到達する紫外線は、A波とB波に限られるが、殺菌に特に有効なのは300nm以下である。殺菌装置としては最も強力なC波(UVC)も人工的に作られて用いられるようになり、最近では小型のLEDを用いることでA波、B波だけでなく容易に強力な殺菌装置を得ることができる。
特許文献1の衛生マスクシステムによると、鼻口部を覆うマスク部分と空気殺菌装置が連結ホースで気密状に連結されており、これによって、空気殺菌装置内の紫外線発光ダイオードが照射されて殺菌された空気が連結ホースを通ってマスク部分から呼吸することで、通常のマスクのフィルターでは捕捉しきれないようなインフルエンザや新型コロナウィルス等が殺菌された空気のみを吸うことができる。
しかし、この衛生マスクシステムでは、マスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しなければならないので、携帯性に欠けるものであり、万一連結ホースが外れた場合は機能しなくなる。また、吐き出される呼気はマスク空間に設けられた排気弁を有する排気口から直接外部に排出されるので、仮に本人がウィルス等の感染者であれば、周りに感染をばらまくことになる。
これに対して、特許文献2の紫照明付き安全マスクでは、一般のマスクの表面に面ファスナー等で紫外線が発生するLED等の照明装置を着脱自在に固定するだけで、電源を入れるとマスクの前面で照明装置から紫外線が放射し殺菌された空気を呼吸することができる。このマスクでは、特許文献1のようにマスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しないので携帯性に優れ、ホースの外れも気にする必要がない。さらに吐き出される呼気もマスクの前面で紫外線照射によって殺菌される。
当該マスクの裏側には紫外線が顔に届かないように防護する素材で覆われているので安全であるとのことではあるが、正面側に紫外線が剥き出しで照射されるので、近くにいる人が直接光を見たり手が触れたりすると危険である。また、マスク面の前面に広がる空気を殺菌するためにはマスク全面に多くのLEDを前面に向けて取り付ける必要があり、さらに十分な安全対策を施す必要がある。
特許第6124956号公報
特開2012−139478号公報
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その課題は、ウィルス等の感染を確実に防止するため、簡易な方法で普通のマスクや袋材に簡単に固定できる紫外線照射による空気殺菌装置とそれを用いたマスク、フルフェイスマスクを提供することにある。
上記の課題の解決のため、請求項1に記載された紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置の発明は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部を有するマスク用空気殺菌装置において、前記空気流通部は独立した吸気部と排気部とからなり、前記吸気部と排気部の双方には紫外線照射により空気を殺菌する空気殺菌部を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置において、紫外線照射による空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり、前記外側部と内側部とは両者の間にマスク本体を挟んで着脱自在に連結されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置において、吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有し、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置において、吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなり、前記吸気部と排気部はいずれか一方を外側部とし他方を内側部としたことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置において、外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、前記吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に紫外線照射による空気殺菌部を設けたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5に記載のマスク用空気殺菌装置を設けたマスクにおいて、マスク本体は鼻及び口を覆うために顔への固定部を有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至5に記載のマスク本体において、顔全体を覆う透明のプラスチックフィルムから作られた袋材からなるフルフェイスマスクで、少なくとも1つの紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置を設けたことを特徴とする。
本発明の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部が独立した吸気部と排気部とからなっているので、吸気と呼気(排気)が混ざることなく流通し、常に新鮮な空気を吸うことができ、前記吸気部と排気部の双方には紫外線照射により空気を殺菌する空気殺菌部を設けたことで、吸気だけでなく自分の吐き出した呼気も殺菌できるので、自らがウィルス等の感染者であっても、自分の呼気で周りを感染させることがない。
請求項2の発明によれば、紫外線照射による空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり両者は着脱自在に固定されるので、マスク本体に取り付けて使用する場合も分離した両者の間にマスク本体を挟んで連結すれば簡単に使用することができ、別のマスクに取り換える場合も簡単にできる。
請求項3の発明によれば、吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有することで、吸気部に呼気が混じったり、呼気が呼吸空間に戻ることもなく常に新鮮な空気を吸うことができる。また、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられているので、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小で済み、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までの空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
請求項4の発明によれば、吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなるので、長い距離の中で空気殺菌部による空気の殺菌が行われ、各空間内での空気殺菌部に対する曝露時間が長くなって、より確実な殺菌が行われる。また、吸気部と排気部のいずれか一方を外側部とし他方を内側部とすることで、両者の間にマスク本体を挟んで固定すればコンパクトなマスクが得られる。
請求項5の発明によれば、マスクとは別に空気溜め部を設けて、外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に紫外線照射による空気殺菌部を設けたことにより、一旦吸気及び排気を空気溜め部に溜めて殺菌したものを吸気部及び排気部を長くすることで、紫外線に対する曝露時間を長く取ることができ殺菌が確実に行える。また、マスクに取り付けるよりも大型の高出力の殺菌装置が使えるので、殺菌が確実に行える。
請求項6の発明によれば、請求項1〜5で説明した紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、鼻及び口を覆うために顔への固定部を有するものであり、すなわち簡単に言うと耳に掛ける紐などの固定部を有する一般的なマスクに使用することができ、特別なものは必要なく上記各発明の紫外線照射による空気殺菌装置があれば簡単に利用できる。
請求項7の発明によれば、請求項1〜5で説明した紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、顔全体を覆う透明のプラスチックフィルムから作られた袋材からなるフルフェイスマスクなので、普通のマスクやフェイスシールドのように、顔の側面や頭を露出することがなくウィルス感染に対して高度の安全性が保持できる。また、一般のマスクのように吸気部と排気部を鼻又は口の少なくとも一方の近傍に設ける必要がないので、少なくとも1つの紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置を設けることができ、言い換えればマスク用空気殺菌装置を複数個設けることができるので、より殺菌された空気を多量に吸排気できる。
本発明の実施形態1の空気殺菌装置の前方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の側方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部と内側部を後方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の空気収集部材と外側部を前方から見た分解図
実施形態1の吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部の空気入出口の形状の違いによる比較図
実施形態1の空気殺菌装置をマスクを取り付けた組立図
実施形態2の空気殺菌装置を前面(外側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を後方(内側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を側方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを上方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを下方から見た概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたフルフェイスマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクとフルフェイスマスクを装着した概略図
以下、本発明の空気殺菌装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
マスクを通して呼吸をする際に、従来のマスクでは、内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、一般的な不織布マスクのフィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きく5μm以上の飛沫を捕捉できるに過ぎない。ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。N95規格のマスクでは0.3μmの粒子を95%以上捕捉するものであるが、長時間使用には息苦しさを感じるものである。
本願発明は、ウィルスや細菌をフィルターで捕捉するのではなく、空気殺菌装置(具体的には紫外線照射装置)でウィルスや細菌の持つ遺伝子情報を破壊し増殖できなくして死滅させることによる殺菌効果を利用したものであり、空気殺菌装置の具体例を実施形態1(図1〜7)、実施形態2(図8〜10)、実施形態3(図11〜12)で示す。また、実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)を装着した例を図13〜15に示す。実施形態2、3及びその他の必須構成を有する空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)でも良いことは言うまでもない。
本発明のマスク用空気殺菌装置Aの必須構成は、以下説明する各実施形態に共通していて、独立した吸気部11と排気部12とからなる空気流通部1(吸気部と排気部を総称したものであり図示はしない)と空気殺菌部5であり、空気殺菌装置はマスクに着脱自在に連結するため外側部3と内側部4とからなることが好ましい。また、吸気弁21と排気弁22を設けることがさらに好ましい。
(実施形態1)
実施形態1の空気殺菌装置Aの全体構成を説明すると、外側部3と内側部4とが内外接続部材Jで着脱自在に連結され、空気収集部材8が外側部3の前方に固定されており、空気殺菌部5は空気収集部材8の内面に設置され外側部3と共に形成される内部の殺菌空間Iに向かって紫外線が照射される。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けるのがより好ましいが、本実施形態1のように1ヵ所で兼用して殺菌空間Iを殺菌することもできる(図5、6参照)。そして、最終的に組上がった空気殺菌装置Aには外部フィルター61及び内部フィルター62が装着される。
殺菌装置Aは、樹脂又は金属のどちらか又は両方で形成されているが、樹脂の場合は紫外線に対して耐候性の強い、アクリル、ポリカーボネート、塩ビ、テフロン(登録商標)等が好ましく、その他の樹脂を用いる場合は少なくとも内側面にフッ素樹脂やシリコン樹脂等耐紫外線塗料を塗布すれば良い。金属は紫外線で劣化し難いので特に限定せず使用できるが、軽量、防錆、加工性、耐久性等によりアルミ、ステンレス、銅、チタン等が用いられる。
空気殺菌装置において、殺菌には紫外線を用いるのが効果的であるため、紫外線照射装置としてLEDやCCLF(冷陰極管)が用いられる。LEDは小型軽量で高出力であるが、一方向にしか照射できないため広い面積を殺菌するには多くのチップが必要となる。一方、CCLFは全方位に照射が可能であるため広い面積を殺菌できる。紫外線としてはC波が強力(A波の1000倍以上の殺菌効果)なので短時間で処理できるので好ましいが、A波でもB波でも効果はある。なお、紫外線照射装置は交換しやすいように、空気収集部材8の頂点から照射装置交換部51として本体にねじが切られて螺合され着脱自在になっているのが好ましい。
空気収集部材8には3カ所の外側部接合脚81が突出しており若干の弾力性を有しているので、外側部3の外側係止部32に嵌め込んで固定することができる。空気収集部材8と外側部3の間には空気流通部1を形成して外部と空気を入出させるとともに、中心が外側にパラボラ状に突き出すことにより内部で鋭角状に空気を方向転換させることができ外側部3の空気入出口31へ導入する。その際に広がった殺菌空間Iで内向きに設置された空気殺菌部5(紫外線照射装置)から照射される紫外線が空気を殺菌する。
図ではLEDが1個用いられているが、小型のLEDを複数個を点在させて用いても良い。LEDはケーブルによって外部電池に接続されており。外部電池はスマートフォンに使用される小型のものが好ましい。ON、OFFのスイッチは外部電池でもケーブルの途中に設けられても良い。上記で説明したように、LEDに変えてCCLF(冷陰極管)を用いても良い。なお、照射される紫外線の外部への万が一の漏れを防止するために外部フィルター61及び内部フィルター62を装着することが好ましく、フィルターは化学繊維や天然繊維からなる織物や不織布からなり市販品を使用することができる。
外側部32と内側部4は内外接続部材Jによって連結固定される。外側部3の空気入出口31の内径部分である外側係止部32に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径部分が挿入され両者の摩擦力で固定される。あるいは、外側係止部32と外側部接続部J1の間に相互にねじが切られて螺合されても良い。
内外接続部材Jの内側部接合脚J2は、内側部4の底面に円周状に複数(図3では6個)設けられた空気孔41に弾性的に固定されるとともに、外側部から中心を通過してきた空気は、内側部4の遮蔽部42で邪魔され空気孔41に曲げられて通過するので、仮に空気殺菌部5から照射された紫外線が外側部3から漏れても遮蔽部42で遮断されるので安全性に優れる。
図5は吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図で空気の流れを例示している。(a)は全体を示すもので、(b)は内外接続部材の弁の設置部分を拡大した詳細な構造を示す。吸気と排気(呼気)が別れずに同じ空間を通る場合は、ゆっくりと大きく呼吸をしなければ吐いた空気が外に廃棄される前に新たに吸い込んだ吸気に交じり合って酸素濃度が下がり息苦しくなる。本実施形態では、図の上方を吸気部11、下方を排気部12として独立させている。呼吸することで吸い込まれる空気は、空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間から吸気空間IS(吸気部11にも該当)を通って内部中心部で広がった殺菌空間Iに到達し、空気入出口31から内部へ吸い込まれるため、鋭角で折れ曲がる。この時に空気が相互に又は内壁に衝突して対流が生じ流入速度が落ちるため、比較的長い時間紫外線照射される(小さな矢印IR)。この後空気は、内外接続部材Jで結合された内枠材4の遮蔽部42に邪魔され周囲の空気孔41を通り鼻口に吸いこまれる。一方、息を吐きだした場合はこの逆に流れていき、殺菌空間Iで殺菌され排気空間ES(排気部11にも該当)を通って空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間からウィルスや細菌のない状態で放出される。
ここでは吸気弁21と排気弁22が内外接続部材Jの内部に取り付けられる。図5(b)の上半分が吸気部11、下半分が排気部12で吸気部の呼吸空間Bに近い位置に吸気弁21が設けられ、排気弁22は呼吸空間Bより遠い位置に設けられているので(弁は破線で表しそれぞれ中央側に向かって開く)、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
この図では排気部の方が空間容量が大きく作られているが、基本的に口よりも吸引力の小さな鼻につながる吸気側の空間容量を小さくするとともに、吐き出しの大きな口に直結する排気側の空間容量が大きくして一気に排出することで、効果的な吸排出が行われる。
排気弁22は空気入出口31で吸気側に混じらないように吸気側に向かって開放することで吸気側に向かう排気を遮蔽する。なお、吸気弁の開放した状態に合わせて周りを囲むように殺菌空間Iの内部に遮蔽壁(図示せず)を設ければ、さらに吸排気の混入を防止できる。
図6は外側部3の空気入出口31の形状による比較図であり、内部を見易くするため一部を図示せず省略している。(a)は空気入出口31が同じ内径で奥まで形成されたものであり、(b)は空気入出口31が内側に向かって段状に狭くなっているので、外部から流入した空気は空気入出口31から内部へ入る際に、殺菌空間Iで広げられた状態から狭くなって段部にぶつかることで、乱気流が発生し空気の滞留時間がより長くなって紫外線の曝露時間が長くなり殺菌効果が向上する。さらに、空気殺菌装置Aの内部(空気収集部材8、外側部3、内外接続部材Jの内壁部)にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。
空気収集部材8と外側部3とを外部フィルター61で覆い、内側部4を内部フィルター62で覆うことにより、万が一の場合に自分の顔やまわりに紫外線を漏らすことなく遮蔽することができるので安全性に優れる。フィルターの材質は市販のUVカット不織布や織布を用いることができる。また、フィルターの隙間に応じて花粉やほこり等を捕捉することもできるが、あまり極端に細かくなると空気の入出量が減るために息苦しくなる場合もあるので隙間は適度な大きさとしたり一部に小さな空気孔を設けても良い。特に、外部フィルター61の表面部は大きな伸縮性があれば、空気収集部材8と外側部3にまたがってかぶせることができるので好ましい。それぞれのフィルターは、側面部で固定溝33、43に被せてゴムバンドRで留めれば簡単に装着でき洗濯等で外すこともできる。
図7は実施形態1のマスク7を示す組立図であり、前記で説明してきた空気殺菌装置を一般的な鼻と口を覆うマスクに装着したものである。マスク本体(鼻と口を覆う不織布や布地の部分)71を外側部3と内側部4の間に挟んで装着するが、内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて挟み込むことが好ましい。空気殺菌装置は小型軽量のため取り付け時に市販の一般的なマスクでも破れたり形が崩れることはなく、耳にかけても重いなどの不快感はない。
図13はこのマスク71を固定部73(耳掛け)で耳に掛け、顔に装着した状態を示した概略図である。この図では、空気殺菌部5(紫外線照射装置)からケーブル52で外部電池(図示しない)をつないで、電気を供給する。呼吸空間B(鼻と口の部分)が空気の流通路につながっているので、殺菌された空気を吸い、逆に吐く息も殺菌されて外に出ていくので、仮に本人が感染をしていても、飛沫だけでなく細菌やウィルス自体を外部に排出する可能性が少なくなる。このように一般のマスクに装着するだけで、細菌やウィルス感染をより防護することができる。
図14はフルフェイスマスク72を装着した概略図である。フルフェイスマスクは顔の大きさに合わせて比較的厚みのある透明のプラスチックフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等)から作るのが好ましいが、身の回りにある透明のゴミ袋等の袋材7で代用するのが、最も簡単で効果的である。空気殺菌装置Aの取付は、袋材7に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて、外側に外側部3を孔に合わせ、内側部4を連結した内外接続部材Jの外側部接続部J1を孔に挿入して外側部3の外側係止部32に嵌め合わせて連結固定して袋材7に空気殺菌装置Aを取付ける。鼻口だけを覆うマスクではないので、空気殺菌部5を袋材7のどの部分に設けても良いし、1個だけでなく複数個所に設けても良い。
図13に示すマスク71では、鼻口しか防護できず、感染源の一つである目の粘膜からの感染を防止できない。さらに顔や髪の毛に付着した飛沫が手に付くなどして感染することやマスクをしていても正しく装着していないとマスクの隙間から飛沫などが内部に入り込むこともあり、感染者かもしれない人と密に接する機会の多い医療従事者や介護従事者や救急隊員や警察官など過酷な現場で対応しなければならない人にとって十分安心できるのものではなかったが、正式な防護服や防護マスクは感染が急激に拡大した現場では十分な数が揃えられない場合が多い。そのような時に身の回りにあるゴミ袋等で簡易的に作ることができるので、救急車やパトカーなどに積んでおけば場所も取らず費用もあまりかからないので有用である。
図15はマスク71とフルフェイスマスク72を同時に装着した概略図であり、実施図14において袋材7の内側に合わせてマスク7を設けた構成になる。フルフェイスマスクだけでは、薄い袋材を使用した時は、動き回る際に空気殺菌装置Aに遠心力等の荷重がかかって袋面が破れたりするおそれが考えられるが、本仕様によると、空気殺菌装置Aを固定部(耳掛け)73で耳にかけたマスク71によって顔前に固定できるので、袋材7が破れるのを防ぐことができるとともに、口元で直接呼吸する方が空気の入出は効果的に行える。
(実施形態2)
図8乃至10は実施形態2の空気殺菌装置Aを示す。外側部3に該当する吸気部11はジグザグ状のチューブで、内側部4に該当する排気部12はうずまき状のチューブ である。何れも実施形態1よりも大きいがマスクに固定できる大きさであるにもかかわらず、吸気管及び排気管の入口から出口までの長さは圧倒的に長い。このため空気殺菌装置Aでの紫外線による空気の曝露時間が長くなるため、より完璧な殺菌が行える。
図8に示した吸気部11の入口からジグザグ状にチューブが形成され図9の中央の吸気部の出口からから吸気として吸い込まれる。一方、前記吸気部の出口に巻き付くように排気部12が固定され、吐き出された呼気がうずまき状のチューブを通って外部に面した出口から排気される(図に記載した矢印の通りに空気が動く)。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けられている(実際はチューブ内に固定され外からは見えないが、説明上着色して示す)。空気殺菌部5は吸気部及び排気部にそれぞれ着色部の少なくとも1ヵ所に設ければ良く、ジグザグ状の曲がり角どこかに設けるのが紫外線の照射効果が最も高い。なお、効果の違いはあるものの設置個所は図に示す場所でなくてもかまわない。
吸気部11は外側部3として排気部12は内側部4として分離するが、図10に示すように間にマスク本体7を挟んで着脱自在に連結固定して使用する。なお、固定方法が既存の着脱自在の固定法であれば方法は問わない。吸気弁21は吸気部11の出口近傍に設けられ、排気弁22は排気部12の出口近傍に設けられる。すなわち、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
実施形態2で用いられる空気殺菌装置や吸気部、排気部の材質は実施形態1と同様のものが用いられる。なお、本実施形態のように吸気部11、排気部12がジグザグ状又はうずまき状のチューブであれば(吸気部がうずまき状で排気部がジグザグ状であっても良い)、呼気及び吸気の何れにおいても空気の滞在時間が増加するので、照射される紫外線による曝露時間が長く殺菌効果が高まる。より効果を上げるためチューブ内にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。本実施形態においても図14及び15のフルフェイスマスクの仕様は同様に用いることができる。
(実施形態3)
図11及び12は実施形態3の空気殺菌装置Aを示す。他の実施例と同じ紫外線照射のLED等が使用できるが、本実施例の特徴はマスク部分と空気殺菌部5を分離し吸気部と排気部とで結んだことである。例えば空気殺菌部5を腰部分にベルトで固定し独立させることで、空気殺菌部5に大型のLEDや複数個のLEDを用いたり、大型で全方位に照射できるCCLF(冷陰極管)も使用することができるので紫外線照射能力を高めることができる。なお、空気殺菌部5は照射装置交換部51に固定され容器に螺合することで、交換など容易に行うことができる。
マスク部分は外側部3と内側部4に分離し、間にマスク本体7を挟むことで着脱自在に連結固定できる。固定方法はねじを切って螺合したりフックで嵌合固定するなど既存の方法が用いられる。外側部3には吸気部11と排気部12が接続されて前記の空気殺菌装置Aと結ばれる。吸気部及び排気部には顔を動かし易いように柔軟性があり、耐紫外線に優れた素材(例えばシリコンゴム、フッ素ゴム)のチューブが用いられる。また、外部に紫外線が照射しないようにアルミを積層や蒸着したものが好ましく。これによって、紫外線がチューブ内で乱反射して空気の紫外線曝露時間を延ばし、より殺菌効果を高めることができる。
空気殺菌部5は一つの容器で形成され、内部は仕切り93によって吸気部11に結合される吸気溜め91と排気部12に結合される排気溜め92に分割される。排気される呼気が逆流しないように、排気部12が排気溜め92に連結される部分に排気弁22が設けられている。排気口には排出弁23が設けられており、排気溜め92内の排出された呼気が溜まって大気よりも圧力が上昇すると、弁が開いて排出される。吸気側は特に弁がなくマスク部分から息が吸い込まれると吸気溜め91の圧力が下がって外から空気が入る。
吸気溜め91と排気溜め92の双方には個別に空気殺菌部5が設置され、紫外線照射によって容器内に溜まった空気を殺菌する。容器内部はアルミ等によって紫外線が乱反射できるようになっており、さらに、一部は吸気部11のチューブ内まで紫外線が乱反射して吸気を殺菌する。空気殺菌部5は陽気の外側に取り付けられた電池(図示せず)から電気が供給される。なお、本実施例においても既に説明したマスク71だけでなく図14及び15に示されるフルフェイスマスクにも用いられることはもちろんである。
本発明の空気殺菌装置があれば、一般に使用しているマスクに取り付けるだけで、吸気だけでなく呼気についても簡単に殺菌することができる。また、透明な袋材に取付ければ簡易な防護服等の代用としても使用でき、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
1 空気流通部
11 吸気部
12 排気部
2 弁
21 吸気弁
22 排気弁
23 排出弁
3 外側部
31 空気入出口
4 内側部
41 空気孔
42 遮蔽部
5 空気殺菌部
6 フィルター
61 外部フィルター
62 内部フィルター
7 マスク本体、袋材
71 マスク
72 フルフェイスマスク
8 空気収集部材
9 空気溜め部)
A 空気殺菌装置
B 呼吸空間
I 殺菌空間
IR 紫外線照射
J 内外接続部材
O 外界
IS 吸気空間
ES 排気空間
本発明は、マスクに固定する紫外線照射による空気殺菌装置とそれを用いたマスク及びフルフェイスマスクに関するものである。
ウィルスや細菌に対する感染防止、特に飛沫感染を防止するため、医療従事者、食品従事者のみならず、花粉症等のアレルギー患者や感染症が流行した際には人の集まる場所において多くの人がマスクをする必要が出てくる。これらのマスクの多くは不織布からなる使い捨てのものが多く、不織布からなるマスクは内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、フィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きいので、ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。
一方、紫外線はウィルスや細菌の核酸に対して化学変化によって遺伝子情報を破壊し死滅させることにより殺菌する効果がある。紫外線には波長の長い方からA波(UVA:315〜400nm)、B波(UVB:280〜315nm)、C波(UVC:100〜280nm)があり、オゾン層のおかげで地上に到達する紫外線は、A波とB波に限られるが、殺菌に特に有効なのは300nm以下である。殺菌装置としては最も強力なC波(UVC)も人工的に作られて用いられるようになり、最近では小型のLEDを用いることでA波、B波だけでなく容易に強力な殺菌装置を得ることができる。
特許文献1の衛生マスクシステムによると、鼻口部を覆うマスク部分と空気殺菌装置が連結ホースで気密状に連結されており、これによって、空気殺菌装置内の紫外線発光ダイオードが照射されて殺菌された空気が連結ホースを通ってマスク部分から呼吸することで、通常のマスクのフィルターでは捕捉しきれないようなインフルエンザや新型コロナウィルス等が殺菌された空気のみを吸うことができる。
しかし、この衛生マスクシステムでは、マスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しなければならないので、携帯性に欠けるものであり、万一連結ホースが外れた場合は機能しなくなる。また、吐き出される呼気はマスク空間に設けられた排気弁を有する排気口から直接外部に排出されるので、仮に本人がウィルス等の感染者であれば、周りに感染をばらまくことになる。
これに対して、特許文献2の紫照明付き安全マスクでは、一般のマスクの表面に面ファスナー等で紫外線が発生するLED等の照明装置を着脱自在に固定するだけで、電源を入れるとマスクの前面で照明装置から紫外線が放射し殺菌された空気を呼吸することができる。このマスクでは、特許文献1のようにマスク部分と空気殺菌装置とを連結ホースで連結しないので携帯性に優れ、ホースの外れも気にする必要がない。さらに吐き出される呼気もマスクの前面で紫外線照射によって殺菌される。
当該マスクの裏側には紫外線が顔に届かないように防護する素材で覆われているので安全であるとのことではあるが、正面側に紫外線が剥き出しで照射されるので、近くにいる人が直接光を見たり手が触れたりすると危険である。また、マスク面の前面に広がる空気を殺菌するためにはマスク全面に多くのLEDを前面に向けて取り付ける必要があり、さらに十分な安全対策を施す必要がある。
特許第6124956号公報
特開2012−139478号公報
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その課題は、ウィルス等の感染を確実に防止するため、簡易な方法で普通のマスクや袋材に簡単に固定できる紫外線照射による空気殺菌装置とそれを用いたマスク、フルフェイスマスクを提供することにある。
上記の課題の解決のため、請求項1に記載された紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置の発明は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部を有するマスクにおいて、前記空気流通部は独立した吸気部と排気部とからなり、前記吸気部と排気部の双方には紫外線照射により空気を殺菌する空気殺菌部を設けたマスク用空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり、前記外側部と内側部とは両者の間にマスク本体を挟んで着脱自在に固定され、前記吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなり、前記吸気部と排気部はいずれか一方を外側部とし他方を内側部としたことを特徴とする。
請求項2に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置の発明は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部を有するマスクにおいて、前記空気流通部は独立した吸気部と排気部とからなり、前記吸気部と排気部の双方には紫外線照射により空気を殺菌する空気殺菌部を設けたマスク用空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり、前記外側部と内側部とは両者の間にマスク本体を挟んで着脱自在に固定され、前記外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、前記吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に紫外線照射による空気殺菌部を設けたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置において、吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有し、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置を設けたマスクにおいて、マスク本体は鼻及び口を覆うために顔への固定部を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4に記載のマスク本体において、マスク本体は顔全体を覆う透明のプラスチックフィルムから作られた袋材からなるフルフェイスマスクであり、少なくとも1つの紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置を設けたことを特徴とする。
本発明の紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置は、鼻又は口の少なくとも一方の近傍に位置する呼吸空間と外界との間で空気を流通させる空気流通部が独立した吸気部と排気部とからなっているので、吸気と呼気(排気)が混ざることなく流通し、常に新鮮な空気を吸うことができ、前記吸気部と排気部の双方には紫外線照射により空気を殺菌する空気殺菌部を設けたことで、吸気だけでなく自分の吐き出した呼気も殺菌できるので、自らがウィルス等の感染者であっても、自分の呼気で周りを感染させることがない。
また、紫外線照射による空気殺菌装置は外側部と内側部とからなり両者は着脱自在に固定されるので、マスク本体に取り付けて使用する場合も分離した両者の間にマスク本体を挟んで連結すれば簡単に使用することができ、別のマスクに取り換える場合も簡単にできる。
さらに、吸気部と排気部はジグザグ状又はうずまき状のチューブからなるので、長い距離の中で空気殺菌部による空気の殺菌が行われ、各空間内での空気殺菌部に対する曝露時間が長くなって、より確実な殺菌が行われ、吸気部と排気部のいずれか一方を外側部とし他方を内側部とすることで、両者の間にマスク本体を挟んで固定すればコンパクトなマスクが得られる。
請求項2の発明によれば、マスクとは別に空気溜め部を設けて、外側部には吸気部及び排気部の一端を接続し、吸気部及び排気部の他端を空気溜め部に接続し、前記空気溜め部に紫外線照射による空気殺菌部を設けたことにより、一旦吸気及び排気を空気溜め部に溜めて殺菌したものを吸気部及び排気部を長くすることで、紫外線に対する曝露時間を長く取ることができ殺菌が確実に行える。また、マスクに取り付けるよりも大型の高出力の殺菌装置が使えるので、殺菌が確実に行える。
請求項3の発明によれば、吸気部と排気部には逆流を防止するための吸気弁と排気弁を有することで、吸気部に呼気が混じったり、呼気が呼吸空間に戻ることもなく常に新鮮な空気を吸うことができる。また、前記吸気弁は呼吸空間に近い位置に排気弁は呼吸空間より遠い位置に設けられているので、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小で済み、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までの空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
請求項4の発明によれば、紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、鼻及び口を覆うために顔への固定部を有するものであり、すなわち簡単に言うと耳に掛ける紐などの固定部を有する一般的なマスクに使用することができ、特別なものは必要なく上記各発明の紫外線照射による空気殺菌装置があれば簡単に利用できる。
請求項5の発明によれば、紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置に用いるマスク本体は、顔全体を覆う透明のプラスチックフィルムから作られた袋材からなるフルフェイスマスクなので、普通のマスクやフェイスシールドのように、顔の側面や頭を露出することがなくウィルス感染に対して高度の安全性が保持できる。また、一般のマスクのように吸気部と排気部を鼻又は口の少なくとも一方の近傍に設ける必要がないので、少なくとも1つの紫外線照射によるマスク用空気殺菌装置を設けることができ、言い換えればマスク用空気殺菌装置を複数個設けることができるので、より殺菌された空気を多量に吸排気できる。
本発明の実施形態1の空気殺菌装置の前方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の側方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部と内側部を後方から見た分解図
実施形態1の空気殺菌装置の空気収集部材と外側部を前方から見た分解図
実施形態1の吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図
実施形態1の空気殺菌装置の外側部の空気入出口の形状の違いによる比較図
実施形態1の空気殺菌装置をマスクを取り付けた組立図
実施形態2の空気殺菌装置を前面(外側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を後方(内側)から見た概略図
実施形態2の空気殺菌装置を側方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを上方から見た概略図
実施形態3の空気殺菌装置を設けたマスクを下方から見た概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたフルフェイスマスクを装着した概略図
実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスクとフルフェイスマスクを装着した概略図
以下、本発明の空気殺菌装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
マスクを通して呼吸をする際に、従来のマスクでは、内部に各種のフィルターを設けて花粉等の粒子を通過させないようにしているが、一般的な不織布マスクのフィルターの隙間は0.1μm程度のウィルスよりもはるかに大きく5μm以上の飛沫を捕捉できるに過ぎない。ウィルスがブラウン運動によって拡散されフィルターの繊維に捕捉されるものもあるが、通過するものも多い。N95規格のマスクでは0.3μmの粒子を95%以上捕捉するものであるが、長時間使用には息苦しさを感じるものである。
本願発明は、ウィルスや細菌をフィルターで捕捉するのではなく、空気殺菌装置(具体的には紫外線照射装置)でウィルスや細菌の持つ遺伝子情報を破壊し増殖できなくして死滅させることによる殺菌効果を利用したものであり、空気殺菌装置の具体例を実施形態1(図1〜7)、実施形態2(図8〜10)、実施形態3(図11〜12)で示す。また、実施形態1の空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)を装着した例を図13〜15に示す。実施形態2、3及びその他の必須構成を有する空気殺菌装置を設けたマスク本体(マスク、フルフェイスマスク)でも良いことは言うまでもない。
本発明のマスク用空気殺菌装置Aの必須構成は、以下説明する各実施形態に共通していて、独立した吸気部11と排気部12とからなる空気流通部1(吸気部と排気部を総称したものであり図示はしない)と空気殺菌部5であり、空気殺菌装置はマスクに着脱自在に連結するため外側部3と内側部4とからなることが好ましい。また、吸気弁21と排気弁22を設けることがさらに好ましい。
(実施形態1)
実施形態1の空気殺菌装置Aの全体構成を説明すると、外側部3と内側部4とが内外接続部材Jで着脱自在に連結され、空気収集部材8が外側部3の前方に固定されており、空気殺菌部5は空気収集部材8の内面に設置され外側部3と共に形成される内部の殺菌空間Iに向かって紫外線が照射される。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けるのがより好ましいが、本実施形態1のように1ヵ所で兼用して殺菌空間Iを殺菌することもできる(図5、6参照)。そして、最終的に組上がった空気殺菌装置Aには外部フィルター61及び内部フィルター62が装着される。
殺菌装置Aは、樹脂又は金属のどちらか又は両方で形成されているが、樹脂の場合は紫外線に対して耐候性の強い、アクリル、ポリカーボネート、塩ビ、テフロン(登録商標)等が好ましく、その他の樹脂を用いる場合は少なくとも内側面にフッ素樹脂やシリコン樹脂等耐紫外線塗料を塗布すれば良い。金属は紫外線で劣化し難いので特に限定せず使用できるが、軽量、防錆、加工性、耐久性等によりアルミ、ステンレス、銅、チタン等が用いられる。
空気殺菌装置において、殺菌には紫外線を用いるのが効果的であるため、紫外線照射装置としてLEDやCCLF(冷陰極管)が用いられる。LEDは小型軽量で高出力であるが、一方向にしか照射できないため広い面積を殺菌するには多くのチップが必要となる。一方、CCLFは全方位に照射が可能であるため広い面積を殺菌できる。紫外線としてはC波が強力(A波の1000倍以上の殺菌効果)なので短時間で処理できるので好ましいが、A波でもB波でも効果はある。なお、紫外線照射装置は交換しやすいように、空気収集部材8の頂点から照射装置交換部51として本体にねじが切られて螺合され着脱自在になっているのが好ましい。
空気収集部材8には3カ所の外側部接合脚81が突出しており若干の弾力性を有しているので、外側部3の外側係止部32に嵌め込んで固定することができる。空気収集部材8と外側部3の間には空気流通部1を形成して外部と空気を入出させるとともに、中心が外側にパラボラ状に突き出すことにより内部で鋭角状に空気を方向転換させることができ外側部3の空気入出口31へ導入する。その際に広がった殺菌空間Iで内向きに設置された空気殺菌部5(紫外線照射装置)から照射される紫外線が空気を殺菌する。
図ではLEDが1個用いられているが、小型のLEDを複数個を点在させて用いても良い。LEDはケーブルによって外部電池に接続されており。外部電池はスマートフォンに使用される小型のものが好ましい。ON、OFFのスイッチは外部電池でもケーブルの途中に設けられても良い。上記で説明したように、LEDに変えてCCLF(冷陰極管)を用いても良い。なお、照射される紫外線の外部への万が一の漏れを防止するために外部フィルター61及び内部フィルター62を装着することが好ましく、フィルターは化学繊維や天然繊維からなる織物や不織布からなり市販品を使用することができる。
外側部32と内側部4は内外接続部材Jによって連結固定される。外側部3の空気入出口31の内径部分である外側係止部32に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径部分が挿入され両者の摩擦力で固定される。あるいは、外側係止部32と外側部接続部J1の間に相互にねじが切られて螺合されても良い。
内外接続部材Jの内側部接合脚J2は、内側部4の底面に円周状に複数(図3では6個)設けられた空気孔41に弾性的に固定されるとともに、外側部から中心を通過してきた空気は、内側部4の遮蔽部42で邪魔され空気孔41に曲げられて通過するので、仮に空気殺菌部5から照射された紫外線が外側部3から漏れても遮蔽部42で遮断されるので安全性に優れる。
図5は吸気弁と排気弁を持つ空気殺菌装置の内部構造を示す概略図で空気の流れを例示している。(a)は全体を示すもので、(b)は内外接続部材の弁の設置部分を拡大した詳細な構造を示す。吸気と排気(呼気)が別れずに同じ空間を通る場合は、ゆっくりと大きく呼吸をしなければ吐いた空気が外に廃棄される前に新たに吸い込んだ吸気に交じり合って酸素濃度が下がり息苦しくなる。本実施形態では、図の上方を吸気部11、下方を排気部12として独立させている。呼吸することで吸い込まれる空気は、空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間から吸気空間IS(吸気部11にも該当)を通って内部中心部で広がった殺菌空間Iに到達し、空気入出口31から内部へ吸い込まれるため、鋭角で折れ曲がる。この時に空気が相互に又は内壁に衝突して対流が生じ流入速度が落ちるため、比較的長い時間紫外線照射される(小さな矢印IR)。この後空気は、内外接続部材Jで結合された内枠材4の遮蔽部42に邪魔され周囲の空気孔41を通り鼻口に吸いこまれる。一方、息を吐きだした場合はこの逆に流れていき、殺菌空間Iで殺菌され排気空間ES(排気部11にも該当)を通って空気収集部材8と外側部3の間の外周部隙間からウィルスや細菌のない状態で放出される。
ここでは吸気弁21と排気弁22が内外接続部材Jの内部に取り付けられる。図5(b)の上半分が吸気部11、下半分が排気部12で吸気部の呼吸空間Bに近い位置に吸気弁21が設けられ、排気弁22は呼吸空間Bより遠い位置に設けられているので(弁は破線で表しそれぞれ中央側に向かって開く)、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
この図では排気部の方が空間容量が大きく作られているが、基本的に口よりも吸引力の小さな鼻につながる吸気側の空間容量を小さくするとともに、吐き出しの大きな口に直結する排気側の空間容量が大きくして一気に排出することで、効果的な吸排出が行われる。
排気弁22は空気入出口31で吸気側に混じらないように吸気側に向かって開放することで吸気側に向かう排気を遮蔽する。なお、吸気弁の開放した状態に合わせて周りを囲むように殺菌空間Iの内部に遮蔽壁(図示せず)を設ければ、さらに吸排気の混入を防止できる。
図6は外側部3の空気入出口31の形状による比較図であり、内部を見易くするため一部を図示せず省略している。(a)は空気入出口31が同じ内径で奥まで形成されたものであり、(b)は空気入出口31が内側に向かって段状に狭くなっているので、外部から流入した空気は空気入出口31から内部へ入る際に、殺菌空間Iで広げられた状態から狭くなって段部にぶつかることで、乱気流が発生し空気の滞留時間がより長くなって紫外線の曝露時間が長くなり殺菌効果が向上する。さらに、空気殺菌装置Aの内部(空気収集部材8、外側部3、内外接続部材Jの内壁部)にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。
空気収集部材8と外側部3とを外部フィルター61で覆い、内側部4を内部フィルター62で覆うことにより、万が一の場合に自分の顔やまわりに紫外線を漏らすことなく遮蔽することができるので安全性に優れる。フィルターの材質は市販のUVカット不織布や織布を用いることができる。また、フィルターの隙間に応じて花粉やほこり等を捕捉することもできるが、あまり極端に細かくなると空気の入出量が減るために息苦しくなる場合もあるので隙間は適度な大きさとしたり一部に小さな空気孔を設けても良い。特に、外部フィルター61の表面部は大きな伸縮性があれば、空気収集部材8と外側部3にまたがってかぶせることができるので好ましい。それぞれのフィルターは、側面部で固定溝33、43に被せてゴムバンドRで留めれば簡単に装着でき洗濯等で外すこともできる。
図7は実施形態1のマスク7を示す組立図であり、前記で説明してきた空気殺菌装置を一般的な鼻と口を覆うマスクに装着したものである。マスク本体(鼻と口を覆う不織布や布地の部分)71を外側部3と内側部4の間に挟んで装着するが、内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて挟み込むことが好ましい。空気殺菌装置は小型軽量のため取り付け時に市販の一般的なマスクでも破れたり形が崩れることはなく、耳にかけても重いなどの不快感はない。
図13はこのマスク71を固定部73(耳掛け)で耳に掛け、顔に装着した状態を示した概略図である。この図では、空気殺菌部5(紫外線照射装置)からケーブル52で外部電池(図示しない)をつないで、電気を供給する。呼吸空間B(鼻と口の部分)が空気の流通路につながっているので、殺菌された空気を吸い、逆に吐く息も殺菌されて外に出ていくので、仮に本人が感染をしていても、飛沫だけでなく細菌やウィルス自体を外部に排出する可能性が少なくなる。このように一般のマスクに装着するだけで、細菌やウィルス感染をより防護することができる。
図14はフルフェイスマスク72を装着した概略図である。フルフェイスマスクは顔の大きさに合わせて比較的厚みのある透明のプラスチックフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等)から作るのが好ましいが、身の回りにある透明のゴミ袋等の袋材7で代用するのが、最も簡単で効果的である。空気殺菌装置Aの取付は、袋材7に内外接続部材Jの外側部接続部J1の外径に合わせて孔を開けて、外側に外側部3を孔に合わせ、内側部4を連結した内外接続部材Jの外側部接続部J1を孔に挿入して外側部3の外側係止部32に嵌め合わせて連結固定して袋材7に空気殺菌装置Aを取付ける。鼻口だけを覆うマスクではないので、空気殺菌部5を袋材7のどの部分に設けても良いし、1個だけでなく複数個所に設けても良い。
図13に示すマスク71では、鼻口しか防護できず、感染源の一つである目の粘膜からの感染を防止できない。さらに顔や髪の毛に付着した飛沫が手に付くなどして感染することやマスクをしていても正しく装着していないとマスクの隙間から飛沫などが内部に入り込むこともあり、感染者かもしれない人と密に接する機会の多い医療従事者や介護従事者や救急隊員や警察官など過酷な現場で対応しなければならない人にとって十分安心できるのものではなかったが、正式な防護服や防護マスクは感染が急激に拡大した現場では十分な数が揃えられない場合が多い。そのような時に身の回りにあるゴミ袋等で簡易的に作ることができるので、救急車やパトカーなどに積んでおけば場所も取らず費用もあまりかからないので有用である。
図15はマスク71とフルフェイスマスク72を同時に装着した概略図であり、実施図14において袋材7の内側に合わせてマスク7を設けた構成になる。フルフェイスマスクだけでは、薄い袋材を使用した時は、動き回る際に空気殺菌装置Aに遠心力等の荷重がかかって袋面が破れたりするおそれが考えられるが、本仕様によると、空気殺菌装置Aを固定部(耳掛け)73で耳にかけたマスク71によって顔前に固定できるので、袋材7が破れるのを防ぐことができるとともに、口元で直接呼吸する方が空気の入出は効果的に行える。
(実施形態2)
図8乃至10は実施形態2の空気殺菌装置Aを示す。外側部3に該当する吸気部11はジグザグ状のチューブで、内側部4に該当する排気部12はうずまき状のチューブ である。何れも実施形態1よりも大きいがマスクに固定できる大きさであるにもかかわらず、吸気管及び排気管の入口から出口までの長さは圧倒的に長い。このため空気殺菌装置Aでの紫外線による空気の曝露時間が長くなるため、より完璧な殺菌が行える。
図8に示した吸気部11の入口からジグザグ状にチューブが形成され図9の中央の吸気部の出口からから吸気として吸い込まれる。一方、前記吸気部の出口に巻き付くように排気部12が固定され、吐き出された呼気がうずまき状のチューブを通って外部に面した出口から排気される(図に記載した矢印の通りに空気が動く)。空気殺菌部5は吸気部11と排気部12の双方に個々に設けられている(実際はチューブ内に固定され外からは見えないが、説明上着色して示す)。空気殺菌部5は吸気部及び排気部にそれぞれ着色部の少なくとも1ヵ所に設ければ良く、ジグザグ状の曲がり角どこかに設けるのが紫外線の照射効果が最も高い。なお、効果の違いはあるものの設置個所は図に示す場所でなくてもかまわない。
吸気部11は外側部3として排気部12は内側部4として分離するが、図10に示すように間にマスク本体7を挟んで着脱自在に連結固定して使用する。なお、固定方法が既存の着脱自在の固定法であれば方法は問わない。吸気弁21は吸気部11の出口近傍に設けられ、排気弁22は排気部12の出口近傍に設けられる。すなわち、息を吸い込む際に弱い力でも吸気弁は近くにあるため作動し、呼吸空間から吸気弁までの空間に呼気が混じっても最小ですむ。一方、呼気を吐き出す力は比較的強く遠くに位置しても作動し、呼吸空間から排気弁までに溜まる空気により空気圧が比較的高くなるので、排気弁から逆流が阻止される。
実施形態2で用いられる空気殺菌装置や吸気部、排気部の材質は実施形態1と同様のものが用いられる。なお、本実施形態のように吸気部11、排気部12がジグザグ状又はうずまき状のチューブであれば(吸気部がうずまき状で排気部がジグザグ状であっても良い)、呼気及び吸気の何れにおいても空気の滞在時間が増加するので、照射される紫外線による曝露時間が長く殺菌効果が高まる。より効果を上げるためチューブ内にアルミ箔やシートあるいはアルミ蒸着や塗膜等の反射材を設けることにより紫外線をより乱反射させ空気に対しての紫外線曝露時間を長くすることができる。本実施形態においても図14及び15のフルフェイスマスクの仕様は同様に用いることができる。
(実施形態3)
図11及び12は実施形態3の空気殺菌装置Aを示す。他の実施例と同じ紫外線照射のLED等が使用できるが、本実施例の特徴はマスク部分と空気殺菌部5を分離し吸気部と排気部とで結んだことである。例えば空気殺菌部5を腰部分にベルトで固定し独立させることで、空気殺菌部5に大型のLEDや複数個のLEDを用いたり、大型で全方位に照射できるCCLF(冷陰極管)も使用することができるので紫外線照射能力を高めることができる。なお、空気殺菌部5は照射装置交換部51に固定され容器に螺合することで、交換など容易に行うことができる。
マスク部分は外側部3と内側部4に分離し、間にマスク本体7を挟むことで着脱自在に連結固定できる。固定方法はねじを切って螺合したりフックで嵌合固定するなど既存の方法が用いられる。外側部3には吸気部11と排気部12が接続されて前記の空気殺菌装置Aと結ばれる。吸気部及び排気部には顔を動かし易いように柔軟性があり、耐紫外線に優れた素材(例えばシリコンゴム、フッ素ゴム)のチューブが用いられる。また、外部に紫外線が照射しないようにアルミを積層や蒸着したものが好ましく。これによって、紫外線がチューブ内で乱反射して空気の紫外線曝露時間を延ばし、より殺菌効果を高めることができる。
空気殺菌部5は一つの容器で形成され、内部は仕切り93によって吸気部11に結合される吸気溜め91と排気部12に結合される排気溜め92に分割される。排気される呼気が逆流しないように、排気部12が排気溜め92に連結される部分に排気弁22が設けられている。排気口には排出弁23が設けられており、排気溜め92内の排出された呼気が溜まって大気よりも圧力が上昇すると、弁が開いて排出される。吸気側は特に弁がなくマスク部分から息が吸い込まれると吸気溜め91の圧力が下がって外から空気が入る。
吸気溜め91と排気溜め92の双方には個別に空気殺菌部5が設置され、紫外線照射によって容器内に溜まった空気を殺菌する。容器内部はアルミ等によって紫外線が乱反射できるようになっており、さらに、一部は吸気部11のチューブ内まで紫外線が乱反射して吸気を殺菌する。空気殺菌部5は陽気の外側に取り付けられた電池(図示せず)から電気が供給される。なお、本実施例においても既に説明したマスク71だけでなく図14及び15に示されるフルフェイスマスクにも用いられることはもちろんである。
本発明の空気殺菌装置があれば、一般に使用しているマスクに取り付けるだけで、吸気だけでなく呼気についても簡単に殺菌することができる。また、透明な袋材に取付ければ簡易な防護服等の代用としても使用でき、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
1 空気流通部
11 吸気部
12 排気部
2 弁
21 吸気弁
22 排気弁
23 排出弁
3 外側部
31 空気入出口
4 内側部
41 空気孔
42 遮蔽部
5 空気殺菌部
6 フィルター
61 外部フィルター
62 内部フィルター
7 マスク本体、袋材
71 マスク
72 フルフェイスマスク
8 空気収集部材
9 空気溜め部)
A 空気殺菌装置
B 呼吸空間
I 殺菌空間
IR 紫外線照射
J 内外接続部材
O 外界
IS 吸気空間
ES 排気空間