JP2021182621A - 積層体、組成物及び積層体の製造方法 - Google Patents

積層体、組成物及び積層体の製造方法 Download PDF

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雄三 中村
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孝志 河関
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Abstract

【課題】熱膨張率が低く、かつ基板との接合強度に優れる樹脂層を備える積層体の提供。【解決手段】基板と樹脂層とを備え、前記樹脂層は50℃〜150℃の間における熱膨張率(CTE) が120ppm/K以下であり、ケイ素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下であり、ケイ素原子に対する酸素原子の比(O/Si)が1以上である、積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、組成物、積層体及び積層体の製造方法に関する。
電子機器の小型軽量化、高性能化が進行するに伴い、半導体チップ等の高集積化が求められている。しかし、回路の微細化ではその要求に十分に応えることは困難である。そこで、近年、複数枚の基板(ウェハ)、半導体チップ等を縦に積層し、多層の三次元構造とすることにより高集積化する方法が提案されている。基板(ウェハ)、チップ等(以後、「基板等」と称する場合がある)を積層する方法としては、基板同士を直接接合する方法(フュージョンボンディング)、樹脂層を介して基板同士を接合する方法等が提案されている(例えば、特許文献1〜3、非特許文献1〜2参照)。
特開平4−132258号公報 特開2010−226060号公報 特開2016−47895号公報
A.Bayrashev, B.Ziaie, Sensors and Actuators A 103 (2003) 16-22. Q. Y. Tong, U. M. Gosele, Advanced Material 11, No. 17 (1999) 1409-1425.
樹脂層を介して基板同士を接合する方法は、フュージョンボンディングよりも低温で基板同士を接合できるなどの利点を有する一方で、樹脂層と基板の熱膨張率の差に起因するひずみが接合面に生じて反りや剥離が生じるおそれがある。また、樹脂層の熱膨張率を低減する方法として無機フィラーを添加することが考えられるが、無機フィラーの添加により基板との接合強度が低下するおそれがある。したがって、低熱膨張率と高接合強度を両立し得る樹脂層を備える積層体の開発が望まれている。
本発明の一態様は、上記問題に鑑みてなされたものであり、熱膨張率が低く、かつ基板との接合強度に優れる樹脂層を備える積層体、熱膨張率が低く、かつ基板との接合強度に優れる樹脂層を形成可能な組成物、及び樹脂層と基板との接合強度に優れる積層体の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1>基板と樹脂層とを備え、前記樹脂層は50℃〜150℃の間における熱膨張率(CTE)が120ppm/K以下であり、ケイ素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下であり、ケイ素原子に対する酸素原子の比(O/Si)が1以上である、積層体。
<2>前記樹脂層は窒素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下である、<1>に記載の積層体。
<3>10−7Paの環境で測定されるアウトガス圧力が10−5Pa以上となる温度が400℃以上である、<1>又は<2>に記載の積層体。
<4>前記基板が第1の基板と第2の基板とを含み、前記樹脂層が第1の基板及び第2の基板の間に配置される、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の積層体。
<5>第1の基板と第2の基板との接合強度を表す表面エネルギーが0.5J/m以上である、<4>に記載の積層体。
<6>前記樹脂層の厚さが0.001μm以上20μm以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の積層体。
<7>前記基板は半導体基板である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の積層体。
<8>下記一般式(1)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X1)、及び一般式(2)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X2)の少なくともいずれかを含む、組成物。
Figure 2021182621


一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造である。
Figure 2021182621


一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造であり、Xはアミン化合物に由来する構造であり、nは正の数である。
<9>前記化合物(X1)は、シランカップリング剤(A)と、分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造を有する、<8>に記載の組成物。
<10>前記化合物(X2)は、シランカップリング剤(A)と分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、分子量が90〜600であり、Si−O結合を有さず、環構造を有するアミン化合物(C)と分子量が200〜600である環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、を有する、<8>に記載の組成物。
<11>一般式(1)又は一般式(2)におけるaが2である、<8>〜<10>のいずれか1項に記載の組成物。
<12>50℃〜150℃の間におけるCTEが90ppm/K以下である樹脂(D)の前駆体をさらに含む、<8>〜<11>のいずれか1項に記載の組成物。
<13>樹脂(D)がポリイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、<12>に記載の組成物。
<14>半導体装置の製造に用いるための、<8>〜<13>のいずれか1項に記載の組成物。
<15>基板上又は基板間に樹脂層を形成するための、<8>〜<14>のいずれか1項に記載の組成物。
<16>有機溶媒をさらに含む、<8>〜<15>のいずれか1項に記載の組成物。
<17>基板と、<8>〜<16>のいずれか1項に記載の組成物の硬化物を含む樹脂層と、を備える積層体。
<18><8>〜<16>のいずれか1項に記載の組成物を含む層を基板上又は基板間に形成する工程と、前記層を硬化させる工程と、を有する積層体の製造方法。
本発明の一態様によれば、膨張率が低く、かつ基板との接合強度に優れる樹脂層を備える積層体、熱膨張率が低く、かつ基板との接合強度に優れる樹脂層を形成可能な組成物、及び樹脂層と基板との接合強度に優れる積層体の製造方法が提供される。
本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において化合物の分子量は、既知の分子構造から計算した値であってもよく、公知の手法で測定される値であってもよい。例えば、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定される、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量であってもよい。
重量平均分子量をGPCにより測定する場合、具体的には、展開溶媒として硝酸ナトリウム濃度0.1mol/Lの水溶液を用い、分析装置としてShodex DET RI−101及び2種類の分析カラム(東ソー製 TSKgel G6000PWXL−CP及びTSKgel G3000PWXL−CP)を用いて流速1.0mL/minで屈折率を検出し、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイドを標準品として解析ソフト(Waters製 Empower3)にて算出される。
<積層体>
本実施形態の積層体は、基板と樹脂層とを備え、前記樹脂層は50℃〜150℃の間における熱膨張率(CTE:coefficient of thermal expansion)が120ppm/K以下であり、ケイ素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下であり、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比(O/Si)が1以上である、積層体である。
本発明者らの検討の結果、上記条件を満たす樹脂層を備える積層体は、樹脂層と基板との熱膨張率の差に起因する反りや剥離が生じにくく、かつ基板との接合強度に優れていることがわかった。
上記積層体に含まれる樹脂層は、50℃〜150℃の間におけるCTEが120ppm/K以下である。50℃〜150℃の間におけるCTEが120ppm/K以下であることで、樹脂層と基板との熱膨張率の差を小さくでき、接合面における反りや剥離の発生が抑制される。
50℃〜150℃の間におけるCTEは90ppm/K以下であることが好ましく、80ppm/K以下であることがより好ましく、50ppm/K以下であることがさらに好ましい。
樹脂層のCTEは、後述する実施例に記載した方法で測定できる。
樹脂層は、ケイ素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下である。ケイ素原子の含有量が上記範囲内であると、基板に対する接合強度が充分に確保される。ケイ素原子の含有量は、0.5atm%以上15atm%以下であることが好ましく、0.5atm%以上10atm%以下であることがより好ましい。
樹脂層は、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比(O/Si)が1以上である。ケイ素原子数に対する酸素原子数の比が1以上であると、基板との密着性が高くなる傾向にある。ケイ素原子数に対する酸素原子数の比(O/Si)は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。吸水率低減の観点からは、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比(O/Si)は20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。
樹脂層は、窒素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下であることが好ましい。窒素原子の含有量が上記範囲内であると、基板が金属を含む場合に基板との密着性が高くなる傾向にある。窒素原子の含有量は、2atm%以上15atm%以下であることが好ましく、5atm%以上10atm%以下であることがより好ましい。
樹脂層のケイ素原子含有量、窒素原子含有量、ケイ素原子数に対する酸素原子数の比は、X線電子分光法(XPS)、エネルギー分散型X線分析(EDX)等の元素分析方法により測定することができる。
積層体は、10−7Paの環境で測定されるアウトガスの圧力が10−5Pa以上となる温度が400℃以上であることが好ましい。上記温度が400℃以上であると、アウトガスによる接合強度の低下が抑制される傾向にある。アウトガスの圧力が10−5Pa以上となる温度は、420℃以上であることが好ましく、450℃以上であることがより好ましい。アウトガスの圧力が10−5Pa以上となる温度の上限値は特に制限されないが、例えば、600℃以下であってもよく、550℃以下であってもよい。
積層体の10−7Paの環境で測定されるアウトガスの圧力は、後述する実施例に記載した方法で測定できる。
樹脂層の厚さは、特に制限されない。例えば、0.001μm以上20μm以下であってもよく、0.05μm以上10μm以下であってもよく、0.1μm以上6μm以下であってもよい。
樹脂層は、最大径が0.3μm以上の無機または樹脂フィラーの含有量が樹脂層全体の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
樹脂層に含まれるフィラーの含有量が上記範囲であると、樹脂層の厚みを薄くした場合でも、積層体の接合不良を抑制することが出来る。また、樹脂層が形成された第1の基板を、第2の基板に積層する際、各基板に形成されたアラインメントマークを機械で認識し、位置合わせを行う場合があるが、フィラーの含有量が上記範囲であると樹脂膜の透明性が向上し、より正確な位置合わせが可能となる。
樹脂層のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上350℃以下であることが好ましい。Tgが上記温度範囲であると、高温プロセスを経た際に膜の弾性率が小さくなることにより、積層体の反りや内部応力を低減させることが出来、剥離等による接合強度の低下を抑制させることが出来る。Tgは100℃以上300℃以下であることがより好ましく、120℃以上250℃以下であることがさらに好ましく、120℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
樹脂層のTgは、後述する実施例に記載した方法で測定できる。
樹脂層の吸水率は、3質量%以下であることが好ましい。吸水率が上記数値範囲内であると、樹脂からのアウトガスを効果的に抑制することが出来、積層体のボイドや剥離等の不良の発生を効果的に抑制することが出来る。吸水率は2質量%以下であることがより好ましい。
樹脂層の吸水率は、後述する実施例に記載した方法で測定できる。
樹脂層の250℃における弾性率は、0.01GPa以上20GPa以下であることが好ましい。250℃における弾性率が上記数値範囲内であると、積層体を加熱した際の内部応力を小さくすることが出来、反り、剥がれ、デバイス層の誤動作等を抑制することが出来る。250℃における弾性率は0.01GPa以上10GPa以下であることがより好ましく、0.1GPa以上5GPa以下であることがさらに好ましい。
樹脂層の250℃における弾性率は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、実施例に記載した方法で測定できる。
樹脂層の室温(23℃)における硬さは、0.05GPa以上1.8GPa以下であることが好ましい。硬さが上記数値範囲内であると、積層体へワイヤーボンディングなどの外力が加わった際に膜の割れを抑制することが出来る。硬さは0.2GPa以上1.5GPa以下であることがより好ましく、0.3GPa以上1.0GPa以下であることがさらに好ましい。
樹脂層の硬さは、ISO14577に準拠する方法(ナノインデンテーション)で測定される硬度である。
具体的には、樹脂層をシリコン基板上に形成した状態で、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)を用い、押込み深さ20nmの条件にて23℃における除荷−変位曲線を測定する。参考文献(Handbook of Micro/nano Tribology (second Edition)、Bharat Bhushan編、CRCプレス社)の計算手法に従い、最大負荷から、23℃における硬さを計算により求める。硬さ(H)は、下記式により定義される。式中、Pmaxは押込み深さ20nmにおける最大負荷を表し、Aは押込み時の圧子の試料への投影面積を表す。
Figure 2021182621

樹脂層の室温(23℃)における弾性率は、0.1GPa以上20GPa以下であることが好ましい。室温における弾性率が上記数値範囲内であると、積層体へ圧縮・せん断などの外力が加わった際の反り、剥がれを抑制することが出来る。室温における弾性率は0.5GPa以上10GPa以下であることがより好ましく、1GPa以上7GPa以下であることがさらに好ましい。
樹脂層の室温における弾性率は、樹脂層をシリコン基板上に形成した状態で、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)を用い、押込み深さ20nmの条件にて23℃における除荷−変位曲線を測定する。参考文献(Handbook of Micro/nano Tribology (second Edition)、Bharat Bhushan編、CRCプレス社)の計算手法に従い、最大負荷及び最大変位から、23℃における弾性率を計算により求める。
弾性率は、下記式により定義される。式中、Eは弾性率を表し、Eは圧子のヤング率を表し、1140GPaであり、νは圧子のポアソン比を表し、0.07であり、E及びνはそれぞれ試料のヤング率及びポアソン比を表す。
Figure 2021182621

樹脂層の厚みを400nm以上とした場合の、樹脂層の塑性変形量は、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)により計測した場合、押込み深さ20nmにおいて2nm以上であることが好ましい。塑性変形量が上記数値範囲内であると、樹脂層を基板積層体に用いた場合、基板積層体をさらに別の基板に積層させる際に樹脂層が塑性変形することにより、基板積層体の割れを抑制することができる。
樹脂層の塑性変形量は、樹脂層をシリコン基板上に形成した状態で、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)を用い、押込み深さ20nmの条件にて23℃における除荷−変位曲線を測定し、除荷曲線より塑性変形量を求める。
樹脂層の厚みを400nm以上とした場合の、樹脂層の変形に要する荷重は、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)を用いて押込み深さ20nmとした場合、20μN以下であることが好ましい。変形に要する荷重が上記数値範囲内であると、樹脂層を基板積層体に用いた場合、基板積層体をさらに別の基板に積層させる際に樹脂層が変形しやすく、基板積層体の割れを効果的に抑制できる。
樹脂層の変形に要する荷重は、樹脂層をシリコン基板上に形成した状態で、ナノインデンテーター(バーコビッチ型圧子)を用い、押込み深さ20nmの条件にて23℃における除荷−変位曲線を測定し、押込み深さ20nmにおける荷重として求める。
樹脂層に含まれる樹脂の種類は、上記条件を満たすものであればその種類は特に制限されない。絶縁性の観点からは、樹脂層は、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。さらに耐熱性の観点から芳香環などの環構造を含むシリコーン樹脂を含むことが好ましく、環構造およびイミド結合を含むシリコーン樹脂を含むことがより好ましい。
シリコーン樹脂としては、例えば、後述する組成物に含まれる化合物(X1)又は化合物(X2)の硬化物が挙げられる。
樹脂層にシリコーン樹脂が含まれる場合、有機架橋密度に関し、フーリエ変換赤外分光スペクトルにおけるSi−O結合由来のピーク(ピーク位置1000〜1100cm−1間)強度に対するSi−Me結合由来のピーク(ピーク位置1260cm−1)強度の比(ピーク強度比)が0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。シリコーン樹脂の有機架橋密度が上記数値範囲内であることにより、Si、SiC、SiO、SiN、SiCNなどのSiを含有する基板との接着強度が高くなる傾向にある。
樹脂層にシリコーン樹脂が含まれる場合、シリコーン樹脂の基本単位としては、29Si NMRスペクトルにおいて、全基本単位(M単位、D単位、T単位、Q単位)の全面積に対して面積率が50%以上となる単位がD単位またはT単位であることが好ましい。また、T単位またはD単位の面積率が全基本単位の70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
シリコーン樹脂の基本単位が上記条件を満たしていると、良好な接合強度を維持しつつ、樹脂層のクラック耐性を高く維持することが出来る。特に、全基本単位の全面積に対して面積率が50%以上となる単位がD単位であることがより好ましい。
樹脂層にシリコーン樹脂が含まれる場合、シリコーン樹脂の縮合度としては、29Si NMRスペクトルにおいて、各基本単位(M単位、D単位、T単位、Q単位)の各全面積に対して面積率が70%以上となる単位が、D単位またはT単位であることが好ましい。基本単位が上記条件を満たしていると、シリコーン樹脂に含まれるダングリングボンドであるSiOH等への水吸着によるアウトガス発生を抑制することが出来る。
樹脂層を形成する方法としては、例えば、蒸着重合、CVD(化学蒸着)法、ALD(原子層堆積)法等の気相成膜法、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法等の塗布法などが挙げられる。
樹脂層は、後述する組成物を用いて形成されるものであってもよい。
積層体に含まれる基板の数は特に制限されず、1つであっても複数であってもよい。基板が2つ以上である場合、その材質は同じであっても異なっていてもよい。
本発明の効果を充分に得る観点からは、樹脂層の熱膨張率と等しいか、樹脂層の熱膨張率より小さい熱膨張率を有する基板が好ましい。
基板の材質としては、無機材料、有機材料及びこれらの複合体が挙げられる。
無機材料として具体的には、Si、InP、GaN、GaAs、InGaAs、InGaAlAs、SiGe、SiC等の半導体;ホウ素珪酸ガラス(パイレックス(登録商標))、石英ガラス(SiO)、サファイア(Al)、ZrO、Si、AlN、MgAl、等の酸化物、炭化物又は窒化物;BaTiO、LiNbO,SrTiO、LiTaO、等の圧電体又は誘電体;ダイヤモンド;Al、Ti、Fe、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ta、Nb等の金属;カーボンなどが挙げられる。
有機材料として具体的には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリベンゾオキサゾールなどが挙げられる。
基板は、多層構造であってもよい。例えば、シリコン基板等の表面に酸化ケイ素、窒化ケイ素、SiCN(炭窒化ケイ素)等の無機物層が形成された構造、シリコン基板等の表面にポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、エポキシ樹脂、シクロテン(商品名、Dow Chem)等の有機物層が形成された構造、シリコン基板上に無機物及び有機物の複合体が形成された構造が挙げられる。さらにこれらの多層構造にはデバイス層、配線層等が埋め込まれていてもよい。
各材料は主な用途として、次のものに使用される。
Siは、半導体メモリー、LSI、CMOSイメージセンサー、MEMS、光学デバイス、LEDなどに使用される。
SiOは、MEMS封止、マイクロ流路、2.5D実装用インターポーザー、ディスプレイなどに使用される。
BaTiO、LiNbO,SrTiO、LiTaOは、弾性表面波デバイスなどに使用される。
PDMSは、マイクロ流路などに使用される。
InGaAlAs、InGaAs、InPは、光学デバイスなどに使用される。
InGaAlAs、GaAs、GaNは、LEDなどに使用される。
基板の表面(少なくとも、樹脂層と接する面)は、水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。これにより、樹脂層との接合強度をより強固なものにすることができる。
水酸基を有する表面は、基板の表面に、プラズマ処理、薬品処理、オゾン処理等の表面処理を行うことで得ることができる。
エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基又はメルカプト基を有する表面は、基板の表面に、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基又はメルカプト基を有するシランカップリング等を用いた表面処理を行うことで得ることができる。
水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種は、基板に含まれる元素と結合した状態であることが好ましく、Si、Al、Ti、Zr、Hf、Fe、Ni、Cu、Ag、Au、Ga、Ge、Sn、Pd、As、Pt、Mg、In、Ta及びNbからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と結合した状態であることがより好ましく、水酸基を含むシラノール基(Si−OH基)の状態であることがさらに好ましい。
基板の厚さは1μm〜1mmであることが好ましく、10μm〜900μmであることがより好ましく、20μm〜300μmであることがより好ましい。基板が複数ある場合、上記厚さはそれぞれの基板の厚さであり、同じであっても異なっていてもよい。
基板の形状は、特に制限されない。例えば、基板がシリコン基板である場合、層間絶縁層(Low−k膜)が形成されたシリコン基板であってもよい。基板には、微細な溝(凹部)、微細な貫通孔などが形成されていてもよい。
本実施形態の積層体は、樹脂層と接していない基板をさらに含んでもよい。樹脂層と接していない基板の好ましい材質その他の態様は、上述した基板と同様である。
積層体は、電極を備えていてもよい。電極の構成としては、樹脂層を貫通して樹脂層の両側に設けられる基板同士を電気的に接続するものが挙げられる。電極は、基板の表面に設けられるもの(基板表面電極)であっても、基板を貫通するもの(基板貫通電極)であってもよい。
前記電極としては、電気伝導性を有する部材であれば特に限定されず、例えば、導電性シリコン、導電性高分子、通常用いられる導体金属などを用いてもよい。導体金属としては、Cu、Al、Ni、Fe、Sn、Cr、Pt、Zn、Mg、Ta、Ti、Mn、Co、W、Ru、In、Auなどの金属元素が挙げられ、導体金属以外にもN、Oなどの非金属元素が含まれていてもよい。
導体金属を含む導電体は、Cu、Sn、In又はAuを主成分として含むことが好ましく、Cu又はSnを主成分として含むことがより好ましい。
ここで、主成分とは、含有比率(原子%)が最も高い成分を指す。
前記含有比率は50原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましく、90原子%以上がさらに好ましい。
(積層体の積層構造の例)
積層体は、半導体装置の部品をはじめとした種々の用途に用いることができる。
以下に、各用途における基板積層体の積層構造の例を示す。
MEMSパッケージング用としては、Si/樹脂層/Si、SiO/樹脂層/Si、SiO/樹脂層/SiO、Cu/樹脂層/Cuなどが挙げられる。
マイクロ流路用としては、PDMS/樹脂層/PDMS、PDMS/樹脂層/SiO、SiO/樹脂層/SiOなどが挙げられる。
CMOSイメージセンサー用としては、Si/樹脂層/Si、SiO/樹脂層/Siなどが挙げられる。
シリコン貫通ビア(TSV)用としては、SiO(Cu電極付き)/樹脂層/SiO(Cu電極付き)、Si(Cu電極付き)/樹脂層/Si(Cu電極付き)などが挙げられる。
メモリー及びLSI用としては、Si/樹脂層/Siなどが挙げられる。
光学デバイス用としては、(InGaAlAs、InGaAs、InP、GaAs)/樹脂層/Siなどが挙げられる。
LED用としては、(InGaAlAs、GaAs、GaN)/樹脂層/Si、(InGaAlAs、GaAs、GaN)/樹脂層/SiO、(InGaAlAs、GaAs、GaN)/樹脂層/(Au、Ag、Al)、(InGaAlAs、GaAs、GaN)/樹脂層/サファイアなどが挙げられる。
弾性表面波デバイス用としては、(BaTiO、LiNbO、SrTiO、LiTaO)/樹脂層/(MgAl、SiO、Si、Al)などが挙げられる。
積層体の接合強度は、意図せぬ剥離の抑制及び信頼性の観点から高いほど好ましい。具体的には、接合強度を表面エネルギーで表した場合、0.5J/m以上であることが好ましく、1.0J/m以上であることがより好ましく、2.5J/m以上であることがさらに好ましい。
積層体が第1の基板と第2の基板とを含む場合、第1の基板と第2の基板との接合強度を表す表面エネルギーが上記範囲内であることが好ましい。積層体の表面エネルギーは、後述するブレード挿入試験により求めることが出来る。
積層体は、ボイドの合計の面積の割合(ボイド面積率)が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。ボイド面積率は、赤外光透過観察において、ボイドの面積の合計を、透過光を観測できた面積の合計で除し、かつ100を乗じて算出した値である。赤外光透過観察が困難な場合は、超音波顕微鏡の反射波、超音波顕微鏡の透過波、又は赤外光反射光を用いて、好ましくは超音波顕微鏡の反射波を用いて同様の手法で求めることができる。
<組成物>
本実施形態の組成物は、下記一般式(1)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X1)、及び一般式(2)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X2)の少なくともいずれかを含む。
Figure 2021182621

一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造である。
Figure 2021182621

一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造であり、Xはアミン化合物に由来する構造であり、nは正の数である。
上記組成物によれば、化合物(X1)又は化合物(X2)の前駆体であるシランカップリング剤、カルボン酸二無水物、アミン化合物などが未反応の状態で含まれる組成物に比べ、残留応力の少ない樹脂層を形成できる。その理由は必ずしも明らかではないが、例えば、基板上に組成物を付与する前に化合物(X1)又は化合物(X2)の前駆体が反応した状態であることで、これらの前駆体を基板上で反応させて樹脂層を形成する場合に比べ、反応に伴う樹脂層の硬化収縮が抑制されて、樹脂層の残留応力が低減することが考えられる。
一般式(1)において、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造であり、好ましくは環構造を含む。また、Xに結合しているアミド基とカルボキシ基とは基板上で反応してイミド結合を形成する。このため、得られる樹脂層は優れた耐熱性を示す。
一般式(1)において、aは2であることが好ましい。
一般式(1)において、R及びRで表される炭素数6以下の有機基としては炭素数6以下、好ましくは炭素数3以下、より好ましくは炭素数2以下のアルキル基が挙げられる。
一般式(2)において、X及びXはそれぞれカルボン酸二無水物及びアミン化合物に由来する構造であり、好ましくは環構造を含む。また、Xに結合しているアミド基とカルボキシ基とは基板上で反応してイミド結合を形成する。このため、得られる樹脂層は優れた耐熱性を示す。
一般式(2)において、aは2であることが好ましい。
一般式(2)において、R及びRで表される炭素数6以下の有機基としては炭素数6以下、好ましくは炭素数3以下、より好ましくは炭素数2以下のアルキル基が挙げられる。
一般式(2)におけるnは正の数であれば特に制限されないが、例えば、1以上6以下の範囲内であってもよい。
一般式(2)で表される化合物(X2)は、カルボン酸二無水物に由来する構造とアミン化合物に由来する構造とが交互に配列した状態(ポリアミド酸)であってもよい。
上記組成物に含まれる化合物(X1)は、シランカップリング剤(A)と分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造を有する化合物であってもよい。
上記組成物に含まれる化合物(X2)は、シランカップリング剤(A)と分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、分子量が90〜600であり、Si−O結合を有さず、環構造を有するアミン化合物(C)と分子量が200〜600の環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、を有する化合物であってもよい。
本開示において、分子量200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)及び分子量90〜600の環構造であり、Si−O結合を有さず、環構造を有するアミン化合物(C)は、それぞれ単にカルボン酸二無水物(B)及びアミン化合物(C)と称する場合がある。
(シランカップリング剤(A))
シランカップリング剤(A)は、1つ以上のSi−O結合を分子中に有し、カルボン酸二無水物と反応して化合物(X1)又は化合物(X2)を生成する化合物である。シランカップリング剤(A)が有するSi−O結合は、組成物を用いて形成される樹脂層と基板との接合強度の向上に寄与する。
シランカップリング剤(A)は、カルボン酸二無水物(B)の無水物基と反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されない。官能基として具体的には、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。樹脂層の熱膨張率及び接合強度の観点からは、シランカップリング剤(A)はアミノ基を有することが好ましく、樹脂層中にイミド構造を形成して耐熱性を向上させる観点からは1級アミノ基(−NH)を有する化合物がより好ましい。
シランカップリング剤(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤(A)の分子量は、特に制限されない。例えば、130以上10000以下であってもよく、130以上5000以下であってもよく、130以上2000以下であってもよい。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)としては、例えば、下記式(A−3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2021182621

式(A−3)中、Rは置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、置換(骨格にカルボニル基、エーテル基等を含んでもよい)されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、エーテル基又はカルボニル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキレン基又は単結合を表す。Arは2価又は3価の芳香環を表す。Xは水素又は置換されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表す。Xは水素、シクロアルキル基、ヘテロ環基、アリール基又は置換(骨格にカルボニル基、エーテル基等を含んでもよい)されていてもよい炭素数1〜5のアルキル基、を表す。複数のR、R、R、R、R、Xは同じであっても異なっていてもよい。
、R、R、R、R、X、Xにおけるアルキル基及びアルキレン基の置換基としては、それぞれ独立に、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ハロゲン等が挙げられる。
Arにおける2価又は3価の芳香環としては、例えば、2価又は3価のベンゼン環が挙げられる。Xにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルベンジル基、ビニルベンジル基等が挙げられる。
式(A−3)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−[2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、トリメトキシ[2−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル]シラン、ジアミノメチルメチルジエトキシシラン、メチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、アセトアミドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
式(A−3)以外のアミノ基を含むシランカップリング剤としては、例えば、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ピペラジニルプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、3,5−ジアミノ−N−(4−(メトキシジメチルシリル)フェニル)ベンズアミド、3,5−ジアミノ−N−(4−(トリエトキシシリル)フェニル)ベンズアミド、5−(エトキシジメチルシリル)ベンゼン−1,3−ジアミンなどが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(カルボン酸二無水物(B))
カルボン酸二無水物(B)は、分子中に1つ以上の環構造と2つの無水物基を有し、分子量が200以上600以下である化合物である。
カルボン酸二無水物(B)の分子量は、200以上400以下であってもよい。
カルボン酸二無水物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボン酸二無水物(B)が分子内に有する環構造としては、脂環構造、芳香環(複素環を含む)構造などが挙げられる。カルボン酸二無水物(B)は、分子内に1つの環構造を有していても、複数の環構造を有していてもよい。
脂環構造としては、例えば、炭素数3以上8以下の脂環構造、好ましくは炭素数4以上6以下の脂環構造が挙げられ、環構造内は飽和であっても不飽和であってもよい。より具体的には、脂環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの飽和脂環構造;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環などの不飽和脂環構造が挙げられる。
芳香環構造としては、芳香族性を示す環構造であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ペリレン環などのベンゼン系芳香環、ピリジン環、チオフェン環などの芳香族複素環、インデン環、アズレン環などの非ベンゼン系芳香環などが挙げられる。
カルボン酸二無水物(B)が分子内に有する環構造としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、樹脂層の耐熱性をより高める点から、ベンゼン環及びナフタレン環の少なくとも一方がより好ましい。さらに、複数の基板間に組成物を用いて樹脂層を形成する場合に樹脂層中のボイドの発生を抑制する観点から、ベンゼン環を2つ以上含むことが好ましい。
カルボン酸二無水物(B)が分子内に複数の環構造を有する場合、複数の環構造は、同じであっても異なっていてもよく、縮合環を形成してもよい。あるいは、複数の環構造が単結合で結合していても、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
カルボン酸二無水物(B)は、分子内にフッ素原子を有していてもよい。例えば、分子内に1つ以上6つ以下のフッ素原子を有していてもよく、分子内に3つ以上6つ以下のフッ素原子を有していてもよい。例えば、カルボン酸二無水物(B)は、分子内にフルオロアルキル基を有していてもよく、具体的には、トリフルオロアルキル基又はヘキサフルオロイソプロピル基を有していてもよい。
カルボン酸二無水物(B)の例としては、分子内に環構造と、無水物基を形成可能な4つのカルボキシ基を有する化合物の二無水物が挙げられる。
例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸等の脂環テトラカルボン酸の無水物;
ピロメリット酸等のベンゼンテトラカルボン酸の二無水物;
1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸等のナフタレンテトラカルボン酸の二無水物;
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸等のビフェニルテトラカルボン酸の二無水物;
ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸等のベンゾフェノンテトラカルボン酸の二無水物
4,4’−オキシジフタル酸(ODPA)、3,4’−オキシジフタル酸、1,3−ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサン、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジフタル酸、4,4’−(1,4−フェニレンビス(オキシ))ジフタル酸、4,4’−([1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(オキシ))ジフタル酸、4,4’−((オキシビス(4,1−フェニレン))ビス(オキシ))ジフタル酸等のジフタル酸の二無水物;
ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸等のペリレンカルボン酸の二無水物;
アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等のアントラセンカルボン酸の二無水物;
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、9,9−ビス(トリフルオロメチル)−9H−キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、1,4−ジトリフルオロメチルピロメリット酸等のフッ化芳香環カルボン酸の二無水物;
ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレンの二無水物;
4,4’−(4,4’−イソプロピルイデンジフェノキシ)ジフタル酸(IPBDA)の二無水物;
ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレン(TAHQ)の二無水物などが挙げられる。
組成物におけるカルボン酸二無水物(B)の含有量は、例えば、カルボン酸二無水物(B)の無水物基と反応し得るシランカップリング剤(A)の官能基当量数Aと、カルボン酸二無水物(B)の無水物基当量数Bとの比(A/B)が、0.9以上1.1以下となる量であることが好ましく、0.95以上1.05以下となる量であることがより好ましく、0.98以上1.02以下となる量であることがさらに好ましい。
組成物が後述する化合物(C)等の、カルボン酸二無水物(B)の無水物基と反応しうる化合物をさらに含む場合、カルボン酸二無水物(B)の無水物基と反応し得る化合物全体の官能基当量数A’と、カルボン酸二無水物(B)の無水物基当量数B’との比(A’/B’)が、0.9以上1.1以下となる量であることが好ましく、0.95以上1.05以下となる量であることがより好ましく、0.98以上1.02以下となる量であることがさらに好ましい。
(アミン化合物(C))
アミン化合物(C)は、分子中に1つ以上の環構造と1つ以上のアミノ基とを有し、分子量が90〜600であり、Si−O結合を有さない化合物である。
アミン化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン化合物(C)が分子中に有するアミノ基の数は1つでも複数でもよいが、樹脂層の熱膨張率低減の観点からは複数であることが好ましく、2つ(ジアミン)又は3つ(トリアミン)であることがより好ましい。樹脂層中にイミド構造を形成して耐熱性を向上させる観点からは、1級アミノ基(−NH)を有することがより好ましい。
樹脂層の熱膨張率低減の観点からは、アミン化合物(C)は、環構造に直接結合した1つ以上のアミノ基を有することが好ましい。環構造に直接結合したアミノ基に由来する構造が化合物(X2)の分子構造に含まれていると、分子構造の剛直性が増して熱膨張率がより低下すると考えられる。
本開示において「環構造に直接結合したアミノ基」とは、環構造に単結合で(すなわち、炭素原子等を介さずに)結合しているアミノ基を意味する。
アミン化合物(C)は、分子内に1つの環構造を有していても、複数の環構造を有していてもよい。アミン化合物(C)が分子内に複数の環構造を有する場合、複数の環構造は、同じであっても異なっていてもよく、縮合環を形成してもよい。あるいは、複数の環構造が単結合で結合していても、エーテル基、カルボニル基、スルホニル基、メチレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
アミン化合物(C)に含まれる環構造としては、脂環構造、芳香環(複素環を含む)構造、これらの縮合環構造などが挙げられる。
脂環構造としては、炭素数3以上8以下、好ましくは炭素数4以上6以下の脂環構造が挙げられる。環構造内は飽和であっても不飽和であってもよい。より具体的には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの飽和脂環構造;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環などの不飽和脂環構造が挙げられる。
芳香環構造としては、炭素数6以上20以下、好ましくは炭素数6以上10以下の芳香環構造が挙げられる。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ペリレン環などのベンゼン系芳香環構造、ピリジン環、チオフェン環、インデン環、アズレン環などの非ベンゼン系芳香環構造などが挙げられる。
複素環構造としては、3員環から10員環、好ましくは5員環又は6員環の複素環構造が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては硫黄原子、窒素原子及び酸素原子が挙げられ、これらのうち1種のみでも2種以上であってもよい。
複素環構造として具体的には、オキサゾール環、チオフェン環、ピロール環、ピロリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、イソシアヌル環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、インドール環、インドリン環、キノリン環、アクリジン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、プリン環、キノキサリン環などが挙げられる。
アミン化合物(C)が分子内に有する環構造としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環及びベンゾオキサゾール環がより好ましい。
アミン化合物(C)が分子内に有する環構造は、アミノ基以外の置換基を有していてもよい。例えば、炭素数1以上6以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換したアルキル基等を有していてもよい。
アミン化合物(C)の具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
脂環式アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサンなどが挙げられる。
芳香環アミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルエーテル、キシレンジアミン(好ましくはパラキシレンジアミン)、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、メチレンジアニリン、ジメチルジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル(TFDB)、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノベンズアニリド、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ジカルボキシジアミノジフェニルメタン、ジアミノレゾルシン、ジヒドロキシベンジジン、ジアミノベンジジン、1,3,5−トリアミノフェノキシベンゼン、2,2’−ジメチルベンジジン、トリス(4−アミノフェニル)アミンなどが挙げられる。
例えば、窒素を含有する複素環を有する複素環アミンとしては、メラミン、アンメリン、メラム、メレム、トリス(4−アミノフェニル)アミンなどが挙げられる。
さらに、複素環と芳香環の両方を有するアミン化合物としては、N2,N4,N6−トリス(4−アミノフェニル)―1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、2−(4−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール−5−アミン(AAPD)などが挙げられる。
(化合物(X1)を得る方法)
シランカップリング剤(A)とカルボン酸二無水物(B)を反応させて化合物(X1)を得る方法としては、例えば、カルボン酸二無水物(B)に溶媒に加えて攪拌しつつ、シランカップリング剤(A)を徐々に滴下することで、化合物(X1)を得る方法が挙げられる。
(化合物(X2)を得る方法)
シランカップリング剤(A)、カルボン酸二無水物(B)及びアミン化合物(C)を反応させて化合物(X2)を得る方法としては、例えば、アミン化合物(C)に溶媒を加えて攪拌しつつ、カルボン酸二無水物(B)を加え、得られる反応物(重合体)の粘度が一定になるまで攪拌を行い、続いて、シランカップリング剤(A)を徐々に滴下することで、化合物(X2)を得る方法が挙げられる。
(樹脂(D)の前駆体)
本実施形態の組成物は、化合物(X1)及び化合物(X2)以外の化合物をさらに含んでもよい。例えば、50℃〜150℃の間におけるCTEが90ppm/K以下である樹脂(D)の前駆体をさらに含んでもよい。組成物が樹脂(D)の前駆体を含むことで、得られる樹脂層の熱膨張率がより低減する傾向にある。
50℃〜150℃の間におけるCTEが90ppm/K以下である樹脂(D)として具体的には、ポリイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
樹脂(D)のCTEは、樹脂層のCTEと同様にして測定できる。
組成物が樹脂(D)を含む場合、組成物に含まれる樹脂(D)の割合は、得られる樹脂層の熱膨張率と接合強度のバランスの観点からは組成物の不揮発分全体の99質量%〜30質量%であることが好ましい。本開示において「不揮発分」とは、組成物が硬化物になる際に除去される成分(溶媒等)以外の成分をいう。
(有機溶媒)
組成物は、有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、化合物(X)を溶解しうるものであれば特に制限されない。例えば、非プロトン性溶媒、フェノ−ル系溶媒、エーテル系溶媒及びグリコ−ル系溶媒が挙げられる。
有機溶媒は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
非プロトン性溶媒として具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含りん系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ピリジン等の3級アミン系溶媒;酢酸(2−メトキシ−1−メチルエチル)等のエステル系溶媒等が挙げられる。
フェノ−ル系溶媒として具体的には、フェノ−ル、O−クレゾ−ル、m−クレゾ−ル、p−クレゾ−ル、2,3−キシレノ−ル、2,4−キシレノ−ル、2,5−キシレノ−ル、2,6−キシレノ−ル、3,4−キシレノ−ル、3,5−キシレノ−ル等が挙げられる。
エ−テル系溶媒及びグリコ−ル系溶媒として具体的には、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エ−テル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エ−テル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
有機溶媒は、常圧における沸点が60℃〜300℃であることが好ましく、140℃〜280℃であることがより好ましく、170℃〜270℃であることがさらに好ましい。溶媒の沸点が300℃以下であると、樹脂層の形成工程において有機溶媒を揮発させて除去しやすい。溶媒の沸点を60℃以上であると、表面状態の均一な樹脂層を得ることができる。
組成物が有機溶媒を含む場合、その含有量は特に限定されず、例えば、組成物全体に対して1.0質量%以上99.99896質量%以下であってもよく、40質量%以上99.99896質量%以下であってもよい。
(その他の成分)
組成物は、必要に応じて上述した成分以外の成分を含んでもよい。
例えば、組成物に対し、プラズマエッチング耐性の選択性が求められる場合(例えばギャップフィル材料や埋め込み絶縁膜として用いる場合)、下記一般式(I)で表される金属アルコキシドを含んでもよい。
R1M(OR2)m−n・・・(I)(式中、R1は非加水分解性基、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、MはTi、Al、Zr、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、La、Nd及びInの金属原子群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3又は4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0又は1であり、R1が複数ある場合、各R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、OR2が複数ある場合、各OR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
組成物から製造される膜に絶縁性が求められる場合(例えばシリコン貫通ビア用絶縁膜用途、埋め込み絶縁膜用途)において、絶縁性又は機械強度改善の為、シラン化合物(ただし、シランカップリング剤(A)に該当するものを除く)を含んでもよい。
シラン化合物として具体的には、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビストリエトキシシリルエタン、ビストリエトキシシリルメタン、ビス(メチルジエトキシシリル)エタン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエトキシ−1,3,5−トリシラシクロヘキサン、1,3,5,7−テトラメチル―1,3,5,7−テトラヒドロキシルシクロシロキサン、1,1,4,4−テトラメチル−1,4−ジエトキシジシルエチレン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリエトキシ−1,3,5−トリシラシクロヘキサン等が挙げられる。
組成物は、例えば銅の腐食を抑制するため、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を含有していてもよい。
組成物のpHは特に限定されないが、2.0以上12.0以下であることが好ましい。
組成物は、ナトリウム及びカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10質量ppb以下であることが好ましい。ナトリウム又はカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10質量ppb以下であれば、トランジスタの動作不良など半導体装置の電気特性に不都合が発生することを抑制できる。
組成物は、最大径が0.3μm以上の無機または樹脂フィラーの含有量が不揮発分全体の全体の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。
組成物に含まれるフィラーの含有量が上記範囲であると、組成物を用いて形成される樹脂層の厚みを薄くした場合でも、積層体の接合不良を抑制することが出来る。また、樹脂層が形成された第1の基板を、第2の基板に積層する際、各基板に形成されたアラインメントマークを機械で認識し、位置合わせを行う場合があるが、フィラーの含有量が上記範囲であると樹脂膜の透明性が向上し、より正確な位置合わせが可能となる。
(組成物の用途)
本実施形態の組成物の用途は特に制限されず、半導体装置の製造をはじめとした種々の用途に使用できる。例えば、基板上又は基板間に層を形成するために用いるものであってもよく、上述した積層体の製造に用いるものであってもよい。
<積層体の製造方法>
本実施形態の積層体の製造方法は、上述した組成物を含む層を基板上又は基板間に形成する第1工程と、前記層を硬化させる第2工程と、を有する積層体の製造方法である。
上記方法で使用する基板及び組成物の詳細及び好ましい態様は、上述した組成物及び積層体に関して記載した詳細及び好ましい態様と同様である。
(第1工程)
第1工程を実施する方法は特に制限されない。基板上又は基板間に厚みの均等な層を形成する観点からは、組成物は溶液の状態であることが好ましい。溶液は、例えば、上述した組成物に含まれてもよい溶媒を用いて調製することができる。
組成物を含む層を形成する方法は特に制限されず、通常用いられる方法により行ってもよい。例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法などが挙げられる。これらの中で、ミクロンサイズの厚みを有する層を形成する場合はバーコート法を用いることが好ましく、ナノサイズ(数nm〜数百nm)の厚みを有する層を形成する場合はスピンコート法を用いることが好ましい。
スピンコート法により層を形成する方法は特に限定されず、例えば、基板をスピンコーターで回転させながら、その表面に溶液を滴下し、次いで基板の回転数を上げて乾燥させる方法を用いることができる。基板の回転数、溶液の滴下量及び滴下時間、乾燥時の基板の回転数などの諸条件は特に制限されず、形成する層の厚さなどを考慮しながら適宜調整すればよい。
(第2工程)
第2工程では、組成物を含む層を硬化させる。具体的には、層に含まれる化合物(X1)又は化合物(X2)を反応させて、硬化物を含む層(樹脂層)を形成する。
化合物(X1)又は化合物(X2)を反応させる方法としては、化合物(X1)又は化合物(X2)が硬化反応を生じる温度(例えば、70℃〜450℃)で加熱する方法が挙げられる。
上記温度は、100℃〜450℃が好ましく、100℃〜400℃がより好ましく、150℃〜350℃がさらに好ましい。
加熱するときの圧力は特に制限されない。例えば、絶対圧(17Pa)超、大気圧以下で実施してもよい。前記圧力は、1000Pa以上大気圧以下が好ましく、5000Pa以上大気圧以下がより好ましく、10000Pa以上大気圧以下がさらに好ましい。
加熱の方法は特に制限されず、炉又はホットプレートを用いた通常の方法により行うことができる。炉としては、例えば、アペックス社製のSPX−1120、光洋サーモシステム(株)製のVF−1000LP等を用いることができる。
また、加熱工程における加熱は、大気雰囲気下で行ってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行ってもよい。
加熱の時間は特に制限されず、例えば3時間以下であってもよく、1時間以下であってもよい。加熱の時間の下限は特に制限されず、例えば30秒以上であってもよく、3分以上であってもよく、5分以上であってもよい。
加熱を70℃〜250℃で加熱する場合、加熱時間は300秒以下であってもよく、200秒以下であってもよく、120秒以下であってもよく、80秒以下であってもよい。この場合の加熱時間は、10秒であってもよく、20秒以上であってもよく、30秒以上であってもよい。
加熱の温度は一定であっても、変化させてもよい。例えば、低温加熱工程(70℃〜250℃)で加熱する工程と、より高温(100℃〜450℃)で加熱する工程と、を備えていてもよい。
加熱工程の時間を短縮させる目的で、基板上に形成された組成物を含む層に対して紫外線照射を行ってもよい。紫外線としては、波長170nm〜230nmの紫外光、波長222nmのエキシマ光、波長172nmのエキシマ光などが好ましい。また、不活性ガス雰囲気下で紫外線照射を行うことが好ましい。
(加圧工程)
積層体の製造方法において、第2工程(加熱)と同時、又は第2工程(加熱)の後に、積層体をプレスすることが好ましい。積層体をプレスすることで、基板と樹脂層とが接する面積が増加して、接合強度がより向上する傾向にある。
積層体を加熱しながらプレスする場合のプレス圧は、0.1MPa〜50MPaが好ましく、0.1MPa〜10MPaがより好ましく、0.1MPa〜5MPaがさらに好ましい。プレス装置としては、例えば、(株)東洋精機製作所製のTEST MINI PRESS等を用いればよい。
積層体を加熱しながらプレスする場合の加熱温度は、100℃〜450℃が好ましく、100℃〜400℃がより好ましく、150℃〜350℃がさらに好ましい。これにより、基板に半導体回路が形成されている場合に、半導体回路へのダメージが抑制される傾向にある。
積層体を加熱した後にプレスする場合のプレス圧は、0.1MPa〜50MPaが好ましく、0.1MPa〜10MPaがより好ましい。プレス装置としては、例えば、(株)東洋精機製作所製のTEST MINI PRESS等を用いればよい。また、加圧時間は、特に制限されないが、例えば0.5秒〜1時間とすることができる。
積層体を加熱した後にプレスする際の温度は、10℃以上100℃未満が好ましく、10℃〜70℃がより好ましく、15℃〜50℃であることがさらに好ましく、20℃〜30℃であることが特に好ましい。前記温度は、基板の組成物が付与された面の温度を指す。
(後加熱工程)
積層体の製造方法は、第2工程の後、積層体をさらに加熱する後加熱工程を有していてもよい。後加熱工程を有することにより、接合強度がより優れる傾向にある。
後加熱工程における加熱温度は、100℃〜450℃が好ましく、150℃〜420℃がより好ましく、150℃〜400℃がさらに好ましい。
後加熱工程が行われる際の圧力は、絶対圧17Pa超、大気圧以下であってもよく、1000Pa以上大気圧以下が好ましく、5000Pa以上大気圧以下がより好ましく、10000Pa以上大気圧以下がさらに好ましい。
後加熱工程では、積層体のプレスは行わないことが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル(DMDB) 5.30gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) 77.00gに溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてピロメリット酸二無水物(PMDA) 6.81gを添加し、120分間撹拌した。その後さらに3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES) 2.39gを滴下し、混合して、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1462)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物にDMAcを加えて表1記載の膜厚となる様に濃度調整を行った溶液をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<実施例2>
DMDBをTFDB 8.00gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1678)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物にDMAcを加えて表1記載の膜厚となる様に濃度調整を行った溶液をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<実施例3>
表1記載の膜厚となる様に溶液の濃度を変更した以外は実施例1と同様にして、Si基板上にシロキサンイミド膜を形成した。
<実施例4>
表1記載の膜厚となる様に溶液の濃度を変更した以外は実施例2と同様にして、Si基板上にシロキサンイミド膜を形成した。
<実施例5>
3,3’,4,4’−ビフタル酸二無水物(BPDA) 6.00gをDMAc 96.00gに溶解し、続いて3APDES 15.60gを滴下して反応させることにより、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量677)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で200℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<実施例6>
DMDB 12.29gをDMAc 96.00gに溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてPMDA 11.36gを添加し、フタル酸0.85gを加えることにより、ポリアミド酸(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1369)を含む組成物を調製した。
さらに、前記ポリアミド酸含有組成物 9.41gに21.52gを加えて、続いて実施例3の組成物 23.63gを混合させることにより、ポリアミド酸とアミド酸架橋シラン化合物を含む混合組成物を調整した。尚、前記ポリアミド酸とアミド架橋シラン化合物の質量比(ポリアミド酸:アミド架橋シラン化合物)は80:20である。
Figure 2021182621

上記混合組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、ポリイミド及びイミド架橋シロキサンを含む層を形成した。ポリイミドの構造は下記式で表される。
Figure 2021182621

<実施例7>
DMDB 5.30gをDMAc 90.00gに溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてODPA 9.69gを添加し、120分間撹拌した。その後さらに3APDES 2.39gを滴下し、混合して、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1738)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<実施例8>
AAPD 5.63gをDMAc 77.00gに溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてPMDA 6.81gを添加し、120分間撹拌した。その後さらに3APDES 2.39gを滴下して、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1488)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<参考例1>
TAHQ 14.31gをDMAc 70.00gに溶解し、続いて3APDES 11.96gを徐々に滴下して反応させることにより、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量841)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で200℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<参考例2>
IPBDA 11.27gをDMAc 60.00gに溶解し、続いて3APDES 11.96gを滴下して反応させることにより、アミド酸架橋シラン化合物(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量903)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、イミド架橋シロキサン(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<比較例1>
TFDB 10.00gをDMAc 86.67gに溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてPMDA 6.82gを添加し、混合して、ポリアミド酸(下記構造)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、ポリイミド(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<比較例2>
THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY C誌、2011年、115号、頁12981−12989のA2**法に従い、ビストリエトキシシリルエタン(BTESE)の加水分解物、及びシロキサン重合体を含むエタノール(EtOH)、水及び硝酸(HNO3)の混合溶液を得た後、BTESE(4.2質量%)、EtOH(6.8質量%)、1PrOH(88.9質量%)、HNO(0.075質量%)となるように水、エタノール及び1−プロパノールを加えて、溶液を調製した。この組成物をシリコン基板にスピン塗布し、125℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で400℃で10分加熱することで、エチレン架橋シリケートを含む層を形成した。
<比較例3>
THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY C誌、2011年、115号、頁12981−12989のA2**法に従い、テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解物、及びシロキサン重合体を含むエタノール(EtOH)、水及び硝酸の混合溶液を得た後、TEOS(8.4質量%)、EtOH(12.9質量%)、1−プロパノール(1PrOH)(75質量%)、硝酸(HNO)(0.075質量%)となるように水、エタノール及び1−プロパノールを加えて、溶液を調製した。この組成物をシリコン基板にスピン塗布し、125℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で400℃で10分加熱することで、シリカを含む層を形成した。
<比較例4>
DMDB 12.29gをDMAc 96.00g溶解した溶液を−5℃に冷却し、続いてPMDA 11.36gを添加し、フタル酸0.85gを加えることにより、ポリアミド酸(下記構造、分子構造から計算により求めた分子量1369)を含む組成物を調製した。
Figure 2021182621

上記組成物をシリコン基板にスピン塗布し、150℃で1分乾燥後、窒素雰囲気下で350℃で1時間加熱することで、ポリイミド(下記構造)を含む層を形成した。
Figure 2021182621

<比較例5>
ジビニルシロキサン−ビス−ベンゾシクロブテン(DVS−BCB)を重合して得られたポリマーからなる膜(硬化度 100%)が形成されたシリコン基板を準備した。
<評価>
実施例及び比較例でシリコン基板上に作製した層の物性を下記に示す方法で評価した。結果を表1に示す。
尚、表1には原料モノマーより推定されるシリコーン樹脂の基本単位を示している。
(架橋構造の分析)
樹脂層中の架橋構造を、FT−IR(フーリエ変換赤外分光法)で分析した。用いた分析装置は以下のとおりである。結果を表1に示す。
〜FT−IR分析装置〜
赤外吸収分析装置(DIGILAB Excalibur(DIGILAB社製))
〜測定条件〜
IR光源:空冷セラミック
ビームスプリッター:ワイドレンジKBr
検出器:ペルチェ冷却DTGS
測定波数範囲:7500cm−1〜400cm−1
分解能:4cm−1
積算回数:256
バックグラウンド:Siベアウェハ使用
測定雰囲気:N(10L/min)
IR(赤外線)の入射角:72°(=Siのブリュースター角)
〜判断条件〜
イミド結合の存在は1770cm−1、1720cm−1の振動ピークの存在で判断した。
シロキサン結合の存在は1000cm−1〜1080cm−1の間の振動ピークの存在で判断した。
アミド結合の存在は、1650cm−1、1520cm−1の振動ピークの存在で判断した。
テトラヒドロナフタレン構造の存在は、1500cm−1の振動ピークの存在で判断した。
(Si−Me/Si−Oピーク強度比の測定)
実施例および比較例で層の形成に用いた組成物を樹脂フィルム上にアプリケーター(ギャップ 250μm)を用いて塗布し、窒素雰囲気中、350℃、1時間でベークすることで硬化させた。続いて樹脂フィルムから剥離し、膜厚が10μm〜70μmの自立膜を得た。フーリエ変換赤外分光(FTIR)光度計(Thermo scientific社製 Nicolet/iN10MX)を用いて、顕微透過法により自立膜の化学結合状態の測定を行った。Si−Me結合に由来する1230cm−1〜1270cm−1のピーク強度と、Si−O結合に由来する1000〜1100cm−1間に存在するピーク強度の比を求めた。結果を表1に示す。
(CTEの測定)
熱機械分析(TMA)装置(日立ハイテクサイエンス社製、TMA7100C)を用いて、ピーク強度比の測定と同様にして得た自立膜の窒素雰囲気下、0℃〜400℃における膨張率(引張モード、荷重 0.1N)の測定を行った。
得られた膨張率と温度の関係曲線に関し、50℃〜150℃のデータに(膨張率)=(CTE)×(温度)+(定数)の数式を最小二乗法でフィッティングすることで、CTEを求めた。結果を表1に示す。
(Tgの測定)
示差走査熱量(DSC)計測計(TAインスツルメント社製、DSC2500)を用いて、ピーク強度比の測定と同様にして得た自立膜の窒素雰囲気下、23℃〜400℃における熱流(昇温速度および冷却速度 10℃/分)を求め、変曲点の温度からTgを求めた。結果を表1に示す。なお、測定の再現性の観点から2度目の加熱時の熱流測定結果を採用した。
(吸水率の測定)
吸水標準試験法(ASTM D570)に従い、ピーク強度比の測定と同様にして得た自立膜を純水に浸漬(23℃、24時間)する前後の質量変化測定を行い、吸水率の測定を行った。結果を表1に示す。
(膜厚の測定)
エリプソメーター(SEMILAB社製 PS−1100)により、樹脂層を形成したSi基板の樹脂層の膜厚を測定した。測定されたデータに、空気/樹脂層/自然酸化膜/シリコン基板の光学多層モデル(樹脂層の屈折率にはコーシーモデル+ローレンツ振動子モデルを採用)をフィッティングすることにより、樹脂層の膜厚を求めた。結果を表1に示す。
(ケイ素原子量の測定)
X線光電子分光装置(XPS)としてAXIS−NOVA(KRATOS社製)を用い、樹脂層を形成したSi基板の樹脂層のケイ素原子量の測定を行った。具体的には、ワイドスペクトルにおいて検出された各元素の合計量を100%としたときの、各元素のナロースペクトルのピーク強度から、原子比を測定することで樹脂層の表面におけるシリコン原子量を測定した。結果を表1に示す。
(O/Si元素比の測定)
XPSとしてAXIS−NOVA(KRATOS社製)を用い、樹脂層を形成したSi基板の樹脂層のO/Si元素比の測定を行った。具体的には、OおよびSiのナロースペクトルのピーク強度から、元素比を測定することで樹脂層の表面におけるO/Si元素比を測定した。結果を表1に示す。
(窒素原子量の測定)
XPSとしてAXIS−NOVA(KRATOS社製)を用い、樹脂層を形成したSi基板の樹脂層の窒素原子量の測定を行った。具体的には、ワイドスペクトルにおいて検出された各元素の合計量を100%としたときの、各元素のナロースペクトルのピーク強度から、原子比を測定することで樹脂層の表面における窒素原子量を測定した。結果を表1に示す。
(アウトガスが10−5Pa以上になる温度の測定)
樹脂層を形成したSi基板を10mm×10mm角にカットしてアウトガス測定用サンプルを作製した。アウトガス測定用サンプルを用いて、ESCO社製 EMD−WA1000Sで加熱によるアウトガス量測定を行った。雰囲気圧力(ベースプレッシャー)は10−7Pa、昇温速度は30℃/minである。シリコン基板の表面温度としては、標準資料(H+注入シリコン、CaC滴下、Ar+注入シリコンウェハ)のアウトガスピークを用いてステージ下熱電対の温度校正を行ったものを用いた。
昇温していき、アウトガスの圧力が1×10−5Paとなった温度を求めた。結果を表1に示す。前記温度が高いほど、アウトガスが発生しにくいことを意味する。
(250℃における弾性率のAFMによる測定)
樹脂層を形成したSi基板について、AFM(商品名 E−sweep、エスアイアイナノテクノロジー社製、AFMフォースマッピングモード、Si製探針(バネ定数2N/m相当))を用いて、真空下、ステージ温度250℃でのフォースカーブ測定結果からDMT理論式でフィッティングを行い、弾性率の算出を行った。結果を表1に示す。
DMT理論式を下記に示す。式中、Eは樹脂膜の弾性率を表し、νは樹脂膜のポアソン比、Rはカンチレバーの先端径、δは押込み深さ、Fは試料に印可される力、Fは最大凝着力を示す。ポアソン比は、0.33と仮定する。
Figure 2021182621

(均一性の測定)
樹脂層を形成したSi基板について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、加速電圧10kV、3,000倍、40μm幅視野で、樹脂膜の断面を観察し、樹脂層が均一な構造になっているかを評価した。ボイドやフィラーが観測されなかった場合は均一であると判断し、○とした。ボイドやフィラーが観測された場合は不均一構造があると判断し、×とした。結果を表1に示す。
<積層体の作製>
実施例及び比較例でシリコン基板上に作製した層の上に、表面に自然酸化膜が形成されたシリコン基板を積層し、窒素雰囲気下で200℃で30分加熱することで、シリコン基板/樹脂層(比較例では樹脂層に準ずる層)/シリコン基板の構造の積層体を作製した。
得られた積層体の接合強度(表面エネルギー)と、300℃、30分加熱後のボイド発生を評価した。結果を表1に示す。
(表面エネルギーの測定)
非特許文献M.P.Maszara, G.Goetz, A.Cavigila, and J.B.Mckitterick, Journal of Applied Physics, 64 (1988) 4943-4950. の手法に従って、積層体の接合界面における表面エネルギー(接合強度)をブレード挿入試験で測定した。具体的には基板の間に、厚さ0.25mmのブレードを挿入し、赤外線光源と赤外線カメラにて、ブレード刃先から基板同士が剥離した距離を測定し、その後、下記式に基づいて表面エネルギーを測定した。
Figure 2021182621

式中、γは表面エネルギー(J/m)、tbはブレード厚さ(m)、Eは第1の基板及び第2の基板に含まれるシリコン基板のヤング率(GPa)、tは第1の基板及び第2の基板の厚さ(m)、Lはブレード刃先からの基板同士の剥離距離(m)を表す。結果を表1に示す。
(ボイド発生の評価)
積層体の基板間のボイドの有無を、赤外線顕微鏡で観察した。具体的には、半導体内部観察装置C9597−42U30(浜松ホトニクス株式会社製)及び赤外線顕微鏡MX63−IR(オリンパス株式会社製)を用いて、積層体の赤外線透過光を観察し、窒素雰囲気下300℃30分加熱前後の積層体全面のボイドの比較を行い、300℃30分加熱後に新たに発生したボイドの有無を確認した。ボイドが観察されなかった場合は「なし」、ボイドが観察された場合は「あり」とし、結果を表1に示す。
Figure 2021182621

表1における空欄は、該当する項目の試験を実施していないことを示す。
表1に示すように、本実施形態の条件を満たす樹脂層は、熱膨張率が低く、かつ表面エネルギーの測定結果から基板との接合強度に優れていることがわかる。また、300℃で30分加熱した後のボイドの発生もみられず、耐熱性に優れている。

Claims (18)

  1. 基板と樹脂層とを備え、
    前記樹脂層は50℃〜150℃の間における熱膨張率(CTE)が120ppm/K以下であり、ケイ素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下であり、ケイ素原子に対する酸素原子の比(O/Si)が1以上である、積層体。
  2. 前記樹脂層は窒素原子の含有量が0.1atm%以上20atm%以下である、請求項1に記載の積層体。
  3. 10−7Paの環境で測定されるアウトガス圧力が10−5Pa以上となる温度が400℃以上である、請求項1又は請求項2に記載の積層体。
  4. 前記基板が第1の基板と第2の基板とを含み、前記樹脂層が第1の基板及び第2の基板の間に配置される、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 第1の基板と第2の基板との接合強度を表す表面エネルギーが0.5J/m以上である、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記樹脂層の厚さが0.001μm以上20μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記基板は半導体基板である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 下記一般式(1)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X1)、及び一般式(2)で表される構造を有し、分子量が400〜5000である化合物(X2)の少なくともいずれかを含む、組成物。
    Figure 2021182621


    一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造である。
    Figure 2021182621


    一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数6以下の有機基であり、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はフェニレン基であり、aは2又は3であり、bは3−aの数であり、Xはカルボン酸二無水物に由来する構造であり、Xはアミン化合物に由来する構造であり、nは正の数である。
  9. 前記化合物(X1)は、シランカップリング剤(A)と、分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造を有する、請求項8に記載の組成物。
  10. 前記化合物(X2)は、シランカップリング剤(A)と分子量が200〜600であり環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、分子量が90〜600であり、Si−O結合を有さず、環構造を有するアミン化合物(C)と分子量が200〜600である環構造を有するカルボン酸二無水物(B)とが反応して得られる構造と、を有する、請求項8に記載の組成物。
  11. 一般式(1)又は一般式(2)におけるaが2である、請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
  12. 50℃〜150℃の間におけるCTEが90ppm/K以下である樹脂(D)の前駆体をさらに含む、請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 樹脂(D)がポリイミド及びポリベンゾオキサゾールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項12に記載の組成物。
  14. 半導体装置の製造に用いるための、請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 基板上又は基板間に樹脂層を形成するための、請求項8〜請求項14のいずれか1項に記載の組成物。
  16. 有機溶媒をさらに含む、請求項8〜請求項15のいずれか1項に記載の組成物。
  17. 基板と、請求項8〜請求項16のいずれか1項に記載の組成物の硬化物を含む樹脂層と、を備える積層体。
  18. 請求項8〜請求項16のいずれか1項に記載の組成物を含む層を基板上又は基板間に形成する工程と、前記層を硬化させる工程と、を有する積層体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024010007A1 (ja) * 2022-07-06 2024-01-11 三井化学株式会社 基板積層体の製造方法及び基板積層体

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