JP2021184347A - 亜鉛電池の制御方法および電源システム - Google Patents

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Abstract

【課題】充電状態で待機させる用途において亜鉛電池の寿命を延ばすことができる、亜鉛電池の制御方法及び電源システムを提供する。【解決手段】この制御方法は、電圧V1にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第1の充電ステップと、電圧V1よりも小さい電圧V2にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第2の充電ステップと、を含む。第1の充電ステップにおいて、亜鉛電池のSOCが閾値SOC1を超えた場合、及び、亜鉛電池のSOCが閾値SOC1を超えたことを亜鉛電池のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、第1の充電ステップから第2の充電ステップへ移行する。第2の充電ステップにおいて、亜鉛電池のSOCが閾値SOC2を下回った場合、及び、電圧V2による充電の開始からの経過時間が閾値Taを超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、第2の充電ステップから第1の充電ステップへ移行する。【選択図】図4

Description

本発明は、亜鉛電池の制御方法および電源システムに関する。
特許文献1には、鉛電池の充電制御方法に関する技術が開示されている。この文献に記載された方法は、実質上Sbを含まない正極格子を用いた制御弁式(シール式)鉛蓄電池に、第一段目の充電電圧Vを蓄電池の平衡電圧+80mV以上とし、第二段目以降の充電電圧V〜Vを蓄電池の平衡電圧+70mV以下とする多段充電制御方式を適用する。第二段目以降の充電電流に応じて充電電圧V〜Vを補正する。
特開2003−346912号公報
蓄電池を充電状態で待機させ、蓄電池の電力が必要となった場合に電源を蓄電池に切り替える電源システムが知られている。例えば、無停電電源システム(Uninterruptible Power Systems;UPS)では、商用電源を用いて充電した蓄電池を充電状態で待機させ、停電の際に、電源を商用電源から蓄電池に切り替える。このような電源システムでは、蓄電池の寿命が重要となる。蓄電池の寿命が長くなるほど蓄電池の交換サイクルが長くなり、運用コストを抑制できるからである。また、近年、このような用途で用いられる電源システムの蓄電池として、亜鉛電池が注目されている。例えばニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有する。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて、低コストといった利点を有する。
蓄電池を充電状態で待機させるUPSなどの装置において、蓄電池を放電した後には、次回の放電に備え、充電容量を早期に回復することが望ましい。しかし、高い充電電圧で充電を続けると、過充電の状態が維持されることとなる。亜鉛電池の場合、過充電の状態を継続すると劣化を引き起こし、電池寿命が短くなってしまう。本発明の一側面は、充電状態で待機させる用途において亜鉛電池の寿命を延ばすことができる、亜鉛電池の制御方法及び亜鉛電池を備える電源システムを提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る亜鉛電池の制御方法は、亜鉛電池を充電状態で待機させる方法であって、第1の電圧にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第1の充電ステップと、第1の電圧よりも小さい第2の電圧にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第2の充電ステップと、を含む。第1の充電ステップにおいて、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えた場合、及び、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを亜鉛電池のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、第1の充電ステップから第2の充電ステップへ移行する。第2の充電ステップにおいて、亜鉛電池のSOCが第2の閾値を下回った場合、及び、第2の電圧による充電の開始からの経過時間が第3の閾値を超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、第2の充電ステップから第1の充電ステップへ移行する。
本発明の一側面に係る電源システムは、亜鉛電池と、亜鉛電池の充電及び放電を制御する制御部と、を備える。制御部は、亜鉛電池を充電状態で待機させる際に、第1の電圧にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第1の充電動作と、第1の電圧よりも小さい第2の電圧にて亜鉛電池の定電圧充電を行う第2の充電動作と、を行う。制御部は、第1の充電動作において、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えた場合、及び、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを亜鉛電池のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、第1の充電動作から第2の充電動作へ移行する。制御部は、第2の充電動作において、亜鉛電池のSOCが第2の閾値を下回った場合、及び、第2の電圧による充電の開始からの経過時間が第3の閾値を超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、第2の充電動作から第1の充電動作へ移行する。
この制御方法及び制御システムでは、第1の電圧にて亜鉛電池の定電圧充電を行い、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えた場合、言い換えると亜鉛電池の充電が或る程度進んだ場合に、第1の電圧よりも小さい第2の電圧に切り替えて亜鉛電池の定電圧充電を行う。したがって、比較的大きな第1の電圧によって亜鉛電池の充電容量を早期に回復し、その後、比較的小さな第2の電圧によって亜鉛電池の過充電を抑制することができる。また、過充電を抑える第2の電圧によって充電を続けると、亜鉛電池の充電容量が自然放電等によって次第に低下することがある。この制御方法及び制御システムでは、充電容量の低下を所定の条件(SOCが第2の閾値を下回るか、または経過時間が第3の閾値を超える)によって判断し、再び充電電圧を第1の電圧とすることによって亜鉛電池の充電容量を回復する。したがって、上記の制御方法及び制御システムによれば、充電状態で待機させる用途において、亜鉛電池の充電容量を早期に回復しつつ、亜鉛電池の寿命を延ばすことができる。
上記制御方法の第1の充電ステップ又は上記電源システムの第1の充電動作において、定電圧充電の前に定電流充電を行ってもよい。この場合、亜鉛電池に流れる最大電流を抑えることができ、亜鉛電池の長寿命化に一層寄与できる。
上記制御方法又は上記電源システムにおいて、第1の閾値は60%以上100%以下であってもよい。また、上記制御方法又は上記電源システムにおいて、第2の閾値は59%以上99%以下であってもよい。
上記制御方法又は上記電源システムにおいて、第1の電圧は1.825V以上2.0V以下であってもよい。また、上記制御方法又は上記電源システムにおいて、第2の電圧は1.80V以上1.87V以下であってもよい。
上記制御方法又は上記電源システムにおいて、上記一又は複数のパラメータは、充電電流の大きさを含んでもよい。充電電圧が比較的高い場合(すなわち充電電流が比較的大きい場合)、亜鉛電池のSOCが増大すると、充電中に流れる充電電流の大きさは次第に小さくなる。故に、充電中に流れる充電電流の大きさは、亜鉛電池のSOCと密接な相関を有する。したがって、一又は複数のパラメータが充電電流の大きさを含む場合、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを容易に知ることができる。
上記制御方法又は上記電源システムにおいて、上記一又は複数のパラメータは、第1の電圧での充電開始からの総充電容量を含んでもよい。充電電圧が比較的高い場合(すなわち充電電流が比較的大きい場合)、充電開始からの総充電容量は亜鉛電池のSOCにほぼ比例する。故に、充電開始からの総充電容量は、亜鉛電池のSOCと密接な相関を有する。したがって、一又は複数のパラメータが充電開始からの総充電容量を含む場合、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを容易に知ることができる。
上記制御方法又は上記電源システムにおいて、上記一又は複数のパラメータは、充電電流の単位時間あたりの変化量を含んでもよい。充電電圧が比較的高い場合(すなわち充電電流が比較的大きい場合)、亜鉛電池のSOCが増大すると、充電電流の単位時間あたりの変化量は次第に小さくなる。故に、充電電流の単位時間あたりの変化量は、亜鉛電池のSOCと密接な相関を有する。したがって、一又は複数のパラメータが充電電流の単位時間あたりの変化量を含む場合、亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを容易に知ることができる。
本発明の一側面によれば、充電状態で待機させる用途において亜鉛電池の寿命を延ばすことができる亜鉛電池の制御方法および電源システムを提供することができる。
電源システム及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。 制御部のハードウェア構成例を示す図である。 運用中における亜鉛電池のSOCの変化を示すグラフである。 充電期間の定電圧充電中における、充電電圧及びSOCの変化を拡大して示すグラフである。 待機期間における、充電電圧及びSOCの変化を拡大して示すグラフである。 亜鉛電池の制御方法を示すフローチャートである。 第1の電圧から第2の電圧に切り替えるか否かの判断を行うステップの具体例を示すフローチャートである。 第2の電圧から第1の電圧に切り替えるか否かの判断を行うステップの具体例を示すフローチャートである。 実験により得られた、亜鉛電池の定電圧充電期間と放電容量維持率との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照しながら本発明による亜鉛電池の制御方法および電源システムの実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、亜鉛電池とは、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、及び銀亜鉛電池等、負極に亜鉛を用いる電池の概念である。
図1は、電源システム1及びその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。電源システム1は、蓄電池の充電状態を維持しつつ未使用状態で待機させ、必要に応じて蓄電池の電力を供給する。電源システム1が適用される場面は限定されず、例えば、電源システム1は固定物にも移動体にも適用可能である。固定物への適用の例として、電源システム1は、UPSとして家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。
電源システム1は、電源システム1に電力を供給可能な供給要素2と、電源システム1から電力を受け取ることが可能な需要要素(負荷)4との間に設けられる。電源システム1と供給要素2とは交流電流が流れる配線6Aを介して電気的に接続され、需要要素4と電源システム1とは、交流電流が流れる配線6Bを介して電気的に接続される。供給要素2から出力された電力は、配線6Aを通じて電源システム1に蓄えられ、また配線6A,6Bを通じて需要要素4に供給される。電源システム1に蓄えられた電力は、配線6Bを通じて需要要素4に供給される。
供給要素2は、電源システム1に電力を供給可能な装置または設備である。供給要素2の種類は何ら限定されない。例えば、供給要素2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置であってもよい。発電方法および発電装置の種類は何ら限定されず、例えば、発電装置は太陽光発電装置でもよいし風力発電機でもよい。あるいは、供給要素2は、発電、変電、送電、および配電を統合した商用電源の設備である外部の電力系統であってもよい。外部の電力系統は、例えば電力会社により提供される。
需要要素4は、電源システム1から電力を受け取ることが可能な装置または設備である。需要要素4の種類も何ら限定されない。需要要素4は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合である負荷であってもよい。負荷の例として、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合と、任意の装置の任意の構成要素とが挙げられる。
電源システム1は、コンバータ7、インバータ8、亜鉛電池10、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)12、および制御部14を備える。コンバータ7の入力端は配線6Aを介して供給要素2と電気的に接続されており、コンバータ7の出力端は、直流電流が流れる配線6Cを介してインバータ8の入力端と電気的に接続されている。インバータ8の出力端は、配線6Bを介して需要要素4と電気的に接続されている。配線6Cの途中のノードNは、直流電流が流れる配線6Dを介して亜鉛電池10と電気的に接続されている。図1の例では電源システム1は1組の亜鉛電池10及びBCU12を備えるが、その組数は限定されず、2以上でもよい。複数の組が存在する場合に、亜鉛電池10の性能(例えば、定格容量、応答速度など)は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。制御部14は、通信線を介してコンバータ7、インバータ8、及びBCU12と通信可能に接続される。
亜鉛電池10は、供給要素2から提供される電力を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。亜鉛電池10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される。亜鉛電池10には制御機能としてのBCU12が接続されている。BCU12は、亜鉛電池10に関するデータを制御部14に送信する。
BCU12は、SOC測定部を兼ねる。すなわち、BCU12は、亜鉛電池10の充電状態(SOC)を測定する。例えば、BCU12は、亜鉛電池10に通電された電流を計測し、積算することによりSOCを測定する。BCU12が測定したSOCに関する情報は、他のデータとともに制御部14に送信される。なお、SOCの算出に必要な情報(例えば電池の開回路電圧、放電電流量及び充電電流量、または放電電流の積算量および充電電流の積算量)をBCU12が制御部14に送信し、制御部14がSOCを算出してもよい。
SOCは、例えば次のようにして測定される。まず、亜鉛電池10の充電中における、亜鉛電池10へ流れる電流量を取得する。そして、該電流量から充電容量を算出する。次に、亜鉛電池10の放電中における、亜鉛電池10から流れる電流量を取得する。そして、該電流量から放電容量を算出する。これらの充電容量及び放電容量に基づいて、SOCを算出することができる。
コンバータ7及びインバータ8は、亜鉛電池10の充放電を制御する。コンバータ7は、電力を交流から直流に変換する装置であり、インバータ8は、電力を直流から交流に変換する装置である。交流入力側の電源異常(停電、電圧低下等)が発生した場合、亜鉛電池10に充電された直流電力をインバータ8で逆変換し、交流出力の供給を継続する。本実施形態の制御部14は、BCU12から得られる亜鉛電池10のSOCに基づいて、コンバータ7及びインバータ8の動作を制御することにより、亜鉛電池10の充放電を制御する。充電モードでは、供給要素2から出力された電力の一部を亜鉛電池10に蓄え、放電モードでは、亜鉛電池10を強制的に放電させて需要要素4に電力を供給する。
制御部14は、亜鉛電池10の充電及び放電を制御するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)である。図2は、制御部14のハードウェア構成例を示す図である。この図に示すように、制御部14は、プロセッサ141、メモリ142、および通信インタフェース143を有する。プロセッサ141は例えばCPUであり、メモリ142は例えばフラッシュメモリで構成されるが、制御部14を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてよい。制御部14の各機能は、プロセッサ141が、メモリ142に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ141は、メモリ142から読み出したデータまたは通信インタフェース143を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。あるいは、プロセッサ141は受信したデータまたは演算結果をメモリ142に格納する。制御部14は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合(すなわち分散システム)で構成されてもよい。
例えばUPS等である電源システム1は、亜鉛電池10の電力を必要としない平常時においては、亜鉛電池10の充電状態を維持しつつ停電発生時まで待機させる。その際、制御部14は、亜鉛電池10のSOCを、或る大きさ(例えば60%〜100%の範囲内)となるように制御する。この期間は、停電が発生しない限り、例えば数年(例えば約1年)といった長期間にわたって継続される。
ここで、上記の充放電制御について詳細に説明する。図3は、運用中における亜鉛電池10のSOCの変化を示すグラフである。同図において、横軸は時間を表し、縦軸はSOCを表す。図3に示されるように、電源システム1は、停電等の不定期(ランダム)な要因による放電後の充電期間P11と、充電状態を維持した状態で待機させる待機期間P12とを交互に繰り返す。充電期間P11では、まず定電流充電(CC充電)によって亜鉛電池10を充電するよう制御部14がコンバータ7を制御し、次いで、定電圧充電(CV充電)によって亜鉛電池10を充電するよう制御部14がコンバータ7を制御する。なお、充電とは、配線6C,6Dから亜鉛電池10へ電力を供給し、電荷を亜鉛電池10において蓄えることをいう。
図4は、充電期間P11の定電圧充電中における、充電電圧及びSOCの変化を拡大して示すグラフである。図4のグラフG11は充電電圧(左縦軸)を示し、グラフG12はSOC(右縦軸)を示す。図4の横軸は時間(日数)を表す。制御部14は、充電期間P11の定電圧充電期間において、先ず、比較的高い第1の電圧Vにて亜鉛電池10を充電するよう制御する(第1の充電動作、図中の期間P11a)。この第1の充電動作によって、亜鉛電池10のSOCは急速に上昇する。そして、この充電動作において、亜鉛電池10のSOCが閾値SOC(第1の閾値)を超えた場合、及び、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、制御部14は、充電電圧を電圧Vよりも低い第2の電圧Vに切り替える。その後、制御部14は、電圧Vにて亜鉛電池10を充電するよう制御する(第2の充電動作、図中の期間P11b)。すなわち、制御部14は、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えた場合に、充電電圧を電圧Vとする第1の充電動作から、充電電圧を電圧V(<V)とする第2の充電動作へ移行する。この第2の充電動作によって、亜鉛電池10の放電容量の時間変化は緩慢となり、SOCはほぼ一定値に維持される。
電圧Vは、例えば1.825V以上2.0V以下である。電圧Vが電圧Vよりも大きい限りにおいて、電圧Vは、期間P11a内で一定であってもよく、期間P11a内で時間変化してもよい。電圧Vは、例えば1.80V以上1.87V以下である。電圧Vは、電圧Vよりも小さい限りにおいて、期間P11b内で一定であってもよく、期間P11b内で時間変化してもよい。
閾値SOCは、例えば60%以上100%以下である。閾値SOCは、70%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、閾値SOCは、80%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータには、充電電流の大きさと、電圧Vでの充電開始からの総充電容量と、充電電流の単位時間あたりの変化量とのうち少なくとも一つが含まれる。充電電圧が比較的高い場合(すなわち充電電流が比較的大きい場合)、亜鉛電池10が充電電圧Vに到達すると、亜鉛電池10の充電中に流れる充電電流の大きさが次第に小さくなる。故に、充電中に流れる充電電流の大きさは、亜鉛電池10のSOCと密接な相関を有する。また、充電電圧が比較的高い場合、充電開始からの総充電容量は亜鉛電池のSOCにほぼ比例する。故に、充電開始からの総充電容量は亜鉛電池10のSOCと密接な相関を有する。また、亜鉛電池10が充電電圧Vに到達後、充電が十分に進むと、充電電流の単位時間あたりの変化量は次第に小さくなる。故に、充電電流の単位時間あたりの変化量は亜鉛電池のSOCと密接な相関を有する。なお、充電電流の大きさに関する情報は、BCU12から制御部14へ常時提供される。充電開始からの総充電容量、及び充電電流の単位時間あたりの変化量は、BCU12から提供された充電電流の大きさに関する情報に基づいて、制御部14において計算することができる。
図5は、待機期間P12における、充電電圧及びSOCの変化を拡大して示すグラフである。図5のグラフG21は充電電圧(左縦軸)を示し、グラフG22はSOC(右縦軸)を示す。図5の横軸は時間(日数)を表す。制御部14は、待機期間P12において、先ず、上述した電圧Vにて亜鉛電池10を充電するよう制御する(第2の充電動作、図中の期間P12b)。電圧Vは比較的小さい電圧であるので、自然放電が充電反応よりも大きく、亜鉛電池10のSOCが徐々に減少することがある。電圧Vにて充電している際に、亜鉛電池10のSOCが閾値SOC(第2の閾値、SOC<SOC)を下回った場合、及び、電圧Vによる充電の開始からの経過時間Tが閾値Ta(第3の閾値)を超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、制御部14は、充電電圧を電圧Vよりも高い電圧Vに切り替える。その後、制御部14は、電圧Vにて亜鉛電池10を充電するよう制御する(第1の充電動作、図中の期間P12a)。すなわち、制御部14は、亜鉛電池10のSOCが所定の条件を満たした場合に、充電電圧を電圧Vとする第2の充電動作から、充電電圧を電圧V(>V)とする第1の充電動作へ移行する。この第1の充電動作によって、亜鉛電池10の放電容量は急速に増大し、SOCが回復する。
閾値SOCは、例えば59%以上99%以下である。閾値SOCは、69%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。また、閾値SOCは、79%以下であることが好ましく、89%以下であることがより好ましい。
その後、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えた場合、及び、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、制御部14は、充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える。その後、制御部14は、電圧Vにて亜鉛電池10を充電するよう制御する(第2の充電動作、図中の期間P12b)。以降、待機期間P12においては、第2の充電動作(期間P12b)と第1の充電動作(期間P12a)とを繰り返しながら亜鉛電池10の充電状態を維持する。
なお、第1の充電動作と第2の充電動作とを交互に繰り返す際、第1の充電動作とその次の第2の充電動作との間、及び第2の充電動作とその次の第1の充電動作との間のいずれにおいても、他の動作が介在することを妨げない。
ここで、電源システム1を用いた亜鉛電池10の制御方法について説明する。図6は、本実施形態の亜鉛電池10の制御方法を示すフローチャートである。この制御方法は、亜鉛電池10の充電状態を維持しつつ未使用状態で待機させる方法であって、電圧Vにて亜鉛電池10の定電圧充電を行う第1の充電ステップST1と、電圧Vよりも小さい電圧Vにて亜鉛電池10の定電圧充電を行う第2の充電ステップST2と、を含む。そして、充電ステップST1においては、電圧Vにて亜鉛電池10の定電圧充電を行いながら(ステップST11)、充電電圧を電圧Vに切り替えるか否かの判断を常時行う(ステップST12)。ステップST12では、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えた場合、及び、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、充電電圧を電圧Vに切り替え、充電ステップST2に移行する。また、充電ステップST2においては、電圧Vにて亜鉛電池10の定電圧充電を行いながら(ステップST21)、充電電圧を電圧Vに切り替えるか否かの判断を常時行う(ステップST22)。ステップST22では、亜鉛電池10のSOCが所定の条件を満たした場合に、充電電圧を電圧Vに切り替え、充電ステップST1に移行する。
図7は、電圧Vから電圧Vに切り替えるか否かの判断を行うステップST12の具体例を示すフローチャートである。制御部14は、まず、充電電流の大きさが第4の閾値以上であるか否かを判断する(ステップST121)。第4の閾値は、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを示唆する値に予め設定される。一実施例では、第4の閾値は0.05Cである。なお、本明細書において、電池の理論容量を1時間で完全放電させる電流の大きさを1Cと定義する。充電電流の大きさが第4の閾値を下回った場合(ステップST121:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST125)。充電電流の大きさが第4の閾値以上である場合(ステップST121:YES)、制御部14は、電圧Vでの充電開始からの総充電容量が第5の閾値以下であるか否かを判断する(ステップST122)。第5の閾値は、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを示唆する値に予め設定される。
総充電容量が第5の閾値を超えた場合(ステップST122:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST125)。総充電容量が第5の閾値以下である場合(ステップST122:YES)、制御部14は、充電電流の単位時間あたりの変化量が第6の閾値以上であるか否かを判断する(ステップST123)。第6の閾値は、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを示唆する値に予め設定される。充電電流の単位時間あたりの変化量が第6の閾値を下回った場合(ステップST123:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST125)。充電電流の単位時間あたりの変化量が第6の閾値以上である場合(ステップST123:YES)、制御部14は、亜鉛電池10のSOCが閾値SOC以下であるか否かを判断する(ステップST124)。SOCが閾値SOCを超えた場合(ステップST124:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST125)。SOCが閾値SOC以下である場合(ステップST124:YES)、制御部14は充電電圧を電圧Vに維持する(ステップST11)。
第1の充電ステップST1の実行中、ステップST121〜ST124の判断は、定期的に(例えば1日に1回、所定の時刻に)行われる。なお、必要に応じて、4つのステップST121〜ST124のうち少なくとも3つは省略されてもよい。また、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを、亜鉛電池10のSOCと相関を有する上記以外のパラメータが示唆した場合に、制御部14が充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替えてもよい。
図8は、電圧Vから電圧Vに切り替えるか否かの判断を行うステップST22の具体例を示すフローチャートである。制御部14は、まず、亜鉛電池10のSOCが閾値SOC以上であるか否かを判断する(ステップST221)。SOCが閾値SOCを下回った場合(ステップST221:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST223)。SOCが閾値SOC以上である場合(ステップST221:YES)、制御部14は、充電電圧を電圧Vに切り替えてからの経過時間Tが閾値Ta以内であるか否かを判断する(ステップST222)。経過時間Tが閾値Taを超えた場合(ステップST222:NO)、制御部14は充電電圧を電圧Vから電圧Vに切り替える(ステップST223)。経過時間Tが閾値Ta以内である場合(ステップST222:YES)、制御部14は充電電圧を電圧Vに維持する(ステップST21)。閾値Taは、理論的または実験的に、自然放電と、劣化による充電電流の減少とにより亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを下回る時間(日数)に予め設定される。第2の充電ステップST2の実行中、ステップST221,ST222の判断は、定期的に(例えば1日に1回、所定の時刻に)行われる。
以上に説明した本実施形態の亜鉛電池10の制御方法及び電源システム1によって得られる効果について説明する。前述したように、充電容量を早期に回復するために高い充電電圧で充電を続けると、過充電の状態が維持される。亜鉛電池の場合、過充電の状態を継続すると劣化を引き起こし、電池寿命が短くなってしまう。図9は、実験により得られた、ニッケル亜鉛電池の定電圧充電期間と放電容量維持率(初期の放電容量に対する各時点での放電容量の割合、単位:%)との関係を示すグラフであって、充電電圧がそれぞれ異なる複数のグラフG21〜G25を示している。グラフG21は充電電圧が1.825Vである場合を示す。グラフG22は充電電圧が1.83Vである場合を示す。グラフG23は充電電圧が1.84Vである場合を示す。グラフG24は充電電圧が1.85Vである場合を示す。グラフG25は充電電圧が1.87Vである場合を示す。図9において、縦軸は放電容量維持率を表し、横軸は充電日数を表す。なお、この実験では、ニッケル亜鉛電池の環境温度を40℃とし、放電容量を測定する際の放電電流を4C、環境温度を25℃とした。図9を参照すると、いずれの充電電圧においても充電日数が長くなるほど放電容量維持率が低下していることがわかる。放電容量維持率の低下は、ニッケル亜鉛電池の劣化を意味する。そして、図9を参照すると、充電電圧が大きいほど、放電容量維持率の低下(亜鉛電池の劣化)が早く進むことがわかる。
本実施形態では、電圧Vにて亜鉛電池10の定電圧充電を行い、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えた場合、言い換えると亜鉛電池10の充電が或る程度進んだ場合に、電圧Vよりも小さい電圧Vに切り替えて亜鉛電池10の定電圧充電を行う。したがって、比較的大きな電圧Vによって亜鉛電池10の充電容量を早期に回復し、その後、比較的小さな電圧Vによって亜鉛電池10の過充電を抑制することができる。また、過充電を抑える電圧Vによって充電を続けると、亜鉛電池10の充電容量が自然放電等によって次第に低下することがある。本実施形態では、充電容量の低下を所定の条件(SOCが閾値SOCを下回るか、または経過時間が閾値Taを超える)によって判断し、再び充電電圧を電圧Vとすることによって亜鉛電池10の充電容量を回復する。したがって、本実施形態によれば、充電状態で待機させる用途において、亜鉛電池10の充電容量を早期に回復しつつ、亜鉛電池10の寿命を延ばすことができる。
前述したように、第1の充電ステップST1又は第1の充電動作において、定電圧充電の前に定電流充電を行ってもよい。この場合、亜鉛電池10に流れる最大電流を抑えることができ、亜鉛電池10の長寿命化に一層寄与できる。
前述したように、閾値SOCは60%以上100%以下であってもよい。この場合、負荷のバックアップに最低限必要な電池容量(SOC)を確保しつつ、亜鉛電池10が満充電になった後の過剰な充電(過充電)を抑制することで、停電時のシステム停止の回避と亜鉛電池10の長寿命化が可能になる。
前述したように、閾値SOCは59%以上99%以下であってもよい。この場合もまた、負荷のバックアップに最低限必要な電池容量(SOC)を確保しつつ、亜鉛電池10が満充電になった後の過剰な充電(過充電)を抑制することで、停電時のシステム停止の回避と亜鉛電池10の長寿命化が可能になる。
前述したように、電圧Vは1.825V以上2.0V以下であってもよい。この場合、停電による放電後の亜鉛電池容量を早期に回復可能であり、多雷地域といった停電が頻発する場合でも、システムの停止を回避することができる。
前述したように、電圧Vは1.80V以上1.87V以下であってもよい。この場合、亜鉛電池10が満充電になった後の過剰な充電(過充電)を抑制することで、亜鉛電池10の長寿命化が可能になる。
前述したように、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを検知するための、亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータは、充電電流の大きさを含んでもよい。充電中に流れる充電電流の大きさは亜鉛電池10のSOCと密接な相関を有するので、この場合、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを容易に知ることができる。
前述したように、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを検知するための、亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータは、電圧Vでの充電開始からの総充電容量を含んでもよい。充電開始からの総充電容量は亜鉛電池10のSOCと密接な相関を有するので、この場合、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを容易に知ることができる。
前述したように、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを検知するための、亜鉛電池10のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータは、充電電流の単位時間あたりの変化量を含んでもよい。充電電流の単位時間あたりの変化量は亜鉛電池10のSOCと密接な相関を有するので、この場合、亜鉛電池10のSOCが閾値SOCを超えたことを容易に知ることができる。
本発明による亜鉛電池の制御方法及び電源システムは、上述した実施形態の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1…電源システム、2…供給要素、4…需要要素、6A〜6D…配線、7…コンバータ、8…インバータ、10…亜鉛電池、12…BCU、14…制御部、141…プロセッサ、142…メモリ、143…通信インタフェース、N…ノード、P11…充電期間、P12…待機期間、SOC…第1の閾値、SOC…第2の閾値、Ta…第3の閾値、V…第1の電圧、V…第2の電圧。

Claims (10)

  1. 亜鉛電池を充電状態で待機させる方法であって、
    第1の電圧にて前記亜鉛電池の定電圧充電を行う第1の充電ステップと、
    前記第1の電圧よりも小さい第2の電圧にて前記亜鉛電池の定電圧充電を行う第2の充電ステップと、
    を含み、
    前記第1の充電ステップにおいて、前記亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えた場合、及び、前記亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを前記亜鉛電池のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、前記第1の充電ステップから前記第2の充電ステップへ移行し、
    前記第2の充電ステップにおいて、前記亜鉛電池のSOCが第2の閾値を下回った場合、及び、前記第2の電圧による充電の開始からの経過時間が第3の閾値を超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、前記第2の充電ステップから前記第1の充電ステップへ移行する、亜鉛電池の制御方法。
  2. 前記第1の充電ステップにおいて、定電圧充電の前に定電流充電を行う、請求項1に記載の亜鉛電池の制御方法。
  3. 前記第1の閾値は60%以上100%以下である、請求項1又は2に記載の亜鉛電池の制御方法。
  4. 前記第2の閾値は59%以上99%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  5. 前記第1の電圧は1.825V以上2.0V以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  6. 前記第2の電圧は1.80V以上1.87V以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  7. 前記一又は複数のパラメータは、充電電流の大きさを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  8. 前記一又は複数のパラメータは、前記第1の電圧での充電開始からの総充電容量を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  9. 前記一又は複数のパラメータは、充電電流の単位時間あたりの変化量を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の亜鉛電池の制御方法。
  10. 亜鉛電池と、
    前記亜鉛電池の充電及び放電を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記亜鉛電池を充電状態で待機させる際に、第1の電圧にて前記亜鉛電池の定電圧充電を行う第1の充電動作と、前記第1の電圧よりも小さい第2の電圧にて前記亜鉛電池の定電圧充電を行う第2の充電動作と、を行い、
    前記制御部は、前記第1の充電動作において、前記亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えた場合、及び、前記亜鉛電池のSOCが第1の閾値を超えたことを前記亜鉛電池のSOCと相関を有する一又は複数のパラメータが示唆した場合のうち少なくとも一方の場合に、前記第1の充電動作から前記第2の充電動作へ移行し、
    前記制御部は、前記第2の充電動作において、前記亜鉛電池のSOCが第2の閾値を下回った場合、及び、前記第2の電圧による充電の開始からの経過時間が第3の閾値を超えた場合のうち少なくとも一方の場合に、前記第2の充電動作から前記第1の充電動作へ移行する、電源システム。
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